説明

インクジェット用インク

【課題】発色性、安定性および定着性に優れ、特にテキスタイル向けとして優れるインクジェット用インクを提供する。
【解決手段】水と、表面に極性基を導入することによって水に分散可能とした平均粒径が20nm以上300nm以下のカーボンブラック分散体と、平均粒径が400nm以下であるフッ素樹脂粒子とを含んでなるインクジェット用インクであって、上記カーボンブラックのDBP吸油量が100ml/100g以下で、且つ平均一次粒子径が10nm以上50nm以下であり、当該カーボンブラックの含有量に対する上記フッ素樹脂粒子の含有量が、10重量%から150重量%の範囲にあることを特徴とするインクジェット用インク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発色性、安定性および定着性に優れ、特にテキスタイル向けとして耐擦性に優れるインクジェット用インクに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式を用いたデジタル捺染は、スクリーン捺染に対して工程の簡素化や小ロット対応が容易であり、低エネルギー低コストで捺染製品を提供できる技術である。捺染用インクジェットインクとしては染料インクが主流であるが、布帛の前処理や印捺後の加熱、後処理が簡略化できる顔料インクは、インクジェット方式によるデジタル捺染の特長をより際立たせるものである。
【0003】
しかし、顔料インクは印刷媒体の表面近傍に顔料粒子が残存することで高い発色性を実現する特性上、耐擦性能が低くなる傾向がある。特に、捺染用途では印刷部の摺動による色落ちや色移りを抑制する高い耐擦性能が要求されている。また、洗濯やドライクリーニングによる印刷部の色落ち、離脱した色材によるクリーニング液の汚染といった、所謂洗濯堅牢性の課題もある。これらの性能は、インク中の顔料濃度の低減により、見かけ上改善することが可能であるが、印刷部の発色が低下する現象を招く。即ち、捺染向けインクジェット顔料インクにおいては、発色性に代表される印刷品質と、耐擦性および洗濯堅牢性の両立が大きな課題となっている。
【0004】
このような課題を解決するために、捺染用布帛に前処理を施すもの(特許文献1参照)、結合剤に関するもの(特許文献2)、インク中の樹脂エマルションと反応液との反応を利用するもの(特許文献3参照)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008−504465号公報
【特許文献2】特開2007−126635号公報
【特許文献3】特開平9−207424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、耐擦性および洗濯堅牢性を改善するための、布帛に処理を施す方法や反応液を利用する方法は、装置や工程の複雑化とそれに伴うコスト増加を招き易く、低エネルギー低コストを旨とするインクジェット式捺染の特長を充分には発揮しにくかった。また、インクの特性によって上記性能改善に対応しようとする場合、インクの粘度が高くなる、ヘッドからのインクの吐出が不安定になる、インクの長期保存時の安定性が低下するといった現象が発現し易くなることがあった。更に、充分な耐擦性や洗濯堅牢性を確保するためには、捺染用途において求められる発色性をはじめとする印刷品質が、確保しにくくなる嫌いがあった。
本発明はこのような課題を解決するものであり、その目的とするところは、印刷品質に優れ、特にテキスタイル向けインクジェット用インクとして耐擦性、洗濯堅牢性、保存安定性に優れ、また、インクジェットヘッドからの吐出安定性に優れるインクジェット用インクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のインクジェット用インクは、水と、表面に極性基を導入することによって水に分散可能とした、平均粒径が20nm以上300nm以下のカーボンブラック分散体と、平均粒径が400nm以下であるフッ素樹脂粒子とを含んでなり、上記カーボンブラックのDBP吸油量が100ml/100g以下で、且つ平均一次粒子径が10nm以上50nm以下であり、当該カーボンブラックの含有量に対する上記フッ素樹脂粒子の含有量が、10重量%から150重量%の範囲にあることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、印刷品質に優れ、特に布帛向けインクジェット用インクとして耐擦性と、洗濯堅牢性と、保存安定性とに優れ、また、インクジェットヘッドからのインクの吐出安定性に優れるなどの特性が要求されていることに鑑み、鋭意検討した結果完成されたものである。
【0009】
