説明

インクジェット記録ヘッドの接合構造

【課題】 トップシートの表面の個別用の接合端子91に開口するスルーホール内の内部導通電極44と、フレキシブルフラットケーブルの接合電極部78との電気的接続を確実にする。
【解決手段】 トップシートの表面に形成された個別用接合端子91における薄い厚さの表面電極93部分に開口するスルーホール内の内部導通電極44を層の厚い外部導電部としての外部電極95またはダミー部96で覆う。そのうちの外部電極95は島状且つ千鳥状に配置させてXY方向に隣接する外部電極95同士の間隔を大きくし、フレキシブルフラットケーブルの片面に露出する接合電極部78との電気的接続を確実にすると共に接合電極部78に接続しているフレキシブルフラットケーブル側の配線の間隔も広くとれるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録ヘッドの接合構造に係り、より詳しくは、出力信号を伝達するフレキシブルフラットケーブルに対するインクジェット記録ヘッドにおけるアクチュエータの表面に形成される接合端子の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
先行技術のオンディマンド型のインクジェット記録ヘッドにおいては、特許文献1等に開示されているように、複数枚のプレートを積層したキャビティユニットに、2列に配置した複数の圧力室が設けられ、各圧力室に対応する活性部(エネルギー発生手段)を有する圧電アクチュエータがキャビティユニットと接合されている。そして、圧電アクチュエータの各活性部に電圧印加するために、該圧電アクチュエータの上面(表面)にその長手方向の両側縁に沿って上記各活性部と対応した接合端子としての表面電極が設けられ、外部からの制御信号を伝達するためのフレキシブルフラットケーブルにおける接合電極部と圧電アクチュエータの表面電極(接合端子)とが重ねられて接合される。
【0003】
特許文献1では、圧電アクチュエータは、表面に個別電極のパターンを形成した圧電材料からなるセラミックス材のグリーンシートと、表面にコモン電極のパターンを形成した同じくグリーンシートとを交互に重ねた後その最上層には表面に個別用の表面電極とコモン用の表面電極とが形成された同じくトッププレートとを重ねて後プレスし、その後焼成したものである。
【0004】
その場合、各シートの積層方向に対応する位置の個別電極同士及び個別用の表面電極を電気的に接続し、同じく積層方向のコモン電極同士及びコモン用の表面電極を電気的に接続するために、各シート及びトッププレートにその板厚方向に貫通するスルーホールを穿設する。そして、前記各シートの表面に対する個別電極やコモン電極の形成時に同時に各スルーホール内に導電性ペーストを充填させるというものであった。
【0005】
そして、個別電極やコモン電極及びこれらに導通する表面電極は銀−パラジュウム系の導電性ペーストをグリーンシートにスクリーン印刷形成したものである。
【0006】
他方、特許文献2に示すように、フレキシブルフラットケーブルを、片面に配線を有する複数の基板層の積層体にて構成し、その複数の基板層の少なくとも1つに開口部を有して、その後側に配置された基板層の配線を前記開口部を介して露出させてバンプ電極(接合電極部)を形成し、これを圧電アクチュエータの表面電極に接合することが考えられた。このバンプ電極は、加熱により軟化・溶融状態となる半田合金からなることが一般的であった。
【特許文献1】特開2002−19102号公報
【特許文献2】特開平11−147311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記シート(トップシート)の積層・プレス後の焼成温度が高いため、特に表面電極の層(膜)厚さが1μm程度に薄くなり、しかもスルーホールに充填した導電材の膜が表面電極の表面と接合している箇所(シートの厚さ方向に延びるスルーホールと当該シートの正面との接合角部、スルーホールの開口端)は外部に露出している状態となるから、圧電アクチュエータの取り扱い中にその接合箇所が欠け落ち(剥がれ落ち)てしまい、電気的断線となり易かった。
【0008】
特に、高密度の記録ができるように、キャビティユニットにおけるノズル数を多くすれば、対応する個別電極、ひいてはそれに対するトップシートにおける個別用表面電極の島状の間隔が狭くなり、且つ各島の面積も小さく形成しなければならず、前記スルーホールの開口端での電気的断線のおそれが高くなるのであった。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記技術的課題を解決するため、請求項1に記載の発明のインクジェット記録ヘッドの接合構造は、第1の方向に沿って列状に配置された複数個のノズルからなる複数のノズル列と、前記各ノズルに対応する圧力室の複数の列を有するキャビティユニットと、前記各圧力室内のインクに選択的に吐出エネルギーを与える複数個のエネルギー発生手段を有するアクチュエータとを備え、圧力室のそれぞれに選択的に駆動電圧を印加するため、アクチュエータの表面に島状に配置された複数の接合端子を有するインクジェット記録ヘッドと、このインクジェット記録ヘッドを制御するための制御信号を発信するフレキシブルフラットケーブルとを接続するためのインクジェット記録ヘッドの接合構造であって、前記アクチュエータにおける前記キャビティユニットから最も離れた側のトップシートには、前記フレキシブルフラットケーブルにおける接合電極と重ね接合させる前記島状の接合端子を形成し、前記トップシートの板厚方向に貫通するスルーホールに充填した導電材を前記接合端子における膜厚さの薄い表面電極の部位の一部に連通させ、この各スルーホールに充填した導電材にて前記表面電極と前記アクチュエータにおける個別電極との電気的な接続が行えるように構成し、前記表面電極の表面には、当該部位に開口するスルーホールの端部を覆い塞ぐとともに当該開口の端部に密着するように、膜厚の厚い外部導電部を設けたものである。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドの接合構造において、前記外部導電部は、前記フレキシブルフラットケーブルにおける接合電極と重ね接合させる外部電極か、前記接合電極とは非接合であるダミー部かのいずれかであり、前記外部導電部がダミー部である表面電極は、当該ダミー部から適宜隔てられた部位に前記外部電極が設けられるように構成したものである。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のインクジェット記録ヘッドの接合構造において、前記隣接する列同士の圧力室が前記第1の方向に互いに半ピッチずつずれるような千鳥状に配置され、前記各接合端子における表面電極は、前記各圧力室の配列に対応させて同じく半ピッチずつずれるような千鳥状であって、且つ相隣接する圧力室の列の相対向する部位に対応するように接近させて配置され、前記各接合端子における表面電極は、前記各圧力室が前記第1の方向と直交する第2の方向に沿って延びる方向と平行状に延びるように形成され、且つ各列の前記第1の方向に相隣接する圧力室の間に相当する部位に配置され、前記各外部電極及びダミー部は前記第1の方向の幅寸法が、前記表面電極の前記第1の方向の領域内に収まる幅寸法に形成されているものである。