説明

インク、インクセット、画像記録装置および画像形成方法

【課題】分散性および定着性に優れ、インクジェット用インク等に好適に使用できる水性顔料インク、このインクを使用したインクセット、画像記録装置および画像形成方法を提供する。
【解決手段】少なくとも顔料、水、水溶性有機溶剤及び/または水溶性有機化合物並びにボロン酸化合物を含有するインクである。ボロン酸化合物は親水性基としてボロン酸基を有する分散剤であり、これを含むインクは記録媒体上に強く付着する。また、付着したインクを加熱乾燥すると、顔料表面に付着しているボロン酸が他の顔料表面のボロン酸と縮合し、ボロキサン結合が形成され優れた定着性が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散性および定着性に優れるインク好ましくは水性顔料インクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピューターやインターネットの普及に伴って、オフィスや家庭における印刷手段としてインクジェットプリンターが広く普及した。今後は、インクジェットの特徴を生かした軽印刷分野への応用が展開していくと考えられている。
【0003】
ところで、インクジェット用インクでは、黒色インクにカーボンブラック顔料が使用されているが、カラーインクにおいては水溶性染料が中心的であり、耐候性(耐光性、耐オゾン性、耐水性)の改良が求められている。特に、印刷分野への応用を考えた場合、耐候性の改善は特に重要である。顔料は、その高い結晶性に起因して本質的に堅牢性が高く、耐光性、耐水性は染料に比べて格段に優れている。しかしながら、凝集沈降などの保存安定性や、光散乱や副吸収による色再現性の問題、さらに粒子が記録媒体表面に留まるために定着性が悪いなど、課題が残されている。
このような現状において本発明の課題は、インク好ましくは水性顔料インクの定着性を改良させることである。
【0004】
水性顔料インクの定着性を改良すべく、様々な方法が考案されている。例えば、特許文献1には記録媒体の記録層にカチオン性化合物を含有させることで、アニオン性色素を定着させる方法が記載されているが、顔料インクでは記録媒体の表面に顔料が残るために定着性改良の効果は十分ではなく、また専用の記録媒体を用いなければならないといった問題があった。
また、特許文献2〜4には、逆極性のポリマーやカチオン性の化合物を含有する無色透明な記録向上液と、アニオン性の着色剤を含有するインクとを記録媒体上で合一させる方法が記載されている。しかし、この方法では透明インクを吐出させるためのノズルを必要であり、さらに透明インクと着色インクを重ねるために水分量が多くなって記録媒体のカールやコックリング等が発生しやすい問題があった。
特許文献5〜8には、インクに水溶性ポリマーまたはアルカリ可溶性ポリマーを添加する方法が記載されているが、この場合インクの粘度が高くなり吐出が難しくなる問題や、ヘッド内で目詰まりが発生し易い問題があった。
特許文献9〜13には、インクにラテックスを添加する方法が記載されている。ラテックスの添加は定着性の改良に大きな効果があるが、保存安定性の低下や、ノズル部等の目詰まりによる吐出不良が発生し易い問題があった。
特許文献14〜16には、UV硬化または電子線硬化による方法が記載されている。しかし、この方法では活性エネルギー線源が必要になるなどシステムが複雑になる上、インク中に添加したモノマーの安定性などに問題があった。
【特許文献1】特公昭61−59239号公報
【特許文献2】特許第3217486号公報
【特許文献3】特開平8−20159号公報
【特許文献4】特許第3461202号公報
【特許文献5】特公平8−19361号公報
【特許文献6】特開平5−263029号公報
【特許文献7】特許第3549128号公報
【特許文献8】特開2004−114433号公報
【特許文献9】特公昭62−1426号公報
【特許文献10】特許第2867491号公報
【特許文献11】特開平4−18462号公報
【特許文献12】特許第3367151号公報
【特許文献13】特開2003−96342号公報
【特許文献14】特許第3040668号公報
【特許文献15】特開平8−218016号公報
【特許文献16】特開2002−275404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、水性顔料インクの定着性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ボロン酸化合物を分散剤として用いた水性顔料インクにより達成された。
(1) 少なくとも顔料、水、水溶性有機溶剤及び/または水溶性有機化合物並びにボロン酸化合物を含有することを特徴とするインク。
(2) 該ボロン酸化合物が、一般式(I)で表される構造を有することを特徴とする(1)に記載のインク。
【0007】
【化1】

【0008】
式中、Rは置換基を表し、mおよびnはそれぞれ独立に1〜5の整数を表す。ただし、nが2以上の場合、二つ以上の置換基Rは互いに異なってもよい。
(3) ボロン酸化合物の分子量が200〜1000であることを特徴とする(1)または(2)に記載のインク。
(4) 界面活性剤を添加して表面張力を20〜50mN/mとしたことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のインク。
(5) pHが5〜11の範囲内であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のインク。
(6) 25℃における粘度が1〜20mPa/sであることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のインク。
(7) 動的光散乱法で測定した顔料粒子の体積平均粒径が10〜150nmであることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のインク。
(8) 顔料粒子の長軸と短軸との比が3より小さいことを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載のインク。
(9) 顔料を5〜25質量%含有することを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載のインク。
(10) 水性であることを特徴とする、(1)〜(9)のいずれかに記載のインク。
(11) インクジェット用であることを特徴とする、(1)〜(10)のいずれかに記載のインク。
(12) (1)〜(11)に記載のインクを含むことを特徴とするインクセット。
(13) (1)〜(11)に記載のインクまたは(12)に記載のインクセットを含むことを特徴とする、画像記録装置。
(14) (1)〜(11)のいずれかに記載のインクまたは(12)に記載のインクセットを、ピエゾ方式またはバブルジェット方式により微小な液滴として飛翔させ、記録媒体上に付着させることを特徴とする画像形成方法。
(15) (1)〜(9)のいずれかに記載のインクを記録媒体上に付着させたのち、熱エネルギーを与えて加熱乾燥させることを特徴とする(13)に記載の画像形成方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の分散剤は親水性基としてボロン酸基を有するので、顔料記録液が記録媒体上に付着した際に、記録媒体素材であるセルロースまたはシリカに含まれる水酸基またはシラノールと該ボロン酸基とが水素結合または環状エステルを形成して、強い付着性が得られたと考えている。また、付着した顔料記録液を加熱乾燥すると、異なる顔料粒子間において、それぞれの表面に吸着しているボロン酸分散剤同士が縮合してボロキサン結合が形成したことで、優れた定着性が得られたものと考えている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、少なくとも顔料、水、水溶性有機溶剤および/または水溶性有機化合物並びにボロン酸化合物とを含有することを特徴とする水性顔料インクにより達成されるが、ボロン酸化合物としては水中での安定性を確保するために一般式(I)に示すようなアリールボロン酸類が好ましい。
【0011】
【化2】

【0012】
一般式(I)において、Rは置換基を表し、mおよびnはそれぞれ独立に1〜5の整数を表す。
上述における置換基とは、例えばアルキル基〔直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらはアルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、s−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、n−ラウリル)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数5から30の置換もしくは無置換のシクロアルキル基、例えばシクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)を含む〕、アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−ドデシルフェニル、ナフチル、p−ヘキサデシロキシフェニル)、ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5員もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル、ピリジル)、ヒドロキシル基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、4−n−ドデシロキシフェノキシ、1−ナフトキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾールー5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、または炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えばアセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えばN,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、アミノ基(好ましくはアミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