説明

インクジェットヘッド

【課題】別部材を必要とすることなくインク供給口を封止状態に保つ。
【解決手段】本体ブロック1に着脱可能に取り付けられるアタッチメント2を備える。本体ブロック1には、その内部のリザーバにインクを供給するインク供給口が形成されており、アタッチメント2には、インク供給口に送られるインクが通過する供給流路が形成されている。また、本体ブロック1には、インク供給口を封止する状態と開放する状態とを取り得る供給弁機構70が取り付けられている。そして、供給弁機構70は、アタッチメント2が本体ブロック1に取り付けられていない場合には、インク供給口42を塞いだ状態となり、アタッチメント2が本体ブロック1に取り付けられると、それぞれインク供給口42を開放する状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体にインクを吐出するインクジェットヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体にインク滴を吐出して印刷を行うインクジェットプリンタが有するインクジェットヘッドとしては、共通インク室、及び共通インク室からノズルに至る複数の個別インク流路が形成された流路ユニットと、共通インク室に連通するインクリザーバ、及びインクリザーバにインクを供給するインク供給口が形成されているリザーバユニットとを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。かかるインクジェットヘッドにおいては、インク供給口に接続されたインク管を介してリザーバユニットのインクリザーバにインクが供給される。
【特許文献1】特開2007−268868号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のようなインクジェットヘッドのインク供給口は、ヘッドを単体で保管・輸送等する際には、インク供給口からのインクの漏洩や乾燥を防ぐべく封止する必要がある。一方、ヘッドをプリンタに取り付けて使用する際には、インクを供給するべく開放する必要がある。よって、ヘッドを単体で保管・輸送等する際においては、インク供給口は着脱可能なシール部材によって封止される。
【0004】
したがって、かかるインクジェットヘッドは、製造時における検査工程や出荷時等において、ヘッドを構成する部材に加えてシール部材の部品管理が必要となり、管理上煩雑である。また、かかるシール部材は、繰り返し取り付け及び取り外しを行う必要がある。すなわち、例えば、ヘッドを組み立て、その内部にインク供給口を介して導入液を導入した後、インク供給口をシール部材でシールする。さらに、出荷検査時には一旦シール部材を取り外し、検査後に再度取り付ける。そして、着荷後にはシール部材を取り外し廃棄する。このように、シール部材の着脱のために工数が増加するという問題もある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、別部材を必要とすることなくインク供給口を封止状態に保つことができるインクジェットヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のインクジェットヘッドは、インクを一時的に貯留するリザーバ、前記リザーバにインクを供給するインク供給口、前記リザーバと連通する共通インク室、及び前記共通インク室の出口から圧力室を経てノズルに至る複数の個別インク流路が形成された本体ブロックと、前記本体ブロックに取り付けられており、前記インク供給口を封止する状態と開放する状態とのいずれかの状態を選択的に取り得る第1弁機構と、前記本体ブロックに対して着脱可能に取り付けられており、前記インク供給口に送られるインクが通過する供給流路が形成されているアタッチメントとを備えている。そして、前記第1弁機構は、前記アタッチメントが前記本体ブロックに取り付けられていない場合には前記インク供給口を封止する状態となり、前記アタッチメントが前記本体ブロックに取り付けられると前記インク供給口を開放する状態となる。
【0007】
この構成によると、別部材を必要とすることなく、アタッチメントを外しておくことでインク供給口を封止状態に保つことができる。また、アタッチメントを取り付けるだけでインクを供給可能な状態にすることができる。
【0008】
本発明のインクジェットヘッドでは、前記本体ブロックに、前記リザーバのインクを排出するインク排出口がさらに形成されていると共に、前記アタッチメントに、前記インク排出口から排出されたインクが通過する排出流路が形成されていることが好ましい。そして、前記本体ブロックに取り付けられており、前記インク排出口を封止する状態と開放する状態とのいずれかの状態を選択的に取り得る第2弁機構をさらに備えており、前記第2弁機構は、前記アタッチメントが前記本体ブロックに取り付けられていない場合には前記インク排出口を封止する状態となり、前記アタッチメントが前記本体ブロックに取り付けられると前記インク排出口を開放する状態となる。
【0009】
この構成によると、インク排出口から、本体ブロック内の気泡をインクと共に排出することができる。また、アタッチメントを外しておくだけでインク排出口を封止状態に保つことができ、且つアタッチメントを取り付けるだけでインクを排出可能な状態にすることができる。
【0010】
本発明のインクジェットヘッドでは、前記第1弁機構は、前記インク供給口を介して前記本体ブロックの内部から外部に延びる第1連通路が形成され前記本体ブロックに固定された第1連通部材と、前記第1連通路の前記本体ブロックの内部側の一端を封止する第1封止位置と該一端を開放する第1開放位置との間で移動可能な第1可動部材と、前記第1可動部材を前記第1封止位置に向けて付勢する第1付勢部材とを有しており、前記第2弁機構は、前記インク排出口を介して前記本体ブロックの内部から外部に延びる第2連通路が形成され前記本体ブロックに固定された第2連通部材と、前記第2連通路の前記本体ブロックの内部側の一端を封止する第2封止位置と該一端を開放する第2開放位置との間で移動可能な第2可動部材と、前記第2可動部材を前記第2封止位置に向けて付勢する第2付勢部材とを有している。そして、前記アタッチメントが、前記本体ブロックに取り付けられた状態において前記第1連通路に挿通されると共に前記第1可動部材を前記第1付勢部材による付勢方向とは反対方向に押圧することによって前記第1開放位置に移動させる第1弁開放部と、前記本体ブロックに取り付けられた状態において前記第2連通路に挿通されると共に前記第2可動部材を前記第2付勢部材による付勢方向とは反対方向に押圧することによって前記第2開放位置に移動させる第2弁開放部とを有していることが好ましい。
【0011】
この構成によると、複雑な機器や煩雑な操作を必要とすることなくインク供給口及びインク排出口の封止及び開放を容易に行うことができる。
【0012】
本発明のインクジェットヘッドでは、前記第1連通部材と前記第2連通部材とが一体に形成されていてもよい。この構成によると、部品点数を削減することができる。
【0013】