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドの接合構造において、前記アクチュエータは、前記各圧力室ごとに対応する個別電極を有する圧電シートと、複数の前記圧力室に共通するコモン電極を有する圧電シートとが交互に積層され、前記コモン電極を有する各圧電シートには、その積層方向に貫通するスルーホールに充填した導電材にて、前記積層方向に対応する個別電極同士を接続させるためのダミー個別電極が島状に形成されており、前記個別電極を有する各圧電シートには、その積層方向に貫通するスルーホールに充填した導電材にて、前記積層方向に対応するコモン電極同士を接続させるためのダミーコモン電極が形成されており、前記トップシートと圧電シートとの間には、少なくとも1枚の拘束シートが介挿され、この拘束シートは、前記トップシートのスルーホールに充填した導電材にて、前記表面電極と電気的に接続されるとともに、その積層方向に貫通するスルーホールに充填した導電材にて、前記個別電極と接続されるダミー個別電極と、前記コモン電極と同じパターン形状である導電パターンとを有し、前記拘束シートのスルーホールの位置は、前記トップシートのスルーホールの位置から偏倚しているものである。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドの接合構造において、前記フレキシブルフラットケーブルは、前記第1の方向ととほぼ直交する第2の方向に延び、前記フレキシブルフラットケーブルの表面には、前記トップシートにおける外部電極に対応する位置に個別表面電極が露出しており、該各個別表面電極に接続する配線は前記フレキシブルフラットケーブルの表面に対して非露出状態で配置されているものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、個別電極用の接合端子では、トップシートの板厚さを貫通させたスルーホール内の内部導通電極が層厚さの薄い表面電極と接続する箇所が圧電アクチュエータの上面として外部に露出するので、各スルーホール部分を含めて内部導通電極の上面部位を層厚さの厚い外部導電部にて充填することにより、内部導通電極と表面電極との接続箇所を保護することができる。
【0016】
特に、外部導電部をスルーホールの開口の端部に密着するように設けることで、内部導通電極と表面電極との接続が最も脆い箇所を確実に保護することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、表面電極の表面の一部にスルーホールが開口するので、その部分を覆う外部導電部をフレキシブルフラットケーブルとの接合に適する外部電極とするか、ダミー部とするかのいずれかに選択でき、ダミー部が形成された表面電極には、そのダミー部と適宜隔てて外部電極を形成することにより、フレキシブルフラットケーブルとの重ね接合作業の邪魔にならず、むしろ、重ね接合作業時にフレキシブルフラットケーブルにおける接合電極部分の近傍を平坦状に保持できるという効果を奏する。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、第1及び第2の方向に互いに隣接する個別電極用の外部電極及びこれに対応する個別用接合電極部は、平面視で、千鳥状に配置されているから、当該隣接する外部電極同士(個別用接合電極部同士)の間隔を広く設定することができ、この広い隙間に複数本の配線を互いの間隔を離して通過させることができる。従って、配線間の相互インダクタンスも小さくできる。また、各外部電極の面積を適当に大きくすることができるから、フレキシブルフラットケーブルの個別用接合電極部との重ね位置が多少ずれても、電気的接続に悪影響を及ぼさない。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、トップシートと圧電シートとの間に拘束シートを設けることにより、圧電シートの変形をより大きくして圧力室に伝達することができる。また、拘束シートのスルーホールはトップシートのスルーホールの位置から偏倚しているため、トップシートのスルーホールが形成される第1の部位に設けられた外部電極をフレキシブルフラットケーブルの接合用電極にて押圧するとき、この部位に対応する位置にスルーホールが形成されていない拘束シートにて押圧力を支持できるので、押圧力による変形を防止できるという効果を奏する。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、ダミー部と配線とが平面視で重なっても、当該配線は絶縁材にて被覆されて、電気的に絶縁されているから、ダミー部と配線とが電気的に短絡することがなく、フレキシブルフラットケーブルとアクチュエータとの接合作業がさらに容易になるとともに、接合強度を一層向上させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明を適用するインクジェット記録ヘッドの各部品の斜視図、図2はキャビティユニット等の斜視図、図3はキャビティユニットの要部の部分拡大斜視図、図4は圧電アクチュエータの第1実施形態の一部切欠き分解斜視図、図5は圧電アクチュエータの第1実施形態の部分拡大断面図、図6は第1実施形態のトップシートにおける接合端子等の位置を示す部分拡大斜視図、図7(a)は第1実施形態の表面電極と外部電極と圧力室等との位置関係を示す平面図、図7(b)は第1実施形態の接合端子における表面電極と外部電極との位置関係を示す平面図、図8(a)はトップシートにおける表面電極等とスルーホールの開口端部等の断面図、図8(b)は膜厚の大きい外部導電部の断面図、図9(a)はフレキシブルフラットケーブルの第1実施形態の下面図、図9(b)はフレキシブルフラットケーブルの第1実施形態の側面図、図10はフレキシブルフラットケーブルの要部拡大下面図、図11(a)は表面電極と外部電極との位置関係を示す拡大平面図、図11(b)はバンプ電極と接合端子との接合部を示す拡大側断面図、図12は圧電アクチュエータの第2実施形態の一部切欠き分解斜視図、図13は第2実施形態の表面電極と外部電極と圧力室等との位置関係を示す平面図、図14は第2実施形態の接合端子における表面電極と外部電極との位置関係を示す平面図である。
【0022】
本発明に係るカラー記録用のインクジェット記録ヘッドは、図示しないが、用紙の搬送方向(副走査方向、以下第1の方向またはY方向という)と直交する方向(主走査方向、以下第2の方向、X方向という)に往復移動するキャリッジに搭載されたヘッドユニット1を有し、そのヘッドユニット1上には、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のカラーインクがぞれぞれ充填されたインクカートリッジが着脱可能に搭載されるか、または画像形成装置の本体に静置されたインクカートリッジから図示しない供給パイプ及びキャリッジに搭載されたダンパー室(図示せず)を介して各色のインクが供給されるように構成されている。
