説明

インクジェット装置

【課題】単純な構成でインクタンクの内圧を精度よく制御し、かつインクタンク内部での異物の発生を抑える。
【解決手段】インクジェット装置41は、インクを吐出するインクジェットヘッド16と、インクジェットヘッド16に供給されるインクを収容しインクジェットヘッド16と連通する、容積変化が可能な主インクタンク9と、主インクタンク9の外面に連結され主インクタンク9の一部を変形させることによって主インクタンク9の容積を減少させる容積減少機構35と、を有す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドからインクを吐出するインクジェット装置に関し、特に、インクタンクの負圧制御機構に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷方法の一つとして、記録ヘッドからインク液滴を吐出するインクジェット方式が考案され、近年は多様な分野で利用されている。このようなインクジェット装置においては、記録ヘッドのノズルでのインクのメニスカス状態を安定に維持し、吐出安定性を確保するため、インクタンクの内圧を制御することが必要である。一方、インクタンクとしては可撓性のある容器が用いられることが多く、このようなインクタンクはインクの吐出に伴い容積が変化する。容積が変化するインクタンクの内圧を制御する方法として、下記の技術が知られている。
【0003】
特許文献1,2には、可撓性を有するインクタンクが収容部に収容されたインクジェット装置が開示されている。特許文献1に記載の構成では、収容部は真空ポンプに接続されている。インクタンクの容積変化が検知されると、検知された容積変化に基づいて、収容部の内部が真空ポンプによって所定の負圧にされる。それによってインクタンクの容積が変化し、インクタンクの内圧を制御することができる。特許文献2に記載の構成では、インクタンクと接合された板部材が負圧発生用バネによってインクタンク内部より押圧されることで、インクタンクの内部が負圧に維持される。インクの吐出によってインクタンクの負圧が高くなると、収容部に設けられた一方向弁が板部材で押され、インクタンク内に大気が導入されて、インクタンクの内圧が回復する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3803108号明細書
【特許文献2】特開第2009−023108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された構成では、インクタンクの外圧、すなわち収容部の負圧を制御することによってインクタンク自身の変形量が制御され、それによってインクタンクの内圧が制御される。しかし、収容部の負圧を制御するためには収容部の気密性が必要であり、負圧を付与し維持するための設備も必要となる。このため、装置コスト、運転コストへの影響が大きい。インクタンクの変形量を直接制御しないため、制御の精度を向上させることも難しい。
【0006】
特許文献2に開示された構成では、負圧発生用バネの伸縮とインクタンクの変形だけで負圧の制御を行うため、精度の高い内圧制御が困難である。さらに、インクタンクの内部に負圧発生用バネと一方向弁を設けているため、これらの動作の際に微細な異物が発生し、インク内に混入する可能性がある。このような異物は製作物に欠陥を生じさせる場合がある。
【0007】
本発明は、単純な構成でインクタンクの内圧を精度よく制御することができ、かつインクタンク内部で異物が発生するおそれの少ないインクジェット装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のインクジェット装置は、インクを吐出するインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドに供給されるインクを収容しインクジェットヘッドと連通する、容積変化が可能な主インクタンクと、主インクタンクの外面に連結され主インクタンクの一部を変形させることによって主インクタンクの容積を減少させる容積減少機構と、を有している。
【0009】