本発明のインクジェットヘッドでは、前記アタッチメントは、前記供給流路と前記排出流路とを有する本体部をさらに備えており、前記第1弁開放部及び前記第2弁開放部が前記本体部の一側面に突設されており、前記一側面から前記第1弁開放部の先端までの距離と前記一側面から前記第2弁開放部の先端までの距離とが所定長さだけ異なっていてもよい。この構成によると、アタッチメントを間違った方向で本体ブロックへ取り付けるのを防ぐことができる。
【0014】
本発明のインクジェットヘッドでは、前記アタッチメントは、前記一側面から前記第1弁開放部の先端までの距離が前記一側面から前記第2弁開放部の先端までの距離よりも長いことが好ましい。この構成によると、仮にアタッチメントを誤った方向に装着しても、少なくとも本体ブロックへのインクの供給は行われることとなり、ヘッドによる印字を可能とすることができる。
【0015】
本発明のインクジェットヘッドでは、前記所定長さが、前記第1封止位置と前記第1開放位置との間隔よりも小さく、且つ、前記付勢方向に関する、前記第2開放位置と前記第1封止位置との間隔よりも小さいことが好ましい。
【0016】
この構成によると、アタッチメントを正常に本体ブロックに取り付けた際には、第1弁開放部の先端が第1開放位置に達したとき、第2弁開放部の先端は、付勢方向に関して第1開放位置よりも奥側に位置する。すなわち、第2開放位置は、付勢方向に関して第1封止位置よりも奥側にある。そして、アタッチメントを誤った方向に装着し、第1弁開放部を第2弁機構の第2連通路に挿通し、第2弁開放部を第1弁機構の第1連通路に挿通した場合でも、第1弁開放部の先端が第2開放位置に達したとき、第2弁開放部の先端は、付勢方向に関して第1封止位置よりも奥側に位置する。つまり、第1可動部材が、第2弁開放部によって押圧される。その結果、アタッチメントを誤った方向に装着した場合でも、アッタッチメントの供給流路及び排出流路を本体ブロック内の流路にそれぞれ連通させることができる。
【0017】
本発明のインクジェットヘッドでは、前記供給流路及び前記排出流路の少なくとも一方の一部が、可撓性を有すると共に、一方の面が大気と接し他方の面がインクと接することで前記大気と前記インクとを分離するフィルムによって画定されていてもよい。また、本発明のインクジェットヘッドでは、前記供給流路にフィルタが設けられていてもよい。これらの構成によると、インクジェットヘッドの使用状況や用途等に併せてアタッチメントを付け替え、ダンパ機能やフィルタ機能を付加することができる。
【0018】
本発明のインクジェットヘッドでは、前記供給流路はフィルタが設けられていると共に、前記フィルタによって上流側と下流側とに2分割されるフィルタ室を有しており、前記フィルムは、分割された前記フィルタ室の少なくとも一方の部屋の壁面を画定していてもよい。この構成によると、アタッチメントが、フィルタが配置されたフィルタ室とフィルムで画定されたダンパ室との2つを兼ね備えた1つの液室を持つこととなる。したがって、アタッチメントをコンパクトに構成することができる。
【発明の効果】
【0019】
上述のように、本発明のインクジェットヘッドは、別部材を必要とすることなく、アタッチメントを外しておくことでインク供給口を封止状態に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好適な一実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態にかかるインクジェットヘッドの概観斜視図である。図2は、図1に示すインクジェットヘッドの分解斜視図である。
【0022】
本実施の形態のインクジェットヘッド100は、インクジェットプリンタに備えられるものであって、用紙に対してインクを吐出するものである。図1に示すように、インクジェットヘッド100は、全体として平面視において一方向に長尺な形状を有している。なお、本実施の形態において、インクジェットヘッド100の平面視において長尺な方向が主走査方向であり、平面視において主走査方向と直交する方向が副走査方向である。また、主走査方向及び副走査方向に直交しており、インクジェットヘッド100から吐出されるインクの吐出方向を下方向とし、下方向とは反対の方向を上方向とする。
【0023】
インクジェットヘッド100は、インクを一時的に貯留するリザーバ41(図3参照)が形成されたリザーバユニット3、及び複数のノズル11に連通する個別インク流路15(図7参照)が形成されており、上方に位置するリザーバユニット3からインクが供給される流路ユニット5で構成される本体ブロック1と、本体ブロック1に対して着脱可能に取り付けられたアタッチメント2とを主に備えている。アタッチメント2の上面は、カバー2aによって覆われている。リザーバユニット3には、後で詳述するように、リザーバ41にインクを供給するインク供給口42と、リザーバ41のインクを排出するインク排出口43とが形成されている(図3参照)。そして、インク供給口42及びインク排出口43には、供給弁機構70及び排出弁機構80がそれぞれ取り付けられている。
【0024】
後で詳述するように、流路ユニット5の上面には、4つのアクチュエータユニット6が固定されている(図6参照)。そして、アクチュエータユニット6上には、配線部材であるFPC(Flexible Printed Circuit)8が貼り付けされている。また、本体ブロック1の上方には、コネクタ9a及びコンデンサ9bなどの電子部品が実装された基板9が配置されている。FPC8は、流路ユニット5とリザーバユニット3との間からリザーバユニット3の側面に沿って上方に引き出され、基板9のコネクタ9aと接続される。なお、FPC8には、アクチュエータユニット6から基板9に至る途中で、ドライバIC8aが実装されている。
【0025】
また、基板9は、図1に示すフレキシブルフラットケーブル(Flexible Flat Cable:FFC)10を介して、インクジェットヘッド100が備え付けられたプリンタ全体の制御を司る図示しない制御装置と電気的に接続されている。これにより、制御装置からの信号は、基板9で中継された後FPC8を介してドライバIC8aに伝達され、ドライバIC8aから出力された駆動信号がアクチュエータユニット6に供給される。なお、基板9及びFPC8は、サイドカバー1a及びヘッドカバー1bによって覆われている。
【0026】
次に、図3を参照しつつ、リザーバユニット3についてより詳細に説明する。図3は、リザーバユニット3の主走査方向に沿う断面図である。なお、図3では説明の都合上、上下方向の縮尺を拡大し、且つ同一線に沿った断面図では通常描かれない流路も適宜に示している。図3に示すように、リザーバユニット3は、主走査方向に延在する上部リザーバ形成体30と、主走査方向に延在する3枚のプレート37〜39とが積層された積層構造となっている。なお、互いに積層されたプレート37〜39によって下部リザーバ形成体35が構成されている。
【0027】
ここで、リザーバユニット3について、リザーバユニット3を構成する各部材の平面図である図4をさらに参照しつつ説明する。なお、図4(a)は、上部リザーバ形成体30の上方から見た平面図であり、図4(b)は、上部リザーバ形成体30の下方から見た平面図である。また、図4(c)〜(e)は、それぞれプレート37〜39の上方から見た平面図である。
【0028】