【0023】
ヘッドユニット1は、図2に示すように、前面(図2における下面)にY方向(第1の方向)に複数個のノズル11a(図2参照)が列状に配置され、且つそのノズル列がX方向に適宜間隔で複数列(実施形態では5列)を備えたキャビティユニット10と、その上面に対して接着剤または接着シートを介して接着し積層されるプレート型の圧電アクチュエータ12と、その背面(上面)に外部機器との電気的接続のために重ね接合された配線基板の1例としてのフレキシブルフラットケーブル40とにより構成されている。
【0024】
キャビティユニット10は図2に示すように構成されている。すなわち、下層から順にノズルプレート11、カバープレート15、ダンパープレート16、二枚のマニホールドプレート17,18、2枚のスペーサプレート19,20及び圧力室23が形成されているベースプレート21の合計8枚の扁平な板をそれぞれ接着剤にて重ね接合して積層した構成である。合成樹脂製のノズルプレート11を除き、各プレート15〜21は、42%ニッケル合金鋼板製であり、それらの板厚さを50μm〜150μm程度の厚さを有する。
【0025】
前記ノズルプレート11には、微小径(実施形態では25μm程度)の多数のインク噴出用のノズル11aが、当該ノズルプレート11における第1の方向(キャビティユニット10の長辺方向であり、図2において、Y方向、副走査方向)に沿って千鳥配列状に設けられている。また各ノズル列NはX方向(主走査方向)に適宜間隔で5列(個別の列には、符号N1〜N5を付する、但し、N4,N5は図示せず)に配列されている。実施形態では、第1列〜第5列の各々のノズル列Nの長さは1インチ、各々のノズル11aの数は75個で、つまり配列密度は75(dpi[ドット・パー・インチ])である。
【0026】
そして、図2において、右から順番にノズル列N1〜N5(但し、N4,N5は図示せず)とするとき、ノズル列N1はシアンインク(C)用であり、ノズル列N2はイエローインク(Y)用であり、ノズル列N3はマゼンタインク(M)用であり、ノズル列N4及びN5はブラックインク(BK)用とする。
【0027】
上下マニホールドプレート17,18には、Y方向に長いインク通路が各ノズル列N1〜N5に対応して板厚方向に貫通するように形成され、上側の第1スペーサプレート19と下側のダンパープレート16とに挟まれて積層されることにより、前記インク通路が5列の共通インク室(マニホールド室)26となる。そして、図2において、右から順に共通インク室26a,26b,26c,26d,26eとするとき、共通インク室26aはシアンインク(C)用であり、共通インク室26bはイエローインク(Y)用であり、共通インク室26cはマゼンタインク(M)用であり、第4番目と第5番目の共通インク室26d,26eの対はブラックインク(BK)用となる。
【0028】
図2において、ベースプレート21のY方向の一端部にX方向に適宜間隔で穿設された4つのインク供給口を右から順に符号31a,31b,31c,31dとするとき、インク供給口31a,31b,31cは、右端から順の共通インク室26a,26b,26cに対応し、右から4番目のインク供給口31dは、2つの共通インク室26d,26eの互いに近接した端部に共通に対応している。そして、図2に示すように、インク供給口31a,31b,31cの位置に対応して、第2スペーサプレート20及び第1スペーサプレート91の一端部に穿設されたインク供給通路32が対応する共通インク室26a,26b,26cの一端部に連通している。
【0029】
また、下側のマニホールドプレート17の下面に接着されるダンパープレート16の下面側には、各共通インク室26に対応する位置にY方向に長いダンパー室27が下面方向にのみ開放するように凹み形成され、その下面側のカバープレート15にて塞がれて完全な密閉状のダンパー室27が構成される。
【0030】
この構成により、圧電アクチュエータ12の駆動で圧力室23に作用する圧力波のうち、インクにより伝播されて共通インク室26の方向に向かう後退成分を、板厚の薄いダンパープレート16の振動により吸収し、いわゆるクロストークが発生することを防止するのである。
【0031】
第1スペーサプレート19には、各ノズル列N1〜N5のノズル11aに対応する絞り部28がX方向に若干長く、Y方向に細幅の凹溝状に形成されている。この各絞り部28の一端は対応するマニホールドプレート18における共通インク室26a〜26eに連通し、各絞り部28の他端は後述するように、上側の第2スペーサプレート20における上下貫通する連通孔29に連通するように形成されている(図3参照)。
【0032】
カバープレート15、ダンパープレート16、2枚のマニホールド17,18、第1及び第2スペーサプレート19,20には、それぞれ、各ノズル列N1〜N5毎にノズル11aに連通する連通路25が、共通インク室26及びダンパー室27と上下に重ならない位置で上下に貫通するように形成されている。
【0033】
また、ベースプレート21には、各ノズル列N毎に、X方向に沿って延びる細幅の圧力室23(各圧力室の列を符合23−1,23−2,23−3,23−4,23−5とする)がノズル11aの個数に対応してベースプレート21を厚さ方向に貫通して形成されている。そして、各圧力室23の長手方向(X方向)の一端は、第2スペーサプレート20に穿設された連通孔29を介して第1スペーサプレート19における各絞り部28の他端に連通しており、各圧力室23の長手方向の他端は、第2スペーサプレート20に穿設された各連通路25に連通している。各列の圧力室23は隔壁24を介してY方向に配置され、圧力室23は隣接する列の圧力室23に対してY方向に半ピッチずれ、いわゆる千鳥状に配列されている。
【0034】
これにより、各インク供給口31a〜31dから各共通インク通路26内に流入したインクは、絞り部28、連通孔29を通って各圧力室23内に分配されたのち、この各圧力室23内から連通路25を通って、この圧力室23に対応するノズル11aに至るという構成になっている。
【0035】
次に、圧電アクチュエータ12の構成について説明する。圧電アクチュエータ12は、後に詳述するように、圧電シートを積層方向に挟んで形成されている個別電極36とコモン電極の積層方向に対向する前記両電極間の前記圧電シートを活性部(エネルギー発生手段)として有し、任意の個別電極36とコモン電極37との間に電圧を印加することにより、その印加された個別電極36に対応した圧電シートの活性部に、当該積層方向に圧電縦効果による歪みを発生するものである。該活性部(エネルギー発生手段)は、圧力室23の数と同一の数で同一の列にてその対応する位置に形成されている。
【0036】
