説明

インクカートリッジ

【課題】インクジェットプリンタ等の印刷装置において、輸送時の持ち運びや、交換時における着脱の操作性を高める。
【解決手段】印刷装置に対して水平方向に着脱されるインクカートリッジであって、インクが封入される液体収納容器220と、液体収納容器が挿入される箱状の外装体240と、この外装体240の一端に配置され、印刷装置側のジョイント部313に係合される供給口230を有する係合面210と、外装体240の係合面210と反対側の他端側において、外装体の表面に形成された凹部204とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタなどの印刷装置に対して着脱されるインクカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インクジェット方式などの印刷装置では、画像形成部にインクを補給するために、装置本体に着脱されるインクカートリッジが使用されている。このインクカートリッジとしては、インクジェット記録装置への着脱性が容易で、輸送及び取り扱い過程での落下、輸送時の振動等に対して耐性を有し、且つ安価に製作を可能にしたいという要請があり、これに応える技術として、インクを充填した多層熱可塑性フィルム材料からなる内袋と、この段ボール等の外箱を有するものが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このような特許文献1に開示された技術によれば、外箱を段ボールとすることにより、着脱や輸送などの取り扱いの際の耐性を維持しつつ、安価にインクカートリッジを製作することができる。
【特許文献1】特開2006−198778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたインクカートリッジでは、段ボール素材を使用した外箱は凹凸のない長方形であるため、輸送時の持ち運びや本体装置への装着時において取り扱い難さがあり、インクカートリッジの交換に際し、作業性が低いという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記のような問題を解決するものであり、印刷装置のインクカートリッジにおいて、輸送時の持ち運びや、本体装置への着脱時における操作性を高めることのできる印刷装置及び印刷制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、印刷装置に対して水平方向に着脱されるインクカートリッジであって、インクが封入される液体収納容器と、液体収納容器が挿入される箱状の外装体と、この外装体の一端に配置され、印刷装置側のジョイント部に係合される供給口を有する係合面と、外装体の係合面と反対側の他端側において、外装体の表面に形成された凹部とを有する。
【0007】
このような本発明によれば、水平方向に着脱するインクカートリッジにおいて、外装体の係合面の反対側となる多端側に凹部を形成したため、操作者がこの凹部を掴んでインクカートリッジを引き出すことができることから、インクカートリッジの着脱が容易となり作業性が向上するうえ、液体収納容器の挿入方向と、着脱の操作方向が一致するため、外装体に無理な応力が生じず着脱部や外装体が破損される可能性を低減することができる。
【0008】
上記発明において、液体収納容器は、その終端が尖形をなし、外装体の内部終端には、外装体内面と、尖形外面との間の空間形状を確保する仕切部材が配置されていることが好ましい。この場合には、液体収納容器を外装体内に固定することができるとともに、液体収納容器終端の尖形を維持することができ、インクの供給に必要な勾配を確保することができる。
【0009】
上記発明において、仕切部材によって確保される空間は、外装体内部において、凹部の裏面に対応した位置であることが好ましい。この場合には、外装体内において、液体収納容器の固定及び勾配確保のための仕切部材により画成された空間を、操作者が外装体を掴むための空間とすることができ、外装体内の空間を有効に利用することができるとともに、操作者が外装体を掴むことによる応力が、内部の液体収納容器終端に悪影響を及ぼすのを回避することができる。
【0010】
上記発明において、凹部は、外装体の表面を貫通する穴であり、穴は、外装体の部材表面において、一部を内面側に且つ終端側に向けて折り曲げられて形成されていることが好ましい。この場合には、上記凹部を簡単に形成することができるとともに、部材表面の一部を終端側に向けて折り曲げることにより、操作者が外装体を引き出す際の応力を適切に外装体に伝達することができる。
