説明

インクジェットインク組成物、及び、インクジェット記録方法

【課題】硬化性に優れ、かつ、筋ムラがなく、光沢性及び柔軟性に優れた画像が得られるインクジェットインク組成物、並びに、インクジェット記録方法を提供すること。
【解決手段】(成分A)N−ビニルラクタム類、(成分B)炭素数9〜18の直鎖炭化水素ジオール、炭素数6〜18の分岐炭化水素ジオール、及び、炭素数6〜18の単環状脂肪族炭化水素ジオールよりなる群から選ばれた少なくとも1種のジオールのジ(メタ)アクリル酸エステル、並びに、(成分C)α−アミノケトン化合物、チオキサントン化合物、チオクロマノン化合物、及び、ビスアシルホスフィンオキサイド化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の重合開始剤、を含有することを特徴とするインクジェットインク組成物、並びに、前記インク組成物を用いたインクジェット記録方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットインク組成物、及び、インクジェット記録方法に関する。
【0002】
画像データ信号に基づき、紙などの被記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式などがある。
インクジェット方式は、印刷装置が安価であり、かつ、印刷時に版を必要とせず、必要とされる画像部のみにインク組成物を吐出し被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インク組成物を効率良く使用でき、特に小ロット生産の場合にランニングコストが安い。さらに、騒音が少なく、画像記録方式として優れており、近年注目を浴びている。
中でも、紫外線などの放射線の照射により硬化可能なインクジェット記録用インク組成物(放射線硬化型インクジェット記録用インク組成物)は、紫外線などの放射線の照射によりインク組成物の成分の大部分が硬化するため、溶剤系インク組成物と比べて乾燥性に優れ、また、画像がにじみにくいことから、種々の被記録媒体に印字できる点で優れた方式である。
従来のインクジェット記録用インク組成物として、特許文献1及び2が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−262178号公報
【特許文献2】国際公開第2007/55333号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、硬化性に優れ、かつ、筋ムラがなく、光沢性及び柔軟性に優れた画像が得られるインクジェットインク組成物、並びに、インクジェット記録方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、下記<1>又は<13>に記載の手段により達成された。好ましい実施態様である<2>〜<12>及び<14>と共に以下に示す。
<1>(成分A)N−ビニルラクタム類、(成分B)炭素数9〜18の直鎖炭化水素ジオール、炭素数6〜18の分岐炭化水素ジオール、及び、炭素数6〜18の単環状脂肪族炭化水素ジオールよりなる群から選ばれた少なくとも1種のジオールのジ(メタ)アクリル酸エステル、並びに、(成分C)α−アミノケトン化合物、チオキサントン化合物、チオクロマノン化合物、及び、ビスアシルホスフィンオキサイド化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の重合開始剤、を含有することを特徴とするインクジェットインク組成物、
<2>前記成分Bが、炭素数10〜18の直鎖炭化水素ジオール、炭素数6〜18の分岐炭化水素ジオール、及び、炭素数6〜18の単環状脂肪族炭化水素ジオールよりなる群から選ばれた少なくとも1種のジオールのジ(メタ)アクリル酸エステルである、上記<1>に記載のインクジェットインク組成物、
<3>前記成分Bが、炭素数6〜18の分岐炭化水素ジオール、及び、炭素数6〜18の単環状脂肪族炭化水素ジオールよりなる群から選ばれた少なくとも1種のジオールのジ(メタ)アクリル酸エステルである、上記<1>又は<2>に記載のインクジェットインク組成物、
<4>前記成分Bが、1,10−デカンジオールジアクリレート、1,12−デカンジオールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、及び、シクロヘキサンジメタノールジアクリレートよりなる群から選ばれた少なくとも1つのジ(メタ)アクリル酸エステルである、上記<2>に記載のインクジェットインク組成物、
<5>前記成分Bが、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、及び、シクロヘキサンジメタノールジアクリレートよりなる群から選ばれた少なくとも1つのジ(メタ)アクリル酸エステルである、上記<3>に記載のインクジェットインク組成物、
<6>(成分D)式(D)で表される化合物を更に含有する、上記<1>〜<5>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
【0006】
【化1】

(式(D)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2〜R12はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。)
【0007】
<7>前記成分Dが、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、及び/又は、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートである、上記<6>に記載のインクジェットインク組成物、
<8>前記成分Bの含有量が、インク組成物の全重量に対し、15重量%以上50重量%以下である、上記<1>〜<7>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<9>前記成分Aの含有量が、インク組成物の全重量に対し、8重量%以上35重量%以下である、上記<1>〜<8>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<10>α−アミノケトン化合物、チオキサントン化合物、チオクロマノン化合物、ビスアシルホスフィンオキサイド化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、及び、モノアシルホスフィンオキサイド化合物よりなる群から選ばれた少なくとも3種の重合開始剤を含有する、上記<1>〜<9>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<11>シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤を含有しないか、又は、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤の総含有量が、インク組成物の全重量に対し、0重量%を超え0.1重量%以下である、上記<1>〜<10>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<12>インク組成物に含有されるエチレン性不飽和化合物のうち、75重量%以上がエーテル結合を含有しない化合物である、上記<1>〜<11>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<13>(a)上記<1>〜<12>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物をインクジェット方式により吐出して支持体上に画像を形成する画像形成工程、及び、(b)得られた画像に活性放射線を照射して、前記インク組成物を硬化させて、前記支持体上に硬化した画像を有する印刷物を得る硬化工程を含むことを特徴とするインクジェット記録方法、
<14>印刷物における画像の少なくとも一部を、前記画像形成工程及び前記硬化工程を2回以上繰り返して形成する、上記<13>に記載のインクジェット記録方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、硬化性に優れ、かつ、筋ムラがなく、光沢性及び柔軟性に優れた画像が得られるインクジェットインク組成物、並びに、インクジェット記録方法を提供を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(インクジェットインク組成物)
本発明のインクジェットインク組成物(以下、「インク組成物」ともいう。)は、(成分A)N−ビニルラクタム類、(成分B)炭素数9〜18の直鎖炭化水素ジオール、炭素数6〜18の分岐炭化水素ジオール、及び、炭素数6〜18の単環状脂肪族炭化水素ジオールよりなる群から選ばれた少なくとも1種のジオールのジ(メタ)アクリル酸エステル、並びに、(成分C)α−アミノケトン類、チオキサントン化合物、チオクロマノン化合物、及び、ビスアシルホスフィンオキサイド化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の重合開始剤を含有することを特徴とする。
なお、明細書中、数値範囲を表す「A〜B」の記載は「A以上B以下」と同義である。また、前記「(成分A)N−ビニルラクタム類」等を単に「成分A」等ともいう。
【0010】
本発明のインク組成物は、活性放射線により硬化可能な油性のインク組成物である。「活性放射線」とは、その照射によりインク組成物中に開始種を発生させるエネルギーを付与できる放射線であり、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、電子線などを包含する。中でも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点から紫外線及び電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。
【0011】
活性放射線硬化型のインクジェット印刷により得た印刷物は、水性インクジェット、溶剤インクジェットにより得た印刷物に比べ、硬化膜の光沢性が低く、筋ムラが目立つといわれている。これは、インクジェット着弾直後に打滴が活性放射線によって硬化されることで、打滴の着弾形状が保存されることが1つの要因と考えられる。
一方、本発明のインク組成物は、印刷物の光沢性に優れ、筋ムラの少ないインクジェット画像を提供する。
理由は定かではないが、吐出された成分A〜成分Cを含むインク組成物は、着弾直後の活性放射線照射によって、打滴の内部から硬化すると考えられる。
一方、特に酸素溶存量が高いと推定される成分Bの効果で、空気と接する打滴の最表面のみが選択的に酸素重合阻害を受け、打滴の最表面が長時間液状に保たれ、打滴最表面が濡れ広がり、合一が促進されると要因と推定される。その結果、より平滑な平面が形成され、高度な光沢性を有し、筋ムラの目立たない画像が得られると推定される。同一部分を重ね打ちにより印刷するマルチパスモードでの印刷では、重ね打ち時に先に打滴された液滴上に打滴が重なるケースが発生する。この際、先に打滴されたインク膜の最表面が液状であると、後に打たれた打滴の濡れ広がりが大きくなり、より高い光沢度が得られると考えられる。
【0012】
また、打滴の硬化状態のコントロールにあたっては、打滴のごく最表面のみが液状態を保持することが重要である。打滴内部までもが液状態を長時間保持してしまうと最終的に印刷物がべとついたり、重ね打ち時に後から着弾した打滴が膜の内部に入り込み、印刷物にクレーター状のくぼみを形成してしまう。その結果、逆に印刷物表面の平滑性を失うことになりかねない。また、内部の硬化性が低いと、着弾後の打滴干渉(打滴の重なりにより打滴位置がずれる)を生じさせることで、筋ムラを目立たせてしまうことも考えられる。
本発明によれば、成分A〜成分Cの組み合わせにより、打滴内部の硬化性を強く促進しつつ、硬化膜最表面のみを選択的に長時間液状に保つことが実現でき、光沢性が高く、筋ムラの目立たない印刷物が得られたものと考えられる。
【0013】
(成分A)N−ビニルラクタム類
本発明のインク組成物は、(成分A)N−ビニルラクタム類を含有する。
成分Aとしては、式(A)で表される化合物が好ましい。
【0014】
【化2】

