説明

インクジェット記録用インク組成物およびインクジェット記録方法

【課題】 長時間のインクジェット記録において常に安定してインク滴を吐出することが可能であり、かつ高画質な画像の形成を長時間可能とし、さらに記録物を重ねても経時で画像記録物同士が接着しない静電インクジェット記録用インク組成物およびインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】 分散媒、および、色材を少なくとも含む荷電粒子、を含有するインクジェット記録用のインク組成物において、該荷電粒子が、少なくとも一種以上の分散媒可溶ポリマーにより、分散媒中に分散されており、該分散媒可溶ポリマーのうち、一部ないし、全てが、荷電粒子表面と共有結合を形成していることを特徴とする静電インクジェト記録用インク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録用インク組成物およびインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像データ信号に基づき、紙などの被記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式などがある。電子写真方式は、感光体ドラム上に帯電及び露光により静電潜像を形成するプロセスを必要とし、システムが複雑となり高価な装置となる。熱転写方式は、装置は安価であるが、インクリボンを用いるため、ランニングコストが高くかつ廃材が出る。一方インクジェット方式は、安価な装置で、且つ必要とされる画像部のみにインクを吐出し被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率良く使用でき、ランニングコストが安い。さらに、騒音が少なく、画像記録方式として優れている。
【0003】
インクジェット記録方式には、例えば、発熱体の熱により発生する蒸気の圧力でインク滴を飛翔させる方式や、圧電素子によって発生される機械的な圧力パルスによりインク滴を飛翔させる方式、また、静電界を利用して荷電粒子を含有するインク滴を飛翔させる方式(特許文献1、特許文献2参照)がある。蒸気や機械的圧力でインク滴を飛翔させる方式は、インク滴の飛翔方向を制御できず、インクノズルの歪みや空気の対流により、被記録媒体上の望ましい位置へ、インク滴を正確に着弾させることが困難である。
一方、静電界を利用する方式は、インク滴の飛翔方向を静電界により制御するため、望ましい位置へインク滴を正確に着弾させることが可能であり、高画質の画像形成物(印刷物)を作成でき優れている。
【0004】
静電界を利用するインクジェット記録に用いられるインク組成物としては、分散媒および、色材を少なくとも含む荷電粒子を含有するインク組成物が用いられる(特許文献3、特許文献4参照)。色材を含有するインク組成物は、色材を変更することにより、イエロー、マゼンタ、シアン、墨の4色のインクを作成することができ、さらに金や銀の特色インクを作成することができる。したがって、カラーの画像形成物(印刷物)を作成することができるため有用である。しかしながら従来のインク組成物は、長時間安定した吐出が困難であり、また、長時間インクを保存した際などに沈降するインク粒子の再分散性が悪く、改良が期待されていた。
【0005】
【特許文献1】米国特許第6158844号明細書
【特許文献2】特許3315334号公報
【特許文献3】米国特許第5952048号明細書
【特許文献4】特開平8−291267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、長時間安定した吐出性、及び、経時で沈降する粒子の再分散性が向上したインクジェット記録用インク組成物およびインクジェット記録方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達するために鋭意検討した結果、荷電粒子を分散させる分散媒可溶ポリマーと、荷電粒子とが共有結合を形成する荷電粒子を用いることによって、長時間安定した吐出性、及び、再分散性が向上されることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)分散媒、および、色材を少なくとも含む荷電粒子、を含有するインクジェット記録用のインク組成物において、該荷電粒子が、少なくとも一種以上の分散媒可溶ポリマーにより、分散媒中に分散されており、該分散媒可溶ポリマーのうち、一部ないし、全てが、荷電粒子表面と共有結合を形成していることを特徴とするインクジェト記録用インク組成物。
(2)前記(1)記載のインク組成物を用いて、静電界を利用したインクジェット記録方式によりインク滴を飛翔させることを特徴とするインクジェト記録方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、長時間の安定した吐出が可能で、長時間インクを保存した際などに沈降するインク粒子の再分散性が良好なインク組成物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明についてさらに詳述する。