【0011】
上記発明において、液体収納容器は、その終端が尖形をなし、外装体の内部終端には、外装体内面と、尖形外面との間の空間形状を確保する仕切部材が配置され、凹部は、外装体の部材表面において、一部を内面側に且つ終端側に向けて折り曲げられて形成された穴であり、折り曲げられた部分は、仕切部材により確保された空間内に位置されることが好ましい。
【0012】
この場合には、外装体内において、液体収納容器の固定及び勾配確保のための仕切部材により画成された空間を、操作者が外装体を掴むための空間とすることができるとともに、部材表面の一部を終端側に向けて折り曲げることにより、操作者が外装体を引き出す際の応力を適切に外装体に伝達することができ、さらには、穴に操作者が手を入れた際に、操作者が内部の液体収納容器に触れることを回避することができ、液体収納容器を保護することができる。
【0013】
上記発明において、仕切部材は、外装体を構成する部材の一部分であり、外装体の展開図において外装体と一体をなすことが好ましい。この場合には、展開図として切り出された部材を折りたたむことにより、外装体と仕切部材とを一括して製造することができ、部品点数を減らすことができるとともに、製造工程を簡略化することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上述べたように、この発明によれば、インクジェットプリンタ等の印刷装置において、簡単な構成により輸送時の持ち運びや、交換時における本体装置への着脱に際し、その操作性を高めることができるとともに、外装体内の液体収納容器を保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(印刷装置の全体構成)
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る印刷装置100の印刷用紙搬送経路の概要を示す図である。本実施形態では、印刷装置100は、多数のノズルが形成されたインクヘッドを複数備え、それぞれのインクヘッドから黒又はカラーインクを吐出してライン単位で印刷を行い、搬送ベルト上の印刷用紙上に複数の画像を互いに重なり合うように形成するインクジェット方式のラインカラープリンタを例に説明する。
【0016】
本実施形態において、上記インクヘッドは、用紙の搬送方向に沿って、4つのインクヘッドが並べて配置され、複数の画像を互いに重なり合うようにしてカラー画像を形成する。印刷装置100内部には、演算処理装置330が備えられており、この演算処理装置330によって、上述したインクヘッドによる印刷処理や、搬送機構の駆動制御の他、インクカートリッジからのインク供給に関する制御も行う。
【0017】
この演算処理装置330は、CPUやDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ、メモリ、及びその他の電子回路等のハードウェア、或いはその機能を持ったプログラム等のソフトウェア、又はこれらの組み合わせなどによって構成された演算モジュールであり、プログラムを適宜読み込んで実行することにより種々の機能モジュールを仮想的に構築し、構築された各機能モジュールによって、画像データに関する処理や、各部の動作制御、ユーザー操作に対する種々の処理を行う。また、この演算処理装置330には、操作パネル340が接続されており、この操作パネル340を通じて、ユーザーによる指示や設定操作を受け付けることができる。
【0018】
印刷装置100は、装置本体1の上面にインクカートリッジ200を取付けるカートリッジ取付機構30が設けられており、このカートリッジ取付機構に対して上記各色のインクカートリッジ200が複数(ここでは、4本)配列されて装填される。このカートリッジ取付機構30にインクカートリッジの着脱機構であるホルダー部が水平方向に向けられて設けられている。また、このカートリッジ取付機構30上方を覆うように上面装置350が配設され、インクカートリッジ200の装填は、この上面装置350下面と印刷装置本体1の上面との間に水平方向に挿入することにより行われる。この上面装置350は、例えば、シートフィーダーや操作パネルなどが配設される。
【0019】
(インクカートリッジの全体構成)
図2(a)は、インクカートリッジ200の外観斜視図であり、同図(b)は、係合面の正面図である。また、図3(a)は、インクカートリッジ200の側断面図であり、同図(b)は、(a)の係合面部分を拡大して示す断面図である。なお、図3においては、外装体240に係合面210を取付けた状態を示しているが、内部の液体収納容器は省略している。
