インクカートリッジ
【課題】インク残量が少なくなった場合にも、残存するインクを口栓へ向けて効率よく集めることが可能なインクカートリッジを提供する。
【解決手段】インクカートリッジ1はケース2とインクパック7を含む。インクパック7は、インク袋71と、インク袋71と連通する第1開口と外部に開口する第2開口を有する口栓72を含む。ケース2は、口栓72の軸線X方向において、口栓72の第2開口側の先端部に対して第1開口側に位置する第1角部334と、第1開口とは反対側に位置する第2角部335を備える。第1角部334および第2角部335のうち少なくとも一方は、鈍角または曲面を成す。インクパック7は、軸線Xが、第1角部334を有する側のケース2の一端部寄りに位置し、口栓72の第2開口側の先端部が、第1角部334と第2角部335とを結ぶ線Lよりもケース2の内側方向に位置するように、ケース2に収容されている。
【解決手段】インクカートリッジ1はケース2とインクパック7を含む。インクパック7は、インク袋71と、インク袋71と連通する第1開口と外部に開口する第2開口を有する口栓72を含む。ケース2は、口栓72の軸線X方向において、口栓72の第2開口側の先端部に対して第1開口側に位置する第1角部334と、第1開口とは反対側に位置する第2角部335を備える。第1角部334および第2角部335のうち少なくとも一方は、鈍角または曲面を成す。インクパック7は、軸線Xが、第1角部334を有する側のケース2の一端部寄りに位置し、口栓72の第2開口側の先端部が、第1角部334と第2角部335とを結ぶ線Lよりもケース2の内側方向に位置するように、ケース2に収容されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを収容するインク袋とインク袋を収容するケースとを備えたインクカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、インクジェットプリンタ(以下、単にプリンタという)は、印字ヘッドにインクを供給するためのインクカートリッジを着脱可能に構成されている。一般的なインクカートリッジとして、内部にインクを収容する可撓性を有するインク袋と、インク袋に連結して設けられたインクを取り出すための口栓と、インク袋を収容する直方体形状のケースとを備えたインクカートリッジが知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−240131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のインクカートリッジによれば、インク袋が可撓性を有するため、印字中にインクの残量が少なくなると、インク袋の内面同士が接してしまい、インクが分断されてしまうことがある。即ち、インクの一部は口栓まで到達せず、やはりインク収容パック内に残存してしまう場合がある。
【0005】
本発明は、インク残量が少なくなった場合にも、残存するインクを口栓へ向けて集めることが可能なインクカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るインクカートリッジは、インク袋と、口栓と、ケースとを備えている。前記インク袋は、対向配置された可撓性を有する2層のシートを少なくとも含んで袋状に形成され、内部にインクを収容する。前記口栓は、前記インク袋に設けられ、前記インク袋と連通する第1開口から外部に開口する第2開口まで通じる中空部を有する。前記ケースは、前記インク袋を収容し、収容された前記インク袋の前記口栓の軸方向を長手方向とする。前記ケースの前記第2開口側の端部は、前記口栓の前記軸方向において、前記口栓の前記第2開口の側の先端部に対して前記第1開口の側に位置する角部である第1角部と、前記口栓の前記軸方向において、前記口栓の前記第2開口の側の前記先端部に対して前記第1開口とは反対側に位置する角部である第2角部とを備える。前記ケースにおいて、前記第1角部と前記第2角部とを結ぶ線が伸長する方向および前記軸方向に直交する方向である第1方向における幅は、前記第1方向および前記軸方向に直交する方向である第2方向における幅よりも狭い。前記インク袋は、前記口栓の軸線が、前記第2方向において、前記第1角部を有する側の前記ケースの一端部寄りに位置するように前記ケースに収容されている。前記口栓の前記第2開口の側の前記先端部は、前記第1角部と前記第2角部とを結ぶ前記線よりも前記ケースの内側方向に位置する。前記第1角部および前記第2角部のうち少なくとも一方は、鈍角または曲面を成す。
【0007】
インク袋の口栓の軸方向を長手方向とするケースにおいて、第1角部と第2角部とを結ぶ線は、口栓の軸方向に対して斜めになる。印字中にインク残量が少なくなった場合、ユーザは、インクカートリッジをプリンタから取り外し、第1角部と第2角部を下側にして、机上等の略水平な面と接するように載置して保持する。すると、口栓の軸方向およびケースの長手方向は、水平方向に対して傾斜した状態となる。第1角部と第2角部を載置することで、インクカートリッジの安定した傾斜状態を保つことができるので、インク袋中に残存するインクを口栓へ向けて集めることができる。しかも、インクカートリッジを空中で傾斜させた状態で把持するよりも力が要らないので、ユーザの利便性が高い。また、第1角部および第2角部のうち少なくとも一方が鈍角または曲面を成すので、例えば絨毯のようなインクカートリッジが沈み込むような物品上にインクカートリッジが載置された場合に、第1角部および第2角部のうち少なくとも一方は物品に引っ掛かりにくく、インクカートリッジの姿勢を変更しやすい。
【0008】
前記インクカートリッジにおいて、前記第1角部および前記第2角部は、それぞれ、鈍角または曲面を成してもよい。この場合、第1角部および第2角部の両方が物品に引っ掛かりにくいので、インクカートリッジの姿勢をより変更しやすくなる。
【0009】
前記インクカートリッジにおいて、前記ケースは、前記第1角部および前記第2角部に接続し、前記第1角部と前記第2角部とを結ぶ前記線に略平行に延びる面部と、前記面部の前記口栓の前記第2開口を臨む位置に設けられた貫通部とを更に備え、前記面部の外表面は、前記第1角部と前記第2角部とを結ぶ前記線よりも内側にあってもよい。この場合、第1角部と第2角部を机上等の面と接するように載置して保持しても、貫通部はこの載置面には接しない。従って、第2開口近傍にインクが付着していたとしても、そのインクが載置面に付着する可能性を低減できる。
【0010】
前記インクカートリッジにおいて、前記ケースは、前記口栓を前記ケースに固定するための固定部を備えていてもよい。この場合、口栓をケースに対して確実に正確な位置に固定できる。
【0011】
前記インクカートリッジにおいて、前記ケースは、前記第1角部および前記第2角部を結ぶ前記線上に配置された面部を備えていなくてもよい。第1角部と第2角部とを結ぶ線上に面部があると、載置面の形状によっては、この面部と載置面とが干渉する可能性がある。面部が設けられないことで、第1角部と第2角部とを載置面に確実に接触させ、インクカートリッジの安定した傾斜状態を保つことができる。
【0012】
前記インクカートリッジにおいて、前記ケースは、前記インク袋の前記2層のシートのうち一方に対向する第1側面と、前記2層のシートのうち他方に対向し、且つ、前記インク袋を挟んで前記第1側面に対向する第2側面とを有してもよい。そして、前記第1側面と前記第2側面は、前記第1方向に離間して配置され、前記第1側面と前記第2側面との距離は、前記第2方向における前記第1側面および前記第2側面の幅よりも短くてもよい。この場合、インク袋を挟んで対向する第1側面および第2側面により、インク袋の姿勢を安定した状態で保つことができる。
【0013】
前記インクカートリッジにおいて、前記インクは、酸化チタンを顔料として含有する顔料系インクであってもよい。顔料系インクは、インク中の顔料が沈殿する虞があるとして、インクカートリッジが振られ、インクが攪拌されると、インクがインク袋内の広範囲において点在してしまう。このような場合でも、第1角部および第2角部を用いてインクカートリッジを傾斜した状態として残存するインクを口栓に向けて集められ、インクが無駄にされることが軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】インクジェットプリンタ100の概略構成の模式図である。
【図2】インクカートリッジ1を右後方から見た斜視図である。
【図3】ケース2の分解斜視図である。
【図4】蓋部4が取られた状態のインクカートリッジ1を左側面側から見た状態を示す説明図である。
【図5】インクカートリッジ1の口栓72周辺部の拡大縦断面図である。
【図6】インクカートリッジ1の正面図である。
【図7】インク供給時のインクカートリッジ1の口栓72周辺部の拡大部分断面図である。
【図8】インクカートリッジ1を傾斜させてインクを集める過程を示す説明図である。
【図9】インクカートリッジ1を傾斜させてインクを集める過程を示す別の説明図である。
【図10】インクカートリッジ1を傾斜させてインクを集める過程を示す更に別の説明図である。
【図11】第1変形例のインクカートリッジ11の口栓72周辺部の拡大縦断面図である。
【図12】第2変形例のインクカートリッジ12の口栓72周辺部の拡大縦断面図である。
【図13】第3変形例のインクカートリッジ13の口栓72周辺部の拡大縦断面図である。
【図14】第4変形例のインクカートリッジ14の口栓72周辺部の拡大縦断面図である。
【図15】第5変形例のインクカートリッジ15の口栓72周辺部の拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、これらの図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成等は、単なる説明例である。
【0016】
本実施形態では、Tシャツ等の布帛に印刷を行うインクジェットプリンタ100に使用されるインクカートリッジ1について説明する。まず、図1を参照して、インクジェットプリンタ100について説明する。インクジェットプリンタ100は、インクカートリッジ1から供給されたインクを用いて、印字ヘッド114により印刷媒体である布帛に印刷を行うことが可能な公知のプリンタである。よって、インクジェットプリンタ100の構成については簡単に説明する。なお、図1の上下方向、左右方向、および左下方向が、夫々、インクジェットプリンタ100の上下方向、左右方向および正面側、並びにインクカートリッジ1の上下方向、左右方向および正面側である。
【0017】
インクジェットプリンタ100は、矩形箱状の筐体101を有する。筐体101の内部の左右方向略中央下部に、一対のガイドレール102が前後方向に延びている。プラテン支持台103は、ガイドレール102により、ガイドレール102に沿って前後方向に移動可能に支持されている。プラテン支持台103上面の左右方向略中央には、取り換え可能なプラテン104が固定されている。プラテン104は、平面視略五角形の板体であり、その上面に、例えばTシャツなどの布帛を載置するためのものである。詳細は図示しないが、プラテン104が固定されたプラテン支持台103は、プラテン駆動モータやベルト伝達機構を含むプラテン駆動機構により、ガイドレール102に沿って前後方向に移動される。
【0018】
筐体101の前後方向略中央、且つ、プラテン104の上方には、一対のガイドレール112が左右方向に延びている。キャリッジ113は、ガイドレール112によって、ガイドレール112に沿って左右方向に移動可能に支持されている。キャリッジ113の下部には印字ヘッド114が固定されている。詳細は図示しないが、印字ヘッド114を備えたキャリッジ113は、キャリッジ駆動モータやベルト伝達機構を含むキャリッジ駆動機構によって、ガイドレール112に沿って左右方向に移動される。印字ヘッド114には、チューブ142(図7参照)を介して、筐体101内に設けられたカートリッジ装着部(図示略)にセットされたインクカートリッジ1からインクが供給される。印字ヘッド114の底面には複数個の微細なノズルが設けられており、圧電素子の駆動によりノズルから下向きにインクの液滴が吐出されることで、プラテン104上に載置された布帛に印刷が行われる。
【0019】
筐体101内のカートリッジ装着部には、8個のインクカートリッジ1がセット可能である。筐体101前面の右下部には、インクカートリッジ1をインク収容部に着脱するための開口であるカートリッジ挿入口120が8個設けられている。なお、本実施形態のインクジェットプリンタ100では、白インクのインクカートリッジ1が4個と、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの4色のインクカートリッジ1が1個ずつ使用される。インクカートリッジ1からインクジェットプリンタ100へのインク供給方法については後述する。
【0020】
図1〜図5を参照して、本実施形態のインクカートリッジ1の構成について説明する。図1〜図4に示すように、インクカートリッジ1は、ケース2と、ケース2に収容されたインクパック7とを備えている。以下に、ケース2とインクパック7の詳細な構成について、順に説明する。なお、白、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの5色のインクカートリッジ1は、インクパック7に収容される液体のインクの色が異なるのみで、ケース2とインクパック7の構成は全て同じである。
【0021】
図2に示すように、ケース2は、全体としては、薄型略矩形箱状である。ただし、角部を含む背面側の下部が、斜め後ろ上方に向けて凹状に切り取られた状態である。ケース2の前後方向、左右方向、上下方向の長さは、前後方向、上下方向、左右方向の順に長い。
【0022】
図3に示すように、ケース2は、本体部3および蓋部4を含む。本体部3は、ケース2の右側面、底面、上面、背面および前面を夫々形成する薄板状の右壁30、底壁31、上壁32、後壁33、および前壁34を含む。右壁30は、インクカートリッジ1を側面視した場合、すなわち、右壁30の最大面積部(図3で示された面のうち最も広い面)に直交する方向から見てほぼ五角形状であり、前後方向に長い長方形の直角を成す4つの角部のうち、後ろ側の下にある角を含む角部が斜めに切り取られたような形状を有する。つまり、右壁30は、側面視で、前後方向に延びる2つの平行に対向する長辺、上下方向に延びる2つの平行に対向する短辺、および、短い方の長辺と短い方の短辺とを繋ぐ斜辺とを有する。
【0023】
ただし、斜辺は厳密には直線ではなく、短い方の短辺および短い方の長辺と繋がる両端部が、夫々、僅かにインクカートリッジ1の斜め上方向および斜め下方向へ段状に突出する突出部になっている。より具体的には、図5に示すように、斜辺は、上下方向に延びる短い方の短辺(後述する背面部331が接続する辺)の下端が、正面側斜め下方(図5の右下方向)へ鈍角を成して折れ曲がっている(後述の段部352に対応する部分)。そして、前後方向(図5の左右方向)に延びる短い方の長辺(後述する底壁31が接続する辺)の後端(図5の左端)が、背面側斜め上方(図5の左上方向)へ鈍角を成して折れ曲がっている(後述の段部351に対応する部分)。
【0024】
