説明

インクジェット画像記録方法および塗布液体

【課題】高粘度である因材料(A)を含むインクジェット塗布液体をインクジェット吐出可能な低粘度とし、塗布後媒体に付着し冷却したときはもとの材料(A)含有塗布液体よりも高粘度とする方法を提供する。また、インクジェットにおいては吐出安定性のためにはより低粘度が要求され、吐出後記録媒体付着後はにじみ・裏抜け防止のためにより高粘度が要求されているがこれを双方満足させる方法を提供する。
【解決手段】通常の塗布温度で塗布させるには高粘度すぎる材料(A)に、その温度以下の温度において温度変化による相変化性を有する材料(B)を添加することで、塗布温度では(A)よりも低粘度とし、媒体付着冷却後は、(A)よりも高粘度とした塗布液体を、被塗布媒体に塗布する液体塗布方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布方法、特にインクジェット塗布方法およびローラー塗布方法およびそのための塗布液体に関し、顔料塗布液体や顔料塗料を使用した画像のオーバーコート、あるいは光硬化塗布液体材料塗布による平滑化、画像光沢化のための塗布方法及び塗布液体に関する。
【背景技術】
【0002】
溶剤を用いず、定着乾燥に要するエネルギーが低く環境負荷が少ない上に、堅牢性に優れた画像を高い生産性(高速)で得る手段として、活性エネルギー線硬化型インクジェットプリンタが特許文献1の特開昭60−132767号公報にて提案されている。
しかし、活性エネルギー線硬化型インクジェットプリンタでは、安全な材料使用のためには、比較的高粘度の塗布液体としなければならず、吐出のためにかなり高温度にしなければならないなどの欠点がある。
【0003】
一方、紙などの媒体に付着冷却後は、ある程度の粘度がないと媒体中に染み込んでしまい、画像濃度低下、ドット間の融合による液流れがおきてしまう。
そのため、吐出時には低粘度であり、被記録媒体付着冷却後は高粘度となる塗布液体が望まれていた。
また、ローラー塗布の場合も、塗布時には、低粘度でないと塗布ムラが生じでしまう。
塗布冷却後は速やかに高粘度になって、滲みこみや、液流れが防止されることが望ましくインクジェット塗布と同じ要求がある。
【0004】
従来、光硬化塗布液体モノマーはインクジェット印射するための要件である、安全性・硬化性・低粘度のすべてを満足するのは困難であった。特に皮膚刺激性・皮膚感作性に優れたものは高粘度のものが多く、インクジェット吐出するにはかなりの高温度にする必要があった。そのため比較的低温度にて吐出可能で、皮膚刺激性・感作性のない材料が望まれていた。
【0005】
一方、電子写真・水性顔料インクジェットなど紙面上に粒子が付着したものは光沢を出すために光硬化塗布液体でオーバーコートをすることがある。この場合も、インクジェット法によりオーバーコートができればコート装置を設けることがなく装置の簡略化ができ、また、インクジェット法であるため、必要な部分だけにコート可能であるという利点がある。しかしこの場合もインクジェット吐出できる低粘度で安全な光硬化塗布液体が望まれていた。このように、吐出時は低粘度が要求される一方、吐出後画像となった時は、にじみ・裏ぬけ防止のためより高粘度が要求されていた。本発明はその双方を満足させる方法を提供する。
【0006】
特許文献2の特開2006−176782号公報記載の技術は加熱により溶融する熱溶媒と光硬化塗布液体モノマーを混合した塗布液体を使用している。しかし、この公報記載の発明で用いている「熱溶媒」は、ライナーレス(粘着面保護シートなし)の熱粘着テープで慣用されている2官能性脂肪族アルコールに過ぎず、その実施例はいずれもインクジェット吐出可能な粘度にするには70℃以上の加熱が必要で、実用にそぐわない。
また、安全ではあるが高粘度の材料を相変化材料添加で低粘度とするという利点に言及した記述は見られない。また、これらの光硬化塗布液体材料を顔料使用の電子写真やインクジェット画像上に吐出して光沢性向上に使用するという記述はない。
特許文献3の特開2007−246820号公報には、融点が30℃〜50℃のワックスを添加するとの記載がある。しかし、着色剤入りに限定されている。また、安全であるが高粘度の材料を低粘度化する手段としての利用記述はない。また、これらの光硬化塗布液体材料を顔料使用の電子写真やインクジェット画像上に吐出して耐擦り性を有する印刷物を得る旨を目的とするとの記載はあるが、光沢性向上に使用するという記述はない。
特許文献4の特許4231828号公報記載のものは、固体の光硬化塗布液体材料にワックスを添加するものであって、塗布液体液をインクジェット吐出可能な粘度にすることを意図したものでない。固体光硬化塗布液体材料ではどうしても調合後の融点が高くなる。
