説明

インクジェット記録ヘッド並びにそれを用いたインクジェット記録方法及び装置

【課題】本発明は、インク流路に連通した複数の圧力室において生じる局部的なインク供給不足を低減できるインクジェット記録ヘッドを提供する。
【解決手段】複数列のインク流路の間に複数の記録素子からなる素子列を配置したヘッドについて、次の配置条件に基づいて記録素子を左右のインク流路のいずれかに連通する。(イ)外側インク流路4bに隣接する素子列の一部の圧力室を隣接する内側インク流路4aに連通し、残りの圧力室を外側インク流路4bに連通する(ロ)内側インク流路4aの両側に対向配置された圧力室は、一方のみ内側インク流路4aに連通するか、いずれも連通しない(ハ)各インク流路には駆動タイミングの異なる記録素子を連通し、駆動タイミング毎の数をほぼ同数に設定する(ニ)各インク流路に連通する記録素子のうち当該インク流路に隣接する素子列の駆動タイミングの異なる記録素子の数をほぼ同数に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体にインクを吐出して画像形成を行うインクジェット記録ヘッド並びにそれを用いたインクジェット記録方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録媒体への画像形成方法として、インクジェット記録ヘッドからインクを記録媒体へ吐出して、所望の画像を形成する方法が知られている。
【0003】
インクジェット記録ヘッドは、インクタンクからインクが供給される複数の圧力室と、各圧力室に対応した圧電素子を備え、インクが供給されたこれら圧力室のうち、選択された圧力室に対して圧電素子から振動板を介して圧力を加えることで、圧力室に連通するノズルからインクを所定量吐出する。
【0004】
高解像度の画像形成を行う場合には、こうしたノズル、圧力室及び圧電素子等を備えた記録素子をインクジェット記録ヘッドに複数搭載して記録媒体に高密度の記録動作を行なう。例えば、特許文献1では、主流路から分岐した複数の分岐流路を列状に配列された複数の圧力室に沿って形成し、分岐流路から圧力室にインクを供給するようにした液体吐出ヘッドが記載されている。また、特許文献2では、複数のノズルが配列されたノズル列を所定の方向に複数列形成された液体吐出ヘッドにおいて、隣接する2つのノズル列の圧力室に対して同一の共通流路から液体が供給されるようにした点が記載されている。また、特許文献3では、複数のノズルからなる2つのノズル列に対して共通液室からインクを供給するようにした記録ヘッドが記載されている。
【特許文献1】特開2003−1823号公報
【特許文献2】特開2006−264268号公報
【特許文献3】特開2007−268965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献に記載されているように、1つのインク流路に対して複数の圧力室を連通してインク供給を行う場合、インク流路に流通するインク量には限界があるため、粘度等のインク特性、ノズルからのインク吐出量といった要因によりノズルからのインクの安定吐出には1つのインク流路に連通するノズル数に上限がある。また、ノズル数を上限以内に設定したとしても局部的にインクの供給不足が生じるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、インク流路に連通した複数の圧力室において生じる局部的なインク供給不足を低減することができるインクジェット記録ヘッドを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るインクジェット記録ヘッドは、ノズル及び当該ノズルに連通する圧力室を備えた記録素子が所定の方向に配列された複数の素子列と、隣接する前記素子列の間に配列された複数の内側インク流路と、最外側の前記素子列の外側に隣接して配列された一対の外側インク流路とを備え、最外側の前記素子列の一部の前記圧力室が当該素子列に隣接する前記内側インク流路に連通されているとともに残りの前記圧力室が前記外側インク流路に連通されており、かつ、隣接する前記素子列の互いに対向配置された前記圧力室は、当該素子列の間に配列された前記内側インク流路に対していずれか一方のみが連通されているかいずれも連通されていないことを特徴とする。
【0008】
