インクジェット記録ヘッドの製造方法
【課題】 インクジェット記録ヘッドの製造方法において、有機膜をインク遮断層及びインク流路形成膜の密着層として使用しているが、一般に有機膜はエッチング分布が良くない。インクジェット記録ヘッドでは、パターニング分布を少なくとも15%以内に押さえなければ、パターニング幅が規格から外れてしまうことになる。そこで、CDE装置の大幅な改造を行うことなく、前記枚葉式のCDE装置に近いパターニング分布を得ること。
【解決手段】 処理チャンバー内のラジカル化されたエッチングガスを、均一に被処理物に届くようにエッチングガスのノズル部及び、エッチングガスの気流が均一に流れるように制御する制御板を設ける構成とする。
【解決手段】 処理チャンバー内のラジカル化されたエッチングガスを、均一に被処理物に届くようにエッチングガスのノズル部及び、エッチングガスの気流が均一に流れるように制御する制御板を設ける構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドロップ・オン・デマンド方式インクジェット記録ヘッドの製造工程でインク流路の密着層及びインク遮断層を、有機レジスト膜をパターニングマスクとして、ドライエッチング(CDE)方法でパターニングする場合の分布向上に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ケミカルドライエッチング(以下CDE)方法は、主に半導体の製造工程で被処理物に微細加工を行う際に塗布したパターニングマスクとして使用した有機レジスト膜を、O2等と化学反応させることにより除去する技術である。
【0003】
CDEの装置には主にバッチ式と枚葉式があり、それぞれ長所短所がある。バッチ式は装置としての価格が安く、一度に数枚の処理を行うことが出来、量産性が高い。しかし、その反面エッチング分布が悪く、速く除去される部分と遅く除去される部分とで差が出来るため、速く除去された部分の下地にダメージを与えるおそれが高い。その一方、枚葉式の装置は被処理物と平行にヘッドが有るため、エッチング分布に優れる。しかし、処理が一枚毎のためバッチ式に比較して量産性が低い。
【0004】
インクジェット記録ヘッドの製造工程では、前記半導体の製造工程のように、有機レジスト膜を除去するためのみ行っているのではなく、有機レジスト膜をパターニングマスクとして、ポリアミド系の膜をパターニングしている。ポリアミド系の膜は、インクジェット記録ヘッドのインクを吐出させるための駆動回路パターンが下地にあるが、これらの駆動回路パターンとインクを遮断するインク遮断層として使用しているほか、インク流路形成膜と基板との密着層としての役割もある。そのため、数μm単位のパターニングを行わなければならない。
【0005】
図9の模式図は、一般的なCDE装置の模式図を示したものである。バッチ式と枚葉式の違いは、100の処理チャンバーがバッチ式か枚葉式かの違いのみである。CDE装置は真空装置で、ガス供給系及びチャンバー系はすべて真空ポンプで排気されている。
【0006】
まず、2.45GHzのマイクロ波を発生させ200のプラズマ発生部へ送り、プラズマ発生部には石英管が装着されており、その石英管にはO2、CF4の混合ガスが供給されている。マイクロ波に依りプラズマが発生し、O2、CF4の今後ガスがプラズマにより反応性の高いラジカルガスになる。これを202のガス供給管により、100の処理チャンバーに送られる。
【0007】
一般的には、CDEでは有機レジスト等の除去エッチングのみで微細なパターニング行わないが、インクジェット記録ヘッドでは、半導体ほどの微細なパターニングは行わないので主にCDE装置を使用してパターニングを行っている。
【0008】
図7は従来例のCDE装置処理チャンバーの概略図である。前記ラジカル化されたエッチングガスがガス供給管に依り、処理チャンバーに供給され、4の分流管を経て12のノズルから処理チャンバー内へ噴射される。処理チャンバー内は、101のロードチャンバーの13のエレベーターステージ上にセットされた11のウエハーカセットから、9のベルト搬送に依り6の処理ウエハーが搬送されて100の処理チャンバー内へセットされている。処理ウエハーの枚数は6インチウエハーの場合一度に4枚まで処理出来る。被処理ウエハーのセットされる間隔は任意の間隔を設定できる。
【0009】
被処理ウエハーには、インク遮断層及び、密着層としてポリアミド系の膜が塗布され硬化処理してある。次に被処理ウエハーに有機レジスト膜がスピンコートにより塗布され、露光及び現像が行われパターニングされる。ラジカル化されたエッチングガスをノズルから噴射し、ポリアミド系の膜及び、有機レジスト膜と反応して、蒸発し図7の8排気管によりチャンバー外へ排気されるパターニングされる。尚、エッチング処理は、ポリアミド系膜及び有機レジスト膜ともエッチングレートはほぼ同じで、その点を考慮して、パターニングマスクと使用できるように、有機レジスト膜はポリアミド系膜より厚めに塗布してある。次に、処理が終了するとベルト搬送にて、アンロードチャンバーへ送られ11のウエハーカセットへ収納される。
