説明

インクジェット記録用インク、インクカートリッジ、インクジェット記録装置、画像形成方法、画像形成物

【課題】高濃度の画像が得られ、画像のシャープ性に優れ、吐出安定性及び保存安定性にも優れたインクジェット用記録インク、該インクを用いたインクカートリッジ、インクジェット記録装置、画像形成方法、画像形成物の提供。
【解決手段】(1)着色剤、水、水溶性有機溶媒、及び下記一般式(1)で示されるポリアクリル酸エステル系ポリマーを含有するインクジェット記録用インク。


式中、Rは水素、メチル基、XはF、Cl、Br、MはNa、K、NH、Li、を表し、l、m、n、pはそれぞれ10〜3000の整数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用インク、該インクを用いたインクカートリッジ、インクジェット記録装置、画像形成方法、画像形成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は他の記録方式に比べてプロセスが簡単であるためフルカラー化が容易であり、簡略な構成の装置であっても高解像度の画像が得られる利点がある。
インクジェット記録用インクとしては、各種の水溶性染料を水、又は水と有機溶媒との混合液に溶解させた染料系インクがあるが、色調の鮮明性は優れているものの耐光性に劣る欠点があった。
一方、カーボンブラックや各種の有機顔料を分散させた顔料系インクは染料系インクと比べて耐光性に優れるため盛んに研究されているが、ノズルの目詰まりが生じ易い傾向がある。顔料系インクは、一般に水やアルコール類等の水性溶媒中に顔料と分散剤を予備分散させた後、サンドミル等のメディア型分散機により所定の程度まで分散させて顔料分散液を調製し、次いで添加剤などの他の材料を加えて所定の濃度に希釈することにより調製されている。その際、疎水性の顔料を分散させるため一般的に界面活性剤や水溶性樹脂を使用しているが、得られる画像の信頼性は極めて悪い。
そこで、画質向上を目的として造膜性の樹脂微粒子をインクに添加する技術が開示されているが、複数の成分を微粒子のまま安定に長期分散させるのは難しく、安定な分散のために界面活性剤などの分散剤を多く使用すると、インクタンク、ヘッド内での気泡の発生、画質の劣化などの問題が生じる。また、分散性向上の目的で顔料の表面を親水基に変える方法や親水基を含有した樹脂などを用いる方法も検討されているが、それぞれ単独では安定であっても、異なる種類を混ぜた場合に、分散が不安定になり保存安定性が悪化するという問題があった。
【0003】
高分子量の化合物を用いた例としては特許文献1があるが、近年のインクジェットプリンタの高精細化の進展に伴ない、この文献に記載された数百μm〜数μmの粒子径の顔料では印字ヘッド等での目詰りが起こりやすく、印字品質も不十分になってきている。また保存安定性面でも不十分である。
その他に、特許文献2では、分子量が2000〜100万の水溶性高分子を、特許文献3では、分子量が8000〜10万の樹脂粒子をそれぞれ用いているが、いずれも本発明で用いる化合物とは構造が異なるし、分子量も本発明のものより小さい。
また、特許文献4には、高分子凝集剤を用いた記録液が開示されており、高分子凝集剤の分子量は一般に数百万ないし千数百万程度である旨の記載があるが、具体例として示されているのは、実施例で用いたメタクリル酸エステルのメチルクロライド4級塩ホモポリマーのみであり、本発明で用いる化合物については記載も示唆もされていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたもので、高濃度の画像が得られ、画像のシャープ性に優れ、吐出安定性及び保存安定性にも優れたインクジェット用記録インク、該インクを用いたインクカートリッジ、インクジェット記録装置、画像形成方法、画像形成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、次の1)〜6)の発明によって解決される。
1) 着色剤、水、水溶性有機溶媒、及び下記一般式(1)で示されるポリアクリル酸エステル系ポリマーを含有することを特徴とするインクジェット記録用インク。
【化1】

式中、Rは水素、メチル基、XはF、Cl、Br、MはNa、K、NH、Li、を表し、l、m、n、pはそれぞれ10〜3000の整数を表す。
2) 更にアニオン性自己乳化型のエーテル系ポリウレタン樹脂エマルジョンを含有することを特徴とする1)記載のインクジェット記録用インク。
3) 1)又は2)記載のインクジェット記録用インクを容器に収容したことを特徴とするインクカートリッジ。
4) 3)記載のインクカートリッジを搭載したことを特徴とするインクジェット記録装置。
5) 1)又は2)記載のインクジェット記録用インクを用いて印字することを特徴とする画像形成方法。
6) 5)記載の画像形成方法で作成された画像形成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高濃度の画像が得られ、画像のシャープ性に優れ、吐出安定性及び保存安定性にも優れたインクジェット記録用インク、該インクを用いたインクカートリッジ、インクジェット記録装置、画像形成方法、画像形成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のインクジェット記録装置の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
本発明のインクジェット記録用インク(以下、単にインクということもある)は、下記一般式(1)で示されるポリアクリル酸エステル系ポリマーを用いることを特徴とする。
【化2】

(式中、Rは水素、メチル基、XはF、Cl、Br、MはNa、K、NH、Li、を表し、l、m、n、pはそれぞれ10〜3000の整数を表す。)