本発明に係るインクジェット記録方法は、上記のインクジェット記録ヘッドを用いて記録動作を行なうインクジェット記録方法であって、前記内側インク流路及び前記外側インク流路の各インク流路に連通する前記記録素子をほぼ同数ずつに分けて異なる駆動タイミングで駆動して記録動作を行なうことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る別のインクジェット記録方法は、上記のインクジェット記録ヘッドを用いて記録動作を行なうインクジェット記録方法であって、前記内側インク流路及び前記外側インク流路の各インク流路に連通する前記記録素子のうち当該インク流路に隣接する前記素子列の前記記録素子をほぼ同数ずつに分けて異なる駆動タイミングで駆動して記録動作を行なうことを特徴とする。
【0010】
本発明に係るインクジェット記録装置は、上記のインクジェット記録ヘッドと、前記インクジェット記録ヘッドを駆動制御して記録動作を行う記録制御手段とを備えたインクジェット記録装置であって、前記記録制御手段は、前記内側インク流路及び前記外側インク流路の各インク流路に連通する前記記録素子をほぼ同数ずつに分けて異なる駆動タイミングで駆動して記録動作を行なうことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る別のインクジェット記録装置は、請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドと、前記インクジェット記録ヘッドを駆動制御して記録動作を行う記録制御手段とを備えたインクジェット記録装置であって、前記記録制御手段は、前記内側インク流路及び前記外側インク流路の各インク流路に連通する前記記録素子のうち当該インク流路に隣接する前記素子列の前記記録素子をほぼ同数ずつに分けて異なる駆動タイミングで駆動して記録動作を行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、インク流路に連通した複数の圧力室において生じる局部的なインク供給不足を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドについて、添付した図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に関する概略平面図である。インクジェット記録ヘッド1は、複数枚のプレートを積層して形成されている。一方の側部にインク導入口2が設けられており、内部にインク供給路(点線で表示)が形成されてインク導入口2と連通している。インク供給路は、インク導入口2に連通する共通液室3から分岐する複数のインク流路4からなり、インク流路4は、所定の間隔を空けて平行になるように設定されている。インク流路4の間には、ヘッド外面に複数の圧電素子5が列状に配列されている。そして、両側の外側インク流路4bの外側には圧電素子5は設けられておらず、内側インク流路4aの間並びに内側インク流路4a及び外側インク流路4bの間に圧電素子5が配列されている。
【0015】
図2はインクジェット記録ヘッド1の内部構造を示す図1のA−A断面図であり、図3は図1のB−B断面図である。各インク流路4の間には、複数の圧力室6が列状に配列されて形成されており、各圧力室6はリストリクタ7を介してインク流路4に連通している。そして、インク流路4の間には各圧力室6に連通する管状のインク通路8が形成されており、インク通路8の端部にノズル9が形成されている。各圧力室6に対応して圧電素子5がヘッド外面に接着固定されており、圧電素子5に対して図示せぬ駆動回路から駆動信号を入力されると、圧電素子5が変形して圧力室6内のインクを変動させてノズル9からインクを吐出するようになっている。
【0016】
以上説明したように、インクジェット記録ヘッド1は、インク流路4に連通する圧力室6及びノズル9が1つの記録素子として構成され、インク流路4の間に複数の記録素子が列状に配列された素子列が複数列設けられて全体として複数の記録素子がマトリクス状に配置されている。インク流路4の数は、素子列の数よりも1つ多く設けられており、そのため、最も外側の素子列の外側にそれぞれ外側インク流路4bが配設され、すべての素子列がインク流路4の間に配列されるようになっている。
【0017】
このようにインク流路4の数を素子列の数よりも多くすることで、1つのインク流路からインクを供給する記録素子数を抑えることができ、インクジェット記録ヘッドに搭載する記録素子を増加させて高密度記録を行う場合でも記録素子に対するインクの供給不足といったトラブルを解消することができる。すなわち、1つのインク流路に連通する圧力室が減少すると、記録動作の際に各記録素子間のクロストークが減少してクロストークに伴う吐出不良が抑えられ、高周波で記録素子を駆動しても安定して吐出動作を行うことができる。
【0018】
また、すべての素子列がインク流路の間に配設されているので、各記録素子を両側のインク流路のいずれかに連通させることができ、記録素子に対する局部的なインク供給不足が生じないように連通するインク流路を選択することが可能となる。
