説明

インクジェットプリンタのヘッド駆動装置及びヘッド駆動方法、並びにインクジェットプリンタ

【課題】信号の伝送形態を適切にして駆動パルス出力回路をインクジェットヘッドに搭載し、もってインク滴吐出のためのアクチュエータ駆動パルスの波形歪みを抑制防止する。
【解決手段】メモリ29に格納された変調信号データDATAを読出して変調信号を出力し、その変調信号をデジタル電力増幅器25で電力増幅し、その電力増幅変調信号を平滑化してアクチュエータ22に駆動パルスとして出力することとしたため、電力増幅効率に優れたデジタル電力増幅器25によって変調信号を効率よく電力増幅できるので、トランジスタの冷却用放熱板などの冷却手段が不要となり、駆動パルス出力回路28のインクジェットヘッド2,3への搭載が可能となり、これによりアクチュエータ駆動パルスの伝送経路を短縮して当該駆動パルスの波形歪みを抑制防止することができる。変調信号データDATAの送受は低周波数で行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数色の液体インクの微小なインク滴を複数のノズルから吐出してその微粒子(インクドット)を印刷媒体上に形成することにより、所定の文字や画像を描画するようにしたインクジェットプリンタのヘッド駆動装置及びヘッド駆動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このようなインクジェットプリンタは、一般に安価で且つ高品質のカラー印刷物が容易に得られることから、パーソナルコンピュータやデジタルカメラなどの普及に伴い、オフィスのみならず一般ユーザにも広く普及してきている。
このようなインクジェットプリンタは、一般に、インクカートリッジと印字ヘッド( インクジェットヘッドともいう) とが一体的に備えられたキャリッジなどと称される移動体が印刷媒体上をその搬送方向と交差する方向に往復しながらその印字ヘッドのノズルから液体インク滴を吐出(噴射)して印刷媒体上に微小なインクドットを形成することで、当該印刷媒体上に所定の文字や画像を描画して所望の印刷物を作成するようになっている。そして、このキャリッジに黒色(ブラック)を含めた4色(イエロー、マゼンタ、シアン)のインクカートリッジと各色毎の印字ヘッドを備えることで、モノクロ印刷のみならず、各色を組み合わせたフルカラー印刷も容易に行えるようになっている(更に、これらの各色に、ライトシアンやライトマゼンタなどを加えた6色や7色、或いは8色のものも実用化されている)。
【0003】
また、このようにキャリッジ上のインクジェットヘッドを印刷媒体の搬送方向と交差する方向に往復させながら印刷を実行するようにしたタイプのインクジェットプリンタでは、1頁全体をきれいに印刷するためにインクジェットヘッドを10回程度から数十回以上も往復運動させる必要がある。
これに対し、印刷媒体の幅と同じ寸法の長尺のインクジェットヘッド(一体である必要はない)を配置してキャリッジを使用しないタイプのインクジェットプリンタでは、インクジェットヘッドを印刷媒体の幅方向に移動させる必要がなく、1パスでの印刷が可能となるため、レーザプリンタと同様な高速な印刷が可能となる。なお、前者方式のインクジェットプリンタを一般に「マルチパス(シリアル)型インクジェットプリンタ」、後者方式のインクジェットプリンタを一般に「ラインヘッド型インクジェットプリンタ」と呼んでいる。
【0004】
このようなインクジェットプリンタでは、駆動パルスによってアクチュエータを駆動して圧力室内の圧力を変化せしめ、その圧力変化で当該圧力室内のインクを当該圧力室に連通するノズルからインク滴として吐出する。アクチュエータにも幾つかの種類があり、例えばピエゾ方式のインクジェットプリンタでは、アクチュエータであるピエゾ(圧電)素子に駆動パルスを印加すると圧力室に接する振動板が変位し、これにより圧力室内の圧力が変化してインク滴が吐出される。
駆動パルスの生成方法は、下記特許文献1の図2に記載されている。即ち、駆動信号のデータが記憶されているメモリからデータを読出し、それをD/A変換器でアナログデータに変換し、電流増幅器を通してインクジェットヘッドに駆動信号を供給する。電流増幅器の回路構成は、同図3に示すように、プッシュプル接続されたトランジスタで構成され、リニア駆動によって駆動信号を増幅している。
【0005】
また、この種のインクジェットプリンタでは、印刷所要時間の短縮、駆動回路の簡素化、信号線数の低減化などを目的として、複数のノズルのアクチュエータに共通の駆動パルスを印加するようにしている。つまり、同じ駆動パルスを複数のアクチュエータに同時に供給するのであり、このような場合、一つの駆動パルスに複数のアクチュエータが並列に接続されることになる。接続されるアクチュエータは、インク滴を吐出すべきノズル、つまり印字データに応じて選択される。このように一つの駆動パルスに接続されるアクチュエータの数が変化する場合、その接続数に応じてインク滴の吐出特性が変化することが明らかになってきた。そこで、下記特許文献2に記載されるインクジェットプリンタでは、実際に駆動されるアクチュエータ(又はノズル)の数を求め、その数に応じて、インク滴吐出用の駆動パルスそのものを変更設定している。具体的には、台形波状電圧信号からなる駆動パルスの電圧増減の傾き或いは波高値そのものを変更することにより、インク滴吐出特性の安定化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−306434号公報