上部リザーバ形成体30は、例えば、ポリエチレンテレフタラート樹脂やポリプロピレン樹脂のような合成樹脂からなる。上部リザーバ形成体30の長手方向両端部近傍には、後述するように下部リザーバ形成体35の最上層のプレート37に形成された開口37bと係合する爪部32が2つずつ形成されている。これにより、上部リザーバ形成体30は、下部リザーバ形成体35の上面に固定される。
【0029】
上部リザーバ形成体30の内部には、上部リザーバ31が形成されている。上部リザーバ31は、上部リザーバ形成体30の長手方向に関して中央部(以降、単に「中央部」とする)から一端部(図3、図4中左側端部:以降、単に「一端」とする)までの間にのみ形成されており、流入流路32a、流出流路32b、及び接続流路32cの3つの流路で構成されている。上部リザーバ形成体30の一端部近傍における上面には、流入流路32a及び流出流路32bの延在方向の端部にそれぞれ連通していると共に、上方に向かって突出した筒状のジョイント部33、34が互いに近接して形成されている。そして、ジョイント部33、34の上端によって画定される開口が、上述のインク供給口42及びインク排出口43となっている。また、図3及び図4(b)に示すように、上部リザーバ形成体30の中央部には、下方の流路と連通する接続口31aが形成されている。
【0030】
流入流路32aは、上部リザーバ形成体30の厚み方向(上下方向)関する下部(以降、単に「下部」とする)において、上部リザーバ形成体30の一端部から中央部付近まで延在するように形成されている。流出流路32bは、上部リザーバ形成体30の一端部から中央部付近まで細長く延在している。より詳細には、流出流路32bにおける一端部側の半分は、上部リザーバ形成体30の下部に形成されている。一方、流出流路32bの残りの半分は、上部リザーバ形成体30の厚み方向に関する上部(以降、単に「上部」とする)に形成されていると共に、中央部近傍において下方に延びて流入流路32aに合流している。接続流路32cは、流入流路32a及び流出流路32bの合流部分に繋がっていると共に、上部リザーバ形成体30の上部において中央部まで延在した後、下方に向かって接続口31aまで延在する。
【0031】
流入流路32aの中央部側の半分は、平面視において略平行四辺形形状を有している。この流入流路32aの略平行四辺形形状部分は、通過するインクの異物を捕らえるフィルタ44がその厚み方向に関する略中央に配置されている。フィルタ44を挟む両側の空間部がフィルタ室である。すなわち、流入流路32aのフィルタ室は、フィルタ44によって、インク供給口42側の上流部と接続流路32c側の下流部とに分割されている。そして、流出流路32bは、流入流路32aのフィルタ室の上流部末端に連通する。ここで、フィルタ室、特にその上流部には、気泡が残留しやすい。本実施の形態では、この気泡が残留しやすいフィルタ室の上流部に流出流路32bが接続されていることにより、確実に残留気泡を排出することができる。
【0032】
また、上部リザーバ形成体30の下面に溶着された可撓性を有するフィルム45が、流入流路32aの下面の流路壁となっている。言い換えれば、流入流路32aは、フィルム45を介して大気と接している。ここで、上部リザーバ形成体30の下面と下部リザーバ形成体35の上面との間には、僅かな隙間が形成されている。したがって、上部リザーバ31内において急激な圧力変動があったとき、フィルム45が自由に変形することでこの圧力変動を吸収する。すなわち、フィルム45はダンパとして機能する。さらに、上部リザーバ形成体30の下面に溶着されたフィルム46が、流出流路32bの下面の流路壁となっている。また、上部リザーバ形成体30の上面に溶着されたフィルム47及びフィルム48が、それぞれ流出流路32b及び接続流路32cの上面の流路壁となっている。いずれのフィルム46、47、48も、フィルム45と同様に、圧力変動の吸収に寄与している。
【0033】
プレート37〜39は、例えば、ステンレス鋼等の金属プレートからなる。図3に示すように、互いに積層されたプレート37〜39で構成される下部リザーバ形成体35の内部には、上部リザーバ31内のインクを流路ユニット5に分配する流路となる下部リザーバ36が形成されている。
【0034】
図4に示すように、プレート37〜39のうち、最上層のプレート37には、接続口31aを介して上部リザーバ31と連通する貫通孔(落込流路37a)が形成されている。また、プレート37の長手方向両端部近傍には、上述の上部リザーバ形成体30に形成された爪部32と係合する開口37bが2つずつ形成されている。さらに、最下層のプレート39には、後述するように流路ユニット5に形成されたインク流入口5a(図6参照)に連通する10個の貫通孔(連通流路39a)が形成されている。そして、プレート37とプレート39との間に位置するプレート38には、落込流路37aと10個の連通流路39aとを連通させる孔(接続流路38a)が形成されている。これら落込流路37a、接続流路38a及び連通流路39aにより、下部リザーバ36(図3参照)が形成されている。
【0035】
なお、最上層のプレート37の長手方向における長さは、その他のプレート38、39の長手方向における長さよりも長い。したがって、プレート37〜39を積層し下部リザーバ形成体35を構成した状態では、プレート37の両端が、プレート38、39の両端よりも外側に突出する。このプレート37の突出した部分には、貫通孔37cがそれぞれ形成されている。貫通孔37cは、インクジェットヘッド100をプリンタに取り付ける際に使用される。
【0036】
上述のように、リザーバユニット3内には、上部リザーバ形成体30に形成された上部リザーバ31及び下部リザーバ形成体35に形成された下部リザーバ36からなるリザーバ41が形成されている。
【0037】
ここで、図2及び本体ブロック1のインク供給口42近傍の部分拡大断面図である図5を参照しつつ、供給弁機構70についてより詳細に説明する。供給弁機構70は、上述のように互いに近接して形成されたジョイント部33、34のうち、流入流路32aに連通するジョイント部33の上端によって画定されるインク供給口42に取り付けられる。供給弁機構70は、連通部材71と、固定部材73と、可動部材76と、付勢バネ79とを有している。
【0038】
連通部材71は、インク供給口42を介してジョイント部33の内部から外部に延びる連通路72が形成されており、その下端側の外径がジョイント部33の内径よりも小さく、上端側の外径がジョイント部33の内径よりも大きい部材である。そして、連通部材71は、固定部材73によって、その下端側がジョイント部33内に挿入され、上端側がジョイント部33からはみ出した状態でジョイント部33に固定される。固定部材73は、筒状の部材であり、ジョイント部33の外径よりも若干大きな内径を有する大径部74と、ジョイント部33の外径よりも小さな内径を有する小径部75と、大径部74及び小径部75を繋ぐ接続部73aとからなる。そして、固定部材73は、大径部74内にジョイント部33が連通部材71を挟んで挿入されるように、上部リザーバ形成体30に取り付けられる。
【0039】