、または炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールアミノ基、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、または炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えばアセトアミド、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンズアミド)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数1から30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えばカルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えばメトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えばフェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えばスルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、または炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えばメチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えばフェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えばN−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、アルキルもしくはアリールスルフィニル基(好ましくは炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、または炭素数6から30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えばメチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アルキルもしくはアリールスルホニル基(好ましくは炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、または炭素数6から30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えばメチルスルホニル、エチルスルホニル、t−ブチルスルホニル、s−ブチルスルホニル、フェニルスルホニル、ピリジルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、または炭素数4から30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えばアセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えばフェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えばカルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、またはイミド基(好ましくはN−スクシンイミド、N−フタルイミド)が挙げられる。
【0013】
一般式(I)において好ましい置換基Rは、アルキル基、アルコキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、カルバモイル基、またはスルファモイル基であり、更に好ましくはアルキル基であり、炭素数8以上のアルキル基が最も好ましい。mおよびnはそれぞれ独立に1〜5の整数を表すが、好ましくは夫々1または2であり、更に好ましくは1である。
ボロン酸化合物の分子量が200〜1000であることが好ましく、200〜800であることがより好ましい。
また、ボロン酸化合物は、顔料に対して、0.1〜50質量%含まれることが好ましく、1〜20質量%含まれることが特に好ましく、5〜15質量%含まれることが最も好ましい。
【0014】
化合物例を以下に示す。
【0015】
【化3】

【0016】
上記の分散剤以外の分散剤を上記分散剤の効果を妨げない範囲で、併用することができる。
併用できる分散剤としては例えば、特開平9−31360等の公報に記載の分散剤を 好ましくは上記分散剤の1/10〜1/2質量程度用いることができる。
【0017】
本発明のインクに用いられる顔料としては、水、有機溶剤に実質的に不溶である有色物質(無機顔料では白色も含む)が挙げられ、好ましくはカーボンブラック、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、インジゴ系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、キノフタロン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、金属錯体顔料等が挙げられる。
【0018】
アゾ系顔料としては、C.I.ピグメントレッド(PR)−1、PR−2、PR−3、PR−5、PR−21、PR−38、PR−41、PR−112、PR−114、PR−144、PR−146、PR−150、PR−166、PR−170、PR−185、PR−187、PR−214、PR−242、C.I.ピグメントオレンジ(PO)−5、PO−13、PO−16、PO−34、PO−36、PO−38、C.I.ピグメントブラウン(PBr)−25、C.I.ピグメントイエロー(PY)−1、PY−3、PY−74、PY−97、PY−167、PY−151、PY−154、PY−180、PY−12、PY−13、PY−14、PY−17、PY−55、PY−83、PY−81、PY−10、PY−155、PY−93、PY−94、PY−95、PY−166、PY−128が挙げられる。キナクリドン系顔料としては、C.I.ピグメントバイオレット(PV)−19、C.I.ピグメントレッド(PR)−122、PR−202、PR−206、PR−207、PR−209、C.I.ピグメントオレンジ(PO)−48が挙げられる。フタロシアニン系顔料としては、C.I.ピグメントブルー(PB)−15、PB−15:1、PB−15:2、PB−15:3、PB−15:4、PB−15:5、PB−15:6、PB−16、PB−17:1、C.I.ピグメントグリーン(PG)−7、PG−36、PG−37、米国特許第4,311,775号明細書に記載されている架橋アルミニウムフタロシアニン顔料が挙げられる。アントラキノン系顔料としては、C.I.ピグメントイエロー(PY)−24、PY−108、C.I.ピグメントオレンジ(PO)−51、C.I.ピグメントレッド(PR)−168、PR−177、C.I.ピグメントブルー(PB)−60が挙げられる。インジゴ系顔料としては、C.I.ピグメントブルー(PB)−66、PB−63、PR−88、PR−181、C.I.ピグメントブラウン(PBr)−27が挙げられる。ジオキサジン系顔料としては、C.I.ピグメントバイオレット(PV)−23、PV−37が挙げられる。ペリレン顔料としては、C.I.ピグメントレッド(PR)−123、PR−149、PR−178、PR−179、PR−190、PR−224、PV−29、C.I.ピグメントブラック(PBk)−31、PBk−32が挙げられる。ペリノン系顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ(PO)−43、C.I.ピグメントレッド(PR)−194が挙げられる。イソインドリノン系顔料としては、C.I.ピグメントイエロー(PY)−109、PY−110、PY−173、C.I.ピグメントオレンジ(PO)−61が挙げられる。イソインドリン系顔料としては、C.I.ピグメントイエロー(PY)−139、PY−185、C.I.ピグメントオレンジ(PO)−66、PO−69、C.I.ピグメントレッド(PR)−260が挙げられる。キノフタロン系顔料としては、PY−138が挙げられる。ジケトピロロピロール系顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ(PO)−71、PO−73、C.I.ピグメントレッド(PR)−254、PR−255、PR−264、PR−270、PR−272が挙げられる。金属錯体顔料としては、C.I.ピグメントグリーン(PG)−8、PG−10、C.I.ピグメントイエロー(PY)−150、PY−129、PY−153、PY−65、C.I.ピグメントオレンジ(PO)−68、C.I.ピグメントレッド(PR)−257が挙げられる。
【0019】
本発明のインクジェット用顔料インクに好ましく用いられる顔料は、C.I.ピグメントブラック(PBr)−7、C.I.ピグメントイエロー(PY)−74、PY−93、PY−94、PY−95、PY−109、PY−110、PY−128、PY−138、PY−150、PY−151、PY―154、PY−155、PY−180、C.I.ピグメントレッド(PR)−5、PR−122、PR−202、C.I.ピグメントバイオレット(PV)−19、C.I.ピグメントブルー(PB)−15:3、PB−15:4、PB−16であり、更に好ましくはC.I.ピグメントブラック(PBr)−7、C.I.ピグメントイエロー(PY)−74、PY−128、PY−155、C.I.ピグメントレッド(PR)−122、C.I.ピグメントブルー(PB)−15:3である。
【0020】
上記顔料は、インク中に1〜40質量%配合されることが好ましく、5〜30質量%配合されることが更に好ましく、5〜25質量%配合されることが最も好ましい。動的光散乱法による顔料の体積平均粒径は、堅牢性、保存安定性、透明性などを総合的に鑑みて、10〜150nmが好ましく、30〜100nmが更に好ましく、50〜80nmが最も好ましい。さらにその顔料は、顔料分散液の粘度を抑制するために、透過型電子顕微鏡観察による顔料粒子の長軸と短軸との比が3より小さいことが好ましく、2以下であることが更に好ましく、1.5以下であることが最も好ましい。
【0021】
本発明のインクジェット用顔料インクに用いられる水性媒体は、インク中に70〜98質量%配合されることが好ましく、72〜92質量%配合されることが更に好ましく、75〜85質量%配合されることが最も好ましい。
【0022】