【特許文献2】特開2000−238262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記特許文献2にも記載されるように、インク滴吐出特性変化の原因である駆動パルスの波形歪みは、配線の寄生インピーダンスも関与している。インクジェットプリンタの本体とインクジェットヘッドとを接続するフレキシブル配線の寄生インピーダンスを低減するためには、駆動パルスを生成出力する駆動パルス出力回路をインクジェットヘッドに搭載し、駆動パルス出力回路からアクチュエータまでの伝送経路を短縮することが考えられる。しかしながら、プッシュプル型トランジスタでアクチュエータ駆動パルスの電流を増幅する従来のインクジェットプリンタでは、トランジスタの冷却用放熱板が大きすぎて、実質的に駆動パルス出力回路をインクジェットヘッドに搭載できないという問題がある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、信号の伝送形態を適切にして駆動パルス出力回路をインクジェットヘッドに搭載可能とし、これによりインク滴吐出のためのアクチュエータ駆動パルスの波形歪みを抑制防止可能なインクジェットプリンタのヘッド駆動装置及びヘッド駆動方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[発明1]上記課題を解決するために、発明1のインクジェットプリンタのヘッド駆動方法は、インクジェットヘッドに設けられた液滴を吐出する複数のノズルと、前記ノズルに対応して設けられたアクチュエータとを備え、前記アクチュエータに駆動パルスを印加するインクジェットプリンタのヘッド駆動方法であって、前記駆動パルスの生成に必要な変調信号のデジタルデータを出力し、その変調信号のデジタルデータをメモリに格納し、その格納された変調信号のデジタルデータに基づいて変調信号を創成出力し、その変調信号をデジタル電力増幅器で電力増幅し、その電力増幅された電力増幅変調信号を平滑化して前記アクチュエータに駆動パルスとして出力することを特徴とするものである。
【0009】
[発明2]発明2のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置は、インクジェットヘッドに設けられた液滴を吐出する複数のノズルと、前記ノズルに対応して設けられたアクチュエータと、前記アクチュエータに駆動パルスを印加する駆動手段とを有し、前記駆動手段は、前記駆動パルスの生成に必要な変調信号のデータを出力する変調信号データ出力手段と、前記変調信号データ出力手段から出力された変調信号データに基づいて前記アクチュエータへの駆動パルスを出力する駆動パルス出力手段とを備え、前記駆動パルス出力手段は、前記変調信号データ出力手段から出力された変調信号データを格納する記憶手段と、前記記憶手段に格納された変調信号データに基づいてパルス変調された変調信号を出力する変調手段と、前記変調手段から出力された変調信号を電力増幅するデジタル電力増幅器と、前記デジタル電力増幅器で電力増幅された電力増幅変調信号を平滑化して前記アクチュエータに駆動パルスとして出力する平滑フィルタとを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
[発明3]発明3のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置は、前記発明2のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置において、前記駆動パルス出力手段を前記インクジェットヘッドに搭載したことを特徴とするものである。
これらの発明に係るインクジェットプリンタのヘッド駆動方法及びヘッド駆動装置によれば、メモリなどの記憶手段に格納された変調信号データに基づいてパルス変調された変調信号を出力し、その変調信号をデジタル電力増幅器で電力増幅し、その電力増幅された電力増幅変調信号を平滑化してアクチュエータに駆動パルスとして出力する構成としたため、電力増幅効率に優れたデジタル電力増幅器によって変調信号を効率よく電力増幅できるので、冷却用放熱板などの冷却手段が不要となり、駆動パルス出力回路のインクジェットヘッドへの搭載が可能となる。これによりアクチュエータ駆動パルスの伝送経路を短縮して当該駆動パルスの波形歪みを抑制防止することができる。また、その際、駆動パルスの生成に必要な変調信号データを出力し、その変調信号データをメモリに格納し、その格納された変調信号データに基づいて変調信号を創成出力する構成としたため、変調信号データの送受を、駆動パルス創成出力に先立って、低周波で行うことができ、駆動パルス出力回路をインクジェットヘッドに搭載することにより、高周波の変調信号の伝送形態を適切なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置を適用したラインヘッド型インクジェットプリンタの一実施形態を示す概略構成図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図2】図1のインクジェットプリンタの制御装置のブロック構成図である。
【図3】アクチュエータを駆動する駆動パルスの説明図である。
【図4】駆動パルスを時系列的に連結して構成される駆動信号の説明図である。
【図5】図2の選択部のブロック図である。
【図6】図2の駆動パルス出力回路の概略構成を示すブロック図である。
【図7】図6の駆動パルス出力回路の具体的なブロック図である。
