説明

インクジェット用記録材及び記録物の製造方法

【課題】インクジェット記録方式、特に溶剤系顔料インクを用いたインクジェット記録方式において、発色濃度、ラミネート強度、耐水性に優れ、かつ水性顔料インクにも使用可能なインクジェット用記録材を提供する。
【解決手段】不透明基材上に粒子と樹脂から主に構成されてなる多孔質のインク受容層を設けた記録材であって、前記樹脂はケン化度が90%以上98%以下で、重合度が1300以上2400以下である中間ケン化ポリビニルアルコール及びエチレン酢酸ビニル共重合体を含むことを特徴とするインクジェット用記録材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録方式に適した記録材及び記録物の製造方法に関する。詳細には、溶剤系顔料インクを用いたインクジェット記録方式を用いて使用する記録材に関し、発色濃度、ラミネート強度、耐水性に優れ、かつ水性顔料インクでも使用可能な記録材に関する。また、記録材に溶剤インクを用いてインクジェット方式で記録する記録物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピューターの性能向上及びコンピューターの普及とともに、ハードコピー技術が急速に発達している。ハードコピーの記録方式としては、昇華転写記録方式、電子写真方式、インクジェット方式等が知られている。
【0003】
インクジェットプリンターは、ノズルから被記録紙に向けてインク液滴を高速で噴射するインクジェット方式を用いたプリンターであり、カラー化、小型化がしやすいこと、印字騒音が低いことから、オフィス、ホーム、パーソナルコンピューター等の端末として、近年急速に普及しつつある。さらに、銀塩写真に迫る記録品質の向上、大型化の容易さから、大型看板、特に電飾看板等の産業分野への応用が期待されている。
【0004】
インクジェット方式に使用されるインクとしては、水性染料インク、すなわち水あるいは水と親水性溶剤の混合溶媒中に各種の水溶性染料を溶解し、必要に応じて各種の添加剤を混合したものが主流である。これは水性インクが色調の鮮やかな記録が可能であること、インクの粘度を調節しやすいこと、安全性の面で優れているためである。
【0005】
しかしながら、水性染料インクは水溶性染料を用いていることから、耐水性、耐候性が劣るという欠点がある。
【0006】
上記の水性染料インクの欠点を補うために、水性顔料インク、すなわち、有機顔料及び/又は無機顔料を水あるいは水と親水性溶剤との混合溶液に分散し、かつ必要に応じて各種の添加剤を含有したインクが提案されている。水性顔料インクを用いて記録した場合には、記録後の記録材を十分に乾燥させれば完全な耐水性を得ることが可能であり、近年急激に使用されるようになりつつある。しかしながら、顔料インクの主たる分散媒として水を用いているため、顔料の濃度を高くできず、発色性、さらに色調の鮮やかさの点で劣ること、ヘッドノズルの目詰まりが発生しやすいことなどの欠点がある。
【0007】
これらの諸問題を解決する方策として、油性インクが提案されている。油性インクとは、パラフィン類等の溶剤に油溶性染料を溶解もしくは有機顔料及び/又は無機顔料を分散させたインクであり、水性染料インクや水性顔料インクと比較すると、色材(染料や顔料)の選択範囲が広がり、耐候性、耐水性に優れた染料や顔料を選択できること、溶剤中に高濃度で溶解あるいは分散できるため、高い画像濃度を実現できること、ヘッドの目詰まりが起こり難いこと、シートの吸水によるコックリングが生じ難いこと、インクの表面張力を低くすることが可能であり、インク受容層へのインク吸収性に優れていること等の利点がある。
【0008】
そのため、油性インクが高速記録、高画質記録、高耐候性を必要とする分野で、水性インクの代替として有望視されている。しかしながら、油性インクを用いてインク受容層に画像を記録した後、記録層(インク受容層)中に残存するパラフィン等の溶剤の乾燥性が悪く、長時間乾燥することが重要であるため、各種のトラブルが発生するなどの問題がある。
【0009】
これらのことから、近年、水性インクあるいは油性インクを用いた場合にそれぞれが有する問題点を解消させる目的で、溶剤インクが提案されている。溶剤インクとは、染料又は顔料をアルコール、グリコール、グリコールエーテル、酢酸エステル、ケトンから選ばれた少なくとも1種の溶剤に分散させたインクである。溶剤インクを用いた場合、油性インクと同様に耐候性、耐水性の優れた色材を選定できる利点があり、かつ、水性インクよりは劣るものの油性インクよりも記録後の記録層(インク受容層)中に残存する溶剤の蒸発が早い利点がある。
【0010】
一方、記録材としては、ポリビニルアルコールとエチレン酢酸ビニル共重合体を含む各種のものが提案されている。例えば、(1)完全ケン化ポリビニルアルコールとエチレン酢酸ビニル共重合体を多孔質層に含むもの(例えば、特許文献1参照)、(2)部分ケン化ポリビニルアルコールとエチレン酢酸ビニル共重合体を多孔質層に含むもの(例えば、特許文献2参照)等が提案されている。
【0011】
【特許文献1】特許第3092948号
【特許文献2】特開平10−52971号公報
【0012】
しかしながら、上記(1)は完全ケン化ポリビニルアルコールを使用しているため、耐水性に優れるが、粒子を結着する能力が低下し、ラミネート強度が低下している。上記(2)はケン化度に関して特に規定していないが、部分ケン化ポリビニルアルコールを使用しているため、耐水性が低下している。すなわち、高ケン化ではラミネート強度の低下、低ケン化では、耐水性の低下の問題がある。
【0013】
また、上記(1)、(2)ともに水性染料インクあるいは水性顔料インク用に設計されたものであり、油性インクや溶剤インクを用いて水性インク用に設計した記録材に記録した場合には、必ずしも良好な記録が得られるものではない。一般的に水性染料インク、水性顔料インクはアニオンに帯電しているため発色濃度、にじみ防止にカチオン樹脂を混合するのが公知の技術であるが、溶剤インクは帯電していないため、この技術を応用することができない。
【0014】
一方、水性インク用に設計した記録材には耐水性を付与するために、非水溶性樹脂を使用するのが一般的である。しかし、溶剤インクを用いた場合、インク受容層を溶解するため、基材との密着性が低下してしまう可能性がある。また、インク受容層を形成する樹脂の塗布量が多いと基材までインクが浸透しにくいため密着性は低下しないが、発色濃度が低下してしまう問題があり、塗布量が少ないと基材までインクが浸透しやすいため密着性が低下してしまう問題がある。
【0015】
