インクジェット記録ヘッドの製造方法
【課題】ベースプレートに反りが発生した場合にも、ベースプレート上の適切な位置に記録素子基板を配置することが可能なインクジェット記録ヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】インクジェット記録ヘッドの製造方法は、長手方向に沿って複数のインク供給口2が配列されたベースプレート1に、複数の記録素子基板を設置する。ベースプレート1上における記録素子基板の位置を決定するため、ベースプレート1に形成された複数のアライメントマーク3a〜3jのうち、少なくとも3つのアライメントマークの位置に基づいて、複数の記録素子基板を設ける位置を決定する。
【解決手段】インクジェット記録ヘッドの製造方法は、長手方向に沿って複数のインク供給口2が配列されたベースプレート1に、複数の記録素子基板を設置する。ベースプレート1上における記録素子基板の位置を決定するため、ベースプレート1に形成された複数のアライメントマーク3a〜3jのうち、少なくとも3つのアライメントマークの位置に基づいて、複数の記録素子基板を設ける位置を決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に搭載可能なインクジェット記録ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、コンピュータに関連する出力機器などとして幅広く利用されている。インクジェット記録装置として、インクジェット記録ヘッドを、紙などの被記録媒体上を走査させながら、インクの吐出を行うことにより被記録媒体に記録を行ういわゆるシリアル方式のものが広く知られている。
【0003】
近年、インクジェット記録装置には、より高速に画像を出力することが要求されている。そのため、インクジェット記録ヘッドは、一度の走査によって、より広い面積の記録を行えることが望ましい。そのためには、インクジェット記録ヘッドの、記録幅を長くすることが有効である。インクジェット記録ヘッドの記録幅とは、インクジェット記録ヘッドの、一度の走査によって記録を行うことができる幅である。記録幅を長くするためには、インクジェット記録ヘッドの走査方向に直交する方向の幅を広くする必要がある。
【0004】
記録幅の長いインクジェット記録ヘッドを、一枚の記録素子基板のみによって形成する場合、記録素子基板を安定して所定の形状に形成することが難しい。そのため、インクジェット記録ヘッドの歩留まりが低下してしまう。
【0005】
これを解決するために、インクジェット記録ヘッドには、複数の記録素子基板を並べて設置することが有効である。この場合、複数の記録素子基板を並べる土台となるベースプレートをインクジェット記録ヘッドの記録幅に合わせた長さに形成すればよい。
【0006】
特許文献1には、複数の記録素子基板をベースプレート上に並べて設置する構成のインクジェット記録ヘッドが開示されている。
【0007】
図13は特許文献1に記載されたインクジェット記録ヘッドの分解斜視図である。このインクジェット記録ヘッドでは、1枚のベースプレートH1200上に、複数の記録素子基板H1100が2列に配列されている。各列における記録素子基板H1100は等ピッチに配置されている。ベースプレートH1200には、記録素子基板H1100を設置する位置に対応して複数のインク供給口H1201が形成されている。
【0008】
図14は記録素子基板H1100の概略構成図であり、図13(a)は斜視図であり、図13(b)は図13(a)のA−A’線に沿った断面図である。記録素子基板H1100では、基板H1108の表面にノズルプレートH1110が設けられている。基板H1008には、厚さ方向に貫通したインク供給口H1101が形成されている。
【0009】
図14に示した記録素子基板H1100は、インク供給口H1101が図13に示したベースプレートH1200に形成されたインク供給口H1201に連通する状態で、ベースプレートH1200に固定されている。
【0010】
図13および図14に記載されたインクジェット記録ヘッドでは、インクがベースプレートH1200のインク供給口H1201から記録素子基板H1100の各インク供給口1101に供給される。そして、記録素子基板H1100の各インク供給口H1100に供給されたインクは、発泡室H1107に送り込まれ、電気熱変換素子H1110が発するエネルギによってノズルH1105から吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−101580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
複数の記録素子基板をベースプレート上に設置する構成のインクジェット記録ヘッドでは、インクジェット記録ヘッドの記録幅を長くする場合、ベースプレートの幅を長くする必要がある。ベースプレートの製造工程には、一般的に、複数の板状体を焼成して一体化する焼成工程が含まれる。ベースプレートは、焼成工程により、長手方向に沿って反りが発生してしまうことがある。
【0013】
長手方向に沿って、厚さ方向に直交する方向に反りが発生したベースプレートでは、インク供給口の位置が、所定の位置から、ベースプレートの反りに応じて変位している。そのため、このようなベースプレートに複数の記録素子基板を、反りのないベースプレートと同様の位置に配置しようとしても、記録素子基板のインク供給口が、ベースプレートのインク供給口に連通しない場合がある。
【0014】
そこで、本発明は、ベースプレートに反りが発生した場合にも、ベースプレート上の適切な位置に記録素子基板を配置することが可能なインクジェット記録ヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明のインクジェット記録ヘッドの製造方法は、長方形状の面を備え、当該面の長手方向に沿って複数の第1のインク供給口が配列されたベースプレートに、前記第1のインク供給口に連通させる第2のインク供給口が形成された複数の記録素子基板を設置するインクジェット記録ヘッドの製造方法において、前記ベースプレートの、少なくとも3つの前記第1のインク供給口の近傍にそれぞれ形成されたアライメントマークの位置を測定した結果に基づいて、前記複数の記録素子基板を前記ベースプレートに設置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ベースプレートに反りが発生した場合にも、ベースプレート上の適切な位置に記録素子基板を配置することが可能なインクジェット記録ヘッドの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドのベースプレートの平面図である。
【図2】図1に示したベースプレートの焼成前の分解斜視図である。
【図3】図1に示したベースプレート上に複数の記録素子基板を設置する位置を決定する工程のフローチャートである。
【図4】図1に示したベースプレートに形成されたアライメントマークを検出する検出装置の概略構成図である。
