説明

インクジェット用記録インク、及びインクカートリッジ

【課題】画像濃度が高く、吐出安定性や保存安定性にも優れたインクジェット用記録インクなどの提供。
【解決手段】少なくとも第1のカーボンブラック及び分散剤を含有する顔料分散液と、第2のカーボンブラックと、浸透剤と、湿潤剤と、水とを含有し、前記第1のカーボンブラックの動的光散乱法による平均粒子径のD50が、70nm〜180nmであり、粒子径標準偏差が、平均粒子径の1/2以下であり、前記分散剤が、ナフタレンスルホン酸ホルマリンの縮合物であり、前記第2のカーボンブラックが、樹脂被覆されたカーボンブラックであり、前記浸透剤が、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールであるインクジェット用記録インクである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用記録インク、及び該インクジェット用記録インクを用いたインクカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は他の記録方式に比べてプロセスが簡単であるためフルカラー化が容易であり、簡略な構成の装置であっても高解像度の画像が得られる利点がある。
【0003】
インクジェット用記録インクとしては各種の水溶性染料を水、又は水と有機溶剤との混合液に溶解させた染料系インクが使用されているが、染料系インクは色調の鮮明性に優れているものの耐光性に劣る欠点があった。一方、カーボンブラックや各種の有機顔料を分散させた顔料系インクは染料系インクと比較して耐光性に優れるため盛んに研究されている。
しかし、顔料系インクは染料系インクと比べてノズルの目詰まりが生じやすい傾向がある。顔料系インクは、一般に、水やアルコール類等の水性溶媒中に色材及び分散剤を予備分散させた分散物を調製したのち、該分散物をサンドミル等のメディア型分散機を用いて所定の程度まで分散させる分散工程を行い、次いで所定の濃度に希釈することにより調製されている。
【0004】
顔料系の水系インクでは、疎水性の顔料を分散させるために界面活性剤や水溶性樹脂を使用しているのが一般的であるが、得られる画像の信頼性は極めて悪い。そこで、画質向上を目的として造膜性を有する樹脂微粒子をインク液に添加する技術が開示されているが、複数の成分を微細に安定に長期間分散させるのは困難で、これらの微粒子を安定に分散させるために界面活性剤などの分散剤を多く使用すると、インクタンク、ヘッド内での気泡の発生、画質の劣化などの問題も起こってしまう。また、分散性を向上させる目的で顔料の表面を親水基に変える方法や親水基を含有した樹脂などを用いる事が検討されているが、それぞれ単独では安定であっても異なる種類を混ぜた場合、分散が不安定になり保存安定性が悪化するという問題があった。
【0005】
そこで、印字品質に優れ、保存安定性にも優れ、更に吐出安定性にも優れた表面処理顔料インク(特許文献1〜3)、安定なインク吐出を維持する事ができるインクセット(特許文献4)、高い画像濃度を得る目的でインク中に水不溶性色材と該色材より小さい荷電性樹脂擬似微粒子とを含有させる方法(特許文献5)、顔料のDBP吸油量を限定した自己分散型顔料を含有させる方法(特許文献6)、表面改質カーボンブラックと、HLB値が7〜18であり、かつアセチレン骨格を有するノニオン系界面活性剤とを含有する水系カーボンブラック分散液(特許文献7)が報告されている。また、アセチレングリコール系界面活性剤を用いた水性インク(特許文献8)も報告されている。
【0006】
分散を安定化する目的で、分子内にカルボキシル基とノニオン親水基を有する水分散性樹脂を水に分散させる方法(特許文献9)、水溶性高分子と界面活性剤を同じ極性にするかノニオンを添加する方法(特許文献10)、水系記録液において着色イオン性含有ポリエステル樹脂と着色剤の親水基の極性を同じにする方法(特許文献11)、顔料と樹脂微粒子の分散極性を同じにする方法(特許文献12)、が報告されている。また、ジェミニ型界面活性剤を分散剤に用いた印刷インキ(特許文献13)が開示されている。
【0007】
また、分散液中の粒子の少なくとも70%が0.1μm未満の直径を有し、当該分散液中の他の粒子が0.1μmに等しいか又はそれ以下の直径を有する粒度分布を有する顔料粒子を含む顔料分散液、アルデヒドナフタレンスルホネート分散剤、及び/又は少なくとも一つのスルホン溶媒、を含む水性インクジェットインク組成物が報告されている(特許文献14)。
【0008】
また、特許文献15には、顔料、高分子分散剤および非イオン性界面活性剤を含有する水性媒体からなる記録液が提案されている。また、特許文献16及び17には、AB又はBABブロックコポリマーを、顔料の分散剤として用いることが提案されている。さらに、特許文献18には、特定の顔料、水溶性樹脂、溶媒を用いることが提案されている。
【0009】
一方、分散剤を用いない顔料分散方法として、カーボンブラックに水可溶化基を含む置換基を導入する方法(特許文献19)、水溶性モノマー等をカーボンブラック表面に重合させる方法(特許文献20)、カーボンブラックを酸化処理する方法(特許文献21)などが開示されている。また、酸化処理を施したカーボンブラック、並びにアクリル酸、スチレン、及びαメチルスチレンからなる3元重合体を含むインクによって耐水性と吐出安定性を確保する方法が開示されている(特許文献22)。
【0010】
また、インクジェット記録液における分散粒子の体積平均粒子径が、30nm〜200nmであるインクジェット記録液が提案されている(特許文献23)。
【0011】
しかし、上記の従来法によるインク液では、カラー顔料インクに関しては高い画像濃度は得られるものの、黒色顔料インクに関してはいまだ十分ではなく満足するものではなかった。また、ビーズミル分散に使用するビーズ径は0.05mmから1.0mm程度のものを使用した例が出願されているが、特許文献24〜26のいずれに記載の技術も分散安定性の面では十分ではない。
【0012】