本発明では、インクジェットヘッドからのインクの吐出に伴い、主インクタンクの容積が容積減少機構によって変化させられる。容積減少機構は主インクタンクの外面に連結されており、主インクタンクの一部を変形させることによって主インクタンクの容積を減少させる。このため、単純な構成で主インクタンクの容積を直接的に制御することができる。容積減少機構は主インクタンクの外面に当接するため、容積減少機構の作動に伴う主インクタンク内の異物の発生も防止できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、単純な構成でインクタンクの内圧を精度よく制御することができ、かつインクタンク内部で異物が発生するおそれの少ないインクジェット装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態のインクジェット装置の装置本体の断面図である。
【図2】第1の実施形態のヘッドカートリッジの主要部断面図である。
【図3】第1の実施形態のインクジェット装置の主要部断面図である。
【図4】ヘッドカートリッジの動作を示す主要部断面図である。
【図5】インクタンクの内圧を制御する手順を示すフローチャートである。
【図6】駆動モーターがヘッドカートリッジに設けられた形態を示す断面図である。
【図7】主及び補助インクタンク部が直接接続された形態を示す断面図である。
【図8】インクジェットヘッドが装置本体に搭載された形態を示す断面図である。
【図9】第1の実施形態のインクタンクユニットの主要部断面図である。
【図10】インクタンクユニットが装置本体に搭載された状態を示す断面図である。
【図11】第2の実施形態のインクジェット装置の主要部断面図である。
【図12】第3の実施形態のインクジェット装置の主要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のいくつかの実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について、図1〜図10を用いて説明する。図1は、本発明のインクジェット装置の装置本体の主要部断面図であり、ヘッドカートリッジ8が搭載されていない状態を示している。装置本体1にはベースプレート2が設置され、ベースプレート2には被印字物搬送部3が搭載されている。被印字物搬送部3には、被印字物4が不図示の吸着手段により搭載される。
【0014】
装置本体1には、容積減少機構35(後述)の一部を構成する駆動モーター6及び駆動モーターマグネット部7が搭載されている。駆動モーターマグネット部7は駆動モーター6の駆動軸に連結されている。装置本体1には、ヘッドカートリッジ搭載部5が設けられている。また、装置本体1は、容積減少機構35を制御するための容積減少機構制御部19を備えている。
【0015】
図2は、ヘッドカートリッジ8の主要部断面図である。図3は、ヘッドカートリッジ8を装置本体1に搭載した状態を示すインクジェット装置41の主要部断面図である。ヘッドカートリッジ8は装置本体1に対して着脱可能に構成されている。ヘッドカートリッジ8には、インクを吐出するインクジェットヘッド16と、インクジェットヘッド16に供給されるインクを収容する主インクタンク9と、が設けられている。装置本体1とヘッドカートリッジ8とは電気的に接続されており、主インクタンク9はインクジェットヘッド16に設けられたノズル17と連通している。従って、装置本体1から吐出信号をヘッドカートリッジ8に伝達することで、主インクタンク9内のインク18がノズル17から液滴20として吐出される。吐出される液体はインクが典型的であるが、導電性液体、紫外線(UV)硬化性液体等であってもよい。主インクタンク9は樹脂などの変形性の高い材料で形成されており、側面に複数の屈曲部9aを備えている。従って、主インクタンク9は変形し、容積変化することができる。
【0016】
容積減少機構35は、雄ねじが形成された雄ねじ部10と、雄ねじに係合する雌ねじが形成された雌ねじ部11と、雌ねじ部11に連結され雌ねじ部11を回転駆動する回転駆動機構36と、を有している。容積減少機構35は、主インクタンク9の外面(主インクタンクプレート25)に連結され、主インクタンク9の一部を変形させることによって主インクタンク9の容積を減少させる。
【0017】