ポリアクリル酸エステル系ポリマーの重量平均分子量は100万〜800万程度が好ましい。100万未満では凝集効果が十分発揮できず、画像濃度や画像のシャープ性が劣る可能性がある。また、800万を超えると、インク粘度が高くなり、インク吐出安定性や保存安定性に問題が生じる可能性がある。
ポリアクリル酸エステル系ポリマーの具体例としては、第一工業製薬社製のCX−100(分子量550万)、CX−200(分子量750万)、CX−300(分子量550万)、CX−400(分子量750万)が挙げられる。
【0009】
ポリアクリル酸エステル系ポリマーは、顔料分散液の分散剤として用いても、インクの添加剤として用いてもよいが、高画像濃度を得るためには顔料分散液の分散剤として用いる方が好ましい。その理由は、インクが被画像形成物である紙に着弾した後、紙に浸透する過程に於いて、ポリアクリル酸エステル系ポリマーが顔料の近傍に存在すると、固形分が多くなるにつれて顔料とカチオン部位が接近し、その吸着が良くなって凝集が起こるため、紙への顔料の浸透が抑えられ、紙表面に顔料が多く残って高画像濃度が得られると推測されることによる。即ち、インクの添加剤として用いるよりも、顔料分散液の分散剤として用いる方がポリアクリル酸エステル系ポリマーと顔料がより近くに存在することになるため、上記効果が生じやすくなると考えられる。なお、この効果は顔料がカーボンブラックである場合に特に顕著である。
【0010】
着色材としては特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができ、例えば無機顔料、有機顔料などが挙げられる。
前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラックなどが挙げられる。中でもカーボンブラックが好ましい。なお、カーボンブラックとしては、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたものが挙げられる。
前記有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などがより好ましい。なお、前記アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などが挙げられる。前記多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料などが挙げられる。前記染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなどが挙げられる。
【0011】
顔料の色としては特に制限は無く目的に応じて適宜選択することができ、例えば黒色用のもの、カラー用のもの等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
前記黒色用のものとしては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)等の金属類、酸化チタン等の金属化合物類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料などが挙げられる。
カーボンブラックの具体例としては、三菱化学社製の#10B、#20B、#30、#33、#40、#44、#45、#45L、#50、#55、#95、#260、#900、#1000、#2200B、#2300、#2350、#2400B、#2650、#2700、#4000B、CF9、MA8、MA11、MA77、MA100、MA220、MA230、MA600及びMCF88等;キャボット社製のモナーク120、モナーク700、モナーク800、モナーク880、モナーク1000、モナーク1100、モナーク1300、モナーク1400、モーガルL、リーガル99R、リーガル250R、リーガル300R、リーガル330R、リーガル400R、リーガル500R及びリーガル660R等;デグサ社製のプリンテックスA、プリンテックスG、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス55、プリンテックス140U、プリンテックス140V、スペシャルブラック4、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック5、スペシャルブラック6、スペシャルブラック100、スペシャルブラック250、カラーブラックFW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160及びカラーブラックS170等が挙げられる。
【0012】
前記カラー用のものとしては、イエロー用では、例えば、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG)、3、12(ジスアゾイエローAAA)、13、14、17、23、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83(ジスアゾイエローHR)、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、128、138、150、153などが挙げられる。
マゼンタ用では、例えば、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22(ブリリアントファーストスカーレット)、23、31、38、48:2〔パーマネントレッド2B(Ba)〕、48:2〔パーマネントレッド2B(Ca)〕、48:3〔パーマネントレッド2B(Sr)〕、48:4〔パーマネントレッド2B(Mn)〕、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81(ローダミン6Gレーキ)、83、88、92、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(ジメチルキナクリドン)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209、219等が挙げられる。