【図5】図4に示した検出装置により形成された画像の一例を示した図である。
【図6】図1に示したベースプレート上に記録素子基板を設置した状態を示した平面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドのベースプレートの平面図である。
【図8】図7に示したベースプレート上に複数の記録素子基板を設置する位置を決定する工程のフローチャートである。
【図9】図4に示した検出装置により形成された画像の一例を示した図である。
【図10】図7に示したベースプレート上に記録素子基板を設置した状態を示した平面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係るベースプレート上に複数の記録素子基板を設置する位置を決定する方法の説明図である。
【図12】ベースプレート上の図11に示した方法で決定した位置に複数の記録素子基板を設置した状態を示した平面図である。
【図13】一般的なインクジェット記録ヘッドの分解斜視図である。
【図14】図13に示したインクジェット記録ヘッドの記録素子基板の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態における、記録素子基板を設置する前のベースプレート1の平面図である。ベースプレート1の表面は長方形状である。図1に示すように、ベースプレート1の表面をX−Y直交座標平面と見立て、ベースプレート1の表面の長手方向をX軸とし、ベースプレート1の表面の短手方向をY軸とする。X軸およびY軸では、矢印方向を正の方向とし、矢印と反対方向を負の方向とする。本実施形態では、ベースプレート1の表面を長方形状としたが、ベースプレート1の表面は正確に長方形である必要はない。ここで、「長方形状」とは、長辺同士が対向し、短辺同士が対向している図形の状態のすべてを含むものとする。
【0019】
ベースプレートは、絶縁性、熱伝導性、機械的強度に優れている材料で形成される。本実施形態にかかるベースプレート1はアルミナで形成されており、ベースプレート1には、記録素子基板へインクを供給するための複数のインク供給口2が形成されている。
【0020】
ベースプレート1では、Y軸方向に並んだ2つ1組のスリット状のインク供給口2が、X軸方向に延びる2つの列をなしている。各列におけるインク供給口2は等間隔に配置されている。インク供給口2の2つの列は、各列におけるインク供給口2の間隔の半分の長さだけX軸方向にずらされている。
【0021】
ベースプレート1には、1組のインク供給口2について1枚の記録素子基板が設置される。図1に示したベースプレート1には18組のインク供給口2が形成されているため、本実施形態ではベースプレート1に18枚の記録素子基板が設置される。
【0022】
しかし、ベースプレート1では、インク供給口2の組数を変更することにより任意の数の記録素子基板を設置することが可能となる。また、本実施形態では、1つの記録素子基板に対して2つのインク供給口2を設けたが、1つの記録素子基板に対して設けるインク供給口2の数は任意である。したがって、1つの記録素子基板に対して設けるインク供給口2の数は、記録素子基板の構成により適宜変更可能である。
【0023】
図1におけるベースプレート1のインク供給口2の下側(Y軸方向の負の側)の列の各1組のインク供給口2に隣接して10個のアライメントマーク3a〜3jがX軸方向に配列されている。アライメントマーク3a〜3jは、等間隔に配置されており、X軸方向に隣接するインク供給口2からの距離がいずれも等しい。
【0024】
図2は、ベースプレート1の焼成前の状態を示した斜視図である。ベースプレート1は、同様の形状の5枚の板状体1a〜1eにより構成されている。
【0025】
板状体1a,1bには、図2に示したベースプレート1のインク供給口2に対応する開口部2a,2bが形成されている。開口部2a,2bを形成する方法としては、たとえば、レーザー加工法や打ち抜き法などがある。アライメントマーク3a〜3jは最上層の板状体1aのみに形成されている。アライメントマーク3a〜3jを形成する方法としては、たとえば、レーザー加工法がある。アライメントマーク3a〜3jは、ベースプレート1の表面において視認可能であればよい。アライメントマーク3a〜3jの形状は、凹形状でも凸形状でもよく、形状以外の色などで視認可能であれば平面でもよい。
【0026】
本実施形態では、各インク供給口2a,2bおよび各アライメントマーク3a〜3jはレーザー加工装置(不図示)を用いてレーザー加工法により形成されている。各インク供給口2a,2bは板状体1a,1bを貫通しており、各アライメントマーク3a〜3jは凹形状に形成されている。
【0027】
レーザー加工装置による各インク供給口2aおよび各アライメントマーク3a〜3jの加工は、インク供給口2とアライメントマーク3a〜3jの相対位置の精度を向上させるため、板状体1aを位置決めして固定した後に、一連の流れで行われる。また、同様に、レーザー加工装置による各インク供給口2bの加工も、板状体1bを位置決めして固定した後に、一連の流れで行われる。
【0028】
板状体1c,1d,1eには、板状体1a,1bのインク供給口1a,1bと連通するインク供給路(不図示)などが形成される。本実施形態では、当該インク供給路も、レーザー加工装置を用いてレーザー加工法により形成した。
【0029】
これらの各板状体1a〜1eは、対応する各辺が揃えられた状態で積層され、約1200℃で焼成される。これにより、板状体1a〜1eが一体となりベースプレート1となる。
【0030】
板状体1a〜1eの積層体である焼成前のベースプレート1には、焼成後に、収縮や反りが生じる。焼成によるベースプレート1の収縮は、あらかじめ予測することができ、設計上考慮に入れることができる。一方、焼成によるベースプレート1の反りは、あらかじめ予測できない。
【0031】
焼成によるベースプレート1の反りは、主に長手方向であるX軸方向に沿って発生する。したがって、ベースプレートのX軸方向に沿った反りによる変位は、焼成後に、厚さ方向やY軸方向に発生する。ベースプレートの反りによる厚さ方向の変位は、研磨などによって設計上の所定の形状に修正することができる。一方、ベースプレート1の反りによるY軸方向の変位は、修正することが困難である。したがって、ベースプレート1のインク供給口3a〜3jの位置は、設計上の所定の位置から、ベースプレート1のX軸方向に沿った反りに応じてY軸方向に変位している。
【0032】
そのため、このようなベースプレート1に複数の記録素子基板を、ベースプレート1のインク供給口2が所定の位置にあるものとして配置しても、記録素子基板のインク供給口が、ベースプレート1のインク供給口2に連通しない場合がある。
【0033】
本実施形態では、ベースプレート1にX軸方向に沿って反りが発生しても、該ベースプレート1のインク供給口2と記録素子基板のインク供給口との連通を確保することができる。そのために、本実施形態では以下のような工程で、ベースプレート1上における、複数の記録素子基板を設置する位置を決定する。
