説明

インクジェット用液体組成物、インクジェット用インクセット、インクジェット用液体組成物タンク、インクジェット用インクタンク、インクジェット記録方法、並びに、インクジェット記録装置

【課題】 滲み、長期保存安定性に優れたインクジェット用インクセット、インクジェット用インクタンク、インクジェット記録方法、及び、インクジェット記録装置を提供するまた、これらに用いるインクジェット用液体組成物、インクジェット用液体組成物タンクを提供する。
【解決手段】 少なくとも環状構造を有する有機酸、環状構造を有する有機化合物、水溶性溶媒、及び水を含有することを特徴とするインクジェット用液体組成物、これを用いるインクジェット用インクセット、インクジェット用液体組成物タンク、インクジェット用インクタンク、インクジェット記録方法、及び、インクジェット記録装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用液体組成物、インクジェット用インクセット、インクジェット用液体組成物タンク、インクジェット用インクタンク、インクジェット記録方法、並びに、インクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ノズル、スリット、多孔質フィルム等により形成されるインク吐出口からインクを吐出するインクジェット方式は、小型で安価である等の理由から多くのプリンターに用いられている。これらインクジェット方式の中でも、圧電素子の変形を利用しインクを吐出させるピエゾインクジェット方式、及び、熱エネルギーによるインクの沸騰現象を利用しインクを吐出する熱インクジェット方式は高解像度、高速印字性に優れるという特徴を有する。
【0003】
現在、インクジェットプリンターでは普通紙における高速化及び高画質化が重要な課題の一つとして挙げられている。この目標達成に向けて、カチオン性基を有する化合物を含む液体を記録媒体上に付着させた後、その液体が記録媒体に浸透し、媒体中に存在し、かつ、媒体表面から無くなった直後に、アニオン染料を含むインクを付着させて画像を形成する画像形成方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。但し、この方法では、インクの乾燥時間を短くした場合に、画像濃度が不十分となる場合があり、また、少ないドロップ量で印字した場合に、長期噴射性が不十分となる場合が存在した。
【0004】
また、高速乾燥性、高光学濃度、高画質化を目的として、ブラックインクが水と水溶性溶媒を含み、普通紙における乾燥時間が5秒以下であり、カラーインクは、色剤、水、水溶性溶媒、ブラックインクの成分を凝集させる凝集剤を含み、普通紙における浸透時間が5秒以下であることを特徴とするカラーインクセットが提案されている(例えば、特許文献2参照)。この方式を用いた場合、カラーインクの色剤に顔料を用いた場合には、滲み、色間滲みでは優れるものの、凝集剤を含むため、長期保存安定性が充分でない場合が存在した。凝集剤として、通常用いられているのは、電解質や多価金属塩であり、これらの凝集剤としての効果が強すぎることも問題であった。
【0005】
また、噴射特性などの改善を目的に、ピロリドンカルボン酸などの含窒素複素5員環ケト酸又はその塩を含有することを特徴とするインクが提案されている(例えば、特許文献3〜特許文献5参照。)。この方式は、含窒素複素5員環ケト酸の塩による保湿性効果を利用し、噴射性の改善を目的としている。この含窒素複素5員環ケト酸を含有する液体を、本発明のように色材を含有する液体と併用する場合、画質と長期保存安定性の両立を達成できない場合が存在した。
【0006】
上記のように、従来の方法では、滲み、長期保存安定性を同時に満足することはできなかった。
【特許文献1】特許2667401号明細書
【特許文献2】特開2001−294788号公報
【特許文献3】特開昭63−265681号公報
【特許文献4】特許2711888号明細書
【特許文献5】特開2000−109735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は、滲み、長期保存安定性に優れたインクジェット用インクセット、インクジェット用インクタンク、インクジェット記録方法、及び、インクジェット記録装置を提供することにある。また、これらに用いるインクジェット用液体組成物、インクジェット用液体組成物タンクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る課題を解決するため鋭意検討を行った結果、下記の本発明により、滲み、長期保存安定性を同時に満足するという結論に至った。
即ち、本発明は、
<1> 少なくとも環状構造を有する有機酸、環状構造を有する有機化合物、水溶性溶媒、及び水を含有することを特徴とするインクジェット用液体組成物である。
【0009】
<2> 前記環状構造を有する有機酸は、下記一般式(1)で表され、前記環状構造を有する有機化合物は、下記一般式(2)で表されることを特徴とする<1>に記載のインクジェット用液体組成物である。
【0010】
【化1】

【0011】
(一般式(1)中、X1は、置換基を有してもよい炭化水素基、アルキルオキシ基、−OH、−NH2、−NR12、−COOR1、又は−SO3Hを表す。R1は、アルキル基を表す。Yは、置換基を有してもよい炭化水素基を表し、構成する炭素原子の1個以上が他の原子または原子団に置換されてもよい。Mは、水素原子、アルカリ金属、又はアミン類を表す。m1は、0〜3の整数を表す。nは、1〜4の整数を表す。環状構造L1は、構成する炭素原子の1個以上がO、N、Sの原子、又はCO、NH、NR3の原子団で置換されてもよい、飽和もしくは不飽和の環状構造を表す。R3は、アルキル基、アルケニル基、アルケニリデン基、アルキレン基を表す。一般式(2)中、X2は、置換基を有してもよい炭化水素基、アルキルオキシ基、−OH、−NH2、−NR22、−COOR2、又は−SO3Hを表す。R2は、アルキル基を表す。m2は、0〜3の整数を表す。環状構造L2は、構成する炭素原子の1個以上がO、N、Sの原子またはCO、NH、NR4の原子団で置換されてもよい飽和もしくは不飽和の環状構造を表す。R4は、アルキル基、アルケニル基、アルケニリデン基、アルキレン基を表す。)
【0012】
<3> 前記一般式(2)で表される環状構造を有する有機化合物は、前記一般式(2)中のX2の少なくとも一つ、又は環状構造Lを構成する原子団の少なくとも一つが、繰り返し単位を形成する、環状構造を付加した構造の高分子化合物であることを特徴とする<2>に記載のインクジェット用液体組成物である。
【0013】
<4> 前記一般式(1)で表される環状構造を有する有機酸は、前記一般式(1)中の環状構造L1を構成する炭素原子の内、少なくとも1つがCOに置換され、少なくとも1つがNHに置換されている有機酸であり、かつ、前記一般式(2)で表される環状構造を有する有機化合物は、前記一般式(2)中の環状構造L2を構成する炭素原子の内、少なくとも1つがCOに置換され、少なくとも1つがNR4に置換されており、更に、R4は、繰り返し単位を形成する、環状構造を付加した構造の高分子化合物であることを特徴とする<2>に記載のインクジェット用液体組成物である。
【0014】
<5> 前記環状構造を有する有機酸の含有量は、1〜20質量%であることを特徴とする<1>に記載のインクジェット用液体組成物である。
【0015】
<6> 前記環状構造を有する有機化合物の含有量を、前記環状構造を有する有機酸の含有量で割った値(有機化合物(質量%)/有機酸(質量%))は、0.2〜2.0であることを特徴とする<1>に記載のインクジェット用液体組成物である。
【0016】
<7> 25℃における粘度は、10mPa・s以下であることを特徴とする<1>に記載のインクジェット用液体組成物である。
【0017】
<8> 少なくとも第1の液体及び第2の液体を有するインクジェット用インクセットであって、前記第1の液体は、少なくとも、色材、水溶性溶媒、及び水を含有し、前記第2の液体は、請求項1に記載のインクジェット用液体組成物であることを特徴とするインクジェット用インクセットである。
【0018】
<9> <1>に記載のインクジェット用液体組成物を収納したインクジェット用液体組成物タンクである。
【0019】
<10> <8>に記載のインクジェット用インクセットを収納したことを特徴とするインクジェット用インクタンクである。
【0020】
<11> インクジェット用インクセットを用いたインクジェット記録方法であって、
前記インクジェット用インクセットは、<8>に記載のインクジェット用インクセットであり、前記第1の液体及び第2の液体が互いに接触するように記録媒体上に付与し、画像を形成することを特徴とするインクジェット記録方法である。
【0021】