また、特許文献27には、分散剤にアニオン系界面活性剤を使用することが示されてはいるが、分子量(m)は1,000≦m≦30,000の範囲が好ましいとされており、しかもいずれも分散安定性の面では十分ではない。分散時における強い衝撃に対して弱い顔料種は、分散後の安定性に欠けるものであり、インク液での吐出安定性等での大きな課題となっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、画像濃度が高く、吐出安定性や保存安定性にも優れたインクジェット用記録インク、及び該インクジェット用記録インクを用いたインクカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは鋭意検討した結果、少なくとも第1のカーボンブラック及び分散剤を含有する顔料分散液と、第2のカーボンブラックと、浸透剤と、湿潤剤と、水とを含有し、前記第1のカーボンブラックの動的光散乱法による平均粒子径のD50が、70nm〜180nmであり、粒子径標準偏差が、平均粒子径の1/2以下であり、前記分散剤が、ナフタレンスルホン酸ホルマリンの縮合物であり、前記第2のカーボンブラックが、樹脂被覆されたカーボンブラックであり、前記浸透剤が、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールであるインクジェット用記録インクにより、上記課題が解決されることを見出し本発明に至った。
【0015】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 少なくとも第1のカーボンブラック及び分散剤を含有する顔料分散液と、第2のカーボンブラックと、浸透剤と、湿潤剤と、水とを含有し、
前記第1のカーボンブラックの動的光散乱法による平均粒子径のD50が、70nm〜180nmであり、粒子径標準偏差が、平均粒子径の1/2以下であり、
前記分散剤が、ナフタレンスルホン酸ホルマリンの縮合物であり、
前記第2のカーボンブラックが、樹脂被覆されたカーボンブラックであり、
前記浸透剤が、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールであることを特徴とするインクジェット用記録インクである。
<2> 更にポリオキシアルキレン誘導体を含有する前記<1>に記載のインクジェット用記録インクである。
<3> ポリオキシアルキレン誘導体が、下記一般式で表されるポリオキシアルキレン誘導体である前記<2>に記載のインクジェット用記録インクである。
一般式 C1827(CO)nH
ただし、nは8〜9である。
<4> 更に水系ポリウレタン樹脂を含有する前記<1>から<3>のいずれかに記載のインクジェット用記録インクである。
<5> 水系ポリウレタン樹脂が、アニオン性自己乳化型のエーテル系ポリウレタンである前記<4>に記載のインクジェット用記録インクである。
<6> 水系ポリウレタン樹脂の酸価が、40mgKOH/g〜120mgKOH/gである前記<4>から<5>のいずれかに記載のインクジェット用記録インクである。
<7> 2−エチル−1,3−ヘキサンジオールの含有量が、0.1質量%以上10質量%以下である前記<1>から<6>のいずれかに記載のインクジェット用記録インクである。
<8> 前記<1>から<7>のいずれかに記載のインクジェット用記録インクを容器中に収容したことを特徴とするインクカートリッジである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決することができ、画像濃度が高く、吐出安定性や保存安定性にも優れたインクジェット用記録インク、及び該インクジェット用記録インクを用いたインクカートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明のインクカートリッジの概略構成を示す外観斜視図である。
【図2】図2は、本発明のインクカートリッジの概略内部構成を示す正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(インクジェット用記録インク)
本発明のインクジェット用記録インクは、少なくとも第1のカーボンブラック及び分散剤を含有する顔料分散液と、第2のカーボンブラックと、浸透剤と、湿潤剤と、水とを含有し、ポリオキシアルキレン誘導体、水系ポリウレタン樹脂を好ましくは含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0019】
<第1のカーボンブラック及び分散剤、並びに顔料分散液>
前記インクジェット用記録インクは、前記分散剤が質量基準として前記第1のカーボンブラック1に対し0.1以上2以下の割合で含まれるのが好ましい。さらに好ましくは、前記割合は前記第1のカーボンブラック1に対し0.25〜1である。このような分散剤の使用量を採用することにより、前記第1のカーボンブラックの平均粒子径(D50)が70nm〜180nmで、該カーボンブラック粒度分布に於ける粒子径標準偏差が平均粒子径の1/2以下にする事が出来、これにより高い画像濃度、吐出安定性、保存安定性が良いインクジェット用記録インクを提供することができる。
なお、前記平均粒子径(D50)は、顔料分散液或いはインク液のカーボンブラックの一次凝集体の平均直径を粒度分布計(例えば、日機装社製)で測定したものである。以下に測定条件を記載する。
−分散液、インク液粒径測定条件−
測定器 :日機装株式会社製 粒度分布計UPA150
測定条件 1)測定液固形分濃度 :0.1質量%水溶媒
2)Trasparent Paricles :Yes
3)Spherical Paricles :No
4)Part.Refractive Index :1.86
5)Part.Density :1.86(gm/cm
6)Fluid :Default Fluid
7)Fluid Refractive Index:1.33
8)Viscosity High 30℃ :0.797cp
9)Viscosity Low 20℃ :1.002cp
10)表示形式 :体積分布
【0020】
なお、前記分散剤の使用量が、0.1未満であると、前記効果が達成されにくいことのほか、顔料分散液及びインクの保存安定性が劣り、その結果ノズルの目詰まりが発生しやすい傾向があり、2より大きいと、顔料分散液およびインクの粘度が高すぎてインクジェット方式での印字が困難になる傾向がある。
【0021】
前記分散剤は、ナフタレンスルホン酸ホルマリンの縮合物である。
本発明においては、前記第1のカーボンブラックの分散剤としてナフタレンスルホン酸ホルマリンの縮合物を使用することが特徴となっているが、ナフタレンスルホン酸ホルマリンの縮合物のナフタレンスルホン酸の2量体、3量体、4量体の合計含有率が20%未満だと、分散性が悪くなり顔料分散液及びインクの保存安定性が劣り、その結果ノズルの目詰まりが発生しやすい。また、ナフタレンスルホン酸の2量体から4量体の含有率が80%を超えると粘度が高くなり、分散が困難になる。