本発明のインク組成物は、分散媒と色材を少なくとも含む荷電粒子とを含有する。
【0010】
[分散媒]
分散媒は、高い電気抵抗率、具体的には1010Ωcm以上を有する誘電性の液体であることが好ましい。仮に電気抵抗率の低い分散媒を使用すると、隣接する記録電極間で電気的導通を生じさせるため、本形態には不向きである。また、誘電性液体の比誘電率は5以下が好ましく、より好ましくは4以下、更に好ましくは3.5以下である。このような比誘電率の範囲とすることによって、誘電性液体中の荷電粒子に有効に電界が作用されるため好ましい。
【0011】
本発明に用いる分散媒としては、直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、または芳香族炭化水素、およびこれらの炭化水素のハロゲン置換体、シリコーンオイルがある。例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン.イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、トルエン、キシレンおよびメシチレン等が挙げられ、具体的にはアイソパーC、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM(アイソパー:エクソン社の商品名)、シェルゾール70、シェルゾール71(シェルゾール:シェルオイル社の商品名)、アムスコOMS、アムスコ460溶剤(アムスコ:スピリッツ社の商品名)、KF−96L(信越シリコーン社の商品名)等を単独あるいは混合して用いることができる。インク組成物全体に対する分散媒の含有量は、20〜99質量%の範囲内であることが好ましい。20質量%以上において、色材を含有する粒子を分散媒に分散することができ、また、99質量%以下において、色材の含有量を充足することができる。
【0012】
荷電粒子表面と、分散媒可溶ポリマーとが共有結合を形成したインク組成物を使用すると、インク付着すなわち配管つまりやヘッドつまりが置きにくくなり、長時間安定した吐出が可能となる。また、経時で沈降したインクの再分散性が良化する。このような効果が得られる理由は明確ではないが、以下のように考えられる。
色材を少なくとも含有するインクジェット組成物をインクジェットヘッドから吐出する際、ヘッド先端部等に代表される気液界面においては、溶剤の揮発により粒子濃度が増大する。また、インクをインクタンク内や容器に長時間保存した際に経時で沈降、堆積した部分も同様に、沈降前の分散状態に比べ、粒子濃度が増大している。粒子濃度が増大する
と、粒子間の密度が高くなり、粒子同士は接近、あるいは接触した状態すなわち凝集状態となる。
分散媒可溶ポリマーを粒子表面に共有結合させることで、分散媒可溶ポリマーの吸着率が高まり、粒子表面は、分散媒可溶ポリマーで密に被覆される。これにより、粒子表面の分散媒親和性が向上し、凝集状態の荷電粒子同士が分散媒中に再分散しやすくなり、ヘッド部等、気液界面への凝集付着や、経時で沈降したインクの再分散性が良化したものと考えられる。
【0013】
本発明において、分散媒可溶ポリマーと荷電粒子表面とが共有結合を有するインク組成物は、分散媒可溶ポリマーを用いて、荷電粒子分散物を作成する際に、分散媒可溶ポリマーが有する特定の官能基と、粒子表面に有する特定の官能基とを共有結合形成反応させることで得ることができる。
【0014】
また、本発明において、分散媒可溶ポリマーと荷電粒子表面とが共有結合を有するインク組成物は、分散媒可溶ポリマーを用いて、荷電粒子分散物を作成した後、荷電粒子作成に用いた分散媒可溶ポリマー、または、荷電粒子作成後に添加した分散媒可溶ポリマー中に有する特定の官能基と、荷電粒子表面に有する特定の官能基とを共有結合形成反応させることでも得ることができる。
【0015】
また、荷電粒子作成に用いた分散媒可溶ポリマー、または、荷電粒子形成後に添加した分散媒可溶ポリマー中に有する特定の官能基と、粒子表面に有する特定の官能基との共有結合形成反応は、分散媒可溶ポリマー中に有する特定の官能基と、粒子表面に有する特定の官能基とが直接反応するものであってもよいし、第三成分を介して共有結合形成するものであっても良い。粒子表面同士、分散媒可溶ポリマー同士の反応を抑制する意味では、分散媒可溶ポリマー中に有する特定の官能基と、粒子表面に有する特定の官能基とが直接反応するものがより好ましい。
【0016】
本発明において、色材を少なくとも含有する荷電粒子は、色材のみで構成されていても良いし、色材が被覆剤ポリマーに被覆されたものであってもよい。また、色材以外の低分子成分を含んでいても良い。よって、荷電粒子表面が、分散媒可溶ポリマーと共有結合を形成するには、色材、被覆剤ポリマー、及び、色材以外に含有する低分子成分のうち、少なくともいずれか一つが分散媒可溶ポリマーと共有結合を形成せしむる特定の官能基を有していればよい。特に好ましいのは、荷電粒子が被覆剤ポリマーを有し、該被覆剤ポリマーに分散媒可溶ポリマーと共有結合を形成せしむる特定の官能基を有しているインク組成物である。
