説明

インクジェット記録方法およびインクジェット記録装置

【課題】双方向記録を行う場合であっても、インク打ち込み順による色ムラや不均一性等の画像劣化を低減し、適正なインク滴の吐出を阻害することなく、高画質な画像を得る。
【解決手段】インクを吐出するノズルが記録媒体の搬送方向に複数配列して構成されるノズル列を2以上有し、前記ノズル列を前記搬送方向と交差する主走査方向に走査しながら前記記録媒体を前記搬送方向に搬送して、ある領域を複数パスで記録を行うことにより画像を形成するインクジェット記録方法であって、前記2以上のノズル列は、それぞれ同一主走査時に同時に記録を行わないで順番に記録を行う2以上のノズル列群に分類し、1つのノズル列群が所定の複数パスで記録した後、他のノズル群がその所定のパスを複数パスで記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方法およびインクジェット記録装置に関し、特に、双方向記録により画像を完成するインクジェット記録方法およびインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、高速な記録により画像を出力する場合には、記録走査を双方向で行う双方向記録が一般に採用されている。双方向記録により画像を完成する場合、記録媒体に対するインクの打ち込み順序が画質を左右することがある。その1つに打ち込み順ムラがある。打ち込み順ムラは、異なるインクのノズル列が主走査方向に並列している記録ヘッドを用いて双方向記録を行うと、往路におけるインク打ち込み順序と復路におけるインク打ち込み順序とが異なる。その結果、往路記録と復路記録において濃度差や色調差などが発生する現象である。このような打ち込みムラは、1回の走査で画像を完成させる1パス記録や、1回の走査で比較的多くのインク量を記録する少ないパス数のマルチパス記録において発生が顕著になる。
【0003】
このような、インク打ち込み順の違いによる画像劣化を抑制するために、各インクの使用ノズル列の幅および位置をそれぞれ独立に制御する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような技術では、設定された記録条件を取得もしくは参照し、設定された記録条件に応じて、各ノズル列において使用する部分(使用ノズル部)の幅および位置をそれぞれ独立に設定するものとなっている。このように、各インクの使用ノズル列の幅および位置をそれぞれ独立に制御することで、各記録領域間のインク打ち込み順を一様にすることが可能になり、インク打ち込み順による色ムラや不均一性等の画像劣化を低減し、高画質な画像を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−307672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術を用いると、記録ヘッドのインク吐出用ノズルのうちの使用するインク吐出ノズルは、使用時間および吐出回数により、吐出機構部(ヒーター等)の劣化が見られる。その結果、長期的な使用と共にインク吐出が正常ではなくなり、インク吐出量や吐出速度が低下することがある。
【0006】
また、不使用のインク吐出ノズルにおいても、ノズル内のインクは吐出されずに長時間放置され続けるために、吐出口から水分のみが蒸発していき、特に吐出口付近の顔料濃度が上がってしまう現象が見られる。さらに周囲からの熱および湿度などの影響(外的ストレス)を受けると、インクの特性によっては、ノズル内で異物が発生して吐出口周辺やノズル内壁面に付着し、適正なインク滴の吐出を阻害することもある。その結果、色ムラが生じ、画像劣化が生じることがある。
【0007】
