説明

イネカルシトールの新しい治療的使用

本発明は、従って、それを必要とするヒトの患者に、1 mg/日から100 mg/日の間で含まれる用量で、イネカルシトールを投与することを含む、くる病、骨粗鬆症、骨軟化症、乾癬、自己免疫疾患、例えば多発性硬化症など、又はI型糖尿病、副甲状腺機能亢進症、良性前立腺肥大、任意の種類の癌、又は任意のビタミンDに関連する疾患、を治療する及び/又は予防するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ビタミンDは、プロホルモンの群であり、その二つの主な形態は、ビタミンD2(又はエルゴカルシフェロール)、及びビタミンD3(又はコレカルシフェロール)である。ビタミンD、その代謝産物及びアナログは、カルシウム及びリン酸塩代謝への強力な効果を有し、それゆえ、ビタミンD欠乏症、例えばくる病など、及び他の血漿及び骨ミネラル恒常性の疾患、例えば、骨粗鬆症、及び骨軟化症など、の予防及び治療のために用いられる。その上、ビタミンD受容体及びビタミンD活性はまた、多くの他の組織及び細胞で実証されおり、そこではそれらが細胞増殖及び分化に関与していることが知られている。ビタミンD受容体が、単球、マクロファージ及びT及びBリンパ球を含むいくつかの白血球で発現されるように、ビタミンDはまた、免疫系に作用する。
【0002】
ビタミンDのこれらのいわゆる非カルシウム血症作用は、様々な治療的適用、例えば、免疫系、ホルモン分泌、細胞分化、又は細胞増殖の障害など、についてビタミンD誘導体の使用の可能性を考慮することを導く。特に、そのような化合物は、増進する細胞増殖により特徴付けられる疾患、例えば乾癬及び/又は癌など、の治療において有用である。特に、1,25(OH)2-ビタミンD3、カルシトリオールと呼ばれるビタミンD3の活性代謝産物は、インビトロで様々な起源の多くの癌細胞株の増殖を阻害すること、及びインビボで様々な腫瘍異種移植の進行を減速することが知られている。この化合物の使用に関する主な欠点は、その高カルシウム血症作用であり、それは薬理学的に活性量の適用を阻む。カルシトリオール、及び全てのビタミンDアナログの毒性作用は、様々な組織でカルシウムの微結晶化を導く、又は筋収縮性の障害を誘導する、高カルシウム血症の結果である。高カルシウム血症は、それ故、心臓の収縮を害することにより(心不全)、尿細管でのカルシウム微結晶の集積により(腎不全)、死を引き起こす。高カルシウム血症はまた、関節炎又は白内障(それぞれ関節又は目のレンズでの微結晶の沈着)、又は筋力低下(収縮の障害)を引き起こす。それ故、ビタミンDアナログが、高カルシウム血症を引き起こすリスクのない治療薬に用いられることは、最も重要である。
【0003】
抗増殖性及びカルシウム血症作用の間の明確な解離を示すカルシトリオールのアナログの多くのメンバーは、報告されている。特に、EP 0 707 566 B1は、カルシトリオールアナログ、例えば14-エピアナログなどのメンバーを開示している。これらの間で、カルシトリオールの14-エピアナログは、化学式:
【0004】
【化1】

【0005】
のイネカルシトールである。
【0006】
イネカルシトールは、19-ノル-9,10-セコ-14βH-コレスタ-5(Z),7(E)-ジエン-23-イノ-1α,3β,25-トリオール-23-イネ (C26H40O3)についての国際一般的名称である。
【0007】
イネカルシトールは、カルシトリオール、ビタミンD3の天然活性代謝産物、の合成誘導体である。Eelenら(Molecular Pharmacology 67, 1566-1573, 2005)及びVerlindenら(Journal of Bone and Mineral Research, volume 16(4), 625-638, 2001 )は、カルシトリオールと比較した、イネカルシトールの増大した抗増殖性、及び著しく低いカルシウム血症作用を示した。Verlindenら(Cancer Research 60(10), 2673-2679, 2000)はまた、ヒト乳癌細胞の増殖を阻害するイネカルシトールのインビトロ及びインビボ活性を報告した。この特性は、もともと癌治療のための効果的な薬剤候補として、イネカルシトールを位置づけた。
【0008】