<12> インクジェット用インクセットにおける各液体を記録媒体に吐出するための記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置であって、前記インクジェット用インクセットは、<8>に記載のインクジェット用インクセットであることを特徴とするインクジェット記録装置である。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、滲み、長期保存安定性に優れたインクジェット用インクセット、インクジェット用インクタンク、インクジェット記録方法、及び、インクジェット記録装置を提供することができる。また、これらに用いるインクジェット用液体組成物、インクジェット用液体組成物タンクを提供することができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明について、詳細に説明する。
(インクジェト用インクセット、インクジェット用液体組成物)
本発明のインクジェット用インクセットは、第1の液体と、この第1の液体を凝集させる作用を持たせた2の液体とを含むように構成させたものである。そして、第2の液体として、少なくとも環状構造を有する有機酸、環状構造を有する有機化合物、水溶性溶媒、及び水を含有することを特徴とするインクジェット用液体組成物(本発明のインクジェット用液体組成物)を使用する。
【0024】
前記第1の液体と、第2の液体とを互いに接触するように印字することで、滲み、長期保存安定性を改善することが可能となる。そのメカニズムは明らかとはなっていないが、画質改善効果を得るため、前記第2の液体に有機酸を含有させるが、該有機酸は水に対する溶解度が充分でなく、高濃度に添加することが出来ないものが多く、画質改善効果が十分に発現しない。さらに部分中和によって水に対する溶解性を高めると、第1の液体組成物との作用効率が低下してしまう。
また、ノズル先端部での水分蒸発により有機酸の溶解性が低下し、有機酸が析出することでノズル詰まりを発生することがある。そこで、有機酸は溶解助剤としての有機化合物に溶解させることが望ましい。溶解助剤として用いる有機化合物は一般に水より蒸発は遅い。
【0025】
一方、本発明に用いる有機酸と類似の構造を有する環式化合物あるいは環構造を部分的に有する化合物を同時に用いると、有機酸の溶解性を増し安定性を向上することが可能である。本発明においては、用いる有機酸は環状構造を有する。これは分子量が高い有機酸を液体組成物に使用しても、同じ分子量の直鎖状化合物を同量使用した場合と比べ粘度上昇が小さいという利点があるためである。
更に、溶解助剤として環状構造を有する化合物を用いると環状構造を有する有機酸の溶解安定性が増すのは明確な理由は定かではないが、類似の構造を有する化合物同士の親和性が高いためと考えられる。
【0026】
まず、前記第1の液体について説明する。第1の液体は、少なくとも、色材、水溶性溶媒、水を含有する。
【0027】
第1の液体に使用される色材は、染料、顔料どちらでも構わないが、特に顔料が好ましい。これは、染料に比べて顔料の方が、第2の液体との混合時に凝集が生じやすいためであると考えている。顔料の中でも、顔料が高分子分散剤により分散されている顔料、自己分散可能な顔料、樹脂により被覆された顔料が好ましい。
【0028】
本発明において使用される顔料としては、有機顔料、無機顔料のいずれも使用でき、黒色顔料では、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料等が挙げられる。黒色とシアン、マゼンタ、イエローの3原色顔料のほか、赤、緑、青、茶、白等の特定色顔料や、金、銀色等の金属光沢顔料、無色又は淡色の体質顔料、プラスチックピグメント等を使用しても良い。また、シリカ、アルミナ、又は、ポリマービード等をコアとして、その表面に染料又は顔料を固着させた粒子、染料の不溶レーキ化物、着色エマルション、着色ラテックス等も顔料として使用することも可能である。更には、本発明のために、新規に合成した顔料でも構わない。
【0029】
本発明で使用される顔料の具体例としては、Raven7000,Raven5750,Raven5250,Raven5000 ULTRAII,Raven 3500,Raven2000,Raven1500,Raven1250,Raven1200,Raven1190 ULTRAII,Raven1170,Raven1255,Raven1080,Raven1060(以上コロンビアン・カーボン社製)、Regal 400R,Regal 330R,Regal 660R,Mogul L,Black Pearls L,Monarch 700,Monarch 800,Monarch 880,Monarch 900,Monarch 1000,Monarch 1100,Monarch 1300,Monarch 1400(以上キャボット社製)、Color Black FW1, Color Black FW2,Color Black FW2V,Color Black 18,Color Black FW200,Color Black S150,Color Black S160,Color Black S170,Printex35,Printex U,Printex V,Printex140U,Printex140V,Special Black 6,Special Black 5,Special Black 4A,Special Black4(以上デグッサ社製)、No.25,No.33,No.40,No.47,No.52,No.900,No.2300,MCF−88,MA600,MA7,MA8,MA100(以上三菱化学社製)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
シアン色にはC.I.Pigment Blue−1,−2,−3,−15,−15:1,−15:2,−15:3,−15:4,−16,−22,−60等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
マゼンタ色は、C.I.Pigment Red−5,−7,−12,−48,−48:1,−57,−112,−122,−123,−146,−168,−184,−202等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
黄色は、C.I.Pigment Yellow−1,−2,−3,−12,−13,−14,−16,−17,−73,−74,−75,−83,−93,−95,−97,−98,−114,−128,−129,−138,−151,−154,−155,−180等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
本発明において使用される水に自己分散可能な顔料とは、顔料表面に水に対する可溶化基を数多く有し、高分子分散剤が存在しなくとも水中で安定に分散する顔料のことを指す。具体的には、通常のいわゆる顔料に対して酸・塩基処理、カップリング剤処理、ポリマーグラフト処理、プラズマ処理、酸化/還元処理等の表面改質処理等を施すことにより、水に自己分散可能な顔料が得られる。
また、水に自己分散可能な顔料としては、上記顔料に対して表面改質処理を施した顔料の他、キャボット社製のCab−o−jet−200、Cab−o−jet−250、Cab−o−jet−260、Cab−o−jet−270、Cab−o−jet−300、IJX−444、IJX−55、オリエント化学社製のMicrojet Black CW−1、CW−2等の市販の自己分散顔料等も使用できる。
【0034】
第1の液体に使用される色材であって、自己分散顔料であるものとしては、その表面に官能基にカルボン酸基を含有する色材であることが好ましい。カルボン酸はその解離度が小さいため、酸解離定数pKaが4.5以下である有機酸によりカルボン酸の解離を抑制することができ、凝集が促進されるためであると推測している。
【0035】
第1の液体に使用される色材が、その表面にスルホン酸基を有する色材である場合、色材の他にカルボン酸基を有する高分子化合物(カルボン酸基を有する樹脂)を添加することが好ましい。その表面にスルホン酸基を有する色材は、凝集し難いため、光学濃度、滲み、色間滲みが改善されない傾向にある。一方、カルボン酸基を有する高分子化合物を添加させた場合、二液が混合されたときに、高分子化合物の不溶化が生じる。この際、顔料が高分子化合物に取り込まれて凝集するため、光学濃度、滲み、色間滲みが改善すると推測している。
【0036】
更に、色材として樹脂により被覆された顔料等を使用することもできる。これは、マイクロカプセル顔料と呼ばれ、大日本インキ化学工業社製、東洋インキ社製などの市販のイクロカプセル顔料だけでなく、本発明のために試作されたマイクロカプセル顔料等を使用することもできる。
【0037】
