説明

インクジェットインキおよび該インキを用いた印刷物

【課題】表面平滑性および画素内平坦性の優れた着色樹脂組成物、および該着色樹脂組成物を用いたインクジェットインキの提供。
【解決手段】顔料、顔料誘導体、樹脂担体を含む着色樹脂組成物であって、固形分濃度20重量%以上40重量%未満において、粘度(ただし、ずり速度が100(1/s)である場合に限る。以下同じとする。)が3〜200(mPa・s)であり、かつ、T.I.値(ただし、ずり速度10(1/s)の粘度ηa(mPa・s)とずり速度1000(1/s)の粘度ηb(mPa・s)との比(ηa/ηb)とする。以下同じとする。)が1〜2であり、さらに固形分濃度40重量%以上60重量%以下において、粘度が10〜200(mPa・s)であり、かつ、T.I.値が1〜3であることを特徴とする着色樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色樹脂組成物、インク用ジェットインキ、及びこれらの製造方法に関する。さらに、本発明は、インクジェット用インキを用いた印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型テレビジョンなどに利用されている液晶ディスプレイパネルには、カラーフィルター基板が含まれている。
【0003】
カラーフィルター基板は、具体的には、ガラス等の透明な基板の表面に3種以上の異なる色相の微細なストライプ状のフィルターセグメントを平行又は交差して配置したもの、あるいは微細なモザイク状のフィルターセグメントを縦横一定の配列に配置したものからなっている。生産性及び低コスト観点から、カラーフィルター基板用途にインクジェット法を適用することが有利である。
【0004】
フィルターセグメントは、予め透明基板上にブラックマトリックスを設け、ブラックマトリックスで区分けされた領域内にインクジェット法によりインクを充填することによって形成される。インク組成物として、カラーフィルター基板に必要な高濃度の顔料を分散させて含有することが求められている。これと同時に、基板上の所望の位置に安定して吐出させることのできる物性を有することが求められている。
【0005】
しかしながら、インクが乾燥することにより粘度安定性が劇的に悪くなると、インクジェット装置のノズルの目詰まりや吐出安定性の低下につながった。さらに塗膜の乾燥工程では表面に膜を張ってしまい乾燥ムラが発生し、表面平滑性が損なわれた。特に、着色組成物を含む塗膜の場合に透過率およびコントラストが低下した。また、ブラックマトリックスで区分けされた領域内の画素内平坦性が悪くなった。
【0006】
一般的にインクジェット印刷では、非浸透性基材に印刷する場合、ドットの広がり程度の制御が極めて困難であった。基材の表面張力によっては、濡れ性が悪く、ドットが広がらず、バンディングなどの精細性を低下させる原因となった。この様な非浸透性基材に対する印刷適性を向上させる手段として、インキの表面張力の制御が行われていた。しかし、印刷条件、印刷基材によりインキの設計を変える必要があり、コストが大幅にかさんでいた。
【0007】
つまり、インクジェット印刷において非浸透性基材に印刷した場合、ドット状になるか濡れ広がるかを表面張力により制御しているだけでは、上記問題を解決することができなかった。この粒状感と濡れ広がりの相反する関係を解決するために、特開平11−246773、特許第2897575号、特許第3000852号または特許第3127412号に、加熱溶融型のホットメルトインクジェットインキが開示されている。非浸透性基材への定着性に優れているが、ホットメルト型インクジェットインキの特性上、印刷すると同時に基材上で固化してしまった。そのため、ドットのレベリングが悪く、盛り上がりのある印刷物となったさらに、ドットとドット間のバンディング、つまり、ヘッドの走査方向に発生する横縞、が発生しやすかった。そのため、所望の画質を得ることが難しかった
また、非浸透性基材へのインキとして、特開2004-182764には、インキ中に樹脂酸金属塩を含有させることにより非浸透性基材への定着性と吐出安定性を改善する方法が開示されている。しかしながら、この方法は、600℃に近い高温でアニールさせて、焼き付け定着させることが必要であった。その結果、インキに要求される透明感が、焼き付けの際大きく低下してしまう。この透明性の低下は色のズレだけでなく、明度の低下を引き起こす。明度の低下は、色再現性を著しく低下させるため、印刷用途として用いることが困難であった。
【0008】
また、特開平9−137094には、特定の軟化点又は流出開始点を有するインキを用いてドット径を小さくコントロールし、耐摩擦性と濃度を確保することが開示されている。しかし、このインキを非浸透性の基材に印刷する場合、ドットは所望の径を保持せず、ドットゲインが大きくなり、混色を起こしていた。
【0009】
また、特表2004-522813には、活性エネルギー線硬化型のインキを用いて、溶剤の表面張力と放射硬化性反応希釈剤の表面張力を制御し、耐性及び精細性を向上させることが開示されている。しかし、一般的に活性エネルギー線硬化型インキは、架橋により液体を硬化させる。そのため、吐出後の照射タイミングが早ければ粒状感がでてしまい、またタイミングが遅いと混色が発生する。したがって、実際には品質と生産性の観点から、印刷物は粒状感を有していた。
【0010】
また、粘弾性をコントロールしたインクジェットインキが、特開2000-186240に開示されている。これによると、貯蔵剛性率の測定周波数依存性から吐出性や飛行曲がりなどの吐出性能に関する知見を得ることができる。しかしながら、該発明により評価されたインキにより吐出を行った場合、表面の平滑性や精細性は不十分だった。
【0011】
カラーフィルター用途のインクジェット用インキとして、たとえば特開平11−84123には、顔料濃度、固形分濃度の低いインクにより、吐出性や画素内平坦性を悪化させない方法が開示されている。しかしながら、低顔料濃度または低固形分濃度では、必要な色濃度の塗膜を形成したとき膜厚が厚くなりすぎた。また、ブラックマトリックスで区分けされた領域内に充填するインク量を増やすことになり、ブラックマトリックスを越えてインクが溢れて、隣接する領域にインクが混入し、フィルターセグメントの色相を損なった。また、特開2003−66222には、乾燥時の温度と時間の制御により画素内平坦性を改善する方法が開示されている。しかしながら、そのようなプロセスの制御だけでは上記問題を解決できなかった。
【0012】
また、特開2004-339330、特開2004-339331、特開2004-339332、特開2004-339333に、カラーフィルター用インキを剛体振り子試験による評価したことが開示されている。しかし、これらのインキによると、耐熱性に着目するのみで印刷物の平滑性は十分なものではなかった。
【特許文献1】特開平11−84123号公報
【特許文献2】特開2003−66222号公報
【特許文献3】特開平11−246773号公報
【特許文献4】特許第2897575号公報
【特許文献5】特許第3000852号公報
【特許文献6】特許第3127412号公報
【特許文献7】特開2004-182764号公報
【特許文献8】特開平9−137094号公報
【特許文献9】特表2004-522813号公報
【特許文献10】特開2000-18624号公報
【特許文献11】特開2004-339330号公報
【特許文献12】特開2004-339331号公報
【特許文献13】特開2004-339332号公報
【特許文献14】特開2004-339333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の実施態様は、表面平滑性および画素内平坦性の優れた着色樹脂組成物、および該着色樹脂組成物を用いたインクジェットインキの提供を課題とする。
また、本発明の別の実施態様によると、インクジェット印刷時発生する印刷面の平滑性に優れた印刷物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の実施形態は、顔料、顔料誘導体、樹脂担体を含む着色樹脂組成物であって、固形分濃度20重量%以上40重量%未満において、粘度(ただし、ずり速度が100(1/s)である場合に限る。以下同じとする。)が3〜200(mPa・s)であり、かつ、T.I.値(ただし、ずり速度10(1/s)の粘度ηa(mPa・s)とずり速度1000(1/s)の粘度ηb(mPa・s)との比(ηa/ηb)とする。以下同じとする。)が1〜2であり、さらに固形分濃度40重量%以上60重量%以下において、粘度が10〜200(mPa・s)であり、かつ、T.I.値が1〜3であることを特徴とする着色樹脂組成物に関する。
【0015】
さらに、重量平均分子量2000〜10000の化合物が、全固形分を基準として5重量%以上含まれることを特徴とする前記の着色樹脂組成物も好ましい。ここで、重量平均分子量2000〜10000の化合物は、下記一般式(1)〜(3)で示される構造を少なくとも一つ有することが好ましい。
一般式(1):
【0016】
【化1】

【0017】
(式中、R1は水素またはメチル基を表す。R2はアルキレン基を表す。mは1〜20の整数を表す。)
一般式(2):
(HOOC―)e―R’1―(―COO―[―R’3―COO―]f―R’2)g (2)
(式中、R’1は4価のテトラカルボン酸化合物残基、R’2はモノアルコール残基、R’3はラクトン残基、eは2または3の整数、fは1〜50の整数、gは(4−e)を表す。)
一般式(3):
【0018】
【化2】

【0019】
{一般式(3)中、R’’3は水素原子又はメチル基であり、
X1は、−COO−、−CONH−、−O−、−OCO−若しくは−CH2O−であり、X2は、一般式:
−(−Ra1−O−)m1−
(式中、Ra1は炭素原子数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素原子数3〜8のシクロアルキレン基であり、そしてm1は1〜50の整数である)
で表される基であり、
X3は、一般式:
−(−CO−Rb1−O−)m2−
(Rb1は炭素原子数4〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素原子数4〜8のシクロアルキレン基であり、そしてm2は0または1〜20の整数である)
で表される基であり、
Y1は、一般式(4):
【0020】
【化3】

【0021】
(一般式(4)中、
A1〜A3のうちの1つが水素原子であって、他の2つは−COOHである組合せであるか、A1〜A3のうちの1つが−COORc(但し、Rcは、炭素原子数1〜18のアルキル基である)であって、他の2つは−COOHである組合せであるか、又はA1〜A3の3つが−COOHの組合せであり、kは1又は2である)
で表される基であるか、あるいは一般式(5):
【0022】
【化4】

【0023】
(一般式(5)中、
A5〜A7のうち1つは水素原子であって、他の2つは−COOHである組合せであるか、A5〜A7のうち1つは−COORd(但し、Rdは、炭素原子数1〜18のアルキル基である)であって、他の2つは−COOHである組合せであるか、又はA5〜A7の3つが−COOHの組合せであり、
R2は、直接結合、−O−、−CO−、−COOCH2CH2OCO−、−SO2−、−C(CF3)2−、式:
【0024】
【化5】

【0025】
で表される基、又は式:
【0026】
【化6】

【0027】
で表される基である)
さらに、アルコキシアルキル基含有メラミン化合物もしくはアルコキシアルキル基含有ベンゾグアナミン化合物を含む前記の着色樹脂組成物も好ましい。
また、顔料表面に顔料誘導体および樹脂担体の被覆層が形成されている前記の着色樹脂組成物も好ましい。
前記の着色樹脂組成物を用いてインクジェットインキとすることができる。
【0028】
本発明の第2の実施態様は、膜厚15〜25μmで印刷基材上に塗工した後に、昇温速度5℃/分で昇温する間の剛体振り子試験による粘弾性測定において、昇温範囲100〜170℃の全範囲における周期が0.6〜0.9秒であることを特徴とするインクジェット用インキに関する。前記インクジェット用インキは、昇温速度5℃/分で昇温する間の剛体振り子試験による粘弾性測定において、昇温範囲100〜170℃の全範囲における周期が0.6〜0.9秒である原料を0.1〜50重量%含有することが好ましい。
【0029】
前記印刷基材が非浸透性基材であって、且つ前記インクジェット用インキの非浸透性基材上での接触角が、10〜30°であることが好ましい。また、前記の印刷基材はガラスであることが好ましい。
【0030】
また、前記インクジェット用インキが有機溶剤を50〜85重量%含有することが好ましい。また、有機溶剤として常圧における沸点が130℃〜300℃である有機溶剤を、全有機溶剤中50重量%以上含有することが好ましい。 さらに、熱架橋剤としてメラミンまたはメラミン誘導体を含有することが好ましい。また、インクジェット吐出装置によりインキ設定温度25〜70℃で吐出できることが好ましい。前記のインクジェットインキを用いて印刷基材上に印刷して印刷物としてもよい。
【0031】
前記インクジェット用インキは、インクジェット吐出装置により25〜70℃でインキを印刷基材に吐出した後、昇温速度5℃/分で昇温する間の剛体振り子試験による粘弾性測定において、昇温範囲100〜170℃の全範囲における周期を0.6〜0.9秒として製造することができる。
【発明の効果】
【0032】
第1の実施形態によると、分散安定性、長時間連続吐出時の吐出安定性に優れた効果を有する着色樹脂組成物を提供する。また、乾燥ムラの発生が無いという効果も奏する。このため、表面平滑性および画素内平坦性に優れた着色樹脂組成物を提供することができる。さらに、インクジェット吐出装置に好適なインクジェットインキを提供することができる。さらに、インクジェット方式で作成するカラーフィルター基板の高性能化と低コスト化にも寄与する。また、第1の実施態様によると、耐薬品性が良好で顔料濃度が高いにもかかわらず、塗料やインキとして使用した場合に、低粘度かつ経時粘度安定性が良好な着色樹脂組成物を提供できる。また、耐性を維持しつつ低粘度かつ吐出安定性が良好なインクジェットインキを提供することができる。
【0033】
第2の実施態様によると、印刷物は高品位な平滑性を達成する。また、低濃度から高濃度にわたる印刷の粒状感または、精細性を改良できる。さらに、本インクジェット用インキを、インクジェット方式で印刷を行うことによりカラーフィルターとした場合、カラーフィルター上の画素の表面形状や、画素内に発生する色ムラを著しく改良することができる。また、本発明のインク組成物をインクジェットインキとして用いることにより、従来の方法と比較して、はるかに効率よく高性能なカラーフィルター、パッケージ、又は屋外看板などを生産することができる。
本明細書に開示された内容は、特願2006−110437(2006年4月13日出願)及び特願2006−134518号(2006年5月12日出願)の主題に関するものであって、これらを全体的に本明細書に組み込むものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の第1の実施態様について説明する。
本発明の着色樹脂組成物は、顔料、顔料誘導体および樹脂担体を含む。さらに、固形分分中に、重量平均分子量2000〜10000の化合物を5重量%以上含むことが好ましい。
【0035】
そして、本発明の着色樹脂組成物は、下記の粘度物性IおよびIIを満たすことを特徴とする。
(粘度物性I)
固形分濃度20重量%以上40重量%未満において、粘度(ただし、ずり速度が100(1/s)である場合に限る)が3〜200(mPa・s)であり、かつ、T.I.値(ただし、ずり速度10(1/s)の粘度ηa(mPa・s)とずり速度1000(1/s)の粘度ηb(mPa・s)との比(ηa/ηb)とする)が1〜2である。
(粘度物性II)
固形分濃度40重量%以上60重量%以下において、粘度(ただし、ずり速度が100(1/s)である場合に限る)が10〜200(mPa・s)であり、かつ、T.I.値(ただし、ずり速度10(1/s)の粘度ηa(mPa・s)とずり速度1000(1/s)の粘度ηb(mPa・s)との比(ηa/ηb)とする)が1〜3である。
【0036】
本発明の着色樹脂組成物をインキとした場合のインク組成物の固形分含有量(以下、固形分濃度と呼ぶこともある)は、インク組成物全重量に対して、好ましくは3〜60重量%、より好ましくは4〜40重量%である。固形分含有量が、3重量%以上だとインク皮膜の濃度が適当となり、また、耐性にすぐれる。60重量%以下だとインクの粘度が適度となり、経時安定性に優れる。
【0037】
固形分含有量を20重量%以上40重量%未満または40重量%以上60重量%になるよう溶剤を調整した際に上記の粘度物性IまたはIIを満たす様な組成物が、本発明の着色樹脂組成物である。
【0038】
T.I.値は、チキソトロピー性を示し、下記関係(イ)で表される。
関係(イ)
T.I.値=レオメーターにおける、ローターの回転数が10(1/S)で測定した粘度/レオメーターにおける、ローターの回転数1000(1/S)で測定した粘度
上記の固形分濃度、粘度、およびT.I.値の関係については、より好ましくは、固形分濃度40重量%以上60重量%以下において、粘度が10〜150(mPa・s)かつT.I.値が1〜3であり、更に好ましくは固形分濃度40重量%以上60重量%以下において、粘度が10〜100(mPa・s)かつT.I.値が1〜3である。
【0039】
本発明の着色樹脂組成物は、顔料を含有している。顔料としては、有機顔料、無機顔料、又はカーボンブラックを用いることができ、顔料は2種以上を混合して用いてもよい。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラックが挙げられる。
【0040】
有機顔料としては、ジケトピロロピロール系顔料、アゾ、ジスアゾ、若しくはポリアゾ等のアゾ系顔料、銅フタロシアニン、ハロゲン化銅フタロシアニン、若しくは無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アミノアントラキノン、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、若しくはビオラントロン等のアントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、スレン系顔料、又は金属錯体系顔料等を挙げることができる。
【0041】
無機顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、ホワイトカーボン、アルミナホワイト、カオリンクレー、タルク、ベントナイト、黒色酸化鉄、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、モリブデートオレンジ、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、ビクトリアグリーン、群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトシリカブルー、コバルト亜鉛シリカブルー、マンガンバイオレット、又はコバルトバイオレット等を挙げることができる。
【0042】
また、以下に、本発明の着色樹脂組成物に使用可能な顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示す。
【0043】
赤色着色組成物には、例えば、C.I.Pigment Red 7、9、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、97、122、123、146、149、168、177、178、180、184、185、187、192、200、202、208、210、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、246、254、255、264、272等の赤色顔料を用いることができる。赤色着色組成物には、黄色顔料、及び/又はオレンジ顔料を併用することができる。
【0044】
イエロー色着色組成物には、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、86、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、199等の黄色顔料を用いることができる。
【0045】
オレンジ色着色組成物には、例えば、C.I.Pigment orange 36、43、51、55、59、61等のオレンジ色顔料を用いることができる。緑色着色組成物には、例えば、C.I.Pigment Green 7、10、36、37等の緑色顔料を用いることができる。緑色着色組成物には黄色顔料を併用することができる。
【0046】
青色着色組成物には、例えば、C.I.Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64等の青色顔料を用いることができる。青色着色組成物には、例えば、C.I.Pigment Violet
1、19、23、27、29、30、32、37、40、42、50等の紫色顔料を併用することができる。
【0047】
本発明の着色樹脂組成物は、顔料を、1種単独で含有するか、あるいは2種以上を混合して含有することができる。
【0048】
顔料の粒子径は、可視光の吸収係数(スペクトルの適正さ)及び透明性の点から、可視光の波長に対して充分小さいことが好ましい。すなわち、顔料は、平均一次粒子径が0.01μm以上0.3μm以下、特に0.01μm以上0.1μm以下であることが好ましい。なお、一次粒子径とは、最小単位の顔料粒子の直径をいい、電子顕微鏡で測定される。顔料の一次粒子径は、サンドミル、ニーダー、又は2本ロール等の既知の分散装置を用いて適正な範囲内に制御することができる。
【0049】
本発明の着色樹脂組成物において、前記顔料は、組成物全体の重量に対して、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは3〜25重量%の量で含有されていることが好ましい。前記顔料の含有量が1重量%以上だとインキとした場合のインク組成物のインク皮膜の濃度が十分であり、30重量%以下だと、粘度の上昇がなく、経時安定性に優れる。
【0050】
また、前記顔料100重量部に対して、重量平均分子量2000〜10000の化合物を3〜150重量部、より好ましくは5〜100重量部で用いることが好ましい。重量平均分子量2000〜10000の化合物が3重量部以上だと、インク組成物の粘度が十分に低く、150重量部以下だと、インク組成物は造膜性に優れる。
【0051】
本発明の着色樹脂組成物は、顔料誘導体を含有する。ここで、顔料誘導体とは、前記のカラーインデックスに記載されている有機顔料残基に、特定の置換基を導入した化合物をいう。
【0052】
顔料誘導体としては、例えば、一般式(6):
G1−(E)q (6)
(式中、G1は、色素原型化合物残基であり、Eは、塩基性置換基、酸性置換基、又は中性置換基であり、qは、1〜4の整数である)で表される化合物を用いることができる。
【0053】
基Eの塩基性置換基としては、例えば、下記一般式(7)、一般式(8)、一般式(9)、および一般式(10)で示される置換基を挙げることができる。
一般式(7):
【0054】
【化7】