【0022】
前記顔料分散液は、例えば、前記第1のカーボンブラック、前記分散剤、水、必要に応じて各種添加剤をビーズミル、例えば、ダイノーミルKDL型(シンマルエンタープライゼス社製)、アジテーターミルLMZ(アシザワ・ファインテック社製)、SCミル(三井鉱山社製)等の分散機で分散し、さらにビーズミル分散の後ビーズレスミル、例えば、高速せん断力タイプのCLEAR SS5(エム・テクニック社製)、キャビトロンCD1010(ユーロテック社製)、モジュールDR2000(シンマルエンタープライゼス社製)、薄膜旋回タイプのT.K.フィルミックス(特殊機化工業社製)、超高圧衝突タイプのアルテマイザー(スギノマシン社製)、ナノマイザー(吉田機械興業社製)、等により分散することにより得られる。
また、前記分散機の前工程においてホモジナイザー等で粗大粒子を前処理することにより、よりいっそう粒度分布をシャープにすることができ、画像濃度、吐出安定性等の改善に繋がる。
このようにして得られた前記顔料分散液は、特に顔料系インクジェット用記録インクに好適に使用することができる。
前記分散機で使用するビーズは通常セラミックビーズであり、一般的にはジルコニアボールが使用される。ビーズ径は0.05mmφ以下が好ましく、さらに好ましくは0.03mmφ以下である。
【0023】
前記第1のカーボンブラックの平均一次粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、10.0nm〜30.0nmで、BET表面積は100m/g〜400m/gである。好ましくは、前記第1のカーボンブラッの平均一次粒子径は15.0nm〜20.0nmで、BET表面積は150m/g〜300m/gである。なお、カーボンブラックの平均一次粒子径とは、カーボンブラック凝集体を構成する小さな球状(微結晶による輪郭を有し、分離できない)成分を電子顕微鏡により測定、算出した平均直径を意味している。
前記第1のカーボンブラックは、平均一次粒子径が小さく、ハイストラクチャーであるために、分散時での衝撃に弱いため、前記分散機で使用するビーズのビーズ径が0.05mmを超えるようなビーズであるとビーズ同士の衝突エネルギーが強くストラクチャーの破壊が発生し、その結果得られたカーボンブラック分散液の安定性が損なわれることとなる。したがって、ビーズ径は0.05mm以下が好ましい。
【0024】
前記各種添加剤としては、ノニオン、アニオン、カチオン、両性の各種の界面活性剤、水溶性有機溶剤、防腐剤、pH調整剤、pH緩衝剤等が挙げられる。
【0025】
前記顔料分散液における顔料濃度は、前記顔料分散液全量に対して5質量%以上50質量%以下が好ましい。5質量%未満では生産性が劣り、50質量%より多いと顔料分散液の粘度が高すぎて分散が困難になる傾向がある。
【0026】
カーボンブラックの市販品としては、三菱化学社製の#10B、#20B、#30、#33、#40、#44、#45、#45L、#50、#55、#95、#260、#900、#1000、#2200B、#2300、#2350、#2400B、#2650、#2700、#4000B、CF9、MA8、MA11、MA77、MA100、MA220、MA230、MA600及びMCF88等;キャボット社製のモナーク120、モナーク700、モナーク800、モナーク880、モナーク1000、モナーク1100、モナーク1300、モナーク1400、モーガルL、リーガル99R、リーガル250R、リーガル300R、リーガル330R、リーガル400R、リーガル500R及びリーガル660R等;デグサ社製のプリンテックスA、プリンテックスG、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス55、プリンテックス140U、プリンテックス140V、スペシャルブラック4、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック5、スペシャルブラック6、スペシャルブラック100、スペシャルブラック250、カラーブラックFW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160及びカラーブラックS170等が挙げられる。
【0027】
<第2のカーボンブラック>
前記第2のカーボンブラックは、樹脂被覆されたカーボンブラックである。
前記樹脂被覆されたカーボンブラックは、一般にはカプセル顔料と言われ、樹脂で顔料を被覆することにより、顔料表面を親水化し、水に分散するようにしたものである。
【0028】
カーボンブラックの被覆に用いる前記樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリウレア、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、多糖類、ゼラチン、アラビアゴム、デキストラン、カゼイン、タンパク質、天然ゴム、カルボキシポリメチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸セルロース、ポリエチレン、ポリスチレン、(メタ)アクリル酸の重合体または共重合体、(メタ)アクリル酸エステルの重合体または共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アルギン酸ソーダ、脂肪酸、パラフィン、ミツロウ、水ロウ、硬化牛脂、カルナバロウ、アルブミンなどが挙げられる。
また、カーボンブラックの被覆に用いる前記樹脂としては、例えば、カルボン酸基又はスルホン酸基などのアニオン性基を有する有機高分子類、ノニオン性有機高分子などが挙げられる。前記ノニオン性有機高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール;ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートまたはそれらの(共)重合体;2−オキサゾリンのカチオン開環重合体などが挙げられる。
【0029】
前記樹脂で顔料を被覆する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特許第4138214号公報、特開2010−095713号公報、特2008−260926号公報に記載の方法などが挙げられる。
【0030】
<浸透剤>