底壁31、上壁32、後壁33、および前壁34は、夫々、右壁30に対して略垂直に、同一方向に同一の長さで延びている。底壁31は、右壁30の下端部、つまり一対の長辺のうち短い方に接続している。上壁32は、右壁30の上端部、つまり長い方の長辺に接続している。後壁33は、背面部331および斜面部332を含む。背面部331は、右壁30の後端部、つまり一対の短辺のうち短い方に接続する。斜面部332は、右壁30の前述の突出部を含む斜辺に沿って設けられ、底壁31と背面部331とを繋ぐ。よって、斜面部332は、底壁31および背面部331に接続する両端部に、夫々段部351、352を有する。よって、斜面部332の段部351、352の間の部分は、底壁31の後端(後述する第1角部334)と背面部331の下端(後述する第2角部335)とを結ぶ線よりも僅かにケース2の内側方向に位置する。斜面部332には、斜面部332が底壁31と接続する段部351の近傍に、斜面部332を貫通する開口である貫通部338が設けられている。前壁34は、右壁30の前端部、つまり長い方の短辺に接続し、底壁31と上壁32とを繋ぐ。
【0025】
図4に示すように、上壁32と背面部331、上壁32と前壁34、および底壁31と前壁34とが接続する3つの角部は、夫々、直角を成している。一方、斜面部332と底壁31とが接続する角部、および斜面部332と背面部331とが接続する角部は、夫々、鈍角を成している。以下では、底壁31、上壁32、後壁33、および前壁34を総称する場合、周壁31〜34という。
【0026】
図3に示すように、右壁30に対向し、ケース2の左側面を形成する蓋部4は、本体部3の右壁30に対応した形状を有する薄板状の部材である。つまり、蓋部4は、インクカートリッジ1を側面視した場合、すなわち、蓋部4の最大面積部(図3で示された面のうち最も広い面)に直交する方向から見てほぼ五角形状であり、前後方向に長い長方形の直角を成す4つの角のうち、後ろ側の下にある角を含む角部が斜めに切り取られたような形状を有する。ただし、右壁30と同様、斜辺の両端部は、夫々、僅かにインクカートリッジ1の斜め下方向および斜め上方向へ突出している。蓋部4が本体部3に接合されて、ケース2が形成される。蓋部4を本体部3に接合する方法は特に限定されない。図示はしないが、例えば、本体部3と蓋部4に、夫々、係合孔と係合ピンとを設け、係合ピンを係合孔に挿入することで、蓋部4を本体部3に接合してもよい。係合ピンではなく、係合フックと係合孔を用いて接合してもよい。本体部3と蓋部4とを溶着により固定しても良い。
【0027】
図4に示すように、インクパック7は、ケース2内の周壁31〜34により囲まれた領域に収容される。インクパック7は、インク袋71と、インク袋71に設けられた口栓72を備えている。本実施形態のインク袋71は、可撓性を有する2枚の長方形状の樹脂性シートを、シートの一面同士が対向した状態で重ね合わせ、4辺に沿った周囲部716を熱溶着(熱シール)することで形成された袋状の容器である。インクは、周囲部716に囲まれた空間であるインク収容部717の内部に収容される。インク収納部717は、シート面、即ち、その最大面積部(図4で示された面のうち最も広い面)に略直交する方向から見て略長方形であり、ケース2の内面に沿って伸展している。
【0028】
なお、インク袋71は、対向配置された可撓性を有する2層のシートを含み、シート間にインクを収容可能な空間が形成された袋状の容器であればよい。よって、例えば、1枚の長方形状のシートを半分に折曲げて2層とし、折曲げ部以外の3辺に沿って2層を接合することでインク袋71を形成してもよい。また、対向する2枚のシートの3辺に沿って2枚を接合し、各シートの残る1辺を別のシートと接合して、底部を有するインク袋71としてもよい。対向する2枚のシートの4辺が、夫々、マチとなる別のシートと接合されたインク袋71であってもよい。更に、シートの接合方法は溶着に限られず、例えば、接着等の他の方法を用いてもよい。
【0029】
図4および図5に示すように、口栓72は、円筒状の本体部721と、本体部721の一端側において外周面から互いに反対方向に突出する2つの羽根状の連結部722とを備えている。口栓72は、本体部721(より詳細には、後述する中空部700)の軸線Xがインク袋71の長手方向と略平行になるように、インク袋71に設けられている。また、軸線Xは、軸線Xに直交する方向(インク袋71の短手方向)におけるインク袋71の一端部寄りに位置する。本実施形態では、口栓72は、インク袋71の4つの角部のうち1つの近傍に設けられている。以下では、軸線X方向に直交する方向に位置するインク袋71の2つの端部のうち、軸線Xにより近い方を第1端部711、軸線Xからより遠い方を第2端部712という。また、軸線X方向(インク袋71の長手方向)に位置するインク袋71の2つの端部のうち、口栓72が設けられている方を第3端部713、他方を第4端部714というものとする。
【0030】
本実施形態では、口栓72は、連結部722を含む本体部721の一端部が、インク袋71を形成する2枚のシートの間に挿入され、周囲部716と一体的に溶着されることで、インク袋71に固定されている。周囲部716と溶着されていない本体部721の他端部は、インク袋71の第3端部713からインク袋71の外方へ突出している。
【0031】
図5に示すように、本体部721は、外周に沿って設けられた2つのフランジ727、728を有する。また、本体部721は、その内部に中空部700を有する。中空部700は、インク袋71のインク収容部717に連通する第1開口701から、インク袋71の外部に開口する第2開口702まで通じている。中空部700の第2開口702側の端部には、円柱状のゴム栓723が挿入されており、第2開口702はゴム栓723で塞がれている。このように、インクは、密閉状態のインク収容部717内に収容されている。なお、口栓72は、中空部700によってインク収容部717と外部とが通じるようにインク袋71に設けられていればよく、その固定方法は溶着に限られない。よって、例えば、口栓72は、インク袋71と一体的に形成されていてもよい。
【0032】
図4および図5を参照して、ケース2とインクパック7との配置関係の詳細について説明する。図4に示すように、インクパック7は、口栓72の軸線Xがケース2の長手方向(前後方向)と略一致するように、ケース2に収容される。また、インクパック7は、口栓72の軸線Xを含み、且つ、斜面部332の外面333と直角を成す仮想的な平面に対して、インク袋71を形成する2層のシートが略平行に延びるように、ケース2に収容されている。よって、本実施形態では、2層のシートの外面は、夫々右壁30および蓋部4の内面に対向して延びる。インク収容部717を形成する2層のシートのうち一方の外面は、右壁30および蓋部4のうち対向する一方の内面に貼り付けられていてもよい。
【0033】
なお、インク袋71を形成するシートは可撓性を有するため、インク収容部717中に収容されたインクの残量が多ければ、2層のシートは互いに離れる方向に湾曲し、残量が少なければ、2層のシート間の距離が狭まって互いに接触する方向に撓む。つまり、シートは固定された平面ではないので、上記の仮想平面と厳密には平行にならない。よって、上記の仮想平面との関係でいう「略平行」とは、平面同士の厳密な平行関係のみならず、シートの撓みを許容した平行に近い状態をも含む。
【0034】
また、例えば、ケース2の本体部3、つまり、右壁30と周壁31〜34とが樹脂で一体成形される場合には、一般的に、金型のキャビティからの離型を容易にするために、所謂「抜き勾配」が設けられる。この場合、右壁30と周壁31〜34の各々とは、直角より2〜4度程度広い鈍角を成す。よって、前述のように、インク袋71のシートの外面が、右壁30の内面に貼り付けられた場合、上記の仮想平面とシートとは、厳密には平行にならない。しかし、上記の撓みの許容と同様に、抜き勾配程度の角度の差異がある場合も、上記仮想平面とシートとは「略平行」であるとみなすことができる。
【0035】
図5に示すように、インクパック7は、口栓72の軸線X方向において、ケース2の斜面部332(より詳細には、段部351)の下端と底壁31の後端(図中左端)とが接続する角部が、口栓72の第2開口702側の先端部724(ゴム栓723の先端部)に対して第1開口701側に位置し、斜面部332(より詳細には、段部352)の上端と背面部331の下端とが接続する角部が、先端部724に対して第1開口701とは反対側に位置するようにケース2に収容される。つまり、これら2つの角部を最短で結ぶ線Lは、軸線Xに対して斜めに交差する。なお、以下では、口栓72の第1開口702近傍側の端部に関して、口栓72の軸線X方向において、先端部724に対して第1開口701側に位置するケース2の角部を「第1角部334」、先端部724に対して第1開口701とは反対側に位置する角部を「第2角部335」というものとする。本実施形態では、斜面部332と底壁31とが接続する角部、および斜面部332と背面部331とが接続する角部が、夫々、第1角部334および第2角部335である。
【0036】
第1角部334および第2角部335は、少なくとも一方が鈍角または曲面を成す角部である。本実施形態では、第1角部334および第2角部335は、いずれも鈍角を成す端部とされている。より具体的には、斜面部332の外面(本実施形態では、段部351の外面)と底壁31の外面(ケース2の底面)とが成す角、および、斜面部332の外面(本実施形態では、段部352の外面)と背面部331の外面(ケース2の背面)とが成す角は、いずれも鈍角である。なお、本実施形態では、段部351、352の外面は、一部が線L上にある。
【0037】
図5に示すように、底壁31は、第1角部334から口栓72の軸線X方向に延びている。口栓72の下方に位置する底壁31の後端部分(第1角部334の前側部分)を、受け面部310という。詳細は後述するが、受け面部310は、口栓72から漏れ出たインクを下方で受けるための面部として機能する。
【0038】
また、インクパック7は、口栓72の先端部724が、線Lよりもケース2の内側方向に位置するように配置される。なお、本実施形態では、第1角部334と第2角部335との間には斜面部332が設けられており、斜面部332の外面333は、線Lに対して略平行であり、且つ、ケース2の内側方向ある。そして、先端部724は斜面部332の内面よりも内側に位置している。斜面部332の下端部の内面は、底壁31との接続部から貫通部338に向かって上方に張り出している。先端部724は、軸線X方向において、この斜面部332の下端部の内面(図5における右面)に対して隙間をあけて位置する。よって、斜面部332と先端部724の間でインクが移動することが可能となっている。
【0039】
また、本実施形態では、線Lの伸長方向および軸線X方向に直交する方向(以下、第1方向という)は、ケース2の左右方向であり、第1方向および軸線X方向に直交する方向(以下、第2方向という)は、ケース2の上下方向である。図6に示すように、ケース2の左右方向の幅(左側面から右側面までの距離)W3は、上下方向の幅(底面から上面までの距離、または右壁30および蓋部4の高さ)W4よりも狭い。
【0040】
更に、インクパック7は、第2方向において、第1角部334を有する側のケース2の一端部寄りに位置するように、ケース2に収容される。本実施形態では、前述したように、第2方向はケース2の上下方向であるから、上下方向において、第1角部334を有する側のケース2の一端部とは、底壁31側の端部である。よって、図4に示すように、軸線Xは、ケース2の上下方向において底壁31側の端部寄りにあり、口栓72は、第1角部334の近傍に配置されている。軸線Xを境として、底壁31側のインク袋71の幅W1(軸線Xと第1端部711との距離)は、上壁32側のインク袋71の幅W2(軸線Xと第2端部712との距離)よりも狭い。
【0041】
また、図5に示すように、貫通部338は、斜面部332において口栓72の第2開口702を臨む位置に設けられている。つまり、貫通部338は、口栓72の軸線X上に位置する。前述したように、第2開口702はゴム栓723で塞がれているので、実際には、貫通部338はゴム栓723に臨むことになる。
【0042】
更に、ケース2には、右壁30の内面からケース2の内側方向に突出する突出片である一対の固定部381、382が、口栓72を挟んで底壁31側と上壁32側に設けられている。固定部381は、第1角部334のやや前方(図中右側)で底壁31にも連続して形成されており、本体部721の外周に設けられた2つのフランジ727、728の間に下方から挿入されている。固定部382は、斜面部332にも連続して形成され、先端部724側のフランジ727の側面に後方から接している。従って、これら固定部381、382で口栓72を確実に正確な位置に配置して、固定することができる。なお、ケース2には、固定部381、382のうち一方のみを設けてもよいし、固定部381、382は設けなくてもよい。
【0043】
次に、図1および図7を参照して、インクカートリッジ1からインクジェットプリンタ100の印字ヘッド114へのインク供給方法について説明する。図1に示すように、印刷を行う場合、ユーザは、インクジェットプリンタ100のカートリッジ挿入口120からインクカートリッジ1を挿入する。このとき、ユーザは、インクカートリッジ1の底壁31を下側にして、第2開口702(ゴム栓723)を臨む貫通部338(図2参照)が設けられた後壁33側から、インクカートリッジ1を挿入する。
【0044】
図7に示すように、インクカートリッジ1は、底壁31がカートリッジ装着部の載置面130に載置されるようにセットされる。載置面130は、略水平方向に延びる平面である。つまり、インクカートリッジ1は、底壁31および口栓72の軸線Xが略水平に延びるように、インクジェットプリンタ100にセットされる。カートリッジ装着部の奥側には、インクカートリッジ1がセットされた際、貫通部338(口栓72)に対向する位置に、中空針141を有する接続部140が設けられている。接続部140には、インク袋71から導出されたインクを印字ヘッド114まで導くチューブ142が接続されている。インクカートリッジ1がカートリッジ装着部にセットされると、接続部140の中空針141が貫通部338を通してゴム栓723の中心部に刺さる。中空針141はゴム栓723を貫通し、その先端部が中空部700内に配置される。中空針141の先端部にはインクが流通する孔が設けられており、インク収容部717内のインクは、第1開口701、中空部700内部、中空針141、およびチューブ142を通って、印字ヘッド114に供給される。
【0045】
インクカートリッジ1の使用開始時には、インク袋71のインク収容部717にはインクが満量充填されているため、インク袋71を形成する2層のシートの内面は、間にインクを挟んで互いに離れた状態にある。印刷時には、布帛上に画像を形成するために、印字ヘッド114から少しずつインクが吐出される。インクが吐出されると、吐出量とほぼ同量のインクがインクカートリッジ1から吸引され、補充される。印刷でインクが消費されるのに伴い、インク収容部717に収容されたインクは徐々に減少し、インク袋71は萎んでいく。つまり、可撓性を有する2層のシートの内面は互いに近づいていく。
【0046】
インクの残量がある程度まで減少すると、インク袋71のあちこちでシートの内面同士が接触するようになる。その結果、インクは、インクの表面張力や重力の関係などにより、シートの内面同士が接触した部分により分断され、インク収容部717内に孤立したインク溜まりが複数存在する状態になる。また、底壁31が略水平な載置面130に載置された状態では、インク袋71の2層のシートは、その面がほぼ上下方向に沿って延びるように配置される。よって、インクは、重力により、ある程度はシートの内面を伝って下方向に流れ、インク収容部717内で第1端部711(図4参照)に沿って溜まる。しかし、インクが減って、中空針141の先端部の孔よりもインク面が下降すると、インク収容部717内にまだインクが残っていたとしても、印字ヘッド114の吸引力は弱いので、残りのインクを吸引することが難しくなる。
【0047】