すなわち、これまで溶剤インクの性能を最大限に生かし、水性インクにも対応した記録材は存在していなかったのが実状である。
【0016】
さらに、水性インクにおいても、発色濃度、ラミネート強度、耐水性の全ての品質を満足させる記録材には至っていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記従来の記録材の有する問題点に鑑み、インクジェット記録方式、特に溶剤インクを用いたインクジェット記録方式において、発色濃度、ラミネート強度、耐水性に優れ、かつ水性染料、顔料インクにも使用可能な記録材及び該記録材に溶剤インクを用いてインクジェット記録方式で記録する記録物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、本発明のインクジェット用記録材は、不透明基材上に粒子と樹脂から主に構成されてなる多孔質のインク受容層を設けた記録材であって、前記樹脂はケン化度が90%以上98%以下で、重合度が1300以上2400以下である中間ケン化ポリビニルアルコール及びエチレン酢酸ビニル共重合体を含むことを特徴とする。
【0019】
この場合において、インク受容層に、架橋剤を含むことが好ましい。
【0020】
また、架橋剤が、尿素系、エポキシ系、メラミン系、イソシアネート系から選ばれる架橋剤を少なくとも1種含むことが好ましい。
【0021】
また、本発明の記録物の製造方法は、インクジェット用記録材のインク受容層に、アルコール、グリコール、グリコールエーテル、酢酸エステル、ケトンから選ばれた少なくとも1種の溶剤、及び顔料を含有する溶剤インクを用いてインクジェット方式で記録することを特徴とする。
【0022】
さらにまた、本発明の記録物の製造方法において、溶剤にジプロピレングリコールモノメチルエーテルを含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明のインクジェット用記録材は、そのインク受容層が、中間ケン化ポリビニルアルコールとエチレン酢酸ビニル共重合体を含むことで、特に、溶剤インクを用いたインクジェット記録方式で記録した場合、発色濃度、ラミネート強度、耐水性に優れ、かつ水性染料インク、水性顔料インクにも使用可能であるという効果を有する。また、本発明の記録物の製造方法は、かかる記録材に溶剤インクを用いて印刷することにより、発色濃度、ラミネート強度、耐水性に優れた記録物を製造することができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(不透明基材)
本発明のインクジェット用記録材において、不透明基材は特に限定されるものではないが、例えばポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリカーボネート、ノルボルネン、ビニロン、アクリル等のプラスティックフィルム又はシートやこれらの材料に無機顔料、発泡剤を混合した不透明樹脂フィルム、ポリエステル系布、ポリエステル/綿混合布、綿布、不織布、パルプ、樹脂含浸紙、キャストコート紙、レジンコート紙、ガラス及びこれらの任意の2種類以上のものを貼り合わせたものが挙げられる。好ましくは、耐熱性に優れる不透明なポリエステル系フィルムであり、より好ましくは、柔軟性に優れる内部に空洞を有する不透明なポリエステル系フィルムである。好ましい不透明度は、JIS K−7105により測定した全光線透過率が30%以下である。不透明性が劣る場合には、壁等に貼り付けた際に、裏地が見える問題が発生する。
【0025】
本発明のインクジェット用記録材の不透明基材に用いるポリエステル系フィルムとは、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸又はそのエステルと、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1、4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのグリコールとをエステル化反応又はエステル交換反応を行い、次いで重縮合反応させて得たポリマーチップを溶融し、Tダイからシート状に押出して得た未延伸シートを少なくとも1軸方向に延伸し、次いで熱固定処理、緩和処理を行うことにより製造されるフィルムである。
【0026】
前記フィルムは、強度等の点から、二軸延伸フィルムが特に好ましい。延伸方法としては、チューブラ延伸法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法等が挙げられるが、平面性、寸法安定性、厚みムラ等から逐次二軸延伸法が好ましい。逐次二軸延伸フィルムは、例えば、長手方向にポリエステルのガラス転移温度(Tg)〜(Tg+30℃)で、2.0〜5.0倍にロール延伸し、引き続き、120〜150℃で倍率を1.2〜5.0倍にテンター延伸する。さらに、二軸延伸後に220℃以上の温度で熱固定処理を行い、次いで幅方向に3〜8%緩和させることによって製造することができる。
【0027】
ポリエステルフィルムの内部に空洞を発現させる方法としては、特に限定されるものではないが、好ましくはポリエステルに非相溶の熱可塑性樹脂を混合、溶融、押出しした未延伸シートを少なくとも1軸方向に延伸することにより、内部に微細な空洞を多数含有する方法である。
【0028】
ポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリアクリル、ポリカーボネート、ポリスルホン、セルロース系樹脂などが挙げられる。特にポリスチレン、ポリメチルペンテン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンが好ましい。
【0029】
ポリエステルとポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂を混合させた未延伸シートは、例えば、各樹脂のチップを混合し押出機内で溶融混練した後、押出して固化することによって得られる方法や、あらかじめ混練機によって両樹脂を混練したものをさらに押出機より溶融押出して固化する方法や、ポリエステルの重合工程においてポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂を添加し、撹拌分散して得たチップを溶融押出して固化する方法などによっても得られる。固化して得られた未延伸シートは通常、無配向もしくは弱い配向状態のものである。また、ポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂はポリエステル中に、球状もしくは楕円球状、もしくは糸状など様々な形状で分散した形態をとって存在する。
