インクジェットヘッド製造装置、インクジェットヘッド製造方法、及びインクジェット装置
【課題】制御素子をインクジェットヘッドに実装したままで、制御素子を破壊することなく圧電素子の消極、分極ができるインクジェットヘッド製造装置を提供する。
【解決手段】制御素子が実装された基板は、制御素子の高圧電源端子と電気的に接続される第1の配線と、制御素子のグランド端子と電気的に接続される第2の配線と、加減圧素子の共通電極と電気的に接続される第3の配線が互いに短絡しておらず、制御素子のゲートから加減圧素子の個別電極までの経路上に、加減圧素子の個別電極から前記第1の配線に電流が流れるように第1のダイオードを設け、前記第2の配線から加減圧素子の個別電極に電流が流れるように第2のダイオードを設けて、前記加減圧素子の消極又は分極を行うときに前記第1の配線と前記第2の配線を短絡する手段を有する。
【解決手段】制御素子が実装された基板は、制御素子の高圧電源端子と電気的に接続される第1の配線と、制御素子のグランド端子と電気的に接続される第2の配線と、加減圧素子の共通電極と電気的に接続される第3の配線が互いに短絡しておらず、制御素子のゲートから加減圧素子の個別電極までの経路上に、加減圧素子の個別電極から前記第1の配線に電流が流れるように第1のダイオードを設け、前記第2の配線から加減圧素子の個別電極に電流が流れるように第2のダイオードを設けて、前記加減圧素子の消極又は分極を行うときに前記第1の配線と前記第2の配線を短絡する手段を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加減圧素子としての圧電素子の消極処理や分極処理に好適なインクジェットヘッドを製造するためのインクジェットヘッド製造装置、インクジェットヘッド製造方法、及びヘッド接続基板とインクジェットヘッドを搭載したインクジェット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドに用いる加減圧素子として、電圧を印加すると歪みを生じる圧電素子がよく知られている。圧電素子は、焼成後、電極間に通常駆動を行うよりも高い電圧を印加して分極処理を行うことにより、特定方向に大きな圧電特性を示すようになり、アクチュエータとして用いることができる。
【0003】
従来、圧電素子の分極を行った後にインクジェットヘッドが組み立てられる。しかし、制御用ICを実装したフィルム基板を圧電素子に接続する際、半田付けや異方性導電膜等を用いるので、フィルム基板と圧電素子の接続時に加熱が行われる。圧電素子がキュリー温度に達した場合、圧電特性が劣化してしまうという問題があった。このような問題に対し、キュリー温度の高い圧電素子を用いて、キュリー温度より低い温度で制御用ICを実装したフィルム基板を圧電素子に接続する方法がある(例えば、特許文献1)。しかし、近年、鉛を含有しない半田を使用する必要があり、接続に必要な温度が高くなっている。また、接着強度の向上、ノズル面や流路の表面処理のために高温で加熱処理を行う要望もある。所望の処理温度よりもキュリー温度の高い圧電素子を選択しようとすると圧電素子の選択範囲が狭まるという問題があった(例えば、非特許文献1、2)。
【0004】
又、圧電素子を櫛歯状に切り分ける際や、ヘッドを組み立てた際に、電気的な要因、加工精度、組立て精度等の要因により、ノズル毎に駆動力のばらつきが生じるという問題があった。そのような問題に対し、圧電素子に一旦消極処理を行い、ノズル毎個別に適切な強度で再分極処理を行う方法(以下、分極補正と呼ぶ)がある(例えば、特許文献2、4)。
【0005】
圧電素子を消極する一つの方法として、圧電素子をキュリー温度以上にする方法がある(例えば、特許文献2、非特許文献3)。この方法の場合、インクジェットヘッドを組み立てた後に数百度という高温にさらすことになる。接着剤の強度低下や部材の劣化等を招くという問題がある。圧電素子を消極する他の方法として、圧電素子の電極間に交流電圧を印加する方法がある。制御素子の逆極性に対する耐圧は一般的に低いため、この方法を用いると制御素子を破壊してしまうという問題がある。圧電素子を分極する方法として、圧電素子の電極間に、一定以上の電圧を印加する方法が一般的である(例えば、特許文献2)。この方法の場合、その電圧は通常駆動するのに必要な電圧よりも高いため、分極を行うためだけに駆動電圧よりもずっと耐圧の高い制御素子を選ばなければならない。よって、制御素子の選択範囲が狭まる上にコストも上がるという問題があった。
【0006】
そのような問題に対し、図10に示したように、インク加減圧素子に駆動信号を印加するか否かを受け取ったデータにより制御を行う制御素子のグランド端子と電気的に接続される配線と、加減圧素子の共通電極と電気的に接続される配線の間に分極電圧を印加して、前記制御素子のグランド端子と電気的に接続される配線から前記加減圧素子の個別電極に電流が流れるように設けたダイオードを通れる電流で圧電素子を充電することで、制御素子に分極電圧を印加しないようにし、制御素子の破壊を防ぎながら、共通電極を同一にする圧電素子全てを一斉に同じ分極電圧で分極処理する方法が開示されている(例えば、特許文献3)。
【0007】
しかし、特許文献3にあるように直流電圧を印加して一定の分極を行うには問題が無いものの、分極の度合いを精密に制御する際にはパルス状の電圧を印加する必要がある。その分極電圧の電圧変化が早い場合、例えば図11(a)のような分極電圧波形を圧電素子の共通電極に印加した場合、圧電素子の個別電極には図11(b)のような電圧波形が現れる。これは、図10に示した公知の構成では放電の経路が無いために、個別電極の電圧低下は圧電素子の自然放電に頼っているためである。
【0008】
分極電圧の電圧変化が早い程、図11(b)の最高電圧Vpは分極電圧の最高電圧Vppに近付いて高くなるが、VccにダイオードD1の順方向降下電圧を足した値よりは大きくならないため、制御素子の破壊に至る危険性は小さい。しかしながら、制御素子が破壊される確率は上がるうえ、分極は、圧電素子の共通電極と個別電極の電位差により生じた電界で行われるため、図10に示した公知の構成では、図11(b)の最高電圧Vpの値によっては、分極波形を印加し終わった後にもある程度分極が進むため、圧電素子の自然放電を考慮に入れて分極を行わなければならず、精密な分極が難しいという問題があった。又、自然放電には時間がかかるため、生産性が悪いという問題もあった。
【0009】
さらに、圧電素子の消極を行おうとした場合、圧電素子の電極に交流電圧を印加する等して、圧電素子の共通電極と個別電極の間に発生する電界の向きを逐次変化させる必要がある。図10に示した公知の構成では、放電の経路が無いために、消極電圧の電圧変化が早い場合、例えば図12(a)のような消極電圧波形を圧電素子の共通電極に印加した場合、圧電素子の個別電極には図12(b)のような電圧波形が現れ、共通電極と個別電極の間に発生する電界の向きが変化しないため消極を行うことができない。
【0010】
近年、産業用途にインクジェットヘッドが利用されるようになり、高分子有機ELディスプレイの製造装置等、インクジェットヘッドのノズル毎の吐出液滴重量ばらつきを極めて少なくすることが求められるようになってきた。また、プリンタとしても、プリント速度はどんどん高速化の一途を辿っており、インクジェットヘッドのノズル毎の吐出液滴速度ばらつきを極めて少なくすることが求められている。これら吐出液滴のばらつきを抑えるには、先に述べた分極補正が有効な手段の一つである。しかし、分極補正を行って出荷しても、経時変化や環境の変化などによって吐出液滴のばらつきが出るという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−55045号公報
【特許文献2】特開2001−277525号公報
【特許文献3】特許第3879721号公報
【特許文献4】特開2006−315326号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】「日経エレクトロニクス」日経BP社出版、1995年5月8日発行(No.635)、P.95
【非特許文献2】(株)富士セラミックス、"圧電セラミックスの材料特性"材料特性表、[2007年12月検索]インターネット<URL:http://www.fujicera.co.jp/product/j/01/mat.table_j.pdf>
【非特許文献3】(株)富士セラミックス、"圧電セラミックテクニカルハンドブック"P.52、[2007年12月検索]インターネット<URL:http://www.fujicera.co.jp/product/j/01/10.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記のような問題を鑑みてなされたものであり、制御素子をインクジェットヘッドに実装したままで、加減圧素子の消極や分極を行える装置を提供することを課題とする。加えて、インクジェットヘッドをインクジェット装置に搭載した状態で、インクジェット装置が加減圧素子の消極や分極や駆動を行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するため、本発明に係るインクジェットヘッド製造装置は、インク圧力室と、前記インク圧力室内のインクに対して加減圧を行う加減圧素子と、前記加減圧素子に対する駆動信号を制御する制御素子が実装された基板を備えたインクジェットヘッドを製造するためのインクジェットヘッド製造装置であって、前記基板上で、前記制御素子の高圧電源端子と電気的に接続される第1の配線と、前記制御素子のグランド端子と電気的に接続される第2の配線と、前記加減圧素子の共通電極と電気的に接続される第3の配線が互いに短絡しておらず、前記制御素子のゲートから前記加減圧素子の個別電極までの経路上に、前記加減圧素子の個別電極から前記第1の配線に電流が流れるように第1のダイオードと、前記第2の配線から前記加減圧素子の個別電極に電流が流れるように第2のダイオードを設け、前記加減圧素子の消極又は分極を行うときに前記第1の配線と第2の配線を短絡する手段を有することを特徴とする。
【0015】
上記のインクジェットヘッド製造装置においては、前記加減圧素子の消極又は分極を行うときに、短絡して同電位となっている前記第1の配線及び第2の配線と、前記第1の配線及び第2の配線とは分離されている前記第3の配線との間に消極電圧又は分極電圧を印加して、前記加減圧素子の消極又は分極を行うように構成することができる。
【0016】
上記のインクジェットヘッド製造装置においては、前記消極又は分極が終了した後に前記短絡を解除させる手段を有するように構成することができる。
【0017】
上記のインクジェットヘッド製造装置においては、前記第1のダイオードと第2のダイオードが前記制御素子の寄生ダイオードであるように構成することができる。
【0018】
上記のインクジェットヘッド製造装置においては、前記加減圧素子の消極又は分極を行うときに前記第1の配線と第2の配線を短絡し、消極又は分極が終了したときに前記短絡を解除する手段がスイッチであるように構成することができる。
【0019】
上記のインクジェットヘッド製造装置においては、前記インクジェットヘッドが前記第1及び第2の配線と電気的に接続されたインクジェットヘッド側の端子を有していて、ヘッド接続基板側には、前記インクジェットヘッド側の端子と嵌合可能な端子を備え、前記第1の配線が電気的に接続された前記インクジェットヘッド側の端子が対応する、ヘッド接続基板側の第1の端子と、前記第2の配線が電気的に接続された前記インクジェットヘッド側の端子が対応する、ヘッド接続基板側の第2の端子が、ヘッド接続基板上で短絡するように配線されている、第1のヘッド接続基板と、前記インクジェットヘッド側の端子と嵌合可能な端子を備え、前記第1の配線が電気的に接続された前記インクジェットヘッド側の端子が対応する、ヘッド接続基板側の第3の端子と、前記第2の配線が電気的に接続された前記インクジェットヘッド側の端子が対応する、ヘッド接続基板側の第4の端子がヘッド接続基板上で短絡されていない、第2のヘッド接続基板とを有するように構成することができる。
【0020】
上記のインクジェットヘッド製造装置においては、出荷後でも、消極を行った後ノズル毎に再分極を行うように構成することができる。
【0021】
上記のインクジェットヘッド製造装置においては、前記第1のダイオードのカソードに負電圧、前記第2のダイオードのアノードに正電圧がかかるように、前記第1及び第2のダイオードに順方向降下電圧程度以下のバイアス電圧を印加するように構成することができる。
【0022】
