説明

インクジェット記録媒体

【課題】インクジェット記録時における印画濃度が高く、且つ滲みの発生が抑制されたインクジェット記録媒体を提供する。
【解決手段】合成パルプを含有する原紙と、前記原紙の少なくとも一方の面上に設けられ、無機微粒子、水溶性樹脂、及び媒染剤を含有するインク受容層と、前記原紙と前記インク受容層との間に設けられ、層中の全固形分質量に対する媒染剤の含有量が1質量%以下であり、且つ平均二次粒子径が0.3μm〜20μmの顔料を含有するインク溶剤吸収層と、を有するインクジェット記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクをインクジェット法で吐出して記録するのに好適なインクジェット記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー画像を記録する画像記録方法としては、近年、様々な方法が提案されているが、いずれにおいても画像の品質、風合い、記録後のカールなど、記録物の品位に対する要求は高い。
【0003】
例えば、インクジェット法を利用した記録方法としては、インクを受容する記録層が多孔質構造に構成されたインクジェット記録媒体を用いた方法が実用化されている。その一例として、無機顔料粒子及び水溶性バインダーを含み、高い空隙率を有する記録層が耐水性の支持体上に設けられたインクジェット記録媒体があり、多孔質構造を有するためにインクの速乾性に優れ、高い光沢を有する等、写真ライクな画像の記録が可能になってきている。このようなインクジェット記録媒体に用いられる耐水性の支持体としては、原紙上に樹脂層等の耐水層を設けた支持体等が用いられる。
【0004】
インクジェット記録方法は、オフィスプリンター、ホームプリンター等の分野での適用のみならず、近年では、商業印刷分野での応用がなされつつある。この商業印刷分野では、インク溶媒の支持体への浸透を完全に遮断する写真のような表面を有するものではなく、汎用の印刷紙のような印刷の風合い、質感を有するインクジェット記録媒体が要求されている。
【0005】
上記に関連する技術として、例えば、合成繊維を天然繊維と混抄した原紙上にインク受理層を設けたインクジェット記録用紙が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、合成繊維を含有する原紙上にインク受理層と光沢発現層とを設けたインクジェット記録用紙が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2004/001270号パンフレット
【特許文献2】特開2006−43935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来のインクジェット記録用紙では、インクジェット記録時における印画濃度が充分ではない場合があり、また、経時滲みの発生を充分に抑制できない場合があった。
【0008】
本発明は、上記状況に鑑みなされたものであり、インクジェット記録時における印画濃度が高く、且つ経時滲みの発生が抑制されたインクジェット記録媒体を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 合成パルプを含有する原紙と、前記原紙の少なくとも一方の面上に設けられ、無機微粒子、水溶性樹脂、及び媒染剤を含有するインク受容層と、前記原紙と前記インク受容層との間に設けられ、層中の全固形分質量に対する媒染剤の含有量が1質量%以下であり、且つ平均二次粒子径が0.3μm〜20μmの顔料を含有するインク溶剤吸収層と、を有するインクジェット記録媒体。
<2> 前記インク受容層が含有する無機微粒子が、二次粒子径が30nm以下の無機微粒子である前記<1>に記載のインクジェット記録媒体。
<3> 前記インク受容層が含有する無機微粒子が、気相法シリカである前記<1>又は<2>に記載のインクジェット記録媒体。
<4> 前記媒染剤が、アルミニウム化合物及びジルコニウム化合物から選択される少なくとも1種の媒染剤である前記<1>〜前記<3>のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体。
<5> 前記原紙における合成パルプの含有量が、原紙の全質量に対して、5質量%〜35質量%である前記<1>〜前記<4>のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インクジェット記録時における印画濃度が高く、且つ経時滲みの発生が抑制されたインクジェット記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のインクジェット記録媒体は、合成パルプを含有する原紙と、前記原紙の少なくとも一方の面上に設けられ、無機微粒子、水溶性樹脂、及び媒染剤を含有するインク受容層と、前記原紙と前記インク受容層との間に設けられ、層中の全固形分質量に対する媒染剤の含有量が1質量%以下であり、且つ平均二次粒子径が0.3μm〜20μmの顔料を含有するインク溶剤吸収層と、を有する。
以下、本発明のインクジェット記録媒体を構成する各要素について説明する。
【0012】
[インク溶剤吸収層]
本発明のインクジェット記録媒体は、合成パルプを含有する原紙の少なくとも一方の面において、該原紙とインク受容層との間にインク溶剤吸収層(以下、単に「溶剤吸収層」ともいう。)を有する。この溶剤吸収層は、該層中の全固形分質量に対する媒染剤の含有量が1質量%以下であり、且つ平均二次粒子径が0.3μm〜20μmの顔料を含有する。
【0013】
本発明における特徴的な構成の一つである溶剤吸収層は、主に、無機微粒子、水溶性樹脂、及び媒染剤を含有するインク受容層に付与されたインクジェットインク中の溶媒を速やかに吸収する層として機能する。本発明者らの知見によれば、合成パルプを含有する原紙上に、溶剤吸収層を設けずに、無機微粒子、水溶性樹脂、及び媒染剤を含有するインク受容層を設けた場合、該インク受容層における細孔径と該原紙が有する細孔径とに差があることや、該原紙が合成パルプを含有することなどに起因して、インク受容層に付与されたインクジェットインク中の溶媒が毛細管現象によりその下層に染み込まずに、滲みの発生、印画濃度の低下、耐水性の低下などが生じる場合がある。一方、本発明においては、上記の構成を有する溶剤吸収層が、合成パルプを含有する原紙と、無機微粒子、水溶性樹脂、及び媒染剤を含有するインク受容層との間に設けられたことで、インクジェット記録時における印画濃度が高く、且つ経時滲みの発生を効果的に抑制することができる。
【0014】
本発明における溶剤吸収層における媒染剤の含有量は、該溶剤吸収層中の全固形分質量に対して1質量%以下であることを要し、媒染剤を含有しないことがより好ましい。媒染剤の含有量が、溶剤吸収層中の全固形分質量に対して1質量%以下であることで、経時滲みに対しての優れた抑制効果が発揮される。
ここで、溶剤吸収層が含有しうる媒染剤としては、例えば、後述するインク受容層におけるに適用される媒染剤が挙げられる。
【0015】
(顔料)
本発明における溶剤吸収層は顔料を含有する。該顔料の平均二次粒子径は、0.3μm〜20μmであり、より好ましくは0.5μm〜15μm、さらに好ましくは1μm〜12μmである。溶剤吸収層に含有される顔料の平均二次粒子径が、0.3μm以上であることで溶媒吸収速度向上の効果がより良好になり、20μm以下であることで、インクジェト記録媒体の光沢性及び印画濃度がより高くなる。