本発明は、水と、表面に極性基を導入することによって水に分散可能とした、平均粒径が20nm以上300nm以下のカーボンブラック分散体と、平均粒径が400nm以下であるフッ素樹脂粒子とを含んでなり、上記カーボンブラックのDBP吸油量が100ml/100g以下で、且つ平均一次粒子径が10nm以上50nm以下であり、当該カーボンブラックの含有量に対する上記フッ素樹脂粒子の含有量が、10重量%から150重量%の範囲にあることを特徴とするインクジェット用インクである。
【0010】
ここで、前記「表面に極性基を導入する」とは、親水性基付与剤によって顔料表面に多数の親水性基を、直接または間接的に結合させることである。こうして処理した顔料が表面処理顔料である。表面処理顔料の表面に結合させる親水性基としては、スルホン基、カルボキシル基、カルボニル基、ヒドロキシル基、リン酸基、第4級アンモニウム、およびそれらの塩等が挙げられる。親水性基付与剤としては、スルホン基を付与するものとして、硫酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、クロロ硫酸、フルオロ硫酸、アミド硫酸、スルホン化ピリジン塩、スルファミン酸等を、カルボキシル基を付与するものとして、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム等の次亜ハロゲン酸塩等を用いることができる。また、前記の化学的処理の他に、真空プラズマ処理等のような物理的酸化によりカルボン酸基を付与する方法もある。
【0011】
本発明のインクが含んでなるカーボンブラック分散体の平均粒径は、20nm以上300nm以下であり、フッ素樹脂粒子の平均粒径は400nm以下である。カーボンブラック分散体およびフッ素樹脂粒子の平均粒径は、光散乱法で測定する。光散乱法によるカーボンブラック分散体の平均粒径が、20nm以上で発色性が向上し、分散体としての安定性が確保される。また、カーボンブラック分散体の平均粒径を300nm以下とすることにより、定着性を向上させる。好ましくは40nm〜230nmである。また、フッ素樹脂粒子の平均粒径を400nm以下とすることで、フッ素樹脂粒子の沈降の抑制、インクジェットヘッドからの吐出の安定性を確保する。
【0012】
また、上記フッ素樹脂粒子の含有量は、上記カーボンブラックの含有量に対して、10重量%から150重量%の範囲である。カーボンブラックの含有量に対するフッ素樹脂粒子の含有量を、10重量%以上150重量%以下とすることにより、印刷物の耐擦性を効果的に改善することができる。また、本発明のインクにおける上記フッ素樹脂粒子の含有量は、0.1重量%から10重量%の範囲が好ましい。インクに添加するフッ素樹脂粒子の量が、0.1重量%未満では充分な耐擦性能の向上効果が発現せず、10重量%を超えるとインクジェットヘッドからの吐出が不安定になりやすい。
【0013】
本発明においてフッ素樹脂粒子として用いるフッ素樹脂の例としては、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、ポリビニリデンフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー、テトラフルオロエチレン−パーフルオロイジオキソールコポリマー、ポリビニルフルオライドなどがあげられる。
【0014】
本発明のインクに用いるカーボンブラックは、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類が挙げられる。これらに上記の親水性基を付与する表面処理を施し、表面処理カーボンブラックとして用いる。また、市販の表面処理カーボンブラックを利用することも可能である。更に、上記カーボンブラックのDBP吸油量は、100ml/100g以下であることが好ましい。DBP吸油量を100ml/100g以下とすることによって、インクジェットのノズルの目詰まりやインクの長期保存による変質が低減する。また、上記カーボンブラックの平均一次粒子径は、10nm以上50nm以下であることが好ましい。カーボンブラック顔料の平均一次粒子径が10nm以上で分散安定性が向上し、50nm以下とすることでインクジェットヘッドからのインクの吐出が安定な状態に保たれる。より好ましくは、35nm以下である。
【0015】
また、本発明に用いるカーボンブラックは、分散メディアを用いる方式、分散メディアを用いない相互衝突方式等、各種分散方式によって分散体とすることができる。
【0016】