即ち、前記活性部は、ノズル11a(圧力室23)の列方向(第1の方向、Y方向)に沿って並べられ、且つ前記ノズルの列の数(5つ)と同じ数だけ、第2の方向(X方向)に並べられている。また、各活性部は、前記第2の方向(キャビティユニット10の幅方向、X方向)に圧力室23の長手方向に長く形成され、且つ隣接する活性部の配置間隔(ピッチP)も後述する圧力室23の配置と同様であって、千鳥状配列されることになる。
【0037】
第1実施形態の圧電アクチュエータ12は、図4に示すように、1枚の厚さが30μm程度の圧電セラミックス板からなる複数枚(実施形態では7枚)の圧電シート33,34とが交互に積層された群と、この群の上面に1枚のシート46からなる拘束層を積層し、さらにその上面に表面シートとしてのトップシート35を積層した構造である。拘束層のシ−ト及びトップシ−トは圧電セラミックス板でも良いし、他の材料でも良く、電気的絶縁性を有すれば良い。
【0038】
コモン電極37を有する最下層の圧電シート34から上方へ数えて偶数番目の圧電シート33の上面(平板面)には、図4に示すように、前記キャビティユニット11における各圧力室23に対応した真上箇所ごとに細幅の個別電極36のパターンが、第1の方向(圧電シート33の長辺方向、図2のY方向、各ノズル11aの列方向)に沿って列状にスクリーン印刷形成される。
【0039】
図4は圧電シート33の一部のみを示し、前述した第1列〜第5列の圧力室列23−1,23−2,23−3,23−4,23−5に対応して第1列目〜第5列目の個別電極36(各列に対して、図4で符号36−1、36−2、36−3、36−4、36−5を付する)が形成されている。各個別電極36のパターンは、その直線部36bは、前記各圧力室23(図6の点線参照)とほぼ同じ長さで平面視で重複しており、且つ各圧力室よりもやや狭い幅の直線状に形成されている(図7(a)参照)。
【0040】
各個別電極36における一端部36aは、図7(a)に示すように、それぞれ平面視で直線部36bに対して屈曲形成されて、圧力室23の外に延びている。なお、第3列目の個別電極36−3における一端部36aは、図4に示すように、圧力室23の外側一端に対して交互に外に延びている。
【0041】
また、この各端部36aは、上下に隣接する圧電シート34における第1の島状個別導通部としてのダミー個別電極38及び後述する拘束層における上層シート46の接続パターン53とそれぞれ少なくとも一部が平面視で重なる(図4、図7(a)参照)。そして、各端部36aは、圧電シート34及び上層シート46を貫通するスルーホール41内の内部導通電極42とそれぞれ電気的に接続可能な位置に配置される(図5、図8(a)参照)。
【0042】
さらに、圧電シート33には、圧電シート34におけるコモン電極37と平面視で一部重複する個所であって、圧電シート33の広幅面における短辺及び長辺に沿う外周部位等にダミーコモン電極43が形成されている(図4参照)。
【0043】
コモン電極37は、最下層の圧電シート34とそれから上方へ数えて奇数番目の圧電シート34の各表面(上面)にスクリーン印刷形成されるものである(図4参照)。最下層の圧電シート34におけるコモン電極37は当該圧電シート34の上面全体に形成されている。それより上層の各圧電シート34におけるコモン電極37は、各圧力室列23−1〜23−5ひいては各個別電極列36−1〜36−5の配置位置と平面視で重複し、且つ圧電シート34の長辺に沿ってY方向に長い第1電気導通部分37aと、圧電シート34の短辺に沿ってX方向に長く、第1電気導通部分37aの両端に連結する第2電気導通部分37bとからなる。コモン電極37はこれら圧電シート34に形成される島状のダミー個別電極38の列部分を囲んで形成されている。
【0044】
平面視略矩形状の各ダミー個別電極38は、各個別電極36の直線部36bではなく、各一端部36aの少なくとも一部と平面視で重複するように一定間隔で配置形成されている。
【0045】
拘束層としての上層シート46の上面には、図4に示すように、平面視で略矩形型の接続用パターン53が前記圧電シート34における各ダミー個別電極38の少なくとも一部と平面視で重複するように一定間隔で配置形成されている。また、上層シート46の上面の短辺に沿う部位等には、圧電シ−ト34におけるコモン電極37の一部及び圧電シ−ト33におけるダミーコモン電極43の一部にそれぞれ平面視で重複する位置にコモン導通部としての連絡用パターン54が形成されている。
【0046】
そして、最下層の圧電シート34を除き、それより上層の圧電シート34、33及び上層シート46には、幹部37a,37b等のコモン電極37とダミーコモン電極43との複数箇所を上下方向に電気的に接続するために、電極37、43の位置において、各圧電シート34、33の板厚さを貫通するように穿設された複数のスルーホール41内にそれぞれ充填した導電部材(導電性ペースト)にて内部導通電極(図示せず)を形成する。同様に、複数枚の圧電シート33における各個別電極36の端部36aと、圧電シート34における各ダミー個別電極38と、上層シート46における連絡用パターン54には、それぞれを上下方向に電気的に接続するために、各圧電シート33、34、46の板厚さを貫通するように穿設された複数のスルーホール41内にそれぞれ充填した導電部材(導電性ペースト)にて内部導通電極42が形成されている。その場合、各内部導通電極42は、上下に隣接する圧電シート33、34、46の箇所で平面視で上下に重複しない位置に適宜距離だけ隔てて形成されている(図6、図7(a)、図8(a)参照)。
【0047】
図4〜図7に示すように、圧電アクチュエータ12の最上層である表面シートとしてのトップシ−ト35の上面(表面)には、フレキシブルフラットケーブル40の下面のコモン接続用のバンプ電極57及び個別接続用のバンプ電極78とそれぞれ接合させるためのコモン接続用の接合端子(接合電極)90及び個別接続用の接合端子(接合電極)91とがそれぞれ島状に形成されている。
【0048】
接合端子90及び接合端子91は、それぞれ、トップシ−ト35の表面に形成される層厚さの薄い表面電極92(93)と層厚さの厚い外部導電部としての外部電極94(95)とからなる。トップシ−ト35の接合端子90及び接合端子91と、対応する上層シート46の連絡用パターン54及び接続用パターン53とそれぞれ上下方向に電気的に接続するためには、前記と同様に、トップシ−ト35の板厚さを貫通するように穿設された複数のスルーホール41内にそれぞれ充填した導電部材(導電性ペースト)にて内部導通電極44が形成されている。
【0049】
表面電極92(93)は、個別電極36、コモン電極37、ダミー個別電極38、ダミーコモン電極43、スルーホール41内に充填する内部導通電極42,44、接続用パターン53及び連絡用パターン54と同様の銀−パラジュウム系導電部材(導電性ペースト)を用いて圧電シート33、34及びトップシート35の元材料であるグリーンシートの表面にスクリーン印刷形成した後、圧電シート33、34及びトップシート35を所定の順に積層し、プレスした後、さらに焼成して形成される。なお、スルーホール41は各圧電シート33,34及びトップシート35にパターン印刷する前に穿設され、スルーホール41内への内部導通電極42,44の充填はパターン印刷時に同時に行われる。