【0010】
図8は、図7の従来のCDE装置でO2を720SCCM、CF4を180SCCM流し、放電出力を700W、処理チャンバー圧力を50Paに設定し、処理時間を60秒としてエッチングレートを測定しグラフに示したものである。グラフは処理ウエハーのx方向7点及び、y方向7点を測定した。このグラフから、x方向の各ウエハー外側がエッチングレートが非常に高く、ウエハー中心からCDE装置手前側及び奥側のy方向のエッチングレートが遅くなっていることがわかる。このデータからエッチングレートの平均値は520.3nm/min、最大エッチング値から最小エッチング値をひいた値は、260.6nm/min、分布、23.5%と非常に悪い。
【0011】
又、別の従来例としては、特許文献1をあげることが出来る。
【特許文献1】特開平08-045908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図8のエッチングレート分布をみると、各処理ウエハーのx方向外側にいくほど急激にエッチングレートが高くなる。図12は、エッチングガスの流れを矢印で示したものである。図7の従来例の処理チャンバー内の12のノズルは、少なくともx方向線上にすべてにエッチングガスを噴射する。処理ウエハー面上に届いたエッチングガスは処理ウエハ外側に向かって流れ、処理ウエハー間にもノズルから噴射されたエッチングガスが、直接届き、つまり、処理ウエハー面上に届いたエッチングガスと、ウエハー間に届いているエッチングガスが合流して、処理ウエハー間のエッチングガス密度が高くなり、処理ウエハーx方向外側のエッチングレートが急激に高くなる。
【0013】
このような状態で、実際にポリアミド系膜上に有機レジストでパターニングマスクを形成し、CDE装置でパターニングを行うと、製造上のパターニング幅の規格から外れてしまう。
【0014】
インクジェット記録ヘッドでは、パターニング分布を少なくとも15%以内に押さえなければ、パターニング幅が規格から外れてしまうことになる。そこで、CDE装置の大幅な改造を行うことなく、前記枚葉式のCDE装置に近いパターニング分布を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために本発明では、インクジェット記録ヘッドの製造方法であってバッチ式ケミカルドライエッチング(CDE)方式において、処理チャンバー内に被処理物個々にエッチングガスノズルを設けて製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上、述べたようにラジカル化したエッチングガスを、被処理物上でのエッチングガスの密度が均一になるようにし、更にその気流を制御することでエッチング分布が向上し歩留まりが上がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の詳細を実施例の記述に従って説明する。
【0018】
CDE装置のエッチングチャンバー内に、ラジカル化されたガスが被処理物へ均一に届くように、ガス噴射ノズルの構造の変更と、エッチングガスが均一に流れる気流の制御を行えるように構造物を設ける。
【0019】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明の第1の実施例を示した、CDE装置処理チャンバーの概略図である。3のエッチングガス導入口から供給されたエッチングガスを、4の分流管から1のエッチングガスフードに供給する。1のエッチングガスフードには、2のシャワーノズルが具備されている。ノズルは、図2のように円板形であり、直径2mmの孔が多数開いている。尚、エッチングガスフードは、図では円柱状に円錐状のものを載せているが、円錐状のみでそれにシャワーノズルを具備しても良い。本実施例では、図2のエッチングシャワーノズル(a)を具備して行った。他に(b)のように、孔の数を少なくしたり、孔の径を大きくしたりしても良い。また、(c)のように孔を同心円上に配置する方法もある。更に、排気口が処理チャンバー下部にあるため、エッチングガスが下側に流れる。そのため、処理ウエハー外周エッジでのエッチングガス気流が速くなり、外周部でのエッチングレートが高くなることが予想されるため、気流を制御するための図3の気流制御板を取り付けた。気流制御板は、処理ウエハー搬送ベルトを回転させるためのプーリーを固定するフレームに取り付けた。気流制御板の大きさは、処理ウエハー外周のエッジ部の気流を遅くする必要があるため、処理ウエハーより大きくする必要がある。本実施例では、処理ウエハーが6インチウエハーであるため、約1.5倍の225mm幅のテフロン(登録商標)板をフレームに固定した。この幅は、処理ウエハーに依って変更しても良い。尚、本発明で装着又は具備された物はすべて材質がテフロン(登録商標)で出来ている。