上記のインクジェットヘッド製造装置においては、前記消極電圧又は分極電圧の単位時間当たりの電圧変化量を、前記第1及び第2のダイオードを流れる電流が、各ダイオードの耐電流値を超えない程度に小さくするように構成することができる。
【0023】
また、上記の課題を解決するため、本発明に係るインクジェット装置は、インク圧力室と、前記インク圧力室内のインクに対して加減圧を行う加減圧素子と、前記加減圧素子に対する駆動信号を制御する制御素子が実装された支持基板を備えたインクジェットヘッド、及び前記インクジェットヘッドの前記加減圧素子に対する駆動、分極又は消極を行うためのヘッド接続基板を搭載したインクジェット装置であって、前記インクジェットヘッドが、前記支持基板上で、前記制御素子の高圧電源端子と電気的に接続される第1の配線と、前記制御素子のグランド端子と電気的に接続される第2の配線と、前記加減圧素子の共通電極と電気的に接続される第3の配線が互いに短絡しておらず、前記制御素子のゲートから前記加減圧素子の個別電極までの経路上に、前記加減圧素子の個別電極から前記第1の配線に電流が流れるように第1のダイオードと、前記第2の配線から前記加減圧素子の個別電極に電流が流れるように第2のダイオードとを有すると共に、前記ヘッド接続基板が、前記加減圧素子の消極又は分極を行うときに前記第1の配線と第2の配線を短絡する手段を有することを特徴とする。
【0024】
また、上記の課題を解決するため、本発明に係るインクジェットヘッド製造方法は、インク圧力室と、前記インク圧力室内のインクに対して加減圧を行う加減圧素子と、前記加減圧素子に対する駆動信号を制御する制御素子が実装された基板を備えたインクジェットヘッドを製造するためのインクジェットヘッド製造方法であって、前記基板上で前記制御素子の高圧電源端子と電気的に接続される第1の配線と、前記制御素子のグランド端子と電気的に接続される第2の配線と、前記加減圧素子の共通電極と電気的に接続される第3の配線とが互いに短絡しておらず、前記制御素子のゲートから前記加減圧素子の個別電極までの経路上に、前記加減圧素子の個別電極から前記第1の配線へ電流が流れるように第1のダイオードと、前記第2の配線から前記加減圧素子の個別電極へ電流が流れるように第2のダイオードを設け、前記加減圧素子の消極又は分極を行う際に前記第1の配線と第2の配線を短絡する短絡工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、制御素子をインクジェットヘッドに実装したままで、制御素子を破壊することなく、圧電素子の電極間に両極性の電圧を印加して消極を行ったり、圧電素子の電極間に制御素子の耐圧以上の電圧を印加して分極を行ったりする装置が提供される。さらに本発明によれば、必要に応じてインクジェット装置が、消極を行った後ノズル毎に適切な強度で再分極を行うので、常にインクジェットヘッドのノズル毎の吐出液滴ばらつきを抑えることが可能な装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例を適用したインクジェットヘッドの一部斜視図である。
【図2】本発明の実施例に係るインクジェットヘッドとヘッド接続基板の接続を説明するための斜視図である。
【図3】本発明の実施例に係るインクジェットヘッドの駆動時の様子を説明した回路図である。
【図4】本発明の実施例に係る圧電素子の消極を行う際の様子を説明した回路図である。
【図5】本発明の実施例に係る圧電素子の分極を行う際の様子を説明した回路図である。
【図6】ダイオードの順方向降下電圧を示した説明図である。
【図7】本発明の他の実施例に係る回路図である。
【図8】本発明の他の実施例に係る回路図である。
【図9】本発明の他の実施例に係る回路図である。
【図10】従来例の回路図である。
【図11】従来例の問題点を示した説明図である。
【図12】従来例の問題点を示した説明図である。
【図13】本発明の他の実施例に係る回路図である。
【図14】本発明の他の実施例に係る回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明の実施例を適用するインクジェットヘッドの構成を示す一部斜視図である。
【0028】
インク流路形成部材11に、インク圧力室12が形成され、インク圧力室12の一端はノズルプレート13に開けられたノズル14と連通している。インク圧力室12の他端は、インクに加わった圧力が逃げるのを抑えるためにインク流路が絞ってある箇所であるリストリクタ15を経て、共通インク流路16に連通している。
【0029】
インクを吐出させる圧力を発生させる手段は、積層構造の圧電素子17で構成されている。圧電素子17は積層方向に設けた圧電素子支持基板18に固定されており、d33方向の圧電伸縮を利用して圧力を発生させている。よって、圧電素子17の正極に設けられた個別電極19に印加する電圧が下がって圧電素子17が放電されれば減圧、圧電素子17の個別電極19に印加する電圧が上がって圧電素子17が充電されれば加圧という動作をする。圧電素子17の個別電極19は圧電素子支持基板18の片面に配され、制御素子24の出力端子と超音波溶接により接続された配線25と半田付けにより接続されており、制御素子24の駆動電圧入力端子と超音波溶接により接続された配線26は、駆動電圧発生回路(図示せず)の出力に接続されている。圧電素子17の負電極に設けられた共通電極20は、各圧電素子17の負電極に共通した電極となっており、圧電素子支持基板18のもう一方の面に配され、駆動電圧発生回路(図示せず)のグランドに接続されている。圧電素子支持基板18とインク流路形成部材11とは、互いにハウジング(図示せず)に固定されており、相対的に殆ど動かないようになっている。
【0030】
圧電素子17の圧電素子支持基板18に固定されていない方の面は、弾性膜21に固定されている。弾性膜21はインク圧力室12の壁の一部を形成しており、圧電素子17の伸縮で弾性板21が変形すると、圧力室12の体積が変化するような構造となっている。
【0031】
配線26と接続された圧電素子17の隣には、配線26と接続されていない圧電素子23が設けてあり、圧電素子23の圧電素子支持基板18に固定されていない方の面は、インク圧力室12の仕切り27に固定され、ヘッドの剛性を高めるのに役立っている。
【0032】
本発明を適用したインクジェットヘッドは、以上のような構造と同じ部材が1/150インチ間隔で1列に複数個並んで構成されている。
【0033】
次に、インクジェットヘッドのインク滴吐出原理について説明する。
【0034】
圧電素子17の個別電極19に接続されている制御素子24により、演算装置(図示せず)から送られてくるデータに従って、インク滴を吐出させるノズルの圧電素子の個別電極19にのみ、駆動電圧が供給されている配線26を接続し、個別電極19に印加される電圧により、圧電素子17の充電及び放電が行われるようにする。インク滴を吐出させないノズルの圧電素子17は、自然放電しないように個別電極19にDC電圧を印加して、圧電素子17を充電して自然長よりも積層方向に延びた状態として、弾性膜21をインク圧力室12に押し込んだ状態で略停止している。個別電極19に印加している電圧が低下すると、放電が行われて積層方向に縮む。これにより弾性膜21が引っ張られて圧力室12が減圧し、共通インク流路16からリストリクタ15を通ってインクがインク圧力室12に供給される。
【0035】
続いて、正電極19に印加している電圧が上昇すると、圧電素子が充電され、積層方向に伸びて、弾性膜21をインク圧力室12に押し込む。これによりインク圧力室12のインクが加圧され、インク圧力室12に連通したノズル14よりインクが押し出され、インク滴22として吐出する。インク圧力室12が減圧過程では、リストリクタ15の流路抵抗よりもノズル14に働く表面張力の方が勝るように設計されているため、ノズル14から空気を引き込むのではなく、インクがインク圧力室12に供給される。インク圧力室12の加圧過程では、ノズル14に働く表面張力よりもリストリクタ15の流路抵抗の方が勝るように設計されているため、リストリクタ15から共通インク流路16にインクが戻って行くのではなく、ノズル14からインク滴が吐出する。
【0036】
図3は、このインクジェットヘッドの駆動時の様子を説明した回路図である。
【0037】
破線で囲まれた205がインクジェットヘッド、一点鎖線で囲まれた206がヘッド接続基板である。ダイオード4乃至7は、半導体製造時に意図しなくても生じる寄生ダイオードである。制御素子のゲート207に制御素子のグランド端子208に印加される電圧からダイオード5又は7の順方向降下電圧を引いた電圧Vdより低い電圧が印加されると、制御素子のグランド端子208から電流が流れ込んで電圧Vd以下にならないようにし、制御素子のゲート207に制御素子の高圧電源端子209に印加される電圧にダイオード4又は6の順方向降下電圧を足した電圧Vuより高い電圧が印加されると、制御素子の高圧電源端子209に電流が流れ出て電圧Vu以上にならないようにし、ゲート207が破損するのを防止する保護回路の役割も果たしている。
【0038】
駆動電圧210が駆動電圧入力端子211から制御素子のゲート207に入力されており、ゲート207がONすると、ゲート207に接続された圧電素子212の個別電極213に駆動電圧210がゲート207を通して印加され、充放電が行われる。ゲート207がOFFしている間は圧電素子212の個別電極213には何も印加されない。制御素子のゲート207として、トランスミッションゲートと呼ばれるタイプのゲートを図示しているが、どのようなゲートであっても本発明は適用可能である。
【0039】
制御素子の高圧電源端子209には高圧電源215が供給されており、この電圧は駆動電圧210の電圧以上に設定されている。制御素子のグランド端子208はグランド216に短絡してある。
【0040】
制御素子の高圧電源端子209と電気的に接続される配線1と、前記制御素子のグランド端子208と電気的に接続される配線2と、圧電素子212の共通電極214と電気的に接続される配線3は互いに短絡されていない。絶縁されている場合に限らず、コンデンサや抵抗等で繋がっていても本発明は適用可能である。
【0041】
図4は、本発明を適用して圧電素子の消極を行う際の様子を説明した回路図である。制御素子のゲート207はOFFの状態にしておく。高圧電源端子209への電源215の供給も行わない。制御素子の高圧電源端子209と電気的に接続される配線1と、前記制御素子のグランド端子208と電気的に接続される配線2とを短絡してグランド216に接続してある。配線1及び配線2と、圧電素子212の共通電極214と電気的に接続される配線3との間に消極電圧301を印加する。なお、消極電圧は交流であり、圧電素子212の個別電極213と共通電極214の間に発生する電界の向きを逐次変化させることにより分極を解除する。
【0042】
圧電素子212の共通電極214に印加される電圧が上昇している時は、圧電素子212の個別電極213からダイオード4を通して、高圧電源端子209に向けて電流が流れて放電する。個別電極213及び制御素子のゲート207の出力に印加される電圧は、ダイオード4の順方向降下電圧に保たれるので、圧電素子212の個別電極213と共通電極214の電位差を、略消極電圧301の電圧とすることができる。
【0043】
圧電素子212の共通電極214に印加される電圧が降下している時は、制御素子のグランド電極208からダイオード5を通して、圧電素子212の個別電極213に向けて電流が流れて充電し、個別電極213及び制御素子のゲート207の出力に印加される電圧は、ダイオード5の順方向降下電圧にマイナスを付けた値に保たれるので、圧電素子212の個別電極213と共通電極214の電位差を、略消極電圧301の電圧とすることができる。
【0044】
以上説明したように、制御素子にもダイオード4、5にも、ダイオードの順方向降下電圧程度の逆バイアス電圧が印加されるだけなので制御素子の破壊は起こらない。制御素子の耐圧を超える消極電圧を圧電素子の電極間にそのまま印加して消極を行うことができる。
【0045】
上記の構成において、図4の場合、駆動電圧入力端子211はオープンになっている。あるいは、駆動電圧入力端子211をグランド216と短絡しても良い。
【0046】
上記の構成では、配線1と配線2をグランド216に短絡した場合について説明した。しかし、配線1と配線2をグランド216に短絡しなくても、配線1と配線2を短絡すれば、制御素子に耐圧を超える電位差は生じないので、同様の効果が得られる。但し、その場合は、グランド端子208とグランド216の間に電位差が生じる可能性があるので、駆動電圧入力端子211を通して回路に電流が流れるのを防ぐため駆動電圧入力端子211をグランド216に短絡しない方が良い。