前記浸透剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールが好ましい。2−エチル−1,3−ヘキサンジオールを用いることで、インクの浸透性を上げかつ顔料を表面にとどめることで滲みをなくし、画像濃度が高くかつ裏抜けが少ない印字画像を得ることが可能となる。また、上記顔料の混合系と組み合わせることにより、更には吐出安定性にも効果が上がることが見出された。
前記浸透剤の含有量としては、インク液全量に対して、0.1質量%以上10.0質量%以下が好ましく、1.5質量%以上5.0質量%以下がより好ましい。前記含有量が、0.1質量%未満では効果が少なく、10.0質量%を超えると、これ自体の溶解性が低いために、信頼性が悪くなる。
【0031】
<湿潤剤>
前記湿潤剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、3−メチル−1,3−ブチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,5−ぺンタンジオール、1,6−へキサンジオール、グリセリン、1,2,6−へキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ぺトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノべンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
これらの中でも、1,3−ブチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びグリセリンの少なくともいずれかを含むことがインクの乾燥による目詰まりすなわち水分蒸発による噴射特性不良の防止、及び本発明の形成画像の彩度を向上する上で優れた効果が得られる
前記湿潤剤の含有量としては、例えば、インク全量に対して0.1質量%以上50質量%以下、好ましくは5質量%〜40質量%、さらに好ましくは10質量%〜35質量である。
【0032】
<ポリオキシアルキレン誘導体>
前記ポリオキシアルキレン誘導体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記一般式で表されるポリオキシアルキレン誘導体が好ましい。一般式中のnは8〜9が好ましい。前記nが、8未満であると、浸透性が増し画像のニジミ、シャープネスが悪くなり又吐出安定性にも影響が出るようになり、9を超えると、浸透性が少なくなり画像濃度、画像の埋まりが悪くなるなどの影響がでるので好ましく無い。
一般式 C1827(CO)
前記ポリオキシアルキレン誘導体の市販品としては、例えば、ソフタールEP−7025、ソフタールEP−5035、ソフタールEP−9050(日本触媒社製)、OA−611、OA−613、OA−615(日油社製)、エマルゲンLS−106(花王社製)などが挙げられる。
【0033】
<水系ポリウレタン樹脂>
前記水系ポリウレタン樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水分散性のポリウレタン樹脂が好ましい。
ここで、ポリウレタン樹脂とは、ジイソシアネート化合物とジオール化合物からなる、主鎖がウレタン結合の連なるポリウレタン骨格を主体として構成される高分子を示す。
【0034】
前記水分散性のポリウレタン樹脂としては、ポリウレタン骨格の主鎖中に、水に安定に分散させるために必要な親水分を導入したり、あるいは外部乳化剤で分散することにより得られるポリウレタン樹脂の水分散体が一般的であるが、主鎖中に親水成分を導入した自己分散タイプのもの(自己乳化型ポリウレタン樹脂)がより好ましい。
【0035】
前記自己乳化型ポリウレタン樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(i)ジイソシアネート化合物と、(ii)ポリエーテルジオール類、ポリエステルジオール類、ポリカーボネートジオール類等のジオール化合物と、(iii)カルボン酸基、スルホン酸基等の酸基含有ジオールとを反応して得られる水分散性の各種のポリウレタン樹脂(エステル系ポリウレタン、エーテル系ポリウレタン、カーボネート系ポリウレタン等)、などが挙げられる。これらの中でも、アニオン性自己乳化型のエーテル系ポリウレタンが好ましい。
【0036】
前記アニオン性自己乳化型のエーテル系ポリウレタンとしては、例えば、特開2009−67907号公報、特開2009−173805号公報、特開2009−161726号公報に記載されているものなどが挙げられる。
【0037】
黒色顔料インクに用いるカーボンブラックをポリウレタン樹脂と一緒に分散すると、カーボンブラックを単体で分散するよりも安定化する。その理由は不明であるが、ポリウレタン樹脂がカーボンブラック粒子を囲い込み、保護コロイドを形成していると考えられる。
【0038】
前記水系ポリウレタン樹脂の合成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、以下の方法などが挙げられる。
(1)多官能イソシアネート化合物、イソシアネート基と反応し得る活性水素基を2個以上有する化合物、イソシアネート基と反応し得る活性水素基を有しかつ分子中にカルボキシル基及びスルホニル基を有する化合物の少なくともいずれか、並びにイソシアネート基と反応し得る活性水素基を有し且つ分子中にカチオン基を有する化合物を、イソシアネート基が過剰になるような当量比で、有機溶剤の存在下又は非存在下に反応させ、分子末端にイソシアネート基を有したウレタンプレポリマーを製造する。その後中和剤により、前記ウレタンプレポリマー中のカルボキシル基及びスルホニル基の少なくともいずれかを中和する。ついで、この中和したウレタンプレポリマーを、鎖伸長剤含有水溶液中に投入して乳化、鎖伸長反応させた後、系内に有機溶剤を含有する場合はそれを除去して、水系ポリウレタン樹脂を得る。
(2)前記(1)の方法における未中和のウレタンプレポリマーを、中和剤、かつ鎖伸長剤を含有した水溶液中に投入して乳化、鎖伸長反応させて水系ポリウレタン樹脂を得る方法。
(3)前記(1)の方法における中和済みのウレタンプレポリマーに、鎖伸長剤、水を加えて水系ポリウレタン樹脂を得る方法。
(4)前記(1)の方法における未中和のウレタンプレポリマーに、中和剤、鎖伸長剤、水を加えて水系ポリウレタン樹脂を得る方法。
