説明

インクジェットプリンタ

【課題】記録媒体を同じ吸着力で保持する搬送機構は、インクの着弾の際に紙伸びが発生し、複数の記録ヘッドを繋ぎ合わせた構成のラインヘッドにおけるつなぎ目においては、紙伸びによる画像の位置ずれにより記録された画像の質が低下している。
【解決手段】インクジェットプリンタは、記録ヘッドのつなぎ目に対向する記録媒体の領域に対する吸着力を非つなぎ目の領域に対する吸着力よりも高めることにより、インクが吐出された記録媒体の紙伸びにおける主走査方向に働く内部応力を分散して紙伸びを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体を搬送し、固定されたラインヘッドにより画像記録を行うインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットプリンタには、画像記録の高速化を図るために、ラインヘッドを備え、記録媒体のみを搬送することで画像記録を行うプリンタ(以下、ラインプリンタと称す。)がある。
このようなラインプリンタの中で、複数個の短尺なインクヘッドを記録媒体(記録紙)の搬送方向と直交する方向(主走査方向)で、互いの端部が重複するように配置することで1つのラインヘッドを構成のものがある。このラインヘッドは、隣接するインクヘッドのつなぎ目に相当する部分とつなぎ目以外の部分とで濃度差による画質悪化が問題となる。そこで、例えば、特許文献1及び特許文献2には、隣接するインクヘッドのつなぎ目に相当する部分での画質悪化を防止する技術が開示されている。
【0003】
この特許文献1で提案されるインクジェットプリンタは、隣接するインクヘッド同士で、一方のインクヘッドの端に形成されたダミーノズルと、もう一方のインクヘッドの端に形成されたノズルとをカメラで同時に撮影しながら正確に位置決めしている。このように、ラインヘッドを組み立てる際に、隣接するインクヘッド同士を正確に位置決めすることでつなぎ目に相当する部分での画質悪化を防止している。
【0004】
また、特許文献2のインクジェットプリンタは、隣接するインクヘッドのつなぎ目において、一方のインクヘッドから吐出されたインクによって形成されたドットと、もう一方のインクヘッドから吐出されたインクによって形成されたドットと、が交互に配設されるようにインクヘッドの吐出を制御している。このようにして、つなぎ目に相当する部分での画質悪化を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−020175号公報
【特許文献2】特開2001−270155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したインクジェットプリンタにおいて、記録媒体である用紙にインクを吐出すると、着弾した領域(ドット)の用紙部分に伸びが発生する。そのため、各色のラインヘッド間や、同色のインクヘッドにおけるつなぎ目において、記録媒体上に着弾したインク滴のドット間隔が拡がったり、狭まったりする。
【0007】
特許文献1の場合の用紙の伸びの影響を、図18(a)乃至図19(c)を参照して説明する。図18(a)及び図19(a)で示されるように、隣接するインクヘッド200a、200bは千鳥状に配置されている。
インクヘッド200a、200bの主走査方向の位置決め調整を行う際に、インクヘッド200bの端のダミーノズル202にインクヘッド200aの端のノズル201aが図中に示す記録媒体搬送方向に沿って合うように、カメラで同時に撮影しながら位置決め調整が行われる。
【0008】
画像記録は、インクヘッド200aの複数のノズル201aと、インクヘッド200bのダミーノズル202を除く複数のノズル201bで行われる。インクヘッド200aの端のノズル201aと、インクヘッド200bのダミーノズル202の隣のノズル201b間が、つなぎ目204となる。
このとき、隣接するインクヘッド200a、200bのノズル同士をカメラで同時に撮影しながら位置決め調整しても、記録媒体にインクを塗布すると記録媒体が伸びてしまい、つなぎ目204でのドット配列にずれが発生する。
【0009】
即ち、図18(b)及び図19(b)に示すように、まずは、インクヘッド200aのノズル201aによって記録媒体上にドット203aが形成される。記録直後のドット203aの配置は、インクヘッド200aのノズル201aの配置にほぼ等しい。
しかし、図18(c)に示すように、インクヘッド200bのノズル201bによって記録媒体上にドット203bが形成される時には、インクヘッド200aのノズル201aによって記録媒体上にドット203aは、図示する記録媒体の伸び方向にずれが発生している。この結果、つなぎ目204でドット間隔が拡がり、白筋が発生し、つなぎ目の画像記録品位を極端に下げ、目立つことになる。
【0010】
同様に、図19(c)に示すように、インクヘッド200bのノズル201bによって記録媒体上にドット203bが形成される時には、インクヘッド200aのノズル201aによって、記録媒体上に形成されたドット203aは、図示する記録媒体の伸び方向にずれが発生している。この結果、つなぎ目204でドット間隔が狭まり、黒筋が発生し、つなぎ目の画像記録品位を極端に下げ、目立つことになる。
【0011】
特許文献2における記録媒体の伸びの影響を、図20(a)乃至図21(c)を参照して説明する。
図20(a)及び図21(a)で示されるように、隣接するインクヘッド300a、300bは、千鳥状に配置されている。画像記録は、インクヘッド300aの複数のノズル301aと、インクヘッド300bの複数のノズル301bで行われる。インクヘッド300aの端のノズル301aと、インクヘッド300bの端のノズル301b間が、つなぎ目303となる。これらインクヘッド300a、300bの主走査方向の位置決め調整においては、調整の都度、画像記録を行うが、いずれにしても調整誤差δが残っている。
【0012】
この調整誤差δが存在するため、つなぎ目303では、インクヘジド300aの端のノズル301aと、インクヘッド300bの端のノズル301bを、1ライン毎に交互にドットを形成することにより、つなぎ目303を目立たなくさせている。
このとき、隣接するインクヘッド300a、300bのつなぎ目303を製造工程で目立たなくなるように調整しても、記録媒体へのインクの吐出量(記録媒体を占める印字率の違い)によって記録媒体の伸びが変化し、つなぎ目303でのドット配列にずれが発生する。
【0013】
即ち、図20(b)及び図21(b)に示すように、低い印字率の画像記録の場合は、インクヘッド300aのノズル301aの配置とノズル301aによって記録媒体上に形成されるドット302aの配置はほぼ等しく、インクヘッド300bのノズル301bの配置とノズル301bによって記録媒体上に形成されるドット302bの配置はほぼ等しく、つなぎ目303は目立たない。
【0014】
しかし、図20(c)及び図21(c)に示すように、高い印字率の画像記録の場合は、インクヘッド300aのノズル301aによって先に記録媒体上に形成されるドット302aが図示する記録媒体の伸び方向にずれて、インクヘッド300bのノズル301bによって、次に記録媒体上に形成されるドット302b間でのつなぎ目303で、ドット密度の粗密が発生する。
【0015】
この結果、図20(c)に示す記録媒体の伸び方向では、つなぎ目303でドット間隔が拡がり、白筋が発生し、図21(c)に示す記録媒体の伸び方向では、つなぎ目303でドット間隔が狭まり、黒筋が発生し、つなぎ目の画像記録品位を極端に下げ、目立つことになる。また、製造工程でつなぎ目を目立たなくさせるように調整できたとしても、実使用時の画像記録物の印字率や記録媒体の種類は無数にあるため、それぞれの印字率や記録媒体に応じて調整を行い、調整パラメータを装置に記憶させることは現実的に不可能である。
【0016】
そこで、本発明は、複数のインクヘッドによってラインヘッドを構成し、このラインヘッドによって記録媒体上に画像記録を行った際、各インクヘッドのつなぎ目に相当する部分の濃度ムラを低減するインクジェットプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明に従う実施形態は、インクを吐出する複数のノズルが予め定めた間隔で配列された、主走査方向に沿った記録媒体の幅に満たない短尺ヘッドを複数用いて、前記主走査方向と直交する方向から見て前記短尺ヘッドの端部に互いに重なりを持たせるようにつなぎ目を設けて、前記主走査方向に沿って配設して構成されるラインヘッドと、記録媒体を保持し、前記主走査方向と直交する方向に、前記ラインヘッド下方を通過させる記録媒体搬送部と、を具備し、前記記録媒体搬送部の前記記録媒体の保持面には、保持している前記記録媒体に対して、前記つなぎ目を含むつなぎ目領域と、前記つなぎ目を含まない非つなぎ目領域を設けて、前記つなぎ目領域の吸着力を非つなぎ目領域より大きくする第1の保持機構、又は前記つなぎ目領域の摩擦係数を非つなぎ目領域より大きくする第2の保持機構のいずれかを搭載し、時間差を有して前記インクが吐出された前記記録媒体の紙伸びにおける前記主走査方向に働く内部応力が分散されるインクジェットプリンタを提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数のインクヘッドによってラインヘッドを構成し、このラインヘッドによって記録媒体上に画像記録を行った際、各インクヘッドのつなぎ目に相当する部分の濃度ムラを低減するインクジェットプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は 第1の実施形態に係るインクジェットプリンタの構成を概略的に示す正面図である。
【図2】図2は、画像記録部、ヘッド移動機構及びヘッド支持機構を示す斜視図である。
【図3】図3は、画像記録部、ヘッド移動機構及びヘッド支持機構の概略的な側面構成を示し、ドラムによる記録媒体の保持機構を説明するための図である。
【図4】図4は、インクヘッドのつなぎ目近傍のノズルからインクが吐出されて行われる1回目の画像記録の状態を示す図である。
【図5】図5は、図4に続き、つなぎ目近傍のノズルからインクが吐出されて行われる4回目の画像記録の状態を示す図である。
【図6】図6は、本実施形態のドラムによる記録媒体の保持機構を説明するための図である。
【図7】図7(a)は、記録媒体の保持面全域に渡って記録媒体を保持した場合のつなぎ目付近の記録画像を概念的に示す図であり、図7(b)は、記録ヘッドのつなぎ目を含む5箇所の保持領域で保持した記録媒体に記録した概念的な記録画像を示す図である。