本発明は以上の点を鑑みてなされたものであり、双方向記録を行う場合であっても、インク打ち込み順による色ムラや不均一性等の画像劣化を低減し、高画質な画像を得るインクジェット記録方法およびインクジェット記録装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのために本発明では、インクを吐出するノズルが記録媒体の搬送方向に複数配列して構成されるノズル列を2以上有し、前記ノズル列を前記搬送方向と交差する主走査方向に走査しながら前記記録媒体を前記搬送方向に搬送して、ある領域を複数パスで記録を行うことにより画像を形成するインクジェット記録方法であって、前記2以上のノズル列は、それぞれ同一主走査時に同時に記録を行わないで順番に記録を行う2以上のノズル列群に分類する工程と、前記2以上のノズル列群のうち、所定のパスに最後にインクを吐出するノズル列群以外の記録が行われるとき、前記主走査方向に走査した後に行う前記記録媒体の搬送は、前記ノズル列群の長さを前記複数パスで割り、その数を前記ノズル列群の長さから減じた長さを、前記搬送方向の上流側に搬送する工程と、前記2以上のノズル列群のうち、前記所定のパスに最後にインクを吐出するノズル列群の記録が行われるとき、前記主走査方向に走査した後に行う前記記録媒体の搬送は、前記ノズル列群の長さを前記複数パスで割り、その数を前記ノズル列群の長さから減じた長さに前記ノズル列群の数から2を減じた数を乗じた長さを、前記搬送方向の下流側に搬送する工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上の構成によれば、一のノズル列群が所定のパスを複数パスで記録した後、他のノズル列群がその所定のパスを複数パスで記録をする。その結果、双方向記録を行う場合であっても、インク打ち込み順による色ムラや不均一性等の画像劣化を低減し、適正なインク滴の吐出を阻害することなく、高画質な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態のインクジェット記録装置を示す概略斜視図である。
【図2】第1の実施形態の記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態のインクの打ち込み順序を示す説明図である。
【図4】第1の実施形態の記録方法を示すローチャートである。
【図5】「高速記録モード」の記録方法を示す説明図である。
【図6】第2の実施形態のインクの打ち込み順序を示す説明図である。
【図7】第2の実施形態の記録方法を示すローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態のカラーのインクを用いるインクジェット記録装置を示す概略斜視図である。インクカートリッジ202は、4色のカラーインク(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)がそれぞれ入れられたインクタンクと、記録ヘッド201から構成されている。記録媒体の搬送ローラ103は、補助ローラ104とともに記録媒体107を抑えながら図中の矢印方向または矢印反対方向に回転し、記録媒体107の搬送を行う。キャリッジ106は、4つのインクカートリッジを支持し、搭載するインクカートリッジ202および記録ヘッド201を記録とともに移動させる。このキャリッジ106は、記録装置が記録を行っていないとき、あるいは記録ヘッドの回復動作を行うときには図の点線で示したホームポジション位置に待機するように制御される。
【0012】
記録開始前、図1に示す位置(ホームポジション)に位置するキャリッジ106は、記録開始命令を受信すると、x方向に移動しながら記録ヘッド201に設けられた記録素子を駆動して記録媒体上に記録ヘッドの記録幅に対応した領域の記録を行う。キャリッジの走査方向に沿って、記録媒体端部まで記録をする。記録が終了すると、続く記録走査が始まる前に紙送りローラ103が図に示した矢印方向または矢印反対方向へ回転して必要な幅だけy方向又は−y方向への記録媒体の搬送が行われる。再度記録開始命令を受信すると、キャリッジは−x方向に移動しながら記録を行い、キャリッジが元のホームポジションに戻ると、再度記録媒体の搬送が必要な幅だけ行われる。このように記録のための主走査と記録媒体搬送とを繰り返すことにより記録媒体上への記録が完成する。記録ヘッドからインクを吐出する記録動作は、記録制御手段(不図示)からの制御に基づいて行われる。
【0013】