(5)前記(1)の方法における中和済みのウレタンプレポリマーを水中に投入し、乳化後、鎖伸長剤を添加して水系ポリウレタン樹脂を得る方法。
(6)前記(1)の方法における未中和のウレタンプレポリマーを、中和剤含有水溶液中に投入し、その後鎖伸長剤を添加して水系ポリウレタン樹脂を得る方法。
(7)前記(1)の方法における中和済みのウレタンプレポリマーに、水を加えた後、鎖伸長剤を添加して水系ポリウレタン樹脂を得る方法。
(8)前記(1)の方法で得た未中和のウレタンプレポリマーに、中和剤を含有した水溶液を加え、その後鎖伸長剤を添加させて水系ポリウレタン樹脂を得る方法。
【0039】
前記水系ポリウレタン樹脂の酸価の範囲としては、好ましくは40mgKOH/g〜120mgKOH/gである。前記酸価が、40mgKOH/g未満ではインクの保存安定性が悪くなり、120mgKOH/gを超えると粘度が高くなり、吐出安定性が悪くなるので好ましく無い。なお、酸価は、油脂1g中に含まれる遊離脂肪酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数で示される。または、酸価は、JIS K2501に従って測定される。
【0040】
<その他の成分>
前記インクジェット用記録インクには、水の他に、前記顔料分散液の説明において記載した添加剤と同等の材料や、水溶性有機溶剤を必要に応じて配合することができる。水溶性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール類、多価アルコール類、N−メチルピロリドン等のピロリドン誘導体類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、アルカノールアミン類等が挙げられる。
【0041】
前記インクジェット用記録インクは、公知の方法、例えば、前記顔料分散液、第2のカーボンブラック、水、及び水溶性有機溶剤などを攪拌混合し、フィルター、遠心分離装置等で粗大粒子をろ過し、必要に応じて脱気すること、によって得られる。
なお、前記インクジェット用記録インクにおけるカーボンブラックの含有量は、前記インクジェット用記録インク全量に対して1質量%以上20質量%以下が好ましい。前記含有量が、1質量%未満では画像濃度が低いため印字の鮮明さに欠け、20質量%より多いとインクの粘度が高くなる傾向があるばかりでなくノズルの目詰まりが発生しやすくなる。
【0042】
以上より得られた前記インクジェット用記録インクは保水と湿潤性を確保することができ、その結果、インクジェット用記録インクを長期間保存しても色材の凝集や粘度の上昇がなく、優れた保存安定性を実現できる。また、インクジェットプリンターノズル先端等で開放状態に放置されても、乾燥物の流動性を長時間維持するインクジェット用記録インクが実現できる。更に印字中もしくは印字中断後の再起動時にノズルの目詰まりが発生することもなく、高い吐出安定性が得られる。
【0043】
また本発明のインクジェット用記録インクは、これを例えば紙のような画像支持体に吐出させ記録(印字)を行って画像形成するインクジェットプリント装置により、画像形成することができる。印字する方法としては連続噴射型あるいはオンデマンド型が挙げられる。オンデマンド型としてはピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等が挙げられる。
【0044】
(インクカートリッジ)
本発明のインクジェット用記録インクは、これを収容するインクカートリッジに好適に用いることができる。
本発明のインクカートリッジの概略構成を示す外観斜視図を図1に、またインクカートリッジの概略内部構成を示す正断面図を図2に示す。
【0045】
インクカートリッジ20は、図1、2に示すように、カートリッジ筐体49内に本発明のインクジェット用記録インクを吸収させた液吸収体42を収容している。前記液吸収体42は、多孔質体からなり、本発明のインクジェット用記録インクを吸収している。前記カートリッジ筐体49には、上部に広い開口を有するケース43の上部開口に上蓋部材44が形成されている。Aは空間を示す。更に前記上蓋部材44には、溝48形状の大気解放口47、カートリッジ着脱用突起部81が設けられている。符号55は、前記大気解放口47のシール部材である。また、前記カートリッジ筐体49のケース43底部には、記録ヘッド(図示せず)へ各液を供給するための液供給口45が形成されており、前記液供給口45内周辺にはシーリング46が嵌着されている。前記カートリッジ筐体49には、画像形成装置に装填する前の状態において液の漏洩を防止するため、前記液供給口45を塞ぐための液漏れ防止用突部51を設けたキャップ部材50が装着されている。なお、符号71はカートリッジ位置決め部、81aはカートリッジ着脱用指掛け部、82はカートリッジ着脱用窪み部を示す。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお例中の部は質量基準である。
【0047】
(調製例1)
<顔料分散液(A)の調製>
処方
カーボンブラック 200部
NIPEX150−IQ(degussa社製:ガスブラック)
ナフタレンスルホン酸ホルマリンの縮合物 50部
(ナフタレンスルホン酸2量体、3量体、4量体の合計含有量:30%)
〔パイオニンA−45−PN、竹本油脂(株)製〕
蒸留水 750部
上記処方の混合物をプレミックス後ビーズミル分散機(寿工業社製、UAM−015)を用い直径0.03mmのジルコニアビーズ(密度6.03×10−6g/m)で周速10m/s、液温30℃で15分間分散した後、遠心分離機(久保田商事(株)製、Model−3600)で粗大粒子を遠心分離し、カーボンブラックの平均粒子径121.4nm、標準偏差48.3nmの顔料分散液(A)を調製した。
【0048】
(調製例2)
<顔料分散液(B)(樹脂被覆カーボン分散液(B))の調製>
−ポリマー溶液の調製−
