説明

インクジェット装置およびその製造方法

【課題】位置精度よく配置されたヘッドユニットを有し、印字精度に優れたインクジェット装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】複数のヘッドユニットをベースプレートに固定したインクジェット装置であって、該ヘッドユニットが、位置決めピンと、設置位置の調整が可能な位置決めブロックとを有したベースプレートに固定されており、該位置決めブロックが、ヘッドユニットとの当接部に円弧を有しているインクジェット装置およびその製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット装置およびその製造方法に関し、詳細には、印字精度に優れたインクジェット装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、インクジェット記録方式を利用したプリンタ装置が様々な分野で利用されており、印字の高速化、高精度化が求められている。
【0003】
インクジェット装置は、インクジェットヘッドを複数個、配列したインクジェットヘッドアセンブリを構成要素の一つとしている。具体的には、インクジェットヘッドアセンブリは、次のようにして製造される。まず、多数のノズル孔が配列されたインクジェットヘッドを準備する。ついで、このインクジェットヘッドをプレートに、固定する(以下、インクジェットヘッドが固定されたプレートを、ヘッドユニットと称する)。最後に、ベースプレートにこのヘッドユニットを複数個、固定し、インクジェットヘッドアセンブリとする。
【0004】
ここで、印字精度を向上させるには、ヘッドユニットをベースプレートに固定する工程において、位置精度よく設置することが重要である。
【0005】
そこで、特許文献1では、垂直に設けられた2つの位置決めピンにて、ヘッドユニットの位置決めを行うことが開示されている。つまり、一方の位置決めピンにて、ヘッドユニットの回転中心を決め、もう一方の位置決めピンにて、回転止めを行うことで、ノズル孔の位置を定めている。
【0006】
しかし、位置決めピンは、機械加工にてあけられた穴に嵌めて設置するため、加工誤差により、位置決めピンの位置にずれが生じる。つまり、位置決めピンの位置精度は、機械加工の精度に依存するため、どうしても、2つの位置決めピンの位置精度が低下してしまう。位置精度の低下した位置決めピンにて位置決めされることによって、ヘッドユニットの位置精度も低下し、結果的に印字精度の低下につながるのである。
【0007】
また、特許文献2では、複数の基準体によりプリントヘッドダイの担体を接触させて位置決めすることが開示されている。しかし、印字精度は、やはり基準体自体の位置精度に依存してしまう。
【0008】
特許文献3では、一方を回転中心とし、他方に偏芯カムを使用することにより、記録媒体の搬送方向に対するヘッドの傾きを調整することが開示されている。しかし、この方法では、ノズルの位置で位置調整を行うため、ヘッドを交換した場合には位置の再調整が必要となる点、前記偏芯部材は、常にコイルばねと共に使用されるため、部品点数が増えてコストがかかる点、および、顕微鏡などを使用してノズルの位置を確認しながら位置調整するため、工数がかかる点などの問題がある。
【0009】
また、特許文献4には、支持枠にヘッドに取りつけられた偏芯カムを当接することにより、位置決めを行い、ノズル間隔精度を向上させることが記載されている。この方法では、まず、回転位置調整治具に、ヘッドに取りつけられた偏芯カムを当接させ、偏芯カムの位置を調整した後、支持枠にこのヘッドを配置する。このとき、偏芯カムと支持枠とを当接させ、位置決めする。支持枠および回転位置調整治具の精度は、やはり機械加工の精度に依存するため、双方に精度の差が生じてしまい、印字精度にも影響することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−296518号公報
【特許文献2】特開2002−86695号公報
【特許文献3】特開2006−51621号公報
【特許文献4】特開2006−212791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、位置精度よく配置されたヘッドユニットを有し、印字精度に優れたインクジェット装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明は、複数のヘッドユニットをベースプレートに固定したインクジェット装置であって、該ヘッドユニットが、位置決めピンと、設置位置の調整が可能な位置決めブロックとを有したベースプレートに固定されており、該位置決めブロックが、ヘッドユニットとの当接部に円弧を有しているインクジェット装置に関する。
【0013】
前記ヘッドユニットと、位置決めピンおよび位置決めブロックとが、ベースプレートからの高さ10mm以下の位置で当接していることが好ましい。
【0014】
前記ヘッドユニットと、位置決めピンおよび位置決めブロックとの当接部が、長さ10mm以下であることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、複数のヘッドユニットをベースプレートに固定したインクジェット装置の製造方法であって、