また、これらの光硬化塗布液体材料を顔料使用の電子写真やインクジェット画像上に吐出して光沢性向上に使用するという記述もない。
特許文献5の特開2002−256189号公報記載のものは必ず色材を含有しており、また、常温固体の光硬化塗布液体材料を使用しているものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、安全性など他の特性はよくても高粘度であるためインクジェット吐出できない材料(A)を含むインクジェット用塗布液体をインクジェット吐出可能な低粘度とし、塗布後媒体に付着し冷却したときはもとの材料(A)含有塗布液体よりも高粘度とする方法を提供することにある。インクジェットにおいては吐出安定性のためにはより低粘度が要求され、吐出後記録媒体付着後はにじみ・裏抜け防止のためにより高粘度が要求されているがこれを双方満足させる方法を提供することを主なる目的とする。特に、安全性など他の特性はよくても高粘度であるためインクジェット吐出できない紫外線硬化性材料を低粘度でインクジェット吐出可能な光硬化塗布液体性塗布液体とする方法を提供することを目的とする。
また特に、インクジェット、電子写真、油性塗布液体などの、顔料を使用した画像で、顔料が紙面に出ているために、光沢の悪い画像に、直接上記クリア塗布液体を吐出してオーバーコートするか、あるいは、顔料画像間のすきまを埋めて画像平滑光沢化を行う時に、必要とされる光硬化塗布液体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、上記課題は、以下(1)〜(16)の本発明によって解決される。
(1)「通常の塗布温度で塗布させるには高粘度すぎる材料(A)に、その温度以下の温度において温度変化による相変化性を有する材料(B)を添加することで、塗布温度では(A)よりも低粘度とし、媒体付着冷却後は、(A)よりも高粘度とした塗布液体を、被塗布媒体に塗布する液体塗布方法。」、
(2)「インクジェット法である前記第(1)項に記載の液体塗布方法。」、
(3)「ローラー塗布方法である前記第(1)項に記載の液体塗布方法。」、
(4)「前記塗布液体の前記材料(A)が、未硬化の光硬化性材料であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載の塗布方法。」、
(5)「前記相変化材料(B)の融点は50℃以下であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(4)項のいずれかに記載の液体塗布方法。」、
(6)「前記塗布液体が着色剤を含まないクリア塗布液体であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(5)項のいずれかに記載の液体塗布方法。」、
(7)「前記材料(A)が下記構造式(I)で表されるポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレートまたはジペンタエリスリトールカプロラクトンのアクリル酸エステルであることを特徴とする前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の液体塗布方法。」、
【0009】
【化1】

(8)「通常の塗布温度で塗布させるには高粘度すぎる材料(A)に、その温度以下の温度において温度変化による相変化性を有する材料(B)を添加することで、塗布温度では(A)よりも低粘度とし、媒体付着冷却後は、(A)よりも高粘度とした液体を、被塗布媒体に塗布する液体塗布方法のための塗布用液体。」、
(9)「前記液体塗布方法がインクジェット法であることを特徴とする前記第(8)項に記載の塗布用液体。」、
(10)「前記液体塗布方法がローラー塗布方法であることを特徴とする前記第(9)項に記載の塗布用液体。」、
(11)「前記塗布液体の前記材料(A)が、未硬化の光硬化性材料であることを特徴とする前記第(8)項乃至第(10)項のいずれかに記載の塗布用液体。」、
(12)「前記相変化材料(B)の融点は50℃以下であることを特徴とする前記第(8)項乃至第(11)項のいずれかに記載の塗布用液体。」、
(13)「着色剤を含まないクリア塗布液体であることを特徴とする前記第(8)項乃至第(12)項のいずれかに記載の塗布用液体。」、
(14)「前記材料(A)が下記構造式(I)で表されるポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレートまたはジペンタエリスリトールカプロラクトンのアクリル酸エステルであることを特徴とする前記第(8)項乃至第(13)項のいずれかに記載の塗布用液体。」、
