説明

インクジェットプリンタ

インクジェットプリントヘッド(10)は少なくとも1つの電極を有し、電極表面の露出した金属領域(16)は不活性金属のコーティングを有する。プリントヘッドの使用の際、不活性金属コーティングは下にある電極の金属表面を保護するように機能し、特に、水性または他のイオン含有インクに対する腐食から電極を保護する。発明は、圧電プリントヘッドにおいて特に有益である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、インクジェットプリンタに関し、特にインクジェットプリンタ用のプリントヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
多くのインクジェットプリントヘッドでは、プリントヘッドを起動し、かつインク滴放出を生じさせるために使用される内部電極が、使用中のプリントヘッド内のインクと接触する。これは電極を形成するために使用される金属導体の腐食に繋がる場合がある。インクジェットプリントヘッド内の電極は、銅もしくはニッケル、またはそのような金属の組合せなどの導電性金属から典型的に形成される。この状況は、導電性インク(水性または非水性)を使用する場合に特によく見られる。電極の腐食は圧電プリントヘッドにおいて特に問題であるが、サーマルプリントヘッドでも発生し、プリントヘッドで使用することができるインクに制約を課す。
【0003】
プリントヘッド電極を腐食から保護することを試みる方法が知られており、そのうちもっとも一般的なものは、パリレン(登録商標)(パリレンは商標)高分子材料でコーティングすることである。パリレン(登録商標)材料は、典型的に蒸着プロセスによって金属電極表面に塗布され、電極とインクとの間に絶縁層を形成する。しかし、イオンを容易に支持する水などの溶媒を含有するインクを使用する場合には、パリレン(登録商標)でコーティングされた電極でも腐食に弱く、かつそのような電極を有するインクジェットプリントヘッドは、そのようなインクでは許容可能な寿命を有さないことが実際には分かっている。
【0004】
したがって、インクジェットプリントヘッドの腐食を防ぐかまたは耐食性を向上させるための方法が開発され、より広範囲の流体がプリントヘッドで使用され得、なおかつ許容可能な寿命が実現されることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、なぜパリレン(登録商標)でコーティングされた電極でも腐食に弱いのかを判定しようとして、この問題を研究した。発明者は、パリレン(登録商標)コーティングの有効性は塗布されるコーティングの厚さとその一貫性とに依存することを証明した。多くの場合、十分に厚いパリレン(登録商標)の層を塗布することは可能ではない。追加的にまたは代替的に、蒸着などによる塗布方法は、距離、方向およびシャドー効果の結果として、ピンホールまたはコーティングされていない領域といったコーティングにおける不備の存在に繋がる。プリントヘッドの製造プロセスにおける後の工程が、塗布されたパリレン(登録商標)層に損傷を引起し、層の一貫性(integrity)を侵害する可能性もある。これらの要因はすべて、完全で不透過性のパリレン(登録商標)層が形成されることが困難であり見込みがない場合が多いことを意味する。パリレン(登録商標)コーティングにおける不備は、下にある金属電極表面の領域が露出され、ゆえに腐食に弱いことを意味する。ごく小さい露出金属領域でも問題である。腐食問題はパリレン(登録商標)コーティングにおける不備によることを証明した後、次いで本発明者は、どのようにこの問題に対処するかを研究し、さまざまな他のまたは追加的な、たとえば高分子材料のコーティングで実験し、特に良好な結果が不活性金属コーティングで得られることを見出した。
【0006】
なお、インクジェットプリントヘッドにおける腐食は、サーマルインクジェットプリントヘッドにおいて生じるコゲーション(kogation)とは異なる。腐食は、インクに接触する金属導体の存在により、いずれのインクジェットプリントヘッド(ピエゾまたはサーマル)でも生じる場合がある。コゲーションはサーマルインクジェットに関する別個の特定の問題であり、プリントヘッド内の抵抗器に加えられた熱がヒータ抵抗器の表面上に材料を堆積させ、最終的なプリントヘッドの故障に繋がる。ここに記載される手法は、コゲーションではなく耐食性および腐食防止に関係がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