【0050】
前記焼成により、図8(a)に示すように、スルーホール41内の内部導通電極42,44はやせ細り、スルーホール41の内壁に筒状に張りつく。特に、トップシート35の表面(上面)におけるコモン電極用の接合端子90(表面電極92)及び個別電極用の接合端子91(表面電極93)に対するそれぞれスルーホール41の開口端部では、内部導通電極42,44が平面視でほぼリング状で極めて厚さが薄い状態(例えば、焼成後の厚さ1μm程度)である。
【0051】
そのため、その後、層厚さの厚い(例えば、焼成後の厚さ10μm程度)外部導電部としての外部電極94,95(及び後述するダミー部96)にてスルーホール41の開口端部を広い面積にわたって覆うことで、トップシート35の表面が取り扱い中に治具等で擦れてても、スルーホール41の内面の内部導通電極42,44は外部電極94,95に広い面積て電気的に接続される結果、電気的断線事故が発生しないのである。しかも、外部導電部としての外部電極94,95(及び後述するダミー部96)は、図8(b)に示されるように、スルーホール41の内部まで充填され、スルーホール41の開口端部において内部導通電極44に密着しているので、内部導通電極44の極めて厚さが薄い部分を補強し、電気的断線を確実に防ぐことができる。
【0052】
また、図8(b)に示されるように、上層シート46に形成されたスルーホール41の位置は、トップシート35に設けられたスルーホール35の位置から偏倚している。よって、トップシート35のスルーホール41の開口端部を覆うように形成された外部電極94,95が、後述するフレキシブルフラットケーブル40の接合電極部77、78にて押圧されるとき、トップシート35のスルーホール41が形成された部位は、上層シート46のスルーホール41が形成されていない部位にて支持されるので、フレキシブルフラットケーブル40を押圧したときの変形を防止できる。
【0053】
なお、前記表面電極92(93)の焼成後に、外部導電部としての外部電極94(95)及び後述するダミー部96は銀−ガラスフリット系の厚膜用の導電性ペースト(コモン電極37、個別電極36と同じ材料)を用いて表面に印刷形成した後に前記焼成温度より低い温度で焼成して形成される。
【0054】
個別接続用の接合端子(接合電極)91の構成をさらに詳述すると、トップシ−ト35の上面には、上層シ−ト46における各接続用パターン53にそれぞれ平面視で少なくとも一部が重複するように、層(膜)厚さの薄い表面電極93が一定間隔で配置形成されている。この各表面電極93は、図6、図7(a)及び図7(b)に示すように、トップシ−ト35の短辺縁(第2の方向、X方向)ひいては各個別電極36における各直線部36bと略平行であって、図7(b)に示すように、その各下方に並列状に位置する相隣接する圧力室23、23の間の隔壁24の上方に位置させる。従って、圧力室23の第1の方向の配置間隔P0と同じ間隔にて表面電極93が配置され、且つ圧力室23の配置と半ピッチずれて表面電極93が配置されることになる。そして、表面電極93の大部分は隔壁24の幅寸法W1よりも狭い幅寸法W2(W2>W1)を有する細幅部93aであり、この細幅部93aに連接して広幅部93bが形成される。広幅部93bの幅寸法W3は隔壁24の幅寸法W1より若干広く設定されている。実施形態では、圧力室23の第1の方向の配置間隔P0は 0.339μm 、表面電極93のW1= 120μm 〜 150μm 、W2= 100μm 、W3= 150〜300 μm 程度であり、W3= 200〜220 μm 程度が好ましい。広幅部93bの長さ寸法L3= 360μm 程度である。また、表面電極93の層厚さは1〜2μm 程度である。
【0055】
そして、この広幅部93bの表面に後に付着する外部電極95の平面視の大きさは広幅部93bの面積よりも小さく、且つ外部電極95の平面視の周囲縁が広幅部93bの周囲縁よりも内周側に位置するように配置されている。実施形態では外部電極95の幅寸法W4≒ 150〜 200μm 程度であり、外部電極95の周囲縁と広幅部93bの周囲縁との間の平面視の間隔寸法W5が25μm 程度あることが望ましい(図9(a)参照)。外部電極95の層厚さは10μm 〜20μm である。
【0056】
同様に、コモン接続用の接合端子90における層厚さの薄い表面電極92は、上層シ−ト46における連絡用パターン54の少なくとも一部に平面視で重複するように配置され、且つトップシ−ト35の上面のうち外周縁寄り部位に帯状等にて形成されている(図4参照)また、表面電極92の表面に後付けとしての層厚さの厚い外部電極94を適宜形状にて配置する。
【0057】
個別電極用の接合端子91では、トップシート35の板厚さを貫通させた内部導通電極44が表面電極93と接続する箇所が圧電アクチュエータ20の上面として外部に露出するので、各スルーホール41部分を含めて内部導通電極44の上面部位を前記外部導電部としての外部電極95と同じ材料で厚い膜厚(例えば、焼成後の層厚さが10μm程度)にて充填するようにしたダミー部96を形成することにより、内部導通電極44と表面電極93との接続箇所を保護することができる(図8(b)参照)。
【0058】
そして、図6、図7(a)及び図7(b)に示す実施形態では、平面視において、隣接する列同士の圧力室23は、その列の延びる方向(Y方向)に互いに半ピッチずつずれるような千鳥状に配置される。そして、個別電極36の一端部36aやダミー個別電極38及び接続用パターン53も、各圧力室23の配列に対応させて同じく半ピッチずつずれるような千鳥状であって、且つ相隣接する圧力室23の列の相対向する部位に対応するように接近させて配置され、且つ各列の前記第1の方向に相隣接する圧力室23の間に相当する部位に配置されている。
【0059】
従って、トップシート35の表面に対して直交するように板厚を貫通して形成される各スルーホール41の位置ひいては内部導通電極44に接続させる各接合端子91における表面電極93の一部の位置も、各圧力室23の配列に対応させて同じく半ピッチずつずれるような千鳥状であって、且つ相隣接する圧力室23の列の相対向する部位に対応するように接近させて配置され、且つ各列の前記第1の方向に相隣接する圧力室23の間に相当する部位に配置されている。なお、表面電極93全体としては、第2の方向(X方向)に沿って延びる方向と平行状に延びるように形成され、且つ各列の前記第1の方向に相隣接する圧力室23の間に相当する部位(隔壁24の上方)に配置されている。
【0060】
しかも、各外部電極95及びダミー部96は、XY両方向の幅寸法が、表面電極93のXY両方向の領域内に形成されている。
【0061】