一方、本発明において使用される染料としては、水溶性染料、分散染料のいずれでも構わない。水溶性染料の具体例としては、C.I.Direct Black−2,−4,−9,−11,−17,−19,−22,−32,−80,−151,−154,−168,−171,−194,−195、C.I.Direct Blue−1,−2,−6,−8,−22,−34,−70,−71,−76,−78,−86,−112,−142,−165,−199,−200,−201,−202,−203,−207,−218,−236,−287,−307,C.I.Direct Red−1,−2,−4,−8,−9,−11,−13,−15,−20,−28,−31,−33,−37,−39,−51,−59,−62,−63,−73,−75,−80,−81,−83,−87,−90,−94,−95,−99,−101,−110,−189,−227、C.I.Direct Yellow−1,−2,−4,−8,−11,−12,−26,−27,−28,−33,−34,−41,−44,−48,−58,−86,−87,−88,−132,−135,−142,−144,−173、C.I.Food Black−1,−2、C.I.Acid Black−1,−2,−7,−16,−24,−26,−28,−31,−48,−52,−63,−107,−112,−118,−119,−121,−156,−172,−194,−208、C.I.Acid Blue−1,−7,−9,−15,−22,−23,−27,−29,−40,−43,−55,−59,−62,−78,−80,−81,−83,−90,−102,−104,−111,−185,−249,−254、C.I.Acid Red−1,−4,−8,−13,−14,−15,−18,−21,−26,−35,−37,−52,−110,−144,−180,−249,−257,−289、C.I.Acid Yellow−1,−3,−4,−7,−11,−12,−13,−14,−18,−19,−23,−25,−34,−38,−41,−42,−44,−53,−55,−61,−71,−76,−78,−79,−122などが挙げられる。
【0038】
分散染料の具体例としては、C.I.Disperse Yellow‐3、‐5、‐7、‐8、‐42、‐54、‐64、‐79、‐82、‐83、‐93、‐100、‐119、‐122、‐126、‐160、‐184:1、‐186、‐198、‐204、‐224、C.I.Disperse Orange‐13、‐29、‐31:1、‐33、‐49、‐54、‐66、‐73、‐119、‐163、C.I.Disperse Red‐1、‐4、‐11、‐17、‐19、‐54、‐60、‐72、‐73、‐86、‐92、‐93、‐126、‐127、‐135、‐145、‐154、‐164、‐167:1、‐177、‐181、‐207、‐239、‐240、‐258、‐278、‐283、‐311、‐343、‐348、‐356、‐362、C.I.Disperse Violet‐33、C.I.Disperse Blue‐14、‐26、‐56、‐60、‐73、‐87、‐128、‐143、‐154、‐165、‐165:1、‐176、‐183、‐185、‐201、‐214、‐224、‐257、‐287、‐354、‐365、‐368、C.I.Disperse Green‐6:1、‐9などが挙げられる。
【0039】
本発明に用いられる色材は、第1の液体全質量に対し0.1質量%以上20質量%以下、好ましくは1質量%以上10質量%以下の範囲で使用される。液体中の色材量が0.1質量%未満の場合には、十分な光学濃度が得られない場合が存在し、色材量が20質量%よりも多い場合には、液体の噴射特性が不安定となる場合が存在した。
【0040】
本発明においては、第1の液体に、顔料を分散させるために高分子分散剤を使用することもできる。一方、水に自己分散可能な顔料を用いた場合でも、高分子分散剤を併用することもできる。高分子分散剤としては、ノニオン性化合物、アニオン性化合物、カチオン性化合物、両性化合物等が使用できる。
例えば、α,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの共重合体等が挙げられる。α,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホン化ビニルナフタレン、ビニルアルコール、アクリルアミド、メタクリロキシエチルホスフェート、ビスメタクリロキシエチルホスフェート、メタクリロキシエチルフェニルアシドホスフェート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、クロトン酸アルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル等が挙げられる。
【0041】
上記α,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの単独若しくは複数を共重合して得られる共重合体が高分子分散剤として使用される。具体的には、スチレン−スチレンスルホン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−メタクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸シクロヘキシルエステル−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0042】
第1の液体において使用される高分子分散剤は、重量平均分子量で2,000〜50,000のものが好ましい。高分子分散剤の分子量が2,000未満の場合、顔料が安定に分散しない場合が存在し、一方、分子量が50,000を超える場合には、液体の粘度が高くなり、吐出性が悪化する場合が存在した。より好ましい重量平均分子量は、3,500〜20,000である。
【0043】
第1液体中に添加する高分子分散剤は、0.01質量%以上3質量%以下の範囲で使用される。添加量が3質量%を超える場合には、液体粘度が高くなり、液体の噴射特性が不安定となる場合が存在した。一方、添加量が0.01質量%未満の場合には、顔料の分散安定性が低下する場合が存在した。高分子分散剤添加量としては、0.05質量%以上2.5質量%以下がより好ましく、更に好ましくは、0.1質量%以上2質量%以下である。
【0044】
第1の液体中における色材の粒子の体積平均粒子径は30nm以上250nm以下であることが好ましい。色材の粒子の体積平均粒子径とは、色材そのものの粒子径、又は色材に分散剤等の添加物が付着している場合には、添加物が付着した粒子径をいう。本発明において、体積平均粒子径の測定装置には、マイクロトラックUPA粒度分析計9340(Leeds&Northrup社製)を用いた。その測定は、インク4mlを測定セルに入れ、所定の測定方法に従って行った。尚、即提示に入力するパラメーターとしては、粘度にはインク粘度を、分散粒子の密度には顔料の密度を用いた。より好ましい体積平均粒子径は、50nm以上200nm以下であり、更に好ましくは75nm以上175nm以下である。液体中の粒子の体積平均粒子径が30nm未満である場合には、光学濃度が低くなる場合が存在し、一方、250nmを超える場合には、保存安定性が確保できない場合が存在した。
【0045】
第1の液体に用いられる水溶性有機溶媒としては、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒等が使用される。具体例としては、多価アルコール類では、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等が挙げられる。多価アルコール誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。含窒素溶媒としては、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等が、アルコール類としてはエタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類が、含硫黄溶媒としては、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。その他、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等を用いることもできる。
【0046】
第1の液体に使用される水溶性有機溶媒は、単独で使用しても、2種類以上混合して使用しても構わない。水溶性有機溶媒の含有量としては、1質量%以上60質量%以下、好ましくは、5質量%以上40質量%以下で使用される。液体中の水溶性有機溶媒量が1質量%よりも少ない場合には、十分な光学濃度が得られない場合が存在し、逆に、60質量%よりも多い場合には、液体の粘度が大きくなり、液体の噴射特性が不安定になる場合が存在した。
【0047】
第1の液体の25℃における表面張力は、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、20mN以上45mN/m以下であり、更に好ましくは、20mN/m以上35mN/m以下である。表面張力が20mN/m未満となるとノズル面に液体が溢れ出し、正常に印字できない場合がある。一方、60mN/mを超えると浸透性が遅くなり、乾燥時間が遅くなる場合がある。
【0048】
第1の液体の25℃における粘度は、1.2mPa・s以上25.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは1.5mPa・s以上10.0mPa・s未満、更に好ましくは1.8mPa・s以上5.0mPa・s未満である。第1の液体の粘度が25.0mPa・sより大きい場合には、吐出性が低下する場合が存在した。一方、1.2mPa・sより小さい場合には、噴射性が悪化する場合が存在した。