また、回復動作を行う位置には、図示していないが、記録ヘッドの前面(吐出口面)をキャップするキャッピング手段や、キャッピング手段によるキャップ状態で記録ヘッド内の増粘インクや気泡を除去する等ヘッド回復動作を行う回復ユニットが設けられている。また、キャッピング手段の側方には、クリーニングブレード等が設けられ記録ヘッド201に向けて突出可能に支持され、記録ヘッドの前面との当接が可能となっている。これにより、回復動作後に、クリーニングブレードを記録ヘッドの移動経路中に突出させ、記録ヘッドの移動にともなって記録ヘッド前面の不要なインク滴や汚れ等の払拭が行われる。
【0014】
図2は、本実施形態の記録装置の構成の各部の記録制御を実行するための制御構成を示すブロック図である。記録ヘッドに対する記録データの供給制御を行うゲートアレイ404は、記録信号を入力するインターフェイス400、MPU401、DRAM403間のデータの転送制御も行う。また、プログラムROM402は、MPU401が実行する制御プログラムを格納する。ダイナミック型のRAM(DRAM)403は、各種データ(上記記録信号やヘッドに供給される記録データ等)を保存しておくRAMであり、記録ドット数や、インク記録ヘッドの交換回数等も記憶できる。キャリアモータ(CRモータ)406は、記録ヘッドを搬送するためのモータであり、搬送モータ(LFローラ)405は、記録媒体搬送のためのモータである。モータドライバ407、408は、夫々搬送モータ405、キャリアモータ406を駆動する。ヘッドドライバ409は、記録ヘッド201を駆動する。
【0015】
以上説明した構成のインクジェット記録装置を用い、本実施形態のインク打ち込み順を制御した記録方法について以下に説明する。打ち込み順ムラは、異なるインクのノズル列が主走査方向に並列している記録ヘッドを用いて双方向記録を行うと、往路におけるインク打ち込み順序と復路におけるインク打ち込み順序とが異なるために、往路記録と復路記録において濃度差や色調差などが発生する。また、顔料濃度が異なるインクを重ね打ちしたときに、顔料濃度が低いインクが先打ちされると、上に重ね打ちされた顔料濃度が比較的高いインクが着弾位置に浸透しづらくなり、狙い通りの濃度が出ないことがある。その結果、均一性の悪化はもとより、濃度・色彩度・光沢感の低下などの画質劣化を招く。本実施形態では、このようなインク打ち込み順に起因したパス毎の濃度差や色調差を抑制し、さらに顔料濃度が異なるインクを用いるときの画像劣化を抑制する。以下、本実施形態の記録方法について詳細に述べる。
【0016】
図3は、本実施形態のインクの打ち込み順序を示す説明図である。本実施形態では、「高画質記録モード」の記録方法である、インク打ち込み順序を、先打ちさせたいインク(群)と後打ちさせたいインク(群)の2段階に制御する場合について説明する。
【0017】
図3(b)は、本実施形態で使用する記録ヘッドを示す模式図である。本実施形態の記録ヘッドは、インクを吐出するノズルが記録媒体の搬送方向に複数配列して構成される。
【0018】
図3(a)先打ちインクAと後打ちインクBのノズル列が並列したヘッドにおいて、インクAとインクBの打ち込み順序を一様に制御した記録方法を示した図である。ここで各インクは4パスの双方向マルチパス記録で記録をし、それぞれのインクを先打ちと後打ちとで分割して8パスの双方向記録で画像が形成されるようになっている。先打ちと後打ちとインクの打ち込み順を制御する本実施形態において、例えば、無彩色で2段階の顔料濃度となる黒インクとグレーインクを使用する場合が挙げられる。この場合、図3(b)に示すインクAおよびインクBは、「黒インク」および「グレーインク」となる。
【0019】
図3において、上下方向が記録媒体の搬送方向として示されており、右方向に向かって主走査記録毎の記録ヘッドの副走査軸上の位置が相対的に分かるようになっている。また、各主走査記録においてインクAとBのどちらが記録されているかは、記録ヘッドのどちらのノズルが色付けされているかで判別できる。
【0020】
図4は、本実施形態の記録方法を示すローチャートである。記録開始時の変数n=1とする。
【0021】