このとき、図5に示すように、連通部材71のジョイント部33からはみ出た部分が、ジョイント部33の上端と、固定部材73の接続部73aとの間に挟まれた状態となる。ここで、ジョイント部33の外周面には、突起33aが形成されている。また、固定部材73の大径部74には、突起33aに係合する開口74aが形成されている。したがって、ジョイント部33の突起33aと固定部材73の開口74aが係合することによって、固定部材73を上部リザーバ形成体30に固定することができる。よって、固定された固定部材73によって連通部材71をジョイント部33に固定することができる。
【0040】
ここで、図5に示すように、ジョイント部33の下方側部分の内径は、上方側部分の内径に比べて小さくなっている。また、ジョイント部33内には、ジョイント部33の伸延方向に延びるガイドピン33bが配置されている。可動部材76は、ジョイント部33の下方側部分の内径よりも小さな外径を有する円柱状部材であると共に、その一端にジョイント部33の下方側部分の内径及び連通部材71の下端の内径よりも大きな径を有する鍔部77が形成されている。そして、可動部材76は、鍔部77が上になるようにジョイント部33内に配置されている。さらに、可動部材76内には、孔が可動部材76の伸延方向の軸に沿って形成されており、ガイドピン33bが挿通されている。したがって、可動部材76は、ガイドピン33bに沿って、ジョイント部33の伸延方向に上下に移動可能となっている。より詳細には、可動部材76は、その鍔部77が連通部材71の下端と当接して連通路72を封止する封止位置と、連通部材71から離隔して連通路72を開放する開放位置とを取り得る。すなわち、可動部材76が封止位置にある際には、インク供給口42は封止され、開放位置にある際には、インク供給口42が開放される。
【0041】
付勢バネ79は、ジョイント部33内の比較的内径が大きい上方側部分に配置されており、可動部材76の鍔部77を下側から上方の封止位置に向けて付勢している。これにより、供給弁機構70は、可動部材76が付勢バネ79による付勢方向とは反対方向に押圧されない限り、インク供給口42を常時封止状態に保つことができる。
【0042】
排出弁機構80は、供給弁機構70と同様に、連通部材81、固定部材83、可動部材86、及び付勢バネ89を有しており、ジョイント部34の上端によって画定されるインク排出口43に取り付けられる。ここでは、排出弁機構80の説明は省略する。なお、図2に示すように、本実施の形態においては、供給弁機構70の連通部材71と、排出弁機構80の連通部材81とは、一体の部材で構成されている。より詳細には、連通部材71のジョイント部33からはみ出す上端側部分と、連通部材81のジョイント部34からはみ出す上端側部分とが繋がっている。同様に、供給弁機構70の固定部材73と、排出弁機構80の固定部材83とについても一体の部材で構成されている。より詳細には、固定部材73の大径部74と、固定部材83の大径部84とが繋がっている。
【0043】
次に、流路ユニット5の詳細について図6及び図7を用いて説明する。図6は、流路ユニット5の平面図である。図7は、流路ユニット5の部分断面図である。流路ユニット5は、平面視矩形状を有しており、その上面に台形形状を有する4つのアクチュエータユニット6が千鳥状に配置されている。
【0044】
流路ユニット5の下面おけるアクチュエータユニット6に対応する部分は、多数のノズル11が形成されたインク吐出領域となっている。また、流路ユニット5の上面には各ノズル11に連通する圧力室12が多数形成されている。そして、1つのアクチュエータユニット6は多数の圧力室12を覆うように配置されている。
【0045】
流路ユニット5の内部には、流路ユニット5の上面に形成されたインク流入口5aに連通するマニホールド流路13、及びマニホールド流路13が分岐した副マニホールド流路13a、そして図7に示すように、副マニホールド流路13aの出口から圧力室12を経てノズル11に至る個別インク流路15が形成されている。これにより、リザーバユニット3からのインクは、インク流入口5aを介してマニホールド流路13に供給され、さらに各圧力室12に分配される。そして、アクチュエータユニット6により圧力室12に選択的に圧力が付与されると、圧力室12内のインクの圧力が上昇し、この圧力室12に連通するノズル11からインクが吐出される。
【0046】
流路ユニット5は、図7に示すように、上から、キャビティプレート51、ベースプレート52、アパーチャプレート53、サプライプレート54、マニホールドプレート55、56、57、カバープレート58及びノズルプレート59が積層された積層構造を有している。すなわち、ノズルプレート59の下面にインク吐出領域が形成される。なお、各プレート51〜59は、ステンレス鋼等の金属プレートからなる。
【0047】
これらプレート51〜59は、マニホールド流路13、副マニホールド流路13a、及び副マニホールド流路13aの出口から、絞りとして機能するアパーチャ14及び圧力室12を経てノズル11に至る、図7に示すような多数の個別インク流路15が形成されるように、互いに位置合わせしつつ積層される。
【0048】
続いて、図8及び図9を参照しつつ、アタッチメント2についてより詳細に説明する。図8(a)は、アタッチメント2を斜め下方から見た斜視図であり、図8(b)は、アタッチメントを斜め上方から見た斜視図である。また、図9(a)は、アタッチメント2の上面図であり、図9(b)は、図9(a)のb−b線に沿う断面図であり、図9(c)は、アタッチメント2の下面図である。
【0049】
アタッチメント2内には、後で詳述するように、リザーバユニット3のインク供給口42に送られるインクが通過する供給流路28、及びインク排出口43から排出されたインクが通過する排出流路29が形成されている。また、アタッチメント2は、平面視矩形形状である略板状の本体部21と、いずれも本体部21の下面に突設されており略筒状である供給弁開放部24及び排出弁開放部25とを有している。図9(b)に示すように、供給弁開放部24及び排出弁開放部25の本体部21の下面からの突出長さは互いに等しい。なお、供給流路28は、供給弁開放部24内部と本体部21の内部とに亘って形成されている。一方、排出流路29は、排出弁開放部25の内部と本体部21の内部とに亘って形成されている。
【0050】
本体部21には、供給流路28に繋がっているインク入口21a及び排出流路29に繋がっているインク出口21bが形成されており、いずれも上方の空間と連通している。本体部21の上面には、インク入口21a及びインク出口21bの周囲をそれぞれ取り囲みつつ上方に向かって突出した筒状のジョイント部27a、27bが形成されている。ジョイント部27aには、インクタンク(不図示)に接続されたインク供給チューブ(不図示)の端部に繋がれた接続部材が接続される。一方、ジョイント部27bには、インクタンクに接続されたインク還流チューブの端部に繋がれた接続部材が接続される。これにより、インクは、インクタンク、アタッチメント2、及び本体ブロック1の間で循環するようになっている。なお、インクの循環は、このように構成された循環流路中に配設された循環ポンプ(不図示)によって行われる。
【0051】
そして、本体部21において、供給流路28は、供給弁開放部24が接続されている部分からインク入口21aまで延びている。一方、排出流路29は、排出弁開放部25が接続されている部分からインク出口21bまで延びている。供給流路28と排出流路29とは、互いに独立して形成されている。
【0052】