1つの局面において、本発明は、使用中のインクと接触する少なくとも1つの内部電極を有するインクジェットプリントヘッドを提供し、内部電極表面の露出した金属領域は、不活性金属のコーティングを有する。したがって、他の方法では露出されて使用中のインクと接触することになる電極表面の金属領域が、不活性金属でコーティングされる。
【0008】
本発明は、さらなる局面において、少なくとも1つの電極を有するインクジェットプリントヘッドも提供し、電極表面の露出した金属領域は不活性金属のコーティングを有する。
【0009】
電極表面の露出した金属領域とは、不活性金属コーティングがなければ、他の方法では露出される電極表面の金属領域を意味する。
【0010】
電極は、銅、ニッケル、アルミニウム、もしくは銀などの非不活性導電性金属、またはこれらの金属のうち2つ以上の組合せ、たとえばニッケルでコーティングされた銅からなる。
【0011】
実際には、プリントヘッドは多くの電極を有し、プリントヘッドの各電極は、露出した金属領域上に不活性金属コーティングを有する。
【0012】
プリントヘッドを使用する際、不活性金属コーティングは、下にある非不活性金属電極の金属表面を保護するように機能し、特に、イオンを含有する流体、典型的に水性インクジェットインクに露出して腐食することから電極を保護し、したがって上記の問題に対処する。
【0013】
不活性金属は化学的に反応しにくく、したがって腐食に強く、典型的に貴金属、特に金および/または白金を含む。
【0014】
電極の露出した金属領域が完全に被覆されていれば、不活性金属コーティングは特に厚くする必要がなく、ほんの数ナノメートル、たとえば数十から数百ナノメートルの厚さが有効であると考えられる。もちろん、より厚いコーティングも使用し得る。
【0015】
不活性金属コーティングは、使用中のインクジェットインクに露出した電極表面の部分上の露出した金属領域上に存在しさえすればよいが、電極表面の追加的な部分も任意にコーティングしてもよい。
【0016】
使用中のインクに露出した電極の全表面は不活性金属でコーティングされ、耐食性保護コーティングを構成し得る。代替的に、電極の表面は、耐食性保護材料、典型的にはキシレンベース材料などの高分子材料、特にパリレン(登録商標)として知られるものなどの置換もしくは非置換ポリパラキシリレン(polyparaxylxyene)材料のコーティング、たとえばパリレン(登録商標)N、パリレン(登録商標)Cおよびパリレン(登録商標)D、または他の非金属製保護コーティングによって部分的に構成される保護コーティングを有し、保護コーティングの残部は不活性金属によって構成され得る。典型的に、たとえばパリレン(登録商標)材料のコーティングが第1に塗布され、次いで、露出した金属を残す、パリレン(登録商標)における避けることができない間隙および不備が、不活性金属を堆積させることによって充填される。
【0017】
不活性金属は、好ましくは、溶液たとえば水溶液から堆積される。好適な技術が周知であり、浸せきめっき、無電解めっきおよび電解メッキを含み、不活性金属が溶液からめっきされる。溶液ベースの技術は単純で簡単であり、不備のない高品質な不活性金属コーティングをもたらす。そのような技術はまた、パリレン(登録商標)でコーティングされた領域ではなく、電極の導電性領域上にのみ、すなわち電極の露出した金属領域上にのみ、ゆえに腐食に弱い電極の領域上にのみ、不活性金属を選択的に堆積させる。このように、必要とされる電極の領域のみに処理が有効に行なわれ、したがって不活性金属材料をきわめて効率的に利用する。
【0018】
不活性金属コーティングは、プリントヘッド製造の前、間、または後のいずれの所望の段階においても電極上に形成され得、いずれかの他の、たとえばパリレン(登録商標)の電極コーティングの前または後で形成され得る。
【0019】
不活性金属の単一のコーティングが使用され得るか、または所望であれば、場合によっては異なる不活性金属もしくは他の材料の複数のコーティングが採用され得る。
【0020】
不活性金属によって実現される保護をさらに強化するために、たとえばドデカンチオールなどの自己組織化単層(SAM)材料の形態で、不活性金属コーティングの上に絶縁層が任意に設けられ得る。好適な材料および技術が周知である。そのようなたとえばSAMの層の使用は電極の耐久性の向上の可能性をもたらし、使用中のプリントヘッド内のインクに非金属、非導電性表面が与えられる。
【0021】