【0020】
インクカートリッジ200は、印刷装置100に対して水平方向(着脱操作方向D2)に着脱される細長の筐体であり、インクが封入される液体収納容器220と、液体収納容器220が挿入される外箱である外装体240とから概略構成されている。
【0021】
外装体240は、横断面における内面形状が矩形の筒状体であり、本実施形態では、インクカートリッジ200の着脱操作方向を含む水平面に平行となる横辺と、その水平面に垂直となる縦辺との比が、約2対1となっている。換言すると、図2(b)に示すように着脱操作方向に取付け操作される際、印刷装置100側となる係合面210を正面とすると、インクカートリッジ200の幅wと、高さhの比が約2対1となっている。
【0022】
また、外装体240の印刷装置100側端面には、印刷装置100側のカートリッジ取付機構30に係合される係合面210が嵌め込まれている。この係合面210は、樹脂又は金属などの硬質材料で形成され、印刷装置100のカートリッジ取付機構30に当接される突当面となっている。
【0023】
この係合面210は、その中央にインク供給口230が配置されており、この供給口の左右両側の面が突当面210a,210aとなる。この突当面210a,210aは、樹脂や金属で一体成形された部材であり、箱状の外装体240の端部に嵌め込まれ、粘着面を有した紙製のラベル210bで外装体240に固定されている。
【0024】
この係合面210の中央部上下には、印刷装置100側に設けられた把持手段によって把持されるように嵌合される嵌合部212が形成されている。この嵌合部212には、三角形状の凸部が配列されており、装置本体1側のホルダー部310に設けられた把持手段に嵌合するようになっている。この把持手段は、上下一対の凹部を弾性力により挟み込むようにして把持する機構を有しており、この把持手段の間に嵌合部212の凸部を、把持手段の凹部間に押し込むことによって、嵌合部212がクリック感を伴って嵌合するようになっている。
【0025】
また、係合面210の上部には、一対の遮蔽凸部211が突設されている。この遮蔽凸部211は、カートリッジの取付け時に、上下を誤らないようにするために、一方の面のみに設けられている。また、この遮蔽凸部211は、印刷装置100に嵌合された際には、印刷装置100側に設けられた取付検知センサーに検知されるようになっている。具体的には、取付検知センサーは、受光センサーであり、受光が遮断されることにより、その遮蔽物の存在を検知する。遮蔽凸部211は、取付け時に受光センサーに接近され、受光を遮断することによりその取付けが検出される。
【0026】
さらに、前記係合面210は、印刷装置100側に設けられた非接触通信インターフェース(I/F)430と非接触通信を行う通信タグ250が貼り付けられている。この通信タグ250は、非接触通信(I/F)430から受信される電波により内部電力を発生させ、その電力によりメモリに対するデータの読み出し及び書込みを行うとともに、アンテナを通じて、データの送受信を行う。このメモリには、本実施形態では、カートリッジのインクの色や水性・油性の種別、着脱回数などが記憶され、カートリッジ取付機構30に装着が検知されると、非接触通信インターフェースとの通信を開始し、自機が記憶するデータを送信する。
【0027】
この係合面210において、インク供給口230は、図3(b)に拡大して示すように、液体収納容器220の外装体240に対する挿通方向D1と同一軸上において反対方向に向けられており、インク供給口230からのインク流出方向D3が、挿通方向D1と反対方向となっている。そして、このインク供給口230は、印刷装置100側のホルダー部310に嵌合される供給口側ジョイント部232を有しており、この供給口側ジョイント部232の内部は、中空のシリンダー状となっており、そのシリンダー内には、インク供給口230のを封止する中栓231が前後に進退可能に取付けられている。この中栓231は、液体収納容器220内部からの圧力により外方に押圧され、先端の拡径部分を供給口の開口部内側に押しつけることで、インク供給口230を封止するようになっている。
【0028】
このインク供給口230が係合されるホルダー部310には、係合された状態の供給口側ジョイント部232に挿入され、中栓231を供給口側ジョイント部232内に押し込む挿入軸312が突設されており、この挿入軸312により中栓231を押し込むことによって、インク経路311に連通する流出経路233が開通される。これによって、液体収納容器220内のインクは、インク流出方向D3に流出することとなる。
