説明

インクジェット記録材料およびこれを用いた電飾看板

【課題】電飾看板の透過表示板として使用した場合に、十分な透過画像の画像濃度を有しつつ、透過画像の見栄えが良好であるインクジェット記録材料を提供する。
【解決手段】インク受容層中にバインダー樹脂および顔料を含有するインクジェット記録材料であって、前記顔料をバインダー樹脂100重量部に対し50〜200重量部含み、かつ前記顔料のうち20〜80重量部が針状形状の顔料を含むように構成する。好ましくは、前記針状の顔料の長径が2.5μm以上であるものを採択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェットプリンタ用の記録材料に関し、電飾看板用に好適に使用されるものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のインクジェット記録技術の発展は目覚ましく、モノクロ対応からフルカラー対応まで数多くの機種が上市されてきており、従来、主として設計図面の作製等に使われていたインクジェット記録も、ディスプレイ・ポスター・看板等と呼ばれる表示板の作製に使用されるようになってきた。
【0003】
一方、地下道や電車ホーム等の壁面には、各社の商品宣伝のためや種々の情報伝達のために、多くの表示板が設置されている。中でも、直方体の箱体内部に、蛍光灯等の背面光源、透過表示板、アクリル板などを配置した電飾看板がある。このようなものは背面光源の発光により、透過表示板に施された文字・図形等を透過画像として認識させるようにしているものである。そして、近年この透過表示板としてインクジェット記録材料が使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような電飾看板は主として透過画像を観察するものであるから、そこで透過表示板として使用されるインクジェット記録材料も透過画像の画像濃度が良好であることが望まれる。
【0005】
そこで、透過画像の画像濃度を向上させるために、インクジェット記録材料のインク受容層中に比較的多量の顔料を添加する手段が採用されている。
【0006】
しかし、インク受容層中に比較的多量の顔料を添加すると、確かに透過画像の画像濃度は向上するものの、画像の所々に細かい印字抜けが発生してしまった。この細かい印字抜けは、反射画像を観察する上ではそれほど問題にはならないが、背面光源を発光させて透過画像を観察すると、印字抜け部分から光が漏れる結果となり、透過画像の見栄えを低下させるという問題が生じた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は上記問題について追求した結果、細かい印字抜けの原因が、インク受容層で発生している細かいひび割れにあることを見出した。そしてさらに研究を続けた結果、このようなひび割れは、インク受容層中に含有させる顔料として不定型などの一般的な形状からなる顔料のみを使用した際に発生するものであり、特殊な形状の顔料を含ませることにより、インク受容層で発生するひび割れを低減できることを見出しこれを解決するに至った。
【0008】
即ち、本発明の電飾看板用インクジェット記録材料は、インク受容層中にバインダー樹脂および顔料を含有するものであって、前記顔料をバインダー樹脂100重量部に対し50〜200重量部含み、かつ前記顔料のうち20〜80重量部が針状形状の顔料であることを特徴とするものである。
【0009】
好ましくは、前記針状形状の顔料の長径が2.5μm以上であることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明のインクジェット記録材料は、好ましくは、前記インク受容層が支持体上に形成されてなり、かつ前記インク受容層が最表面に位置していることを特徴とするものである。また、本発明の電飾看板は、箱体内部に背面光源、透過表示板、アクリル板を順次有する電飾看板において、前記透過表示板として、本発明の電飾看板用インクジェット記録材料を用いたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のインクジェット記録材料は、インク受容層中に針状及び/又は板状の顔料を含むことを特徴とするものである。したがって、インク受容層のひび割れが低減され画像に細かい印字抜けが発生することが抑えられ、十分な画像濃度を有しつつ透過画像の見栄えを良好なものとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のインクジェット記録材料は、インク受容層中に顔料を含有するものであって、前記顔料として針状及び/又は板状形状の顔料を含むことを特徴とするものである。以下、各構成要素の実施の形態について説明する。
【0013】