【0047】
図5は、本発明を適用して圧電素子の分極を行う際の様子を説明した回路図である。
制御素子の高圧電源端子209と電気的に接続される配線1及び前記制御素子のグランド端子208と電気的に接続される配線2と、圧電素子212の共通電極214と電気的に接続される配線3との間に、配線3の側が負電圧となるように分極電圧302を印加する。圧電素子212の個別電極213よりも、共通電極214の電位を低くすることで、個別電極213から共通電極214の方向に電界を発生させ、分極の方向を揃える。他は消極の時と同じであるので、説明を省略する。
【0048】
上記の構成において、駆動電圧入力端子211はオープンになっている。あるいは、駆動電圧入力端子211をグランド216に短絡しても良い。
【0049】
上記の構成では、配線1と配線2をグランド216に短絡した場合について説明した。しかし、配線1と配線2をグランド216に短絡しなくても、配線1と配線2を短絡すれば、制御素子に耐圧を超える電位差は生じないので、同等の効果が得られる。但し、その場合は、グランド端子208とグランド216の間に電位差が生じる可能性があるので、駆動電圧入力端子211を通して回路に電流が流れるのを防ぐため駆動電圧入力端子211をグランド216に短絡しない方が良い。
【0050】
以上のような構成と手段を備えた装置により、制御素子をインクジェットヘッドに実装したままで、制御素子を破壊することなく、圧電素子の電極間に両極性の電圧を印加して消極を行ったり、圧電素子の電極間に制御素子の耐圧以上の電圧を印加して分極を行ったりする事が可能となる。
【0051】
図13と図14を用いて本発明による一実施例についてより具体的に説明する。スイッチ701と702はソリッドステートリレーやメカニカルリレーといった、外部信号により制御可能な切り替えスイッチであり、スイッチ701は、圧電素子の共通電極に繋がる配線3をコモンとして、駆動電圧210と、消極電圧301とを切り替えられるようになっている。図13では圧電素子の共通電極に繋がる配線3と、駆動電圧210がスイッチ701により接続されており、図14では圧電素子の共通電極に繋がる配線3と、消極電圧301がスイッチ701により接続されている。スイッチ702は、高圧電源端子209に繋がる配線1をコモンとして、高圧電源215と、グランド端子208に繋がる配線2とを切り替えられるようになっている。図13では高圧電源端子209に繋がる配線1と、高圧電源215がスイッチ701により接続されており、図14では高圧電源端子209に繋がる配線1と、グランド端子208に繋がる配線2がスイッチ701により接続されている。
【0052】
図13のようにスイッチを入れると図3に示した回路が成立し、図14のようにスイッチを入れると、図4及び図5に示した回路が成立する。通常は図13の状態でインクジェット装置を運転しており、分極を行いたい時に、図14の状態に切り替えて消極を行った後、共通電極を同一にする圧電素子全てを一斉に同じ分極電圧で分極を行ってから、図13の状態に戻して、装置の運転を開始する。
スイッチ701と702は連動していることが望ましく、連動していることによって、制御信号は1つだけで、運転状態と、消極状態及び再分極状態とを切り替えることができる。
何らかの理由で消極されたインクジェットヘッドを分極するだけであれば、本実施例において、消極の工程を省けばよい。
本実施例において、"装置の運転"を"ヘッドの吐出検査"に読み替えれば、インクジェットヘッドの製造装置を提供することができる。
【0053】
図13と図14を用いて本発明による他の実施例について説明する。スイッチ701と702はソリッドステートリレーやメカニカルリレーといった、外部信号により制御可能な切り替えスイッチであり、スイッチ701は、圧電素子の共通電極に繋がる配線3をコモンとして、駆動電圧210と、消極電圧301とを切り替えられるようになっている。図13では圧電素子の共通電極に繋がる配線3と、駆動電圧210がスイッチ701により接続されており、図14では圧電素子の共通電極に繋がる配線3と、消極電圧301がスイッチ701により接続されている。スイッチ702は、高圧電源端子209に繋がる配線1をコモンとして、高圧電源215と、グランド端子208に繋がる配線2とを切り替えられるようになっている。図13では高圧電源端子209に繋がる配線1と、高圧電源215がスイッチ701により接続されており、図14では高圧電源端子209に繋がる配線1と、グランド端子208に繋がる配線2がスイッチ701により接続されている。
【0054】
図13のようにスイッチを入れると図3に示した回路が成立し、図14のようにスイッチを入れると、図4及び図5に示した回路が成立する。通常は図13の状態でインクジェット装置を運転しており、分極補正を行いたい時に、図14の状態に切り替えて消極を行った後、図13の状態に戻して、制御素子により分極を行うノズルを選択しながら、そのノズルの圧電素子に最適な分極電圧で分極を行うことで圧電素子の駆動力を補正し、全てのノズルについて分極補正が終了したら装置の運転を開始する。この時、分極電圧は制御素子の耐圧以下の値とする。最適な分極電圧とは、液滴速度が遅目又は液滴重量が少な目のノズルに対しては大き目の電圧とし、液滴速度が速目又は液滴重量が多目のノズルに対しては小さ目の電圧とすることである。
【0055】
このような構成にする事で、装置で自動的に分極補正が行えるため、定期的に分極補正を行ったり、吐出液滴ばらつきをモニターしておき、ばらつきが一定以上になった時に分極補正を行ったりすることで、吐出液滴ばらつきの極めて少ないインクジェット装置を実現することができる。
【0056】
スイッチ701と702は連動していることが望ましく、連動していることによって、制御信号は1つだけで、運転状態及び再分極状態と、消極状態とを切り替えることができる。
スイッチ701と702をトグルスイッチなどの手動スイッチとし、手動操作で消極処理、分極処理、駆動の状態を切り替えても良い。
本実施例において、"装置の運転"を"ヘッドの吐出検査"に読み替えれば、インクジェットヘッドの製造装置を提供することができる。
【0057】
図2は、本発明によるさらに他の実施例を説明した斜視図である。101がインクジェットヘッド、102が消極又は分極処理時に使用する第1のヘッド接続基板、103がヘッド駆動時又は分極処理時に使用する第2のヘッド接続基板である。
【0058】
インクジェットヘッド101は、圧電素子やインク流路を内在したハウジング104から、制御素子24を実装したフィルム基板106が伸び出した形をしており、制御素子24の出力端子と接続された配線25は、ハウジング104に内在した図示しない圧電素子の個別電極と電気的に接続されており、図示しない圧電素子の共通電極は配線3と電気的に接続されている。
【0059】
制御素子24の高圧電源端子と電気的に接続される第1の配線1と、制御素子24のグランド端子と電気的に接続される第2の配線2と、図示しない圧電素子の共通電極と電気的に接続される第3の配線3は、フィルム基板106の端で端子群111と接続されている。
【0060】
第1のヘッド接続基板102は、前記インクジェットヘッド101側の端子群111と嵌合可能なコネクタ112を備え、ヘッド接続基板102上で配線パターン113によって、コネクタ112の、前記第1の配線1と前記第2の配線2に対応した端子が短絡されており、端子群111とコネクタ112を嵌合させた際に、前記第1の配線1と、前記第2の配線2が短絡するようになっている。
【0061】
第2のヘッド接続基板103は、前記インクジェットヘッド101側の端子群111と嵌合可能なコネクタ114を備え、ヘッド接続基板102上で、コネクタ114の、前記第1の配線1と前記第2の配線2に対応した端子は短絡されておらず、端子群111とコネクタ114を嵌合させた際に、前記第1の配線1と、前記第2の配線2が短絡しないようになっている。
【0062】
共通電極を同一にする圧電素子全てを一斉に同じ分極電圧で分極を行うときは、第1のヘッド接続基板102とヘッド101を接続して前記第1の配線1と第2の配線2を短絡して消極又は分極を行い、消極又は分極が終了したときに、第2のヘッド接続基板103にヘッド101を接続し直すことで前記短絡を解除してインクジェットヘッド101の駆動を行う。
【0063】
分極補正を行うときは、第1のヘッド接続基板102とヘッド101を接続して前記第1の配線1と第2の配線2を短絡して消極を行った後、第2のヘッド接続基板103にヘッド101を接続し直すことで前記短絡を解除して、制御素子により分極を行うノズルを選択しながら、そのノズルの圧電素子に最適な分極電圧で分極を行い、全てのノズルについて分極補正が終了したらインクジェットヘッド101の駆動を行う。
【0064】
ここで、順方向降下電圧について説明する。ダイオードに電流を流すには、カソードに対するアノードの電圧を一定以上にする必要がある。さらに、大きな電流を流すにはカソードに対するアノードの電圧を高くしなければならない。本発明の説明で用いている順方向降下電圧とは、カソードとアノードの電位差である。
【0065】
例えば図4の回路において、消極電圧301が図6(a)のような波形であった場合、個別電極213及び制御素子のゲート207の出力に印加される電圧は図6(b)のような波形になる。図6(a)の電圧が降下している時には、図6(b)の電圧はダイオード5の順方向降下電圧V5にマイナスを付けた電圧が現れ、図6(a)の電圧が上昇している時には、図6(b)の電圧はダイオード4の順方向降下電圧V4が現れる。
【0066】
消極電圧や分極電圧の単位時間当たりの電圧変化が大きいと、ダイオードに流す電流が大きくなるため、順方向降下電圧は大きくなり、個別電極213及び制御素子のゲート207の出力に印加される電圧は大きくなる。しかし、順方向降下電圧は、ダイオードの種類や電流にも因るが、コンマ数ボルトである。制御素子のゲート207はOFFさせているので、ゲートの出力に印加されても通常問題になる程の電圧では無い。しかしながら、制御素子の保護回路が十分でなく、ダイオードの順方向降下電圧が制御素子の逆極性に対する耐圧より大きい場合や、分極の際コンマ数ボルトの微小な電圧変動が問題になるような場合、本発明の他の実施例によれば、ダイオード4のカソードに負電圧、ダイオード5のアノードに正電圧が印加されるので、ダイオード4及び5の順方向降下電圧程度以下のバイアス電圧を印加することにより解決可能である。
【0067】
そのことについて図7を用いて説明する。ダイオード4及び5の順方向降下電圧を0.5Vとすると、ダイオード4のカソード側にバイアス電圧501として0.5Vを印加し、ダイオード5のアノード側にバイアス電圧502として0.5Vを印加する。すると、ダイオード4及び5のカソードに対するアノードの電圧は、バイアス電圧501及び502により十分な電流が流せるだけの電位差が付いているので、制御素子のゲート207の出力と圧電素子212の個別電極213に印加される電圧は略0Vとなり、逆極性電圧は印加されない。
【0068】
他の実施例について図8を用いて説明する。ダイオード4のカソードを、制御素子の高圧電源端子209とは別の端子503に接続し、ダイオード5のアノードを、制御素子のグランド端子208とは別の端子504に接続した制御素子を用い、ヘッド接続基板206で、端子503に接続された配線505にバイアス電圧507として0.5Vを印加し、端子504に接続された配線506にバイアス電圧508として0.5Vを印加する。このような構成にすることにより、図7の構成と比較してノズル毎に外付けダイオード及び電源を接続する必要が無くなり、安価に本発明を実施することができる。
【0069】
さらに他の実施例について図9を用いて説明する。制御素子の逆極性耐圧を0.4V、ダイオード4及び5の順方向降下電圧を0.5Vとすると、制御素子のゲート207の出力と圧電素子212の個別電極213に−0.5V〜+0.5Vの電圧が印加される可能性があり、制御素子が破壊する恐れがある。高電圧電源端子209に−0.25Vのバイアス電圧601を印加し、制御素子のグランド端子208に+0.25Vのバイアス電圧602を印加する。この場合、高圧電源端子209と制御素子のグランド端子208にはバイアス電圧である0.25Vの逆極性電圧が印加され、制御素子のゲート207の出力には、ダイオード4及び5の順方向降下電圧0.5Vとバイアス電圧0.25Vの差分である0.25Vの逆極性電圧が印加される。何れも制御素子の逆極性耐圧0.4V以内となり、制御素子の破壊は起こらない。圧電素子の個別電極213に印加される電圧も−0.25V〜+0.25Vと小さくすることができる。このような構成にすることで、ダイオード4及び5として制御素子の寄生ダイオードを利用することができる。
