説明

インクカートリッジ及びインクジェットプリンタ

【課題】装置巾を大きくすることがなく、且つ、取り扱いが容易で装置への脱着も容易なインクカートリッジとインクジェットプリンタを提供する。
【解決手段】インクカートリッジ1の前面に切欠き(凹部)3を設け、その角部4とカートリッジ上面に設けた凸部2との間を把持部5とする。把持部5の両端を(凸部2と角部4を)2本の指でつまむことにより、幅の狭い薄型カートリッジであっても、しっかりとカートリッジを保持することができ、プリンタ本体への着脱を容易にかつ確実に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェットプリンタ及びインクカートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開平10−305591号公報
【0003】
用紙等の記録媒体に向けてノズルから微小インク滴を噴出させて記録を行うインクジェットプリンタは周知である。通常、インクジェットプリンタは、ノズルを有する印字ヘッドと、その印字ヘッドにインクを供給するインクカートリッジとを備えている。パーソナルユーズを主眼とする装置では、インクカートリッジをヘッドと共にキャリッジに搭載するタイプのものが多い。一方、ビジネスユーズのものでは、インクカートリッジをヘッド(及びキャリッジ)とは別にして装置本体に搭載するタイプのものが多い。いずれのタイプも、カートリッジ内のインクが消費されると、カートリッジを装着部から取り外し、新しいカートリッジと交換する。なお、個人向けの一部機種にはインクカートリッジとヘッドが一体化され、インクが消費されるとヘッドごとカートリッジを交換するものもある。
【0004】
さて、ビジネス向けの機種においては、通常、個人向けのものよりもインクカートリッジの容量が大きくなっている。特に、近年ではプリントの高速化に伴うインク消費の増大に対応するため、インクカートリッジが大容量化する傾向にある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、インクジェットプリンタではヘッドを搭載するキャリッジが用紙の上部を左右に(用紙幅方向に)移動して記録を行うため、通紙領域の上部にキャリッジの移動する空間が必要である。したがって、インクカートリッジを装置本体に搭載するタイプでは、通紙巾の中にインクカートリッジを収めることは難しく(装置の高さが高くなってしまう)、通紙巾の外側にインクカートリッジを装着する構成となる。上記特許文献1に記載のものも、通紙巾の外側にインクカートリッジを配置している。
【0006】
ところが、通紙巾の外側にインクカートリッジを位置させる場合、装置巾を広げる結果となる。近年ではインクジェットプリンタといえばカラープリンタであることが通常であり、4色以上の(4つ以上の)インクカートリッジを装着することにより、また、カートリッジの大容量化により、装置巾が増大してしまう。
【0007】
この装置巾の増大に対処するために、カートリッジの薄型化が提案されているが、複数個の薄型インクカートリッジが並んで配置される場合、カートリッジ同士の間隔を大きくしないとカートリッジの脱着(特に取り外し)がしにくく、間隔を大きくすると装置巾が大きくなってしまうという問題があった。
【0008】
薄型化したカートリッジの取り出しを容易にするために、レバー操作やノッチを押すことなどによりカートリッジをつかみやすい取り出し位置に移動させる、いわゆるポップアップ機構を採用することも考えられるが、構造が複雑化し重量及びサイズの増大とコストの上昇という問題がある。
【0009】
また、1つのカートリッジにおいても、カートリッジの厚さを薄くした分、上下または(及び)前後(奥行方向)のサイズが大きくなり、手の小さい人にとってはカートリッジの取り扱いがしにくい(掴みにくい、持ちにくい)という問題もある。
【0010】
また、カートリッジの脱着に際し、水平方向(装置前後方向)に脱着を行うものでは、装置の設置場所が低いとカートリッジの脱着がしにくいという問題がある。そして、カートリッジの脱着に際し、上下方向に脱着を行うものでは、装置の設置場所が高いとカートリッジの脱着がしにくいという問題がある。カートリッジの脱着性はカートリッジの薄型化とも関連しており、例えば、薄型化によりカートリッジの持ち方が規制されると、その持ち方ゆえに水平方向あるいは上下方向の脱着性が低下するという場合もある。