【0029】
そして、このインク供給口230の供給口側ジョイント部232の先端は、係合面210の突当面210aと同一平面内に位置されている。すなわち、供給口側ジョイント部232は、係合面210内に埋設されており、突当面210aといわゆる面一となっている。なお、この供給口側ジョイント部232の開口部周縁には、環状の溝部232aが形成され、この溝部232aに、ホルダー側ジョイント部の外縁313aが嵌合される(図11参照)。
【0030】
このような本実施形態に係るインクカートリッジ200によれば、外装体240の係合面210にあるインク供給口230が、液体収納容器220の外装体240に対する挿通方向D1と同一軸上において反対方向に向けられているとともに、インク供給口230を含む係合面210を印刷装置100側に把持させるため、操作者が水平方向(着脱操作方向D2)に引圧又は押圧する際、外装体240及びインク供給口230に偏った応力が作用することがなく、スムーズにインクカートリッジ200の着脱ができ、着脱時の操作性を向上させることができる。また、印刷装置100側のホルダー部310がインクカートリッジの嵌合部212を把持するように嵌合することにより、インクカートリッジ200の印刷装置100に対する保持力が向上される。
【0031】
特に、係合面210は、印刷装置100側に当接される突当面となっており、樹脂又は金属のいずれかを含む硬質材料で形成されていることから、着脱操作時の応力に対する耐久性が向上し、ホルダー部310に対する寸法精度が確保でき、着脱時の操作性が容易になる。このとき、供給口側ジョイント部232の先端が係合面210内に埋設され、その開口面が突当面210aと同一平面内に位置されることから、係合面210表面に不要な突起が形成されることがなく、カートリッジ200を着脱する際に、係合部分に不要な応力が集中するのを回避することができる。
【0032】
また、外装体240を、紙や木質材のいずれかを含む係合面210よりも軟質な材料で形成したため、樹脂材料を削減することができ、環境負担が低減する。さらに、係合面210と外装体240は、ラベル210bにて固定するように形成したため、組立性、分解性に優れ、作業性を向上させることができる。
【0033】
さらに、係合面210には、印刷装置100側に設けられた受信器と非接触通信を行う通信タグ250が貼り付けられているため、確実に通信タグ250が印刷装置100の受信器の接触でき、通信タグ250の情報を読み込むことができる。
【0034】
(外装体)
外装体240は、紙や木質材など係合面210よりも軟質な材料で形成され、切り出し及び折り曲げが可能となっている。本実施形態では、外装体240の係合面210と反対側の下面に、外装体240の表面に形成された凹部204が形成されており、インクカートリッジ200を引き抜く際の取っ手となっている。この凹部204は、本実施形態では、外装体240の表面を貫通し、内部中空に連通する穴であり、この穴は、外装体240の部材表面の一部に切れ目を入れ、この部分を内面側に且つ終端側に向けて折り曲げられて形成されている。
【0035】
また、外装体240の内部終端には、外装体240内面と、液体収納容器220終端の尖形外面との間の内部空間201の形状を確保する仕切部材202が配置されている。この仕切部材202によって確保される空間は、側断面が三角形となっているとともに、外装体240内部において、凹部204の裏面に対応した位置となっている。なお、凹部204で折り曲げられた部分は、仕切部材202により確保された内部空間201内に位置されるように外装体240の終端側に折り曲げられている。
【0036】
そして、上述したインクカートリッジ200は、インクが封入される液体収納容器220を、箱状の外装体240に収納することにより組み立てられる。図4は、インクカートリッジの外装体240を組立てる際の手順を示す説明図である。また、図5(a)は、外装体240の展開図であり、図5(b)は、仕切部材202の展開図である。
【0037】
外装体240は、本実施形態では、図5(a)に示すような展開図である一枚のシート部材を折り曲げて糊代部分を貼り合わせることにより、係合面210側が開放され、終端側が蓋体240a及び201bで閉止された、有底の筒状体が組み立てられる。
【0038】