【0070】
尚、消極電圧又は分極電圧の単位時間当たりの電圧変化量が大きいと、圧電素子の充放電電流の値も大きくなる。本発明では、充放電電流がダイオード4及び5を流れる。制御素子内のダイオードを用いる場合に、ダイオード4及び5の耐電流が小さいときは、消極電圧又は分極電圧の単位時間当たりの電圧変化量を、ダイオード4及び5を流れる電流がダイオードの耐電流値を超えない程度に小さくする必要がある。さもないと、ダイオードが破壊され、結果として制御素子自体が破壊される。例えば、ダイオード4及び5の耐電流値をI、圧電素子の静電容量をC、消極電圧又は分極電圧の単位時間当たりの電圧変化量をdV/dtとすると、圧電素子の充放電の際ダイオード4及び5を流れる電流はC・dV/dtである。消極電圧又は分極電圧の単位時間当たりの電圧変化量dV/dtはI/Cより小さくする必要がある。
【0071】
ダイオード4及びダイオード5としては、制御素子の中に作り込むことも考えられる。しかし、制御素子の寄生ダイオードを利用することにより、ダイオードを追加で作り込む必要が無く好都合である。制御素子内のダイオードでは耐電流が不足する場合には、ダイオードを外付けしても良い。その場合、順方向降下電圧の小さいショットキーダイオードやゲルマニウムダイオード等を用いることが望ましい。
【0072】
バイアス電圧501、502、507、508、601、602を印加する方法は、所望の電圧を発生する電源に限ったものではなく、別のダイオードに電流を流し、そのダイオードの順方向電圧降下を利用したもの等であっても良い。
【0073】
圧電素子の駆動力をノズル毎に調節したい場合は、本発明により圧電素子の消極処理を行った後、再分極処理は、分極電圧が制御素子の耐圧以下となるように設計した上で、前記第2のヘッド接続基板103に接続するか、図13のようにスイッチを切り替える等して、制御素子で再分極を行う圧電素子を選択しながら各圧電素子に最適の分極電圧を印加すると良い。分極電圧が制御素子の耐圧以下となるようにする方法としては、圧電素子の電極間隔を近付けることや、分極時に圧電素子を過熱することや、駆動電圧が制御素子の耐圧よりも相当低くて良いようにインクジェットヘッドを設計する等して、分極電圧が低くても良いようにすることが考えられる。
【0074】
本発明は、圧電素子の消極又は分極を行う場合に限らず、制御素子を実装した状態で、加減圧素子に通常駆動を行うよりも高い電圧を印加したり、逆極性の電圧を印加したりする際には適用可能である。
【0075】
本発明によれば吐出特性の揃ったインクジェットヘッドを安価に装置を大型化すること無く提供することが可能であり、吐出液滴のばらつきが小さいことが要求される高速プリンタ、フラットパネルディスプレイの製造装置、薄膜塗工装置などといった用途にも適用できる。
【0076】
本発明に係るインクジェット装置には、少なくともインクジェットヘッドを搭載した様々な形態のインクジェット装置が含まれるものとする。
【0077】
以上、発明を実施するための形態について説明を行ったが、本発明は上述の実施の形態のみに限定されるものではない。本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1…高圧電源端子に繋がる配線、2…グランド端子に繋がる配線、3…共通電極に繋がる配線、4…ダイオード、5…ダイオード、6…ダイオード、7…ダイオード、11…インク流路形成部材、12…インク圧力室、13…ノズルプレート、14…ノズル、15…リストリクタ、16…共通インク流路、17…圧電素子、18…圧電素子支持基板、19…個別電極、20…共通電極、21…弾性膜、22…インク滴、23…圧電素子、24…制御素子、26…駆動電圧入力端子に繋がる配線、27…圧力室の仕切り、101…インクジェットヘッド、102…消極又は分極処理時に使用するヘッド接続基板、103…ヘッド駆動時に使用するヘッド接続基板、104…ハウジング、106…フィルム基板、111…端子、112…コネクタ、113…配線パターン、114…コネクタ、205…インクジェットヘッド、206…ヘッド接続基板、207…制御素子のゲート、208…グランド端子、209…高圧電源端子、210…駆動電圧、212…圧電素子、213…個別電極、214…共通電極、215…高圧電源、216…グランド、301…消極電圧、302…分極電圧、501…バイアス電圧、502…バイアス電圧、503…端子、504…端子、505…配線、506…配線、507…バイアス電圧、508…バイアス電圧、601…バイアス電圧、602…バイアス電圧、701…スイッチ、702…スイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、加減圧素子としての圧電素子の消極処理や分極処理に好適なインクジェットヘッドを製造するためのインクジェットヘッド製造装置、インクジェットヘッド製造方法、及びヘッド接続基板とインクジェットヘッドを搭載したインクジェット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドに用いる加減圧素子として、電圧を印加すると歪みを生じる圧電素子がよく知られている。圧電素子は、焼成後、電極間に通常駆動を行うよりも高い電圧を印加して分極処理を行うことにより、特定方向に大きな圧電特性を示すようになり、アクチュエータとして用いることができる。
【0003】
従来、圧電素子の分極を行った後にインクジェットヘッドが組み立てられる。しかし、制御用ICを実装したフィルム基板を圧電素子に接続する際、半田付けや異方性導電膜等を用いるので、フィルム基板と圧電素子の接続時に加熱が行われる。圧電素子がキュリー温度に達した場合、圧電特性が劣化してしまうという問題があった。このような問題に対し、キュリー温度の高い圧電素子を用いて、キュリー温度より低い温度で制御用ICを実装したフィルム基板を圧電素子に接続する方法がある(例えば、特許文献1)。しかし、近年、鉛を含有しない半田を使用する必要があり、接続に必要な温度が高くなっている。また、接着強度の向上、ノズル面や流路の表面処理のために高温で加熱処理を行う要望もある。所望の処理温度よりもキュリー温度の高い圧電素子を選択しようとすると圧電素子の選択範囲が狭まるという問題があった(例えば、非特許文献1、2)。
【0004】
又、圧電素子を櫛歯状に切り分ける際や、ヘッドを組み立てた際に、電気的な要因、加工精度、組立て精度等の要因により、ノズル毎に駆動力のばらつきが生じるという問題があった。そのような問題に対し、圧電素子に一旦消極処理を行い、ノズル毎個別に適切な強度で再分極処理を行う方法(以下、分極補正と呼ぶ)がある(例えば、特許文献2、4)。
【0005】
圧電素子を消極する一つの方法として、圧電素子をキュリー温度以上にする方法がある(例えば、特許文献2、非特許文献3)。この方法の場合、インクジェットヘッドを組み立てた後に数百度という高温にさらすことになる。接着剤の強度低下や部材の劣化等を招くという問題がある。圧電素子を消極する他の方法として、圧電素子の電極間に交流電圧を印加する方法がある。制御素子の逆極性に対する耐圧は一般的に低いため、この方法を用いると制御素子を破壊してしまうという問題がある。圧電素子を分極する方法として、圧電素子の電極間に、一定以上の電圧を印加する方法が一般的である(例えば、特許文献2)。この方法の場合、その電圧は通常駆動するのに必要な電圧よりも高いため、分極を行うためだけに駆動電圧よりもずっと耐圧の高い制御素子を選ばなければならない。よって、制御素子の選択範囲が狭まる上にコストも上がるという問題があった。
【0006】
そのような問題に対し、図10に示したように、インク加減圧素子に駆動信号を印加するか否かを受け取ったデータにより制御を行う制御素子のグランド端子と電気的に接続される配線と、加減圧素子の共通電極と電気的に接続される配線の間に分極電圧を印加して、前記制御素子のグランド端子と電気的に接続される配線から前記加減圧素子の個別電極に電流が流れるように設けたダイオードを通れる電流で圧電素子を充電することで、制御素子に分極電圧を印加しないようにし、制御素子の破壊を防ぎながら、共通電極を同一にする圧電素子全てを一斉に同じ分極電圧で分極処理する方法が開示されている(例えば、特許文献3)。
【0007】
しかし、特許文献3にあるように直流電圧を印加して一定の分極を行うには問題が無いものの、分極の度合いを精密に制御する際にはパルス状の電圧を印加する必要がある。その分極電圧の電圧変化が早い場合、例えば図11(a)のような分極電圧波形を圧電素子の共通電極に印加した場合、圧電素子の個別電極には図11(b)のような電圧波形が現れる。これは、図10に示した公知の構成では放電の経路が無いために、個別電極の電圧低下は圧電素子の自然放電に頼っているためである。
【0008】
分極電圧の電圧変化が早い程、図11(b)の最高電圧Vpは分極電圧の最高電圧Vppに近付いて高くなるが、VccにダイオードD1の順方向降下電圧を足した値よりは大きくならないため、制御素子の破壊に至る危険性は小さい。しかしながら、制御素子が破壊される確率は上がるうえ、分極は、圧電素子の共通電極と個別電極の電位差により生じた電界で行われるため、図10に示した公知の構成では、図11(b)の最高電圧Vpの値によっては、分極波形を印加し終わった後にもある程度分極が進むため、圧電素子の自然放電を考慮に入れて分極を行わなければならず、精密な分極が難しいという問題があった。又、自然放電には時間がかかるため、生産性が悪いという問題もあった。
【0009】
さらに、圧電素子の消極を行おうとした場合、圧電素子の電極に交流電圧を印加する等して、圧電素子の共通電極と個別電極の間に発生する電界の向きを逐次変化させる必要がある。図10に示した公知の構成では、放電の経路が無いために、消極電圧の電圧変化が早い場合、例えば図12(a)のような消極電圧波形を圧電素子の共通電極に印加した場合、圧電素子の個別電極には図12(b)のような電圧波形が現れ、共通電極と個別電極の間に発生する電界の向きが変化しないため消極を行うことができない。
【0010】
近年、産業用途にインクジェットヘッドが利用されるようになり、高分子有機ELディスプレイの製造装置等、インクジェットヘッドのノズル毎の吐出液滴重量ばらつきを極めて少なくすることが求められるようになってきた。また、プリンタとしても、プリント速度はどんどん高速化の一途を辿っており、インクジェットヘッドのノズル毎の吐出液滴速度ばらつきを極めて少なくすることが求められている。これら吐出液滴のばらつきを抑えるには、先に述べた分極補正が有効な手段の一つである。しかし、分極補正を行って出荷しても、経時変化や環境の変化などによって吐出液滴のばらつきが出るという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−55045号公報
【特許文献2】特開2001−277525号公報
【特許文献3】特許第3879721号公報
【特許文献4】特開2006−315326号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】「日経エレクトロニクス」日経BP社出版、1995年5月8日発行(No.635)、P.95
【非特許文献2】(株)富士セラミックス、"圧電セラミックスの材料特性"材料特性表、[2007年12月検索]インターネット<URL:http://www.fujicera.co.jp/product/j/01/mat.table_j.pdf>