【0011】
本発明は、従来のインクジェットプリンタ及びそのインクカートリッジにおける上述の問題を解決し、装置巾を大きくすることがなく、且つ、取り扱いが容易で装置への脱着も容易なインクカートリッジとインクジェットプリンタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の課題は、本発明により、インクジェットプリンタに着脱可能なインクカートリッジにおいて、前記カートリッジ背面部にインク供給管を有し、該インク供給管の周囲に空間部が設けられ、該空間部はカートリッジ巾方向の両側で外部に開放されていることにより解決される。
【0013】
また、前記の課題を解決するため、本発明は、前記インク供給管にゴムが充填されていることを提案する。
【0014】
また、前記の課題を解決するため、本発明は、カートリッジ装着の際の案内をするガイド部材を有することを提案する。
また、前記の課題を解決するため、本発明は、前記ガイド部材により、カートリッジ装着時の位置決めが行われることを提案する。
【0015】
また、前記の課題を解決するため、本発明は、上下方向の位置決めを行う位置決め部を有することを提案する。
また、前記の課題を解決するため、本発明は、前記ガイド部材は、前後方向の位置決めを行う位置決め部を有することを提案する。
【0016】
また、前記の課題を解決するため、本発明は、収納するインク色に対応して前記ガイド部材が異なる位置に設けられていることを提案する。
また、前記の課題は、本発明により、請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクカートリッジを備えるインクジェットプリンタにより解決される。
【0017】
また、前記の課題を解決するため、本発明は、複数個の前記インクカートリッジを印字ヘッドとは別に通紙巾の外側に装着するカラープリンタであることを提案する。
また、前記の課題を解決するため、本発明は、複数個の前記インクカートリッジを印字ヘッドと共にキャリッジに搭載するカラープリンタであることを提案する。
【0018】
また、前記の課題を解決するため、本発明は、前記インクカートリッジを保持する保持部材は、上側部材が下側部材よりも装置奥側に後退して位置していることを提案する。
【発明の効果】
【0019】
本発明のインクカートリッジによれば、カートリッジ背面部にインク供給管を有し、該インク供給管の周囲に空間部が設けられ、該空間部はカートリッジ巾方向の両側で外部に開放されているので、薄型カートリッジにおいてもプリンタ本体のインク供給針を保護する保護部材を逃がすことができる。
【0020】
請求項2の構成により、インク供給針が抜かれる(カートリッジが取り外される)と、インク供給管のゴムは針の穴を塞いでしまい、インクが漏れることはない。
請求項3の構成により、カートリッジ装着の際の案内をするガイド部材を有するので、プリンタ本体へのカートリッジ装着動作が容易になる。
【0021】
請求項4の構成により、ガイド部材によりカートリッジ装着時の位置決めが行われるので、確実なインク供給が可能となる。
請求項5の構成により、ガイド部材は上下方向の位置決めを行う位置決め部を有するので、インクカートリッジの上下方向の位置決めが確実に行われる。
【0022】
請求項6の構成により、ガイド部材は前後方向の位置決めを行う位置決め部を有するので、インクカートリッジの前後方向の位置決めが確実に行われる。
請求項7の構成により、収納するインク色に対応してガイド部材が異なる位置に設けられているので、誤った色のインクカートリッジを装着することがない。
【0023】
請求項8の構成により、インクカートリッジが薄いインクジェットプリンタを提供することができる。
請求項9の構成により、複数個のインクカートリッジを印字ヘッドとは別に通紙巾の外側に装着するカラープリンタにおいても、装置巾を極力抑えることができる。
【0024】
請求項10の構成により、複数個のインクカートリッジを印字ヘッドと共にキャリッジに搭載するカラープリンタにおいても、薄型インクカートリッジを容易かつ確実に着脱することができる。
【0025】