ここで、本発明における顔料の平均二次粒子径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(例えば、HORIBA社製LA−920)により得られた値である。
【0016】
顔料としては、例えば、カオリン、クレー、焼成クレー、非晶質シリカ(無定形シリカともいう)又は合成非晶質シリカ等のシリカ粒子、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、アルミナ、コロイダルシリカ、ゼオライト、合成ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、合成スメクタイト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土、ハイドロタルサイト、スチレン系プラスチックピグメント、尿素樹脂系プラスチックピグメント、ベンゾグアナミン系プラスチックピグメント等、一般塗工紙製造分野で公知公用の各種顔料が挙げらる。顔料は、1種のみで用いてもよいし、2種以上併用してもよい。これらの顔料中でも、溶剤吸収層には、溶媒吸収性の高い無定形シリカ、アルミナ、又はゼオライトを主成分として含有させることが好ましい。
【0017】
また、顔料としては市販品を用いてもよい。該市販品としては、例えば、サイロジェットP412(グレースデビソン社製)、ミズカシルシリーズ(水澤化学工業(株)製)、ファインシールシリーズ((株)トクヤマ製)などが挙げられる。
【0018】
本発明における溶剤吸収層は、コストや製造容易さの点で、無機微粒子(=インク受容層形成材料)の割合が全顔料に対して20質量%以下である場合が好ましく、無機微粒子(=インク受容層形成材料)を含まない場合が特に好ましい。
【0019】
但し、インク吸収性を調整したり、溶剤吸収層上に塗布する塗料の浸透を制御したりする目的で、副成分として粒子径の小さい顔料を配合することができる。この様な顔料としてはコロイダルシリカ、アルミナゾル、又はインク定着層に含有させるシリカ微細粒子等が挙げられる。
【0020】
顔料の溶剤吸収層中における含有量は、ブロンジング抑制の観点から、溶剤吸収層全質量に対して、25質量%〜80質量%の範囲が好ましい。
【0021】
(接着剤)
本発明における溶剤吸収層は、接着剤の少なくとも一種を含有してもよい。
接着剤としては、例えば、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類、澱粉や酸化澱粉等の各種澱粉類、ポリビニルアルコール、カチオン性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールを含むポリビニルアルコール類、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス等、一般に塗工紙用として用いられている従来公知の接着剤が挙げられる。これらの接着剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0022】
接着剤を用いる場合、溶剤吸収層における顔料と接着剤との含有割合は、その種類にもよるが、一般に、顔料の合計量100質量部に対して、接着剤1〜100質量部が好ましく、より好ましくは2〜70質量部の範囲で調節される。
【0023】
溶剤吸収層には、上記の成分の他、一般塗工紙の製造において使用される分散剤、増粘剤、消泡剤、帯電防止剤、防腐剤等の各種助剤が適宜添加される。溶剤吸収層中には蛍光染料、着色剤をさらに添加することもできる。
【0024】
溶剤吸収層は、例えば、固形分濃度が5質量%〜50質量%程度の溶剤吸収層用塗布液を調製し、該塗布液を原紙上に、乾燥質量で好ましくは2g/m〜100g/m程度、より好ましくは5g/m〜50g/m程度、更に好ましくは5g/m〜20g/m程度になるように塗布して形成すればよい。溶剤吸収層の乾燥質量が2g/m以上であることで、溶媒吸収性改良効果がより良好になり、インク受容層を設けた際に、ブロンジング抑制がより良好になる。また、溶剤吸収層用の乾燥質量が100g/m以下であることで、高い記録濃度が得られ、塗布層の強度が向上し粉落ちや傷の発生を抑制することができる。
【0025】
溶剤吸収層は、溶剤吸収層用塗布液を、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、ブラシコーター、チャンプレックスコーター、バーコーター、リップコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、スライドコーター等の各種公知公用の塗布装置により塗布、乾燥して形成されることが好ましい。さらに、必要に応じて溶剤吸収層の乾燥後にスーパーキャレンダー、ブラシ掛け等の平滑化処理を施すこともできる。
【0026】
[インク受容層]
本発明のインクジェット記録媒体におけるインク受容層は、無機微粒子、水溶性樹脂、及び媒染剤を含有する層である。
【0027】
インク受容層は、外部から付与されたインクを受容するための層であり、少なくとも、無機微粒子、水溶性樹脂、及び媒染剤を含有して構成される。また、インク受容層は、必要に応じて、更に、水溶性樹脂を架橋するための架橋剤、その他添加剤などを用いて構成することができ、2層以上の積層構造に構成されてもよい。
【0028】
(無機微粒子)
インク受容層は、無機微粒子の少なくとも一種を含有する。無機微粒子を含有することにより、インク受容層を多孔構造とすることができ、インクの吸収性が高められる。本発明においては、特にインク受容層の空隙率を50%以上とすることが好ましい。
【0029】
無機微粒子としては、例えば、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、ハロイサイト、雲母、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、擬ベーマイト、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、アルミナ、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化イットリウム等が挙げられる。これらの中でも、良好な多孔構造を形成する観点から、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、アルミナ微粒子又は擬ベーマイトが好ましい。無機微粒子は、一次粒子のまま用いても又は二次粒子を形成した状態で用いてもよい。
【0030】
インク受容層が含有する無機微粒子は、平均二次粒子径が30nmであることが好ましく、より好ましくは10nm〜25nm、さらに好ましくは15nm〜25nmである。
【0031】
本発明において、インク受容層が含有する無機微粒子の平均二次粒子径は以下の方法で測定する。
1)インク受容層表面(または断面)を電子顕微鏡(S−4700、HITACHI(株)製)にて加速電圧10kVで観察する。
2)インク受容層表面(または断面)の任意の位置にある100個の無機微粒子について、それぞれその投影面積を求めてその面積に等しい円を仮定したときの直径として個々の粒子の粒径を求め、100個の無機微粒子の粒径の単純平均値を無機微粒子の平均二次粒子径として求める。