そして、図6及び図7(b)に示す、Y方向に並ぶ接合端子91の1つのおきに外部電極95がX方向の一方の端部と他方の端部とに交互に形成されいるので、平面視において、XY両方向に隣接する外部電極95の間の距離を大きく採ることができながら、各外部電極95の面積も大きくすることができる。
【0062】
次に、前記第1実施形態の圧電アクチュエータ20の表面における多数のコモン用接合端子90及び個別用接合端子91にそれぞれ電気的に接合するための第1実施形態のフレキシブルフラットケーブル40におけるコモン用の接合電極部77、個別用の接合電極部78及びこれらの各接合電極部77、78と外部素子に接続するための配線79の配置等の構成について、図9(a)、図9(b)及び図10を参照しながら説明する。
【0063】
フレキシブルフラットケーブル40は、トップシート35の上面に重ねられ、ノズル列と直交する方向(X方向)に外方へ突出して配置される(図1参照)。フレキシブルフラットケーブル40は、電気絶縁性を有し、可撓性の合成樹脂材(例えば、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂)からなる帯状のベース材100の片面に銅箔からなるコモン用の接合電極部77、個別用の接合電極部78、微細な配線79がフォトレジスト法等により形成され、これらの表面を電気絶縁性を有し、可撓性の合成樹脂材(例えば、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂)からなるカバーレイ101にて被覆させたものであり、配線79の他端はベース材100に搭載された駆動用の集積回路102に電気的に接合されており、フレキシブルフラットケーブル40の長手方向の他端の複数の端子105と集積回路102とが接続されている。なお、島状の個別用の接合電極部78に相当する箇所はトップシート35における島状の接合端子91の外部電極95とそれぞれ対面する箇所であって、その対面するベース材100の箇所に孔(開口部)を開けて、その孔(開口部)部位に半田合金からなるバンプ電極103を固着している(図9(b)参照)。同様に、帯状のコモン用の接合電極部77(後述する77−1及び77−2)のうち、トップシート35における島状の接合端子90の外部電極94とそれぞれ対面する箇所に孔(開口部)を開けて、その孔(開口部)部位にバンプ電極103を固着している。
【0064】
フレキシブルフラットケーブル40において、図9(a)に示すように、コモン接合電極部77は、第2の方向(X方向、アクチュエータの短辺方向)に沿って延びる対の側縁に沿って形成された帯状の2本の第1コモン接合電極部77−1を少なくとも有する。実施形態では、第1の方向(Y方向、アクチュエータの長辺方向)に沿って延びる側縁に沿って形成された帯状の1本の第2コモン接合電極部77−2を有し、さらに、第2コモン接合電極部77−2の両端が各第1コモン接合電極部77−1の先端部に電気的に接続されている。2本の第1コモン接合電極部77−1の他端部は、フレキシブルフラットケーブル40の長手方向の他端の接続端子104に電気的に接続されている。
【0065】
他方、個別接合電極部78は、第1圧力室列23−1,第2圧力室列23−2,第3圧力室列23−3,第4圧力室列23−4,第5圧力室列23−5ひいてはこれに対応する列状の外部電極95に対向するように、第1の方向(Y方向)に延びて千鳥状に配置されている。図9(a)において、第1圧力室列23−1に対応する個別接合電極部の群を第1群78−1で示し、第2圧力室列23−2に対応するものを第2群78−2、第3圧力室列23−3に対応するものを第3群78−3、第4圧力室列23−4に対応するものを第4群78−4、第5圧力室列23−5に対応するものを第5群78−5で示す。
【0066】
そして、全ての列の各個別接合電極部78に接続する配線79は、第2の方向(X方向)に沿って延びるような配線パターンにて形成されている。そして、配線79の中途部は隣接する個別接合電極部78の間を通過するように適宜Y方向に屈曲形成されている(図10参照)。
【0067】
駆動用の集積回路102は、外部機器(記録装置本体側の制御基板)からシリアル転送されてくる記録データを、各ノズルに対応するパラレルデータに変換し、かつ記録データに対応した所定電圧の波形信号を生成して、各配線79に出力するものである。集積回路102とアクチュエータ12との間の接続は、ノズル数に対応した配線79を上記のように高密度に形成する必要があるが、集積回路102よりも制御基板側では、記録データをシリアル転送するので、低密度な配線パターンでよい。
【0068】
半田合金製のバンプ電極103を接合するときは当該バンプ電極103をコモン用接合端子90の外部電極94及び個別用接合端子91の外部電極95にそれぞれ重ねて加熱押圧して接合する。その場合、図11(b)に示すように、バンプ電極103の溶融した半田合金は、外部電極95の上面及び側面を覆い、且つ表面電極93における広幅部93bの表面を周縁近傍の箇所まで覆う。そして、銀−パラジュウム系の導電ペーストからなる広幅部93b(表面電極93)の表面は溶融した半田合金との濡れ性が大きい一方、銀−ガラスフリット系導電ペーストからなる外部電極95と半田合金とは共晶結合して接合強度は高い。
【0069】
図11(a)及び図11(b)に示すように、外部電極95の側縁(周縁)から表面電極93の広幅部93bの側縁(周縁)までの寸法W5が大きいと、外部電極95の側縁と広幅部93bの表面との間の隅肉部(フィレット)103a(図11(b)参照)の肉厚さも厚くすることができる。その結果、温度変化(変動)の大きいもと(使用状態等)での繰り返し使用により、フレキシブルフラットケーブル40が大きく伸縮した場合、バンプ電極103の間隔が伸縮し、これに接合されている外部電極95との間の隅肉部(フィレット)103aに大きい応力集中が作用しても、厚みの厚い隅肉部(フィレット)103aであれば、当該隅肉部103aの断面の半径を大きくでき、材料力学でいう圧力集中係数(形状係数)を小さくでき、応力集中の悪影響を緩和させることができる。従って、熱衝撃を受けた場合や繰り返し応力(疲労)を受けても、前記隅肉部103aに亀裂が発生難いから電気的断線事故も発生しないのである。
【0070】
なお、前記応力集中は、フレキシブルフラットケーブル40の幅方向(第1の方向、Y方向)の収縮時に大きくなるので、これに耐久性を持たせるためには、各島状の外部電極95におけるY方向と直交するX方向に延びる側縁とそれに対応する広幅部93bの表面との間の隅肉部103aの肉厚を大きくする必要である。そのためには、広幅部93bのX方向の幅寸法W3に対する外部電極95の幅寸法W4を可及的に小さくすることで、隅肉部103aが形成される土台(領域)となる広幅部93bの幅寸法W5を大きくすることが望ましいのである。
【0071】