インク受容層は、インク受容性を有する樹脂をフィルム化したもののようにインク受容層単独で取り扱うことができるものと、インク受容層単独では取り扱うことが困難なものに分けられる。インク受容層単独での取り扱いが困難な場合、インク受容層は支持体上に形成される。支持体は光透過性を有するものであれば特に制限されることなく使用することができるが、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどのプラスチックフィルムが好適に使用される。支持体の厚みは特に限定されるものではないが、インクジェットプリンタへの搬送性などの点から、5〜300μmのものが好適に使用される。
【0014】
インク受容層は少なくともバインダー樹脂および顔料から構成される。
【0015】
バインダー樹脂は、主としてインク受容層のバインダー樹脂として一般的に使用されている水溶性樹脂、親水性樹脂から構成される。このような水溶性ないし親水性樹脂としては、アルブミン、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、アラビヤゴム、アルギン酸ソーダなどの天然樹脂、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリフェニルアセトアセタール、ポリビニルアセタール、ポリビニルホルマール、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、メラミン樹脂、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリル酸ソーダ、(メタ)アクリル酸エステル共重合体などの合成樹脂があげられ、これらを単独であるいは2種以上混合して使用することができる。
【0016】
インク受容層の厚みは、支持体上にインク受容層を設ける場合、5〜70μmであることが好ましい。5μm以上とすることによりインク吸収性を良好にすることができ、70μm以下とすることによりカールの発生を防止することができる。支持体がなくインク受容層単独で取り扱う場合、インクジェットプリンタへの搬送性や取り扱い性を考慮し、インク受容層の厚みは、5〜300μmであることが好ましい。
【0017】
顔料は、主として透過画像の画像濃度を向上させるために添加される。
【0018】
顔料の形状は、不定型や球状のものが一般的であるが、本発明では、インク受容層中の顔料として針状及び/又は板状形状の顔料を含むことを特徴とする。針状形状の顔料と板状形状の顔料は、いずれもインク受容層のひび割れを低減することができるが、針状形状の顔料の方がひび割れを低減する効果に優れる点で好ましい。なお、針状又は板状形状の顔料は、その長径が2.5μm以上、好ましくは5.0μm以上であることが望ましい。長径を2.5μm以上とすることにより、インク受容層のひび割れを効果的に防止できるようになる。
【0019】
顔料の添加量は、インク受容層のバインダー樹脂100重量部に対し、50〜200重量部、好ましくは70〜150重量部であることが望ましい。50重量部以上とすることにより、透過画像の画像濃度を十分なものとすることができ、200重量部以下とすることにより、インク受容層の被膜強度を十分なものとすることができる。ここで、顔料50〜200重量部のうち、針状及び/又は板状形状の顔料が合計10〜100重量部、好ましくは20〜80重量部含まれていることが望ましい。10重量部以上とすることにより、インク受容層のひび割れを効果的に防止することができ、100重量部以下とすることにより、インク受容層から針状及び/又は板状形状の顔料が突出することによる画像不良を防止することができる。
【0020】
上述した顔料としては、不定型、球状、針状、板状にかかわらず、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸アルミニウム、酸化チタン、合成ゼオライト、アルミナ、スメクタイトなどの無機顔料の他、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂などからなる樹脂ビーズ、若しくはこれらを原料とする中空樹脂ビーズなどの有機顔料があげられ、これらを単独であるいは2種以上混合して使用することができる。また、表面が導電剤で被覆された無機顔料を使用することもでき、このような顔料によれば、インクジェットプリンタの記録時に発生する帯電パターンを有効に防止できる点で好ましい。
【0021】
なお、インク受容層中には、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、キレート剤などの添加剤を添加してもよい。
【0022】
インク受容層を形成する方法としては、インク受容層の構成成分を適当な溶媒に溶解又は分散させて塗布液を調製し、当該塗布液をロールコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、エアナイフコーティング法などの公知の方法により支持体上に塗布・乾燥させる方法があげられる。
【0023】
なお、インク受容層の接着性を調節するため、インク受容層と支持体との間にアンカーコート層を設けたり、カールの発生を防止するため、支持体のインク受容層とは反対側の面にバックコート層を設けたり、帯電を防止するため、インク受容層上や支持体のインク受容層とは反対側の面に帯電防止層を設けることは何ら差し支えない。