本実施形態では、雄ねじ部10及び雌ねじ部11と回転駆動機構36の一部とがヘッドカートリッジ8に内蔵されている。具体的には、主インクタンク9の容積を変化させる雄ねじ部10が、主インクタンク9の外面の一部を構成する主インクタンクプレート25を介して、主インクタンク9の本体に連結されている。雄ねじ部10の雄ねじは雌ねじ部11の雌ねじと係合し、雌ねじ部11はマグネット部12に連結されている。マグネット部12は、マグネット支持部13に回転自在に支持されている。マグネット部12及びマグネット支持部13は回転駆動機構36の一部を構成している。図3に示すように、ヘッドカートリッジ8を装置本体1に搭載することで、駆動モーターマグネット部7とマグネット部12とが磁気的に連結される(マグネットカップリング)。すなわち、回転駆動される雌ねじ部11と回転駆動機構36とが、インクカートリッジ8を介して磁気的に連結される。
【0018】
雌ねじ部11に回転駆動力が印加されない状態では、雄ねじと雌ねじとの間に働く静止摩擦力によって、雄ねじ部10の回転が防止される。そのため主インクタンク9の容積は変化しない構成となっている。
【0019】
図2をA方向から見たときに、雌ねじ部11を反時計方向に回転させると、雄ねじ部10は図2の下方向へ移動する。雌ねじ部11を時計方向に回転させると、雄ねじ部10は図2の上方向へ移動する。雄ねじと雌ねじの配置を逆に構成してもよい。
【0020】
ヘッドカートリッジ8は、インクの吐出によって生じる主インクタンク9の内圧の減少を緩和する内圧減少緩和機構37を有している。本実施形態では、内圧減少緩和機構37は、主インクタンク9と連通する可撓性の補助インクタンク14と、主インクタンク9と補助インクタンク14とを連通させる連通部15と、を有している。インク18は、主インクタンク9と連通部15と補助インクタンク14との間を移動することができる。すなわち、主インクタンク9と連通部15と補助インクタンク14とを合わせた部分が実際のインク収容部である。補助インクタンク14は主インクタンク9より剛性が低く、容易に容積変化することができる。本発明は、インク容量によって限定されないが、主インクタンク9のインク容量が大きい場合に特に適している。
【0021】
内圧減少緩和機構37はさらに、一端が補助インクタンク14に、他端がヘッドカートリッジ8に(すなわち、装置本体1に対して不動に)取り付けられた、予張力を与えられた弾性体(インクタンクバネ26)を有している。予張力は、主インクタンク9と連通部15と補助インクタンク14内のインク18に対してノズル17から液滴20を吐出するのに適した負圧を発生させている。ヘッドカートリッジ8を運搬する際などには、前述したように主インクタンク9の容積は変化せず、補助インクタンク14の容量は小さいため外乱の影響を受けにくいので、ノズル17からインク18が垂れることを防止できる。
【0022】
ヘッドカートリッジ8は、主インクタンク9の内圧を検知する内圧検知手段を有している。内圧検知手段は、連通部15に取り付けられ連通部15の変形を検出するひずみゲージ22を有している。主インクタンク9の内部の圧力変化に伴い、連通部15の壁面が撓み、撓み量がひずみゲージ22によって測定される。
【0023】
容積減少機構制御部19は、内圧検知手段が検知した内圧が所定の値を下回った時に容積減少機構35を作動させる。ひずみゲージ22で測定した連通部15の撓み量は容積減少機構制御部19に伝達され、主インクタンク9の内圧に変換される。容積減少機構制御部19は、算出された主インクタンク9の内圧に基づいて駆動モーター6を駆動する。駆動モーター6を駆動することで、駆動モーターマグネット部7が回転し、マグネット部12が回転する。その結果、雌ねじ部11が回転し、雄ねじ部10が上下動し、主インクタンク9の容積を変化させる。
【0024】
装置動作を停止した場合や装置動作中に電源が遮断された場合には、前述のようにねじの静止摩擦力により雄ねじ部10の回転が防止される。このため、主インクタンク9の容積は変化せず、ノズル17からインク18が垂れることが防止される。装置本体1からヘッドカートリッジ8を取り外す場合も、ノズル17からインク18が垂れることはない。
【0025】
図4(A)〜4(C)は、装置本体1に搭載したヘッドカートリッジ8の動作を示す主要部断面図である。図4(A)に示すように、装置本体1から吐出信号がヘッドカートリッジ8に伝達されることで、インクジェットヘッド16のノズル17から液滴20が吐出される。
【0026】
