説明

インクジェットプリンタおよび圧力調整装置

【課題】ヘッド内で保持されるインクの圧力を簡単な構成にて一定に保つ。
【解決手段】インクジェットプリンタでは、ヘッドとインクタンクとを接続する供給流路に圧力調整装置6が設けられる。圧力調整装置6は、シリンダ61、ピストン62および付勢部65を備え、シリンダ61では、供給流路のインクタンク側に流入口611、ヘッド側に流出口641が形成される。付勢部65がピストン62をシリンダ61の軸方向の一方側に向けて付勢することにより流入口611が閉塞される。また、インクの吐出によるヘッド内のインクの圧力の低下に従ってピストン62が軸方向の他方側に移動することにより、流入口611が開放されて流入口611からシリンダ61内にインクが流入し、流出口641からヘッドにインクが流出する。このような簡単な構成の圧力調整装置6により、ヘッド内で保持されるインクの圧力が一定に保たれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッド内で保持されるインクの圧力を一定に保つ圧力調整装置、および、当該圧力調整装置を備えるインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インクの微小な液滴を吐出する複数の吐出口が配列されたヘッドを印刷の対象物に沿って走査することにより、対象物に印刷を行うインクジェットプリンタが用いられている。インクジェットプリンタの一例では、インクを貯溜する容器をヘッドの近傍に配置するとともに、容器内のインクの液面をヘッドの吐出口よりも低くすることにより、水頭差により容器内のインクがヘッドに供給される(例えば、特許文献1参照)。また、特許文献1では、インクジェットヘッドと容器の間に、電空レギュレータでマイナスの微差圧を生じさせる微差圧調整機構を設けることにより、容器をインクジェットヘッドより高い位置に設置する手法が開示されている。
【0003】
なお、特許文献2では、コイルスプリングと、コイルスプリングにより弁座に常時弾接される可動膜とからなる差圧弁として構成されたインク供給ユニットにより、インクジェット記録ヘッドに負圧状態に維持されたインクを供給する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−165951号公報
【特許文献2】特開2008−247042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、水頭差によりインクタンク(容器)内のインクをヘッドに供給する場合、既述のように、インクタンクをヘッドの近傍に配置するとともに、インクタンク内のインクの液面をヘッドの吐出口よりも低くする必要があるため、実際のインクタンクの配置は、ヘッドの吐出口近傍に位置する対象物(または、その保持部)の側方等に制限され、インクジェットプリンタの設計の自由度が低くなってしまう。
【0006】
また、インクタンク内を負圧にする機構を設けることにより、インクタンクをヘッドの上方に配置することが可能となり、設計の自由度が高められるが、インクタンク内の負圧を一定に制御することは容易ではなく、複雑な機構が必要となる。万一、インクタンク内の負圧が大きく変化すると、ヘッド内で保持されるインクの圧力も変化してしまい、吐出口からのインクの吐出に影響を及ぼして、形成される画像の質が低下してしまう。したがって、インクタンクの配置を過度に制限することなく、ヘッド内で保持されるインクの圧力を簡単な構成にて一定に保つことが可能な新規な手法が求められている。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、ヘッド内で保持されるインクの圧力を簡単な構成にて一定に保つことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、インクジェットプリンタであって、対象物に向けてインクを吐出するヘッドと、前記ヘッドに対して前記対象物を相対的に移動する移動機構と、供給流路を介して前記ヘッドに接続されるとともに、インクを貯溜するインクタンクと、前記供給流路に設けられ、前記インクタンクから前記ヘッドに送られるとともに前記ヘッド内で保持されるインクの圧力を一定に保つ圧力調整装置とを備え、前記圧力調整装置が、前記供給流路において前記インクタンク側に設けられる流入口、および、前記ヘッド側に設けられる流出口を有するシリンダと、前記シリンダ内に挿入されるピストンと、前記ピストンを前記シリンダの軸方向の一方側に向けて付勢して、前記流入口を閉塞する付勢部とを備え、インクの吐出による前記ヘッド内のインクの圧力の低下に従って前記ピストンが前記軸方向の他方側に移動することにより、前記流入口が開放されて前記流入口から前記シリンダ内にインクが流入し、前記流出口から前記ヘッドにインクが流出する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェットプリンタであって、前記流入口が前記シリンダの側部に形成され、前記ピストンの側部に対向し、前記ピストンが、前記軸方向の前記他方側に移動した際に前記流入口から前記シリンダ内に流入するインクが流れる流路を内部に有する。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のインクジェットプリンタであって、前記付勢部が、弾性部材を有し、前記ピストンの前記軸方向の前記一方側の端面が周囲に開放される。