請求項11の構成により、インクカートリッジを保持する保持部材は、上側部材が下側部材よりも装置奥側に後退して位置しているので、カートリッジ着脱方向の自由度が増大し、着脱動作が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係るインクカートリッジが装着されるインクジェットプリンタの一例を示す正面図である。
【0027】
この図に示すインクジェットプリンタ100は、用紙等の記録媒体を収める用紙カセット101,印字ヘッドを搭載するキャリッジ(図示せず)が用紙の巾方向に往復移動して印字を行うためのキャリッジ移動部102,印字された用紙が排出される排紙部103,装置手前方向に引き出し可能な排紙トレイ104等を有している。プリンタ本体の右側部には、後述するインクカートリッジを装着するためのカートリッジ装着部105が設けられている。カートリッジ装着部105は、図2に示すように、カバー106を開けることによりアクセス可能となる。カートリッジ装着部105の上面は操作部107となっている。
【0028】
このプリンタの印字部の構成は従来周知のインクジェット方式によるものと同様であるので、インクカートリッジを中心に説明する。
カートリッジ装着部105のカバー106を開放した状態を示す図2において、4つの(4色分の)インクカートリッジ1が並んで配置されている。本例では、左から順に、黒(Bk),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の配置になっている。各カートリッジは、プリンタ本体に設けられたセット部材108の図示しないガイド部によって所定の位置に装着できるようになっている。
【0029】
図3は、インクカートリッジ1の外観を示すもので、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は斜視図、(d)は部分詳細図である。この図に示すように、カートリッジ1は基本的には直方体形状をしており、図3(b)に示すように側面から見た場合はほぼ正方形に近い形状である。カートリッジ1を正面から見た図である図3(a)に示されるように、カートリッジ1はその幅に比べて高さがかなり大きく、薄型カートリッジとなっている。
【0030】
カートリッジ上面の手前側、すなわち図3(b)における上面の左端部には、角が丸められらた凸部2が形成されている。この凸部2は、カートリッジ1を持つ際に指を掛ける、第1の指掛け部である。また、カートリッジ手前側面(図3(b)の左側)の中央よりやや下には、切欠き部3がカートリッジ側面から内部に凹んだ形状で形成されている。この切欠き部3の手前上端側の角部4は、カートリッジ1を持つ際に指を掛ける、第2の指掛け部である。凸部2から角部4の内側端部までの部分、すなわち図3(d)に点線で示す部分が、カートリッジ1を持つための把持部5となっている。
【0031】
すなわち、本実施例のインクカートリッジ1を前述のカートリッジ装着部105に脱着する際には、図4に示すように、カートリッジの上面前端部にある凸部2に親指を、カートリッジ前面の切欠き部3に人差し指を入れて角部4に指を掛け、把持部5を2本の指で上下からつまむような感じでカートリッジを支える。図では左手であるが、右手の場合も同様であり、親指と人差し指で把持部5をつまむように支持する。そして、カートリッジを取り外す場合は手前に引き、装着する場合は装置奥側に押し込むようにする。なお、把持部5の大きさ(上下方向の大きさ)は、標準的な大人が軽く親指と人差し指を広げた場合の間隔となるように、設定されている。
【0032】
このような、親指をカートリッジ上面前端部の凸部2に掛け、人差し指をカートリッジ前面中ほどの切欠き部3の角部4に掛けるカートリッジの持ち方(支持方法)は、インクジェットプリンタ100を机上に載置し、平均的な身長の人間が立った状態でインクカートリッジ1を前後に(装置手前と奥側に)動かす際に、非常に操作し易い支持方法となっている。
【0033】
また、このカートリッジの支持方法は、カートリッジ取り外し時に、インクカートリッジ1を先ず手前に引いて装着部105(セット部材108)から抜き、続いて斜め上方向に持ち上げるような取り外し方ができ、カートリッジの取り外しを非常に容易なものにしている。人体の構造からして、親指を上に人差し指を下にして手を前に出した状態から(2本の指で把持部5をつまんだまま)、ひじを後ろに引くと(すなわちこの動作はカートリッジ1を取り外す動作である)、自然に斜め上方にひじが移動し、次第にひじ曲がってくる。これにより、手が自分の体に近づくように移動しながらわずかに上方に上がってくる。