【0015】
式(A)中、nは1〜5の整数を表し、インク組成物が硬化した後の柔軟性、被記録媒体との密着性、及び、原材料の入手性の観点から、nは2〜4の整数であることが好ましく、nが2又は4であることがより好ましく、nが4である、すなわちN−ビニルカプロラクタムであることが特に好ましい。N−ビニルカプロラクタムは安全性に優れ、汎用的で比較的安価に入手でき、特に良好なインク硬化性、及び硬化膜の被記録媒体への密着性が得られるので好ましい。
また、上記N−ビニルラクタム類は、ラクタム環上にアルキル基、アリール基等の置換基を有していてもよく、飽和又は不飽和環構造を連結していてもよい。
成分Aは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0016】
成分Aの含有量は、インク組成物の全重量に対し、8〜40重量%が好ましく、8〜35重量%がより好ましく、12〜32重量%が更に好ましく、14〜25重量%が特に好ましい。上記範囲であると、画像内部の硬化性を強く促進しつつ、硬化膜最表面のみを選択的に長時間液状を保つことができ、光沢性が高く、筋ムラの目立たない印刷物が得られる。
【0017】
(成分B)炭素数9〜18の直鎖炭化水素ジオール、炭素数6〜18の分岐炭化水素ジオール、及び、炭素数6〜18の単環状脂肪族炭化水素ジオールよりなる群から撰ばれた少なくとも1種のジオールのジ(メタ)アクリル酸エステル
本発明のインク組成物は、(成分B)炭素数9〜18の直鎖炭化水素ジオール、炭素数6〜18の分岐炭化水素ジオール、及び、炭素数6〜18の単環状脂肪族炭化水素ジオールよりなる群から選ばれた少なくとも1種のジオールのジ(メタ)アクリル酸エステルを含有する。
成分Bとしては、光沢性の観点から、炭素数10〜18の直鎖炭化水素ジオール、炭素数6〜18の分岐炭化水素ジオール、及び、炭素数6〜18の単環状脂肪族炭化水素ジオールよりなる群から選ばれた少なくとも1種のジオールのジ(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましく、炭素数6〜18の分岐炭化水素ジオール、及び、炭素数6〜18の単環状脂肪族炭化水素ジオールよりなる群から撰ばれた少なくとも1種のジオールのジ(メタ)アクリル酸エステルであることがより好ましく、炭素数6〜18の分岐炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステルであることが更に好ましい。
【0018】
直鎖炭化水素ジオールの炭素数は、10〜18であることが好ましく、10〜16がより好ましく、10〜12が更に好ましい。
直鎖炭化水素ジオールは、不飽和結合を含まないものが好ましい。
炭素数9〜18の直鎖炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステルとしては、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリデカンジオールジ(メタ)アクリレート、オクタデカンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、好ましくはアクリレート化合物であり、より好ましくはデカンジオールジアクリレート又はドデカンジオールジアクリレートであり、特に好ましくはデカンジオールジアクリレートである。
【0019】
分岐炭化水素ジオールの炭素数は、6〜12が好ましく、6〜8がより好ましい。
分岐炭化水素ジオールは、不飽和結合を含まないものが好ましい。分岐炭化水素ジオール中のヒドロキシ基間を結ぶ直鎖の炭素数は3〜5が好ましい。前記直鎖から分岐するアルキル基は、炭素数1〜4であることが好ましく、メチル基がより好ましい。また、分岐の数は、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
炭素数6〜18の分岐炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステルとしては、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチルー1,3−プロパンジオールジアクリレートが好ましく挙げられ、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレートがより好ましく挙げられる。
【0020】
単環状脂肪族炭化水素ジオールとは、2つのヒドロキシ基を有し、かつ炭化水素環を1つのみ有する脂肪族炭化水素化合物であり、芳香環や橋架け環、縮合環等は有していない化合物である。
単環状炭化水素ジオールの炭素数は、6〜12が好ましく、6〜10がより好ましい。
単環状脂肪族炭化水素ジオールは、不飽和結合を含まないことが好ましい。単環状炭化水素ジオールにおける環を構成する炭素数は、3〜12が好ましく、4〜10がより好ましく、5〜8が更に好ましい。
環状炭化水素ジオールのヒドロキシ基と環とは、直接結合していても、連結基を介して結合していてもよい。前記連結基は、炭素数1〜5のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜3のアルキレン基がより好ましく、メチレン基が更に好ましい。
炭素数6〜18の単環状脂肪族炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステルとしては、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレートが好ましく、シクロヘキサンジメタノールジアクリレートがより好ましい。
【0021】
成分Bの含有量は、硬化性及び柔軟性の観点から、インク組成物の全重量に対し、10〜60重量%が好ましく、15〜55重量%がより好ましく、15〜50重量%が更に好ましく、20〜45重量%が特に好ましい。
本発明のインク組成物における成分A及び成分Bの総含有量は、光沢性の向上、筋ムラの抑制の観点から、インク組成物の全重量に対し、30重量%以上が好ましく、35〜95重量%がより好ましく、40〜90重量%が更に好ましい。
本発明のインク組成物中の重合性化合物における成分A及び成分Bの総含有量は、光沢性の向上、筋ムラの抑制の観点から、重合性化合物の全重量に対し、70重量%以上が好ましく、75〜98重量%がより好ましく、80〜95重量%が更に好ましい。
【0022】
(成分C)α−アミノケトン類、チオキサントン化合物、チオクロマノン化合物、及び、ビスアシルホスフィンオキサイド化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の重合開始剤
本発明のインク組成物は、(成分C)α−アミノケトン化合物、チオキサントン化合物、チオクロマノン化合物、及び、ビスアシルホスフィンオキサイド化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の重合開始剤を含有する。本発明のインク組成物は、成分Cを含有することにより、硬化性に優れ、また、得られる画像の筋ムラを抑制することができる。
また、本発明のインク組成物は、光沢性の観点から、α−アミノケトン類、チオキサントン化合物、チオクロマノン化合物、ビスアシルホスフィンオキサイド化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、及び、モノアシルホスフィンオキサイド化合物よりなる群から選ばれた少なくとも3種の重合開始剤を含有することが好ましく、α−アミノケトン化合物と、ビスアシルホスフィンオキサイド化合物と、チオキサントン化合物又はチオクロマノン化合物とを含有するか、又は、α−ヒドロキシケトン化合物と、モノアシルホスフィンオキサイド化合物と、チオキサントン化合物又はチオクロマノン化合物とを含有することがより好ましく、α−アミノケトン化合物と、ビスアシルホスフィンオキサイド化合物と、チオキサントン化合物又はチオクロマノン化合物とを含有することが特に好ましい。
また、本発明のインク組成物は、チオキサントン化合物及び/又はチオクロマノン化合物を含有することが好ましく、コストの観点からは、チオキサントン化合物を含有することがより好ましく、透明性の観点からは、チオクロマノン化合物を含有することがより好ましい。
【0023】
α−アミノケトン化合物としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、以下の式(C−1)で表される化合物であることが好ましい。
【0024】
【化3】