【0021】
パターニング条件は、従来例と同じ、O2を720SCCM、CF4を180SCCM流し、放電出力を700W、処理チャンバー圧力を50Paに設定し、処理時間を60秒で行った。
【0022】
その結果を、図4のグラフに示す。グラフからエッチングレート分布に大幅な改善が見られたことがわかる。まず、処理ウエハーx方向の外側のエッチングレートが下がり、また、ウエハ中心y方向のエッチングレート分布が上昇した。表1のように最大エッチングレートから最小エッチングレートを引いた値は、260.6nmから148.6と大幅に下がりエッチングレート分布も、23.5%から14.4%に大幅に改善された。平均エッチングレートは、520.3nm/minから505.1nm/minと下がったが、これは処理ウエハーx方向外側のエッチングレートが下がったためと考えられる。
【0023】
図10は、エッチングガスの流れを矢印で示したものである。図7の従来例の処理チャンバー内の12のノズルの場合と違い、被処理ウエハー上のみにノズルが存在し、被処理ウエハー間には直接エッチングガスが届かない。従って、従来例のようにエッチングガスの密度が、被処理ウエハー間で高くなることがない。
【0024】
【表1】
【実施例2】
【0025】
図5は、本発明の第1の実施例を示した、CDE装置処理チャンバーの概略図である。3のエッチングガス導入口から供給されたエッチングガスを、4の分流管から1のエッチングガスフードに供給する。1のエッチングガスフードには、2のシャワーノズルが具備されている。ノズルは、図2のように円板形であり、直径2mmの孔が多数開いている。尚、エッチングガスフードは、図では円柱状に円錐状のものを載せているが、円錐状のみでそれにシャワーノズルを具備しても良い。本実施例では、図2のエッチングシャワー(a)を具備して行った。他に(b)のように孔の数を少なくしたり、孔の径を大きくしたりしても良い。また、(c)のように孔を同心円上に配置する方法もある。尚、本発明で装着又は具備された物はすべて材質がテフロン(登録商標)で出来ている。
【0026】
パターンニング条件は、従来例と同じ、O2を720SCCM、CF4を180SCCM流し、放電出力を700W、処理チャンバー圧力を50Paに設定し、処理時間を60秒で行った。以上、気流制御板を除いたのみで、その他はエッチング条件等、実施例1と全く同じである。
【0027】
その結果を、図6のグラフに示す。グラフからエッチングレート分布に大幅な改善が見られたことがわかる。まず、処理ウエハーx方向の外側のエッチングレートが下がり、また、ウエハ中心y方向のエッチングレート分布が上昇した。表1のように最大エッチングレートから最小エッチングレートを引いた値は、260.6nmから157.2と大幅に下がりエッチングレート分布も、23.5%から15.0%に大幅に改善された。平均エッチングレートは、520.3nm/minから502.2nm/minと下がったが、これは処理ウエハーx方向外側のエッチングレートが下がったためと考えられる。
【0028】
図11は、エッチングガスの流れを矢印で示したものである。図7の従来例の処理チャンバー内の12のノズルの場合と違い、被処理ウエハー上のみにノズルが存在し、被処理ウエハー間には直接エッチングガスが届かない。従って、従来例のようにエッチングガスの密度が、被処理ウエハー間で高くなることがない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施例を示した、CDE装置チャンバーの概略図
【図2】エッチングガスシャワーノズル部
【図3】気流制御板
【図4】実施例1のエッチング分布
【図5】本発明の第2の実施例を示した、CDE装置チャンバーの概略図
【図6】実施例2のエッチング分布
【図7】従来例を示した、CDE装置チャンバーの概略図
【図8】従来例のエッチング分布
【図9】CDE装置模式図
【図10】図1 A部の拡大概略図
【図11】図5 B部の拡大概略図
【図12】図7のC部の拡大概略図
【符号の説明】
【0030】
1 エッチングガスフード
2 ノズル
3 ガス導入口
4 分流管
5 ラジカル化されたエッチングガス
6 ウエハー
7 気流制御板
8 排気口
9 搬送ベルト
10 プーリー
11 ウエハーカセット
12 従来ノズル
13 エレベーター
100 処理チャンバー
101 ロードチャンバー
102 アンロードチャンバー
200 プラズマ発生部
201 石英管
202 ガス供給管
203 エッチングガス供給系
A 実施例1のA部拡大図示
B 実施例2のB部拡大図示
C 従来例のC部拡大図示