【0030】
ポリエステルに混合されるポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂の量は、目的とする空洞の量によって異なるが、混合物全体に対して3質量%〜40質量%が好ましく、特に6〜35質量%が好ましい。3質量%未満では、空洞の生成量を多くすることに限界があり、目的の柔軟性や軽量性や描画性が得られない。逆に、40質量%を超えると、ポリエステルフィルムの持つ耐熱性や強度、特に腰の強さが著しく損なわれる。
【0031】
フィルムには、必要に応じて隠ぺい性や描画性を向上させるため無機粒子を含有することができる。このための無機粒子としは二酸化チタン、二酸化珪素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、カオリン、タルクなどが挙げられるが特に限定されるものではない。
【0032】
重合体混合物には、用途に応じて着色材、紫外線吸収剤剤、蛍光剤、帯電防止剤、減粘剤、酸化防止剤などを添加することも可能である。
【0033】
本発明で用いる不透明基材は、単層フィルムであっても、表層と中心層を積層した2層以上の複合フィルムであっても構わない。複合フィルムの場合、表層と中心層の機能を独立して設計することができる利点がある。前記複合フィルムの製造方法は特に限定されるものではないが、生産性を考慮すると、表層と中心層の原料を別々の押出機から押出し、1つのダイスに導き未延伸シートを得た後、少なくとも1軸方向に配向させる、いわゆる共押出法による積層が特に好ましい。
【0034】
基材としては、白色であることが好ましく、好ましい範囲は、JIS Z−8730により測定値、L*≧80、−5≦a*≦5、−5≦b*≦5である。基材が白色ではない場合には、インク受容層を設けた後の記録材としても基材の影響で白色ではなく、記録物としての品位が低下する。
【0035】
(インク受容層)
本発明のインクジェット用記録材は、不透明基材上に粒子と樹脂から主に構成される多孔質のインク受容層を設ける必要がある。
【0036】
本発明において、多孔質構造とは内部に多数の空隙が存在し、表面から内部にかけて連通している構造を意味する。
【0037】
本発明において、粒子と樹脂から主に構成されるとは、インク受容層中の粒子と樹脂の合計量が70質量%以上であることを意味する。
【0038】
インク受容層中の粒子は、(1)シリカ、カオリナイト、タルク、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、カーボンブラック、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、二酸化チタン、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、等の無機粒子、(2)アクリルあるいはメタアクリル系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、ナイロン、スチレン/アクリル系、スチレン/ブタジエン系、ポリスチレン/アクリル系、ポリスチレン/イソプレン系、ポリスチレン/イソプレン系、メチルメタアクリレート/ブチルメタアクリレート系、メラミン系、ポリカーボネート系、尿素系、エポキシ系、ウレタン系、フェノール系、ジアリルフタレート系、ポリエステル系等の樹脂粒子が挙げられる。これらの中で、インク吸収性に優れる表面に細孔を有する粒子が好ましく、特に好ましくは、樹脂との屈折率差の小さい合成非晶質シリカである。
【0039】
前記合成非晶質シリカとしては、平均粒径(電子顕微鏡法による円相当径)が1〜20μm、細孔容積が0.2〜3.0ml/gのものが好適である。また、シリカは1種のみでもよいが、細孔容積が1.0ml/g以上で、平均粒径が1〜10μmのシリカ1と平均粒径10〜20μmのシリカ2の2種類のシリカを混合することが好ましい。細孔容積の大きい粒子を用いることによりインク吸収容量を大きくすることができ、さらに2種混合することによりインク受容層が嵩高いものとなり、同一塗工量でもインクの吸収容量を大きくすることができる。2種混合の場合の質量比(シリカ1/シリカ2)は、10/90〜90/10の範囲が好ましく、より好ましくは30/70〜70/30である。前記合成非晶質シリカは、必要に応じて表面改質されたものを用いてもよい。前記表面処理としては、有機シラン、有機チタネートなどを用いた化学処理、パラフィンワックスやグリコール系を表面に付着させる物理処理などが挙げられる。
【0040】
このようなシリカとしては、市販物を好適に選択できる。例えば、水沢化学製ミズカシル、徳山ソーダ製トクシール、ファインシール、シオノギ製薬製カープレックス、富士シリシア製サイリシア、グレースデビソン製サイロイド、サイロジェット、日本シリカ製ニップジェル等が挙げられる。
【0041】
本発明においては、インク受容層中にシリカを50質量%以上70質量%以下含有することが好ましい。含有量が多い場合には、ラミネート強度が低下し、逆に、含有量が少ない場合には、インク吸収性が低下する。
【0042】
本発明においてインク受容層に用いる樹脂として、耐溶剤性のあるポリビニルアルコールを含有させることが重要であり、かつ、前記ポリビニルアルコールが中間ケン化ポリビニルアルコールであることが重要である。
【0043】
本発明において、ポリビニルアルコール(PVA)のケン化度、重合度はJIS K−6727により測定された値である。
【0044】
本発明において、中間ケン化ポリビニルアルコールとはケン化度が90%以上98%以下のポリビニルアルコールを意味する。ポリビニルアルコールは1種からなることが好ましいが、ケン化度の異なる2種類以上を混合しても構わない。2種以上を混合した場合には、下記式より計算でケン化度を求め、その値を90%以上98%以下にすることが重要である。
ケン化度(%)=mx+ny+・・・
(ケン化度:m、n、・・・ 、含有比率:x、y、・・・、但し、x+y+・・・=1)
【0045】
ケン化度の高いポリビニルアルコールを用いるとポリビニルアルコールの結晶性が向上し、耐水性に優れる様になるが、粒子を結着する能力が低下し、ラミネート強度が低下しやすくなる。一方、ケン化度の低いポリビニルアルコールを用いる場合には、耐水性が低下しやすくなるだけでなく、発色濃度も低下しやすくなる。
【0046】