【0025】
前記式(C−1)中、Arは、−SR13あるいは−N(R7E)(R8E)で置換されているフェニル基を表し、R13は水素原子又はアルキル基を表し、R1D及びR2Dはそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基を表し、R3D及びR4Dはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ置換された炭素数2〜4のアルキル基又は炭素数3〜5のアルケニル基を表す。R1DとR2Dとは互いに結合して炭素数2〜9のアルキレン基を構成してもよい。R3DとR4Dとは互いに結合して炭素数3〜7のアルキレン基を形成してもよく、そのアルキレン基は、アルキレン鎖中に−O−又は−N(R12)−を含むものであってもよい。R12は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。R7E及びR8Eはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ置換された炭素数2〜4のアルキル基又は炭素数3〜5のアルケニル基を表す。R7EとR8Eとは互いに結合して炭素数3〜7のアルキレン基を形成してもよく、そのアルキレン基は、アルキレン鎖中に−O−又は−N(R12)−を含むものであってもよい。ここで、R12は前記したものと同義である。
【0026】
前記α−アミノケトン化合物の例としては、2−メチル−1−フェニル−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(ヘキシル)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−エチル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等が挙げられる。また、チバガイギー社製IRGACURE907、IRGACURE369、IRGACURE379等の如き市販品も好ましく例示できる。
【0027】
チオキサントン化合物としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、下記式(C−2)で表される化合物であることが好ましい。
【0028】
【化4】

【0029】
前記式(C−2)において、R1F、R2F、R3F、R4F、R5F、R6F、R7F及びR8Fはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基(一置換及び二置換の場合を含む。なお、以下においても同様である。)、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基又はスルホ基を表す。上記アルキル基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、及び、アシル基におけるアルキル部分の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1〜4であることが更に好ましい。
1F、R2F、R3F、R4F、R5F、R6F、R7F及びR8Fは、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成していてもよい。これらが環を形成する場合の環構造としては、5又は6員環の脂肪族環、芳香族環などが挙げられ、炭素原子以外の元素を含む複素環であってもよく、また、形成された環同士が更に組み合わさって2核環、例えば、縮合環を形成していてもよい。これらの環構造は置換基を更に有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基及びスルホ基が挙げられる。形成された環構造が複素環である場合のヘテロ原子の例としては、N、O、及びSを挙げることができる。
【0030】
チオキサントン化合物としては、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−ドデシルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、1−メトキシカルボニルチオキサントン、2−エトキシカルボニルチオキサントン、3−(2−メトキシエトキシカルボニル)チオキサントン、4−ブトキシカルボニルチオキサントン、3−ブトキシカルボニル−7−メチルチオキサントン、1−シアノ−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−エトキシチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−アミノチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−フェニルスルフリルチオキサントン、3,4−ジ[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシカルボニル]チオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−(1−メチル−1−モルホリノエチル)チオキサントン、2−メチル−6−ジメトキシメチルチオキサントン、2−メチル−6−(1,1−ジメトキシベンジル)チオキサントン、2−モルホリノメチルチオキサントン、2−メチル−6−モルホリノメチルチオキサントン、n−アリルチオキサントン−3,4−ジカルボキシミド、n−オクチルチオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、N−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)チオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、1−フェノキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メトキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メチルチオキサントン、チオキサントン−2−ポリエチレングリコールエステル、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロリドが例示できる。これらの中でも、入手容易性や硬化性の観点から、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,3−ジエチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−シクロヘキシルチオキサントン、4−シクロヘキシルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、及び、4−イソプロピルチオキサントンが好ましく、2−イソプロピルチオキサントン、及び、4−イソプロピルチオキサントンがより好ましい。
【0031】
チオキサントン化合物としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、下記式(C−3)で表される化合物であることが好ましい。
【0032】
【化5】

【0033】
式(C−3)において、R1G、R2G、R3G、R4G、R5G、R6G、R7G及びR8Gはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基又はスルホ基を表す。上記アルキル基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、及び、アシル基におけるアルキル部分の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1〜4であることが更に好ましい。
1G、R2G、R3G及びR4Gは、それぞれ隣接する2つが互いに連結、例えば、縮合、して環を形成していてもよい。
これらが環を形成する場合の環構造としては、5又は6員環の脂肪族環、芳香族環などが挙げられ、炭素原子以外の元素を含む複素環であってもよく、また、形成された環同士が更に組み合わさって2核環、例えば、縮合環を形成していてもよい。これらの環構造は置換基を更に有していてもよい。置換基としては、式(C−2)で前述したものが挙げられる。形成された環構造が複素環である場合のヘテロ原子の例としては、N、O、及びSを挙げることができる。
また、チオクロマノン化合物は、チオクロマノンの環構造上に少なくとも1つの置換基(アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基及びスルホ基等)を有する化合物であることが好ましい。上記置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基及びアシルオキシ基が好ましく、炭素数1〜20のアルキル基及びハロゲン原子がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基及びハロゲン原子が更に好ましい。
また、チオクロマノン化合物は、芳香環上、及び、シクロヘキサノン環上のそれぞれに、少なくとも1つの置換基を有する化合物であることがより好ましい。
【0034】
チオクロマノン化合物の具体例としては、下記(I−1)〜(I−31)が好ましく例示できる。これらの中でも、(I−14)、(I−17)、及び、(I−19)がより好ましく、(I−14)が特に好ましい。
【0035】
【化6】

【0036】
【化7】

【0037】
ビスアシルホスフィンオキサイド化合物としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、下記式(C−4)で表される化合物であることが好ましい。
【0038】
【化8】

(式(C−4)中、R1H、R2H及びR3Hはそれぞれ独立に、メチル基又はエチル基を置換基として有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。)
【0039】
ビスアシルホスフィンオキサイド化合物としては、公知のビスアシルホスフィンオキサイド化合物が使用できる。例えば、特開平3−101686号公報、特開平5−345790号公報、特開平6−298818号公報に記載のビスアシルホスフィンオキサイド化合物が挙げられる。
具体例としては、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−クロロフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,4−ジメトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)デシルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−オクチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロ3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロ−3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メトキシ−1−ナフトイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−クロロ−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0040】
これらの中でも、ビスアシルホスフィンオキサイド化合物としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(IRGACURE 819:チバスペシャルティーケミカルズ社製)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフェニルホスフィンオキサイドなどが好ましい。
【0041】
本発明において、成分Cの総使用量は、硬化性、硬化膜内での硬化度の均一性の観点から、成分A及び成分Bを含む重合性化合物の総含有量に対して、好ましくは0.01〜35重量%、より好ましくは0.5〜20重量%、更に好ましくは1.0〜15重量%の範囲である。
また、チオキサントン化合物及び/又はチオクロマノン化合物を用いる場合、重合開始剤の総含有量Iは、チオキサントン化合物及び/又はチオクロマノン化合物の総含有量Sに対して、重量比で、好ましくはI:S=200:1〜1:200、より好ましくは50:1〜1:50、更に好ましくは20:1〜1:5の範囲である。
本発明のインク組成物における成分A〜成分Cの総含有量は、光沢性の向上、筋ムラの抑制の観点から、インク組成物の全重量に対し、50重量%以上が好ましく、60〜98重量%がより好ましく、70〜95重量%が更に好ましい。
【0042】
(成分D)式(D)で表される化合物
本発明のインク組成物は、光沢性の観点から、(成分D)式(D)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0043】
【化9】