ノズル17から液滴20が吐出されることで、主インクタンク9内部のインク18が減少する。このため、図4(B)に示すように、主インクタンク9の負圧が高くなる。補助インクタンク14に収容されているインクの一部が主インクタンク9に移動し、主インクタンク9の内圧が回復する。補助インクタンク14の容積は減少するが、インクタンクバネ26が伸びるため、主インクタンク9の内圧の急激な変化が防止される。
【0027】
主インクタンク9の内圧はインクの吐出に伴い徐々に低下していくため、連通部15の壁面は内側に撓んでいく(流路が絞られていく)。壁面の撓み量は、連通部15に貼りつけられたひずみゲージ22で測定される。ひずみゲージ22で測定された連通部15の撓み量は容積減少機構制御部19に伝達され、主インクタンク9の内圧に変換される。
【0028】
容積減少機構制御部19は、算出された主インクタンク9の内圧に基づき、主インクタンク9の内圧を一定範囲内に制御する。主インクタンク9の負圧が高くなった場合には、図4(C)をB方向から見たときに、駆動モーター6を反時計方向に回転させる。これによって、雌ねじ部11が反時計方向に回転し、雄ねじ部10が図4(C)において下降する。雄ねじ部10が下降し主インクタンクプレート25が下降すると、主インクタンク9の側面の屈曲部9aの屈曲角度が変化し、主インクタンク9の容積が減少する。
【0029】
この結果、主インクタンク9の内圧が上昇し(負圧が弱められ)、主インクタンク9にあるインクの一部が補助インクタンク14に移動し、補助インクタンク14の容積が回復する。インクタンクバネ26は再び縮み、連通部15の壁面の撓みも解消する。ひずみゲージ22で測定された撓み量から変換された主インクタンク9の内圧が一定範囲に収まると、容積減少機構制御部19からの信号によって駆動モーター6の駆動が停止される。このようにして、主インクタンク9の内圧は一定範囲内に制御され、ノズル17のメニスカス状態が安定的に保たれ、ノズル17からの吐出安定性を確保することができる。
【0030】
図5は、ひずみゲージ22により測定した連通部15の壁面の撓み量の測定結果に基づいて、主インクタンク9の内圧を制御する手順を示すフローチャートである。ステップS50にて、ノズル17から液滴が吐出される。ステップS51にて、ひずみゲージ22により連通部15の壁面の撓み量を検出する。ステップS52にて、容積減少機構制御部19によって撓み量を主インクタンク9の内圧に変換する。ステップS53にて、主インクタンク9の圧力が一定範囲内にあるか否かを判断する。主インクタンク9の圧力が一定範囲内にない場合、ステップS54にて、駆動モーター6を駆動する。ステップS55にて、雄ねじ部10が下降し、主インクタンク9に外力(押圧力)を印加することによって主インクタンク9の容積が減少する。次にステップS51に移り、ステップS52、ステップS53を実行する。ステップS53にて、主インクタンク9の圧力が一定範囲内である場合、手順は終了する。連通部15の壁面の撓み量の測定は常時行なわれている。そのため、図4(A)〜4(C)では、分かりやすいように補助インクタンク14の容積が大きく変化する形態で図が描かれているが、実際には補助インクタンク14の容積変化は少ない。
【0031】
このようにして、一方のねじ部が回転駆動させられることによって、インクタンク9に連結された他方のねじ部の端部が移動し、主インクタンク9の一部(主インクタンクプレート25)が変形し、主インクタンク9の容積が減少する。従って、単純な構成で主インクタンク9の内圧を一定範囲内に制御し、ノズル17からの吐出安定性を確保することができる。また、主インクタンク9とインクジェットヘッド16は、間にチューブ等が介在することなく直接接続されており、弁等の摺動部材も使用していない。このため、微細な異物(ゴミ)がインク内に混入することも防止できる。
【0032】
図6に示すように、ヘッドカートリッジ8内に駆動モーター6を設ける構成としてもよい。この実施形態では、装置本体1に対して着脱可能なインクカートリッジ8は、主インクタンク9と、容積減少機構35の雄ねじ部10及び雌ねじ部11と、回転駆動機構36と、を少なくとも収容している。駆動モーター6には駆動モーターギア33が設けられ、駆動モーターギア33は雌ねじ部11に設けられた主インクタンクギア34と連動する。
【0033】