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載のインクジェットプリンタであって、前記圧力調整装置が、前記ピストンを前記軸方向の前記他方側に向けて付勢するとともに、付勢力が調整可能なもう1つの付勢部をさらに備える。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載のインクジェットプリンタであって、前記ヘッドと同様の構造を有するもう1つのヘッドと、前記供給流路の一部であり、前記ヘッドおよび前記もう1つのヘッドに接続されるマニホールドとをさらに備え、前記圧力調整装置の前記流出口が、前記マニホールドに接続される。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のインクジェットプリンタであって、前記移動機構が、前記対象物を所定の走査方向に連続的に移動し、前記走査方向に垂直、かつ、前記対象物の記録面に平行な配列方向に関して、前記マニホールドに接続される複数のヘッドにおける複数の吐出口が、前記記録面の記録範囲の全体に亘って配列されている。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載のインクジェットプリンタであって、前記ヘッド、前記移動機構および前記圧力調整装置を収容するとともに、内部が減圧されるチャンバ本体をさらに備える。
【0015】
請求項8に記載の発明は、対象物に向けてインクを吐出するヘッドと、インクを貯溜するインクタンクとを接続する供給流路に設けられ、前記インクタンクから前記供給流路を介して前記ヘッドに送られるとともに前記ヘッド内で保持されるインクの圧力を一定に保つ圧力調整装置であって、前記供給流路において前記インクタンク側に設けられる流入口、および、前記ヘッド側に設けられる流出口を有するシリンダと、前記シリンダ内に挿入されるピストンと、前記ピストンを前記シリンダの軸方向の一方側に向けて付勢して、前記流入口を閉塞する付勢部とを備え、インクの吐出による前記ヘッド内のインクの圧力の低下に従って前記ピストンが前記軸方向の他方側に移動することにより、前記流入口が開放されて前記流入口から前記シリンダ内にインクが流入し、前記流出口から前記ヘッドにインクが流出する。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の圧力調整装置であって、前記流入口が前記シリンダの側部に形成され、前記ピストンの側部に対向し、前記ピストンが、前記軸方向の前記他方側に移動した際に前記流入口から前記シリンダ内に流入するインクが流れる流路を内部に有する。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項8または9に記載の圧力調整装置であって、前記付勢部が、弾性部材を有し、前記ピストンの前記軸方向の前記一方側の端面が周囲に開放される。
【0018】
請求項11に記載の発明は、請求項8ないし10のいずれかに記載の圧力調整装置であって、前記ピストンを前記軸方向の前記他方側に向けて付勢するとともに、付勢力が調整可能なもう1つの付勢部をさらに備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡単な構成にてヘッド内で保持されるインクの圧力を一定に保つことができる。
【0020】
また、請求項3および10の発明では、周囲の圧力の変化により、周囲の圧力とヘッド内のインクの圧力との差が変化することを防止することができ、請求項4および11の発明では、ヘッド内のインクの圧力を容易に調整することができる。
【0021】
また、請求項5の発明では、圧力調整装置を複数のヘッドの近傍に設けることができ、ヘッド内のインクの圧力変動に対して圧力調整装置を迅速に応答させて、ヘッド内のインクの圧力を精度よく一定にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施の形態に係るインクジェットプリンタの斜視図である。
【図2】吐出部の底面図である。
【図3】ヘッドユニットおよびインク供給機構の構成を示す図である。
【図4】圧力調整装置の分解斜視図である。
【図5】圧力調整装置の断面図である。
【図6】圧力調整装置の断面図である。
【図7】圧力調整装置の他の例を示す図である。
【図8】第2の実施の形態に係るインクジェットプリンタを示す図である。
【図9】圧力調整装置の他の配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は本発明の第1の実施の形態に係るインクジェットプリンタ1の外観を示す斜視図である。インクジェットプリンタ1は、例えばフィルム等の撥液性を有するシート状の基材9上にカラーの画像を形成する装置である。
【0024】
図1のインクジェットプリンタ1は本体11および制御部4を備え、本体11はシート状の基材9を図1中のY方向(以下、「走査方向」ともいう。)に連続的に移動する搬送部27、および、移動途上の基材9の主面((+Z)側の主面であり、以下、「記録面」という。)に向けてインクの微小液滴を吐出する吐出部3を備える。搬送部27では、それぞれが図1中のX方向に長い複数のローラ271が、X方向に垂直なY方向に配列されており、複数のローラ271の(+Y)側にはロール状の基材9(供給ロール)を保持する供給部272が設けられ、複数のローラ271の(−Y)側にはロール状の基材9(巻取ロール)を保持する巻取部273が設けられる。以下の説明では、単に基材9という場合は搬送途上の部位(すなわち、複数のローラ271上の基材9の部位)を指すものとする。