【0032】
また、無機微粒子の平均一次粒径としては、50nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましい。更には、平均一次粒径が30nm以下のシリカ微粒子、平均一次粒径が30nm以下のコロイダルシリカ、平均一次粒径が20nm以下のアルミナ微粒子、又は平均細孔半径が2nm〜15nmの擬ベーマイトがより好ましく、特にシリカ微粒子、アルミナ微粒子、擬ベーマイトが好ましい。
【0033】
シリカ微粒子は、通常その製造法により湿式法粒子と乾式法(気相法)粒子とに大別される。湿式法では、ケイ酸塩の酸分解により活性シリカを生成し、これを適度に重合させ凝集沈降させて含水シリカを得る方法が主流である。一方、気相法は、ハロゲン化珪素の高温気相加水分解による方法(火炎加水分解法)、ケイ砂とコークスとを電気炉中でアークによって加熱還元気化し、これを空気で酸化する方法(アーク法)によって無水シリカを得る方法が主流であり、「気相法シリカ」とは該気相法によって合成されたシリカ(無水シリカ微粒子)を意味する。気相法シリカは、含水シリカと表面のシラノール基の密度、空孔の有無等に相違があり、異なった性質を示すが、空隙率が高い三次元構造を形成するのに適している。この理由は明らかではないが、含水シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が5〜8個/nmで多く、シリカ微粒子が密に凝集(アグリゲート)し易く、一方、気相法シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が2〜3個/nmであり少ないことから疎な軟凝集(フロキュレート)となり、その結果、空隙率が高い構造になるものと推定される。中でも、シリカ微粒子としては、特に気相法シリカ微粒子が好ましい。
【0034】
気相法シリカは、比表面積が特に大きいので、インクの吸収性、保持の効率が高く、また、屈折率が低いので、適切な粒子径まで分散を行なえばインク受容層に透明性を付与でき、高い色濃度と良好な発色性が得られるという特徴がある。インク受容層が透明であることは、OHP等透明性が必要とされる用途のみならず、フォト光沢紙等の記録用媒体に適用する場合でも、高い色濃度と良好な発色性光沢を得る観点で重要である。
【0035】
気相法シリカの平均一次粒子径としては、30nm以下が好ましく、20nm以下が更に好ましく、10nm以下が特に好ましく、3nm〜10nmが最も好ましい。気相法シリカは、シラノール基による水素結合によって粒子同士が付着しやすいため、平均一次粒子径が30nm以下の場合に空隙率の大きい構造を形成することができ、インク吸収特性を効果的に向上させることができる。
【0036】
また、シリカ微粒子は、前述の他の微粒子と併用してもよい。該他の微粒子と上記気相法シリカとを併用する場合、全微粒子中の気相法シリカの含有量は、30質量%以上が好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
【0037】
無機微粒子としては、アルミナ微粒子、アルミナ水和物、これらの混合物又は複合物も好ましい。このうち、アルミナ水和物は、インクを良く吸収し定着することなどから好ましく、特に、擬ベーマイト(Al・nHO)が好ましい。アルミナ水和物は、種々の形態のものを用いることができるが、容易に平滑な層が得られることからゾル状のベーマイトを原料として用いることが好ましい。擬ベーマイトの細孔構造については、その平均細孔半径は1nm〜30nmが好ましく、2nm〜15nmがより好ましい。また、その細孔容積は0.3mL/g〜2.0mL/gが好ましく、0.5mL/g〜1.5mL/gがより好ましい。ここで、上記細孔半径及び細孔容積の測定は、窒素吸脱着法により測定されるもので、例えば、ガス吸脱着アナライザー(例えば、コールター社製の商品名「オムニソープ369」)により測定できる。
【0038】
また、アルミナ微粒子の中では気相法アルミナ微粒子が、その比表面積が大きく好ましい。該気相法アルミナの平均一次粒子径としては30nm以下が好ましく、20nm以下が更に好ましい。
【0039】
無機微粒子のインク受容層中における含有量としては、インク受容層の全固形分質量に対し、50質量%〜90質量%が好ましく、60質量%〜80質量%がより好ましい。
【0040】
(水溶性樹脂)
インク受容層は、水溶性樹脂の少なくとも1種を含有する。水溶性樹脂としては、例えば、親水性構造単位としてヒドロキシ基を有する樹脂であるポリビニルアルコール系樹脂〔ポリビニルアルコール(PVA)、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール等〕、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸ヒドラジド等〕等が挙げられる。また、解離性基としてカルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等も挙げることができる。
【0041】
中でも、水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、エーテル結合を有する樹脂、カルバモイル基を有する樹脂、カルボキシル基を有する樹脂、及びゼラチン類から選ばれる少なくとも1種が好ましく、特に、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂が好ましい。
【0042】
ポリビニルアルコールの例としては、特公平4−52786号、特公平5−67432号、特公平7−29479号、特許第2537827号、特公平7−57553号、特許第2502998号、特許第3053231号、特開昭63−176173号、特許第2604367号、特開平7−276787号、特開平9−207425号、特開平11−58941号、特開2000−135858号、特開2001−205924号、特開2001−287444号、特開昭62−278080号、特開平9−39373号、特許第2750433号、特開2000−158801号、特開2001−213045号、特開2001−328345号、特開平8−324105号、特開平11−348417号、特開昭58−181687号、特開平10−259213号、特開2001−72711号、特開2002−103805号、特開2000−63427号、特開2002−308928号、特開2001−205919号、特開2002−264489号等に記載されたものなどが挙げられる。また、ポリビニルアルコール系樹脂以外の水溶性樹脂の例としては、特開平11-165461号公報の[0011]〜[0012]に記載の化合物、特開2001−205919号公報、特開2002−264489号公報に記載の化合物なども挙げられる。
【0043】
水溶性樹脂の含有量としては、インク受容層の全固形分質量に対して、9質量%〜40質量%が好ましく、12質量%〜33質量%がより好ましい。
【0044】
インク受容層を主として構成する水溶性樹脂と無機微粒子とは、それぞれ単一素材であってもよいし、複数の素材の混合系を使用してもよい。層の透明性を保持する観点からは、無機微粒子、特にシリカ微粒子に組み合わされる水溶性樹脂の種類が重要となる。気相法シリカを用いる場合、水溶性樹脂としてポリビニルアルコール系樹脂を組み合わせるのが好ましく、より好ましくは、鹸化度70〜100%のポリビニルアルコール系樹脂であり、特に好ましくは、鹸化度80〜99.5%のポリビニルアルコール系樹脂である。