【図8】図7のデジタル電力増幅器の作用の説明図である。
【図9】図2の制御部で行われる印刷指令時の演算処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明のインクジェットプリンタの第1実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態のインクジェットプリンタの概略構成図であり、図1aは、その平面図、図1bは正面図である。図1において、印刷媒体1は、図の右から左に向けて図の矢印方向に搬送され、その搬送途中の印字領域で印字される、ラインヘッド型インクジェットプリンタである。但し、本実施形態のインクジェットヘッドは一カ所だけでなく、二カ所に分けて配設されている。
【0013】
図中の符号2は、印刷媒体1の搬送方向上流側に設けられた第1インクジェットヘッド、符号3は、同じく下流側に設けられた第2インクジェットヘッドであり、第1インクジェットヘッド2の下方には印刷媒体1を搬送するための第1搬送部4が設けられ、第2インクジェットヘッド3の下方には第2搬送部5が設けられている。第1搬送部4は、印刷媒体1の搬送方向と交差する方向(以下、ノズル列方向とも称す)に所定の間隔をあけて配設された4本の第1搬送ベルト6で構成され、第2搬送部5は、同じく印刷媒体1の搬送方向と交差する方向(ノズル列方向)に所定の間隔をあけて配設された4本の第2搬送ベルト7で構成される。
【0014】
4本の第1搬送ベルト6と同じく4本の第2搬送ベルト7とは、互いに交互に隣り合うように配設されている。本実施形態では、これらの搬送ベルト6,7のうち、ノズル列方向右側2本の第1搬送ベルト6及び第2搬送ベルト7と、ノズル列方向左側2本の第1搬送ベルト6及び第2搬送ベルト7とを区分する。即ち、ノズル列方向右側2本の第1搬送ベルト6及び第2搬送ベルト7の重合部に右側駆動ローラ8Rが配設され、ノズル列方向左側2本の第1搬送ベルト6及び第2搬送ベルト7の重合部に左側駆動ローラ8Lが配設され、それより上流側に右側第1従動ローラ9R及び左側第1従動ローラ9Lが配設され、下流側に右側第2従動ローラ10R及び左側第2従動ローラ10Lが配設されている。これらのローラは、一連のように見られるが、実質的には図1aの中央部分で分断されている。そして、ノズル列方向右側2本の第1搬送ベルト6は右側駆動ローラ8R及び右側第1従動ローラ9Rに巻回され、ノズル列方向左側2本の第1搬送ベルト6は左側駆動ローラ8L及び左側第1従動ローラ9Lに巻回され、ノズル列方向右側2本の第2搬送ベルト7は右側駆動ローラ8R及び右側第2従動ローラ10Rに巻回され、ノズル列方向左側2本の第2搬送ベルト7は左側駆動ローラ8L及び左側第2従動ローラ10Lに巻回されており、右側駆動ローラ8Rには右側電動モータ11Rが接続され、左側駆動ローラ8Lには左側電動モータ11Lが接続されている。従って、右側電動モータ11Rによって右側駆動ローラ8Rを回転駆動すると、ノズル列方向右側2本の第1搬送ベルト6で構成される第1搬送部4及び同じくノズル列方向右側2本の第2搬送ベルト7で構成される第2搬送部5は、互いに同期し且つ同じ速度で移動し、左側電動モータ11Lによって左側駆動ローラ8Lを回転駆動すると、ノズル列方向左側2本の第1搬送ベルト6で構成される第1搬送部4及び同じくノズル列方向左側2本の第2搬送ベルト7で構成される第2搬送部5は、互いに同期し且つ同じ速度で移動する。但し、右側電動モータ11Rと左側電動モータ11Lの回転速度を異なるものとすると、ノズル列方向左右の搬送速度を変えることができ、具体的には右側電動モータ11Rの回転速度を左側電動モータ11Lの回転速度よりも大きくすると、ノズル列方向右側の搬送速度を左側よりも大きくすることができ、左側電動モータ11Lの回転速度を右側電動モータ11Rの回転速度よりも大きくすると、ノズル列方向左側の搬送速度を右側よりも大きくすることができる。
【0015】
第1インクジェットヘッド2及び第2インクジェットヘッド3は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の6色の各色毎に、印雑媒体1の搬送方向にずらして配設されている。各インクジェットヘッド2,3には、図示しない各色のインクタンクからインク供給チューブを介してインクが供給される。各インクジェットヘッド2,3には、印刷媒体1の搬送方向と交差する方向に、複数のノズルが形成されており(即ちノズル列方向)、それらのノズルから同時に必要箇所に必要量のインク滴を吐出することにより、印刷媒体1上に微小なインクドットを形成出力する。これを各色毎に行うことにより、第1搬送部4及び第2搬送部5で搬送される印刷媒体1を一度通過させるだけで、1パスによる印刷を行うことができる。即ち、これらのインクジェットヘッド2,3の配設領域が印字領域に相当する。
【0016】
インクジェットヘッドの各ノズルからインクを吐出出力する方法としては、静電方式、ピエゾ方式、膜沸騰インクジェット方式などがある。静電方式は、アクチュエータである静電ギャップに駆動信号を与えると、キャビティ内の振動板が変位してキャビティ内に圧力変化を生じ、その圧力変化によってインク滴がノズルから吐出出力されるというものである。ピエゾ方式は、アクチュエータであるピエゾ素子に駆動信号を与えると、キャビティ内の振動板が変位してキャビティ内に圧力変化を生じ、その圧力変化によってインク滴がノズルから吐出出力されるというものである。膜沸騰インクジェット方式は、キャビティ内に微小ヒータがあり、瞬間的に300℃以上に加熱されてインクが膜沸騰状態となって気泡が生成し、その圧力変化によってインク滴がノズルから吐出出力されるというものである。本発明は、何れのインク出力方法も適用可能であるが、駆動信号の波高値や電圧増減傾きを調整することでインク滴の吐出量を調整可能なピエゾ素子に特に好適である。
