説明

インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法

【課題】間欠吐出安定性に優れているとともに、光学濃度が高く均一性に優れた画像を記録可能なインクを提供する。
【解決手段】自己分散顔料、及び塩を含有するインクジェット用のインクである。自己分散顔料は、ホスホン酸基を少なくとも含む官能基が粒子表面に結合し、かつ、官能基の導入量が0.50mmol/g以上であり、塩は、アルカリ金属イオンなどのカチオンと、NO3-、SO42-、及びC6573-などのアニオンとが結合して構成され、インク中のカチオン濃度が0.045mol/L以上0.100mol/L以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法に用いるインクに対しては、近年、記録した画像の光学濃度や均一性をより一層向上可能であることが要求されている。画像を記録する記録媒体のうち、普通紙には、インクの浸透性が異なる様々な種類のものが存在する。そして、インクの浸透性の違いは、記録される画像特性に影響を及ぼす。特に、インクの浸透性が高い記録媒体は、画像の光学濃度や均一性が低下する傾向にある。インクジェット記録方法の普及が著しい近年にあっては、このような浸透性が高い記録媒体を含め、記録媒体の種類によらずに、光学濃度が高く均一性に優れた画像を記録可能であることが要求されている。
【0003】
このような要求に対し、粒子表面にカルボン酸基などの官能基を結合させた自己分散顔料と塩を含有するインクによって、画像特性を向上させることに関する提案がある(特許文献1参照)。特許文献1では、顔料粒子の表面における官能基の密度を高めることで、画像特性を向上可能であるとしている。また、カルシウムとの反応性の指標であるカルシウム指数に基づき、カルシウムとの反応性が高い官能基を粒子表面に結合させた自己分散顔料を含有するインクによって、画像の光学濃度を向上させることに関する提案もある(特許文献2参照)。特許文献2には、粒子表面にホスホン酸基を結合させた自己分散顔料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−080763号公報
【特許文献2】特表2009−515007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、従来、自己分散顔料及び塩を含有するインクによって画像の光学濃度を高めることができるとされていた。しかしながら、本発明者らの検討によれば、画像の光学濃度の向上と、均一性の向上との両立については未だ不十分であることが判明した。例えば、インクに塩を多く含有させることで画像の光学濃度を高めることは可能ではある。しかしながら、塩を多く含有するインクは、水分などが蒸発すると顔料の分散状態が不安定となり、間欠吐出安定性が低下してしまうといった別の課題が生ずる。
【0006】
したがって、本発明の目的は、間欠吐出安定性に優れているとともに、光学濃度が高く均一性に優れた画像を記録可能なインク、このインクを用いたインクカートリッジ及びインクジェット記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明によれば、自己分散顔料、及び塩を含有するインクジェット用のインクであって、前記自己分散顔料は、ホスホン酸基を少なくとも含む官能基が粒子表面に結合し、かつ、前記官能基の導入量が0.50mmol/g以上であり、前記塩は、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、及び有機アンモニウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種のカチオンと、Cl-、Br-、I-、ClO-、ClO2-、ClO3-、ClO4-、NO2-、NO3-、H2PO4-、HCO3-、HCOO-、CH3COO-、COOH(COO-)、C65COO-、CH3SO3-、C65PO3-、SO42-、CO32-、(COO-2、C24(COO-2、C64(COO-2、HPO42-、PO43-、C6573-、C63(COO-3、及び(CH2COO-2NCH2CH2N(CH2COO-2からなる群より選択される少なくとも1種のアニオンとが結合して構成され、インク中のカチオン濃度が0.045mol/L以上0.100mol/L以下であることを特徴とするインクが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、間欠吐出安定性に優れているとともに、光学濃度が高く均一性に優れた画像を記録可能なインク、このインクを用いたインクカートリッジ及びインクジェット記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を挙げて本発明を詳細に説明する。なお、以下の記載で、インクジェット用のインクのことを、単に「インク」と省略して記載することがある。また、本発明において、各種の物性値は、特に断りのない限り25℃における値である。
【0010】