【0045】
ポリビニルアルコール系樹脂は、その構造単位に水酸基を有するが、この水酸基と前記シリカ微粒子の表面シラノール基とが水素結合を形成するため、シリカ微粒子の二次粒子を網目鎖単位とした三次元網目構造を形成し易くなる。この三次元網目構造の形成によって、空隙率が高く十分な強度のある多孔質構造のインク受容層が形成されると考えられる。インクジェット記録において、上述のようにして得られた多孔質のインク受容層は、毛細管現象によって急速にインクを吸収し、インク滲みの発生しない真円性の良好なドットを形成することができる。
【0046】
ポリビニルアルコール系樹脂は、その他の水溶性樹脂を併用してもよい。他の水溶性樹脂とポリビニルアルコール系樹脂とを併用する場合、全水溶性樹脂中、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量は50質量%以上が好ましく、70質量%以上が更に好ましい。
【0047】
無機微粒子(p)と水溶性樹脂(b)との含有比(p/b;PB比(質量比)〕を最適化することで、インク受容層の層構造及び層強度をより向上させることが可能である。前記PB比(p/b)としては、PB比が大き過ぎることに起因する膜強度の低下や乾燥時のひび割れを防止し、且つPB比が小さ過ぎることによって空隙が樹脂で塞がれ易くなり、空隙率が減少することでインク吸収性が低下するのを防止する観点から、1.5〜10が好ましい。
【0048】
本発明においては、無機微粒子としては、高い空隙率を得る点で気相法シリカが好ましく、この場合に特に50%以上の高い空隙率を得る観点から、インク受容層中の気相法シリカの含有比率を60質量%以上とし、気相法シリカ(p)と水溶性樹脂(b)との含有比(p/b;PB比)を3〜7の範囲とすることが好ましい。中でも、同様の理由から、インク受容層中の気相法シリカの含有比率が60質量%以上80質量%以下であって、気相法シリカと水溶性樹脂とのPB比が3〜7の範囲であるのがより好ましく、更に好ましくは、インク受容層中の気相法シリカの含有比率が60質量%以上75質量%以下であって、気相法シリカと水溶性樹脂とのPB比が3.5〜6.5の範囲である。
【0049】
インク受容層は、例えば、平均一次粒子径が20nm以下の気相法シリカ微粒子とポリビニルアルコール系樹脂とを、前記比率p/bで水溶液中に分散した塗布液を支持体上に塗布し、塗布形成された塗布膜を乾燥させることにより、シリカ微粒子の二次粒子を網目鎖とする三次元網目構造が形成される。
【0050】
(媒染剤)
インク受容層は、上記の無機微粒子及び水溶性樹脂に加え、更に媒染剤を含有する。媒染剤としては、例えば、水溶性金属化合物等の無機媒染剤及びカチオン性ポリマー等の有機媒染剤が挙げられ、水溶性多価金属塩や含窒素有機カチオンポリマーが好適に用いられる。
【0051】
前記水溶性金属化合物としては、例えば、カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、アルミニウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、クロム、タングステン、モリブデンから選ばれる金属の水溶性塩が挙げられる。なお、水溶性金属化合物の「水溶性」は、20℃の水に1質量%以上が溶解することをいう。
【0052】
水溶性金属化合物の中でも、3価以上の金属化合物が好ましく、アルミニウム化合物、又は周期律表4A族金属(例えばジルコニウム、チタン)を含む化合物が好ましく、ジルコニウム化合物及びアルミニウム化合物はより好ましい。特に好ましくは、水溶性アルミニウム化合物である。
【0053】
水溶性アルミニウム化合物としては、例えば、塩化アルミニウム又はその水和物(例:塩化アルミニウム六水和物)、硫酸アルミニウム又はその水和物、アンモニウムミョウバン、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、塩基性チオグリコール酸アルミニウム等が知られている。さらに、無機系の含アルミニウムカチオンポリマーである塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物(以下、「塩基性ポリ塩化アルミニウム」、「ポリ塩化アルミニウム」ともいう。)が知られており、好ましく用いられる。塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物とは、主成分が下記式1、式2又は式3で表され、例えば、[Al(OH)153+、[Al(OH)204+、[Al13(OH)345+、[Al21(OH)603+、等の、塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含む水溶性のポリ水酸化アルミニウムである。
[Al(OH)Cl6−n ・・・式1
[Al(OH)AlCl ・・・式2
Al(OH)Cl(3n−m) 〔0<m<3n〕 ・・・式3
これらは、多木化学(株)よりポリ塩化アルミニウム(PAC)の名称で水処理剤として、浅田化学(株)よりポリ水酸化アルミニウム(Paho)の名称で、また、(株)理研グリーンよりHAP−25の名称で、大明化学(株)よりアルファイン83の名称で、さらに他のメーカーからも同様の目的で上市されており、各種グレードの物が容易に入手できる。
【0054】
アルミニウム化合物以外の水溶性金属化合物の具体例としては、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酪酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、シュウ酸バリウム、ナフトレゾルシンカルボン酸バリウム、酪酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガン二水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)二水和物、硫酸銅、酪酸銅(II)、シュウ酸銅、フタル酸銅、クエン酸銅、グルコン酸銅、ナフテン銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、酢酸コバルト(II)、ナフテン酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、スルファミン酸ニッケル、2−エチルヘキサン酸ニッケル、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、クエン酸鉄(III)、乳酸鉄(III)三水和物、三シュウ酸三アンモニウム鉄(III)三水和物、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、乳酸亜鉛、酢酸ジルコニウム、酢酸ジルコニル、四塩化ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム八水和物、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストりん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドりん酸n水和物等、アルミニウムミョウバン、塩基性ポリ水酸化アルミニウム、フェノールスルホン酸亜鉛、酢酸亜鉛アンモニウム、亜鉛アンモニウムカーボネート、が挙げられる。