ビタミンD及びそのアナログの高カルシウム血症作用を考慮すると、これらの化合物の低用量、又は一日に一回より低い投与の頻度で投与することが、一般的な方法である。結果として、ビタミンD又はそのアナログは、一般的に、200μg/日以下、及びしばしば一日おき、又は1週間に1度で、よりずっと低い用量で投与される。特に、ビタミンD欠乏症について認可されたカルシトリオールの用量は、0.25又は0.5μg/日、及び癌の臨床試験におけるカルシトリオールの試験量は、45μg/患者、1週間に1度;セオカルシトールの場合、癌の臨床試験における試験量は、10μg/日/患者;良性前立腺肥大の臨床試験におけるエロカルシトールについて、試験量は150μg/日/患者;パラトルモンの分泌過多(副甲状腺機能亢進症)の治療について、パーカルシトールは、2μg/日、又は1日おきに4μgの最大投与量が承認されており、ドキセルカルシフェロールは、3.5μg/日、又は1日おきに20μgの最大投与量で承認されている。
【0009】
それ故、毒性が低く、従って高い薬理学的活性を有する用量で投与することのできるビタミンDの誘導体を提供することは望ましい。
【0010】
EP 0 707 566 B1は、乾癬を治療するために皮膚に適用されるための局所製剤の重量に関連して、0.1〜500μg/gのビタミンDアナログ用量に単に言及している。Verlinden ら(Cancer Research, supra)は、マウスにおける投与について、80μg/kg/1日おきのイネカルシトール投与量にだけ言及しており、ヒトの患者における投与については述べていない。
【0011】
さらに、活性成分からの可能な限り高い治療効果を得るために、副作用、例えば、全てのその上述の有害な結果を伴う高カルシウム血症など、を誘導することなく、投与量を増加させることが望ましい。
【0012】
現在、驚くべきことに、イネカルシトールは、全ての他の知られているビタミンDアナログでは一般的に毒性が強すぎると考えられる用量において、高カルシウム血症作用を有していないことが発見されている。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、従って、くる病、骨粗鬆症、骨軟化症、乾癬、自己免疫疾患、例えば多発性硬化症など、又はI型糖尿病、副甲状腺機能亢進症、良性前立腺肥大、任意の種類の癌、又は任意のビタミンDに関連する疾患、特に癌を治療する及び/又は予防するための方法に関し、それを必要とするヒト又は動物の患者に、1 mgから100 mgの間に含まれる用量で、イネカルシトールを投与することを含む。
【0014】
本発明はまた、それを必要とするヒト又は動物の患者に、1 mgから100 mgの間に含まれる用量での投与のための、くる病、骨粗鬆症、骨軟化症、乾癬、自己免疫疾患、例えば多発性硬化症など、又はI型糖尿病、副甲状腺機能亢進症、良性前立腺肥大、任意の種類の癌、又は任意のビタミンDに関連する疾患、特に癌を治療する及び/又は予防するための使用のためのイネカルシトールに関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、雄性成人サルにおいて行われた、1日1回の経口イネカルシトールに関する9ヶ月の毒性試験で得られた、平均血漿濃度対時間を示す。
【図2】図2は、雄性子供サルにおいて行われた、1日2回の経口イネカルシトールに関する2週間の毒性試験で得られた、平均血漿濃度対時間を示す。
【図3】図3は、ヒトの患者に投与された300、600及び1000μgの経口イネカルシトールで得られた平均の薬物動態特性を示す。
【図4】図4は、ヒトの患者に投与された2及び、4 mgの経口イネカルシトールで得られた平均の薬物動態特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
前記投与量は、好ましくは、1.5 mgから20 mgの間で含まれる。
好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、治療される患者において、上昇したカルシウム血を誘導することなく、上述の疾患、特に任意の種類の癌の治療及び/又は予防のために、1.5 mgから20 mgの間で含まれる用量でイネカルシトールを投与することを含む。
【0017】