【非特許文献3】(株)富士セラミックス、"圧電セラミックテクニカルハンドブック"P.52、[2007年12月検索]インターネット<URL:http://www.fujicera.co.jp/product/j/01/10.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記のような問題を鑑みてなされたものであり、制御素子をインクジェットヘッドに実装したままで、加減圧素子の消極や分極を行える装置を提供することを課題とする。加えて、インクジェットヘッドをインクジェット装置に搭載した状態で、インクジェット装置が加減圧素子の消極や分極や駆動を行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するため、本発明に係るインクジェットヘッド製造装置は、インク圧力室と、前記インク圧力室内のインクに対して加減圧を行う加減圧素子と、前記加減圧素子に対する駆動信号を制御する制御素子が実装された基板を備えたインクジェットヘッドを製造するためのインクジェットヘッド製造装置であって、前記基板上で、前記制御素子の高圧電源端子と電気的に接続される第1の配線と、前記制御素子のグランド端子と電気的に接続される第2の配線と、前記加減圧素子の共通電極と電気的に接続される第3の配線が互いに短絡しておらず、前記制御素子のゲートから前記加減圧素子の個別電極までの経路上に、前記加減圧素子の個別電極から前記第1の配線に電流が流れるように第1のダイオードと、前記第2の配線から前記加減圧素子の個別電極に電流が流れるように第2のダイオードを設け、前記加減圧素子の消極又は分極を行うときに前記第1の配線と第2の配線を短絡する手段を有することを特徴とする。
【0015】
上記のインクジェットヘッド製造装置においては、前記加減圧素子の消極又は分極を行うときに、短絡して同電位となっている前記第1の配線及び第2の配線と、前記第1の配線及び第2の配線とは分離されている前記第3の配線との間に消極電圧又は分極電圧を印加して、前記加減圧素子の消極又は分極を行うように構成することができる。
【0016】
上記のインクジェットヘッド製造装置においては、前記消極又は分極が終了した後に前記短絡を解除させる手段を有するように構成することができる。
【0017】
上記のインクジェットヘッド製造装置においては、前記第1のダイオードと第2のダイオードが前記制御素子の寄生ダイオードであるように構成することができる。
【0018】
上記のインクジェットヘッド製造装置においては、前記加減圧素子の消極又は分極を行うときに前記第1の配線と第2の配線を短絡し、消極又は分極が終了したときに前記短絡を解除する手段がスイッチであるように構成することができる。
【0019】
上記のインクジェットヘッド製造装置においては、前記インクジェットヘッドが前記第1及び第2の配線と電気的に接続されたインクジェットヘッド側の端子を有していて、ヘッド接続基板側には、前記インクジェットヘッド側の端子と嵌合可能な端子を備え、前記第1の配線が電気的に接続された前記インクジェットヘッド側の端子が対応する、ヘッド接続基板側の第1の端子と、前記第2の配線が電気的に接続された前記インクジェットヘッド側の端子が対応する、ヘッド接続基板側の第2の端子が、ヘッド接続基板上で短絡するように配線されている、第1のヘッド接続基板と、前記インクジェットヘッド側の端子と嵌合可能な端子を備え、前記第1の配線が電気的に接続された前記インクジェットヘッド側の端子が対応する、ヘッド接続基板側の第3の端子と、前記第2の配線が電気的に接続された前記インクジェットヘッド側の端子が対応する、ヘッド接続基板側の第4の端子がヘッド接続基板上で短絡されていない、第2のヘッド接続基板とを有するように構成することができる。
【0020】
上記のインクジェットヘッド製造装置においては、出荷後でも、消極を行った後ノズル毎に再分極を行うように構成することができる。
【0021】
上記のインクジェットヘッド製造装置においては、前記第1のダイオードのカソードに負電圧、前記第2のダイオードのアノードに正電圧がかかるように、前記第1及び第2のダイオードに順方向降下電圧程度以下のバイアス電圧を印加するように構成することができる。
【0022】
上記のインクジェットヘッド製造装置においては、前記消極電圧又は分極電圧の単位時間当たりの電圧変化量を、前記第1及び第2のダイオードを流れる電流が、各ダイオードの耐電流値を超えない程度に小さくするように構成することができる。
【0023】
また、上記の課題を解決するため、本発明に係るインクジェット装置は、インク圧力室と、前記インク圧力室内のインクに対して加減圧を行う加減圧素子と、前記加減圧素子に対する駆動信号を制御する制御素子が実装された支持基板を備えたインクジェットヘッド、及び前記インクジェットヘッドの前記加減圧素子に対する駆動、分極又は消極を行うためのヘッド接続基板を搭載したインクジェット装置であって、前記インクジェットヘッドが、前記支持基板上で、前記制御素子の高圧電源端子と電気的に接続される第1の配線と、前記制御素子のグランド端子と電気的に接続される第2の配線と、前記加減圧素子の共通電極と電気的に接続される第3の配線が互いに短絡しておらず、前記制御素子のゲートから前記加減圧素子の個別電極までの経路上に、前記加減圧素子の個別電極から前記第1の配線に電流が流れるように第1のダイオードと、前記第2の配線から前記加減圧素子の個別電極に電流が流れるように第2のダイオードとを有すると共に、前記ヘッド接続基板が、前記加減圧素子の消極又は分極を行うときに前記第1の配線と第2の配線を短絡する手段を有することを特徴とする。
【0024】
また、上記の課題を解決するため、本発明に係るインクジェットヘッド製造方法は、インク圧力室と、前記インク圧力室内のインクに対して加減圧を行う加減圧素子と、前記加減圧素子に対する駆動信号を制御する制御素子が実装された基板を備えたインクジェットヘッドを製造するためのインクジェットヘッド製造方法であって、前記基板上で前記制御素子の高圧電源端子と電気的に接続される第1の配線と、前記制御素子のグランド端子と電気的に接続される第2の配線と、前記加減圧素子の共通電極と電気的に接続される第3の配線とが互いに短絡しておらず、前記制御素子のゲートから前記加減圧素子の個別電極までの経路上に、前記加減圧素子の個別電極から前記第1の配線へ電流が流れるように第1のダイオードと、前記第2の配線から前記加減圧素子の個別電極へ電流が流れるように第2のダイオードを設け、前記加減圧素子の消極又は分極を行う際に前記第1の配線と第2の配線を短絡する短絡工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、制御素子をインクジェットヘッドに実装したままで、制御素子を破壊することなく、圧電素子の電極間に両極性の電圧を印加して消極を行ったり、圧電素子の電極間に制御素子の耐圧以上の電圧を印加して分極を行ったりする装置が提供される。さらに本発明によれば、必要に応じてインクジェット装置が、消極を行った後ノズル毎に適切な強度で再分極を行うので、常にインクジェットヘッドのノズル毎の吐出液滴ばらつきを抑えることが可能な装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例を適用したインクジェットヘッドの一部斜視図である。
【図2】本発明の実施例に係るインクジェットヘッドとヘッド接続基板の接続を説明するための斜視図である。
【図3】本発明の実施例に係るインクジェットヘッドの駆動時の様子を説明した回路図である。
【図4】本発明の実施例に係る圧電素子の消極を行う際の様子を説明した回路図である。
【図5】本発明の実施例に係る圧電素子の分極を行う際の様子を説明した回路図である。
【図6】ダイオードの順方向降下電圧を示した説明図である。
【図7】本発明の他の実施例に係る回路図である。
【図8】本発明の他の実施例に係る回路図である。
【図9】本発明の他の実施例に係る回路図である。
【図10】従来例の回路図である。
【図11】従来例の問題点を示した説明図である。
【図12】従来例の問題点を示した説明図である。
【図13】本発明の他の実施例に係る回路図である。
【図14】本発明の他の実施例に係る回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明の実施例を適用するインクジェットヘッドの構成を示す一部斜視図である。
【0028】
インク流路形成部材11に、インク圧力室12が形成され、インク圧力室12の一端はノズルプレート13に開けられたノズル14と連通している。インク圧力室12の他端は、インクに加わった圧力が逃げるのを抑えるためにインク流路が絞ってある箇所であるリストリクタ15を経て、共通インク流路16に連通している。
【0029】
インクを吐出させる圧力を発生させる手段は、積層構造の圧電素子17で構成されている。圧電素子17は積層方向に設けた圧電素子支持基板18に固定されており、d33方向の圧電伸縮を利用して圧力を発生させている。よって、圧電素子17の正極に設けられた個別電極19に印加する電圧が下がって圧電素子17が放電されれば減圧、圧電素子17の個別電極19に印加する電圧が上がって圧電素子17が充電されれば加圧という動作をする。圧電素子17の個別電極19は圧電素子支持基板18の片面に配され、制御素子24の出力端子と超音波溶接により接続された配線25と半田付けにより接続されており、制御素子24の駆動電圧入力端子と超音波溶接により接続された配線26は、駆動電圧発生回路(図示せず)の出力に接続されている。圧電素子17の負電極に設けられた共通電極20は、各圧電素子17の負電極に共通した電極となっており、圧電素子支持基板18のもう一方の面に配され、駆動電圧発生回路(図示せず)のグランドに接続されている。圧電素子支持基板18とインク流路形成部材11とは、互いにハウジング(図示せず)に固定されており、相対的に殆ど動かないようになっている。
【0030】
圧電素子17の圧電素子支持基板18に固定されていない方の面は、弾性膜21に固定されている。弾性膜21はインク圧力室12の壁の一部を形成しており、圧電素子17の伸縮で弾性板21が変形すると、圧力室12の体積が変化するような構造となっている。
【0031】
配線26と接続された圧電素子17の隣には、配線26と接続されていない圧電素子23が設けてあり、圧電素子23の圧電素子支持基板18に固定されていない方の面は、インク圧力室12の仕切り27に固定され、ヘッドの剛性を高めるのに役立っている。
【0032】
本発明を適用したインクジェットヘッドは、以上のような構造と同じ部材が1/150インチ間隔で1列に複数個並んで構成されている。
【0033】
次に、インクジェットヘッドのインク滴吐出原理について説明する。
【0034】
圧電素子17の個別電極19に接続されている制御素子24により、演算装置(図示せず)から送られてくるデータに従って、インク滴を吐出させるノズルの圧電素子の個別電極19にのみ、駆動電圧が供給されている配線26を接続し、個別電極19に印加される電圧により、圧電素子17の充電及び放電が行われるようにする。インク滴を吐出させないノズルの圧電素子17は、自然放電しないように個別電極19にDC電圧を印加して、圧電素子17を充電して自然長よりも積層方向に延びた状態として、弾性膜21をインク圧力室12に押し込んだ状態で略停止している。個別電極19に印加している電圧が低下すると、放電が行われて積層方向に縮む。これにより弾性膜21が引っ張られて圧力室12が減圧し、共通インク流路16からリストリクタ15を通ってインクがインク圧力室12に供給される。
【0035】
続いて、正電極19に印加している電圧が上昇すると、圧電素子が充電され、積層方向に伸びて、弾性膜21をインク圧力室12に押し込む。これによりインク圧力室12のインクが加圧され、インク圧力室12に連通したノズル14よりインクが押し出され、インク滴22として吐出する。インク圧力室12が減圧過程では、リストリクタ15の流路抵抗よりもノズル14に働く表面張力の方が勝るように設計されているため、ノズル14から空気を引き込むのではなく、インクがインク圧力室12に供給される。インク圧力室12の加圧過程では、ノズル14に働く表面張力よりもリストリクタ15の流路抵抗の方が勝るように設計されているため、リストリクタ15から共通インク流路16にインクが戻って行くのではなく、ノズル14からインク滴が吐出する。
【0036】
図3は、このインクジェットヘッドの駆動時の様子を説明した回路図である。
【0037】
破線で囲まれた205がインクジェットヘッド、一点鎖線で囲まれた206がヘッド接続基板である。ダイオード4乃至7は、半導体製造時に意図しなくても生じる寄生ダイオードである。制御素子のゲート207に制御素子のグランド端子208に印加される電圧からダイオード5又は7の順方向降下電圧を引いた電圧Vdより低い電圧が印加されると、制御素子のグランド端子208から電流が流れ込んで電圧Vd以下にならないようにし、制御素子のゲート207に制御素子の高圧電源端子209に印加される電圧にダイオード4又は6の順方向降下電圧を足した電圧Vuより高い電圧が印加されると、制御素子の高圧電源端子209に電流が流れ出て電圧Vu以上にならないようにし、ゲート207が破損するのを防止する保護回路の役割も果たしている。
【0038】