【0019】
図4は、8列のインク流路の間に8個の記録素子からなる素子列を7列配置したインクジェット記録ヘッドに関する模式図である。図4では、各記録素子の圧力室を長方形で模式的に描画し、両側のインク流路に対して各圧力室がどちらに連通しているかをハッチングで示すリストリクタにより模式的に描画している。左側のインク流路に連通している場合には圧力室に対してリストリクタを左側に配置して斜線のハッチングを施しており、右側のインク流路に連通している場合には圧力室に対してリストリクタを右側に配置して点によるハッチングを施している。そして、左側配置の領域と右側配置の領域を太い鎖線で区分けして表示している。
【0020】
また、各インク流路については、その番号としてNo.1〜No.8を上部に付しており、マトリクス状に配列された各圧力室は、行記号A〜H及び列記号a〜gの組み合せた記号で表示するようにしている。例えば、No.1及びNo.2のインク流路の間に配列された8個の圧力室は、Aa〜Haの記号で表示されるようになる。
【0021】
また、各記録素子は、2つの異なる駆動タイミングT1及びT2で駆動されるようになっており、上半分の記録素子に対応する圧力室Aa〜Ag、Ba〜Bg、Ca〜Cg及びDa〜Dgが駆動タイミングT1で駆動され(点線で囲まれた領域)、下半分の記録素子に対応する圧力室Ea〜Eg、Fa〜Fg、Ga〜Gg及びHa〜Hgが駆動タイミングT2で駆動される(一点鎖線で囲まれた領域)。
【0022】
記録素子に対する局部的なインク供給不足を抑えるためのリストリクタの配置条件としては以下の条件が挙げられる。
(イ)外側インク流路4bに隣接する素子列の一部の圧力室を隣接する内側インク流路4aに連通し、残りの圧力室を外側インク流路4bに連通するように割り振る。
(ロ)内側インク流路4aの両側に対向配置された圧力室については、いずれか一方のみが内側インク流路4aに連通するか、いずれも連通しない。
(ハ)内側インク流路及び外側インク流路の各インク流路は、駆動タイミングの異なる記録素子の圧力室に連通し、連通する圧力室の数が駆動タイミング毎に同一か1個違いとなるように設定する。
(ニ)内側インク流路及び外側インク流路の各インク流路は、駆動タイミングの異なる記録素子の圧力室に連通し、当該インク流路に隣接する素子列各々において駆動タイミング毎の連通する圧力室の数が同一か1個違いとなるように設定する。
【0023】
以上のような配置条件に基づいて各圧力室をインク流路に連通させることで記録素子全体において安定した吐出動作を行なうことができる。すなわち、配置条件(イ)のように割り振ることで、外側インク流路に連通する圧力室数が減少ため、外側インク流路内で生じるクロストークがその分減少して安定吐出が可能となる。
【0024】
なお、内側インク流路4aに連通する圧力室は中央部分であることが好ましい。ある記録素子が駆動した際に発生するクロストークは、同一インク流路に連通されている記録素子すべてに影響を及ぼし、外側インク流路ほど同一ノズル列の圧力室を多く連通するため内側インク流路のそれよりも不安定吐出になり易い。そのため、外側インク流路ほど中央部に近い圧力室の影響を内側インク流路に負担させることで、外側インク流路全体に伝わるクロストークを減少させてより安定した吐出が可能となる。最外側だけでなく外側から2列目の内側インク流路に連通されている圧力室についても同様に設定するとさらに好ましい。ここで中央部分の圧力室とは、素子列の中心となる記録素子及びそれに隣接する記録素子の圧力室をいう。
【0025】
また、配置条件(ロ)のように設定することで、対向配置された圧力室の間のクロストークの発生を抑えることができる。ここで、対向配置された圧力室とは、対向する素子列の圧力室のうち最も距離が近い圧力室を意味する。したがって、圧力室同士が正対せずにずれて配置されている場合には、最も距離の近い圧力室が対向配置された圧力室となる。等距離で2つの圧力室が対向する場合には、両方とも対向配置された圧力室として配置条件(ロ)に基づいて設定すればよい。
【0026】
また、配置条件(ハ)のように設定することで、各インク流路において駆動タイミング毎に駆動される記録素子の数が同一又は1個違いとなるため、駆動タイミング毎の記録素子の吐出動作がほぼ同一となって吐出ムラのほとんどない安定した記録動作を行なうことができる。
【0027】
同様に、配置条件(ニ)のように設定することで、各インク流路に連通する記録素子のうち隣接する素子列の異なる駆動タイミングの記録素子の数が同一又は1個違いとなるため、駆動タイミング毎の記録素子の吐出動作がほぼ同一となって吐出ムラのほとんどない安定した記録動作を行なうことができる。