まず、nが奇数か否かを判別する(ステップS101)。nが奇数の場合、記録ヘッドが搭載されたキャリッジはホームポジション(HP)に位置しており、HPからバックポジション(BP)に向けて主走査記録を開始する(ステップS102)。この時の主走査記録はインクAのみで記録される(ステップS103)。往方向の主走査記録が終わるとキャリッジはBPに位置する(ステップS104)。
【0022】
ここで、全ての画像記録が終了すれば記録終了となるが、全ての画像記録が終了していなければ記録媒体の搬送制御となる。次にステップS109へ進み、nが奇数の場合はステップS110へ進む。ステップS110では、記録媒体を記録媒体の排出方向とは反対方向に、ノズル長の4分の3と等量搬送させる。その後、変数nに1を加えてステップS101へ戻る。
【0023】
nが奇数でない(つまり、偶数である)場合(ステップS101)、記録ヘッドが搭載されたキャリッジはBPに位置しており、BPからHPに向けて主走査記録を開始する(ステップS105)。この時の主走査記録はインクBのみで記録される(ステップS106)。
【0024】
ここで、全ての画像記録が終了すれば記録終了となるが、全ての画像記録が終了していなければ記録媒体の搬送制御となる。次に、ステップS109へ進み、nが偶数の場合はステップS111へ進む。ステップS111では、記録媒体を記録媒体の排出方向と同じ方向に、ノズル長と等量搬送させる。その後、変数nに1を加えてステップS101へ戻る。
【0025】
その後、ステップS101からステップS108までを繰り返し、全記録が終了すると(ステップS108)、記録終了となる。
【0026】
図3(a)の斜め斜線部で示す任意の1バンド記録領域に着目すると、インクの打ち込み順序としては、インクAのみが4パスで画像形成された後に、インクBのみが4パスで画像形成されるようになっているのが分かる。これは、どの記録画像領域を見ても同様であり、インクAとインクBの打ち込み順が完全に一様になっていることになる。
【0027】
一方、記録画質がインク打ち込み順序に依存しないような記録媒体に記録する場合、あるいは、画質よりも記録速度を優先させたいような記録(線画やテキスト記録等)の場合には、インク打ち込み順序を考慮しない「高速記録モード」の方が適していると言える。
【0028】
図5は、「高速記録モード」の記録方法を示す説明図である。各インク毎の記録パス数は4パスの設定となっており、「高速記録モード」は「高画質記録モード」と異なり全ての記録をこの4パスで完成する。したがって、図5の斜め斜線部で示す任意の1バンド記録領域に着目すると、4回の主走査記録で画像形成が完了していることになる。これは図1で示した8回の主走査記録で画像を完成する「高画質記録モード」に対して記録速度が速いことは明らかである。
【0029】
このようの、本実施形態では、ユーザが記録前段階において「高画質記録モード」または「高速記録モード」の最適記録モードを選択できるようにする。その結果、本実施形態では、記録装置の構成を変更することなく、インク吐出を制御するマスクデータや記録媒体の搬送を制御するLFモータ駆動信号等を変更するだけで「高画質記録モード」と「高速記録モード」を容易に切り換えることができる。
【0030】
以上より、本実施形態では、高画質記録モードにおいて、例えば顔料濃度が異なる2種のインクで画像記録する場合において、顔料濃度が高いインクで先に画像記録を行う。したがって、顔料濃度が比較的低いインクを重ね打ちすることが可能になり、双方のインクがほぼ狙い通りの浸透挙動を行える。その結果、均一性の悪化や濃度・色彩度・光沢感の低下の無い高画質な画像形成が可能になる。
【0031】
また、本実施形態の高画質記録モードでは画像記録に全ノズルを使用するため、ノズル列内に記録頻度の偏りが発生せず、各ノズル間のインク吐出状態が変わることを防ぐことができる。従って、高速記録モードにおいても濃度ムラ等の発生が無い高品質な画像形成が可能となる。
【0032】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、先打ちさせたいインク(群)と後打ちさせたいインク(群)との2つの群に分けて記録を行うことにより画像を完成する記録方法であったが、本発明は先打ちのインクと後打ちのインクのみの2つの群に限定するものではない。