【0017】
第1インクジェットヘッド2のインク滴吐出用ノズルは第1搬送部4の4本の第1搬送ベルト6の間にだけ形成されており、第2インクジェットヘッド3のインク滴吐出用ノズルは第2搬送部5の4本の第2搬送ベルト7の間にだけ形成されている。これは、後述するクリーニング部によって各インクジェットヘッド2,3をクリーニングするためであるが、このようにすると、どちらか一方のインクジェットヘッドだけでは、ワンパスによる全面印刷を行うことができない。そのため、互いに印字できない部分を補うために第1インクジェットヘッド2と第2インクジェットヘッド3とを印刷媒体1の搬送方向にずらして配設しているのである。なお、全てのノズルは独立したアクチュエータを有し、その夫々に後述する選択スイッチが設けられている。
【0018】
第1インクジェットヘッド2の下方に配設されているのが当該第1インクジェットヘッド2をクリーニングする第1クリーニングキャップ12、第2インクジェットヘッド3の下方に配設されているのが当該第2インクジェットヘッド3をクリーニングする第2クリーニングキャップ13である。各クリーニングキャップ12,13は、何れも第1搬送部4の4本の第1搬送ベルト6の間、及び第2搬送部5の4本の第2搬送ベルト7の間を通過できる大きさに形成してある。これらのクリーニングキャップ12,13は、インクジェットヘッド2,3の下面、即ちノズル面に形成されているノズルを覆い且つ当該ノズル面に密着可能な方形有底のキャップ体と、その底部に配設されたインク吸収体と、キャップ体の底部に接続されたチューブポンプと、キャップ体を昇降する昇降装置とで構成されている。そこで、昇降装置によってキャップ体を上昇してインクジェットヘッド2,3のノズル面に密着する。その状態で、チューブポンプによってキャップ体内を負圧にすると、インクジェットヘッド2,3のノズル面に開設されているノズルからインク滴や気泡が吸い出され、インクジェットヘッド2,3をクリーニングすることができる。クリーニングが終了したら、クリーニングキャップ12,13を下降する。場合によっては、ワイパでノズル面をなでて各ノズルのメニスカス(meniscus:インク液面を意味する)を整えるようにしてもよい。
【0019】
第1従動ローラ9R,9Lの上流側には、給紙部15から供給される印刷媒体1の給紙タイミングを調整すると共に当該印刷媒体1のスキューを補正する、二個一対のゲートローラ14が設けられている。スキューとは、搬送方向に対する印刷媒体1の捻れである。また、給紙部15の上方には、印刷媒体1を供給するためのピックアップローラ16が設けられている。なお、図中の符号17は、ゲートローラ14を駆動するゲートローラモータである。
【0020】
駆動ローラ8R,8Lの下方にはベルト帯電装置19が配設されている。このベルト帯電装置19は、駆動ローラ8R,8Lを挟んで第1搬送ベルト6及び第2搬送ベルト7に当接する帯電ローラ20と、帯電ローラ20を第1搬送ベルト6及び第2搬送ベルト7に押し付けるスプリング21と、帯電ローラ20に電荷を付与する電源18とで構成されており、帯電ローラ20から第1搬送ベルト6及び第2搬送ベルト7に電荷を付与してそれらを帯電する。一般に、これらのベルト類は、中・高抵抗体又は絶縁体で構成されているので、ベルト帯電装置19によって帯電すると、その表面に印加された電荷が、同じく高抵抗体又は絶縁体で構成される印刷媒体1に誘電分極を生じせしめ、その誘電分極によって発生する電荷とベルト表面の電荷との間に生じる静電気力でベルトに印刷媒体1を吸着することができる。なお、帯電手段としては、電荷を降らせるコロトロンなどでもよい。
【0021】
従って、このインクジェットプリンタによれば、ベルト帯電装置19で第1搬送ベルト6及び第2搬送ベルト7の表面を帯電し、その状態でゲートローラ14から印刷媒体1を給紙し、図示しない拍車やローラで構成される紙押えローラで印刷媒体1を第1搬送ベルト6に押し付けると、前述した誘電分極の作用によって印刷媒体1は第1搬送ベルト6の表面に吸着される。この状態で、電動モータ11R,11Lによって駆動ローラ8R,8Lを回転駆動すると、その回転駆動力が第1搬送ベルト6を介して第1従動ローラ9R,9Lに伝達される。
このようにして印刷媒体1を吸着した状態で第1搬送ベルト6を搬送方向下流側に移動し、印刷媒体1を第1インクジェットヘッド2の下方に移動し、当該第1インクジェットヘッド2に形成されているノズルからインク滴を吐出して印字を行う。この第1インクジェットヘッド2による印字が終了したら、印刷媒体1を搬送方向下流側に移動して第2搬送部5の第2搬送ベルト7に乗り移らせる。前述したように、第2搬送ベルト7もベルト帯電装置19によって表面が帯電しているので、前述した誘電分極の作用によって印刷媒体1は第2搬送ベルト7の表面に吸着される。
【0022】
この状態で、第2搬送ベルト7を搬送方向下流側に移動し、印刷媒体1を第2インクジェットヘッド3の下方に移動し、当該第2インクジェットヘッドに形成されているノズルからインク滴を吐出して印字を行う。この第2インクジェットヘッドによる印字が終了したら、印刷媒体1を更に搬送方向下流側に移動し、図示しない分離装置で印刷媒体1を第2搬送ベルト7の表面から分離しながら排紙部に排紙する。