本発明において、ポリビニルアルコールの重合度は、1300以上2400以下であることが好ましく、特に好ましくは1500以上2000以下である。重合度が高いポリビニルアルコールを用いる場合には、塗布液の粘度が上昇するために面質が悪くなり、発色濃度が低下しやすくなる。一方、重合度が低い場合は、膜強度が弱くなり、ラミネート強度、耐水性が低下しやすくなる。
【0047】
本発明において、インク受容層中の中間ケン化ポリビニルアルコールの含有量は、3質量%以上15質量%以下が好ましい。インク受容層における中間ケン化ポリビニルアルコールの含有量が多すぎると発色濃度が低下しやすくなり、少なすぎると溶剤インクを用いた場合の膜強度が低下しやすくなる。
【0048】
本発明において、インク受容層中に架橋剤を併用させてもよい。架橋剤を含有させることにより、インク受容層の耐水性をさらに向上させることが可能になる。架橋剤としては、尿素系、エポキシ系、メラミン系、イソシアネート系等が挙げられる。これらの中で、塗布液の経時安定性、耐水性の向上効果からメラミン系が好ましい。また、架橋反応を促進させるため、触媒等を必要に応じて適宜使用してもよい。
【0049】
架橋剤の含有量としては、インク受容層の樹脂成分に対し5質量%以下とすることが好ましい。インク受容層中の架橋剤が多すぎる場合には、断裁時に端面から粉落ちが発生する頻度が増加する。
【0050】
本発明において、インク受容層中にエチレン酢酸ビニル共重合体を含有させることが重要である。エチレン酢酸ビニルを含有させることにより、発色濃度が向上し、また、柔軟な膜となり断裁時の粉落ちが減少する。エチレン酢酸ビニルとしては、公知公用のものが使用可能であるが、好ましくは、Tgが−20℃以上0℃以下であることが好ましい。Tgの低いエチレン酢酸ビニルを用いるとインク受容層のラミネート強度が低下しやすくなる。一方、Tgの高いエチレン酢酸ビニルを用いると、多孔質のインク受容層が硬くなりすぎるため、粉落ちが発生しやすくなる。
【0051】
エチレン酢酸ビニル共重合体の含有量は、インク受容層中に3質量%以上15質量%以下であることが好ましい。インク受容層におけるエチレン酢酸ビニル共重合体の含有量が少ない場合には、発色濃度が低下しやすくなる。一方、インク受容層におけるエチレン酢酸ビニル共重合体の含有量が多い場合には、溶剤インクを用いた場合にインク受容層の塗膜強度が低下しやすくなる。
【0052】
インク受容層には、水性インクでの印刷特性の向上に効果の高いカチオン性樹脂を含有させることもできる。カチオン性樹脂はカチオン変性したポリビニルアルコール、カチオン変性ポリエステル、カチオン変性ポリアミド、ジアリルアミン重合体、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体、カチオン変性界面活性剤など、カチオン変性したものならば限定せずに使用できるが、これらの中でも4級アンモニウム塩を含有するポリ(ジメチルジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(メタクリル酸トリメチルアミノエチル・メチル硫酸塩)、ジメチルアミンアンモニウムエピクロルヒドリン重縮合物、ジシアンジアミド・ポリアルキレンポリアミン重縮合物が好ましい。
【0053】
カチオン性樹脂の分子量は、10万以上30万以下が好ましい。分子量が小さい場合には、インク受容層の耐水性、膜強度が低下する問題がある。逆に、分子量が大きい場合には、印刷特性向上の効果がなくなる。
【0054】
インク受容層には、コート時のレベリング性の向上、コート液の脱泡を目的に界面活性剤を含有させることもできる。界面活性剤は、カチオン系、アニオン系、ノニオン系などいずれのものでも構わないが、シリコン系、アセチレングリコール系又はフッ素系界面活性剤が好ましい。これらの界面活性剤は、インク受容層のインク吸収性能が極度の低下しない程度にインク受容層に含有させることが好ましい。
【0055】
シリコン系界面活性剤としては、ジメチルシリコン、アミノシラン、アクリルシラン、ビニルベンジルシラン、ビニルベンジシルアミノシラン、グリシドシラン、メルカプトシラン、ジメチルシラン、ポリジメチルシロキサン、ポリアルコキシシロキサン、ハイドロジエン変性シロキサン、ビニル変性シロキサン、ビトロキシ変性シロキサン、アミノ変性シロキサン、カルボキシル変性シロキサン、ハロゲン化変性シロキサン、エポキシ変性シロキサン、メタクリロキシ変性シロキサン、メルカプト変性シロキサン、フッ素変性シロキサン、アルキル基変性シロキサン、フェニル変性シロキサン、アルキレンオキシド変性シロキサンなどが挙げられる。
【0056】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4、7−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4、7−ジオールにエチレンオキサイドを付加したものなどが挙げられる。
【0057】
フッ素系界面活性剤としては、4フッ化エチレン、パーフルオロアルキルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルスルホン酸アミド、パーフルオロアルキルスルホン酸ナトリウム、パーフルオロアルキルカリウム塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルアミノスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルアルキル化合物、パーフルオロアルキルアルキルベタイン、パーフルオロアルキルハロゲン化物などが挙げられる。
【0058】
インク受容層に他の機能性を付与するために、インク吸収能力及び他の物性を損なわない程度の範囲で、各種の添加剤を含有させても構わない。前記添加剤としては、例えば、蛍光染料、蛍光増白剤、可塑剤、紫外線吸収剤、顔料分散剤、抑泡剤、消泡剤、防腐剤、等が挙げられる。
【0059】
本発明において、不透明基材上にインク受容層を設ける方法としては、溶媒、粒子、樹脂を含有するインク受容層形成用塗布液を不透明基材上に塗布、乾燥する方法が挙げられる。溶媒として、トルエン等の有機溶剤、水、あるいは水と水溶性の有機溶剤の混合系が挙げられるが、好ましくは、環境問題の点から水単独あるいは水に水溶性の有機溶剤を混合したものが好ましい。
【0060】
前記のインク受容層形成用塗布液は、固形分濃度が15〜30質量%であり、かつ、粘度が30〜500cpsであることが好ましい。固形分濃度が低すぎると、塗布量が多くなるため乾燥不良になりやすく、固形分濃度が高すぎると、塗布液の粘度が高くなりすぎるため撹拌不良になりやすい。また、粘度が低すぎると、塗布面を均一に塗工することができず、粘度が高すぎると、レベリング性の不良や脱泡性の不良によりコート外観が不良になる。