(式(D)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2〜R12はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。)
【0044】
1は水素原子又はメチル基を表し、硬化性の観点から、水素原子が好ましい。
2〜R12はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。前記アルキル基としては、炭素数1〜10の直鎖又は分岐を有するアルキル基が好ましく、炭素数1〜6の直鎖又は分岐を有するアルキル基が好ましく、メチル基、t−ブチル基がより好ましい。R2〜R12の少なくとも1個はアルキル基であることが好ましく、1〜5個がアルキル基であることが好ましく、1〜3個がアルキル基であることがより好ましい。
成分Dの具体例としては、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、及び/又は、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、4−t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、及び/又は、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルアクリレートがより好ましい。
成分Dの含有量は、光沢性の観点から、インク組成物の全重量に対し、5〜45重量%が好ましく、10〜40重量%がより好ましく、15〜35重量%が更に好ましい。
【0045】
(他の重合性化合物)
本発明のインク組成物は、成分A、成分B及び成分D以外の、他の重合性化合物を含有していてもよい。他の重合性化合物としては、エチレン性不飽和化合物が好ましい。
他の重合性化合物としては、公知の重合性化合物を用いることができ、成分A、成分B及び成分D以外の(メタ)アクリレート化合物、ビニルエーテル化合物、アリル化合物、N−ビニル化合物、不飽和カルボン酸類等が例示できる。例えば、特開2009−221414号公報に記載のラジカル重合性モノマー、特開2009−209289号公報に記載の重合性化合物、特開2009−191183号公報に記載のエチレン性不飽和化合物が挙げられる。他の重合性化合物の具体例としては、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、及び、プロピレンオキサイド(PO)変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が好ましく挙げられる。
【0046】
ただし、成分A、成分B及び成分D以外の、他の重合性化合物を配合する場合には、本発明のインク組成物は、硬化性及び画像の筋ムラ抑制の観点から、エーテル結合(エーテル性酸素原子)を有する重合性化合物をできるだけ含有しないことが好ましい。すなわち、本発明のインク組成物中のエーテル結合を含有しない重合性化合物の割合は、重合性化合物の全重量に対し、55〜100重量%であることが好ましく、65〜100重量%であることがより好ましく、75〜100重量%であることが更に好ましい。
【0047】
本発明のインク組成物は、他の重合性化合物として、印刷物の光沢性向上の観点で、炭素数8〜18の直鎖炭化水素モノアルコールの(メタ)アクリル酸エステルを更に含有することも好ましい。より好ましくは炭素数10〜18の直鎖炭化水素モノアルコールの(メタ)アクリル酸エステルであり、更に好ましくは炭素数10〜13の直鎖炭化水素モノアルコールの(メタ)アクリル酸エステルである。
炭素数8〜18の直鎖炭化水素モノアルコールの(メタ)アクリル酸エステルとして好ましくは、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート等があげられ、より好ましくは、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
炭素数8〜18の直鎖炭化水素モノアルコールの(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、インク組成物の全重量に対し、5重量%以上30重量%以下が好ましく、5重量%以上25重量%以下がより好ましく、5重量%以上20重量%以下が更に好ましく、5重量%以上15重量%以下が特に好ましい。上記範囲であると、硬化膜のべたつきが少なく、印刷物光沢性に優れるインク組成物が得られる。
【0048】
また、本発明のインク組成物は、他の重合性化合物として、印刷物光沢性向上、及び、硬化後の印刷物べたつき抑制の観点で、炭素数6〜18の多環状脂肪族炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステルを含有することが好ましい。
炭素数6〜18の多環状脂肪族炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステルとして、好ましくは、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートなどが挙げられる。
炭素数6〜18の多環状脂肪族炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、インク組成物の全重量に対し、3重量%以上25重量%以下が好ましく、5重量%以上20重量%以下がより好ましく、5重量%以上15重量%以下が更に好ましい。上記範囲であると、低粘度で、硬化膜のべたつきが少なく、印刷物の光沢性に優れるインク組成物が得られる。
【0049】
さらに、印刷物の光沢性向上、及び、硬化後の印刷物べたつき抑制の観点では、炭素数8〜18の直鎖炭化水素モノアルコールの(メタ)アクリル酸エステル、及び、炭素数6〜18の多環状脂肪族炭化水素ジオールのジ(メタ)アクリル酸エステルを併用することがより好ましい。上記のように併用する場合、炭素数8〜18の直鎖炭化水素モノアルコールの(メタ)アクリル酸エステル、及び、炭素数6〜18の多環状脂肪族炭化水素ジオールの重量比は、1:2〜4:1であることが好ましく、1:2〜3:1であることがより好ましい。
【0050】
(他の重合開始剤)
本発明のインク組成物は、成分C以外の重合開始剤を含有してもよい。
重合開始剤は、前記活性放射線等の外部エネルギーを吸収して重合開始種を生成する化合物である。重合開始剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明に用いることができる他の重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましく挙げられ、α−ヒドロキシケトン化合物、モノアシルホスフィン化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、及び、炭素ハロゲン結合を有する化合物等がより好ましく挙げられる。これらの重合開始剤の具体例としては、特開2008−208190号公報に記載のラジカル重合開始剤が挙げられる。中でも、他の重合開始剤としては、α−ヒドロキシケトン化合物及びアシルホスフィン化合物が好ましく挙げられる。
また、本発明のインク組成物は、他の重合開始剤として、チオキサントン化合物及びチオクロマノン化合物以外の、公知の増感剤を使用してもよいが、含有しないことが好ましい。増感剤としては例えば、特開2008−208190号公報に記載のものが挙げられる。
【0051】
α−ヒドロキシケトン化合物としては、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられ、中でも、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン化合物が好ましい。なお、本発明において、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン化合物には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが任意の置換基で置換された化合物も含まれる。置換基としては、ラジカル重合開始剤としての能力を発揮し得る範囲で任意に選択することができ、具体的には炭素数1〜4のアルキル基が例示できる。
【0052】
モノアシルホスフィンオキサイド化合物としては、イソブチリルメチルホスフィン酸メチルエステル、イソブチリルフェニルホスフィン酸メチルエステル、ピバロイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、2−エチルヘキサノイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、ピバロイルフェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、p−トルイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、o−トルイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、2,4−ジメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、p−t−ブチルベンゾイルフェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、アクリロイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、イソブチリルジフェニルホスフィンオキサイド、2−エチルヘキサノイルジフェニルホスフィンオキサイド、o−トルイルジフェニルホスフィンオキサイド、p−t−ブチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、3−ピリジルカルボニルジフェニルホスフィンオキサイド、アクリロイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルホスフィン酸ビニルエステル、アジポイルビスジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイルジフェニルホスフィンオキサイド、p−トルイルジフェニルホスフィンオキサイド、4−(t−ブチル)ベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、テレフタロイルビスジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、バーサトイルジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−2−エチルヘキサノイルジフェニルホスフィンオキサイド、1−メチル−シクロヘキサノイルジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、ピバロイルフェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドが好ましい。
【0053】
本発明において、成分C以外の、他の重合開始剤を使用する場合、その使用量は、重合性化合物の総含有量に対して、0.01〜20重量%が好ましく、0.5〜15重量%がより好ましい。
【0054】
(成分E)界面活性剤
本発明のインク組成物には、長時間安定した吐出性を付与するため、界面活性剤を添加してもよい。
ただし、光沢性、筋ムラを抑制する観点から、本発明のインク組成物は、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤を含有しないか、又は、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤の総含有量が、インク組成物の全重量に対し、0重量%を超え0.1重量%以下が好ましく、0重量%を超え、0.05重量%以下がより好ましい。
なお、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤以外の界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。
【0055】
(成分F)着色剤
本発明のインク組成物は、形成された画像部の視認性を向上させるため、好ましくは着色剤を含有する。着色剤としては、特に制限はないが、耐候性に優れ、色再現性に富んだ顔料及び油溶性染料が好ましく、溶解性染料等の公知の着色剤から任意に選択して使用できる。着色剤は、活性放射線による硬化反応の感度を低下させないという観点から、重合禁止剤として機能しない化合物を選択することが好ましい。
【0056】
本発明に使用できる顔料としては、特に限定されるわけではないが、例えばカラーインデックスに記載される下記の番号の有機又は無機顔料が使用できる。
赤又はマゼンタ顔料としては、Pigment Red 3,5,19,22,31,38,42,43,48:1,48:2,48:3,48:4,48:5,49:1,53:1,57:1,57:2,58:4,63:1,81,81:1,81:2,81:3,81:4,88,104,108,112,122,123,144,146,149,166,168,169,170,177,178,179,184,185,208,216,226,257、Pigment Violet 3,19,23,29,30,37,50,88、Pigment Orange 13,16,20,36、青又はシアン顔料としては、Pigment Blue 1,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,17−1,22,27,28,29,36,60、緑顔料としては、Pigment Green 7,26,36,50、黄顔料としては、Pigment Yellow 1,3,12,13,14,17,34,35,37,55,74,81,83,93,94,95,97,108,109,110,120,137,138,139,153,154,155,157,166,167,168,180,185,193、黒顔料としては、Pigment Black 7,28,26、白色顔料としては、Pigment White 6,18,21などが目的に応じて使用できる。
本発明においては、水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で分散染料を用いることもできる。分散染料は一般に水溶性の染料も包含するが、本発明においては水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で用いることが好ましい。
分散染料の好ましい具体例としては、C.I.ディスパースイエロー 5,42,54,64,79,82,83,93,99,100,119,122,124,126,160,184:1,186,198,199,201,204,224及び237;C.I.ディスパーズオレンジ 13,29,31:1,33,49,54,55,66,73,118,119及び163;C.I.ディスパーズレッド 54,60,72,73,86,88,91,92,93,111,126,127,134,135,143,145,152,153,154,159,164,167:1,177,181,204,206,207,221,239,240,258,277,278,283,311,323,343,348,356及び362;C.I.ディスパーズバイオレット 33;C.I.ディスパーズブルー 56,60,73,87,113,128,143,148,154,158,165,165:1,165:2,176,183,185,197,198,201,214,224,225,257,266,267,287,354,358,365及び368;並びにC.I.ディスパーズグリーン 6:1及び9;等が挙げられる。
【0057】
着色剤は、インク組成物に添加された後、適度に当該インク組成物内で分散することが好ましい。着色剤の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の各分散装置を用いることができる。
【0058】
着色剤は、インク組成物の調製に際して、各成分と共に直接添加してもよい。また、分散性向上のため、あらかじめ溶剤又は本発明に使用する重合性化合物のような分散媒体に添加し、均一分散あるいは溶解させた後、配合することもできる。
本発明において、溶剤が硬化画像に残留する場合の耐溶剤性の劣化、及び、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound:揮発性有機化合物)の問題を避けるためにも、着色剤は、重合性化合物のような分散媒体に予め添加して、配合することが好ましい。なお、分散適性の観点のみを考慮した場合、着色剤の添加に使用する重合性化合物は、最も粘度の低いモノマーを選択することが好ましい。着色剤はインク組成物の使用目的に応じて、1種又は2種以上を適宜選択して用いればよい。
【0059】
なお、インク組成物中において固体のまま存在する顔料などの着色剤を使用する際には、着色剤粒子の平均粒径は、好ましくは0.005〜0.5μm、より好ましくは0.01〜0.45μm、更に好ましくは0.015〜0.4μmとなるよう、着色剤、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定することが好ましい。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インク組成物の保存安定性、透明性及び硬化感度を維持することができるので好ましい。
インク組成物中における着色剤の含有量は、色、及び使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の重量に対し、0.01〜30重量%であることが好ましい。
【0060】
(成分G)分散剤
本発明のインク組成物は、分散剤を含有することが好ましい。特に顔料を使用する場合において、顔料をインク組成物中に安定に分散させるため、分散剤を含有することが好ましい。分散剤としては、高分子分散剤が好ましい。なお、本発明における「高分子分散剤」とは、重量平均分子量が1,000以上の分散剤を意味する。
【0061】
高分子分散剤としては、DISPERBYK−101、DISPERBYK−102、DISPERBYK−103、DISPERBYK−106、DISPERBYK−111、DISPERBYK−161、DISPERBYK−162、DISPERBYK−163、DISPERBYK−164、DISPERBYK−166、DISPERBYK−167、DISPERBYK−168、DISPERBYK−170、DISPERBYK−171、DISPERBYK−174、DISPERBYK−182(BYKケミー社製);EFKA4010、EFKA4046、EFKA4080、EFKA5010、EFKA5207、EFKA5244、EFKA6745、EFKA6750、EFKA7414、EFKA745、EFKA7462、EFKA7500、EFKA7570、EFKA7575、EFKA7580(エフカアディティブ社製);ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100(サンノプコ(株)製);ソルスパース(SOLSPERSE)3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、22000、24000、26000、28000、32000、36000、39000、41000、71000などの各種ソルスパース分散剤(Noveon社製);アデカプルロニックL31、F38、L42、L44、L61、L64、F68、L72、P95、F77、P84、F87、P94、L101、P103、F108、L121、P−123((株)ADEKA製)、イオネットS−20(三洋化成工業(株)製);ディスパロン KS−860、873SN、874(高分子分散剤)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル型)(楠本化成(株)製)が挙げられる。
インク組成物中における分散剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の重量に対し、0.05〜15重量%であることが好ましい。
【0062】
(成分H)オリゴマー
本発明のインク組成物は、オリゴマーを含有することが好ましい。
オリゴマーは、一般に有限個(一般的には5〜100個)のモノマーが結合した重合体であり、オリゴマーと称される公知の化合物を任意に選択可能であるが、本発明においては、重量平均分子量が400〜10,000(より好ましくは500〜5,000)の重合体を選択することが好ましい。
前記オリゴマーは、ラジカル重合性基を有していてもよい。前記ラジカル重合性基としては、エチレン性不飽和基が好ましく、(メタ)アクリロキシ基がより好ましい。
【0063】
本発明におけるオリゴマーとしては、いかなるオリゴマーでもよいが、例えば、オレフィン系(エチレンオリゴマー、プロピレンオリゴマーブテンオリゴマー等)、ビニル系(スチレンオリゴマー、ビニルアルコールオリゴマー、ビニルピロリドンオリゴマーアクリレートオリゴマー、メタクリレートオリゴマー等)、ジエン系(ブタジエンオリゴマー、クロロプレンゴム、ペンタジエンオリゴマー等)、開環重合系(ジ−,トリ−,テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチルイミン等)、重付加系(オリゴエステルアクリレート、ポリアミドオリゴマー、ポリイソシアネートオリゴマー)、付加縮合オリゴマー(フェノール樹脂、アミノ樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂等)等を挙げることができる。この中で、オリゴエステル(メタ)アクリレートが好ましく、その中では、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートがより好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートが更に好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレートが好ましく挙げられるが、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートがより好ましく挙げられる。