【0017】
上記において、被覆剤ポリマーとは、顔料を複合化せしむる重量平均分子量1000以上のポリマーを示し、色材以外の低分子成分とは、分子量2000以下の単分子及びオリゴマーを意味する。
【0018】
本発明において、分散媒可溶ポリマーと荷電粒子表面とを共有結合させる反応は、「パイン有機化学I・II 第5版(廣川書店)」に記載されている共有結合形成反応の全てが適用可能であるが、好適な例として、イソシアネートへの付加反応、及び、エポキシ化合物の開環反応が挙げられる。
【0019】
イソシアネートへの付加反応、及び、エポキシ化合物の開環反応を行う、分散媒可溶ポリマー中に有する官能基と、粒子表面に有する官能基の好ましい組み合わせとしては、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基のうち少なくと一種を有する分散媒可溶ポリマーと、イソシアネート基、及びエポキシ基のうち少なくとも一種を有する粒子表面との組み合わせ、あるいは、イソシアネート基、及びエポキシ基のうち少なくと一
種を有する分散媒可溶ポリマーと、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基のうち少なくとも一種を有する粒子表面との組み合わせが挙げられる。
【0020】
本発明において、分散媒可溶ポリマーと荷電粒子表面とを共有結合させる反応として他の好ましい例としては、縮合反応、酸無水物の開環反応があげられ、縮合反応、酸無水物の開環反応を行う、分散媒可溶ポリマー中に有する官能基と、粒子表面に有する官能基の好ましい組み合わせとしては、カルボキシル基、酸ハライド、及び、酸無水物基のうち少なくとも一種を有する分散媒可溶ポリマーと、ヒドロキシル基、及びアミノ基のうち少なくとも一種を有する粒子表面との組み合わせ、あるいは、ヒドロキシル基、及びアミノ基を有する分散媒可溶ポリマーと、カルボキシル基、酸ハライド、及び、酸無水物基のうち少なくとも一種を有する粒子表面との組み合わせが挙げられる。
【0021】
また、粒子表面、及び、分散媒可溶ポリマーの両方に、ラジカル重合性基を有していれば、ラジカル重合により、共有結合形成できるため好ましい。
【0022】
ラジカル重合性基として好適なものは、アリル基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等が挙げられる。
【0023】
その他、シランカップリング反応、チタネートカップリング反応に代表される、無機化合物のアルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシル基置換体の脱水縮合反応も好ましい。
【0024】
無機化合物のアルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシル基置換体の脱水縮合反応を行う、分散媒可溶ポリマー中に有する官能基と、粒子表面に有する官能基の好ましい組み合わせとしては、ヒドロキシル基、(モノ、ジ、トリ)ハロシリル基、(モノ、ジ、トリ)ハロチタネート基、(モノ、ジ、トリ)アルコキシシリル基、(モノ、ジ、トリ)アルコキシチタネート基、(モノ、ジ、トリ)ヒドロキシシリル基、(モノ、ジ、トリ)ヒドロキシチタネート基、のうち少なくと一種を有する分散媒可溶ポリマーと、(モノ、ジ、トリ)ハロシリル基、(モノ、ジ、トリ)ハロチタネート基、(モノ、ジ、トリ)アルコキシシリル基、(モノ、ジ、トリ)アルコキシチタネート基、(モノ、ジ、トリ)ヒドロキシシリル基、(モノ、ジ、トリ)ヒドロキシチタネート基、のうち少なくとも一種を有する粒子表面との組み合わせ、あるいは、ヒドロキシル基、(モノ、ジ、トリ)ハロシリル基、(モノ、ジ、トリ)ハロチタネート基、(モノ、ジ、トリ)アルコキシシリル基、(モノ、ジ、トリ)アルコキシチタネート基、(モノ、ジ、トリ)ヒドロキシシリル基、(モノ、ジ、トリ)ヒドロキシチタネート基、のうち少なくと一種を有する分散媒可溶ポリマーと、(モノ、ジ、トリ)ハロシリル基、(モノ、ジ、トリ)ハロチタネート基、(モノ、ジ、トリ)アルコキシシリル基、(モノ、ジ、トリ)アルコキシチタネート基、(モノ、ジ、トリ)ヒドロキシシリル基、(モノ、ジ、トリ)ヒドロキシチタネート基、のうち少なくとも一種を有する粒子表面との組み合わせ等が挙げられる。
【0025】
[色材]
本発明に用いる色材としては、公知の染料および顔料を使用することができ、用途や目的に応じて選択することができる。例えば、記録された画像記録物(印刷物)の色調の観点からは、顔料を用いることが好ましい(例えば、技術情報協会発行 「顔料分散安定化と表面処理技術・評価」 2001年12月25日 第1刷参照。以下「非特許文献1」とも称する)。色材を変更することにより、イエロー、マゼンタ、シアン、墨(ブラック)の4色のインクを作成することができる。特に、オフセット印刷用インクやプルーフに用いられる顔料を使用するとオフセット印刷物と同様な色調が得られるので好ましい。
【0026】