記録媒体に付与されたインクは、水分などの蒸発や、記録媒体へのインクの浸透などの影響により、インクの成分比率が変化する。そして、成分比率の変化に伴って、自己分散顔料はその分散状態が不安定化して凝集する。本発明者らは検討の結果、顔料粒子の表面に結合させる官能基の構造及び導入量と、塩とを特定の組み合わせにしたインクを用いると、特許文献1及び2などに記載された従来のインクを用いた場合と比較して、画像特性が顕著に向上することを見出した。具体的には、ホスホン酸を少なくとも含む官能基が粒子表面に結合し、かつ、前記官能基の導入量が0.50mmol/g以上である自己分散顔料と、塩とを組み合わせることで、画像の光学濃度と均一性の両方を向上可能であることを見出した。そのメカニズムについて以下に説明する。なお、以下、ホスホン酸を含む官能基が粒子表面に結合した自己分散顔料のことを「ホスホン酸型自己分散顔料」とも記す。また、カルボン酸基が粒子表面に結合した自己分散顔料のことを「カルボン酸型自己分散顔料」とも記す。
【0011】
ホスホン酸型自己分散顔料は、従来のカルボン酸型自己分散顔料に比べて、記録媒体に填料として含まれるカルシウムとの反応性が高い。カルシウムとの反応性が官能基の種類によって異なる点については、それぞれの官能基に対応する塩についての水への溶解度の差からも類推することができる。具体的には、酢酸カルシウムの水への溶解度が0.25mol/水100mLであるのに対し、リン酸カルシウムの水への溶解度は8.1×10-6mol/水100mLである。
【0012】
ただし、インクに塩が含まれていないと、インクの浸透性が高い記録媒体に付与した場合に、カルシウムとの反応による凝集よりも、浸透の影響が大きくなってしまう。このため、顔料が記録媒体の表面上に残らず、画像の光学濃度の向上は限定されることになる。一方、インクに塩を含有させて顔料の分散状態をある程度不安定化させやすくしておくことで、インクの付与後に顔料とカルシウムとを素早く反応させ、インクの浸透性が高い記録媒体においてもその表面上に顔料を多く残すことができる。これにより、画像の光学濃度を向上することが可能になる。また、インクに含まれるホスホン酸型自己分散顔料の官能基導入量が多いほど、記録される画像の均一性は向上する。このように画像の均一性が向上するのは、以下に示す二つの理由によるものと推測される。
(i)官能基導入量の多いホスホン酸型自己分散顔料は、溶媒和による分散安定化の効果が小さいので、電解質(塩)濃度の上昇による凝集が生じやすく、浸透の影響は少ない。
(ii)官能基導入量の多いホスホン酸型自己分散顔料は、一部のホスホン酸基がカルシウムと反応しても、反応していないホスホン酸基により分散状態が維持されるため、官能基導入量の少ないホスホン酸型自己分散顔料と比してカルシウムとの反応性が低い。したがって、記録媒体に偏在するカルシウムなどの填料と反応しにくいため、画像の均一性が向上する。
【0013】
官能基導入量が少ない自己分散顔料はその粒子表面が露出している部分が多い。この露出部は疎水性であるため、安定な分散状態が崩れ始めると一気に凝集が進行する傾向にある。このため、官能基導入量の少ない自己分散顔料の方が、官能基導入量の多い自己分散顔料に比して、凝集を促進させるカルシウムなどとの反応性が高いと考えられる。したがって、官能基導入量が少ない自己分散顔料は、偏在するカルシウムなどの填料と接触すると凝集が促進されるので、得られる画像は光学濃度が局所的に高い部分を有するものとなりやすい。また、インクの浸透性が高い記録媒体はインクの浸透速度が大きいので、カルシウムが少ない部分では顔料が凝集しきらないうちに、インクが記録媒体に浸透してしまう。このため、カルシウムが多く存在する部分と、少なく存在する部分とで、光学濃度の差が大きくなってしまい、結果として画像の均一性が低下するものと推測される。
【0014】
また、本発明者らは、ホスホン酸型自己分散顔料を用いたインクの間欠吐出安定性に及ぼす、自己分散顔料の官能基導入量とインク中の塩の含有量の影響について検討した。その結果、インクの間欠吐出安定性は、塩の含有量ではなく、官能基導入量によって変動するインク中のカチオン濃度に依存することが判明した。例えば、インク中のカチオン濃度が上昇すると、顔料の分散状態が不安定となって、インクの間欠吐出安定性が低下する傾向にある。以上を踏まえ、本発明者らは、インクの間欠吐出安定性、画像の光学濃度及び均一性をすべて満足しうるインク中のカチオン濃度のしきい値についてさらに検討した。その結果、画像特性(特に光学濃度)を向上するためのカチオン濃度の下限値は0.045mol/Lであり、インクの間欠吐出安定性を維持するためのカチオン濃度の上限値が0.100mol/Lであることを見出した。さらに、ホスホン酸型自己分散顔料を用いたインクの場合、インク中のカチオン濃度を一定範囲にすることが、間欠吐出安定性の向上に有効であることを見出した。また、塩のアニオンの価数が大きいほど、間欠吐出安定性の向上効果が大きいことが判明した。
【0015】
間欠吐出安定性が低下する原因としては、一部の顔料が吐出口付近で乾燥して凝集物を形成することが挙げられる。このため、吐出口付近で凝集している顔料を再び分散させること(顔料の再分散性の向上)が、インクの間欠吐出安定性を向上させるのに有効であると考えられる。
【0016】
そこで、本発明者らは、顔料を再分散しやすくさせることによって、インクの間欠吐出安定性を向上する手法について検討した。その結果、ホスホン酸型自己分散顔料と分子量が小さく解離しやすい塩との組み合わせが、インクの間欠吐出安定性を向上させるのに有効であることを見出した。そのメカニズムについて、本発明者らは以下のように推測している。ホスホン酸はキレート剤としても用いられているように、カチオンとの反応性が高い。このため、ホスホン酸型自己分散顔料の官能基に含まれるホスホン酸基はカチオンを強くひきつけている。したがって、ホスホン酸型自己分散顔料の周囲にはカチオンが集まっているので、カルボン酸型自己分散顔料などの他の顔料と比して、ホスホン酸型自己分散顔料の分散状態は不安定化しやすい。ここで、インクに解離しやすい塩を含有させると、吐出口付近で凝集した状態の顔料に、次いで吐出されるインクが接触した際に、インク中のカチオンを顔料粒子の周囲から引き離すことができる。これにより、凝集していたホスホン酸型自己分散顔料が再び分散し、間欠吐出安定性が向上すると考えられる。一方、カルボン酸は、カチオンとの反応性がホスホン酸のように高くない。このため、カルボン酸型自己分散顔料を用いたインクについては、塩を添加することによる間欠吐出安定性の向上効果はあまり高くない。