シアン用では、例えばC.I.ピグメントブルー1、2、15(銅フタロシアニンブルーR)、15:1、15:2、15:3(銅フタロシアニンブルーG)、15:4、15:6(フタロシアニンブルーE)、16、17:1、56、60、63等が挙げられる。
また中間色としてはレッド、グリーン、ブルー用として、C.I.ピグメントレッド177、194、224、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントバイオレット3、19、23、37、C.I.ピグメントグリーン7、36などが挙げられる。
【0013】
顔料は一般に顔料分散液として用いる。顔料分散液は、顔料、分散剤、水、必要に応じて各種添加剤をビーズミル、例えば、ダイノーミルKDL型(シンマルエンタープライゼス社製)、アジテーターミルLMZ(アシザワ・ファインテック社製)、SCミル(三井鉱山社製)等の分散機で分散し、さらにビーズミル分散の後ビーズレスミル、例えば、高速せん断力タイプのCLEARSS5(エム・テクニック社製)、キャビトロンCD1010(ユーロテック社製)、モジュールDR2000(シンマルエンタープライゼス社製)、薄膜旋回タイプのT.K.フィルミックス(特殊機化工業社製)、超高圧衝突タイプのアルテマイザー(スギノマシン社製)、ナノマイザー(吉田機械興業社製)等により分散することにより得られる。
ビーズは通常セラミックビーズであり、一般的にはジルコニアボールが使用される。ビーズ径は0.05mmφ以下が好ましく、さらに好ましくは0.03mmφ以下である。
また、前記分散機の前工程で、ホモジナイザー等で粗大粒子を前処理することにより、一層粒度分布をシャープにすることが出来、画像濃度、吐出安定性等の改善に繋がる。
このようにして得られた顔料分散液は、特に顔料系インクジェット記録用インクの材料として好適に使用することができる。
【0014】
顔料濃度は分散液全量に対して5〜50重量%が好ましい。5重量%未満では生産性が劣り、50重量%より多いと顔料分散液の粘度が高すぎて分散が困難になる傾向がある。
また、分散剤が重量基準で顔料1に対し0.005〜0.5の割合で含まれるのが好ましく、さらに好ましくは、0.025〜0.12である。この範囲の使用量とすることにより、高い画像濃度、吐出安定性、液安定性の良い顔料分散液が得られる。
【0015】
分散剤としては、前記ポリアクリル酸エステル系ポリマーの他に、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等の種々の界面活性剤や高分子型の分散剤などを用いることができる。もちろんポリアクリル酸エステル系ポリマーと併用してもよい。
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸及びその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリルスルホン塩酸、ジエチルスルホ琥珀酸塩及びジエチルヘキシルスルホ琥珀酸ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
カチオン界面活性剤としては、例えば、2−ビニルピリジン誘導体、ポリ−4−ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン及びその他イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0016】
ノニオン界面活性剤としては、次のようなものが挙げられる。
ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びポリオキシエチレンアリルアルキルエーテル等のエーテル系;
ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート及びポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;
2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール及び3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレングリコール系。
【0017】
また、顔料分散液の分散安定性向上のため、アニオン性自己乳化型のエーテル系ポリウレタン樹脂エマルジョン(以下、ポリウレタン樹脂エマルジョンαということもある)を加えることが好ましい。ポリウレタン樹脂エマルジョンには、比較的親水性の通常のポリウレタン系樹脂を乳化剤を使用してエマルジョン化したものと、樹脂自体に乳化剤の働きをする官能基を共重合等の手段で導入した自己乳化型のエマルジョンがあるが、本発明のインクに好適に用いられるのは、ポリウレタン樹脂エマルジョンαである。自己乳化型のポリウレタン樹脂としてはエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系があるが、エーテル系のものは、顔料の固着性・分散安定性や分散剤との各種組み合わせにおいて常に分散安定性に優れているのに対し、他の系のものは耐溶剤性に弱いものが多く、インクの高温保存時に顔料が凝集しやすい。
【0018】
ポリウレタン樹脂エマルジョンαの体積平均粒子径(D50)は、50nm以下、好ましくは25nm以下、より好ましくは15nm以下である。なお、該D50は、23℃、55%RHの環境下、日機装社製マイクロトラックUPAで測定した値である。
ガスブラックタイプのカーボンブラッックはポリウレタン樹脂エマルジョンαの平均粒子径の小さいものと相性が良く、分散が安定するようである。特に平均粒子径を50nm以下にすることにより、印刷を継続している途中で、インクジェットプリンターが作動しているのにインクが吐出しなくなるトラブルを防止する効果が高まる。