【0061】
インク受容層の乾燥後の塗布量は限定されないが、好ましくは20g/m2以上40g/m2以下である。20g/m2未満では、粒子による空孔が減少し、インク吸収速度が遅く、にじみが大きくなる。40g/m2を超えると、インク吸収容量が増加し、インクが受容層に沈んでいくため、印字濃度が低くなる。
【0062】
不透明基材上にインク受容層形成用塗布液を塗布する方法は特に限定されるものではないが、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式、バーコート方式、リップコート方式など通常用いられている方法が適用できる。これらの中で、塗布液を均一に塗工することができるリップコート方式が好ましい。
【0063】
不透明基材上にインク受容層形成用塗布液を塗布した後に、乾燥することが重要であるが、乾燥条件は十分に注意が必要である。初期乾燥としては、乾燥温度100〜160℃で風速5〜30m/秒の熱風下が好ましい。
【0064】
初期乾燥を十分に行う(熱風温度が高い、又は風速が大きい)場合には、多孔質構造に大きなクラックが発生しやすくなる。一方、初期乾燥が不十分な場合には、多孔質構造のインク受容層の表面強度が弱くなりやすいばかりでなく記録特性も不良となりやすい。
【0065】
本発明のインクジェット用記録材は、インク受容層に、アルコール、グリコール、グリコールエーテル、酢酸エステル、ケトンから選ばれた少なくとも1種の溶剤に、染料又は顔料を溶解あるいは分散させた溶剤インクを用いてインクジェット方式で記録する記録物として特に好適である。
【0066】
(溶剤インク)
溶剤インクで使用される溶剤としては、ヘッドノズルの特性への適合性、安全性、乾燥性の観点から種々の溶剤が選択され、必要に応じて複数の溶剤を混合して用いる。このような溶剤としては、(1)メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、トリデシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2−メチルシクロヘキシルアルコール等のアルコール類、(2)エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等のグリコール、(3)エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチレンエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、エチレングリコールモノブチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルアセテート等のグリコールエーテル類、(4)酢酸エチル、酢酸イソプロピレン、酢酸n−ブチル等のエステル類、(5)アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、ジアセトンアルコール等のケトン類、等が挙げられる。
【0067】
溶剤インクに使用される染料としては、ナフトール染料、アゾ染料、金属錯塩染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、アントラキノン染料、キノイミン染料、インジゴ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、カーボニウム染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、フタロシアニン染料、ペリニン染料などの油溶性染料が挙げられる。
【0068】
溶剤インクに使用される顔料としては、アルミニウム粉、ブロンズ粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、亜鉛華、アルミナホワイト、べんがら、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー、群青、黄鉛、コバルトブルー、紺青等の無機顔料、ファストエローG、ファストエロー10G、ジスアゾエローAAA、ジスアゾエローAAMX、ジスアゾエローAAOT、ジスアゾエローAAOA、オルトニトロアニリンオレンジ、ジニトロアニリンオレンジ、ジスアゾオレンジ、ジスアゾオレンジ、ジスアゾオレンジPMP、バルカンオレンジ、トルイジンレッド、塩素化パラレッド、ナフトールカーミンFB、ナフトールレッドM、ブリリアントファストスカーレッド、ナフトールレッド23、ピラゾロンレッド、バリウムレッド2B、カルシウムレッド2B、ストロンチウムレッド2B、マンガンレッド2B、バリウムリソールレッド、レーキレッドC、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3Bレート、レーキボルドー10B、アンソシン3Bレーキ、アンソシン5Bレーキ、ローダミン6Gレーキ、エオシンレーキ、ナフトールレッドFGR、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットレーキ、キナクリドンレッドK、ジオキサジンバイオレット、ビクトリアピュアブルーBOレーキ、ベーシックブルー5Bレーキ、ベーシックブルー6Gレーキ、フタロシアンブルー、ファストスカイブルー、アルカリブルーGトーナー、アルカリブルーRトーナー、ピーコックブルーレーキ、レフレックスブルー2G、レフレックスブルーR、ブリリアントグリーンレーキ、ダイヤモンドグリーンチオフラビンレーキ、フタロシアニングリーンG、グリーンゴールド、フタロシアニングリーンY、アニリンブラック、カーボンブラック、昼光蛍光顔料、パール顔料等が挙げられる。
【0069】
溶剤インクには、保存安定性、耐擦過性等を挙げる目的で、例えば、ポリアクリル酸エステル、アマニ油変性アルキッド樹脂、ポリスチレン、ロジン系樹脂、テンペンフェノール系樹脂、アルキルフェノール変性キシレン系樹脂などの樹脂を含有させたり、可塑剤、ワックス、ドライヤー、分散剤、増粘剤、ゲル化剤、チキソトロピー付与剤、消泡剤、抑泡剤、沈降防止剤、皮張り防止剤、乾燥抑制剤、酸化防止剤、平滑剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、つや消し剤、帯電防止剤、安定剤、難燃剤、表面張力調節剤、界面活性剤、粘度調節剤などの添加剤を含有させることもできる。
【0070】