図7に示すように、内圧検知手段であるひずみゲージ22を主インクタンク9に取り付けて、主インクタンク9の底面の撓み量を検出するようにしてもよい。主インクタンク9の内圧は、主インクタンク9の底面の撓み量から換算される。この実施形態では、連通部15を設ける必要がなく、補助インクタンク14を主インクタンク9に直接接続する構成とすることができる(連通部15を設けることも可能である)。
【0034】
上述した実施形態では、インクジェットヘッド16はインクカートリッジ8と一体に構成されているが、インクジェットヘッド16を装置本体1と一体に構成することもできる。この場合、ヘッドカートリッジ8内のインクジェットヘッド16とその他の部分とが分離する構成となる。このような構成を、図8〜図10を用いて説明する。図8は、インクジェットヘッド16が搭載された装置本体1を示す図である。インクジェットヘッド16には、ノズル17と、ヘッドフィルタ28と、ヘッドOリング29と、が設けられている。ヘッドフィルタ28は微細な細孔を有するフィルタである。また、ヘッドカートリッジ搭載部5にインクジェットヘッド16を搭載する部分を設け、インクジェットヘッド16を装置本体1に対して着脱可能な構成とすることも可能である。
【0035】
図9は、インクタンクユニット32の主要部断面図である。インクタンクユニット32には、インクタンクフィルタ30とOリング当接部31が設けられている。インクタンクフィルタ30は微細な細孔を有するフィルタであり、フィルタの細孔内のインクのメニスカスと主インクタンク9の負圧が釣り合うようにされている。そのため、インクフィルタ30からインクが垂れることが防止される。インクタンクユニット32のその他の構成は、図3で説明したヘッドカートリッジ8の構成と同一である。
【0036】
図10は、インクジェットヘッド16にインクタンクユニット32が搭載された状態を示している。インクジェットヘッド16に設けられたヘッドOリング29と、インクタンクユニット32に設けたOリング当接部31と、が密着することで、インクジェットヘッド16とインクタンクユニット32の隙間から大気が導入されることが防止される。インクジェットヘッド16のノズル17から不図示の吸引手段によりインクを吸い出すことにより、主インクタンク9内のインク18を、インクタンクフィルタ30とヘッドフィルタ28を介して、インクジェットヘッド16のノズル17に充填することができる。
【0037】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について、図11を用いて説明する。図11は、ヘッドカートリッジ108を装置本体101に搭載したときのインクジェット装置141の主要部断面図である。第2の実施形態では、内圧検知手段として、補助インクタンク114に取り付けられた検知プレート123と、ヘッドカートリッジ108に取り付けられた変位量検出部124と、が設けられている。検知プレート123は補助インクタンク114の容積の変化に伴って上下方向に移動することができ、変位量検出部124は検知プレート123のカートリッジ108に対する相対変位量を検出する。他の構成は、第1の実施形態と同一である。なお、図示されている部材には、第1の実施形態の対応する部材または類似する部材の符号に100を加えた符号が付されている。
【0038】
ノズル117から液滴120が吐出されることで、主インクタンク109内部のインク118が減少する。そのため、主インクタンク109の負圧が高くなる。補助インクタンク114に収容されているインクの一部が主インクタンク109に移動し、補助インクタンク114の容積が減少するとともに、主インクタンク109の内圧が回復する。補助インクタンク114の容積は減少するが、インクタンクバネ126が伸びるため、主インクタンク109の内圧の急激な変化が防止される。
【0039】
補助インクタンク114の変形に伴い、補助インクタンク部114に取り付けられた検知プレート123は下方向へ移動する。検知プレート123の位置は位置検出部124にて検知される。位置検出部124にて検知された、検知プレート123の位置検出部124に対する相対位置データは容積減少機構制御部119に伝達され、主インクタンク109の内圧に変換される。
【0040】
