説明

イミノホスホラン化合物

【課題】医薬品の合成中間体等として有用である3−アミノキヌクリジン化合物の製造方法、およびその製造方法に用いられるイミノホスホラン化合物を提供する。
【解決手段】式(1)で表されるイミノホスホラン化合物。


該イミノホスホラン化合物を加水分解させることを含む式(4)で表される3−アミノキヌクリジン化合物の製造方法。


(式(1)または(4)中、R1はC1〜6アルキル基、アリール基、ヘテロ環基などを示す。nはR1の数を示し且つ0〜12のいずれかの整数である。R2はC1〜6アルキル基、アリール基、C1〜6アルコキシ基、アリールオキシ基などを示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イミノホスホラン化合物に関する。より詳細に、本発明は、医薬品の合成中間体等として有用である3−アミノキヌクリジン化合物の製造方法、およびその製造方法に用いられるイミノホスホラン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
3−アミノキヌクリジン化合物は、免疫障害、胃腸障害、呼吸障害、心臓血管障害、中枢神経系障害、炎症性疾患、喘息、疼痛および偏頭痛の治療薬などの医薬品の合成中間体として有用な化合物である。
3−アミノキヌクリジン化合物の製造方法として、例えば、特許文献1に、N−(3−アミノキヌクリジニル)−3−クロロベンズアミドを光学分割後、加水分解してS−(−)−3−アミノキヌクリジンを得る方法、及び3−キヌクリジノンを(R)−α−メチルベンジルアミンと反応させ、生成物を水素化ホウ素ナトリウムで還元して(S)−N−〔(R)−α−メチルベンジル〕−3−アミノキヌクリジンに導き、ジアステレオマーを再結晶で分離し、次いで酸媒体中で水素化分解してS−(−)−3−アミノキヌクリジンを得る方法が記載されている。
また特許文献2には、同様の方法でR−(+)−3−アミノキヌクリジンを合成する方法が記載されており、そのほかにS−(−)−3−キヌクリジノールから誘導する方法が記載されている。
【0003】
特許文献3には、キヌクリジノンに(S)−α−メチルベンジルアミンを反応させて(S)−N−(α−メチルベンジル)−3−キヌクリジニミンとし、これを白金系触媒の存在下に接触水素添加して(R)−N−〔(S)−α−メチルベンジル〕−3−アミノキヌクリジンに変換したのち酸性媒体中で水素化分解することを特徴とする絶対配置Rを持つ右旋性の3−アミノキヌクリジンの製造方法と、キヌクリジノンに(R)−α−メチルベンジルアミンを反応させて(R)−N−(α−メチルベンジル)−3−キヌクリジニミンとし、これを白金系触媒の存在下に接触水素添加して(S)−N−〔(R)−α−メチルベンジル〕−3−アミノキヌクリジンに変換したのち酸性媒体中で水素化分解することを特徴とする絶対配置Sを持つ左旋性の3−アミノキヌクリジンの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−196583号公報
【特許文献2】特開平1−199969号公報
【特許文献3】特開平9−216888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、医薬品の合成中間体等として有用である3−アミノキヌクリジン化合物を工業的に有利に製造する方法、およびその製造方法に用いられるイミノホスホラン化合物を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、3−ハロキヌクリジン化合物などを極性溶媒中でアジド化して3−アジドキヌクリジン化合物を得、それにホスフィン化合物を反応させ、次いで極性溶媒を除去することによってイミノホスホラン化合物を得、次いで、該化合物を加水分解させることによって3−アミノキヌクリジン化合物を工業的に有利に合成できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0007】
すなわち、本発明は、以下のものを含む。
〔1〕 式(1)で表されるイミノホスホラン化合物。
【0008】
【化1】


(式(1)中、R1は無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するアリール基または無置換の若しくは置換基を有するヘテロ環基を示す。nはR1の数を示し且つ0〜12のいずれかの整数である。R2は無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するアリール基、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルコキシ基または無置換の若しくは置換基を有するアリールオキシ基を示す。)
【0009】
〔2〕 式(2)で表される化合物を極性溶媒中でアジド化して式(3)で表される化合物を得、それにホスフィン化合物:PR23(但し、R2は無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するアリール基、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルコキシ基または無置換の若しくは置換基を有するアリールオキシ基を示す。)を反応させ、次いで極性溶媒を除去することを含む式(1)で表されるイミノホスホラン化合物の製造方法。
【0010】
【化2】