他の実施形態によれば、本発明の方法は、イネカルシトールの前記用量の、3日ごとから1日に3回までの間を含む頻度、例えば、3日ごとに、1日おきに(qod)、1日に1回(qd)、1日に2回(bid)、又は1日に3回(tid)などでの投与を含む。好ましくは、投与は、一日おき、1日に1回、又は1日に2回行われる。
【0018】
さらなる実施形態によれば、本発明の方法はまた、抗骨粗鬆症剤、免疫調節剤、抗炎症剤、抗乾癬剤、抗ホルモン剤、抗増殖剤又は抗癌剤から選択される、一つ又はそれ以上のさらなる活性成分の投与を含む。
【0019】
好ましくは、前記抗癌剤は、タキソイド誘導体、特にパクリタキセル又はドセタキセル、又はプラチナ誘導体、特にカルボプラチン、オキサリプラチン又はサトラプラチンから選択される。前記投与は、イネカルシト−ルの投与と同時に、別々に、又は続けてでよい。
【0020】
他の実施形態によれば、本発明の方法は、腫瘍、又は白血病を含む様々な形態の癌を治療することである。乳、前立腺、肺、結腸、膀胱、脳、胃、腎臓、肝臓、卵巣、口腔、皮膚、腸、子宮、頭部及び頸部、咽喉の癌、及び血液癌は、本明細書に含まれ、特に前立腺癌である。
【0021】
他の実施形態によれば、本発明の方法は、非癌性の皮膚の過剰増殖性疾患、特に乾癬を、高投与量でのイネカルシトールの投与、単独、又は販売されている乾癬の全身性の経口又は非経口治療、又は開発過程の例えば、アシトレチン、及びレチノイド、シクロスポリン、ボクロスポリン、シロリムス、タクロリムス、メトトレキサート、及び免疫抑制剤又は免疫調節剤、アレファセプト、エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブ、ゴリムマブ、及び抗腫瘍壊死因子-アルファ治療法、ウステキヌマブ、ブリアキヌマブ、及び一般的には抗インターロイキン治療薬、アプレミラスト、MAPキナーゼ阻害剤、A3アデノシンアゴニストなど(Melnikova, Nature reviews drug discovery 2009, 8, 767-768)と組み合わせて、高投与量での投与により、治療することである。
【0022】
他の実施形態では、本発明の方法は、高容量でのイネカルシトールの投与、単独で、又は販売されている多発性硬化症の全身性の経口又は非経口治療薬、又は開発過程の例えば、インターフェロンアルファ及びベータ、及びそれらの様々なアイソフォーム、ミトキサントロン、ラクイニモド、フィンゴリモド、及び免疫抑制剤又は免疫調節剤、ナタリズマブ、ダクリズマブ、コパキソン、クラドリビン、テリフルノミドなど、と組み合わせて、多発性硬化症の症状の治療、再発の予防、又は寛解の延長をすることである。
イネカルシトールは、好ましくは経口により投与される。
【0023】
他の目的によれば、本発明はまた、それを必要とする患者に、医薬的に許容される担体又は賦形剤を伴うイネカルシトールの投与を含む、上述の治療的処理方法に関する。
【0024】
本明細書で用いられる、イネカルシトールは、イネカルシトール又はその医薬的に許容されるその塩を意味する。
【0025】
本明細書に記載の疾患及び症状の治療が必要であるこれらの対象の識別は、当業者の能力及び知識内でよく知られている。当該技術に精通した臨床医は、臨床試験、身体検査、遺伝子検査、及び医療の/家族病歴の使用により、そのような治療の必要多これらの対象を容易に識別できる。
【0026】
治療的に効果的な量は、当業者として主治診断医によって、従来技術の使用により、及び類似の状況下で得られる結果を観察することにより、容易に決定される。治療的に効果的な量の決定において、多数の因子が主治診療医により考慮され、以下:対象の種;その大きさ、年齢、及び全体的な健康;含まれる特異的疾患;併発の程度又は疾患の重症度;個別の対象の反応;投与された特定の化合物;投与の方法;投与された調合の生物学的利用率特性;選択された投薬計画;併用薬剤の使用;及び他の関連する状況、を含むがこれに限定されない。
【0027】
所望の生物学的効果を得るために必要なイネカルシトールの量は、投与される薬物の用量、疾患の種類、患者の病態、及び投薬経路を含む、多くの因子によって変化する。
【0028】
「医薬的に」又は「医薬的に許容された」は、必要に応じて、動物又はヒトに投与されたときに、有害な、アレルギーの、又は他の厄介な反応を生み出さない、分子的実態及び組成物を意味する。
【0029】