【0028】
図5から図11は、図4に示すレイアウトについて配置条件(イ)から(ニ)を満たすリストリクタの配置手順を示す説明図である。まず、図5に示すように、配置条件(イ)に基づいて、右側の外側インク流路No.1に隣接する圧力室Aa〜Haについて、中央部分の圧力室Daを左側の内側インク流路No.2に連通し、それ以外の圧力室をすべて右側のインク流路No.1に連通する。このように割り振ることで圧力室Daからのクロストークの影響を防止することができる。
【0029】
次に、図6に示すように、圧力室Da〜Dgを設定する。圧力室Daが左側のインク流路No.2に連通しているので、配置条件(ロ)に基づいて、圧力室Db〜Dgをすべて左側のインク流路に連通するように設定する。
【0030】
次に、図7に示すように、圧力室Ag〜Hgを設定する。左側の外側インク流路No.8では、圧力室Dgが連通するようになっているため、配置条件(イ)に基づいて中央部分の圧力室Egを右側の内側インク流路No.7に連通し、残りのAg〜Cg及びFg〜Hgを左側の外側インク流路No.8に連通する。また、圧力室Egが右側に連通するため、配置条件(ロ)に基づいて、圧力室Eb〜Efを右側のインク流路に連通するように設定する。
【0031】
図8では、b列の圧力室を設定する。圧力室Dbがインク流路No.3に連通しているので、配置条件(ハ)及び(ニ)に基づいて圧力室Cbをインク流路No.2に割り振り、同様に圧力室Ebがインク流路No.2に連通しているので、圧力室Fbをインク流路No.3に割り振る。残りの圧力室Ab、Bb、Gb及びHbをインク流路No.2に割り振る。さらに、配置条件(ロ)に基づいて、Fc〜Ffを、左側のインク流路に連通する。
【0032】
図9では、圧力室Ffが左側のインク流路に連通しているので、配置条件(ハ)及び(ニ)に基づいて圧力室Cfを右側のインク流路に連通するように設定する。残りのAf、Bf、Gf、Hfを左側のインク流路に連通するよう設定する。また圧力室Cfは右側流路に連通するよう設定したので、配置条件(ロ)より、Cc〜Ceを右側のインク流路に連通するよう設定する。
【0033】
図10では、圧力室Bc、Bd及びBe並びに圧力室Gc、Gd及びGeを設定する。この場合、配置条件(ロ)、(ハ)及び(ニ)に基づいて圧力室Bc、Bd及びBeを左側のインク流路に連通し、圧力室Gc、Gd及びGeを右側のインク流路に連通する。そして、c列及びe列の残りの圧力室Ac及びHc並びに圧力室Ae及びHeについて、配置条件(ロ)、(ハ)及び(ニ)に基づき、圧力室Ac及びHcを右側のインク流路に連通し、圧力室Ae及びHeを左側のインク流路に連通する。
【0034】
図11では、d列の残りの圧力室Ad及びHdを設定する。配置条件(ハ)及び(ニ)に基づいて圧力室Adを右側のインク流路に連通し、圧力室Hdを左側のインク流路に連通する。こうして設定された各圧力室は、図4に示すように、上半分の圧力室と下半分の圧力室が点対称(圧力室Dd及びEdの間を対称の中心とする)となる連通パターンに設定される。
【0035】
以上のとおり各圧力室を左右いずれかのインク流路に連通することで、図4の上部に掲載した表に示す駆動タイミングT1及びT2の各インク流路における圧力室の数は、同数かまたは1つ違いに設定されるようになる。したがって、各インク流路ではそれぞれの駆動タイミングにおいてほぼ同一の吐出動作を行うことができるようになる。また、インク流路において対向配置された圧力室のいずれか一方のみが連通されるため、対向配置された圧力室が互いにクロストークの影響を受けることがなくなる。
【0036】
図12は、別の実施形態に関する模式図である。この例では、8列のインク流路の間に9個の記録素子からなる素子列を7列配置し、点線で囲まれた領域が駆動タイミングT1で駆動され、一点鎖線で囲まれた領域が駆動タイミングT2で駆動される。そして、各素子列の圧力室は、配置条件(イ)、(ロ)及び(ニ)に基づいて設定される。この場合、素子列が奇数の記録素子からなるため、中央のE行の圧力室Ea〜Edが右側のインク流路に連通し、圧力室Ee〜Egが左側のインク流路に連通するように設定される。そして、上下の各圧力室は、圧力室Edを中心に点対称になるように連通パターンが設定され、各インク流路における左右の隣接する素子列それぞれにおいて、駆動タイミングT1、T2の圧力室の数は、同数かまたは1つ違いとなっている。
【0037】