【0055】
周期表4A族金属を含む化合物としては、チタン又はジルコニウムを含む水溶性化合物がより好ましい。チタンを含む水溶性金属化合物としては、塩化チタン、硫酸チタン、四塩化チタン、テトライソプロピルチタネート、チタンアセチルアセトネート、乳酸チタンが挙げられる。ジルコニウムを含む水溶性金属化合物としては、酢酸ジルコニウム、酢酸ジルコニル、塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニル、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、乳酸ジルコニウム、乳酸ジルコニル、炭酸ジルコニウム・アンモニウム、炭酸ジルコニウム・カリウム、炭酸ジルコニル・アンモニウム、炭酸ジルコニル・カリウム、硫酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム、硫酸ジルコニル、フッ化ジルコニル等が挙げられる。
【0056】
水溶性金属化合物(好ましくはジルコニウム化合物及びアルミニウム化合物、より好ましくは水溶性アルミニウム化合物)のインク受容層中における含有量としては、印画濃度・耐水性の点で、無機微粒子に対して、0.1質量%〜10質量%が好ましく、0.5質量%〜8質量%がより好ましい。
【0057】
また、媒染剤としては、カチオンポリマーも好ましい。カチオンポリマーとしては、例えば含窒素有機カチオンポリマーが好適であり、第1級〜第3級アミノ基又は第4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好適である。含窒素有機カチオンポリマーとしては、第1級〜第3級アミノ基及びその塩、又は第4級アンモニウム塩基を有する単量体(含窒素有機カチオンモノマー)の単独重合体である含窒素有機カチオンポリマー、前記含窒素有機カチオンモノマーと他の単量体との共重合体又は縮重合体として得られる含窒素有機カチオンポリマー、ウレタン結合を有するウレタン系ポリマー等に、カチオン基を含む化合物を用いてカチオン化修飾して得られる含窒素有機カチオンポリマー等を挙げることができる。
【0058】
上記のカチオンポリマー中でも、滲み抑制の観点からは、カチオン性ポリウレタン、特開2004−167784号公報等に記載のカチオン性ポリアクリレートが好ましく、カチオン性ポリウレタンがより好ましい。カチオン性ポリウレタンとしては、市販品として例えば、第一工業製薬(株)製の「スーパーフレックス650」、「F−8564D」、「F−8570D」、日華化学(株)製の「ネオフィックスIJ−150」などを挙げることができる。
【0059】
本発明においては、印画濃度・耐水性の点から、媒染剤は、水溶性アルミニウム化合物、水溶性ジルコニウム化合物、又はカチオン性ポリウレタンが好ましい。
【0060】
(その他の成分)
インク受容層は、必要に応じて、各種の紫外線吸収剤、界面活性剤、酸化防止剤、一重項酸素クエンチャー等の褪色防止剤などのその他添加剤を含有することができる。なお、これらの添加剤の詳細については、特開2007−98657号公報の段落[0081]〜[0090]の記載を参照することができる。
【0061】
インク受容層の形成は、該インク受容層が含有する各成分を含むインク受容層用塗布液を、原紙上に設けられた溶剤吸収層上に、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、ブラシコーター、チャンプレックスコーター、バーコーター、リップコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、スライドコーター等の各種公知の塗布装置により塗布、乾燥させて形成することができる。
【0062】
インク受容層の塗布量(合計)は、乾燥固形分で1g/m〜30g/mが好ましく、より好ましくは、1.5g/m〜20g/mである。インク受容層の塗布量が1g/m以上であることで、記録時に滲みの発生を効果的に抑制できる。また、インク受容層の塗布量が30g/m以下であることで、より高い印画濃度が達成でできる。
【0063】
[原紙]
本発明のインクジェット記録媒体における原紙は、合成パルプを含有する原紙である。該原紙としてより好ましくは、合成パルプとセルロース繊維原料とを混抄したものが挙げられる。
【0064】
〜合成パルプ〜
合成パルプとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィンの単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−4−メチルペンテン−1共重合体などのエチレンと他のα−オレフィンとの共重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ナイロン、ポリエステル、ポリフルオロエチレンなどの合成樹脂を主成分とする合成パルプが挙げられる。これらの中でも、合成パルプとしては、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む合成パルプが、安価であり好適に用いられる。
【0065】
合成パルプが主成分として含むポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、4−メチルペンテン−1などのオレフィンの単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレンーブテン−1共重合体、エチレン−4−メチルペンテン−1共重合体等のエチレンと他のα− オレフィンとの共重合体などが挙げられる・これらの中でもポリエチレン又はポリプロピレンがより好適である。
【0066】
合成パルプの平均繊維長としては、0.1mm〜10mm程度のものが好ましく、0.1mm〜5mmの範囲内のものであることがより好ましい。合成パルプの濾水度は、得られる原紙の強度及び抄造性の観点から0.1秒/g〜20秒/g程度であることが好ましい。
【0067】
合成樹脂をパルプ化するに際しては、本発明の目的を損なわない範囲内で、各種の添加剤を加えることができる。添加剤の例としては、難燃剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐候安定剤、顔料などが挙げられる。
【0068】
原紙中の合成パルプの含有量は、コックリングの発生抑止、耐水性の観点から、原紙の全質量に対して、5質量%〜35質量%が好ましく、10質量%〜30質量%がより好ましく、15質量%〜25質量%が更に好ましい。
【0069】
合成樹脂から合成パルプの製法については、公知の方法を適用することができる。該製法としては、例えば、Encyclopedia of Chemical Technology 3rd ed, Vol. 19, pp.420-425に詳細に説明されている。また、他の製法としては、例えば、溶融紡糸した繊維を短く切った後に叩解する方法、樹脂組成物の溶液又はエマルジョンを用い、溶融フラッシュ又はエマルジョンフラッシュを行った後に叩解処理する方法などがある。