【0034】
図3はベースプレート1上における、複数の記録素子基板を設置する位置を決定する工程のフローチャートである。
【0035】
まず、アライメントマーク3a〜3jの位置を検出する(S101)。図4は、アライメントマークを測定するための検出装置の模式図である。図4では、ベースプレート1のインク供給口2を省略している。
【0036】
この検出装置は、ベースプレート1を積載するプレート台10を有している。プレート台10は、X軸方向に沿って移動可能なステージ11と、Y軸方向に移動可能なステージ12と、の上に搭載されている。ベースプレート1は、プレート台10上に、アライメントマーク3a〜3jが形成された表面を上方に向けて積載される。
【0037】
図4に示した検出装置のプレート台10の上方にはカメラ13が配置されている。カメラ13はプレート台10上のベースプレート1のアライメントマーク3a〜3jを撮影するために用いられる。
【0038】
ステージ11,12およびカメラ13は、制御装置14に接続されている。ステージ11,12は、制御装置14によって、プレート台10上のベースプレート1の、カメラ13に対向する位置が適当に変更するように移動させられる。そして、カメラ13は、制御装置14によって、順次、プレート台10上のベースプレート1のカメラ13に対向する各部分を撮影するように駆動させられる。
【0039】
また、制御装置14は、カメラ13によって撮影した画像を繋ぎ合わせることにより全てのアライメントマーク3a〜3jの位置を示す画像を形成する。このように、この検出装置は、アライメントマーク3a〜3jの位置を正確に検出することができる。
【0040】
図5(a)は、図4に示した検出装置によって得られた画像の一例である。ここで、図5(a)に、両端に位置するアライメントマーク3a,3jを結んだ直線120を示している。本実施形態では、X軸が直線120に平行であるものとする。
【0041】
アライメントマーク3a〜3jは、焼成前の図2の状態では一直線上にあったが、焼成後の図5の状態では図1の上側に湾曲した曲線上にある。これは、ベースプレート1が、中央領域がY軸方向に湾曲するように反っている。
【0042】
次に、ベースプレート1の反り量を記録する(S102)。ベースプレート1の反り量は図5に示した画像から導き出す。
【0043】
また、直線120から各アライメントマーク3b〜3iまでのY軸方向の距離は、各アライメントマーク3b〜3iと、該各アライメントマーク3b〜3iから直線120に下ろした垂線の足と、の距離である。図5(b)には、直線120から各アライメントマーク3b〜3iまでのY軸方向の距離をそれぞれ矢印121b〜121iで示している。本工程では、この矢印121b〜121iの中で最長のものの長さを、反り量として記録する。本実施形態では、図5(b)における矢印121b〜121iの中で最長である矢印121eの長さが反り量として記録される。
【0044】
次に、記録素子基板を配置する基準とする配置基準線を決定する(S103,S104)。
【0045】
まず、インク供給口2に対応する記録素子基板の下側(Y軸方向の負の側)の列の配置基準線123を決定するために、反り量の半分の距離122を求める。そして、直線120に平行で、かつ、直線120からY軸の正の方向に距離122だけ離れた直線を決定する。当該直線が、インク供給口2の第1の列の配置基準線123となる。配置基準線は、アライメントマーク3eと、該アライメントマーク3eから直線120に下ろした垂線の足と、の中点を通る。
【0046】
そして、記録素子基板に対応する記録素子基板の上側(Y軸方向の負の側)の列(第2の列)の配置基準線124は、配置基準線123からY軸の正の方向に所定の距離Lだけ平行移動させたものである。ここで、所定の距離Lは、ベースプレート1にX軸方向に沿った反りが発生しない場合におけるインク供給口2の2つの列の間の距離である。所定の距離Lは、ベースプレート1の形状や、焼成による収縮率などに基づいて算出することができる。
【0047】
以上のように本実施形態では、複数の記録素子基板を設置する位置の基準となる配置基準線123,124を決定することができる。
【0048】
そして、図6に示すように、配置基準線123,124が記録素子基板4のY軸方向の中心を通るように、記録素子基板4をベースプレート1に配置する。このとき、ベースプレート1にX軸方向に沿った反りが発生しない場合における記録素子基板4の位置から、記録素子基板4の位置をY軸方向のみに変位させる。
【0049】
これにより、ベースプレート1にX軸方向に沿った反りが発生しても、ベースプレート1の第1のインク供給口2と、記録素子基板4の第2のインク供給口と、の位置のズレを抑制することができる。したがって、インクジェット記録ヘッドの歩留まりおよび信頼性が向上する。
【0050】
なお、本実施形態では、アライメントマークを全てのインク供給口2の近傍に設けたが、アライメントマークは、X軸方向の両端のインク供給口2の近傍と、X軸方向の中央のインク供給口2の近傍と、を含む少なくとも3ヶ所に存在していればよい。アライメントマークを3ヶ所のみに設けた場合にも、同様に配置基準線を決定することができるため、インクジェット記録ヘッドの歩留まりおよび信頼性が向上する。
(第2の実施形態)
図7は、本発明の第2の実施形態における、記録素子基板を設置する前のベースプレート21の平面図である。本実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの製造方法は、以下に示す構成以外は、第1の実施形態と同様である。
【0051】
図7に示すように、ベースプレート21には、インク供給口22の下側(Y軸方向の負の側)の列(第1の列)に沿って、10個のアライメントマーク23a〜23jが配列されている。各アライメントマーク23a〜23jは、各インク供給口22のX軸方向の両端の近傍に配置されている。アライメントマーク23b〜23iは、X軸方向に隣接する2つのインク供給口22の中間に配置されている。
【0052】
また、図7に示すように、ベースプレート21には、インク供給口22の上側(Y軸方向の正の側)の列(第2の列)に沿って、10個のアライメントマーク23k〜23tが配列されている。各アライメントマーク23k〜23tは、各インク供給口22のX軸方向の両端の近傍に配置されている。アライメントマーク23l〜23sは、X軸方向に隣接する2つのインク供給口22の中間に配置されている。
【0053】
図8はベースプレート21上における、複数の記録素子基板を設置する位置を決定する工程のフローチャートである。
【0054】
まず、アライメントマーク23a〜23tの位置を検出する(S201)。アライメントマーク23a〜23tの位置の検出には第1の実施形態と同様に図4に示した検出装置を用いた。本実施形態に係る検出結果を図9に示す。
【0055】