【0025】
搬送部27の1つのローラ271aには基材9の走査方向の移動速度を検出するエンコーダ29が設けられ、制御部4がエンコーダ29の出力に基づいて巻取部273のモータの回転を制御することにより、基材9が(−Y)方向に一定速度にて移動する。実際には、供給部272が有するモータにて基材9に対して移動方向とは逆向き(すなわち、(+Y)方向)の負荷(テンション)を付与することにより、複数のローラ271上の基材9が波打つことなく滑らかに移動する。
【0026】
複数のローラ271の上方(図1中の(+Z)側)には吐出部3が配置され、吐出部3はローラ271を跨ぐようにして基台20に設けられるフレーム25に固定される。フレーム25上には紫外線を出射する光源39が設けられ、複数の光ファイバ(実際には、複数の光ファイバは束状となっており、図1では符号391を付して1本の太線にて示している。)を介して光源39からの光が吐出部3の内部へと導入される。
【0027】
図2は吐出部3の底面図である。図2に示すように、吐出部3はそれぞれが互いに異なる色のインクを吐出する複数の(図2では、4個の)ヘッドユニット33を備え、複数のヘッドユニット33はY方向に配列されて吐出部3の本体30に固定される。図2中の最も(+Y)側のヘッドユニット33はK(ブラック)の色のインクを吐出し、Kのヘッドユニット33の(−Y)側のヘッドユニット33はC(シアン)の色のインクを吐出し、Cのヘッドユニット33の(−Y)側のヘッドユニット33はM(マゼンタ)の色のインクを吐出し、最も(−Y)側のヘッドユニット33はY(イエロー)の色のインクを吐出する。各色のインクは紫外線硬化剤を含んでおり、紫外線硬化性を有している。なお、吐出部3に、ライトシアン、ライトマゼンタ、ホワイト等の他の色用のヘッドユニットがさらに設けられてもよい。また、インクは水性インクや、高粘度インク等であってもよい。
【0028】
各ヘッドユニット33では、同様の構造の複数のヘッド32(例えばピエゾ駆動方式のヘッド)が図2中のX方向(Y方向およびZ方向に垂直な方向であり、以下、「配列方向」という。)に千鳥状に配列されており、各ヘッド32の(−Z)側の面には複数の吐出口(一部のヘッド32においてのみ符号321を付す点にて示す。)が配列方向に配列形成される。これにより、ヘッドユニット33の全体では、走査方向に垂直、かつ、基材9の記録面に平行な配列方向に多数の吐出口321が一定のピッチにて配列され、記録面上において走査方向の各位置にて、配列方向に一列に並ぶ複数のドットの形成が可能となる。実際には、配列方向に関して、各ヘッドユニット33の複数の吐出口321は記録面の記録範囲の全体に亘って(ここでは、基材9の幅のほぼ全体に亘って)配列されており、基材9が吐出部3の下方を一回通過するのみで基材9への画像の印刷が完了する(いわゆる、ワンパス印刷)。
【0029】
また、図2の吐出部3には、光源39に接続される光照射部38が複数のヘッドユニット33の(−Y)側に設けられる。光照射部38では、複数の光ファイバがX方向に沿って配列されており、基材9上においてX方向に伸びる線状の領域に光照射部38により紫外線が照射される。これにより、記録面上に吐出された直後のインクに対して光照射部38からの紫外線が照射され、インクが短時間にて硬化する。
【0030】
インクジェットプリンタ1では、各ヘッドユニット33がインク供給機構5(後述の図3参照)に接続されており、インク供給機構5によりインクがヘッドユニット33に供給される。以下の説明では、複数の色のうちの一の色のヘッドユニット33およびインク供給機構5に着目するが、他の色のものも同様の構成となっている。
【0031】
図3はヘッドユニット33およびインク供給機構5の構成を示す図である。なお、図3では3個のヘッド32を図示しているが、実際のヘッドユニット33には図2のように多数のヘッド32が設けられる。
【0032】
図3に示すように、ヘッドユニット33は、1つのマニホールド34を備え、マニホールド34は、複数のヘッド32の上方近傍に配置される略円筒状のマニホールド本体341、および、マニホールド本体341と複数のヘッド32とを接続するとともにマニホールド本体341内のインクを複数のヘッド32へと導く複数のインク導入管342を有する。マニホールド本体341の一端は閉塞されており、他端は後述する圧力調整装置6を介して供給ライン51の一端に接続される。供給ライン51の他端は、インクを貯溜するインクタンク52に接続される。また、供給ライン51には送液部であるポンプ53が設けられる。このように、供給ライン51、圧力調整装置6およびマニホールド34を供給流路として、供給流路を介してインクタンク52がヘッド32に接続され、インクタンク52内のインクがヘッド32に送られる。インクジェットプリンタ1では、ヘッド32とインクタンク52との位置関係に制限はなく、インクタンク52は任意の位置に配置可能である。
【0033】