【0034】
本実施例におけるインクカートリッジ1は、カートリッジ上面部に第1の指掛け部である凸部2を設け、カートリッジ前面の中ほどに切欠き部3を形成しその(切欠き部の)手前側上端部に第2の指掛け部である角部4を設けたことにより、人間の自然な動作がカートリッジ1を取り外す動作となっている。
【0035】
同様に、カートリッジ1を装着部105にセットする際も、プリンタ100の前に立つと、装置手前側の斜め上方からカートリッジ装着部105を見下ろす感じとなり、交換用カートリッジを持った手を装置奥側に出すようにひじを伸ばすと、手及びカートリッジは自然に前方に向けて移動する(このとき、わずかに下方に移動する)。したがって、人間の自然な動作がカートリッジ1を装着する動作ともなっている。
【0036】
ところで、インクジェットプリンタ100を机上に載置するのではなく、もう少し高い場所、例えば棚等に設置するような場合もある。そのような場合は、インクカートリッジ1の持ち方を変えることにより、脱着動作を容易に行うことができる。
【0037】
インクジェットプリンタ100の設置場所が高いときは、カートリッジ上面前端部の凸部2に人差し指を掛け、カートリッジ前面中ほどの切欠き部3の角部4に親指の腹を掛け、2本の指で把持部5をつまむようにする。そして、カートリッジを取り外す場合は手前に引き、カートリッジを装着する場合は奥側に押し込む。
【0038】
凸部2に人差し指を掛け角部4に親指の腹を掛ける把持部5の持ち方は、プリンタ設置場所が高い場合のカートリッジ脱着動作を非常に容易に行うことのできる持ち方である。人体の構造からして、人差し指を上にして親指を下にした状態から(2本の指で把持部5をつまんだまま)、手を上方に持ち上げることも下方に下げることも、もちろん、前後左右に移動させることも、極めて容易である。
【0039】
したがって、プリンタの設置場所が高いときにカートリッジ1を取り外す場合、凸部2に人差し指を掛け角部4に親指の腹を掛けて2本の指で把持部5をつまみ、カートリッジを手前に引いた後、手を下ろせばよい。また、カートリッジ1を装着する場合は、交換用カートリッジの凸部2に人差し指を掛け角部4に親指の腹を掛けて2本の指で把持部5をつまみ、手を持ち上げて装着部108の奥側に押し込めばよい。取り外し時も装着時も、人間の自然な動作で作業を行うことができる。
【0040】
このように、本実施例におけるインクカートリッジ1は、カートリッジの隣接する2面(実施例では上面と前面)にまたがって把持部5を形成したことにより、自然な動作でカートリッジの脱着を行うことのできる形態であり、人間工学的、あるいはヒューマンメカトロニクス的に見て、脱着動作の容易な形状であるということができる。
【0041】
特に、カートリッジの隣接する2面にまたがる把持部5を設け、この把持部5を2本の指で上下から指でつまむことによりカートリッジを支持することのできる形態は、カートリッジの厚さが薄い場合でもしっかり支持することができ、かつ、脱着動作の容易な形態である。
【0042】
従来のインクカートリッジは、2本の指で左右から(厚さ方向から)カートリッジを挟んだり、2本の指でカートリッジの前後(前面と後面)あるいは上下(上面と下面)を持つようになっている。このようなカートリッジの対向する2面を支持する形態の場合、カートリッジが薄くなってくると持った時に不安定となり、かえって持ちにくくなってしまう。また、カートリッジの前後あるいは上下を持つ場合は、カートリッジが大型化すると持ちにくく(特に手の小さい人にとっては)なってしまう。さらに、カートリッジを左右からつまむ形態では、隣のカートリッジとの間にスペースがないとつまむことができず、複数カートリッジを備えるカラープリンタでは装置巾が増大してしまう。しかし、本実施例のカートリッジ1では、脱着動作の容易性を犠牲にすることなくカートリッジの薄型化を実現できるので、カラープリンタにおいても装置巾を増大させることが無い。
【0043】