図13は、図12の変形例に関する模式図である。この例では、図12に示すレイアウトにおいて3つの異なる駆動タイミングT1、T2及びT3を設定している。A〜C行の圧力室に対応する記録素子が駆動タイミングT1で駆動され、D〜F行の圧力室に対応する記録素子が駆動タイミングT2で駆動され、G〜I行の圧力室に対応する記録素子が駆動タイミングT3で駆動されるように設定される。そして、各素子列の圧力室は、配置条件(イ)〜(ニ)に基づいて設定される。この場合にも、各インク流路における駆動タイミングT1、T2及びT3の圧力室の数は、同数かまたは1つ違いに設定されるようになり、各駆動タイミングにおける吐出動作をほぼ同一にすることができる。また、各インク流路における左右の隣接する素子列それぞれにおいても、駆動タイミングT1、T2及びT3の圧力室の数は、同数かまたは1つ違いとなっている。
【0038】
図14は、図4の変形例に関する模式図である。この例では、図4に示すレイアウトにおいて圧力室Aa及びHgを使用しない場合もしくは圧力室Aa及びHgが存在しない場合に配置条件(イ)〜(ニ)に基づいて設定が行われている。すなわち、配置条件(イ)及び(ロ)に基づいてa列の中央の圧力室Ea及びg列の中央の圧力室Dgがそれぞれ隣接する内側インク流路に連通し、a列及びg列の残りの圧力室がそれぞれ外側インク流路に連通するように設定される。そして、b列からf列の圧力室について、配置条件(ロ)、(ハ)及び(ニ)に基づいて適宜左右いずれかのインク流路に連通して設定される。こうして、図4と同様に、上半分の圧力室と下半分の圧力室が点対称(圧力室Dd及びEdの間を対称の中心とする)となる連通パターンに設定される。各インク流路における左右の隣接する素子列それぞれにおいて、駆動タイミングT1、T2の圧力室の数は、同数かまたは1つ違いとなっている。
【0039】
図15は、さらに別の実施形態に関する模式図である。この例では、8列のインク流路の間に16個の記録素子からなる素子列を7列配置し、点線で囲まれた領域が駆動タイミングT1で駆動され、一点鎖線で囲まれた領域が駆動タイミングT2で駆動される。この場合、素子列が偶数の記録素子からなるため、中央のH行及びI行について配置条件(イ)及び(ロ)に基づいてH行の圧力室を左側のインク流路に連通し、I行の圧力室を右側のインク流路に連通するように設定される。そして、素子列の記録素子の個数が図4に示す場合の2倍に設定されていることから、中央に近いG行及びJ行についても配置条件(イ)及び(ロ)に基づいてJ行の圧力室を左側のインク流路に連通し、G行の圧力室を右側のインク流路に連通するように設定する。
【0040】
そして、残りの圧力室について、配置条件(ロ)、(ハ)及び(ニ)に基づいて適宜左右いずれかのインク流路に連通し、図4と同様に、上半分の圧力室と下半分の圧力室が点対称(圧力室Hd及びIdの間を対称の中心とする)となる連通パターンに設定される。上半分が駆動タイミングT1で下半分が駆動タイミングT2に領域設定することで、各インク流路における左右の隣接する素子列それぞれにおいて、駆動タイミングT1、T2の圧力室の数は、同数かまたは1つ違いとなっている。
【0041】
図16は、さらに別の実施形態に関する模式図である。この例では、8列のインク流路の間に12個の記録素子からなる素子列を7列配置し、3つの異なる駆動タイミングT1、T2及びT3を設定している。A〜D行の圧力室に対応する記録素子が駆動タイミングT1で駆動され、E〜H行の圧力室に対応する記録素子が駆動タイミングT2で駆動され、I〜L行の圧力室に対応する記録素子が駆動タイミングT3で駆動されるように設定される。
【0042】
この場合、素子列が偶数の記録素子からなるため、中央のF行及びG行について配置条件(イ)及び(ロ)に基づいてF行の圧力室を左側のインク流路に連通し、G行の圧力室を右側のインク流路に連通するように設定される。また、配置条件(ハ)及び(ニ)を考慮して、駆動タイミングT1の領域内のD行及び駆動周期T3の領域内のI行についてもD行の圧力室を右側のインク流路に連通し、I行の圧力室を左側のインク流路に連通するように設定する。
【0043】
そして、残りの圧力室について、配置条件(ロ)、(ハ)及び(ニ)に基づいて適宜左右いずれかのインク流路に連通し、図4と同様に、上半分の圧力室と下半分の圧力室が点対称(圧力室Fd及びGdの間を対称の中心とする)となる連通パターンに設定される。上半分が駆動タイミングT1及び駆動タイミングT2で、下半分が駆動タイミングT2及びT3に領域設定することで、各インク流路における左右の隣接する素子列それぞれにおいて、駆動タイミングT1、T2及びT3の圧力室の数は、同数かまたは1つ違いとなっている。 以上のとおり各圧力室を左右いずれかのインク流路に連通することで、各インク流路ではそれぞれの駆動タイミングにおいてほぼ同一の吐出動作を行うことができるようになる。また、インク流路において対向配置された圧力室のいずれか一方のみが連通されるため、対向配置された圧力室が互いにクロストークの影響を受けることがなくなる。