ここで、供給弁開放部24及び排出弁開放部25は、本体部21の長手方向の一端部近傍において、本体部21の幅方向に互いに離隔するように本体部21に接続されている。また、インク入口21a及びインク出口21bは、本体部21の供給弁開放部24及び排出弁開放部25が接続されている側とは反対側の他端部近傍において、本体部21の幅方向に互いに離隔する位置に形成されている。より詳細には、インク入口21aは、供給弁開放部24が接続されている本体部21の幅方向一端側とは反対側の他端側に形成されており、インク出口21bは、排出弁開放部25が接続されている本体部21の幅方向他端側とは反対側の一端側に形成されている。すなわち、平面視において、供給弁開放部24及びインク入口21aを結ぶ線分と、排出弁開放部25及びインク出口21bを結ぶ線分とがクロスしている。
【0053】
本体部21に形成される供給流路28は、本体部21の上部において供給弁開放部24が接続されている部分から、インク入口21aの近傍まで延在した後に下方に延び、本体部21の下部においてインク入口21aまで延在する。なお、図8(b)及び図9(a)に示すように、供給流路28における本体部21の上部に形成されている部分は、本体部21の幅方向の両端部近傍まで広がっている。一方、本体部21に形成される排出流路29は、本体部21の上面において排出弁開放部25が接続されている部分から、本体部21の幅方向他端部に向けて本体部21の長手方向に対して斜めに延在した後に下方に延び、本体部21の下部においてインク出口21bまで延在する。そして、図9(a)に示すように、供給流路28における本体部21の上部に形成されている部分と、排出流路29における本体部の下部に形成されている部分(破線で示す部分)とは、上下方向に重なっている。
【0054】
また、供給流路28における本体部21の上部に形成されている部分の一部は、本体部21の上面に溶着された可撓性を有するフィルム22aによって画定されている。すなわち、フィルム22aは、供給流路28の上面の流路壁となっている。フィルム22aは、一方の面(上面)が大気と接し他方の面(下面)がインクと接することで、大気とインクとを分離する。フィルム22aは、供給流路28内において急激な圧力変動があったとき、圧力変動を吸収するダンパとして機能する。
【0055】
なお、同様に、本体部21の上面に溶着されたフィルム22bが、排出流路29における本体部21の上部に形成されている部分の上面の流路壁となっている。また、本体部21の下面に溶着されたフィルム22c、22dは、それぞれ供給流路28における本体部21の下部に形成されている部分の下面の流路壁、及び排出流路29における本体部21の下部に形成されている部分の下面の流路壁となっている。いずれのフィルム22b、22c、22dも、フィルム22aと同様に、圧力変動の吸収に寄与する。
【0056】
さらに、本体部21に形成される供給流路28の供給弁開放部24側の端部には、通過するインクの異物を捕らえるフィルタ23が配置されている。フィルタ23の配設位置は、供給流路28の幅が広がる拡幅部の下流側である。すなわち、供給流路28には、フィルタ23によって、本体部21に形成された上流部と供給弁開放部24に形成された下流部とに分割されるフィルタ室23aが形成されている。このような構成により、供給流路28における本体部21の上部に形成された部分は、ダンパ室とフィルタ室23aとを兼ねる。
【0057】
また、本体部21の上面にはリブ26aが、下面にはリブ26bがそれぞれ略格子状に形成されている。これにより、アタッチメント2の剛性が高められて変形が防止される。さらに、各フィルム22a〜22dは、本体部21の上面や下面に形成された環状突起部の先端に固定されている。フィルム22aは、供給流路28の拡開部に配置されており、環状突起で囲まれた拡開部内には、リブ26aは存在しない。しかし、下面において、直線的に延在した排出流路29の環状突起が、平面視で上面の拡開部をクロスするように横切って配置されている。そのため、流路の形成、特に拡開部の形成によるアタッチメント2の剛性低下が抑制されている。
【0058】
供給弁開放部24及び排出弁開放部25は、いずれも先端部分を残して先細りの形状を有している。また、供給弁開放部24及び排出弁開放部25の先端には、複数の切欠き24a、25aがそれぞれ形成されている。そして、供給弁開放部24は、アタッチメント2が本体ブロック1に取り付けられた際に、供給弁機構70の可動部材76を付勢バネ79による付勢方向とは反対の下方に向かって押圧する。可動部材76は開放位置まで移動され、供給弁機構70が開放される。一方、排出弁開放部25は、排出弁機構80の可動部材86を付勢バネ89による付勢方向とは反対の下方に向かって押圧する。可動部材86は開放位置まで移動され、排出弁機構80が開放される。このとき、アタッチメント2の供給流路28が、切欠き24aを介して上部リザーバ形成体30の流入流路32aと連通し、排出流路29が切欠き25aを介して流出流路32bと連通することになる。
【0059】
ここで、図10を参照しつつ、供給弁開放部24による供給弁機構70の開閉動作を説明する。図10(a)は、供給弁機構70が開放される前の状態を表しており、図10(b)は、供給弁機構70が開放された状態を表している。なお、排出弁機構80の開閉動作は、供給弁機構70の開閉動作と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0060】
まず、図10(a)に示すように、アタッチメント2を本体ブロック1に取り付ける際には、供給弁開放部24は、供給弁機構70における固定部材73の小径部75内及び連通部材71の連通路72に挿通される。このとき、供給弁開放部24の先端は、供給弁機構70の可動部材76に当接する。その後、アタッチメント2を下方に押し込むことによって、供給弁開放部24の先端が、供給弁機構70の可動部材76を付勢バネ79による付勢方向とは反対の下方に向かって押圧する。これによって、可動部材76が、10図(a)に示す封止位置から、図10(b)に示す開放位置まで移動し、供給弁機構70は開放状態となる。すなわち、アタッチメント2の供給流路28内のインクが、供給弁開放部24の先端の切欠き24aからジョイント部33内に流れ出る。
【0061】
ここで、連通部材71は、図5に示すように、連通路72の途中部に内壁から内側に張り出した環状凸部71aが形成されている、環状凸部71aは、上述の供給弁開放部24の先端が可動部材76に当接した段階で、供給弁開放部24の外周面に接触する。連通部材71は、ゴムのような樹脂性の可撓性部材であり、供給弁開放部24と水密状態に接触する。供給弁開放部24がさらに押し込まれて、仮に、連通部材71と可動部材76との隙間からインクが逆流することがあっても、インクが外部に漏れることはない。
【0062】
以上のように、本実施の形態のインクジェットヘッド100は、本体ブロック1に着脱可能に取り付けられるアタッチメント2を備えている。本体ブロック1には、その内部のリザーバ41にインクを供給するインク供給口42が形成されており、アタッチメント2には、インク供給口42に送られるインクが通過する供給流路28が形成されている。また、本体ブロック1には、インク供給口42を封止する状態と開放する状態とを取り得る供給弁機構70が取り付けられている。そして、供給弁機構70は、アタッチメント2が本体ブロック1に取り付けられていない場合には、インク供給口42を塞いだ状態となり、アタッチメント2が本体ブロック1に取り付けられると、それぞれインク供給口42を開放する状態となる。