本発明において使用する色材が、分散媒可溶ポリマーと共有結合形成するには、上述した分散媒可溶ポリマーと共有結合形成せしむる官能基を色材が有していれば良い。
【0027】
上述した分散媒可溶ポリマーと共有結合形成せしむる官能基は、色材分子に置換基として有していても良いし、顔料の表面を物理、化学修飾したものであっても良い、また、顔料表面処理剤(コート剤)中に含まれていても良い。
【0028】
イエローインク用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、 C.I.ピグメントイエロー74等のモノアゾ顔料、 C.I.ピグメントイエロー12、 C.I.ピグメントイエロー17等のジスアゾ顔料、 C.I.ピグメントイエロー180等の非ベンジジン系のアゾ顔料、 C.I.ピグメントイエロー100等のアゾレーキ顔料、 C.I.ピグメントイエロー95等の縮合アゾ顔料、 C.I.ピグメントイエロー115等の酸性染料レーキ顔料、 C.I.ピグメントイエロー18等の塩基性染料レーキ顔料、フラバントロンイエロー等のアントラキノン系顔料、イソインドリノンイエロー3RLT、C.I.ピグメントイエロー139等のイソインドリノン顔料、キノフタロンイエロー等のキノフタロン顔料、イソインドリンイエロー等のイソインドリン顔料、 C.I.ピグメントイエロー153等のニトロソ顔料、 C.I.ピグメントイエロー117等の金属錯塩アゾメチン顔料などが挙げられる。
【0029】
マゼンタインク用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド3等のモノアゾ系顔料、 C.I.ピグメントレッド38等のジスアゾ顔料、 C.I.ピグメントレッド53:1等やC.I.ピグメントレッド57:1等のアゾレーキ顔料、 C.I.ピグメントレッド144等の縮合アゾ顔料、 C.I.ピグメントレッド174等の酸性染料レーキ顔料、 C.I.ピグメントレッド81等の塩基性染料レーキ顔料、 C.I.ピグメントレッド177等のアントラキノン系顔料、 C.I.ピグメントレッド88等のチオインジゴ顔料、 C.I.ピグメントレッド194等のペリノン顔料、 C.I.ピグメントレッド149等のペリレン顔料、 C.I.ピグメントレッド122等のキナクリドン顔料、 C.I.ピグメントレッド180等のイソインドリノン顔料、 C.I.ピグメントレッド83等のアリザリンレーキ顔料等が挙げられる。
【0030】
シアンインク用の顔料としては、例えば、C.Iピグメントブルー25等のジスアゾ系顔料、 C.I.ピグメントブルー15等のフタロシアニン顔料、 C.I.ピグメントブルー24等の酸性染料レーキ顔料、 C.I.ピグメントブルー1等の塩基性染料レーキ顔料、 C.I.ピグメントブルー60等のアントラキノン系顔料、 C.I.ピグメントブルー18等のアルカリブルー顔料等が挙げられる。
【0031】
墨インク用の顔料としては、例えば、アニリンブラック系顔料等の有機顔料や酸化鉄顔料、及びファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料類等が挙げられる。
更にマイクロリス−A,−K,−Tなどのマイクロリス顔料に代表される加工顔料も好適に使用できる。その具体例としてはマイクロリスイエロー4G−A,マイクロリスレッドBP−K,マイクロリスブルー4G−T,マイクロリスブラックC−Tなどが挙げられる。
また、白インク用の顔料として炭酸カルシウムや酸化チタン顔料を、銀インク用としてアルミニウム粉を、金インク用として銅合金を用いる等、必要に応じて各種の顔料を使用することができる。
【0032】
顔料は、基本的には一色につき一種類の顔料を使うことが、インク製造の簡便性の点で好ましいが、色相調整として例えば、墨インク用に、カーボンブラックにフタロシアニンを混合するなど、場合によっては2種以上併用することも好ましい。また、ロジン処理等、公知の方法により顔料を表面処理した後使用してもよい(前述の非特許文献1)。
インク組成物全体に対する顔料の含有量は、0.1〜50質量%の範囲内であることが
好ましい。0.1質量%以上において、顔料量が充足し、印刷物において充分良好な発色が得られ、50質量%以下において、色材を含有する粒子を分散媒に良好に分散させることができる。さらに好ましくは、1〜30質量%である。
【0033】
[被覆剤ポリマー]
本発明において、顔料等の色材は、分散媒に直接、分散(粒子化)するよりも、被覆剤ポリマーにより被覆された状態で分散(粒子化)することが好ましい。被覆剤ポリマーで被覆することにより、色材が持つ荷電を遮蔽し望ましい荷電特性を付与することができる。また、色材の種類により異なる分散安定性の相違を打ち消し、同様な分散安定性を付与できる。さらに本発明においては、被記録媒体へインクジェット記録した後、ヒートローラ等の加熱手段により定着することが好ましいが、この際被覆剤ポリマーが熱により溶融し、効率良く定着できる。
【0034】