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管、及び滴下ロートを備えた1Lフラスコ内を十分に窒素ガスで置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー(東亜合成株式会社製、商品名:AS−6)4.0g、及びメルカプトエタノール0.4gを仕込み、65℃に昇温した。次に、スチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0g、ヒドロキシエチルメタクリレート60.0g、スチレンマクロマー(東亜合成株式会社製、商品名:AS−6)36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスジメチルバレロニトリル2.4g、及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を2.5時間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけてフラスコ内に滴下した。65℃で1時間熟成した後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間熟成した。反応終了後、フラスコ内に、メチルエチルケトン364gを添加し、濃度が50質量%のポリマー溶液800gを調製した。
−樹脂被覆されたカーボンブラックの調製、及び顔料分散液(B)の調製−
上記で作製したポリマー溶液28g、カーボンブラック26g、1mol/Lの水酸化カリウム溶液13.6g、メチルエチルケトン20g、及びイオン交換水30gを十分に攪拌した後、三本ロールミル(MIXING ROLL MILL、井上製作所社製)を用いて混練した。得られたペーストをイオン交換水200gに投入し、十分に攪拌した後、エバポレーターを用いて、メチルエチルケトン及び水を留去し、カーボンブラックのポリマー微粒子分散体(顔料分散液(B))を調製した。
【0049】
(調製例3)
<顔料分散液(C)の調製>
調製例1において、ナフタレンスルホン酸ホルマリンの縮合物をハイテノール18E(第一工業製薬社製:アニオン系界面活性剤)にした以外は、調製例1と同様にして、顔料分散液(C)を調製した。
【0050】
(調製例4)
<顔料分散液(D)の調製>
調製例1において、カーボンブラックをカーボンブラック(NIPEX−180、degussa社製)に代え、かつ分散時間を25分間とした以外は、調製例1と同様にして、顔料分散液(D)を調製した。
得られた顔料分散液(D)の固形分濃度は25質量%、顔料濃度は20質量%であった。
得られた顔料分散液(D)におけるカーボンブラックの平均粒子径は72.3nm、標準偏差は31.4nmであった。
【0051】
(調製例5)
<顔料分散液(E)の調製>
調製例1において、カーボンブラックをカーボンブラック(NIPEX−60、degussa社製)に代え、かつ分散時間を8分間とした以外は、調製例1と同様にして、顔料分散液(E)を調製した。
得られた顔料分散液(E)の固形分濃度は25質量%、顔料濃度は20質量%であった。
得られた顔料分散液(E)におけるカーボンブラックの平均粒子径は176.2nm、標準偏差は69.5nmであった。
【0052】
(調製例6)
<顔料分散液(F)の調製>
調製例1において、カーボンブラックをカーボンブラック(NIPEX−60、degussa社製)に代え、かつ分散時間を5分間とした以外は、調製例1と同様にして、顔料分散液(F)を調製した。
得られた顔料分散液(F)の固形分濃度は25質量%、顔料濃度は20質量%であった。
得られた顔料分散液(F)におけるカーボンブラックの平均粒子径は189.6nm、標準偏差は70.8nmであった。
【0053】
(調製例7)
<顔料分散液(G)の調製>
調製例1において、カーボンブラックをカーボンブラック(Printex95、degussa社製)に代えた以外は、調製例1と同様にして、顔料分散液(G)を調製した。
得られた顔料分散液(G)の固形分濃度は25質量%、顔料濃度は20質量%であった。
得られた顔料分散液(G)におけるカーボンブラックの平均粒子径は178.3nm、標準偏差は98.3nmであった。
【0054】
(調製例8)
<顔料分散液(H)の調製>
調製例1において、カーボンブラックをカーボンブラック、(NIPEX−180、degussa社製)に代え、かつ分散時間を35分間とした以外は、調製例1と同様にして、顔料分散液(H)を調製した。
得られた顔料分散液(H)の固形分濃度は25質量%、顔料濃度は20質量%であった。
得られた顔料分散液(H)におけるカーボンブラックの平均粒子径は58.2nm、標準偏差は26.3nmであった。
【0055】
(実施例1)
<インク液(a)の調製>
処方
顔料分散液(A)(固形分濃度20質量%) 25部
樹脂被覆カーボン分散液(B)(固形分濃度20質量%) 25部
グリセリン 7.5部
ジエチレングリコール 22.5部
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 3.0部
ポリオキシアルキレン誘導体
一般式 C1827(CO)H n=8 3.0部
W5661 2.0部
(アニオン性自己乳化型のエーテル系ポリウレタン、三井化学社製)
(酸価:48mgKOH/g、重量平均分子量:20,000、平均粒径:11.0nm)
蒸留水 12.0部
上記処方の混合物を、30分攪拌後、孔径0.8μmのメンブランフィルターでろ過、真空脱気して、インク液(a)を調製した。
【0056】
(実施例2)
<インク液(b)の調製>
実施例1において、ポリオキシアルキレン誘導体、一般式 C1827(CO)H n=8を使用しないこと、及び蒸留水3.0部を増量すること以外は、実施例1と同様にして、インク液(b)を調製した。
【0057】
(実施例3)
<インク液(c)の調製>
実施例1において、W5661を使用しないこと、及び蒸留水2.0部を増量すること以外は、実施例1と同様にして、インク液(c)を調製した。
【0058】
(比較例1)
<インク液(d)の調製>
実施例1において、顔料分散液(A)を顔料分散液(C)に代え、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールをポリオキシエチレン(3)トリデシルエーテル酢酸ナトリウムに代え、ポリオキシアルキレン誘導体をDupont社製のFS−300(フッ素系界面活性剤)に代える以外は、実施例1と同様にして、比較例のインク液(d)を調製した。
【0059】
(比較例2)
<インク液(e)の調製>
実施例1において、樹脂被覆カーボン分散液(B)を使用しないこと、及び蒸留水25部を増量する以外は、実施例1と同様にして、比較例のインク液(e)を調製した。
【0060】
(比較例3)
<インク液(f)の調製>
実施例1において、顔料分散液(A)を使用しないこと、及び蒸留水25部を増量する以外は、実施例1と同様にして、比較例のインク液(f)を調製した。