インクが吐出しなくなった場合は、インクジェットプリンターのノズル孔を含むインク流路を掃除すれば印刷再開可能となるが、これでは実用性に問題がある。
【0019】
ポリウレタン樹脂エマルジョンαのガラス転移点は、−50〜150℃の範囲が好ましく、より好ましくは−10〜100℃の範囲である。理由は定かではないが、ガラス転移点が150℃を超えると、エーテル系ポリウレタン樹脂の膜自体はガラス状で硬いものの、顔料粒子とエーテル系ポリウレタン樹脂が画像支持体に同時に着弾してできた印字部分の耐擦過性が意外にもろい。しかし、150℃以下ならば膜がポリウレタン状で柔らかくても耐擦過性に優れたものができる。一方、−50℃未満になると膜が柔らかすぎて耐擦過性は劣る。以上の点から、同じ添加量では、ガラス転移点が−50〜150℃の範囲の方が耐擦過性の効果が大きい。なお、本発明でいう樹脂のガラス転移点は、DSC(示差走査熱量計)、TMA(熱機械分析)のいずれかの測定法によるものである。
【0020】
ポリウレタン樹脂エマルジョンαは室温以下の最低造膜温度(MFT)を有するものが好ましく、より好ましくは25℃以下である。ポリウレタン樹脂エマルジョンαの膜形成を室温以下、特に25℃以下で行なえば、特に加熱又は乾燥等の処理を行なうことなく、画像形成された画像支持体の紙繊維の結着が自動的に進行するので好ましい。ここで、「最低造膜温度(MFT)」とは、ポリウレタン樹脂エマルジョンα粒子を水に分散させて得られた水性エマルジョン粒子をアルミニウム等の金属板の上に薄く流延し、温度を上げていった時に透明な連続フィルムが形成される最低の温度をいう。最低造膜温度以下の温度領域では白色粉末状となる。
「造膜性」とは、樹脂微粒子を水に分散させて樹脂エマルジョンの形態としたとき、この樹脂エマルジョンの連続層である水成分を蒸発させていくと、樹脂の皮膜が形成されることを意味する。この樹脂皮膜は、インク中の顔料を画像支持体表面に強固に固着する役割を担う。これによって、耐擦性及び耐水性に優れた画像が実現できると考えられる。
本発明で用いる顔料分散液中の、エーテル系ポリウレタン樹脂エマルジョン粒子は分散液に予め入れておかなくてもよく、インク調製時に後添加しても良い。
【0021】
本発明のインクは公知の方法、例えば顔料分散液、水、水溶性有機溶剤、界面活性剤等を攪拌混合し、フィルター、遠心分離装置等で粗大粒子をろ過し、必要に応じて脱気することによって得られる。
なお、インクに於ける着色剤の濃度はインク全量に対して1〜20重量%が好ましい。1重量%以上であれば十分な画像濃度が得られ印字の鮮明さに欠けるようなことはなく、20重量%以下であればインクの粘度が高くなりすぎてノズルの目詰まりが発生するようなこともない。
【0022】
本発明のインクには必要に応じて、樹脂、湿潤剤、界面活性剤、浸透剤、pH調整剤、防腐防黴剤、キレート試薬、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤等の各種添加剤を配合することができる。これらは、一部を除き、必要に応じて顔料分散体に加えてもよい。
前記湿潤剤の例としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、その他の湿潤剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペトリオール、などが挙げられる。
【0023】
多価アルコールアルキルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、などが挙げられる。
多価アルコールアリールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、などが挙げられる。
含窒素複素環化合物としては、例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミイダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン、などが挙げられる。
アミド類としては、例えば、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、などが挙げられる。
アミン類としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどが挙げられる。
含硫黄化合物類としては、例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール、などが挙げられる。
【0024】
その他の湿潤剤としては糖類が好ましい。糖類の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類、四糖類を含む)、多糖類、などが挙げられる。具体的には、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース、などが挙げられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、α−シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。また、これらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖〔例えば、一般式:HOCH(CHOH)CHOH(n=2〜5の整数)で表される糖アルコールなど〕、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ酸などが挙げられる。これらの中でも、糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビットなどが挙げられる。