駆動電圧210が駆動電圧入力端子211から制御素子のゲート207に入力されており、ゲート207がONすると、ゲート207に接続された圧電素子212の個別電極213に駆動電圧210がゲート207を通して印加され、充放電が行われる。ゲート207がOFFしている間は圧電素子212の個別電極213には何も印加されない。制御素子のゲート207として、トランスミッションゲートと呼ばれるタイプのゲートを図示しているが、どのようなゲートであっても本発明は適用可能である。
【0039】
制御素子の高圧電源端子209には高圧電源215が供給されており、この電圧は駆動電圧210の電圧以上に設定されている。制御素子のグランド端子208はグランド216に短絡してある。
【0040】
制御素子の高圧電源端子209と電気的に接続される配線1と、前記制御素子のグランド端子208と電気的に接続される配線2と、圧電素子212の共通電極214と電気的に接続される配線3は互いに短絡されていない。絶縁されている場合に限らず、コンデンサや抵抗等で繋がっていても本発明は適用可能である。
【0041】
図4は、本発明を適用して圧電素子の消極を行う際の様子を説明した回路図である。制御素子のゲート207はOFFの状態にしておく。高圧電源端子209への電源215の供給も行わない。制御素子の高圧電源端子209と電気的に接続される配線1と、前記制御素子のグランド端子208と電気的に接続される配線2とを短絡してグランド216に接続してある。配線1及び配線2と、圧電素子212の共通電極214と電気的に接続される配線3との間に消極電圧301を印加する。なお、消極電圧は交流であり、圧電素子212の個別電極213と共通電極214の間に発生する電界の向きを逐次変化させることにより分極を解除する。
【0042】
圧電素子212の共通電極214に印加される電圧が上昇している時は、圧電素子212の個別電極213からダイオード4を通して、高圧電源端子209に向けて電流が流れて放電する。個別電極213及び制御素子のゲート207の出力に印加される電圧は、ダイオード4の順方向降下電圧に保たれるので、圧電素子212の個別電極213と共通電極214の電位差を、略消極電圧301の電圧とすることができる。
【0043】
圧電素子212の共通電極214に印加される電圧が降下している時は、制御素子のグランド電極208からダイオード5を通して、圧電素子212の個別電極213に向けて電流が流れて充電し、個別電極213及び制御素子のゲート207の出力に印加される電圧は、ダイオード5の順方向降下電圧にマイナスを付けた値に保たれるので、圧電素子212の個別電極213と共通電極214の電位差を、略消極電圧301の電圧とすることができる。
【0044】
以上説明したように、制御素子にもダイオード4、5にも、ダイオードの順方向降下電圧程度の逆バイアス電圧が印加されるだけなので制御素子の破壊は起こらない。制御素子の耐圧を超える消極電圧を圧電素子の電極間にそのまま印加して消極を行うことができる。
【0045】
上記の構成において、図4の場合、駆動電圧入力端子211はオープンになっている。あるいは、駆動電圧入力端子211をグランド216と短絡しても良い。
【0046】
上記の構成では、配線1と配線2をグランド216に短絡した場合について説明した。しかし、配線1と配線2をグランド216に短絡しなくても、配線1と配線2を短絡すれば、制御素子に耐圧を超える電位差は生じないので、同様の効果が得られる。但し、その場合は、グランド端子208とグランド216の間に電位差が生じる可能性があるので、駆動電圧入力端子211を通して回路に電流が流れるのを防ぐため駆動電圧入力端子211をグランド216に短絡しない方が良い。
【0047】
図5は、本発明を適用して圧電素子の分極を行う際の様子を説明した回路図である。
制御素子の高圧電源端子209と電気的に接続される配線1及び前記制御素子のグランド端子208と電気的に接続される配線2と、圧電素子212の共通電極214と電気的に接続される配線3との間に、配線3の側が負電圧となるように分極電圧302を印加する。圧電素子212の個別電極213よりも、共通電極214の電位を低くすることで、個別電極213から共通電極214の方向に電界を発生させ、分極の方向を揃える。他は消極の時と同じであるので、説明を省略する。
【0048】
上記の構成において、駆動電圧入力端子211はオープンになっている。あるいは、駆動電圧入力端子211をグランド216に短絡しても良い。
【0049】
上記の構成では、配線1と配線2をグランド216に短絡した場合について説明した。しかし、配線1と配線2をグランド216に短絡しなくても、配線1と配線2を短絡すれば、制御素子に耐圧を超える電位差は生じないので、同等の効果が得られる。但し、その場合は、グランド端子208とグランド216の間に電位差が生じる可能性があるので、駆動電圧入力端子211を通して回路に電流が流れるのを防ぐため駆動電圧入力端子211をグランド216に短絡しない方が良い。
【0050】
以上のような構成と手段を備えた装置により、制御素子をインクジェットヘッドに実装したままで、制御素子を破壊することなく、圧電素子の電極間に両極性の電圧を印加して消極を行ったり、圧電素子の電極間に制御素子の耐圧以上の電圧を印加して分極を行ったりする事が可能となる。
【0051】
図13と図14を用いて本発明による一実施例についてより具体的に説明する。スイッチ701と702はソリッドステートリレーやメカニカルリレーといった、外部信号により制御可能な切り替えスイッチであり、スイッチ701は、圧電素子の共通電極に繋がる配線3をコモンとして、駆動電圧210と、消極電圧301とを切り替えられるようになっている。図13では圧電素子の共通電極に繋がる配線3と、駆動電圧210がスイッチ701により接続されており、図14では圧電素子の共通電極に繋がる配線3と、消極電圧301がスイッチ701により接続されている。スイッチ702は、高圧電源端子209に繋がる配線1をコモンとして、高圧電源215と、グランド端子208に繋がる配線2とを切り替えられるようになっている。図13では高圧電源端子209に繋がる配線1と、高圧電源215がスイッチ701により接続されており、図14では高圧電源端子209に繋がる配線1と、グランド端子208に繋がる配線2がスイッチ701により接続されている。
【0052】
図13のようにスイッチを入れると図3に示した回路が成立し、図14のようにスイッチを入れると、図4及び図5に示した回路が成立する。通常は図13の状態でインクジェット装置を運転しており、分極を行いたい時に、図14の状態に切り替えて消極を行った後、共通電極を同一にする圧電素子全てを一斉に同じ分極電圧で分極を行ってから、図13の状態に戻して、装置の運転を開始する。
スイッチ701と702は連動していることが望ましく、連動していることによって、制御信号は1つだけで、運転状態と、消極状態及び再分極状態とを切り替えることができる。
何らかの理由で消極されたインクジェットヘッドを分極するだけであれば、本実施例において、消極の工程を省けばよい。
本実施例において、"装置の運転"を"ヘッドの吐出検査"に読み替えれば、インクジェットヘッドの製造装置を提供することができる。
【0053】
図13と図14を用いて本発明による他の実施例について説明する。スイッチ701と702はソリッドステートリレーやメカニカルリレーといった、外部信号により制御可能な切り替えスイッチであり、スイッチ701は、圧電素子の共通電極に繋がる配線3をコモンとして、駆動電圧210と、消極電圧301とを切り替えられるようになっている。図13では圧電素子の共通電極に繋がる配線3と、駆動電圧210がスイッチ701により接続されており、図14では圧電素子の共通電極に繋がる配線3と、消極電圧301がスイッチ701により接続されている。スイッチ702は、高圧電源端子209に繋がる配線1をコモンとして、高圧電源215と、グランド端子208に繋がる配線2とを切り替えられるようになっている。図13では高圧電源端子209に繋がる配線1と、高圧電源215がスイッチ701により接続されており、図14では高圧電源端子209に繋がる配線1と、グランド端子208に繋がる配線2がスイッチ701により接続されている。
【0054】
図13のようにスイッチを入れると図3に示した回路が成立し、図14のようにスイッチを入れると、図4及び図5に示した回路が成立する。通常は図13の状態でインクジェット装置を運転しており、分極補正を行いたい時に、図14の状態に切り替えて消極を行った後、図13の状態に戻して、制御素子により分極を行うノズルを選択しながら、そのノズルの圧電素子に最適な分極電圧で分極を行うことで圧電素子の駆動力を補正し、全てのノズルについて分極補正が終了したら装置の運転を開始する。この時、分極電圧は制御素子の耐圧以下の値とする。最適な分極電圧とは、液滴速度が遅目又は液滴重量が少な目のノズルに対しては大き目の電圧とし、液滴速度が速目又は液滴重量が多目のノズルに対しては小さ目の電圧とすることである。
【0055】
このような構成にする事で、装置で自動的に分極補正が行えるため、定期的に分極補正を行ったり、吐出液滴ばらつきをモニターしておき、ばらつきが一定以上になった時に分極補正を行ったりすることで、吐出液滴ばらつきの極めて少ないインクジェット装置を実現することができる。
【0056】
スイッチ701と702は連動していることが望ましく、連動していることによって、制御信号は1つだけで、運転状態及び再分極状態と、消極状態とを切り替えることができる。
スイッチ701と702をトグルスイッチなどの手動スイッチとし、手動操作で消極処理、分極処理、駆動の状態を切り替えても良い。
本実施例において、"装置の運転"を"ヘッドの吐出検査"に読み替えれば、インクジェットヘッドの製造装置を提供することができる。
【0057】
図2は、本発明によるさらに他の実施例を説明した斜視図である。101がインクジェットヘッド、102が消極又は分極処理時に使用する第1のヘッド接続基板、103がヘッド駆動時又は分極処理時に使用する第2のヘッド接続基板である。
【0058】
インクジェットヘッド101は、圧電素子やインク流路を内在したハウジング104から、制御素子24を実装したフィルム基板106が伸び出した形をしており、制御素子24の出力端子と接続された配線25は、ハウジング104に内在した図示しない圧電素子の個別電極と電気的に接続されており、図示しない圧電素子の共通電極は配線3と電気的に接続されている。
【0059】
制御素子24の高圧電源端子と電気的に接続される第1の配線1と、制御素子24のグランド端子と電気的に接続される第2の配線2と、図示しない圧電素子の共通電極と電気的に接続される第3の配線3は、フィルム基板106の端で端子群111と接続されている。
【0060】
第1のヘッド接続基板102は、前記インクジェットヘッド101側の端子群111と嵌合可能なコネクタ112を備え、ヘッド接続基板102上で配線パターン113によって、コネクタ112の、前記第1の配線1と前記第2の配線2に対応した端子が短絡されており、端子群111とコネクタ112を嵌合させた際に、前記第1の配線1と、前記第2の配線2が短絡するようになっている。
【0061】
第2のヘッド接続基板103は、前記インクジェットヘッド101側の端子群111と嵌合可能なコネクタ114を備え、ヘッド接続基板102上で、コネクタ114の、前記第1の配線1と前記第2の配線2に対応した端子は短絡されておらず、端子群111とコネクタ114を嵌合させた際に、前記第1の配線1と、前記第2の配線2が短絡しないようになっている。
【0062】
共通電極を同一にする圧電素子全てを一斉に同じ分極電圧で分極を行うときは、第1のヘッド接続基板102とヘッド101を接続して前記第1の配線1と第2の配線2を短絡して消極又は分極を行い、消極又は分極が終了したときに、第2のヘッド接続基板103にヘッド101を接続し直すことで前記短絡を解除してインクジェットヘッド101の駆動を行う。
【0063】
分極補正を行うときは、第1のヘッド接続基板102とヘッド101を接続して前記第1の配線1と第2の配線2を短絡して消極を行った後、第2のヘッド接続基板103にヘッド101を接続し直すことで前記短絡を解除して、制御素子により分極を行うノズルを選択しながら、そのノズルの圧電素子に最適な分極電圧で分極を行い、全てのノズルについて分極補正が終了したらインクジェットヘッド101の駆動を行う。
【0064】
ここで、順方向降下電圧について説明する。ダイオードに電流を流すには、カソードに対するアノードの電圧を一定以上にする必要がある。さらに、大きな電流を流すにはカソードに対するアノードの電圧を高くしなければならない。本発明の説明で用いている順方向降下電圧とは、カソードとアノードの電位差である。