図5(a)に示すように、外装体240下面に引き抜き用の凹部204を形成するための切り込みが入れられており、この凹部204は、外装体240の表面を貫通する穴であり、凹部204は、外装体の部材表面において、切り込まれた部分を内面側に且つ終端側に向けて折り曲げられて形成される。また、仕切部材202については、図5(b)に示すようなシート部材を折り曲げることにより、断面三角形の楔形を形成する。そして、図4(a)に示すように、係合面210と反対側の蓋体240a及び201bを開き、この開けられた終端側開口から、仕切部材202を、外装体240の終端に配置されるように挿入して組み込み、蓋体240a及び201bを閉止する。
【0039】
このような本実施形態の外装体240によれば、外装体240の断面形状が矩形をなし、横幅wと高さhの比が約2対1という扁平な形状となっている、インクカートリッジ200内における、供給口端と終端との高低差をなくすることで、インクの流れを一様とし、安定したインク供給を可能とすることができる。また、インクカートリッジ200の高さhが低くなることで、インクカートリッジ200の装着に要する空間の高さが縮小され、装填されたインクカートリッジ上方のスペースを有効に利用することができ、装置設計の自由度を向上させることができる。
【0040】
また、本実施形態では、外装体240内部に仕切部材202と、外装体240の表面に凹部204を備えることで、操作者がインクカートリッジの着脱操作する際には、外装体240終端の凹部204を掴んで、インクカートリッジを引き出すころができ、インクカートリッジ200の着脱が容易になり作業性が向上される。
【0041】
さらに、液体収納容器220の固定及び勾配確保のための仕切部材202により画成された内部空間201は、操作者が外装体240を掴むために手を差し込む空間とすることができ、また、この凹部204部材表面の一部を終端側に向けて折り曲げているので、操作者が外装体240を引き出す際の応力を適切に外装体240に伝達することができる。さらに、仕切部材202を有しているために、操作者の手が、凹部204である穴を通じて、液体収納容器220と接触することを回避できるので、液体収納容器220を保護することができる。
【0042】
また、本実施形態では、係合面210と外装体240とは、ラベルで貼り付け固定するため、構造が簡単となるうえ、組立作業性、分解作業性に優れ、製造コストや廃棄コストを低減することができる。
【0043】
なお、図5(a)及び(b)に示した展開図は、図5(c)に示すように変更することができる。図5(c)は、外装体240と仕切部材202とを一体的に形成した場合の展開図を示し、図4(b)は、その組み立て完成図である。
【0044】
すなわち、この変更例では、仕切部材202を、外装体240を構成する部材の一部分とし、外装体240の展開図において、外装体部分と連結された一体成形とする。詳述すると、図5(c)に示すように、立方体状の外装体部分240eに対し、仕切部材部分202bを、折り部240dで折り曲可能な糊代部202aを介して連結する。
【0045】
そして、展開図として切り出されたこれらの部材(外装体部分202e及び仕切部材部分202a,b)を折りたたむことにより、外装体240と仕切部材202とを一括して製造することができ、部品点数を減らすことができるとともに、製造工程を簡略化することができる。なお、この場合にも、仕切部材202が外装体240に組み込まれる位置は、係合面210と反対側(終端側)となり、この終端側において、外装体240の表面を貫通する穴である凹部204を有しており、この凹部204の穴を形成する切り込みは、仕切部材202によって確保される内部空間201内に位置される。
【0046】
(液体収納容器)
図6は、液体収納容器の説明図であり、図7は、液体収納容器の形状を示す横断面図である。また、図8及び図9は、液体収納容器からインクが流出する際の液体収納容器の形状変化を示す説明図である。
【0047】
液体収納容器220は、インクが封入される袋体であり、本実施形態では、図6及び図7に示すように、その側面が、四枚のフィルム220a〜dを熱溶着により接合された四面で形成され、これら四面のフィルム220a〜dの接合辺には熱溶着により折り目223が形成され、図7(a)に示すように、インクが封入された状態においては、袋体の4辺が折り目223でほぼ直角に屈曲され、断面が四角形となっている。このため、図7(b)に示すように、この液体収納容器220のインクを封入した状態では、液体収納容器220の横断面の四角形が、外装体240の内面形状である四角形に合致されている。
【0048】