【0010】
【化2】

(15)「顔料を着色剤として使用した電子写真法あるいはインクジェット法により記録した記録媒体上に、前記第(12)項に記載のクリア塗布用液体をインクジェット法で吐出し、オーバーコートすることを特徴とする記録画像の装飾方法。」、
(16)「顔料を着色剤として使用した電子写真法あるいはインクジェット法により記録した記録媒体の非印写部に、着色剤を含まない前記第(12)項のクリア塗布用液体を印写し、画像の光沢を高める記録画像装飾方法。」。
【発明の効果】
【0011】
以下の詳細且つ具体的な説明から明らかなように、本発明によれば、高粘度であるためインクジェット吐出できない材料(A)を含むインクジェット塗布液体をインクジェット吐出可能な低粘度とし、塗布後媒体に付着し冷却したときはもとの材料(A)含有塗布液体よりも高粘度とするインクジェット記録方法及びそのための塗布液体が提供される。すなわち、インクジェットにおいては吐出安定性のためにはより低粘度が要求され、吐出後記録媒体付着後はにじみ・裏抜け防止のためにより高粘度が要求されているがこれを双方満足させる方法が提供される。特に、安全性など他の特性はよくても高粘度であるためインクジェット吐出できない紫外線硬化性材料を低粘度でインクジェット吐出可能な光硬化塗布液体性塗布液体とする方法及びそのための塗布液体が提供され、また特に、インクジェット、電子写真、油性塗布液体などの、顔料を使用した画像で、顔料が紙面に出ているために、光沢の悪い画像に、直接上記クリア塗布液体を吐出してオーバーコートするか、あるいは、顔料画像間のすきまを埋めて画像平滑光沢化を行う時に、必要とされる光硬化塗布液体が提供されるという極めて優れた効果が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】インクジェット記録媒体上の顔料あるいは電子写真記録媒体上のトナー粒子の隙間に本発明の安全なクリア塗布液体を印写し平滑化・光沢画像化する原理図である。
【図2】電子写真方式の原理図と、そこにインクジェットによる光硬化クリア塗布液体を吐出・定着する装置を図示したものである。
【図3】インクジェットで着色塗布液体を印写したあとに本発明のクリア塗布液体を印写し、着色塗布液体部を覆ったあとに光硬化させる図である。
【図4】本発明における塗布液体例の温度による粘度変化の測定結果例を示す図である。
【図5】本発明における別の塗布液体例の温度による粘度変化の測定結果例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
我々は、インクジェット吐出するには高粘度のモノマーを低粘度化する方法として相変化材料のワックスを添加する方法を考えた。
すなわち、相変化材料を加えることにより、相変化材料が溶けた時点で、高粘度のモノマーが希釈されて低粘度になるのではないかと考えた。また、低温で相変化後は、むしろもとのモノマーよりも高粘度になるだろうと考えた。
これが可能であれば、電子写真や顔料インクジェット塗布液体のような紙面上で盛り上がり、光沢のでにくい画像に直接インクジェット印写で安全なUVコート材を塗布し光沢を出すことが可能である。
その方法は全面オーバーコート塗布でもいいが、写真画像上だけを光沢化するための部分コートでもよい。
また、顔料が付着した部分と付着しない部分の凸凹をなくすために付着しない部分のみコート材をインクジェット塗布して光沢性を出す方法でもよい。
いずれにせよ、本材料を使用することにより、通常は塗布できない高粘度の材料を使用してインクジェット塗布可能となる。
【0014】
最初の画像が電子写真・非蒸発性の油性塗布液体・あるいは光硬化塗布液体の場合は本発明のコート材によるインクジェット塗布は連続して高速で行うことが可能である。
ただし、水性顔料塗布液体の場合は水分の蒸発が必要なため水分が含んだままでコートすることは好ましくないため水分の加熱乾燥後にコートするか転写装置を使用して水分と着色剤の分離後に着色剤のみを転写し、その後にコートする方法でもよい。
【0015】
図1は、インクジェット記録媒体上の顔料あるいは電子写真記録媒体上のトナー粒子の隙間に本発明の安全なクリア塗布液体を印写し平滑化・光沢画像化する原理図である。