(式(2)中、R3はハロゲン原子またはスルホン酸エステル基を示し、R1およびnは式(1)中のそれらと同じ意味を示す。)
【0011】
【化3】


(式(3)中、R1およびnは式(1)中のそれらと同じ意味を示す。)
【0012】
〔3〕 式(1)で表されるイミノホスホラン化合物を加水分解させることを含む式(4)で表される3−アミノキヌクリジン化合物の製造方法。
【0013】
【化4】


(式(4)中、R1およびnは式(1)中のそれらと同じ意味を示す。)
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、医薬品の合成中間体等として有用である3−アミノキヌクリジン化合物を工業的に有利に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔イミノホスホラン化合物〕
本発明のイミノホスホラン化合物は、式(1)で表される化合物である。
本明細書にて使用される記号、用語などの意味は以下のとおりである。
先ず、「無置換の」の用語は、母核となる基のみであることを意味する。「置換基を有する」との記載がなく母核となる基の名称のみで記載しているときは、別段の断りがない限り「無置換の」意味である。
一方、「置換基を有する」の用語は、母核となる基のいずれかの水素原子が、母核と同一または異なる構造の基で置換されていることを意味する。従って、「置換基」は、母核となる基に結合した他の基である。置換基は1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。2つ以上の置換基は同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
「C1〜6」などの用語は、母核となる基の炭素原子数が1〜6個などであることを表している。この炭素原子数には、置換基の中に在る炭素原子の数を含まない。例えば、置換基としてエトキシ基を有するブチル基は、C2アルコキシC4アルキル基に分類する。
【0016】
「置換基」は化学的に許容され、本発明の効果を有する限りにおいて特に制限されない。
「置換基」となり得る基としては、 フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子; メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などのC1〜6アルキル基; シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などのC3〜8シクロアルキル基; ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−メチル−2−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基などのC2〜6アルケニル基; 2−シクロプロペニル基、2−シクロペンテニル基、3−シクロヘキセニル基、4−シクロオクテニル基などのC3〜8シクロアルケニル基; エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−メチル−2−プロピニル基、2−メチル−3−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基、1−メチル−2−ブチニル基、2−メチル−3−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、1,1−ジメチル−2−ブチニル基などのC2〜6アルキニル基;
【0017】
メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基などのC1〜6アルコキシ基; ビニルオキシ基、アリルオキシ基、プロペニルオキシ基、ブテニルオキシ基などのC2〜6アルケニルオキシ基; エチニルオキシ基、プロパルギルオキシ基などのC2〜6アルキニルオキシ基; フェニル基、ナフチル基などのC6〜10アリール基; フェノキシ基、1−ナフトキシ基などのC6〜10アリールオキシ基; ベンジル基、フェネチル基などのC7〜11アラルキル基; ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などのC7〜11アラルキルオキシ基; ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、シクロヘキシルカルボニル基などのC1〜7アシル基; ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基などのC1〜7アシルオキシ基; メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基などのC1〜6アルコキシカルボニル基; カルボキシル基;
【0018】
水酸基; オキソ基; クロロメチル基、クロロエチル基、トリフルオロメチル基、1,2−ジクロロ−n−プロピル基、1−フルオロ−n−ブチル基、パーフルオロ−n−ペンチル基などのC1〜6ハロアルキル基; 2−クロロ−1−プロペニル基、2−フルオロ−1−ブテニル基などのC2〜6ハロアルケニル基; 4,4−ジクロロ−1−ブチニル基、4−フルオロ−1−ペンチニル基、5−ブロモ−2−ペンチニル基などのC2〜6ハロアルキニル基; 2−クロロ−n−プロポキシ基、2,3−ジクロロブトキシ基などのC1〜6ハロアルコキシ基; 2−クロロプロペニルオキシ基、3−ブロモブテニルオキシ基などのC2〜6ハロアルケニルオキシ基; 4−クロロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基などのC6〜10ハロアリール基; 4−フルオロフェニルオキシ基、4−クロロ−1−ナフトキシ基などのC6〜10ハロアリールオキシ基; クロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、トリクロロアセチル基、4−クロロベンゾイル基などのハロゲン置換C1〜7アシル基;
【0019】
シアノ基;イソシアノ基;ニトロ基;イソシアナト基;シアナト基;アミノ基; メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などのC1〜6アルキルアミノ基; アニリノ基、ナフチルアミノ基などのC6〜10アリールアミノ基; ベンジルアミノ基、フェニルエチルアミノ基などのC7〜11アラルキルアミノ基; ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基、ブチリルアミノ基、i−プロピルカルボニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などのC1〜7アシルアミノ基; メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、n−プロポキシカルボニルアミノ基、i−プロポキシカルボニルアミノ基などのC1〜6アルコキシカルボニルアミノ基; アミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、N−フェニル−N−メチルアミノカルボニル基などの無置換の若しくは置換基を有するアミノカルボニル基; イミノメチル基、(1−イミノ)エチル基、(1−イミノ)−n−プロピル基などのイミノ基で置換されたC1〜6アルキル基; ヒドロキシイミノメチル基、(1−ヒドロキシイミノ)エチル基、(1−ヒドロキシイミノ)プロピル基、メトキシイミノメチル基、(1−メトキシイミノ)エチル基などのヒドロキシイミノ基で置換されたC1〜6アルキル基;
