説明

インクジェット記録ヘッド及びインクカートリッジ及びインクジェット記録装置及び画像形成装置

【課題】駆動ICからの発熱を効率的に放熱することが可能なインクジェット記録ヘッドを提供する。
【解決手段】複数のノズル孔2を有するノズル基板1と、複数の液室3と、振動板及17び圧電素子16が設けられる液室基板12と、液室基板12の上方に設けられ液室3に液体を供給する通路が形成される液体供給基板7と、液体供給基板7の上方に設けられた積層構造のフレーム基板9とを有し、液室基板12上に形成されたバンプ10に対してフリップチップ実装された駆動IC11が圧電素子16に電圧を印加することにより液室3に圧力を発生させるインクジェット記録ヘッド100において、フレーム基板9の少なくとも最下方の1枚に一体的に形成または接触した状態で設けられる弾性部材18を設け、これを液体供給基板7と駆動IC11の少なくとも一面とにそれぞれ接触配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク液滴を吐出するインクジェット記録ヘッド及びこれを用いるインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドを搭載したプリンタは、近年において画質の精度、値段の安さ、高速対応性(ノズルを増減することにより画像形成速度を変更できる)等が評価され、インクジェットプリンタとして普及が進んでいるが、その中でも一層の画質向上、信頼性向上、コストダウン、小型化等が要求されている。ここで、さらなる画質向上の要求に応えるためには、インクジェット記録ヘッドにおけるノズルの高密度化が欠かせない技術となってきており、そのためには圧電素子を駆動するための駆動ICにおいても小型化及び高密度実装化を必要とする要求に迫られている。
【0003】
このため近年では、ワイヤ同士の接触によるショートや生産性の低下の虞があるワイヤボンディングよりも、端子の細密化が可能なフリップチップ接合が好まれている。しかし、フリップチップ接合を実装する場合には記録ヘッド内の密閉された空間に駆動ICを実装することとなるため、発熱により駆動ICが動作不良を起こしたり駆動IC周辺の構造材が高温となって接合剥離が生じたりするという問題があった。また、ノズル数の増加に伴い駆動ICの発熱量も多くなるため、駆動ICから発せられた熱の効率的な放熱は重要な課題である。
【0004】
そこで、駆動ICが圧電素子の同一基板上にフリップチップ実装された構成により駆動ICに放熱部材を備える構成が、例えば「特許文献1」に開示されている。また、圧電素子を配置した基板のノズル板とは反対側に断熱部材、放熱部材の順に配置し、放熱部材の上に駆動ICをフリップチップ実装することにより駆動ICの発熱を効率的に放熱する技術が、例えば「特許文献2」に開示されている。また、駆動ICの電気的接合面(フリップチップ接合)が圧電素子の電極と同一基板上に配置され、駆動ICから発せられた熱を熱伝導性の優れた接着剤を介して保護基板側へ放熱する技術が、例えば「特許文献3」に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし「特許文献1」に開示された技術では、放熱部材の具体的な配置方法が検討されておらず記載されていないため、十分な放熱特性が実現される可能性は乏しく、駆動ICからの熱を十分に放熱できないため、駆動ICが動作不良を起こして信頼性が低下してしまうという問題点がある。また「特許文献2」に開示された技術では、放熱板、断熱板、絶縁性構造物等の構造物を配置することで自動的に駆動ICの電気的接続面と圧電素子の電極とが同一基板上に配置されないという構成となり、共通液室を大きく取ろうとすると配線の複雑化や長距離化が避けられず、シグナルのS/N比の低下による信頼性の低下、工程の増加によるコストアップ、配線の複雑化による歩留まりの低下といった問題点が生じる。また「特許文献3」に開示された技術では、保護基板上面と駆動IC上面とを高い精度で合わせて均一に接着剤を分布させる必要があるが、駆動ICと保護基板との接合工程において高い精度を出すことは難しく、実際には駆動ICの固定不良による不具合、接着剤の不均一塗布により生じる熱分布に基づく特性ばらつきの発生が避けられないという問題点があり、また熱伝導率の高い接着剤であっても熱伝導率は10W/m・K以下であり、銅(熱伝導率398W/m・K)やアルミニウム(熱伝導率236W/m・K)と比較すると十分な放熱性能を確保できないという問題点がある。
【0006】