該水性媒体は、水と共に、少なくとも一種類の水溶性有機溶剤および/または水溶性有機化合物を保湿、凍結防止、ヒドロトロピー、または浸透促進を目的として含有する。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、1,2,6−ヘキサントリオール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ブタンジオール、ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールアセトニルアセトン、γ−ブチロラクトン、リン酸トリエチル、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、チオジグリコールなどの水溶性有機溶剤、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、2−ピペリドン、N−メチル−2−ピペリドン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、ε−カプララクタム、N−メチル−ε−カプロラクタム、スクシンイミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、尿素、1,3−ジメチル尿素、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)尿素、エチレン尿素、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート、スルホランなどの水溶性有機化合物が挙げられる。
水溶性有機溶剤のなかでは、沸点が200℃以上のものが好ましく、沸点240℃が更に好ましく、沸点255℃以上のものが最も好ましく、例えばグリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
該水溶性有機溶剤および化合物は、単独あるいは二種類以上を併用して使用される。それらの総質量は、記録液中に1〜40質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることが更に好ましい。
水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等を用いることができる。また、長期保存の観点から、紫外線照射や過酸化水素添加などの各種化学滅菌処理を施した水を用いることが好ましい。
【0023】
本発明のインクジェット用顔料インクには、該インクの表面張力を調節して、吐出性、記録媒体(好ましくは紙)上での液滴の広がり、記録媒体(好ましくは紙)への浸透を制御する目的で界面活性剤を配合することが好ましい。該界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等が用いられる。
【0024】
アニオン界面活性剤としては、脂肪酸塩、ナフテン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、N−アシル−N−アルキルアミノ酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンまたはオレフィンスルホン酸塩、N−アシル−N−メチルタウリン塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルポリオキシアルキレンエーテル硫酸エステル塩、アリールポリオキシアルキレンエーテル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩などが挙げられる。カチオン界面活性剤としては、アミン塩、脂肪族第四級アンモニウム塩、ベンジル基を有する第四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、スルホニウム塩、及びホスホニウム塩などが挙げられる。両性界面活性剤としては、アミノ酸型およびベタイン型化合物が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアリールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、アセチレンジオール、アセチレンジオールのエチレンオキシド付加物などが挙げられる。フッ素系界面活性剤としては、特開2003−322926号、特開2004−325707号、特開2004−309806号の各公報に記載されているような化合物を用いることができる。本発明の記録液は、その静的表面張力が20〜50mN/mの範囲に含まれるものが好ましく、25〜45mN/mの範囲内であることが更に好ましい。
【0025】
本発明のインクジェット用顔料インクは、その他必要に応じてpH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤、消泡剤、酸化・褪色防止剤等を配合することができる。
【0026】
pH調整剤としては、塩酸、硫酸またはリン酸などの無機酸、酢酸または安息香酸などの有機酸、水酸化ナトリウムなどの水酸化物、塩化アンモニウムなどのハロゲン化物、硫酸ナトリウムなどの硫酸塩、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムなどの炭酸塩、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなどのリン酸塩、酢酸アンモニウムや安息香酸ナトリウムなど有機酸塩、トリブチルアミンやトリエタノールアミンなどの各種有機アミンが挙げられる。本発明記録液のpHは、5.0〜11.0であることが好ましく、6.0〜10.5であることがより好ましく、6.5〜10.0であることが更に好ましい。防腐防黴剤としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン、安息香酸ナトリウム、パラベン類、2−ピリジンチオン−1−オキシドナトリウム、サリチル酸、フェノール類、クロロメチルフェノール、フェノキシエタノール、ソルビン酸、第四級アンモニウム塩類などが挙げられる。防錆剤としては、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤や、ベンゾトリアゾール、オレイン酸などの可溶化剤が挙げられる。消泡剤としては、シリコーン系化合物や、アセチレンジオールおよびそのエチレンオキシド付加物などが挙げられる。酸化・褪色防止剤としては、亜硫酸塩、エチレンジアミン四酢酸、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、亜リン酸エステル系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが挙げられる。
【0027】
本発明の顔料分散液を調製するために、例えばボールミル、サンドミル、ロールミル、アトライター、ニーダー分散機や、超音波分散法など通常公知な如何なる分散方法も適用できる。
【0028】
本発明の顔料分散液を調製するための処方としては、少なくとも顔料、分散剤、水の混合液を分散機によって顔料分散液としたのち、水溶性有機溶剤及び/又は各種添加剤を加えることによって顔料インクとする一般的に用いられる方法や、水溶性有機溶剤や各種添加剤などもあらかじめ配合した顔料混合液を分散機によって分散させて顔料インクを調製する方法などを用いることができる。また、粉末状の顔料を用いても良いが、乾燥工程を省略したペースト状の顔料プレスケーキを直接分散に用いることもできる。
【0029】
本発明のインクとともに用いられる記録媒体としては、普通紙、再生紙(C2)、王子製紙製「OKプリンス上質」、日本製紙製「しおらい」、および日本製紙製「ニューNPI上質」等の上質紙(A)、王子製紙製「OKエバーライトコート」および日本製紙製「オーロラS」等の微塗工紙、王子製紙製「OKコートL」および日本製紙製「オーロラL」等の軽量コート紙(A3)、王子製紙製「OKトップコート+」および日本製紙製「オーロラコート」等のコート紙(A2、B2)、王子製紙製「OK金藤+」および三菱製紙製「特菱アート」等のアート紙(A1)、およびIJ用の各種写真専用紙を用いることができる。
【0030】
本発明のインクセットはいずれも、インク(組成物)を用いる記録方法に用いられ、インク組成物を用いた記録方法としては、例えば、インクジェット記録方法、ペン等の筆記具による記録方法、その他各種の印字及び印刷方法があげられる。本発明のインクセットは、特にインクジェット記録方法に用いるインクセットとして好ましい。
【0031】
本発明のインクセットは好ましくはインクジェット用インクセットであり、インクセットとしては、通常、イエロ−インク、マゼンタインク、シアンインク、更にブラックインクが含まれ、上記シアン及びマゼンタインクについて、色濃度の異なる2種のインク(以下、高い色濃度を有するマゼンタ及びシアンインクをそれぞれ「濃マゼンタインク」及び「濃シアンインク」といい、低い色濃度を有するマゼンタ及びシアンインクをそれぞれ「淡マゼンタインク」及び「淡シアンインク」という。)を含むインクセットが好ましく用いられる。
本発明では、イエロ−インクとしては、前記のC.I.ピグメントイエロー(PY)、C.I.ピグメントオレンジ(PO)等の顔料含有インクが、マゼンタインクとしては、前記のC.I.ピグメントレッド(PR)、C.I.ピグメントバイオレット(PV)等の顔料含有インクが、シアンインクとしては、前記のC.I.ピグメントブルー(PB)等の顔料含有インクが、ブラックインクとしては、前記のC.I.ピグメントブラック(PBk‐7:カーボンブラック)等の顔料含有インクが好ましく用いられる。
本発明では、更に、上記のイエロ−顔料含有インク、マゼンタ顔料含有インク、シアン顔料含有インク及びブラック顔料含有インクのうちの少なくとも1つのインクをそれぞれ対応する、下記に記載の着色剤を含む、イエロ−インク、マゼンタインク、シアンインク又はブラックインクと置き換えて用いることができる。但し、本発明のインクセットでは、少なくとも1つのインクは顔料含有インクであり、より好ましくは2つ以上が顔料含有インクである。
【0032】
以下に、着色剤を含む、イエローインク(組成物)、及びシアンインクについて説明する。
【0033】
イエローインク(組成物)は、着色剤として下記一般式(Y−6)で表される染料からなる群から選ばれる少なくとも一種を用いることができる。
【0034】