【0063】
したがって、本実施の形態のインクジェットヘッド100では、別部材を必要とすることなく、アタッチメント2を外しておくだけでインク供給口42を塞いだ状態に保つことができる。また、アタッチメント2を取り付けるだけでインクを供給可能な状態にすることができる。
【0064】
また、本実施の形態のインクジェットヘッド100では、本体ブロック1に、その内部のリザーバ41のインクを排出するインク排出口43が形成されており、アタッチメント2に、インク排出口43から排出されたインクが通過する排出流路29が形成されている。また、本体ブロック1には、インク排出口43を封止する状態と開放する状態とを取り得る排出弁機構80が取り付けられている。そして、排出弁機構80は、アタッチメント2が本体ブロック1に取り付けられていない場合には、インク排出口43を塞いだ状態となり、アタッチメント2が本体ブロック1に取り付けられると、インク排出口43を開放する状態となる。
【0065】
したがって、本実施の形態のインクジェットヘッド100では、インク排出口43から、本体ブロック1のリザーバ41内の気泡をインクと共に排出することができる。また、アタッチメント2を外しておくだけでインク排出口43を封止状態に保つことがで、且つアタッチメント2を取り付けるだけでインクを排出可能な状態にすることができる。
【0066】
さらに、本実施の形態のインクジェットヘッド100では、供給弁機構70は、インク供給口42を介して本体ブロック1の内部から外部に延びる連通路72が形成され本体ブロック1に固定された連通部材71と、連通路72を封止する封止位置と連通路72を開放する開放位置との間で移動可能な可動部材76と、可動部材76を封止位置に向けて付勢する付勢バネ79とを有している。一方、排出弁機構80についても、供給弁機構70と同様に、連通部材81、可動部材86、及び付勢バネ89を有している。そして、アタッチメント2は、本体ブロック1に取り付けられた状態において、連通路72、82にそれぞれ挿通される供給弁開放部24及び排出弁開放部25を有している。供給弁開放部24及び排出弁開放部25は、可動部材76、86を付勢バネ79、89による付勢方向とは反対方向にそれぞれ押圧することによって開放位置に移動させることができる。
【0067】
したがって、本実施の形態のインクジェットヘッド100では、例えばアクチュエータ等の複雑な機器や煩雑な操作を必要とすることなく、インク供給口42及びインク排出口43の封止及び開放を容易に行うことができる。
【0068】
加えて、本実施の形態のインクジェットヘッド100では、供給弁機構70の固定部材73と排出弁機構80の固定部材83とが一体に形成されている。また、供給弁機構70の連通部材71と排出弁機構80の連通部材81とについても一体に形成されている。したがって、部品点数を削減することができる。
【0069】
さらに、本実施の形態のインクジェットヘッド100では、アタッチメント2の本体部21に形成される供給流路28の上面の流路壁が、可撓性を有すると共に、上面が大気と接し下面がインクと接することで大気とインクとを分離するフィルム22aによって画定されている。また、供給流路28には、フィルタ23が設けられている。すなわち、供給流路28はダンパ機能及びフィルタ機能を有している。したがって、例えば、本実施の形態のアタッチメント2に加えて、ダンパ機能のみを有するアタッチメントやフィルタ機能のみを有するアタッチメント等を用意しておき、インクジェットヘッド100の使用状況や用途等に併せて適宜アタッチメントを付け替えことができる。
【0070】
インクジェットヘッド100に加わる圧力変動は、その使用状況や使用目的によって異なる。そのため、本実施形態のインクジェットヘッド100は、リザーバユニット3がフィルタ機能及びダンパ機能を備えている。しかし、リザーバユニット3の持つ能力だけでは、その圧力変動に対応できないことがある。アタッチメント2は、この不足した能力を補うもので、一種の着脱可能なリザーバユニットとして機能する。つまり、本実施形態のインクジェットヘッド100は、変形可能であって、リザーバユニットの一部が着脱式のヘッドである。このとき、上述のように各機能が異なるアタッチメント2を用意することで、アタッチメント2を持たないインクジェットヘッド100を基本として、色々な環境や目的にあったインクジェットヘッドとなる。
【0071】
また、本実施の形態のインクジェットヘッド100では、アタッチメント2の供給流路28は、フィルタ23によって本体部21に形成された上流部と供給弁開放部24に形成された下流部とに分割されるフィルタ室23aを有している。そして、供給流路28における本体部21に形成された上流部の上面の流路壁は、フィルム22aによって画定されている。したがって、アタッチメント2は、フィルタ23が配置されたフィルタ室23aとフィルム22aで画定されたダンパ室との2つを兼ね備えた1つの液室を持つ。よって、アタッチメント2をコンパクトに構成することができる。
【0072】
<変形例>
ここで、上述の実施の形態の変形例について説明する。本変形例は、アタッチメントを誤った方向に装着することを回避可能な構成を有しており、誤装着されたとき、インクの供給だけが可能な構成(第1の変形例)と、インクの循環が可能な構成(第2の変形例)とがある。本変形例のインクジェットヘッドは、いずれも上述の実施の形態における供給弁開放部24及び排出弁開放部25の構成を変更したものであり、その他の構成は上述の実施の形態の構成とほぼ同様である。なお、上述の実施の形態と同様の構成を有するものには、同一の符号を付している。
【0073】
(第1の変形例)
まず、図11を参照しつつ、上述の実施の形態の第1の変形例について説明する。図11は、本変形例のアタッチメント120の供給弁開放部124及び排出弁開放部125、並びに本体ブロック1の供給弁機構170及び排出弁機構180が取り付け付けられた部分近傍の断面図である。
【0074】
図11に示すように、本変形例のアタッチメント120は、本体部21の下面から供給弁開放部124の先端までの長さは、本体部21の下面から排出弁開放部125の先端までの長さよりも長い。すなわち、本変形例では、供給弁開放部124及び排出弁開放部125の本体部21の下面からの突出長さが互いに異なっている。より詳細には、図11(a)においてL1で示す供給弁開放部124及び排出弁開放部125の長さの差は、L2で示す供給弁機構170の可動部材176及び排出弁機構180の可動部材186が移動する封止位置と開放位置との間隔と同じかそれよりも大きい。
【0075】
本変形例のインクジェットヘッドは、上述の実施の形態のインクジェットヘッド100と同様に、別部材を必要とすることなく、アタッチメント120を外しておくだけでインク供給口42及びインク排出口43を塞いだ状態に保つことができる。また、アタッチメント120を取り付けるだけでインクを供給可能であり且つ排出可能な状態にすることができる。
【0076】