本発明は上述の問題点を解消し、駆動ICからの発熱を効率的に放熱することが可能なインクジェット記録ヘッドの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、複数のノズル孔を有するノズル基板と、複数の液室と、前記液室の一部を構成し振動板及び圧電素子が設けられる液室基板と、前記液室基板の上方に設けられ前記液室に液体を供給する通路が形成される液体供給基板と、前記液体供給基板の上方に設けられた積層構造のフレーム基板とを有し、前記液室基板上に形成されたバンプに対してフリップチップ実装された駆動ICが前記圧電素子に電圧を印加することにより前記液室に圧力を発生させるインクジェット記録ヘッドにおいて、前記フレーム基板の少なくとも最下方の1枚に一体的に形成または接触した状態で設けられる弾性部材を有し、該弾性部材は前記液体供給基板と前記駆動ICの少なくとも一面とにそれぞれ接触して配置されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のインクジェット記録ヘッドにおいて、さらに前記弾性部材は前記一面に固定されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のインクジェット記録ヘッドにおいて、さらに前記弾性部材は前記フレーム基板の少なくとも1枚と一体的に形成され、前記一面と接触する部位のほぼ中央部に前記フレーム基板の長手方向に沿って形成された穴部を有し、該穴部の両側が板梁構造となるように形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3の何れか1つに記載のインクジェット記録ヘッドにおいて、さらに前記弾性部材は前記液体供給基板との接触箇所と前記一面との接触箇所とがほぼ平行となるように形成され、両者が屈曲部によって連結されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項4記載のインクジェット記録ヘッドにおいて、さらに前記弾性部材は前記屈曲部の厚みが他の部位の厚みよりも薄くなるように形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5の何れか1つに記載のインクジェット記録ヘッドにおいて、さらに前記駆動IC及び前記液体供給基板及び前記弾性部材によって囲まれた空間に充填剤を有することを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項6記載のインクジェット記録ヘッドにおいて、さらに前記充填剤は熱伝導性が鉄よりも良好な材料によって構成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の発明は、インク液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、該液滴吐出ヘッドにインクを供給するインクタンクとを一体化したインクカートリッジであって、前記液滴吐出ヘッドとして請求項1ないし7の何れか1つに記載のインクジェット記録ヘッドを用いるインクカートリッジであることを特徴とする。
【0015】
請求項9記載の発明は、液滴吐出ヘッドから液滴を吐出させて被記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置であって、前記液滴吐出ヘッドとして請求項1ないし7の何れか1つに記載のインクジェット記録ヘッドを用いるインクジェット記録装置であることを特徴とする。
【0016】
請求項10記載の発明は、インクカートリッジのヘッド部から液滴を吐出させて被記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置であって、前記インクカートリッジとして請求項8記載のインクカートリッジを用いるインクジェット記録装置であることを特徴とする。
【0017】
請求項11記載の発明は、請求項9または10記載のインクジェット記録装置を画像形成部に備えた画像形成装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、大きな熱容量を有する弾性部材が駆動ICに接触することにより駆動ICの放熱を効率的に行うことができ、信頼性を向上することができると共に長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態を採用したインクジェット記録ヘッドの概略斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態を説明するインクジェット記録ヘッドの部分断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態を説明するインクジェット記録ヘッドの部分断面図である。
【図4】本発明の一実施形態を適用したインクカートリッジの概略図である。