【0055】
X31:−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2−又は直接結合
を表す。
p:1〜10の整数を表す。
R33、R34:それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいフェニル基、又はR33とR34とで一緒になって更なる窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環を表す。アルキル基及びアルケニル基の炭素数は1〜10が好ましい。
一般式(8):
【0056】
【化8】

【0057】
R35、R36:それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基、置換されていて
もよいアルケニル基、置換されていてもよいフェニル基、又はR35とR36とで一緒になって更なる窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環を表す。アルキル基及びアルケニル基の炭素数は1〜10が好ましい。
一般式(9):
【0058】
【化9】

X32:−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2−又は直接結合を表す。
R37:置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基又は置換されていてもよいフェニル基を表す。アルキル基及びアルケニル基の炭素数は1〜10が好ましい。
R38、R39、R10、R11:それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基又は置換されていてもよいフェニル基を表す。アルキル基及びアルケニル基の炭素数は1〜5が好ましい。
一般式(10):
【0059】
【化10】

【0060】
X33:−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2−又は直接結合を表す。
Y:−NR12−Z−NR13−又は直接結合を表す。
R12、R13:それぞれ独立に水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基又は置換されていてもよいフェニル基を表す。アルキル基及びアルケニル基の炭素数は1〜5が好ましい。
Z:置換されていてもよいアルキレン基、置換されていてもよいアルケニレン基、又は置換されていてもよいフェニレン基を表す。アルキレン基及びアルケニレン基の炭素数は1〜8が好ましい。
P:下記一般式(11)で示される置換基又は下記一般式(12)で示される置換基を表す。
Q:水酸基、アルコキシル基、前記一般式(8)で示される置換基又は前記一般式(9)で示される置換基を表す。
一般式(11):
【0061】
【化11】

【0062】
r:1〜10の整数を表す。
R14、R15:それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいフェニル基、又はR14とR15とで一緒になって更なる窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環を表す。アルキル基及びアルケニル基の炭素数は1〜10が好ましい。
一般式(12):
【0063】
【化12】

【0064】
R16:置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基又は置換されていてもよいフェニル基を表す。アルキル基及びアルケニル基の炭素数は1〜10が好ましい。
R17、R18、R19、R20:それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基又は置換されていてもよいフェニル基を表す。アルキル基及びアルケニル基の炭素数は1〜5が好ましい。
【0065】
基Eの酸性置換基又は中性置換基としては、例えば、下記一般式(13)、一般式(14)及び一般式(15)で示される置換基を挙げることができる。
一般式(13):
−SO3M/l (13)
M:水素原子、カルシウム原子、バリウム原子、ストロンチウム原子、マンガン原子、又はアルミニウム原子を表す。
l:Mの価数
一般式(14):
【0066】
【化13】

【0067】
R21、R22、R23、R24:水素原子又は炭素数1〜30のアルキル基を表す(但し全てが水素原子である場合は除く)。
一般式(15):
【0068】
【化14】

【0069】
A32:水素原子、ハロゲン原子、−NO2、−NH2又はSO3Hを表す。
y:1〜4の整数を表す。
【0070】
色素原型化合物残基G1としては、例えば、ジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジスアゾ、若しくはポリアゾ等のアゾ系色素、フタロシアニン系色素、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、チオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、スレン系色素、又は金属錯体系色素等の残基、アントラキノン残基、又はトリアジン残基などを挙げることができる。
【0071】
特に、顔料誘導体がアントラキノン誘導体の場合は、上記塩基性置換基、酸性置換基又は中性置換基を有するアントラキノンを用いることができる。また、トリアジン誘導体の場合には、メチル基若しくはエチル基等のアルキル基;アミノ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基若しくはジブチルアミノ基等のアルキルアミノ基;ニトロ基;水酸基;メトキシ基、エトキシ基若しくはブトキシ基等のアルコキシ基;塩素等のハロゲン;メチル基、メトキシ基、アミノ基、ジメチルアミノ基若しくは水酸基等で置換されていてもよいフェニル基;又はメチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ニトロ基、若しくは水酸基等で置換されていてもよいフェニルアミノ基等;の置換基を有していてもよい1,3,5−トリアジンに、上記塩基性置換基、酸性置換基又は中性置換基を導入した誘導体を用いることができる。
【0072】
中でもトリアジン環、アントラキノン基を含有する顔料誘導体がより好ましい。トリアジン環、アントラキノン基構造を有する顔料誘導体は、顔料に対しより高い吸着性を示し、高い分散性が得られると同時に、熱反応性化合物の硬化反応をより効果的に引き起こし、耐性の更なる向上を期待することができる。
【0073】
本発明の着色樹脂組成物は、樹脂担体を含有する。樹脂担体は、後述する熱反応性化合物の反応温度においても、非反応性の樹脂であり、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0074】
樹脂担体の例としては、石油系樹脂、マレイン酸樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、環化ゴム、塩化ゴム、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、ビニル樹脂、又はブチラール樹脂などを用いることができる。
【0075】
樹脂担体として、架橋可能な官能基を有するものを用いることもできる。架橋可能な官能基としては、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、又はアルコキシル基等を挙げることができる。架橋可能な官能基を有する樹脂としては、エステル化反応により樹脂が緩やかに架橋するため、水酸基又はカルボキシル基を有するアクリル樹脂が好ましい。
【0076】
水酸基又はカルボキシル基を有するアクリル樹脂は、水酸基を有するモノマー又はカルボキシル基を有するモノマーと、水酸基及びカルボキシル基を有しないアクリルモノマーとを共重合することにより得られる樹脂である。
【0077】
水酸基を有するモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート,2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート,3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート,2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(n=2〜50)、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(カプロラクトンの繰り返し数=1〜6)、エポキシ(メタ)アクリレート、水酸基末端ウレタン(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミド、アリルアルコール、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノメタクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノアクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノメタアクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノアクリレート、プロピレングリコールポリブチレングリコールモノメタクリレート、プロピレングリコールポリブチレングリコールモノアクリレートなどを挙げることができる。
【0078】
カルボキシル基を有するモノマーとしては,アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、2−カルボキシエチルアクリレート、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、グルタコン酸、テトラヒドロフタル酸などを挙げることができる。
【0079】
水酸基及びカルボキシル基を有しないアクリルモノマーとしては、下記一般式(16)で示されるモノマーを用いてもよい。
一般式(16):
【0080】
【化15】

R43:炭素数1〜30のアルキル基、−CH2−CH=CH2、置換基されていてもよいフェニル基又はC=0−C(R51)=CH2を表す。
R41及びR51:水素原子又はメチル基を表す。
R42:炭素数1〜4アルキレン基を表す。
s:1〜100の整数を表す。
【0081】
一般式(16)で示されるモノマーとしては、例えば、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、オクトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノアクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノアクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノアクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノアクリレート、アリロキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、アリロキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジメタクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジメタクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジアクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジメタクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジアクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールジアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ノニルフェノキシポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノアクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート、ビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジアクリレート等を挙げることができる。これらは、例えば日本油脂株式会社よりブレンマーシリーズや東亜合成株式会社よりアロニックスシリーズとして市販されている。
【0082】
一般式(16)で示されるモノマー以外の、水酸基及びカルボキシル基を有しないアクリルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類や、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル等を挙げることができる。また、アルキル基の水素原子の一部又は全部が芳香環,複素環,ハロゲン原子などで置換されているアルキル(メタ)アクリレートなど、一般にアクリル樹脂の合成に用いられるモノマーを用いることができる。
【0083】
本発明の着色樹脂組成物は、樹脂担体の一部に重量平均分子量(Mw)2000〜10000の化合物を含むことが好ましい。本発明の着色樹脂組成物の粘度およびT.I.値の関係を維持することができるからである。
【0084】
Mw=2000〜10000の化合物で分散した着色樹脂組成物は、同構造のMw>10000の化合物で分散した顔料分散体よりも化合物同士の分子間相互作用や物理的な絡みつきがないため、分散体の粘度は低く、チキソトロピー性も低くなる。また、Mw=2000〜10000の化合物は適度な分散性を有することが多いが、Mw<2000の化合物では分散性能が低く、分散安定性が得られず経時増粘するか、もしくは、分散が進まない。上記の通り、Mw=2000〜10000の化合物は分散剤として機能する。また、上記理由から低粘度、低チキソトロピー性な着色樹脂組成物を得るには重量平均分子量がMw=2000〜10000の化合物を用いることが望ましい。
【0085】
低粘度、低チキソトロピー性な着色樹脂組成物を得るには重量平均分子量がMw=2000〜10000の化合物を着色樹脂組成物中の全固形分を基準として5wt%以上用いることが好ましい。
【0086】
本発明において、上記の理由で、着色樹脂組成物の粘度およびT.I.値の関係を調整できる限り、いかなる重量平均分子量2000〜10000の化合物を用いてもよい。
【0087】
重量平均分子量2000〜10000の化合物は、公知の化合物でよく、また、上記樹脂担体や上記熱反応性化合物であってもよい。さらに、好ましくは顔料分散や分散安定化の機能を有するオリゴマーまたは樹脂などであり、特に好ましくは下記一般式(1)〜(3)の構造を有する化合物である。
【0088】
一般式(1):
【0089】
【化16】

【0090】
(式中、R1は水素またはメチル基を表す。R2はアルキレン基を表す。mは1〜20の整数を表す。)
一般式(1)で表される構造を有する化合物は、リン酸基を有するオリゴマーまたは樹脂である。該化合物を用いると顔料の分散性及び経時での安定性が向上し、更にインクジェットインキが低粘度となる。
【0091】
リン酸基は、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛等の多価金属、アンモニア、又はエチルアミン、ジブチルアミン、トリエタノールアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ジステアリルアミン等の有機アミンと塩を形成していてもよい。
【0092】
リン酸基は、式(17)で示される1価のリン酸基であっても式(18)で示される2価のリン酸基であってもよい。
式(17):
【0093】
【化17】

【0094】
式(18):
【0095】
【化18】

【0096】
一般式(1)で表される構造を有する化合物としては、下記一般式(19)で示されるリン酸基を有するモノマーを重合成分として含有する樹脂を含んでいてもよい。一般式(19)で示されるリン酸基を有するモノマーとしては、例えば、エチレングリコールメタクリレートフォスフェート、プロピレングリコールメタクリレートフォスフェート、エチレングリコールアクリレートフォスフェート、プロピレングリコールアクリレートフォスフェートが挙げられる。
一般式(19):
【0097】
【化19】

【0098】
R44:水素又はメチル基を表す。
R45:アルキレン基を表す。
u:1〜20の整数を表す。
【0099】
リン酸基を有するモノマーのさらなる具体例を以下に示すが、これに限るものではない。
【0100】
【化20】

【0101】
上記したリン酸基を有するモノマーは、単独あるいは2種以上の組合せで用いることができる。また、リン酸基を有するモノマーを他のモノマーとの共重合体としてもよい。共重合体におけるリン酸基を有するモノマーの共重合比は、全モノマー100重量部に対して0.1〜30重量部以下であることが好ましく、0.1〜5重量部以下であることが更に好ましい。
【0102】
これらのリン酸基を有するモノマーは、特公昭50−22536、特開昭58−128393に記載の方法で製造することができる。これらの文献を、全体的に本明細書に組み込むものとする。市販品としては、ホスマーM、ホスマーCL、ホスマーPE、ホスマーMH(以上ユニケミカル社製)、ライトエステルP−1M(以上共栄社化学社製)、JAMP−514(以上城北化学工業社製)、KAYAMERPM−2、KAYAMER PM−21(以上日本化薬社製)等がある。
【0103】
例えば、リン酸基を有するオリゴマーまたは樹脂は、リン酸基を有するモノマーとリン酸基を有しないモノマーとをラジカル重合することにより得ることができる。リン酸基を有しないモノマーとしては、先に例示した水酸基を有するモノマー、カルボキシル基を有するモノマー、水酸基及びカルボキシル基を有しないモノマーを用いることができる。
【0104】
リン酸基を有するオリゴマーまたは樹脂の合成は、開始剤の存在下、不活性ガス気流下、50〜150℃で2〜10時間かけて行われる。必要に応じて溶剤の存在下で行っても差し支えない。開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジt−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等を挙げることができる。開始剤は、モノマー100重量部に対して好ましくは1〜20重量部使用される。
【0105】
また、官能基を有する樹脂の合成時に用いられる溶剤としては、エチルセルソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの酢酸エステル系溶剤や、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、キシレン、エチルベンゼン等を挙げることができる。
【0106】
また、一般式(1)で表される構造を有する化合物は、下記一般式(20)又は一般式(21)で示されるモノマーを重合成分として含有する樹脂を含有することが好ましい。これらの樹脂を用いることにより、顔料の分散性及び経時での安定性が向上し、更にインクジェットインクが低粘度となるためである。
【0107】
【化21】