本発明のインクは、1、2−アルキレングリコールを用いることが好ましい。1、2−アルキレングリコールを用いることでにじみが低減し、印刷品質が向上する。本発明に用いる1、2−アルキレングリコールの例としては1、2−ヘキサンジオール、1、2−ペンタンジオールおよび4−メチル−1、2−ペンタンジールのように、炭素数5または6の1、2−アルキレングリコールが好ましい。中でも、炭素数6の1、2−ヘキサンジオールおよび4−メチル−1、2−ペンタンジオールが好ましい。これら1、2−アルキレングリコールの添加量は0.3重量%〜30重量%(以下単に「%」ということもある。)、より好ましくは0.5%〜10%である。また、グリコールエーテルを用いることも好ましい。このグリコールエーテルとしては、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルおよびジプロピレングリコールモノブチルエーテルを用いることが好ましい。これらグリコールエーテルの添加量は0.1%〜20%、より好ましくは0.5%〜10%である。
【0017】
一方、本発明のインクは、アセチレングリコール系界面活性剤および/またはアセチレンアルコール系界面活性剤を用いることが好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤および/またはアセチレンアルコール系界面活性剤を用いることで、さらににじみが低減し、印刷品質が向上する。本発明に用いるアセチレングリコール系界面活性剤および/またはアセチレンアルコール系界面活性剤は2、4、7、9−テトラメチル−5−デシン−4、7−ジオールおよび2、4、7、9−テトラメチル−5−デシン−4、7−ジオールのアルキレンオキシド付加物、2、4−ジメチル−5−デシン−4−オールおよび2、4−ジメチル−5−デシン−4−オールのアルキレンオキシド付加物から選ばれた1種以上が好ましい。それらアセチレングリコール系界面活性剤および/またはアセチレンアルコール系界面活性剤はエアプロダクツ(英国)社のオルフィン104シリーズ、日信化学工業社のオルフィンE1010などのEシリーズ、サーフィノール465あるいはサーフィノール61などとして入手可能である。これらの添加により印字の乾燥性が向上し、高速印刷が可能となる。
【0018】
更に、本発明のインクは、上記した1、2−アルキレングリコールと、アセチレングリコール系界面活性剤および/またはアセチレンアルコール系界面活性剤と、グリコールエーテルとからなる群から選ばれる2種以上を用いることにより、よりにじみを低減させることができる。たとえば、1、2−アルキレングリコールと、アセチレングリコール系界面活性剤および/またはアセチレンアルコール系界面活性剤との組合せ、グリコールエーテルとアセチレングリコール系界面活性剤および/またはアセチレンアルコール系界面活性剤との組合せが挙げられる。
【0019】
また、本発明のインクは、その放置安定性の確保、インクジェットヘッドからの安定吐出、目詰まり改善、あるいはインクの劣化防止等を目的として、保湿剤、溶解助剤、浸透制御剤、粘度調整剤、pH調整剤、溶解助剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、腐食防止剤、分散に影響を与える金属イオンを捕獲するためのキレート等種々の添加剤を添加することもできる。
【実施例】
【0020】
以下、本発明をより具体的に説明する。尚、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0021】
(実施例1)
(1)カーボンブラック分散体1の製造
市販のカーボンブラック(#44:三菱化学社製、一次粒子径24nm、DBP吸油量78[100ml/100g])100.0重量部を水900.0重量部に混合し、アイガーモーターミルM250(アイガージャパン社製)でビーズ充填率70%および回転数5000rpmの条件で2時間分散した。この分散液に次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素濃度12%)1500.0重量部を滴下し、アイガーモーターミルで攪拌しながら5時間反応させた後、100℃に温度制御して8時間攪拌した。次いで、得られたスラリーを濾過、水洗し、カーボンブラック顔料濃度15%に調整して表面処理カーボンブラック分散体1を得た。マイクロトラック粒度分布測定装置UPA250(日機装製)を用いて粒径を測定したところ180nmであった。
【0022】
(2)フッ素樹脂粒子分散液1の作製
フッ素樹脂粒子として、ポリテトラフルオロエチレン(以下[PTFE]と呼ぶ)粉(株式会社喜多村製KTL−500F:一次粒子径0.3μm)を用いた。KTL−500Fを30部、イオン交換水を100部、オルフィンE1010(日信化学工業株式会社)10部とを混合した。その後、ジルコニアビーズを用いたアイガーミルを用いて2時間かけて分散した。次いで、別の容器に移してイオン交換水を60部添加して、さらに1時間攪拌した。そして、ジルコニアビーズを除去後、10μmのメンブレンフィルターでろ過しイオン交換水で調整してPTFE濃度が15%であるフッ素樹脂粒子分散液1とした。