本実施形態のインクカートリッジ1は、前述の構成により、このようにインクの吸引が難しくなった場合でも、インクジェットプリンタ100から取り外し、インク収容部717に残存するインクを、口栓72、より詳細には第1開口701に向けて、効率よく集めることができる。図8〜図10を参照して、この作用効果について説明する。ユーザは、図8に示すように、インク残量が減少し、且つ、第1端部711に沿ってインクがある程度溜まった状態のインクカートリッジ1の第1角部334および第2角部335を下側にして、略水平な面である支持面9に第1角部334および第2角部335が接するようにインクカートリッジ1を載置する。即ち、インク収納部717の長手方向と略一致する軸線Xの方向が、インクジェットプリンタ100におけるインク供給時よりも垂直に近い状態となる。
【0048】
なお、本実施形態では、第1角部334と第2角部335とを結ぶ線L(図5参照)上にある斜面部332の段部351、352の外面も支持面9に接し、支持面9によって支持される。斜面部332の段部351、352に挟まれた部分は、支持面9に対して僅かに上方に離れた状態となる。なお、支持面9は、机の上面等の平面であってもよいし、平面でなくてもよい。口栓72の第2開口702(図5参照)の側の先端部724は、線L、更には線Lよりも内側にある外面333よりもケース2の内側方向(本実施形態では、斜面部332の内面よりも内側)に位置するので、第1角部334と第2角部335が支持面9に接する際、口栓72が支持面9と干渉することがない。
【0049】
インクカートリッジ1は、ケース2およびインク袋71の長手方向(口栓72の軸線X)が水平方向に対して傾斜し、口栓72の第2開口702が斜め下方向を向いた状態となる。つまり、インクカートリッジ1は、インクジェットプリンタ100にセットされた時の姿勢(口栓72の軸線Xが略水平となる姿勢)から、傾斜した姿勢に変更される。ケース2内のインク袋71は、第1端部711が水平方向に対して傾斜するとともに、インク収容部717を形成する2層のシートが、底壁31が略水平な載置面130に載置された場合と同様、その面がほぼ上下方向に沿って延びるように配置された状態となる。インクカートリッジ1の姿勢を変更する際に加えられる力によって、インクの一部はインク収容部717内で移動する。インクカートリッジ1の姿勢が変更される前の、口栓72の軸線Xが略水平な状態(図4および図6参照)では、インク収容部717内に点在するインクは、シートの内面同士が接触しているために、それ以上移動できない状態であった。このとき、点在するインクに対する重力の作用方向は、口栓72の軸線Xに対して略垂直である。一方、図8に示すように姿勢が変更されると、点在するインクに対する重力の作用方向は、口栓72の軸線Xに対して斜め方向に変化する。
【0050】
このように姿勢を変更した後、ユーザがしばらくインクカートリッジ1を傾斜した状態で保持し続けると、図9に示すように、インク収容部717内のインクは、前述の姿勢変化に伴うインクの移動と重力により、シートの内面を伝って下方へ移動し始める。前述のように、シートの面がほぼ上下方向に沿って延びているので、インクは円滑に下方へ移動することができる。また、インク収容部717内で第1端部711に沿って溜まっていたインクは、第1端部711が水平方向に対して傾斜した状態とされたために、第1端部711に沿って、口栓72が近傍に設けられた第1角部334に向かって流れる。また、複数の孤立したインク溜まりのうちいくつかは、重力によって下降し始める。そして、一部は下降の途中にある他のインク溜まりに合流し、更に大きなインク溜まりとなって下降し、第1端部711に沿って口栓72へ向けて流れていく。
【0051】
第1角部334は鈍角を成しており、また、口栓72の軸線Xは、ケース2において、第1角部334を有する底壁31側の端部寄りの位置にあるので、第1角部334および第2角部335を下側にし、斜面部332を略水平にしてインクカートリッジ1を傾斜させると、口栓72は支持面9により近い位置に配置される。従って、口栓72の第1開口701の近くにインクが集まりやすい。また、軸線Xは、軸線Xに直交する方向におけるインク袋の一端部(第1端部711)寄りの位置にあり、軸線Xを境として、第1端部711側のインク袋71の幅が、反対側のインク袋71の幅よりも狭いので、斜面部332を略水平にしてインクカートリッジ1を傾斜させると、口栓72の第1開口701の近くにインクが集まりやすい。
【0052】
更にインクカートリッジ1が傾斜した状態が継続すると、図10に示すように、インク収容部717内のあちこちにインク溜まりとなって残存していたインクの大部分は、口栓72の第1開口701の周囲に集合する。インク袋71の長手方向において、口栓72が設けられたのとは反対側の第4端部714とその周囲では、シートの内面の大部分が、互いに接触した状態となる。
【0053】
ユーザは、このようにして第1開口701周辺にインクを集めた状態で、図7に示すように、底壁31を下側にしてインクカートリッジ1を再びインクジェットプリンタ100にセットする。図10に示すように、第1開口701の周囲には、図8に示す状態に比べ、多くのインクが集まっている。しかも、インク袋71の第4端部714とその周囲では2枚のシートの内面の大部分が互いに接触しているので、底壁31が載置面130に載置され、第1端部711が略水平にされても、インクが第1開口701の周囲から第4端部714の方向へ移動することがある程度妨げられる。よって、インク面をゴム栓723に刺された中空針141の先端部の孔よりも上にある状態で維持することができる。従って、残っていたインクを印字ヘッド114に供給することができる。
【0054】
以上に説明したように、本実施形態のインクカートリッジ1は、インク袋71の口栓72の軸線X方向を長手方向とし、左右方向の幅W3が上下方向の幅W4よりも狭いケース2に、第1角部334と第2角部335が設けられている。第1角部334と第2角部335は、夫々、口栓72の軸方向において、第2開口702の先端部724に対して第1開口701側とその反対側に位置する。口栓72の軸線Xは、ケース2において、第1角部334を有する底壁31側の端部寄りに位置する。また、第1角部334および第2角部335は、夫々、鈍角を成す角部である。
【0055】
よって、インク残量が少なくなった場合、ユーザは、前述のように、第1角部334および第2角部335を利用して、インクカートリッジ1を安定して水平方向に対して傾斜した状態とすることができる。ユーザが空中でインクカートリッジ1を保持する場合、何らかの理由で手が滑り、インクカートリッジ1を落としてしまう可能性がある。このとき、インクカートリッジ1が、口栓72が上方に位置するような姿勢になってしまうと、インクが口栓72に向かう流れが妨げられてしまう。しかし、前述したように、インクカートリッジ1は、斜面部332を略水平な支持面9に載置するのに適しているため、斜面部332を支持面9に載置することで、重力によりインクが下方に向かう流れが安定し、インクに対して全く反対方向への力が加わる恐れが低下する。そのため、インク袋71中に残存するインクを口栓72へ向けて効率よく集めることができる。
【0056】
しかも、第1角部334および第2角部335が机上等の面に接するように載置して、容易に傾斜した状態で保持できるので、インクカートリッジを空中で傾斜させた状態で把持するよりも力が要らず、ユーザの利便性が高い。特に、本実施形態では、第1角部334および第2角部335に接続する段部351、352の外面の一部が、第1角部334と第2角部335とを結ぶ線L上にあるので、傾斜した状態をより容易に保つことができる。また、第1角部334および第2角部335を鈍角としたことで、例えば絨毯のような、インクカートリッジが沈み込むような物品上にインクカートリッジが載置された場合に、第1角部334および第2角部335が物品に引っ掛かりにくく、インクカートリッジの姿勢を変更しやすい。
【0057】
更に、斜面部332の段部351、352の間の部分の外面は、線Lに対して略平行、且つ、線Lより内側にある。よって、第1角部334と第2角部335を机上等の面と接するように載置して保持しても、斜面部332に設けられた貫通部338は、この支持面には接しない。従って、第2開口702近傍にインクが付着していたとしても、そのインクが支持面に付着する可能性を低減できる。また、口栓72の先端部724が斜面部332の外面333より内側にあるので、斜面部332によって口栓72を保護することができる。しかしながら、口栓72の先端部724は、少なくとも、線Lよりもケース2の内側方向に位置していればよい。
【0058】
インクジェットプリンタ100からインクカートリッジ1を抜く際など、口栓72からインクが漏れ出る場合がある。インクカートリッジ1が底壁31を下に向けて配置された場合には、漏れ出たインクは、ゴム栓723の先端部724を下方に伝い、表面張力により本体部721の下端に沿って伝い落ちる。本実施形態では、口栓72の下方に略水平に配置された受け面部310が設けられているため、受け面部310で、伝い落ちたインクを受けることができる。更に、斜面部332の第1角部334から貫通部338まで延びる部分は上方に傾斜しているので、受け面部310で受けたインクが貫通部338方向に移動して、貫通部338から漏れ出る可能性を低減することができる。従って、インクジェットプリンタ100や、インクカートリッジ1を取り扱うユーザの指等をインクで汚す可能性を低減することができる。
【0059】
インクジェットプリンタ100用のインクには、顔料を含有する顔料系インクが使用されることが多い。つまり、インクカートリッジ1において、インク袋71には、顔料系インクが充填されることが多い。顔料系インクは、インク中の顔料が沈殿する虞があるとして、インクカートリッジ1が振られ、その中のインクが攪拌されると、インクがインク袋71内の広範囲において点在してしまう。インクカートリッジ1によれば、このような場合でも、第1角部334および第2角部335を用いてインクカートリッジ1を傾斜した状態として残存するインクを口栓に向けて集められ、インクが無駄にされることが軽減される。顔料系インクの中でも特に、酸化チタンを含有する白インクでは、酸化チタンが沈殿しやすい。しかし、本実施形態のインクカートリッジ1によれば、第1角部334および第2角部335を用いてインクカートリッジ1を傾斜した状態することで、水平方向に対して口栓72の軸方向が斜めになるため、軸線Xが垂直にされた場合に比べて、口栓72の第1開口701には顔料が沈殿しにくい。従って、第1開口701に顔料(特に酸化チタン)が沈殿して、インク組成が二分されてしまうような、印字に用いることができない状態になるのを防止することができる。
【0060】
また、インクジェットプリンタ100用のインクとして、エマルションを含有する所謂エマルションインクが使用されることも多い。エマルションインクは、エマルションを含有しないインクと比べた場合、粘度が高い。よって、インクカートリッジ1を傾斜させてもインクはより移動しにくいので、インクを下方に集めるのに時間がかかる。本実施形態のインクカートリッジ1によれば、机上等の支持面に第1角部334および第2角部335が接するように載置し、インクカートリッジ1を傾斜した状態で容易に保持できるので、空中で長い時間もっている場合などに比べて、特に効果がある。更に、エマルションインクが顔料も含有する場合には、前述したように、口栓72の第1開口701に顔料が沈殿するのを防ぎながら、効率よくエマルションインクを集めることができる。
【0061】
また、ケース2に第1角部334および第2角部335を繋ぐ斜面部332を設けたことで、インクカートリッジ1が落下した時に口栓72が受ける衝撃を緩和することができる。具体的には、ケース2の斜面部332が底壁31と接続する第1角部334は鈍角を成している。第1角部334の近傍には、口栓72が配置されている。このような鈍角の角部は、直角の角部の場合に比べ、衝撃が加わったときに応力が集中しにくい。従って、直角の角部に比べて、角部に強い衝撃が加わって、近傍にある口栓72が破損したり、配置位置が大きくずれてしまったりする可能性を低減することができる。更に、例えば出荷時等には、インクカートリッジ1は、サイズがほぼ同じ直方体形状の箱に梱包されることが想定される。このような場合、斜面部332と箱との間に三角柱状の空間ができるので、箱が落下する等して衝撃を受けたとしても、この空間が緩衝材となって、口栓72が受ける衝撃は緩和される。
【0062】
さらに、図5に示すように、インクカートリッジ1の口栓72の軸線Xが略水平な状態では、斜面部332の上面(内面)が先端部724の下方を越えて先端部724の先端方向に張り出している。そのため、中空針141が口栓72から抜かれた際に、インクが先端部724から下方に落下しても、インクは斜面部332の上面に衝突する。インクは、斜面部332の傾斜に沿って、インクカートリッジ1の内側(第1開口701側)に向かって移動する。従って、インクカートリッジ1の周辺に対するインクによる汚染が防止される。
【0063】
この汚染防止の効果が期待できるのは、インクジェットプリンタ100へインクを供給するための中空針141が口栓72から抜かれる場合だけではない。例えば、インク袋71にインクを新規に充填、追加、もしくは、再充填するために用いる中空針が抜かれた場合にも、インクが落下する恐れがある。よって、このような場合にも、同様の効果が期待できる。図5のような状態において、中空針141の抜き差しに伴って、インクが先端部724に付着した場合、インクは先端部724の下側端部に位置することがある。そのインクの状態で、図9に示すようにインクカートリッジ12が傾けられた場合、図5に示す状態での先端部724の下側端部の下方に斜面部332の上面(内面)があるので、インクが先端部724から下方に落下しても、インクは斜面部332の上面に衝突する。従って、インクカートリッジ1の周囲がインクにより汚染されるのを軽減することができる。
【0064】
前述したインクカートリッジ1は、図5に示すように、いずれも鈍角を成す第1角部334および第2角部335の間に、段部351および352を有する斜斜面部332が設けられた例である。しかし、第1角部334および第2角部335を略水平な面に接するように載置して、ケース2の長手方向を水平方向に対して傾斜した状態で保つことができる限り、第1角部334、第2角部335、および第1角部334と第2角部335の間の部分の形状等は、適宜変更することができる。以下に、図11〜図15を参照して、いくつかの変形例について説明する。
【0065】
図11に示す第1変形例のインクカートリッジ11は、図5に示すインクカートリッジ1の段部352をなくし、直角を成す背面部331の下端、つまり第2角部335に、斜面部332の上端を繋げたものに相当する。インクカートリッジ1と同様、第1角部334は鈍角を成す角部であり、斜面部332は、第1角部334と第2角部335とを結ぶ線Lと略平行、且つ、線Lよりもケース2の内側方向に位置する。
【0066】
従って、インクカートリッジ11も、インクカートリッジ1と同様、インク残量が少なくなった場合に、第1角部334および第2角部335を支持面に接するように載置してインクカートリッジ1を傾斜させた状態で保持することができる。従って、インク袋71に残存するインクを効率よく口栓72の第1開口701に向けて集めることができる。第1角部334および第2角部335のうち、第1角部334は鈍角を成すので、インクカートリッジ11も、インクカートリッジ1と同様、例えば絨毯のような、インクカートリッジ11が沈み込むような物品上に載置された場合でも、少なくとも第1角部334が物品に引っ掛かりにくく、インクカートリッジ11の姿勢を変更しやすい。なお、本変形例のほか、第1角部334および第2角部335のうち、第2角部335のみを鈍角を成すように形成してもよい。また、鈍角でない方の角部は、直角に限らず、鋭角を成す角部でもよいし、曲面で形成された角部でもよい。