【0049】
上記の表面張力及び粘度となる範囲で、水が添加される。水の添加量は特に制限は無いが、好ましくは、第1の液体全体に対して、10質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは、30質量%以上80質量%以下である。
【0050】
次に、第2の液体(本発明のインクジェット用液体組成物)について説明する。
前記第2の液体は、少なくとも環状構造を有する有機酸、環状構造を有する有機化合物、水溶性溶媒、及び水を含有することを特徴とする。ここで、本発明における環状構造を有する有機化合物は、その構造の中に酸となる成分を含んでいなものをいう。つまり、前記環状構造を有する有機酸と、前記環状構造を有する有機化合物とは異なる化合物である。
また、前記環状構造を有する有機酸は、下記一般式(1)で表され、前記環状構造を有する有機化合物は、下記一般式(2)で表されることが好ましい。
【0051】
【化2】

【0052】
前記一般式(1)中、X1は、置換基を有してもよい炭化水素基、アルキルオキシ基、−OH、−NH2、−NR12、−COOR1、又は−SO3Hを表す。R1は、アルキル基を表す。Yは、置換基を有してもよい炭化水素基を表し、構成する炭素原子の1個以上が他の原子または原子団に置換されてもよい。Mは、水素原子、アルカリ金属、又はアミン類を表す。m1は、0〜3の整数を表す。nは、1〜4の整数を表す。環状構造L1は、構成する炭素原子の1個以上がO、N、Sの原子、又はCO、NH、NR3の原子団で置換されてもよい、飽和もしくは不飽和の環状構造を表す。R3は、アルキル基、アルケニル基、アルケニリデン基、アルキレン基を表す。一般式(2)中、X2は、置換基を有してもよい炭化水素基、アルキルオキシ基、−OH、−NH2、−NR22、−COOR2、又は−SO3Hを表す。R2は、アルキル基を表す。m2は、0〜3の整数を表す。環状構造L2は、構成する炭素原子の1個以上がO、N、Sの原子またはCO、NH、NR4の原子団で置換されてもよい飽和もしくは不飽和の環状構造を表す。R4は、アルキル基、アルケニル基、アルケニリデン基、アルキレン基を表す。
【0053】
前記一般式(1)において、X1で表される置換基を有してもよい炭化水素基としては、総炭素数が1〜8であることが好ましく、1〜6であることがより好ましく、具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、メチル基、エチル基が好ましい。
【0054】
前記一般式(1)において、X1で表されるアルキルオキシ基としては、総炭素数が1〜8であることが好ましく、1〜6であることがより好ましく、具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペントキシ基、フォノキシ基等が挙げられ、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が好ましい。
【0055】
前記一般式(1)において、R1で表されるアルキル基としては、総炭素数が1〜4であることが好ましく、1〜3であることがより好ましく、具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましい。
【0056】
前記一般式(1)において、Yで表される置換基を有してもよい炭化水素基としては、総炭素数が1〜4であることが好ましく、1〜3であることがより好ましく、具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましい。
【0057】
また、Yで表される置換基を有してもよい炭化水素基は、構成する炭素原子の1個以上が他の原子または原子団に置換されてもよい。該他の原子または原子団としては、酸素、硫黄等が挙げられる。
【0058】
前記一般式(1)において、Mで表されるアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられ、ナトリウム、リチウムが好ましい。
【0059】
前記一般式(1)において、Mで表されるアミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられ、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが好ましい。
【0060】
前記一般式(1)において、環状構造L1は、飽和もしくは不飽和の環状構造を表すものであれば特に限定されないが、総炭素数が3〜10であることが好ましく、3〜6であることがより好ましく、4〜5であることが更に好ましく、具体例としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、ベンゼン、インデン、ナフタレン、アズレン、フルオレン、フェナントレン、アントラセン等が挙げられ、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテンが好ましい。
【0061】
また、前記環状構造L1は、構成する炭素原子の1個以上がO、N、Sの原子、又はCO、NH、NR3の原子団で置換されてもよい。ここで、R3は、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、プロペニル基、アリル基等)、アルケニリデン基(例えば、メチレン基、エチリデン基等)、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基等)を表す。
【0062】
前記一般式(1)において、m1は、1〜3の整数が好ましい。一方、nは、1〜3の整数が好ましい。また、2つのm1は、それぞれ異なった値でもよい。
【0063】
一方、前記一般式(2)におけるX2及びm2は、それぞれ前記一般式(1)におけるX1及びm1と同義であり、好ましい例も同様である(R1とR2とは、同義であり、好ましい例も同様である)。また、前記一般式(2)における環状構造L2は、前記一般式(1)における環状構造L1と同義であり、好ましい例も同様である(R3とR4とは、同義であり、好ましい例も同様である)。
【0064】
前記一般式(1)で表される環状構造を有する有機酸は、更に、前記一般式(1)中の環状構造L1を構成する炭素原子の内、少なくとも1つがCOに置換され、少なくとも1つがNHに置換されている有機酸であってもよい。
【0065】
一方、前記一般式(2)で表される環状構造を有する有機化合物は、X2の少なくとも一つ、又は環状構造L2を構成する原子団の少なくとも一つが、繰り返し単位を形成する、環状構造を付加した構造の高分子化合物であってもよい。この場合の重量平均分子量は、5000〜50000が好ましく、5000〜30000がより好ましい。
【0066】
また、前記一般式(2)で表される環状構造を有する有機化合物は、環状構造L2を構成する炭素原子の内、少なくとも1つがCOに置換され、少なくとも1つがNR4に置換されており、更に、R4は、繰り返し単位を形成する、環状構造を付加した構造の高分子化合物であってもよい。この場合の重量平均分子量は、5000〜50000が好ましく、5000〜15000がより好ましい。
【0067】
本発明においては、前記一般式(1)で表される環状構造を有する有機酸が、前記環状構造L1を構成する炭素原子の内、少なくとも1つがCOに置換され、少なくとも1つがNHに置換されている有機酸であり、かつ、前記一般式(2)で表される環状構造を有する有機化合物が、前記環状構造L2を構成する炭素原子の内、少なくとも1つがCOに置換され、少なくとも1つがNR4に置換されており、更に、R4は、繰り返し単位を形成する、環状構造を付加した構造の高分子化合物であることが好ましい。
【0068】
前記一般式(1)で表される環状構造を有する有機酸の具体例としては、2−ピロリドン−5−カルボン酸、4−メチル−4−ペンタノリド−3−カルボン酸、フランカルボン酸、2−ベンゾフランカルボン酸、5−メチル−2−フランカルボン酸、2,5−ジメチル−3−フランカルボン酸、2,5−フランジカルボン酸、4−ブタノリド−3−カルボン酸、3−ヒドロキシ−4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、2−ピロン−6−カルボン酸、4−ピロン−2−カルボン酸、5−ヒドロキシ−4−ピロン−5−カルボン酸、4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、3−ヒドロキシ−4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、チオフェンカルボン酸、2−ピロールカルボン酸、2,3−ジメチルピロール−4−カルボン酸、2,4,5−トリメチルピロール−3−プロピオン酸、3−ヒドロキシ−2−インドールカルボン酸、2,5−ジオキソ−4−メチル−3−ピロリン−3−プロピオン酸、2−ピロリジンカルボン酸、4−ヒドロキシプロリン、1−メチルピロリジン−2−カルボン酸、5−カルボキシ−1−メチルピロリジン−2−酢酸、2−ピリジンカルボン酸、3−ピリジンカルボン酸、4−ピリジンカルボン酸、ピリジンジカルボン酸、ピリジントリカルボン酸、ピリジンペンタカルボン酸、1,2,5,6−テトラヒドロ−1−メチルニコチン酸、2−キノリンカルボン酸、4−キノリンカルボン酸、2−フェニル−4−キノリンカルボン酸、4−ヒドロキシ−2−キノリンカルボン酸、6−メトキシ−4−キノリンカルボン酸、4−ピペリジンカルボン酸、2−ピペリジンカルボン酸が挙げられ、この中でも、安価な点、或いは取り扱いやすさの点で、2−ピロリドン−5−カルボン酸、フランカルボン酸、2−ピロリジンカルボン酸、3−ピリジンカルボン酸、4−ピペリジンカルボン酸が好ましい。