【0017】
<インク>
以下、本発明のインクを構成する各成分について詳細に説明する。
【0018】
(顔料)
顔料の種類としては、例えば、有機顔料や、カーボンブラックなどの無機顔料が挙げられ、インクジェット用のインクに使用可能なものをいずれも用いることができる。また、調色などの目的のために、さらに染料などを顔料と併用してもよい。本発明のインクは、顔料としてカーボンブラックを用いたブラックのインクとすることが特に好ましい。インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0019】
本発明のインクに用いる顔料は、ホスホン酸基を少なくとも含む官能基が顔料粒子の表面に結合している自己分散顔料である。このような自己分散顔料を用いることにより、顔料をインク中に分散させるための分散剤が不要となる、又は分散剤の添加量を少量とすることができる。
【0020】
インク中におけるホスホン酸基−PO(O〔M1〕)2は、その一部が解離した状態及び全てが解離した状態のいずれであってもよい。つまり、ホスホン酸基は、−PO32(酸型)、−PO3-1+(一塩基塩)、及び−PO32-(M1+2(二塩基塩)のいずれかの形態を取り得る。ここで、M1は、それぞれ独立に、アルカリ金属、アンモニウム、及び有機アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種である。本発明においては、官能基が2つのホスホン酸基を含むことが好ましい。モノホスホン酸型の自己分散顔料を用いてもよいが、より好ましくはビスホスホン酸型の自己分散顔料を用いることで、画像の均一性をより高いレベルで得ることができる。なお、トリスホスホン酸型の自己分散顔料を用いると、インクの保存安定性が十分に得られない場合がある。
【0021】
また、ホスホン酸基は、官能基の末端にあること、つまり、顔料粒子の表面とホスホン酸基との間に他の原子団が存在することが好ましい。他の原子団(−R−)としては、炭素原子数1乃至12の直鎖又は分岐のアルキレン基、フェニレン基やナフチレン基などのアリーレン基、アミド基、スルホニル基、アミノ基、カルボニル基、エステル基、エーテル基が挙げられる。また、これらの基を組み合わせた基などが挙げられる。さらには、他の原子団が、アルキレン基とアリーレン基の少なくとも一方と、水素結合性を有する基(アミド基、スルホニル基、アミノ基、カルボニル基、エステル基、エーテル基など)と、を含むことが特に好ましい。本発明においては、官能基に−C64−CONH−(ベンズアミド構造)が含まれることが特に好ましい。
【0022】
顔料粒子の表面に結合している官能基には、−CQ(PO3〔M122の構造が含まれていることがより好ましい。ここで、式中のQは、水素原子、R、OR、SR、及びNR2のいずれかであり、Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アシル基、アラルキル基、及びアリール基のいずれかである。Rが炭素原子を含む基である場合、その基に含まれる炭素原子の数は1乃至18であることが好ましい。具体的には、アルキル基としてはメチル基、エチル基など、アシル基としてはアセチル基、ベンゾイル基など、アラルキル基としてはベンジル基など、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基など、がそれぞれ挙げられる。また、M1はそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、及び有機アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種である。本発明においては、Qが水素原子である、−CH(PO3〔M122の構造を含む官能基が顔料粒子の表面に結合していることが特に好ましい。
【0023】
〔官能基導入量〕
顔料粒子の表面に結合している官能基の導入量(官能基導入量)は、0.50mmol/g以上であることが必要である。官能基導入量が0.50mmol/g未満であると、画像の均一性が得られない。また、官能基導入量は1.00mmol/g以下であることが好ましい。なお、官能基導入量の単位は、顔料固形分1g当たりの官能基のミリモル(mmol)数である。
【0024】
自己分散顔料の官能基導入量は、以下に示すようにしてリンを定量することで測定することができる。先ず、測定対象である顔料(固形分)の含有量が0.03%程度になるように、顔料分散液を純水で希釈してA液を調製する。また、5℃、80,000rpm、15時間の条件で顔料分散液を超遠心分離し、顔料を除去して採取した上澄み液を純水で80倍程度に希釈してB液を調製する。調製したA液及びB液について、ICP発光分光分析装置などを使用してそれぞれリンを定量する。A液とB液のリンの定量値の差分から「ホスホン酸基の量」を算出することができる。そして、自己分散顔料の官能基導入量は、「ホスホン酸基の量」/n(nは1つの官能基に含まれる「ホスホン酸基の数」を示す。モノなら「1」、ビスなら「2」、「トリス」なら3となる)により算出することができる。ここで、1つの官能基に含まれる「ホスホン酸基の数」が不明である場合には、NMRなどの分析方法によって官能基の構造を解析することで知ることができる。なお、以上の説明においては、顔料分散液を用いた測定方法について述べたが、インクを用いても同様に自己分散顔料の官能基導入量を測定することができる。勿論、自己分散顔料の官能基導入量の測定方法は、上記の方法に限られるものではない。