本発明において、水性染料インクとは、水又は水と親水性溶剤との混合液に色材として主に染料を溶解し、かつ、必要に応じて各種の添加剤を含有したインクである。
【0071】
本発明において、水性顔料インクとは、水又は水と親水性溶剤との混合液に色材として主に顔料を分散し、かつ、必要に応じて各種の添加剤を含有したインクである。
【実施例】
【0072】
次に本発明の実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。まず、本発明で用いた測定・評価方法は以下の通りである。
【0073】
(1)記録特性
(1−1)溶剤インク
インクジェットプリンター(ローランド ディー.ジー.製、SC−500)及びその純正の溶剤インク(SL−BK、SL−CY、SL−MG、SL−YE、SL−LC、SL−LM)を用いて、Superの条件で、写真調の画像とイラストを記録し目視で観察した。なお、上記の溶剤インクは、いずれも主溶剤がジプロピレングリコールモノメチルエーテルであり、色材として顔料を含有している。
◎:非常に鮮やかで、発色性に優れた記録である
○:鮮やかで、発色性に優れた記録である
△:若干発色性が劣るが問題ないレベルの記録である
×:くすみのある記録、あるいは、発色性の乏しい記録である
(1−2)水性染料インク
インクジェットプリンター(エプソン製、PM−7000C)及びその純正の水性染料インク(IC1BK07、IC1C07、IC1M07、IC1Y07、IC1LC07、IC1LM07)を用いて、ファインの条件で、写真調の画像とイラストを記録し目視で観察した。
◎:非常に鮮やかで、発色性に優れた記録である
○:鮮やかで、発色性に優れた記録である
△:若干発色性が劣るが問題ないレベルの記録である
×:くすみのある記録、あるいは、発色性の乏しい記録である
(1−3)水性顔料インク
インクジェットプリンター(ローランド ディー.ジー.製、FJ−500)及びその純正の水性顔料インク(EPG−BK、EPG−CY、EPG−MG、EPG−YE、EPG−LC、EPG−LM)を用いて、Superの条件で、写真調の画像とイラストを記録し目視で観察した。
◎:非常に鮮やかで、発色性に優れた記録である
○:鮮やかで、発色性に優れた記録である
△:若干発色性が劣るが問題ないレベルの記録である
×:くすみのある記録、あるいは、発色性の乏しい記録である
【0074】
(2)ラミネート強度
ラミネートフィルム(東洋インキ製、S−124K)を記録材のインク受容層面に貼り付け、49N(5kgf)の荷重のローラーを3往復させた後、24時間放置して測定サンプルを作成した。次いで、ラミネートフィルムと記録材のインク受容層面との界面を、300mm/分の速度で180度方向に剥離し、剥離力を測定した。
【0075】
(3)耐水性
前記の(1−1)のプリンター(SC−500)で、青ベタ(シアン、イエロー混色)を印字し、24時間放置後、流水下で印字部を指で摩擦を加えた。
◎:強い摩擦でも画像が抜けない
○:強い摩擦で若干画像が抜ける
△:強い摩擦で画像が抜ける
×:容易に画像が抜ける
【0076】
実施例1
(インク受容層の形成)
全光線透過率8%の空洞含有白色ポリエステルフィルム(東洋紡績製、K2323−100μm)に乾燥後の塗布量が25g/m2になるように下記のインク受容層形成用塗布液を塗工し、初期乾燥として、130℃で15m/秒の熱風を30秒間、その後、130℃で30m/秒の熱風を30秒間吹き付けて乾燥し、インクジェット用記録材を得た。
【0077】
下記シリカは、いずれも細孔容積が1.2ml/gで、平均粒径はシリカAが9.0μmシリカBが12.0μmである。下記のポリビニルアルコール溶液は、ケン化度95.0%、重合度1700の中間ケン化ポリビニルアルコール(クラレ製、PVA−617)に水を混合し、攪拌下で徐々に加熱し溶液を作成した。カチオン性樹脂は分子量約14万である。
・水 48.10質量%
・シリカA 7.81質量%
(グレースデビソン製、74*4500)
・シリカB 7.81質量%
(グレースデビソン製、P612)
・ポリビニルアルコール溶液 19.08質量%
(クラレ製、PVA−617、固形分濃度10質量%)
・メラミン樹脂 0.58質量%
(住友化学工業製、スミテックスM−3、固形分濃度60質量%)
・エチレン酢酸ビニル共重合体 4.82質量%
(住友化学工業製、スミカフレックス410HQ、固形分濃度54質量%)
・カチオン性樹脂 11.10質量%
(センカ製、CP103、固形分濃度39質量%)
・界面活性剤 0.60質量%
(日信化学工業製、ダイノール604、固形分濃度100質量%)
・蛍光増白剤 0.10質量%
(チバスペシャルティケミカルズ製、Uvitex BAC liquid、固形分濃度100質量%)
【0078】
実施例2
実施例1において、ポリビニルアルコール溶液をPVA−613(ケン化度93.5%、重合度1300)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、インクジェット用記録材を得た。
【0079】
実施例3
実施例1において、ポリビニルアルコール溶液をPVA−624(ケン化度95.5%、重合度2400)に変更したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット用記録材を得た。
【0080】
比較例1
実施例1において、インク受容層形成用塗布液を下記の塗布液にしたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット用記録材を得た。なお、ポリビニルアルコール溶液として用いた下記のPVA−617は、ケン化度が95.0%、重合度が1700である。
・水 38.37質量%
・シリカ 6.58質量%
(グレースデビソン製、74*4500)
・シリカ 6.58質量%
(グレースデビソン製、P612)
・ポリビニルアルコール溶液 38.03質量%
(クラレ製、PVA−617、固形分濃度10質量%)
・メラミン樹脂 0.49質量%
(住友化学工業製、スミテックスM−3、固形分濃度60質量%)
・カチオン性樹脂 9.37質量%
(センカ製、CP103、固形分濃度39質量%)
・界面活性剤 0.50質量%
(日信化学工業製、ダイノール604、固形分濃度100質量%)
・蛍光増白剤 0.08質量%
(チバスペシャルティケミカルズ製、Uvitex BAC liquid、固形分濃度100質量%)
【0081】
比較例2
実施例1において、ポリビニルアルコール溶液をクラレ製PVA−117(ケン化度98.5%、重合度1700)にしたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット用記録材を得た。