【図8】図8は、第1の実施形態の変形例1に係るドラムによる記録媒体の保持機構について説明するための図である。
【図9】図9は、第1の実施形態の変形例2に係るドラムによる記録媒体の保持機構について説明するための図である。
【図10】図10は、第2の実施形態に係るドラムによる記録媒体の保持機構について説明するための図である。
【図11】図11は、第2の実施形態の変形例に係るドラムによる記録媒体の保持機構について説明するための図である。
【図12】図12は、第3の実施形態に係るインクジェットプリンタの正面から見た構成を概略的に示す図である。
【図13】図13は、第3の実施形態に係るドラムによる記録媒体の保持機構について説明するための図である。
【図14】図14は、第3の実施形態の変形例に係るドラムによる記録媒体の保持機構について説明するための図である。
【図15】図15は、第4の実施形態に係るドラムによる記録媒体の保持機構について説明するための図である。
【図16】図16は、第5の実施形態の記録部及び搬送機構を上から見た概念的な構成を示す図である。
【図17】図17は、図16に示す記録部及び搬送機構の構成を側方から見た概念的な構成を示す図である。
【図18】図18(a)乃至(c)は、記録媒体に対する白筋の発生について説明するための図である。
【図19】図19(a)乃至(c)は、記録媒体に対する黒筋の発生について説明するための図である。
【図20】図20(a)乃至(c)は、記録媒体に対する白筋の発生について説明するための図である。
【図21】図21(a)乃至(c)は、記録媒体に対する黒筋の発生について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態について、図1乃至図7を参照して説明する。図1は 第1の実施形態に係るインクジェットプリンタ1の構成を概略的に示す正面図である。
インクジェットプリンタ1は、媒体供給部10と、搬送部20と、画像記録部30と、ヘッド移動機構40(図2及び図3に図示)と、昇降機構60と、クリーニング部70と、媒体排出部80と、を有している。これら構成部は、媒体排出部80の後述する排出トレイ82を除いて、プリンタ本体フレーム2内に収容されている。また、これら構成部は、パーソナルコンピュータやCPU等の演算処理部を備えた不図示の制御部により制御される。
【0021】
まず、媒体供給部10について詳細に説明する。
本実施形態において、媒体供給部10は、インクジェットプリンタ1の最下部に配置されている。この媒体供給部10は、所定の大きさにカットされた記録紙やフィルム等の記録媒体(カット媒体)3を収納する供給トレイ11と、供給トレイ11内に収納された記録媒体3を1枚ずつ取り出すピックアップローラ12と、ピックアップローラ12によって取り出された記録媒体3を搬送部(搬送経路)20へ案内するための供給ガイド13と、を有している。
なお、供給トレイ11には、一定の圧力でピックアップローラ12に記録媒体3を当接させるための不図示のばねが設けられている。
【0022】
次に、搬送部20について説明する。
搬送部20は、帯電ローラ21と、ドラム22と、媒体端検知センサ23と、除電器24と、剥離爪25と、を有している。
ドラム22は、横向き配置の導電体材料又は金属材料、例えばアルミニウムによる中空円筒形状(以下、中空アルミ円筒と称する)を成し、その両側面を円盤形状のフランジで塞ぐように形成される。
【0023】
帯電ローラ21は、搬送部(搬送経路)20における最上流側に、ドラム22に対向して設けられている。この帯電ローラ21は、供給ガイド13により案内された記録媒体3をドラム22の円筒表面に案内するとともに、第1の保持機構となる後述する帯状の絶縁層50に、正放電することで記録媒体3をドラム22の円筒表面に電気的に吸着させる働きをする。
【0024】
本実施形態では、オゾンが発生しにくいように、正(+)帯電としている。ドラム22は、ドラム22の回転軸22aによって、プリンタ本体フレーム2に回転可能に軸支されている。このドラム22は、記録時に記録媒体3を巻き付けるように吸着保持して搬送するために、回転軸22aに連結された駆動機構(図示せず)、例えばモータを含む駆動機構により回転されることによって、図1に矢印で示した方向(時計回り)に一定速度の定回転が行われる。
【0025】
また、ドラム22の回転軸22aには、相対的回転角を検出する図示しないエンコーダが連結されている。ドラム22の円筒表面上には、記録媒体3を吸着保持するための後述する帯状の絶縁層50が設けられている。また、ドラム22自体はスラスト方向のガタが発生しないように構成されている。媒体端検知センサ23は、帯電ローラ21の下流側の搬送経路に、ドラム22に対向して設けられている。
【0026】
この媒体端検知センサ23は、発光素子と受光素子とを有している。媒体端検知センサ23は、発光素子からの光がドラム22の円筒表面又は記録媒体3の表面で反射されて受光素子に受信されたとき、ドラム22の円筒表面と記録媒体3の表面との反射率の違いによって、ドラム22上に吸着された記録媒体3の境界(記録媒体端)を検知し、記録媒体3の絶対的回転位置を検出する。
【0027】
除電器24は、後述する画像記録部30の下流側の搬送経路に、ドラム22に対向して設けられている。この除電器24は、交流放電をすることでドラム22に電気的に吸着された状態にある記録媒体3の吸着力を消滅させる(除電する)働きをする。
剥離爪25は、その先端部がドラム22の円筒表面に接するように配置され、吸着力がなくなった記録媒体3をドラム22から剥離するとともに、媒体排出部80へ案内する。尚、剥離動作を行うときを除いて、剥離爪25の先端部は、除電器24による除電タイミングと同期して駆動される不図示のアクチュエータにより、ドラム22の円筒表面から離間した位置に退避される。
【0028】
次に、画像記録部30について、図1乃至図3を参照して説明する。
ここで、図2は、画像記録部、ヘッド移動機構及びヘッド支持機構を示す斜視図である。また、図3は、ドラム、画像記録部、ヘッド移動機構及びヘッド支持機構の概略的な側面構成を示し、ドラムによる記録媒体の保持機構を説明するための図である。
【0029】
画像記録部30は、媒体端検知センサ23と除電器24との間の搬送経路中に、ドラム22の円筒表面に沿うように対向して設けられている。この画像記録部30は、ラインヘッド31及びラインヘッド31を保持するヘッドホルダ32により構成されているヘッドユニットと、一端側がヘッドホルダ32に、他端側が記録部固定フレームにそれぞれ接続され、ヘッドホルダ32を記録部固定フレームに対して鉛直方向に吊り下げ式に保持するヘッド支持機構となる2枚1組の平行板ばね33と、を有している。
【0030】
本実施形態では、搬送経路の上流側から順番に、シアン(C)、ブラック(K)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色のラインヘッド31がヘッドホルダ32に一体的に組み合わされて、ヘッドユニットを構成している。尚、本実施形態のラインヘッド31は、図3の矢印で示した記録媒体3の搬送方向に直交する方向に配列され、互い違いに(千鳥状に)配列された複数のインクヘッド34a〜34fによって構成されている。
【0031】
インクヘッド34a〜34fは隣接するインクヘッド同士で所定量の重なりを形成し、つなぎ目35a〜35eを設けて主走査方向に沿って交互に配設、所謂、千鳥状に配置で構成される。尚、ラインヘッドは、他にも、インクヘッドを主走査方向に沿って階段状に配置する構成でもよい。本実施形態では、インクヘッド34a〜34fの解像度は、150dpiで、つなぎ目35a〜35eのオーバーラップ量が、例えば、5ノズルとなるように、インクヘッド34a〜34fはヘッドホルダ32に組み込まれる。ラインヘッド31のノズル面31a、即ちドラム22に対向している側には、記録媒体3の搬送される方向と直交する方向(主走査方向)において、複数のノズル31bがノズルピッチdで列を成して形成(配列)されている。
【0032】
ドラム22に電気的に吸着された記録媒体3がラインヘッド31の下方を通過したとき、ラインヘッド31は、不図示の制御部から受信した画像記録データに応じてこれらノズル31bからインクを吐出して、記録媒体3に画像を記録する。ヘッド支持機構である平行板ばね33は、弾性材料により形成され、その材料の弾性域内で、ヘッドホルダ32は外力に応じて主走査方向に擁むように保持されている。
【0033】
後述するヘッド移動機構40により、ヘッドホルダ32をラインヘッド31の長手方向(主走査方向)に移動した場合でも、2枚1組の平行板ばね33で平行リンク機構を形成しているため、ラインヘッド31のノズル面31aとドラム20の表面は平行な関係を保っ構成となっている。また、ヘッドホルダ32を平行板ばね33で保持することにより、摺動抵抗がないため、ヘッドホルダ32は滑らかに移動できることとなる。
【0034】
次に、ヘッド移動機構40について、図2並びに図3を参照して説明する。
ヘッド移動機構40は、ラインヘッド31の長手方向(主走査方向)一端側に設けられ、ヘッドホルダ32に当接するカム41と、カム41に接続され、カム41を駆動(回転)させるためのステッピングモータ42とからなる駆動部と、ラインヘッド31の長手方向他端側に設けられ、ヘッドホルダ32をカム41に向かって付勢する弾性部材、例えば、コイル形状の付勢ばね43と、を有している。
【0035】
カム41は、カムの外周端面(カム曲面)の1点でヘッドホルダ32に接しており、ステッピングモータ42を駆動させることにより連続的に変更されるカム41の接点部における半径に応じて、ヘッドユニット(ラインヘッド31及び、ヘッドホルダ32)が主走査方向に対して平行であり、図3に示す矢印の方向(ヘッドユニット移動方向)に微小移動可能となっている。例えば、圧縮コイルばねである付勢ばね43は、ヘッドホルダ32がカム曲面に押し当てられる方向に、付勢力Fbを与える。
【0036】
この付勢力が、微小移動時の最大加速度αmaxによって、ラインヘッド31に発生する最大荷重Fmax=M×αmax(Mはラインヘッド31の質量)よりも大きくなるようなばねが選定される(Fb>Fmax)ため、ヘッドホルダ32とカム曲面とは、十分な付勢力により常に互いに当接した状態を保つ。即ち、この付勢力により、ヘッドホルダ32とカム41とは、ヘッドユニットの移動時にも離間することなく、ステッピングモータ42の回転角度に応じた接点部のカム半径に忠実に、ラインヘッド31の水平方向の正確な微小移動が可能となっている。
【0037】
次に、昇降機構60について説明する。