上記湿潤剤の中でも、保存安定性、吐出安定性の点から、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンが特に好ましい。
【0025】
顔料と湿潤剤との配合比は、ヘッドからのインク吐出安定性に非常に影響がある。顔料固形分が多いのに湿潤剤の配合量が少ないと、ノズルのインクメニスカス付近の水分蒸発が進み、吐出不良をもたらすことがある。
インク中の湿潤剤の含有量は20〜35重量%程度であるが、22.5〜32.5重量%がより好ましい。この範囲であれば、インクの乾燥性、保存試験、信頼性試験などの結果が非常に良好である。含有量が20重量%未満では、ノズル面上でインクが乾燥し易くなって吐出不良が生じることがあり、35重量%を超えると、紙面上での乾燥性に劣るため普通紙上の文字品位が低下することがある。
【0026】
前記界面活性剤としては、顔料の種類や湿潤剤との組み合わせに応じて、分散安定性を損なわず、表面張力が低く、レベリング性の高いものを用いる。例えばフッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤が挙げられるが、フッ素系界面活性剤が好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、フッ素が置換した炭素数が2〜16のものが好ましく、4〜16のものがより好ましい。フッ素置換炭素数が2未満では、フッ素の効果が得られないことがあり、16を超えると、インク保存性などの問題が生じることがある。
フッ素系界面活性剤の例としては、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物、などが挙げられる。これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少なく、特に好ましい。
【0027】
パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、などが挙げられる。
パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、などが挙げられる。
パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルリン酸エステルの塩、などが挙げられる。
パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩、などが挙げられる。
これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)などが挙げられる。
【0028】
フッ素系界面活性剤としては、適宜合成したものを用いても、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えばDuPont社製のFS−300、ネオス社製のFT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW、オムノバ社製のPF−151Nなどが挙げられる。
シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
シリコーン系界面活性剤としては適宜合成したものを用いても市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー社、信越シリコーン社、東レ・ダウコーニング・シリコーン社などから容易に入手できる。
【0029】
界面活性剤のインク中の含有量は、0.01〜3.0重量%が好ましく、0.5〜2.0重量%がより好ましい。含有量が0.01重量%未満では、界面活性剤を添加した効果が無くなることがあり、3.0重量%を超えると、記録媒体への浸透性が必要以上に高くなり、画像濃度の低下や裏抜けが発生することがある。
【0030】
前記浸透剤としては、20℃の水に対する溶解度が0.2〜5.0重量%のポリオール化合物の少なくとも1種を含有することが好ましい。これにより、インクの浸透性を上げると同時に顔料を表面に留めることで滲みをなくし、画像濃度が高くかつ裏抜けが少ない印字画像を得ることが可能となる。
このようなポリオール化合物としては、例えば、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、5−ヘキセン−1,2−ジオールなどの脂肪族ジオールが挙げられる。これらの中でも、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールが特に好ましい。
その他の併用できる浸透剤としては、インク中に溶解し、所望の物性に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテル等の多価アルコールのアルキル及びアリールエーテル類、エタノール等の低級アルコール類などが挙げられる。
浸透剤のインク中の含有量は、0.1〜4.0重量%が好ましい。含有量が0.1重量%未満では、速乾性が得られず滲んだ画像となることがあり、4.0重量%を超えると着色剤の分散安定性が損なわれ、ノズルが目詰まりしやすくなり、また記録媒体への浸透性が必要以上に高くなって、画像濃度の低下や裏抜けが発生することがある。
【0031】
前記pH調整剤としては、インクに悪影響を及ぼさずにpHを7〜11に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アルコールアミン類、アルカリ金属水酸化物、アンモニウム水酸化物、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、などが挙げられる。pHが7未満又は11を超えると、インクジェットのヘッドやインク供給ユニットを溶かし出す量が大きくなり、インクの変質や漏洩、吐出不良などの不具合が生じることがある。