また、ウレタン(メタ)アクリレートは、4官能以下のウレタン(メタ)アクリレートであることが好ましく、2官能以下のウレタン(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレートを含有することにより、基材の密着性に優れ、硬化性に優れるインク組成物が得られる。
オリゴマーについて、オリゴマーハンドブック(吉川淳二監修、(株)化学工業日報社)も参照することができる。
【0064】
また、オリゴマーの市販品としては、ウレタン(メタ)アクリレートとして、例えば、第一工業製薬(株)製のR1204、R1211、R1213、R1217、R1218、R1301、R1302、R1303、R1304、R1306、R1308、R1901、R1150等や、ダイセル・サイテック(株)製のEBECRYLシリーズ(例えば、EBECRYL230、270、4858、8402、8804、8807、8803、9260、1290、1290K、5129、4842、8210、210、4827、6700、4450、220)、新中村化学工業(株)製のNKオリゴU−4HA、U−6HA、U−15HA、U−108A、U200AX等、東亞合成(株)製のアロニックスM−1100、M−1200、M−1210、M−1310、M−1600、M−1960等が挙げられる。
ポリエステル(メタ)アクリレートとして、例えば、ダイセル・サイテック(株)製のEBECRYLシリーズ(例えば、EBECRYL770、IRR467、81、84、83、80、675、800、810、812、1657、1810、IRR302、450、670、830、870、1830、1870、2870、IRR267、813、IRR483、811等)、東亞合成(株)製のアロニックスM−6100、M−6200、M−6250、M−6500、M−7100、M−8030、M−8060、M−8100、M−8530、M−8560、M−9050等が挙げられる。
また、エポキシ(メタ)アクリレートとして、例えば、ダイセル・サイテック(株)製のEBECRYLシリーズ(例えば、EBECRYL600、860、2958、3411、3600、3605、3700、3701、3703、3702、3708、RDX63182、6040等)等が挙げられる。
【0065】
オリゴマーは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
本発明のインク組成物におけるオリゴマーの含有量としては、インク組成物の全重量に対して、0.1〜50重量%が好ましく、0.5〜20重量%がより好ましく、1〜10重量%であることが更に好ましい。
【0066】
(その他の成分)
本発明のインク組成物には、必要に応じて、前記各成分以外に、共増感剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、導電性塩類、溶剤、高分子化合物、塩基性化合物等を含む。これらは、特開2009−221416号公報に記載されており、本発明においても使用できる。
【0067】
また、本発明のインク組成物は、保存性、及び、ヘッド詰まりの抑制という観点から、好ましくは重合禁止剤を含有する。
重合禁止剤は、本発明のインク組成物全量に対し、200〜20,000ppm添加することが好ましい。
重合禁止剤としては、ニトロソ系重合禁止剤や、ヒンダードアミン系重合禁止剤、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl等が挙げられる。
【0068】
(インク物性)
本発明においては、吐出性を考慮し、25℃における粘度が40mPa・s以下であるインク組成物を使用することが好ましい。より好ましくは5〜40mPa・s、更に好ましくは7〜30mPa・sである。また、吐出温度(好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃)における粘度が、3〜15mPa・sであることが好ましく、3〜13mPa・sであることがより好ましい。本発明のインク組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な被記録媒体(支持体)を用いた場合でも、被記録媒体中へのインク組成物の浸透を回避し、未硬化モノマーの低減が可能となる。さらにインク組成物の液滴着弾時のインク滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善されるので好ましい。
【0069】
本発明のインク組成物の25℃における表面張力は、20〜35mN/mであることが好ましく、23〜33mN/mであることがより好ましい。ポリオレフィン、PET、コート紙、非コート紙など様々な被記録媒体へ記録する場合、滲み及び浸透の観点から、20mN/m以上が好ましく、濡れ性の点では、35mN/m以下が好ましい。
【0070】
(インクジェット記録方法)
本発明のインクジェット記録方法は、(a)本発明のインクジェットインク組成物をインクジェット方式により吐出して支持体上に画像を形成する画像形成工程、及び、(b)得られた画像に活性放射線を照射して、前記インクジェットインク組成物を硬化させて、前記支持体上に硬化した画像を有する印刷物を得る硬化工程を含むことを特徴とする。本発明のインクジェット記録方法は、(a)及び(b)工程を含むことにより、支持体上において硬化したインク組成物によって画像を形成する方法である。
【0071】
本発明において、支持体としては、特に限定されず、公知の被記録媒体を使用することができる。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。また、本発明における被記録媒体として、非吸収性被記録媒体が好適に使用することができる。
【0072】
本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、目的とする解像度を達成し得る公知のインクジェット記録装置を任意に選択して使用することができる。即ち、市販品を含む公知のインクジェット記録装置であれば、いずれも、本発明のインクジェット記録方法の(a)工程における支持体へのインク組成物の吐出を実施することができる。
本発明で用いることのできるインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、活性放射線源を含む装置が挙げられる。
インク供給系は、例えば、本発明のインク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク組成物供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1〜100pL、より好ましくは3〜42pL、更に好ましくは8〜30pLのマルチサイズドットを、好ましくは320×320〜4,000×4,000dpi、より好ましくは400×400〜1,600×1,600dpi、更に好ましくは720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0073】
本発明において、吐出されるインク組成物を一定温度にすることが好ましいことから、インク組成物供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱及び加温を行うことができる。温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク組成物の流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク組成物供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断又は断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、あるいは、熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うと共に、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【0074】
本発明のインク組成物のような放射線硬化型インク組成物は、概して通常インクジェット記録用インク組成物で使用される水性インク組成物より粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。インク組成物の粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こす。したがって、吐出時のインク組成物の温度はできるだけ一定に保つことが必要である。よって、本発明において、インク組成物の温度の制御幅は、設定温度の±5℃であることが好ましく、設定温度の±2℃であることがより好ましく、設定温度の±1℃であることが更に好ましい。
【0075】
次に、(b)得られた画像に活性放射線を照射して、前記インクジェットインク組成物を硬化させて、前記支持体上に硬化した画像を有する印刷物を得る硬化工程について説明する。
被記録媒体上に吐出されたインク組成物は、活性放射線を照射することによって硬化する。これは、本発明のインク組成物に含まれる光重合開始剤が活性放射線の照射により分解して、ラジカルなどの重合開始種を発生し、その開始種の機能にラジカル重合性化合物の重合反応が、生起、促進されるためである。このとき、インク組成物において重合開始剤と共に増感剤が存在すると、系中の増感剤が活性放射線を吸収して励起状態となり、重合開始剤と接触することによって重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
【0076】
ここで、使用される活性放射線は、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光又は赤外光などが使用され得る。活性放射線のピーク波長は、増感剤の吸収特性にもよるが、例えば、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、350〜420nmであることが更に好ましい。
【0077】
また、本発明のインク組成物の、光重合開始系は、低出力の活性放射線であっても十分な感度を有するものである。したがって、露光面照度が、好ましくは10〜4,000mW/cm2、より好ましくは20〜2,500mW/cm2で硬化させることが適当である。
【0078】
活性放射線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェット記録用インク組成物の硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。しかしながら、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。さらに、LED(UV−LED)、LD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。
また、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を活性放射線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。さらに一層短い波長が必要とされる場合、LEDとして、米国特許番号第6,084,250号明細書に開示されている、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性放射線を放出し得るLEDが例示できる。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で好ましい活性放射線源はUV−LEDであり、特に好ましくは350〜420nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
なお、LEDの被記録媒体上での最高照度は10〜2,000mW/cm2であることが好ましく、20〜1,000mW/cm2であることがより好ましく、50〜800mW/cm2であることが特に好ましい。
【0079】
本発明のインク組成物は、このような活性放射線に、好ましくは0.01〜120秒、より好ましくは0.01〜90秒、更に好ましくは0.01〜10秒照射されることが適当である。
また、本発明のインクジェット記録方法においては、インク組成物を吐出した後0.01〜10秒の間に、2,000mW/cm2以下の露光面照度で活性放射線を照射し、前記インク組成物を硬化させることが好ましい。
活性放射線の照射条件並びに基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、インク組成物の吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査することによって行われる。活性放射線の照射は、インク組成物の着弾後、一定時間(好ましくは0.01〜0.5秒、より好ましくは0.01〜0.3秒、更に好ましくは0.01〜0.15秒)をおいて行われることになる。このようにインク組成物の着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、被記録媒体に着弾したインク組成物が硬化前に滲むことを防止するこが可能となる。また、多孔質な被記録媒体に対しても光源の届かない深部までインク組成物が浸透する前に露光することができるため、未反応モノマーの残留を抑えることができるので好ましい。
さらに、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させてもよい。国際公開第99/54415号パンフレットでは、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されており、このような硬化方法もまた、本発明のインクジェット記録方法に適用することができる。
【0080】
本発明のインクジェット記録方法においては、光沢性に優れた画像が得られることから、印刷物における画像の少なくとも一部を、前記(a)画像形成工程及び前記(b)硬化工程を2回以上繰り返して形成することが好ましい。
前記印刷物における画像の少なくとも一部を、前記(a)画像形成工程及び前記(b)硬化工程を2回以上繰り返して形成する態様の例としては、1色につき前記(a)及び(b)工程を1回ずつ行ってカラー画像を形成する態様や、単色の画像について前記(a)及び(b)工程を2回以上繰り返して単色の画像を形成する態様、カラー画像における1色について前記(a)及び(b)工程を2回以上繰り返して単色の画像を形成し、更にカラー画像の他の色についても同様に前記(a)及び(b)工程を2回以上繰り返すことにより、カラー画像を形成する態様が挙げられる。
本発明のインク組成物は、好ましくはシリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤を含有しない。これらの界面活性剤を含まないインク組成物を使用して前記(a)及び(b)工程を2回以上繰り返した場合、先に吐出されたインク組成物の液滴の表面にこれらの界面活性剤の偏在がなく、長時間にわたり打滴表面が液状態を保持するため、後に吐出されたインク組成物の液滴との合一が容易に進行し、結果として画像の光沢性が向上する。
【0081】
上述したようなインクジェット記録方法を採用することにより、表面の濡れ性が異なる様々な支持体に対しても、着弾したインク組成物のドット径を一定に保つことができ、画質が向上する。なお、カラー画像を得るためには、明度の低い色から順に重ねていくことが好ましい。明度の低いインク組成物から順に重ねることにより、下部のインク組成物まで照射線が到達しやすくなり、良好な硬化感度、残留モノマーの低減、密着性の向上が期待できる。また、照射は、全色を吐出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
【0082】
本発明のインクジェット記録方法には、本発明のインク組成物を1つ以上含むインクセットを好適に使用することができる。吐出する各着色インク組成物の順番は、特に限定されるわけではないが、明度の低い着色インク組成物から被記録媒体に付与することが好ましい。本発明のインク組成物として、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックのインク組成物を使用する場合には、イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。また、これにホワイトを加えて使用する場合にはホワイト→イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。さらに、本発明はこれに限定されず、ライトシアン、ライトマゼンタのインク組成物とシアン、マゼンタ、ブラック、ホワイト、イエローの濃色インク組成物の計7色が少なくとも含まれるインクセットとしても使用することができ、その場合には、ホワイト→ライトシアン→ライトマゼンタ→イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。
このようにして、本発明のインク組成物は、活性放射線の照射により高感度で硬化することで、支持体表面に画像を形成することができる。
【0083】
本発明のインク組成物を複数色そろえ、インクセットとして用いる場合、本発明のインク組成物を少なくとも1つ含み、本発明のインク組成物又は本発明以外のインク組成物と組み合わせた2種以上のインク組成物を有するインクセットであれば、特に制限はないが、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ホワイト、ライトマゼンタ、及び、ライトシアンよりなる群から選択される色の本発明のインク組成物を少なくとも1つ含むことが好ましい。
また、本発明のインクセットは、本発明のインクジェット記録方法に好適に用いることができる。
本発明のインク組成物を使用してフルカラー画像を得るためには、本発明のインクセットとして、少なくともイエロー、シアン、マゼンタ、及び、ブラックよりなる4色の濃色インク組成物を組み合わせたインクセットであることが好ましく、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック、ホワイトよりなる5色の濃色インク組成物を組み合わせたインクセットであることがより好ましく、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック、及び、ホワイトよりなる5色の濃色インク組成物と、ライトシアン、及び、ライトマゼンタよりなる2色のインク組成物とを組み合わせたインクセットであることが更に好ましい。
なお、本発明における「濃色インク組成物」とは、着色剤の含有量がインク組成物全体の1重量%を超えているインク組成物を意味する。前記着色剤としては、特に制限はなく公知の着色剤を用いることができ、顔料や分散染料が例示できる。
本発明のインクセットが、少なくとも1つの濃色インク組成物、及び、少なくとも1つの淡色インク組成物を含んでおり、濃色インク組成物と淡色インク組成物とが同系色の着色剤を用いている場合、濃色インク組成物と淡色インク組成物との着色剤濃度の比が、濃色インク組成物:淡色インク組成物=15:1〜4:1であることが好ましく、12:1〜4:1であることがより好ましく、10:1〜4.5:1であることが更に好ましい。上記範囲であると、粒状感の少ない、鮮やかなフルカラー画像が得られる。
【実施例】
【0084】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の記載における「部」とは、特に断りのない限り「重量部」を示すものとする。
【0085】
本発明で使用した素材は下記に示す通りである。
(着色剤)
・IRGALITTE BLUE GLVO(シアン顔料、チバスペシャルティーケミカルズ社製)
・CINQUASIA MAGENTA RT−335−D(マゼンタ顔料、チバスペシャルティーケミカルズ社製)
・NOVOPERM YELLOW H2G(イエロー顔料、クラリアント社製)
・SPECIAL BLACK 250(ブラック顔料、チバスペシャルティーケミカルズ社製)
・タイペークCR60−2(ホワイト顔料、石原産業(株)製)
(分散剤)
・SOLSPERSE32000(Noveon社製分散剤)
・SOLSPERSE36000(Noveon社製分散剤)
(成分A)
・V−CAP(N−ビニルカプロラクタム、ISP社製)
(成分B)
・NKエステルA−DOD−N(1,9−ノナンジオールジアクリレート、新中村化学工業(株)製)
・CD595(1,10−デカンジオールジアクリレート、Sartomer社製)
・CD262(1,12−ドデカンジオールジアクリレート、Sartomer社製)
・CD406(シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、Sartomer社製)
・SR341(3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、Sartomer社製)
(成分C)
・IRGACURE369(光重合開始剤、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、チバガイギー社製)
・IRGACURE819(光重合開始剤、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、チバガイギー社製)
・SPEEDCUREITX(光重合開始剤、イソプロピルチオキサントン、LAMBSON社製)
・化合物I−14(光重合開始剤、下記化合物)
【0086】
【化10】