容積減少機構制御部119は主インクタンク109の内圧に基づき、主インクタンク109の内圧を一定範囲内に制御する。主インクタンク109の負圧が高くなった場合には、図11をC方向から見たときに、駆動モーター106を反時計方向に回転させる。これによって雌ねじ部111が反時計方向に回転し、雄ねじ部110が図11の下方向へ移動する。
【0041】
この結果、主インクタンク109の内圧が上昇し(負圧が弱くなり)、主インクタンク109にあるインクの一部が補助インクタンク114に移動し、補助インクタンク114の容積が増加する。インクタンクバネ126は再び縮み、検知プレート123は上昇する。検知プレート123の位置データから変換された主インクタンク109の内圧が一定範囲内に収まると、容積減少機構制御部119からの信号によって駆動モーター106の駆動が停止される。
【0042】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態について図12を用いて説明する。図12は、ヘッドカートリッジ208を装置本体201に搭載したときのインクジェット装置241の主要部断面図である。第3の実施形態では、容積減少機構235は、主インクタンク209との接続部に予張力を与えられた弾性体(インクタンクバネ226)を有している。内圧検知手段は、容積減少機構235に取り付けられた検知プレート223と、主インクタンク209に取り付けられた位置検出部224と、を有している。インクタンクバネ226は、雄ねじ部210と主インクタンクプレート225の間に設けられている。インクタンクバネ226は、第1の実施形態のインクタンクバネ26及び第2の実施形態のインクタンクバネ126と比較して、ばね定数が大きなバネを使用している。インクタンクバネ226のばね定数が大きいため、ヘッドカートリッジ208を運搬する際などに、インクタンクバネ226に力が加わった場合でもインクタンクバネ226は伸びにくく、ノズル217からインク218が垂れにくい構成となっている。検知プレート223は雄ねじ部210の先端部に取り付けられ、位置検出部224は主インクタンクプレート225に固定されている。その他の構成は、第1の実施形態と同一である。なお、図示されている部材には、第1の実施形態の対応する部材または類似する部材の符号に200を加えた符号が付されている。
【0043】
ノズル217から液滴220が吐出されることで、主インクタンク209内部のインク218が減少する。そのため、主インクタンク209の負圧が高くなり、主インクタンク209は全体的に下方に縮小し、インクタンクバネ226が伸びる。位置検出部224は検知プレート223に対して相対的に下降しながら、検知プレート223の位置検出部224に対する相対位置を検知する。すなわち、位置検出部224は主インクタンク209の容積の変化に伴って移動することによって、検知プレート223に対する相対位置を検出する。位置検出部224にて検知された検知プレート223の位置データは、容積減少機構制御部219に伝達され、主インクタンク209の内圧に変換される。
【0044】
容積減少機構制御部219は主インクタンク209の内圧に基づき、主インクタンク209の内圧を一定範囲内に制御する。主インクタンク209の負圧が高くなった場合には、図12をD方向から見たときに、駆動モーター206を反時計方向に回転させる。これによって雌ねじ部211が反時計方向に回転し、雄ねじ部210が図12の下方向へ移動する。
【0045】
この結果、主インクタンク209の内圧が上昇し(負圧が弱くなり)、主インクタンク209の容積は減少する。検知プレート223の位置データから変換された主インクタンク209の内圧が一定範囲内に収まると、容積減少機構制御部219からの信号によって駆動モーター206の駆動が停止される。前述したように、インクタンクバネ226のばね定数は大きいため、主インクタンク209の内圧を微細に制御するためには、位置検出部224に対する検知プレート223の位置を細かく検知し駆動モーター206の駆動を細かく制御する必要がある。
【符号の説明】
【0046】
16,116,216 インクジェットヘッド
9,109,209 主インクタンク
35,235 容積減少機構