【0108】
【化22】

【0109】
前記一般式(20)及び一般式(21)中、R46及びR48は水素原子又はメチル基を表し、R47及びR49は炭素原子数1〜4アルキレン基を表し、v及びwは1〜100の整数を表す。
【0110】
前記一般式(20)及び一般式(21)で示されるモノマーとしては、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジメタクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジメタクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジメタクリレート、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート、プロピレンオキサイドエチレンオキサイド(ブロックタイプ)変性ビスフェノールAジメタクリレート、プロピレンオキサイドテトラメチレンオキサイド変性ビスフェノールAジメタクリレート、プロピレンオキサイドテトラメチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート等を挙げることができる。これらは、例えば日本油脂株式会社よりブレンマーシリーズや東亜合成株式会社よりアロニックスシリーズとして市販されている。
【0111】
一般式(1)で表される構造を有する化合物に重合成分として含有するモノマーとして、前記一般式(20)及び一般式(21)で示されるモノマーは、1種あるいは2種以上を、前記リン酸基を有するモノマーとの組み合わせで用いることができる。前記一般式(20)及び一般式(21)で示されるモノマーと共重合するリン酸基を有するモノマーとして、一般式(19)で示されるモノマーが好ましい。共重合体における前記一般式(20)及び一般式(21)で示されるモノマーの共重合比は、全モノマー100重量部に対して0.1〜50重量部であることが好ましい。
【0112】
一般式(2):
(HOOC―)e―R’1―(―COO―[―R’3―COO―]f―R’2)g (2)
(式中、R’1は4価のテトラカルボン酸化合物残基、R’2はモノアルコール残基、R’3はラクトン残基、eは2または3の整数、fは1〜50の整数、gは(4−e)を表す。)
一般式(2)で示される分散剤は、一般式(2)で示した構造を有すればどのような製造方法を用いて合成しても構わないが、モノアルコールを開始剤として、ラクトンを開環重合して片末端に水酸基を有するポリエステルを製造する第一の工程と、ポリエステルの片末端の水酸基と、テトラカルボン酸二無水物を反応させる第二の工程とから製造することが好ましい。
【0113】
本発明のモノアルコールとしては、水酸基を一つ有する化合物であればいかなる化合物でも構わない。例示すると、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、イソペンタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキサノール、1−ノナノール、イソノナノール、1−デカノール、1−ドデカノール、1−ミリスチルアルコール、セチルアルコール、1−ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2−オクチルデカノール、2−オクチルドデカノール、2−ヘキシルデカノール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族モノアルコール、ベンジルアルコールなどの芳香族モノアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノプロピルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラジエチレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルが挙げられる。
【0114】
さらに、本発明のモノアルコールとしてエチレン性不飽和二重結合を有するモノアルコールを使用しても良い。この場合、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に使用するのに好適である。
【0115】
本発明で言うエチレン性不飽和二重結合の例としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基が挙げられるが、好ましいのは(メタ)アクリロイル基である。これらは、単独でも良いし、複数でも良く、また異なる種類のエチレン性不飽和二重結合を併用しても良い。
【0116】
エチレン性不飽和二重結合を有するモノアルコールは、エチレン性不飽和二重結合の数により、分けられる。エチレン性不飽和二重結合の数が1個のモノアルコールとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチル2−(ヒドロキシメチル)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、1、4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等が挙げられる。エチレン性不飽和二重結合の数が2個のモノアルコールとしては、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。エチレン性不飽和二重結合の数が3個のモノアルコールとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エチレン性不飽和二重結合の数が5個のモノアルコールとしては、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートが挙げられる。
【0117】
このうち、ペンタエリスリトールトリアクリレート及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートは、それぞれ、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物として得られるので、HPLC(高速液体クロマトグラフィ)法や水酸基価の測定によりモノアルコール体の比率を決定する必要がある。
【0118】
上記のうちエチレン性不飽和二重結合の数が2個以上のものを使用すると活性エネルギー線硬化型樹脂組成物としたときの硬化性に優れる分散剤となり好ましい。
【0119】
上記例示した脂肪族モノアルコール、芳香族モノアルコール、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、およびエチレン性不飽和二重結合を有するモノアルコールの水酸基を開始基としてアルキレンオキサイドを付加重合して得られる片末端に水酸基を有するポリアルキレングリコールも、本発明のモノアルコールの範囲に入る。また、フェノール性水酸基を有する化合物、例えばフェノール、クミルフェノールなどにアルキレンオキサイドを付加重合して得られる片末端に水酸基を有するポリアルキレングリコールも本発明のモノアルコールの範囲に入る。付加されるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−、1,4−、2,3−又は1,3−ブチレンオキサイド及びこれらの2種以上の併用が挙げられる。2種以上のアルキレンオキサイドを併用するときの結合形式はランダム及び/又はブロックのいずれでもよい。アルキレンオキサイドの付加数は、一分子中、通常1〜300、好ましくは2〜250、特に好ましくは5〜100である。
【0120】
アルキレンオキサイドの付加は、公知方法、例えばアルカリ触媒の存在下、100〜200℃の温度で行うことができる。市販品としては、日本油脂社製ユニオックスシリーズ、日本油脂社製ブレンマーシリーズなどがある。具体的に例示すると、ユニオックスM−400、M−550、M−2000、ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350、AE−90、AE−200、AE−400、PP−1000、PP−500、PP−800、AP−150、AP−400、AP−550、AP−800、50PEP−300、70PEP−350B、AEPシリーズ、55PET−400、30PET−800、55PET−800、AETシリーズ、30PPT−800、50PPT−800、70PPT−800、APTシリーズ、10PPB−500B、10APB−500Bなどがある。
【0121】
上記のモノアルコールのうち、たとえば4−メチル−2−ペンタノール、イソペンタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキサノール、イソノナノール、イソステアリルアルコール、2−オクチルデカノール、2−オクチルドデカノール、2−ヘキシルデカノールなどの分岐脂肪族モノアルコール、または片末端に水酸基を有するポリアルキレングリコールを用いると、結晶性が低下し室温で液状になる場合があるので、作業性の点と他の樹脂との相溶性の点で好ましい。
【0122】
片末端に水酸基を有するポリエステルは、モノアルコールを開始剤として、ラクトンを開環重合することによって得ることができる。本発明で使用されるラクトンは、具体的にはβ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、アルキル置換されたε−カプロラクトン、が挙げられる。このうちδ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、アルキル置換されたε−カプロラクトンを使用するのが開環重合性の点で好ましい。
【0123】
本発明のラクトンは、上記例示に限定されることなく用いることができ、また単独で用いても、2種類以上を併用して用いても構わない。2種類以上を併用すると、結晶性が低下し室温で液状になる場合があるので、作業性の点と他の樹脂との相溶性の点で好ましい。
【0124】
開環重合は、公知方法、例えば、脱水管、コンデンサーを接続した反応器にモノアルコール、ラクトン、重合触媒を仕込み、窒素気流下で行うことができる。低沸点のモノアルコールを用いる場合には、オートクレーブを用いて加圧下で反応させることができる。また、モノアルコールとしてエチレン性不飽和二重結合を有するものを使用する場合は、重合禁止剤を添加し、乾燥空気流下で反応を行うことが好ましい。
【0125】
モノアルコール1モルに対するラクトンの付加モル数は、1〜50モル、好ましくは、3〜20モル、最も好ましくは4〜16モルである。付加モル数が、1モル以上だと、分散剤としての効果を十分に得ることができ、50モル以下だと分散剤の分子量が大きくなりすぎず、分散性、流動性に優れる。
【0126】
重合触媒としては、例えば、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヨード、テトラブチルアンモニウムヨード、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムヨードなどの四級アンモニウム塩、テトラメチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラメチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラメチルホスホニウムヨード、テトラブチルホスホニウムヨード、ベンジルトリメチルホスホニウムクロリド、ベンジルトリメチルホスホニウムブロミド、ベンジルトリメチルホスホニウムヨード、テトラフェニルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムヨードなどの四級ホスホニウム塩の他、トリフェニルフォスフィンなどのリン化合物、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸ナトリウムなどの有機カルボン酸塩、ナトリウムアルコラート、カリウムアルコラートなどのアルカリ金属アルコラートの他、三級アミン類、有機錫化合物、有機アルミニウム化合物、有機チタネート化合物、及び塩化亜鉛などの亜鉛化合物等が挙げられる。触媒の使用量は0.1ppm〜3000ppm、好
ましくは1ppm〜1000ppmである。触媒量が3000ppm以上となると、樹脂の着色が激しくなり、製品の安定性に悪影響を与える。逆に、触媒の使用量が0.1p
pm以下では環状エステルの開環重合速度が極めて遅くなるので好ましくない。
【0127】
反応には、無溶剤または適当な脱水有機溶媒を使用することもできる。反応に使用した溶媒は、反応終了後、蒸留等の操作により取り除くか、あるいはそのまま製品の一部として使用することもできる。
【0128】
反応温度は100℃から220℃、好ましくは、110℃〜210℃の範囲で行う。反応温度が100℃以下では反応速度がきわめて遅く、210℃以上ではラクトンの付加反応以外の副反応、たとえばラクトン付加体のラクトンモノマーへの分解、環状のラクトンダイマーやトリマーの生成等が起こりやすい。
【0129】
エチレン性不飽和二重結合を有するモノアルコールを使用する場合に使用される重合禁止剤としては、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−ベンゾキノン、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、フェノチアジン等が好ましい。これらを単独もしくは併用で0.01%〜6%、好ましくは、0.05%〜1.0%の範囲で用いる。
【0130】
第二の工程で使用されるテトラカルボン酸二無水物としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物などの脂肪族テトラカルボン酸二無水物、
ピロメリット酸二無水物、エチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、プロピレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、ブチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4′−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4′−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4′−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3′,4,4′−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4′−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4′−ジフェニルメタン二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二酸無水物、9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二酸無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−メチル−1−ナフタレンコハク酸二無水物、などの芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0131】
本発明で使用されるテトラカルボン酸二無水物は上記に例示した化合物に限らず、カルボン酸無水物を二つ持てばどのような構造をしていてもかまわない。これらは単独で用いても、併用してもかまわない。さらに、本発明に好ましく使用されるものは顔料分散体の低粘度化の観点から芳香族テトラカルボン酸二無水物であり、さらに好ましくは芳香族環を二つ以上有するテトラカルボン酸二無水物である。
【0132】
第二の工程での反応比率は、片末端に水酸基を有するポリエステルの水酸基のモル数を〈H〉、テトラカルボン酸無水物の無水環のモル数を〈N〉としたとき、0.5<〈H〉/〈N〉<1.2が好ましく、さらに好ましくは0.7<〈H〉/〈N〉<1.1、最も好ましくは〈H〉/〈N〉=1の場合である。〈H〉/〈N〉<1で反応させる場合は、残存する酸無水物を必要量の水で加水分解して使用してもよい。
【0133】
第二の工程には触媒を用いてもかまわない。触媒としては、3級アミン系化合物としては、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等が挙げられる。
【0134】
第一の工程、第二の工程ともに無溶剤で行っても良いし、適当な脱水有機溶媒を使用しても良い。反応に使用した溶媒は、反応終了後、蒸留等の操作により取り除くか、あるいはそのまま製品の一部として使用することもできる。
【0135】
反応温度は80℃〜180℃、好ましくは、90℃〜160℃の範囲で行う。反応温度が80℃以下では反応速度が遅く、180℃以上ではハーフエステル化したものが、再度環状無水物を生成し、反応が終了しにくくなる場合がある。
一般式(3):
【0136】
【化23】

【0137】
{一般式(3)中、R’’3は水素原子又はメチル基であり、
X1は、−COO−、−CONH−、−O−、−OCO−若しくは−CH2O−であり、X2は、一般式:
−(−Ra1−O−)m1−
(式中、Ra1は炭素原子数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素原子数3〜8のシクロアルキレン基であり、そしてm1は1〜50の整数である)
で表される基であり、
X3は、一般式:
−(−CO−Rb1−O−)m2−
(Rb1は炭素原子数4〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素原子数4〜8のシクロアルキレン基であり、そしてm2は0または1〜20の整数である)
で表される基であり、
Y1は、一般式(4):
【0138】
【化24】

【0139】
(一般式(4)中、
A1〜A3のうちの1つが水素原子であって、他の2つは−COOHである組合せであるか、A1〜A3のうちの1つが−COORc(但し、Rcは、炭素原子数1〜18のアルキル基である)であって、他の2つは−COOHである組合せであるか、又はA1〜A3の3つが−COOHの組み合せであり、kは1又は2である)
で表される基であるか、あるいは一般式(5):
【0140】
【化25】

【0141】
(一般式(5)中、
A5〜A7のうち1つは水素原子であって、他の2つは−COOHである組合せであるか、A5〜A7のうち1つは−COORd(但し、Rdは、炭素原子数1〜18のアルキル基である)であって、他の2つは−COOHである組合せであるか、又はA5〜A7の3つが−COOHの組合せであり、
R2は、直接結合、−O−、−CO−、−COOCH2CH2OCO−、−SO2−、−C(CF3)2−、式:
【0142】
【化26】

で表される基、又は式:
【0143】
【化27】

で表される基である)
上記一般式(3)で表される構造を含む化合物は、ビニル系重合体主鎖内に、一般式(3)で表されるカルボキシル基含有単位(G)を、ビニル系重合体の1分子あたり平均0.3個以上3.0個以下の量で含む限り、その化学構造及び製造方法は特に限定されるものではない。
【0144】
一般に、顔料分散剤は顔料に吸着する部位と、分散媒である溶剤に親和性の高い部位との構造を持ち合わせ、この2つの機能の部位のバランスで分散剤の性能は決まる。つまり、分散性を発現させるためには、分散剤の顔料に吸着する性能と分散媒である溶剤への親和性がともに非常に重要である。前記一般式(3)で表されるカルボキシル基含有単位(G)において、一般式(4)又は一般式(5)で表されるY1は、芳香族環の環構成炭素原子に直接に結合するカルボキシル基2個又は3個を有しており、この芳香族環の環構成炭素原子に直接に結合する複数のカルボキシル基が顔料の吸着部位となる。したがって、一般式(3)で表される構造を含む化合物では、高い分散性、流動性、及び保存安定性を発現する。
【0145】
一般式(3)で表される構造を有する化合物(以下、ビニル系分散剤(a)とする。)は、ビニル系重合体の1分子に対して一般式(3)で示されるカルボキシル基含有単位(G)を平均0.3個以上3.0個以下含むことが好ましい。更に好ましくは0.35個以上2.0個以下、最も好ましくは0.4個以上1.5個以下である。0.3個以上の場合、顔料に吸着する部位が多く分散能力に優れる。また、3.0個以下の場合、顔料に吸着する部位が適度で、分散性に優れる。
【0146】
一般式(3)中で、顔料分散体の低粘度化及び保存安定性の観点から、X1は、−COO−であることが好ましい。Ra1は炭素原子数1〜4の炭化水素基(例えば、メチレン基、エチレン基、直鎖状若しくは分岐状プロピレン基、又は直鎖状若しくは分岐状ブチレン基)であることが好ましい。m1は1〜10であることが好ましく、更に好ましくは1〜3である。Rb1は、ペンタメチレン基であることが好ましい。m2は0〜5であることが好ましく、更に好ましくは0〜3である。Y1は、一般式(4)で表される基であることが好ましく、更に好ましくは、一般式(4)中、A1〜A3の全てが−COOHであり、kが1であるか、A1〜A3のうちの1つが水素原子であり、他の2つが−COOHである組合せであり、kが1である場合である。また、Y1は、一般式(5)で表される基であることもでき、この場合、R2は、−COOCH2CH2OCO−、又は式:
【0147】
【化28】

【0148】
で表される基であることが好ましい。A5〜A7のうち1つは−COORd(但し、Rdは、炭素原子数6〜10の直鎖又は分岐アルキル基である)であって、他の2つは−COOHである組合せであることが好ましい。
【0149】
本発明で用いる前記ビニル系分散剤(a)としては、前記一般式(3)で表されるカルボキシル基含有単位(G)と、一般式(4j):
【0150】
【化29】

【0151】
〔一般式(4j)中、
R4は、水素原子又はメチル基を示し、
X4は、−COO−、−CONH−、−O−、−OCO−若しくは−CH2O−であり、X5は、式:
−(−Ra2−O−)m3−、
(式中、Ra2は炭素原子数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素原子数3〜8のシクロアルキレン基であり、そしてm3は1〜50の整数である)
で表される基であり、
X6は、式:
−(−CO−Rb4−O−)m4−
(式中、Rb4は炭素原子数4〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基であり、そしてm4は0〜20の整数である)〕で表され、末端が水素と結合すると水酸基を有する水酸基含有単位(J)と、一般式(4k):
【0152】
【化30】

【0153】
〔一般式(4k)中、
R5は、水素原子又はメチル基を示し、
R6は、芳香族基、又は−CO−X7−R7(但し、X7は、−O−若しくは−NH−であり、R7は、水素原子又は炭素原子数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であり、前記R7は、置換基として芳香族基を有していることができる)である。〕
で表される主鎖構成単位(K)との各構成単位からなるブロック共重合体又はランダム共重合体を挙げることができる。
【0154】
従って、本発明で用いる好ましい前記ビニル系分散剤(a)は、一般式(4a)、すなわたち、一般式(4b)で表される共重合体を含む。
一般式(4a):
−〔G〕p1−〔J〕p2−〔K〕p3− (4a)
一般式(4b):
【0155】
【化31】