個別用の接合端子91ひいては表面電極93及び外部電極95を、キャビティユニット10における圧力室23の配列の間、即ち隔壁24上に相当する箇所に配置すれば、フレキシブルフラットケーブル40のバンフ電極103を外部電極95と対面させて押圧するとき、隔壁24にて押圧力を支持でき、空洞である圧力室23の変形を防止できるという効果を奏する。
【0072】
また、互いに隣接する個別電極用の外部電極95及びこれに対応するバンプ電極103(個別用接合電極部78)は、平面視で、千鳥状に配置されているから、当該隣接する外部電極95同士(バンプ電極103同士)の間隔を広く設定することができ、この広い隙間に複数本の配線79を互いの間隔を離して通過させることができる。従って、配線79間の相互インダクタンスも小さくできる。なお、ダミー部96と配線79とが平面視で重なっても、当該配線79はカバーレイ101にて被覆されて、電気的に絶縁されているから、ダミー部96と配線79とが電気的に短絡することがない。また、各外部電極95の面積を適当に大きくすることができるから、フレキシブルフラットケーブル40のバンフ電極103との重ね位置が多少ずれても、電気的接続に悪影響を及ぼさない。外部電極95とダミー部96とは同じ導電性ペーストであるので、1つの工程で同時に形成することができる。
【0073】
前記第1実施形態では、ノズルの列は5列ひいては個別用の接合端子91、個別接合電極78が千鳥配列で10列であったが、図12〜図14に示すのは、ノズル列が4列であり、従って、圧電アクチュエータ12のトップシート35の表面に個別用の接合端子91が千鳥状且つ島状で4列に形成されたものを示す。この実施形態では、圧電アクチュエータ12を構成するシートの最下層から数えて第1層、第3層、第5層の圧電シート34の表面(上面)にはコモン電極37(37a、37b)が形成され、第3層、第5層の圧電シート34の表面(上面)には、ダミー個別電極38が島状且つ千鳥状に形成されている。他方、第2層、第4層、第6層の圧電シート33の表面(上面)には、個別電極36がY方向に1列状で、且つX方向に4列配置で千鳥状に配列されており、また、各圧電シート33の表面(上面)の側縁を囲むように、ダミーコモン電極43が帯状に形成された点は第1実施形態とほぼ同じである。
【0074】
第7層及び第8層は拘束層であって、各圧力室23に対する活性部の変位が大きくなるように、換言すると最上層であるトップシート35の方向への変位を小さくするためである。そして、第7層のシート50の表面(上面)には、島状且つ千鳥状のダミー個別電極38及び帯状のダミーコモン電極43が形成されている。第8層のシート51の表面には、最上層(第9層)のトップシート35の表面のコモン用接合端子90、個別用接合端子91へのそれぞれの電気的接続のための帯状の連結用パターン54及び島状且つ千鳥状の接続用パターン53が形成されている。これらのパターンは、第3層及び第5層の圧電シートと全く同じである。第7層のシート50、第8層のシート51及びトップシート35は圧電シート33,34と同じ材料である。このようなシートを積層・プレスした後焼成すると、シート表面の導電体パターン部分の収縮率が高いため、導電体パターンの面積がシートの積層方向の中心部に対して積層の下層側と上層側とで大きく相違するときには、導電性パターンの面積が大きい側(コモン電極が位置するシート側)で凹となるように湾曲してしまう。そこで、前記第8層の導電体パターンの面積を大きくするようにして、積層の下層側と上層側とで導電体パターンの面積をバランス良く配置し、湾曲変形を防止するのである。しかも、第8層の導電体パターンを第3層及び第5層の導電体パターンと全く同じにすることで部品の共通化を図っている。
【0075】
なお、第1層以外の上層のシートにスルーホールを設けそれに導電性ペーストを充填した内部導通電極42、44により積層方向にコモン電極37、ダミーコモン電極43及び接合端子90を電気的に接続すること、個別電極36、ダミー個別電極38及び接合端子91を接続することは第1実施形態と同じである。
【0076】
ところで、第2実施形態におけるトップシート35の個別用の接合端子91も、第1実施形態とほぼ同じく、トップシート35の表面に対して直交するように板厚を貫通して形成される各スルーホール41の位置ひいては内部導通電極44に接続させる各接合端子91における表面電極93の位置も、各圧力室23の配列に対応させて同じく半ピッチずつずれるような千鳥状であって、且つ相隣接する圧力室23の列の相対向する部位に対応するように接近させて配置され、且つ各列の前記第1の方向に相隣接する圧力室23の間に相当する部位に配置されている。なお、表面電極93全体としては、第2の方向(X方向)に沿って延びる方向と平行状に延びるように平面視ほぼ矩形状に形成され、且つ各列の前記第1の方向に相隣接する圧力室23の間に相当する部位(隔壁24の上方)に配置されている(図13参照)。
【0077】
そして、第2実施形態においては、図14に示すように、スルーホール41の上端の開口縁ひいては内部導通電極44を平面視で見るとき、それぞれの圧力室23の列に対応して一直線上に並んでいる。この各スルーホール41の上端の開口縁を覆い、ひいては内部導通電極44との電気的接続を確実にするための外部導電部として、外部電極95またはダミー部96が設けられている。しかも、各外部電極95及びダミー部96は、XY両方向の幅寸法が同一であり、表面電極93のXY両方向の領域内に形成されている。
【0078】
第2実施形態では、図14に示すように、Y方向に並ぶ接合端子91の1つおきに、表面電極93のX方向の端部にて内部導通電極44と重なるようにダミー部96が設けられ、且つ、それら表面電極93のX方向の他端部に外部電極95が設けられており、このように、1つの表面電極93上にダミー部96と外部電極95とが設けられたものをY方向に挟んで1つおきの位置の接合端子91には、内部導通電極44と重なるように外部電極95のみが設けられている。換言すると、ここでは、ダミー部96と外部電極95とが兼用されていることになる。いずれにしても、平面視において、XY両方向に千鳥配列されて隣接する接合端子91上での外部電極95も千鳥状に配列されているから、これら隣接する外部電極95の間の距離を大きく採ることができ、第1実施形態と同様にフレキシブルフラットケーブル40の表面に露出している個別接合電極部78(バンプ部103)と重ねて電気的に接続した場合に、配線79の配置間隔を広くすることができるなど、第1実施形態と同じ作用・効果を奏することができる。
【0079】
これらダミー部96、外部電極94(95)は平面視矩形状、小判型または楕円状等の適宜形状を採用し得る。本発明は3列以上の個別用の接合端子91に対して適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1実施形態における圧電式インクジェット記録ヘッドのキャビティユニットと圧電アクチュエータと、フラットケーブルとを分離して示す斜視図である。
【図2】キャビティユニットの分解斜視図である。
【図3】キャビティユニットの一部分解斜視図である。
【図4】第1実施形態の圧電アクチュエータの一部切欠き分解斜視図である。