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドロップ・オン・デマンド方式インクジェット記録ヘッドの製造工程でインク流路の密着層及びインク遮断層を、有機レジスト膜をパターニングマスクとして、ドライエッチング(CDE)方法でパターニングする場合の分布向上に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ケミカルドライエッチング(以下CDE)方法は、主に半導体の製造工程で被処理物に微細加工を行う際に塗布したパターニングマスクとして使用した有機レジスト膜を、O2等と化学反応させることにより除去する技術である。
【0003】
CDEの装置には主にバッチ式と枚葉式があり、それぞれ長所短所がある。バッチ式は装置としての価格が安く、一度に数枚の処理を行うことが出来、量産性が高い。しかし、その反面エッチング分布が悪く、速く除去される部分と遅く除去される部分とで差が出来るため、速く除去された部分の下地にダメージを与えるおそれが高い。その一方、枚葉式の装置は被処理物と平行にヘッドが有るため、エッチング分布に優れる。しかし、処理が一枚毎のためバッチ式に比較して量産性が低い。
【0004】
インクジェット記録ヘッドの製造工程では、前記半導体の製造工程のように、有機レジスト膜を除去するためのみ行っているのではなく、有機レジスト膜をパターニングマスクとして、ポリアミド系の膜をパターニングしている。ポリアミド系の膜は、インクジェット記録ヘッドのインクを吐出させるための駆動回路パターンが下地にあるが、これらの駆動回路パターンとインクを遮断するインク遮断層として使用しているほか、インク流路形成膜と基板との密着層としての役割もある。そのため、数μm単位のパターニングを行わなければならない。
【0005】
図9の模式図は、一般的なCDE装置の模式図を示したものである。バッチ式と枚葉式の違いは、100の処理チャンバーがバッチ式か枚葉式かの違いのみである。CDE装置は真空装置で、ガス供給系及びチャンバー系はすべて真空ポンプで排気されている。
【0006】
まず、2.45GHzのマイクロ波を発生させ200のプラズマ発生部へ送り、プラズマ発生部には石英管が装着されており、その石英管にはO2、CF4の混合ガスが供給されている。マイクロ波に依りプラズマが発生し、O2、CF4の今後ガスがプラズマにより反応性の高いラジカルガスになる。これを202のガス供給管により、100の処理チャンバーに送られる。
【0007】
一般的には、CDEでは有機レジスト等の除去エッチングのみで微細なパターニング行わないが、インクジェット記録ヘッドでは、半導体ほどの微細なパターニングは行わないので主にCDE装置を使用してパターニングを行っている。
【0008】
図7は従来例のCDE装置処理チャンバーの概略図である。前記ラジカル化されたエッチングガスがガス供給管に依り、処理チャンバーに供給され、4の分流管を経て12のノズルから処理チャンバー内へ噴射される。処理チャンバー内は、101のロードチャンバーの13のエレベーターステージ上にセットされた11のウエハーカセットから、9のベルト搬送に依り6の処理ウエハーが搬送されて100の処理チャンバー内へセットされている。処理ウエハーの枚数は6インチウエハーの場合一度に4枚まで処理出来る。被処理ウエハーのセットされる間隔は任意の間隔を設定できる。
【0009】
被処理ウエハーには、インク遮断層及び、密着層としてポリアミド系の膜が塗布され硬化処理してある。次に被処理ウエハーに有機レジスト膜がスピンコートにより塗布され、露光及び現像が行われパターニングされる。ラジカル化されたエッチングガスをノズルから噴射し、ポリアミド系の膜及び、有機レジスト膜と反応して、蒸発し図7の8排気管によりチャンバー外へ排気されるパターニングされる。尚、エッチング処理は、ポリアミド系膜及び有機レジスト膜ともエッチングレートはほぼ同じで、その点を考慮して、パターニングマスクと使用できるように、有機レジスト膜はポリアミド系膜より厚めに塗布してある。次に、処理が終了するとベルト搬送にて、アンロードチャンバーへ送られ11のウエハーカセットへ収納される。
【0010】
図8は、図7の従来のCDE装置でO2を720SCCM、CF4を180SCCM流し、放電出力を700W、処理チャンバー圧力を50Paに設定し、処理時間を60秒としてエッチングレートを測定しグラフに示したものである。グラフは処理ウエハーのx方向7点及び、y方向7点を測定した。このグラフから、x方向の各ウエハー外側がエッチングレートが非常に高く、ウエハー中心からCDE装置手前側及び奥側のy方向のエッチングレートが遅くなっていることがわかる。このデータからエッチングレートの平均値は520.3nm/min、最大エッチング値から最小エッチング値をひいた値は、260.6nm/min、分布、23.5%と非常に悪い。
【0011】
又、別の従来例としては、特許文献1をあげることが出来る。