アルコールアミン類としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−エチル−2−アミノ−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。
アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
アンモニウム水酸化物としては、例えば、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物などが挙げられる。
ホスホニウム水酸化物としては、(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチルトリフェニルホスホニウムブロミド、(1−ナフチルメチル)トリフェニルホスホニウムクロリド、(2,4−ジクロロベンジル)トリフェニルホスホニウムクロリドなどが挙げられる。
アルカリ金属炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
【0032】
前記防腐防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、等が挙げられる。
前記キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウム等が挙げられる。
前記防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト等が挙げられる。
【0033】
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、などが挙げられる。
フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)としては、例えば、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−2,4,8,10−テトライキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、などが挙げられる。
【0034】
アミン系酸化防止剤としては、例えば、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N′−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチル−フェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ジヒドロキフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、などが挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル−3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル−β,β′−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンゾイミダゾール、ジラウリルサルファイドなどが挙げられる。
前記リン系酸化防止剤としては、トリフェニルフォスファイト、オクタデシルフォスファイト、トリイソデシルフォスファイト、トリラウリルトリチオフォスファイト、トリノニルフェニルフォスファイトなどが挙げられる。
【0035】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤などが挙げられる。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2′−ヒドロキシ−5′−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−4′−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
サリチレート系紫外線吸収剤としては、例えば、フェニルサリチレート、p−tert−ブチルフェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレートなどが挙げられる。
前記シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、エチル−2−シアノ−3,3′−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート、ブチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレートなどが挙げられる。
ニッケル錯塩系紫外線吸収剤としては、例えば、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、2,2′−チオビス(4−tert−オクチルフェレート)−n−ブチルアミンニッケル(II)、2,2′−チオビス(4−tert−オクチルフェレート)−2−エチルヘキシルアミンニッケル(II)、2,2′−チオビス(4−tert−オクチルフェレート)トリエタノールアミンニッケル(II)などが挙げられる。
【0036】
本発明のインクカートリッジは、本発明のインクを容器中に収容したものである。容器には特に制限はなく目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク袋などを有するもの、プラスチックケースなどが挙げられる。
【0037】
本発明のインクジェット記録装置は、前記インクカートリッジ及びインクを吐出させて記録を行う方式のヘッドを備えている。
印字(吐出)する方法としては、連続噴射型やオンデマンド型が挙げられる。またオンデマンド型としては、ピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等が挙げられる。
ここで、本発明のインクカートリッジ及びインクジェット記録装置について、図1を参照して説明する。