具体的には、ロジン類、フェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、アルキッド樹脂、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニールアルコールのアセタール変性物、ポリカーボネート、シロキサン樹脂が挙げられ、これらの内、粒子形成の容易さの観点から、重量平均分子量が2,000〜1000,000の範囲内であり、かつ多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が、1.0〜5.0の範囲内であるポリマーが好ましい。さらに、定着の容易さの観点から、軟化点、ガラス転移点または、融点のいずれか1つが40℃〜120℃の範囲内にあるポリマーが好ましい。
【0035】
本発明において使用される被覆剤ポリマーには、分散媒可溶ポリマーと共有結合せしむる官能基を有しているものが特に好ましい。ここで、被覆剤ポリマーとは、色材と複合化したポリマー、及び、表面コート剤を意味する。
【0036】
分散媒可溶ポリマーと共有結合せしむる官能基を有するポリマーとしては、ロジン類、フェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、アルキッド樹脂、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニールアルコールのアセタール変性物、ポリカーボネート、シロキサン樹脂に置換基としてヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、イソシアネート基、エポキシ基、酸無水物基、酸ハライド基、等の反応性基、トリハロシリル基、トリメトキシシリル基等のシランカップリング基、及びその他ゾル−ゲル反応等で使用される金属カップリング基、及び、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等のラジカル重合性基を有しているポリマーが挙げられる。これらのポリマーを色材と混合して使用してもよいし、表面コート剤として使用しても良い。
【0037】
本発明において、被覆剤ポリマーとして特に好適に使用されるポリマーは、下記一般式(1)〜(11)で示される構成単位のいずれか1つを少なくとも含有し、ポリマー中にヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、イソシアネート基、エポキシ基、酸無水物基、酸ハライド基、等の反応性基、トリハロシリル基、トリメトキシシリル基等のシランカップリング基、及びその他ゾル−ゲル反応等で使用される金属カップリング基、及び、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等のラジカル重合性基を有しているポリマーである。
【0038】
【化1】

【0039】
【化2】

【0040】
一般式(1)〜(11)中、R11、R12は、同じでも異なっていてもよく、水素原子、又はメチル基を示す。X11は単結合、または、C、H、N、O、S、Pより選ばれる2種以上の原子よりなる総原子数が50個以下の2価の連結基を示す。R13、R21、R22、R31、R32、R41、R42、R51、R52、R61、R71、R81、R101、R111、R112は、それぞれ独立に、炭素数1から20個の2価の炭化水素基を示す。尚、R13、R21、R22、R31、R32、R41、R42、R51、R52、R61、R71、R81、R101、R111、R112の炭化水素基中にエーテル結合、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、イソシアネート基、エポキシ基、酸無水物基、酸ハライド基、等の反応性基、及び、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等のラジカル重合性基を有していてよい。また、M1、M2 、M3、は、Si、Ti、Zn、Sn、Zr、Al等の一般的なゾル−ゲル反応に用いられる金属、非金属元素を示す。
【0041】
一般式(1)で示される構成単位を含有するポリマーは、対応する下記ラジカル重合性モノマー(1M)を公知の方法によりラジカル重合することにより得られる。
【0042】
【化3】

【0043】
式中の各記号は、一般式(1)におけるものと同じ意味である。
【0044】