【0020】
メルカプト基;イソチオシアナト基;チオシアナト基; メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、i−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、i−ブチルチオ基、s−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基などのC1〜6アルキルチオ基; ビニルチオ基、アリルチオ基などのC2〜6アルケニルチオ基; エチニルチオ基、プロパルギルチオ基などのC2〜6アルキニルチオ基; フェニルチオ基、ナフチルチオ基などのC6〜10アリールチオ基; チアゾリルチオ基、ピリジルチオ基などのヘテロアリールチオ基; ベンジルチオ基、フェネチルチオ基などのC7〜11アラルキルチオ基; (メチルチオ)カルボニル基、(エチルチオ)カルボニル基、(n−プロピルチオ)カルボニル基、(i−プロピルチオ)カルボニル基、(n−ブチルチオ)カルボニル基、(i−ブチルチオ)カルボニル基、(s−ブチルチオ)カルボニル基、(t−ブチルチオ)カルボニル基などの(C1〜6アルキルチオ)カルボニル基;
【0021】
メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、t−ブチルスルフィニル基などのC1〜6アルキルスルフィニル基; アリルスルフィニル基などのC2〜6アルケニルスルフィニル基; プロパルギルスルフィニル基などのC2〜6アルキニルスルフィニル基; フェニルスルフィニル基などのC6〜10アリールスルフィニル基; チアゾリルスルフィニル基、ピリジルスルフィニル基などのヘテロアリールスルフィニル基; ベンジルスルフィニル基、フェネチルスルフィニル基などのC7〜11アラルキルスルフィニル基; メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、t−ブチルスルホニル基などのC1〜6アルキルスルホニル基; アリルスルホニル基などのC2〜6アルケニルスルホニル基; プロパルギルスルホニル基などのC2〜6アルキニルスルホニル基; フェニルスルホニル基などのC6〜10アリールスルホニル基; チアゾリルスルホニル基、ピリジルスルホニル基などのヘテロアリールスルホニル基; ベンジルスルホニル基、フェネチルスルホニル基などのC7〜11アラルキルスルホニル基;
【0022】
ピロリル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、トリアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、テトラゾリル基などの5員ヘテロアリール基; ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダニジル基、トリアジニル基などの6員ヘテロアリール基; アジリジニル基、エポキシ基、ピロリジニル基、テトラヒドロフラニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、モルホリニル基などの飽和ヘテロシクリル基; トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基などのトリC1〜6アルキル置換シリル基; トリフェニルシリル基; などを挙げることができる。
【0023】
また、これらの「置換基」は、当該基の中のいずれかの水素原子がさらに別の「置換基」で置換されたものであってもよい。
【0024】
(R1
1は、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するアリール基または無置換の若しくは置換基を有するヘテロ環基を示す。nはR1の数を示し且つ0〜12のいずれかの整数である。
【0025】
1における「C1〜6アルキル基」は、直鎖であってもよいし、分岐鎖であってもよい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、i−プロピル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、i−ペンチル基、ネオペンチル基、2−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、i−ヘキシル基などを挙げることができる。
【0026】
1における「置換基を有するC1〜6アルキル基」としては、シクロプロピルメチル基、2−シクロプロピルエチル基、シクロペンチルメチル基、2−シクロヘキシルエチル基、2−シクロオクチルエチル基などのC3〜8シクロアルキルC1〜6アルキル基; フルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ジフルオロメチル基、ジクロロメチル基、ジブロモメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、2,2,2−トルフルオロエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、ペンタフルオロエチル基、4−フルオロブチル基、4−クロロブチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2,2,2−トリフルオロ−1−トリフルオロメチルエチル基、パーフルオロヘキシル基、パークロロヘキシル基、2,4,6−トリクロロヘキシル基などのC1〜6ハロアルキル基; ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基などのヒドロキシC1〜6アルキル基; メトキシメチル基、ジメトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシ−n−プロピル基、n−プロポキシメチル基、i−プロポキシエチル基、s−ブトキシメチル基、t−ブトキシエチル基などのC1〜6アルコキシC1〜6アルキル基; ホルミルオキシメチル基、アセトキシメチル基、2−アセトキシエチル基、プロピオニルオキシメチル基、プロピオニルオキシエチル基などのC1〜7アシルオキシC1〜6アルキル基; イミノメチル基、(1−イミノ)エチル基、(1−イミノ)プロピル基などのイミノ基で置換されたC1〜6アルキル基; ヒドロキシイミノメチル基、(1−ヒドロキシイミノ)エチル基、(1−ヒドロキシイミノ)−n−プロピル基、メトキシイミノメチル基、(1−メトキシイミノ)エチル基などのヒドロキシイミノ基で置換されたC1〜6アルキル基; ベンジル基、4−フルオロフェネチル基、ジフェニルメチル基などのC7〜11アラルキル基; (3−ピりジル)メチル基、(2−ピラジニル)エチル基、(2−ピリミジニル)メチル基などのC4〜11ヘテロアラルキル基などを挙げることができる。