【0156】
ここで、Gは、前記一般式(3)で表されるカルボキシル基含有単位であり、Jは、前記一般式(4j)で表される水酸基含有単位であり、Kは、前記一般式(4k)で表される主鎖構成単位である。p1は0.3以上3.0以下、好ましくは0.35以上2.0以下、更に好ましくは0.4以上1.5以下である。p2は0以上180以下、好ましくは0.05以上50以下である。p3は6以上250以下、好ましくは10個以上100個以下である。また、前記一般式(4a)において、カルボキシル基含有単位(G)と水酸基含有単位(J)と主鎖構成単位(K)とは、それぞれ、ブロック共重合形式又はランダム共重合形式で存在することができる。更に、前記カルボキシル基含有単位(G)、前記水酸基含有単位(J)、及び主鎖構成単位(K)は、前記一般式(4a)中に、それぞれ複数個で存在することができる。この場合は、それぞれの単位が相互に同一又は異なっていることができる。例えば、主鎖構成単位(K)が2種又はそれ以上の構造の構成単位を含んでいることができる。
【0157】
前記一般式(4b)又は一般式(4a)で表される本発明で用いる前記ビニル系分散剤(a)に含まれる水酸基含有単位(J)おいて、X4は−COO−であることが好ましい。Ra2は炭素原子数1〜4の炭化水素基(例えば、メチレン基、エチレン基、直鎖状若しくは分岐状のプロピレン基又は直鎖状若しくは分岐状のブチレン基)であることが好ましい。m3は1〜10であることが好ましく、更に好ましくは1〜3である。Rb4は、ペンタメチレン基であることが好ましい。m4は0〜5であることが好ましく、更に好ましくは0〜3である。
【0158】
前記一般式(4b)又は一般式(4a)で表される本発明で用いる前記ビニル系分散剤(a)は、前記主鎖構成単位(K)として、R5がメチル基であり、R6が−CO−O−CH2−Ar(但し、Arは芳香族基、特にはフェニル基である)である主鎖構成単位(K1)を含むことが好ましい。この主鎖構成単位(K1)は、ビニル重合体一分子あたり平均で1以上100以下の量で有していることが好ましく、この態様の前記ビニル系分散剤(a)は、分散能力に優れる。
【0159】
更に、前記一般式(4b)又は一般式(4a)で表される本発明で用いる前記ビニル系分散剤(a)は、前記主鎖構成単位(K)において、R5がメチル基であり、R6が−CO−O−R7(但し、R7は炭素原子数2〜10の直鎖状若しくは分岐状アルキル基である)である主鎖構成単位(K2)を含むことが好ましい。この主鎖構成単位(K2)は、前記ビニル系分散剤(a)内において、前記主鎖構成単位(K1)と共存するのが、より好ましい。
【0160】
更に、前記一般式(4b)又は一般式(4a)で表される本発明で用いる前記ビニル系分散剤(a)は、前記主鎖構成単位(K)として、R5がメチル基であり、R6が芳香族基(特に、フェニル基)である主鎖構成単位(K3)を、それ単独で、あるいは前記主鎖構成単位(K1)及び/又は前記主鎖構成単位(K2)と併存させて含むことが好ましい。更に、前記主鎖構成単位(K)として、R5が水素原子であり、R6がカルボキシル基である主鎖構成単位(K4)を、前記主鎖構成単位(K1)、主鎖構成単位(K2)、及び/又は主鎖構成単位(K3)と併存させて含むこともできる。
【0161】
前記主鎖構成単位(K1)と前記主鎖構成単位(K2)とを併存させる場合、それらの比率(K1/K2)は、例えば、0.01〜100、好ましくは0.1〜10であることができる。また、前記主鎖構成単位(K3)を前記主鎖構成単位(K1)及び/又は前記主鎖構成単位(K2)と併存させる場合、その比率〔K3/(K1+K2)〕は、例えば、0.01〜10、好ましくは0.05〜2であることができる。更に、前記主鎖構成単位(K4)を、それ以外の前記主鎖構成単位(K)と併存させる場合、その比率〔K4/K〕は、例えば、0〜0.1、好ましくは0〜0.01であることができる。
【0162】
前記一般式(4b)で示されるビニル系分散剤(a)の主鎖の末端は、公知のエチレン性不飽和単量体の重合方法、又は重合過程で考えられる構造、例えば、重合開始剤由来、連鎖移動剤由来、溶剤由来、又はエチレン性不飽和単量体由来の化学構造などを有してよい。
【0163】
本発明で用いるビニル系分散剤(a)では、一般式(4b)においてR6がカルボキシル基(−COOH)である主鎖構成単位(K)を、主鎖構成単位(K)の少なくとも1部分として含むことができる。但し、カルボキシル基を有する主鎖構成単位(K)の含有量が多すぎると分散性能が低下することから、カルボキシル基含有主鎖構成単位(K)の量は、カルボキシル基含有単位(G)の個数の0倍〜4倍、更には0倍〜2倍の範囲であることが好ましい。
【0164】
本発明で用いる前記ビニル系分散剤(a)は、本発明で用いる製造方法によって調製することができる。後述する本発明で用いる製造方法によれば、前記ビニル系分散剤(a)だけでなく、前記ビニル系分散剤(a)を包含する広範な構造を有する全てのビニル系分散剤(A)を製造することができる。すなわち、後述する本発明で用いる製造方法において、特定の出発材料を選択することによって、本発明で用いる前記ビニル系分散剤(a)を調製することができる。
【0165】
本発明で用いるビニル系分散剤(A)の製造方法としては、以下の製造方法1〜3を挙げることができる。
製造方法1:
(A)水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)とトリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸無水物(M4)とを予め反応させたエチレン性不飽和単量体を製造する工程、
(B)該エチレン性不飽和単量体と他のエチレン性不飽和単量体とを共重合せしめる工程からなる。
製造方法2:
(C)水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)を他のエチレン性不飽和単量体と共重合する工程、
(D)該共重合物の水酸基にトリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸無水物(M4)を反応せしめる工程
からなる。
製造方法3:
水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)を他のエチレン性不飽和単量体と共重合しながら、該水酸基にトリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸無水物(M4)を同時に反応せしめる。
【0166】
前記の製造方法で使用される水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)としては、水酸基を有し、エチレン性不飽和二重結合を有する単量体であればどのようなものでも構わないが、具体的には、水酸基を有する(メタ)アクリレート系単量体、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2(又は3)−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2(又は3又は4)−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及びシクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、あるいは水酸基を有する(メタ)アクリルアミド系単量体、例えば、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミドなどのN−(ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミド、あるいは、水酸基を有するビニルエーテル系単量体、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−(または3−)ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−(または3−または4−)ヒドロキシブチルビニルエーテルなどのヒドロキシアルキルビニルエーテル、あるいは水酸基を有するアリルエーテル系単量体、例えば、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、2−(または3−)ヒドロキシプロピルアリルエーテル、2−(または3−または4−)ヒドロキシブチルアリルエーテルなどのヒドロキシアルキルアリルエーテルが挙げられる。
【0167】
また、上記のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、N−(ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシアルキルビニルエーテルあるいはヒドロキシアルキルアリルエーテルにアルキレンオキサイド及び/又はラクトンを付加して得られるエチレン性不飽和単量体も、本発明で用いる製造方法において、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)として用いることができる。付加されるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−、1,4−、2,3−又は1,3−ブチレンオキサイド及びこれらの2種以上の併用系が挙げられる。2種以上のアルキレンオキサイドを併用するときの結合形式はランダム及び/又はブロックのいずれでもよい。付加されるラクトンとしては、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、炭素原子数1〜6のアルキル基で置換されたε−カプロラクトン及びこれらの2種以上の併用が挙げられる。アルキレンオキサイドとラクトンを両方とも付加したものでも構わない。
【0168】
トリカルボン酸無水物(M3)としては、まず、脂肪族トリカルボン酸無水物、芳香族トリカルボン酸無水物、又は多環式トリカルボン酸無水物が挙げられる。
【0169】
脂肪族トリカルボン酸無水物としては、例えば、3−カルボキシメチルグルタル酸無水物、1,2,4−ブタントリカルボン酸−1,2−無水物、cis−プロペン−1,2,3−トリカルボン酸−1,2−無水物、1,3,4−シクロペンタントリカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0170】
芳香族トリカルボン酸としては、例えば、ベンゼントリカルボン酸無水物(1,2,3−ベンゼントリカルボン酸無水物、トリメリット酸無水物(1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物)など)、ナフタレントリカルボン酸無水物(1,2,4−ナフタレントリカルボン酸無水物、1,4,5−ナフタレントリカルボン酸無水物、2,3,6−ナフタレントリカルボン酸無水物、1,2,8−ナフタレントリカルボン酸無水物など)、3,4,4’−ベンゾフェノントリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルエーテルトリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルトリカルボン酸無水物、2,3,2’−ビフェニルトリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルメタントリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルスルホントリカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0171】
また、本発明で用いる製造方法では、後述するテトラカルボン酸無水物(M4)において1分子あたりに酸無水物が2つ存在するテトラカルボン酸二無水物に対し、1分子のうちの1個の酸無水物を炭素原子数1〜18のアルコールあるいは炭素原子数5〜18のシクロアルコールで開環したテトラカルボン酸無水物モノエステルモノ無水物も、本発明で用いる製造方法において、トリカルボン酸無水物(M3)として用いることができる。本明細書では、脂肪族テトラカルボン酸モノエステルモノ無水物は、脂肪族トリカルボン酸無水物、芳香族テトラカルボン酸モノエステルモノ無水物は、芳香族トリカルボン酸無水物、多環式テトラカルボン酸無水物モノエステルモノ無水物は、多環式トリカルボン酸無水物として説明する。これらテトラカルボン酸無水物モノエステルモノ無水物の具体例は、後述するテトラカルボン酸無水物から当業者には自明である。炭素原子数1〜18のアルコールあるいは炭素原子数5〜18のシクロアルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、直鎖状若しくは分岐状のプロパノール、直鎖状若しくは分岐状のブタノール、直鎖状若しくは分岐状のペンタノール若しくはシクロペンタノール、直鎖状若しくは分岐状のヘキサノール若しくはシクロヘキサノール、直鎖状若しくは分岐状のヘプタノール若しくはシクロヘプタノール、直鎖状若しくは分岐状のオクタノール若しくはシクロオクタノール、直鎖状若しくは分岐状のノナノール若しくはシクロノナノール、直鎖状若しくは分岐状のデカノール若しくはシクロデカノール、直鎖状若しくは分岐状のドデカノール若しくはシクロドデカノール、直鎖状若しくは分岐状のミリスチルアルコール若しくはシクロミリスチルアルコール、直鎖状若しくは分岐状のセチルアルコール若しくはシクロセチルアルコール、直鎖状若しくは分岐状のステアリルアルコール若しくはシクロステアリルアルコールなどが挙げられる。
【0172】
テトラカルボン酸無水物(M4)としては、例えば、脂肪族テトラカルボン酸無水物、芳香族テトラカルボン酸無水物、又は多環式テトラカルボン酸無水物が挙げられる。
【0173】
脂肪族テトラカルボン酸無水物としては、例えば、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸無水物などを挙げることができる。
【0174】
芳香族テトラカルボン酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸無水物、エチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、プロピレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、ブチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン酸無水物、9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン酸無水物などを挙げることができる。
【0175】
多環式テトラカルボン酸無水物としては、例えば、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−メチル−1−ナフタレンコハク酸無水物などを挙げることができる。
【0176】
なおテトラカルボン酸無水物は、一無水物でも二無水物でもどちらでもよい。上記のうち、芳香族トリカルボン酸無水物、又は芳香族テトラカルボン酸無水物を用いるのが好ましく、更に好ましくはトリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、2,3,6−ナフタレントリカルボン酸無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸無水物が好ましく、更に好ましくはトリメリット酸無水物である。
【0177】
本発明で用いる製造方法1について更に詳細に説明する。本発明で用いる製造方法1では、まず水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)とトリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸無水物(M4)とを反応せしめる工程Aを行う。この工程Aは、単量体が熱重合してしまわないように、乾燥空気を反応装置内に流しながら、重合禁止剤を添加して、80℃〜150℃で行うのが好ましい。より好ましくは90℃〜130℃である。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、メチルハイドロキノンなどが挙げられる。
【0178】
工程Aで水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)とトリカルボン酸無水物(M3)とを反応させる場合、反応比率は「水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)のモル数/トリカルボン酸無水物(M3)のモル数」が0.8以上10以下であることが好ましい。より好ましくは0.9以上5以下、更に好ましくは0.95以上2以下である。0.8未満であると、トリカルボン酸無水物(M3)が残存するため好ましくない。10を超えると、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)が大量に残り、後の工程Bで共重合できる他のエチレン性不飽和単量体の量が減り好ましくない。
【0179】
工程Aで水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)とテトラカルボン酸無水物(M4)とを反応させる場合、反応比率は「水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)のモル数/テトラカルボン酸無水物(M4)のモル数」が0.9以上1.1以下であることが好ましい。より好ましくは1である。0.9未満であると、テトラカルボン酸無水物(M4)が多く残存するため好ましくない。1.1を超えると1つのテトラカルボン酸無水物(M4)に2つ水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)が付加した化合物が多くでき、工程Bでゲル化する場合があり好ましくない。
【0180】
工程Aでは触媒を用いてもかまわない。触媒としては3級アミン系化合物が好ましく、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等が挙げられる。
【0181】
更に、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)とテトラカルボン酸無水物(M4)を上記比率で反応させた後、この時点で残存する酸無水物を水又は炭素原子数1〜18のアルコールで開環させ(工程Aa)、不要なテトラカルボン酸無水物(M4)の除去を容易にすることができる。
【0182】
続いて、製造方法1では、工程Aで合成したエチレン性不飽和単量体と、他のエチレン性不飽和単量体とを共重合せしめる工程Bを行う。
【0183】
工程Aで用いる他のエチレン性不飽和単量体としては、芳香族基で置換されていてもよい炭素原子数1〜18のアルキル(メタ)アクリレート、炭素原子数1〜18のN−アルキル(メタ)アクリルアミド、スチレン及び水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)(工程Aで残存したものを含む)から選択されるエチレン性不飽和単量体が共重合されるのが好ましい。
【0184】
非置換のアルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、直鎖状若しくは分岐状のプロピル(メタ)アクリレート、直鎖状若しくは分岐状のブチル(メタ)アクリレート、直鎖状若しくは分岐状のペンチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、直鎖状若しくは分岐状のヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、直鎖状若しくは分岐状のヘプチル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、直鎖状若しくは分岐状のオクチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、直鎖状若しくは分岐状のノニル(メタ)アクリレート、シクロノニル(メタ)アクリレート、直鎖状若しくは分岐状のデシル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート、直鎖状若しくは分岐状のドデシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、直鎖状若しくは分岐状のミリスチル(メタ)アクリレート、シクロミリスチル(メタ)アクリレート、直鎖状若しくは分岐状のセチル(メタ)アクリレート、シクロセチル(メタ)アクリレート、及び直鎖状若しくは分岐状のステアリル(メタ)アクリレート、又はシクロステアリル(メタ)アクリレートが挙げられる。芳香族環で置換されたアルキル(メタ)アクリレートとしては、ベンジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0185】
非置換のN−アルキル(メタ)アクリルアミドとしては、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、直鎖状若しくは分岐状のN−プロピル(メタ)アクリルアミド、直鎖状若しくは分岐状のN−ブチル(メタ)アクリルアミド、直鎖状若しくは分岐状のN−ペンチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロペンチル(メタ)アクリルアミド、直鎖状若しくは分岐状のN−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、直鎖状若しくは分岐状のN−ヘプチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘプチル(メタ)アクリルアミド、直鎖状若しくは分岐状のN−オクチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロオクチル(メタ)アクリルアミド、直鎖状若しくは分岐状のN−ノニル(メタ)アクリルアミド、N−シクロオクチル(メタ)アクリルアミド、直鎖状若しくは分岐状のN−デシル(メタ)アクリルアミド、N−シクロデシル(メタ)アクリルアミド、直鎖状若しくは分岐状のN−ドデシル(メタ)アクリルアミド、N−シクロドデシル(メタ)アクリルアミド、直鎖状若しくは分岐状のN−ミリスチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロミリスチル(メタ)アクリルアミド、直鎖状若しくは分岐状のN−セチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロセチル(メタ)アクリルアミド、直鎖状若しくは分岐状のN−ステアリル(メタ)アクリルアミド、又はN−シクロステアリル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。芳香族環で置換されたアルキル(メタ)アクリレートとしては、N−ベンジル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。なお、ここで、(メタ)アクリレートとは、メタクリレート又はアクリレートを示し、(メタ)アクリルアミドとはメタクリルアミド又はアクリルアミドを示す。