【0024】
以上のように、本発明のインクジェット記録材料は、インク受容層中に針状及び/又は板状の顔料を含むことを特徴とするものである。したがって、インク受容層のひび割れが低減され画像に細かい印字抜けが発生することが抑えられ、十分な画像濃度を有しつつ透過画像の見栄えを良好なものとすることができる。
【実施例】
【0025】
以下、実施例により本発明を更に説明する。なお、「部」、「%」は特に示さない限り、重量基準とする。
【0026】
[実施例1]
厚み100μmの透明ポリエステルフィルム(ルミラーT60:東レ社)上に、下記の組成からなるインク受容層塗布液を乾燥後の厚みが40μmとなるようにバーコーティング法により塗布、乾燥してインク受容層を形成し、インクジェット記録材料を得た。
【0027】
<インク受容層塗布液>
・ポリビニルアルコール(固形分100%) 10部
(ゴーセノールAH-17:日本合成化学工業社)
・不定型顔料 10部
(サイリシア740:富士シリシア化学工業社)
・針状顔料 5部
(FT−3000:石原産業社、長径5.2μm)
・純水 225部
【0028】
[実施例2]
インク受容層塗布液の針状顔料を、針状顔料(FT−2000:石原産業社、長径2.9μm)に変更した他は、実施例1と同様にしてインクジェット記録材料を得た。
【0029】
[実施例3]
インク受容層塗布液の針状顔料を、板状顔料(板状硫酸バリウムA:堺化学工業社、長径7.5μm)に変更した他は、実施例1と同様にしてインクジェット記録材料を得た。
【0030】
[比較例]
インク受容層塗布液に針状顔料を含有させなかった他は、実施例1と同様にしてインクジェット記録材料を得た。
【0031】
実施例1から3および比較例で得られたインクジェット記録材料につき、インク受容層のひび割れについて評価を行った。評価方法は、インクジェット記録材料を蛍光灯に透かし、インク受容層のひび割れの程度を目視で計測した。その結果、ひび割れが全く発生していないものを「◎」、ひび割れが若干発生しているものの比較例のものより低減されたものを「○」とした。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
表1の結果からも分かるように、実施例1から3のものは、インク受容層中に針状及び/又は板状形状の顔料を含むものであるから、比較例のものに比べインク受容層のひび割れが低減されているものであった。特に、実施例1のものは、針状形状の顔料を含有し、その長径が5.0μm以上のものであるから、インク受容層のひび割れが全く観察されなかった。
【0034】
一方、比較例のものは、インク受容層中に針状及び/又は板状形状の顔料を含まないものであるため、インク受容層のひび割れが多く観察されるものであった。
【0035】
なお、実施例1から3のインクジェット記録材料にインクジェットプリンタ(PM−700C:セイコーエプソン社)を用いて画像を出力したところ、いずれのものも透過の画像濃度が良好であり、透過画像の見栄えを低下させるほどの印字抜けは観察されなかった。特に、実施例1のものは印字抜けが全く観察されなかった。一方、比較例のインクジェット記録材料にも同様に画像を出力したところ、透過の画像濃度は実施例のものと同等であるものの、印字抜けが多く観察され、透過画像の見栄えを低下させるものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク受容層中にバインダー樹脂および顔料を含有するインクジェット記録材料であって、前記顔料をバインダー樹脂100重量部に対し50〜200重量部含み、かつ前記顔料のうち20〜80重量部が針状形状の顔料であることを特徴とする電飾看板用インクジェット記録材料。
【請求項2】
前記針状形状の顔料の長径が2.5μm以上であることを特徴とする請求項1記載の電飾看板用インクジェット記録材料。
【請求項3】
前記インク受容層が支持体上に形成されてなり、かつ前記インク受容層が最表面に位置していることを特徴とする請求項1又は2記載の電飾看板用インクジェット記録材料。
【請求項4】
箱体内部に背面光源、透過表示板、アクリル板を順次有する電飾看板において、前記透過表示板として、請求項1から3何れか1項記載の電飾看板用インクジェット記録材料を用いたことを特徴とする電飾看板。

【公開番号】特開2011−79321(P2011−79321A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255435(P2010−255435)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【分割の表示】特願2001−277692(P2001−277692)の分割
【原出願日】平成13年9月13日(2001.9.13)
【出願人】(000125978)株式会社きもと (167)
【Fターム(参考)】