【0087】
(他の重合性化合物)
・NKエステルAMP−10G(フェノキシエチルアクリレート、新中村化学工業(株)製)
・SR9003(PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、Sartomer社製)
・SR508(ジプロピレングリコールジアクリレート、Sartomer社製)
・CD217(4−t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、Sartomer社製)
・CD420(3,3,5−トリメチルシクロヘキシルアクリレート、Sartomer社製)
・SR238(1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、Sartomer社製)
・SR506D(イソボロニルアクリレート、Sartomer社製)
・SR440(イソオクチルアクリレート、Sartomer社製)
・SR395(イソデシルアクリレート、Sartomer社製)
・SR833S(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、Sartomer社製)
・KAYARAD R−684(ジシクロペンタニルジアクリレート、日本化薬(株)製)
(他の重合開始剤)
・LUCIRIN TPO(光重合開始剤、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、BASF社製)
・IRGACURE184(光重合開始剤、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チバガイギー社製)
・IRGACURE127(光重合開始剤、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、チバガイギー社製)
(オリゴマー)
・CN964 A85(二官能脂肪族ウレタンアクリレート・15重量%トリプロピレングリコールジアクリレート含有、Sartomer社製)
(重合禁止剤)
・FIRSTCURE ST−1(重合禁止剤、トリス(N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミン)アルミニウム塩(10重量%)とフェノキシエチルアクリレート(90重量%)との混合物、Chem First社製)
(界面活性剤)
・TEGORAD2100(シリコーン系界面活性剤、デグサ社製)
・BYK377(シリコーン系界面活性剤、BYK Chemie社製)
【0088】
(各ミルベースの調製)
IRGALITTE BLUE GLVOを300重量部と、SR9003を620重量部と、SOLSPERSE32000を80重量部とを撹拌混合し、シアンミルベースAを得た。なお、シアンミルベースAの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで4時間分散を行った。
【0089】
シアンミルベースAと同様にして、表1に示す組成、分散条件でマゼンタミルベースB、イエローミルベースC、ブラックミルベースD及びホワイトミルベースEを調製した。
【0090】
【表1】