用いられるラジカル重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、及び、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、メトキシスチレン等のスチレン類、1−ブテン等の炭化水素類、及び酢酸ビニル類、ビニルエーテル類、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−カルボキシエチル、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルスクシネート、スチレンカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルスルホン酸、スチレンスルホン酸、エチレングリコール(メタ)アクリレートホスフェート、スチレンリン酸等の酸性基を含有するモノマー、及び、該モノマー中の酸性基をアミン類、スルフィド類、ホスフィン類、複素環化合物等でイオン対化したモノマー、該モノマー中の酸性基をアンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩等の対成分によって中和してなるモノマー、ビニルアミン、アリルアミン、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、1−(N,N−ジメチルアミノ)−1、1−ジメチルメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノヘキシル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジ−n−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジ−i−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、ピペリジノエチル(メタ)アクリレート、1−ピロリジノエチル(メタ)アクリレート、N,N−メチル−2−ピロリジルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびN,N−メチルフェニルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、1−(N,N−ジメチルアミノ)−1,1−ジメチルメチル(メタ)アクリルアミドおよび6−(N,N−ジエチルアミノ)ヘキシル(メタ)アクリルアミド、p−ビニルアニリン、N,N−ジメチルp−ビニルベンジルアミン、p−ジメチルアミノスチレン、ビニルピリジン、等の塩基性基を含有するモノマー、および該モノマー中の塩基性基を酸性基含有化合物で中和したモノマー、該モノマー中の塩基性基を中和反応以外の化学反応によりイオン化したモノマー、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロプレングリコール(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、2−アミノエチルメタクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−((メタ)アクリロキシエトキシ)トリメチルシラン、N−3−((メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(3−(メタ)アクリロキシプロプル)ジメチルメトキシシラン、(3−(メタ)アクリロキシプロプル)メチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、(3−(メタ)アクリロキシプロプル)メチルジクロロシラン、(3−(メタ)アクリロキシプロプル)メチルジメトキシシラン、(3−(メタ)アクリロキシプロプル)トリクロロシラン、3−(メタ)アクリロキシプロプル)トリメトキシシラン、チタン(メタ)アクリレートトリイソプロポキサイド、(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)トリイソポロポキシチタネート等が挙げられる。
【0045】
一般式(2)で示される構成単位を含有するポリマーは、対応するジカルボン酸または酸無水物とジオールとを公知の方法で脱水縮合することにより得られる。用いられるジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,2′−ビフェニルジカルボン酸、3,3′−ビフェニルジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルスルフォンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルイソプロピリデンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボン酸、2,5−アントラセンジカルボン酸、2,6−アントラセンジカルボン酸、4,4′−p−ターフェニレンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸無水物、セバシン酸、1,4−フェニレンジ酢酸、ジグリコール酸等が挙げられる。また、用いられるジオールとしては、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール、ジエチレングリコール等が挙げられる。なお少量であれば、分子量400〜6000の長鎖ジオール、すなわちポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどを1種以上共重合せしめてもよい。
【0046】