プレートにインクジェットヘッドを固定してヘッドユニットを得る工程、
位置決めピンと、設置位置の調整が可能でヘッドユニットとの当接面に円弧を有した位置決めブロックとをベースプレートに設置する工程、
該位置決めブロックの設置位置を調整する工程、
該ヘッドユニットを、該位置決めピンと位置決めブロックとに当接する工程、および
該ヘッドユニットをベースプレートに固定する工程、を含むインクジェット装置の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、機械加工の精度に影響されることなく、ヘッドユニットを位置精度よく固定することができるため、印字精度に優れたインクジェット装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のインクジェット装置の一部を示した平面模式図である。
【図2】図1を側面から見たときの平面模式図である。
【図3】本発明で使用される位置決めブロックの一例を示した模式図である。
【図4】本発明における、ヘッドユニットと位置決めブロックとの当接部を示した拡大模式図である。
【図5】本発明における、ヘッドユニットと位置決めブロックとの当接部を示した拡大模式図である。
【図6】本発明における、ヘッドユニットと位置決めブロックとの当接部を示した拡大模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のインクジェット装置1は、複数のヘッドユニットをベースプレートに固定したインクジェット装置であって、図1に示すように、ヘッドユニット2が、位置決めピン3と設置位置の調整が可能な位置決めブロック4とを有したベースプレート5に固定されており、該位置決めブロック4が、ヘッドユニットとの当接面に円弧を有している。
【0019】
図2に示すように、ヘッドユニット2は、インクジェットヘッド9を、プレート6に固定したものである。このヘッドユニット2をベースプレート5に固定する際の位置精度が、インクジェット装置の印字精度に大きく影響する。つまり、ヘッドユニット2に固定されたインクジェットヘッド9が、印字の方向に対して所定よりも傾いてしまっている場合、インクジェットヘッドに設けられたノズル同士の間隔が変わるため、印字精度が低下(白筋や黒筋が発生)してしまうのである。なお、ヘッドユニット2は、ボルト7によってベースプレート5に固定される。
【0020】
本発明で使用されるベースプレート5は、位置決めピン3と、設置位置の微調整が可能な位置決めブロック4とを有している。この位置決めピン3は、ヘッドユニット2の回転中心を決めるものであり、位置決めブロック4は、その回転止めをするためのものである。ここで重要な点は、前記位置決めブロック4が、その設置位置の微調整が可能であるということである。これによって、ヘッドユニット2をベースプレート5に固定する際、あらかじめ設置位置が微調整された位置決めブロック4につきあてて、その位置決めを行うことができるため、ヘッドユニット2(インクジェットヘッド9)の印字の方向に対する傾きが小さくなり、印字精度が向上(白筋や黒筋の発生がなくなる)する。
【0021】
なお、プレート6の形状について、図1に示すように、位置決めピン3と接触する部分にV字形状の切り欠きを有し、位置決めブロック4と接触する部分にL字形状の切り欠きを有していることが好ましい。
【0022】
本発明で使用される位置決めブロック4は、たとえば図3に示すように、ボルト8によってベースプレート5に設置(固定)することによって設置位置の微調整が可能となる。このボルトとボルト穴には遊びが生じるが、本発明では、これを利用して位置決めブロック4の設置位置を微調整することにより、機械加工の精度などを補い、ヘッドユニット2の位置精度を向上させるのである。さらに、ベースプレート5にヘッドユニット2をボルトなどにより固定する際には、位置決めピン3と位置決めブロック4とにヘッドユニット2をつきあてながらボルト7を締めることによって、位置精度が低下することを防ぐことができる。なお、位置決めブロック4の設置位置の微調整は、印字の方向に対して直角に設置した直定規や直角定規などの治具に、位置決めブロック4を当接させて、行うことができる。
【0023】
また、図3に示すように、本発明で使用される位置決めブロック4は、ヘッドユニット2と当接する部分に円弧を有している。この円弧部分でヘッドユニット2と当接するため、その当接部は直線状となり、より高精度な位置決めが可能となる。なお、円弧の半径Rはとくに限定されるものではなく、適宜、設定することができる。
【0024】
さらに、位置決めブロック4の一部を円弧としているため、位置決めブロック4の取り付けスペースを小さくすることができる。位置決めブロック4は、ボルト8によってベースプレート5に設置されているため、位置決めブロック4には、ボルト穴を設けることが必要である。また、位置決めブロック4は、ヘッドユニット2の回転止めであるため、背景技術でいうところの位置決めピンとしての役割も担っている。つまり、位置決めブロック4には、2個以上のボルト穴のためのスペースと位置決めピンを設置するためのスペースとが必要になるが、本発明で使用する位置決めブロック4のように、それ自体の一部に円弧を設け、位置決めピンとしての役割を持たせることによって、位置決めピンを設置するスペースを不要とすることができる。また、部品数も少なくなるため、コスト面や作業効率の面でも有利である。