図4は圧力調整装置6の分解斜視図であり、図5は圧力調整装置6の中心軸J1を含む面における断面図である。図4および図5に示すように、圧力調整装置6は、中心軸J1を中心とするシリンダ61、シリンダ61内に挿入されるピストン62、シリンダ61の両端を閉塞する第1および第2カバー部63,64、並びに、ピストン62を第1カバー部63に向けて付勢する付勢部65を備える。シリンダ61、ピストン62、並びに、第1および第2カバー部63,64は、例えばステンレス鋼や、ポリアセタール等の樹脂にて形成される。
【0034】
第2カバー部64の中央には、中心軸J1を中心とする円形の開口641(後述するように、圧力調整装置6内のインクが流出する開口であるため、以下、「流出口641」という。)が形成されており、流出口641の周囲にはピストン62側に向かって突出する環状突出部642が形成される。付勢部65は、中心軸J1に平行な複数のガイドピン651を有し、各ガイドピン651は環状突出部642に設けられる固定孔643にて固定される。複数の固定孔643は中心軸J1を中心とする周方向に等角度間隔にて形成され、複数のガイドピン651は中心軸J1の周囲に配置される。ピストン62の第2カバー部64側の端面620bには、複数のガイドピン651が進入可能な複数の孔621が形成され、複数のガイドピン651の先端が複数の孔621内に挿入される。
【0035】
図5に示すように、第1カバー部63にも中心軸J1に平行な1つのガイドピン631が設けられ、ピストン62の第1カバー部63側の端面620aにガイドピン631が進入可能な孔622が形成される。圧力調整装置6では、孔621,622に挿入されるガイドピン651,631により、ピストン62の中心軸J1方向の移動がガイドされる。
【0036】
付勢部65は、複数のガイドピン651にそれぞれ嵌め込まれる複数のバネ(圧縮コイルバネ)652をさらに有し、バネ652の一端は第2カバー部64に当接し、他端はピストン62に当接する。詳細には、第2カバー部64の固定孔643は、ピストン62に近い部分の直径が遠い部分よりも大きい、いわゆる2段孔となっており、固定孔643の直径が変化する部分に形成される環状面にバネ652の一端が当接する。同様に、ピストン62の孔621は、第2カバー部64に近い部分の直径が遠い部分よりも大きい2段孔となっており、孔621の直径が変化する部分に形成される環状面にバネ652の他端が当接する。付勢部65の複数のバネ652により、ピストン62が中心軸J1方向の第1カバー部63側に向けて付勢される。
【0037】
第1カバー部63には複数の通気孔632(図5では、1つの通気孔のみに符号632を付している。)が形成されており、ピストン62の端面620aは周囲の雰囲気に開放される。したがって、シリンダ61内が大気圧におよそ等しい状態では、付勢部65の付勢力によりピストン62の端面620aが第1カバー部63に当接する。圧力調整装置6では、バネ652に代えて、ゴム等の他の弾性部材が用いられてもよい(後述の図7のバネ663において同様)。
【0038】
図4および図5に示すように、ピストン62の第2カバー部64側の端面620bにおいて複数の孔621の内側(中心軸J1側)には、インクの流路となる孔部623が形成される。また、略円柱状のピストン62の外周面には、中心軸J1方向の中央近傍にて環状溝624が形成される。環状溝624の底面には複数の開口625が形成されており、周方向に配列される複数の開口625を介して環状溝624が孔部623に接続される。
【0039】
図5に示すように、シリンダ61の内周面(円筒面)には環状溝612が形成される。また、シリンダ61の側部には環状溝612に接続する流入口611が形成され、流入口611はピストン62の側部に対向する。流入口611には、図3の供給ライン51の一端が接続され、第2カバー部64の流出口641は、マニホールド本体341に接続される。これにより、流入口611は、インクの供給流路においてインクタンク52側に設けられ、流出口641はヘッド32側に設けられる。
【0040】
インクジェットプリンタ1では、圧力調整装置6、マニホールド34および複数のヘッド32の内部が予めインクで満たされており、ポンプ53の送液動作により、供給ライン51を介して流入口611近傍に比較的高い圧力のインクが供給される。図5に示すように、ピストン62の端面620aが第1カバー部63に当接した状態では、環状溝624が流入口611よりも第1カバー部63側に位置して、流入口611がピストン62の側部(環状溝624よりも第2カバー部64側の側面)により閉塞される。
【0041】
インクジェットプリンタ1による印刷(画像形成)の際には、複数のヘッド32からのインクの吐出に伴って、マニホールド34および複数のヘッド32の内部のインクの量が減少してインクの圧力が漸次低下する。これにより、流出口641近傍(シリンダ61内)のインクの圧力も低下して、ピストン62が第2カバー部64側へと移動する。そして、図6に示すように、ピストン62の環状溝624とシリンダ61の内周面の環状溝612とが接続して、流入口611が開放されると、流入口611からシリンダ61内にインクが流入する。詳細には、ピストン62の周囲に形成されるシリンダ61の環状溝612からピストン62の全周に形成される環状溝624へとインクが流れ込み、複数の開口625を介して孔部623へと流れる。そして、流出口641からインクが流出し、マニホールド34を介して複数のヘッド32にインクが流れ込む。このように、環状溝624、複数の開口625および孔部623は、ピストン62の内部におけるインクの流路となっている。