【0069】
前記一般式(2)で表される環状構造を有する有機化合物の具体例としては、テトラヒドロフラン(自由に混合)、テトラヒドロピラン(溶解)、フラン(25℃における溶解度が1質量%)、ジオキサン(自由に混合)、トリオキサン(溶解)、2−ピロリドン(溶解)、NMP(自由に混和)、ε−カプロラクタム(25℃における溶解度が84質量%)、シクロヘキサノン(10℃における溶解度が15質量%)、ピロール(25℃における溶解度が8質量%)、ピペリジン(自由に混合)、ピリジン(自由に混合)、フルフリルアルコール(無限大)、テトラヒドロフルフリルアルコール(無限大)、フルフラール(20℃における溶解度が8.3質量%)、モルホリン(完全混和)、N−エチルモルホリン(自由に混合)、エチレンカーボネイト(自由に溶解)、プロピレンカーボネイト(溶解)、1,3−プロパンスルトン(易溶)、ポリビニルピロリドン(可溶)が挙げられ、この中でも、安価な点、或いは取り扱いやすさの点で、テトラヒドロピラン、NMP、ε−カプロラクタム、テトラヒドロフルフリルアルコール、モルホリン、エチレンカーボネイト、プロピレンカーボネイトが好ましい。尚、( )内には、水に対する溶解性を記載した。
【0070】
また、前記一般式(1)で表される環状構造を有する有機酸と、前記一般式(2)で表される環状構造を有する有機化合物との好ましい組み合わせとしては、2−ピロリドン−5−カルボン酸と2−ピロリドン、2−ピロリドン−5−カルボン酸とNMP、2−ピロリドン−5−カルボン酸とε−カプロラクタム、フランカルボン酸とフラン等が挙げられる。
【0071】
本発明において、前記環状構造を有する有機酸の含有量は、1〜20質量%であること
が好ましく、1〜15質量%であることがより好ましく、1〜10質量%であることが更に好ましい。前記環状構造を有する有機酸の含有量が1質量%未満であると、第1の液体組成物との作用効率が低下する場合があり、20質量%を超えると、溶解性が不十分となり析出の問題から吐出不良となる場合がある。
【0072】
また、前記環状構造を有する有機化合物の含有量を、前記環状構造を有する有機酸の含有量で割った値(有機化合物(質量%)/有機酸(質量%))は、0.2〜2.0である
ことが好ましく、0.3〜1.5であることがより好ましく、0.5〜1.0であることが更に好ましい。前記(有機化合物(質量%)/有機酸(質量%))が0.2未満であると、溶解性が不十分となり析出の問題から吐出不良となる場合があり、2.0を超えると、第2の液体の粘度が高くなり吐出不良となる場合がある。
【0073】
第2の液体中に色材を含有させることも可能である。第2の液体に含有させる色材としては、染料、表面にスルホン酸又はスルホン酸塩を有する顔料、自己分散顔料が好ましい。これら色材は、酸性領域において凝集しにくい傾向にあり、酸解離定数pKaが4.5以下である有機酸による凝集を抑制することが可能であるためと考えられる。このような色材を使用することにより、第2の液体の保存安定性が良化する。染料、表面にスルホン酸又はスルホン酸塩を有する顔料、及び自己分散顔料は、第1の液体の色材として説明したものと同様のものが使用できる。
【0074】
第2の液体に顔料を用いる場合には、顔料の粒子の体積平均粒子径は、30nm以上250nm以下であることが好ましい。より好ましくは、50nm以上200nm以下であり、更に好ましくは75nm以上175nm以下である。液体中の粒子の体積平均粒子径が30nm未満である場合には、光学濃度が低くなる場合が存在し、一方、250nmを超える場合には、保存安定性が確保できない場合が存在した。
【0075】
第2の液体は、第1の液体と同様の水溶性有機溶媒を使用することができる。水溶性有機溶媒の含有量は、1質量%以上60質量%以下、好ましくは、5質量%以上40質量%以下で使用される。液体中の水溶性有機溶媒量が1質量%よりも少ない場合には、十分な光学濃度が得られない場合が存在し、逆に、60質量%よりも多い場合には、液体の粘度が大きくなり、液体の噴射特性が不安定になる場合が存在した。
その他、第1の液体に用いた高分子分散剤を第2の液体に添加することも可能である。
【0076】
第2の液体の25℃における表面張力は、20mN/m以上45mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、20mN以上39mN/m以下であり、更に好ましくは、20mN/m以上35mN/m以下である。表面張力が20mN/m未満となるとノズル面に液体が溢れ出し、正常に印字できない場合がある。一方、45mN/mを超えると浸透性が遅くなり、乾燥時間が遅くなる場合がある。
【0077】
第2の液体の25℃における粘度は、10.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは1.2mPa・s以上8.0mPa・s以下、更に好ましくは1.5mPa・s以上5.0mPa・s以下である。第1及び第2の液体の粘度が10.0、或いは25.0mPa・sより大きい場合には、吐出性が低下する場合が存在した。一方、1.2mPa・sより小さい場合には、長期保存安定性が悪化する場合が存在した。
【0078】
上記の表面張力及び粘度となる範囲で、水が添加される。水の添加量は特に制限は無いが、好ましくは、インクジェット用液体組成物又は第2の液体全体に対して、10質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは、30質量%以上80質量%以下である。
【0079】
第2の液体中に、第1の液体構成成分を凝集させる凝集剤を添加することも可能である。
例えば、凝集剤としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン及び、アルミニウムイオン、バリウムイオン、カルシウムイオン、銅イオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、ニッケルイオン、スズイオン、チタンイオン、亜鉛イオン等の多価金属イオンと、塩酸、臭酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、チオシアン酸、及び、酢酸、蓚酸、乳酸、フマル酸、フマル酸、クエン酸、サリチル酸、安息香酸等の有機カルボン酸及び、有機スルホン酸の塩等が挙げられる。
具体例としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、酢酸ナトリウム、蓚酸カリウム、クエン酸ナトリウム、安息香酸カリウム等のアルカリ金属類の塩、及び、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム、酢酸アルミニウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、酸化バリウム、硝酸バリウム、チオシアン酸バリウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、チオシアン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、酢酸カルシウム、サリチル酸カルシウム、酒石酸カルシウム、乳酸カルシウム、フマル酸カルシウム、クエン酸カルシウム、塩化銅、臭化銅、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、蓚酸鉄、乳酸鉄、フマル酸鉄、クエン酸鉄、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、塩化マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、リン酸二水素マンガン、酢酸マンガン、サリチル酸マンガン、安息香酸マンガン、乳酸マンガン、塩化ニッケル、臭化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、硫酸スズ、塩化チタン、塩化亜鉛、臭化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、チオシアン酸亜鉛、酢酸亜鉛等の多価金属類の塩等が挙げられる。
【0080】
凝集剤としては、多価金属塩を使用することが特に好ましい。これは、第1の液体中の構成成分を凝集させる効果が大きく、光学濃度、滲み、色間滲みの改善効果が大きいためである。
【0081】