【0033】
すなわち、本実施形態では、インク打ち込み順序を、先打ちさせたいインク(群)と後打ちさせたいインク(群)、更にはその間で記録したいインク(群)の3段階に制御する場合の「高画質記録モード」の記録方法について説明する。例えば、3段階に濃度の異なる無彩色インク(黒インク、濃グレーインク、淡グレーインク)を搭載したインクジェット記録装置において、3種類の無彩色インクの打ち込み順序を完全に一様にする。その結果、滑らかで均一性の良いグレー階調、更には締まりが良く深みのあるグレー暗部を達成することができる。
【0034】
図6は、本実施形態のインクの打ち込み順序を示す説明図である。本図では、先打ちインクCと後打ちインクE、さらには中間打ちインクDのノズル列が並列したヘッドにおいて、インクC、D、Eの打ち込み順序を一様に制御した記録方法を示す図である。ここで各インクは4パスの双方向マルチパス記録で画像が形成されるようになっている。上下方向が副走査方向として示されており、右方向に向かって主走査記録毎の記録ヘッドの副走査軸上の位置が相対的に分かるようになっている。また、各主走査記録においてインクC、D、Eの内のどのインクが記録されているかは、記録ヘッド内の3つのノズル列の内、どのノズルが色付けされているかで判別できる。
【0035】
図7は、本実施携帯の記録方法を示すフローチャートである。記録開始時の変数n=1とする。まず、n=1+3j(j=0,1,2,・・・)を満たす整数の場合(ステップS201)、直後の一主走査記録をインクCのみで記録する(ステップS202)。主走査は、n=1の時はHPからBPに向けての記録走査になるが、その後変数nの変化に伴い(n=1,4,7,・・・)走査方向は変更されるので、主走査記録終了後のキャリッジ位置もBPかHPかが都度変化する。主走査記録が終了すると、全ての画像記録が終了したか否かを判断する(ステップS206)。全て記録が終了すれば記録終了となるが、全ての画像記録が終了していなければ記録媒体の搬送制御となる。そして、n=1+3j(j=0,1,2,・・・)を満たす整数の場合(ステップS207)、記録媒体を記録媒体の排出方向とは反対方向に、ノズル長の4分の3と等量搬送させる(ステップS208)。その後、変数nに1を加えて(ステップS210)、ステップS201へ戻る。
【0036】
次に、n=1+3j(j=0,1,2,・・・)を満たさない整数の場合(ステップS201)、n=2+3j(j=0,1,2,・・・)を満たす整数であるか否かを判断する(ステップS203)。ステップS203を満たす場合、直後の一主走査記録をインクDのみで記録する(S204)。主走査は、n=2の時はBPからHPに向けての記録走査になるが、その後変数nの変化に伴い(n=2,5,8,・・・)走査方向は変更されるので、主走査記録終了後のキャリッジ位置もHPかBPかが都度変化する。主走査記録終了後にて、全ての画像記録が終了であるか否かを判断する(ステップS206)。全ての画像記録が終了していない場合には、n=2+3j(j=0,1,2,・・・)を満たす整数であるか否かを判断する(ステップS207)。満たす場合には、n=1+3j(j=0,1,2,・・・)を満たす整数の場合と同様に、記録媒体を記録媒体の排出方向とは反対方向に、ノズル長の4分の3と等量搬送させる(ステップS208)。その後、変数nに1を加えてステップS201へ戻る。
【0037】
次に、n=1+3j(j=0,1,2,・・・)またはn=2+3j(j=0,1,2,・・・)の双方を満たさない場合(ステップS207)、直後の一主走査記録をインクEのみで記録する(ステップS205)。主走査は、n=3の時はHPからBPに向けての記録走査になるが、その後変数nの変化に伴い(n=3,6,9,・・・)走査方向は変更されるので、主走査記録終了後のキャリッジ位置もBPかHPかが都度変化する。主走査記録終了後にて、全ての画像記録が終了すれば記録終了となる(ステップS206)。全ての画像記録が終了していなく、n=1+3j(j=0,1,2,・・・)またはn=2+3j(j=0,1,2,・・・)の双方を満たさない場合(ステップ207)、記録媒体を記録媒体の排出方向と同じ方向に、ノズル長の4分の7と等量搬送させる(ステップS209)。その後、変数nに1を加えてステップS201へ戻る。