【0025】
(カチオンとアニオンとが結合して構成される塩)
本発明のインクには、カチオンとアニオンとが結合して構成される塩が含有される。カチオンは、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、及び有機アンモニウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種である。また、アニオンは、Cl-、Br-、I-、ClO-、ClO2-、ClO3-、ClO4-、NO2-、NO3-、H2PO4-、HCO3-、HCOO-、CH3COO-、COOH(COO-)、C65COO-、CH3SO3-、C65PO3-、SO42-、CO32-、(COO-2、C24(COO-2、C64(COO-2、HPO42-、PO43-、C6573-、C63(COO-3、及び(CH2COO-2NCH2CH2N(CH2COO-2からなる群より選択される少なくとも1種である。これらのカチオンやアニオンが結合して構成される塩はいずれも分子量が小さく、インク中で解離しやすいため、インクの間欠吐出安定性を向上させることができる。インク中における塩の形態は、その一部が解離した状態、又は全てが解離した状態のいずれの形態であってもよい。このような塩を使用することで、インクの信頼性と画像特性とを高いレベルで両立することができる。
【0026】
カチオンとアニオンとが結合して構成される塩としては、以下のものが挙げられる。例えば、(M2)Cl、(M2)Br、(M2)I、(M2)ClO、(M2)ClO2、(M2)ClO3、(M2)ClO4、(M2)NO2、(M2)NO3、(M2)H2PO4、(M2)HCO3、(M2)HCOO、CH3COO(M2)、COOH(COO(M2))、C65COO(M2)、CH3SO3(M2)、C65PO3(M2)などの1価のアニオンの塩;(M22SO4、(M22CO3、(COO(M2))2、C24(COO(M2))2、C64(COO(M2))2、(M22HPO4などの2価のアニオンの塩;(M23PO4、C657(M23、C63(COO(M2))3、C657(M23などの3価のアニオンの塩;(CH2COO-2NCH2CH2N(CH2COO-2などの4価のアニオンの塩が挙げられる。なお、上記M2は、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、及び有機アンモニウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種である。アルカリ金属イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、及びカリウムイオンなどが挙げられる。
【0027】
本発明においては、塩を構成するアニオンは2価以上であることが好ましく、3価以上であることがさらに好ましい。塩を構成するアニオンの価数が2以上であると、インクの間欠吐出安定性がさらに向上する。一方、塩を構成するアニオンの価数は4以下である。本発明においては、3価のアニオンの塩を用いることが特に好ましい。
【0028】
インクには、本発明の効果が十分得られる範囲の塩が含有されていればよい。具体的には、インク中の塩の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.005質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、0.010質量%以上5.000質量%以下であることがさらに好ましい。塩の含有量が10.0質量%を超えると、本発明の効果が十分に得られない場合があるとともに、インクの保存安定性が十分に得られない場合がある。一方、0.005質量%未満であると、本発明の効果が十分に得られない場合がある。
【0029】
本発明においては、官能基に含まれるホスホン酸基のカウンターイオン及び塩のカチオンの少なくとも一方が、リチウムイオン及びナトリウムイオンの少なくとも一方であることが好ましい。記録媒体において顔料が凝集する際のトリガーのひとつとしては、顔料の周囲に存在していた水が失われることが挙げられる。水和力の高いカチオンであるリチウムイオンやナトリウムイオンがインク中に存在することで、インク中の水分などが蒸発した際に顔料の周囲から水がより失われやすくなる。このため、カウンターイオンやカチオンが、リチウムイオンやナトリウムイオンである場合、顔料の凝集がより素早く生じ、画像の均一性をさらに高めることができる。
【0030】
(インク中のカチオン濃度)
本発明においては、インク中のカチオン濃度が0.045mol/L以上0.100mol/L以下であることを要す。好ましくは0.045mol/L以上0.060mol/L以下である。インク中のカチオン濃度が0.045mol/L未満であると、画像の光学濃度が低下する。また、インク中のカチオン濃度が0.100mol/Lを超えると、インクの間欠吐出安定性が低下する。インク中のカチオン濃度は、ホスホン酸型自己分散顔料のカウンターイオンの種類や量、また、塩の含有量などによって調整することができる。