不活性金属コーティングの堆積は、プリントヘッドにおいて現場で電極に対して行われ得る。これは、上で参照したものなどの溶液ベースの堆積技術を使用して容易に実現され得る。たとえば、処理溶液たとえば水性金溶液が処理されるべきプリントヘッドに直接注入され、不活性金属めっきが生じるように好適な温度にて好適な時間放置され得る。代替的に、処理溶液は、関連付けられたインクジェットプリンタのインクシステムに注入され得る。適切な処理時間インクシステムを使用して、プリントヘッド全体に溶液を再循環させ得る。めっき効率およびコンシステンシ(consistency)を最大化するために、当該プロセス中にプリントヘッドの電極を作動させる(通電する)ことが有益であり得る。処理溶液は、インクが接触し得るプリントヘッドのすべての領域に入り接触することになり、場合によっては腐食を引起こすため、プロセスは、腐食に弱い露出した金属領域のすべてをきわめて的を絞った効率的なやり方で選択的に処理することになる。
【0022】
発明の手法のさらなる利点は、プリントヘッドの分解を必要とすることなく製造後のインクジェットプリントヘッドに(つまり完全に組立てられたプリントヘッド上に)不活性金属の堆積物が塗布され得る点である。処理はしたがって必ずしもインクジェットプリントヘッドの製造業者によって適用される必要はない。実際、処理をプリントヘッドの寿命中に間隔をおいて容易に再び行ない、使用中にたとえば損傷または腐食によって露出した可能性がある電極表面のいずれかの金属領域を不活性金属でコーティングするかもしくは再コーティングすることができ、このようにしてプリントヘッドの寿命をさらに延長させる。
【0023】
発明は、通常使用において電極が露出してプリントヘッド内のインクと接触するいずれのインクジェットプリントヘッドにも適用可能であるが、圧電プリントヘッド、特に腐食問題がよく見られる共用壁圧電プリントヘッドで特に有益である。これは、共用壁圧電プリントヘッドが一連の並列の流路を有し、使用中にそこを通ってインクが流れ、電極がインク流路壁の側面を走行するため、場合によっては使用中のインクに露出される/浸漬される電極の大きな領域をプリントヘッドが有するからである。発明の使用は、これまで可能であったよりも広範囲のインク、特に導電性のインク(水性または非水性)、たとえば水ベースのインクなどのイオン含有インク、たとえばテキスタイル印刷において広く使用されているものでプリントヘッドを使用することができることを意味する。
【0024】
発明は、インク再循環能力を有するインクジェットプリントヘッドへの特定の用途も見出す。インクの再循環は正常動作において(電極の不活性金属表面に生じるインクの電気分解によって生成される)いずれのガス泡も迅速かつ自動的に除去し、したがってプリントヘッドを正確に作動するように保つため、発明はこの種のプリントヘッドに特に有益である。
【0025】
さらなる局面において、発明は、少なくとも1つの金属電極を有するインクジェットプリントヘッドを提供する。使用中のインクに露出した電極表面の部分は、不活性金属のコーティングによって少なくとも部分的に構成される耐食性保護コーティングを少なくとも有する。
【0026】
保護コーティングは、全体的に不活性金属によって構成され得る。
代替的に、保護コーティングは、キシレンベース材料などの高分子コーティング、特にパリレン(登録商標)として知られるものなどの置換もしくは非置換ポリパラキシリレン材料、たとえばパリレン(登録商標)N、パリレン(登録商標)Cおよびパリレン(登録商標)D、または他の非金属製保護コーティングによって部分的に構成され、保護コーティングの残部は不活性金属によって構成され得る。
【0027】
発明は、発明に係るプリントヘッドを含むインクジェットプリンタもその範囲に含む。
さらなる局面において、発明は、電極表面の露出した金属領域上に不活性金属を堆積させるステップを含む、インクジェットプリントヘッド電極を処理する方法を提供する。
【0028】
不活性金属は、好ましくは、たとえば浸せきめっき、無電解めっきおよび電解メッキを含むめっき技術を使用して、溶液たとえば水溶液から堆積される。コーティングは、浸せきめっきなどのある技術を使用してまず堆積され、次いで電解メッキなどの二次的な技術を使用して厚膜化され得る。
【0029】
当該方法は、電極上への他のコーティングの生成前または後に実行され得、置換もしくは非置換ポリパラキシリレン材料、たとえばパリレン(登録商標)N、パリレン(登録商標)Cおよびパリレン(登録商標)Dのコーティングの生成後に行われることが好都合である。
【0030】
当該方法は、プリントヘッド製造前、間または後に行われ得、プリントヘッドにおいてその場で電極に対して行われることが好都合である。
【0031】
当該方法は、たとえば、当初堆積させた不活性金属上に(場合によっては異なる)不活性金属をさらに堆積させるために繰り返され得る。