合成パルプの製法としては、樹脂組成物の溶液又はエマルジョンを用いてフラッシュ紡糸する方法が適している。中でも、ポリビニルアルコール(PVA)を親水化剤として用いるエマルジョンフラッシュ法が特に好ましく、紙の製造に好適な良好な繊維形状を有するパルプを得ることができる。PVAの添加量は、PVAを含む合成パルプ全量に対して、0.01質量%〜10質量%が好ましい。
【0070】
〜セルロース繊維原料〜
セルロース繊維原料としては、例えば、クラフトパルプ(KP)、サルファイトパルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ、又は、楮、三椏、麻、ケナフ等を原料とする非木材パルプ、新聞古紙、印刷古紙、ダンボール古紙、包装紙古紙、オフィス古紙等の古紙を原料とする脱墨パルプ(DIP)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0071】
原紙は、必要に応じて、一般に紙に用いられる各種の顔料、例えば、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、タルク、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、無定形シリケート、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等の無機顔料や、スチレン系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂並びにそれらの微小中空粒子等の有機顔料をさらに含有することも可能である。
【0072】
本発明における原紙は、合成パルプ及びセルロース繊維原料を含む紙料を調製し、その紙料を抄紙することにより得られる。その際使用される抄紙機としては、例えば、長網式、円網式、短網式、ツインワイヤー式抄紙機などが挙げられる。また、紙料中には、必要に応じて、各種のアニオン性、ノニオン性、カチオン性あるいは両性の歩留向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤、内添サイズ剤、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙用内添助剤を適宜添加できる。
【0073】
原紙には、ロジン系サイズ剤、アルケニルコハク酸無水物、アルキルケテンダイマー等に代表されるサイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、中性サイズ剤などの表面サイズ剤を内添或いは外添することができる。
さらに、酸化澱粉、酵素変性澱粉、カチオン変性澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉等の澱粉類、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メトキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、完全鹸化又は部分鹸化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、ケイ素変成ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、カゼイン等の水溶性高分子、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリブチルメタクリレート、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリル系共重合体等のラテックスに代表される各種バインダーや、塩化ナトリウムや硫酸ナトリウム等の導電剤が塗布又は含浸されていてもよい。
【0074】
本発明においてインクジェット記録媒体を構成する原紙の坪量は、コックリング抑制、紙腰、及び画質の観点から、30g/m〜300g/mであることが好ましく、45g/m〜180g/mであることがより好ましい。
【0075】
本発明におけるインクジェット記録媒体の具体的な製造方法については、通常の製造方法を適用することができる。例えば、本発明におけるインクジェット記録媒体は、特開2008−246988号公報の段落番号[0160]〜[0203]に記載に記載のインクジェット記録媒体の製造方法に準じて製造することができる。
【0076】
以上説明した本発明のインクジェット記録媒体上に、画像を記録するためのインクジェット法による記録方式については、特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して、放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット方式等を用いることができる。また、前記インクジェット記録方式には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0078】
(実施例1)
<原紙の作製>
ポリオレフィン系合成パルプ20部(商品名:SWPE620、三井化学(株)製、平均繊維長1.2mm、濾水度6sec/g)と、カナダ標準濾水度(CSF)400mlのLBKP80部からなるパルプスラリーに、カチオン澱粉0.8%、タルク5%、サイズ剤(商品名:コロパールE−5H、星光化学工業(株)製)0.3%、硫酸バンド0.3%を添加して長網抄紙機により抄紙後、下記組成のサイズプレス液を使ってサイズプレス処理を行い、坪量140g/mのインクジェット記録用原紙を抄造した。
【0079】
〜サイズプレス液の組成〜
・ポリビニルアルコール(商品名:PVA−117、(株)クラレ製) … 2部
・表面サイズ剤(商品名:SS373、日本PMC(株)製) … 0.3部
・水 … 97.7部
【0080】
<インク溶剤吸収層用塗布液Aの調製>
非晶質シリカ1(商品名:サイロジェットP412、グレースデビソン社製、合成非晶質シリカ、平均二次粒子径12.0μm、平均細孔容積2.0mL/g)100部に、分散剤として、ポリアクリル酸ソーダ0.2部(商品名:キャリボンL−400、三洋化成社製)を添加し、カウレス分散機で固形分濃度が20.0%の顔料スラリーを調製した。得られた顔料スラリーに、ポリビニルアルコール20部(商品名:PVA−117、(株)クラレ製)とエチレン−酢酸ビニル30部(商品名:スミカフレックスS−401、住友化学工業(株)製、不揮発分55%))を添加、攪拌・分散し、さらに水を添加し、固形分濃度が20%のインク溶剤吸収層用塗布液Aを得た。
【0081】
<インク溶剤吸収層の形成>
インク溶剤吸収層用塗布液Aを、上記の原紙の片面に、乾燥塗布量が10g/mとなるようにエアーナイフコーターで塗布し、エアドライヤーで熱風乾燥し、インク溶剤吸収層を形成した。
【0082】
<インク受容層用塗布液Aの調製>
下記組成に示した、(1)気相法シリカ微粒子と、(2)イオン交換水と、(3)「シャロールDC−902P」と、(4)「ZA−30」と、を混合し、液液衝突型分散機(アルティマイザー、スギノマシン社製)を用いて分散した後、得られた分散液を45℃に加熱し20時間保持した。その後、分散液に、(5)ホウ酸と、(6)ポリビニルアルコール溶解液と、(7)カチオン変性ポリウレタンと、を30℃で加え、インク受容層用塗布液Aを調製した。
塗布液におけるシリカ微粒子と水溶性樹脂との質量比(PB比=(1):(6))は、4.9:1であった。また、塗布液のpHは、3.4で酸性を示した。