【0082】
比較例3
実施例1において、ポリビニルアルコール溶液ををクラレ製PVA−217(ケン化度88.0%、重合度1700)にしたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット用記録材を得た。
【0083】
比較例4
実施例1において、ポリビニルアルコール溶液をクラレ製PVA−706(ケン化度91.5%、重合度600)にしたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット用記録材を得た。
【0084】
比較例5
実施例1において、ポリビニルアルコール溶液を日本合成化学工業製AH−26(ケン化度97.9%、重合度2600)に変更したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット用記録材を得た。
【0085】
実施例4
実施例1において、インク受容層形成用塗布液を下記にしたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット用記録材を得た。なお、下記のPVA−617は、ケン化度が95.0%、重合度が1700である。
・水 47.96質量%
・シリカ 7.91質量%
(グレースデビソン製、74*4500)
・シリカ 7.91質量%
(グレースデビソン製、P612)
・ポリビニルアルコール溶液 19.34質量%
(クラレ製、PVA−617、固形分濃度10質量%)
・エチレン酢酸ビニル共重合体 4.88質量%
(住友化学工業製、スミカフレックス410HQ、固形分濃度54質量%)
・カチオン性樹脂 11.30質量%
(センカ製、CP103、固形分濃度39質量%)
・界面活性剤 0.60質量%
(日信化学工業製、ダイノール604、固形分濃度100質量%)
・蛍光増白剤 0.10質量%
(チバスペシャルティケミカルズ製、Uvitex BAC liquid、固形分濃度100質量%)
【0086】
実施例5
実施例1において、インク受容層形成用塗布液を下記にしたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット用記録材を得た。
・水 40.44質量%
・シリカ 7.10質量%
(グレースデビソン製、74*4500)
・シリカ 7.10質量%
(グレースデビソン製、P612)
・ポリビニルアルコール溶液 32.86質量%
(クラレ製、PVA−617、固形分濃度10質量%)
・メラミン樹脂 0.52質量%
(住友化学工業製、スミテックスM−3、固形分濃度60質量%)
・エチレン酢酸ビニル共重合体 1.45質量%
(住友化学工業製、スミカフレックス410HQ、固形分濃度54質量%)
・カチオン性樹脂 9.90質量%
(センカ製、CP103、固形分濃度39質量%)
・界面活性剤 0.54質量%
(日信化学工業製、ダイノール604、固形分濃度100質量%)
・蛍光増白剤 0.09質量%
(チバスペシャルティケミカルズ製、Uvitex BAC liquid、固形分濃度100質量%)
【0087】
実施例6
実施例1において、インク受容層形成用塗布液を下記にしたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット用記録材を得た。
・水 55.16質量%
・シリカ 7.81質量%
(グレースデビソン製、74*4500)
・シリカ 7.81質量%
(グレースデビソン製、P612)
・ポリビニルアルコール溶液 10.41質量%
(クラレ製、PVA−617、固形分濃度10質量%)
・メラミン樹脂 0.58質量%
(住友化学工業製、スミテックスM−3、固形分濃度60質量%)
・エチレン酢酸ビニル共重合体 6.42質量%
(住友化学工業製、スミカフレックス410HQ、固形分濃度54質量%)
・カチオン性樹脂 11.11質量%
(センカ製、CP103、固形分濃度39質量%)
・界面活性剤 0.60質量%
(日信化学工業製、ダイノール604、固形分濃度100質量%)
・蛍光増白剤 0.10質量%
(チバスペシャルティケミカルズ製、Uvitex BAC liquid、固形分濃度100質量%)
【0088】
実施例7
実施例1において、インク受容層形成用塗布液を下記にしたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット用記録材を得た。なお、下記のスミカフレックス400HQのTgは0℃である。
・水 48.19質量%
・シリカ 7.81質量%
(グレースデビソン製、74*4500)
・シリカ 7.81質量%
(グレースデビソン製、P612)
・ポリビニルアルコール溶液 19.08質量%
(クラレ製、PVA−617、固形分濃度10質量%)
・メラミン樹脂 0.58質量%
(住友化学工業製、スミテックスM−3、固形分濃度60質量%)
・エチレン酢酸ビニル共重合体 4.73質量%
(住友化学工業製、スミカフレックス400HQ、固形分濃度55質量%)
・カチオン性樹脂 11.10質量%
(センカ製、CP103、固形分濃度39質量%)
・界面活性剤 0.60質量%
(日信化学工業製、ダイノール604、固形分濃度100質量%)
・蛍光増白剤 0.10質量%
(チバスペシャルティケミカルズ製、Uvitex BAC liquid、固形分濃度100質量%)
【0089】
実施例8
実施例1において、乾燥後の塗布量を40g/m2にしたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット用記録材を得た。
【0090】
実施例9
実施例1において、乾燥後の塗布量を20g/m2にしたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット用記録材を得た。
【0091】
実施例10
実施例1において、インク受容層形成用塗布液を下記にしたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット用記録材を得た。なお、PVA−117:PVA−217=1:1の平均ケン化度は93.3%である。
・水 48.10質量%
・シリカ 7.81質量%
(グレースデビソン製、74*4500)
・シリカ 7.81質量%
(グレースデビソン製、P612)
・ポリビニルアルコール溶液 9.54質量%
(クラレ製、PVA−117、固形分濃度10質量%)
・ポリビニルアルコール溶液 9.54質量%
(クラレ製、PVA−217、固形分濃度10質量%)
・メラミン樹脂 0.58質量%