また、第1及び第2インクジェットヘッド2,3のクリーニングが必要なときには、前述したように第1及び第2クリーニングキャップ12,13を上昇して第1及び第2インクジェットヘッド2,3のノズル面にキャップ体を密着し、その状態でキャップ体内を負圧にすることで第1及び第2インクジェットヘッド2,3のノズルからインク滴や気泡を吸い出してクリーニングし、然る後、第1及び第2クリーニングキャップ12,13を下降する。
【0023】
前記インクジェットプリンタ内には、自身を制御するための制御装置が設けられている。この制御装置は、図2に示すように、パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ等のホストコンピュータ60から入力された印刷データに基づいて、印刷装置や給紙装置等を制御することにより印刷媒体に印刷処理を行うものである。そして、ホストコンピュータ60から入力された印刷データを受取る入力インタフェース部61と、この入力インタフェース部61から入力された印刷データに基づいて印刷処理を実行するマイクロコンピュータで構成される制御部62と、ゲートローラモータ17を駆動制御するゲートローラモータドライバ63と、ピックアップローラ16を駆動するためのピックアップローラモータ51を駆動制御するピックアップローラモータドライバ64と、インクジェットヘッド2、3を駆動制御するヘッドドライバ65と、右側電動モータ11Rを駆動制御する右側電動モータドライバ66Rと、左側電動モータ11Lを駆動制御する左側電動モータドライバ66Lと、各ドライバ63〜65、66R、66Lの出力信号を外部のゲートローラモータ17、ピックアップローラモータ51、インクジェットヘッド2、3、右側電動モータ11R、左側電動モータ11Lで使用する制御信号に変換して出力するインタフェース67とを備えて構成される。
【0024】
制御部62は、印刷処理等の各種処理を実行するCPU(Central Processing Unit )62aと、入力インタフェース61を介して入力された印刷データ或いは当該印刷データ印刷処理等を実行する際の各種データを一時的に格納し、或いは印刷処理等のアプリケーションプログラムを一時的に展開するRAM(Random Access Memory)62cと、CPU62aで実行する制御プログラム等を格納する不揮発性半導体メモリで構成されるROM(Read-Only Memory)62dを備えている。この制御部62は、インタフェース部61を介してホストコンピュータ60から印刷データ(画像データ)を入手すると、CPU62aが、この印刷データに所定の処理を実行して、何れのノズルからインク滴を吐出するか或いはどの程度のインク滴を吐出するかという印字データを出力し、この印字データ及び各種センサからの入力データに基づいて、各ドライバ63〜65、66R、66Lに制御信号を出力する。ヘッドドライバ65を除く各ドライバ63、64、66R、66Lから制御信号が出力されると、これらがインタフェース部67で駆動信号に変換されて、ゲートローラモータ17、ピックアップローラモータ51、右側電動モータ11R、左側電動モータ11Lが夫々作動して、印刷媒体1の給紙及び搬送、印刷媒体1の姿勢制御などが実行される。なお、制御部62内の各構成要素は、図示しないバスを介して電気的に接続されている。また、印刷媒体1への印刷処理のために行われる、インクジェットヘッド2、3の複数のノズルに対応するアクチュエータへの駆動信号(本発明では駆動パルスと称する)の生成出力方法については後段に詳述する。
【0025】
ヘッドドライバ65は、駆動パルスPCOM創成のための変調信号デジタルデータDATAを出力する変調信号データ出力回路70と、クロック信号SCKを出力する発振回路71とを備えている。変調信号データ出力回路70は、後述するメモリ29に一旦格納されたものを変調信号データ読書き装置24で高速読出しすると、パルス幅変調(PWM)信号に相当する変調信号が出力されるような変調信号デジタルデータDATAを出力する。この変調信号が、後述する駆動パルス出力回路28で駆動パルスPCOMに変換され、駆動パルス選択データSI&SPに応じて選択部27で選択されたピエゾ素子などのアクチュエータ22に印加される。なお、変調信号デジタルデータDATAは、制御部62内のROM62dに予め記憶されている。
【0026】
本実施形態でピエゾ素子などのアクチュエータ22に供給される駆動パルスPCOMの波形は、図3のような電圧波形をしている。この駆動パルスPCOMの立上がり部分がノズルに連通するキャビティ(圧力室)の容積を拡大してインクを引込む(インクの吐出面を考えればメニスカスを引き込むとも言える)段階であり、駆動パルスPCOMの立下がり部分がキャビティの容積を縮小してインクを押出す(インクの吐出面を考えればメニスカスを押出すとも言える)段階であり、インクを押出した結果、インク滴がノズルから吐出される。この電圧台形波からなる駆動パルスPCOMの電圧増減傾きや波高値を種々に変更することにより、インクの引込量や引込速度、インクの押出量や押出速度を変化させることができ、これによりインク滴の吐出量を変化させて異なるインクドットの大きさを得ることができる。
【0027】