【0186】
工程Bでは、反応容器を窒素置換しながら重合開始剤を用い、50℃〜150℃で重合するのが好ましい。重合開始剤としては、アルキルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、p−メタンヒドロパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、ラウロリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクロルベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、ジ−イソブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスジイソブチレート、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などのアゾ化合物が挙げられる。これらのうちアゾ化合物が使用されるのが好ましい。重合開始剤は、エチレン性不飽和単量体の合計100重量部に対して、好ましくは1〜20重量部使用される。
【0187】
工程Bでは連鎖移動剤を使用することもできる。連鎖移動剤としては、チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸メトキシブチル、エチレングリコールビスチオグリコレート、ブタンジオールビスチオグリコレート、ヘキサンジオールビスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、メルカプトプロピオン酸メチル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸トリデシル、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、α−メチルスチレン二量体が挙げられる。
【0188】
工程Bでは、溶剤を使用することが好ましい。溶剤としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの酢酸エステル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;キシレン、トルエン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類などを用いることができる。
【0189】
工程Aの後で、工程Aaを行っていない場合、工程Bの後に残存する酸無水物を水又は炭素原子数1〜18のアルコールで開環させることができる(工程Bb)。工程Aa、若しくは工程Bbでは、残存する酸無水物のモル数に対し、反応させる水又は炭素原子数1〜18のアルコールのモル数は、0.9倍以上5倍以下(好ましくは1倍以上2倍以下)であることが好ましい。0.9倍未満では反応性の高い無水環が多く残り、5倍を超えると水又は炭素原子数1〜18のアルコールが多く残存し、どちらにしても、インキや塗料へ用途展開した場合、問題となる場合がある。但し、残存する酸無水物のモル数に対し、反応させる水又は炭素原子数1〜18のアルコールを1倍を超えて反応させた場合は、反応後残存する水又は炭素原子数1〜18のアルコールを加熱、又は減圧して取り除くことができる。反応工程Aa、若しくは工程Bbは80〜150℃で行うことが好ましい。
【0190】
次に、本発明で用いる製造方法2について詳細に説明する。本発明で用いる製造方法2では、まず、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)を他のエチレン性不飽和単量体と共重合する工程Cを行う。他のエチレン性不飽和単量体としては、製造方法1の工程Bで例示した芳香族環で置換されていてもよい炭素原子数1〜18のアルキル(メタ)アクリレート、芳香族環で置換されていてもよい炭素原子数1〜18のN−アルキル(メタ)アクリルアミド、及びスチレンから選択されるエチレン性不飽和単量体が共重合されるのが好ましい。
【0191】
水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)と他のエチレン性不飽和単量体との共重合比は、重合後の一分子に平均で少なくとも0.3個以上177個以下の水酸基が入るように決められる。
【0192】
工程Cでの、重合開始剤の種類、連鎖移動剤の種類、溶剤の種類、量、反応温度などの重合条件は、製造方法1の工程Bと同様であることが好ましい。
【0193】
続いて、製造方法2では、工程Cで得られた共重合物の水酸基にトリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸無水物(M4)を反応させる工程Dを行う。工程Dでは、窒素又は乾燥空気を反応容器に流しながら、80℃〜150℃で行うことが好ましい。ここで、製造方法1の工程Aで例示した触媒を用いることもできる。
【0194】
製造方法2の工程Dでは、トリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸無水物(M4)のうち、トリカルボン酸無水物(M3)が使用されるのが好ましい。テトラカルボン酸無水物(M4)を使用するとゲル化する場合がある。テトラカルボン酸無水物(M4)を使用した場合で、無水環が残存する場合は製造方法1の工程Bbと同じ方法により、水又は炭素原子数1〜18のアルコールで開環させることができる(工程Dd)。
【0195】
次に、本発明で用いる製造方法3について詳細に説明する。
【0196】
本発明で用いる製造方法3では、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)を他のエチレン性不飽和単量体と共重合しながら、該水酸基にトリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸無水物(M4)を同時に反応せしめる。反応は、窒素を反応容器に流しながら、80℃〜150℃で行うことが好ましく、水酸基と酸無水物の反応の触媒としては製造方法1の工程Aに示したもの、重合開始剤の種類、連鎖移動剤の種類、溶剤の種類、量、反応温度などの重合条件は、製造方法1の工程Bで示したものが好ましい。
【0197】
製造方法3で用いる他のエチレン性不飽和単量体とは、製造方法2の工程Cで用いる化合物と同じものを示す。製造方法3の場合、トリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸無水物(M4)のうちトリカルボン酸無水物(M3)が使用されるのが好ましい。特に、テトラカルボン酸ジ無水物を使用するとゲル化する場合がある。テトラカルボン酸ジ無水物を使用した場合で、無水環が残存する場合は製造方法1の工程Bbと同じ方法により、水又は炭素原子数1〜18のアルコールで開環させることができる(工程Ee)。
【0198】
これら製造方法1〜3により、本発明で用いるビニル系分散剤(A)を製造することができる。このうち、製造方法2が分散剤一分子中のカルボキシル基含有単位(G)の個数を制御するのが容易である点で好ましい。製造方法2の工程Cで得られた共重合物の数平均分子量を予め測ることができ、その値に合わせてトリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸無水物(M4)を反応させる量を決定できる。例えば、製造方法2でビニル系分散剤(A)を製造するには、工程Cで得られた共重合物の数平均分子量を測定し、その測定値が[X]であった場合、樹脂[X]gに対して0.3モル以上3.0モル以下のトリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸無水物(M4)を反応させればよい。
【0199】
製造方法1又は3により、本発明で用いるビニル系分散剤(A)を製造する場合は、最終的に得られるビニル系分散剤(A)の数平均分子量[Y]と、トリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸無水物(M4)の仕込みモル数とから逆算して、結果としてビニル系分散剤(A)が[Y]gに対して0.3モル以上3.0モル以下のトリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸無水物(M4)が反応させられていればよい。
【0200】
本発明で用いる製造方法でビニル系分散剤(A)を製造する場合、トリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸無水物(M4)として選択されるのは、芳香族トリカルボン酸無水物又は芳香族テトラカルボン酸無水物が好ましい。このうち、より好ましくは芳香族トリカルボン酸無水物であり、更にはトリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、2,3,6−ナフタレントリカルボン酸無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸無水物が好ましく、最も好ましくはトリメリット酸無水物である。
【0201】
製造方法1〜3のどの方法においてもビニル系分散剤(A)を製造する場合、他のエチレン性不飽和単量体として、分岐を有してもよい非置換の炭素原子数1〜12のアルキル(メタ)アクリレートと、ベンジル(メタ)アクリレートと、必要に応じ水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(h)とが共重合されるのが好ましい。更に、ビニル系分散剤(A)の一分子中に分岐を有してもよい非置換の炭素原子数1〜12のアルキル(メタ)アクリレートが1〜50個、ベンジル(メタ)アクリレートが1〜50個共重合されるのが好ましい。
【0202】
また、本発明で用いるビニル系分散剤(A)には、これまで例示した以外の種々のエチレン性不飽和単量体も分散性を妨げない範囲で共重合させることが可能であり、例えば、イソシアナト基、ブロックイソシアナト基、アルコキシシリル基、3〜5員環の環状エーテル基などの熱架橋性基を有するエチレン性不飽和単量体や、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体が挙げられる。但し、カルボキシル基を有する単量体、例えばメタクリル酸やアクリル酸は、製造方法1〜3のどの方法においてもビニル系分散剤(A)に存在するトリカルボン酸無水物(M3)又はテトラカルボン酸無水物(M4)のモル数の0〜4倍、更には0〜2倍の使用範囲であることが分散性の観点(低粘度化、保存安定性)から好ましい。
【0203】
列挙した前記出発材料から適宜選択した出発材料を用いることによって、本発明で用いる前記製造方法により、前記ビニル系分散剤(a)を調製することができる。
【0204】
前記ビニル系分散剤(A)〔又は、特に前記ビニル系分散剤(a)〕と顔料(P)を用いて、本発明の着色樹脂組成物が得られる。ここで、ビニル系分散剤(A)〔又は、特に前記ビニル系分散剤(a)〕を使用することにより分散性、流動性、及び保存安定性に優れた着色樹脂組成物となる。
【0205】
本発明の着色樹脂組成物は、さらに、熱反応性化合物を含有することが好ましい。本発明のインク組成物に用いることのできる前記熱反応性化合物は、常温下では非反応性であるが、例えば、100℃以上(好ましくは150℃以上)の温度で、架橋反応、重合反応、重縮合反応、又は重付加反応を示す化合物である。本発明のインク組成物に用いることのできる前記熱反応性化合物の分子量は、特に限定されるものではないが、好ましくは50〜2000、より好ましくは100〜1000である。
【0206】
前記熱反応性化合物としては、例えば、メラミン化合物、ベンゾグアナミン化合物、エポキシ化合物、フェノール化合物、ブロック化イソシアネート化合物、アクリレート系モノマー、又はシランカップリング剤を用いることができる。
【0207】
メラミン化合物としては、例えば、イミノ基、メチロール基、及び/又はアルコキシメチル基を有するものが挙げられ、特にアルコキシメチル基のみを含有するメラミン化合物が好ましい。アルコキシアルキル基含有メラミン化合物の具体例としては、ヘキサメトキシメチロールメラミン、又はヘキサブトキシメチロールメラミン等を挙げることができる。
【0208】
メラミン化合物の市販品の具体例としては、以下のものを挙げることができる。但し、必ずしもこれらに限定されるものではない。三和ケミカル社製ニカラックMW−30M、MW−30、MW−22、MS−21、MX−45、MX−500、MX−520、MX−43、MX−302、日本サイテックスインダストリー社製サイメル300、301、303、350、285、232、235、236、238、マイコート506、508。
【0209】
ベンゾグアナミン化合物としては、例えば、イミノ基、メチロール基、アルコキシメチル基を有するものが挙げられ、特にアルコキシアルキル基含有ベンゾグアナミン化合物が好ましい。ベンゾグアナミン化合物の市販品の具体例としては、三和ケミカル社製ニカラックBX−4000、SB−401、日本サイテックスインダストリー社製サイメル1123などを挙げることができる。
【0210】
エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスクレゾールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ジグリシジルテレフタレート、ジグリシジルo−フタレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、及びポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等のポリオールのグリシジルエーテル、ポリグリシジルイソシアヌレート等を挙げることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0211】
フェノール化合物としては、例えば、フェノール類とアルデヒド類を酸性触媒下で反応させたノボラック型フェノール化合物、塩基性触媒下で反応させたレゾール型フェノール化合物どちらも用いることができる。フェノール類としては、例えば、オルトクレゾール、パラクレゾール、パラフェニルフェノール、パラノニルフェノール、2,3−キシレノール、フェノール、メタクレゾール、3,5−キシレノール、レゾルシノール、カテコール、ハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールB、ビスフェノールE、ビスフェノールH、ビスフェノールS等を挙げることができる。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドを挙げることができる。フェノール類とアルデヒド類は、それぞれ1種を単独で、又は2種以上を混合して用いられる。
【0212】
ブロック化イソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トルイジンイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート、これらジイソシアネートのイソシアヌレート体、トリメチロールプロパンアダクト型、ビウレット型、イソシアネート残基を有するプレポリマー(ジイソシアネートとポリオールから得られる低重合体)及びイソシアネート残基を有するウレトジオン等を挙げることができる。
【0213】
ブロック化イソシアネート化合物に用いられるブロック剤としては、例えば、フェノール(解離温度180℃以上)、ε−カプロラクタム(解離温度160〜180℃)、オキシム(解離温度130〜160℃)、又は活性メチレン(100〜120℃)等を挙げることができる。また、1種を単独で、あるいは2種以上を併用して用いられる。
【0214】
アクリレートモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、エステルアクリレート、メチロール化メラミンの(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート等の各種アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、アクリロニトリル等を挙げることができる。
【0215】
アクリレートモノマーを用いる場合には、更に硬化性を向上させる目的で、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、加熱時に硬化性を向上させる目的で熱重合開始剤を用いてもよい。熱重合開始剤としては、有機過酸化物系開始剤、アゾ系開始剤等を挙げることができる。
【0216】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン類;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリルシラン類;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン類;N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジエトキシシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン類;及びγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のチオシラン類等を挙げることができる。
本発明においては、特にアルコキシアルキル化メラミン及びアルコキシアルキル基含有ベンゾグアナミン化合物が好ましい。
これらの熱反応性化合物は着色樹脂組成物中に1重量%〜40重量%の量で含有されていることが好ましい。これらの熱反応性化合物の含有量が1重量%以上だと、耐熱性及び耐薬品性に優れる。また、含有量が40%以下だと、粘度の増加がなく、保存安定性に優れる。
【0217】
また、着色樹脂組成物には、顔料、顔料誘導体、及び樹脂との吸着を促進すること、また、組成物の低粘度化を目的に、有機溶剤を含有することができる。有機溶剤としては、例えば、芳香族炭化水素類、アルコール類、エステル類、エーテル類、ケトン類、グリコールエーテル類、脂環式炭化水素類、脂肪族炭化水素類等を用いることができる。
本発明の着色樹脂組成物において、前記顔料の表面に顔料誘導体および樹脂担体の被覆層が形成されていることが好ましい。
【0218】
顔料の被覆処理は、前記顔料、前記有機溶剤、前記顔料誘導体、及び前記樹脂担体等が均一になるように予め混合してから、分散機を用いて混練することにより行うことができる。溶剤の配合量は、混合物の機械特性に応じて調節することが好ましい。顔料の被覆処理に用いる分散機としては、ニーダー、ロールミル、ボールミル、バンバリーミキサー、ローラーミル、石臼式ミル等が挙げられるが、2本ロールミルは一つの装置で混合及び混練ができるので好ましい。
【0219】
顔料を被覆処理する際の原料の配合量は、顔料100重量部に対して、顔料誘導体1〜30重量部、前記樹脂型分散剤及び前記バインダー樹脂(以下、樹脂成分)20〜200重量部、及び溶剤4〜200重量部の範囲であることが好ましい。顔料誘導体の配合量が1重量部未満の場合は、アンカー効果が少ないためインクを低粘度化させる効果が小さく、30重量部を越える場合は、顔料誘導体が過剰となり未吸着の顔料誘導体同士が凝集するためインクが増粘する。また、樹脂成分の配合量が20重量部未満の場合は、充分に顔料表面を被覆できず、顔料の分散安定性が低くなり、200重量部を越える場合は、顔料に吸着しない遊離の樹脂成分によりインクの粘度が上昇する。また、溶剤の配合量が4重量部未満の場合は、顔料誘導体及び樹脂成分の顔料に対する初期の塗れが不充分で充分に顔料を被覆しないため、インクの粘度が安定しないことがあり、200重量部を越える場合は、顔料の被覆処理が困難となる。
【0220】
顔料の被覆処理は、具体的には、下記の2段階の工程により行われる。第1工程は、顔料、樹脂成分、及び溶剤等を含む組成物を20回程度2本ロールに通すことにより顔料への樹脂成分の濡れと吸着を進行させるチップ化工程である。この工程で、配合した溶剤のうち約80重量%程度が揮発する。第2工程は、チップ化により前記樹脂成分が顔料に吸着した混練物の加熱、混練を続けて顔料粒子表面に被覆層を形成する被覆処理工程である。混練物の粘度が高く、機械上、混練できない場合は、適量の溶剤を追加し、混練を助ける。
【0221】
樹脂成分が架橋可能な官能基を有する場合には、被覆処理工程で樹脂成分の架橋が生じ、一部に樹脂切断も見られる。この反応は、過度な機械的な加圧と磨砕、更には加熱の結果によるものでメカノケミカルな反応であり、顔料と樹脂成分のみでは樹脂成分の架橋反応は生じにくい。顔料と樹脂成分とを混練する際に顔料誘導体を用いることにより、顔料誘導体と樹脂成分とが顔料表面に強固に吸着し、更に加熱と加圧混練を行うことにより樹脂成分の架橋が生じると推定される。加熱温度は80℃〜120℃の範囲であることが好ましい。80℃未満の温度では樹脂成分が十分に架橋しない場合があり、120℃を越える温度では、樹脂成分の劣化が生じる場合がある。
【0222】
顔料表面に吸着しなかった余剰の樹脂成分は、インクの粘度等の物性に影響を及ぼす場合には、洗浄やろ過等により除去することが好ましい。また、被覆処理顔料は、乾燥しても凝集しない場合には、洗浄後に乾燥しても良いが、被覆処理時に用いた溶剤がインクジェットインクの液状媒体として使用可能な溶剤であればあえて乾燥する必要がない。
【0223】
本発明の着色樹脂組成物の製造は、前記顔料、前記熱反応性化合物、及び前記有機溶剤、並びに必要に応じて前記バインダー樹脂及び/又は顔料誘導体を通常の分散機に投入し、所望の平均粒子径・粒度分布になるまで分散することにより行うことができる。着色樹脂組成物の原料は、一括して混合・分散してもよいし、それぞれの原料の特性や経済性を考慮して別々に混合・分散してもよい。インク組成物の粘度が高過ぎ、希釈が必要な場合には、インク原液に希釈用の液状媒体を加えて均一に攪拌し、インク組成物を調製することもできる。