【0065】
例えば図4の回路において、消極電圧301が図6(a)のような波形であった場合、個別電極213及び制御素子のゲート207の出力に印加される電圧は図6(b)のような波形になる。図6(a)の電圧が降下している時には、図6(b)の電圧はダイオード5の順方向降下電圧V5にマイナスを付けた電圧が現れ、図6(a)の電圧が上昇している時には、図6(b)の電圧はダイオード4の順方向降下電圧V4が現れる。
【0066】
消極電圧や分極電圧の単位時間当たりの電圧変化が大きいと、ダイオードに流す電流が大きくなるため、順方向降下電圧は大きくなり、個別電極213及び制御素子のゲート207の出力に印加される電圧は大きくなる。しかし、順方向降下電圧は、ダイオードの種類や電流にも因るが、コンマ数ボルトである。制御素子のゲート207はOFFさせているので、ゲートの出力に印加されても通常問題になる程の電圧では無い。しかしながら、制御素子の保護回路が十分でなく、ダイオードの順方向降下電圧が制御素子の逆極性に対する耐圧より大きい場合や、分極の際コンマ数ボルトの微小な電圧変動が問題になるような場合、本発明の他の実施例によれば、ダイオード4のカソードに負電圧、ダイオード5のアノードに正電圧が印加されるので、ダイオード4及び5の順方向降下電圧程度以下のバイアス電圧を印加することにより解決可能である。
【0067】
そのことについて図7を用いて説明する。ダイオード4及び5の順方向降下電圧を0.5Vとすると、ダイオード4のカソード側にバイアス電圧501として0.5Vを印加し、ダイオード5のアノード側にバイアス電圧502として0.5Vを印加する。すると、ダイオード4及び5のカソードに対するアノードの電圧は、バイアス電圧501及び502により十分な電流が流せるだけの電位差が付いているので、制御素子のゲート207の出力と圧電素子212の個別電極213に印加される電圧は略0Vとなり、逆極性電圧は印加されない。
【0068】
他の実施例について図8を用いて説明する。ダイオード4のカソードを、制御素子の高圧電源端子209とは別の端子503に接続し、ダイオード5のアノードを、制御素子のグランド端子208とは別の端子504に接続した制御素子を用い、ヘッド接続基板206で、端子503に接続された配線505にバイアス電圧507として0.5Vを印加し、端子504に接続された配線506にバイアス電圧508として0.5Vを印加する。このような構成にすることにより、図7の構成と比較してノズル毎に外付けダイオード及び電源を接続する必要が無くなり、安価に本発明を実施することができる。
【0069】
さらに他の実施例について図9を用いて説明する。制御素子の逆極性耐圧を0.4V、ダイオード4及び5の順方向降下電圧を0.5Vとすると、制御素子のゲート207の出力と圧電素子212の個別電極213に−0.5V〜+0.5Vの電圧が印加される可能性があり、制御素子が破壊する恐れがある。高電圧電源端子209に−0.25Vのバイアス電圧601を印加し、制御素子のグランド端子208に+0.25Vのバイアス電圧602を印加する。この場合、高圧電源端子209と制御素子のグランド端子208にはバイアス電圧である0.25Vの逆極性電圧が印加され、制御素子のゲート207の出力には、ダイオード4及び5の順方向降下電圧0.5Vとバイアス電圧0.25Vの差分である0.25Vの逆極性電圧が印加される。何れも制御素子の逆極性耐圧0.4V以内となり、制御素子の破壊は起こらない。圧電素子の個別電極213に印加される電圧も−0.25V〜+0.25Vと小さくすることができる。このような構成にすることで、ダイオード4及び5として制御素子の寄生ダイオードを利用することができる。
【0070】
尚、消極電圧又は分極電圧の単位時間当たりの電圧変化量が大きいと、圧電素子の充放電電流の値も大きくなる。本発明では、充放電電流がダイオード4及び5を流れる。制御素子内のダイオードを用いる場合に、ダイオード4及び5の耐電流が小さいときは、消極電圧又は分極電圧の単位時間当たりの電圧変化量を、ダイオード4及び5を流れる電流がダイオードの耐電流値を超えない程度に小さくする必要がある。さもないと、ダイオードが破壊され、結果として制御素子自体が破壊される。例えば、ダイオード4及び5の耐電流値をI、圧電素子の静電容量をC、消極電圧又は分極電圧の単位時間当たりの電圧変化量をdV/dtとすると、圧電素子の充放電の際ダイオード4及び5を流れる電流はC・dV/dtである。消極電圧又は分極電圧の単位時間当たりの電圧変化量dV/dtはI/Cより小さくする必要がある。
【0071】
ダイオード4及びダイオード5としては、制御素子の中に作り込むことも考えられる。しかし、制御素子の寄生ダイオードを利用することにより、ダイオードを追加で作り込む必要が無く好都合である。制御素子内のダイオードでは耐電流が不足する場合には、ダイオードを外付けしても良い。その場合、順方向降下電圧の小さいショットキーダイオードやゲルマニウムダイオード等を用いることが望ましい。
【0072】
バイアス電圧501、502、507、508、601、602を印加する方法は、所望の電圧を発生する電源に限ったものではなく、別のダイオードに電流を流し、そのダイオードの順方向電圧降下を利用したもの等であっても良い。
【0073】
圧電素子の駆動力をノズル毎に調節したい場合は、本発明により圧電素子の消極処理を行った後、再分極処理は、分極電圧が制御素子の耐圧以下となるように設計した上で、前記第2のヘッド接続基板103に接続するか、図13のようにスイッチを切り替える等して、制御素子で再分極を行う圧電素子を選択しながら各圧電素子に最適の分極電圧を印加すると良い。分極電圧が制御素子の耐圧以下となるようにする方法としては、圧電素子の電極間隔を近付けることや、分極時に圧電素子を過熱することや、駆動電圧が制御素子の耐圧よりも相当低くて良いようにインクジェットヘッドを設計する等して、分極電圧が低くても良いようにすることが考えられる。
【0074】
本発明は、圧電素子の消極又は分極を行う場合に限らず、制御素子を実装した状態で、加減圧素子に通常駆動を行うよりも高い電圧を印加したり、逆極性の電圧を印加したりする際には適用可能である。
【0075】
本発明によれば吐出特性の揃ったインクジェットヘッドを安価に装置を大型化すること無く提供することが可能であり、吐出液滴のばらつきが小さいことが要求される高速プリンタ、フラットパネルディスプレイの製造装置、薄膜塗工装置などといった用途にも適用できる。
【0076】
本発明に係るインクジェット装置には、少なくともインクジェットヘッドを搭載した様々な形態のインクジェット装置が含まれるものとする。
【0077】
以上、発明を実施するための形態について説明を行ったが、本発明は上述の実施の形態のみに限定されるものではない。本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1…高圧電源端子に繋がる配線、2…グランド端子に繋がる配線、3…共通電極に繋がる配線、4…ダイオード、5…ダイオード、6…ダイオード、7…ダイオード、11…インク流路形成部材、12…インク圧力室、13…ノズルプレート、14…ノズル、15…リストリクタ、16…共通インク流路、17…圧電素子、18…圧電素子支持基板、19…個別電極、20…共通電極、21…弾性膜、22…インク滴、23…圧電素子、24…制御素子、26…駆動電圧入力端子に繋がる配線、27…圧力室の仕切り、101…インクジェットヘッド、102…消極又は分極処理時に使用するヘッド接続基板、103…ヘッド駆動時に使用するヘッド接続基板、104…ハウジング、106…フィルム基板、111…端子、112…コネクタ、113…配線パターン、114…コネクタ、205…インクジェットヘッド、206…ヘッド接続基板、207…制御素子のゲート、208…グランド端子、209…高圧電源端子、210…駆動電圧、212…圧電素子、213…個別電極、214…共通電極、215…高圧電源、216…グランド、301…消極電圧、302…分極電圧、501…バイアス電圧、502…バイアス電圧、503…端子、504…端子、505…配線、506…配線、507…バイアス電圧、508…バイアス電圧、601…バイアス電圧、602…バイアス電圧、701…スイッチ、702…スイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク圧力室と、前記インク圧力室内のインクに対して加減圧を行う加減圧素子と、前記加減圧素子に対する駆動信号を制御する制御素子が実装された基板を備えたインクジェットヘッドを製造するためのインクジェットヘッド製造装置において、
前記基板上で、前記制御素子の高圧電源端子と電気的に接続される第1の配線と、前記制御素子のグランド端子と電気的に接続される第2の配線と、前記加減圧素子の共通電極と電気的に接続される第3の配線が互いに短絡しておらず、前記制御素子のゲートから前記加減圧素子の個別電極までの経路上に、前記加減圧素子の個別電極から前記第1の配線に電流が流れるように第1のダイオードと、前記第2の配線から前記加減圧素子の個別電極に電流が流れるように第2のダイオードを設け、前記加減圧素子の消極又は分極を行うときに前記第1の配線と第2の配線を短絡する手段を有することを特徴とするインクジェットヘッド製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェットヘッド製造装置において、前記加減圧素子の消極又は分極を行うときに、短絡して同電位となっている前記第1の配線及び第2の配線と、前記第1の配線及び第2の配線とは分離されている前記第3の配線との間に消極電圧又は分極電圧を印加して、前記加減圧素子の消極又は分極を行うことを特徴とするインクジェットヘッド製造装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のインクジェットヘッド製造装置において、前記消極又は分極が終了した後に前記短絡を解除させる手段を有することを特徴とするインクジェットヘッド製造装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド製造装置において、前記第1のダイオードと第2のダイオードは、前記制御素子の寄生ダイオードであることを特徴とするインクジェットヘッド製造装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド製造装置において、前記加減圧素子の消極又は分極を行うときに前記第1の配線と第2の配線を短絡し、消極又は分極が終了したときに前記短絡を解除する手段はスイッチであることを特徴とするインクジェットヘッド製造装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド製造装置において、前記インクジェットヘッドは前記第1及び第2の配線と電気的に接続されたインクジェットヘッド側の端子を有し、
ヘッド接続基板側には、前記インクジェットヘッド側の端子と嵌合可能な端子を備え、前記第1の配線が電気的に接続された前記インクジェットヘッド側の端子が対応する、ヘッド接続基板側の第1の端子と、前記第2の配線が電気的に接続された前記インクジェットヘッド側の端子が対応する、ヘッド接続基板側の第2の端子が、ヘッド接続基板上で短絡するように配線されている、第1のヘッド接続基板と、
前記インクジェットヘッド側の端子と嵌合可能な端子を備え、前記第1の配線が電気的に接続された前記インクジェットヘッド側の端子が対応する、ヘッド接続基板側の第3の端子と、前記第2の配線が電気的に接続された前記インクジェットヘッド側の端子が対応する、ヘッド接続基板側の第4の端子がヘッド接続基板上で短絡されていない、第2のヘッド接続基板とを有することを特徴とするインクジェットヘッド製造装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド製造装置において、出荷後でも、消極を行った後ノズル毎に最適な分極電圧で個別に分極を行うことを特徴とするインクジェットヘッド製造装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド製造装置において、前記第1のダイオードのカソードに負電圧、前記第2のダイオードのアノードに正電圧がかかるように、前記第1及び第2のダイオードに順方向降下電圧程度以下のバイアス電圧を印加することを特徴とするインクジェットヘッド製造装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド製造装置において、前記消極電圧又は分極電圧の単位時間当たりの電圧変化量を、前記第1及び第2のダイオードを流れる電流が、各ダイオードの耐電流値を超えない程度に小さくしたことを特徴とするインクジェットヘッド製造装置。