昇降機構60は、ヘッドホルダ32に螺合され、鉛直方向に延びたリードスクリュ61と、リードスクリュ61の上端部に取り付けられた第1のギヤ62と、昇降モータ63の軸63aに取り付けられ、第1のギヤ62と嵌合している第2のギヤ64と、を有している。
この昇降機構60は、昇降モータ63の駆動によってリードスクリュ61が回転すると、リードスクリュ61と螺合されたヘッドホルダ32が昇降させる。かくして、昇降機構60は、画像記録部30を、ヘツドクリーニング時や画像記録待機時においてドラム22から退避した退避位置と、画像記録時においてドラム22に近接している画像記録位置とに移動させる。
【0038】
次に、クリーニング部70について説明する。
クリーニング部70は、ドラム22の円筒表面に沿うように対向して設けられている。このクリーニング部70は、ラインヘッド31をクリーニングするために、図示していないが、インクを拭き取るワイプブレードや吸引機構等の既知のクリーニング機構を有している。
【0039】
このクリーニング部70は、待機時や画像記録時には、図1に示すように、ラインヘッド31の近傍に配置されている(退避位置)。クリーニングを行う際は、まず、昇降機構60によって画像記録部30を上昇、即ちドラム22から上方に離間させる。これにより、画像記録部30とドラム22との間に空間が形成される。
【0040】
次に、クリーニング部70を不図示のクリーニング部移動機構によって前記空間に向かって移動させ、画像記録部30と対向させる(クリーニング位置)。そして、クリーニング部70が、画像記録部30(ラインヘッド31)のクリーニングを行う。クリーニングが終わると、画像記録部30及びクリーニング部70は、図1に示す退避位置に移動する。
【0041】
次に、媒体排出部80について説明する。
媒体排出部80は、ベルトユニット81と、排出トレイ82と、を有している。ベルトユニット81は、不図示の吸引ユニットと、複数のローラと、これらローラに架け渡された複数の孔が形成された無端ベルトと、により構成されている。このベルトユニット81は、画像記録後に剥離爪25によってドラム22から剥離された記録媒体3の記録面の裏面を無端ベルト上に吸引吸着して、排出トレイ82へと搬送する。排出トレイ82は、画像記録された記録媒体3を整列収納する。
【0042】
以上のように構成されたインクジェットプリンタ1による、1枚の記録媒体3への一連の画像記録動作について、図3乃至図5を参照して説明する。図4は、インクヘッド34a、34bのつなぎ目35a近傍のノズルからインクが吐出されて行われる1回目の画像記録の状態を示す図である。図5は、図4に続き、つなぎ目近傍のノズルからインクが吐出されて行われる4回目の画像記録の状態を示す図である。
【0043】
本実施形態のインクジェットプリンタ1は、1パスで画像を記録する高速画像記録モードと、複数パスにより高解像度で画像を記録する高密度画像記録モードの2つの画像記録モードを有する。
まず、1パスによる画像記録について説明する。この1パスによる画像記録は、インクヘッドのノズルピッチdのままの解像度で画像を記録する高速画像記録モードで画像記録を行う。
【0044】
画像記録動作が開始されると、ドラム22が図1の矢印方向(時計回り)に回転し始める。そして、予め設定されたタイミングを見計らって、記録媒体3が供給トレイ11からピックアップローラ12により1枚送り込まれる。送り込まれた記録媒体3は、供給ガイド13により案内されて、帯電ローラ21、ドラム22の円筒表面へと搬送される。同時に、帯電ローラ21は、正(+)放電を開始し、ドラム22の円筒表面に形成した絶縁層を帯電させ、記録媒体3をドラム22の円筒表面に電気的に吸着させる。
【0045】
ドラム22に吸着された記録媒体3は、ドラム22の回転に従って搬送され、媒体端検知センサ23の下方を通過する。このとき、媒体端検知センサ23が、搬送される記録媒体3の搬送方向側の先端を検出する。この先端が検出されると、この検出した情報、及びエンコーダの情報が不図示の制御部に送信され、この情報に基づいて続く画像記録部30(ラインヘッド31)による記録媒体3への画像記録開始及び終了のタイミングが決定される。
【0046】
そして、図4に示すように、C、K、M、Yの各ラインヘッド31のノズル31bから、記録すべき所望のデータに基づいて各色のタイミングでインクが吐出されて、記録媒体3に画像記録がなされる。少なくとも画像記録動作中は、ラインヘッド31のノズル面31a又はその近傍に、記録媒体3に印加した静電電位と同じ電位(この例では+電位)で数百ボルト〜数キロボルトのバイアス電位を印加している。このため、ドラム22に静電気で密着した記録媒体3やゴミ等は、同じ電位のノズル面31aとは反発し合い、ノズル面31aやノズル31bに付着しにくくなっている。
【0047】
画像記録の終了した記録媒体3が除電器24の下方を通過するのとほぼ同時に、除電器24はAC放電を開始し、ドラム22に電気的に密着された記録媒体3のドラム22の円筒表面への吸着力を消滅させる(除電する)。その直後、剥離爪25が、不図示のアクチュエータにより、除電器24による除電のタイミングと同期して駆動され、記録媒体3下に先端を差し入れて、ドラム22の円筒表面から剥離して、記録媒体3の搬送方向の先端をベルトユニット81に受け渡す。
【0048】
ベルトユニット81は、少なくとも画像記録時は矢印方向に、ドラム22の周速よりも速い速度で移動している。よって、ベルトユニット81上に移動した記録媒体3は、不図示の吸引箱の負圧で無端ベルトの穴を介して、無端ベルト上に密着搬送される。そして、記録媒体3は、排出トレイ82上に排出される。かくして、1枚の記録媒体3への一連の1パス時の画像記録動作が終了する。
【0049】
次に、マルチパスによる画像記録について説明する。
例えば、解像度を4倍にするために、つまりノズルピッチdの4倍の密度で画像を記録するために、1回目の画像記録の後、ヘッドユニット(ラインヘッド31、ヘッドホルダ32)をノズルピッチdの1/4だけ移動させて、2回目、3回目、4回目の画像記録を行う場合について説明する。
【0050】
画像記録動作が開始されると、ドラム22が図1の矢印方向(時計回り)に回転し始める。そして、ドラム22が定回転となる予め設定されたタイミングを見計らって、記録媒体3が供給トレイ11からピックアップローラ12により1枚送り込まれる。送り込まれた記録媒体3は、供給ガイド13により案内されて、帯電ローラ21、ドラム22の円筒表面へと搬送される。同時に、帯電ローラ21は、正(+)放電を開始し、ドラム22の円筒表面に形成した絶縁層を帯電させ、記録媒体3をドラム22の円筒表面に電気的に吸着させる。
【0051】
ドラム22の円筒表面に吸着された記録媒体3は、ドラム22の回転と供に搬送され、媒体端検知センサ23の下方を通過する。このとき、媒体端検知センサ23が、ドラム22の円筒表面上における記録媒体3の搬送方向の先端を検出する。先端が検出されると、この検出した情報、及びエンコーダの情報が不図示の制御部に送信され、この情報に基づいて続く画像記録部30(ラインヘッド31)による記録媒体3への画像記録開始及び終了のタイミングが決定される。
【0052】
そして、図4に示すように、C、K、M、Yの各ラインヘッド31のノズル31bから、記録すべき所望のデータに基づいて各色のタイミングでインクが吐出されて、記録媒体3に1回目の画像記録がなされる。
その後、1回目の画像記録の後、除電器24を作動させず、故に記録媒体3がドラム22から剥離されることなくもう1回転させて、記録媒体3が再びラインヘッド位置に達する。その間に、ヘッド移動機構40のステッピングモータ42を駆動させて、ヘッドホルダ32とのカム41の当接位置を変えて、ヘッドユニットをノズルピッチdの1/4に相当する距離だけヘッドユニット移動方向に移動させて、記録媒体3に2回目の画像記録がなされる。
【0053】
2回目の画像記録の後も、除電器24を作動させず、記録媒体3がドラム22から剥離されることなく、再度、1回転させて、記録媒体3が再びラインヘッド位置に達する。その間に、ヘッド移動機構40のステッピングモータ42を駆動させて、ヘッドホルダ32とのカム41の当接位置を変えて、ヘッドユニットをノズルピッチdの1/4に相当する距離だけさらにヘッドユニット移動方向に移動させて、記録媒体3に3回目の画像記録がなされる。
【0054】
3回目の画像記録の後も、除電器24を作動させず、記録媒体3がドラム22から剥離されることなくもう1回転させて、記録媒体3が再びラインヘッド位置に達する。その間に、ヘッド移動機構40のステッピングモータ42を駆動させて、ヘッドホルダ32とのカム41の当接位置を変えて、ヘッドユニットをノズルピッチdの1/4に相当する距離だけさらにヘッドユニット移動方向に移動させて、図5に示されるように記録媒体3に4回目の画像記録がなされる。これにより、ラインヘッド31をノズルピッチdの1/4の距離だけノズル列方向に3回移動させて補間記録を行い、ノズルピッチ以上の高密度な画像記録を行うことが可能となっている。
【0055】
4回目の画像記録の終了した記録媒体3が除電器24の下方を通過するのとほぼ同時に、除電器24はAC放電を開始し、ドラム22に電気的に密着された記録媒体3のドラム22の円筒表面への吸着力を消滅させる(除電する)。
その直後、剥離爪25が、不図示のアクチュエータにより、除電器24による除電のタイミングと同期して駆動され、記録媒体3をドラム22の円筒表面から剥離して、記録媒体3の搬送方向の先端をベルトユニット81に受け渡す。ベルトユニット81は、少なくとも画像記録時は矢印方向に、ドラム22の周速よりも速い速度で移動している。
【0056】
よって、ベルトユニット81上に移動した記録媒体3は、不図示の吸引箱の負圧で無端ベルトの穴を介して、無端ベルト上に密着搬送される。そして、記録媒体3は、排出トレイ82上に排出される。かくして、1枚の記録媒体3への一連の複数パス時の画像記録動作が終了する。
【0057】
次に、本実施形態における記録媒体の保持機構について説明する。
図6は、本実施形態のドラムによる記録媒体の保持機構を説明するための図である。
この保持機構において、アルミニウム等の金属からなるドラム22の円筒表面には、5箇所に分散して搬送方向に沿った帯状の絶縁プラスチックコートによる第1の保持機構である絶縁層50を形成する。各々の絶縁層50は、記録媒体の搬送方向に沿って、ドラム22の円筒表面に1周分で形成されている。尚、絶縁層50の数はつなぎ目の数と同数であり、本実施形態において、5つの継ぎ目のあるラインヘッドを採用しているためであり、5箇所に限定されるものではない。
【0058】