次に、ベースプレート21の反り量を記録する(S202,S203)。ベースプレート21の反り量は図9に示した画像から導き出す。本実施形態では、X軸が、両端に位置するアライメントマーク23a,23jを結んだ直線に平行であるものとする。
【0056】
まず、図9(a)に示すように、下側(Y軸方向の負の側)の列(第1の列)のアライメントマーク23a〜23jにおける、最も下側(Y軸方向の負の側)にある第1のアライメントマークY1を記録する。また、下側(Y軸方向の負の側)の列のアライメントマーク23a〜23jにおける、最も上側(Y軸方向の正の側)にある第2のアライメントマークY2を記録する。図9(a)では、第1のアライメントマークY1はアライメントマーク23aであり、第2のアライメントマークY2はアライメントマーク23eである。
【0057】
次に、図9(b)に示すように、上側(Y軸方向の正の側)の列(第2の列)のアライメントマーク23k〜23tにおける、最も下側(Y軸方向の負の側)にある第3のアライメントマークY3を記録する。そして、上側(Y軸方向の正の側)の列のアライメントマーク23k〜23tにおける、最も上側(Y軸方向の正の側)にある第4のアライメントマークY4と、を記録する。図9(b)では、第3のアライメントマークY3はアライメントマーク23tであり、第4のアライメントマークY4はアライメントマーク23oである。
【0058】
次に、記録素子基板を配置する基準とする配置基準線を決定する(S204)。まず、アライメントマーク23aを原点とし、アライメントマークY1,Y2,Y3,Y4の各座標におけるY座標の平均値を求める。なお座標平面における原点の位置は任意である。そして、アライメントマークY1,Y2,Y3,Y4の各座標におけるY座標の平均値を通り、X軸に平行な基準線230を決定する。そして、基準線230をY軸方向の負の側にL/2の距離だけ平行移動させた線が第1の列の配置基準線223となり、基準線230をY軸の正の側にL/2の距離だけ平行移動させた線が第2の列の配置基準線224となる。
【0059】
そして、図10に示すように、配置基準線223,224が記録素子基板4のY軸方向中心を通るように、記録素子基板4をベースプレート21に配置する。
【0060】
これにより、ベースプレート21にY軸方向の反りが発生しても、ベースプレート21のインク供給口22と、記録素子基板4のインク供給口と、の位置のズレを抑制することができる。したがって、インクジェット記録ヘッドの歩留まりおよび信頼性が向上する。
(第3の実施形態)
図11は、本発明の第3の実施形態におけるインクジェット記録ヘッドの製造方法の、ベースプレート上の記録素子基板を配置する配置基準線を決定するための説明図である。本実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの製造方法は、以下に示す構成以外は、第1の実施形態と同様である。
【0061】
本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、図4に示した検出装置にてアライメントマークの検出を行う。なお、本実施形態でも、図7に示す第2の実施形態に係るベースプレート21を用いる。本実施形態では、X軸が、両端に位置するアライメントマーク23a,23jを結んだ直線に平行であるものとする。図11は、ベースプレート21の表面の画像におけるインク供給口22の両端近傍のアライメントマーク23a,23bの部分を拡大して示している。
【0062】
配置基準線331abは、アライメントマーク23aのY座標とアライメントマーク23bのY座標との平均値を通り、X軸に平行な直線である。つまり、図11における、アライメントマーク23aと配置基準線331abとの距離Δab1と、アライメントマーク23bと配置基準線331abとの距離Δab2と、の距離が等しい。
【0063】
図11では、アライメントマーク23aとアライメントマーク23bとの間の配置基準線331abのみを決定したが、同様の方法で、任意の隣り合う2つのアライメントマーク間のインク供給口22上に配置基準線を決定することができる。
【0064】
そして、図12に示すように、各配置基準線が記録素子基板4のY軸方向中心を通るように、記録素子基板4をベースプレート21に配置する。
【0065】
これにより、ベースプレート21にY軸方向の反りが発生しても、ベースプレート21のインク供給口22と、記録素子基板4のインク供給口と、の位置のズレを抑制することができる。したがって、インクジェット記録ヘッドの歩留まりおよび信頼性が向上する。
【0066】
なお、本実施形態では、隣接する2組のインク供給口22の間に単一のアライメントマークを設けた。これにより、当該単一のアライメントマークを、隣接する2つのインク供給口22上の配置基準線を求める際の2つの基準のうちの一方として共有することができ、アライメントマークの数を減少させることができる。
【0067】
しかし、各1組のインク供給口22について各別に、X軸方向の両端近傍にアライメントマークを設けてもよい。この場合にも、同様に各インク供給口22上に配置基準線を決定することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 ベースプレート
2 インク供給口
3a〜3j アライメントマーク
4 記録素子基板
123,124 配置基準線
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に搭載可能なインクジェット記録ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、コンピュータに関連する出力機器などとして幅広く利用されている。インクジェット記録装置として、インクジェット記録ヘッドを、紙などの被記録媒体上を走査させながら、インクの吐出を行うことにより被記録媒体に記録を行ういわゆるシリアル方式のものが広く知られている。
【0003】
近年、インクジェット記録装置には、より高速に画像を出力することが要求されている。そのため、インクジェット記録ヘッドは、一度の走査によって、より広い面積の記録を行えることが望ましい。そのためには、インクジェット記録ヘッドの、記録幅を長くすることが有効である。インクジェット記録ヘッドの記録幅とは、インクジェット記録ヘッドの、一度の走査によって記録を行うことができる幅である。記録幅を長くするためには、インクジェット記録ヘッドの走査方向に直交する方向の幅を広くする必要がある。
【0004】
記録幅の長いインクジェット記録ヘッドを、一枚の記録素子基板のみによって形成する場合、記録素子基板を安定して所定の形状に形成することが難しい。そのため、インクジェット記録ヘッドの歩留まりが低下してしまう。
【0005】
これを解決するために、インクジェット記録ヘッドには、複数の記録素子基板を並べて設置することが有効である。この場合、複数の記録素子基板を並べる土台となるベースプレートをインクジェット記録ヘッドの記録幅に合わせた長さに形成すればよい。