【0027】
1における「アリール基」は、単環であってもよいし、多環であってもよい。多環アリール基は、少なくとも一つの環が芳香環であれば、残りの環が飽和脂環、不飽和脂環または芳香環のいずれであってもよい。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アズレニル基、インデニル基、インダニル基、テトラリニル基などを挙げることができる。
【0028】
1における「ヘテロ環基」は、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる1〜4個のヘテロ原子が環を構成する原子として含むものである。ヘテロ環基は、単環であってもよいし、多環であってもよい。
ヘテロ環基としては、5員ヘテロアリール基、6員ヘテロアリール基、縮合ヘテロアリール基、飽和ヘテロ環基、部分不飽和ヘテロ環基などを挙げることができる。
【0029】
5員ヘテロアリール基としては、 ピロール−1−イル基、ピロール−2−イル基、ピロール−3−イル基などのピロリル基; フラン−2−イル基、フラン−3−イル基などのフリル基; チオフェン−2−イル基、チオフェン−3−イル基などのチエニル基; イミダゾール−1−イル基、イミダゾール−2−イル基、イミダゾール−4−イル基、イミダゾール−5−イル基などのイミダゾリル基; ピラゾール−1−イル基、ピラゾール−3−イル基、ピラゾール−4−イル基、ピラゾール−5−イル基などのピラゾリル基;オキサゾール−2−イル基、オキサゾール−4−イル基、オキサゾール−5−イル基などのオキサゾリル基; イソオキサゾール−3−イル基、イソオキサゾール−4−イル基、イソオキサゾール−5−イル基などのイソオキサゾリル基; チアゾール−2−イル基、チアゾール−4−イル基、チアゾール−5−イル基などのチアゾリル基; イソチアゾール−3−イル基、イソチアゾール−4−イル基、イソチアゾール−5−イル基などのイソチアゾリル基; 1,2,3−トリアゾール−1−イル基、1,2,3−トリアゾール−4−イル基、1,2,3−トリアゾール−5−イル基、1,2,4−トリアゾール−1−イル基、1,2,4−トリアゾール−3−イル基、1,2,4−トリアゾール−5−イル基などのトリアゾリル基; 1,2,4−オキサジアゾール−3−イル基、1,2,4−オキサジアゾール−5−イル基、1,3,4−オキサジアゾール−2−イル基などのオキサジアゾリル基; 1,2,4−チアジアゾール−3−イル基、1,2,4−チアジアゾール−5−イル基、1,3,4−チアジアゾール−2−イル基などのチアジアゾリル基; テトラゾール−1−イル基、テトラゾール−2−イル基などのテトラゾリル基; などを挙げることができる。
【0030】
6員ヘテロアリール基としては、 ピリジン−2−イル基、ピリジン−3−イル基、ピリジン−4−イル基などのピリジル基; ピラジン−2−イル基、ピラジン−3−イル基などのピラジニル基; ピリミジン−2−イル基、ピリミジン−4−イル基、ピリミジン−5−イル基などのピリミジニル基; ピリダジン−3−イル基、ピリダジン−4−イル基などのピリダジニル基;トリアジニル基;などを挙げることができる。
【0031】
その他のヘテロ環基としては、 アジリジン−1−イル基、アジリジン−2−イル基、エポキシ基; ピロリジン−1−イル基、ピロリジン−2−イル基、ピロリジン−3−イル基、テトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロフラン−3−イル基; ピペリジン−1−イル基、ピペリジン−2−イル基、ピペリジン−3−イル基、ピペリジン−4−イル基、ピペラジン−1−イル基、ピペラジン−2−イル基、モルホリン−2−イル基、モルホリン−3−イル基、モルホリン−4−イル基; 1,3−ベンゾジオキソール−4−イル基、1,3−ベンゾジオキソール−5−イル基、1,4−ベンゾジオキサン−5−イル基、1,4−ベンゾジオキサン−6−イル基、3,4−ジヒドロ−2H−1,5−ベンゾジオキセピン−6−イル基、3,4−ジヒドロ−2H−1,5−ベンゾジオキセピン−7−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−4−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−6−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−7−イル基; などを挙げることができる。
【0032】
(R2
2は無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するアリール基、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルコキシ基または無置換の若しくは置換基を有するアリールオキシ基を示す。
【0033】
2における「無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基」、および「無置換の若しくは置換基を有するアリール基」は、R1におけるそれらと同じものを挙げることができる。
【0034】
2における「C1〜6アルコキシ基」としては、メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、i−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基などを挙げることができる。
2における「置換基を有するC1〜6アルコキシ基」としては、 フルオロメトキシ基、クロロメトキシ基、ブロモメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、ジクロロメトキシ基、ジブロモメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、トリクロロメトキシ基、トリブロモメトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、2,2,2−トリクロロエトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、4−フルオロブトキシ基、3,3,3−トリフルオロプロポキシ基、2,2,2−トリフルオロ−1−トリフルオロメチルエトキシ基、パーフルオロヘキシルオキシ基などのC1〜6ハロアルコキシ基; メトキシメトキシ基、1−メトキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基、エトキシメトキシ基、1−エトキシエトキシ基、2−エトキシエトキシ基、1−メトキシ−n−プロポキシ基、2−メトキシ−n−プロポキシ基、3−メトキシ−n−プロポキシ基などのC1〜6アルコキシC1〜6アルコキシ基; シクロプロピルメトキシ基、シクロブチルメトキシ基、シクロペンチルメトキシ基、シクロヘキシルメトキシ基、2−メチルシクロプロピルメトキシ基、2,3−ジメチルシクロプロピルメトキシ基、2−シクロプロピルエトキシ基などのC3〜8シクロアルキルC1〜6アルコキシ基; ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などのC7〜11アラルキルオキシ基; などを挙げることができる。