【0067】
図12に示す第2変形例のインクカートリッジ12は、インクカートリッジ1の斜面部332に代えて、第1角部334および第2角部335の間に、第1角部334および第2角部335を結ぶ線Lとは平行でない外面を有する面部336を設けた例である。図12に示すように、面部336は、背面部331の下端に接続して、側面視略逆L字状の右壁30の後端部に沿って、前方へ延び、下方へ屈曲して、更に口栓72の本体部721の外周に設けられた2つのフランジ727、728の間まで延びている。また、底壁31の後端から僅かに前方において、底壁31の上面(ケース2の内面)から、口栓72の2つのフランジ727、728の間まで延びている。底壁31は、2つのフランジ727、728のうち、底壁31の後端側(図中左側)にあるフランジ727の下方まで、インクカートリッジ1の下端で略水平に延びている。底壁31は、フランジ727の下方において、略水平に延びる部分から後方へ向かって僅かに上方へ傾斜する傾斜部361と接続している。
【0068】
インクカートリッジ12では、底壁31と傾斜部361が接続する角部が第1角部334であり、背面部331と面部336が接続する角部が第2角部335である。第1角部334および第2角部335はいずれも鈍角を成す角部である。具体的には、底壁31の外面(底面)と傾斜部361の外面とが成す角、および、背面部331の外面(背面)と面部336の外面が成す角は、いずれも鈍角であるが、両者の角度は異なる。具体的には、第2角部335よりも第1角部334の方が、角度が広い。
【0069】
このような構成のインクカートリッジ12でも、インク残量が少なくなった場合に、第1角部334および第2角部335を支持面に接するように載置してインクカートリッジ12を傾斜させた状態で保持することができる。従って、インク袋71に残存するインクを効率よく口栓72の第1開口701に向けて集めることができる。また、インクカートリッジ12が沈み込むような物品上に載置された場合でも、第1角部334および第2角部335が物品に引っ掛かりにくく、インクカートリッジ12の姿勢を変更しやすい。
【0070】
なお、この例では、面部336が口栓72の本体部721の外周に接した状態でケース2の背面下部を塞ぐには、図3に示すような分割方法ではなく、ケース2を、左右方向中心線で本体部3と蓋部に分割して、夫々に底壁31、上壁32、背面部331、面部336、および前壁34を設ければよい。面部336は、インクカートリッジ1の固定部381(図5参照)と同様、ケース2に対して口栓72を確実に正確な位置に配置して固定する機能を有する。また、インクカートリッジ12も、インクカートリッジ1と同様の受け面部310を有するので、インクジェットプリンタ100からインクカートリッジ12を抜く際など、底壁31を下に向けて配置された場合には、受け面部310によって口栓72から伝い落ちたインクを受けることで、インクがケース2の外部に漏れ出る可能性を低減できる。
【0071】
図13に示す第3変形例のインクカートリッジ13は、背面部331および底壁31から連続する面部336を設けた点では、第2変形例のインクカートリッジ12(図12参照)と同様であるが、第1角部334および第2角部335の角が取られ、丸みを帯びた角部、つまり曲面で形成された角部とされている点で異なる。このような角が丸い第1角部334および第3角部335でも、インクカートリッジ13を傾斜させた状態で保持し、インク袋71に残存するインクを効率よく口栓72の第1開口701に向けて集めることができる。また、インクカートリッジ13が沈み込むような物品上に載置された場合でも、第1角部334および第2角部335が物品に引っ掛かりにくく、インクカートリッジ13の姿勢を変更しやすい。なお、第1角部334および第2角部335のうち一方のみを曲面で形成された角部とし、他方を鋭角、直角、および鈍角のうちいずれかを成す角部としてもよい。
【0072】
図14に示す第4変形例のインクカートリッジ14は、図5に示すインクカートリッジ1の斜面部332に設けられた線L上に沿って広がる外面を有する段部351、352に代えて、図14の紙面に直交する方向から見て、線Lに対して傾斜する面で構成された傾斜部354、355を設けた例である。底壁31の後端と傾斜部354が接続する角部が第1角部334であり、背面部331の下端と傾斜部355が接続する角部が第2角部335である。第1角部334および第2角部335は、いずれも鈍角を成す角部である。具体的には、底壁31の外面(底面)と傾斜部354の外面とが成す角、および、背面部331の外面(背面)と傾斜部355の外面とが成す角は、いずれも鈍角である。
【0073】
このような構成のインクカートリッジ14でも、インク残量が少なくなった場合に、第1角部334および第2角部335を支持面に接するように載置してインクカートリッジ1を傾斜させた状態で保持することができる。従って、インク袋71に残存するインクを効率よく口栓72の第1開口701に向けて集めることができる。また、インクカートリッジ12が沈み込むような物品上に載置された場合でも、第1角部334および第2角部335が物品に引っ掛かりにくく、インクカートリッジ12の姿勢を変更しやすい。
【0074】
また、第1角部334および第2角部335を結ぶ線Lより内側に、線Lに略平行な面部337を設けているので、第1角部334と第2角部335を机上等の面と接するように載置して保持しても、貫通部338はこの支持面には接しない。従って、第2開口702近傍にインクが付着していたとしても、そのインクが支持面に付着する可能性を低減できる。また、口栓72の先端部724が面部337の外面より内側にあるので、面部337によって口栓72を保護することができる。先端部724は、軸線X方向において、面部337の下端部の内面(図14における右面)に対して隙間をあけて位置し、面部337と先端部724の間(図14における先端部724の下方)を、インクが移動可能となっている。図14における先端部724の下方で、面部337の下端部によって口栓72から伝い落ちたインクを受けることで、インクがケース2の外部に漏れ出る可能性を低減できる。
【0075】
なお、本変形例のインクカートリッジ14において、面部337の傾斜部354および335のみを残し、間を繋ぐ平面部は省略してもよい。また、同様に、図5に示す実施形態のインクカートリッジ1において、斜面部332の段部351および352のみを残し、間を繋ぐ平面部は省略してもよい。つまり、鈍角を成す角部である第1角部334および第2角部335を残し、第1角部334および第2角部335の間には、面部がない構成としてもよい。このような場合も、第1角部334および第2角部335を用いて、インク袋71に残存するインクを効率よく口栓72の第1開口701に向けて集めることができる効果は同様である。
【0076】
図15に示す第5変形例のインクカートリッジ15は、図5に示すインクカートリッジ1等と同様、第1角部334および第2角部335を結ぶ線Lより内側に、線Lと略平行に延びる外面を有する面部383を設けた例である。ただし、この面部383は、右壁30または蓋部4(図3参照)に連続的に形成された面部ではなく、三角柱状に成形したフェルト材を第1角部334および第2角部335の間に充填したものである。面部383の外面は、第1角部334および第2角部335を結ぶ線Lより内側に、線Lと略平行に配置されている。面部383には、口栓72の第2開口702を臨む位置に、口栓72の本体部721の外径よりも僅かに小さい開口径の貫通部338が設けられている。貫通部338のケース2内側の端部のみ、開口径が本体部721の外径に合わせて広げられている。
【0077】
また、底壁31の後端面314は、後方(図中左側)へ向かって上方に傾斜しており、背面部331の下端面315は、前方へ向かって下方に傾斜している。インクカートリッジ15では、底壁31の外面(底面)と後端面314により形成される角部が第1角部334であり、背面部331の外面(背面)と下端面315により形成される角部が第2角部335である。底面と後端面314、および背面と下端面315とはいずれも鈍角を成す。
【0078】
このような構成のインクカートリッジ15でも、インク残量が少なくなった場合に、第1角部334および第2角部335を支持面に接するように載置してインクカートリッジ15を傾斜させた状態で保持することができる。また、インクカートリッジ15が沈み込むような物品上に載置された場合でも、第1角部334および第2角部335が物品に引っ掛かりにくく、インクカートリッジ15の姿勢を変更しやすい。更に、口栓72の先端部724を、貫通部338のケース2内側の端部に設けられた開口径が広い部分に嵌め込むことで、ケース2に対して口栓72を確実に正確な位置に配置して固定することができる。
【0079】
実施形態のインクカートリッジ1の斜面部332に対応する部分以外の壁面についても、ケース2が第1角部334と第2角部335を備え、且つ、ケース2とインクパック7との関係を前述のように規定することができる範囲で省略することができる。例えば、対向する右壁30および蓋部4の間にインクパック7を挟み、インク袋71を形成する2層のシートの外面の一部を夫々右壁30および蓋部4の内面にインク袋71が伸縮可能な範囲で貼り付けて、インクカートリッジとしてもよい。この場合、口栓72を確実に正確な位置に固定するため、口栓72の固定部381(図11参照)も設けることが好ましい。この例では、インク袋71を挟んで対向する右壁30および蓋部4により、インク袋71の姿勢を安定した状態で保つことができ、右壁30と蓋部4の形状を図3に示すようにすれば、底壁31、背面部331、および斜面部332がなくても同じ位置に鈍角を成す角部である第1角部334および第2角部335が形成できるので、実施形態のインクカートリッジ1と同様の効果を奏することができる。
【0080】
前述のインクカートリッジ1のインクを口栓72に向けて集める作用の説明(図8〜10参照)では、ユーザが、略水平な支持面9に、第1角部334および第2角部335を接触させつつ、インクカートリッジ1を手で保持する例を挙げた。しかし、略水平な支持面9に第1角部334および第2角部335を接触させつつ、図8に一点鎖線Yで示す略垂直な面(例えば、壁)にインクカートリッジ1の前壁34の下端を接触させるように立たせてもよい、この場合、ユーザは、手でインクカートリッジ1を保持している必要はない。このように、壁などに寄りかからせて傾斜した状態とした場合に、インクカートリッジ1がこの状態のまま長時間(例えば、一晩)放置される可能性がある。つまり、インクカートリッジ1が傾斜した状態で自立できることは、ユーザが目を離してしまい、インクカートリッジ1が傾斜した状態で放置される可能性を生じる。特に、インクカートリッジ1が、このように壁など寄りかからせて傾斜した状態で安定した姿勢を保てる構成であれば、尚更である。傾斜した状態で長時間放置された場合、インクカートリッジ1のインク袋71内では、顔料(例えば、白インクである場合、酸化チタン)が下方に沈殿して、インクが2層に分かれて印刷に向かない状態となってしまう。そのため、再度インクカートリッジ1を手で持ってインクを攪拌し、更にインクを口栓72の周囲に集めるために、インクカートリッジ1を傾斜させるという作業を繰り返す手間が生じうる。
【0081】
従って、インクカートリッジ1が傾斜した状態では自立しない構成とすれば、ユーザが手を離せば、インクカートリッジ1は傾斜した状態を維持できずに、右壁30または蓋部4を上にして倒れる。更に、支持面9が絨毯など、インクカートリッジ1が沈み込むものであれば、支持面9に接触する第1角部334および第2角部335が鈍角であるので、第1角部334および第2角部335が鋭角や直角である場合に比べて、一般的に支持面9との引っ掛かりが少ない。そのため、第1角部334および第2角部335が鋭角や直角である場合に比べて、壁などにインクカートリッジ1を立てかけた場合の安定性が低く、インクカートリッジ1が倒れる可能性が上がる。従って、インクカートリッジ1が長時間放置される可能性を低減することができる。
【0082】
以上に説明したように、インクカートリッジ1は、支持面9に載置されて姿勢が安定し、空中で手で持ってインクを寄せる作業がなされる場合に比べて、より効率的で、省力化が図られる一方、第1角部334および第2角部335が鋭角や直角である場合に比べて、長時間放置される可能性が低減されている。
【符号の説明】
【0083】
1、11〜15 インクカートリッジ
2 ケース
30 右壁
334 第1角部
335 第2角部
337、383 面部
338 貫通部
381 固定部
4 蓋部
71 インク袋
72 口栓
700 中空部
701 第1開口
702 第2開口
724 先端部
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを収容するインク袋とインク袋を収容するケースとを備えたインクカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、インクジェットプリンタ(以下、単にプリンタという)は、印字ヘッドにインクを供給するためのインクカートリッジを着脱可能に構成されている。一般的なインクカートリッジとして、内部にインクを収容する可撓性を有するインク袋と、インク袋に連結して設けられたインクを取り出すための口栓と、インク袋を収容する直方体形状のケースとを備えたインクカートリッジが知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−240131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のインクカートリッジによれば、インク袋が可撓性を有するため、印字中にインクの残量が少なくなると、インク袋の内面同士が接してしまい、インクが分断されてしまうことがある。即ち、インクの一部は口栓まで到達せず、やはりインク収容パック内に残存してしまう場合がある。
【0005】
本発明は、インク残量が少なくなった場合にも、残存するインクを口栓へ向けて集めることが可能なインクカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るインクカートリッジは、インク袋と、口栓と、ケースとを備えている。前記インク袋は、対向配置された可撓性を有する2層のシートを少なくとも含んで袋状に形成され、内部にインクを収容する。前記口栓は、前記インク袋に設けられ、前記インク袋と連通する第1開口から外部に開口する第2開口まで通じる中空部を有する。前記ケースは、前記インク袋を収容し、収容された前記インク袋の前記口栓の軸方向を長手方向とする。前記ケースの前記第2開口側の端部は、前記口栓の前記軸方向において、前記口栓の前記第2開口の側の先端部に対して前記第1開口の側に位置する角部である第1角部と、前記口栓の前記軸方向において、前記口栓の前記第2開口の側の前記先端部に対して前記第1開口とは反対側に位置する角部である第2角部とを備える。前記ケースにおいて、前記第1角部と前記第2角部とを結ぶ線が伸長する方向および前記軸方向に直交する方向である第1方向における幅は、前記第1方向および前記軸方向に直交する方向である第2方向における幅よりも狭い。前記インク袋は、前記口栓の軸線が、前記第2方向において、前記第1角部を有する側の前記ケースの一端部寄りに位置するように前記ケースに収容されている。前記口栓の前記第2開口の側の前記先端部は、前記第1角部と前記第2角部とを結ぶ前記線よりも前記ケースの内側方向に位置する。前記第1角部および前記第2角部のうち少なくとも一方は、鈍角または曲面を成す。