41,141,241 インクジェット装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドに供給されるインクを収容し前記インクジェットヘッドと連通する、容積変化が可能な主インクタンクと、前記主インクタンクの外面に連結され前記主インクタンクの一部を変形させることによって前記主インクタンクの容積を減少させる容積減少機構と、を有する、インクジェット装置。
【請求項2】
前記主インクタンクの内圧を検知する内圧検知手段と、前記内圧検知手段が検知した内圧が所定の値を下回った時に前記容積減少機構を作動させる容積減少機構制御部と、を有する、請求項1に記載のインクジェット装置。
【請求項3】
インクの吐出によって生じる前記主インクタンクの内圧の減少を緩和する内圧減少緩和機構を有する、請求項2に記載のインクジェット装置。
【請求項4】
前記内圧減少緩和機構は、前記主インクタンクと連通する可撓性の補助インクタンクを有する、請求項3に記載のインクジェット装置。
【請求項5】
前記内圧検知手段は、前記補助インクタンクに取り付けられ前記補助インクタンクの容積の変化に伴って移動する検知プレートと、前記検知プレートの位置を検出する位置検出部と、を有する、請求項4に記載のインクジェット装置。
【請求項6】
前記内圧減少緩和機構は、前記主インクタンクと前記補助インクタンクとを連通させる連通部を有し、前記内圧検知手段は、前記連通部に取り付けられ前記連通部の変形を検出するひずみゲージを有する、請求項4に記載のインクジェット装置。
【請求項7】
前記内圧減少緩和機構は、一端が前記補助インクタンクに他端が装置本体に対して不動に取り付けられた、予張力を与えられた弾性体を有する、請求項4から6のいずれか1項に記載のインクジェット装置。
【請求項8】
前記内圧検知手段は、前記主インクタンクに取り付けられ、前記主インクタンクの変形を検出するひずみゲージを有する、請求項2に記載のインクジェット装置。
【請求項9】
前記容積減少機構は、前記主インクタンクとの接続部に弾性体を有し、前記内圧検知手段は、前記容積減少機構に取り付けられた検知プレートと、前記主インクタンクに取り付けられた位置検出部と、を有し、前記位置検出部は前記主インクタンクの容積の変化に伴って移動することによって、前記検知プレートに対する相対位置を検出する、請求項2に記載のインクジェット装置。
【請求項10】
前記容積減少機構は、雄ねじを有する雄ねじ部と、前記雄ねじに係合する雌ねじを有する雌ねじ部と、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部の一方に連結され該一方のねじ部を回転駆動する回転駆動機構と、を有し、前記一方のねじ部が回転駆動させられることによって他方のねじ部の端部が前記主インクタンクの一部を変形させて、前記主インクタンクの容積を減少させる、請求項1から9のいずれか1項に記載のインクジェット装置。
【請求項11】
前記主インクタンクと、前記容積減少機構の前記雄ねじ部及び前記雌ねじ部と、を少なくとも収容し、装置本体に対して着脱可能なインクカートリッジを有し、前記容積減少機構の前記回転駆動機構は装置本体に設けられ、回転駆動される一方の前記ねじ部と前記回転駆動機構とは、前記インクカートリッジを介して磁気的に連結されている、請求項10に記載のインクジェット装置。
【請求項12】
前記主インクタンクと、前記容積減少機構の前記雄ねじ部及び前記雌ねじ部と、前記回転駆動機構と、を少なくとも収容し、装置本体に対して着脱可能なインクカートリッジを有している、請求項10に記載のインクジェット装置。
【請求項13】
前記インクジェットヘッドは、前記インクカートリッジと一体に構成されている、請求項11または12に記載のインクジェット装置。
【請求項14】
前記インクジェットヘッドは、装置本体と一体に構成されている、請求項11または12に記載のインクジェット装置。
【請求項15】
前記インクジェットヘッドは、装置本体及び前記インクカートリッジと着脱可能に構成されている、請求項11または12に記載のインクジェット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−28105(P2013−28105A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166495(P2011−166495)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】