従って、図4に示すように、複数の異なる駆動パルスPCOMを時系列的に連結して一連の駆動信号COMとする場合でも、そのうちから単独の駆動パルスPCOMを選択してピエゾ素子などのアクチュエータ22に供給し、インク滴を吐出したり、複数の駆動パルスPCOMを選択してピエゾ素子などのアクチュエータ22に供給し、インク滴を複数回吐出したりすることで種々のインクドットの大きさを得ることができる。即ち、インクが乾かないうちに複数のインク滴を同じ位置に着弾すると、実質的に大きなインク滴を吐出するのと同じことになり、インクドットの大きさを大きくすることできるのである。このような技術の組み合わせによって多階調化を図ることが可能となる。なお、図4の左端の駆動パルスは、インクを引込むだけで押出していない。これは、微振動と呼ばれ、インク滴を吐出せずに、ノズルの乾燥を抑制防止したりするのに用いられる。
【0028】
これらの結果、インクジェットヘッド2、3には、変調信号データDATA、印刷データに基づいてインク滴を吐出すべきノズルを選択すると共にピエゾ素子などのアクチュエータの駆動パルスPCOMへの接続タイミングを決定する駆動パルス選択データSI&SP、全ノズルにノズル選択データが入力された後、駆動パルス選択データSI&SPに基づいて駆動パルスPCOMとインクジェットヘッド2、3のアクチュエータとを接続させるラッチ信号LAT及びチャンネル信号CH、駆動パルス選択データ信号SI&SPをシリアル信号としてインクジェットヘッド2、3に送信するためのクロック信号SCKが入力されている。この駆動パルス選択データSI&SPが本発明の印字データに相当する。なお、インクジェットヘッド2、3のピエゾ素子などのアクチュエータ22は、駆動パルスPCOMに対して並列に接続され、その夫々に選択スイッチ201が設けられている。
【0029】
図5は、前述した駆動パルスPCOMとピエゾ素子などのアクチュエータ202とを接続する選択部27のブロック図である。この選択部27は、インク滴を吐出させるべきノズルに対応したピエゾ素子などのアクチュエータを指定するための駆動パルス選択データSI&SPを保存するシフトレジスタ211と、シフトレジスタ211のデータを一時的に保存するラッチ回路212と、ラッチ回路212の出力をレベル変換するレベルシフタ213と、レベルシフタの出力に応じて駆動パルスPCOMをピエゾ素子などのアクチュエータ22に接続する選択スイッチ201によって構成されている。
【0030】
シフトレジスタ211には、駆動パルス選択データ信号SI&SPが順次入力されると共に、クロック信号SCKの入力パルスに応じて記憶領域が初段から順次後段にシフトする。ラッチ回路212は、ノズル数分の駆動パルス選択データSI&SPがシフトレジスタ211に格納された後、入力されるラッチ信号LATによってシフトレジスタ211の各出力信号をラッチする。ラッチ回路212に保存された信号は、レベルシフタ213によって次段の選択スイッチ201をオンオフできる電圧レベルに変換される。これは、駆動パルスPCOMが、ラッチ回路212の出力電圧に比べて高い電圧であり、これに合わせて選択スイッチ201の動作電圧範囲も高く設定されているためである。従って、レベルシフタ213によって選択スイッチ201が閉じられるピエゾ素子などのアクチュエータ22は駆動パルス選択データSI&SPの接続タイミングで駆動パルスPCOMに接続される。また、シフトレジスタ211の駆動パルス選択データ信号SI&SPがラッチ回路212に保存された後、次の印字データをシフトレジスタ211に入力し、インク滴の吐出タイミングに合わせてラッチ回路212の保存データを順次更新する。なお、図中の符号HGNDは、ピエゾ素子などのアクチュエータのグランド端である。また、この選択スイッチ201によれば、ピエゾ素子などのアクチュエータを駆動パルスPCOMから切り離した後も、当該アクチュエータ22の入力電圧は、切り離す直前の電圧に維持される。
【0031】
次に、本実施形態で駆動パルスPCOMを創成出力する駆動パルス出力回路28の詳細について説明する。図6には、変調信号データ出力回路70からピエゾ素子などのアクチュエータ22までの間に介装された駆動パルス出力回路28及び選択部27の概略構成を示す。駆動パルス出力回路28は、変調信号データ出力回路70から出力された変調信号のデジタルデータDATAをメモリ29に格納したり、当該メモリ29に格納されている変調信号のデジタルデータDATAを読出してパルス幅変調信号を出力したりする変調信号データ読書き装置24と、この変調信号データ読書き装置24から出力されたパルス幅変調信号を電力増幅するデジタル電力増幅器25と、このデジタル電力増幅器25で電力増幅された電力増幅変調信号の高調波成分を除去して平滑化し、もって駆動パルスPCOMを出力する平滑フィルタ26とを備えて構成される。
【0032】
図7には、駆動パルス出力回路28の変調信号データ読書き装置24から平滑フィルタ26までの具体的な構成を示す。変調信号データ読書き装置24は、変調信号データ出力回路70から出力された変調信号のデジタルデータDATAをメモリ29に格納すると共に、一旦、メモリ29に格納された変調信号デジタルデータDATAを短いサンプリング周期で読出してパルス幅変調信号に変換出力するものである。従って、このメモリ29に格納された変調信号デジタルデータDATAの読出し以後は高周波数で処理する必要があるが、後述するように変調信号デジタルデータDATAの格納は、駆動パルス創成出力に先立って行われるので、低周波数で処理しても差し支えない。なお、変調信号は、パルス幅変調(PWM)信号に代えて、パルス密度変調(PDM)信号を用いてもよい。
【0033】