【0224】
分散機としては、サンドミル、ビーズミル、アジテータミル、ダイノミル、又はコボルミルなどが好適である。それぞれの分散機において、顔料分散に適切な粘度領域がある場合には、各種樹脂成分と顔料との比率を変えて粘度を調整することができる。インクジェット記録用インク組成物は、分散機で分散後に、粗大粒子や異物除去を目的にフィルターや遠心法により濾過することが好ましい。
【0225】
着色樹脂組成物を製造する際には、更に、界面活性剤型分散剤や、アントラキノン誘導体、及び/又はトリアジン誘導体を用いることができる。界面活性剤型顔料分散剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、又はステアリルアミンアセテート等を挙げることができる。
【0226】
上記の着色樹脂組成物を用いたインクジェットインキも本発明の一態様である。本発明のインクジェットインキにおいては、インクジェットの分野で技術常識として知られている有機溶剤を用いることができる。一般に、インクジェット記録用インク組成物に用いられる有機溶剤は、樹脂に対して高い溶解性を有するとともに、インクジェットプリンタからインキを吐出する際に、インキと接するプリンタ部材に対して膨潤作用が少なく、溶剤の粘度がなるべく低いものが好ましい。有機溶剤は、樹脂に対する溶解性、及びプリンタ部材に対する膨潤作用、粘度、及びノズルにおけるインクの乾燥性の点から選択され、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、エステル系溶剤、及び/又はケトン系溶剤等の1種類を単独で、又は2種類以上を混合して使用することができる。
【0227】
アルコール系溶剤としては、例えば、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、又はアミルアルコール等を挙げることができる。
【0228】
グリコール系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1−ブトキシエトキシプロパノール、又は1−メトキシ−2−プロピルアセテート等を挙げることができる。
【0229】
エステル系溶剤としては、例えば、乳酸エチル、乳酸プロパン、又は乳酸ブチル等を挙げることができる。ケトン系溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、エチルアミルケトン、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、イソホロン、メチルシクロヘキサノン、又はアセトフェノン等を挙げることができる。
【0230】
本発明のインクジェットインキには、上記の粘度条件を満たす範囲で、種々の添加剤を含有させることができる。例えば、インキの基板への濡れ性を制御するために、界面活性剤を含有させることができる。界面活性剤を選択する際には、その他のインク構成成分との相溶性を考慮する必要がある。界面活性剤には、アニオン性、カチオン性、両性、又は非イオン性のものがあり、好適なものを選択すればよい。
【0231】
本発明のインクジェットインキの粘度は、好ましくは2mPa・s以上40mPa・s以下であり、より好ましくは3mPa・s以上30mPa・s以下であり、更に好ましくは4mPa・s以上20mPa・s以下である。粘度が40mPa・s以下であると安定した連続して吐出が可能である。
【0232】
本発明のインクジェットインキの平均分散粒子径は、5nm以上200nm以下が好ましく、10nm以上150nm以下がより好ましい。平均分散粒子径が200nm以下だとヘッドが目詰まりを起こしにくく、安定した吐出が可能である。また平均分散粒子径が5nm以上になると、再凝集が起こりにくく、経時安定性に優れる。
【0233】
本発明のインクジェットインキの表面張力は、20mN/m以上40mN/m以下が好ましく、24mN/m以上35mN/m以下がより好ましい。表面張力が40mN/m以下だとヘッドから着色樹脂組成物を安定して吐出することができ、表面張力が20mN/m以上だと確実にインクが液滴を形成する。
【0234】
本発明のインクジェットインキは、高い顔料濃度でありながら低粘度であるため吐出安定性に優れ、顔料含有量が通常のインクジェットインキに比べ多いために吐出量を少なくすることができることから、カラーフィルター基板用をはじめ、高い印字濃度が望まれている印刷物の生産性及び品位を向上させることができる。特に、本発明の本発明の着色樹脂組成物および該着色樹脂組成物を用いたインクジェットインキは、高い生産性及び品位が求められるカラーフィルター基板の製造に好適である。
【0235】
また、本発明のインクジェットインキは、顔料が高濃度に分散されているので、インキが深さ方向に浸透する紙や横方向への濡れ広がるプラスティック、ガラス及び金属であっても、印字濃度を高くできる。更に、吐出量を抑えることができるので、受容層のインキ受容量を越えるためインキが流出して混色したり、ドット形状が真円とならなかったことも回避することができるので、従来のインクジェット印刷では制限された用途にも用いることができる。
【0236】
以下に第2の実施態様について説明する。本発明のインクジェット用インキは、膜厚15〜25μmで印刷基材上に塗工した後に、昇温速度5℃/分で昇温する間の剛体振り子試験による粘弾性測定において、昇温範囲100〜170℃の全範囲における周期が0.6〜0.9秒であることを特徴とする。
【0237】
本発明で用いた剛体振り子試験は、剛体振り子粘弾性測定器(RPT−3000W型:AandD社)により行われた。当装置は、塗膜の乾燥時または、架橋時の粘性や架橋性を塗膜の状態で評価できるため、フィルム化できないサンプルの粘弾性挙動を把握することに適した測定装置である。
【0238】
特開2005−325155中にも詳細な測定条件が記載されている通り、測定条件により結果は著しく異なる場合がある。ここに、特開2005−325155を本明細書に全体的に参照として組み込むものとする。測定条件は一定で行われるべきであり、本発明では、ナイフエッジのRBE−160を塗膜と接触するエッジとして用い、振り子はFRB−100タイプを用い、全ての測定を行った。これらの測定部品は、本測定において標準的なものであり、容易に入手可能である。
【0239】
また、塗膜との接触量も測定に影響を与える。このため本発明での塗膜の塗工量は、バーコーターNo.15〜20を用い、膜厚15〜25μmに塗工し、未乾燥の状態で振り子を乗せ、そのまま測定した。なお、膜厚は20μmであることが好ましい。測定の精度を高めるからである。昇温条件は、室温から昇温速度5℃/分で行った。
また、測定を行う場合に用いる基材としては、インキの性質を直接測定するために、非浸透性の基材を用いることが好ましい。特に、耐熱性の点からガラスや、金属板への塗工が好ましい。特に、ガラスは表面が平滑で、任意の大きさのものを用意できるため好適に用いることができる。本発明では、ステージに寸法を合わせ加工したガラスにインキを塗工して測定を行った。
【0240】
測定は、インキが乾燥する温度を目安に温度設定を行った。通常、溶剤タイプのインクジェットインキの場合、ヘッドにおける乾燥を防ぐため、沸点が100℃以上、好ましくは130℃以上、用途によっては150℃以上の溶剤を用いる。このため、測定範囲として、100〜170℃を選択した。実際、インクジェットインキに使用される溶剤は低粘度であることと、印刷後の乾燥作業性の面から、沸点300℃以下、好ましくは沸点250℃以下の溶剤が選択され、これら溶剤は、本発明における剛体振り子試験の条件において100〜170℃の範囲内で乾燥する。測定後の結果から、100〜170℃の範囲における周期の値を読み取り、評価を行った。
【0241】
また、インキに用いられる原料の粘弾性測定も同様に行った。原料が常温で液体の場合、そのまま上記と同条件で塗工し、測定を行った。また原料が固体である場合、常温で揮発性の少ない溶剤としてカルビトールアセテートを用いて50重量%に溶解し、上記と同様の測定方法により測定を行った。ただし、顔料、染料または誘導体は、分散体として評価した。溶剤の選択方法は、これに限定するものではないが、公知のインクジェット用インキの固形分を溶解できる限り、いかなる溶剤でも使用できる。
【0242】
本発明で測定される周期は、測定対象の弾性的特性を示し、この周期の絶対値が小さいとき、力学的には、強いバネ常数を持つということと同等と考えられる。そのため、測定対象の弾性が強い、測定対象によっては架橋の程度が強いと理解され、変形しやすさの目安となる。
【0243】
本発明のインクジェット用インキでは、昇温範囲100〜170℃の全範囲における周期が0.6〜0.9秒である。この周期が0.6秒以上の場合、乾燥中の加熱による変形性が良好となり、平滑性に優れ、色ムラが改善される。また、周期が0.9秒以下の場合、インキに変形に対する適度な抵抗が発生するため、インキが過剰に流動してドットが必要以上に拡散することがなく、精細性に優れた印刷結果となる。
カラーフィルター用途に用いた場合、周期が0.6秒以上とした場合、乾燥時に十分な流動性が得られるため画素内の色ムラが改良される。また、周期が0.9秒以下の場合、乾燥時に発生するインキの対流を必要以上に発生させないため、表面形状が平滑になり、ディスプレイとして好適に用いることができる。また、この表面形状は、インキと基材との親和性の影響を受けるため、基材との接触角の影響も受ける場合がある。また、溶剤の乾燥速度も影響を与え、150℃以上の溶剤を用いると乾燥速度を緩めることができるため、より平滑な表面をえることができる。また、乾燥中の流動性を十分えるために、前述の固形分濃度40重量%以上60重量%以下におけるT.I.値が1〜3である場合、より好ましくは1〜2である場合さらに平滑性が向上し、良好な品質のディスプレイとして用いることができる。本発明は、乾燥温度付近における周期を制御することにより、ドットの流動性を制御することが可能とする。このような周期やドットの流動性の制御によって提供できる平滑性に優れかつ精細性も良好な印刷物も本発明の態様である。また、昇温範囲100〜170℃の全範囲における周期を0.6〜0.9秒に制御することを特徴とするインクジェット用インキの製造方法も本発明の態様である。
【0244】
本発明のインクジェット用インキをおよび印刷物は、印刷物の平滑性と精細性を両立させるために、乾燥時または乾燥中のインキの粘弾性を制御することで、吐出後、一旦基材上でセッティングされたインキが、乾燥工程における溶剤の揮発のために流動性が無くなると同時に、顔料分散体や樹脂、添加剤などの原料の加温により流動性が向上するという、乾燥工程における相反する現象における粘弾性を制御していることを特徴とする。
上記測定条件は、本発明のインキをインクジェット装置で印刷を行ったのち、乾燥させる工程における温度を限定するものではないが、カラーフィルター用途としてガラス基材に印刷し、乾燥させる場合においては、80〜190℃で溶剤を乾燥させる工程を有することが好ましい。
【0245】
この乾燥工程の粘性と弾性の制御は、最終的に昇温範囲100〜170℃の全範囲における周期が0.6〜0.9秒となる限り、いかなる手法を用いても良い。特に、インキ組成中の原料の選別、分散手法の選別によるレオロジーの制御、またインキ濡れ性の制御が好ましい。
【0246】
インキ組成中の原料の選別では、常温で固体又は液体の原料について上記の剛体振り子試験を行った場合において、昇温範囲100〜170℃の全範囲における周期が0.6〜0.9秒であれば本発明の原料として使用できる。例えば、バインダー樹脂やフロー付与剤の添加である。
【0247】
インキ組成物中における前記原料は、0.1〜50重量%であることが好ましく、0.1〜30重量%であることがさらに好ましい。
【0248】
分散手法としては、分散時の滞留時間を制御することが好ましい。この手法は、インキの原料として用いられる顔料分散体の性質の制御も可能とする。例えば、滞留時間は使用されるベッセル容量やビーズ粒径や充填率など以下の式(1)により計算できる。
式(1)
滞留時間(分)=(ベッセル容量−ビーズ充填体積+ビーズ充填体×空隙率)×分散時間(分)/分散インキ量
本発明において、滞留時間は、5〜45分の範囲であることが好ましい。さらに好ましくは、10〜35分であれば、より流動性の好ましい分散を行うことができる。
【0249】
次に、インキの濡れ性も制御としては、インキの非浸透性基材上における接触角は、10〜30°であることが好ましい。本明細書では、接触角の測定に、協和界面化学社製のCA−X型接触角型を用いた。実際の測定では、インキをシリンジに詰め、スライドガラス(松浪硝子社製、S−2215型使用)上に滴下し、10秒後の接触角をθ/2法により算出した。
【0250】
接触角が10°以上のインキを用いると、吐出され、基材に着弾したドットは広がらず、精細性に優れる。また、30°を以下のインキでは、基材に対する濡れ性がよく、密着性や接着性に優れる。
【0251】
本発明のインクジェット用インキでは、接触角10°〜20°であることがさらに好ましい。インキの着弾後、極端に広がらず、かつ過熱時に必要に応じて広がる性質を有するためであり、かつ、精細性の優れる印刷を行うことができるからである。
【0252】
本発明において配合される有機溶剤は、インクジェットインキ中に50〜85重量%であることが好ましい。50重量%以上だと、インクジェット装置で印刷するための粘度が適切となり、インキを必要以上に高温に加熱する必要がないため好ましい。また、85重量%以下だと、印刷時間の短縮効果に加え、カラーフィルター用途として用いる場合は、必要な色度を得るために、少ない液滴量で印刷することでブラックマトリックスからのインキ漏れによる混色を防止することができる。
【0253】
有機溶剤の沸点は、130℃以上であることが好ましい。これは、印刷時のシステムの条件と関連する。溶剤の沸点が130℃以上だと、インキの乾燥によるノズルつまりを低減できるため、高い生産性が得られる。また、カラーフィルター用途のように、高い着弾精度を要求される場合は、有機溶剤の沸点は170℃〜250℃である場合、乾燥によるノズルつまりや、着弾精度が改善される点から好ましい。
【0254】
本発明で使用できる溶剤は前述の通りであるが、好適に用いることのできる溶剤として、沸点が130℃以上である、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルラクテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシブタノール、3−メトキシブタノールアセテート、1,3−ブチレングリコール、トリアセチン、3,5,5−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オン、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、などが上げられるがこれに限定されるものではない。
【0255】
また、その他併用可能な溶剤として、例えばシクロヘキサノン、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルベンゼン、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、メチル−n−アミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルケトン、石油系溶剤等が挙げられ、これらを混合して用いることができる。
【0256】
また、主要剤としてカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートであることが顔料の分散安定性の点から好ましい。
【0257】
さらに、これら沸点が130℃〜300℃である有機溶剤は、全溶剤中50重量%以上であることが好ましく、印刷の安定性を考慮すると75重量%以上であることがさらに好ましく、95重量%以上であることが特に好ましい。50重量%未満である場合、所望の乾燥性が制御できなくなるためである。
【0258】
本発明のインクジェット用インキは、前述の熱反応性化合物を用いることができる。本発明におけるインキ中には着色剤として、前述の顔料並びに顔料誘導体を用いることができる。また、本発明の実施形態1で記載されている着色樹脂組成物を用いることもできる。
【0259】
また、本発明において樹脂を含有することができる。樹脂は、ソルトミリングなどの加工時、または、顔料の表面処理原料として用いることができる。また、顔料分散の際に分散樹脂としても使用することができる。
【0260】
また分散を行う場合の分散方法は、サンドミル,ホモジナイザー,ボールミル,ペイントシェーカー,超音波分散など、本発明を満たすために自由に選択することができる。上記に記載した分散時の原料や、分散方法は、インキの粘弾性に影響を大きく与えるため、充分な選定が必要である。またインキ中に界面活性剤、ハレーション防止剤、帯電防止剤、レベリング剤、消泡剤などの添加剤を適宜混合して使用することも可能である。
【0261】
さらに、バインダーとして樹脂を添加してもよい。樹脂を添加することにより、そのTgや分子量、骨格により乾燥時の流動性をコントロールすることができる。その他、単官能又は多官能モノマー、オリゴマー、プレポリマーなどの不飽和結合を有する原料や、オイル、レベリング剤などを適宜含有することができる。
【0262】
とくにカラーフィルター用として用いる場合、各種耐性を付与させるため、例えば、エポキシ系モノマー、オキセタン環を有するモノマーなどを用いることができる。これらにより活性エネルギー線による架橋も可能となる。また、紫外線などのエネルギー線を用いる場合は、その反応に準じた開始剤も用いることができる。本発明のインクジェット用インキにおいて、最終的に昇温範囲100〜170℃の全範囲において周期0.6〜0.9秒になりさえすれば、これらを1種類またはそれ以上の種類を単独または混合して用いてよい。
【0263】
本発明で用いる印刷基材は限定しないが、発明の効果大きく発現させるためには、特に非浸透性基材であることが好ましい。中でも加熱による乾燥工程を経る場合、ポリカーボネートやポリメチルメタクリレート(PMMA)、ノルボルネン系樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の比較的Tgが高く、透明性の高い基材を選択することが好ましい。またドットが広がりやすいガラスに対しては表面処理の有無によらず、精細な印刷をすることが可能となるため、より好適に用いることができる。
【0264】
本発明のインクジェット用インキは、インクジェット吐出装置によりインキ設定温度25〜70℃で吐出できることが好ましい。インクジェット吐出装置は公知のものを選択してよい。インクジェット吐出装置により設定されるインキ温度とは、インクジェットヘッド周辺の温度を調整するための設定温度をいう。インクジェットヘッド周辺を加熱することによりインクジェット用インキの温度を調整するからである。
【0265】
ヘッドの加熱の方法は循環式恒温水槽や、バンドヒーターなどによる加熱が一般的であるが、これに限定されない。本発明でインクジェットインキを加熱する場合は、吐出中、または吐出後ドットの温度が下がるために粘性が上昇することにより、ドットが不必要に流動せず、所望の位置にセッティングすることも期待できる。その他インキの粘度を低下させて、インキの粘度を吐出の最適値に調整する、もしくは温度を室温より高めに設定することにより、環境の寒暖によらない安定した吐出を期待することもできる。本発明においてインキを加熱して吐出する理由はこれらに限定されない。
【0266】
本発明のインクジェット用インキでは、室温付近においても十分な効果を得ることができるが、25℃〜70℃程度に加温する場合、前記の効果を期待できるため好ましい。70℃より高い場合、ヘッド周辺の接着剤などの部品が溶解するおそれがあり、多くの場合使用できない。また、インキの設計にもよるが、70℃より高い温度で印刷する場合のインキを設計するためには、ヘッドでの乾燥による詰まりを回避するために、顕著に蒸気圧の低いインキ設計をしなければならず、よって、乾燥工程をきわめて高温にしなければならない結果、耐熱性や、インキ安定性の点から使用できる、基材や、インキ原料が極めて限定されるため、実用が難しい。また、吐出装置の温度は、インキの安定性から、25℃〜50℃であるとさらに好ましい。
【0267】
本発明のインクジェット用インキは、カラーフィルター用途に用いることが好ましい。特に、ブラックマトリックス内の空隙をインクジェット法によりカラーフィルターを形成するために用いることが好ましい。
【0268】
インクジェット法とは、ブラックマトリックスが形成された基板のブラックマトリックスで区分けされた領域内に、インクジェット吐出装置によりインクジェット用インクを吐出することにより形成する方法をいう。
【0269】
なお、ブラックマトリックスは、例えば、ラジカル重合型のブラックレジストを塗布し、露光、そして現像してパターニングするフォトリソグラフィー法、黒色インクを印刷する印刷法、又は金属を蒸着したのちエッチングする蒸着法等により基板上に形成することができる。
【実施例】
【0270】
以下、実施例によって第1の実施態様を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。以下の実施例及び比較例中、部及び%は、重量部及び重量%を表す。
【0271】
実施例及び比較例で用いた顔料、顔料誘導体、溶剤及び樹脂型分散剤を以下に示す。また、実施例及び比較例における最終的なインキ組成を表2(実施例)及び表3(比較例)に示す。
(1)顔料
レッド顔料:C.I. Pigment Red 254(チバスペシャルティケミカルズ社製「イルガフォー RED B−CF」)
グリーン顔料:C.I. Pigment Green 36(東洋インキ製造社製「リオノールグリーン6YK」)
ブルー顔料:C.I. Pigment Blue 15:6(東洋インキ製造社製「リオノールブルーE」)
エロー顔料:C.I. Pigment Yellow 138(東洋インキ製造社製「リオノゲン エロー 1010」
マゼンタ顔料:C.I. Pigment Red 122(東洋インキ製造社製「リオノゲン マゼンタ 5750」)
シアン顔料:C.I. Pigment Blue 15:3(東洋インキ製造社製「リオノール ブルー FG−7351」)
(2)顔料誘導体:
顔料誘導体[1]
(レッド用)
【0272】
【化32】