マゼンタインク(組成物)として色濃度の異なる少なくとも二種のマゼンタインク組成物、すなわち少なくとも濃マゼンタインク組成物及び淡マゼンタインク組成物の二種を備えたインクセットが好ましい。
【0035】
シアンインク(組成物)として色濃度の異なる少なくとも二種のシアンインク組成物、すなわち少なくとも濃シアンインク組成物及び淡シアンインク組成物の二種を備えたインクセットであり、さらに少なくとも一種のシアンインク組成物が下記一般式(C−1)で表される染料の少なくとも一種を用いることができる。
【0036】
イエロ−インク組成物に用いられる着色剤について説明する。
【0037】
〔アゾ色素〕
ここで、本明細書中で用いられるハメットの置換基定数σp値について若干説明する。ハメット則はベンゼン誘導体の反応または平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年 L.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができるが、例えば、J.A.Dean編、「Lange’s Handbook of Chemistry」第12版、1979年(Mc Graw−Hill)や「化学の領域」増刊、122号、96〜103頁、1979年(南光堂)に詳しい。なお、本発明において各置換基をハメットの置換基定数σpにより限定したり、説明したりするが、これは上記の成書で見出せる、文献既知の値がある置換基にのみ限定されるという意味ではなく、その値が文献未知であってもハメット則に基づいて測定した場合にその範囲内に包まれるであろう置換基をも含むことはいうまでもない。本発明の一般式(Y−6)で表される化合物はベンゼン誘導体ではないが、置換基の電子効果を示す尺度として、置換位置に関係なくσp値を使用する。本発明においては今後、σp値をこのような意味で使用する。
【0038】
以下、下記一般式(Y−6)で表される着色剤について詳細に説明する。
一般式(Y−6)
【0039】
【化4】

【0040】
、R、Y、およびYは一価の基(水素原子を含む)を示し、X、Xはそれぞれ独立にハメットのσp値0.20以上の電子吸引性基を示す。Z、Zはそれぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロ環基を示す。Mは水素原子またはカチオンを示す。
【0041】
以下に、R、R、X、X、Y、Y、Z、ZおよびMについて詳細に説明する。
【0042】
、R、Y、Y、Z、Zの置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基)、アシルアミノ基(アミド基)、アミノカルボニルアミノ基(ウレイド基)、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基、アゾ基、またはイミド基を挙げることができ、各々はさらに置換基を有していてもよい。
【0043】
中でも特に好ましいものは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アルコキシ基、アミド基、ウレイド基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルバモイル基、またはアルコキシカルボニル基であり、特に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはヘテロ環基が好ましく、水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、またはアルキルスルホニル基が最も好ましい。
【0044】
σp値が0.20以上の電子吸引性基であるX、Xの具体例としては、アシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアリールホスフィニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アリールオキシ基、ハロゲン化アルキルアミノ基、ハロゲン化アルキルチオ基、σp値が0.20以上の他の電子吸引性基で置換されたアリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アゾ基、又はセレノシアネート基が挙げられる。
【0045】
、Xの好ましいものとしては、炭素数2〜12のアシル基、炭素数2〜12のアシルオキシ基、炭素数1〜12のカルバモイル基、炭素数2〜12のアルキルオキシカルボニル基、炭素数7〜18のアリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜12のアルキルスルフイニル基、炭素数6〜18のアリールスルフイニル基、炭素数1〜12のアルキルスルホニル基、炭素数6〜18のアリールスルホニル基、炭素数0〜12のスルファモイル基、炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜12のハロゲン化アルキルオキシ基、炭素数1〜12のハロゲン化アルキルチオ基、炭素数7〜18のハロゲン化アリールオキシ基、2つ以上のσp0.20以上の他の電子吸引性基で置換された炭素数7〜18のアリール基、及び窒素原子、酸素原子、またはイオウ原子を有する5〜8員環で炭素数1〜18のヘテロ環基を挙げることができる。
【0046】
更に好ましくは、シアノ基、炭素数1〜12のアルキルスルホニル基、炭素数6〜18のアリールスルホニル基、または炭素数0〜12のスルファモイル基である。
【0047】
、Xとして特に好ましいものは、シアノ基、炭素数1〜12のアルキルスルホニル基、または炭素数0〜12のスルファモイル基であり、最も好ましいものは、シアノ基、または炭素数1〜12のアルキルスルホニル基である。
【0048】
Mで表されるカチオンとしては、アルカリ金属イオン、アンモニウム又は第4級アンモニウムカチオンであり、好ましくはLi、Na、K、NH、またはNRである。但し、Rはアルキル基およびアリール基であり上述したR、Yで表されるアルキル基およびアリール基の例と同じである。その中でも好ましいMのカチオン例はLi、Na、K、またはNHであり、Li、Na、またはKが特に好ましい。
【0049】
本発明の一般式(Y−6)で表される色素の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0050】
本発明の一般式(Y−6)で表される色素として特に好ましい組み合わせは、以下の(イ)〜(ホ)を含むものである。
【0051】
(イ)R、Rは同一または異なっていてもよく、置換もしくは無置換の総炭素数1〜12のアルキル基、置換もしくは無置換の総炭素数6〜18のアリール基、または置換もしくは無置換の総炭素数4〜12ヘテロ環基が好ましく、その中でも、総炭素原子数1〜8の直鎖アルキル基または分岐のアルキル基が好ましく、特に2級または3級アルキル基が好ましく、t−ブチル基が最も好ましい。
【0052】
(ロ)X、Xは同一または異なっていてもよく、ハメットの置換基定数σp値が0.20以上の電子吸引性基が好ましく、更に0.30以上の電子吸引性基が好ましく、上限としては1.0以下の電子吸引性基である。その中でも、シアノ基、炭素数1〜12のアルキルスルホニル基、炭素数6〜18のアリールスルホニル基、または炭素数0〜12のスルファモイル基が好ましく、最も好ましいものは、シアノ基、または炭素数1〜12のアルキルスルホニル基である。
【0053】
(ハ)Y、Yは同一または異なっていてもよく、水素原子、置換もしくは無置換の総炭素数1〜12のアルキル基、置換もしくは無置換の総炭素数6〜18のアリール基、または置換もしくは無置換の総炭素数4〜12ヘテロ環基が好ましく、更に水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基が好ましく、その中でも水素原子が最も好ましい。
【0054】
(ニ)Z、Zは、同一または異なっていてもよく、置換もしくは無置換の総炭素数1〜12アルキル基、置換もしくは無置換の総炭素数6〜18のアリール基、または置換もしくは無置換の総炭素数4〜12ヘテロ環基が好ましく、更に置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロ環基が好ましく、特に置換アリール基が最も好ましい。
【0055】
(ホ)Mは水素原子又はカチオンが好ましく、特に好ましくは水素原子、アルカリ金属イオン、アンモニウム又は第4級アンモニウムカチオンであり、更に好ましくはLi、Na、K、またはNHである。
【0056】
本発明において、一般式(Y−6)で表される化合物が親水性を必要とする場合は、分子内に2個以上のイオン性親水性基を有することが好ましく、2〜10個のイオン性親水性基を有することがさらに好ましく、3〜6個のイオン性親水性基を有することが特に好ましい。
【0057】
但し、媒体として水を使用しない場合はイオン性親水性基を有していなくてよい。
【0058】
イオン性親水性基としては、イオン性解離基である限りいかなるものであってもよい。具体的にはスルホ基、カルボキシル基(それらの塩を含む)、水酸基(塩でもよい)、ホスホノ基(塩でもよい)又は4級アンモニウムを挙げることが出来る。
【0059】
好ましくはスルホ基、カルボキシル基、または水酸基(それらの塩を含む)である。
イオン性親水性基が塩の場合、好ましいカウンターカチオンはアルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム)、アンモニウム、及び有機のカチオン(例えばピリジニウム、テトラメチルアンモニウム、グアニジニウム)を挙げることができ、その中でもアルカリ金属が好ましく、特にスルホ基の場合はリチウム塩、カルボキシ基の場合はナトリウム塩及びまたはカリウム塩が好ましい。
【0060】
前記一般式(Y−6)で表される水溶性色素の場合は、色再現性の観点から、HO中で380〜490nmの最大吸収波長(λmax)を有することが好ましく、400〜480nmのλmaxを有することがさらに好ましく、420〜460nmにλmaxを有することが特に好ましい。
【0061】
さらにまた、本発明においては、イエローインク組成物の色調などを調整するために耐光性・耐オゾン性を大きく損ねない範囲で、さらにその他のイエロー系染料を併用することもできる。
【0062】