デジタル電力増幅器25は、実質的に電力を増幅するための二つのMOSFETTrP、TrNからなるハーフブリッジドライバ段33と、パルス幅変調回路17からの変調(PWM)信号に基づいて、それらのMOSFETTrP、TrNのゲート−ソース間信号GP、GNを調整するためのゲートドライブ回路34とを備えて構成され、ハーフブリッジドライバ段33は、ハイサイドMOSFETTrPとローサイドMOSFETTrNをプッシュプル型に組み合わせたものである。このうち、ハイサイドMOSFETTrPのゲート−ソース間信号をGP、ローサイドMOSFETTrNのゲート−ソース間信号をGN、ハーフブリッジドライバ段33の出力をVaとしたとき、それらがパルス幅変調信号に応じてどのように変化するかを図8に示す。なお、各MOSFETTrP、TrNのゲート−ソース間信号GP、GNの電圧値Vgsは、それらのMOSFETTrP、TrNをONするのに十分な電圧値とする。
【0034】
パルス幅変調信号がHiレベルであるとき、ハイサイドMOSFETTrPのゲート−ソース間信号GPはHiレベルとなり、ローサイドMOSFETTrNのゲート−ソース間信号GNはLoレベルとなるので、ハイサイドMOSFETTrPはON状態となり、ローサイドMOSFETTrNはOFF状態となり、その結果、ハーフブリッジドライバ段33の出力Vaは、供給電力VDDとなる。一方、パルス幅変調信号がLoレベルであるとき、ハイサイドMOSFETTrPのゲート−ソース間信号GPはLoレベルとなり、ローサイドMOSFETTrNのゲート−ソース間信号GNはHiレベルとなるので、ハイサイドMOSFETTrPはOFF状態となり、ローサイドMOSFETTrNはON状態となり、その結果、ハーフブリッジドライバ段33の出力Vaは0となる。
【0035】
このデジタル電力増幅回路25のハーフブリッジドライバ段33の出力Vaが平滑フィルタ26を介して選択スイッチ201に駆動パルスPCOMとして供給される。平滑フィルタ26は、一つの抵抗Rと一つのインダクタンスCの組み合わせからなる一次RCローパスフィルタで構成される。このローパスフィルタからなる平滑フィルタ26は、デジタル電力増幅回路25のハーフブリッジドライバ段33の出力Vaの高調波成分を十分に減衰し且つ駆動パルスPCOM成分を減衰しないように設計される。
【0036】
前述のようにデジタル電力増幅器25のMOSFETTrP、TrNが、デジタル駆動される場合には、MOSFETがスイッチ素子として作用するため、ON状態のMOSFETに電流が流れるが、ドレイン−ソース間の抵抗値は非常に小さく、電力損失は殆ど発生しない。また、OFF状態のMOSFETには電流が流れないので電力損失は発生しない。従って、このデジタル電力増幅器25での電力損失は極めて小さく、小型のMOSFETを使用することができ、冷却用放熱板などの冷却手段も不要である。ちなみに、トランジスタをリニア駆動するときの効率が30%程度であるのに対し、デジタル電力増幅器の効率は90%以上である。また、トランジスタの冷却用放熱板は、トランジスタ一つに対して60mm角程度の大きさが必要になるので、こうした冷却用放熱板が不要になると、実際のレイアウト面で圧倒的に有利である。本実施形態では、こうした利点を利用して、駆動パルス出力回路28そのものをインクジェットヘッド2,3に搭載した。
【0037】
次に、4種類の駆動パルス、即ち第1駆動パルスPCOM1〜第4駆動パルスPCOM4を適宜選択してインク滴を吐出すべきノズルのアクチュエータに供給し、印刷を行うために制御部62内で行われる演算処理について図9のフローチャートを用いて説明する。この演算処理は、ホストコンピュータ60から印刷指令がなされたときに実行され、まずステップS1で、ホストコンピュータから受信した印刷データを駆動パルス選択データSI&SPに展開する。
次にステップS2に移行して、変調信号データ出力回路70から変調信号デジタルデータDATAを駆動パルス出力回路28に向けて出力する。
次にステップS3に移行して、駆動パルス出力回路28の変調信号データ読書き装置24で変調信号デジタルデータDATAをメモリ29に格納する。
【0038】
次にステップS4に移行して、ラッチ信号LATが入力されたか否かを判定し、ラッチ信号LATが入力された場合にはステップS5に移行し、そうでない場合には待機する。
ステップS5では、印字1行分の駆動パルス選択データSI&SPを送信する。
次にステップS6に移行して、変調信号データ読書き装置24でメモリ29の変調信号デジタルデータDATAを高速読出しして、パルス幅変調(PWM)信号を出力する。
次にステップS7に移行して、次行データが存在するか否かを判定し、次行データが存在する場合にはステップS8に移行し、そうでない場合にはメインプログラムに復帰する。
ステップS8では、印刷すべき行を次行に移行してからステップS4に移行する。
【0039】
この演算処理によれば、印字1行分の駆動パルス選択データSI&SPの送信や、変調し号デジタルデータDATAの高速読出し、即ち駆動パルスPCOMの創成出力に先立って、変調信号デジタルデータDATAを変調信号データ出力回路70から出力し、それを駆動パルス出力回路28のメモリ29に変調信号データ読書き装置24で格納するため、当該変調信号デジタルデータDATAの出力やメモリ29への格納は、パルス幅変調信号のような高周波数である必要はなく、低周波数で処理できる。制御部62やヘッドドライバ65などの制御装置はインクジェットプリンタの本体に設けられており、駆動パルス出力回路28乃至アクチュエータ22はインクジェットヘッド2,3に設けられているので、両者を連結する配線、即ち変調信号デジタルデータDATAの伝送経路は比較的長い。しかしながら、変調信号デジタルデータDATAの伝送は、前述のように低周波数で処理することができるので、その伝送は容易なものとなる。一方、インクジェットヘッド2,3に搭載された駆動パルス出力回路28内の伝送経路は極めて短いので損失が少なく、パルス幅変調信号や駆動パルスの伝送を高周波数で処理することが可能となる。