【図5】本発明の一実施形態を適用したインクジェット記録装置の概略斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態を適用したインクジェット記録装置の機構部における概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の第1の実施形態を採用したインクジェット記録ヘッドである液滴吐出ヘッド100の概略斜視図であって、インク液滴を基板の面部に設けたノズル孔から吐出させるサイドシュータ方式のものを示しており、図2(a)は図1におけるY−Y’断面図を、図2(b)は図1におけるX−X’断面図をそれぞれ示している。図1及び図2において液滴吐出ヘッド100は、複数のノズル孔2を有するノズル基板1、複数の液室3を区画する液室基板12、液室3の一部を構成する圧電素子16及び振動板17、液室基板12の上方に設けられ液室3に液体であるインクを供給するインク導入路5及びインク供給口6が形成される液体供給基板7、液体供給基板7の上方に設けられ共通液室8を有する積層構造のフレーム基板9、フレーム基板9の上方に設けられ共通液室8へとインクを供給するインク供給口22が形成されたハウジング21等を有している。
【0021】
上述の構成において、フレーム基板9は3枚の基板9a,9b,9cの積層構造体であり、液体供給基板7に近い側から基板9a、基板9b、基板9cの順に積層されている。圧電素子16は、共通電極13、圧電体14、上電極15等を有している。また、図2において符号4は液室基板12に形成される流体抵抗部を、符号19は共通液室8における圧力緩和の機能(ダンパ機能)を果たすダンパフィルムを、符号20はダンパフィルム19の可動域を確保するための補強板を、符号26は凹部それぞれ示している。液室基板12上にはバンプ10が形成されており、バンプ10上にはフリップチップ接合により実装された駆動IC11が設けられている。駆動IC11は、図示しない配線部材を介して圧電素子16に電圧を印加し、液室3に圧力を発生させる。
【0022】
駆動IC11の上面には、フレーム基板9を構成する基板9aと一体的に形成され板梁構造の屈曲部を有する弾性部材18が、その屈曲部よりも先の一部を接触するように配置されている。弾性部材18は、基板9a側の基部と駆動IC11の上面に接触する一部とがほぼ平行となるように両者が屈曲部によって連結される構成となっており、基部が液体供給基板7の上面に接触すると共に駆動IC上面と接触するその一部の接触面積ができるだけ広く取れるように構成されている。さらに弾性部材18は、駆動IC11を中心として対称形となるように配置されており、駆動IC11上面のほぼ中央部にはフレーム基板9の長手方向に沿った穴部18aが形成されている。
【0023】
弾性部材18と駆動IC11とは接触しているだけであっても接着等により固定されていてもよく、屈曲部である板梁の根元が他の部分よりも薄い構造であると、弾性が大きくなり駆動IC11との接触がさらに容易となる。フレーム基板9及び弾性部材18としては、鉄よりも熱伝導性の良好なアルミニウムや銅等が望ましく、アルミニウム、銅、炭素等を混合して熱伝導性を向上させた樹脂等を用いてもよく、両者は一体でなく接触した状態であってもよい。
【0024】
上述の構成により、大きな熱容量を有する弾性部材18が駆動IC11に接触することにより駆動IC11の放熱を効率的に行うことができ、信頼性を向上することができると共に長寿命化を図ることができる。また、弾性部材18の弾性機能により駆動IC11と液体供給基板7との相対的な位置ずれを緩和することができ、製造の歩留まりが向上してコスト低減を図ることができる。また、弾性部材18を駆動IC11の上面に固定することにより、駆動ICの電気的接合が安定して信頼性が向上する。また、フレーム基板9を構成する基板9aと一体で弾性部材18を構成することにより部品数を低減できコストダウンを図ることができ、穴部18aを設けることにより弾性機能を向上することができる。さらに、弾性部材18を2つの平行面とこれ等を接続する屈曲部とを有する段差形状とすることにより駆動IC11との接触面積が増加して放熱機能が向上し、屈曲部の厚みを他の部位の厚みよりも薄くすることにより位置ずれの緩和機能を向上することができる。
【0025】
次に、本実施形態で示す液滴吐出ヘッド100の製造方法を説明する。
先ず、液室基板12上の振動板17設置箇所以外の箇所にマスクとしてのシリコン窒化膜をパターニングした後、ポリシリコンとシリコン熱酸化膜形成手段である、例えばプラズマCVD法、パイロ酸化法によりポリシリコンと二酸化ケイ素(SiO2)の多層積層膜である振動板17を液室基板12上に形成する。次に、薄膜形成手段としてのゾルゲル法またはスパッタ法により、例えばPt、Ti、LNO、SROからなる共通電極13、例えばPZTからなる圧電体14、例えばPt、LNO、SROからなる上電極15を順次形成し、フォトリソグラフィ法により上電極15、圧電体14をパターニングして圧電素子16を形成する。次に、圧電素子16の放電防止のための図示しない絶縁膜(例えば酸化アルミニウム)を全体に成膜した後、振動変位の妨げとならないように上電極15上を避けて圧電素子16の端部と共通電極13とに、例えばSiO2、窒化ケイ素(SiN)からなる図示しない層間絶縁膜を形成し、アルミニウムからなる図示しない引き出し配線を所望の箇所に形成する。