上記化合物は単独で使用しても、あるいは2種類以上を混合して使用しても構わない。また、本発明液体中における凝集剤の含有量としては、0.01〜15質量%、好ましくは、0.1〜10質量%で使用される。
【0082】
ここで、第1の液体と第2の液体との混合液における5μm以上の粗粒数は、1,000個/μL以上であることが好ましい。より好ましくは2,500個/μL以上であり、更に好ましくは5,000個/μL以上である。第1の液体と第2の液体との混合液における5μm以上粗粒数が、1,000個/μL未満の場合には、光学濃度が低下する場合が存在した。
【0083】
なお、第1の液体と第2の液体との混合液における5μm以上粗粒数は、二つの液体を質量比で1:1の割合で混合し、撹拌しながら2μLを採取し、Accusizer TM770 Optical Particle Sizer (Particle Sizing Systems社製)を用いて測定した。尚、測定時のパラメーターとして、分散粒子の密度には顔料の密度を入力した。この顔料の密度は、顔料分散液を加熱、乾燥させることによって得られた顔料紛体を比重計、又は比重ビン等を用いて測定することにより求めることができる。
【0084】
以下、第1の液体及び第2の液体(インクジェット用液体組成物)に適宜用いることのできる添加剤について説明する。
【0085】
第1の液体及び第2の液体は、界面活性剤を用いることもできる。本発明における界面活性剤としては、分子内に親水部と疎水部を合わせ持つ構造を有する化合物等が有効に使用することができ、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤のいずれも使用することができる。更には、上記高分子分散剤を使用することもできる。
【0086】
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、高級アルキルリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加物のリン酸エステル塩等が使用でき、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ケリルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩等も有効に使用される。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、脂肪族アルカノールアミド、グリセリンエステル、ソルビタンエステル等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられ、例えば、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、ステアラミドメチルピリジウムクロライド等が挙げられる。
その他、スピクリスポール酸やラムノリピド、リゾレシチン等のバイオサーファクタント等も使用できる。
【0087】
第1の液体及び第2の液体に添加する界面活性剤量は、10質量%未満であることが好ましく、より好ましくは0.01〜5質量%、更に好ましくは0.01〜3質量%の範囲で使用される。添加量が10質量%以上の場合には、光学濃度、及び、顔料インクの保存安定性が悪化する場合が存在した。
【0088】
その他、吐出性改善等の特性制御を目的とし、ポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、多糖類及びその誘導体、その他水溶性ポリマー、アクリル系ポリマーエマルション、ポリウレタン系エマルション、親水性ラテックス等のポリマーエマルション、親水性ポリマーゲル、シクロデキストリン、大環状アミン類、デンドリマー、クラウンエーテル類、尿素及びその誘導体、アセトアミド、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等を用いることができる。また、導電率、pHを調整するため、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属類の化合物、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等の含窒素化合物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属類の化合物、硫酸、塩酸、硝酸等の酸、硫酸アンモニウム等の強酸と弱アルカリの塩等を使用することができる。
その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、等も添加することができる。
【0089】
(インクジェット記録方法、インクジェット記録装置)
本発明のインクジェット記録方法は、上記本発明のインクジェット用インクセットを用い、インクと処理液とを互いに接触させるように記録媒体上に吐出して、画像を形成する方法である。また、本発明のインクジェット記録装置は、上記本発明のインクジェット用インクセットの各液体を記録媒体に吐出する記録ヘッドを備えるものである。これらは、通常のインクジェット記録装置は勿論、インクのドライングを制御するためのヒーター等を搭載した記録装置、又は、中間体転写機構を搭載し、中間体にインク及び処理液を吐出(印字)した後、紙等の記録媒体に転写する記録装置等を適用することができる。
【0090】
本発明のインクジェット記録方法(装置)において、インク及び処理液ともに、1ドロップ当たりの液体質量は25ng以下であることが好ましい。より好ましくは、0.5ng以上20ng以下であり、更に好ましくは、2ng以上8ng以下である。1ドロップ当たりの液体質量が25ngを超える場合には、滲みが悪化する場合が存在した。これは、インク及び処理液の記録媒体に対する接触角がドロップ量に依存して変化するためであり、ドロップ量が増えるにつれてドロップが紙表面方向に広がりやすい傾向があるためと考えている。
但し、一つのノズルから複数の体積のドロップを噴射することが可能であるインクジェット装置において、上記ドロップ量とは、印字可能な最小ドロップのドロップ量を指すこととする。
【0091】
また、インク及び処理液とは互いに接触するように、記録媒体上に付与されるが、接触していれば、互いに隣接するよう付与されても、覆い被さるように付与されても、どちらでもよい。
【0092】
また、記録媒体への付与の順番は、処理液を付与した後、インクを付与する。処理液を先に付与することで、インク中の色材を効果的に凝集させることが可能となるからである。処理液を付与した後であれば、いかなる時期にインクを付与してもかまわない。好ましくは、処理液を付与してから1秒以下であり、より好ましくは0.5秒以下である。
【0093】
本発明のインクジェット記録方法(装置)において、記録媒体上に吐出するインク総量と処理液総量と比率(インク総量:処理液総量)は、1:0.5〜1:0.05であることが好ましい。インク総量が処理液総量に対して少なすぎたり、多すぎたり場合には、色材の凝集が不充分となり、光学濃度の低下、滲みの悪化、色間滲みの悪化が生じる場合が存在した。
【0094】
本発明のインクジェット記録方法(装置)は、滲み及び色間滲みの改善効果という観点から熱インクジェット記録方式、又は、ピエゾインクジェット記録方式を採用することが好ましい。この原因は明らかとはなっていないが、熱インクジェット記録方式の場合、吐出時にインクが加熱され、低粘度となっているが、記録媒体上でインクの温度が低下するため、粘度が急激に大きくなる。このため、滲み及び色間滲みに改善効果があると考えられる。一方、ピエゾインクジェット方式の場合、高粘度の液体を吐出することが可能であり、高粘度の液体は記録媒体上での紙表面方向への広がりを抑制することが可能となるため、滲み、及び、色間滲みに改善効果があるものと推測している。
【0095】
本発明のインクジェット記録方法(装置)において、インク及び処理液の記録ヘッドへの補給(供給)は、インク及び処理液の各液体が満たされたインクタンク(処理液タンクを含む)から行われることがよい。このインクタンクは、装置に脱着可能なカートリッジ方式であることがよく、このカートリッジ方式のインクタンクを交換することで、インク及び処理液の補給が簡易に行われる。
【0096】
以下、図面を参照しながら本発明のインクジェット記録装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、実質的に同様の機能を有する部材については同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0097】
図1は本発明のインクジェット記録装置の好適な一実施形態の外観の構成を示す斜視図である。図2は、図1のインクジェット記録装置(以下、画像形成装置と称する)における内部の基本構成を示す斜視図である。
【0098】
本実施形態の画像形成装置100は、前述の本発明のインクジェット記録方法に基づいて作動し画像を形成する構成を有している。すなわち、図1及び図2に示すように、画像形成装置100は、主として、外部カバー6と、普通紙などの記録媒体1を所定量載置可能なトレイ7と、記録媒体1を画像形成装置100内部に1枚毎に搬送するための搬送ローラ(搬送手段)2と、記録媒体1の面にインク及び処理液を吐出して画像を形成する画像形成部8(画像形成手段)と、画像形成部8のそれぞれのサブインクタンク5へインク及び処理液を補給するメインインクタンク4と、から構成されている。