【0044】
図17は、上述したインクジェット記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置に関する概略斜視図である。インクジェット記録ヘッド1は、ガイドレール10によって支持されたキャリッジ11上に位置決め固定されており、キャリッジ11はキャリッジモータ12の駆動によりタイミングベルト13を介して記録媒体T上を主走査方向(横切る方向X1、X2)に往復移動するようになっている。
【0045】
画像信号に応答して、キャリッジ11を主走査方向X1、X2へ移動するとともに、駆動信号がフレキシブルケーブル14を介してインクジェット記録ヘッド1に入力されてインクが記録媒体である布地Tの表面に向けて吐出される。
【0046】
インクジェット記録ヘッド1は、4つの記録ヘッド部1Y、1M、1C、1Kが主走査方向に順に配列されており、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの異なる色を吐出するようになっている。そして、4つの色を適宜重ね合わせて記録することでフルカラーの画像を記録することができる。
【0047】
記録媒体Tは、無端状の搬送ベルト20により副走査方向Yに搬送されるようになっている。搬送ベルト20は、一対の搬送ローラ21に張架されており、搬送ローラ21を図示せぬ搬送モータにより回転駆動することで搬送ベルト20の搬送動作が行なわれる。
【0048】
図18は、インクジェット記録装置に関するブロック構成図である。インクジェット記録装置100は、外部装置101から送信される記録信号を受信して記録動作を行なう。記録信号は、送受信部111で受信されて制御部110に入力される。
【0049】
制御部110は、装置全体の制御を行い、インクジェット記録ヘッドに対してはヘッド駆動回路112に制御信号を送信して駆動動作を行なう。また、キャリッジモータ12等のモータ駆動制御を行うためにモータ駆動回路113に制御信号を送信して駆動動作を行なう。
【0050】
制御部110は、外部装置から記録信号が送信された場合、送信された記録信号に基づいて各インクジェット記録ヘッドの記録素子に対応する吐出パターンに変換する。変換された吐出パターンはヘッド駆動回路112に送信される。
【0051】
ヘッド駆動回路112では、送信された吐出パターンを遅延回路112aに入力して、キャリッジ走査速度あるいは記録媒体搬送速度と記録画素数の設定値により算出される吐出周期Tに準じたトリガ信号を生成する。その際に、各記録素子が複数の異なる駆動タイミングT1〜Tmで吐出するようにトリガ信号Tr1〜Trmに変換して生成される。
【0052】
トリガ信号Tr1〜Trmは、対応するヘッドドライバD1〜Dmに入力されて、それぞれに対応する記録素子に対して駆動信号波形v1〜vmを印加し、各記録素子は、異なる駆動タイミングT1〜Tmで吐出動作を行なうようになる。
【0053】
図19は、2つの異なる駆動タイミングT1及びT2で各記録素子を駆動する場合のタイミングチャートである。この例では、駆動タイミングT1の駆動信号波形v1及び駆動タイミングT2の駆動信号波形v2は、いずれも吐出周期Tで信号波形が生成されているが、駆動タイミングT2は、駆動タイミングT1に対して1/2Tだけ遅延して信号波形が生成されるようになっている。そのため、各記録素子が吐出周期T毎に吐出動作を行なう場合でも、駆動タイミングがずれることで局部的なインク供給不足に陥ることなく安定した吐出動作を行うことが可能となる。
【0054】
図20は、3つの異なる駆動タイミングT1、T2及びT3で各記録素子を駆動する場合のタイミングチャートである。この例では、駆動タイミングT1の駆動信号波形v1、駆動タイミングT2の駆動信号波形v2及び駆動タイミングT3の駆動信号波形v3は、いずれも吐出周期Tで信号波形が生成されているが、駆動タイミングT2は、駆動タイミングT1に対して1/3Tだけ遅延して信号波形が生成され、駆動タイミングT3は、駆動タイミングT1に対して2/3Tだけ遅延して信号波形が生成されるようになっている。そのため、各記録素子が吐出周期T毎に吐出動作を行なう場合でも、駆動タイミングがずれることで局部的なインク供給不足に陥ることなく安定した吐出動作を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本実施形態に関する概略平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】インクジェット記録ヘッドに関する模式図である。