【0273】
顔料誘導体[2]
(グリーン用、ブルー用、シアン用)
【0274】
【化33】

【0275】
顔料誘導体[3]
(イエロー用)
【0276】
【化34】

【0277】
顔料誘導体[4]
(マゼンタ用)
【0278】
【化35】

【0279】
(3)溶剤
CBAc:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート
BuCBAc:ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート
PGMAc:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
(4)樹脂
樹脂の製造例を以下に示す。製造例に示す各種樹脂の重量平均分子量、数平均分子量は、GPCを用いて測定し、ポリスチレン換算で求めた。
【0280】
≪製造例1(樹脂R1)≫
セパラブル4口フラスコに温度制御用レギュレーター、冷却管、及び攪拌装置を取り付けて、溶剤(CBAc)100部を仕込み、100℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下管より下記の原料を添加し、5時間反応を継続し、表1に示す重量平均分子量(Mw)のアクリル樹脂の溶液(固形分50%)を得た。こうして得られた樹脂溶液を、バインダー樹脂〔R1〕として用いた。
(樹脂R1の原料)
メタクリル酸 20部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 20部
n−ブチルメタクリレート 27部
ベンジルメタクリレート 30部
「ホスマーM(ユニケミカル株式会社製)」 3部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 10部
【0281】
≪製造例2(樹脂R2)≫
R1で原料を下記に変更する以外は同様の方法により製造した。
(樹脂R2の原料)
メタクリル酸 20部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 20部
n−ブチルメタクリレート 27部
ベンジルメタクリレート 30部
「ホスマーM(ユニケミカル株式会社製)」 3部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 4部
【0282】
≪製造例3(樹脂R3)≫
セパラブル4口フラスコに温度制御用レギュレーター、冷却管、及び攪拌装置を取り付けて、溶剤(CBAc)150部を仕込み、110℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下管より下記の原料を添加し、5時間反応を継続し、表1に示す重量平均分子量(Mw)のアクリル樹脂の溶液(固形分40%)を得た。こうして得られた樹脂溶液を、バインダー樹脂〔R3〕として用いた。
(樹脂R3の原料)
メタクリル酸 20部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 20部
n−ブチルメタクリレート 27部
ベンジルメタクリレート 30部
「ホスマーM(ユニケミカル株式会社製)」 3部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 20部
【0283】
≪製造例4(樹脂S1)≫
ガス導入管、温度計、コンデンサー、及び攪拌機を備えた反応容器に、1−ドデカノール62.6部、ε−カプロラクトン287.4部、触媒としてモノブチルスズ(IV)オキシド0.1部を仕込み、窒素ガスで置換した後、120℃で4時間加熱、撹拌した。固形分測定により98%が反応したことを確認したのち、無水ピロメリット酸36.6部を加え、120℃で2時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し反応を終了し分散剤(S1)を得た。得られた分散剤は常温で淡黄色ワックス状固体であり、重量平均分子量(Mw)は4000、酸価は49mgKOH/gであった。
【0284】
≪製造例5(樹脂S2)≫
ガス導入管、温度計、コンデンサー、及び攪拌機を備えた反応容器に、1−ドデカノール13.7部、ε−カプロラクトン336.3部、触媒としてモノブチルスズ(IV)オキシド0.1部を仕込み、窒素ガスで置換した後、120℃で4時間加熱、撹拌した。固形分測定により98%が反応したことを確認したのち、無水ピロメリット酸8.0部を加え、120℃で2時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し反応を終了し分散剤(S1)を得た。得られた分散剤は常温で淡黄色ワックス状固体であり、重量平均分子量(Mw)は14400、酸価は12mgKOH/gであった。
【0285】
≪製造例6(樹脂S3)≫
ガス導入管、温度計、コンデンサー、及び攪拌機を備えた反応容器に、1−ドデカノール123.4部、ε−カプロラクトン226.6部、触媒としてモノブチルスズ(IV)オキシド0.1部を仕込み、窒素ガスで置換した後、120℃で4時間加熱、撹拌した。固形分測定により98%が反応したことを確認したのち、無水ピロメリット酸72.2部を加え、120℃で2時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し反応を終了し分散剤(S1)を得た。得られた分散剤は常温で淡黄色ワックス状固体であり、重量平均分子量(Mw)は1850、酸価は90mgKOH/gであった。
【0286】
≪製造例7(樹脂A1)≫
工程(C)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、及び攪拌機を備え付けた反応容器に、溶剤(PGMAc)を60部仕込み、110℃に昇温し反応容器内を窒素置換した後、下記の原料を予め均一に混合した混合液を滴下管より2時間かけて添加し、その後3時間、同じ温度で攪拌を続け反応を終了した(製造例1の工程C)。このようにして、数平均分子量(Mn)3800、重量平均分子量(Mw)6900、一分子中の水酸基の平均個数3.5個のビニル系樹脂中間体(C1)を得た。
(ビニル系樹脂中間体C1の原料)
n−ブチルメタクリレート 40部
ベンジルメタクリレート 48部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 12部
メトキシプロピルアセテート 40部
ジメチル−2,2’−アゾビスジイソブチレート 6部
工程(D)
ガス導入管、温度計、コンデンサー及び攪拌機を備え付けた反応容器にビニル系樹脂中間体(C1)を固形分で100部、無水トリメリット酸を5.1部、及びジメチルベンジルアミンを0.1部仕込み、100℃で6時間反応させた(製造例1の工程D)。このようにして、一分子あたりのトリメリット酸の平均個数(すなわち、カルボキシル基含有単位(G)の平均個数)が1.0個である樹脂型分散剤(A1)を得た。樹脂型分散剤(A1)中の固形分比率は50%であった。
【0287】
≪製造例8(樹脂型分散剤A2)≫
工程(C)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、及び攪拌機を備え付けた反応容器に、溶剤(PGMAc)を60部仕込み、110℃に昇温し反応容器内を窒素置換した後、下記の原料を予め均一に混合した混合液を滴下管より2時間かけて添加し、その後3時間、同じ温度で攪拌を続け反応を終了した(製造例1の工程C)。このようにして、数平均分子量(Mn)7000、重量平均分子量(Mw)13800、一分子中の水酸基の平均個数3.5個のビニル系樹脂中間体(C2)を得た。
(ビニル系樹脂中間体C2の原料)
n−ブチルメタクリレート 40部
ベンジルメタクリレート 48部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 12部
PGMAc 40部
ジメチル−2,2’−アゾビスジイソブチレート 3部
工程(D)
ガス導入管、温度計、コンデンサー及び攪拌機を備え付けた反応容器にビニル系樹脂中間体(C1)を固形分で100部、無水トリメリット酸を2.8部、及びジメチルベンジルアミンを0.1部仕込み、100℃で6時間反応させた(製造例1の工程D)。このようにして、一分子あたりのトリメリット酸の平均個数(すなわち、カルボキシル基含有単位(G)の平均個数)が1.0個である樹脂型分散剤(A2)を得た。樹脂型分散剤(A2)中の固形分比率は50%であった。
(5)メラミン樹脂
三和ケミカル社製アルコキシアルキル基含有メラミン樹脂 ニカラックMX−43
(6)ベンゾグアナミン樹脂
三和ケミカル社製アルコキシアルキル基含有ベンゾグアナミン樹脂 ニカラックSB−401
【0288】
《実施例1》
レッド顔料90部、顔料誘導体[1]10部、樹脂(R1)133部を加え、均一に攪拌し混合物を得た。60℃に加温した2本ロールに混合物を入れて、溶剤が揮発するまで練肉した後、混練物を取り出した。混練物を室温まで冷却してから粗粉砕し、溶剤(PGMAc)50部を加え、2本ロールを80℃に加熱して、さらに混練を行なった。溶剤は揮発し、加熱混練物はゴム状となった。混練物をシート状とし室温まで冷却してから粗粉砕し、被覆処理顔料167部を得た。被覆処理顔料167部と溶剤(CBAc)476部をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて4時間分散を行い、更にメラミン樹脂(MX−43)40部、及び溶剤(CBAc)66部をミキサーに入れて混合した。最後にメンブランフィルターで加圧濾過し、顔料濃度(PC)13%、固形分濃度28%のインクジェット記録用インク組成物を得た。
【0289】
《実施例2》
レッド顔料90部、顔料誘導体[1]10部、樹脂(R2)100部、樹脂(S1)33部を加え、均一に攪拌し混合物を得た。60℃に加温した2本ロールに混合物を入れて、溶剤が揮発するまで練肉した後、混練物を取り出した。混練物を室温まで冷却してから粗粉砕し、溶剤(PGMAc)50部を加え、2本ロールを80℃に加熱して、さらに混練を行った。溶剤は揮発し、加熱混練物はゴム状となった。混練物をシート状とし室温まで冷却してから粗粉砕し、被覆処理顔料167部を得た。被覆処理顔料167部と溶剤(CBAc)476部をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて4時間分散を行い、更にメラミン樹脂(MX−43)40部、及び溶剤(CBAc)66部をミキサーに入れて混合した。最後にメンブランフィルターで加圧濾過し、顔料濃度(PC)13%、固形分濃度28%のインクジェット記録用インク組成物を得た。
【0290】
《実施例3》
実施例2で樹脂(R2)100部の代わりに樹脂(R1)100部を用いること以外は同様にして、顔料濃度13%、固形分濃度28%のインクジェットインキを得た。
《実施例4》
レッド顔料90部、顔料誘導体[1]10部、樹脂(A1)100部、樹脂(S1)33部及び溶剤(CBAc)410部をサンドミルに入れて4時間分散を行い、更にメラミン樹脂(MX−43)40部、及び溶剤(CBAc)86部をミキサーに入れて混合し、メンブランフィルターで加圧濾過し、顔料濃度(PC)13%、固形分濃度28%のインクジェット記録用インク組成物を得た。
《実施例5》
実施例2で樹脂(R2)100部の代わりに樹脂(A1)100部を用い、更にメラミン樹脂(MX−43)40部の代わりにベンゾグアナミン樹脂(ニカラックSB−401)40部を用いること以外同様にして、顔料濃度13%、固形分濃度28%のインクジェットインキを得た。
【0291】
《比較例1》
実施例1で樹脂(R1)133部の代わりに樹脂(R2)133部を用いること以外は同様にして、顔料濃度13%、固形分濃度28%のインクジェットインキを得た。
《比較例2》
レッド顔料90部、顔料誘導体[1]10部、樹脂(R2)120部、樹脂(S1)13部を加え、均一に攪拌し混合物を得た。60℃に加温した2本ロールに混合物を入れて、溶剤が揮発するまで練肉した後、混練物を取り出した。混練物を室温まで冷却してから粗粉砕し、溶剤(PGMAc)50部を加え、2本ロールを80℃に加熱して、さらに混練を行なった。溶剤は揮発し、加熱混練物はゴム状となった。混練物をシート状とし室温まで冷却してから粗粉砕し、被覆処理顔料167部を得た。被覆処理顔料167部と溶剤(CBAc)476部をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて4時間分散を行い、更にメラミン樹脂(MX−43)40部、及び溶剤(CBAc)66部をミキサーに入れて混合した。最後にメンブランフィルターで加圧濾過し、顔料濃度(PC)13%、固形分濃度28%のインクジェット記録用インク組成物を得た。
【0292】
《比較例3》
実施例1で樹脂(R1)133部の代わりに樹脂(R3)133部を用いること以外は同様にして、顔料濃度13%、固形分濃度28%のインクジェットインキを得た。
《比較例4》
実施例2で樹脂(S1)33部の代わりに樹脂(S2)33部を用いること以外は同様にして、顔料濃度13%、固形分濃度28%のインクジェットインキを得た。
《比較例5》
実施例2で樹脂(S1)33部の代わりに樹脂(S3)33部を用いること以外は同様にして、顔料濃度13%、固形分濃度28%のインクジェットインキを得た。
【0293】
《実施例6》
実施例1で樹脂(R1)133部の代わりに樹脂(A1)133部を用いること以外は同様にして、顔料濃度13%、固形分濃度28%のインクジェットインキを得た。
《実施例7》
実施例2で樹脂(R2)100部の代わりに樹脂(A1)100部を用いること以外は同様にして、顔料濃度13%、固形分濃度28%のインクジェットインキを得た。
【0294】
《比較例6》
実施例1で樹脂(R1)133部の代わりに樹脂(A2)133部を用いること以外は同様にして、顔料濃度13%、固形分濃度28%のインクジェットインキを得た。
《実施例8》
グリーン顔料90部、顔料誘導体[2]
10部、及び樹脂(A1)75部、樹脂(S1)25部を加え、均一に攪拌し混合物を得た。60℃に加温した2本ロールに混合物を入れて、溶剤が揮発するまで練肉した後、混練物を取り出した。混練物を室温まで冷却してから粗粉砕し、溶剤(PGMAc)50部を加え、2本ロールを80℃に加熱して、さらに混練を行なった。溶剤は揮発し、加熱混練物はゴム状となった。混練物をシート状とし室温まで冷却してから粗粉砕し、被覆処理顔料を得た。被覆処理顔料150部と溶剤(CBAc)250部をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて4時間分散を行い、更にメラミン樹脂(MX−43)40部、及び溶剤(CBAc)66部をミキサーに入れて混合した。最後にメンブランフィルターで加圧濾過し、顔料濃度(PC)16.7%、固形分濃度32%のインクジェット記録用インク組成物を得た。
【0295】
《比較例7》
実施例8で樹脂(A1)75部を樹脂(A2)75部に代え、更に樹脂(S1)25部を樹脂(S2)25部に代えて分散すること以外は同様にして、顔料濃度16.7%、固形分濃度32%のインクジェットインキを得た。
《実施例9》
エロー顔料90部、顔料誘導体[3]10部、及び樹脂(A1)100部、樹脂(S1)33部を加え、均一に攪拌し混合物を得た。60℃に加温した2本ロールに混合物を入れて、溶剤が揮発するまで練肉した後、混練物を取り出した。混練物を室温まで冷却してから粗粉砕し、溶剤(PGMAc)50部を加え、2本ロールを80℃に加熱して、さらに混練を行なった。溶剤は揮発し、加熱混練物はゴム状となった。混練物をシート状とし室温まで冷却してから粗粉砕し、被覆処理顔料167部を得た。被覆処理顔料167部と溶剤(CBAc)267部をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて4時間分散を行い、更にメラミン樹脂(MX−43)40部、及び溶剤(CBAc)53部をミキサーに入れて混合した。最後にメンブランフィルターで加圧濾過し、顔料濃度(PC)15.4%、固形分濃度32%のインクジェット記録用インク組成物を得た。
【0296】
《比較例8》
実施例9で樹脂(A1)100部を樹脂(A2)100部に代え、更に樹脂(S1)33部を樹脂(S2)33部に代えて分散すること以外は同様にして、顔料濃度15.4%、固形分濃度32%のインクジェットインキを得た。
《実施例10》
ブルー顔料90部、顔料誘導体[4]10部、及び樹脂(A1)100部、樹脂(S1)33部を加え、均一に攪拌し混合物を得た。60℃に加温した2本ロールに混合物を入れて、溶剤が揮発するまで練肉した後、混練物を取り出した。混練物を室温まで冷却してから粗粉砕し、溶剤(PGMAc)50部を加え、2本ロールを80℃に加熱して、さらに混練を行なった。溶剤は揮発し、加熱混練物はゴム状となった。混練物をシート状とし室温まで冷却してから粗粉砕し、被覆処理顔料167部を得た。被覆処理顔料167部と溶剤(CBAc)552部をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて4時間分散を行い、更にメラミン樹脂(MX−43)40部、及び溶剤(CBAc)60部をミキサーに入れて混合した。最後にメンブランフィルターで加圧濾過し、顔料濃度(PC)12%、固形分濃度25%のインクジェット記録用インク組成物を得た。
《比較例9》
実施例10で樹脂(A1)100部を樹脂(A2)100部に代え、更に樹脂(S1)33部を樹脂(S2)33部に代えて分散すること以外は同様にして、顔料濃度12%、固形分濃度25%のインクジェットインキを得た。
《高固形分インキの作成》
実施例1〜10、比較例1〜9で作成したインキをプラスチックカップに10gとり、そのインキの入ったカップを50℃のオーブンに約12時間入れて乾燥させた。このように乾燥させることで固形分濃度を約43%に調整した高固形分インキを作成した。
《物性評価》
実施例1〜10及び比較例1〜9で得られたインキの粘度及び流動性を下記の方法で評価した。また、実施例1〜10及び比較例1〜9で得られたインキ乾燥時の表面平滑性を下記の方法で評価した。結果を表4及び表5に示す。
[粘度]
動的粘弾性測定装置により、25℃、ずり速度100(1/s)の粘度(η:mPa・s)を測定した。
[流動性]
動的粘弾性測定装置により、25℃、ずり速度1(1/s)〜2000(1/s)の範囲で粘度を測定し、T.I.値(ずり速度10(1/s)の粘度(ηa:mPa・s)とずり速度1000(1/s)の粘度(ηb:mPa・s)との比とする。T.I.値=ηa/ηb)を求めた。
[インキ乾燥時の表面平滑性]
ガラス板上にインキを滴下させ、滴下1分後にそのガラス板を90℃に暖めたホットプレート上に乗せた。5分後、非接触3次元表面形状測定機を用いて乾燥したインキ表面の粗さ(Ra)を観察した。
○:Ra<200nm
△:200nm≦Ra<300nm
×:300nm≦Ra
【0297】
【表1】