【0061】
(実施例4)
<インク液(g)の調製>
実施例1において、ポリオキシアルキレン誘導体及びW5661(アニオン性自己乳化型のエーテル系ポリウレタン、三井化学社製)を配合せず、かつ蒸留水12.0部を17.0部に代えた以外は、実施例1と同様にして、インク液(g)を調製した。
【0062】
(実施例5)
<インク液(h)の調製>
実施例1において、顔料分散液(A)を顔料分散液(D)に代えた以外は、実施例1と同様にして、インク液(h)を調製した。
【0063】
(実施例6)
<インク液(i)の調製>
実施例1において、顔料分散液(A)を顔料分散液(E)に代えた以外は、実施例1と同様にして、インク液(i)を調製した。
【0064】
(比較例4)
<インク液(j)の調製>
実施例1において、顔料分散液(A)を顔料分散液(F)に代えた以外は、実施例1と同様にして、インク液(j)を調製した。
【0065】
(比較例5)
<インク液(k)の調製>
実施例1において、顔料分散液(A)を顔料分散液(G)に代えた以外は、実施例1と同様にして、インク液(k)を調製した。
【0066】
(比較例6)
<インク液(l)の調製>
実施例1において、顔料分散液(A)を顔料分散液(H)に代えた以外は、実施例1と同様にして、インク液(l)を調製した。
【0067】
(比較例7)
<インク液(m)の調製>
実施例1において、顔料分散液(A)を顔料分散液(C)に代えた以外は、実施例1と同様にして、インク液(m)を調製した。
【0068】
(比較例8)
<インク液(n)の調製>
実施例1において、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールをポリオキシエチレン(3)トリデシルエーテル酢酸ナトリウムに代えた以外は、実施例1と同様にして、インク液(n)を調製した。
【0069】
(実施例7)
<インク液(o)の調製>
実施例1において、ポリオキシアルキレン誘導体をDupont社製のFS−300(フッ素系界面活性剤)に代えた以外は、実施例1と同様にして、インク液(o)を調製した。
【0070】
(実施例8)
<インク液(p)の調製>
実施例1において、アニオン性自己乳化型のエーテル系ポリウレタンを酸価37mgKOH/gのアニオン性自己乳化型のエーテル系ポリウレタン(三井化学社製)に代えた以外は、実施例1と同様にして、インク液(p)を調製した。
なお、酸価37mgKOH/gのアニオン性自己乳化型のエーテル系ポリウレタンは、ポリエーテルジオールを主成分とするポリオールと、ジイソシアネート化合物を反応させて合成された。酸価は、ポリオールに含まれる官能基(カルボキシ基、アミノ基)の量により調整された。
【0071】
(実施例9)
<インク液(q)の調製>
実施例1において、アニオン性自己乳化型のエーテル系ポリウレタンを酸価128mgKOH/gのアニオン性自己乳化型のエーテル系ポリウレタン(三井化学社製)に代えた以外は、実施例1と同様にして、インク液(q)を調製した。
なお、酸価128mgKOH/gのアニオン性自己乳化型のエーテル系ポリウレタンは、ポリエーテルジオールを主成分とするポリオールと、ジイソシアネート化合物を反応させて合成された。酸価は、ポリオールに含まれる官能基(カルボキシ基、アミノ基)の量により調整された。
【0072】
(実施例10)
<インク液(r)の調製>
実施例1において、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールを3.0部から0.05部に代え、かつ蒸留水を12.0部から14.95部に代えた以外は、実施例1と同様にして、インク液(r)を調製した。
【0073】
(実施例11)
<インク液(s)の調製>
実施例1において、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールを3.0部から12.0部に代え、かつ蒸留水を12.0部から3.0部に代えた以外は、実施例1と同様にして、インク液(s)を調製した。
【0074】
(実施例12)
<インク液(t)の調製>
実施例1において、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールを3.0部から0.1部に代え、かつ蒸留水を12.0部から14.9部に代えた以外は、実施例1と同様にして、インク液(t)を調製した。
【0075】
(実施例13)
<インク液(u)の調製>
実施例1において、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールを3.0部から10部に代え、かつ蒸留水を12.0部から5.0部に代えた以外は、実施例1と同様にして、インク液(u)を調製した。
【0076】
(実施例14)
<インク液(v)の調製>
実施例1において、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールを3.0部から1.5部に代え、かつ蒸留水を12.0部から13.5部に代えた以外は、実施例1と同様にして、インク液(v)を調製した。
【0077】
(実施例15)
<インク液(w)の調製>
実施例1において、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールを3.0部から5.0部に代え、かつ蒸留水を12.0部から10.0部に代えた以外は、実施例1と同様にして、インク液(w)を調製した。
【0078】
(実施例16)
<インク液(x)の調製>
実施例1において、アニオン性自己乳化型のエーテル系ポリウレタンを酸価40mgKOH/gのアニオン性自己乳化型のエーテル系ポリウレタン(三井化学社製)に代えた以外は、実施例1と同様にして、インク液(x)を調製した。
なお、酸価40mgKOH/gのアニオン性自己乳化型のエーテル系ポリウレタンは、ポリエーテルジオールを主成分とするポリオールと、ジイソシアネート化合物を反応させて合成された。酸価は、ポリオールに含まれる官能基(カルボキシ基、アミノ基)の量により調整された。
【0079】
(実施例17)
<インク液(y)の調製>
実施例1において、アニオン性自己乳化型のエーテル系ポリウレタンを酸価120mgKOH/gのアニオン性自己乳化型のエーテル系ポリウレタン(三井化学社製)に代えた以外は、実施例1と同様にして、インク液(y)を調製した。