【0035】
2における「アリールオキシ基」としては、フェノキシ基、1−ナフトキシ基などを挙げることができる。
2における「置換基を有するアリールオキシ基」としては、4−フルオロフェニルオキシ基、4−クロロ−1−ナフトキシ基などのハロアリールオキシ基; 4−メチルフェノキシ基、2−イソプロピルフェノキシ基、3,5−ジメチルフェノキシ基などのC1〜6アルキル基で置換されたアリールオキシ基などを挙げることができる。
【0036】
〔イミノホスホラン化合物および3−アミノキヌクリジン化合物の製造方法〕
本発明のイミノホスホラン化合物の製造方法は、式(2)で表される化合物を極性溶媒中でアジド化して式(3)で表される化合物を得、それにホスフィン化合物:PR23(但し、R2は無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するアリール基、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルコキシ基または無置換の若しくは置換基を有するアリールオキシ基を示す。)を反応させ、次いで極性溶媒を除去することを含むものである。この製造方法によって、式(1)で表されるイミノホスホラン化合物を工業的に有利に得ることができる。
そして、本発明の3−アミノキヌクリジン化合物の製造方法は、式(1)で表されるイミノホスホラン化合物を加水分解させることを含むものである。この製造方法によって、式(4)で表される3−アミノキヌクリジン化合物を工業的に有利に得ることができる。
【0037】
(式(2)で表される化合物)
式(2)中のR1およびnは、式(1)中のそれらと同じ意味を示す。
式(2)中、R3はハロゲン原子またはスルホン酸エステル基を示す。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができる。
スルホン酸エステル基は、一般に−SO34で表される基である。R4は、アジド化反応を阻害しないものであれば、特に制限されない。例えば、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するアリール基、無置換の若しくは置換基を有するヘテロ環基などを挙げることができる。
【0038】
式(2)で表される化合物は、公知の方法によって製造することができる。例えば、3−キヌクリジノンをキラルなジホスフィンを有するロジウム、イリジウムまたはルテニウム錯体の存在下で水素化することによって3−キヌクリジノールを得、該3−キヌクリジノールをハロゲン化またはスルホン酸エステル化することによって得ることができる。
【0039】
式(2)で表される化合物のアジド化は、例えば、式(2)で表される化合物にアジ化物イオンをSN2反応させることによって行うことができる。このアジド化によって、式(3)で表されるアジド化合物を合成することができる。
式(3)中、R1およびnは式(2)中のそれらと同じ意味を示す。
アジ化物イオンの供給源として、アジ化ナトリウム、アジ化水素酸などを使用することができる。
【0040】
アジド化反応において使用される極性溶媒としては、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド などの極性非プロトン性溶媒を挙げることができる。これらのうち、N,N−ジメチルホルムアミドが好ましい。
【0041】
一般に、アジド化合物に水素化アルミニウムリチウムなどの還元剤を作用させることでアミン化合物を得ることができる。ところが、本発明におけるアジド化反応で使用した極性溶媒を、式(3)で表されるアジド化合物から分離除去することは非常に困難である。極性溶媒は、上記の還元反応を阻害するため、式(3)で表されるアジド化合物を還元して式(4)で表されるアミン化合物を得るという方法は、工業的に実施困難である。また、水素化アルミニウムリチウムは禁水条件下で扱わなければならず、操作が煩雑である。さらに、得られたアジド化合物の水素化分解には、パラジウムや白金などの高価な金属を含む触媒を用いることが多い。
【0042】
そこで、本発明では、式(3)で表されるアジド化合物にホスフィン化合物:PR23を反応させ、式(1)で表されるイミノホスホラン化合物を合成する。得られた式(1)で表される化合物の極性溶媒からの分離は、公知の抽出法などを用いることによって、容易に行うことができる。
【0043】
ホスフィン化合物:PR23中のR2は無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するアリール基、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルコキシ基または無置換の若しくは置換基を有するアリールオキシ基を示す。
【0044】
次に、本発明では、式(1)で表されるイミノホスホラン化合物を加水分解させ、式(4)で表される3−アミノキヌクリジン化合物を得る。加水分解は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基の存在下に行うことができる。
【0045】
反応終了後に、通常の精製操作を行うことにより、目的物を単離することができる。精製手段としては、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどを挙げることができる。目的物の構造は、1H−NMRスペクトル、IRスペクトル、マススペクトルの測定や、元素分析などにより、同定・確認することができる。
【実施例】
【0046】
次に、実施例を示して、本発明をより詳細に説明する。但し、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0047】
[実施例1] (3−キヌクリジルイミノ)トリフェニルホスホランの合成
《キヌクリジン−3−アジドの合成》
3−キヌクリジノール16.07g(0.126mol)をクロロホルム80mlに溶解させ、それにトリエチルアミン2mlを加えた。0℃に冷却して塩化メタンスルホニル15.15g(0.132mol)を滴下し、同温度で1時間撹拌した。これに3N水酸化ナトリウム水溶液45mlを加えて撹拌した。その後、有機層を抽出した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧濃縮によって溶媒を留去し、メシラート体を得た。
【0048】
得られたメシラート体にジメチルホルムアミド(DMF)60mlを加えて溶解させた。これにアジ化ナトリウム12.3g(0.189mol)を加え、90℃で18時間撹拌した。不溶物をろ過した。その後、減圧濃縮によって溶媒を留去した。水60mlおよび酢酸エチルで分液操作し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した。次いで、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧濃縮によって溶媒を溜去して、アジド体を得た。さらに、減圧蒸留(58℃/0.15mmHg)することによってキヌクリジン−3−アジド7.24g(収率38%)を得た。
【0049】
【化5】