【0026】
次に、別途シリコン基板にリソエッチ法で凹部26を形成してある液体供給基板7を製作しておき、これを液室基板12の圧電素子面に接着する。そして、液室基板12の圧電素子形成面とは反対側の面を所望の厚さまで研磨し、ICPドライエッチングによりエッチングして液室3、流体抵抗部4、インク導入路5となる凹部を形成する。また、別途ステンレスのプレス加工及び研磨によりノズル孔2が形成されたノズル基板1を液室基板12の凹部形成側に接合する。次に、液室基板12の液体供給基板7側に設けたバンプ10に、別途製作した駆動IC11をフリップチップ接合により実装し、プレス加工及び微細切削加工により形成した各基板9a,9b,9cを接合してフレーム基板9を作成してこれを液体供給基板7に接合する。フレーム基板9を構成する基板9cの駆動IC11対応箇所にはプレス加工及び微細切削加工等により弾性部材18が形成されている。次に、ダンパフィルム19を設けた補強板20をフレーム基板9に接合し、補強板20上に別途製作したハウジング21を接合する。異常の工程により、本実施形態で示す液滴吐出ヘッド100が完成する。
【0027】
図3は、本発明の第2の実施形態を示している。この第2の実施形態は、上述した第1の実施形態と比較すると、駆動IC11と液体供給基板7と弾性部材18とによって囲まれた空間内に充填剤27を有する点においてのみ相違しており、他の構成は同一である。ここで用いられる充填剤27としては、鉄よりも熱伝導性が良好な材料によって構成されており、例えばアルミニウムや銅等の金属や炭素を混合した樹脂が挙げられる。この構成により、充填剤27が駆動IC11に接触することで第1の実施形態よりも広い面積で駆動IC11の放熱が行われて放熱をより効率的に行うことができ、信頼性をさらに向上することができると共にさらなる長寿命化を図ることができる。
【0028】
次に、本発明の一実施形態を採用したインクカートリッジを図4に基づいて説明する。図4に示すインクカートリッジ30は、上述した各実施形態で示した複数のノズル孔2を有する液滴吐出ヘッド100と同様に構成された液滴吐出ヘッド31と、液滴吐出ヘッド31に対してインクを供給するインクタンク32とを一体化したものである。このように液滴吐出ヘッド31とインクタンク32とを一体で備えたインクカートリッジ30では、液滴吐出ヘッド31の低コスト化や信頼性向上は直ちにインクカートリッジ30の低コスト化や信頼性向上につながるので、液滴吐出ヘッド31の低コスト化、高信頼性化、製造不良低減を図ることにより、インクカートリッジ30の歩留まり及び信頼性が向上し、液滴吐出ヘッド一体型インクカートリッジの低コスト化を図ることができる。
【0029】
次に、本発明の一実施形態に示した液滴吐出ヘッドを搭載したインクジェット記録装置の一例を図5及び図6を参照して説明する。図5はインクジェット記録装置の概略斜視図を、図6はインクジェット記録装置の機構部における概略側面図をそれぞれ示している。
【0030】
図5及び図6において、インクジェット記録装置80は記録装置本体81の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ、キャリッジに搭載された本発明の一実施形態で示したものと同様の液滴吐出ヘッドからなるインクジェット記録ヘッド、インクジェット記録ヘッドへインクを供給するインクカートリッジ等を有する印字機構部82等を収納しており、記録装置本体81の下方には前方側から多数の用紙83を積載可能な給紙カセット(給紙トレイでもよい)84が着脱自在に設けられている。また、記録装置本体81には用紙83を手差しで給紙するための手差しトレイ85が起倒可能に設けられており、インクジェット記録装置80は給紙カセット84または手差しトレイ85から給送される用紙83を取り込み、印字機構部82において所望の画像を記録した後に後面側に装着された排紙トレイ86に排出するように構成されている。
【0031】
印字機構部82は、図示しない左右の側板に掛け渡されたガイド部材である主ガイドロッド91と従ガイドロッド92とでキャリッジ93を主走査方向に移動自在に保持している。キャリッジ93には、イエロ(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色インク滴を吐出する本発明の一実施形態で示したものと同様の液滴吐出ヘッドからなるインクジェット記録ヘッド94が、複数のインク吐出口(ノズル)が主走査方向と直交する方向となるように配列され、かつインク液滴吐出方向が下方に向くように装着されている。またキャリッジ93には、インクジェット記録ヘッド94に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ95がそれぞれ交換可能に装着されている。インクカートリッジ95は、上方に大気と連通する大気口を、下方にインクジェット記録ヘッド94へインクを供給する供給口を、内部にインクが充填される多孔質体をそれぞれ有しており、多孔質体の毛細管現象によりインクジェット記録ヘッド94へ供給されるインクを僅かな負圧に維持している。また、インクジェット記録ヘッド94としてここでは各色に対応した複数を用いる構成を示したが、各色のインク液滴を吐出するノズルを有する1個のみを用いる構成としてもよい。