5箇所の絶縁層50は、インクヘッド34a〜34fのつなぎ目35a〜35eに対向するドラム22の円筒表面上の位置に形成されている。この絶縁層50の幅は、つなぎ目35a〜35eを含み、かつ隣接するインクヘッドのオーバーラップ量以上の幅とする。即ち、従来のドラムでは、円筒表面の全面に渡り、絶縁プラスチックコートされているが、本実施形態では、インクヘッドのつなぎ目に対向するドラムの円筒表面上の位置のみに絶縁層50が形成され、以外は、金属面が露呈している。
また、帯電ローラ21は、一体的に構成され、それぞれに絶縁層50と当接する5個のローラ部を備えている。これらのローラ部の軸方向寸法は、5箇所の絶縁層50全てに当接可能なように配置されている。
【0059】
次に、記録媒体3をドラム22の円筒表面に吸着させる動作について説明する。
まず、画像記録動作が開始されると、ドラム22が回転し始める。ドラム22が定回転となる予め設定されたタイミングを見計らって、記録媒体3が供給トレイ11からピックアップローラ12により1枚送り込まれる。送り込まれた記録媒体3は、供給ガイド13により案内されて、帯電ローラ21、ドラム22の円筒表面へと搬送される。
【0060】
同時に、帯電ローラ21は、正(+)放電を開始し、ドラム22の円筒表面に形成した5箇所の絶縁層50のみを帯電させた保持領域を作りだし、その領域のみで記録媒体3をドラム22の円筒表面に電気的に吸着させる。以降の説明において、帯電している状態の絶縁層50は記録媒体を保持する保持領域50と称している。
このようにして、少なくとも記録媒体3におけるつなぎ目35a〜35eのノズルにより画像記録される部分のみが各保持領域50で吸着されている。尚、これらの保持領域50に吸着された記録媒体3の領域以外の領域は、保持されず、フリー状態である。
【0061】
インク吐出によって発生した記録媒体の伸びは、つなぎ目34aと35b間、35bと35c間、35cと35d間、35dと35e間で、その伸びによる主走査方向の内部応力が分散されることになる。また、つなぎ目35aと記録媒体3の左端間の領域、つなぎ目35eと記録媒体3の右端間の領域でも、それぞれの主走査方向の距離分だけ記録媒体が伸びることとなる。
【0062】
図7(a)は、記録媒体の保持面全域に渡って記録媒体を保持(ここでは全面吸着と称す。)した場合のつなぎ目付近の記録画像を概念的に示す図であり、図7(b)は、前述した記録ヘッドのつなぎ目を含む5箇所の保持領域50で保持した記録媒体に記録した概念的な記録画像を示している。
全面吸着時の記録画像と分散吸着時の記録画像を目視で比較すると、全面吸着時の記録画像ではつなぎ目が目立ち、分散吸着時の記録画像ではつなぎ目が目立ちにくいことがわかる。
【0063】
以上にように、インクヘッド34a〜34fのつなぎ目35a〜35eに相当する記録媒体の領域を吸着保持し、これ以外の領域は吸着保持しないことで、インク吐出による記録媒体の伸びが発生しても、伸びによる記録媒体の内部応力は分散される。その結果、つなぎ目35a〜35eに相当する記録媒体の領域では伸びの影響を抑制できることになり、記録画像のつなぎ目で紙伸びがない装置を提供することが可能となる。
【0064】
また、つなぎ目34aと35b間、35bと35c間、35cと35d間、35dと35e間の領域でも、伸びによる記録媒体の内部応力が分散されることから、各インクヘッドの主走査方向の幅のおよそ半分程度の距離での記録媒体の伸びに抑制される。その結果、記録媒体の伸びが完全に防止されるものではないが、人間の視覚におけるずれが認められない程度まで抑制されることで、つなぎ目においても記録媒体の伸びが抑制されることで、より高い画像記録品位となる。
【0065】
さらに、つなぎ目35aと記録媒体3の左端間の領域、つなぎ目35eと記録媒体3の右端間の領域でも、伸びによる記録媒体の内部応力が分散されることから、各インクヘッドの主走査方向の幅に相当するおよその距離での記録媒体の伸びに抑制される。その結果、記録媒体の伸びが抑制されることで、つなぎ目においても記録媒体の伸びが抑制されることで、より高い画像記録品位となる。
よって、1パス及びマルチパスの画像記録における画質低下の原因として説明した紙伸により発生するつなぎ目に発生する白筋、黒筋及び色ずれに対しても、つなぎ目35a〜35eに相当する記録媒体の領域における伸びの影響を抑制することで、画像記録品位を劣化させることがなくなる。
【0066】
[第1の実施形態の変形例1]
第1の実施形態の変形例1について、図8を参照して説明する。
図8は、変形例1のドラムによる記録媒体の保持機構を示す図である。以下の説明において、前述した第1の実施形態と同等の構成部材には同じ参照符号を付して、その説明は省略する。
【0067】
本変形例においては、ドラム22の円筒表面上に、少なくとも保持された記録媒体3の主走査方向の幅を超える幅で1周の円筒表面に渡り、又はドラム22の全円筒表面上に、絶縁層56からなる絶縁プラスチックコートが形成される。
さらに、帯電ローラ55は、5個のローラ部を備えている。各ローラ部は、インクヘッド34a〜34fのつなぎ目35a〜35e部分が対向するドラム22の円筒表面上に前述した帯電状態の絶縁層56からなる保持領域57を生成するように配置されている。
【0068】
5箇所の保持領域57は、各ローラ部が当接する絶縁層56に対してドラム22の円筒表面の1周に亘り帯状に帯電されることで形成される。保持領域57の幅は、帯電ローラ55の5個のローラ部の幅と等しく、この幅は、つなぎ目35a〜35eを含み、かつ隣接するインクヘッドのオーバーラップ量以上の幅とする。
【0069】
次に、記録媒体3をドラム22の円筒表面に吸着させる動作について説明する。
画像記録動作が開始されると、ドラム22が回転し始める。そして、ドラム22が定回転に達する予め設定されたタイミングを見計らって、記録媒体3が供給トレイ11からピックアップローラ12により1枚送り込まれる。
送り込まれた記録媒体3は、供給ガイド13により案内されて、帯電ローラ21、ドラム22の円筒表面へと搬送される。同時に、帯電ローラ55は、正(+)放電を開始し、ドラム22の円筒表面に局部的に帯電させた帯状の保持領域57を形成して、記録媒体3を電気的に吸着する。
【0070】
このようにして、記録媒体3をドラム22の円筒表面に形成した5箇所の保持領域57により、記録媒体3におけるインクヘッド34a〜34fのつなぎ目35a〜35eのノズルから吐出されるインク滴の着弾箇所が電気的に吸着保持される。これらの保持領域57以外の領域では、着弾したインク滴による記録媒体の伸びが発生するが、つなぎ目34aと35b間、35bと35c間、35cと35d間、35dと35e間で、記録媒体の伸びによる主走査方向の内部応力は、分散されることになる。
また、つなぎ目35aと記録媒体3の左端間の領域、つなぎ目35eと記録媒体3の右端間の領域でも、それぞれの主走査方向の距離分だけ記録媒体が伸びることとなる。
【0071】
以上にように、インクヘッド34a〜34fのつなぎ目35a〜35eに相当する記録媒体の領域を吸着保持し、これ以外の領域は吸着保持しないことで、インク吐出による記録媒体の伸びが発生しても、伸びによる記録媒体の内部応力は分散される。その結果、つなぎ目35a〜35eに相当する記録媒体の領域では伸びの影響を抑制できることになり、記録画像のつなぎ目で紙伸びが抑制されたインクジェットプリンタを提供することが可能となる。
【0072】
さらに、つなぎ目34aと35b間、35bと35c間、35cと35d間、35dと35e間の領域でも、伸びによる記録媒体の内部応力が分散されることから、各インクヘッドの主走査方向の幅のおよそ半分程度の距離での記録媒体の伸びに抑制される。その結果、記録媒体の伸びが抑制されることで、つなぎ目においても記録媒体の伸びが抑制されることで、より高い画像記録品位となる。
【0073】
また、つなぎ目35aと記録媒体3の左端間の領域、つなぎ目35eと記録媒体3の右端間の領域でも、伸びによる記録媒体の内部応力が分散されることから、各インクヘッドの主走査方向の幅に相当するおよその距離での記録媒体の伸びに抑制される。その結果、記録媒体の伸びが抑制されることで、つなぎ目においても記録媒体の伸びが抑制されることで、より高い画像記録品位となる。
【0074】
また、ドラムの円筒表面上に形成する絶縁層を、ドラムの円筒表面のほぼ全域に渡って形成するので、部分的に絶縁層を形成した際のマスキングなどの製造工程が省かれ、安価に絶縁層を形成可能となる。少なくとも画像記録動作中は、ラインヘッド31のノズル面31a又はその近傍に、記録媒体3に印加した静電電位と同じ電位(この例では+電位)で数百ボルト〜数キロボルトのバイアス電位を印加している。このため、ドラム22に静電気で密着した記録媒体3やゴミ等は、同じ電位のノズル面31aとは反発し合い、ノズル面31aやノズル31bに付着しにくくなっている。
【0075】
[第1の実施形態の変形例2]
第1の実施形態の変形例2について、図9を参照して説明する。
図9は、変形例2のドラムによる記録媒体の保持機構を示す図である。以下、第1の実施形態と同等の構成部材には同じ参照符号を付して、その説明は省略する。
前述した第1の実施形態とは、ドラムによる記録媒体の保持機構が異なっており、本変形例では、記録媒体の吸着を負圧吸引で行っている。ドラム60は、中空アルミ円筒と両側面のフランジで構成され、一方のドラム軸60aは中空軸で、ドラム軸60aの軸端にダクト62を介して取り付けられた少なくとも1つの吸引ファン61が負圧源となる。
【0076】
このドラム60の円筒表面には、5箇所の領域に分散して配置された吸引孔60bが形成されている。各々の吸引孔60bの領域は、記録媒体の搬送方向に沿って、ドラム60の円筒表面に1周分で形成されている。5箇所の吸引孔60bの領域は、インクヘッド34a〜34fのつなぎ目35a〜35eに相当するドラム60の円筒表面上の位置に形成され、5箇所の吸引孔60bの領域の幅は、つなぎ目35a〜35eを含み、且つ隣接するインクヘッドのオーバーラップ量以上の幅とする。吸引ファン61を駆動させることで、ドラム60の円筒表面に設けられた複数の吸引孔で負圧が発生し、記録媒体3はドラム60の円筒表面で保持される。
【0077】
次に、記録媒体3をドラム60の円筒表面に吸着させる動作について説明する。
画像記録動作が開始されると、ドラム60が回転し始める。そして、ドラム60が定回転となる予め設定されたタイミングを見計らって、記録媒体3が供給トレイ11からピックアップローラ12により1枚送り込まれる。送り込まれた記録媒体3は、供給ガイド13により案内されて、ドラム60の円筒表面へと搬送される。同時に、吸引ファン61の駆動が開始し、ドラム60の円筒表面に設けられ5箇所の領域に分散して配置された吸引孔60bで負圧が発生し、記録媒体3をドラム60の円筒表面に吸着される。