【0050】
《(3−キヌクリジルイミノ)トリフェニルホスホランの合成》
得られたキヌクリジン−3−アジド0.76g(5mmol)をDMF2mlに溶解させた。トリフェニルホスフィン1.31g(5mmol)を加え、60℃で30分間撹拌した。反応液を水に加え、トルエンで分液抽出し、得られた有機層を水で洗浄した。次いで、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧濃縮によって溶媒を留去して、(3−キヌクリジルイミノ)トリフェニルホスホラン1.91g(収率99%)を得た。
【0051】
(3−キヌクリジルイミノ)トリフェニルホスホランのNMR分析の結果は以下のとおりであった。
1H-NMR (300MHz, CDCl3): δ(ppm) 7.62-7.69 (6H, m), 7.38-7.52 (9H, m), 3.24 (1H, m), 2.94-3.10 (2H, m), 2.50-2.76 (4H, m), 2.39 (1H, m), 1.54 (1H, m), 1.42 (1H, m), 1.22-1.37 (2H, m).
【0052】
【化6】

【0053】
[実施例2] (3−キヌクリジルイミノ)トリブトキシホスホランの合成
キヌクリジン−3−アジド0.30g(2mmol)をトルエン2mlに溶解させた。これを80℃に加熱し、亜リン酸トリn−ブチル0.50g(2mmol)を滴下した。その後、30分間撹拌した。減圧濃縮によって溶媒を留去し、(3−キヌクリジルイミノ)トリブトキシホスホラン0.72g(収率96%)を得た。
【0054】
(3−キヌクリジルイミノ)トリブトキシホスホランのNMR分析の結果は以下のとおりであった。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ(ppm) 3.93 (6H, q, J=6.7 Hz), 3.37 (1H, m), 3.15 (1H, m), 2.95 (1H, m), 2.62-2.84 (3H, m), 2.55 (1H, ddd, J=2.3, 5.0, 13.3 Hz), 2.11 (1H, m), 1.56-1.70 (8H, m), 1.50 (1H, m), 1.40 (6H, m), 1.26 (1H, m), 0.93 (9H, t, J=7.4 Hz).
【0055】
【化7】