【0007】
インク袋の口栓の軸方向を長手方向とするケースにおいて、第1角部と第2角部とを結ぶ線は、口栓の軸方向に対して斜めになる。印字中にインク残量が少なくなった場合、ユーザは、インクカートリッジをプリンタから取り外し、第1角部と第2角部を下側にして、机上等の略水平な面と接するように載置して保持する。すると、口栓の軸方向およびケースの長手方向は、水平方向に対して傾斜した状態となる。第1角部と第2角部を載置することで、インクカートリッジの安定した傾斜状態を保つことができるので、インク袋中に残存するインクを口栓へ向けて集めることができる。しかも、インクカートリッジを空中で傾斜させた状態で把持するよりも力が要らないので、ユーザの利便性が高い。また、第1角部および第2角部のうち少なくとも一方が鈍角または曲面を成すので、例えば絨毯のようなインクカートリッジが沈み込むような物品上にインクカートリッジが載置された場合に、第1角部および第2角部のうち少なくとも一方は物品に引っ掛かりにくく、インクカートリッジの姿勢を変更しやすい。
【0008】
前記インクカートリッジにおいて、前記第1角部および前記第2角部は、それぞれ、鈍角または曲面を成してもよい。この場合、第1角部および第2角部の両方が物品に引っ掛かりにくいので、インクカートリッジの姿勢をより変更しやすくなる。
【0009】
前記インクカートリッジにおいて、前記ケースは、前記第1角部および前記第2角部に接続し、前記第1角部と前記第2角部とを結ぶ前記線に略平行に延びる面部と、前記面部の前記口栓の前記第2開口を臨む位置に設けられた貫通部とを更に備え、前記面部の外表面は、前記第1角部と前記第2角部とを結ぶ前記線よりも内側にあってもよい。この場合、第1角部と第2角部を机上等の面と接するように載置して保持しても、貫通部はこの載置面には接しない。従って、第2開口近傍にインクが付着していたとしても、そのインクが載置面に付着する可能性を低減できる。
【0010】
前記インクカートリッジにおいて、前記ケースは、前記口栓を前記ケースに固定するための固定部を備えていてもよい。この場合、口栓をケースに対して確実に正確な位置に固定できる。
【0011】
前記インクカートリッジにおいて、前記ケースは、前記第1角部および前記第2角部を結ぶ前記線上に配置された面部を備えていなくてもよい。第1角部と第2角部とを結ぶ線上に面部があると、載置面の形状によっては、この面部と載置面とが干渉する可能性がある。面部が設けられないことで、第1角部と第2角部とを載置面に確実に接触させ、インクカートリッジの安定した傾斜状態を保つことができる。
【0012】
前記インクカートリッジにおいて、前記ケースは、前記インク袋の前記2層のシートのうち一方に対向する第1側面と、前記2層のシートのうち他方に対向し、且つ、前記インク袋を挟んで前記第1側面に対向する第2側面とを有してもよい。そして、前記第1側面と前記第2側面は、前記第1方向に離間して配置され、前記第1側面と前記第2側面との距離は、前記第2方向における前記第1側面および前記第2側面の幅よりも短くてもよい。この場合、インク袋を挟んで対向する第1側面および第2側面により、インク袋の姿勢を安定した状態で保つことができる。
【0013】
前記インクカートリッジにおいて、前記インクは、酸化チタンを顔料として含有する顔料系インクであってもよい。顔料系インクは、インク中の顔料が沈殿する虞があるとして、インクカートリッジが振られ、インクが攪拌されると、インクがインク袋内の広範囲において点在してしまう。このような場合でも、第1角部および第2角部を用いてインクカートリッジを傾斜した状態として残存するインクを口栓に向けて集められ、インクが無駄にされることが軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】インクジェットプリンタ100の概略構成の模式図である。
【図2】インクカートリッジ1を右後方から見た斜視図である。
【図3】ケース2の分解斜視図である。
【図4】蓋部4が取られた状態のインクカートリッジ1を左側面側から見た状態を示す説明図である。
【図5】インクカートリッジ1の口栓72周辺部の拡大縦断面図である。
【図6】インクカートリッジ1の正面図である。
【図7】インク供給時のインクカートリッジ1の口栓72周辺部の拡大部分断面図である。
【図8】インクカートリッジ1を傾斜させてインクを集める過程を示す説明図である。
【図9】インクカートリッジ1を傾斜させてインクを集める過程を示す別の説明図である。
【図10】インクカートリッジ1を傾斜させてインクを集める過程を示す更に別の説明図である。
【図11】第1変形例のインクカートリッジ11の口栓72周辺部の拡大縦断面図である。
【図12】第2変形例のインクカートリッジ12の口栓72周辺部の拡大縦断面図である。
【図13】第3変形例のインクカートリッジ13の口栓72周辺部の拡大縦断面図である。
【図14】第4変形例のインクカートリッジ14の口栓72周辺部の拡大縦断面図である。
【図15】第5変形例のインクカートリッジ15の口栓72周辺部の拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、これらの図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成等は、単なる説明例である。
【0016】
本実施形態では、Tシャツ等の布帛に印刷を行うインクジェットプリンタ100に使用されるインクカートリッジ1について説明する。まず、図1を参照して、インクジェットプリンタ100について説明する。インクジェットプリンタ100は、インクカートリッジ1から供給されたインクを用いて、印字ヘッド114により印刷媒体である布帛に印刷を行うことが可能な公知のプリンタである。よって、インクジェットプリンタ100の構成については簡単に説明する。なお、図1の上下方向、左右方向、および左下方向が、夫々、インクジェットプリンタ100の上下方向、左右方向および正面側、並びにインクカートリッジ1の上下方向、左右方向および正面側である。
【0017】
インクジェットプリンタ100は、矩形箱状の筐体101を有する。筐体101の内部の左右方向略中央下部に、一対のガイドレール102が前後方向に延びている。プラテン支持台103は、ガイドレール102により、ガイドレール102に沿って前後方向に移動可能に支持されている。プラテン支持台103上面の左右方向略中央には、取り換え可能なプラテン104が固定されている。プラテン104は、平面視略五角形の板体であり、その上面に、例えばTシャツなどの布帛を載置するためのものである。詳細は図示しないが、プラテン104が固定されたプラテン支持台103は、プラテン駆動モータやベルト伝達機構を含むプラテン駆動機構により、ガイドレール102に沿って前後方向に移動される。
【0018】
筐体101の前後方向略中央、且つ、プラテン104の上方には、一対のガイドレール112が左右方向に延びている。キャリッジ113は、ガイドレール112によって、ガイドレール112に沿って左右方向に移動可能に支持されている。キャリッジ113の下部には印字ヘッド114が固定されている。詳細は図示しないが、印字ヘッド114を備えたキャリッジ113は、キャリッジ駆動モータやベルト伝達機構を含むキャリッジ駆動機構によって、ガイドレール112に沿って左右方向に移動される。印字ヘッド114には、チューブ142(図7参照)を介して、筐体101内に設けられたカートリッジ装着部(図示略)にセットされたインクカートリッジ1からインクが供給される。印字ヘッド114の底面には複数個の微細なノズルが設けられており、圧電素子の駆動によりノズルから下向きにインクの液滴が吐出されることで、プラテン104上に載置された布帛に印刷が行われる。
【0019】
筐体101内のカートリッジ装着部には、8個のインクカートリッジ1がセット可能である。筐体101前面の右下部には、インクカートリッジ1をインク収容部に着脱するための開口であるカートリッジ挿入口120が8個設けられている。なお、本実施形態のインクジェットプリンタ100では、白インクのインクカートリッジ1が4個と、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの4色のインクカートリッジ1が1個ずつ使用される。インクカートリッジ1からインクジェットプリンタ100へのインク供給方法については後述する。
【0020】
図1〜図5を参照して、本実施形態のインクカートリッジ1の構成について説明する。図1〜図4に示すように、インクカートリッジ1は、ケース2と、ケース2に収容されたインクパック7とを備えている。以下に、ケース2とインクパック7の詳細な構成について、順に説明する。なお、白、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの5色のインクカートリッジ1は、インクパック7に収容される液体のインクの色が異なるのみで、ケース2とインクパック7の構成は全て同じである。
【0021】
図2に示すように、ケース2は、全体としては、薄型略矩形箱状である。ただし、角部を含む背面側の下部が、斜め後ろ上方に向けて凹状に切り取られた状態である。ケース2の前後方向、左右方向、上下方向の長さは、前後方向、上下方向、左右方向の順に長い。
【0022】
図3に示すように、ケース2は、本体部3および蓋部4を含む。本体部3は、ケース2の右側面、底面、上面、背面および前面を夫々形成する薄板状の右壁30、底壁31、上壁32、後壁33、および前壁34を含む。右壁30は、インクカートリッジ1を側面視した場合、すなわち、右壁30の最大面積部(図3で示された面のうち最も広い面)に直交する方向から見てほぼ五角形状であり、前後方向に長い長方形の直角を成す4つの角部のうち、後ろ側の下にある角を含む角部が斜めに切り取られたような形状を有する。つまり、右壁30は、側面視で、前後方向に延びる2つの平行に対向する長辺、上下方向に延びる2つの平行に対向する短辺、および、短い方の長辺と短い方の短辺とを繋ぐ斜辺とを有する。
【0023】
ただし、斜辺は厳密には直線ではなく、短い方の短辺および短い方の長辺と繋がる両端部が、夫々、僅かにインクカートリッジ1の斜め上方向および斜め下方向へ段状に突出する突出部になっている。より具体的には、図5に示すように、斜辺は、上下方向に延びる短い方の短辺(後述する背面部331が接続する辺)の下端が、正面側斜め下方(図5の右下方向)へ鈍角を成して折れ曲がっている(後述の段部352に対応する部分)。そして、前後方向(図5の左右方向)に延びる短い方の長辺(後述する底壁31が接続する辺)の後端(図5の左端)が、背面側斜め上方(図5の左上方向)へ鈍角を成して折れ曲がっている(後述の段部351に対応する部分)。
【0024】
底壁31、上壁32、後壁33、および前壁34は、夫々、右壁30に対して略垂直に、同一方向に同一の長さで延びている。底壁31は、右壁30の下端部、つまり一対の長辺のうち短い方に接続している。上壁32は、右壁30の上端部、つまり長い方の長辺に接続している。後壁33は、背面部331および斜面部332を含む。背面部331は、右壁30の後端部、つまり一対の短辺のうち短い方に接続する。斜面部332は、右壁30の前述の突出部を含む斜辺に沿って設けられ、底壁31と背面部331とを繋ぐ。よって、斜面部332は、底壁31および背面部331に接続する両端部に、夫々段部351、352を有する。よって、斜面部332の段部351、352の間の部分は、底壁31の後端(後述する第1角部334)と背面部331の下端(後述する第2角部335)とを結ぶ線よりも僅かにケース2の内側方向に位置する。斜面部332には、斜面部332が底壁31と接続する段部351の近傍に、斜面部332を貫通する開口である貫通部338が設けられている。前壁34は、右壁30の前端部、つまり長い方の短辺に接続し、底壁31と上壁32とを繋ぐ。
【0025】
図4に示すように、上壁32と背面部331、上壁32と前壁34、および底壁31と前壁34とが接続する3つの角部は、夫々、直角を成している。一方、斜面部332と底壁31とが接続する角部、および斜面部332と背面部331とが接続する角部は、夫々、鈍角を成している。以下では、底壁31、上壁32、後壁33、および前壁34を総称する場合、周壁31〜34という。
【0026】
図3に示すように、右壁30に対向し、ケース2の左側面を形成する蓋部4は、本体部3の右壁30に対応した形状を有する薄板状の部材である。つまり、蓋部4は、インクカートリッジ1を側面視した場合、すなわち、蓋部4の最大面積部(図3で示された面のうち最も広い面)に直交する方向から見てほぼ五角形状であり、前後方向に長い長方形の直角を成す4つの角のうち、後ろ側の下にある角を含む角部が斜めに切り取られたような形状を有する。ただし、右壁30と同様、斜辺の両端部は、夫々、僅かにインクカートリッジ1の斜め下方向および斜め上方向へ突出している。蓋部4が本体部3に接合されて、ケース2が形成される。蓋部4を本体部3に接合する方法は特に限定されない。図示はしないが、例えば、本体部3と蓋部4に、夫々、係合孔と係合ピンとを設け、係合ピンを係合孔に挿入することで、蓋部4を本体部3に接合してもよい。係合ピンではなく、係合フックと係合孔を用いて接合してもよい。本体部3と蓋部4とを溶着により固定しても良い。
【0027】
図4に示すように、インクパック7は、ケース2内の周壁31〜34により囲まれた領域に収容される。インクパック7は、インク袋71と、インク袋71に設けられた口栓72を備えている。本実施形態のインク袋71は、可撓性を有する2枚の長方形状の樹脂性シートを、シートの一面同士が対向した状態で重ね合わせ、4辺に沿った周囲部716を熱溶着(熱シール)することで形成された袋状の容器である。インクは、周囲部716に囲まれた空間であるインク収容部717の内部に収容される。インク収納部717は、シート面、即ち、その最大面積部(図4で示された面のうち最も広い面)に略直交する方向から見て略長方形であり、ケース2の内面に沿って伸展している。
【0028】
なお、インク袋71は、対向配置された可撓性を有する2層のシートを含み、シート間にインクを収容可能な空間が形成された袋状の容器であればよい。よって、例えば、1枚の長方形状のシートを半分に折曲げて2層とし、折曲げ部以外の3辺に沿って2層を接合することでインク袋71を形成してもよい。また、対向する2枚のシートの3辺に沿って2枚を接合し、各シートの残る1辺を別のシートと接合して、底部を有するインク袋71としてもよい。対向する2枚のシートの4辺が、夫々、マチとなる別のシートと接合されたインク袋71であってもよい。更に、シートの接合方法は溶着に限られず、例えば、接着等の他の方法を用いてもよい。
【0029】
図4および図5に示すように、口栓72は、円筒状の本体部721と、本体部721の一端側において外周面から互いに反対方向に突出する2つの羽根状の連結部722とを備えている。口栓72は、本体部721(より詳細には、後述する中空部700)の軸線Xがインク袋71の長手方向と略平行になるように、インク袋71に設けられている。また、軸線Xは、軸線Xに直交する方向(インク袋71の短手方向)におけるインク袋71の一端部寄りに位置する。本実施形態では、口栓72は、インク袋71の4つの角部のうち1つの近傍に設けられている。以下では、軸線X方向に直交する方向に位置するインク袋71の2つの端部のうち、軸線Xにより近い方を第1端部711、軸線Xからより遠い方を第2端部712という。また、軸線X方向(インク袋71の長手方向)に位置するインク袋71の2つの端部のうち、口栓72が設けられている方を第3端部713、他方を第4端部714というものとする。