【0032】
当該方法は、電極表面のいずれかの新たに露出した金属領域上に不活性金属をさらに堆積させることによって、たとえば腐食または損傷の結果として保護コーティングに生じ得るいずれかの欠陥または不備を修復するために、プリントヘッドの寿命中に間隔をおいて繰り返すことが好都合であり、このようにしてプリントヘッドの有用な寿命が延長される。プリントヘッドのための適切な処理スケジュールは、プリントヘッドにおいて使用されるインクに依存して決定することができる。
【0033】
発明は、不活性金属めっき溶液を含有するインクジェットプリンタ貯留部も提供する。
以下の例において、かつ添付の図面を参照して、発明を例示によってさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】共用壁圧電プリントヘッドの一部を表わす概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、共用壁圧電プリントヘッド10の一部を概略的に示す。
プリントヘッドは、使用の際そこを通ってインクが流れる通路を構成する一連の並列の流路14がその中に切られた1個の圧電材料12から形成される。各流路の対向する側壁同士の間の間隔は、約70ミクロンである。流路内の、および流路の側面の下の全表面は、16で示されるように非不活性金属でコーティングされ、銅および/またはニッケル、たとえばニッケルでコーティングされた銅で電極を典型的に形成する。電極が互いに分離されるように、隣接する流路間の領域18から金属が除去される。表面板20は流路の上を横切って延在し、一連のアパーチャ22が各流路のそれぞれのノズルを構成する。使用の際、その両端に電圧を印加させることによって壁が導通状態にされる、すなわち一方側の電極はプラスであり、他方側の電極はマイナスであり、圧電材料12を変形させてノズルから少量のインクを噴出させる。
【0036】
実施例
プリントヘッド処理
Xaar(登録商標)1001(Xaar(登録商標)は商標)共用壁圧電プリントヘッドを使用して実験を行った。該プリントヘッドは、パリレン(登録商標)ポリマーでコーティングされた非不活性導電性金属電極を有し、それらを下記のような金メッキ溶液で処理した。
【0037】
シアン化金カリウム(Metalor Technology)0.93gを脱イオン(DI)水20mlに溶解させる。Aurolectroless SMT MakeUp溶液(Aurolectrolessは商標)(Rohm&Haas Electronic Materials)225gを清潔なガラスビーカーに加える。攪拌しつつ、溶解シアン化金カリウム溶液をAurolectroless SMT溶液に添加する。得られた金メッキ溶液を、次いでDI水によって300mlまで増加させる。次いで溶液を85℃に加熱する。処理されるべきプリントヘッドをアルミホイルで緩く包んで85℃の炉内に配置する。30分後プリントヘッドを炉から取出し、メッキ溶液にごく近接したクランプを有するレトルトスタンドに配置する。プリントヘッドの出口に管を取付け、85℃の1000mlのビーカーの金メッキ溶液に引き回した。20mlのシリンジを熱い金メッキ溶液で充填し、入口管に接続する。シリンジをおよそ5秒間完全に押下げて、プリントヘッド全体に熱い溶液をフラッシュした。溶液はヘッドを通過して1000mlのビーカーに戻る。シリンジはただちに二回目に充填され、3分間保持されていた出口管において溶液を見ることができるまでプリントヘッド全体をフラッシュし、溶液が常に出口管内にあることを確実にした。3分の休止後、シリンジを完全に押下げる。フラッシングプロセスが三回目に繰り返されるが、今回は溶液は6分間保たれる。
【0038】
この三回目のフラッシングが完了し、シリンジが完全に押下げられると、出口パイプは廃棄物容器に送られ、シリンジを室温のDI水が充填された別のものと交換する。室温(約20℃)のDI水の3×20mlのシリンジをプリントヘッドを通過させ、次いでアルミホイルに再度包み、85℃の炉に配置し、さらに30分間放置する。
【0039】
次いでプリントヘッドを炉から取出し、包みを開き、管に再度接続し、出口パイプが金メッキ溶液の1000mlのビーカーに再び向けられていることを確実にする。プリントヘッドをもう一度メッキ溶液で全体にフラッシュし、6分間プリントヘッド内に保ち、最後に別の3×20mlのDI水を全体にフラッシュする。
【0040】