本明細書で用いられる「医薬的に許容される担体」は、任意の希釈剤、アジュバント、賦形剤、又は溶媒を含む。薬剤活性物質のためのそのような担体の使用は、当該技術分野でよく知られている。
【0030】
本発明の関連において、本明細書で用いられる用語「治療する」又は「治療」は、そのような用語を適用する疾患若しくは症状、又はそのような障害若しくは疾患の一つ又はそれ以上の症状を、逆転すること、軽減すること、その進行を抑制すること、又は予防することを意味する。
【0031】
「治療的に効果的な量」は、所望の治療効果を生み出すのに効果的な、本発明による化合物/薬剤の量を意味する。
【0032】
本発明によれば、用語「患者」又は「それを必要とする患者」は、くる病、骨粗鬆症、骨軟化症、乾癬、自己免疫疾患、例えば多発性硬化症など、又はI型糖尿病、副甲状腺機能亢進症、良性前立腺肥大、任意の種類の癌、又は任意のビタミンDに関連する疾患に罹患している又は罹患する可能性があるヒト又はヒトでない哺乳動物を対象としている。好ましくは、患者はヒトである。
【0033】
一般論として、投与されるべき薬物の好ましい用量は、例えば、疾患又は症状の進行の種類及び程度、特定の患者の全般の健康状態、選択された化合物の相対的な生物学的効率、及び賦形剤化合物の製剤、及びその投薬の経路などの、変数に依拠する可能性があり、通常、患者あたり1 mg/日を超える。
【0034】
イネカルシトールは、単位用量形態で投与されることができ、ここで用語「単位用量」は、活性のある化合物それ自体、又は医薬的に許容される組成物として含む物理的及び化学的に安定した単位用量として維持しながら、患者に投与することができ、容易に扱われ、包装される単一用量を意味する。
【0035】
イネカルシトールは、一つ又はそれ以上の医薬的に許容される賦形剤を含む混合剤により医薬組成物に製剤化される。
【0036】
組成物は、便利なことに、単位用量形態で投与され、医薬技術分野でよく知られる任意の方法により、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th ed.; Gennaro, A. R., Ed.; Lippincott Williams & Wilkins: Philadelphia, PA, 2000で記述されるように、調合される。ビタミンDアナログの経口投与のための通常の単位用量は、カルシトリオール、ドキセルカルシフェロール、又はパリカルシトールについてのように、分画されたココナッツオイル由来の中鎖トリグリセリドを含む軟ゼラチンカプセル剤であり、その中で化合物が溶解される。
【実施例】
【0037】
下記の実施例は、本発明の代表的な、限定することのない実例として与えられる。
実施例1:サルにおける1日1回の経口イネカルシトールの9ヶ月の毒学及び毒物動態学試験
9ヶ月の毒性試験の間、雄性成人カニクイザルにおいて、イネカルシトールの毎日の経口投与により、サルあたり1日につき1.8ミリグラム(mg)の高い試験量でさえも、血中のイネカルシトールへの常に高いピークの曝露にもかかわらず、高カルシウム血症及び毒性作用は観察されなかった。図1に関して、イネカルシトールの平均血漿濃度は、試験の初日、及びその終わりに近い272日における時間に対して描かれた。平均の毒物動態学的特性は、経口摂取から15分後にすぐに得られた約1.2 ng/mlの平均ピーク、及び4時間以内の血液循環からの安定した消失とともに、ほぼ重ねることができた。高い投与量はまた、本研究では試験されていないが、最大耐用量には到達しないので、高カルシウム血症及び毒性作用を避ける。下記の表において、試験の間の異なる時点での血漿カルシウムレベル(mmoles/Lで、 平均 + s.e.m.)は、対照及び処理されたサルの間でいくらかの違いも示さなかった。
【0038】
【表1】

【0039】
実施例2:サルにおける1日2回の経口イネカルシトールの2週間の毒学及び毒物動態学試験