通常、顔料使用したインクジェット印刷画像や、電子写真画像のトナー画像で、難浸透性の媒体(オフセット用紙やアート紙やフィルム)に印刷した場合、どうしてもドット付着部とドット未付着部の間に隙間ができて、光沢性が悪くなる。そこに本発明の安全で噴射温度で低粘度のクリア塗布液体を印射し、全体に平滑化して光沢をあげるための原理図である。現状では画像の紙面全体にオーバーコートでUVクリア塗布液体(OPニス)を付与しているのであるが、別にオーバーコート装置が必要であるのと、全面塗布のため、コストアップになるという欠点がある。これをインクジェットでできれば好ましいのであるが、従来は、光硬化塗布液体で未硬化液体自体が安全なものは高粘度のものが多く、管理された作業場での印刷なら可能であるが、オフィスや家庭でのプリンタに使用するのは困難であった。本発明の方法によれば安全ではあるが高粘度で使用できなかった材料も低粘度化して使用できるようになる。
【0016】
図2は、電子写真方式の原理図と、そこにインクジェットによる光硬化クリア塗布液体を吐出・定着する装置を図示したものである。光硬化クリア塗布液体の吐出・硬化は記録媒体にトナーを転写後に行っても良いし(A)、ドラム上に直接行っても良い(B)。
特にトナーが転写するドラムに影響を与えないという意味で(A)方式が好ましい。
図1のような、画像部以外に光硬化性クリア塗布液体を吐出して平滑化する場合は、光硬化性クリア塗布液体の吐出は、電子写真方式が例えば、負帯電方式の、反転現像方式である場合、画像光照射部分が、帯電低下し、トナー付着するのであるが、その時の画像光照射しない部分に、インクジェットで光硬化性クリア塗布液体を吐出することになる。
(A)の光照射・定着はクリア塗布液体以外にトナー自体の定着にも使用可能である。
【0017】
図3は、インクジェットで着色塗布液体を印写したあとに本発明のクリア塗布液体を印写し、着色塗布液体部を覆ったあとに光硬化させる図である。
これにより、たとえ着色塗布液体が皮膚刺激性など安全性に問題があっても、安全なクリア塗布液体で覆ってしまうことにより直接人に接触することはなくなる。
これは通常のUVニスによるオーバーコートに近いのであるが、記録画像全体に行うのでなく、例えば、光沢が必要な写真画質部分のみオーバーコートし、むしろくっきりとした画像が求まれる文字部分はそのままにしておくという、画像によりオーバーコートの有無を使い分けることが可能である。
【0018】
[光硬化性材料]
本発明で使用する光硬化塗布液体材料としては高粘度で吐出が困難な材料であればどのようなものでも本発明で高温で低粘度化し吐出可能となる。
特にラジカル系光硬化塗布液体剤の皮膚刺激性・皮膚感作性の小さいにも関わらず高粘度でインクジェット吐出が困難であったものには有効である。
光硬化性材料としては、皮膚刺激性に関しては一次刺激インデックス P.I.Iが小さいほど好ましいができれば2以下であって、25℃の粘度が20〜10000mPasと高く(好ましくは20〜300mPas)で光硬化性の高いものを低粘度化し印写する方法が有効である。
光硬化性材料(A)としては、各種アクリル系材料、メタクリル系材料などのラジカル反応性硬化剤のほか、カチオン系、アニオン系の硬化剤であってもかまわない。
このような材料の中で安全ではあるが高粘度であってインクジェット吐出できないものが本発明の材料(A)として好ましい。
【0019】
[相変化材料]
これに添加する相変化材料(B)は前記の光硬化塗布液体材料と混合して温度60℃以下でインクジェット吐出が可能になるように低粘度化(100mPas以下)するものであればどのようなものでもよい。
光硬化性材料が比較的高粘度の場合は、融点の低い低分子の相変化材料を多めに添加する。
光硬化性材料が比較的低粘度の場合は、相変化材料の量はなるべく少なめにする。
相変化材料としては、蝋質ジオール、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、エステルワックス、脂肪アミド含有材料、イソシシアネート由来樹脂、ウレタンイソシアネート由来材料、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族アルコール、脂肪族ジオール、各種ワックスなどが挙げられる。
【0020】
また、融点50℃以下の相変化材料としては、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ドデカン酸、デカン酸、ノナン酸、オクタン酸、ヘプタン酸、ネルボン酸、エルカ酸、エルカ酸、常温固体の油脂で融点50℃以下のもの。炭素数が20以上のパラフィン(鎖式飽和炭化水素)で融点50℃以下のもの、などがある。
これら安全ではあるが高粘度でインクジェット吐出しにくい光硬化性材料に相変化材料を混合することにより吐出する高温では低粘度化し、印射可能となる。
【0021】