【0042】
インクがマニホールド34および複数のヘッド32の内部に補充されると、当該内部および流出口641近傍のインクの圧力が増大し、ピストン62が付勢部65の付勢力により第1カバー部63側に戻る。これにより、流入口611がピストン62の側部により閉塞されて、シリンダ61内へのインクの流入が停止される。
【0043】
既述のように、ピストン62の端面620aは大気圧に開放されるとともに、付勢部65によりピストン62が第1カバー部63側に弾性的に付勢されるため、大気圧と流出口641近傍におけるインクの圧力(大気圧よりも低い。)との差が、付勢部65のバネ652の弾性力(付勢力)に相当する圧力よりも(ある程度)高くなったときに、ピストン62が第2カバー部64に向かって移動して、流入口611が開放される。また、シリンダ61内へのインクの流入により、当該差が付勢部65の弾性力に相当する圧力よりも(ある程度)低くなったときに、ピストン62が第1カバー部63に向かって移動して、流入口611が閉塞される。
【0044】
印刷時における圧力調整装置6の実際の動作では、ピストン62の中心軸J1方向への移動による流入口611の開放および閉塞が頻繁に繰り返され、マニホールド34および複数のヘッド32の内部のインクの圧力が、およそ一定に保たれる。このとき、流入口611がピストン62の側部に対向して形成されることにより、流入口611近傍におけるインクの圧力が、ピストン62の中心軸J1方向への移動に影響を及ぼすことが防止される。また、圧力調整装置6よりも下方に配置されるヘッド32の吐出口321におけるインクの圧力が、大気圧よりも僅かに低くなるように(すなわち、僅かに負圧になるように)、流入口611の開放および閉塞が切り替わる際の付勢部65の弾性力が調整されており、これにより、吐出口321内にインクのメニスカスが形成されて吐出口321からのインクの漏れが防止される(後述の図7の圧力調整装置6aにおいて同様)。
【0045】
実際には、シリンダ61の内周面とピストン62の外周面との間には、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の耐薬品性に優れた樹脂のOリング(図示省略)が設けられる。Oリングは、例えば、ピストン62の外周面に形成される複数の環状溝に嵌め込まれる。図5の状態において、複数の環状溝は、中心軸J1方向に関して流入口611の両外側近傍、および、環状溝624と端面620aとの間の位置に設けられることが好ましい。これにより、流入口611近傍のインクがピストン62とシリンダ61との間からシリンダ61内に入り込むこと、および、外部の空気が端面620a側からピストン62とシリンダ61との間を介して環状溝624へと入り込むことが防止される。また、第2カバー部64とシリンダ61との間にもOリング613が設けられており、インクの漏れが防止される。なお、インクよりも表面張力が大きい所定の液体シール剤(オイルやグリス等)を、シリンダ61の内周面とピストン62の外周面との間に介在させることにより、上記のようなOリングが省略されてもよい。
【0046】
ここで、水頭差によりインクタンク内のインクをヘッドに供給する比較例のインクジェットプリンタを想定すると、このようなインクジェットプリンタでは、インクタンクを吐出部の近傍に配置するとともに、インクタンク内のインクの液面をヘッドの吐出口よりも低くする必要がある。したがって、実際のインクタンクの配置は、ヘッドの吐出口の近傍に位置する対象物の保持部(図1の複数のローラ271に相当する。)の側方等に制限される。例えば、インクジェットプリンタのメンテナンスを行う際には、作業者によるヘッドの吐出口へのアクセスを容易にするため、吐出部を保持部から離れた位置に移動する必要があるが、吐出部に接続されるとともに保持部の側方に配置されるインクタンクの存在により、吐出部を移動させる際に様々な制約が生じてしまう。特に、保持部に対してインクタンクとは反対側に吐出部を移動する必要がある場合には、吐出部およびインクタンクを持ち上げて移動する煩雑な作業を要してしまう。
【0047】
また、インクタンク内を負圧にする負圧機構を設けることにより、インクタンクを保持部の側方以外の位置(例えば、ヘッドの上方)に配置することが可能となるが、インクタンク内の負圧を一定に制御することは容易ではない。万一、インクタンク内の圧力が大きく変化すると、ヘッド内で保持されるインクの圧力も変化してしまい、基材9上のインクの着弾位置(吐出口に対する相対的な着弾位置)や吐出量等の変動が生じてしまう。負圧機構において、ポンプ以外に圧力センサやバッファタンク等を設けて、インクタンク内の負圧を確実に制御することも考えられるが、当該機構の構成が複雑になるとともに、インクジェットプリンタの製造コストが増大してしまう。
【0048】