【0056】
[実施例3] 3−アミノキヌクリジン2塩酸塩の合成
(3−キヌクリジルイミノ)トリフェニルホスホラン2.18g(5.64mmol)をトルエン4mlに分散させた。これに3N水酸化ナトリウム水溶液4mlを加え、80℃で1時間撹拌した。室温まで冷却後、3N塩酸を加えて反応液のpHを1以下にし、分液操作を行い、水層をトルエンで抽出した。得られた水層に50%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH12にした。その後、クロロホルムで抽出した。10%塩酸−メタノール溶液10mlを加えて、濃縮して、3−アミノキヌクリジン2塩酸塩1.03g(収率92%)を得た。
【0057】
【化8】

【0058】
[実施例4] (S)−3−アミノキヌクリジン2塩酸塩の合成
メタンスルホン酸(R)−3−キヌクリジルエステル2.83g(13.7mmol)をDMF9mlに溶解させた。これに、アジ化ナトリウム1.78g(27.4mmol)を加え、90℃で40時間撹拌した。反応液にトルエン9mlを加えて希釈した。その後、不溶物をろ過して除いた。得られた母液を50℃に加温し、これにトリフェニルホスフィン3.59g(13.7mmol)をゆっくり添加した。さらに50℃で1時間撹拌した。室温まで冷却後、反応液を水に加え、3N水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを11以上にした。その後、トルエンで抽出した。減圧濃縮することによって抽出液から溶媒を留去した。これに3N水酸化ナトリウム水溶液9mlを加えて、80℃で1時間撹拌した。室温まで冷却後、濃塩酸を加えてpHを1以下にした。その後、トルエンを加えて抽出した。水層に50%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを12以上にした。その後、クロロホルムで抽出し、得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。過剰量の10%塩酸−メタノール溶液を加え、濃縮した。得られた結晶をトルエンに分散させて、ろ過した。その後、イソプロパノールで洗浄して、(S)−3−アミノキヌクリジン2塩酸塩1.26g(収率46%)を得た。
【0059】
得られた(S)−3−アミノキヌクリジン2塩酸塩をベンゾイルアミドに誘導し、光学純度を高速液体クロマトグラフィー(移動相:ヘキサン/エタノール=90/10に0.2%のジエチルアミンを添加、カラム:Chiralcel OD−H、ダイセル化学工業(株)製)で測定したところ、光学純度は98.6%eeであった。
【0060】
[実施例5] 3−アミノキヌクリジンの合成
クロロホルム20mlに(R)−3−キヌクリジノール(>99%ee)3.82g(30mmol)およびトリエチルアミン0.50gを溶解させた。10℃に冷却し、メタンスルホニルクロリド3.90g(113mol%)をゆっくり滴下した。その後、30分間撹拌した。反応液に3N水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和し、次いでクロロホルムで抽出した。それを水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。反応液を約半分の量になるまで減圧濃縮した。これにトルエン20mlを加えた。次いで、減圧濃縮によって溶媒を留去し、メシラート体5.55gを得た。
得られたメシラート体をDMF13mlに溶解させ、アジ化ナトリウム2.11g(32.4mmol)を加え、90℃で22時間撹拌した。室温まで冷却した後、トルエン20mlを加え、不溶物をろ過した。
母液を50℃に加熱し、トリフェニルホスフィン7.45g(28.4mmol)を少量ずつ添加した。50℃で30分間撹拌した。室温まで冷却後、反応液を水に加え、3N水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH11にした。次いで、トルエンで抽出し、水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧濃縮して、イミノホスホラン体10.0gを得た。
得られたイミノホスホラン体をトルエン5mlに溶解させ、3N水酸化ナトリウム水溶液5mlを加え、80℃で1時間撹拌した。室温まで冷却後、濃塩酸3mlを加えて分液し、トルエン洗浄した。得られた水層に50%水酸化ナトリウム水溶液をpHが12以上になるまで加え、次いでクロロホルム10mlで5回抽出を繰り返した。
【0061】
得られたクロロホルム溶液に無水安息香酸6.11g(27mmol)と触媒量のトリエチルアミンを加え、室温で30分間撹拌した。3N塩酸10mlで抽出し、次いで3N塩酸5mlで2回抽出した。その後、50%水酸化ナトリウムをpHが12以上になるまで加え、クロロホルムで抽出した。得られた有機層を、硫酸マグネシウムで乾燥させ、次いで減圧濃縮して、(S)−N−(3−キヌクリジル)ベンズアミド2.46g(収率36%)を得た。
得られた(S)−N−(3−キヌクリジル)ベンズアミドの光学純度を高速液体クロマトグラフィー(移動相:ヘキサン/エタノール=90/10に0.2%のジエチルアミンを添加、カラム:Chiralcel OD−H、ダイセル化学工業(株)製)で測定したところ、光学純度は97.5%eeであった。
【0062】
【化9】