【特許文献1】特開平08-045908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図8のエッチングレート分布をみると、各処理ウエハーのx方向外側にいくほど急激にエッチングレートが高くなる。図12は、エッチングガスの流れを矢印で示したものである。図7の従来例の処理チャンバー内の12のノズルは、少なくともx方向線上にすべてにエッチングガスを噴射する。処理ウエハー面上に届いたエッチングガスは処理ウエハ外側に向かって流れ、処理ウエハー間にもノズルから噴射されたエッチングガスが、直接届き、つまり、処理ウエハー面上に届いたエッチングガスと、ウエハー間に届いているエッチングガスが合流して、処理ウエハー間のエッチングガス密度が高くなり、処理ウエハーx方向外側のエッチングレートが急激に高くなる。
【0013】
このような状態で、実際にポリアミド系膜上に有機レジストでパターニングマスクを形成し、CDE装置でパターニングを行うと、製造上のパターニング幅の規格から外れてしまう。
【0014】
インクジェット記録ヘッドでは、パターニング分布を少なくとも15%以内に押さえなければ、パターニング幅が規格から外れてしまうことになる。そこで、CDE装置の大幅な改造を行うことなく、前記枚葉式のCDE装置に近いパターニング分布を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために本発明では、インクジェット記録ヘッドの製造方法であってバッチ式ケミカルドライエッチング(CDE)方式において、処理チャンバー内に被処理物個々にエッチングガスノズルを設けて製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上、述べたようにラジカル化したエッチングガスを、被処理物上でのエッチングガスの密度が均一になるようにし、更にその気流を制御することでエッチング分布が向上し歩留まりが上がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の詳細を実施例の記述に従って説明する。
【0018】
CDE装置のエッチングチャンバー内に、ラジカル化されたガスが被処理物へ均一に届くように、ガス噴射ノズルの構造の変更と、エッチングガスが均一に流れる気流の制御を行えるように構造物を設ける。
【0019】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明の第1の実施例を示した、CDE装置処理チャンバーの概略図である。3のエッチングガス導入口から供給されたエッチングガスを、4の分流管から1のエッチングガスフードに供給する。1のエッチングガスフードには、2のシャワーノズルが具備されている。ノズルは、図2のように円板形であり、直径2mmの孔が多数開いている。尚、エッチングガスフードは、図では円柱状に円錐状のものを載せているが、円錐状のみでそれにシャワーノズルを具備しても良い。本実施例では、図2のエッチングシャワーノズル(a)を具備して行った。他に(b)のように、孔の数を少なくしたり、孔の径を大きくしたりしても良い。また、(c)のように孔を同心円上に配置する方法もある。更に、排気口が処理チャンバー下部にあるため、エッチングガスが下側に流れる。そのため、処理ウエハー外周エッジでのエッチングガス気流が速くなり、外周部でのエッチングレートが高くなることが予想されるため、気流を制御するための図3の気流制御板を取り付けた。気流制御板は、処理ウエハー搬送ベルトを回転させるためのプーリーを固定するフレームに取り付けた。気流制御板の大きさは、処理ウエハー外周のエッジ部の気流を遅くする必要があるため、処理ウエハーより大きくする必要がある。本実施例では、処理ウエハーが6インチウエハーであるため、約1.5倍の225mm幅のテフロン(登録商標)板をフレームに固定した。この幅は、処理ウエハーに依って変更しても良い。尚、本発明で装着又は具備された物はすべて材質がテフロン(登録商標)で出来ている。
【0021】
パターニング条件は、従来例と同じ、O2を720SCCM、CF4を180SCCM流し、放電出力を700W、処理チャンバー圧力を50Paに設定し、処理時間を60秒で行った。
【0022】
その結果を、図4のグラフに示す。グラフからエッチングレート分布に大幅な改善が見られたことがわかる。まず、処理ウエハーx方向の外側のエッチングレートが下がり、また、ウエハ中心y方向のエッチングレート分布が上昇した。表1のように最大エッチングレートから最小エッチングレートを引いた値は、260.6nmから148.6と大幅に下がりエッチングレート分布も、23.5%から14.4%に大幅に改善された。平均エッチングレートは、520.3nm/minから505.1nm/minと下がったが、これは処理ウエハーx方向外側のエッチングレートが下がったためと考えられる。
【0023】
図10は、エッチングガスの流れを矢印で示したものである。図7の従来例の処理チャンバー内の12のノズルの場合と違い、被処理ウエハー上のみにノズルが存在し、被処理ウエハー間には直接エッチングガスが届かない。従って、従来例のようにエッチングガスの密度が、被処理ウエハー間で高くなることがない。