これに対し、インクジェットプリンタ1では、シリンダ61およびピストン62を有する圧力調整装置6が、インクタンク52とヘッド32とを接続する供給流路に設けられる。圧力調整装置6では、付勢部65がピストン62をシリンダ61の中心軸J1方向の一方側に向けて付勢することにより、シリンダ61に形成される流入口611が閉塞され、インクの吐出によるヘッド32内のインクの圧力の低下に従ってピストン62が中心軸J1方向の他方側に移動することにより、流入口611が開放される。これにより、シリンダ61内のインクのおよそ一定の圧力を境に流入口611の閉塞および開放が切り替えられ、ヘッド32内で保持されるインクの圧力が一定に保たれる。このように、インクジェットプリンタ1では、簡単な構成であり、安価に製作可能な圧力調整装置6を用いることにより、インクタンク52の配置に制限を設けることなく、ヘッド32内で保持されるインクの圧力を一定に保つことが可能となる。その結果、ヘッド32内のインクの圧力が変化した際に生じる基材9上のインクの着弾位置等の変動を防止することが可能となり、高精度な印刷(すなわち、高品質な印刷物の作成)を安定して行うことが実現される。
【0049】
また、ピストン62の第1カバー部63側の端面620aが周囲に開放されることにより、インクジェットプリンタ1の周囲の圧力(本実施の形態では、大気圧)が変化した場合でも、周囲の圧力とヘッド32内のインクの圧力との差が変化することを防止することができ、吐出口321内におけるインクのメニスカスの状態が大幅に変化すること、あるいは、当該差に起因するインクの吐出精度(吐出量や吐出位置に関する精度)の低下を防止することができる。
【0050】
図7は、圧力調整装置の他の例を示す図である。図7の圧力調整装置6aでは、第1カバー部63aとピストン62aとの間にもう1つの付勢部66が設けられ、第1カバー部63aおよびピストン62aの形状が、図5の圧力調整装置6と僅かに相違している。他の構成は図5と同様であり、同符号を付している。
【0051】
付勢部66は、シリンダ61内に挿入されるとともに中心軸J1を中心とする円板状の支持板661を有し、支持板661には中心軸J1に平行な複数のガイドピン662の一端が固定される。複数のガイドピン662は、付勢部65のガイドピン651と同様に、中心軸J1を中心とする周方向に等角度間隔にて配置され、ピストン62aの第1カバー部63a側の端面620aには、複数のガイドピン662が進入可能な複数の孔622aが形成される。複数のガイドピン662には、複数のバネ(圧縮コイルバネ)663が嵌め込まれており、バネ663の一端は支持板661に当接し、他端はピストン62aの端面620aに当接する。また、支持板661の中心軸J1方向の位置は、第1カバー部63aに設けられるボルト633の進退量により調整可能である。これにより、付勢部66がピストン62aを中心軸J1方向の第2カバー部64側に向けて付勢する付勢力が調整可能となる。
【0052】
図7の圧力調整装置6aにおいても、支持板661および第1カバー部63aの通気孔664,632により、ピストン62aの端面620aが大気圧に開放される。また、圧力調整装置6aの通常の状態において、付勢部66にて調整可能な最大の付勢力(弾性力)は、付勢部65による付勢力よりも常に小さい。したがって、大気圧と流出口641近傍におけるインクの圧力との差が、付勢部65,66間の付勢力の大きさの差(弾性力の和)に相当する圧力よりも低い状態では、ピストン62aが第1カバー部63aに近接して、流入口611が閉塞される。また、大気圧とインク圧力との差が、弾性力の和に相当する圧力よりも(ある程度)高くなったときには、ピストン62aが第2カバー部64に向かって移動して、流入口611が開放される。このようにして、ピストン62aの中心軸J1方向への移動による流入口611の開放および閉塞が繰り返されることにより、マニホールド34および複数のヘッド32の内部のインクの圧力が、およそ一定に保たれる。
【0053】
以上に説明したように、図7の圧力調整装置6aでは、ピストン62aを中心軸J1方向の第2カバー部64側に向けて付勢する付勢部66による付勢力が調整可能とされる。これにより、流入口611が開放または閉塞される際のシリンダ61内のインクの圧力を変更することができ、およそ一定に保たれるヘッド32内のインクの圧力を容易に調整することが実現される。その結果、複数のインクジェットプリンタ1を製造する際に、プリンタ間の調整(いわゆる、機差調整)を行ってヘッド32内のインクの圧力に相違が生じることを容易に防止することができる。
【0054】
図8は、本発明の第2の実施の形態に係るインクジェットプリンタ1aの外観を示す斜視図である。インクジェットプリンタ1aは、図1の構成に追加して、本体11の全体を収容するチャンバ本体12、および、チャンバ本体12の内部を減圧する減圧ポンプ13を備える。他の構成は、図1と同様であり同符号を付している。図8では、制御部4の図示を省略している。
【0055】
図8のインクジェットプリンタ1aでは、減圧環境下にて印刷を行うことにより、コーヒーステイン現象等が抑制され、均一な膜厚のインク画像を基材9上に形成することが実現される。また、複数のヘッド32および圧力調整装置6(または、圧力調整装置6a)が同一の減圧環境下に置かれるとともに、ピストン62の第1カバー部63側の端面620aが周囲に開放される。既述のように、流入口611が開放または閉塞される際の周囲の圧力とシリンダ61内のインクの圧力との差は付勢部65の付勢力のみに依存するため、インクジェットプリンタ1aでは、周囲の圧力とヘッド32内のインクの圧力との差を、大気圧環境下におけるものとほぼ同じにすることができる。これにより、インクの吐出に係る調整等を、大気圧環境下にて容易に行うことができる。なお、チャンバ本体12には図示省略のガス供給部が接続されており、基材9の交換時等には、チャンバ本体12の内部に窒素等のガスが供給されて大気圧に戻される。