この併用されるイエロー系染料としては、例えば、C.I.ダイレクトイエロー8,9,11,12,27,28,29,33,35,39,41,44,50,53,59,68,87,93,95,96,98,100,106,108,109,110,130,142,144,161,163、C.I.アシッドイエロー17,19,23,25,39,40,42,44,49,50,61,64,76,79,110,127,135,143,151,159,169,174,190,195,196,197,199,218,219,222,227、C.I.リアクティブイエロー2,3,13,14,15,17,18,23,24,25,26,27,29,35,37,41,42、C.I.ベーシックイエロー1,2,4,11,13,14,15,19,21,23,24,25,28,29,32,36,39,40等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0063】
本発明においてイエローインク組成物中に含まれる着色剤の濃度は、着色剤として用いられる化合物(染料)のカラーバリューにしたがって適宜決定することができるが、上記一般式(Y−6)染料から選ばれる少なくとも一種をイエローインク組成物中に含める場合、一般的には、上記一般式(Y−6)及び場合により他の染料を含めた着色剤の合計量が、イエローインク組成物中に、イエローインク組成物の総質量に対して1.0〜6.0質量%含有されることが好ましい。イエローインク組成物中に含まれる前記着色剤の合計量の濃度を1.0質量%以上にすることによって良好な発色性を得ることができ、また前記着色剤の合計量の濃度を6.0質量%以下にすることによって、インクジェット記録方法に用いるためのインク組成物として必要とされるノズルからの吐出性等の特性を良好なものにし、インクノズルの目詰まりを防止することができる。
【0064】
さらにイエローインクにおいて、上述した範囲で上記一般式(Y−6)の染料と場合により他のイエロー系染料(例えば、C.I.ダイレクトイエロー58)を併用することにより、さらに好ましいカラーバランスに調節することが可能になり、いっそう長期にわたって印刷物の画質を良好に保つことができる。
【0065】
次に本発明のインクセットを構成するマゼンタインク(組成物)に用いられる着色剤について説明する。
【0066】
本発明のインクセットにおいて、マゼンタインク組成物に用いられる着色剤は特定構造の着色剤に限定されるものではないが、他色のインク組成物の耐光性・耐オゾン性とマゼンタインク組成物の耐光性・耐オゾン性との間の差が小さいことが好ましい。
【0067】
本発明のインクセットにおいては、マゼンタインク組成物中における染料の濃度は、用いられる染料のカラーバリューに基づいて適宜定めることができる。インクセットに一つのマゼンタインク組成物のみを含める場合、一般的にはマゼンタインク組成物中にマゼンタ染料が合計量で0.1〜10質量%含有されることが好ましい。染料濃度を2.0質量%以上とすることにより、インクとして充分な発色性を確保でき、さらに染料濃度を10質量%以下にすることによってインクジェット記録方法に用いるインク組成物として、ノズルからの吐出性を確保することやノズル目詰まりを防止すること等が容易となる。
【0068】
インクセットに濃マゼンタインク組成物及び淡マゼンタインク組成物を含める場合、淡マゼンタインク組成物中に含まれる着色剤の含有量(質量%)と濃マゼンタインク組成物中に含まれる着色剤の含有量(質量%)との比を1:2〜1:8にすることが好ましい。着色剤の含有量をこのような比率で構成することにより、これらのインク組成物を用いて記録された画像の粒状感を低下させることができる。さらに上記着色剤比率とし、かつ着色剤の濃度を上述した範囲に入るインク組成物にすることにより、濃マゼンタインク組成物と淡マゼンタインク組成物との間に良好なカラーバランスを実現でき、しかもインクジェットノズルが目詰まりすることを防止できる。
【0069】
そのほか、前記一般式(M−1)で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる染料と併用されるマゼンタ系染料としては、例えば、C.I.ダイレクトレッド2,4,9,23,26,31,39,62,63,72,75,76,79,80,81,83,84,89,92,95,111,173,184,207,211,212,214,218,221,223,224,225,226,227,232,233,240,241,242,243,247、C.I.ダイレクトバイオレット7,9,47,48,51,66,90,93,94,95,98,100,101、C.I.アシッドレッド35,42,52,57,62,80,82,111,114,118,119,127,128,131,143,151,154,158,249,254,257,261,263,266,289,299,301,305,336,337,361,396,397、C.I.アシッドバイオレット5,34,43,47,48,90,103,126、C.I.リアクティブレッド3,13,17,19,21,22,23,24,29,35,37,40,41,43,45,49,55、C.I.リアクティブバイオレット1,3,4,5,6,7,8,9,16,17,22,23,24,26,27,33,34、C.I.ベーシックレッド12,13,14,15,18,22,23,24,25,27,29,35,36,38,39,45,46、C.I.ベーシックバイオレット1,2,3,7,10,15,16,20,21,25,27,28,35,37,39,40,48等を例示できるほか、更に、カップリング成分(以降カプラー成分と呼ぶ)として、フェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラジンのようなヘテロ環類、開鎖型活性メチレン化合物類などを有する、ヘテリルもしくはアリールアゾ染料;例えばカプラー成分として開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアゾメチン染料;アントラピリドン染料(例えばUS2004/0239739A1明細書記載のTable 1中のNo.20の化合物や、国際公開第04/104108号パンフレット記載の化合物(13)など)が例示できる。
【0070】
以下に、本発明のインクセットを構成するシアンインク組成物に用いられる着色剤について説明する。
【0071】
本発明のインクセットにおいて、シアンインク組成物に用いられる着色剤は特定構造の着色剤に限定されるものではないが、他色のインク組成物の耐光性・耐オゾン性とシアンインク組成物の耐光性・耐オゾン性との間の差が小さいことが好ましい。
【0072】
本発明においてシアンインク組成物に着色剤として用いられるシアン系染料は、下記一般式(C−1)で表されるフタロシアニン化合物及びその塩からなる群から選ばれる化合物である。
一般式(C−1):
【0073】
【化5】

【0074】
前記一般式(C−1)中、X、X、X及びXは、それぞれ独立に、−SO−Z、−SO−Z、−SONV、−CONV、−COZ、−CO−Z及びスルホ基のいずれかを表す。ここで、Zは、それぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアルキニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロ環基を表す。V,Vは、同一または異なっていてもよく、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基を表す。
【0075】
、Y、Y及びYは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、ホスホリル基、アシル基、又はイオン性親水性基を表し、各々の基はさらに置換基を有していてもよい。
【0076】
〜a及びb〜bは、それぞれX〜X及びY〜Yの置換基数を表す。そして、a〜aは、それぞれ独立に、0〜4の整数であり、すべてが同時に0になることはない。b〜bは、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
【0077】
Mは、水素原子、金属原子又はその酸化物、水酸化物若しくはハロゲン化物である。ただし、X、X、X、X、Y、Y、Y及びYの内の少なくとも1つは、イオン性親水性基であるか又はイオン性親水性基を置換基として有する基である。)
【0078】
本発明においては、上記一般式(C−1)において、a、a、a及びaが0又は1であり、かつa、a、a及びaのうち2つ以上が1であり、さらにb、b、b及びbはそれぞれa、a、a及びaとの和が4となる整数であることが好ましい。
【0079】
上述のとおり、前記一般式(C−1)中、X、X、X及びXは、それぞれ独立に、−SO−Z、−SO−Z、−SONV、−CONV、−COZ、−CO−Z及びスルホ基のいずれかを表す。
【0080】
Zは、同一または異なっていても良く、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基を表す。
好ましくは、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基であり、その中でも置換アルキル基、置換アリール基、置換ヘテロ環基が好ましく、特に置換アルキル基が最も好ましい。
【0081】
、Vは、同一または異なっていてもよく、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基を表す。好ましくは水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基であり、その中でも水素原子、置換アルキル基、置換アリール基、置換ヘテロ環基が最も好ましい。
【0082】