【0031】
(水性媒体)
本発明のインクには、水と水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有させることができる。水としては脱イオン水を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。また、インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。水溶性有機溶剤としては、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類などのインクジェット用のインクに使用可能なものをいずれも用いることができる。これらの水溶性有機溶剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
(その他の添加剤)
本発明のインクには、上記成分の他に、尿素やその誘導体、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの常温で固体の水溶性有機化合物を含有させてもよい。インク中の常温で固体の水溶性有機化合物の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。また、必要に応じて、界面活性剤、樹脂、pH調整剤、消泡剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、キレート剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。
【0033】
本発明のインクには、例えば、アセチレングリコール系、フッ素系、シリコーン系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系などの界面活性剤を含有させることが好ましい。インク中の界面活性剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.05質量%以上2.0質量%以下であることが好ましい。
【0034】
<インクカートリッジ>
本発明のインクカートリッジは、インクと、このインクを収容するインク収容部とを備える。そして、インク収容部に収容されているインクが、上記で説明した本発明のインクである。インクカートリッジの構造としては、インク収容部が、負圧によりインクを含浸した状態で保持する負圧発生部材を収容する負圧発生部材収容室と、負圧発生部材に含浸されない状態でインクを収容するインク収容室とで構成されるものが挙げられる。または、このようなインク収容室を持たず、インクの全量を負圧発生部材に含浸させた状態で保持する構成や、負圧発生部材を持たず、インクの全量を負圧発生部材に含浸されない状態で収容する構成のインク収容部としてもよい。さらには、インク収容部と記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジとしてもよい。
【0035】
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、上記で説明した本発明のインクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出させて記録媒体に画像を記録する方法である。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられ、本発明においては、熱エネルギーを利用するインクジェット記録方法を採用することが特に好ましい。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。
【0036】
前述のメカニズムを考慮すると、カルシウムを含有する記録媒体に画像を記録する場合に、本発明のインクを用いることがより好ましい。カルシウムを含有する記録媒体としては、光沢紙や普通紙などを挙げることができる。なかでも普通紙を記録媒体として用いることが特に好ましい。勿論、本発明のインクジェット記録方法において使用することができる記録媒体はこれらに限られるものではない。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記実施例により限定されるものではない。なお、以下の記載で「部」及び「%」とあるものは、特に断らない限り質量基準である。
【0038】
<顔料分散液の調製>
(顔料の官能基導入量の測定方法)
先ず、顔料の官能基導入量を測定する方法を説明する。測定対象であるホスホン酸型自己分散顔料の含有量が0.03%程度になるように、顔料分散液を純水で希釈してA液を調製した。また、5℃、80,000rpm、15時間の条件で顔料分散液を超遠心分離し、ホスホン酸型自己分散顔料を除去して採取した上澄み液を純水で80倍程度に希釈してB液を調製した。上記のようにして得た測定用試料のA液及びB液について、ICP発光分光分析装置(SPS5100;SIIナノテクノロジー製)を用いてリンの定量を行った。そして、得られたA液及びB液におけるリン量の差分からホスホン酸基の量を求め、1つの官能基に含まれるホスホン酸基の数で割ることで、顔料への官能基導入量を算出した。
【0039】
(顔料分散液A)