【0032】
キャリッジ93は、用紙搬送方向下流側である後方側を主ガイドロッド91に摺動自在に嵌め込まれて支持されており、用紙搬送方向上流側である前方側を従ガイドロッド92に摺動自在に載置されている。そして、キャリッジ93を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ97で回転駆動される駆動プーリ98及び従動プーリ99間にはキャリッジ93に固定されたタイミングベルト71が掛け渡されており、これにより主走査モータ97の正逆回転によってキャリッジ93が往復移動される。
【0033】
一方、給紙カセット84にセットした用紙83をインクジェット記録ヘッド94の下方側へと搬送するため、給紙カセット84から用紙83を分離給送する給紙ローラ72及びフリクションパッド73、用紙83を案内するガイド部材74、給紙された用紙83を反転させて搬送する搬送ローラ75、搬送ローラ75の周面に押圧される搬送コロ76、搬送ローラ75からの用紙83の送り出し角度を規定する先端コロ77等が設けられている。搬送ローラ75は副走査モータ78によってギヤ列を介して回転駆動される。
【0034】
キャリッジ93の主走査方向の移動範囲に対応して、搬送ローラ75から送り出された用紙83をインクジェット記録ヘッド94の下方において案内する、用紙ガイド部材である印写受け部材79が設けられている。印写受け部材79の用紙搬送方向下流側には、用紙83を排紙方向へと送り出すために回転駆動される搬送ローラ87及び拍車88が、そのさらに用紙搬送方向下流側には用紙83を排紙トレイ86に送り出す排紙ローラ89及び拍車90がそれぞれ設けられ、各ローラ87,89間には排紙経路を形成するガイド部材61,62が設けられている。
【0035】
記録時には、キャリッジ93を移動させながら画像信号に応じてインクジェット記録ヘッド94を駆動することにより、停止している用紙83に対してインクを吐出して1行分を記録し、用紙83を所定量搬送後に次の行の記録を行う。そして、記録終了信号または用紙83の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、インクジェット記録装置80は記録動作を終了させて用紙83を排出する。
【0036】
キャリッジ93の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、インクジェット記録ヘッド94の吐出不良を回復するための、キャップ手段とクリーニング手段とを有する回復装置63が設けられている。キャリッジ93は、記録待機中に回復装置63側に移動されてキャッピング手段によりインクジェット記録ヘッド94をキャッピングされ、吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良の発生を防止している。また、記録途中等に記録とは関係しない吐出を行うことにより、全ての吐出口のインク粘度を一定とさせ、安定した吐出性能を維持する。
【0037】
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段によりインクジェット記録ヘッド94の吐出口(ノズル)を密封し、チューブを通して吸引手段によって吐出口からインクと共に気泡等を吸い出し、吐出口面に付着したインクやごみ等はクリーニング手段により除去されて吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは記録装置本体81の下部に設けられた図示しない廃インク溜まりに排出され、廃インク溜まり内部のインク吸収体に吸収保持される。このように、このインクジェット記録装置80には本発明の一実施形態で示したインクジェット記録ヘッドを搭載しているので、振動板駆動不良によるインク液滴吐出不良が発生せず、安定したインク吐出特性が得られて画像品質を向上させることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 ノズル基板
2 ノズル孔
3 液室
7 液体供給基板
9 フレーム基板
10 バンプ
11 駆動IC
12 液室基板
16 圧電素子
17 振動板
18 弾性部材
18a 穴部
27 充填剤
30,95 インクカートリッジ
80 インクジェット記録装置