その上、カートリッジの隣接する2面に把持部5を設けたことにより、カートリッジの脱着に際し、カートリッジのどこに指を掛けてカートリッジを持てばよいかが一目で分り、視覚的にも脱着動作を容易なものにしている。例えば、従来のインクカートリッジにおいては、カートリッジの左側面と右側面とを挟んで持ったり、カートリッジの上面と下面を挟んでもったりするような支持方法である。このような支持方法、すなわち、単純な直方体のような形状のカートリッジでは、着脱動作に対してカートリッジのどこを持てばよいかが明確ではない。しかし、上述の如く、本実施例のインクカートリッジ1では、把持部5の両端であるカートリッジ上面前端部に設けた凸部2と前面中ほどに設けた角部4とにより、その2箇所に指を掛けてカートリッジを持てばよいことが誰にでも理解でき、脱着動作を視覚的にも補助するカートリッジ形状となっている。例えば、図3(c)あるいは図2からも明らかなように、カートリッジ前面に凹み(切欠き部3)が設けられていることにより、把持部5が前方にせり出しているように見え、ユーザはその把持部5の両端、すなわち凸部2と角部4とを持てばよいことが容易に連想される。
【0044】
さらに、本実施例におけるインクカートリッジ1は、カートリッジ前面部に切欠き部3を設け、そこに第2の指掛け部である角部4を設けたことにより、その切欠き部3に指を入れてカートリッジを持てばよいであろうことが容易に想像され、カートリッジの支持方法を視覚的に理解させることのできるカートリッジ形状となっている。
【0045】
そのうえ、カートリッジ前面部に切欠き部3を設けることは、薄型カートリッジが複数個並んだ状態でのカートリッジ脱着動作を容易にしている。
すなわち、図4に示すように、人差し指を横にして角部4に掛ける場合、指は当然カートリッジの厚さには収まらず、両側にはみ出すことになる。ところが、本実施例では、図2に示すように複数個のカートリッジが装着部105に装着された状態で、各カートリッジの切欠き部3が横並びしている。そのため、人差し指を横にしたときに指は複数個の切欠き部3に入り込むことができ、その状態で目的のカートリッジの切欠き部に設けられた角部4に、指を簡単に掛けることができる。人間の手指は器用にできているので、複数個のカートリッジ1(の切欠き部3が)が並んだ状態でも、取り外そうとする目的のカートリッジの角部4に簡単に指を掛けることができる。上側の指掛け部である凸部2に対しては、カートリッジ上面前端の凸部2に、親指を上から(親指の腹を下にして)乗せるだけであるので、薄型カートリッジであっても簡単に親指を目的のカートリッジ(の凸部2)に掛けることができる。なお、カートリッジを装着する際は、親指と人差し指で把持部5を支持した状態で、カートリッジの奥側を後述するスロット115(図8)にある程度まで差し込み、その後、指を把持部5から放して、カートリッジの前面を押し込むことにより簡単に装着することができる。
【0046】
また、人差し指を凸部2に親指を角部4に掛ける場合(持ち方を逆にした場合)でも、凸部2に人差し指を掛けるのは容易であるし、親指を角部4に掛ける場合に指がカートリッジからはみ出しても、はみ出した部分は隣のカートリッジの切欠き部3に逃げることができるので、カートリッジの支持は容易であり、取り外し及び装着を簡単に行うことができる。
【0047】
このように、本実施例のインクカートリッジ1においては、カートリッジ前面部に切欠き部3が設けられていることにより、薄型カートリッジにおける取り扱いを向上させ、装着部への脱着を容易にしている。
【0048】
ところで、切欠き部3の上端部に設けられた角部4は、本実施例では鋭角に形成されている。これにより、角部4の内側に空間部3a(図5)が形成され、指の収まりがよくなって指のすべりが防止される。そのため、カートリッジ取り出しの際の斜め上方への引き上げが容易になる。
【0049】
そして、切欠き部3の下端部は図に角度βで示すように鈍角に形成されている。これにより、切欠き部3への指の進入が容易になる。同時に、鈍角βにより形成される斜辺部3bが、視覚的に指を切欠き部3へ導く導入部となっている。
【0050】