【0056】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0057】
図8のインクジェットプリンタ1aでは、インクタンク52等を含む本体11の全体がチャンバ本体12内に収容されるが、減圧環境下にてインク画像を高精度に形成するという観点では、基材9に向けてインクを吐出するヘッド32、基材9を移動する搬送部27、および、ヘッド32内のインクの圧力を一定に保つ圧力調整装置6,6aがチャンバ本体内に収容されていればよい。
【0058】
上記第1および第2の実施の形態では、複数のヘッド32が接続されるマニホールド34に、圧力調整装置6,6aの流出口641が直接接続されることにより、圧力調整装置6,6aを複数のヘッド32の近傍に容易に設けることができ、ヘッド32内のインクの圧力変動に対して圧力調整装置6,6aを迅速に応答させて、ヘッド32内のインクの圧力を精度よく一定にすることが実現されるが、図9のように、供給ライン51上にてヘッド32から離れた位置に圧力調整装置6が配置される場合でも、ヘッド32内のインクの圧力をある程度一定に保つことが可能である。図9の圧力調整装置6、マニホールド34およびヘッド32が、図8のチャンバ本体12の内部に設けられ、減圧環境下にて印刷が行われてもよい。
【0059】
また、ヘッドユニット33において複数のヘッド32を設ける必要がない場合には、ヘッド32に圧力調整装置6,6aが直接接続されてもよい。簡単な構成により小型化が実現される圧力調整装置6,6aは、ヘッド32の近傍に設けることが容易に可能となる。
【0060】
図3のインク供給機構5では、インクタンク52がヘッドユニット33および圧力調整装置6,6aの上方に配置され、ポンプ53が省略されてもよい。この場合でも、圧力調整装置6,6aの流入口611近傍に比較的高い圧力のインクが供給され、上記第1および第2の実施の形態と同様に、流入口611の開放および閉塞の繰り返しにより、ヘッド32内で保持されるインクの圧力を一定に保つことが可能となる。また、圧力調整装置6,6aは、インクタンクとヘッドとの間にてインクを循環させる方式のインクジェットプリンタにて用いられてもよい。
【0061】
図5の圧力調整装置6において、ピストン62と第1カバー部63との間に引張バネが設けられることにより、ピストン62が第1カバー部63側に向けて付勢されてもよい。また、磁気力等によりピストンの付勢が実現されてもよい。さらに、共用の減圧管が設けられる建物内にインクジェットプリンタを設置する場合等には、圧力調整装置6においてバネ652が省略され、第1カバー部63の複数の通気孔632がレギュレータを介して減圧管に接続されてもよい。この場合、減圧管およびレギュレータを含む付勢部により、ピストン62が中心軸J1方向の第1カバー部63側に向けて一定の付勢力にて付勢され、流入口611が閉塞される。また、ヘッド32からのインクの吐出によりシリンダ61内のインクの圧力が低下した際に、ピストン62が第2カバー部64側に移動して、流入口611が開放される。
【0062】
このように、図5および図7の圧力調整装置6,6aは一例に過ぎず、ピストンをシリンダの軸方向の一方側に向けて付勢する付勢部により流入口が閉塞され、インクの吐出によるヘッド内のインクの圧力の低下に従ってピストンが当該軸方向の他方側に移動することにより、流入口が開放されるのであるならば、圧力調整装置の構造は適宜変更されてよい。
【0063】
インクジェットプリンタ1,1aでは、搬送部27により、基材9が吐出部3に対して走査方向に一定速度にて移動するが、インクジェットプリンタの設計によっては、吐出部3を走査方向に移動する機構が設けられてもよい。また、インクジェットプリンタにおいて、矩形の基材を保持するステージ、および、ステージを走査方向に移動するステージ移動機構が設けられてもよい。このように、基材9を吐出部3に対して相対的に移動する移動機構は様々な構成にて実現可能である。
【0064】
また、インクジェットプリンタ1,1aでは、基材9が吐出部3の下方を一回通過するのみで基材9への画像の印刷が完了するワンパス方式の印刷が行われるが、例えば、ヘッド32の複数の吐出口が図1中のY方向に配列されるとともに、ヘッド32をX方向に移動する機構が設けられ、ヘッド32のX方向への移動が完了する毎に基材9を図1中のY方向にヘッド32の幅に相当する距離だけ移動することにより、基材9への印刷が行われてもよい。
【0065】
インクジェットプリンタ1,1aにおける印刷の対象物は、シート状の基材9以外に、プラスチックにて形成される板状の部材や印刷用紙等であってもよい。
【0066】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせられてよい。
【符号の説明】
【0067】
1,1a インクジェットプリンタ
6,6a 圧力調整装置
9 基材
12 チャンバ本体
27 搬送部
32 ヘッド
34 マニホールド
51 供給ライン
52 インクタンク
61 シリンダ
62,62a ピストン
65,66 付勢部
321 吐出口
611 流入口
620a 端面
623 孔部
624 環状溝