カーボンブラック20g(固形分)、((4−アミノベンゾイルアミノ)−メタン−1,1−ジイル)ビスホスホン酸一ナトリウム塩(処理剤)18mmol、硝酸20mmol、及び純水200mLを混合した。カーボンブラックとしては、商品名「ブラックパールズ880」(キャボット製)を用いた。また、混合は、室温、6,000rpmの条件で、シルヴァーソン混合機を用いて行った。30分混合して得られた混合物に、少量の水に溶解させた20mmolの亜硝酸ナトリウムをゆっくり添加した。亜硝酸ナトリウムを添加したことで混合物の温度は60℃に達した。1時間反応させた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加して混合物のpHを10に調整した。30分後に純水20mLを添加し、次いで、スペクトラムメンブランを用いてダイアフィルトレーションを行った。これにより、粒子表面に−C64−CONH−CH−(PO(OH)(ONa))(PO(OH)2)基が結合している自己分散顔料が水中に分散された顔料分散液Aを得た。得られた顔料分散液Aの顔料の含有量は10.0%であった。また、顔料の官能基導入量は0.50mmol/gであった。
【0040】
(顔料分散液B)
顔料分散液Aをイオン交換法で処理し、ナトリウムイオンをリチウムイオンに置換した。これにより、粒子表面に−C64−CONH−CH−(PO(OH)(OLi))(PO(OH)2)基が結合している自己分散顔料が水中に分散された顔料分散液Bを得た。得られた顔料分散液Bの顔料の含有量は10.0%であった。また、顔料の官能基導入量は0.50mmol/gであった。
【0041】
(顔料分散液C)
顔料分散液Aをイオン交換法で処理し、ナトリウムイオンをアンモニウムイオンに置換した。これにより、粒子表面に−C64−CONH−CH−(PO(OH)(ONH4))(PO(OH)2)基が結合している自己分散顔料が水中に分散された顔料分散液Cを得た。得られた顔料分散液Cの顔料の含有量は10.0%であった。また、顔料の官能基導入量は0.50mmol/gであった。
【0042】
(顔料分散液D)
顔料分散液Aをイオン交換法で処理し、ナトリウムイオンをカリウムイオンに置換した。これにより、粒子表面に−C64−CONH−CH−(PO(OH)(OK))(PO(OH)2)基が結合している自己分散顔料が水中に分散された顔料分散液Dを得た。得られた顔料分散液Dの顔料の含有量は10.0%であった。また、顔料の官能基導入量は0.50mmol/gであった。
【0043】
(顔料分散液E)
処理剤の量を18mmolから30mmolに代えたこと以外は、前述の顔料分散液Aの場合と同様の手順で顔料分散液Eを得た。得られた顔料分散液Eは、粒子表面に−C64−CONH−CH−(PO(OH)(ONa))(PO(OH)2)基が結合している自己分散顔料が水中に分散されたものであった。得られた顔料分散液Eの顔料の含有量は10.0%であった。また、顔料の官能基導入量は0.80mmol/gであった。
【0044】
(顔料分散液F)
500mLのビーカーに、アレンドロン酸ナトリウム34g(104mmol)、及び純水150mLを入れた。アレンドロン酸ナトリウムとしては、(4−アミノ−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジイル)ビスホスホン酸の一ナトリウム塩(Zentiva製)を用いた。濃水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを11に調整し、アレンドロン酸ナトリウムを溶解させた。次いで、テトラヒドロフラン100mLに溶解させたニトロフェニルスルホニルクロライド25g(110mmol)を滴下した。なお、ニトロフェニルスルホニルクロライドを滴下する際には、水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pHを10〜11に保った。室温で2時間撹拌した後、真空中でテトラヒドロフランを蒸発させ、次いでpHを4になるように調整して固体を析出させた。4℃にて一晩冷却した後、析出した固体をろ過し、純水で洗浄及び乾燥することで、(4−(4−アミノベンゼンスルホニルアミノ)−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジイル)ビスホスホン酸ナトリウムを得た。
【0045】
処理剤として、得られた(4−(4−アミノベンゼンスルホニルアミノ)−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジイル)ビスホスホン酸ナトリウム18mmolを用いたこと以外は、前述の顔料分散液Aの場合と同様の手順で顔料分散液Fを得た。得られた顔料分散液Fは、粒子表面に−C64−SO2−NH−C46(OH)(PO(OH)(ONa))(PO(OH)2)基が結合している自己分散顔料が水中に分散されたものであった。得られた顔料分散液Fの顔料の含有量は10.0%であった。また、顔料の官能基導入量は0.53mmol/gであった。
【0046】
(顔料分散液G)
処理剤として、4−アミノベンジルホスホン酸(シグマアルドリッチ製)11mmolを用いたこと以外は、前述の顔料分散液Aの場合と同様の手順で顔料分散液Gを得た。得られた顔料分散液Gは、粒子表面に−C64−CH2−(PO(ONH42)基が結合している自己分散顔料が水中に分散されたものであった。得られた顔料分散液Gの顔料の含有量は10.0%であった。また、顔料の官能基導入量は0.50mmol/gであった。
【0047】
(顔料分散液H)