【0025】
また、ヘッドユニット2と、位置決めピン3および位置決めブロック4とは、ベースプレート5からの高さ(H)10mm以下の位置で当接していることが好ましく、5mm以下の位置で当接していることがより好ましい。当接位置が低いことで、位置決めピン3や位置決めブロック4が傾いて設置されている場合であっても、その影響を小さくすることができる。
【0026】
当接位置を低くするには、図4に示すように、位置決めピン3および位置決めブロック4の高さを低くする方法や、ヘッドユニット2の高さを低くする方法、また、図5に示すように、ヘッドユニット2の側面10mm以下の位置に基準部(この場合は凸部)を設けて、当接位置を調整する方法などがあげられる。
【0027】
また、ヘッドユニット2と、位置決めピン3および位置決めブロック4との当接部が、長さ10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましい。なお、当接部の長さは短ければ短い方が好ましいが、2mm以上であることが好ましい。当接部が2mmより少ないということは、位置決めピン3や位置決めブロック4、あるいは、ヘッドユニット2、またはそれに設けられた基準部自体を薄くするということであり、この場合、当接したときに、位置決めピン3や位置決めブロック4、ヘッドユニット2が変形してしまう可能性があり、そのため、ヘッドユニット2の位置精度が低下するおそれがある。当接部の位置が高い場合であっても、このように当接部が短いことで、やはり、位置決めピン3や位置決めブロック4の傾きに関する影響を小さくすることができる。
【0028】
当接部を短くするには、位置決めピン3および位置決めブロック4の高さを低くする方法や、ヘッドユニット2の高さを低くする方法、図6に示すように、ヘッドユニット2の側面に長さ10mm以下の基準部(この場合は凸部)を設けて、当接部の長さを調整する方法などがあげられる。
【0029】
また、本発明は、複数のヘッドユニットをベースプレートに固定したインクジェット装置の製造方法であって、
プレートにインクジェットヘッドを、固定してヘッドユニットを得る工程、
位置決めピンと、設置位置の調整が可能で、ヘッドユニットとの当接面に円弧を有した位置決めブロックとをベースプレートに設置する工程、
該位置決めブロックの設置位置を調整する工程、
該ヘッドユニットを、該位置決めピンと位置決めブロックとに当接する工程、および
該ヘッドユニットをベースプレートに固定する工程、を含んでいる。
【0030】
位置決めブロックをベースプレートに設置したのち、ヘッドユニットを搭載する前に、位置決めブロックの設置位置を微調整することによって、ヘッドユニットの位置精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 インクジェット装置
2 ヘッドユニット
3 位置決めピン
4 位置決めブロック
5 ベースプレート
6 プレート
7 ボルト
8 ボルト
9 インクジェットヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のヘッドユニットをベースプレートに固定したインクジェット装置であって、該ヘッドユニットが、位置決めピンと、設置位置の調整が可能な位置決めブロックとを有したベースプレートに固定されており、該位置決めブロックが、ヘッドユニットとの当接部に円弧を有しているインクジェット装置。
【請求項2】
前記ヘッドユニットと、位置決めピンおよび位置決めブロックとが、ベースプレートからの高さ10mm以下の位置で当接している請求項1記載のインクジェット装置。
【請求項3】
前記ヘッドユニットと、位置決めピンおよび位置決めブロックとの当接部が、長さ10mm以下である請求項1記載のインクジェット装置。
【請求項4】
複数のヘッドユニットをベースプレートに固定したインクジェット装置の製造方法であって、
プレートにインクジェットヘッドを固定してヘッドユニットを得る工程、
位置決めピンと、設置位置の調整が可能でヘッドユニットとの当接面に円弧を有した位置決めブロックとをベースプレートに設置する工程、
該位置決めブロックの設置位置を調整する工程、
該ヘッドユニットを、該位置決めピンと位置決めブロックとに当接する工程、および
該ヘッドユニットをベースプレートに固定する工程、を含むインクジェット装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−207053(P2011−207053A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77266(P2010−77266)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】