【0091】
(実施例1〜24、及び、比較例1〜8)
<インク組成物の作製方法>
表2〜7に記載の素材を混合、撹拌することで、各インク組成物を得た。
【0092】
<インクジェット記録方法>
UV硬化型インクジェットプリンター LUXELJET UV250(富士フイルムグラフィックシステムズ(株)製)を用い、インクジェット画像を印刷した。
Avery permanent 400(Avery社製、ポリ塩化ビニル(PVC)支持体)上に、解像度600×450dpi、サイズ2m×1mで、100%ベタ画像の印刷を行った。なお、同装置は、インクジェットヘッドを操作させることで描画を行うものであり、また、ヘッドの両端にそれぞれUVランプ1つずつ装着されており、1回のヘッド操作で2つのUVランプが照射されるような形態になっている。ベタ画像は、支持体の同一箇所にインク打滴と2つのランプによるUV照射とを交互に8回繰り返すことにより形成した。ランプはIntegration Technology社製SUB ZERO 085 H bulbランプユニットを装着し、前後のランプ強度をレベル3に設定した。
印字中、路面照度を測定したところ、980mW/cm2であった。また、吐出から露光までの時間は、0.2〜0.3秒であった。また、1ドロップあたりの吐出量は、6〜42pLの範囲で行った。
【0093】
<光沢性評価>
上記インクジェット記録方法によって得られた画像を用い、Sheen Instruments社製光沢度計を用い、測定角60°で測定を行った。評価基準は、以下の通りである。
5:光沢度50以上
4:光沢度40以上50未満
3:光沢度30以上40未満
2:光沢度20以上30未満
1:光沢度20未満
【0094】
<画像筋ムラ評価>
上記インクジェット画像記録方法によって得られた画像の筋ムラを画像から1.5m離れた地点から目視で評価した。評価基準は、以下の通りである。
3:筋ムラが目視でははっきりと見えない。
2:筋ムラが目視でわずかに確認できる。
1:筋ムラが目視ではっきり確認できる。
【0095】
<硬化性評価>
上記インクジェット記録方法にて得られた画像を触診により、画像のべとつきの程度を以下の基準で評価した。
3:画像にべとつきなし。
2:画像がややべとついているが、未硬化のインク組成物又は硬化膜は手に転写しない。
1:画像がべとついており、未硬化のインク組成物又は硬化膜の一部が手に転写した。
【0096】
<柔軟性評価方法:折り曲げテスト>
硬化膜の柔軟性を評価する方法として、折り曲げテストを実施した。
前記インクジェット記録方法にて、100%、200%のベタ画像を作成し、以下の基準で評価を行った。
3:100%、200%のサンプルでは割れが発生しない。
2:100%のサンプルでは割れが発生しないが、平均膜厚200%のサンプルで、画像部の折り曲げた部分に割れが入る。
1:平均膜厚100%、200%いずれのサンプルでも、画像部の折り曲げた部分に割れが入る。
【0097】
【表2】