ところで、インクカートリッジ1の背面部には、図6に示すように、切欠き6が設けられている。そして、カートリッジに内蔵されたインク袋8に連結されたインク供給管7が切欠き6内に位置するよう設けられている。インク供給管7にはゴムが充填されており、プリンタ本体に突設されたインク供給針110(図7)がインク供給管7を貫通して針先端がインク袋8内に進入することにより、インクが供給可能となる。なお、インク供給針110が抜かれる(カートリッジが取り外される)と、インク供給管7のゴムは針の穴を塞いでしまい、インクが漏れることはない。
【0051】
上記の切欠き6は、図6左側の背面図に示すように、カセット両側面の空いた(切り欠かれた)略円形断面をしている。その切欠き6と同心上に円筒形断面のインク供給管7が設けられている。
【0052】
一方、プリンタ100の本体側には、図7に示すように、保護パイプ109により周囲を保護されたインク供給針110が設けられている。インク供給針110は、4色のカートリッジに対応して4本設けられるものである。保護パイプ109の長さはインク供給針110より短く、保護パイプ109の先端からインク供給針110が突出した状態で、上記カートリッジ装着部105の奥に配置されている。カートリッジ装着部105のセット部材108(図2)にインクカートリッジ1が完全に装着されると、図7に示すように、インク供給針110がインク供給管7を貫通し、針先端部がインク袋8の中に進入する。そして、印刷時にカートリッジ内の(インク袋8内の)インクがプリントヘッドに供給されることになる。
【0053】
ここで、保護パイプ109により保護されたインク供給針110がインク供給管7に差し込まれるためには、保護パイプ109がカートリッジのケースに当接せずに所定位置までカートリッジ内に進入できることが必要であるが、保護パイプ109を受け入れるだけの空間を全てカートリッジ断面(カートリッジの厚さ)の中に設けようとすると、カートリッジの厚さが大きくなってしまう。しかし、本実施例のカートリッジ1においては、図6左側の背面図に示すようにインク供給管7の左右両側でカートリッジケースが切り欠かれているので、カートリッジの厚さを小さくした(薄くした)場合でも、保護パイプ109を受け入れることができる。これにより、図7に示すように、保護パイプ109の先端がカートリッジの切欠き6の奥側端面に当接するまで、カートリッジ内に入り込み、そのとき、インク供給針110がインク供給管7を貫通してインク袋8の中に進入する。
【0054】
また、本実施例のカートリッジ1には、図3に示すように、その上面と下面にガイド部材9,10が設けられている。このガイド部材9,10は、インクカートリッジ1を装着部のセット部材108(図2)にセットする際のガイド部材である。上述したインク供給針110が正確にインク供給管7に入り込むためには、セット部材108にカートリッジをセットした際に、正確な位置決めがなされていないといけない。そのカートリッジの位置決めを行う部材が、ガイド部材9,10である。
【0055】
すなわち、図8に示すように、セット部材108の保持部材113,114には、ガイド部材9,10が入り込むスリット111,112が設けられている。カートリッジ1を装着スロット115にセットするとき、カートリッジの上ガイド部材9が上スリット111に、下ガイド部材10が下スリット112に入り込み、上下及び左右方向の位置決めが行われる。
【0056】
上下ガイド部材9,10は、図9に拡大して示すように、それぞれ前端部の高さh2が前端部以外の高さh1よりも大きくなっている。このため、上下ガイド部材9,10が上下スリット111,112に入り込む際、前端部のところまではスムーズにスリットに入り込み、ガイド部材の前端部(高さh2のところ)でカートリッジ1が保持部材113,114にしっかりと保持され、上下の正確な位置決めが行われる。カートリッジ1の左右方向(巾方向)の位置決めは、スリット111,112の巾によるガイド部材9,10の保持によりなされる。また、上ガイド部材9は前側部材9aと後側部材9bとその間の凹み9cとで構成されており、上スリット111には所定の位置に図示しない小突起が形成されている。その小突起がガイド部材の凹み9cに嵌合することにより、カートリッジ1の前後方向(装置奥行方向)の位置決めがなされる。
【0057】
このようにしてセット部材108の所定のセット位置に正確に位置決めしてインクカートリッジ1が装着されることにより、上述したインク供給針10がインク供給管7に挿入され、カートリッジ内のインクが本体に供給される。