処理剤の量を18mmolから17mmolに代えたこと以外は、前述の顔料分散液Aの場合と同様の手順で顔料分散液Hを得た。得られた顔料分散液Hは、粒子表面に−C64−CONH−CH−(PO(OH)(ONa))(PO(OH)2)基が結合している自己分散顔料が水中に分散されたものであった。得られた顔料分散液Hの顔料の含有量は10.0%であった。また、顔料の官能基導入量は0.47mmol/gであった。
【0048】
(顔料分散液I)
顔料分散液Hをイオン交換法で処理し、ナトリウムイオンをリチウムイオンに置換した。これにより、粒子表面に−C64−CONH−CH−(PO(OH)(OLi))(PO(OH)2)基が結合している自己分散顔料が水中に分散された顔料分散液Iを得た。得られた顔料分散液Iの顔料の含有量は10.0%であった。また、顔料の官能基導入量は0.47mmol/gであった。
【0049】
(顔料分散液J)
水5.5gに濃塩酸5gを溶かして得た塩酸に、5℃に冷却した状態で4−アミノ−1,2−ベンゼンジカルボン酸(処理剤、東京化成工業製)2.5gを添加して溶液を得た。溶液の入った容器をアイスバスに入れ、溶液を撹拌して10℃以下に保持した。この溶液に、5℃の水9gに亜硝酸カリウム1.8gを溶かして得た亜硝酸カリウム水溶液を添加した。さらに15分間撹拌後、カーボンブラック6g(固形分)を撹拌下で添加した。カーボンブラックとしては、商品名「ブラックパールズ880」(キャボット製)を用いた。さらに15分間撹拌して得られたスラリーを、スペクトラムメンブランを用いてダイアフィルトレーションを行って粒子を得た。得られた粒子を十分に水洗した後、110℃のオーブンで乾燥させた。さらに、イオン交換法で処理してカリウムイオンをアンモニウムイオンに置換した後、純水を加えて顔料分散液Jを得た。得られた顔料分散液Jは、粒子表面に−C63−(COONH42基が結合している自己分散顔料が水中に分散されたものであった。また、顔料の官能基導入量は0.51mmol/gであった。なお、顔料の官能基導入量は、イオン交換法による処理を行う前の分散液中のカリウムイオン濃度を、ICP発光分光分析装置(商品名「SPS5100」、SIIナノテクノロジー製)を使用して測定し、得られたカリウムイオン濃度から換算して求めた。
【0050】
<インク(実施例1〜16、比較例1〜6、参考例1)の調製>
表1−1〜1−3の上段に示す各成分(単位:%)を混合し、十分に撹拌した後、ポアサイズが2.5μmであるポリプロピレンフィルター(ポール製)にて加圧ろ過を行って、各インクを調製した。なお、表1−1〜1−3中の「BL−9EX」は、日光ケミカルズ製のポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名「NIKKOL BL−9EX」)である。このポリオキシエチレンラウリルエーテルは、グリフィン法により求められるHLB値が13.6、エチレンオキサイド基の付加モル数が9の界面活性剤である。調製した各インクは、寿命時間10m秒における動的表面張力が同等になるように成分が調整されている。インクの動的表面張力は、最大泡圧法を利用した動的表面張力計(商品名「Bubble Pressure Tensiometer BP2 MK2」、Kruss製)を使用し、25℃で測定した。
【0051】
表1−1〜1−3の下段には、調製した各インクのカチオン濃度を示す。インクのカチオン濃度は、調製した各インクの顔料(固形分)の含有量が吸光度換算で0.03%となるように純水を用いて希釈した液体を測定用試料とし、ICP発光分光分析装置(商品名「SPS5100」、SIIナノテクノロジー製)を使用して測定した。なお、NH4+濃度はICP発光分光分析装置では測定できない。このため、NH4+濃度については、上記と同様の液体を測定用試料とし、アンモニウム電極を接続したイオン/pH計(サーモ・エレクトロン製)を使用して測定した。
【0052】

【0053】

【0054】

【0055】
<評価>
上記で得られた各インクを用いて、以下の各項目の評価を行った。評価結果を表2に示す。画像の光学濃度及び均一性の評価に使用したインクジェット記録装置(商品名「PIXUS MP480」、キヤノン製)の解像度は600dpi×600dpiである。また、このインクジェット記録装置は、1/600インチ×1/600インチの単位領域に、1滴当たりの質量が25ng±10%であるインク滴を1滴付与して記録する画像の記録デューティを100%であると定義するものである。
【0056】
(光学濃度)
上記で得られた各インクを充填したインクカートリッジを、上記のインクジェット記録装置にセットした。そして、記録媒体(普通紙、商品名「CanonGF−500」、キヤノン製)に、記録デューティが100%であるベタ画像(2cm×2cm/1ライン)を記録した。記録した1日後に、反射濃度計(商品名「Macbeth RD−918」、マクベス製)を使用してベタ画像の反射濃度を測定して光学濃度を評価した。光学濃度の評価基準は以下に示す通りである。本発明においては、下記の評価基準で「A」を許容できるレベル、「B」を許容できないレベルとした。
A:光学濃度が1.64以上であった。
B:光学濃度が1.64未満であった。
【0057】
(均一性)
上記で得られた各インクを充填したインクカートリッジを、上記のインクジェット記録装置にセットした。そして、記録媒体(普通紙、商品名「Xerox 4200 Premium Multipurpose White Paper」、ゼロックス製)に、記録デューティが100%であるベタ画像(2cm×2cm/1ライン)を記録した。記録されたベタ画像を目視で観察して均一性を評価した。均一性の評価基準は以下に示す通りである。本発明においては、下記の評価基準で「A」及び「B」を許容できるレベル、「C」を許容できないレベルとした。