また、液体収納容器220は、その終端222が、四面のうち、液体収納容器220の外装体240に対する挿通方向(図6(a)中A−A方向)を含む水平面に平行な一対の面、すなわち印刷装置100へ装填した状態における上下面220a及び220bの終端222部を上下相互に貼り合わせることによって尖形を形成している。
【0049】
この尖形の終端222における上下面の貼り合わせ部分は熱溶着により直線状をなし、この線状部分はインク流出方向D3の延長線(図6(a)中A−A)と、フィルムの熱溶着により貼り合わせた終端222の線(図8(a)中B−B)とを含む水平面(以下、水平面A−Bと称する。)内に位置する。さらに、液体収納容器220は、インク流出方向D3を含む水平面A−Bに垂直な面、すなわち、印刷装置100へ装填した状態における左右の側面220c及び220dには、液体収納容器220の外装体240に対する挿通方向D1と平行となる折り目221が形成されている。これらの結果、図8に示すように、液体収納容器220は、内部のインクが流出するにつれ、折り目221にしたがって潰れていき、フィルムの熱溶着により貼り合わせた終端222を含む水平面A−Bに収束していくこととなる。
【0050】
図10は、仕切部材202が備えられた外装体240内に液体収納容器220を収納している状態を示す断面図である。図10(a)に示すように、組み立てられた外装体240の、係合面210側の開口から、液体収納容器220を挿入して、インクカートリッジ200を製作することができる。
【0051】
このとき、図10(b)に示すように、液体収納容器220のインク供給口230は、係合面210に組み付けられ、係合面210とともに、外装体240の開口端に、粘着性を有する紙製シールであるラベル210bで貼り付け固定される。このラベル210bは、外装体240に係合面210を嵌合させた状態で、外装体240の開口端側面から、係合面210の突当面210aを経て、反対側の開口端側面に渡って巻き回されることにより、外装体240を、係合面210とともに外装体240に組み付け固定する。
【0052】
さらに、液体収納容器220の先端には、前記インク供給口230が取付けられている。このインク供給口230は、液体収納容器220が外装体240に対して挿入された状態において、上記係合面210の中央に位置され、係合面210に組み込まれて、係合面210の一部となるように構成されている。この液体収納容器220の収納状態において、インク供給口230が、液体収納容器220の外装体240に対する挿通方向D1と同一軸上において反対方向に向けられ、印刷装置100側のホルダー部310に着脱されるようになっている。
【0053】
このような本実施形態に係る液体収納容器220によれば、図8に示すように、液体収納容器220の外装体240に対する挿通方向D1と、着脱の操作方向D2と、さらにインク補給時のインク流出方向D3とが同一軸上に位置するため、外装体240に無理な応力が生じず、インク供給口230やホルダー部310などの着脱機構や、外装体240本体が破損される可能性を低減することができる。
【0054】
また、インクが封入された状態の液体収納容器220の内面形状と外装体240の内面形状とが合致していることから、液体収納容器220を外装体240内に隙間なく収納することができ、インクカートリッジのインク量を増加させ、インクカートリッジの容積率を向上することができる。
【0055】
特に、本実施形態において外装体240は、横断面における内面形状が矩形をなし、液体収納容器は、その側面が四面を有し、四面の接合辺には、熱溶着により折り目223が形成されていることから、インクが封入された状態では、液体収納容器220を、確実に矩形とすることができ、液体収納容器220の外形と外装体240の内面の形状をより確実に合致させることができる。
【0056】
液体収納容器220の四面は、四枚のフィルムを熱溶着により接合して構成されているため、簡単な構成により、確実に液体収納容器220の袋形状を形成できるとともに、容積率を向上させるために必要な断面形状を維持することができる。
【0057】
さらに、液体収納容器220は、四面で形成され、その四面のうち、前記水平面A−Bに垂直な面に、挿通方向D1と平行となる折り目221を形成したことにより、液体収納容器220内のインク残量が少なくなってきた際に、液体収納容器220が、挿通方向D1と平行な折り目221にそって折り曲げられて水平面A−Bに収束され、液体収納容器220内に余分な空間に発生せず、未使用で交換されるインク残量を少なくすることができ、液体収納容器220内のインクを最大限利用することができる。
【0058】