さらに、本変形例のアタッチメント120は、供給弁開放部124及び排出弁開放部125の長さの差L1によって、視覚的に配置関係を認識し易く、間違った方向で本体ブロック1へ取り付けるのを防ぐことができる。アタッチメント120をより確実に正しい方向で装着するという観点から、図11に示すように、固定部材173、183の上方の開放端の高さを供給側と排出側とで異なるようにしてもよい。また、本体部21の下面から供給弁開放部124の先端までの長さが、本体部21の下面から排出弁開放部125の先端までの長さよりも長く、長さの差L1が可動部材176、186が移動する封止位置と開放位置との間隔L2よりも大きいので、仮に、アタッチメント120を誤った方向に装着しても、少なくとも本体ブロック1のリザーバ41へのインクの供給は行われる。したがって、インクジェットヘッドによる印字を可能とすることができる。
【0077】
すなわち、アタッチメント120の取り付け方向を誤り、供給弁開放部124を排出弁機構180内に、排出弁開放部125を供給弁機構170内に挿入した場合、排出弁機構180の可動部材186は、供給弁開放部124の先端に押圧されることにより開放位置に達する。これにより、排出弁機構180は開放状態となる。このとき、排出弁開放部125は、図11(b)において破線で示すように、その先端が供給弁機構170の可動部材176と当接しない位置にある。つまり、このような状態では、排出弁開放部125は、可動部材176を押圧することができない。
【0078】
(第2の変形例)
次に、図12を参照しつつ、上述の実施の形態の第2の変形例について説明する。図12は、本変形例のアタッチメント220の供給弁開放部224及び排出弁開放部225、並びに本体ブロック1の供給弁機構270及び排出弁機構280が取り付け付けられた部分近傍の断面図である。
【0079】
図12に示すように、本変形例のアタッチメント220は、本体部21の下面から供給弁開放部224の先端までの長さは、本体部21の下面から排出弁開放部225の先端までの長さよりも長い。より詳細には、図12(a)においてL3で示す供給弁開放部224及び排出弁開放部225の長さの差は、L4で示す供給弁機構270の可動部材276及び排出弁機構280の可動部材286が移動する封止位置と開放位置との間隔よりも小さい。したがって、図12(b)に示すように、供給弁開放部224の先端が供給弁機構270の開放位置に達したとき、排出弁開放部225の先端は、供給弁機構270の開放位置よりも下方に位置する。また、L3は、図12においてL5で示す排出弁機構280の開放位置及び供給弁機構270の封止位置との間隔よりも小さい。
【0080】
本変形例のインクジェットヘッドは、上述の実施の形態のインクジェットヘッド100と同様に、別部材を必要とすることなく、アタッチメント220を外しておくだけでインク供給口42及びインク排出口43を塞いだ状態に保つことができる。また、アタッチメント220を取り付けるだけでインクを供給可能であり且つ排出可能な状態にすることができる。
【0081】
さらに、本変形例のアタッチメント220は、供給弁開放部224及び排出弁開放部225の長さの差L3によって、視覚的に配置関係を認識し易く、間違った方向で本体ブロック1へ取り付けるのを防ぐことができる。アタッチメント220をより確実に正しい方向で装着するという観点から、図12に示すように、固定部材273、283の上方の開放端の高さを供給側と排出側とで異なるようにしてもよい。また、供給弁開放部224及び排出弁開放部225の長さの差L3が、可動部材276、286が移動する封止位置と開放位置との間隔L4よりも小さく、且つ、排出弁機構280の開放位置及び供給弁機構270の封止位置との間隔L5より小さいので、仮に、アタッチメント220を誤った方向に装着しても、アタッチメント220の供給流路28及び排出流路29をリザーバユニット3のリザーバ41にそれぞれ連通させることができる。
【0082】
すなわち、アタッチメント220の取り付け方向を誤り、供給弁開放部224を排出弁機構280内に、排出弁開放部225を供給弁機構270内に挿入した場合、排出弁機構280の可動部材286は、供給弁開放部224の先端に押圧されることにより開放位置に達する。これにより、排出弁機構280は開放状態となる。すなわち、アタッチメント220の供給流路28とリザーバユニット3のリザーバ41とを繋ぐ流路が確保される。このとき、排出弁開放部225は、図12(b)において破線で示すように、その先端が供給弁機構270の封止位置よりも下方に位置する。つまり、このとき、供給弁機構270の可動部材276は、排出弁開放部225によって付勢バネ79による付勢方向とは反対の方向に押圧される。したがって、アタッチメント220を正しく取り付けた場合に比べて、流路抵抗の増加はあるが、アタッチメント220の排出流路29とリザーバユニット3のリザーバ41とを繋ぐ流路を確保することができる。
【0083】
以上、本発明の好適な一実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて、様々な設計変更を行うことが可能なものである。例えば、上述の実施の形態では、本体ブロック1に、その内部のリザーバ41のインクを排出するインク排出口43が形成されており、アタッチメント2に、インク排出口43から排出されたインクが通過する排出流路29が形成されている場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、リザーバ41のインクを排出できない構造であってもよい。
【0084】
また、上述の実施の形態では、供給弁機構70の固定部材73と排出弁機構80の固定部材83とが一体に形成されている場合について説明した。また、供給弁機構70の連通部材71と排出弁機構80の連通部材81についても一体に形成されている場合について説明した。しかしながら、固定部材73、83、及び連通部材71、81はそれぞれ別部材であってもよい。
【0085】
さらに、上述の実施の形態では、アタッチメント2がフィルタ機能及びダンパ機能を有している場合について説明したが、これには限定されない。例えば、アタッチメント2は、フィルタ機能及びダンパ機能のいずれか一方のみを有していてもよいし、いずれの機能も有していなくてもよい。
【0086】
また、上述の実施の形態では、ダンパ機能は供給流路28が備えるとして説明したが、排出流路29の一部に備えられていても良い。上述のように、本実施のインクジェットヘッド100は、リザーバユニット3内において、流出流路32bがフィルタ室の上流部末端で流入流路32aと連通している。そのため、圧力変動に対する減衰効果は、フィルム22aの設置位置にかかわらずほぼ同等である。
【0087】
加えて、上述の実施の形態では、アタッチメント2が、フィルタ23が配置されたフィルタ室23aとフィルム22aで画定されたダンパ室との2つを兼ね備えた1つの液室を持つ場合について説明したが、フィルタ室23aとダンパ室とが別の液室に形成されていてもよい。
【0088】
また、上述の第1及び第2の変形例では、本体部21の下面から供給弁開放部124(224)の先端までの長さが、本体部21の下面から排出弁開放部125(225)の先端までの長さよりも長い場合について説明したが、逆に本体部21の下面から排出弁開放部125(225)の先端までの長さが、本体部21の下面から供給弁開放部124(224)の先端までの長さよりも長くてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施の形態にかかるインクジェットヘッドの概略斜視図である。