【0006】
特許文献1には、複数の記録素子基板をベースプレート上に並べて設置する構成のインクジェット記録ヘッドが開示されている。
【0007】
図13は特許文献1に記載されたインクジェット記録ヘッドの分解斜視図である。このインクジェット記録ヘッドでは、1枚のベースプレートH1200上に、複数の記録素子基板H1100が2列に配列されている。各列における記録素子基板H1100は等ピッチに配置されている。ベースプレートH1200には、記録素子基板H1100を設置する位置に対応して複数のインク供給口H1201が形成されている。
【0008】
図14は記録素子基板H1100の概略構成図であり、図13(a)は斜視図であり、図13(b)は図13(a)のA−A’線に沿った断面図である。記録素子基板H1100では、基板H1108の表面にノズルプレートH1110が設けられている。基板H1008には、厚さ方向に貫通したインク供給口H1101が形成されている。
【0009】
図14に示した記録素子基板H1100は、インク供給口H1101が図13に示したベースプレートH1200に形成されたインク供給口H1201に連通する状態で、ベースプレートH1200に固定されている。
【0010】
図13および図14に記載されたインクジェット記録ヘッドでは、インクがベースプレートH1200のインク供給口H1201から記録素子基板H1100の各インク供給口1101に供給される。そして、記録素子基板H1100の各インク供給口H1100に供給されたインクは、発泡室H1107に送り込まれ、電気熱変換素子H1110が発するエネルギによってノズルH1105から吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−101580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
複数の記録素子基板をベースプレート上に設置する構成のインクジェット記録ヘッドでは、インクジェット記録ヘッドの記録幅を長くする場合、ベースプレートの幅を長くする必要がある。ベースプレートの製造工程には、一般的に、複数の板状体を焼成して一体化する焼成工程が含まれる。ベースプレートは、焼成工程により、長手方向に沿って反りが発生してしまうことがある。
【0013】
長手方向に沿って、厚さ方向に直交する方向に反りが発生したベースプレートでは、インク供給口の位置が、所定の位置から、ベースプレートの反りに応じて変位している。そのため、このようなベースプレートに複数の記録素子基板を、反りのないベースプレートと同様の位置に配置しようとしても、記録素子基板のインク供給口が、ベースプレートのインク供給口に連通しない場合がある。
【0014】
そこで、本発明は、ベースプレートに反りが発生した場合にも、ベースプレート上の適切な位置に記録素子基板を配置することが可能なインクジェット記録ヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明のインクジェット記録ヘッドの製造方法は、長方形状の面を備え、当該面の長手方向に沿って複数の第1のインク供給口が配列されたベースプレートに、前記第1のインク供給口に連通させる第2のインク供給口が形成された複数の記録素子基板を設置するインクジェット記録ヘッドの製造方法において、前記ベースプレートの、少なくとも3つの前記第1のインク供給口の近傍にそれぞれ形成されたアライメントマークの位置を測定した結果に基づいて、前記複数の記録素子基板を前記ベースプレートに設置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ベースプレートに反りが発生した場合にも、ベースプレート上の適切な位置に記録素子基板を配置することが可能なインクジェット記録ヘッドの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドのベースプレートの平面図である。
【図2】図1に示したベースプレートの焼成前の分解斜視図である。
【図3】図1に示したベースプレート上に複数の記録素子基板を設置する位置を決定する工程のフローチャートである。
【図4】図1に示したベースプレートに形成されたアライメントマークを検出する検出装置の概略構成図である。
【図5】図4に示した検出装置により形成された画像の一例を示した図である。
【図6】図1に示したベースプレート上に記録素子基板を設置した状態を示した平面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドのベースプレートの平面図である。
【図8】図7に示したベースプレート上に複数の記録素子基板を設置する位置を決定する工程のフローチャートである。
【図9】図4に示した検出装置により形成された画像の一例を示した図である。
【図10】図7に示したベースプレート上に記録素子基板を設置した状態を示した平面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係るベースプレート上に複数の記録素子基板を設置する位置を決定する方法の説明図である。
【図12】ベースプレート上の図11に示した方法で決定した位置に複数の記録素子基板を設置した状態を示した平面図である。
【図13】一般的なインクジェット記録ヘッドの分解斜視図である。
【図14】図13に示したインクジェット記録ヘッドの記録素子基板の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態における、記録素子基板を設置する前のベースプレート1の平面図である。ベースプレート1の表面は長方形状である。図1に示すように、ベースプレート1の表面をX−Y直交座標平面と見立て、ベースプレート1の表面の長手方向をX軸とし、ベースプレート1の表面の短手方向をY軸とする。X軸およびY軸では、矢印方向を正の方向とし、矢印と反対方向を負の方向とする。本実施形態では、ベースプレート1の表面を長方形状としたが、ベースプレート1の表面は正確に長方形である必要はない。ここで、「長方形状」とは、長辺同士が対向し、短辺同士が対向している図形の状態のすべてを含むものとする。
【0019】
ベースプレートは、絶縁性、熱伝導性、機械的強度に優れている材料で形成される。本実施形態にかかるベースプレート1はアルミナで形成されており、ベースプレート1には、記録素子基板へインクを供給するための複数のインク供給口2が形成されている。
【0020】
ベースプレート1では、Y軸方向に並んだ2つ1組のスリット状のインク供給口2が、X軸方向に延びる2つの列をなしている。各列におけるインク供給口2は等間隔に配置されている。インク供給口2の2つの列は、各列におけるインク供給口2の間隔の半分の長さだけX軸方向にずらされている。
【0021】
ベースプレート1には、1組のインク供給口2について1枚の記録素子基板が設置される。図1に示したベースプレート1には18組のインク供給口2が形成されているため、本実施形態ではベースプレート1に18枚の記録素子基板が設置される。