この処理により、電極表面のいずれかの露出した金属領域上、特に金溶液を下にある電極表面と接触させるパリレン(登録商標)コーティングのいずれかの不備または浸透性領域があるところに、金溶液が自然に金の層(15分の処理後に約0.08ミクロンの厚さ、30分後に0.1ミクロンの厚さを有すると推定される)をめっきすることになり、このように発明に係るプリントヘッドを製造する。
【0041】
得られた金の領域は、インクジェットプリントヘッドがその後水溶性インクで使用された場合に耐食性が高いことが分かっており、このようにプリントヘッドの寿命が著しく向上する。
【0042】
上記のように処理されたプリントヘッドを処理されていないプリントヘッドと比較するため、噴射テストを行なった。特に、プリントヘッドノズル(1000)のすべてを通って連続的に印刷された水性インクジェットインクでプリントヘッドをテストし、ノズル損失を周期的な間隔で判定した。
【0043】
プリントヘッドテスト
処理されたプリントヘッドは、Head Personality Card(Xaar Plcから入手可能)および小量再循環インク管理システム(Xennia Technology Ltdから入手可能)に取付けられた流体経路を介して駆動電子機器によってPCに接続される。
【0044】
プリントヘッドをレトルトスタンドに固定し、インク収集システム上に吊下げる。この収集システムを収集ポット上に位置決めし、すべてのインクが収集されることを確実とするために、その基部はポットの口縁の真下にある。実験の開始前に、アセンブリ全体を十分に洗浄し排水する。
【0045】
以下の表に示される配合(重量%)を有する水溶性インク配合で印刷テストを行った。
【0046】
【表1】

【0047】
噴射の開始前に、10〜15分間プリントヘッドを通ってシステムにインクを再循環させる。250mLのインク収集ポットを半分インクで充填し、インクシステム充填管をインク収集ポットに完全に浸漬する。インクシステムの中間貯留部のフロートスイッチが液位を制御し、低ければバルブを開いて250mLのインク収集ポットからシステムを充填する。このように、インクが連続してインク収集ポットに噴出され、次いでインクシステムに装填される。
【0048】
実験の開始前にヘッドを並進台上に位置決めし、ノズルプリントテストパターンを印刷する。この印刷目標は、欠けているノズルの数の評価を可能にする。プライミング(priming)および吐出(spitting)などの保守計画をこの段階で使用して、ノズルをすべて作動させる。電圧およびメニスカス圧力の調節もこの段階で行う。良好な印刷物が生成されると、インク収集システムにヘッドを戻す。
【0049】
プリントヘッドは次いで、6KHz、アップタイム100%および負荷サイクル100%にて、最も高いグレイレベルの連続噴射を受ける。画像処理データを処理するのに使用されるソフトウェアはXUSB(Xaar Plcから入手可能)である。連続噴射実験中、滴の放出は内部信号によって制御される。印刷された画像は、走査方向の2000画素によってプリントヘッド幅の最も高いグレイレベルを誘起する固体ブロックである。
【0050】
1時間の印刷後、プリントヘッドを再び並進台に配置し、いくつかのサンプルを印刷する。この段階では、印刷物を向上させるのに役立つようにプライミングおよび表面板の拭き取りが必要であり得る。プリントヘッドを次いでインク収集ポットに戻す。噴射安定性を評価するため、最初の6時間は1時間ごとに一回、次の6時間は2時間ごとに一回、ノズルチェックプリントサンプルが等間隔で必要とされる。20時間後、ノズルチェックプリントサンプルの周期は午前および夜の一日二回に減少する。この時点では、プリントヘッドは連続して噴出させたままにする。
【0051】
48時間の連続噴射ごとに、十分な物理的性質の特徴化のために、印刷されたインクのサンプルを採る。物理的特性に何らかの著しい変化があれば、インクを交換する。
【0052】
各時間間隔データ点について、3つの可能な限り最良品質の印刷サンプルに対して印刷サンプル評価を行なう。欠けているノズルの数を数える際、3つのサンプルのすべてを比較するべきである。1つの印刷物ではノズルが欠けているが別の印刷物には存在する場合は、存在すると分類され、3つの印刷物すべてにおいてノズルが無い場合のみ、欠けていると分類される。プリントヘッドが2つ以上を有する場合は、各列について情報を収集するべきである。
【0053】
次いで収集されたデータを評価し、1%未満のノズルが欠けている、10%未満のノズルが欠けている、50%未満のノズルが欠けていると分類される。プリントヘッドが50%を超えるノズルを失うと、実験を停止する。次いでプリントヘッドをフラッシュし、インクをすべて除去する。次いで、標準的な溶媒ベースのテスト流体をプリントヘッドに装填し、合計ノズル損失結果を確認するためにノズルチェックプリントを得る。