Z、V及びVはさらに置換基を有することができるが、ここでZ、V及びVが有することのできる置換基としては、それぞれ独立にハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子);炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状鎖アルキル基、炭素数7〜18のアラルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12の直鎖状又は分岐鎖状アルキニル基、側鎖を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、側鎖を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルケニル基(これらの基としては例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル、2−メタンスルホニルエチル、3−フェノキシプロピル、トリフルオロメチル、シクロペンチル);アリール基(例えば、フェニル、4−t−ブチルフェニル、2,4−ジ−t−アミルフェニル);ヘテロ環基(例えば、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル);アルキルオキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メタンスルホニルエトキシ);アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、3−t−ブチルオキシカルバモイルフェノキシ、3−メトキシカルバモイル);アシルアミノ基(例えば、アセトアミド、ベンズアミド、4−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)ブタンアミド);アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ、ブチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルブチルアミノ);アニリノ基(例えば、フェニルアミノ、2−クロロアニリノ;ウレイド基(例えば、フェニルウレイド、メチルウレイド、N,N−ジブチルウレイド);スルファモイルアミノ基(例えば、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ);アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、オクチルチオ、2−フェノキシエチルチオ);アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、2−ブトキシ−5−t−オクチルフェニルチオ、2−カルボキシフェニルチオ);アルキルオキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ);スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミド、オクタデカン);カルバモイル基(例えば、N−エチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル);スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N,N−ジエチルスルファモイル);スルホニル基(例えば、メタンスルホニル、オクタンスルホニル、ベンゼンスルホニル、トルエンスルホニル);アルキルオキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル);ヘテロ環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ);アゾ基(例えば、フェニルアゾ、4−メトキシフェニルアゾ、4−ピバロイルアミノフェニルアゾ、2−ヒドロキシ−4−プロパノイルフェニルアゾ);アシルオキシ基(例えば、アセトキシ);カルバモイルオキシ基(例えば、N−メチルカルバモイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシ);シリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ、ジブチルメチルシリルオキシ);アリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ);イミド基(例えば、N−スクシンイミド、N−フタルイミ);ヘテロ環チオ基(例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、2,4−ジ−フェノキシ−1,3,5−トリアゾール−6−チオ、2−ピリジルチオ);スルフィニル基(例えば、3−フェノキシプロピルスルフィニル);ホスホニル基(例えば、フェノキシホスホニル、オクチルオキシホスホニル、フェニルホスホニル);アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル);アシル基(例えば、アセチル、3−フェニルプロパノイル、ベンゾイル);イオン性親水性基(例えば、カルボキシル基、スルホ基、及び4級アンモニウム基);シアノ基;ヒドロキシ基;ニトロ基;アミノ基等が挙げられる。
【0083】
Z、V、Vが表す置換もしくは無置換のアルキル基としては、炭素原子数が1〜30のアルキル基が好ましい。特に染料の溶解性やインク安定性を高めるという理由から、分岐のアルキル基が好ましく、特に不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が特に好ましい。置換基の例については一般式Iが有していても良い置換基を挙げることができるが、中でも水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミノ基、アミド基、スルホンアミド基が染料の会合性を高め堅牢性を向上させるので特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性親水性基を有していても良い。
【0084】
Z、V、Vが表す置換もしくは無置換のシクロアルキル基としては、炭素原子数が5〜30のシクロアルキル基が好ましい。特に染料の溶解性やインク安定性を高めるという理由から、不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が特に好ましい。置換基の例については一般式(C−1)が有していても良い置換基を挙げることができるが、中でも水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミノ基、アミド基、スルホンアミド基が染料の会合性を高め堅牢性を向上させるので特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性親水性基を有していても良い。
【0085】
Z、V、Vが表す置換もしくは無置換のアルケニル基としては、炭素原子数が2〜30のアルケニル基が好ましい。特に染料の溶解性やインク安定性を高めるという理由から、分岐のアルケニル基が好ましく、特に不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が特に好ましい。置換基の例については一般式Iが有していても良い置換基を挙げることができるが、中でも水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミノ基、アミド基、スルホンアミド基が染料の会合性を高め堅牢性を向上させるので特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性親水性基を有していても良い。
【0086】
Z、V、Vが表す置換もしくは無置換のアルキニル基としては、炭素原子数が2〜30のアルキニル基が好ましい。特に染料の溶解性やインク安定性を高めるという理由から、分岐のアルキニル基が好ましく、特に不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が特に好ましい。置換基の例については一般式(C−1)が有していても良い置換基を挙げることができるが、中でも水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミノ基、アミド基、スルホンアミド基が染料の会合性を高め堅牢性を向上させるので特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性親水性基を有していても良い。
【0087】
Z、V、Vが表す置換もしくは無置換のアラルキル基としては、炭素原子数が7〜30のアルキル基が好ましい。特に染料の溶解性やインク安定性を高めるという理由から、分岐のアルキル基が好ましく、特に不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が特に好ましい。置換基の例については一般式(C−1)が有していても良い置換基を挙げることができるが、中でも水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミノ基、アミド基、スルホンアミド基が染料の会合性を高め堅牢性を向上させるので特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性親水性基を有していても良い。
【0088】
Z,V,Vが表す置換もしくは無置換のアリール基としては、炭素原子数が6〜30のアリール基が好ましい。置換基の例については一般式Iが有していても良い置換基を挙げることができるが、中でも染料の酸化電位を貴とし堅牢性を向上させるので電子求引性基が特に好ましい。
【0089】
Z,V,Vが表すヘテロ環基としては、5員または6員環のものが好ましく、それらは更に縮環していてもよい。また、芳香族ヘテロ環であっても非芳香族ヘテロ環であっても良い。以下にZ,V,Vで表されるヘテロ環基を、置換位置を省略してヘテロ環の形で例示するが、置換位置は限定されるものではなく、例えばピリジンであれば、2位、3位、4位で置換することが可能である。ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、キノキサリン、ピロール、インドール、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、チアジアゾール、イソオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾリジン、チアゾリンなどが挙げられる。中でも芳香族ヘテロ環基が好ましく、その好ましい例を先と同様に例示すると、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、チアジアゾールが挙げられる。それらは置換基を有していても良く、置換基の例については一般式Iが有していても良い置換基を挙げることができるが、好ましい置換基は前記アリール基の置換基と、更に好ましい置換基は、前記アリール基の更に好ましい置換基とそれぞれ同じである。
【0090】