液体収納容器220の終端222が尖形をなすことで、液体収納容器220内のインク残量が少なくなってきた際に、終端222の尖形によりインクを流出させるための勾配を確保することができ、インクを残すことなく流出させることができる。また、終端222の貼り合わせ部分を、熱溶着により線状とすることで、確実に終端222の尖形を維持することができる。また、液体収納容器220の終端222が尖形をなし、仕切部材202と接触することで、液体収納容器220を外装体240内部に固定することができる。
【0059】
(インクカートリッジの着脱機構)
図11は、インクカートリッジ200と印刷装置100側のホルダー部310とから構成される着脱機構を示す断面図である。同図に示すように、前記インク供給口230は、供給口側ジョイント部232と、供給口側ジョイント部232内部からの圧力により外方に押圧され、インク供給口230を封止する中栓231とから概略構成されている。
【0060】
インク供給口230は、印刷装置100側のホルダー部310に嵌合される着脱機構を構成し、この着脱機構によりインクカートリッジ200と印刷装置100とが相互に接続されて、インクカートリッジ200から印刷装置100へのインクの供給が行われる。
【0061】
ホルダー部310は、インク供給口230を覆うように、インク供給口230のジョイント部232に嵌合されるホルダー側ジョイント部313を備えており、このホルダー側ジョイント部313の内部には、供給口側ジョイント部232との嵌合状態において、インクカートリッジ200側のインク供給口230に連通するインク経路311が内部に形成されている。供給口側ジョイント部232は、係合面210内に埋設されており、その開口部周縁には、環状の溝部232aが形成され、この溝部232aに、ホルダー側ジョイント部の外縁313aが嵌合される。
【0062】
ホルダー部310のうちのインク経路311には、インク供給口230側に突出された挿入軸312が設けられている。この挿入軸312は、係合された状態の供給口側ジョイント部232に挿入され、中栓231を供給口側ジョイント部232内に押し込み、インク経路311に連通する流出経路233を供給口側ジョイント部232内に開通させる。なお、挿入軸312の供給口側ジョイント部232に対する挿入方向は、上述した液体収納容器220の外装体240に対する挿通方向D1、着脱操作方向D2、及びインクの流出方向D3とが同一軸上に位置されている。
【0063】
このようなインクカートリッジの着脱機構により、印刷装置本体1に装填されたインクカートリッジ200からのインク供給は、インク供給口230とホルダー部310とによって構成される着脱機構を通じて行われる。図12は、インク補給系の機構を模式的に示す概略図である。
【0064】
図12に示すように、インクカートリッジ200からのインクは、インク補給経路301を通じて、リザーバーと呼ばれるインクタンク303に充填される。このインク補給経路301途中には電磁開閉弁302が設けられており、この電磁開閉弁302により、インク補給経路301の流路の開閉及び、インクの流量が制御される。また、インクタンク303内には、インクタンク303内の液面を検出し、充填されたインクの量を測定する液面センサー303aが設けられている。なお、インクカートリッジ200からインクタンク303へのインクの供給は、高所に配置されたインクカートリッジ200と低所に設置されたインクタンク303の圧力差により行われる。
【0065】
このインクタンク303に充填されたインクは、供給路304を通じて、ヘッドユニット110のディストリビュータ111へ送り出され、ディストリビュータ111から各インクヘッド110a,110b,110c…に分配され、印刷処理に供される。なお、このディストリビュータ111には、内部のインクの温度を測定する温度センサー112が取付けら、インクヘッド110a,110b,110cに供給される直前のインク温度が検出できるようになっている。
【0066】
このような本実施形態の着脱機構によれば、水平方向に着脱するインクカートリッジ200において、外装体240の係合面210にあるインク供給口230が、液体収納容器220の外装体240に対する挿通方向D1と同一軸上において反対方向に向けられているため、着脱操作方向D2とインクの流出方向D3とが同一軸上に位置することとなる。そして、液体収納容器220は、内部のインクが流出するにつれ、折り目221にしたがって潰れていき、フィルムの熱溶着により貼り合わせた終端222を含む水平面A−Bに収束していくこととなる。この水平面A−Bは、流出方向D3の延長線(図中A−A)と、フィルムの熱溶着により上下面を貼り合わせた終端222及び折り目221とを含むことから、インクが流出して容器が変形する過程において、供給口端と終端との高低差変化をなくし、僅かな勾配でもインクの流れを一様とすることができ、安定したインク供給が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施形態に係る印刷装置の印刷用紙搬送経路の概要を示す図である。