【0078】
このようにして、記録媒体3をドラム60の円筒表面に形成した5箇所の領域に分散して配置された吸引孔60bで吸着することで、記録媒体3のインクヘッド34a〜34fのつなぎ目35a〜35eは、ドラム60の円筒表面に形成した5箇所の吸引孔60bの領域で吸着される。
【0079】
5箇所の吸引孔60bの領域で吸着された記録媒体3の領域以外の領域では、インク吐出による記録媒体の伸びが発生するが、つなぎ目34aと35b間、35bと35c間、35cと35d間、35dと35e間で、記録媒体の伸びによる主走査方向の内部応力は、分散されることになる。また、つなぎ目35aと記録媒体3の左端間の領域、つなぎ目35eと記録媒体3の右端間の領域でも、それぞれの主走査方向の距離分だけ記録媒体が伸びることとなる。
【0080】
以上にように、本変形例によれば、1パス及びマルチパスの画像記録において、インクヘッド34a〜34fのつなぎ目35a〜35eに相当する記録媒体の領域を吸着保持し、これ以外の領域は吸着保持しないことで、インク吐出による記録媒体の伸びが発生しても、伸びによる記録媒体の内部応力は分散される。その結果、つなぎ目35a〜35eに相当する記録媒体の領域では、紙伸びの影響を抑制できることになり、記録画像のつなぎ目で白筋や黒筋が減少されたインクジェットプリンタを提供できる。
【0081】
また、つなぎ目34aと35b間、35bと35c間、35cと35d間、35dと35e間の領域でも、伸びによる記録媒体の内部応力が分散されることから、各インクヘッドの主走査方向の幅のおよそ半分程度の距離での記録媒体の伸びに抑制される。その結果、記録媒体における全体的な伸び、特に媒体周辺部の伸が抑制されることで、色ずれのないより高品位な画像記録を実現することができる。
【0082】
さらに、つなぎ目35aと記録媒体3の左端間の領域、つなぎ目35eと記録媒体3の右端間の領域でも、伸びによる記録媒体の内部応力が分散されることから、各インクヘッドの主走査方向の幅に相当するおよその距離での記録媒体の伸びに抑制される。その結果、記録媒体の伸びが抑制されることで、つなぎ目においても記録媒体の伸びが抑制されることで、より高い画像記録品位となる。
【0083】
[第2の実施形態]
第2の実施形態について、図10を参照して説明する。
図10は、第2の実施形態のドラムによる記録媒体の保持機構を示す図である。以下、第1の実施形態と同等の構成部材には同じ参照符号を付して、その説明は省略する。
ドラム22の円筒表面には、6箇所に分散して配置された帯状の絶縁層80が形成されている。各々の絶縁層80は、記録媒体の搬送方向に沿って、ドラム22の円筒表面に1周分で形成されている。
【0084】
これらの6箇所の帯状の絶縁層80は、インクヘッド34a〜34fのつなぎ目35a〜35eに対向するドラム22の円筒表面上の領域を両側から挟むように等間隔で形成され、且つインクヘッド34a〜34fの主走査方向の幅のほぼ中央に位置する。また、図12においては、各つなぎ目間のほぼ中央に1本の帯状の絶縁層80であるが、2本の帯状の絶縁層80に分離して、それぞれをつなぎ目の隣接するように絶縁層を配置した構成であってもよい。
また、帯電ローラ21は、一体のローラ部を備え、ローラ部の軸方向寸法は6箇所の絶縁層80全てに当接可能なように配置されている。帯電ローラ21によって帯電された状態の絶縁層80を保持領域80と称する。
【0085】
次に、記録媒体3をドラム22の円筒表面に吸着させる動作について説明する。
画像記録動作が開始されると、ドラム22が回転し始める。そして、ドラム22が定回転となる予め設定されたタイミングを見計らって、記録媒体3が供給トレイ11からピックアップローラ12により1枚送り込まれる。送り込まれた記録媒体3は、供給ガイド13により案内されて、帯電ローラ21、ドラム22の円筒表面へと搬送される。同時に、帯電ローラ21は、正(+)放電を開始し、絶縁層80を帯電させて保持領域80を形成し、記録媒体3を保持領域80に電気的に吸着させる。
【0086】
このようにして、保持領域80に吸着された記録媒体3の領域以外の領域では、インク吐出による記録媒体の伸びが発生するが、つなぎ目35a〜35eの両側に配置された絶縁層80を起点としてつなぎ目35a〜35eに向かって記録媒体は伸びる。これにより、ラインヘッド31と、記録媒体3のつなぎ目35a〜35eに相当する位置の相対的な位置関係は変化しない。
【0087】
また、各保持領域80と各つなぎ目35a〜35e間の領域では、インク吐出による記録媒体の伸びが発生するが、記録媒体の伸びによる主走査方向の内部応力は、分散されることになる。また、左端の保持領域80と記録媒体3の左端間の領域、右端の保持領域80と記録媒体3の右端間の領域でも、それぞれの主走査方向の距離分だけ記録媒体が伸びることとなる。
【0088】
以上にように、インクヘッド34a〜34fのつなぎ目35a〜35eに相当する記録媒体の位置を挟んで、両側に等間隔で配置された記録媒体の領域を吸着保持し、これ以外の領域は吸着保持しないことで、時間差を有したインク吐出による記録媒体の伸びが発生しても、つなぎ目35a〜35eに向かって記録媒体3は伸びることから、ラインヘッド31と、記録媒体3のつなぎ目35a〜35eに相当する位置の相対的な位置関係は変化しない。
その結果、つなぎ目35a〜35eに相当する記録媒体の領域では伸びの影響による記録ドットの配列のずれを抑制できることになり、記録画像のつなぎ目で紙伸びの影響を受けず、つなぎ目においても記録媒体の伸びが抑制されることで、より高い画像記録品位となる。
【0089】
また、6箇所の保持領域80とつなぎ目35a〜35e間の領域でも、伸びによる記録媒体の内部応力が分散されることから、各インクヘッドの主走査方向の幅のおよそ半分程度の距離での記録媒体の伸びに抑制される。
その結果、記録媒体の伸びが抑制されることで、より画像記録品位として目立ちにくくなる。また、左端の保持領域80と記録媒体3の左端間の領域、右端の保持領域80と記録媒体3の右端間の領域でも、伸びによる記録媒体の内部応力が分散されることから、各インクヘッドの主走査方向の幅に相当するおよその距離での記録媒体の伸びに抑制される。 その結果、記録媒体の伸びが抑制されることで、つなぎ目においても記録媒体の伸びが抑制されることで、より高い画像記録品位となる。
【0090】
[第2の実施形態の変形例]
第2の実施形態の変形例について、図11を参照して説明する。
図11は、本変形例における記録媒体の保持機構を示す図である。以下、第2の実施形態と同等の構成部材には、同じ参照符号を付して、その説明は省略する。
【0091】
前述した第2の実施形態とは、ドラムによる記録媒体の保持機構が異なっており、本変形例では、記録媒体の吸着を負圧吸引で行っている。ドラム90は、中空アルミ円筒と両側面のフランジで構成され、一方のドラム軸90aは中空軸で、ドラム軸90aの軸端にダクト62を介して取り付けられた少なくとも1つの吸引ファン61が負圧源となる。
【0092】
ドラム90の円筒表面には、6箇所の領域に分散して帯状に配置された吸引孔90bが形成されている。各々の吸引孔90bの領域は、記録媒体の搬送方向に沿って、ドラム90の円筒表面に1周分で形成されている。
【0093】
6箇所の吸引孔90bの領域は、インクヘッド34a〜34fのつなぎ目35a〜35eに対向するドラム90の円筒表面上の領域を挟んで、両側に等間隔で形成され、かつ、インクヘッド34a〜34fの主走査方向の幅のほぼ中央に位置する。吸引ファン61を駆動させることで、ドラム90の円筒表面に設けられた複数の吸引孔90bで負圧が発生し、記録媒体3はドラム90の円筒表面で保持される。
【0094】
次に、記録媒体3をドラム90の円筒表面に吸着させる動作について説明する。画像記録動作が開始されると、ドラム90が回転し始める。そして、ドラム90が定回転となる予め設定されたタイミングを見計らって、記録媒体3が供給トレイ11からピックアップローラ12により1枚送り込まれる。送り込まれた記録媒体3は、供給ガイド13により案内されて、ドラム90の円筒表面へと搬送される。同時に、吸引ファン61の駆動が開始し、ドラム90の円筒表面に設けられ6箇所の領域に分散して配置された吸引孔90bで負圧が発生し、記録媒体3をドラム90の円筒表面に吸着される。
【0095】
このようにして、6箇所の領域に分散して配置された吸引孔90bで吸着された記録媒体3の領域以外の領域では、インク吐出による記録媒体の伸びが発生するが、つなぎ目35a〜35eの両側に配置された吸引孔90bの領域を起点としてつなぎ目35a〜35eに向かって記録媒体は伸びる。
【0096】
このことから、ラインヘッド31と、記録媒体3のつなぎ目35a〜35eに相当する位置の相対的な位置関係は変化しない。また、6箇所の領域に分散して配置された吸引孔90bとつなぎ目35a〜35e間の領域では、インク吐出による記録媒体の伸びが発生するが、記録媒体の伸びによる主走査方向の内部応力は、分散されることになる。また、左端の吸引孔90bの領域と記録媒体3の左端間の領域、右端の吸引孔90bの領域と記録媒体3の右端間の領域でも、それぞれの主走査方向の距離分だけ記録媒体が伸びることとなる。
【0097】
以上にように、インクヘッド34a〜34fのつなぎ目35a〜35eに相当する記録媒体の位置を挟んで、両側に等間隔で配置された記録媒体の領域を吸着保持し、これ以外の領域は吸着保持しないことで、時間差を有したインク吐出による記録媒体の伸びが発生しても、つなぎ目35a〜35eに向かって記録媒体3は伸びることから、ラインヘッド31と、記録媒体3のつなぎ目35a〜35eに相当する位置の相対的な位置関係は変化しない。
【0098】
その結果、つなぎ目35a〜35eに相当する記録媒体の領域では伸びの影響による記録ドットの配列のずれを抑制できることになり、記録画像のつなぎ目で紙伸びの影響を受けない装置を提供することが可能となる。
【0099】
また、6箇所の領域に分散して配置された吸引孔90bとつなぎ目35a〜35e間の領域でも、伸びによる記録媒体の内部応力が分散されることから、各インクヘッドの主走査方向の幅のおよそ半分程度の距離での記録媒体の伸びに抑制される。その結果、記録媒体の伸びが抑制されることで、つなぎ目においても記録媒体の伸びが抑制されることで、より高い画像記録品位となる。
【0100】
また、左端の吸引孔90bの領域と記録媒体3の左端間の領域、右端の吸引孔90bの領域と記録媒体3の右端間の領域でも、伸びによる記録媒体の内部応力が分散されることから、各インクヘッドの主走査方向の幅に相当するおよその距離での記録媒体の伸びに抑制される。その結果、記録媒体の伸びが抑制されることで、つなぎ目においても記録媒体の伸びが抑制されることで、より高い画像記録品位となる。