A:ベタ画像に白色部がほとんどなかった。
B:ベタ画像に白色部が若干あった。
C:ベタ画像に白色部があった。
【0058】
(間欠吐出安定性)
上記で得られた各インクを充填したインクカートリッジを、熱エネルギーによりインクを吐出する記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置(商品名「PIXUS 950i」、キヤノン製)にセットした。そして、A4サイズの記録媒体(商品名「HR−101」、キヤノン製)に、記録ヘッドの主走査方向に直交する方向に600dpiの密度で1列に配列された128個の吐出口から以下のようにインク滴を吐出させて画像を記録した。先ず、記録媒体の長手方向(給紙方向=副走査方向)に直交する方向に、それぞれの吐出口から1,000滴のインク滴を吐出させて、横長の長方形のベタ画像を記録した。この長方形のベタ画像を記録したインク液滴の吐出は、記録ヘッド内部のインクを排出するための予備吐出に相当する。長方形のベタ画像を記録した直後に、128個の吐出口からそれぞれ1滴のインクを吐出させ、長方形の短辺と平行な縦線を基準線として記録した。次に、記録媒体を副走査方向に5mm搬送した後、10秒間吐出を休止した。その後、128個の吐出口からそれぞれ1滴のインクを再度吐出させ、基準線と平行な縦線を評価線として記録した。以上の手順により、予備吐出により記録ヘッドの内部インクを蒸発などが生じていない状態とした後に記録された基準線の状態と、一定の吐出休止期間(10秒間)経過後に記録された評価線の状態を比較する。そして、基準線の状態と評価線の状態の比較から、間欠的に吐出が行われる際のインクの吐出状態を評価することができる。間欠吐出安定性の評価基準は以下に示す通りである。本発明においては、下記の評価基準で「AA」、「A」及び「B」を許容できるレベル、「C」を許容できないレベルとした。
AA:基準線と評価線に乱れはなく、画素もほとんど変形していなかった。
A:基準線と評価線に乱れはなかったが、目立たない程度の画素の変形はあった。
B:評価線がわずかに乱れ、目立たない程度の画素の変形があった。
C:評価線が乱れ、画素の変形もあった。
【0059】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己分散顔料、及び塩を含有するインクジェット用のインクであって、
前記自己分散顔料は、ホスホン酸基を少なくとも含む官能基が粒子表面に結合し、かつ、前記官能基の導入量が0.50mmol/g以上であり、
前記塩は、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、及び有機アンモニウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種のカチオンと、Cl-、Br-、I-、ClO-、ClO2-、ClO3-、ClO4-、NO2-、NO3-、H2PO4-、HCO3-、HCOO-、CH3COO-、COOH(COO-)、C65COO-、CH3SO3-、C65PO3-、SO42-、CO32-、(COO-2、C24(COO-2、C64(COO-2、HPO42-、PO43-、C6573-、C63(COO-3、及び(CH2COO-2NCH2CH2N(CH2COO-2からなる群より選択される少なくとも1種のアニオンとが結合して構成され、
インク中のカチオン濃度が0.045mol/L以上0.100mol/L以下であることを特徴とするインク。
【請求項2】
前記官能基が、2つのホスホン酸基を含む請求項1に記載のインク。
【請求項3】
前記塩のアニオンが2価以上である請求項1又は2に記載のインク。
【請求項4】
前記塩のアニオンが3価である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインク。
【請求項5】
前記官能基に含まれるホスホン酸基のカウンターイオン及び前記塩のカチオンの少なくとも一方が、リチウムイオン及びナトリウムイオンの少なくとも一方である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインク。
【請求項6】
インクと、前記インクを収容するインク収容部とを備えたインクカートリッジであって、
前記インクが、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクであることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項7】
インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出させて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記インクが、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクであることを特徴とするインクジェット記録方法。

【公開番号】特開2013−103954(P2013−103954A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246745(P2011−246745)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】