【0058】
図10は、インクカートリッジ1が装着されるセット部材の別例を示す斜視図である。この図に示すセット部材108Bにおいても、図8の保持部材113,114と同様のスリットを有する保持部材が設けられているが、図には省略されている。このセット部材108Bは、上面部が装置奥側に後退しており、直方体の上前側の角部をカットしたような形状となっている。その形状に対応して、上側保持部材(図示せず)の奥行は短くなっている。
【0059】
さて、本例のセット部材108Bでは、装着されているインクカートリッジ1を取り外す際に、カートリッジ1をある程度前方にスライドさせると(上ガイド部材の前側部材9a(図9参照)がスリットから抜けたあたり)、上斜め方向に抜き取ることができる。また、カートリッジを装着する際も、最初は斜め下方に向けてカートリッジ1をスロットに差し込み、その後水平方向奥側に押し込むようにすればよい。このように、本例のセット部材108Bにおいては、インクカートリッジ1の脱着方向の自由度が高くなり、操作性を向上させることができる。
【0060】
図11は、収納するインク色に対応して設けられるガイド部材の例を示す部分拡大図である。
この図に示すように、カートリッジ内に収納するインク色に応じて、カートリッジ上面に設ける上ガイド部材9の位置を、実線あるいは点線で示すように異なる位置に形成する。もちろん、上ガイド部材9の位置に対応して、ガイド部材9が挿入されるスリット111(図8参照)も異なる位置に形成されるのは言うまでもない。これにより、例えば黒、シアン、マゼンタ、イエローの各カートリッジは、各色に対応する正しいスロット115(図8参照)にしかセットできなくなり、間違った色のカートリッジを装着することが防止される。
【0061】
なお、上ガイド部材9ではなく、下ガイド部材10の位置を異ならせることにより各色カートリッジを適正な位置にセットするようにしても良い。あるいは、上ガイド部材9と下ガイド部材10の双方の位置の組み合わせにより、各色カートリッジを適正な位置にセットするようにしても良い。
【0062】
以上、本発明を図示例により説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1の指掛け部である凸部2は、本例では図3(b)に示されるように半円状の段面形状をしているが、角部を有する角張った形状でも良い。あるいは、カートリッジ奥側に行くにしたがって高さが低くなるスロープ状でも良い。また、凸部2は、図示例のようにカートリッジ上面の前端部に限らず、多少奥側に位置して設けてもよい。また、第2の指掛け部である角部4を丸みのある形状にすることもできる。さらに、カートリッジ前面の切欠き部3は、本例のように角のある形状に限らず、丸みを帯びた(角のない)形状の切り欠きとすることもきる。
【0063】
また、カートリッジの位置決めのために設けるガイド部材も、図3に示されるような平板状に限らず、もっと厚みのある箱状にすることもできる。カートリッジ側のインク供給管の形状や材質、あるいは装置本体側のインク供給針及び保護部材の形状や構成等も、適宜変更できるものである。
【0064】
そして、図示例ではインクカートリッジ1を基本的には水平方向に脱着する(取り外しの初期においては水平方向に移動させる)構成であったが、上下方向あるいは斜め方向に脱着するように構成することもできる。その場合でも、本発明のカートリッジにより、脱着動作が容易である。また、インク供給管7とその周囲の切欠き部6、あるいはガイド部材9,10等は、着脱方向に適した位置に設ければよい。
【0065】
さらに、本実施形態では、印字ヘッド(及びキャリッジ)とは別にして装置本体に搭載するタイプのインクカートリッジであったが、ヘッドと共にキャリッジに搭載するタイプのインクカートリッジについても、本発明を適用することができる。また、本体側のポップアップ機構(カートリッジを取り外し位置に移動させる機構)と併用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係るインクカートリッジが装着されるインクジェットプリンタの一例を示す正面図である。
【図2】そのプリンタのインクカートリッジ装着部を示す斜視図である。