なお、光硬化性クリア塗布液体自体が硬化後に凸部を形成するのは好ましくないので、光硬化性クリア塗布液体にはレベリング性をもたせるため界面活性剤を添加した方が好ましい。ただし、記録媒体に染み込んだり、液流れがおきるほど低粘度ではない。
油性のフッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤が利用可能である。
なおその他の必須成分である上記開始剤であるが、クリア塗布液体であるため、なるべく、黄色味の少ないものが好ましい。LEDなどの比較的長波長の紫外線(365nm,385nm、405nm)を使用する場合は、どうしても黄色味のある開始剤になりがちであるが、添加量をなるべく少なめにする必要がある。
【実施例】
【0022】
以下、実施例および比較例により、本発明を更に具体的に説明するが、これら例は、本発明に理解を容易にするためのものであって、本発明を制限するためのものではない。各例中の「部」は、別段の断りない限り重量部を示す。
【実施例1】
【0023】
以下の処方で塗布液体を作成した。
(光硬化塗布液体材料)
・ポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレート 1部
(CAS 51728−26−8)(化審法7−775)
・融点42℃の固液相変化材料[1,6−ヘキサンジオール(東京化成)] 1部
・開始剤(イルガキュア 379) 0.08部
【0024】
[粘度測定]
粘度計:東機産業 TV型粘度計 VISCOMETERVM−150 IIIにて粘度測定を行った。
その結果を図4に示す。
ポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレート単独の粘度と比べると1,6−ヘキサンジオールとの混合により、室温では高粘度(固体化)し、45℃以上では粘度低下している。
このように高粘度でインクジェット吐出が困難なUVモノマーを相変化材料と混合することにより、吐出温度では低粘度化することができた。これによりこれらの材料のインクジェット吐出が低温度で可能となる。
また、室温では逆にポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレート単独よりも高粘度化していると思われ、印射後すぐに高粘度化し、にじみ発生の防止されたものになる。
【0025】
ポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレートはラジカル系UVモノマーで、高粘度であるため、そのままではかなり高温にしないとインクジェット印射できない材料である。
一方、1,6−ヘキサンジオール(融点:41−42℃ 沸点:250℃)は室温では固体であり、42℃以上では液体状の固液相変化材料であり、沸点からみてVOC発生の危険は少ない。
この材料を、 塗布 ワイヤーバー#6(10μm狙い)で
メディア:フィルム PET HL98W 100μm(易接着性)に塗布し、
照射装置:フュージョンUV LH6 Dバルブ 1灯(100%出力)
速度:10m/min,25m/min,50m/minで硬化実験を行った。
その結果、50m/minの速度でもポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレートは硬化しているのがIR(C=C 2重結合部 810cm−1)減少で確認できた。
【0026】
[スミア法定着テスト]
光照射しないと半液状で紙を重ねると転写してしまうが、光照射後は見た目は固体化し、紙を重ねても簡単には転写しない。
ワックスである1,6−へキサンジオールは完全にはポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレートに包まれずに表面に残るが裏移りはおこらない。
顔料を添加して着色顔料塗布液体として普通紙に印写すればワックスは紙に滲みてしまうため問題にならない。
【0027】
[比較例1]
特開2006−176782号公報記載の1,10−デカンジオールと混合したUVモノマーは60℃以下では粘度が1000mPasを超えてしまい、ピエゾ吐出はできない。
これに比べると実施例1は50℃で約50mPasであり、最新のピエゾ吐出装置であれば吐出可能な領域となる。
【実施例2】
【0028】
以下の処方で塗布液体を作成した。
・光硬化性成分;ジペンタエリスリトールカプロラクトンのアクリル酸エステル 10部
・相変化材料;1,6−ヘキサンジオール 1部
【実施例3】
【0029】
以下の処方で塗布液体を作成した。
・光硬化性成分;ジペンタエリスリトールカプロラクトンのアクリル酸エステル 1部