一般式(3)で示される構成単位を含有するポリマーは、対応するジカルボン酸または、酸無水物と、ジアミンとを公知の方法で脱水縮合することにより得られる。ジカルボン酸の好ましい例は上述した通りである。用いられるジアミンとしては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、プロピレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシレンジアミン、p−キシレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、2,2′−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、4,4−メチレンジアニリン、ベンジン、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3′−ジメチルベンジン、3,3′−ジメトキシベンジン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル−3−カルボンアミド、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0047】
一般式(4)で示される構成単位を含有するポリマーは、対応するジカルボン酸または酸無水物とジイソシアネートとを公知の方法で重付加することにより得られる。用いられるジカルボン酸の好ましい例は、上述した通りである。また、用いられるジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエンジイソシネート及びこれらの異性体、1−メトキシフェニル−2,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチル−4,4′−ビフェニルジイソシアネート、3,3′−ジメチル−ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート及びこれらの同等物の如きジイソシアネート類、等が挙げられる。
【0048】
一般式(5)で示される構成単位を含有するポリマーは、対応するジアミンとジイソシアネートとを公知の方法で重付加することにより得られる。用いられるジアミン、ジイソシアネートの例は、上述した通りである。
【0049】
一般式(6)で示される構成単位を含有するポリマーとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロプレングリコール、ポリエチレングリコールビス2−アミノプロピルエーテル、ポリプロピレングリコールビス2−アミノプロピルエーテル、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。
【0050】
一般式(7)で示される構成単位を含有するポリマーは、対応するヒドロキシ基を有するカルボン酸を公知の方法で脱水縮合するかまたは、対応するヒドロキシ基を有するカルボン酸の環状エステルを公知の方法で開環重合することにより得られる。用いられるヒドロキシ基を有するカルボン酸またはその環状エステルとしては、6−ヒドロキシヘキサン酸、11−ヒドロキシウンデカン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトン等が挙げられる。
【0051】
一般式(8)で示される構成単位を含有するポリマーは、対応するアミノ基を有するカルボン酸を公知の方法で脱水縮合するかまたは、対応するアミノ基を有するカルボン酸の環状エステルを公知の方法で開環重合することにより得られる。用いられるアミノ基を有するカルボン酸またはその環状エステルとしては、6−アミノヘキサン酸、12−アミノステアリン酸、11−アミノウンデカン酸、ヒドロキシアニリン、ε−カプロラクタム等が挙げられる。
【0052】
一般式(9)〜(11)で示される構造単位を有するポリマーは、主に、粒子表面処理工程時に形成される。色材を少なくとも含有する分散粒子存在下、一般式(9)〜(11)に対応するカップリング剤を添加して、公知のカップリング反応により、粒子表面をメタルオキサン樹脂で覆うことができる。使用するカップリング剤は一種のみでも良いし、複数を用いても良い。ただし、用いるカップリング剤のうち、少なくとも一種以上のには、粒子表面と共有結合せしむる官能基を有することが必要である。
【0053】
一般式(9)〜(11)に対応するカップリング剤としては、それぞれ、下記一般式(9C)〜(11C)で表されるカップリング剤が挙げられる。
【0054】
【化4】

【0055】
式中、X91、X92、X93、X94、X101、X102、X103、X111、X112、は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシル基を示す。その他、各記号は、一般式(9)〜(11)におけるものと同じ意味である。
【0056】