94,100 インクジェット記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0039】
【特許文献1】特開2007−112062号公報
【特許文献2】特開2006−289963号公報
【特許文献3】特開2006−116767号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズル孔を有するノズル基板と、複数の液室と、前記液室の一部を構成し振動板及び圧電素子が設けられる液室基板と、前記液室基板の上方に設けられ前記液室に液体を供給する通路が形成される液体供給基板と、前記液体供給基板の上方に設けられた積層構造のフレーム基板とを有し、前記液室基板上に形成されたバンプに対してフリップチップ実装された駆動ICが前記圧電素子に電圧を印加することにより前記液室に圧力を発生させるインクジェット記録ヘッドにおいて、
前記フレーム基板の少なくとも最下方の1枚に一体的に形成または接触した状態で設けられる弾性部材を有し、該弾性部材は前記液体供給基板と前記駆動ICの少なくとも一面とにそれぞれ接触して配置されていることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【請求項2】
請求項1記載のインクジェット記録ヘッドにおいて、
前記弾性部材は前記一面に固定されていることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【請求項3】
請求項1または2記載のインクジェット記録ヘッドにおいて、
前記弾性部材は前記フレーム基板の少なくとも1枚と一体的に形成され、前記一面と接触する部位のほぼ中央部に前記フレーム基板の長手方向に沿って形成された穴部を有し、該穴部の両側が板梁構造となるように形成されていることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか1つに記載のインクジェット記録ヘッドにおいて、
前記弾性部材は前記液体供給基板との接触箇所と前記一面との接触箇所とがほぼ平行となるように形成され、両者が屈曲部によって連結されていることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【請求項5】
請求項4記載のインクジェット記録ヘッドにおいて、
前記弾性部材は前記屈曲部の厚みが他の部位の厚みよりも薄くなるように形成されていることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか1つに記載のインクジェット記録ヘッドにおいて、
前記駆動IC及び前記液体供給基板及び前記弾性部材によって囲まれた空間に充填剤を有することを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【請求項7】
請求項6記載のインクジェット記録ヘッドにおいて、
前記充填剤は熱伝導性が鉄よりも良好な材料によって構成されていることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【請求項8】
インク液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、該液滴吐出ヘッドにインクを供給するインクタンクとを一体化したインクカートリッジであって、
前記液滴吐出ヘッドとして請求項1ないし7の何れか1つに記載のインクジェット記録ヘッドを用いることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項9】
液滴吐出ヘッドから液滴を吐出させて被記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置であって、
前記液滴吐出ヘッドとして請求項1ないし7の何れか1つに記載のインクジェット記録ヘッドを用いることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項10】
インクカートリッジのヘッド部から液滴を吐出させて被記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置であって、
前記インクカートリッジとして請求項8記載のインクカートリッジを用いることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項11】
請求項9または10記載のインクジェット記録装置を画像形成部に備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−250361(P2012−250361A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122252(P2011−122252)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】