なお、酸価120mgKOH/gのアニオン性自己乳化型のエーテル系ポリウレタンは、ポリエーテルジオールを主成分とするポリオールと、ジイソシアネート化合物を反応させて合成された。酸価は、ポリオールに含まれる官能基(カルボキシ基、アミノ基)の量により調整された。
【0080】
<評価>
EPSON社製インクジェットプリンタMJ−930Cでゼロックス(株)社製PPC用紙4024に印字し、吐出安定性及び印字画像をXrite濃度計(X−rite 938、X−rite社製)にて測定した。また、インク液保存性についても下記試験法により評価した。評価結果を表1に示す。
【0081】
−画像濃度−
画像サンプルのベタ画像の測色をXrite濃度計にて測定し、下記基準にて、画像濃度を評価した。
◎:画像濃度が1.5以上
○:画像濃度が1.4以上1.5未満
△:画像濃度が1.2以上1.4未満
×:画像濃度が1.2未満
【0082】
−吐出安定性−
印刷物を印刷した後、プリンタヘッドにキャップした状態でプリンタを40℃の環境下で1ヶ月放置した。放置後のプリンタの吐出状態が初期の吐出状態に回復するか否かを下記のクリーニング動作回数によって評価した。
○:1回の動作により回復した
△:2回〜3回の動作により回復した
×:3回以上の動作によっても回復がみられなかった
【0083】
−保存安定性−
各インクをポリエチレン容器に入れ密封し、70℃で3週間保存した後の粒径、表面張力、粘度を測定し初期物性との変化率により下記の様に評価した。
◎:粒径、表面張力、粘度の全て項目で変化率が5%未満である
○:粒径、表面張力、粘度の全て項目で変化率が10%未満である
△:粒径、表面張力、粘度の全て項目で変化率が30%未満である
×:粒径、表面張力、粘度の少なくとも一つの項目で変化率が30%以上である
【0084】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明のインクジェット用記録インクは、画像濃度が高く、吐出安定性や保存安定性にも優れることから、例えば、紙のような画像支持体に吐出させ記録(印字)を行って画像形成するインクジェットプリント装置に好適に適用できる。
【符号の説明】
【0086】
20 インクカートリッジ
42 液吸収体
43 ケース
44 上蓋部材
45 液供給口
46 シールリング
47 大気解放口
48 溝
49 カートリッジ筐体
50 キャップ部材
51 液漏れ防止用突部
55 シール部材
71 カートリッジ位置決め部
81 カートリッジ着脱用突起部
81a カートリッジ着脱用指掛け部
82 カートリッジ着脱用窪み部
A 空間
【先行技術文献】
【特許文献】
【0087】
【特許文献1】特開2007−186642号公報
【特許文献2】特開2006−282781号公報
【特許文献3】特開2005−105227号公報
【特許文献4】特開2007−119551号公報
【特許文献5】特開2006−8858号公報
【特許文献6】特開2002−3767号公報
【特許文献7】特開2006−219584号公報
【特許文献8】特開2004−123904号公報
【特許文献9】特開平5−239392号公報
【特許文献10】特開平8−283633号公報
【特許文献11】特開2000−63727号公報
【特許文献12】特開2001−81366号公報
【特許文献13】特表2003−509571号公報
【特許文献14】特開平8−333531号公報
【特許文献15】特開昭56−147871号公報
【特許文献16】米国特許第5085698号明細書
【特許文献17】米国特許第5221334号明細書
【特許文献18】米国特許第5172133号明細書
【特許文献19】米国特許第5571311号明細書
【特許文献20】特開平8−81646号公報
【特許文献21】特開平8−3498号公報
【特許文献22】特開平9−194775号公報
【特許文献23】特開2000−144028号公報
【特許文献24】特開2005−281691号公報
【特許文献25】特開2005−314528号公報
【特許文献26】特開2006−188626号公報
【特許文献27】特許第3625595号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1のカーボンブラック及び分散剤を含有する顔料分散液と、第2のカーボンブラックと、浸透剤と、湿潤剤と、水とを含有し、
前記第1のカーボンブラックの動的光散乱法による平均粒子径のD50が、70nm〜180nmであり、粒子径標準偏差が、平均粒子径の1/2以下であり、
前記分散剤が、ナフタレンスルホン酸ホルマリンの縮合物であり、
前記第2のカーボンブラックが、樹脂被覆されたカーボンブラックであり、
前記浸透剤が、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールであることを特徴とするインクジェット用記録インク。
【請求項2】
更にポリオキシアルキレン誘導体を含有する請求項1に記載のインクジェット用記録インク。
【請求項3】
ポリオキシアルキレン誘導体が、下記一般式で表されるポリオキシアルキレン誘導体である請求項2に記載のインクジェット用記録インク。
一般式 C1827(CO)nH
ただし、nは8〜9である。
【請求項4】
更に水系ポリウレタン樹脂を含有する請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット用記録インク。
【請求項5】
水系ポリウレタン樹脂が、アニオン性自己乳化型のエーテル系ポリウレタンである請求項4に記載のインクジェット用記録インク。
【請求項6】
水系ポリウレタン樹脂の酸価が、40mgKOH/g〜120mgKOH/gである請求項4から5のいずれかに記載のインクジェット用記録インク。
【請求項7】
2−エチル−1,3−ヘキサンジオールの含有量が、0.1質量%以上10質量%以下である請求項1から6のいずれかに記載のインクジェット用記録インク。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載のインクジェット用記録インクを容器中に収容したことを特徴とするインクカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−80041(P2011−80041A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190812(P2010−190812)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】