【0030】
本実施形態では、口栓72は、連結部722を含む本体部721の一端部が、インク袋71を形成する2枚のシートの間に挿入され、周囲部716と一体的に溶着されることで、インク袋71に固定されている。周囲部716と溶着されていない本体部721の他端部は、インク袋71の第3端部713からインク袋71の外方へ突出している。
【0031】
図5に示すように、本体部721は、外周に沿って設けられた2つのフランジ727、728を有する。また、本体部721は、その内部に中空部700を有する。中空部700は、インク袋71のインク収容部717に連通する第1開口701から、インク袋71の外部に開口する第2開口702まで通じている。中空部700の第2開口702側の端部には、円柱状のゴム栓723が挿入されており、第2開口702はゴム栓723で塞がれている。このように、インクは、密閉状態のインク収容部717内に収容されている。なお、口栓72は、中空部700によってインク収容部717と外部とが通じるようにインク袋71に設けられていればよく、その固定方法は溶着に限られない。よって、例えば、口栓72は、インク袋71と一体的に形成されていてもよい。
【0032】
図4および図5を参照して、ケース2とインクパック7との配置関係の詳細について説明する。図4に示すように、インクパック7は、口栓72の軸線Xがケース2の長手方向(前後方向)と略一致するように、ケース2に収容される。また、インクパック7は、口栓72の軸線Xを含み、且つ、斜面部332の外面333と直角を成す仮想的な平面に対して、インク袋71を形成する2層のシートが略平行に延びるように、ケース2に収容されている。よって、本実施形態では、2層のシートの外面は、夫々右壁30および蓋部4の内面に対向して延びる。インク収容部717を形成する2層のシートのうち一方の外面は、右壁30および蓋部4のうち対向する一方の内面に貼り付けられていてもよい。
【0033】
なお、インク袋71を形成するシートは可撓性を有するため、インク収容部717中に収容されたインクの残量が多ければ、2層のシートは互いに離れる方向に湾曲し、残量が少なければ、2層のシート間の距離が狭まって互いに接触する方向に撓む。つまり、シートは固定された平面ではないので、上記の仮想平面と厳密には平行にならない。よって、上記の仮想平面との関係でいう「略平行」とは、平面同士の厳密な平行関係のみならず、シートの撓みを許容した平行に近い状態をも含む。
【0034】
また、例えば、ケース2の本体部3、つまり、右壁30と周壁31〜34とが樹脂で一体成形される場合には、一般的に、金型のキャビティからの離型を容易にするために、所謂「抜き勾配」が設けられる。この場合、右壁30と周壁31〜34の各々とは、直角より2〜4度程度広い鈍角を成す。よって、前述のように、インク袋71のシートの外面が、右壁30の内面に貼り付けられた場合、上記の仮想平面とシートとは、厳密には平行にならない。しかし、上記の撓みの許容と同様に、抜き勾配程度の角度の差異がある場合も、上記仮想平面とシートとは「略平行」であるとみなすことができる。
【0035】
図5に示すように、インクパック7は、口栓72の軸線X方向において、ケース2の斜面部332(より詳細には、段部351)の下端と底壁31の後端(図中左端)とが接続する角部が、口栓72の第2開口702側の先端部724(ゴム栓723の先端部)に対して第1開口701側に位置し、斜面部332(より詳細には、段部352)の上端と背面部331の下端とが接続する角部が、先端部724に対して第1開口701とは反対側に位置するようにケース2に収容される。つまり、これら2つの角部を最短で結ぶ線Lは、軸線Xに対して斜めに交差する。なお、以下では、口栓72の第1開口702近傍側の端部に関して、口栓72の軸線X方向において、先端部724に対して第1開口701側に位置するケース2の角部を「第1角部334」、先端部724に対して第1開口701とは反対側に位置する角部を「第2角部335」というものとする。本実施形態では、斜面部332と底壁31とが接続する角部、および斜面部332と背面部331とが接続する角部が、夫々、第1角部334および第2角部335である。
【0036】
第1角部334および第2角部335は、少なくとも一方が鈍角または曲面を成す角部である。本実施形態では、第1角部334および第2角部335は、いずれも鈍角を成す端部とされている。より具体的には、斜面部332の外面(本実施形態では、段部351の外面)と底壁31の外面(ケース2の底面)とが成す角、および、斜面部332の外面(本実施形態では、段部352の外面)と背面部331の外面(ケース2の背面)とが成す角は、いずれも鈍角である。なお、本実施形態では、段部351、352の外面は、一部が線L上にある。
【0037】
図5に示すように、底壁31は、第1角部334から口栓72の軸線X方向に延びている。口栓72の下方に位置する底壁31の後端部分(第1角部334の前側部分)を、受け面部310という。詳細は後述するが、受け面部310は、口栓72から漏れ出たインクを下方で受けるための面部として機能する。
【0038】
また、インクパック7は、口栓72の先端部724が、線Lよりもケース2の内側方向に位置するように配置される。なお、本実施形態では、第1角部334と第2角部335との間には斜面部332が設けられており、斜面部332の外面333は、線Lに対して略平行であり、且つ、ケース2の内側方向ある。そして、先端部724は斜面部332の内面よりも内側に位置している。斜面部332の下端部の内面は、底壁31との接続部から貫通部338に向かって上方に張り出している。先端部724は、軸線X方向において、この斜面部332の下端部の内面(図5における右面)に対して隙間をあけて位置する。よって、斜面部332と先端部724の間でインクが移動することが可能となっている。
【0039】
また、本実施形態では、線Lの伸長方向および軸線X方向に直交する方向(以下、第1方向という)は、ケース2の左右方向であり、第1方向および軸線X方向に直交する方向(以下、第2方向という)は、ケース2の上下方向である。図6に示すように、ケース2の左右方向の幅(左側面から右側面までの距離)W3は、上下方向の幅(底面から上面までの距離、または右壁30および蓋部4の高さ)W4よりも狭い。
【0040】
更に、インクパック7は、第2方向において、第1角部334を有する側のケース2の一端部寄りに位置するように、ケース2に収容される。本実施形態では、前述したように、第2方向はケース2の上下方向であるから、上下方向において、第1角部334を有する側のケース2の一端部とは、底壁31側の端部である。よって、図4に示すように、軸線Xは、ケース2の上下方向において底壁31側の端部寄りにあり、口栓72は、第1角部334の近傍に配置されている。軸線Xを境として、底壁31側のインク袋71の幅W1(軸線Xと第1端部711との距離)は、上壁32側のインク袋71の幅W2(軸線Xと第2端部712との距離)よりも狭い。
【0041】
また、図5に示すように、貫通部338は、斜面部332において口栓72の第2開口702を臨む位置に設けられている。つまり、貫通部338は、口栓72の軸線X上に位置する。前述したように、第2開口702はゴム栓723で塞がれているので、実際には、貫通部338はゴム栓723に臨むことになる。
【0042】
更に、ケース2には、右壁30の内面からケース2の内側方向に突出する突出片である一対の固定部381、382が、口栓72を挟んで底壁31側と上壁32側に設けられている。固定部381は、第1角部334のやや前方(図中右側)で底壁31にも連続して形成されており、本体部721の外周に設けられた2つのフランジ727、728の間に下方から挿入されている。固定部382は、斜面部332にも連続して形成され、先端部724側のフランジ727の側面に後方から接している。従って、これら固定部381、382で口栓72を確実に正確な位置に配置して、固定することができる。なお、ケース2には、固定部381、382のうち一方のみを設けてもよいし、固定部381、382は設けなくてもよい。
【0043】
次に、図1および図7を参照して、インクカートリッジ1からインクジェットプリンタ100の印字ヘッド114へのインク供給方法について説明する。図1に示すように、印刷を行う場合、ユーザは、インクジェットプリンタ100のカートリッジ挿入口120からインクカートリッジ1を挿入する。このとき、ユーザは、インクカートリッジ1の底壁31を下側にして、第2開口702(ゴム栓723)を臨む貫通部338(図2参照)が設けられた後壁33側から、インクカートリッジ1を挿入する。
【0044】
図7に示すように、インクカートリッジ1は、底壁31がカートリッジ装着部の載置面130に載置されるようにセットされる。載置面130は、略水平方向に延びる平面である。つまり、インクカートリッジ1は、底壁31および口栓72の軸線Xが略水平に延びるように、インクジェットプリンタ100にセットされる。カートリッジ装着部の奥側には、インクカートリッジ1がセットされた際、貫通部338(口栓72)に対向する位置に、中空針141を有する接続部140が設けられている。接続部140には、インク袋71から導出されたインクを印字ヘッド114まで導くチューブ142が接続されている。インクカートリッジ1がカートリッジ装着部にセットされると、接続部140の中空針141が貫通部338を通してゴム栓723の中心部に刺さる。中空針141はゴム栓723を貫通し、その先端部が中空部700内に配置される。中空針141の先端部にはインクが流通する孔が設けられており、インク収容部717内のインクは、第1開口701、中空部700内部、中空針141、およびチューブ142を通って、印字ヘッド114に供給される。
【0045】
インクカートリッジ1の使用開始時には、インク袋71のインク収容部717にはインクが満量充填されているため、インク袋71を形成する2層のシートの内面は、間にインクを挟んで互いに離れた状態にある。印刷時には、布帛上に画像を形成するために、印字ヘッド114から少しずつインクが吐出される。インクが吐出されると、吐出量とほぼ同量のインクがインクカートリッジ1から吸引され、補充される。印刷でインクが消費されるのに伴い、インク収容部717に収容されたインクは徐々に減少し、インク袋71は萎んでいく。つまり、可撓性を有する2層のシートの内面は互いに近づいていく。
【0046】
インクの残量がある程度まで減少すると、インク袋71のあちこちでシートの内面同士が接触するようになる。その結果、インクは、インクの表面張力や重力の関係などにより、シートの内面同士が接触した部分により分断され、インク収容部717内に孤立したインク溜まりが複数存在する状態になる。また、底壁31が略水平な載置面130に載置された状態では、インク袋71の2層のシートは、その面がほぼ上下方向に沿って延びるように配置される。よって、インクは、重力により、ある程度はシートの内面を伝って下方向に流れ、インク収容部717内で第1端部711(図4参照)に沿って溜まる。しかし、インクが減って、中空針141の先端部の孔よりもインク面が下降すると、インク収容部717内にまだインクが残っていたとしても、印字ヘッド114の吸引力は弱いので、残りのインクを吸引することが難しくなる。
【0047】
本実施形態のインクカートリッジ1は、前述の構成により、このようにインクの吸引が難しくなった場合でも、インクジェットプリンタ100から取り外し、インク収容部717に残存するインクを、口栓72、より詳細には第1開口701に向けて、効率よく集めることができる。図8〜図10を参照して、この作用効果について説明する。ユーザは、図8に示すように、インク残量が減少し、且つ、第1端部711に沿ってインクがある程度溜まった状態のインクカートリッジ1の第1角部334および第2角部335を下側にして、略水平な面である支持面9に第1角部334および第2角部335が接するようにインクカートリッジ1を載置する。即ち、インク収納部717の長手方向と略一致する軸線Xの方向が、インクジェットプリンタ100におけるインク供給時よりも垂直に近い状態となる。
【0048】
なお、本実施形態では、第1角部334と第2角部335とを結ぶ線L(図5参照)上にある斜面部332の段部351、352の外面も支持面9に接し、支持面9によって支持される。斜面部332の段部351、352に挟まれた部分は、支持面9に対して僅かに上方に離れた状態となる。なお、支持面9は、机の上面等の平面であってもよいし、平面でなくてもよい。口栓72の第2開口702(図5参照)の側の先端部724は、線L、更には線Lよりも内側にある外面333よりもケース2の内側方向(本実施形態では、斜面部332の内面よりも内側)に位置するので、第1角部334と第2角部335が支持面9に接する際、口栓72が支持面9と干渉することがない。
【0049】
インクカートリッジ1は、ケース2およびインク袋71の長手方向(口栓72の軸線X)が水平方向に対して傾斜し、口栓72の第2開口702が斜め下方向を向いた状態となる。つまり、インクカートリッジ1は、インクジェットプリンタ100にセットされた時の姿勢(口栓72の軸線Xが略水平となる姿勢)から、傾斜した姿勢に変更される。ケース2内のインク袋71は、第1端部711が水平方向に対して傾斜するとともに、インク収容部717を形成する2層のシートが、底壁31が略水平な載置面130に載置された場合と同様、その面がほぼ上下方向に沿って延びるように配置された状態となる。インクカートリッジ1の姿勢を変更する際に加えられる力によって、インクの一部はインク収容部717内で移動する。インクカートリッジ1の姿勢が変更される前の、口栓72の軸線Xが略水平な状態(図4および図6参照)では、インク収容部717内に点在するインクは、シートの内面同士が接触しているために、それ以上移動できない状態であった。このとき、点在するインクに対する重力の作用方向は、口栓72の軸線Xに対して略垂直である。一方、図8に示すように姿勢が変更されると、点在するインクに対する重力の作用方向は、口栓72の軸線Xに対して斜め方向に変化する。
【0050】
このように姿勢を変更した後、ユーザがしばらくインクカートリッジ1を傾斜した状態で保持し続けると、図9に示すように、インク収容部717内のインクは、前述の姿勢変化に伴うインクの移動と重力により、シートの内面を伝って下方へ移動し始める。前述のように、シートの面がほぼ上下方向に沿って延びているので、インクは円滑に下方へ移動することができる。また、インク収容部717内で第1端部711に沿って溜まっていたインクは、第1端部711が水平方向に対して傾斜した状態とされたために、第1端部711に沿って、口栓72が近傍に設けられた第1角部334に向かって流れる。また、複数の孤立したインク溜まりのうちいくつかは、重力によって下降し始める。そして、一部は下降の途中にある他のインク溜まりに合流し、更に大きなインク溜まりとなって下降し、第1端部711に沿って口栓72へ向けて流れていく。
【0051】
第1角部334は鈍角を成しており、また、口栓72の軸線Xは、ケース2において、第1角部334を有する底壁31側の端部寄りの位置にあるので、第1角部334および第2角部335を下側にし、斜面部332を略水平にしてインクカートリッジ1を傾斜させると、口栓72は支持面9により近い位置に配置される。従って、口栓72の第1開口701の近くにインクが集まりやすい。また、軸線Xは、軸線Xに直交する方向におけるインク袋の一端部(第1端部711)寄りの位置にあり、軸線Xを境として、第1端部711側のインク袋71の幅が、反対側のインク袋71の幅よりも狭いので、斜面部332を略水平にしてインクカートリッジ1を傾斜させると、口栓72の第1開口701の近くにインクが集まりやすい。