【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のイミノホスホラン化合物は、医薬品の合成中間体等として有用である3−アミノキヌクリジン化合物の製造中間体として有用である。本発明のイミノホスホラン化合物を経由する、本発明の製造方法は、目的物の溶媒からの単離が容易であるので、工業的に有利に3−アミノキヌクリジン化合物を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるイミノホスホラン化合物。



(式(1)中、R1は無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するアリール基または無置換の若しくは置換基を有するヘテロ環基を示す。nはR1の数を示し且つ0〜12のいずれかの整数である。R2は無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するアリール基、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルコキシ基または無置換の若しくは置換基を有するアリールオキシ基を示す。)
【請求項2】
式(2)で表される化合物を極性溶媒中でアジド化して式(3)で表される化合物を得、それにホスフィン化合物:PR23(但し、R2は無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するアリール基、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルコキシ基または無置換の若しくは置換基を有するアリールオキシ基を示す。)を反応させ、次いで極性溶媒を除去することを含む式(1)で表されるイミノホスホラン化合物の製造方法。



(式(1)中、R1は無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するアリール基または無置換の若しくは置換基を有するヘテロ環基を示す。nはR1の数を示し且つ0〜12のいずれかの整数である。R2は無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するアリール基、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルコキシ基または無置換の若しくは置換基を有するアリールオキシ基を示す。)



(式(2)中、R3はハロゲン原子またはスルホン酸エステル基を示し、R1およびnは式(1)中のそれらと同じ意味を示す。)



(式(3)中、R1およびnは式(1)中のそれらと同じ意味を示す。)
【請求項3】
式(1)で表されるイミノホスホラン化合物を加水分解させることを含む式(4)で表される3−アミノキヌクリジン化合物の製造方法。



(式(1)中、R1は無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するアリール基または無置換の若しくは置換基を有するヘテロ環基を示す。nはR1の数を示し且つ0〜12のいずれかの整数である。R2は無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するアリール基、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルコキシ基または無置換の若しくは置換基を有するアリールオキシ基を示す。)



(式(4)中、R1およびnは式(1)中のそれらと同じ意味を示す。)

【公開番号】特開2012−153624(P2012−153624A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12018(P2011−12018)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】