【0298】
【表2】

【0299】
注1:表2中の数値は、固形分を示す。
注2:表2中の数値は、生成されたインク組成物中での含有量を示す。
【0300】
【表3】

【0301】
注1:表3中の数値は、固形分を示す。
注2:表3中の数値は、生成されたインク組成物中での含有量を示す。
【0302】
【表4】

【0303】
【表5】

【0304】
実施例1〜10のインキによると、本発明のインキを乾燥させた際の表面平滑性は顕著に優れていた。これに対して、本発明の範囲外である比較例1〜9のインキ、つまり、比較例1〜9はインキ粘度が本発明の範囲外であり、そのうち比較例1及び3〜9はT.I.値が本発明の値を満たさない、によるといずれも表面平滑性が劣っていた。
【0305】
以下に、第2の実施態様による本発明を、実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、実施例および比較例中、「部」とは「重量部」を意味する。
<アクリル樹脂溶液Aの合成>
攪拌機、温度計、コンデンサー、窒素導入管を取り付けた1000mlフラスコにカルビトールアセテート150部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら90℃に加熱して、同温度でカルビトールアセテート100部、メチルメタクリレート75部、n−ブチルメタクリレート75部、スチレン75部、メタクリル酸45部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート30部、およびアゾビスイソブチロニトリル10の混合物を2時間かけて滴下し、更に90℃で4時間反応させアクリル樹脂溶液Aを合成した。このアクリル樹脂溶液Aを室温まで冷却し、不揮発分を50%になるようにカルビトールアセテートを用いて調整した。アクリル樹脂の重量平均分子量は10000であった。
<分散体の作製>
まず始めに下記のような配合で顔料分散体Aを作製した。この顔料分散体Aは有機溶剤中に顔料および分散剤を投入し、ハイスピードミキサー等で均一になるまで撹拌後、得られたミルベースを横型サンドミルにより滞留時間20分で作製した。
・リーガル400R(キャボット社製 カーボンブラック顔料) 40.0部
・Disperbyk130(BYK Chemie社製顔料分散剤) 13.0部
・乳酸エチル 47.0部
また、顔料分散体Aと同様の手法を用いて、下記の配合で、顔料分散体Bを作製した。
・LIONOL BLUE FG−7351(東洋インキ製造社製 銅フタロシアニン顔料
) 35.0部
・ソルスパーズ24000(アビシア社製 塩基性高分子分散剤) 14.0部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 51.0部
また、顔料分散体Aと同様の手法を用いて、下記の配合で、顔料分散体Cを作製した。また、この際、滞留時間を5分としてときの顔料分散体D、滞留時間を75分としたときの顔料分散体Eをそれぞれ作製した。
・LIONOL BLUE FG−7400G(東洋インキ製造社製 フタロシアニン
顔料) 30.0部
・ソルスパーズ32000(アビシア社製 顔料分散剤) 9.0部
・アクリル樹脂溶液A 10.0部
・ブチルカルビトールアセテート 51.0部
また、顔料分散体Aと同様の手法を用いて、下記の配合で、顔料分散体Fを作製した。
【0306】
また、この際、滞留時間を5分としたときの顔料分散体G、滞留時間を75分としたときの顔料分散体Hをそれぞれ作製した。
・LIONOL GREEN 6YK(東洋インキ製造社製) 25.0部
・ソルスパーズ20000(Lubrizol社製) 1.0部
・アクリル樹脂溶液A 24.0部
・ブチルカルビトールアセテート 50.0部
また、顔料分散体Cの溶剤をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに置き換えた分散体Hを作製した。また、同様にブチルアセテートに置き換えた分散体Iを作製した。
【0307】
上記の顔料分散体を表6ならびに表7に従ってディスパーで撹拌しながら順次各原料添加を行い、実施例11〜23および比較例10〜14のインキを作製した。また、前述の実施例4,8,10並びに比較例5で作成したインキも同様に作成し、先述の固形分濃度を約43%に調整した高固形分インキのT.I.値評価並びに以下の評価を行った。作製したインキは、いずれも1umのメンブランフィルターでろ過した。表6および表7の原料情報は表8に示した。
【0308】
【表6】

【0309】
【表7】

【0310】
【表8】

【0311】
[剛体振り子試験による周期の測定]
前述した通りの方法により測定し、結果を表9に示した。なお、実施例15と比較例11について、昇温範囲100〜170℃の全範囲における周期の測定結果を図6に示した。この実施例15のように100〜170℃における周期が0.6〜0.9秒以内に入っている場合を○、比較例11のように入らない場合を×として表9に記載した。
【0312】
[接触角の測定]
各インキについて、協和界面科学社製「CA−X型接触角計」を用いて接触角の測定を行った。実際の測定では、インキをシリンジに詰め、スライドガラス(松浪硝子社製、S−2215型使用)上に滴下し、10秒後の接触角をθ/2法により算出した。結果を表9に記載した。
【0313】
[印刷物の作製と評価]
ろ過を行った後、ピエゾ素子を有するヘッドを35℃に加温してガラス基材上に吐出した。吐出した後の印刷物を、120℃にて10分間乾燥させた。乾燥後の印刷物を以下の条件で評価し、結果を表9に記載した。
【0314】
【表9】

【0315】
[ベタ画像の平滑性(以下、平滑性とする)]
グレースケールで100%の印字を行い、乾燥の後、目視で評価を行った。
【0316】
○:画像に凹凸感が認められず、平滑な画像である。
△:画像に若干の凹凸感、スジやムラが認められる。(実用レベル)
×:はっきりとした凹凸やスジ、ムラが認められる。
【0317】
[文字の精細性(以下、精細性とする)]
上記と同様にグレースケール10%と、数字の印字を行い、乾燥の後、実体顕微鏡を用いて目視で評価を行った。
【0318】
当評価では、ドットが広がり過ぎてにじみが発生した場合、もしくは、ドットがまったく広がらず、粒状感があった場合、評価点を低く設定した。
【0319】
○:にじみ、文字太り、もしくは粒状感なし
△:若干にじみや文字太りが観察される。または、若干粒状感が観察される。(実用レベル)
×:にじみや文字太り、及び粒状感が明確に観察される。
【0320】
[吐出性評価]
上記インクジェットシステムを用いて、1時間の連続吐出を行った。このとき発生したスジ(吐出つまり)の数をカウントし、吐出性評価を行った。
【0321】
○:吐出つまりなし。
△:全ヘッドに対し、0〜5%未満のヘッドに不良吐出が観察された。(0%を除く)
×:全ヘッドに対し、5%以上のヘッドに不良吐出が観察された。
[カラーフィルター用インクジェット印刷物の作製と評価]
カラーフィルター用途としての評価のため、ブラックマトリクスを以下の通りに作成した。
[ブラックマトリクスの作成]
[アクリル樹脂溶液の調製]
反応容器にシクロヘキサノン800部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら100℃に加熱して、同温度でメタクリル酸60部、メタクリル酸ブチル65.部、メタクリル酸メチル65部、スチレン60部、及びアゾビスイソブチロニトリル10部の混合物を1時間かけて滴下し、更に100℃で3時間反応させた後、アゾビスイソブチロニトリル2部をシクロヘキサノン50部で溶解させたものを添加し、更に100℃で1時間反応を続けて樹脂溶液を合成した。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180
℃で20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20%と
なるようにシクロヘキサノンを添加してアクリル樹脂溶液を調製した。尚、アクリル樹脂の重量平均分子量は40000であった。
[カーボンブラック分散体の調製]
カーボンブラック(デグサ社製「Printex 55」)9.3部、分散剤(ゼネカ社製「ソルスパース20000」)2部、上記アクリル樹脂溶液24部およびシクロヘキサノン40部と均一に混合し、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて5時間分散することによりカーボンブラック分散体を調製した。
[カーボンブラックレジストの調整]
カーボンブラック分散体を60部、トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村
化学社製「NKエステルATMPT」)4.3部、光重合開始剤2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(チバガイギー社製「イルガキュア369」)2部、増感剤(保土ヶ谷化学社製「EAB-F」)0.4部、及びシクロヘキサノン21.6部、撥インキ剤(東洋インキ製造株式会社製「フルシェードFSA−RCS001」)0.9部の混合物を均一に攪拌混合した後、1μmのフィルタで濾過して感光性黒色組成物を調製した。
[パターン形成]
感光性黒色組成物をスピンコート法により10cm×10cmのガラス基板に塗工した後、70℃で15分の乾燥により乾燥膜厚2μmの塗膜を作成した。その後、超高圧水銀ランプを用い、フォトマスクを介して紫外線を200mJ/cm2露光した。次いで、炭酸ナトリウム水溶液を用いて未露光部をスプレー現像した後、イオン交換水で洗浄し未露光部を取り除き、230℃、30分のポストベークを行い作成した。
【0322】
上記の通り作成したブラックマトリクス上に、前記インクジェット吐出条件にて各インキを150pl吐出後、100℃10分乾燥させ、その表面形状を顕微鏡で観察した。表面形状はオリンパス社製金属顕微鏡を用いて観察を行った。色ムラはガラス基板底面から光を当て、オリンパス社製顕微鏡により透過光により色ムラ観察を行った。これらの結果を表9に記載した。
【0323】
[色ムラ]
○:均一である。
△:部分的に色ムラが観察される。
×:明らかに色ムラが観察される。
【0324】
[表面形状]
◎:画素内に表面荒れや、ゆがみが観察されない。
○:表面荒れやゆがみは観察されないが、高低差として干渉縞が観察される。△:若干表面荒れが観察される。
×:明らかにゆがみ又は表面荒れが観察される
[評価結果について]
実施例4,8,10〜23は、100〜170℃の範囲で周期は0.6〜0.9秒であった。評価結果は、平滑性は何れも良好であり、精細性も実用可能なレベル以上を示した。また、カラーフィルター用途として、ブラックマトリクス中に吐出した評価では、実施例4,8,10において極めて平滑な表面形状を示し、T.I.値が低い効果と思われる。
またブラックマトリックス内の表面形状は、沸点の高い溶剤を用いることも平滑性向上に寄与している。
吐出性は、実施例11,13,14、16,22を除き良好な結果をしめした。高沸点の溶剤を使用して、分散を充分行うことにより吐出安定性が向上した。
比較例5,10〜14では、100〜170℃における周期が0.6〜0.9秒の範囲に入らなかった。このため、平滑性と精細性の両立する印刷結果が得られなかった。また、カラーフィルター用途では、何れも色ムラが観察され、ディスプレイとして使用することができなかった。ただし、比較例14では、ブラックマトリックス内の画素部分にインキを吐出充填中にインキが溢れ、他色画素領域への混入が発生したため、ディスプレイとして使用することができなかった。


【図面の簡単な説明】
【0325】
【図1】実施例および比較例の剛体振り子試験による周期の測定結果を示した図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、顔料誘導体、および樹脂担体を含む着色樹脂組成物であって、固形分濃度20重量%以上40重量%未満において、粘度(ただし、ずり速度が100(1/s)である場合に限る。以下同じとする。)が3〜200(mPa・s)であり、かつ、T.I.値(ただし、ずり速度10(1/s)の粘度ηa(mPa・s)とずり速度1000(1/s)の粘度ηb(mPa・s)との比(ηa/ηb)とする。以下同じとする。)が1〜2であり、さらに固形分濃度40重量%以上60重量%以下において、粘度が10〜200(mPa・s)であり、かつ、T.I.値が1〜3であることを特徴とする着色樹脂組成物を用いたインクジェットインキ。
【請求項2】
さらに、重量平均分子量2000〜10000の化合物が、全固形分を基準として5重量%以上含まれることを特徴とする請求項1記載の着色樹脂組成物を用いたインクジェットインキ。

【請求項3】
重量平均分子量2000〜10000の化合物が下記一般式(1)〜(3)で示される構造を少なくとも一つ有することを特徴とする請求項1または2記載の着色樹脂組成物を用いたインクジェットインキ。
一般式(1):
【化1】

(式中、R1は水素またはメチル基を表す。R2はアルキレン基を表す。mは1〜20の整数を表す。)
一般式(2):
(HOOC―)e―R’1―(―COO―[―R’3―COO―]f―R’2)g
(2)(式中、R’1は4価のテトラカルボン酸化合物残基、R’2はモノアルコール残基、R’3はラクトン残基、eは2または3の整数、fは1〜50の整数、gは(4−e)を表す。)
一般式(3):
【化2】

{一般式(3)中、R’’3は水素原子又はメチル基であり、X1は、−COO−、−CONH−、−O−、−OCO−若しくは−CH2O−であり、X2は、一般式:
−(−Ra1−O−)m1−
(式中、Ra1は炭素原子数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素原子数3〜8のシクロアルキレン基であり、そしてm1は1〜50の整数である)
で表される基であり、
X3は、一般式:
−(−CO−Rb1−O−)m2−
(Rb1は炭素原子数4〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素原子数4〜8のシクロアルキレン基であり、そしてm2は0または1〜20の整数である)
で表される基であり、
Y1は、一般式(4):
【化3】

(一般式(4)中、
A1〜A3のうちの1つが水素原子であって、他の2つは−COOHである組合せであるか、A1〜A3のうちの1つが−COORc(但し、Rcは、炭素原子数1〜18のアルキル基である)であって、他の2つは−COOHである組合せであるか、又はA1〜A3の3つが−COOHの組合せであり、kは1又は2である)
で表される基であるか、あるいは一般式(5):
【化4】

(一般式(5)中、
A5〜A7のうち1つは水素原子であって、他の2つは−COOHである組合せであるか、A5〜A7のうち1つは−COORd(但し、Rdは、炭素原子数1〜18のアルキル基である)であって、他の2つは−COOHである組合せであるか、又はA5〜A7の3つが−COOHの組合せであり、
R2は、直接結合、−O−、−CO−、−COOCH2CH2OCO−、−SO2−、−C(CF3)2−、式:
【化5】

で表される基、又は式:
【化6】

で表される基である)
【請求項4】
さらに、アルコキシアルキル基含有メラミン化合物もしくはアルコキシアルキル基含有ベンゾグアナミン化合物を含む請求項1〜3いずれか一項に記載の着色樹脂組成物を用いたインクジェットインキ。
【請求項5】
顔料表面に顔料誘導体および樹脂担体の被覆層が形成されている請求項1〜4いずれか一項に記載の着色樹脂組成物を用いたインクジェットインキ。
【請求項6】
膜厚15〜25μmで印刷基材上に塗工した後に、30℃から250℃まで昇温速度5℃/分で昇温する間の剛体振り子試験による粘弾性測定において、昇温範囲100〜170℃の全範囲における周期が0.6〜0.9秒であることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載のインクジェット用インキ。
【請求項7】
前記インクジェット用インキであって、30℃から250℃まで昇温速度5℃/分で昇温する間の剛体振り子試験による粘弾性測定において、昇温範囲100〜170℃の全範囲における周期が0.6〜0.9秒である原料を0.1〜50重量%含有することを特徴とする請求項6記載のインクジェット用インキ。
【請求項8】
印刷基材が非浸透性基材であって、かつ前記インクジェット用インキの非浸透性基材上での接触角が、10〜30°であることを特徴とする請求項1〜7いずれか記載のインクジェット用インキ。
【請求項9】
前記インクジェット用インキが有機溶剤を50〜85重量%含有することを特徴とする請求項1〜8いずれか一項に記載のインクジェット用インキ。
【請求項10】
有機溶剤として常圧における沸点が130℃〜300℃である有機溶剤を、全有機溶剤中50重量%以上含有することを特徴とする請求項9記載のインクジェット用インキ。
【請求項11】
さらに、熱反応性化合物としてメラミンまたはメラミン誘導体を含有することを特徴とする請求項1〜10いずれか一項に記載のインクジェット用インキ。
【請求項12】
印刷基材がガラスであることを特徴とする請求項1〜11いずれか一項に記載のインクジェット用インキ。
【請求項13】
インクジェット吐出装置によりインキ設定温度25〜70℃で吐出できる請求項1〜12いずれか一項に記載のインクジェット用インキ。
【請求項14】
請求項1〜13いずれか一項に記載のインクジェット用インキを用いて印刷基材上に印刷してなる印刷物。
【請求項15】
請求項1〜14いずれか記載のインクジェット用インキの製造方法であって、膜厚15〜25μmで印刷基材上に塗工した後に、30℃から250℃まで昇温速度5℃/分で昇温する間の剛体振り子試験による粘弾性測定において、昇温範囲100〜170℃の全範囲における周期を0.6〜0.9秒とすることを特徴とするインクジェット用インキの製造方法。




【図1】
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【公開番号】特開2007−327046(P2007−327046A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126376(P2007−126376)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】