2週間の毒性試験の間、雄性子供カニクイザルにおいて、イネカルシトールの1日2回の経口投与により、イネカルシトールの大変高い血漿レベルへの頻繁な曝露にもかかわらず、毎日2 x 1.6 ミリグラム(mg)の投与量で、高カルシウム血症及び毒性作用は観察されなかった。図2に関して、イネカルシトールの平均血漿濃度は、午前8時頃及び午後7時頃、すなわち約11時間空けて、2回の連続するイネカルシトールの投与による処理の初日の時間に対して描かれた。2回のほぼ同一のピークは、それぞれ2.75 ng/ml 及び2.50 ng/mlに達したことが観察された。双方の例において、イネカルシトールのレベルは、4時間以内に基礎レベルに戻った。下記の表において、血漿カルシウムレベル(mmoles/Lで、 平均 + s.e.m.)は、同じ4匹の動物において、処理期間の前2週間、及び処理期間の間2週間、観察された。血漿カルシウムにおける重要な変化は、見られなかった。
【0040】
【表2】

【0041】
実施例3:ホルモン抵抗性前立腺癌(HRPC)患者における、ドセタキセル-プレドニゾン投薬計画と組み合わせたイネカルシトールの用量設定及び臨床寛容試験
3.1 方法
ナイーブHRPC患者において、イネカルシトールの上昇する経口投与量は、化学療法と組み合わせられる。安全性は、静脈のドセタキセル(75 mg/m2 q3w)、及び経口のプレドニゾン(5 mg bid)と組み合わせて、21日サイクルで一日おき(qod)又は毎日(qd)イネカルシトールを投与された3〜6人の患者の群で評価された。患者(pts)は、容認できない毒性又は疾患の進行がない限り、6サイクルまで、受けた。主要評価項目は、最初のサイクル内のグレード3高カルシウム血症として定義された用量制限毒性(DLT)である。カルシウム血、クレアチニン血症、及び完全血球算定は、毎週;生物化学、心電図、及び前立腺特異抗原(PSA)は3週間ごとに評価される。有効性の評価項目は、3ヶ月以内に≧30%の減少として定義されたPSA反応である。
【0042】
イネカルシトールは、用量レベル試験に応じて、異なるサイズ、形、及び強度の軟ゼラチンカプセルで、患者に与えられる:それぞれ40、 80又は160μg/日の投与のための1つ、2つ又は4つの40μgカプセル(サイズ11、楕円形型);それぞれ300又は600μg/日の投与のための3つ、又は6つの100μgカプセル(サイズ4、円形);1,000μg/日の投与のための5つの200μgカプセル(サイズ7.5、卵形);2 mg/日の投与のための5つの400μgカプセル(サイズ14、楕円形型)、及び4 mg/日の投与のための4つの1 mgカプセル(サイズ14、楕円形型)。全てのカプセルにおいて、イネカルシトールは、カプセルの強度に応じた異なる濃度で、分画されたココナッツオイル由来の中鎖トリグリセリド中の溶液として必要な分の容量で存在する。
【0043】
3.2 臨床結果
8の投与量レベル:40μg (qd)、80μg (qod,qd)、160μg (qod,qd)、300μg (qod,qd)、600μg (qod,qd)、1,000μg (qod,qd)、2 mg (qd)及び4 mg (qd)は評価され; 50 ptsが治療され;47 ptsは6サイクルを完了した。年齢の中央値は、71歳[範囲、49〜87]であり、グリソンスコア(Gs)の中央値は7、PSAの中央値は 35.7 ng/mL [範囲、0.9〜962.4]であった。上昇したカルシウム血は報告されなかった。多くの有害事象(AE)は、G1-2、無力症(22 pts)、便秘(15 pts)、下痢(13 pts)である。G3-4 AEは、好中球減少(36 pts)、リンパ球減少(12 pts)、無力症(3 pts)、不整脈(2 pts)、一般的な健康悪化(3 pts)、及び下痢(1 pt)である。これらの全てのAEは、ドセタキセルに関連し、イネカルシトールに関連しなかった。治療の3ヶ月以内のPSA反応についての、42の評価可能なptsのうち、35 (83%)は、30%以上のPSA減少を示した。
【0044】
3.3. HRPC患者におけるイネカルシトールの薬物動態