【図5】リストリクタの配置手順を示す説明図である。
【図6】リストリクタの配置手順を示す説明図である。
【図7】リストリクタの配置手順を示す説明図である。
【図8】リストリクタの配置手順を示す説明図である。
【図9】リストリクタの配置手順を示す説明図である。
【図10】リストリクタの配置手順を示す説明図である。
【図11】リストリクタの配置手順を示す説明図である。
【図12】別の実施形態に関する模式図である。
【図13】図12の変形例に関する模式図である。
【図14】図4の変形例に関する模式図である。
【図15】さらに別の実施形態に関する模式図である。
【図16】さらに別の実施形態に関する模式図である。
【図17】インクジェット記録装置に関する概略斜視図である。
【図18】インクジェット記録装置に関するブロック構成図である。
【図19】異なる駆動タイミングで記録素子を駆動する場合のタイミングチャートである。
【図20】異なる駆動タイミングで記録素子を駆動する場合のタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0056】
1 インクジェット記録ヘッド
2 インク導入口
3 共通液室
4 インク流路
5 圧電素子
6 圧力室
7 リストリクタ
8 インク通路
9 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル及び当該ノズルに連通する圧力室を備えた記録素子が所定の方向に配列された複数の素子列と、隣接する前記素子列の間に配列された複数の内側インク流路と、最外側の前記素子列の外側に隣接して配列された一対の外側インク流路とを備え、最外側の前記素子列の一部の前記圧力室が当該素子列に隣接する前記内側インク流路に連通されているとともに残りの前記圧力室が前記外側インク流路に連通されており、かつ、隣接する前記素子列の互いに対向配置された前記圧力室は、当該素子列の間に配列された前記内側インク流路に対していずれか一方のみが連通されているかいずれも連通されていないことを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドを用いて記録動作を行なうインクジェット記録方法であって、前記内側インク流路及び前記外側インク流路の各インク流路に連通する前記記録素子をほぼ同数ずつに分けて異なる駆動タイミングで駆動して記録動作を行なうことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項3】
請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドを用いて記録動作を行なうインクジェット記録方法であって、前記内側インク流路及び前記外側インク流路の各インク流路に連通する前記記録素子のうち当該インク流路に隣接する前記素子列の前記記録素子をほぼ同数ずつに分けて異なる駆動タイミングで駆動して記録動作を行なうことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項4】
請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドと、前記インクジェット記録ヘッドを駆動制御して記録動作を行う記録制御手段とを備えたインクジェット記録装置であって、前記記録制御手段は、前記内側インク流路及び前記外側インク流路の各インク流路に連通する前記記録素子をほぼ同数ずつに分けて異なる駆動タイミングで駆動して記録動作を行なうことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項5】
請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドと、前記インクジェット記録ヘッドを駆動制御して記録動作を行う記録制御手段とを備えたインクジェット記録装置であって、前記記録制御手段は、前記内側インク流路及び前記外側インク流路の各インク流路に連通する前記記録素子のうち当該インク流路に隣接する前記素子列の前記記録素子をほぼ同数ずつに分けて異なる駆動タイミングで駆動して記録動作を行なうことを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−76335(P2010−76335A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249187(P2008−249187)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】