【請求項10】
インク圧力室と、前記インク圧力室内のインクに対して加減圧を行う加減圧素子と、前記加減圧素子に対する駆動信号を制御する制御素子が実装された支持基板を備えたインクジェットヘッド、及び前記インクジェットヘッドの前記加減圧素子に対する駆動、分極又は消極を行うためのヘッド接続基板を搭載したインクジェット装置であって、
前記インクジェットヘッドが、前記支持基板上で、前記制御素子の高圧電源端子と電気的に接続される第1の配線と、前記制御素子のグランド端子と電気的に接続される第2の配線と、前記加減圧素子の共通電極と電気的に接続される第3の配線が互いに短絡しておらず、前記制御素子のゲートから前記加減圧素子の個別電極までの経路上に、前記加減圧素子の個別電極から前記第1の配線に電流が流れるように第1のダイオードと、前記第2の配線から前記加減圧素子の個別電極に電流が流れるように第2のダイオードとを有すると共に、
前記ヘッド接続基板が、前記加減圧素子の消極又は分極を行うときに前記第1の配線と第2の配線を短絡する手段を有することを特徴とするインクジェット装置。
【請求項11】
インク圧力室と、前記インク圧力室内のインクに対して加減圧を行う加減圧素子と、前記加減圧素子に対する駆動信号を制御する制御素子が実装された基板を備えたインクジェットヘッドを製造するためのインクジェットヘッド製造方法において、
前記基板上で前記制御素子の高圧電源端子と電気的に接続される第1の配線と、前記制御素子のグランド端子と電気的に接続される第2の配線と、前記加減圧素子の共通電極と電気的に接続される第3の配線とが互いに短絡しておらず、前記制御素子のゲートから前記加減圧素子の個別電極までの経路上に、前記加減圧素子の個別電極から前記第1の配線へ電流が流れるように第1のダイオードと、前記第2の配線から前記加減圧素子の個別電極へ電流が流れるように第2のダイオードを設け、前記加減圧素子の消極又は分極を行う際に前記第1の配線と第2の配線を短絡する短絡工程を有することを特徴とするインクジェットヘッド製造方法。
【請求項12】
請求項11記載のインクジェットヘッド製造方法において、前記短絡工程の後に、前記加減圧素子の消極又は分極を行う際に、短絡して同電位となっている前記第1の配線及び第2の配線と、前記第1の配線及び第2の配線とが分離されている前記第3の配線との間に、消極電圧又は分極電圧を印加して、前記加減圧素子の消極又は分極を行う工程を有することを特徴とするインクジェットヘッド製造方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のインクジェットヘッドの製造方法において、前記第1のダイオードと前記第2のダイオードが、前記制御素子の寄生ダイオードであることを特徴とするインクジェットヘッド製造方法。
【請求項14】
請求項11乃至13のいずれか1項に記載のインクジェットヘッドの製造方法において、前記第1のダイオードのカソードに負電圧、前記第2のダイオードのアノードに正電圧がかかるように、前記第1および第2のダイオードに順方向降下電圧程度以下のバイアス電圧を印加することを特徴とするインクジェットヘッド製造方法。
【請求項15】
請求項11乃至14のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド製造方法において、前記消極電圧又は分極電圧の単位時間当たりの電圧変化量を、前記第1および第2のダイオードを流れる電流が、各ダイオードの耐電流値を超えない程度に小さくしたことを特徴とするインクジェットヘッド製造方法。
【請求項1】
インク圧力室と、前記インク圧力室内のインクに対して加減圧を行う加減圧素子と、前記加減圧素子に対する駆動信号を制御する制御素子が実装された基板を備えたインクジェットヘッドを製造するためのインクジェットヘッド製造装置において、
前記基板上で、前記制御素子の高圧電源端子と電気的に接続される第1の配線と、前記制御素子のグランド端子と電気的に接続される第2の配線と、前記加減圧素子の共通電極と電気的に接続される第3の配線が互いに短絡しておらず、前記制御素子のゲートから前記加減圧素子の個別電極までの経路上に、前記加減圧素子の個別電極から前記第1の配線に電流が流れるように第1のダイオードと、前記第2の配線から前記加減圧素子の個別電極に電流が流れるように第2のダイオードを設け、前記加減圧素子の消極又は分極を行うときに前記第1の配線と第2の配線を短絡する手段を有することを特徴とするインクジェットヘッド製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェットヘッド製造装置において、前記加減圧素子の消極又は分極を行うときに、短絡して同電位となっている前記第1の配線及び第2の配線と、前記第1の配線及び第2の配線とは分離されている前記第3の配線との間に消極電圧又は分極電圧を印加して、前記加減圧素子の消極又は分極を行うことを特徴とするインクジェットヘッド製造装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のインクジェットヘッド製造装置において、前記消極又は分極が終了した後に前記短絡を解除させる手段を有することを特徴とするインクジェットヘッド製造装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド製造装置において、前記第1のダイオードと第2のダイオードは、前記制御素子の寄生ダイオードであることを特徴とするインクジェットヘッド製造装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド製造装置において、前記加減圧素子の消極又は分極を行うときに前記第1の配線と第2の配線を短絡し、消極又は分極が終了したときに前記短絡を解除する手段はスイッチであることを特徴とするインクジェットヘッド製造装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド製造装置において、前記インクジェットヘッドは前記第1及び第2の配線と電気的に接続されたインクジェットヘッド側の端子を有し、
ヘッド接続基板側には、前記インクジェットヘッド側の端子と嵌合可能な端子を備え、前記第1の配線が電気的に接続された前記インクジェットヘッド側の端子が対応する、ヘッド接続基板側の第1の端子と、前記第2の配線が電気的に接続された前記インクジェットヘッド側の端子が対応する、ヘッド接続基板側の第2の端子が、ヘッド接続基板上で短絡するように配線されている、第1のヘッド接続基板と、
前記インクジェットヘッド側の端子と嵌合可能な端子を備え、前記第1の配線が電気的に接続された前記インクジェットヘッド側の端子が対応する、ヘッド接続基板側の第3の端子と、前記第2の配線が電気的に接続された前記インクジェットヘッド側の端子が対応する、ヘッド接続基板側の第4の端子がヘッド接続基板上で短絡されていない、第2のヘッド接続基板とを有することを特徴とするインクジェットヘッド製造装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド製造装置において、出荷後でも、消極を行った後ノズル毎に最適な分極電圧で個別に分極を行うことを特徴とするインクジェットヘッド製造装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド製造装置において、前記第1のダイオードのカソードに負電圧、前記第2のダイオードのアノードに正電圧がかかるように、前記第1及び第2のダイオードに順方向降下電圧程度以下のバイアス電圧を印加することを特徴とするインクジェットヘッド製造装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド製造装置において、前記消極電圧又は分極電圧の単位時間当たりの電圧変化量を、前記第1及び第2のダイオードを流れる電流が、各ダイオードの耐電流値を超えない程度に小さくしたことを特徴とするインクジェットヘッド製造装置。
【請求項10】
インク圧力室と、前記インク圧力室内のインクに対して加減圧を行う加減圧素子と、前記加減圧素子に対する駆動信号を制御する制御素子が実装された支持基板を備えたインクジェットヘッド、及び前記インクジェットヘッドの前記加減圧素子に対する駆動、分極又は消極を行うためのヘッド接続基板を搭載したインクジェット装置であって、
前記インクジェットヘッドが、前記支持基板上で、前記制御素子の高圧電源端子と電気的に接続される第1の配線と、前記制御素子のグランド端子と電気的に接続される第2の配線と、前記加減圧素子の共通電極と電気的に接続される第3の配線が互いに短絡しておらず、前記制御素子のゲートから前記加減圧素子の個別電極までの経路上に、前記加減圧素子の個別電極から前記第1の配線に電流が流れるように第1のダイオードと、前記第2の配線から前記加減圧素子の個別電極に電流が流れるように第2のダイオードとを有すると共に、
前記ヘッド接続基板が、前記加減圧素子の消極又は分極を行うときに前記第1の配線と第2の配線を短絡する手段を有することを特徴とするインクジェット装置。
【請求項11】
インク圧力室と、前記インク圧力室内のインクに対して加減圧を行う加減圧素子と、前記加減圧素子に対する駆動信号を制御する制御素子が実装された基板を備えたインクジェットヘッドを製造するためのインクジェットヘッド製造方法において、
前記基板上で前記制御素子の高圧電源端子と電気的に接続される第1の配線と、前記制御素子のグランド端子と電気的に接続される第2の配線と、前記加減圧素子の共通電極と電気的に接続される第3の配線とが互いに短絡しておらず、前記制御素子のゲートから前記加減圧素子の個別電極までの経路上に、前記加減圧素子の個別電極から前記第1の配線へ電流が流れるように第1のダイオードと、前記第2の配線から前記加減圧素子の個別電極へ電流が流れるように第2のダイオードを設け、前記加減圧素子の消極又は分極を行う際に前記第1の配線と第2の配線を短絡する短絡工程を有することを特徴とするインクジェットヘッド製造方法。
【請求項12】
請求項11記載のインクジェットヘッド製造方法において、前記短絡工程の後に、前記加減圧素子の消極又は分極を行う際に、短絡して同電位となっている前記第1の配線及び第2の配線と、前記第1の配線及び第2の配線とが分離されている前記第3の配線との間に、消極電圧又は分極電圧を印加して、前記加減圧素子の消極又は分極を行う工程を有することを特徴とするインクジェットヘッド製造方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のインクジェットヘッドの製造方法において、前記第1のダイオードと前記第2のダイオードが、前記制御素子の寄生ダイオードであることを特徴とするインクジェットヘッド製造方法。
【請求項14】
請求項11乃至13のいずれか1項に記載のインクジェットヘッドの製造方法において、前記第1のダイオードのカソードに負電圧、前記第2のダイオードのアノードに正電圧がかかるように、前記第1および第2のダイオードに順方向降下電圧程度以下のバイアス電圧を印加することを特徴とするインクジェットヘッド製造方法。
【請求項15】
請求項11乃至14のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド製造方法において、前記消極電圧又は分極電圧の単位時間当たりの電圧変化量を、前記第1および第2のダイオードを流れる電流が、各ダイオードの耐電流値を超えない程度に小さくしたことを特徴とするインクジェットヘッド製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−255553(P2009−255553A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63584(P2009−63584)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(302057199)リコープリンティングシステムズ株式会社 (1,130)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(302057199)リコープリンティングシステムズ株式会社 (1,130)
【Fターム(参考)】
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