【0024】
【表1】
【実施例2】
【0025】
図5は、本発明の第1の実施例を示した、CDE装置処理チャンバーの概略図である。3のエッチングガス導入口から供給されたエッチングガスを、4の分流管から1のエッチングガスフードに供給する。1のエッチングガスフードには、2のシャワーノズルが具備されている。ノズルは、図2のように円板形であり、直径2mmの孔が多数開いている。尚、エッチングガスフードは、図では円柱状に円錐状のものを載せているが、円錐状のみでそれにシャワーノズルを具備しても良い。本実施例では、図2のエッチングシャワー(a)を具備して行った。他に(b)のように孔の数を少なくしたり、孔の径を大きくしたりしても良い。また、(c)のように孔を同心円上に配置する方法もある。尚、本発明で装着又は具備された物はすべて材質がテフロン(登録商標)で出来ている。
【0026】
パターンニング条件は、従来例と同じ、O2を720SCCM、CF4を180SCCM流し、放電出力を700W、処理チャンバー圧力を50Paに設定し、処理時間を60秒で行った。以上、気流制御板を除いたのみで、その他はエッチング条件等、実施例1と全く同じである。
【0027】
その結果を、図6のグラフに示す。グラフからエッチングレート分布に大幅な改善が見られたことがわかる。まず、処理ウエハーx方向の外側のエッチングレートが下がり、また、ウエハ中心y方向のエッチングレート分布が上昇した。表1のように最大エッチングレートから最小エッチングレートを引いた値は、260.6nmから157.2と大幅に下がりエッチングレート分布も、23.5%から15.0%に大幅に改善された。平均エッチングレートは、520.3nm/minから502.2nm/minと下がったが、これは処理ウエハーx方向外側のエッチングレートが下がったためと考えられる。
【0028】
図11は、エッチングガスの流れを矢印で示したものである。図7の従来例の処理チャンバー内の12のノズルの場合と違い、被処理ウエハー上のみにノズルが存在し、被処理ウエハー間には直接エッチングガスが届かない。従って、従来例のようにエッチングガスの密度が、被処理ウエハー間で高くなることがない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施例を示した、CDE装置チャンバーの概略図
【図2】エッチングガスシャワーノズル部
【図3】気流制御板
【図4】実施例1のエッチング分布
【図5】本発明の第2の実施例を示した、CDE装置チャンバーの概略図
【図6】実施例2のエッチング分布
【図7】従来例を示した、CDE装置チャンバーの概略図
【図8】従来例のエッチング分布
【図9】CDE装置模式図
【図10】図1 A部の拡大概略図
【図11】図5 B部の拡大概略図
【図12】図7のC部の拡大概略図
【符号の説明】
【0030】
1 エッチングガスフード
2 ノズル
3 ガス導入口
4 分流管
5 ラジカル化されたエッチングガス
6 ウエハー
7 気流制御板
8 排気口
9 搬送ベルト
10 プーリー
11 ウエハーカセット
12 従来ノズル
13 エレベーター
100 処理チャンバー
101 ロードチャンバー
102 アンロードチャンバー
200 プラズマ発生部
201 石英管
202 ガス供給管
203 エッチングガス供給系
A 実施例1のA部拡大図示
B 実施例2のB部拡大図示
C 従来例のC部拡大図示
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッチ式のケミカルドライエッチング(CDE)方式を用いて、処理チャンバー内に被処理物個々にエッチングガスノズルを設けて製造することを特徴とするインクジェット記録ヘッドの製造方法。
【請求項2】
処理チャンバー内の気流の流れを変える制御板を設けることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
【請求項1】
バッチ式のケミカルドライエッチング(CDE)方式を用いて、処理チャンバー内に被処理物個々にエッチングガスノズルを設けて製造することを特徴とするインクジェット記録ヘッドの製造方法。
【請求項2】
処理チャンバー内の気流の流れを変える制御板を設けることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−245482(P2007−245482A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−71100(P2006−71100)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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