300μg (qod,qd)、600μg (qod,qd)、1000μg (qod,qd)、2 mg (qd)、又は4 mg (qd)でのヒトホルモン抵抗性前立腺癌患者へのイネカルシトールの経口投与は、何らかの高カルシウム血症又は何らかの毒性作用を引き起こさなかった。図3は、最初の300、600、及び1000μgの3つの用量レベルで得られた、平均の薬物動態特性を示す。イネカルシトールは、液体クロマトグラフィーにより、続いてタンデム質量分析(LC/MS/MS)により、血漿中で変化しない循環する化合物として評価された。300μgにおいて、ピークの値は、LC/MS/MS方法により達成される定量下限、すなわち10 pg/ml(0.01 ng/ml)を超えてかろうじて検出できた。600μg及び1000μgにおいて、平均のピークの値は、90及び45分でそれぞれ、約35及び45 pg/ml (0.035及び 0.045 ng/ml)に達した。図4は、イネカルシトールの2 mg及び4 mgでの平均の薬物動態特性を示し:平均のピーク値は、90及び45分でそれぞれ、約70 及び260 pg/ml (0.07及び0.26 ng/ml)に達した。600μg及び4 mgの間で得られた4つの平均薬物動態特性においては、イネカルシトールの消失は、1〜1.5時間の間で含まれる概算の半減期を伴うことが通常である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1 mgから100 mgの間で含まれる用量で、くる病、骨粗鬆症、骨軟化症、乾癬、自己免疫疾患、例えば多発性硬化症など、又はI型糖尿病、副甲状腺機能亢進症、良性前立腺肥大、任意の種類の癌、又は任意のビタミンDに関連する疾患を治療する及び/又は予防するための使用のためのイネカルシトール。
【請求項2】
前記投与量が、1.5 mgから20 mgの間で含まれる、請求項1に記載の使用のためのイネカルシトール。
【請求項3】
治療される患者において、上昇したカルシウム血を同時に誘導しない、請求項1又は2に記載の使用のためのイネカルシトール。
【請求項4】
3日ごと、1日おき(qod)、1日に1回(qd)、1日に2回(bid)、及び1日に3回(tid)から選択される頻度の、イネカルシトールの前記用量の投与を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用のためのイネカルシトール。
【請求項5】
前記投与が、1日おき、1日に1回、1日に2回から選択される頻度である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用のためのイネカルシトール。
【請求項6】
抗骨粗鬆症剤、免疫調節剤、抗炎症剤、抗乾癬剤、抗ホルモン剤、抗増殖剤及び抗癌剤から選択される一つ又はそれ以上のさらなる活性成分の投与をまた含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用のためのイネカルシトール。
【請求項7】
前記のさらなる投与(複数)が、イネカルシトールの投与と、同時、別々に、又は連続的である、請求項6に記載の使用のためのイネカルシトール。
【請求項8】
癌、腫瘍、又は白血病を治療するための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用のためのイネカルシトール。
【請求項9】
イネカルシトールが経口経路により投与される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用のためのイネカルシトール。
【請求項10】
乾癬を治療するための、請求項1〜9のいずれか一項に記載の使用のためのイネカルシトール。
【請求項11】
多発性硬化症を治療するための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の使用のためのイネカルシトール。
【請求項12】
副甲状腺機能亢進症を治療するための、請求項1〜11のいずれか一項に記載の使用のためのイネカルシトール。
【請求項13】
良性前立腺肥大を治療するための、請求項1〜12のいずれか一項に記載の使用のためのイネカルシトール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2012−527424(P2012−527424A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511265(P2012−511265)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056832
【国際公開番号】WO2010/145903
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(511281729)イブリジェニク ソシエテ アノニム (1)
【Fターム(参考)】