【0101】
[第3の実施形態]
第3の実施形態について、図12及び図13を参照して説明する。
図12は、第3の実施形態に係るインクジェットプリンタ1の構成を概略的に示す正面図である。図13は、本実施形態における記録媒体の保持機構を示す図である。以下、第1の実施形態と同等の構成部材には同じ参照符号を付して、その説明は省略する。
【0102】
本実施形態によるドラム22の円筒表面には、記録媒体3の主走査方向の幅を超える幅で、記録媒体の搬送方向に沿って1周分に渡り、絶縁層100が形成されている。そして、それぞれに絶縁層100と同等長さを持ち、搬送経路の上流側から第1の帯電ローラ101及び第2の帯電ローラ103が配置され、それぞれドラム22の円筒表面に当接した状態で回転可能なように取り付けられている。
【0103】
帯電ローラ101は、5個のローラ部101aを備えており、それらが間隔を空けて配置される。第2の帯電ローラ103は、6個のローラ部103aを備えており、円筒表面の両端及び上記間隔を埋めるように、即ち、ローラ部101aとは交互に、6個のローラ部103aが配置されている。これらのローラ部101a,103aにより、絶縁層100の全面を帯電させることが可能である。以下の説明で、ローラ部101aにより絶縁層100の一周に渡り、部分的に帯電させた領域を第1の保持領域102とし、ローラ部103aにより絶縁層100の一周に渡り、部分的に帯電させた領域を第2の保持領域104としている。
第1の保持領域102は、インクヘッド34a〜34fのつなぎ目35a〜35eに対向するドラム22の円筒表面上の部分領域であり、その幅は、つなぎ目35a〜35eを含み、且つ隣接するインクヘッドのオーバーラップ量以上の幅とする。また、第2の保持領域104は、第1の保持領域102以外のドラム22の円筒表面上の部分領域である。
【0104】
次に、記録媒体3をドラム22の円筒表面に吸着させる動作について説明する。
画像記録動作が開始されると、ドラム22が回転し始める。そして、ドラム22が定回転となる予め設定されたタイミングを見計らって、記録媒体3が供給トレイ11からピックアップローラ12により1枚送り込まれる。送り込まれた記録媒体3は、供給ガイド13により案内されて、帯電ローラ101、ドラム22の円筒表面へと搬送される。
【0105】
同時に、帯電ローラ101及び帯電ローラ103は、正(+)放電を開始する。帯電ローラ101によって、ドラム22の円筒表面に形成した絶縁層100の5箇所の第1の保持領域102のみが帯電される。次に、帯電ローラ103によって、ドラム22の円筒表面に形成した絶縁層100の6箇所の第2の保持領域104のみが帯電され、記録媒体3をドラム22の円筒表面に電気的に吸着させる。
【0106】
このとき、本実施形態では、帯電ローラ101の印加電圧V1は、帯電ローラ103の印加電圧V2より高い電圧に設定されている。即ち、第1の保持領域102の吸着力(記録媒体に対する垂直効力)は、第2の保持領域104の吸着力より高くなるように設定されている。
【0107】
第2の保持領域104の吸着力は、第1の保持領域102の吸着力を補助する程度の垂直効力でよい。即ち、紙伸びによる大きな浮き上がりが生じない程度でよい。このようにして、記録媒体3を第2の帯電部104の吸着力に比べて高い吸着力が設定されている5箇所の第1の保持領域102で吸着することで、記録媒体3のインクヘッド34a〜34fのつなぎ目35a〜35eはドラム22の円筒表面に形成した5箇所の第1の保持領域102で吸着される。
【0108】
また、第1の保持領域102の吸着力に比べて、低い吸着力が設定されている6箇所の第2の保持領域104で吸着される領域では、インク吐出による記録媒体の伸びが発生するが、つなぎ目34aと35b間、35bと35c間、35cと35d間、35dと35e間で、記録媒体の伸びによる主走査方向の内部応力は、分散されることになる。
【0109】
また、つなぎ目35aと記録媒体3の左端間の領域、つなぎ目35eと記録媒体3の右端間の領域でも、第1の保持領域102の吸着力が第2の保持領域104の吸着力より高くなるように設定されていることから、それぞれの領域の主走査方向の距離分だけ記録媒体が伸びることとなる。
【0110】
以上にように、インクヘッド34a〜34fのつなぎ目35a〜35eに相当する記録媒体の領域を保持する吸着力を、これ以外の領域を保持する吸着力より高く設定することで、インク吐出による記録媒体の伸びが発生しても、紙伸びによる記録媒体の内部応力は分散される。その結果、つなぎ目35a〜35eに相当する記録媒体の領域では伸びの影響を抑制できることになり、記録画像のつなぎ目で紙伸びがない装置を提供することが可能となる。
【0111】
さらに、つなぎ目34aと35b間、35bと35c間、35cと35d間、35dと35e間の領域でも、第1の保持領域102の吸着力が第2の保持領域104の吸着力より高くなるように設定されており、伸びによる記録媒体の内部応力が分散されることから、各インクヘッドの主走査方向の幅のおよそ半分程度の距離での記録媒体の伸びに抑制される。その結果、記録媒体の伸びによって発生するインクヘッドのノズル配列内の周期むらは、周期性をもって、記録媒体の伸びが抑制されることで、つなぎ目においても記録媒体の伸びが抑制されることで、より高い画像記録品位となる。
【0112】
また、つなぎ目35aと記録媒体3の左端間の領域、つなぎ目35eと記録媒体3の右端間の領域でも、第1の保持領域102の吸着力が第2の保持領域104の吸着力より高くなるように設定されており、伸びによる記録媒体の内部応力が分散されることから、各インクヘッドの主走査方向の幅に相当するおよその距離での記録媒体の伸びに抑制される。その結果、記録媒体の伸びが抑制されることで、より画像記録品位として目立ちにくくなる。このように、記録媒体の保持面全域に渡って吸着することで、記録媒体の端の浮きを抑え、記録媒体を安定的に吸着して、搬送可能となり、ジャムの発生率が低減可能となる。
【0113】
尚、本実施形態では、つなぎ目に相当する記録媒体の領域の吸着力を、それ以外の領域の吸着力より高くなるように設定したが、逆に、つなぎ目に相当する記録媒体の領域の吸着力を、それ以外の領域の吸着力より低くなるように設定しても良い。
これにより、ラインヘッドと記録媒体のつなぎ目に相当する位置の相対的な位置関係は変化しないため、つなぎ目に相当する記録媒体の領域では伸びの影響による記録ドットの配列のずれを抑制できることになり、記録画像のつなぎ目で紙伸びの影響を受けない装置を提供することが可能となる。
【0114】
[第3の実施形態の変形例]
第3の実施形態の変形例について、図14を参照して説明する。
図14は、本変形例における記録媒体の保持機構を示す図である。以下、第3の実施形態と同等の構成部材には同じ参照符号を付して、その説明は省略する。
【0115】
前述した第3の実施形態とは、ドラムによる記録媒体の保持機構が異なっており、本変形例では、記録媒体の吸着を負圧吸引で行っている。ドラム110は、中空アルミ円筒と両側面のフランジで構成され、一方のドラム軸110aは中空軸で、ドラム軸110aの軸端にダクト62を介して取り付けられた少なくとも1つの吸引ファン61が負圧源となっている。この吸引ファン61を駆動させることで、ドラム110の円筒表面に設けられた後述する複数の吸引孔で負圧が発生し、記録媒体3はドラム110の円筒表面で保持される。
【0116】
ドラム110の円筒表面は、搬送方向に沿って1周に渡り、吸引孔110bの単位面積当たりの開口率が高く、5箇所に分散して配置された第1の保持領域111と、吸引孔110bの単位面積当たりの開口率が低く、6箇所に分散して配置された第2の保持領域112とが形成されている。
【0117】
第1の保持領域111及び第2の保持領域112は、記録媒体の搬送方向に沿って、ドラム110の円筒表面に1周分で形成されている。5箇所の第1の保持領域111は、インクヘッド34a〜34fのつなぎ目35a〜35eに相当するドラム110の円筒表面上の位置に形成され、5箇所の第1の保持領域111の幅は、つなぎ目35a〜35eを含み、かつ隣接するインクヘッドのオーバーラップ量以上の幅とする。
また、6箇所の第2の保持領域112は、5箇所の第1の保持領域111以外の領域で、記録媒体3の保持面に相当するドラム22の円筒表面上に形成されている。
【0118】
次に、記録媒体3をドラム110の円筒表面に吸着させる動作について説明する。
画像記録動作が開始されると、ドラム110が回転し始める。そして、ドラム110が定回転となる予め設定されたタイミングを見計らって、記録媒体3が供給トレイ11からピックアップローラ12により1枚送り込まれる。送り込まれた記録媒体3は、供給ガイド13により案内されて、ドラム110の円筒表面へと搬送される。同時に、吸引ファン61の駆動が開始し、ドラム110の円筒表面に設けられた第1の保持領域111及び第2の保持領域112の吸引孔110bで負圧が発生し、記録媒体3をドラム110の円筒表面に吸着される。
【0119】
このとき、本実施形態では、第1の保持領域111では吸引孔110bの単位面積当たりの開口率が高く、第2の保持領域112では吸引孔110bの単位面積当たりの開口率が低くなるように設定されている。即ち、第1の保持領域111の吸着力(記録媒体に対する垂直効力)は、第2の保持領域112の吸着力より高くなるように設定されている。
【0120】
第2の保持領域112の吸着力は、第1の保持領域111の吸着力を補助する程度の垂直効力でよい。このようにして、記録媒体3を第2の保持領域112の吸着力に比べて高い吸着力が設定されている5箇所の第1の保持領域111で吸着することで、記録媒体3のインクヘッド34a〜34fのつなぎ目35a〜35eは、ドラム22の円筒表面に形成した5箇所の第1の保持領域111で吸着される。
【0121】
また、第1の保持領域111の吸着力に比べて低い吸着力が設定されている6箇所の第2の保持領域112では、インク吐出による記録媒体の紙伸びが発生するが、つなぎ目34aと35b間、35bと35c間、35cと35d間・35dと35e間で、記録媒体の伸びによる主走査方向の内部応力は、分散されることになる。また、つなぎ目35aと記録媒体3の左端間の領域、つなぎ目35eと記録媒体3の右端間の領域でも、第1の保持領域111の吸着力が第2の保持領域112の吸着力より高くなるように設定されていることから、それぞれの領域の主走査方向の距離分だけ記録媒体が伸びることとなる。
【0122】