【0023】
なお、上記フッ素樹脂粒子の平均粒径、および上記カーボンブラックの含有量に対する上記フッ素樹脂粒子の含有量(重量%)については、表1、3に記載した。以降の実施例および比較例についても同様である。
【0024】
(3)インクジェット記録用インクの調製
以下、インクジェット記録用インクに好適な組成の例を表2に示す。本発明のインクジェット記録用インクの調製は、上記の方法で作製したカーボンブラック分散体1およびフッ素樹脂粒子分散液1を用い、表2に示すビヒクル成分と混合することによって作製した。尚、本発明の実施例および比較例中の残量の水にはインクの腐食防止のためトップサイド240(パーマケムアジア社製)を0.05%、インクジェットヘッド部材の腐食防止のためベンゾトリアゾールを0.02%、インク系中の金属イオンの影響を低減するためにEDTA(エチレンジアミン四酢酸)・2Na塩を0.04%それぞれイオン交換水に添加したものを用いた。
【0025】
(4)耐擦性試験とドライクリーニング性試験
実施例1のインクを用い、インクジェットプリンターとしてセイコーエプソン株式会社製PX−A650を用いて、綿にベタ印字したサンプルを作成する。そのサンプルをテスター産業株式会社の学振式摩擦堅牢性試験機AB−301Sを用いて荷重200gで100回擦る摩擦堅牢性を行なった。インクのはがれ具合を確認する日本工業規格(JIS)JIS L0849によって、乾燥と湿潤の2水準で評価した。また、同様にドライクリーニング試験をJIS L0860のB法によって評価した。耐擦性試験およびドライクリーニング試験の結果を表1に示す。
【0026】
(5)保存安定性の試験
実施例1に用いたカーボンブラック分散体1の初期粘度及び70℃で1週間静置した後の粘度を、ローリングボール式粘度計(AMVn、アントンパール社製)で測定した。その結果を、保存安定性:70℃で1週間静置した後の粘度(mPa・s)/初期粘度(mPa・s)の値として表1に示す。
【0027】
(6)吐出安定性の試験
実施例1のインクを用い、インクジェットプリンターとしてセイコーエプソン株式会社製PX−A650を使用して、35℃35%雰囲気で富士ゼロックス社製XeroxP紙A4判にマイクロソフトワードで文字サイズ11の標準、MSPゴシックで4000字/ページの割合で100ページ印刷して評価した。全く印字乱れがないものをAA、1箇所印字乱れがあるものをA、2箇所〜3箇所印字乱れがあるものをB、4箇所〜5箇所印字乱れがあるものをC、6箇所以上印字乱れがあるものをDとして結果を表1に示す。
【0028】
(実施例2)
実施例2は実施例1において、用いたカーボンブラックを市販のカーボンブラック(#95:三菱化学社製、一次粒子径40nm、DBP吸油量66[100ml/100g])とした以外は、実施例1と同様にカーボンブラック分散体を作製、フッ素樹脂粒子分散液1を使用してインクを調製し、評価した。インク組成表を表2に示す。
【0029】
ここで作製したカーボンブラック分散体をカーボンブラック分散体2とし、実施例1と同様に粒径を測定したところ200nmであった。
【0030】
耐擦性試験、ドライクリーニング性試験、保存安定性試験、吐出安定性試験は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0031】
(実施例3)
実施例3は実施例1において、用いたカーボンブラックを市販のカーボンブラック(#900:三菱化学社製、一次粒子径16nm、DBP吸油量56[100ml/100g])とした以外は、実施例1と同様にカーボンブラック分散体を作製、フッ素樹脂粒子分散液1を使用してインクを調製し、評価した。インク組成表を表2に示す。
【0032】
ここで作製したカーボンブラック分散体をカーボンブラック分散体3とし、実施例1と同様に粒径を測定したところ150nmであった。
耐擦性試験、ドライクリーニング性試験、保存安定性試験、吐出安定性試験は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0033】
(実施例4)
実施例4は実施例3において、用いたフッ素樹脂粒子分散液を、市販のルブロンPTFE水性分散液LDW−410(一次粒子径0.2μm、ダイキン工業株式会社製)とした以外は、実施例3と同様にカーボンブラック分散体3を用いてインクを調製し、評価した。ここで用いたフッ素樹脂粒子分散液を、フッ素樹脂粒子分散液2とした。
インク組成表を表2に示す耐擦性試験、ドライクリーニング性試験、保存安定性試験、吐出安定性試験は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0034】