・相変化材料;1,6−ヘキサンジオール 1部
この液の粘度測定を行なった。
図5に示すように高粘度の光硬化性成分に相変化性材料を加えることによりインクジェット吐出の高温では低粘度化し、室温では高粘度化し、インクジェット塗布液体として理想的な粘度変化をした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】特開昭60−132767号公報
【特許文献2】特開2006−176782号公報
【特許文献3】特開2007−246820号公報
【特許文献4】特許4231828号公報
【特許文献5】特開2002−256189号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常の塗布温度で塗布させるには高粘度すぎる材料(A)に、その温度以下の温度において温度変化による相変化性を有する材料(B)を添加することで、塗布温度では(A)よりも低粘度とし、媒体付着冷却後は、(A)よりも高粘度とした塗布液体を、被塗布媒体に塗布する液体塗布方法。
【請求項2】
インクジェット法である請求項1に記載の液体塗布方法。
【請求項3】
ローラー塗布方法である請求項1に記載の液体塗布方法。
【請求項4】
前記塗布液体の前記材料(A)が、未硬化の光硬化性材料であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の塗布方法。
【請求項5】
前記相変化材料(B)の融点は50℃以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の液体塗布方法。
【請求項6】
前記塗布液体が着色剤を含まないクリア塗布液体であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の液体塗布方法。
【請求項7】
前記材料(A)が下記構造式(I)で表されるポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレートまたはジペンタエリスリトールカプロラクトンのアクリル酸エステルであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の液体塗布方法。

【請求項8】
通常の塗布温度で塗布させるには高粘度すぎる材料(A)に、その温度以下の温度において温度変化による相変化性を有する材料(B)を添加することで、塗布温度では(A)よりも低粘度とし、媒体付着冷却後は、(A)よりも高粘度とした液体を、被塗布媒体に塗布する液体塗布方法のための塗布用液体。
【請求項9】
前記液体塗布方法がインクジェット法であることを特徴とする請求項8に記載の塗布用液体。
【請求項10】
前記液体塗布方法がローラー塗布方法であることを特徴とする請求項9に記載の塗布用液体。
【請求項11】
前記塗布液体の前記材料(A)が、未硬化の光硬化性材料であることを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載の塗布用液体。
【請求項12】
前記相変化材料(B)の融点は50℃以下であることを特徴とする請求項8乃至11のいずれかに記載の塗布用液体。
【請求項13】
着色剤を含まないクリア塗布液体であることを特徴とする請求項8乃至12のいずれかに記載の塗布用液体。
【請求項14】
前記材料(A)が下記構造式(I)で表されるポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレートまたはジペンタエリスリトールカプロラクトンのアクリル酸エステルであることを特徴とする請求項8乃至13のいずれかに記載の塗布用液体。

【請求項15】
顔料を着色剤として使用した電子写真法あるいはインクジェット法により記録した記録媒体上に、請求項12に記載のクリア塗布用液体をインクジェット法で吐出し、オーバーコートすることを特徴とする記録画像の装飾方法。
【請求項16】
顔料を着色剤として使用した電子写真法あるいはインクジェット法により記録した記録媒体の非印写部に、着色剤を含まない請求項12のクリア塗布用液体を印写し、画像の光沢を高める記録画像装飾方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−148542(P2012−148542A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10914(P2011−10914)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】