【0040】
このように、本実施形態のインクジェットプリンタのヘッド駆動方法及びヘッド駆動装置によれば、メモリ29などの記憶手段に格納された変調信号データDATAに基づいてパルス変調された変調信号を出力し、その変調信号をデジタル電力増幅器25で電力増幅し、その電力増幅された電力増幅変調信号を平滑化してピエゾ素子などのアクチュエータ22に駆動パルスとして出力することとしたため、電力増幅効率に優れたデジタル電力増幅器25によって変調信号を効率よく電力増幅できるので、トランジスタの冷却用放熱板などの冷却手段が不要となり、駆動パルス出力回路28のインクジェットヘッド2,3への搭載が可能となり、これによりアクチュエータ駆動パルスの伝送経路を短縮して当該駆動パルスの波形歪みを抑制防止することができる。また、その際、駆動パルスの生成に必要な変調信号データDATAを出力し、その変調信号データDATAをメモリに格納し、その格納された変調信号データDATAに基づいて変調信号を創成出力することとしたため、変調信号データDATAの送受を、駆動パルス創成出力に先立って、低周波で行うことができ、インクジェットヘッドに搭載された駆動パルス出力回路により、高周波の変調信号を損失することなく送受することができるので、信号の伝送形態を適切なものとすることができる。
なお、前記実施形態ではラインヘッド型インクジェットプリンタを対象として本発明のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置を適用した例についてのみ詳述したが、本発明のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置は、マルチパス型プリンタを始めとして、あらゆるタイプのインクジェットプリンタを対象として適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1は印刷媒体、2は第1インクジェットヘッド、3は第2インクジェットヘッド、4は第1搬送部、5は第2搬送部、6は第1搬送ベルト、7は第2搬送ベルト、8R,8Lは駆動ローラ、9R,9Lは第1従動ローラ、10R,10Lは第2従動ローラ、11R,11Lは電動モータ、22はアクチュエータ、24は変調信号データ読書き装置、25はデジタル電力増幅器、26は平滑フィルタ、27は選択部、28は駆動パルス出力回路、29はメモリ、70は変調信号データ出力回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドに設けられた液滴を吐出する複数のノズルと、前記ノズルに対応して設けられたアクチュエータとを備え、前記アクチュエータに駆動パルスを印加するインクジェットプリンタのヘッド駆動方法であって、
前記駆動パルスの生成に必要な変調信号のデジタルデータを出力し、
その変調信号のデジタルデータをメモリに格納し、
その格納された変調信号のデジタルデータに基づいて変調信号を創成出力し、
その変調信号をデジタル電力増幅器で電力増幅し、
その電力増幅された電力増幅変調信号を平滑化して前記アクチュエータに駆動パルスとして出力する
ことを特徴とするインクジェットプリンタのヘッド駆動方法。
【請求項2】
インクジェットヘッドに設けられた液滴を吐出する複数のノズルと、前記ノズルに対応して設けられたアクチュエータと、前記アクチュエータに駆動パルスを印加する駆動手段とを有し、
前記駆動手段は、前記駆動パルスの生成に必要な変調信号のデータを出力する変調信号データ出力手段と、
前記変調信号データ出力手段から出力された変調信号データに基づいて前記アクチュエータへの駆動パルスを出力する駆動パルス出力手段とを備え、
前記駆動パルス出力手段は、前記変調信号データ出力手段から出力された変調信号データを格納する記憶手段と、
前記記憶手段に格納された変調信号データに基づいてパルス変調された変調信号を出力する変調手段と、
前記変調手段から出力された変調信号を電力増幅するデジタル電力増幅器と、
前記デジタル電力増幅器で電力増幅された電力増幅変調信号を平滑化して前記アクチュエータに駆動パルスとして出力する平滑フィルタと
を備えたことを特徴とするインクジェットプリンタのヘッド駆動装置。
【請求項3】
前記駆動パルス出力手段を前記インクジェットヘッドに搭載したことを特徴とする請求項2に記載のインクジェットプリンタのヘッド駆動装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のヘッド駆動装置を備えるインクジェットプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−255677(P2011−255677A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168769(P2011−168769)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【分割の表示】特願2007−555945(P2007−555945)の分割
【原出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】