本発明のフタロシアニン染料が水溶性である場合には、イオン性親水性基を有することが好ましい。イオン性親水性基には、スルホ基、カルボキシル基、ホスホノ基および4級アンモニウム基等が含まれる。前記イオン性親水性基としては、カルボキシル基、ホスホノ基、およびスルホ基が好ましく、特にカルボキシル基、スルホ基が好ましい。カルボキシル基、ホスホノ基およびスルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対イオンの例には、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)および有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が含まれる。対イオンの中でもアルカリ金属塩が好ましく、特にリチウム塩は染料の溶解性を高めインク安定性を向上させるため特に好ましい。最も好ましいイオン性親水性基はスルホ基のリチウム塩である。
【0091】
イオン性親水性基の数としては、本発明のフタロシアニン染料1分子中少なくとも2個以上有するものが好ましく、特にスルホ基および/またはカルボキシル基を少なくとも2個以上有するものが特に好ましい。
【0092】
Mとして好ましい物は、水素原子、金属原子としては、Li、Na、K、Mg、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi等が挙げられる。酸化物としては、VO、GeO等が挙げられる。また、水酸化物としては、Si(OH)Cr(OH)、Sn(OH)等が挙げられる。さらに、ハロゲン化物としては、AlCl、SiCl、VCl、VCl、VOCl、FeCl、GaCl、ZrCl等が挙げられる。なかでも特に、Cu、Ni、Zn、Al等が好ましく、Cuが最も好ましい。
【0093】
また、L(2価の連結基)を介してPc(フタロシアニン環)が2量体(例えば、Pc−M−L−M−Pc)または3量体を形成してもよく、その時のMはそれぞれ同一であっても異なるものであってもよい。
【0094】
Lで表される2価の連結基は、オキシ基−O−、チオ基−S−、カルボニル基−CO−、スルホニル基−SO−、イミノ基−NH−、メチレン基−CH−、およびこれらを組み合わせて形成される基が好ましい。
【0095】
本発明のフタロシアニン染料の化学構造としては、スルフィニル基(−SO−Z);スルホニル基(−SO−Z);スルファモイル基(−SONV);カルバモイル基(−CONV);アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基(−COZ);アシル基(−CO−Z);スルホ基のような電子求引性基を、本発明のフタロシアニンの各ベンゼン環に少なくとも一つずつ、フタロシアニン骨格全体の置換基のσp値の合計で1.2以上となるように導入することが特に好ましい。その中でも、スルフィニル基(−SO−Z);スルホニル基(−SO−Z);スルファモイル基(−SONV)が好ましく、更にスルホニル基(−SO−Z);スルファモイル基(−SONV)が好ましく、スルホニル基(−SO−Z)が最も好ましい。
【0096】
ハメットの置換基定数σp値については前記アゾ色素の項での記載が参照できる。
【0097】
前記一般式(C−1)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0098】
本発明において、シアンインク組成物中に含まれるシアン系染料の含有量は、式(C−1)におけるX〜X及びY〜Yの種類、及びインク組成物を製造するために用いる溶媒成分の種類等により決められるが、本発明においては、式(C−1)で表されるシアン系染料(式(C−1)の染料)の合計量が、シアンインク組成物中に、シアンインク組成物の総質量に対して1〜10質量%含まれることが好ましく、2〜6質量%含まれることがさらに好ましい。
【0099】
シアンインク組成物中に含まれる式(C−1)の染料の合計量を1質量%以上にすることで、印刷したときの記録媒体上におけるインクの発色性を良好にでき、かつ必要とされる画像濃度を確保できる。また、シアンインク組成物中に含まれる式(C−1)の染料の合計量を10質量%以下にすることで、インクジェット記録方法に用いた場合にシアンインク組成物の吐出性を良好にでき、しかもインクジェットノズルが目詰まりしにくい等の効果が得られる。
【0100】
本発明のインクセットにおいては、シアンインク組成物として色濃度の高いシアンインク組成物(濃シアンインク組成物)及び色濃度の低いシアンインク組成物(淡シアンインク組成物)をインクセットに含めることができる。
【0101】
濃シアンインク組成物及び淡シアンインク組成物を本発明のインクセットに含める場合、濃シアンインク組成物又は淡シアンインク組成物の少なくとも一つが前記一般式(C−1)の染料の少なくとも一種を着色剤として用いることができる。
【0102】
一方、前記色濃度の異なる二種のシアンインク組成物のうち、低い色濃度を有するシアンインク組成物が、特開2005−179469号及び特開2006−028321号公報に記載のフタロシアニン化合物を少なくとも一種用いることができる。
【0103】
濃シアンインク組成物及び淡シアンインク組成物の両者が前記一般式(C−1)、又は特開2005−179469号及び特開2006−028321号公報に記載のフタロシアニン染料の少なくとも一種を着色剤として含むことが特に好ましい。
【0104】
上記のとおり、インクセットに濃シアンインク組成物及び淡シアンインク組成物を含める場合、淡シアンインク組成物中の着色剤の濃度は、着色剤として用いられる染料の種類に応じて、淡シアンインク組成物を濃シアンインク組成物と組み合わせたときに好ましいカラーバランスを有するよう適宜決定することができる。
【0105】
一般には、淡シアンインク組成物中に、淡シアンインク組成物の総質量に対し、前記一般式(C−1)の染料が合計量で0.4〜3.0質量%含まれることが好ましい。淡シアンインク組成物中の着色剤の濃度を0.4質量%以上にすることにより、発色性を優れたものにすることができ、かつ着色剤の濃度を3.0質量%以下にすることによって、その淡シアンインク組成物を用いて記録された画像の粒状感を低下させることができる。
【0106】
一方、濃シアンインク組成物中には、濃シアンインク組成物の総質量に対し、前記一般式(C−1)の染料が合計量で2.0〜10.0質量%含まれることが好ましい。
【0107】
さらに、淡シアンインク組成物中に含まれる着色剤の濃度(質量%)と濃シアンインク組成物中に含まれる着色剤の濃度(質量%)との比が、1:2〜1:8であることが好ましい。
【0108】
このような条件を満足させることによって、淡シアンインク組成物と濃シアンインク組成物との間に良好なカラーバランスが実現され、しかも、インクジェットノズルが目詰まりすることを防止することができる。
【0109】
上述したとおり、本発明のインクセットにおけるシアンインク組成物、又は濃シアンインク組成物及び淡シアンインク組成物においては、インクの色調の調整等のため、耐光性・耐オゾン性を大きく損ねない範囲で、他のシアン系染料を併用することができる。
【0110】
更に、本発明に用いる他のシアン系染料としては、例えば、C.I.ダイレクトブルー1,10,15,22,25,55,67,68,71,76,77,78,80,84,86,87,90,98,106,108,109,151,156,158,159,160,168,189,192,193,194,199,200,201,202,203,207,211,213,214,218,225,229,236,237,244,248,249,251,252,264,270,280,288,289,291、C.I.アシッドブルー9,25,40,41,62,72,76,78,80,82,92,106,112,113,120,127:1,129,138,143,175,181,205,207,220,221,230,232,247,258,260,264,271,277,278,279,280,288,290,326、C.I.リアクティブブルー2,3,5,8,10,13,14,15,17,18,19,21,25,26,27,28,29,38、C.I.ベーシックブルー1,3,5,7,9,22,26,41,45,46,47,54,57,60,62,65,66,69,71等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0111】
次に本発明のインクセットを構成するブラックインク組成物に用いる着色剤について説明する。
【0112】
本発明のインクセットにおいて、ブラックインク組成物に用いられる着色剤は特定構造の着色剤に限定されるものではないが、他色のインク組成物の耐光性・耐オゾン性とブラックインク組成物の耐光性・耐オゾン性との間の差が小さいことが好ましい。
【0113】
本発明においてブラックインク組成物に着色剤として用いられるブラック系染料は、特開2005−146244号公報の一般式7で表される化合物が挙げられる。
【0114】
さらにまた、本発明においては、ブラックインク組成物の色調などを調整するために耐光性・耐オゾン性を大きく損ねない範囲で、イエロー系染料を併用することもできる。
【0115】
この併用されるイエロー系染料としては、例えば、C.I.ダイレクトイエロー8,9,11,12,27,28,29,33,35,39,41,44,50,53,59,68,87,93,95,96,98,100,106,108,109,110,130,142,144,161,163、C.I.アシッドイエロー17,19,23,25,39,40,42,44,49,50,61,64,76,79,110,127,135,143,151,159,169,174,190,195,196,197,199,218,219,222,227、C.I.リアクティブイエロー2,3,13,14,15,17,18,23,24,25,26,27,29,35,37,41,42、C.I.ベーシックイエロー1,2,4,11,13,14,15,19,21,23,24,25,28,29,32,36,39,および40等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0116】
本発明のブラックインク組成物は、上記一般式7の染料から選ばれる少なくとも一種を着色剤として含み;または、上記一般式7の染料から選ばれる少なくとも一種と更にイエロー染料から選ばれる少なくとも一種を併用した着色剤として含み;、その着色剤の合計量がブラックインク組成物の総質量に対して0.5〜12質量%含まれることが好ましく、1.0〜9.0質量%含まれることがさらに好ましい。
【0117】