(住友化学工業製、スミテックスM−3、固形分濃度60質量%)
・エチレン酢酸ビニル共重合体 4.82質量%
(住友化学工業製、スミカフレックス410HQ、固形分濃度54質量%)
・カチオン性樹脂 11.10質量%
(センカ製、CP103、固形分濃度39質量%)
・界面活性剤 0.60質量%
(日信化学工業製、ダイノール604、固形分濃度100質量%)
・蛍光増白剤 0.10質量%
(チバスペシャルティケミカルズ製、Uvitex BAC liquid、固形分濃度100質量%)
【0092】
実施例11
実施例1において、インク受容層形成用塗布液を下記にしたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット用記録材を得た。
・水 48.10質量%
・シリカ 15.61質量%
(グレースデビソン製、P612)
・ポリビニルアルコール溶液 19.08質量%
(クラレ製、PVA−617、固形分濃度10質量%)
・メラミン樹脂 0.58質量%
(住友化学工業製、スミテックスM−3、固形分濃度60質量%)
・エチレン酢酸ビニル共重合体 4.93質量%
(住友化学工業製、スミカフレックス410HQ、固形分濃度54質量%)
・カチオン性樹脂 11.00質量%
(センカ製、CP103、固形分濃度39質量%)
・界面活性剤 0.60質量%
(日信化学工業製、ダイノール604、固形分濃度100質量%)
・蛍光増白剤 0.10質量%
(チバスペシャルティケミカルズ製、Uvitex BAC liquid、固形分濃度100質量%)
【0093】
実施例12
実施例1において、インク受容層形成用塗布液を下記にしたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット用記録材を得た。
・水 48.10質量%
・シリカ 15.61質量%
(グレースデビソン製、74*4500)
・ポリビニルアルコール溶液 19.08質量%
(クラレ製、PVA−617、固形分濃度10質量%)
・メラミン樹脂 0.58質量%
(住友化学工業製、スミテックスM−3、固形分濃度60質量%)
・エチレン酢酸ビニル共重合体 4.82質量%
(住友化学工業製、スミカフレックス410HQ、固形分濃度54質量%)
・カチオン性樹脂 11.11質量%
(センカ製、CP103、固形分濃度39質量%)
・界面活性剤 0.60質量%
(日信化学工業製、ダイノール604、固形分濃度100質量%)
・蛍光増白剤 0.10質量%
(チバスペシャルティケミカルズ製、Uvitex BAC liquid、固形分濃度100質量%)
【0094】
実施例13
実施例1において、乾燥条件を100℃で15m/秒の熱風を30秒間、その後、150℃で30m/秒の熱風を30秒間吹き付けて乾燥に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット用記録材を得た。
【0095】
実施例1〜13、及び比較例1〜5で得たインクジェット用記録材の特性を測定して表1に示す。
【0096】
【表1】

【0097】
比較例1のインクジェット用記録材は、非吸水性樹脂であるエチレン酢酸ビニル共重合体が含まれていないため、インク吸収性が良好になりすぎた。そのため、ベタが埋まらなくなり、印字濃度が低くなっている。
【0098】
比較例2のインクジェット用記録材は、PVAのケン化度が本発明の範囲外である。PVAのケン化度が高いため、ラミネート強度が低下している。
【0099】
比較例3のインクジェット用記録材は、PVAのケン化度が本発明の範囲外である。PVAのケン化度が低くいため、インク吸収性が良好になりすぎた。そのため、ベタが埋まらなくなり、印字濃度が低くなっている。また、水溶性が高くなったため耐水性が低下している。
【0100】
比較例4のインクジェット用記録材は、PVAの重合度が本発明の範囲外である。PVAの重合度が低くなり、水溶性が高くなったため、ラミネート強度、耐水性が低下している。
【0101】
比較例5のインクジェット用記録材は、PVAの重合度が本発明の範囲外である。PVAの重合度が高いため、印字濃度が低くなっている。
【0102】
以上、本発明のインクジェット用記録材及び記録物の製造方法について、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、各実施例に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明のインクジェット用記録材は、発色濃度、ラミネート強度、耐水性に優れているという特性を有していることから、溶剤インクを用いた印刷用途に好適に用いることができるほか、例えば、水性染料、顔料インクを用いた印刷用途にも用いることができる。また、本発明の記録物の製造方法は、インク受容層の発色濃度、ラミネート強度、耐水性が優れているという特性を有していることから、溶剤インクを用いて優れた記録物を容易に製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不透明基材上に粒子と樹脂から主に構成されてなる多孔質のインク受容層を設けた記録材であって、前記樹脂はケン化度が90%以上98%以下で、重合度が1300以上2400以下である中間ケン化ポリビニルアルコール及びエチレン酢酸ビニル共重合体を含むことを特徴とするインクジェット用記録材。
【請求項2】
インク受容層が、架橋剤を含むことを特徴とする請求項1記載のインクジェット用記録材。
【請求項3】
架橋剤が、尿素系、エポキシ系、メラミン系、イソシアネート系から選ばれる架橋剤を少なくとも1種含んでいることを特徴とする請求項2記載のインクジェット用記録材。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載のインクジェット用記録材のインク受容層に、アルコール、グリコール、グリコールエーテル、酢酸エステル、ケトンから選ばれた少なくとも1種の溶剤、及び顔料を含有する溶剤インクを用いてインクジェット方式で記録することを特徴とする記録物の製造方法。
【請求項5】
前記溶剤がジプロピレングリコールモノメチルエーテルを含有することを特徴とする請求項4記載の記録物の製造方法。

【公開番号】特開2006−181786(P2006−181786A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−375951(P2004−375951)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】