【0052】
更にインクカートリッジ1が傾斜した状態が継続すると、図10に示すように、インク収容部717内のあちこちにインク溜まりとなって残存していたインクの大部分は、口栓72の第1開口701の周囲に集合する。インク袋71の長手方向において、口栓72が設けられたのとは反対側の第4端部714とその周囲では、シートの内面の大部分が、互いに接触した状態となる。
【0053】
ユーザは、このようにして第1開口701周辺にインクを集めた状態で、図7に示すように、底壁31を下側にしてインクカートリッジ1を再びインクジェットプリンタ100にセットする。図10に示すように、第1開口701の周囲には、図8に示す状態に比べ、多くのインクが集まっている。しかも、インク袋71の第4端部714とその周囲では2枚のシートの内面の大部分が互いに接触しているので、底壁31が載置面130に載置され、第1端部711が略水平にされても、インクが第1開口701の周囲から第4端部714の方向へ移動することがある程度妨げられる。よって、インク面をゴム栓723に刺された中空針141の先端部の孔よりも上にある状態で維持することができる。従って、残っていたインクを印字ヘッド114に供給することができる。
【0054】
以上に説明したように、本実施形態のインクカートリッジ1は、インク袋71の口栓72の軸線X方向を長手方向とし、左右方向の幅W3が上下方向の幅W4よりも狭いケース2に、第1角部334と第2角部335が設けられている。第1角部334と第2角部335は、夫々、口栓72の軸方向において、第2開口702の先端部724に対して第1開口701側とその反対側に位置する。口栓72の軸線Xは、ケース2において、第1角部334を有する底壁31側の端部寄りに位置する。また、第1角部334および第2角部335は、夫々、鈍角を成す角部である。
【0055】
よって、インク残量が少なくなった場合、ユーザは、前述のように、第1角部334および第2角部335を利用して、インクカートリッジ1を安定して水平方向に対して傾斜した状態とすることができる。ユーザが空中でインクカートリッジ1を保持する場合、何らかの理由で手が滑り、インクカートリッジ1を落としてしまう可能性がある。このとき、インクカートリッジ1が、口栓72が上方に位置するような姿勢になってしまうと、インクが口栓72に向かう流れが妨げられてしまう。しかし、前述したように、インクカートリッジ1は、斜面部332を略水平な支持面9に載置するのに適しているため、斜面部332を支持面9に載置することで、重力によりインクが下方に向かう流れが安定し、インクに対して全く反対方向への力が加わる恐れが低下する。そのため、インク袋71中に残存するインクを口栓72へ向けて効率よく集めることができる。
【0056】
しかも、第1角部334および第2角部335が机上等の面に接するように載置して、容易に傾斜した状態で保持できるので、インクカートリッジを空中で傾斜させた状態で把持するよりも力が要らず、ユーザの利便性が高い。特に、本実施形態では、第1角部334および第2角部335に接続する段部351、352の外面の一部が、第1角部334と第2角部335とを結ぶ線L上にあるので、傾斜した状態をより容易に保つことができる。また、第1角部334および第2角部335を鈍角としたことで、例えば絨毯のような、インクカートリッジが沈み込むような物品上にインクカートリッジが載置された場合に、第1角部334および第2角部335が物品に引っ掛かりにくく、インクカートリッジの姿勢を変更しやすい。
【0057】
更に、斜面部332の段部351、352の間の部分の外面は、線Lに対して略平行、且つ、線Lより内側にある。よって、第1角部334と第2角部335を机上等の面と接するように載置して保持しても、斜面部332に設けられた貫通部338は、この支持面には接しない。従って、第2開口702近傍にインクが付着していたとしても、そのインクが支持面に付着する可能性を低減できる。また、口栓72の先端部724が斜面部332の外面333より内側にあるので、斜面部332によって口栓72を保護することができる。しかしながら、口栓72の先端部724は、少なくとも、線Lよりもケース2の内側方向に位置していればよい。
【0058】
インクジェットプリンタ100からインクカートリッジ1を抜く際など、口栓72からインクが漏れ出る場合がある。インクカートリッジ1が底壁31を下に向けて配置された場合には、漏れ出たインクは、ゴム栓723の先端部724を下方に伝い、表面張力により本体部721の下端に沿って伝い落ちる。本実施形態では、口栓72の下方に略水平に配置された受け面部310が設けられているため、受け面部310で、伝い落ちたインクを受けることができる。更に、斜面部332の第1角部334から貫通部338まで延びる部分は上方に傾斜しているので、受け面部310で受けたインクが貫通部338方向に移動して、貫通部338から漏れ出る可能性を低減することができる。従って、インクジェットプリンタ100や、インクカートリッジ1を取り扱うユーザの指等をインクで汚す可能性を低減することができる。
【0059】
インクジェットプリンタ100用のインクには、顔料を含有する顔料系インクが使用されることが多い。つまり、インクカートリッジ1において、インク袋71には、顔料系インクが充填されることが多い。顔料系インクは、インク中の顔料が沈殿する虞があるとして、インクカートリッジ1が振られ、その中のインクが攪拌されると、インクがインク袋71内の広範囲において点在してしまう。インクカートリッジ1によれば、このような場合でも、第1角部334および第2角部335を用いてインクカートリッジ1を傾斜した状態として残存するインクを口栓に向けて集められ、インクが無駄にされることが軽減される。顔料系インクの中でも特に、酸化チタンを含有する白インクでは、酸化チタンが沈殿しやすい。しかし、本実施形態のインクカートリッジ1によれば、第1角部334および第2角部335を用いてインクカートリッジ1を傾斜した状態することで、水平方向に対して口栓72の軸方向が斜めになるため、軸線Xが垂直にされた場合に比べて、口栓72の第1開口701には顔料が沈殿しにくい。従って、第1開口701に顔料(特に酸化チタン)が沈殿して、インク組成が二分されてしまうような、印字に用いることができない状態になるのを防止することができる。
【0060】
また、インクジェットプリンタ100用のインクとして、エマルションを含有する所謂エマルションインクが使用されることも多い。エマルションインクは、エマルションを含有しないインクと比べた場合、粘度が高い。よって、インクカートリッジ1を傾斜させてもインクはより移動しにくいので、インクを下方に集めるのに時間がかかる。本実施形態のインクカートリッジ1によれば、机上等の支持面に第1角部334および第2角部335が接するように載置し、インクカートリッジ1を傾斜した状態で容易に保持できるので、空中で長い時間もっている場合などに比べて、特に効果がある。更に、エマルションインクが顔料も含有する場合には、前述したように、口栓72の第1開口701に顔料が沈殿するのを防ぎながら、効率よくエマルションインクを集めることができる。
【0061】
また、ケース2に第1角部334および第2角部335を繋ぐ斜面部332を設けたことで、インクカートリッジ1が落下した時に口栓72が受ける衝撃を緩和することができる。具体的には、ケース2の斜面部332が底壁31と接続する第1角部334は鈍角を成している。第1角部334の近傍には、口栓72が配置されている。このような鈍角の角部は、直角の角部の場合に比べ、衝撃が加わったときに応力が集中しにくい。従って、直角の角部に比べて、角部に強い衝撃が加わって、近傍にある口栓72が破損したり、配置位置が大きくずれてしまったりする可能性を低減することができる。更に、例えば出荷時等には、インクカートリッジ1は、サイズがほぼ同じ直方体形状の箱に梱包されることが想定される。このような場合、斜面部332と箱との間に三角柱状の空間ができるので、箱が落下する等して衝撃を受けたとしても、この空間が緩衝材となって、口栓72が受ける衝撃は緩和される。
【0062】
さらに、図5に示すように、インクカートリッジ1の口栓72の軸線Xが略水平な状態では、斜面部332の上面(内面)が先端部724の下方を越えて先端部724の先端方向に張り出している。そのため、中空針141が口栓72から抜かれた際に、インクが先端部724から下方に落下しても、インクは斜面部332の上面に衝突する。インクは、斜面部332の傾斜に沿って、インクカートリッジ1の内側(第1開口701側)に向かって移動する。従って、インクカートリッジ1の周辺に対するインクによる汚染が防止される。
【0063】
この汚染防止の効果が期待できるのは、インクジェットプリンタ100へインクを供給するための中空針141が口栓72から抜かれる場合だけではない。例えば、インク袋71にインクを新規に充填、追加、もしくは、再充填するために用いる中空針が抜かれた場合にも、インクが落下する恐れがある。よって、このような場合にも、同様の効果が期待できる。図5のような状態において、中空針141の抜き差しに伴って、インクが先端部724に付着した場合、インクは先端部724の下側端部に位置することがある。そのインクの状態で、図9に示すようにインクカートリッジ12が傾けられた場合、図5に示す状態での先端部724の下側端部の下方に斜面部332の上面(内面)があるので、インクが先端部724から下方に落下しても、インクは斜面部332の上面に衝突する。従って、インクカートリッジ1の周囲がインクにより汚染されるのを軽減することができる。
【0064】
前述したインクカートリッジ1は、図5に示すように、いずれも鈍角を成す第1角部334および第2角部335の間に、段部351および352を有する斜斜面部332が設けられた例である。しかし、第1角部334および第2角部335を略水平な面に接するように載置して、ケース2の長手方向を水平方向に対して傾斜した状態で保つことができる限り、第1角部334、第2角部335、および第1角部334と第2角部335の間の部分の形状等は、適宜変更することができる。以下に、図11〜図15を参照して、いくつかの変形例について説明する。
【0065】
図11に示す第1変形例のインクカートリッジ11は、図5に示すインクカートリッジ1の段部352をなくし、直角を成す背面部331の下端、つまり第2角部335に、斜面部332の上端を繋げたものに相当する。インクカートリッジ1と同様、第1角部334は鈍角を成す角部であり、斜面部332は、第1角部334と第2角部335とを結ぶ線Lと略平行、且つ、線Lよりもケース2の内側方向に位置する。
【0066】
従って、インクカートリッジ11も、インクカートリッジ1と同様、インク残量が少なくなった場合に、第1角部334および第2角部335を支持面に接するように載置してインクカートリッジ1を傾斜させた状態で保持することができる。従って、インク袋71に残存するインクを効率よく口栓72の第1開口701に向けて集めることができる。第1角部334および第2角部335のうち、第1角部334は鈍角を成すので、インクカートリッジ11も、インクカートリッジ1と同様、例えば絨毯のような、インクカートリッジ11が沈み込むような物品上に載置された場合でも、少なくとも第1角部334が物品に引っ掛かりにくく、インクカートリッジ11の姿勢を変更しやすい。なお、本変形例のほか、第1角部334および第2角部335のうち、第2角部335のみを鈍角を成すように形成してもよい。また、鈍角でない方の角部は、直角に限らず、鋭角を成す角部でもよいし、曲面で形成された角部でもよい。
【0067】
図12に示す第2変形例のインクカートリッジ12は、インクカートリッジ1の斜面部332に代えて、第1角部334および第2角部335の間に、第1角部334および第2角部335を結ぶ線Lとは平行でない外面を有する面部336を設けた例である。図12に示すように、面部336は、背面部331の下端に接続して、側面視略逆L字状の右壁30の後端部に沿って、前方へ延び、下方へ屈曲して、更に口栓72の本体部721の外周に設けられた2つのフランジ727、728の間まで延びている。また、底壁31の後端から僅かに前方において、底壁31の上面(ケース2の内面)から、口栓72の2つのフランジ727、728の間まで延びている。底壁31は、2つのフランジ727、728のうち、底壁31の後端側(図中左側)にあるフランジ727の下方まで、インクカートリッジ1の下端で略水平に延びている。底壁31は、フランジ727の下方において、略水平に延びる部分から後方へ向かって僅かに上方へ傾斜する傾斜部361と接続している。
【0068】
インクカートリッジ12では、底壁31と傾斜部361が接続する角部が第1角部334であり、背面部331と面部336が接続する角部が第2角部335である。第1角部334および第2角部335はいずれも鈍角を成す角部である。具体的には、底壁31の外面(底面)と傾斜部361の外面とが成す角、および、背面部331の外面(背面)と面部336の外面が成す角は、いずれも鈍角であるが、両者の角度は異なる。具体的には、第2角部335よりも第1角部334の方が、角度が広い。
【0069】
このような構成のインクカートリッジ12でも、インク残量が少なくなった場合に、第1角部334および第2角部335を支持面に接するように載置してインクカートリッジ12を傾斜させた状態で保持することができる。従って、インク袋71に残存するインクを効率よく口栓72の第1開口701に向けて集めることができる。また、インクカートリッジ12が沈み込むような物品上に載置された場合でも、第1角部334および第2角部335が物品に引っ掛かりにくく、インクカートリッジ12の姿勢を変更しやすい。
【0070】
なお、この例では、面部336が口栓72の本体部721の外周に接した状態でケース2の背面下部を塞ぐには、図3に示すような分割方法ではなく、ケース2を、左右方向中心線で本体部3と蓋部に分割して、夫々に底壁31、上壁32、背面部331、面部336、および前壁34を設ければよい。面部336は、インクカートリッジ1の固定部381(図5参照)と同様、ケース2に対して口栓72を確実に正確な位置に配置して固定する機能を有する。また、インクカートリッジ12も、インクカートリッジ1と同様の受け面部310を有するので、インクジェットプリンタ100からインクカートリッジ12を抜く際など、底壁31を下に向けて配置された場合には、受け面部310によって口栓72から伝い落ちたインクを受けることで、インクがケース2の外部に漏れ出る可能性を低減できる。
【0071】
図13に示す第3変形例のインクカートリッジ13は、背面部331および底壁31から連続する面部336を設けた点では、第2変形例のインクカートリッジ12(図12参照)と同様であるが、第1角部334および第2角部335の角が取られ、丸みを帯びた角部、つまり曲面で形成された角部とされている点で異なる。このような角が丸い第1角部334および第3角部335でも、インクカートリッジ13を傾斜させた状態で保持し、インク袋71に残存するインクを効率よく口栓72の第1開口701に向けて集めることができる。また、インクカートリッジ13が沈み込むような物品上に載置された場合でも、第1角部334および第2角部335が物品に引っ掛かりにくく、インクカートリッジ13の姿勢を変更しやすい。なお、第1角部334および第2角部335のうち一方のみを曲面で形成された角部とし、他方を鋭角、直角、および鈍角のうちいずれかを成す角部としてもよい。
【0072】