【0022】
しかし、ベースプレート1では、インク供給口2の組数を変更することにより任意の数の記録素子基板を設置することが可能となる。また、本実施形態では、1つの記録素子基板に対して2つのインク供給口2を設けたが、1つの記録素子基板に対して設けるインク供給口2の数は任意である。したがって、1つの記録素子基板に対して設けるインク供給口2の数は、記録素子基板の構成により適宜変更可能である。
【0023】
図1におけるベースプレート1のインク供給口2の下側(Y軸方向の負の側)の列の各1組のインク供給口2に隣接して10個のアライメントマーク3a〜3jがX軸方向に配列されている。アライメントマーク3a〜3jは、等間隔に配置されており、X軸方向に隣接するインク供給口2からの距離がいずれも等しい。
【0024】
図2は、ベースプレート1の焼成前の状態を示した斜視図である。ベースプレート1は、同様の形状の5枚の板状体1a〜1eにより構成されている。
【0025】
板状体1a,1bには、図2に示したベースプレート1のインク供給口2に対応する開口部2a,2bが形成されている。開口部2a,2bを形成する方法としては、たとえば、レーザー加工法や打ち抜き法などがある。アライメントマーク3a〜3jは最上層の板状体1aのみに形成されている。アライメントマーク3a〜3jを形成する方法としては、たとえば、レーザー加工法がある。アライメントマーク3a〜3jは、ベースプレート1の表面において視認可能であればよい。アライメントマーク3a〜3jの形状は、凹形状でも凸形状でもよく、形状以外の色などで視認可能であれば平面でもよい。
【0026】
本実施形態では、各インク供給口2a,2bおよび各アライメントマーク3a〜3jはレーザー加工装置(不図示)を用いてレーザー加工法により形成されている。各インク供給口2a,2bは板状体1a,1bを貫通しており、各アライメントマーク3a〜3jは凹形状に形成されている。
【0027】
レーザー加工装置による各インク供給口2aおよび各アライメントマーク3a〜3jの加工は、インク供給口2とアライメントマーク3a〜3jの相対位置の精度を向上させるため、板状体1aを位置決めして固定した後に、一連の流れで行われる。また、同様に、レーザー加工装置による各インク供給口2bの加工も、板状体1bを位置決めして固定した後に、一連の流れで行われる。
【0028】
板状体1c,1d,1eには、板状体1a,1bのインク供給口1a,1bと連通するインク供給路(不図示)などが形成される。本実施形態では、当該インク供給路も、レーザー加工装置を用いてレーザー加工法により形成した。
【0029】
これらの各板状体1a〜1eは、対応する各辺が揃えられた状態で積層され、約1200℃で焼成される。これにより、板状体1a〜1eが一体となりベースプレート1となる。
【0030】
板状体1a〜1eの積層体である焼成前のベースプレート1には、焼成後に、収縮や反りが生じる。焼成によるベースプレート1の収縮は、あらかじめ予測することができ、設計上考慮に入れることができる。一方、焼成によるベースプレート1の反りは、あらかじめ予測できない。
【0031】
焼成によるベースプレート1の反りは、主に長手方向であるX軸方向に沿って発生する。したがって、ベースプレートのX軸方向に沿った反りによる変位は、焼成後に、厚さ方向やY軸方向に発生する。ベースプレートの反りによる厚さ方向の変位は、研磨などによって設計上の所定の形状に修正することができる。一方、ベースプレート1の反りによるY軸方向の変位は、修正することが困難である。したがって、ベースプレート1のインク供給口3a〜3jの位置は、設計上の所定の位置から、ベースプレート1のX軸方向に沿った反りに応じてY軸方向に変位している。
【0032】
そのため、このようなベースプレート1に複数の記録素子基板を、ベースプレート1のインク供給口2が所定の位置にあるものとして配置しても、記録素子基板のインク供給口が、ベースプレート1のインク供給口2に連通しない場合がある。
【0033】
本実施形態では、ベースプレート1にX軸方向に沿って反りが発生しても、該ベースプレート1のインク供給口2と記録素子基板のインク供給口との連通を確保することができる。そのために、本実施形態では以下のような工程で、ベースプレート1上における、複数の記録素子基板を設置する位置を決定する。
【0034】
図3はベースプレート1上における、複数の記録素子基板を設置する位置を決定する工程のフローチャートである。
【0035】
まず、アライメントマーク3a〜3jの位置を検出する(S101)。図4は、アライメントマークを測定するための検出装置の模式図である。図4では、ベースプレート1のインク供給口2を省略している。
【0036】
この検出装置は、ベースプレート1を積載するプレート台10を有している。プレート台10は、X軸方向に沿って移動可能なステージ11と、Y軸方向に移動可能なステージ12と、の上に搭載されている。ベースプレート1は、プレート台10上に、アライメントマーク3a〜3jが形成された表面を上方に向けて積載される。
【0037】
図4に示した検出装置のプレート台10の上方にはカメラ13が配置されている。カメラ13はプレート台10上のベースプレート1のアライメントマーク3a〜3jを撮影するために用いられる。
【0038】
ステージ11,12およびカメラ13は、制御装置14に接続されている。ステージ11,12は、制御装置14によって、プレート台10上のベースプレート1の、カメラ13に対向する位置が適当に変更するように移動させられる。そして、カメラ13は、制御装置14によって、順次、プレート台10上のベースプレート1のカメラ13に対向する各部分を撮影するように駆動させられる。
【0039】
また、制御装置14は、カメラ13によって撮影した画像を繋ぎ合わせることにより全てのアライメントマーク3a〜3jの位置を示す画像を形成する。このように、この検出装置は、アライメントマーク3a〜3jの位置を正確に検出することができる。
【0040】
図5(a)は、図4に示した検出装置によって得られた画像の一例である。ここで、図5(a)に、両端に位置するアライメントマーク3a,3jを結んだ直線120を示している。本実施形態では、X軸が直線120に平行であるものとする。
【0041】
アライメントマーク3a〜3jは、焼成前の図2の状態では一直線上にあったが、焼成後の図5の状態では図1の上側に湾曲した曲線上にある。これは、ベースプレート1が、中央領域がY軸方向に湾曲するように反っている。
【0042】
次に、ベースプレート1の反り量を記録する(S102)。ベースプレート1の反り量は図5に示した画像から導き出す。
【0043】
また、直線120から各アライメントマーク3b〜3iまでのY軸方向の距離は、各アライメントマーク3b〜3iと、該各アライメントマーク3b〜3iから直線120に下ろした垂線の足と、の距離である。図5(b)には、直線120から各アライメントマーク3b〜3iまでのY軸方向の距離をそれぞれ矢印121b〜121iで示している。本工程では、この矢印121b〜121iの中で最長のものの長さを、反り量として記録する。本実施形態では、図5(b)における矢印121b〜121iの中で最長である矢印121eの長さが反り量として記録される。