【0098】
【表3】

【0099】
【表4】

【0100】
【表5】

【0101】
【表6】

【0102】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(成分A)N−ビニルラクタム類、
(成分B)炭素数9〜18の直鎖炭化水素ジオール、炭素数6〜18の分岐炭化水素ジオール、及び、炭素数6〜18の単環状脂肪族炭化水素ジオールよりなる群から選ばれた少なくとも1種のジオールのジ(メタ)アクリル酸エステル、並びに、
(成分C)α−アミノケトン化合物、チオキサントン化合物、チオクロマノン化合物、及び、ビスアシルホスフィンオキサイド化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の重合開始剤、を含有することを特徴とする
インクジェットインク組成物。
【請求項2】
前記成分Bが、炭素数10〜18の直鎖炭化水素ジオール、炭素数6〜18の分岐炭化水素ジオール、及び、炭素数6〜18の単環状脂肪族炭化水素ジオールよりなる群から選ばれた少なくとも1種のジオールのジ(メタ)アクリル酸エステルである、請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項3】
前記成分Bが、炭素数6〜18の分岐炭化水素ジオール、及び、炭素数6〜18の単環状脂肪族炭化水素ジオールよりなる群から選ばれた少なくとも1種のジオールのジ(メタ)アクリル酸エステルである、請求項1又は2に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項4】
前記成分Bが、1,10−デカンジオールジアクリレート、1,12−デカンジオールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、及び、シクロヘキサンジメタノールジアクリレートよりなる群から選ばれた少なくとも1つのジ(メタ)アクリル酸エステルである、請求項2に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項5】
前記成分Bが、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、及び、シクロヘキサンジメタノールジアクリレートよりなる群から選ばれた少なくとも1つのジ(メタ)アクリル酸エステルである、請求項3に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項6】
(成分D)式(D)で表される化合物を更に含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【化1】

(式(D)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2〜R12はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。)
【請求項7】
前記成分Dが、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、及び/又は、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートである、請求項6に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項8】
前記成分Bの含有量が、インク組成物の全重量に対し、15重量%以上50重量%以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項9】
前記成分Aの含有量が、インク組成物の全重量に対し、8重量%以上35重量%以下である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項10】
α−アミノケトン化合物、チオキサントン化合物、チオクロマノン化合物、ビスアシルホスフィンオキサイド化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、及び、モノアシルホスフィンオキサイド化合物よりなる群から選ばれた少なくとも3種の重合開始剤を含有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項11】
シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤を含有しないか、又は、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤の総含有量が、インク組成物の全重量に対し、0重量%を超え0.1重量%以下である、請求項1〜10のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項12】
インク組成物に含有されるエチレン性不飽和化合物のうち、75重量%以上がエーテル結合を含有しない化合物である、請求項1〜11のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項13】
(a)請求項1〜12のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物をインクジェット方式により吐出して支持体上に画像を形成する画像形成工程、及び、
(b)得られた画像に活性放射線を照射して、前記インク組成物を硬化させて、前記支持体上に硬化した画像を有する印刷物を得る硬化工程を含むことを特徴とする
インクジェット記録方法。
【請求項14】
印刷物における画像の少なくとも一部を、前記画像形成工程及び前記硬化工程を2回以上繰り返して形成する、請求項13に記載のインクジェット記録方法。

【公開番号】特開2011−144251(P2011−144251A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5444(P2010−5444)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】