【図3】本発明によるインクカートリッジの一例を示す正面図、側面図、斜視図及び部分図である。
【図4】図2のカートリッジ装着部にインクカートリッジを着脱する様子を示す斜視図である。
【図5】図3のインクカートリッジの一部を詳しく示す部分拡大図である。
【図6】インクカートリッジのインク供給管を示す部分詳細図である。
【図7】そのインク供給管にプリンタ本体のインク供給針110が挿入された状態を示す部分詳細図である。
【図8】プリンタ本体のインクカートリッジ装着部の構成を示す斜視図である。
【図9】インクカートリッジに設けられたガイド部材を示す拡大図である。
【図10】インクカートリッジが装着されるセット部材の別例を示す斜視図である。
【図11】収納するインク色に対応して設けられるガイド部材の例を示す部分拡大図である。
【符号の説明】
【0067】
1 インクカートリッジ
2 凸部(第1の指掛け部)
3 切欠き部(凹部)
4 角部(第2の指掛け部)
5 把持部
7 インク供給管
8 インク袋
9,10 上下ガイド部材
100 インクジェットプリンタ
101 用紙カセット
105 カートリッジ装着部
108 セット部材
109 保護パイプ
110 インク供給針
111,112 スリット
113,114 保持部材
115 装着スロット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリンタに着脱可能なインクカートリッジにおいて、
前記カートリッジ背面部にインク供給管を有し、該インク供給管の周囲に空間部が設けられ、該空間部はカートリッジ巾方向の両側で外部に開放されていることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項2】
前記インク供給管にゴムが充填されていることを特徴とする、請求項1に記載のインクカートリッジ。
【請求項3】
カートリッジ装着の際の案内をするガイド部材を有することを特徴とする、請求項1に記載のインクカートリッジ。
【請求項4】
前記ガイド部材により、カートリッジ装着時の位置決めが行われることを特徴とする、請求項3に記載のインクカートリッジ。
【請求項5】
前記ガイド部材は、上下方向の位置決めを行う位置決め部を有することを特徴とする、請求項4に記載のインクカートリッジ。
【請求項6】
前記ガイド部材は、前後方向の位置決めを行う位置決め部を有することを特徴とする、請求項4または5に記載のインクカートリッジ。
【請求項7】
収納するインク色に対応して前記ガイド部材が異なる位置に設けられていることを特徴とする、請求項3〜6のいずれか1項に記載のインクカートリッジ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクカートリッジを備えることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項9】
複数個の前記インクカートリッジを印字ヘッドとは別に通紙巾の外側に装着するカラープリンタであることを特徴とする、請求項8に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項10】
複数個の前記インクカートリッジを印字ヘッドと共にキャリッジに搭載するカラープリンタであることを特徴とする、請求項8に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項11】
前記インクカートリッジを保持する保持部材は、上側部材が下側部材よりも装置奥側に後退して位置していることを特徴とする、請求項7〜10のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2008−132797(P2008−132797A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48324(P2008−48324)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【分割の表示】特願2002−273520(P2002−273520)の分割
【原出願日】平成14年9月19日(2002.9.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】