【図2】実施形態に係るインクカートリッジの外観図である。
【図3】実施形態に係るインクカートリッジの側断面図である。
【図4】実施形態に係るインクカートリッジの外装体を組立てる際の手順を示す説明図である。
【図5】実施形態に係る外装体及び仕切部材の展開図である。
【図6】実施形態に係る液体収納容器の説明図である。
【図7】実施形態に係る液体収納容器の形状を示す横断面図である。
【図8】実施形態に係る液体収納容器からインクが流出する際の液体収納容器の形状変化を示す説明図である。
【図9】実施形態に係る液体収納容器からインクが流出する際の液体収納容器の形状変化を示す説明図である。
【図10】実施形態に係る仕切部材が備えられた外装体内に液体収納容器を収納している状態を示す断面図である。
【図11】実施形態に係るインクカートリッジと印刷装置側のホルダー部とから構成される着脱機構を示す断面図である。
【図12】実施形態に係るインク補給系の機構を模式的に示す概略図である。
【符号の説明】
【0068】
1…印刷装置本体
30…カートリッジ取付機構
100…印刷装置
110…ヘッドユニット
110a,110b,110c…インクヘッド
111…ディストリビュータ
112…温度センサー
200…インクカートリッジ
201…内部空間
202…仕切部材
204…凹部(穴)
210…係合面
210a…突当面
210b…ラベル
211…遮蔽凸部
212…嵌合部
220…液体収納容器
220a〜d…フィルム
220c…側面
221,223…折り目
222…終端
230…インク供給口
231…中栓
232…供給口側ジョイント部
233…流出経路
240…外装体
240a,240b…蓋体
250…通信タグ
301…インク補給経路
302…電磁開閉弁
303…インクタンク
303a…液面センサー
304…供給路
310…ホルダー部
311…インク経路
312…挿入軸
313…ホルダー側ジョイント部
330…演算処理装置
340…操作パネル
350…上面装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置に対して水平方向に着脱されるインクカートリッジであって、
インクが封入される液体収納容器と、
前記液体収納容器が挿入される箱状の外装体と、
前記箱状の外装体の一端に配置され、前記印刷装置側に係合される供給口を有する係合面と、
前記外装体の前記係合面と反対側の他端側において、前記外装体の表面に形成された凹部と
を有することを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項2】
前記液体収納容器は、その終端が尖形をなし、
前記外装体の内部終端には、該外装体内面と、前記尖形外面との間の空間形状を確保する仕切部材が配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載のインクカートリッジ。
【請求項3】
前記仕切部材によって確保される空間は、前記外装体内部において、前記凹部の裏面に対応した位置であることを特徴とする請求項2に記載のインクカートリッジ。
【請求項4】
前記凹部は、前記外装体の表面を貫通する穴であり、
前記穴は、前記外装体の部材表面において、一部を内面側に且つ前記終端側に向けて折り曲げられて形成されていることを特徴とする請求項3に記載のインクカートリッジ。
【請求項5】
前記液体収納容器は、その終端が尖形をなし、
前記外装体の内部終端には、該外装体内面と、前記尖形外面との間の空間形状を確保する仕切部材が配置され、
前記凹部は、前記外装体の部材表面において、一部を内面側に且つ前記終端側に向けて折り曲げられて形成された穴であり、
前記折り曲げられた部分は、前記仕切部材により確保された空間内に位置される
ことを特徴とする請求項1に記載のインクカートリッジ。
【請求項6】
前記仕切部材は、前記外装体を構成する部材の一部分であり、該外装体の展開図において該外装体と一体をなすことを特徴とする請求項2に記載のインクカートリッジ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate