説明

インクジェットプリンタ及びその駆動方法

【課題】インクジェットプリンタ及びその駆動方法を提供する。
【解決手段】圧電方式及び静電方式の複合方式によって駆動されるインクジェットプリンタとその駆動方法とが開示され、該インクジェットプリンタは、インクインレットと圧力チャンバとノズルとが形成された流路プレートと、ノズルからインク液滴を吐出させる第1駆動力を提供する圧電アクチュエータと、第2駆動力を提供する静電気力印加手段とを具備する。静電気力印加手段に静電電圧を印加した状態で、圧電アクチュエータに第1電圧を印加すれば、ノズル内部のインクのメニスカスが凸型に変形される。次に、圧電アクチュエータに第2電圧を印加すれば、ノズルの中央部に、ノズルの内径より小さい曲率半径を有した凸型のメニスカスが形成され、凸型に突出した部分のインクは、液滴状に吐出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電方式及び静電方式の複合方式によって駆動されるインクジェットプリンタとその駆動方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、インクジェットプリンタは、インクジェットヘッドを利用して印刷用インクの微小液滴(droplet)を、印刷媒体、例えば印刷用紙上の所望の位置に吐出させ、印刷用紙の表面に、所定色相の画像を印刷する装置である。このようなインクジェットプリンタは、最近、液晶ディスプレイ(LCD:liquid crystal display)や有機発光素子(OLED:organic light emitting device)のような平板ディスプレイ分野、電子紙(E−paper)のようなフレキシブルディスプレイ分野、金属配線のような印刷電子工学(printed electronics)分野、及び有機薄膜トランジスタ(OTFT:organic thin film transistor)といった多様な分野に応用範囲が拡大されている。このようなインクジェットプリンタが、前記ディスプレイ分野や印刷電子工学分野に適用されるにおいて、工程技術上、最も重要な技術的課題のうちの一つが、高解像度及び超精密プリンティングである。
【0003】
インクジェットプリンタは、多様なインク吐出方式を採用でき、その吐出方式には、圧電方式と静電方式とがある。圧電方式は、圧電体の変形によってインクを吐出させる方式であり、静電方式は、静電気力によってインクを吐出させる方式である。前記静電方式は、静電誘導(electrostatic induction)によってインクを吐出させる方式と、帯電された顔料(charged pigments)を静電気力によって蓄積させた後、インク液滴として吐出する方式とに分けられる。
【0004】
前記圧電方式のインクジェットプリンタは、DOD(drop on demand)方式でインクを吐出させるので、プリンティング作業を制御しやすく、駆動方式が単純であり、圧電体の機械的変形によって吐出エネルギーを生成するので、使われるインクに制約がないという長所がある。しかし、圧電方式のインクジェットプリンタは、数ピコリットル(Pico liter)以下の微細液滴を吐出するのには困難さがあり、吐出されたインク液滴の直進性が落ちるという短所がある。
【0005】
前記静電方式のインクジェットプリンタは、微細液滴を具現しやすく、駆動方式も単純であり、吐出されたインク液滴の直進性も良好であり、精密プリンティングに有利であるという長所がある。しかし、静電方式のインクジェットプリンタのうち静電誘導方式は、個別インク流路を形成し難いために多数のノズルからDOD方式でインクを吐出させ難いという短所があり、帯電顔料を利用する方式は、密度が高い顔料を蓄積させなければならないために、インクの吐出速度に限界があり、使われるインクにも制限があるという短所がある。
【0006】
一方、インクジェットプリンタにおいて、吐出されるインク液滴のサイズは、一般的にノズルの直径に比例する。従って、微細なインク液滴を吐出するためには、ノズルのサイズを小さくする必要がある。しかし、ノズルのサイズを小さくする場合には、精密なノズルを作り難く、またノズルの詰まり(clogging)が発生する可能性が高くなり、信頼性が低下してしまう。
【0007】
圧電方式のインクジェットプリンタとしては、たとえば下記特許文献1に示すようなものがあり、静電方式のインクジェットプリンタとしては、たとえば下記特許文献2に示すようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−292572号公報
【特許文献2】特開2008−183724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、圧電方式と静電方式とを共に採用する複合方式のインクジェットプリンタと、微細なインク液滴を吐出できる駆動方法とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の一実施形態によるインクジェットプリンタは、インクが流入するインクインレットと流入したインクを収めている圧力チャンバと圧力チャンバ内のインクを液滴状に吐出させるノズルとが形成された流路プレートと、ノズルからインク液滴を吐出させる第1駆動力であって、圧力チャンバ内部のインクに圧力変化を提供する圧電アクチュエータと、ノズルからインク液滴を吐出させる第2駆動力であって、ノズル内部のインクに静電気力を印加する静電気力印加手段と、を具備できる。
【0011】
インクインレットは、流路プレートの上面側に形成され、圧力チャンバは、流路プレートの内部に形成され、ノズルは、流路プレートの底面側に形成されうる。
【0012】
流路プレートには、インクインレットと圧力チャンバとを連結するマニホールド及びリストリクタと、圧力チャンバとノズルとを連結するダンパとがさらに形成されうる。そして、流路プレートは、複数の基板からなりうる。
【0013】
圧電アクチュエータは、流路プレートの上面に順次積層される下部電極、圧電膜及び上部電極と、下部電極と上部電極との間に電圧を印加するための第1電源とを含むことができる。
【0014】
静電気力印加手段は、互いに対向するように配された第1静電電極及び第2静電電極と、第1静電電極と第2静電電極との間に電圧を印加する第2電源とを含むことができる。ここで、第1静電電極は、流路プレートの上面に配され、第2静電電極は、流路プレートの底面と離隔されるように配されうる。
【0015】
本発明の他の実施形態において、ノズルの内部には、ノズルの中心軸に沿って延長されたガイドロッドが設けられうる。ここで、ガイドロッドは、ノズルの内側壁面に固定されたブリッジによって支持され、流路プレートの底面から所定長ほど突出しうる。
【0016】
前記課題を解決するために、本発明の一実施形態によるインクジェットプリンタの駆動方法は、圧電アクチュエータに第1電圧を印加し、圧電アクチュエータを圧力チャンバの体積を減少させる方向に変形させる段階と、圧電アクチュエータに第2電圧を印加し、圧電アクチュエータを、圧力チャンバの体積を増加させる方向に変形させる段階と、圧電アクチュエータに印加された第2電圧を除去する段階とを含みうる。
【0017】
そして、静電気力印加手段に静電電圧を印加し、ノズル内部のインクに静電気力を印加する段階をさらに含みうる。このとき、静電電圧は、少なくとも第1電圧を印加する段階と、第2電圧を印加する段階とで維持されうる。
【0018】
第1電圧を印加する段階で、ノズル内部のインクのメニスカスが凸型に変形されうる。
【0019】
第2電圧を印加する段階で、ノズルの中央部に、ノズルの内径より小さい曲率半径を有した凸型のメニスカスが形成され、凸型に突出した部分のインクは、静電気力によって液滴状に吐出されうる。このとき、ノズルのサイズに比べて小サイズのインク液滴が吐出されうる。
【0020】
第2電圧を除去する段階で、圧電アクチュエータ、圧力チャンバ内の圧力、及びノズル内部のインクのメニスカスは、元の状態に戻りうる。
【0021】
本発明の課題を解決するために、本発明の他の実施形態によるインクジェットプリンタの駆動方法は、圧電アクチュエータに第2電圧を印加し、圧電アクチュエータを、圧力チャンバの体積を増加させる方向に変形させる段階と、圧電アクチュエータに印加された第2電圧を除去する段階とを含みうる。
【0022】
そして、静電気力印加手段に静電電圧を印加し、ノズル内部のインクに静電気力を印加する段階をさらに含みうる。
【0023】
また、第2電圧を印加する段階前に、圧電アクチュエータに第1電圧を印加し、圧電アクチュエータを、圧力チャンバの体積を減少させる方向に変形させる段階をさらに含みうる。第1電圧を印加する段階で、ノズル内部のインクのメニスカスが凸型に変形できる。
【0024】
静電電圧は、少なくとも第1電圧を印加する段階と、第2電圧を印加する段階とで維持されうる。
【0025】
第2電圧を印加する段階前に、ガイドロッドによる表面張力によって、ガイドロッドの前部分のメニスカスが凸型に突出しうる。
【0026】
第2電圧を印加する段階で、ガイドロッド前部分に、ノズルの内径より小さい曲率半径を有した凸型のメニスカスが形成され、凸型に突出した部分のインクは、静電気力によって液滴状に吐出されうる。このとき、ノズルのサイズに比べて小サイズのインク液滴が吐出されうる。
【0027】
第2電圧を除去する段階で、圧電アクチュエータ、圧力チャンバ内の圧力、及びノズル内部のインクのメニスカスは、元の状態に戻りうる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るインクジェットプリンタ及びその駆動方法によれば、圧電方式のインクジェットプリンタと静電方式のインクジェットプリンタとの長所を併せ持ち、プリンティング作業を制御しやすく、微細液滴を具現しやすく、吐出されたインク液滴の直進性も良好であって精密プリンティングに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態によるインクジェットプリンタの断面図である。
【図2】図1に図示されたインクジェットプリンタの駆動方法の一実施形態について説明するための図である。
【図3】図2に示された駆動方法に適用される駆動波形の一例について説明するための図である。
【図4】図2に示された駆動方法に適用される駆動波形の他の例について説明するための図である。
【図5】本発明の他の実施形態によるインクジェットプリンタの断面図である。
【図6】図5に示されたノズル、ガイドロッド及びブリッジの平面図である。
【図7】図5に示されたインクジェット・プリンティング装置の駆動方法の一実施形態について説明するための図である。
【図8】図5に示されたインクジェットプリンタの駆動方法の他の実施形態について説明するための図である。
【図9】図8に図示された駆動方法に適用される駆動波形の一例について説明するための図面である。
【図10】図8に示された駆動方法に適用される駆動波形の他の例について説明するための面である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付された図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。しかし、以下に例示された実施形態は、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明を当該技術分野で当業者に十分に説明するために提供されるものである。以下の図面で同じ参照符号は、同じ構成要素を指し、図面上で各構成要素の大きさは、説明の明瞭性と便宜性とのために、誇張されていることがある。
【0031】
図1は、本発明の一実施形態によるインクジェットプリンタの断面図である。
【0032】
図1を参照すれば、本発明の一実施形態によるインクジェットプリンタは、インク流路が形成された流路プレート110と、インク吐出のための駆動力を提供する圧電アクチュエータ130と、静電気力印加手段140とを具備する。
【0033】
流路プレート110には、インク流路が形成され、インク流路は、インクが流入するインクインレット121と、流入したインクを収めている多数の圧力チャンバ125と、インク液滴を吐出させるための多数のノズル128とを含む。インクインレット121は、流路プレート110の上面側に形成され、インクタンク(図示せず)と連結される。インクタンク(図示せず)から供給されたインクは、インクインレット121を介して流路プレート110内部に流入する。多数の圧力チャンバ125は、流路プレート110内部に形成され、インクインレット121を介して流入したインクが保存される。そして、流路プレート110内部には、インクインレット121と、多数の圧力チャンバ125とを連結するマニホールド122,123と、リストリクタ124とが形成されうる。多数のノズル128は、多数の圧力チャンバ125に充填されたインクを液滴状に吐出するためのものであり、多数の圧力チャンバ125それぞれに対して、一つずつ対応して連結される。多数のノズル128は、流路プレート110の底面側に形成され、1列または2列に配列されうる。そして、流路プレート110には、前記多数の圧力チャンバ125と多数のノズル128とをそれぞれ連結する多数のダンパ126が形成されうる。
【0034】
流路プレート110は、微細加工性が良好な材質の基板、例えばシリコン基板からなりうる。そして、流路プレート110は、順次積層された3枚の基板、すなわち第1基板111、第2基板112及び第3基板113を、SDB(silicon direct bonding)によって接合して構成できる。この場合、インクインレット121は、最も上部に位置した基板、すなわち第3基板113を垂直に貫通するように形成され、多数の圧力チャンバ125は、第3基板113に、その底面から所定深さに形成されうる。多数のノズル128は、最も下部に位置した基板、すなわち第1基板111を垂直に貫通するように形成されうる。マニホールド122,123は、第3基板113と、中間に位置した第2基板112とに形成され、多数のダンパ126は、第2基板112を垂直に貫通するように形成されうる。
【0035】
一方、以上では、流路プレート110が3枚の基板111,112,113によって構成された場合を説明しているが、それは例示的なものであり、本発明は、3枚の基板に限定されるものではない。従って、流路プレート110は、1枚または2枚の基板や、4枚以上の基板によっても構成され、その内部に形成されるインク流路も、多様な構成によって多様に配されうる。
【0036】
圧電アクチュエータ130は、インク吐出のための第1の駆動力、すなわち多数の圧力チャンバ125に圧力変化を提供する役割を行うものであり、流路プレート110の上面に、多数の圧力チャンバ125に対応する位置に形成される。圧電アクチュエータ130は、流路プレート110の上面に順次積層される下部電極131、圧電膜132及び上部電極133からなりうる。下部電極131は、共通電極の役割を行い、上部電極133は、圧電膜132に電圧を印加する駆動電極の役割を行う。このために、下部電極131と上部電極133とには、第1電源135が連結される。そして、圧電膜132は、第1電源135からの電圧印加によって変形されることによって、圧力チャンバ125の上部壁をなす第3基板113を変形させる役割を行う。このような圧電膜132は、所定の圧電物質、例えばPZT(lead zircon ate titan ate)セラミック材料からなりうる。
【0037】
静電気力印加手段140は、インク吐出のための第2の駆動力、すなわちノズル128内部のインクに静電気力を印加する役割を行うものであり、互いに対向するように配された第1静電電極141及び第2静電電極142と、第1静電電極141と第2静電電極142との間に電圧を印加する第2電源145とを具備する。
【0038】
第1静電電極141は、流路プレート110に設けられる。具体的に、第1静電電極141は、流路プレート110の上面、すなわち第3基板113の上面に形成されうる。この場合、第1静電電極141は、圧電アクチュエータ130の下部電極131と離隔されるように、インクインレット121が形成された領域に配されうる。第2静電電極142は、流路プレート110の底面と所定間隔離隔されるように配され、第2静電電極142上には、流路プレート110のノズル128から吐出されるインク液滴が印刷される印刷媒体Pが配される。
【0039】
前記構成を有したインクジェットプリンタは、圧電方式と静電方式とのインク吐出方式を共に採用するので、圧電方式の長所と静電方式の長所とを共に有することができる。すなわち、本発明の一実施形態によるインクジェットプリンタは、DOD(drop on demand)方式でインクを吐出させることができ、プリンティング作業を制御しやすく、微細液滴を具現しやすく、吐出されたインク液滴の直進性も良好であって精密プリンティングに有利である。
【0040】
図2は、図1に図示されたインクジェットプリンタの駆動方法の一実施形態について説明するための図であり、図3は、図2に示された駆動方法に適用される駆動波形の一例について説明するための図である。
【0041】
図2と図3とを共に参照すれば、S202段階では、圧電アクチュエータ130には、電圧が印加されず、第1静電電極141と第2静電電極142との間には、第2電源145から、所定の静電電圧Vが印加される。このとき、ノズル128内部のインク129に作用する静電気力が大きくないために、インク129のメニスカスM(meniscus)は、静止状態(static state)である。
【0042】
次に、S204段階では、圧電アクチュエータ130に、所定の第1電圧VP1を印加し、圧電アクチュエータ130を、圧力チャンバ125の体積を減少させる方向に変形させる。このとき、第1静電電極141と第2静電電極142との間には、静電電圧Vが印加された状態が維持される。それにより、圧力チャンバ125内の圧力が増加するので、ノズル128内部のインク129のメニスカスMが凸型に変形される。このように凸型のメニスカスMが形成されれば、この部分に電場が集束し、これによって、インク129内部の正電荷は、第2静電電極142側に移動し、ノズル128の端部に集まる。
【0043】
次に、S206段階で、圧電アクチュエータ130に所定の第2電圧VP2を印加し、圧電アクチュエータ130を、圧力チャンバ125の体積を増加させる方向に変形させる。このとき、第1静電電極141と第2静電電極142との間には、静電電圧Vが印加された状態が維持される。それにより、圧力チャンバ125内の圧力が減少するので、ノズル128内部のインク129のメニスカスMは、凹型に変形されるが、メニスカスMの中央部は、集まった電荷と第2静電電極142との間に作用する静電気力によって、凸型を維持する。これによって、ノズル128の中央部には、ノズル128の内径よりはるかに小さい曲率半径を有した凸型のメニスカスMが形成される。
【0044】
一般的に、下記の数式1のように、静電気力Fは、電荷量qと電場の強度Eとに比例する。そして、下記の数式2のように、電荷量qも、電場の強度Eに比例する。従って、下記の数式3のように、静電気力Fは、電場の強度Eの自乗に比例する。また、下記の数式4のように、電場の強度Eは、印加された静電電圧Vに比例するが、メニスカスMの曲率半径rには反比例する。従って、下記の数式5のように、ノズル128端部で尖って突出した部分のインク129に作用する静電気力Fは、その部分のメニスカスMの曲率半径rの自乗に反比例する。
【0045】
【数1】

【0046】
【数2】

【0047】
【数3】

【0048】
【数4】

【0049】
【数5】

【0050】
前述のように、尖って突出した部分のインク129に作用する静電気力Fは、大きくなり、これによって、ノズル128中央部のメニスカスMの曲率半径は、さらに小さくなり、これは、さらに静電気力Fを一層増加させる。結局は、尖って突出した部分のインク129は、ノズル128内部のインク129から液滴129aの形態で離れて出てくる。このとき、インク129は、ノズル129の中央部でのみ尖って突出しているので、ノズル128のサイズに比べてはるかに小サイズのインク液滴129aが吐出されうる。このように分離されたインク液滴129aは、静電気力Fによって、第2静電電極142側に移動し、印刷媒体P上に印刷される。
【0051】
次に、S208段階で、圧電アクチュエータ130に印加された第2電圧VP2を除去すれば、圧電アクチュエータ130は、元の状態に戻り、圧力チャンバ125内の圧力も、元の状態に回復するので、凹型のメニスカスMも、元の状態に戻る。このとき、第1静電電極141と第2静電電極142との間には、静電電圧Vが印加された状態が維持されうる。
【0052】
一方、以上では、第1静電電極141と第2静電電極142との間に印加される静電電圧Vが、S202段階からS208段階まで続けて維持されることを、図面で説明したが、静電電圧Vは、次に説明するように、一部段階でのみ印加される。
【0053】
図4は、図2に示された駆動方法に適用される駆動波形の他の例について説明するための図である。
【0054】
図4を参照すれば、第1静電電極141と第2静電電極142との間に印加される静電電圧Vは、S204段階とS206段階とでのみ維持されうる。すなわち、圧電アクチュエータ130に電圧が印加されず、メニスカスMが停止した状態を維持するS202段階とS208段階では、静電電圧Vも印加されないことがある。
【0055】
前述の通り、本発明の一実施形態による駆動方法によれば、ノズルのサイズに比べてはるかに小サイズのインク液滴を吐出できる。すなわち、ノズルのサイズを小さくせずに、比較的大径、例えば数μmないし数十μmほどの直径を有したノズルを介しても、数ピコリットル(Pico liter)レベルの微細な液滴を吐出できる。そして、微細な液滴を吐出しつつも、比較的大径のノズルを使用できるので、ノズルの詰まり(clogging)が発生する可能性が低くなって信頼性が高まる。また、電場がインクのメニスカスの一部分に集中するので、一定の静電気力を発生させるための静電電圧を低く維持させることができる。
【0056】
図5は、本発明の他の実施形態によるインクジェットプリンタを示した断面図であり、図6は、図5に図示されたノズル、ガイドロッド及びブリッジを示した平面図である。図5と図6とに図示された実施形態は、ノズルの構成を除いては、図1に示された実施形態の構成と同一であるので、以下では、ノズルの構成についてのみ説明する。
【0057】
図5と図6とを共に参照すれば、本発明の他の実施形態によるインクジェットプリンタにおいて、前記ノズル128内部には、ノズル128の中心軸に沿って延長されたガイドロッド128aが配されうる。ガイドロッド128aは、流路プレート110の底面から所定長ほど突出するように形成されうる。そして、ガイドロッド128aは、ノズル128の内側壁面に固定されたブリッジ128bによって支持されうる。
【0058】
図7は、図5に図示されたインクジェットプリンタの駆動方法の一実施形態について説明するための図である。そして、図7に示された駆動方法には、図3に示された駆動波形がそのまま適用されうる。
【0059】
図7と図3とを共に参照すれば、S702段階では、圧電アクチュエータ130には、電圧が印加されず、第1静電電極141と第2静電電極142との間には、第2電源145から所定の静電電圧Vが印加される。このとき、ノズル128内部のインク129に作用する静電気力が大きくないために、インク129のメニスカスMは、静止状態である。ただし、ノズル128の中央部に配されたガイドロッド128aによる表面張力によって、ガイドロッド128aの前部分のメニスカスMは、若干突出している。
【0060】
次に、S704段階では、圧電アクチュエータ130に、所定の第1電圧VP1を印加し、圧電アクチュエータ130を、圧力チャンバ125の体積を減少させる方向に変形させる。このとき、第1静電電極141と第2静電電極142との間には、静電電圧Vが印加された状態が維持される。それにより、圧力チャンバ125内の圧力が増加するので、ノズル128内部のインク129のメニスカスMが凸型に変形される。このように凸型のメニスカスMが形成されれば、この部分に電場が集束し、これによって、インク129内部の正電荷は、第2静電電極142側に移動し、ノズル128の端部に集まる。
【0061】
次に、S706で、圧電アクチュエータ130に所定の第2電圧VP2を印加し、圧電アクチュエータ130を圧力チャンバ125の体積を増加させる方向に変形させる。このとき、第1静電電極141と第2静電電極142との間には、静電電圧Vが印加された状態が維持される。それにより、圧力チャンバ125内の圧力が減少するので、ノズル128内部のインク129のメニスカスMは、凹型に変形されるが、メニスカスMの中央部は、集まった電荷と第2静電電極142との間に作用する静電気力によって、凸型を維持する。このとき、ガイドロッド128aによる表面張力によって、ガイドロッド128aの前方に、凸型のメニスカスがMがさらに容易に形成されうる。これによって、ノズル128の中央部には、ノズル128の内径よりはるかに小さい曲率半径を有した凸型のメニスカスMが形成される。
【0062】
前述のように、尖って突出した部分のインク129に作用する静電気力Fは大きくなり、これによって、ノズル128中央部のメニスカスMの曲率半径はさらに小さくなり、これは、さらに静電気力Fを一層増加させる。結局は、尖って突出した部分のインク129は、ノズル128内部のインク129から液滴129aの形態で離れて出てくる。このとき、インク129は、ノズル129の中央部でのみ尖って突出しているので、ノズル128のサイズに比べてはるかに小サイズのインク液滴129aが吐出されうる。このように分離されたインク液滴129aは、静電気力Fによって、第2静電電極142側に移動し、印刷媒体P上に印刷される。
【0063】
次に、S708段階で、圧電アクチュエータ130に印加された第2電圧VP2を除去すれば、圧電アクチュエータ130は、元の状態に戻り、圧力チャンバ125内の圧力も、元の状態に回復するので、凹型のメニスカスMも、元の状態に戻る。このとき、第1静電電極141と第2静電電極142との間には、静電電圧Vが印加された状態が維持されうる。
【0064】
一方、以上では、第1静電電極141と第2静電電極142との間に印加される静電電圧Vが、S702段階からS708段階まで続けて維持されることを図面で説明したが、静電電圧Vは、図4に図示されているように、S704段階とS706段階とでのみ維持される。
【0065】
前述の通り、図7に示された駆動方法の一実施形態によれば、ノズル128の中央部に設けられたガイドロッド128aによる表面張力が、静電気力と共に作用することによって、ノズル128の中央部にのみ、尖った形態のメニスカスMがさらに容易に形成されうる。
【0066】
図8は、図5に示されたインクジェットプリンタの駆動方法の他の実施形態について説明するための図であり、図9は、図8に示された駆動方法に適用される駆動波形の一例について説明するための図である。
【0067】
図8と図9とを共に参照すれば、S802段階では、圧電アクチュエータ130には、電圧が印加されず、第1静電電極141と第2静電電極142との間には、第2電源145から所定の静電電圧Vが印加される。このとき、ノズル128内部のインク129に作用する静電気力が大きくないために、インク129のメニスカスMは、静止状態である。ただし、ノズル128の中央部に配されたガイドロッド128aによる表面張力によって、ガイドロッド128aの前部分のメニスカスMは、若干凸型に突出する。このようにガイドロッド128aの前部分で、若干凸型に突出した部分には、静電気力によって、正電荷が集まる。
【0068】
次に、S804段階では、圧電アクチュエータ130に、所定の第2電圧VP2を印加し、圧電アクチュエータ130を、圧力チャンバ125の体積を増加させる方向に変形させる。このとき、第1静電電極141と第2静電電極142との間には、静電電圧Vが印加された状態が維持される。それにより、圧力チャンバ125内の圧力が減少するので、ノズル128内部のインク129のメニスカスMは、凹型に変形されるが、メニスカスMの中央部、すなわちガイドロッド128aの前部には、集まった電荷と第2静電電極142との間に作用する静電気力、及びガイドロッド128aによる表面張力によって、凸型を維持する。
【0069】
図8に示された実施形態では、図7に示されたS704段階が省略されているので、ガイドロッド128aの前部に残っているインク129の量が非常に少なく、これによって、メニスカスMの曲率半径も非常に小さい。従って、ガイドロッド128aの前部に残っているインク129に作用する静電気力Fは、さらに大きくなり、結局、その部分のインク129は、液滴129aの形態で吐出される。このように分離されたインク液滴129aは、静電気力Fによって、第2静電電極142側に移動し、印刷媒体P上に印刷される。
【0070】
次に、S806段階で、圧電アクチュエータ130に印加された第2電圧VP2を除去すれば、圧電アクチュエータ130は、元の状態に戻り、圧力チャンバ125内の圧力も、元の状態に回復するので、凹型のメニスカスMも、元の状態に戻る。このとき、第1静電電極141と第2静電電極142との間には、静電電圧Vが印加された状態が維持されうる。
【0071】
前述の通り、図8と図9とに図示された駆動方法の他の実施形態によれば、ノズル128の中央部に設けられたガイドロッド128aの前部分に残るインク129の量が非常に少ないので、図7に図示された実施形態に比べて、さらに微細なサイズのインク液滴129aを吐出できる。
【0072】
図10は、図8に示された駆動方法に適用される駆動波形の他の例について説明するための図である。
【0073】
図10を参照すれば、第1静電電極141と第2静電電極142との間に印加される静電電圧Vは、S804段階でのみ維持されうる。すなわち、圧電アクチュエータ130に電圧が印加されず、メニスカスMが停止した状態を維持するS802とS806段階では、静電電圧Vも印加されない。
【0074】
以上、本発明の理解を助けるために、図示された実施形態を基に本発明について説明した。しかし、このような実施形態は、単に例示的なものに過ぎず、当分野で当業者ならば、それらから多様な変形及び均等な他実施形態が可能であるという点を理解することができるであろう。従って、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲によって決まるものである。
【符号の説明】
【0075】
110 流路プレート、
111 第1基板、
112 第2基板、
113 第3基板、
121 インクインレット、
122,123 マニホールド、
124 リストリクタ、
125 圧力チャンバ、
126 ダンパ、
128 ノズル、
128a ガイドロッド、
128b ブリッジ、
129 インク、
129a インク液滴、
130 圧電アクチュエータ、
131 下部電極、
132 圧電膜、
133 上部電極、
135 第1電源、
140 静電気力印加手段、
141 第1静電電極、
142 第2静電電極、
145 第2電源、
M メニスカス、
P 印刷媒体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリンタにおいて、
インクが流入するインクインレットと流入したインクを収めている圧力チャンバと前記圧力チャンバ内のインクを液滴状に吐出させるノズルとが形成された流路プレートと、
前記ノズルからインク液滴を吐出させる第1駆動力であって、前記圧力チャンバ内部のインクに圧力変化を提供する圧電アクチュエータと、
前記ノズルからインク液滴を吐出させる第2駆動力であって、前記ノズル内部のインクに静電気力を印加する静電気力印加手段と、
を具備することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記インクインレットは、前記流路プレートの上面側に形成され、前記圧力チャンバは、前記流路プレートの内部に形成され、前記ノズルは、前記流路プレートの底面側に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記流路プレートには、前記インクインレットと圧力チャンバとを連結するマニホールド及びリストリクタと、前記圧力チャンバとノズルとを連結するダンパがさらに形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記流路プレートは、複数の基板からなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記圧電アクチュエータは、前記流路プレートの上面に順次積層される下部電極、圧電膜及び上部電極と、前記下部電極と上部電極との間に電圧を印加するための第1電源とを含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記静電気力印加手段は、互いに対向するように配された第1静電電極及び第2静電電極と、前記第1静電電極と第2静電電極との間に電圧を印加する第2電源とを含むことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記第1静電電極は、前記流路プレートの上面に配され、前記第2静電電極は、前記流路プレートの底面と離隔されるように配されたことを特徴とする請求項6に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記ノズルの内部には、前記ノズルの中心軸に沿って延長されたガイドロッドが設けられたことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項9】
前記ガイドロッドは、前記ノズルの内側壁面に固定されたブリッジによって支持されることを特徴とする請求項8に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項10】
前記ガイドロッドは、前記流路プレートの底面から所定長ほど突出したことを特徴とする請求項8または9に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項11】
請求項1ないし請求項7のうち、いずれか1項に記載のインクジェットプリンタの駆動方法において、
前記圧電アクチュエータに第1電圧を印加し、前記圧電アクチュエータを、前記圧力チャンバの体積を減少させる方向に変形させる段階と、
前記圧電アクチュエータに第2電圧を印加し、前記圧電アクチュエータを、前記圧力チャンバの体積を増加させる方向に変形させる段階と、
前記圧電アクチュエータに印加された第2電圧を除去する段階と、
を含むことを特徴とするインクジェットプリンタの駆動方法。
【請求項12】
前記静電気力印加手段に静電電圧を印加し、前記ノズル内部のインクに静電気力を印加する段階をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載のインクジェットプリンタの駆動方法。
【請求項13】
前記静電電圧は、少なくとも前記第1電圧を印加する段階と、前記第2電圧を印加する段階とで維持されることを特徴とする請求項12に記載のインクジェットプリンタの駆動方法。
【請求項14】
前記第1電圧を印加する段階で、前記ノズル内部のインクのメニスカスが凸型に変形されることを特徴とする請求項13に記載のインクジェットプリンタの駆動方法。
【請求項15】
前記第2電圧を印加する段階で、前記ノズルの中央部に、前記ノズルの内径より小さい曲率半径を有した凸型のメニスカスが形成され、凸型に突出した部分のインクは、前記静電気力によって液滴状に吐出されることを特徴とする請求項13または14に記載のインクジェットプリンタの駆動方法。
【請求項16】
前記第2電圧を印加する段階で、前記ノズルのサイズに比べて小サイズのインク液滴が吐出されることを特徴とする請求項13から15のいずれかに記載のインクジェットプリンタの駆動方法。
【請求項17】
前記第2電圧を除去する段階で、前記圧電アクチュエータ、前記圧力チャンバ内の圧力、及び前記ノズル内部のインクのメニスカスは、元の状態に戻ることを特徴とする請求項13から16のいずれかに記載のインクジェットプリンタの駆動方法。
【請求項18】
請求項8ないし請求項10のうち、いずれか1項に記載のインクジェットプリンタの駆動方法において、
前記圧電アクチュエータに第2電圧を印加し、前記圧電アクチュエータを、前記圧力チャンバの体積を増加させる方向に変形させる段階と、
前記圧電アクチュエータに印加された第2電圧を除去する段階と、
を含むことを特徴とするインクジェットプリンタの駆動方法。
【請求項19】
前記静電気力印加手段に静電電圧を印加し、前記ノズル内部のインクに静電気力を印加する段階をさらに含むことを特徴とする請求項18に記載のインクジェットプリンタの駆動方法。
【請求項20】
前記第2電圧を印加する段階前に、前記圧電アクチュエータに第1電圧を印加し、前記圧電アクチュエータを、前記圧力チャンバの体積を減少させる方向に変形させる段階をさらに含むことを特徴とする請求項18または19に記載のインクジェットプリンタの駆動方法。
【請求項21】
前記第1電圧を印加する段階で、前記ノズル内部のインクのメニスカスが凸型に変形されることを特徴とする請求項20に記載のインクジェットプリンタの駆動方法。
【請求項22】
前記静電電圧は、少なくとも前記第1電圧を印加する段階と、前記第2電圧を印加する段階とで維持されることを特徴とする請求項20または21に記載のインクジェットプリンタの駆動方法。
【請求項23】
前記第2電圧を印加する段階前に、前記ガイドロッドによる表面張力によって、前記ガイドロッドの前部分のメニスカスが凸型に突出したことを特徴とする請求項19から22のいずれかに記載のインクジェットプリンタの駆動方法。
【請求項24】
前記第2電圧を印加する段階で、前記ガイドロッド前部分に、前記ノズルの内径より小さい曲率半径を有した凸型のメニスカスが形成され、凸型に突出した部分のインクは、前記静電気力によって液滴状に吐出されることを特徴とする請求項19から23のいずれかに記載のインクジェットプリンタの駆動方法。
【請求項25】
前記第2電圧を印加する段階で、前記ノズルのサイズに比べて小サイズのインク液滴が吐出されることを特徴とする請求項24に記載のインクジェットプリンタの駆動方法。
【請求項26】
前記第2電圧を除去する段階で、前記圧電アクチュエータ、前記圧力チャンバ内の圧力、及び前記ノズル内部のインクのメニスカスは、元の状態に戻ることを特徴とする請求項19から25のいずれかに記載のインクジェットプリンタの駆動方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−179651(P2010−179651A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12848(P2010−12848)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do 442−742(KR)
【Fターム(参考)】