【図5】圧電シートにおける個別電極とダミー電極とそれらの内部導通電極の位置を示す部分拡大断面図である。
【図6】トップシートの表面の接合端子等の配置を示す一部切欠き斜視図である。
【図7】(a)は圧力室と個別電極と接続用パターンと個別用の接合端子等の配置を示す部分拡大平面図、(b)は個別用の接合端子における表面電極と外部電極等の配置関係を示す部分拡大平面図である。
【図8】(a)はトップシートにおけるスルーホールの開口上端が開放された状態を示す断面図、(b)は外部導電部としての外部電極またはダミー部で覆った状態を示す断面図である。
【図9】(a)はフレキシブルフラットケーブルにおけるコモン接合電極、個別接合電極、配線、集積回路等の配置関係を示す概略平面図、(b)は側面図である。
【図10】コモン接合電極、個別接合電極、配線を示す一部切欠き拡大図である。
【図11】(a)は個別用の接合端子における表面電極と外部電極と配置関係を示す部分拡大平面図、(b)は図11(a)のXIb −XIb 線矢視で示すバンプ電極との接合状態を示す拡大断面図である。
【図12】第2実施形態の圧電アクチュエータの一部切欠き分解斜視図である。
【図13】圧力室と個別電極と接続用パターンと個別用の接合端子等の配置を示す部分拡大平面図である。
【図14】個別用の接合端子における表面電極と外部電極等の配置関係を示す部分拡大平面図である。
【符号の説明】
【0081】
1 インクジェット記録ヘッド
11 キャビティユニット
11a ノズル
12 圧電アクチュエータ
22 ベースプレート
23 圧力室
33,34 圧電シート
35 トップシート
36 個別電極
37 コモン電極
40 フラットケーブル
50、51 拘束層としてのシート
53 接続用パターン
54 連絡用パターン
77 コモン用の接合電極部
78 個別用の接合電極部
79 配線
90 コモン用接合端子
91 個別用接合端子
92、93 表面電極
94、95 外部導電部としての外部電極
96 外部導電部としてのダミー部
102 集積回路
103 バンプ電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に沿って列状に配置された複数個のノズルからなる複数のノズル列と、前記各ノズルに対応する圧力室の複数の列を有するキャビティユニットと、前記各圧力室内のインクに選択的に吐出エネルギーを与える複数個のエネルギー発生手段を有するアクチュエータとを備え、圧力室のそれぞれに選択的に駆動電圧を印加するため、アクチュエータの表面に島状に配置された複数の接合端子を有するインクジェット記録ヘッドと、このインクジェット記録ヘッドを制御するための制御信号を発信するフレキシブルフラットケーブルとを接続するためのインクジェット記録ヘッドの接合構造であって、
前記アクチュエータにおける前記キャビティユニットから最も離れた側のトップシートには、前記フレキシブルフラットケーブルにおける接合電極と重ね接合させる前記島状の接合端子を形成し、
前記トップシートの板厚方向に貫通するスルーホールに充填した導電材を前記接合端子における膜厚さの薄い表面電極の部位の一部に連通させ、この各スルーホールに充填した導電材にて前記表面電極と前記アクチュエータにおける個別電極との電気的な接続が行えるように構成し、
前記表面電極の表面には、当該部位に開口するスルーホールの端部を覆い塞ぐとともに当該開口の端部に密着するように、膜厚の厚い外部導電部を設けたことを特徴とするインクジェット記録ヘッドの接合構造。
【請求項2】
前記外部導電部は、前記フレキシブルフラットケーブルにおける接合電極と重ね接合させる外部電極か、前記接合電極とは非接合であるダミー部かのいずれかであり、
前記外部導電部がダミー部である表面電極は、当該ダミー部から適宜隔てられた部位に前記外部電極が設けられることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドの接合構造。
【請求項3】
前記隣接する列同士の圧力室が前記第1の方向に互いに半ピッチずつずれるような千鳥状に配置され、
前記各接合端子における表面電極は、前記各圧力室の配列に対応させて同じく半ピッチずつずれるような千鳥状であって、且つ相隣接する圧力室の列の相対向する部位に対応するように接近させて配置され、
前記各接合端子における表面電極は、前記各圧力室が前記第1の方向と直交する第2の方向に沿って延びる方向と平行状に延びるように形成され、且つ各列の前記第1の方向に相隣接する圧力室の間に相当する部位に配置され、
前記各外部電極及びダミー部は前記第1の方向の幅寸法が、前記表面電極の前記第1の方向の領域内に収まる幅寸法に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録ヘッドの接合構造。
【請求項4】
前記アクチュエータは、前記各圧力室ごとに対応する個別電極を有する圧電シートと、複数の前記圧力室に共通するコモン電極を有する圧電シートとが交互に積層され、
前記コモン電極を有する各圧電シートには、その積層方向に貫通するスルーホールに充填した導電材にて、前記積層方向に対応する個別電極同士を接続させるためのダミー個別電極が島状に形成されており、
前記個別電極を有する各圧電シートには、その積層方向に貫通するスルーホールに充填した導電材にて、前記積層方向に対応するコモン電極同士を接続させるためのダミーコモン電極が形成されており、
前記トップシートと圧電シートとの間には、少なくとも1枚の拘束シートが介挿され、 この拘束シートは、前記トップシートのスルーホールに充填した導電材にて、前記表面電極と電気的に接続されるとともに、その積層方向に貫通するスルーホールに充填した導電材にて前記個別電極と接続されるダミー個別電極と、前記コモン電極と同じパターン形状である導電パターンとを有し、
前記拘束シートのスルーホールの位置は、前記トップシートのスルーホールの位置から偏倚していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドの接合構造。
【請求項5】
前記フレキシブルフラットケーブルは、前記第1の方向ととほぼ直交する第2の方向に延び、
前記フレキシブルフラットケーブルの表面には、前記トップシートにおける外部電極に対応する位置に個別表面電極が露出しており、該各個別表面電極に接続する配線は前記フレキシブルフラットケーブルの表面に対して非露出状態で配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドの接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−15539(P2006−15539A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193885(P2004−193885)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】