図1において、本発明のインクジェット記録用インクが収容されるインクカートリッジ20は、キャリッジ18内に収納される。ここで、インクカートリッジ20は便宜上複数設けられているが、複数である必要はない。このような状態でインクジェット記録用インクが、インクカートリッジ20からキャリッジ18に搭載された液滴吐出ヘッド18aに供給される。なお、図1において、吐出ノズル面は下方向を向いた状態であるため見えない状態であるが、この吐出ノズルからインクジェット記録用インクが吐出される。
キャリッジ18に搭載された液滴吐出ヘッド18aは、主走査モータ26で駆動される
タイミングベルト23によって、ガイドシャフト21、22にガイドされて移動する。
一方、特定のコート紙(画像支持体)はプラテン19によって液滴吐出ヘッド18aと
対面する位置に置かれる。なお、図1中、1はインクジェット記録装置、2は本体筐体、
16はギア機構、17は副走査モータ、25、27はギア機構をそれぞれ示す。
【0038】
本発明のインク又はインクカートリッジを収容したインクジェット記録装置を用いて画像支持体上に記録を行うと、オンデマンドで画像支持体上に印刷された画像形成物が得られる。また、インクジェット記録用インクの補充はインクカートリッジ単位で取り替えることが可能である。
前記画像支持体としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例え
ば、普通紙、光沢紙、特殊紙、布、フィルム、OHPシートなどが挙げられる。これらの
中でも紙が特に好ましい。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、例中の「部」及び「%」はいずれも重量基準である。
【0040】
分散液(A)
下記処方の材料を用い、ポリアクリル酸エステル系ポリマーを蒸留水に溶解した後、カーボンブラックを添加して、プレミックスした。
次いで、ビーズミル分散機(寿工業社製UAM−015)により、0.03mmジルコニアビーズ(密度6.03×10−6g/m)を用いて、周速10m/s、液温30℃で15分間分散した後、遠心分離機(久保田商事社製Model−3600)で粗大粒子を遠心分離し、分散粒子の平均粒子径が156.8nm、標準偏差が55.9nmの分散液(A)を得た。
〔処方〕
・カーボンブラック NIPEX150−IQ 15.0部
(degussa社製:ガスブラック)
・ポリアクリル酸エステル系ポリマー 0.4部
(MTアクアポリマ―社製、アロンフロックCX−100、分子量550万)
・蒸留水 84.6部

【0041】
分散液(B)〜(D)
分散液(A)のポリアクリル酸エステル系ポリマーを、下記のポリマーに変えた点以外は、分散液(A)と同様にして、分散液(B)〜(D)を得た。
分散液(B)… ポリアクリル酸エステル系ポリマー(MTアクアポリマ―社製、
アロンフロックCX−200:分子量750万)
分散液(C)… ポリアクリル酸エステル系ポリマー(MTアクアポリマ―社製、
アロンフロックCX−300:分子量550万)
分散液(D)… ポリアクリル酸エステル系ポリマー(MTアクアポリマ―社製、
アロンフロックCX−400:分子量750万)
【0042】
分散液(E)
分散液(B)のポリアクリル酸エステル系ポリマーの配合量を1.9部に、蒸留水の配合量を83.1部に変えた点以外は、分散液(B)と同様にして、分散液(E)を得た。
【0043】
分散液(F)、(G)、(H)
分散液(B)のカーボンブラックを下記の顔料に変えた点以外は、分散液(B)と同様にして、分散液(F)〜(H)を得た。
分散液(F)… ピグメントイエロー138(東洋インキ製造社製、LIONOGEN
YELLOW 1010)
分散液(G)… ピグメントレッド122(クラリアント社製トナーマゼンタE02)
分散液(H)… ピグメントブルー15:3(東洋インキ製造社製、LIONOL
BLUE FG−7351)
【0044】
分散液(I)
分散液(A)におけるポリアクリル酸エステル系ポリマーの量を0.075部に変え、蒸留水の量を84.925部に変えた点以外は、分散液(A)と同様にして分散液(I)を得た。この分散液における前記ポリマーの添加量は顔料1に対し約0.005である。
【0045】
分散液(J)
分散液(A)におけるポリアクリル酸エステル系ポリマーの量を7.5部に変え、蒸留水の量を77.5部に変えた点以外は、分散液(A)と同様にして分散液(J)を得た。この分散液における前記ポリマーの添加量は顔料1に対し約0.5である。
【0046】
分散液(K)〜(M)
分散液(A)のポリアクリル酸エステル系ポリマーを、下記の材料に変えた点以外は、分散液(A)と同様にして、分散液(K)〜(M)を得た。
分散液(K)… パイオニンA−45−PN(竹本油脂社製:アニオン系界面活性剤)
分散液(L)… プライサーフA219B(第一工業製薬社製:ポリオキシエチレン
アルキルエーテルリン酸エステル)
分散液(M)… ハイテノール18E(第一工業製薬社製:アニオン系界面活性剤)
【0047】
分散液(N)〜(P)
分散液(F)〜(H)のポリアクリル酸エステル系ポリマーを、ポリオキシエチレンナフチルエーテル(竹本油脂社製:パイオニンD−7240)に変えると共に配合量を2.0部に変え、蒸留水の配合量を83.0部に変えた点以外は、分散液(F)〜(H)と同様にして分散液(N)〜(P)を得た。
【0048】
実施例1〜8
上記分散液(A)〜(H)を表1の実施例1〜8の各欄に示すように用い、下記インク処方1の材料を30分間混合攪拌した後、孔径0.8μmのメンブランフィルターでろ過、真空脱気して、実施例1〜8のインクを得た。
〔インク処方1〕
・分散液 40.0部
・グリセリン 15.0部
・ジエチレングリコール 15.0部
・フッ素系界面活性剤 ゾニールFS300 5.0部
(Dupon社製 有効成分40%)