【0038】
その後、ステップS201以降を繰り返し、本実施形態の画像記録が行われ、全画像記録がなされて記録終了となる。
【0039】
この場合、図5の斜め斜線部に示すある任意の1バンド記録領域に着目すると、インクの打ち込み順序としては、インクCのみが4パスで画像形成された後に、インクDのみが4パスで画像形成される。さらにその後にインクEのみが4パスで画像形成されるようになっているのが分かる。これは、どの記録画像領域を見ても同様であり、インクC、D、Eの打ち込み順が完全に一様になっていることになる。
【0040】
一方、記録画質がインク打ち込み順序に依存しないような特別な記録媒体に記録する場合には、図5を用いて説明したとおり、インク打ち込み順序を考慮しない「高速記録モード」の方が適していると言える。また、画質よりも記録速度を優先させたいような記録(例えば、線画やテキスト記録)の場合にも、インク打ち込み順序を考慮しない「高速記録モード」の方が適していると言える。
【0041】
従って、本実施形態では、ユーザが記録前段階において「高画質記録モード」または「高速記録モード」の最適記録モードを選択できるようにする。本実施形態では、記録装置の構成を変更することなく、インク吐出を制御するマスクデータや記録媒体の搬送を制御するLFモータ駆動信号等を変更するだけで「高画質記録モード」と「高速記録モード」を容易に切り換えることができる。
【0042】
以上より、本実施形態の高画質記録モードにおいて、例えば顔料濃度が異なる3種のインクで画像記録する場合においても、顔料濃度が高い側のインクから順に画像形成を行うで、夫々のインクがほぼ狙い通りの浸透挙動を行える。その結果、均一性の悪化や濃度、色彩度および光沢感の低下の無い高画質な画像形成ができる。
【0043】
また、本実施形態の高画質記録モードでは画像記録に全ノズルを使用するため、ノズル列内に記録頻度の偏りが発生せず、各ノズル間のインク吐出状態が変わることを防ぐことができる。従って、高速記録モードにおいても濃度ムラ等の発生が無い高品質な画像形成をすることができる。
【0044】
(その他)
上述した実施形態では、ノズル列を2つおよび3つ有した記録ヘッドの記録方法について説明をしたが、本発明は、ノズル列を2以上有する記録ヘッドであればよい。
【0045】
本発明の記録方法は、2以上のノズル列は、それぞれ同一主走査時に同時に記録を行わないで順番に記録を行うノズル列群に分類する。そして、所定のパスに最後にインクを吐出するノズル列群以外のあるノズルが所定のパスに記録が行われると、主走査方向に走査した後に行う前記記録媒体の搬送は、ノズル列群の長さを複数パスで割る。そしてその数をノズル列群の長さから減じた長さを、搬送方向の上流側に搬送する。この主走査方向の走査と主走査方向と交差する方向へ記録媒体を搬送して記録を行う。そして、所定のパスを最後に記録するノズル群の記録が行われると、ズル列群の長さを複数パスで割り、その数をノズル列群の長さから減じた長さにノズル列群の数から2を減じた数を乗じた長さを、搬送方向の下流側に搬送する。
【0046】
すなわち、ノズル列群の搬送方向の長さをL、所定のパスの数をP、ノズル列群の数をNとする。この場合、2以上のノズル列群のうち、所定のパスに最後にインクを吐出するノズル列群以外の記録が行われるとき、主走査方向に走査した後に行う記録媒体を搬送する長さは、(P+1)/P×Lである。また、2以上のノズル列群のうち、所定のパスに最後にインクを吐出するノズル列群の記録が行われるとき、主走査方向に走査した後に行う記録媒体を搬送する長さは、(L−L/P)×(N−2)+Lである。
【0047】
このような記録方法を行うことにより、必ず所定のパスは1つのノズル列群が複数回走査した後に、他のノズル列が複数回走査することになる。これにより、インク打ち込み順による色ムラや不均一性等の画像劣化を低減し、高画質な画像を得ることができる。
【0048】
なお、上述した実施形態では、各インクのマルチパス記録を各ノズル列群が4パス双方向の記録を行うものとしたが、パス数は4パスに限定しない。また、記録方向も双方向記録から片方向記録としてもよい。