以上にように、インクヘッド34a〜34fのつなぎ目35a〜35eに相当する記録媒体の領域を保持する吸着力を、これ以外の領域を保持する吸着力より高く設定することで、インク吐出による記録媒体の伸びが発生しても、伸びによる記録媒体の内部応力は分散される。その結果、つなぎ目35a〜35eに相当する記録媒体の領域では紙伸びの影響を抑制できることになり、記録画像のつなぎ目における白筋、黒筋及び色ずれを防止することができる。
【0123】
さらに、つなぎ目34aと35b間、35bと35c間、35cと35d間、35dと35e間の領域でも、第1の保持領域111の吸着力が第2の保持領域112の吸着力より高くなるように設定されてい。よって、時間差を有したインク吐出によって生じる紙伸びによる記録媒体の内部応力が分散されることから、各インクヘッドの主走査方向の幅のおよそ半分程度の距離での記録媒体の伸びに抑制される。その結果、記録媒体の伸びが抑制されることで、つなぎ目においても記録媒体の伸びが抑制されることで、より高い画像記録品位となる。
【0124】
また、つなぎ目35aと記録媒体3の左端間の領域、つなぎ目35eと記録媒体3の右端間の領域でも、第1の保持領域111の吸着力が第2の保持領域112の吸着力より高くなるように設定されており、伸びによる記録媒体の内部応力が分散されることから、各インクヘッドの主走査方向の幅に相当するおよその距離での記録媒体の伸びに抑制される。その結果、記録媒体の伸びが抑制されることで、つなぎ目においても記録媒体の伸びが抑制されることで、より高い画像記録品位となる。
【0125】
[第4の実施形態]
次に、第4の実施形態について、図15を参照して説明する。
図15は、本実施形態における記録媒体の第2の保持機構を示す図である。以下、第1の実施形態と同等の構成部材には同じ参照符号を付して、その説明は省略する。
ドラム22の円筒表面には、記録媒体3の主走査方向の幅を超える幅で、搬送方向に沿って1周に渡り、ドラム22の円筒表面に絶縁層120が形成されている。
【0126】
また、帯電ローラ21は、一体的に構成されたローラ部を備える。ローラ部の軸方向寸法は、記録媒体3の主走査方向の幅を超える幅で絶縁層120に当接可能なように配置されている。また、ドラム22の円筒表面には、記録媒体3との摩擦係数が高く、且つ5箇所に間隔を空けて配置された第1の保持領域121と、記録媒体3との摩擦係数が低く、第1の保持領域121以外の6箇所の領域に配置された第2の保持領域122とが形成されている。これらの第1の保持領域121及び第2の保持領域122は、記録媒体の搬送方向に沿って、ドラム22の円筒表面に1周分で形成されている。これらの絶縁層120、第1の保持領域121及び第2の保持領域122により第2の保持機構を構成する。
【0127】
5箇所の第1の保持領域121は、インクヘッド34a〜34fのつなぎ目35a〜35eに相当するドラム110の円筒表面上の位置に形成され、5箇所の第1の保持領域121の幅は、つなぎ目35a〜35eを含み、かつ隣接するインクヘッドのオーバーラップ量以上の幅とする。
また、6箇所の第2の保持領域122は、5箇所の第1の保持領域121以外の領域で、記録媒体3の保持面に相当するドラム22の円筒表面上に形成されている。
【0128】
次に、記録媒体3をドラム22の円筒表面に吸着させる動作について説明する。画像記録動作が開始されると、ドラム22が回転し始める。そして、ドラム22が定回転となる予め設定されたタイミングを見計らって、記録媒体3が供給トレイ11からピックアップローラ12により1枚送り込まれる。送り込まれた記録媒体3は、供給ガイド13により案内されて、帯電ローラ101、ドラム22の円筒表面へと搬送される。同時に、帯電ローラ21は、正(+)放電を開始し、ドラム22の円筒表面に形成した絶縁層120において帯電ローラ21が当接する領域で一様に帯電させ、記録媒体3をドラム22の円筒表面に電気的に吸着させる。
【0129】
即ち、記録媒体3の保持面全域に渡って吸着力(垂直抗力)が作用することになる。このとき、第1の保持領域121と記録媒体3との摩擦係数は、第2の保持領域122と記録媒体3との摩擦係数より高く設定されている。即ち、第1の保持領域121及び第2の保持領域122の吸着力(垂直抗力)は同じで、摩擦係数が異なることから、第1の保持領域121と記録媒体3間の摩擦力は、第2の保持領域122と記録媒体3間の摩擦力より高くなるように設定されている。
【0130】
このようにして、記録媒体3を、第1の保持領域121間の摩擦力が、第2の保持領域122間の摩擦力より高くなるように設定して吸着することで、記録媒体3のインクヘッド34a〜34fのつなぎ目35a〜35eはドラム22の円筒表面に形成した5箇所の第1の保持領域121で吸着保持される。
【0131】
また、6箇所の第2の保持領域122で吸着される領域では、インク吐出による記録媒体の伸びが発生するが、第1の保持領域121と記録媒体3間の摩擦力が、第2の保持領域122と記録媒体3間の摩擦力より高くなるように設定されていることから、つなぎ目34aと35b間、35bと35c間、35cと35d間、35dと35e間で、記録媒体の伸びによる主走査方向の内部応力は、分散されることになる。
【0132】
また、つなぎ目35aと記録媒体3の左端間の領域、つなぎ目35eと記録媒体3の右端間の領域でも、第1の保持領域121と記録媒体3間の摩擦力が、第2の保持領域122と記録媒体3間の摩擦力より高くなるように設定されていることから、それぞれの領域の主走査方向の距離分だけ記録媒体が伸びることとなる。
【0133】
尚、前述した第1,第2の保持領域の円筒表面における摩擦力は、例えば、絶縁層120に対してブラスト処理等を用いて、投射材の粒子の径や材質を選択することで、表面粗さの度合いを変えることにより、所望する摩擦力を得ることができる。また、第1,第2の保持領域に形成される絶縁膜上に、異なる摩擦力(摩擦係数)を有する材質を形成して、摩擦力を変化させることも可能である。さらに、第1,第2の保持領域に用いられる絶縁膜を、成膜時に摩擦係数が異なる材料を選択することにより、摩擦力を変化させることも可能である。
【0134】
以上にように本実施形態によれば、インクヘッド34a〜34fのつなぎ目35a〜35eに相当する記録媒体の領域のドラムとの摩擦係数を、これ以外の領域のドラムとの摩擦係数より高く設定することで、時間差を有したインク吐出による記録媒体の伸びが発生しても、伸びによる記録媒体の内部応力は分散される。その結果、つなぎ目35a〜35eに相当する記録媒体の領域では伸びの影響を抑制できることになり、記録画像のつなぎ目で白筋、黒筋及び色ずれを防止することができる。
【0135】
また、つなぎ目34aと35b間、35bと35c間、35cと35d間、35dと35e間の領域でも、第1の保持領域121と記録媒体3間の摩擦力が、第2の保持領域122と記録媒体3間の摩擦力より高くなるように設定されており、伸びによる記録媒体の内部応力が分散されることから、各インクヘッドの主走査方向の幅のおよそ半分程度の距離での記録媒体の伸びに抑制される。
【0136】
その結果、記録媒体の伸びが抑制されることで、より画像記録品位として目立ちにくくなる。また、つなぎ目35aと記録媒体3の左端間の領域、つなぎ目35eと記録媒体3の右端間の領域でも、第1の保持領域121と記録媒体3間の摩擦力が、第2の保持領域122と記録媒体3間の摩擦力より高くなるように設定されており、伸びによる記録媒体の内部応力が分散されることから、各インクヘッドの主走査方向の幅に相当するおよその距離での記録媒体の伸びに抑制される。その結果、つなぎ目においても記録媒体の伸びが抑制されることで、より高い画像記録品位となる。
【0137】
[第5の実施形態]
次に、第5の実施形態について、図16及び図17を参照して説明する。図16は、本実施形態の記録部及び搬送機構をむ上から見た概念的な構成を示す図である。図17は、図16に示す記録部及び搬送機構の構成を側方から見た概念的な構成を示す図である。
【0138】
本実施形態のインクジェットプリンタ70は、ベルトプラテン73による搬送機構72を備え、プラテン上方に、前述した第1の実施形態と同等な記録ヘッドがプラテンと平行となるように千鳥配置されている記録部71とから構成される。尚、図16及び図17に示す矢印mは記録媒体3の搬送方向を示す。
具体的には、記録部71は、搬送経路の上流側から順番に、シアン(C)、ブラック(K)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色のラインヘッドがヘッドホルダに一体的に組み合わされて、ヘッドユニットを構成している。
【0139】
ラインヘッドは、記録媒体3の搬送方向に直交する方向に配列され、互い違いに(千鳥状に)配列された複数のインクヘッド71aによって構成されている。インクヘッド71aは隣接するインクヘッド同士で所定のオーバーラップ量の重なりを形成し、5箇所のつなぎ目71bを設けて配設して構成される。
本実施形態における記録媒体の搬送機構は、ベルト搬送であり、記録媒体の吸着は静電吸着である。搬送機構72は、無端状のベルト73、駆動ローラ74、従動ローラ75、テンションローラ76から構成される。
【0140】
ベルト73の外周表面には、5箇所に分散して配置された絶縁層79が形成されている。各々の絶縁層79は、記録媒体の搬送方向に沿って、ベルト73の外周表面に1周分で形成されている。5箇所の絶縁層79は、各々のインクヘッド71aの5箇所のつなぎ目71bに相当するベルト73の外周表面上の位置に形成され、絶縁層79の幅は、つなぎ目71bを含み、かつ隣接するインクヘッドのオーバーラップ量以上の幅とする。
【0141】
また、帯電ローラ77は、ベルト73を挟んで、従動ローラ75に対向配置されている。帯電ローラ77は、一体のローラ部を備え、ローラ部の軸方向寸法は5箇所の絶縁層50全てに当接可能なように配置されている。次に、記録媒体3をベルト73の外周表面に吸着させる動作について説明する。
画像記録動作が開始されると、駆動ローラ74が回転し始め、ベルト73が搬送方向に駆動し始める。そして、予め設定されたタイミングを見計らって、記録媒体3が供給トレイ(不図示)からピックアップローラ(不図示)により1枚送り込まれる。
【0142】
送り込まれた記録媒体3は、供給ガイド(不図示)により案内されて、ベルト73の外周表面へと搬送される。同時に、帯電ローラ77は、正(+)放電を開始し、ベルト73の外周表面に形成した5箇所の絶縁層79のみを帯電させ、記録媒体3をベルト73の外周表面に電気的に吸着させる。その後、記録媒体3は記録部71の直下に搬送され、画像記録が行われる。
【0143】