(比較例1)
比較例1は実施例1において、用いたカーボンブラックを市販のカーボンブラック(#5:三菱化学社製、一次粒子径76nm、DBP吸油量71[100ml/100g])とした以外は、実施例1と同様にカーボンブラック分散体を作製、フッ素樹脂粒子分散液1を使用してインクを調製し、評価した。インク組成表を表2に示す。
【0035】
ここで作製したカーボンブラック分散体をカーボンブラック分散体4とし、実施例1と同様に粒径を測定したところ220nmであった。
耐擦性試験、ドライクリーニング性試験、保存安定性試験、吐出安定性試験は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0036】
(比較例2)
比較例2は実施例1において、用いたカーボンブラックを市販のカーボンブラック(#30:三菱化学社製、一次粒子径30nm、DBP吸油量113[100ml/100g])とした以外は、実施例1と同様にカーボンブラック分散体を作製、フッ素樹脂粒子分散液1を使用してインクを調製し、評価した。インク組成表を表2に示す。
【0037】
ここで作製したカーボンブラック分散体をカーボンブラック分散体5とし、実施例1と同様に粒径を測定したところ180nmであった。
耐擦性試験、ドライクリーニング性試験、保存安定性試験、吐出安定性試験は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0038】
(比較例3)
比較例3は実施例1において、用いたカーボンブラック分散体の粒径を350nmとした以外は、実施例1と同様にフッ素樹脂粒子分散液1を使用してインクを調製し、評価した。インク組成表を表2に示す。ここで作製したカーボンブラック分散体をカーボンブラック分散体6とした。
【0039】
(比較例4)
比較例4は実施例1において、用いたフッ素樹脂粒子の一次粒子径を0.5μmとした以外は、実施例1と同様にカーボンブラック分散体1を用いてインクを調製し、評価した。ここで作製したフッ素樹脂粒子分散液を、フッ素樹脂粒子分散液3とした。
インク組成表を表2に示す耐擦性試験、ドライクリーニング性試験、保存安定性試験、吐出安定性試験は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0040】
(比較例5)
比較例5は実施例1において、フッ素樹脂粒子分散液を無添加とした以外は、実施例1と同様にカーボンブラック分散体1を用いてインクを調製し、評価した。
インク組成表を表2に示す耐擦性試験、ドライクリーニング性試験、保存安定性試験、吐出安定性試験は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0041】
(比較例6)
比較例6は実施例1において、フッ素樹脂粒子の含有量がカーボンブラックの含有量に対して170重量%となるように配合した以外は、実施例1と同様に調製し、評価した。
インク組成表を表2に示す耐擦性試験、ドライクリーニング性試験、保存安定性試験、吐出安定性試験は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、表面に極性基を導入することによって水に分散可能とした、平均粒径が20nm以上300nm以下のカーボンブラック分散体と、平均粒径が400nm以下であるフッ素樹脂粒子とを含んでなるインクジェット用インクであって、
上記カーボンブラックのDBP吸油量が100ml/100g以下で、且つ平均一次粒子径が10nm以上50nm以下であり、当該カーボンブラックの含有量に対する上記フッ素樹脂粒子の含有量が、10重量%から150重量%の範囲にあることを特徴とするインクジェット用インク。
【請求項2】
前記フッ素樹脂粒子の含有量が、0.1重量%から10重量%であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット用インク。
【請求項3】
前記フッ素樹脂粒子が、ポリテトラフルオロエチレンであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェット用インク。
【請求項4】
布帛類に印刷することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のインクジェット用インク。

【公開番号】特開2011−178944(P2011−178944A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46309(P2010−46309)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】