【図2】図1に示すインクジェットヘッドの分解斜視図である。
【図3】図2に示すリザーバユニットの主走査方向に沿う断面図である。
【図4】図2に示すリザーバユニットを構成する各部材の平面図である。
【図5】図2に示す本体ブロックのインク供給口近傍の部分拡大断面図である。
【図6】図2に示す流路ユニットの平面図である。
【図7】図6に示す流路ユニットの部分断面図である。
【図8】図1に示すアタッチメントの斜視図である。
【図9】図1に示すアタッチメントの平面図及び断面図である。
【図10】図2に示す供給弁機構の開閉動作を説明するための図である。
【図11】本実施の形態の第1の変形例にかかるインクジェットヘッドの部分断面図である。
【図12】本実施の形態の第2の変形例にかかるインクジェットヘッドの部分断面図である。
【符号の説明】
【0090】
1 本体ブロック
2 アタッチメント
11 ノズル
12 圧力室
15 個別インク流路
21 本体部
22a フィルム
23 フィルタ
23a フィルタ室
24 供給弁開放部(第1弁開放部)
25 排出弁開放部(第2弁開放部)
28 供給流路
29 排出流路
41 リザーバ
42 インク供給口
43 インク排出口
70、80 供給弁機構、排出弁機構(第1弁機構、第2弁機構)
71、81 連通部材(第1連通部材、第2連通部材)
72、82 連通路(第1連通路、第2連通路)
76、86 可動部材(第1可動部材、第2可動部材)
79、89 付勢バネ(第1付勢部材、第2付勢部材)
100 インクジェットヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを一時的に貯留するリザーバ、前記リザーバにインクを供給するインク供給口、前記リザーバと連通する共通インク室、及び前記共通インク室の出口から圧力室を経てノズルに至る複数の個別インク流路が形成された本体ブロックと、
前記本体ブロックに取り付けられており、前記インク供給口を封止する状態と開放する状態とのいずれかの状態を選択的に取り得る第1弁機構と、
前記本体ブロックに対して着脱可能に取り付けられており、前記インク供給口に送られるインクが通過する供給流路が形成されているアタッチメントとを備えており、
前記第1弁機構は、前記アタッチメントが前記本体ブロックに取り付けられていない場合には前記インク供給口を封止する状態となり、前記アタッチメントが前記本体ブロックに取り付けられると前記インク供給口を開放する状態となることを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記本体ブロックに、前記リザーバのインクを排出するインク排出口がさらに形成されていると共に、前記アタッチメントに、前記インク排出口から排出されたインクが通過する排出流路が形成されており、
前記本体ブロックに取り付けられており、前記インク排出口を封止する状態と開放する状態とのいずれかの状態を選択的に取り得る第2弁機構をさらに備えており、
前記第2弁機構は、前記アタッチメントが前記本体ブロックに取り付けられていない場合には前記インク排出口を封止する状態となり、前記アタッチメントが前記本体ブロックに取り付けられると前記インク排出口を開放する状態となることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記第1弁機構は、前記インク供給口を介して前記本体ブロックの内部から外部に延びる第1連通路が形成され前記本体ブロックに固定された第1連通部材と、前記第1連通路の前記本体ブロックの内部側の一端を封止する第1封止位置と該一端を開放する第1開放位置との間で移動可能な第1可動部材と、前記第1可動部材を前記第1封止位置に向けて付勢する第1付勢部材とを有しており、
前記第2弁機構は、前記インク排出口を介して前記本体ブロックの内部から外部に延びる第2連通路が形成され前記本体ブロックに固定された第2連通部材と、前記第2連通路の前記本体ブロックの内部側の一端を封止する第2封止位置と該一端を開放する第2開放位置との間で移動可能な第2可動部材と、前記第2可動部材を前記第2封止位置に向けて付勢する第2付勢部材とを有しており、
前記アタッチメントが、前記本体ブロックに取り付けられた状態において前記第1連通路に挿通されると共に前記第1可動部材を前記第1付勢部材による付勢方向とは反対方向に押圧することによって前記第1開放位置に移動させる第1弁開放部と、前記本体ブロックに取り付けられた状態において前記第2連通路に挿通されると共に前記第2可動部材を前記第2付勢部材による付勢方向とは反対方向に押圧することによって前記第2開放位置に移動させる第2弁開放部とを有していることを特徴とする請求項2に記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記第1連通部材と前記第2連通部材とが一体に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
前記アタッチメントは、前記供給流路と前記排出流路とを有する本体部をさらに備えており、
前記第1弁開放部及び前記第2弁開放部が前記本体部の一側面に突設されており、
前記一側面から前記第1弁開放部の先端までの距離と前記一側面から前記第2弁開放部の先端までの距離とが所定長さだけ異なっていることを特徴とする3または4に記載のインクジェットヘッド。
【請求項6】
前記アタッチメントは、
前記一側面から前記第1弁開放部の先端までの距離が前記一側面から前記第2弁開放部の先端までの距離よりも長いことを特徴とする請求項5に記載のインクジェットヘッド。
【請求項7】
前記所定長さが、前記第1封止位置と前記第1開放位置との間隔よりも小さく、且つ、前記付勢方向に関する、前記第2開放位置と前記第1封止位置との間隔よりも小さいことを特徴とする請求項6に記載のインクジェットヘッド。
【請求項8】
前記供給流路及び前記排出流路の少なくとも一方の一部が、可撓性を有すると共に、一方の面が大気と接し他方の面がインクと接することで前記大気と前記インクとを分離するフィルムによって画定されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項9】
前記供給流路はフィルタが設けられていると共に、前記フィルタによって上流側と下流側とに2分割されるフィルタ室を有しており、
前記フィルムは、分割された前記フィルタ室の少なくとも一方の部屋の壁面を画定することを特徴とする請求項8に記載のインクジェットヘッド。
【請求項10】
前記供給流路にフィルタが設けられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−226738(P2009−226738A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−75061(P2008−75061)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】