【0054】
2つの処理されたプリントヘッドおよび1つの処理されていないプリントヘッドについての結果を以下の表に示す。表1および表2は、処理されたプリントヘッドについての結果を示し、表3は、処理されていないプリントヘッドについての結果を示す。
【0055】
【表2】

【0056】
【表3】

【0057】
【表4】

【0058】
10%までのノズル損失は、いくつかの用途には実際には許容可能であると考えられる。なお、たとえば気泡によって引起こされるなんらかのノズル損失は一時的なものであり、いくつかの場合におけるノズル回復の根拠となる。
【0059】
結果は、処理されていないプリントヘッドはすぐに故障し、2時間未満の噴射後に許容不可能なノズル損失を発生させたことを示す。これは、パリレン(登録商標)でコーティングされた電極の腐食によるものであった。対照的に、発明に係る処理されたプリントヘッドは、許容不可能なノズル損失を発生させる前に200時間以上の噴射に耐えた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用中のインクと接触する少なくとも1つの内部電極を有するインクジェットプリントヘッドであって、内部電極表面の露出した金属領域は不活性金属のコーティングを有する、インクジェットプリントヘッド。
【請求項2】
不活性金属は金および/または白金を含む、請求項1に記載のプリントヘッド。
【請求項3】
電極の全表面は不活性金属でコーティングされる、請求項1または2に記載のプリントヘッド。
【請求項4】
電極の表面は保護コーティングを有し、保護コーティングにおける間隙は不活性金属のコーティングを有する、請求項1または2に記載のプリントヘッド。
【請求項5】
保護コーティングは、置換または非置換ポリパラキシリレン(polyparaxylxyene)材料を含む、請求項4に記載のプリントヘッド。
【請求項6】
不活性金属の1つ以上のさらなるコーティングを備える、先行する請求項のうちのいずれか1つに記載のプリントヘッド。
【請求項7】
不活性金属の上に絶縁層を備える、先行する請求項のうちのいずれか1つに記載のプリントヘッド。
【請求項8】
圧電プリントヘッドを備える、先行する請求項のうちのいずれか1つに記載のプリントヘッド。
【請求項9】
共用壁圧電プリントヘッドを備える、請求項8に記載のプリントヘッド。
【請求項10】
プリントヘッドはインク再循環能力を有する、先行する請求項のうちのいずれか1つに記載のプリントヘッド。
【請求項11】
先行する請求項のうちのいずれか1つに記載のプリントヘッドを備える、インクジェットプリンタ。
【請求項12】
インクジェットプリントヘッド内部電極を処理する方法であって、電極表面の露出した金属領域上に不活性金属を堆積させるステップを含む、方法。
【請求項13】
不活性金属は溶液から堆積される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
不活性金属は、浸せきめっき、無電解めっき、または電解メッキによって堆積される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
不活性金属は、プリントヘッドにおいて現場で電極上に堆積される、請求項12、13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記方法は間隔をおいて繰り返される、請求項12〜15のうちのいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
不活性金属めっき溶液を含有する、インクジェットプリンタ貯留部。

【図1】
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【公表番号】特表2012−530631(P2012−530631A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516860(P2012−516860)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【国際出願番号】PCT/GB2010/051039
【国際公開番号】WO2010/150012
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(508098372)ゼニア・テクノロジー・リミテッド (9)
【Fターム(参考)】