625 開口
641 流出口
652 バネ
J1 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリンタであって、
対象物に向けてインクを吐出するヘッドと、
前記ヘッドに対して前記対象物を相対的に移動する移動機構と、
供給流路を介して前記ヘッドに接続されるとともに、インクを貯溜するインクタンクと、
前記供給流路に設けられ、前記インクタンクから前記ヘッドに送られるとともに前記ヘッド内で保持されるインクの圧力を一定に保つ圧力調整装置と、
を備え、
前記圧力調整装置が、
前記供給流路において前記インクタンク側に設けられる流入口、および、前記ヘッド側に設けられる流出口を有するシリンダと、
前記シリンダ内に挿入されるピストンと、
前記ピストンを前記シリンダの軸方向の一方側に向けて付勢して、前記流入口を閉塞する付勢部と、
を備え、
インクの吐出による前記ヘッド内のインクの圧力の低下に従って前記ピストンが前記軸方向の他方側に移動することにより、前記流入口が開放されて前記流入口から前記シリンダ内にインクが流入し、前記流出口から前記ヘッドにインクが流出することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェットプリンタであって、
前記流入口が前記シリンダの側部に形成され、前記ピストンの側部に対向し、
前記ピストンが、前記軸方向の前記他方側に移動した際に前記流入口から前記シリンダ内に流入するインクが流れる流路を内部に有することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインクジェットプリンタであって、
前記付勢部が、弾性部材を有し、
前記ピストンの前記軸方向の前記一方側の端面が周囲に開放されることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のインクジェットプリンタであって、
前記圧力調整装置が、前記ピストンを前記軸方向の前記他方側に向けて付勢するとともに、付勢力が調整可能なもう1つの付勢部をさらに備えることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のインクジェットプリンタであって、
前記ヘッドと同様の構造を有するもう1つのヘッドと、
前記供給流路の一部であり、前記ヘッドおよび前記もう1つのヘッドに接続されるマニホールドと、
をさらに備え、
前記圧力調整装置の前記流出口が、前記マニホールドに接続されることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項6】
請求項5に記載のインクジェットプリンタであって、
前記移動機構が、前記対象物を所定の走査方向に連続的に移動し、
前記走査方向に垂直、かつ、前記対象物の記録面に平行な配列方向に関して、前記マニホールドに接続される複数のヘッドにおける複数の吐出口が、前記記録面の記録範囲の全体に亘って配列されていることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のインクジェットプリンタであって、
前記ヘッド、前記移動機構および前記圧力調整装置を収容するとともに、内部が減圧されるチャンバ本体をさらに備えることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項8】
対象物に向けてインクを吐出するヘッドと、インクを貯溜するインクタンクとを接続する供給流路に設けられ、前記インクタンクから前記供給流路を介して前記ヘッドに送られるとともに前記ヘッド内で保持されるインクの圧力を一定に保つ圧力調整装置であって、
前記供給流路において前記インクタンク側に設けられる流入口、および、前記ヘッド側に設けられる流出口を有するシリンダと、
前記シリンダ内に挿入されるピストンと、
前記ピストンを前記シリンダの軸方向の一方側に向けて付勢して、前記流入口を閉塞する付勢部と、
を備え、
インクの吐出による前記ヘッド内のインクの圧力の低下に従って前記ピストンが前記軸方向の他方側に移動することにより、前記流入口が開放されて前記流入口から前記シリンダ内にインクが流入し、前記流出口から前記ヘッドにインクが流出することを特徴とする圧力調整装置。
【請求項9】
請求項8に記載の圧力調整装置であって、
前記流入口が前記シリンダの側部に形成され、前記ピストンの側部に対向し、
前記ピストンが、前記軸方向の前記他方側に移動した際に前記流入口から前記シリンダ内に流入するインクが流れる流路を内部に有することを特徴とする圧力調整装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の圧力調整装置であって、
前記付勢部が、弾性部材を有し、
前記ピストンの前記軸方向の前記一方側の端面が周囲に開放されることを特徴とする圧力調整装置。
【請求項11】
請求項8ないし10のいずれかに記載の圧力調整装置であって、
前記ピストンを前記軸方向の前記他方側に向けて付勢するとともに、付勢力が調整可能なもう1つの付勢部をさらに備えることを特徴とする圧力調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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