さらに、搬送経路の下流に設けられた除電器78で、交流放電をすることでベルト73の5箇所の絶縁層79で電気的に吸着された状態にある記録媒体3の吸着力をなくし、排紙する。このようにして、記録媒体3をベルト73の外周表面に形成した5箇所の絶縁層79で吸着することで、記録媒体3のインクヘッド71aの5箇所のつなぎ目71bはベルト73の外周表面に形成した5箇所の絶縁層79で吸着される。
【0144】
5箇所の絶縁層79で吸着された記録媒体3の領域以外の領域では、インク吐出による記録媒体の伸びが発生するが、記録媒体の伸びによる主走査方向の内部応力は、分散されることになる。また、両端のつなぎ目と記録媒体3の両端間の領域でも、記録媒体の伸びは累積されずに、それぞれの主走査方向の距離分だけ記録媒体が伸びることとなる。
【0145】
以上にように、インクヘッド71aの5箇所のつなぎ目71bに相当する記録媒体の領域を吸着保持し、これ以外の領域は吸着保持しないことで、時間差を有したインク吐出による記録媒体の伸びが発生しても、伸びによる記録媒体の内部応力は分散される。
その結果、5箇所のつなぎ目71bに相当する記録媒体の領域では伸びの影響を抑制できることになり、1パスの画像記録においても、つなぎ目が目立ちにくく、より高い画像記録品位となる。
【符号の説明】
【0146】
1,70…インクジェットプリンタ、2…プリンタ本体フレーム、3…記録媒体、10…媒体供給部、11…供給トレイ、12…ピックアップローラ、13…供給ガイド、20,72…搬送部、21…帯電ローラ、22,60,90,110…ドラム、23…媒体端検知センサ、24,78…除電器、25…剥離爪、30,71…記録部、31…ラインヘッド、31a…ノズル面、31b…ノズル、32…ヘッドホルダ、33…平行板ばね、34a〜34f,71a…インクヘッド、35,71b…つなぎ目、40…ヘッド移動機構、41…カム、42…ステッピングモータ、43…付勢ばね、55,77…帯電ローラ、50,56,79,80,100,120…絶縁層、57…帯電部、60a,90a,110a…ドラム軸、60b,90b,110b…吸引孔、61…吸引ファン、62…ダクト、73…ベルト、74…駆動ローラ、75…従動ローラ、76…テンションローラ、101…第1の帯電ローラ、102…第1の帯電部、103…第2の帯電ローラ、104…第2の帯電部、111…第1の保持領域、112…第2の保持領域、121…第1の領域、122…第2の領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する複数のノズルが予め定めた間隔で配列された、主走査方向に沿った記録媒体の幅に満たない短尺ヘッドを複数用いて、前記主走査方向と直交する方向から見て前記短尺ヘッドの端部に互いに重なりを持たせるようにつなぎ目を設けて、前記主走査方向に沿って配設して構成されるラインヘッドと、
記録媒体を保持し、前記主走査方向と直交する方向に、前記ラインヘッド下方を通過させる記録媒体搬送部と、を具備し、
前記記録媒体搬送部の前記記録媒体の保持面には、保持している前記記録媒体に対して、前記つなぎ目を含むつなぎ目領域と、前記つなぎ目を含まない非つなぎ目領域を設けて、前記つなぎ目領域の吸着力を非つなぎ目領域より大きくする第1の保持機構、又は前記つなぎ目領域の摩擦係数を非つなぎ目領域より大きくする第2の保持機構のいずれかを搭載し、時間差を有して前記インクが吐出された前記記録媒体の紙伸びにおける前記主走査方向に働く内部応力が分散されることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記記録媒体搬送部は、
金属材料による円筒形状を成し、前記保持面となる円筒表面に前記記録媒体を吸着保持するためのドラムと、
前記ドラムを定回転させる駆動機構と、を備え、さらに、
前記第1の保持機構は、前記ラインヘッドのつなぎ目と対向する前記ドラムの円筒表面のみに設けられた帯状の絶縁層と、
前記絶縁層及び前記記録媒体を帯電させる帯電部と、を具備し、
帯電された前記絶縁層のみで前記記録媒体を吸着することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記記録媒体搬送部は、
金属材料による円筒形状を成し、前記保持面となる円筒表面に前記記録媒体を吸着保持するためのドラムと、
前記ドラムを定回転させる駆動機構と、を備え、さらに、
前記第1の保持機構は、
少なくとも保持される前記記録媒体が接する前記ドラムの前記円筒表面上に設けられた絶縁層と、
前記ラインヘッドのつなぎ目と対向する前記円筒表面の前記絶縁層のみ、及び前記記録媒体を帯電させる帯電部と、を具備し、
前記帯電により前記絶縁層上に形成された帯電領域のみに前記記録媒体を吸着することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記記録媒体搬送部は、
金属材料による円筒形状を成し、前記保持面となる円筒表面に前記記録媒体を吸着保持するためのドラムと、
前記ドラムを定回転させる駆動機構と、を備え、さらに、
前記第1の保持機構は、
前記ラインヘッドのつなぎ目と対向する前記ドラムの円筒表面のみに帯状に開口された複数の吸引孔と、
前記ドラム内の気体を外部に排気し、該ドラム内を負圧にする吸引ファンと、を具備し、
前記吸引ファンによる前記ドラム内の負圧により、前記吸引孔にのみ前記記録媒体を吸着することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記記録媒体搬送部は、
金属材料による円筒形状を成し、前記保持面となる円筒表面に前記記録媒体を吸着保持するためのドラムと、
前記ドラムを定回転させる駆動機構と、を備え、さらに、
前記第1の保持機構は、
少なくとも保持される前記記録媒体が接する前記ドラムの前記円筒表面上に設けられた絶縁層と、
前記つなぎ目領域の第1の絶縁層領域のみと前記記録媒体を帯電させる第1の帯電部と、
前記非つなぎ目領域の第2の絶縁層領域のみと前記記録媒体を帯電させる第2の帯電部と、
を具備し、前記第1の帯電部による前記つなぎ目領域の吸着力を前記第2の帯電部による非つなぎ目領域より大きくすることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記記録媒体搬送部は、
金属材料による円筒形状を成し、前記保持面となる円筒表面に前記記録媒体を吸着保持するためのドラムと、
前記ドラムを定回転させる駆動機構と、を備え、さらに、
前記第1の保持機構は、
前記ラインヘッドの前記つなぎ目領域と対向する前記ドラムの円筒表面に帯状に並んで開口された複数の第1の吸引孔と、
前記ラインヘッドの前記非つなぎ目領域と対向する前記ドラムの円筒表面に帯状に並んで開口された複数の第2の吸引孔と、を具備し、
前記第1の吸引孔の単位面積当たりの開口率が第2の吸引孔の単位面積当たりの開口率よりも高く開口されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記記録媒体搬送部は、
金属材料による円筒形状を成し、前記保持面となる円筒表面に前記記録媒体を吸着保持するためのドラムと、
前記ドラムを定回転させる駆動機構と、を備え、さらに、
前記第2の保持機構は、
少なくとも保持される前記記録媒体が接する前記ドラムの前記円筒表面上に設けられた絶縁層と、
前記ラインヘッドの前記つなぎ目領域と対向する前記ドラムの円筒表面の絶縁層上に形成され、第1の摩擦係数を有する第1の保持領域と、
前記ラインヘッドの前記非つなぎ目領域と対向する前記ドラムの円筒表面の絶縁層上に形成され、第1の摩擦係数を有する第2の保持領域と、を具備し、
前記つなぎ目領域における前記第1の摩擦係数が前記非つなぎ目領域における第2の保持領域よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記記録媒体搬送部は、
金属材料による円筒形状を成し、前記保持面となる円筒表面に前記記録媒体を吸着保持するドラムと、
前記ドラムを定回転させる駆動機構と、を備え、
さらに、
第1の保持機構は、前記ラインヘッドのつなぎ目間と対向する前記ドラムの円筒表面のみに設けられた帯状の絶縁層と、
前記絶縁層及び前記記録媒体を帯電させる帯電部と、を具備し、
前記帯電により、前記絶縁層にのみ前記記録媒体を吸着することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項9】
前記記録媒体搬送部は、
金属材料による円筒形状を成し、前記保持面となる円筒表面に前記記録媒体を吸着保持するドラムと、
前記ドラムを定回転させる駆動機構と、を備え、
さらに、
前記第1の保持機構は、
前記ラインヘッドの非つなぎ目と対向する前記ドラムの円筒表面のみに帯状に開口された複数の吸引孔と、
前記ドラム内の気体を外部に排気し、該ドラム内を負圧にする吸引ファンと、を具備し、
前記吸引ファンによる前記ドラム内の負圧により、前記吸引孔にのみ前記記録媒体を吸着することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項10】
前記インクジェットプリンタは、さらに、
前記ラインヘッドの前記ノズルの配列方向の一端に設けられ、前記ラインヘッドを前記主走査方向において前記間隔以下の距離で揺動するヘッド移動機構と、
前記ラインヘッドにおける前記ヘッド移動機構を設けた一端とは反対側の他端に設けられ、前記一端側に向かって付勢する弾性部材と、を備え、
定回転する前記ドラムにより保持されている前記記録媒体が前記ラインヘッド下方を複数回、通過する毎に、前記ヘッド移動機構により前記間隔以下の距離を移動された前記ラインヘッドのノズルからインクを吐出されて画像記録を行うことを特徴とする請求項1乃至3に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項11】
前記記録媒体搬送部は、
複数のプーリと、これらのプーリに巻回して、回転する無端ベルトと、
少なくとも1つの前記プーリを回転させて、前記ベルトを定回転させる駆動機構と、を備え、さらに、
前記第1の保持機構は、前記ラインヘッドのつなぎ目と対向する前記無端ベルトの表面のみに設けられた帯状の絶縁層と、
前記絶縁層及び前記記録媒体を帯電させる帯電部と、を具備し、
帯電された前記絶縁層のみで前記記録媒体を吸着することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−187713(P2012−187713A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50511(P2011−50511)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】