【0044】
次に、記録素子基板を配置する基準とする配置基準線を決定する(S103,S104)。
【0045】
まず、インク供給口2に対応する記録素子基板の下側(Y軸方向の負の側)の列の配置基準線123を決定するために、反り量の半分の距離122を求める。そして、直線120に平行で、かつ、直線120からY軸の正の方向に距離122だけ離れた直線を決定する。当該直線が、インク供給口2の第1の列の配置基準線123となる。配置基準線は、アライメントマーク3eと、該アライメントマーク3eから直線120に下ろした垂線の足と、の中点を通る。
【0046】
そして、記録素子基板に対応する記録素子基板の上側(Y軸方向の負の側)の列(第2の列)の配置基準線124は、配置基準線123からY軸の正の方向に所定の距離Lだけ平行移動させたものである。ここで、所定の距離Lは、ベースプレート1にX軸方向に沿った反りが発生しない場合におけるインク供給口2の2つの列の間の距離である。所定の距離Lは、ベースプレート1の形状や、焼成による収縮率などに基づいて算出することができる。
【0047】
以上のように本実施形態では、複数の記録素子基板を設置する位置の基準となる配置基準線123,124を決定することができる。
【0048】
そして、図6に示すように、配置基準線123,124が記録素子基板4のY軸方向の中心を通るように、記録素子基板4をベースプレート1に配置する。このとき、ベースプレート1にX軸方向に沿った反りが発生しない場合における記録素子基板4の位置から、記録素子基板4の位置をY軸方向のみに変位させる。
【0049】
これにより、ベースプレート1にX軸方向に沿った反りが発生しても、ベースプレート1の第1のインク供給口2と、記録素子基板4の第2のインク供給口と、の位置のズレを抑制することができる。したがって、インクジェット記録ヘッドの歩留まりおよび信頼性が向上する。
【0050】
なお、本実施形態では、アライメントマークを全てのインク供給口2の近傍に設けたが、アライメントマークは、X軸方向の両端のインク供給口2の近傍と、X軸方向の中央のインク供給口2の近傍と、を含む少なくとも3ヶ所に存在していればよい。アライメントマークを3ヶ所のみに設けた場合にも、同様に配置基準線を決定することができるため、インクジェット記録ヘッドの歩留まりおよび信頼性が向上する。
(第2の実施形態)
図7は、本発明の第2の実施形態における、記録素子基板を設置する前のベースプレート21の平面図である。本実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの製造方法は、以下に示す構成以外は、第1の実施形態と同様である。
【0051】
図7に示すように、ベースプレート21には、インク供給口22の下側(Y軸方向の負の側)の列(第1の列)に沿って、10個のアライメントマーク23a〜23jが配列されている。各アライメントマーク23a〜23jは、各インク供給口22のX軸方向の両端の近傍に配置されている。アライメントマーク23b〜23iは、X軸方向に隣接する2つのインク供給口22の中間に配置されている。
【0052】
また、図7に示すように、ベースプレート21には、インク供給口22の上側(Y軸方向の正の側)の列(第2の列)に沿って、10個のアライメントマーク23k〜23tが配列されている。各アライメントマーク23k〜23tは、各インク供給口22のX軸方向の両端の近傍に配置されている。アライメントマーク23l〜23sは、X軸方向に隣接する2つのインク供給口22の中間に配置されている。
【0053】
図8はベースプレート21上における、複数の記録素子基板を設置する位置を決定する工程のフローチャートである。
【0054】
まず、アライメントマーク23a〜23tの位置を検出する(S201)。アライメントマーク23a〜23tの位置の検出には第1の実施形態と同様に図4に示した検出装置を用いた。本実施形態に係る検出結果を図9に示す。
【0055】
次に、ベースプレート21の反り量を記録する(S202,S203)。ベースプレート21の反り量は図9に示した画像から導き出す。本実施形態では、X軸が、両端に位置するアライメントマーク23a,23jを結んだ直線に平行であるものとする。
【0056】
まず、図9(a)に示すように、下側(Y軸方向の負の側)の列(第1の列)のアライメントマーク23a〜23jにおける、最も下側(Y軸方向の負の側)にある第1のアライメントマークY1を記録する。また、下側(Y軸方向の負の側)の列のアライメントマーク23a〜23jにおける、最も上側(Y軸方向の正の側)にある第2のアライメントマークY2を記録する。図9(a)では、第1のアライメントマークY1はアライメントマーク23aであり、第2のアライメントマークY2はアライメントマーク23eである。
【0057】
次に、図9(b)に示すように、上側(Y軸方向の正の側)の列(第2の列)のアライメントマーク23k〜23tにおける、最も下側(Y軸方向の負の側)にある第3のアライメントマークY3を記録する。そして、上側(Y軸方向の正の側)の列のアライメントマーク23k〜23tにおける、最も上側(Y軸方向の正の側)にある第4のアライメントマークY4と、を記録する。図9(b)では、第3のアライメントマークY3はアライメントマーク23tであり、第4のアライメントマークY4はアライメントマーク23oである。
【0058】
次に、記録素子基板を配置する基準とする配置基準線を決定する(S204)。まず、アライメントマーク23aを原点とし、アライメントマークY1,Y2,Y3,Y4の各座標におけるY座標の平均値を求める。なお座標平面における原点の位置は任意である。そして、アライメントマークY1,Y2,Y3,Y4の各座標におけるY座標の平均値を通り、X軸に平行な基準線230を決定する。そして、基準線230をY軸方向の負の側にL/2の距離だけ平行移動させた線が第1の列の配置基準線223となり、基準線230をY軸の正の側にL/2の距離だけ平行移動させた線が第2の列の配置基準線224となる。
【0059】
そして、図10に示すように、配置基準線223,224が記録素子基板4のY軸方向中心を通るように、記録素子基板4をベースプレート21に配置する。
【0060】
これにより、ベースプレート21にY軸方向の反りが発生しても、ベースプレート21のインク供給口22と、記録素子基板4のインク供給口と、の位置のズレを抑制することができる。したがって、インクジェット記録ヘッドの歩留まりおよび信頼性が向上する。
(第3の実施形態)
図11は、本発明の第3の実施形態におけるインクジェット記録ヘッドの製造方法の、ベースプレート上の記録素子基板を配置する配置基準線を決定するための説明図である。本実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの製造方法は、以下に示す構成以外は、第1の実施形態と同様である。