【0099】
搬送ローラ2は画像形成装置100内に回転可能に配設された一対のローラで構成された紙送り機構であり、トレイ7にセットされた記録媒体1を挟持するとともに、所定量の記録媒体1を所定のタイミングで1枚毎に装置100内部に搬送する。
【0100】
画像形成部8は記録媒体1の面上にインクによる画像を形成する。画像形成部8は、主として記録ヘッド3と、サブインクタンク5と、給電信号ケーブル9と、キャリッジ10と、ガイドロッド11と、タイミングベルト12と、駆動プーリ13と、メンテナンスユニット14とから構成されている。
【0101】
サブインクタンク5はそれぞれ異なる色のインク及び処理液が記録ヘッドから吐出可能に納められたサブインクタンク51、52、53、54、55を有している。これらには、例えば、第1の液体として、ブラックインク(K)、イエローインク(Y)、マゼンタインク(M)、シアンインク(C)が、第2の液体として処理液がメインインクタンク4から補給され納められている。
【0102】
サブインクタンク5には、それぞれ排気孔56と補給孔57とが設けられている。そして、記録ヘッド3が待機位置(もしくは補給位置)に移動したとき、排気孔56及び補給孔57に補給装置15の排気用ピン151及び補給用ピン152がそれぞれ挿入されることで、サブインクタンク5と補給装置15とが連結可能となっている。また、補給装置15はメインインクタンク4と補給管16を介して連結されており、補給装置15によりメインインクタンク4から補給孔57を通じてサブインクタンク5へとインク又は処理液を補給する。
【0103】
ここで、メインインクタンク4も、それぞれ異なる色のインク及び処理液が納めされたメインインクタンク41、42、43、44、45を有している。そして、これらには、例えば、第1の液体として、ブラックインク(K)、イエローインク(Y)、マゼンタインク(M)、シアンインク(C)が、第2の液体として処理液が満たされ、それぞれが画像形成装置100に脱着可能に格納されている。
【0104】
さらに、記録ヘッド3には給電信号ケーブル9とサブインクタンク5が接続されており、給電信号ケーブル9から外部の画像記録情報が記録ヘッド3に入力されると、記録ヘッド3はこの画像記録情報に基づき各インクタンクから所定量のインクを吸引して記録媒体の面上に吐出する。なお、給電信号ケーブル9は画像記録情報の他に記録ヘッド3を駆動するために必要な電力を記録ヘッド3に供給する役割も担っている。
【0105】
また、この記録ヘッド3はキャリッジ10上に配置されて保持されており、キャリッジ10はガイドロッド11、駆動プーリ13に接続されたタイミングベルト12が接続されている。このような構成により、記録ヘッド3はガイドロッド11に沿うようにして、記録媒体1の面と平行でありかつ記録媒体1の搬送方向X(副走査方向)に対して垂直な方向Y(主走査方向)にも移動可能となる。
【0106】
画像形成装置100には、画像記録情報に基づいて記録ヘッド3の駆動タイミングとキャリッジ10の駆動タイミングとを調製する制御手段(図示せず)が備えられている。これにより、搬送方向Xにそって、所定の速度で搬送される記録媒体1の面の所定領域に画像記録情報に基づく画像を連続的に形成することができる。
【0107】
メンテナンスユニット14は、チューブを介して減圧装置(図示せず)に接続されている。更にこのメンテナンスユニット14は、記録ヘッド3のノズル部分に接続し。記録ヘッド3のノズル内を減圧状態にすることにより記録ヘッド3のノズルからインクを吸引する機能を有している。このメンテナンスユニット14を設けておくことにより、必要に応じて画像形成装置100が作動中にノズルに付着した余分なインクを除去したり、作動停止状態のときにノズルからのインクの蒸発を抑制することができる。
【0108】
図3は本発明のインクジェット記録装置の好適な他の一実施形態の外観の構成を示す斜視図である。図4は、図3のインクジェット記録装置(以下、画像形成装置と称する)における内部の基本構成を示す斜視図である。本実施形態の画像形成装置101は、前述の本発明のインクジェット記録方法に基づいて作動し画像を形成する構成を有している。
【0109】
図3及び図4に示す画像形成装置101は、記録ヘッド3の幅が記録媒体1幅と同じ又はそれ以上であり、キャリッジ機構を持たず、副走査方向(記録媒体1の搬送方向:矢印X方向)の紙送り機構(本実施形態では搬送ローラ2を示しているが、例えばベルト式の紙送り機構でもよい)で構成されている。
【0110】
また、図示しないが、サブインクタンク51〜55を副走査方向(記録媒体1の搬送方向:矢印X方向)に順次配列させるのと同様に、各色(処理液も含む)を吐出するノズル群も副走査方向に配列させている。これ以外の構成は、図1及び2に示す画像形成装置100と同様なので説明を省略する。なお、図中、記録ヘッド3は移動しないので、サブインクタンク5は補給装置15と常時連結した構成を示しているが、インク補給時に補給装置15と連結する構成でもよい。
【0111】
図3及び図4に示す画像形成装置101では、記録媒体1の幅方向(主走査方向)の印字を記録ヘッド3により一括で行うため、キャリッジ機構を持つ方式に比べ、装置の構成が簡易であり、印字速度も速くなる。
【実施例】
【0112】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0113】
<液体作製方法>
以下の組成となるように色材溶液、水溶性有機溶媒、界面活性剤、イオン交換水等を適量加え、混合液を、混合、攪拌した。得られた液体を、5μmフィルターを通過させることにより、所望の液体を得た。
【0114】
(液体A)
―組成―
Mogul L(キャボット社製)(顔料/表面官能基無し):4質量
スチレン−アクリル酸共重合体(MW:8000):0.6質量%
ジエチレングリコール:15質量%
ジグリセリンエチレンオキサイド付加物:5質量%
アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:0.5質量%
イオン交換水:残部
尚、得られた液体AのpHは8.2、体積平均粒子径は120nm、25℃における表面張力は32mN/m、粘度は3.3mPa・sであった。
【0115】
(液体B)
―組成―
Cabojet−300(キャボット社製)(自己分散顔料/カルボン酸基):4質量%
ジエチレングリコール:20質量%
グリセリン:5質量%
アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:0.5質量%
イオン交換水:残部
尚、得られた液体BのpHは8.5、体積平均粒子径は93nm、25℃における表面張力:31mN/m、粘度:3.3mPa・sであった。
【0116】
(液体C)
―組成―
Cabojet−200(キャボット社製)(自己分散顔料/スルホン酸基):4質量%
ジエチレングリコール:20質量%
グリセリン:5質量%
アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1質量%
イオン交換水:残部
尚、得られた液体CのpHは8.9、体積平均粒子径は96nm、25℃における表面張力は30mN/m、粘度は:3.1mPa・sであった。
【0117】
(液体D)
―組成―
ジエチレングリコール:30質量%
2−フランカルボン酸:5質量%
テトラヒドロフラン:5質量%
アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1質量%
イオン交換水:残部
尚、得られた液体DのpHは3.6、25℃における表面張力は30mN/m、粘度は:3.3mPa・sであった。
【0118】
(液体E)
―組成―
ジエチレングリコール:30質量%
ニコチン酸:5質量%
ピペリジン:1質量%
アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1質量%
イオン交換水:残部
尚、得られた液体EのpHは4.0、25℃における表面張力は31mN/m、粘度は2.8mPa・sであった。
【0119】
(液体F)
―組成―
ジエチレングリコール:30質量%
ピロリドンカルボン酸:10質量%
ポリビニルピロリドン(MW:10000):20質量%
アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1質量%
イオン交換水:残部
尚、得られた液体FのpHは:4.0、25℃における表面張力は31mN/m、粘度は9.6mPa・sであった。
【0120】
(液体G)
―組成―
ジエチレングリコール:30質量%
2−フランカルボン酸:5質量%
アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1質量%
イオン交換水:残部
尚、得られた液体GのpHは3.6、25℃における表面張力は31mN/m、粘度は3.0mPa・sであった。
【0121】