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 3.0部
・アニオン性自己乳化型のエーテル系ポリウレタン樹脂エマルジョン 5.0部
(有効成分35%)(三井化学ポリウレタン社製:W5661、酸価:48、
重量平均分子量:20000、平均粒子径:11.0nm)
・ポリオキシエチレン(3)アルキル(C13)エーテル酢酸ナトリウム 0.45部
・蒸留水 16.55部

【0049】
実施例9〜16
上記分散液(A)〜(H)を表1の実施例9〜16の各欄に示すように用い、下記インク処方2の材料を30分間混合攪拌した後、孔径0.8μmのメンブランフィルターでろ過、真空脱気して、実施例9〜16のインクを得た。
〔インク処方2〕
・分散液 40.0部
・グリセリン 15.0部
・ジエチレングリコール 15.0部
・フッ素系界面活性剤 ゾニールFS300 5.0部
(Dupon社製 有効成分40%)
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 3.0部
・ポリオキシエチレン(3)アルキル(C13)エーテル酢酸ナトリウム 0.45部
・蒸留水 21.55部

【0050】
実施例17、18
上記分散液(I)、(J)を表1の実施例17、18の各欄に示すように用いた点以外は、実施例1〜8の場合と同様にして、実施例17、18のインクを得た。
【0051】
実施例19
上記分散液(I)を用い、更に分散液(A)で用いたのと同じポリアクリル酸エステル系ポリマーを1.5部添加した点以外は、実施例17の場合と同様にして、実施例19のインクを得た。
【0052】
比較例1〜6
上記分散液(K)〜(P)を表1の比較例1〜6の各欄に示すように用いた点以外は、実施例9〜16の場合と同様にして、比較例1〜6のインクを得た。
【0053】
上記実施例1〜19及び比較例1〜6の各インクを、リコージェルジェットプリンターIPSiO GX5000を用いて、ゼロックス社製PPC用紙4024に印字し、画像濃度、画像のシャープ性、吐出安定性、インクの保存安定性を下記のようにして評価した。結果を表1に示す。
【0054】
<画像濃度>
各画像サンプルのベタ画像をXrite濃度計938で測定し次の基準で評価した。
〔評価基準〕
○:1.30以上
△:1.20以上、1.30未満
×:1.20未満

【0055】
<画像のシャープ性>
各画像サンプルの文字部のシャープ性を目視により次の評価基準で判定した。
〔評価基準〕
◎:極めて良好
○:良好
△:普通
×:不良

【0056】
<吐出安定性>
印字後、プリンターヘッドにキャップした状態でプリンターを40℃の環境下、1ヶ月放置し、次いで、プリンターの吐出状態が初期の吐出状態に回復するために必要なクリーニング動作回数を調べ、次の評価基準で判定した。
〔評価基準〕
◎:1回の動作により回復した。
○:2回の動作により回復した。
△:3回の動作により回復した。
×:3回以上の動作によっても回復がみられなかった。

【0057】
<保存安定性>
各インクをポリエチレン容器に入れて密封し、70℃で3週間保存した後の粒径、表面張力、粘度を測定し、それらの保存前後の変化率により下記の基準で評価した。
〔評価基準〕
◎:粒径、表面張力、粘度の全ての項目で変化率が5%未満である。
○:粒径、表面張力、粘度の全ての項目で変化率が10%未満である。
△:粒径、表面張力、粘度の全ての項目で変化率が30%未満である。
×:粒径、表面張力、粘度の少なくとも一つの項目で変化率が30%以上である。

【0058】
【表1】

【符号の説明】
【0059】
1 インクジェット記録装置
2 本体筐体
16 ギア機構
17 副走査モータ
18 キャリッジ
18a 液滴吐出ヘッド
19 プラテン
20 インクカートリッジ
21 ガイドシャフト
22 ガイドシャフト
23 タイミングベルト
25 ギア機構
26 主走査モータ
27 ギア機構
【先行技術文献】
【特許文献】
【0060】
【特許文献1】特開昭56−147871号公報
【特許文献2】特開平8−283633号公報
【特許文献3】特開2009−241586号公報
【特許文献4】特開平10−298469号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤、水、水溶性有機溶媒、及び下記一般式(1)で示されるポリアクリル酸エステル系ポリマーを含有することを特徴とするインクジェット記録用インク。
【化3】

式中、Rは水素、メチル基、XはF、Cl、Br、MはNa、K、NH、Li、を表し、l、m、n、pはそれぞれ10〜3000の整数を表す。
【請求項2】
更にアニオン性自己乳化型のエーテル系ポリウレタン樹脂エマルジョンを含有することを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録用インク。
【請求項3】
請求項1又は2記載のインクジェット記録用インクを容器に収容したことを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項4】
請求項3記載のインクカートリッジを搭載したことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項5】
請求項1又は2記載のインクジェット記録用インクを用いて印字することを特徴とする画像形成方法。
【請求項6】
請求項5記載の画像形成方法で作成された画像形成物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−87198(P2012−87198A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234499(P2010−234499)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】