【0061】
本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、図4に示した検出装置にてアライメントマークの検出を行う。なお、本実施形態でも、図7に示す第2の実施形態に係るベースプレート21を用いる。本実施形態では、X軸が、両端に位置するアライメントマーク23a,23jを結んだ直線に平行であるものとする。図11は、ベースプレート21の表面の画像におけるインク供給口22の両端近傍のアライメントマーク23a,23bの部分を拡大して示している。
【0062】
配置基準線331abは、アライメントマーク23aのY座標とアライメントマーク23bのY座標との平均値を通り、X軸に平行な直線である。つまり、図11における、アライメントマーク23aと配置基準線331abとの距離Δab1と、アライメントマーク23bと配置基準線331abとの距離Δab2と、の距離が等しい。
【0063】
図11では、アライメントマーク23aとアライメントマーク23bとの間の配置基準線331abのみを決定したが、同様の方法で、任意の隣り合う2つのアライメントマーク間のインク供給口22上に配置基準線を決定することができる。
【0064】
そして、図12に示すように、各配置基準線が記録素子基板4のY軸方向中心を通るように、記録素子基板4をベースプレート21に配置する。
【0065】
これにより、ベースプレート21にY軸方向の反りが発生しても、ベースプレート21のインク供給口22と、記録素子基板4のインク供給口と、の位置のズレを抑制することができる。したがって、インクジェット記録ヘッドの歩留まりおよび信頼性が向上する。
【0066】
なお、本実施形態では、隣接する2組のインク供給口22の間に単一のアライメントマークを設けた。これにより、当該単一のアライメントマークを、隣接する2つのインク供給口22上の配置基準線を求める際の2つの基準のうちの一方として共有することができ、アライメントマークの数を減少させることができる。
【0067】
しかし、各1組のインク供給口22について各別に、X軸方向の両端近傍にアライメントマークを設けてもよい。この場合にも、同様に各インク供給口22上に配置基準線を決定することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 ベースプレート
2 インク供給口
3a〜3j アライメントマーク
4 記録素子基板
123,124 配置基準線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長方形状の面を備え、当該面の長手方向に沿って複数の第1のインク供給口が配列されたベースプレートに、前記第1のインク供給口に連通させる第2のインク供給口が形成された複数の記録素子基板を設置するインクジェット記録ヘッドの製造方法において、
前記ベースプレートの、少なくとも3つの前記第1のインク供給口の近傍にそれぞれ形成されたアライメントマークの位置を測定した結果に基づいて、前記複数の記録素子基板を前記ベースプレートに設置することを特徴とするインクジェット記録ヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記少なくとも3つの第1のインク供給口は、前記複数の第1のインク供給口の配列方向の、両端に存在する前記第1のインク供給口と、中央の近傍に存在する少なくとも1つの前記第1のインク供給口と、含む、請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記配列方向の両端に2つ存在する前記第1のインク供給口の近傍の前記各アライメントマークを結んだ直線を平行移動させて得られる配置基準線に基づいて、前記複数の記録素子基板を設置する位置を決定する、請求項2に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
【請求項4】
前記配置基準線は、前記直線から最も遠いアライメントマークと、該アライメントマークから前記直線に下ろした垂線の足と、の中点を通る、請求項3に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
【請求項5】
前記各第1のインク供給口の、前記配列方向の両端近傍に形成された前記アライメントマークに基づいて、前記各記録素子基板を設置する位置を決定する、請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
【請求項1】
長方形状の面を備え、当該面の長手方向に沿って複数の第1のインク供給口が配列されたベースプレートに、前記第1のインク供給口に連通させる第2のインク供給口が形成された複数の記録素子基板を設置するインクジェット記録ヘッドの製造方法において、
前記ベースプレートの、少なくとも3つの前記第1のインク供給口の近傍にそれぞれ形成されたアライメントマークの位置を測定した結果に基づいて、前記複数の記録素子基板を前記ベースプレートに設置することを特徴とするインクジェット記録ヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記少なくとも3つの第1のインク供給口は、前記複数の第1のインク供給口の配列方向の、両端に存在する前記第1のインク供給口と、中央の近傍に存在する少なくとも1つの前記第1のインク供給口と、含む、請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記配列方向の両端に2つ存在する前記第1のインク供給口の近傍の前記各アライメントマークを結んだ直線を平行移動させて得られる配置基準線に基づいて、前記複数の記録素子基板を設置する位置を決定する、請求項2に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
【請求項4】
前記配置基準線は、前記直線から最も遠いアライメントマークと、該アライメントマークから前記直線に下ろした垂線の足と、の中点を通る、請求項3に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
【請求項5】
前記各第1のインク供給口の、前記配列方向の両端近傍に形成された前記アライメントマークに基づいて、前記各記録素子基板を設置する位置を決定する、請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−1075(P2013−1075A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137487(P2011−137487)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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