図14に示す第4変形例のインクカートリッジ14は、図5に示すインクカートリッジ1の斜面部332に設けられた線L上に沿って広がる外面を有する段部351、352に代えて、図14の紙面に直交する方向から見て、線Lに対して傾斜する面で構成された傾斜部354、355を設けた例である。底壁31の後端と傾斜部354が接続する角部が第1角部334であり、背面部331の下端と傾斜部355が接続する角部が第2角部335である。第1角部334および第2角部335は、いずれも鈍角を成す角部である。具体的には、底壁31の外面(底面)と傾斜部354の外面とが成す角、および、背面部331の外面(背面)と傾斜部355の外面とが成す角は、いずれも鈍角である。
【0073】
このような構成のインクカートリッジ14でも、インク残量が少なくなった場合に、第1角部334および第2角部335を支持面に接するように載置してインクカートリッジ1を傾斜させた状態で保持することができる。従って、インク袋71に残存するインクを効率よく口栓72の第1開口701に向けて集めることができる。また、インクカートリッジ12が沈み込むような物品上に載置された場合でも、第1角部334および第2角部335が物品に引っ掛かりにくく、インクカートリッジ12の姿勢を変更しやすい。
【0074】
また、第1角部334および第2角部335を結ぶ線Lより内側に、線Lに略平行な面部337を設けているので、第1角部334と第2角部335を机上等の面と接するように載置して保持しても、貫通部338はこの支持面には接しない。従って、第2開口702近傍にインクが付着していたとしても、そのインクが支持面に付着する可能性を低減できる。また、口栓72の先端部724が面部337の外面より内側にあるので、面部337によって口栓72を保護することができる。先端部724は、軸線X方向において、面部337の下端部の内面(図14における右面)に対して隙間をあけて位置し、面部337と先端部724の間(図14における先端部724の下方)を、インクが移動可能となっている。図14における先端部724の下方で、面部337の下端部によって口栓72から伝い落ちたインクを受けることで、インクがケース2の外部に漏れ出る可能性を低減できる。
【0075】
なお、本変形例のインクカートリッジ14において、面部337の傾斜部354および335のみを残し、間を繋ぐ平面部は省略してもよい。また、同様に、図5に示す実施形態のインクカートリッジ1において、斜面部332の段部351および352のみを残し、間を繋ぐ平面部は省略してもよい。つまり、鈍角を成す角部である第1角部334および第2角部335を残し、第1角部334および第2角部335の間には、面部がない構成としてもよい。このような場合も、第1角部334および第2角部335を用いて、インク袋71に残存するインクを効率よく口栓72の第1開口701に向けて集めることができる効果は同様である。
【0076】
図15に示す第5変形例のインクカートリッジ15は、図5に示すインクカートリッジ1等と同様、第1角部334および第2角部335を結ぶ線Lより内側に、線Lと略平行に延びる外面を有する面部383を設けた例である。ただし、この面部383は、右壁30または蓋部4(図3参照)に連続的に形成された面部ではなく、三角柱状に成形したフェルト材を第1角部334および第2角部335の間に充填したものである。面部383の外面は、第1角部334および第2角部335を結ぶ線Lより内側に、線Lと略平行に配置されている。面部383には、口栓72の第2開口702を臨む位置に、口栓72の本体部721の外径よりも僅かに小さい開口径の貫通部338が設けられている。貫通部338のケース2内側の端部のみ、開口径が本体部721の外径に合わせて広げられている。
【0077】
また、底壁31の後端面314は、後方(図中左側)へ向かって上方に傾斜しており、背面部331の下端面315は、前方へ向かって下方に傾斜している。インクカートリッジ15では、底壁31の外面(底面)と後端面314により形成される角部が第1角部334であり、背面部331の外面(背面)と下端面315により形成される角部が第2角部335である。底面と後端面314、および背面と下端面315とはいずれも鈍角を成す。
【0078】
このような構成のインクカートリッジ15でも、インク残量が少なくなった場合に、第1角部334および第2角部335を支持面に接するように載置してインクカートリッジ15を傾斜させた状態で保持することができる。また、インクカートリッジ15が沈み込むような物品上に載置された場合でも、第1角部334および第2角部335が物品に引っ掛かりにくく、インクカートリッジ15の姿勢を変更しやすい。更に、口栓72の先端部724を、貫通部338のケース2内側の端部に設けられた開口径が広い部分に嵌め込むことで、ケース2に対して口栓72を確実に正確な位置に配置して固定することができる。
【0079】
実施形態のインクカートリッジ1の斜面部332に対応する部分以外の壁面についても、ケース2が第1角部334と第2角部335を備え、且つ、ケース2とインクパック7との関係を前述のように規定することができる範囲で省略することができる。例えば、対向する右壁30および蓋部4の間にインクパック7を挟み、インク袋71を形成する2層のシートの外面の一部を夫々右壁30および蓋部4の内面にインク袋71が伸縮可能な範囲で貼り付けて、インクカートリッジとしてもよい。この場合、口栓72を確実に正確な位置に固定するため、口栓72の固定部381(図11参照)も設けることが好ましい。この例では、インク袋71を挟んで対向する右壁30および蓋部4により、インク袋71の姿勢を安定した状態で保つことができ、右壁30と蓋部4の形状を図3に示すようにすれば、底壁31、背面部331、および斜面部332がなくても同じ位置に鈍角を成す角部である第1角部334および第2角部335が形成できるので、実施形態のインクカートリッジ1と同様の効果を奏することができる。
【0080】
前述のインクカートリッジ1のインクを口栓72に向けて集める作用の説明(図8〜10参照)では、ユーザが、略水平な支持面9に、第1角部334および第2角部335を接触させつつ、インクカートリッジ1を手で保持する例を挙げた。しかし、略水平な支持面9に第1角部334および第2角部335を接触させつつ、図8に一点鎖線Yで示す略垂直な面(例えば、壁)にインクカートリッジ1の前壁34の下端を接触させるように立たせてもよい、この場合、ユーザは、手でインクカートリッジ1を保持している必要はない。このように、壁などに寄りかからせて傾斜した状態とした場合に、インクカートリッジ1がこの状態のまま長時間(例えば、一晩)放置される可能性がある。つまり、インクカートリッジ1が傾斜した状態で自立できることは、ユーザが目を離してしまい、インクカートリッジ1が傾斜した状態で放置される可能性を生じる。特に、インクカートリッジ1が、このように壁など寄りかからせて傾斜した状態で安定した姿勢を保てる構成であれば、尚更である。傾斜した状態で長時間放置された場合、インクカートリッジ1のインク袋71内では、顔料(例えば、白インクである場合、酸化チタン)が下方に沈殿して、インクが2層に分かれて印刷に向かない状態となってしまう。そのため、再度インクカートリッジ1を手で持ってインクを攪拌し、更にインクを口栓72の周囲に集めるために、インクカートリッジ1を傾斜させるという作業を繰り返す手間が生じうる。
【0081】
従って、インクカートリッジ1が傾斜した状態では自立しない構成とすれば、ユーザが手を離せば、インクカートリッジ1は傾斜した状態を維持できずに、右壁30または蓋部4を上にして倒れる。更に、支持面9が絨毯など、インクカートリッジ1が沈み込むものであれば、支持面9に接触する第1角部334および第2角部335が鈍角であるので、第1角部334および第2角部335が鋭角や直角である場合に比べて、一般的に支持面9との引っ掛かりが少ない。そのため、第1角部334および第2角部335が鋭角や直角である場合に比べて、壁などにインクカートリッジ1を立てかけた場合の安定性が低く、インクカートリッジ1が倒れる可能性が上がる。従って、インクカートリッジ1が長時間放置される可能性を低減することができる。
【0082】
以上に説明したように、インクカートリッジ1は、支持面9に載置されて姿勢が安定し、空中で手で持ってインクを寄せる作業がなされる場合に比べて、より効率的で、省力化が図られる一方、第1角部334および第2角部335が鋭角や直角である場合に比べて、長時間放置される可能性が低減されている。
【符号の説明】
【0083】
1、11〜15 インクカートリッジ
2 ケース
30 右壁
334 第1角部
335 第2角部
337、383 面部
338 貫通部
381 固定部
4 蓋部
71 インク袋
72 口栓
700 中空部
701 第1開口
702 第2開口
724 先端部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された可撓性を有する2層のシートを少なくとも含んで袋状に形成され、内部にインクを収容するインク袋と、
前記インク袋に設けられ、前記インク袋と連通する第1開口から外部に開口する第2開口まで通じる中空部を有する口栓と、
前記インク袋を収容し、収容された前記インク袋の前記口栓の軸方向を長手方向とするケースとを備え、
前記ケースの前記第2開口側の端部は、
前記口栓の前記軸方向において、前記口栓の前記第2開口の側の先端部に対して前記第1開口の側に位置する角部である第1角部と、
前記口栓の前記軸方向において、前記口栓の前記第2開口の側の前記先端部に対して前記第1開口とは反対側に位置する角部である第2角部とを少なくとも備え、
前記ケースにおいて、前記第1角部と前記第2角部とを結ぶ線が伸長する方向および前記軸方向に直交する方向である第1方向における幅は、前記第1方向および前記軸方向に直交する方向である第2方向における幅よりも狭く、
前記インク袋は、前記口栓の軸線が、前記第2方向において、前記第1角部を有する側の前記ケースの一端部寄りに位置するように前記ケースに収容され、
前記口栓の前記第2開口の側の前記先端部は、前記第1角部と前記第2角部とを結ぶ前記線よりも前記ケースの内側方向に位置し、
前記第1角部および前記第2角部のうち少なくとも一方が、鈍角または曲面を成すことを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項2】
前記第1角部および前記第2角部は、それぞれ、鈍角または曲面を成すことを特徴とする請求項1に記載のインクカートリッジ。
【請求項3】
前記ケースは、
前記第1角部および前記第2角部に接続し、前記第1角部と前記第2角部とを結ぶ前記線に略平行に延びる面部と、
前記面部の前記口栓の前記第2開口を臨む位置に設けられた貫通部とを更に備え、
前記面部の外表面は、前記第1角部と前記第2角部とを結ぶ前記線よりも内側にあることを特徴とする請求項1または2に記載のインクカートリッジ。
【請求項4】
前記ケースは、前記口栓を前記ケースに固定するための固定部を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインクカートリッジ。
【請求項5】
前記ケースは、前記第1角部および前記第2角部を結ぶ前記線上に配置された面部を備えていないことを特徴とする請求項1または2に記載のインクカートリッジ。
【請求項6】
前記ケースは、
前記インク袋の前記2層のシートのうち一方に対向する第1側面と、
前記2層のシートのうち他方に対向し、且つ、前記インク袋を挟んで前記第1側面に対向する第2側面とを有し、
前記第1側面と前記第2側面は、前記第1方向に離間して配置され、
前記第1側面と前記第2側面との距離は、前記第2方向における前記第1側面および前記第2側面の幅よりも短いことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のインクカートリッジ。
【請求項7】
前記インクは、酸化チタンを顔料として含有する顔料系インクであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のインクカートリッジ。
【請求項1】
対向配置された可撓性を有する2層のシートを少なくとも含んで袋状に形成され、内部にインクを収容するインク袋と、
前記インク袋に設けられ、前記インク袋と連通する第1開口から外部に開口する第2開口まで通じる中空部を有する口栓と、
前記インク袋を収容し、収容された前記インク袋の前記口栓の軸方向を長手方向とするケースとを備え、
前記ケースの前記第2開口側の端部は、
前記口栓の前記軸方向において、前記口栓の前記第2開口の側の先端部に対して前記第1開口の側に位置する角部である第1角部と、
前記口栓の前記軸方向において、前記口栓の前記第2開口の側の前記先端部に対して前記第1開口とは反対側に位置する角部である第2角部とを少なくとも備え、
前記ケースにおいて、前記第1角部と前記第2角部とを結ぶ線が伸長する方向および前記軸方向に直交する方向である第1方向における幅は、前記第1方向および前記軸方向に直交する方向である第2方向における幅よりも狭く、
前記インク袋は、前記口栓の軸線が、前記第2方向において、前記第1角部を有する側の前記ケースの一端部寄りに位置するように前記ケースに収容され、
前記口栓の前記第2開口の側の前記先端部は、前記第1角部と前記第2角部とを結ぶ前記線よりも前記ケースの内側方向に位置し、
前記第1角部および前記第2角部のうち少なくとも一方が、鈍角または曲面を成すことを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項2】
前記第1角部および前記第2角部は、それぞれ、鈍角または曲面を成すことを特徴とする請求項1に記載のインクカートリッジ。
【請求項3】
前記ケースは、
前記第1角部および前記第2角部に接続し、前記第1角部と前記第2角部とを結ぶ前記線に略平行に延びる面部と、
前記面部の前記口栓の前記第2開口を臨む位置に設けられた貫通部とを更に備え、
前記面部の外表面は、前記第1角部と前記第2角部とを結ぶ前記線よりも内側にあることを特徴とする請求項1または2に記載のインクカートリッジ。
【請求項4】
前記ケースは、前記口栓を前記ケースに固定するための固定部を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインクカートリッジ。
【請求項5】
前記ケースは、前記第1角部および前記第2角部を結ぶ前記線上に配置された面部を備えていないことを特徴とする請求項1または2に記載のインクカートリッジ。
【請求項6】
前記ケースは、
前記インク袋の前記2層のシートのうち一方に対向する第1側面と、
前記2層のシートのうち他方に対向し、且つ、前記インク袋を挟んで前記第1側面に対向する第2側面とを有し、
前記第1側面と前記第2側面は、前記第1方向に離間して配置され、
前記第1側面と前記第2側面との距離は、前記第2方向における前記第1側面および前記第2側面の幅よりも短いことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のインクカートリッジ。
【請求項7】
前記インクは、酸化チタンを顔料として含有する顔料系インクであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のインクカートリッジ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−139881(P2012−139881A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293367(P2010−293367)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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