【0083】
〜インク受容層用塗布液の組成〜
(1)気相法シリカ微粒子(無機微粒子) … 8.9部
(AEROSIL300SF75、日本アエロジル(株)製)
(2)イオン交換水 … 47.3部
(3)「シャロールDC−902P」(51.5%水溶液) … 0.78部
(分散剤、含窒素有機カチオンポリマー、第一工業製薬(株)製)
(4)「ZA−30」 … 0.48部
(第一稀元素化学工業(株)製、酢酸ジルコニル)
(5)ホウ酸(7.5%水溶液) … 4.38部
(6)下記組成のポリビニルアルコール(水溶性樹脂)溶解液 … 26.0部
(7)カチオン変性ポリウレタン … 1.8部
(スーパーフレックス650−5(25%溶液)、第一工業製薬(株)製)
【0084】
〜ポリビニルアルコール溶解液の組成〜
・PVA235 … 1.81部
(ポリビニルアルコール、(株)クラレ製)
・イオン交換水 … 23.04部
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル … 0.55部
(ブチセノール20P:協和発酵ケミカル(株))
・エマルゲン109P … 0.6部
(界面活性剤、花王(株)製)
【0085】
<インク受容層の形成>
上記で得られた片面にインク溶剤吸収層が設けられた原紙のインク溶剤吸収層が設けられた面に、以下のようにして、インク受容層用塗布液Aをエクストルージョンダイコーターにて塗布して塗布層を形成した。
具体的には、インク受容層用塗布液Aに75g/mで、下記組成のインライン液を5g/mの速度(塗布量)でインライン混合した後、上記インク溶剤吸収層を形成した原紙上に塗布した。
【0086】
〜インライン液の組成〜
(1)アルファイン83(大明化学工業(株)製) … 2.0部
(2)イオン交換水 … 8.0部
【0087】
上記塗布により形成された塗布層を、熱風乾燥機にて80℃で(風速3〜8m/秒)で塗布層の固形分濃度が36%になるまで乾燥させた。この塗布層は、この間は恒率乾燥速度を示した。その直後、上記により塗布層を塗布した原紙を、下記組成の塩基性化合物を含む液に3秒間浸漬して塗布層上に、塩基性化合物を7g/mを付着させ、更に72℃下で10分間乾燥させた。これにより、実施例1のインクジェット記録媒体を作製した。
【0088】
〜塩基性化合物を含む液の組成〜
(1)ホウ酸 … 0.65部
(2)炭酸アンモニウム(1級:関東化学(株)製) … 5.0部
(3)イオン交換水 … 88.35部
(4)ポリオキシエチレンラウリルエーテル(界面活性剤) … 6.0部
(花王(株)製「エマルゲン109P」(10%水溶液)、HLB値13.6)
【0089】
(実施例2)
実施例1の原紙の作製において、ポリオレフィン系合成パルプの配合量を30部とし、LBKPの配合量を70部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例2のインクジェット記録媒体を作製した。
【0090】
(実施例3)
実施例1の原紙の作製において、ポリオレフィン系合成パルプの配合量を10部とし、LBKPの配合量を90部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例3のインクジェット記録媒体を作製した。
【0091】
(実施例4)
実施例1の原紙の作製において、ポリオレフィン系合成パルプの配合量を40部とし、LBKPの配合量を60部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例4のインクジェット記録媒体を作製した。
【0092】
(実施例5)
実施例1において、インク溶剤吸収層用塗布液Aの調製に用いた非晶質シリカ1を、非晶質シリカ2(商品名:ファインシールX−30、(株)トクヤマ製、平均二次粒子径3.2μm)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例5のインクジェット記録媒体を作製した。
【0093】
(比較例1)
実施例1の原紙の作製において、ポリオレフィン系合成パルプの配合量を0部とし、LBKPの配合量を100部とした以外は、実施例1と同様にして、比較例1のインクジェット記録媒体を作製した。
【0094】
(比較例2)
実施例1のインク溶剤吸収層の形成において、インク溶剤吸収層用塗布液Aを、下記により調製したインク溶剤吸収層用塗布液Bとした以外は、実施例1と同様にして、比較例2のインクジェット記録媒体を作製した。
【0095】
<インク溶剤吸収層用塗布液Bの調製>
合成非晶質シリカ(商品名:サイロジェットP412、グレースデビソン社製、平均二次粒子径12.0μm、平均細孔容積2.0ml/g)100部に、分散剤として、ポリアクリル酸ソーダ0.2部(商品名:キャリボンL−400、三洋化成社製)を添加し、カウレス分散機で、固形分濃度が20.0%の顔料スラリーを調製した。得られた顔料スラリーにポリビニルアルコール20部(商品名:PVA−117、(株)クラレ製)とエチレン−酢酸ビニル30部(商品名:スミカフレックスS−401、住友化学工業(株)製,不揮発分55%)、及び媒染剤(ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、商品名:ハイマックスSC−505、ハイモ(株)製、50%溶液)10部を添加、攪拌・分散し、さらに水を添加し、固形分濃度が20%のインク溶剤吸収層用塗布液Bを得た。
インク溶剤吸収層用塗布液Bにおける含有量は、約3.5%であった。
【0096】
(比較例3)
比較例2のインク受容層の形成において、インク受容層用塗布液Aを、下記により調製したインク受容層用塗布液Bとし、インライン液を混合しなかった以外は、比較例2と同様にして、比較例3のインクジェット記録媒体を作製した。
【0097】
<インク受容層用塗布液Bの調製>
下記組成に示した、(1)気相法シリカ微粒子と、(2)イオン交換水と、(3)「シャロールDC−902P」と、を混合し、液液衝突型分散機(アルティマイザー、スギノマシン社製)を用いて分散させた後、得られた分散液を45℃に加熱し20時間保持した。その後、分散液に(5)ホウ酸と、(6)ポリビニルアルコール溶解液と、を30℃で加え、インク受容層用塗布液を調製した。
塗布液におけるシリカ微粒子と水溶性樹脂との質量比(PB比=(1):(6))は、4.9:1であった。また、塗布液のpHは、3.4で酸性を示した。
【0098】
〜インク受容層用塗布液Bの組成〜
(1)気相法シリカ微粒子(無機微粒子) … 8.9部
(AEROSIL300SF75、日本アエロジル(株)製)
(2)イオン交換水 … 47.3部
(3)「シャロールDC−902P」(51.5%水溶液) … 0.78部
(分散剤、含窒素有機カチオンポリマー、第一工業製薬(株)製)
(5)ホウ酸(7.5%水溶液) … 4.38部
(6)下記組成のポリビニルアルコール(水溶性樹脂)溶解液 … 26.0部
【0099】
〜ポリビニルアルコール溶解液の組成〜
・PVA235 … 1.81部
(ポリビニルアルコール、(株)クラレ製)
・イオン交換水 … 23.04部
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル … 0.55部
(ブチセノール20P:協和発酵ケミカル(株))
・エマルゲン109P … 0.6部