【符号の説明】
【0049】
103 記録媒体搬送ローラ
106 キャリッジ
201 記録ヘッド
202 インクカートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するノズルが記録媒体の搬送方向に複数配列して構成されるノズル列を2以上有し、前記ノズル列を前記搬送方向と交差する主走査方向に走査しながら前記記録媒体を前記搬送方向に搬送して、ある領域を複数パスで記録を行うことにより画像を形成するインクジェット記録方法であって、
前記2以上のノズル列は、それぞれ同一主走査時に同時に記録を行わないで順番に記録を行う2以上のノズル列群に分類する工程と、
前記2以上のノズル列群のうち、所定のパスに最後にインクを吐出するノズル列群以外の記録が行われるとき、前記主走査方向に走査した後に行う前記記録媒体の搬送は、前記ノズル列群の長さを前記複数パスで割り、その数を前記ノズル列群の長さから減じた長さを、前記搬送方向の上流側に搬送する工程と、
前記2以上のノズル列群のうち、前記所定のパスに最後にインクを吐出するノズル列群の記録が行われるとき、前記主走査方向に走査した後に行う前記記録媒体の搬送は、前記ノズル列群の長さを前記複数パスで割り、その数を前記ノズル列群の長さから減じた長さに前記ノズル列群の数から2を減じた数を乗じた長さを、前記搬送方向の下流側に搬送する工程と、
を備えることを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項2】
インクを吐出するノズルが記録媒体の搬送方向に複数配列して構成されるノズル列を2以上有し、前記ノズル列を前記搬送方向と交差する主走査方向に走査しながら前記記録媒体を前記搬送方向に搬送して、ある領域を複数パスで記録を行うことにより画像を形成するインクジェット記録方法であって、
前記2以上のノズル列は、それぞれ同一主走査時に同時に記録を行わないで順番に記録を行う2以上のノズル列群に分類する工程と、
前記ノズル列群の前記搬送方向の長さをL、所定のパスの数をP、前記ノズル列群の数をNとすると、
前記2以上のノズル列群のうち、所定のパスに最後にインクを吐出するノズル列群以外の記録が行われるとき、前記主走査方向に走査した後に行う前記記録媒体を搬送する長さは、(P+1)/P×Lであり、
前記2以上のノズル列群のうち、前記所定のパスに最後にインクを吐出するノズル列群の記録が行われるとき、前記主走査方向に走査した後に行う前記記録媒体を搬送する長さは、(L−L/P)×(N−2)+L
であることを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項3】
インクを吐出するノズルが記録媒体の搬送方向に複数配列して構成されるノズル列を2以上有し、前記ノズル列を前記搬送方向と交差する主走査方向に走査しながら前記記録媒体を前記搬送方向に搬送して、所定の領域を複数パスで記録を行うことにより画像を形成するインクジェット記録装置であって、
前記2以上のノズル列を、それぞれ同一主走査時に同時に記録を行わないで順番に記録を行う2以上のノズル列群に分類する手段と、
前記2以上のノズル列群のうち、所定のパスに最後にインクを吐出するノズル列群以外の記録が行われるとき、前記主走査方向に走査した後に行う前記記録媒体の搬送は、前記ノズル列群の長さを前記複数パスで割り、その数を前記ノズル列群の長さから減じた長さを、前記搬送方向の上流側に搬送する手段と、
前記2以上のノズル列群のうち、前記所定のパスに最後にインクを吐出するノズル列群の記録が行われるとき、前記主走査方向に走査した後に行う前記記録媒体の搬送は、前記ノズル列群の長さを前記複数パスで割り、その数を前記ノズル列群の長さから減じた長さに、前記ノズル列群の数から2を減じた数を乗じた長さを、前記搬送方向の下流側に搬送する手段と、
を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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