(液体H)
―組成―
ジエチレングリコール:30質量%
ニコチン酸:5質量%
アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1質量%
イオン交換水:残部
尚、得られた液体HのpHは4.0、25℃における表面張力は32mN/m、粘度は2.5mPa・sであった。
【0122】
(液体I)
―組成―
ジエチレングリコール:30質量%
ピロリドンカルボン酸:10質量%
アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1質量%
イオン交換水:残部
尚、得られた液体IのpHは4.0、25℃における表面張力は31mN/m、粘度は2.8mPa・sであった。
【0123】
(液体J)
―組成―
ジエチレングリコール:30質量%
ピロリドンカルボン酸:10質量%
ポリビニルピロリドン(MW:10000):1質量%
アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1質量%
イオン交換水:残部
尚、得られた液体FのpHは:4.0、25℃における表面張力は31mN/m、粘度は3.0mPa・sであった。
【0124】
(液体K)
―組成―
ジエチレングリコール:30質量%
ピロリドンカルボン酸:5質量%
ポリビニルピロリドン(MW:10000):15質量%
アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1質量%
イオン交換水:残部
尚、得られた液体FのpHは:4.0、25℃における表面張力は31mN/m、粘度は6.3mPa・sであった。
【0125】
(実施例1〜9、比較例1〜5)
[保存安定性]
表1に記載の組み合わせのインクセットにおける液体組成物を10℃にて密封静置保管し、固形物の発生有無を以下の基準で目視評価した。その結果を表1に示す。
○:固形物の発生なし。
×:固形物の発生あり。
【0126】
[画質評価]
更に、表1に記載の組み合わせのインクセットを用いて、印字を行った。印字は、800dpi、256ノズルの試作プリントヘッド(第一の液体及び第二の液体のドロップ量がそれぞれ14ng)を用い、FX−P紙(富士ゼロックス社製)に対して第2の液体(液体組成物)を吐出し、その上から第1の液体を吐出する方法で行った。印字は一般環境下(温度23±0.5℃、湿度55±5%R.H)で行った。その際のパターンは8ポイント文字であった。得られた画像を以下の基準で目視評価した。その結果を表1に示す。尚、比較例5の画質評価は吐出不良により評価不能であった。
○:文字滲みなし。
△:滲みが若干あるが判別可能。
×:滲みが酷く判別不能。
【0127】
【表1】

【0128】
表1より、実施例1〜9は、保存安定性、画質評価とも優れていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明のインクジェット記録装置の好適な一実施形態の外観の構成を示す斜視図である。
【図2】図1のインクジェット記録装置における内部の基本構成を示す斜視図である。
【図3】本発明のインクジェット記録装置の好適な他の一実施形態の外観構成を示す斜視図である。
【図4】図3のインクジェット記録装置における内部の基本構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0130】
1 記録媒体
2 搬送ローラ
3 記録ヘッド
4 メインインクタンク
5 サブインクタンク
6 外部カバー
7 トレイ
8 画像形成部
9 給電信号ケーブル
10 キャリッジ
11 ガイドロッド
12 タイミングベルト
13 駆動プーリ
14 メンテナンスユニット
15 補給装置
16 補給管
56 排気孔
57 補給孔
100,101 画像形成装置
151 排気用ピン
152 補給用ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも環状構造を有する有機酸、環状構造を有する有機化合物、水溶性溶媒、及び水を含有することを特徴とするインクジェット用液体組成物。
【請求項2】
前記環状構造を有する有機酸は、下記一般式(1)で表され、前記環状構造を有する有機化合物は、下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット用液体組成物。
【化1】

(一般式(1)中、X1は、置換基を有してもよい炭化水素基、アルキルオキシ基、−OH、−NH2、−NR12、−COOR1、又は−SO3Hを表す。R1は、アルキル基を表す。Yは、置換基を有してもよい炭化水素基を表し、構成する炭素原子の1個以上が他の原子または原子団に置換されてもよい。Mは、水素原子、アルカリ金属、又はアミン類を表す。m1は、0〜3の整数を表す。nは、1〜4の整数を表す。環状構造L1は、構成する炭素原子の1個以上がO、N、Sの原子、又はCO、NH、NR3の原子団で置換されてもよい、飽和もしくは不飽和の環状構造を表す。R3は、アルキル基、アルケニル基、アルケニリデン基、アルキレン基を表す。一般式(2)中、X2は、置換基を有してもよい炭化水素基、アルキルオキシ基、−OH、−NH2、−NR22、−COOR2、又は−SO3Hを表す。R2は、アルキル基を表す。m2は、0〜3の整数を表す。環状構造L2は、構成する炭素原子の1個以上がO、N、Sの原子またはCO、NH、NR4の原子団で置換されてもよい飽和もしくは不飽和の環状構造を表す。R4は、アルキル基、アルケニル基、アルケニリデン基、アルキレン基を表す。)
【請求項3】
前記一般式(2)で表される環状構造を有する有機化合物は、前記一般式(2)中のX2の少なくとも一つ、又は環状構造L2を構成する原子団の少なくとも一つが、繰り返し単位を形成する、環状構造を付加した構造の高分子化合物であることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット用液体組成物。
【請求項4】
前記一般式(1)で表される環状構造を有する有機酸は、前記一般式(1)中の環状構造L1を構成する炭素原子の内、少なくとも1つがCOに置換され、少なくとも1つがNHに置換されている有機酸であり、かつ、前記一般式(2)で表される環状構造を有する有機化合物は、前記一般式(2)中の環状構造L2を構成する炭素原子の内、少なくとも1つがCOに置換され、少なくとも1つがNR4に置換されており、更に、R4は、繰り返し単位を形成する、環状構造を付加した構造の高分子化合物であることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット用液体組成物。
【請求項5】
前記環状構造を有する有機酸の含有量は、1〜20質量%であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット用液体組成物。
【請求項6】
前記環状構造を有する有機化合物の含有量を、前記環状構造を有する有機酸の含有量で割った値(有機化合物(質量%)/有機酸(質量%))は、0.2〜2.0であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット用液体組成物。
【請求項7】
25℃における粘度は、10mPa・s以下であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット用液体組成物。
【請求項8】
少なくとも第1の液体及び第2の液体を有するインクジェット用インクセットであって、
前記第1の液体は、少なくとも、色材、水溶性溶媒、及び水を含有し、
前記第2の液体は、請求項1に記載のインクジェット用液体組成物であることを特徴とするインクジェット用インクセット。
【請求項9】
請求項1に記載のインクジェット用液体組成物を収納したインクジェット用液体組成物タンク。
【請求項10】
請求項8に記載のインクジェット用インクセットを収納したことを特徴とするインクジェット用インクタンク。
【請求項11】
インクジェット用インクセットを用いたインクジェット記録方法であって、
前記インクジェット用インクセットは、請求項8に記載のインクジェット用インクセットであり、
前記第1の液体及び第2の液体が互いに接触するように記録媒体上に付与し、画像を形成することを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項12】
インクジェット用インクセットにおける各液体を記録媒体に吐出するための記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置であって、
前記インクジェット用インクセットは、請求項8に記載のインクジェット用インクセットであることを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−272553(P2006−272553A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−90267(P2005−90267)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】