(界面活性剤、花王(株)製)
【0100】
(比較例4)
比較例2のインク受容層の形成において、インク受容層用塗布液Aを、下記により調製したインク受容層用塗布液Cとし、インクジェット受容層塗布方法を下記のように変更した以外は、比較例2と同様にして、比較例4のインクジェット記録媒体を作製した。
【0101】
<インク受容層用塗布液C及び凝固液の調製>
凝集体の平均粒子径0.15μm(粒子径の測定:PSC法による)のヒュームドアルミナ粒子(商品名:Cab−O−SpersePG003、キャボット・スペシャリティ・ケミカルズ・インク社製)100部、鹸化度88mol%のポリビニルアルコール(商品名:PVA235、クラレ社製)10部を用いて、混合攪拌して、固形分濃度が20%のインク受容層用塗布液Cを調製した。また、硼砂を水に溶解し固形分濃度が3%の凝固液を調製した。
【0102】
<インク受容層用の形成>
インク溶剤吸収層を形成した原紙上に、キャストコーターで、上記インク受容層用塗布液Cを乾燥塗工量が12g/mとなるよう塗布し、次いで上記凝固液を塗布後、表面温度105℃のキャストドラムに圧着乾燥し、比較例4のインクジェット記録記録媒体を作製した。
【0103】
(比較例5)
実施例1においてインク溶剤吸収層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例5のインクジェット記録媒体を作製した。
【0104】
(比較例6)
比較例2においてインク受像層を形成しなかった以外は、比較例2と同様にして、比較例6のインクジェット記録媒体を作製した。
【0105】
表1に、以上により作製した各インクジェット記録媒体について、インク受容層に含まれる無機微粒子、水溶性樹脂及び媒染剤、インク溶剤吸収層に含まれる顔料及び媒染剤、原紙中に含まれる合成パルプに関する事項をまとめて示す。
【0106】
(評価)
得られた各インクジェット記録媒体について、以下の評価を行なった。評価結果を下記表1に示す。
【0107】
−1.印画濃度−
純正インクセットを装填したミニラボ用高速インクジェットプリンタ(富士フイルム(株)製「DL410」)を用いて、各インクジェット記録媒体上に黒ベタ画像を印画した。印画部の黒濃度を反射濃度測定計(X−rite社製、Xrite938)にて測定し、下記評価基準に従って評価した。
<評価基準>
A:2.4以上
B:2.2以上2.4未満
C:2.2未満
【0108】
−2.滲み評価−
純正インクセットを装填したミニラボ用高速インクジェットプリンタ(富士フイルム(株)製「DL410」)を用いて、各インクジェット記録媒体上にマゼンタインクとブラックインクとを隣あわせにした格子状の線状パターン(線幅0.28mm)を印画してにじみ評価用サンプルを作製した。得られたにじみ評価用サンプルを23℃、相対湿度90%の恒温恒湿槽に14日間保管した後、下記の評価基準に従って、滲み(経時滲み)を目視で評価した。
<評価基準>
A:大きな変化がみられなかった。
B:若干の変化が観測されたが、実用上許容レベルであった。
C:変化が観測され、実用上の限界レベルであった。
D:大きく変化がみられ、実用上問題のあるレベルであった。
【0109】
−3.コックリング評価−
各インクジェット記録媒体を、はがきサイズに断裁し、純正インクを装填したインクジェットプリンターPM−A820を用いて、2cm×2cmの単色100%ベタ画像を該記録媒体の中央に印画し、印画直後に発生する波打ちの最大高さをレーザー変位計(キーエンス社製)にて測定し、下記評価基準に従って評価した。
<評価基準>
A:1mm以上2mm未満だった。
B:2mm以上3mm未満だった。
C:3mm以上だった。
【0110】
−4.紙腰評価−
A4サイズに断裁した各インクジェット記録媒体を、製本機(TB−1000:マックス株式会社)で20枚を綴じ、ページ捲りする際の取り扱い性を、下記の評価基準に従って相対評価した。
<評価基準>
A:適切な「紙腰」であり、非常に取り扱いやすい。
B:「紙腰」が適度であり、実用上問題ない。
C:「紙腰」が高め、または低めであり、実用上問題である。
D:「紙腰」が高すぎる、または低すぎ、非常に、実用上大きな問題である。
【0111】
−5.耐水性評価−
23℃の環境下、各インクジェット記録媒体を3cm×10cmサイズにカットした試験片をイオン交換水に1時間浸し、1時間経過後に水から取り出して自然乾燥した。乾燥後の試験片のインク受容層を観察し、目視にてひび割れ、光沢度の変化の程度を確認し、下記の評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
A:割れ、光沢度の変化が全く発生していなかった。
B:光沢度が僅かに変化しているが、割れは発生しておらず実用上問題になる程度ではなかった。
C:割れが僅かに発生していた。
D:多くの割れがみられ、実用上許容できる程度ではなかった。
【0112】
−6.ブロンジング評価−
インクジェット記録媒体を、純正インクを装填したンクジェットプリンターPM−A820を用いて、青ベタ画像を印画し、画像部が形成されたインクジェット記録用シートを23℃、65%RHの雰囲気に24時間放置し、ブロンズの発生程度を目視で観察し、下記基準に基づき評価した。
<評価基準>
A:まったくブロンズは発生しなかった。
B:わずかにブロンズが発生していた。
C:全面にブロンズが発生していた。
【0113】
【表1】

【0114】
表1に示されるように、実施例の各インクジェット記録媒体は、比較例の各インクジェット記録媒体との対比において、各評価項目の何れにおいても優れたものであることが分った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成パルプを含有する原紙と、
前記原紙の少なくとも一方の面上に設けられ、無機微粒子、水溶性樹脂、及び媒染剤を含有するインク受容層と、
前記原紙と前記インク受容層との間に設けられ、層中の全固形分質量に対する媒染剤の含有量が1質量%以下であり、且つ平均二次粒子径が0.3μm〜20μmの顔料を含有するインク溶剤吸収層と、
を有するインクジェット記録媒体。
【請求項2】
前記インク受容層が含有する無機微粒子が、平均二次粒子径が30nm以下の無機微粒子である請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項3】
前記インク受容層が含有する無機微粒子が、気相法シリカである請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項4】
前記媒染剤が、アルミニウム化合物及びジルコニウム化合物から選択される少なくとも1種の媒染剤である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項5】
前記原紙における合成パルプの含有量が、原紙の全質量に対して、5質量%〜35質量%である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体。

【公開番号】特開2011−56904(P2011−56904A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211932(P2009−211932)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】