ブラックインク組成物中に含まれる上記の染料の合計量が0.5質量%以上の場合、そのインク組成物を用いて記録媒体に画像等を記録したときに、充分良好な発色や高い画像濃度を得ることができる。
また、ブラックインク組成物中に含まれる上記の染料の合計量を12質量%以下にすることにより、そのインク組成物の粘度を好ましい値に調節することができ、またインクジェットヘッドからのインク組成物の吐出量を安定化することができ、さらにインクジェットヘッドの目詰まりを防止することができる。
【0118】
以上本発明の各インク組成物に用いる着色剤及びそのインク組成物中における着色剤の含有量について説明したが、各着色剤含有インク組成物に含まれる水溶性有機溶剤及び他の成分については、前記顔料の分散液に用いる水溶性有機溶剤及び各種成分を同様に用いることができ、着色剤組成物は前記顔料の分散液の顔料の代わりに前記着色剤を用いて、前記顔料の分散液と同様に調製することができる。
【0119】
次に、上述したインク(組成物)を用いた本発明のインクセットは、これらを一体的に若しくは独立に収容したインクカートリッジとして用いることができ、取り扱いが便利である点等からも好ましい。インクセットを含んで構成されるインクカートリッジは当技術分野において公知であり、公知の方法を適宜用いてインクカートリッジにすることができる。
【0120】
本発明のインクセット又はインクカートリッジは一般の筆記具用、記録計用、ペンプロッター用等に使用することができるが、インクジェット記録方法に用いることが特に好ましい。本発明のインクセット又はインクカートリッジを用いることができるインクジェット記録方法は、インク組成物を細いノズルから液滴として吐出させ、その液滴を記録媒体に付着させるいかなる記録方法も含む。本発明のインク組成物を用いることができるインクジェット記録方法の具体例を以下に説明する。
【0121】
第一の方法は静電吸引方式とよばれる方法である。静電吸引方式は、ノズルとノズルの前方に配置された加速電極との間に強電界を印加し、ノズルから液滴状のインクを連続的に噴射させ、そのインク滴が偏向電極間を通過する間に印刷情報信号を偏向電極に与えることによって、インク滴を記録媒体上に向けて飛ばしてインクを記録媒体上に定着させて画像を記録する方法、又は、インク滴を偏向させずに、印刷情報信号に従ってインク滴をノズルから記録媒体上にむけて噴射させることにより画像を記録媒体上に定着させて記録する方法である。本発明のインクセット又はインクカートリッジはこの静電吸引方式による記録方法に用いることが好ましい。
【0122】
第二の方法は、小型ポンプによってインク液に圧力を加えるとともに、インクジェットノズルを水晶振動子等によって機械的に振動させることによって、強制的にノズルからインク滴を噴射させる方法である。ノズルから噴射されたインク滴は、噴射されると同時に帯電され、このインク滴が偏向電極間を通過する間に印刷情報信号を偏向電極に与えてインク滴を記録媒体に向かって飛ばすことにより、記録媒体上に画像を記録する方法である。本発明のインクセット又はインクカートリッジはこの記録方法に用いることが好ましい。
【0123】
第三の方法は、インク液に圧電素子によって圧力と印刷情報信号を同時に加え、ノズルからインク滴を記録媒体に向けて噴射させ、記録媒体上に画像を記録する方法(ピエゾ)である。本発明のインクセット又はインクカートリッジはこの記録方法に用いることが好ましい。
【0124】
第四の方法は、印刷信号情報に従って微小電極を用いてインク液を加熱して発泡させ、この泡を膨張させることによってインク液をノズルから記録媒体に向けて噴射させて記録媒体上に画像を記録する方法(バブルジェット)である。本発明のインクセット又はインクカートリッジはこの記録方法に用いることが好ましい。
【0125】
本発明のインクセット又はインクカートリッジは、上述した4つの方法を含むインクジェット記録方式による画像記録方法を用いて記録媒体上に画像を記録する場合に用いるインク組成物として特に好ましい。本発明のインクセットを用いて記録された記録物は優れた画質を有し、さらに耐オゾン性に優れている。
【0126】
[実施例]
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0127】
[顔料分散液の作製]
チバ・スペシャリティーケミカルズ社のCromophtal Jet Magenta DMQ(PR−122)10.0g、p−ノニルフェニルボロン酸1.0g、グリセリン5.0g、2M水酸化ナトリウム水溶液2.0g、及びイオン交換水32.0gを攪拌混合させたのち、超音波照射装置(SONICS社製 Vibra−cell VC−750、テーパーマイクロチップ:φ5mm、Ampitude:30%)を用いて超音波を間欠照射(照射0.5s/休止1.0s)で10時間照射して顔料分散を行った。得られた顔料分散液を少量分取して適当量の水で希釈した後、日機装製マイクロトラック超微粒子粒度分析計(UPA−EX150)を用いて、その顔料分散液の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径66nm、数平均粒径39nmであった。
【0128】
[インクの調製]
得られた顔料濃度20%の分散液を以下の処方で顔料濃度5%のインクとした。
顔料分散液(顔料濃度20%):10.0g
ジエチレングリコール : 4.0g
グリセリン : 2.0g
オルフィンE1010 : 0.4g
イオン交換水 :23.8g
【0129】
同様にして、分散剤としてN−オレオイル−N―メチルタウリンナトリウムに変えた以外は同様の方法で作製したインクを比較インク1とした。また、分散剤としてオレイン酸ナトリウムに変えた以外は同様の方法で作製したインクを比較インク2とした。
得られた顔料インクの物性値を表1に示す。
【0130】
【表1】

【0131】
粘度は、BROOKFIELD社製DV−II+VISCOMETERにて測定した。表面張力は、協和界面科学社製CBVP−Zを用いて、白金プレート法で測定した。
【0132】
[プリント評価]
上記の顔料濃度約5%のインクを、セイコーエプソン社製インクジェットプリンターPX−V500のカートリッジに詰め替え、特菱両面アートN(三菱製紙)にPX−V500でべた画像をプリントし、プリント後プリントサンプルを室温で24時間以上乾燥させた。乾燥後に更に加熱オーブンESPEC(株)社製PDR−3KPの中で80℃1時間加熱放置し、12時間放置したサンプルの定着性評価を行った。結果を表2に示す。
【0133】
【表2】

【0134】
定着性は、セロテープ(ニチバン製)及びメンディングテープ(3M)を塗布サンプルにテープが全面くっつくように貼った後、剥がしたテープの色移りを下記のように評価した。
〇:セロテープ及びメンディングテープ共、色移りが認められなかった。
△:セロテープまたはメンディングテープの少なくとも一方で僅かな色移りが認められた。
×:セロテープ及びメンディングテープの両方で色移りが認められた。
【0135】
本発明のボロン酸化合物を添加したインクをプリントした後、加熱処理をすることで、定着性が大きく改善できた。理由は加熱処理によってボロン酸同士、あるいはボロン酸と記録媒体が結合してネットワーク構造を構築したものと推測している。したがって加熱処理以外の化学処理でも同様のことが起こることは容易に予想できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも顔料、水、水溶性有機溶剤及び/または水溶性有機化合物並びにボロン酸化合物を含有することを特徴とするインク。
【請求項2】
該ボロン酸化合物が、一般式(I)で表される構造を有することを特徴とする請求項1に記載のインク。
【化1】

式中、Rは置換基を表し、mおよびnはそれぞれ独立に1〜5の整数を表す。ただし、nが2以上の場合、二つ以上の置換基Rは互いに異なってもよい。
【請求項3】
該ボロン酸化合物の分子量が200〜1000であることを特徴とする請求項1または2に記載のインク。
【請求項4】
界面活性剤を添加して表面張力を20〜50mN/mとしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインク。
【請求項5】
pHが5〜11の範囲内であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインク。
【請求項6】
25℃における粘度が1〜20mPa/sであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のインク。
【請求項7】
動的光散乱法で測定した顔料粒子の体積平均粒径が10〜150nmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のインク。
【請求項8】
顔料粒子の長軸と短軸との比が3より小さいことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のインク。
【請求項9】
顔料を5〜25質量%含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のインク。
【請求項10】
水性であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載のインク。
【請求項11】
インクジェット用であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載のインク。
【請求項12】
請求項1〜11に記載のインクを含むことを特徴とするインクセット。
【請求項13】
請求項1〜11に記載のインクまたは請求項12に記載のインクセットを含むことを特徴とする画像記録装置。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれかに記載のインクまたは請求項12に記載のインクセットを、ピエゾ方式またはバブルジェット方式により微小な液滴として飛翔させ、記録媒体上に付着させることを特徴とする画像形成方法。
【請求項15】
請求項1〜9のいずれかに記載のインクを記録媒体上に付着させたのち、熱エネルギーを与えて加熱乾燥させることを特徴とする請求項13に記載の画像形成方法。

【公開番号】特開2007−277302(P2007−277302A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−102114(P2006−102114)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】