一般式(9C)で表されるカップリング剤としては、テトラクロルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、チタンテトラクロリド、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラn−プロポキシド、等が挙げられる。
一般式(10C)で表されるカップリング剤としては、メチルトリクロルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリクロルシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリクロルシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、フェニルトリクロルシラン、フェニルトリメトキシシラン、トリエトキシヒドロシラン、トリメトキシヒドロシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
一般式(11C)で表されるカップリング剤としては、ジメトキシジエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランγ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0057】
上記カップリング剤のうち、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、イソシアネート基、エポキシ基、酸無水物基、酸ハライド基、等の反応性基、トリハロシリル基、トリメトキシシリル基等のシランカップリング基、及びその他ゾル−ゲル反応等で使用される金属カップリング基、及び、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等のラジカル重合性基、等の分散媒可溶ポリマーと共有結合せしむる官能基を有するカップリング剤を少なくとも一種以上用いる。
【0058】
一般式(1)〜(11)で示される構成単位のいずれか1つを少なくとも含有するポリマーは、一般式(1)〜(11)で示される構成単位のホモポリマーであってもよいが、他の構成成分との共重合体(コポリマー)であっても良い。また、これらのポリマーは、被覆剤として単独で使用しても良いが、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0059】
インク組成物全体に対する被覆剤の含有量は、0.1〜40質量%の範囲内であることが好ましい。0.1質量%以上において、被覆剤の量が充足し、充分な定着性が得られるとともに、40質量%以下において、色材と被覆剤を含有する粒子を良好に形成することができる。
【0060】
本発明において好適に用いる、分散媒可溶ポリマーと共有結合せしむる官能基を有する被覆剤ポリマーの具体例としては、下記の構造式で示されるポリマー[HZ−1]〜[HZ−11]が挙げられる。
【0061】
【化5】

【0062】
【化6】

【0063】
本発明においては、分散媒可溶ポリマーと共有結合せしむる官能基を有さない被覆剤ポリマーも合わせて使用できる。具体例としては、下記の構造式で示されるポリマー[HZ−12]〜[HZ−14]が挙げられる。
【0064】
【化7】

【0065】
また、分散媒可溶ポリマーと共有結合せしむる官能基(共有結合性基ともいう。)を被覆剤ポリマーが有していなくても、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、イソシアネート基、エポキシ基、酸無水物基、酸ハライド基、等の反応性基、トリハロシリル基、トリメトキシシリル基等のシランカップリング基、及びその他ゾル−ゲル反応等で使用される金属カップリング基、及び、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等のラジカル重合性基、等の共有結合性基を有する低分子化合物を色材と共に被覆剤に混合させることで、分散媒可溶ポリマーとの共有結合性基を粒子表面に存在させることができる。
【0066】
[低分子成分]
分散媒可溶ポリマーと共有結合形成せしむる官能基を有する低分子成分とは、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、イソシアネート基、エポキシ基、酸無水物基、酸ハライド基、等の反応性基、トリハロシリル基、トリメトキシシリル基等のシランカップリング基、及びその他ゾル−ゲル反応等で使用される金属カップリング基、及び、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等のラジカル重合性基、等の官能基を有する分子量2000以下の単分子、及びオリゴマーが挙げられる。
【0067】
例えば、一般式(12)及び(13)の化合物が挙げられる。
【0068】
【化8】

【0069】
式中、A121、A131、A132は、同じでも異なっていてもよく、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、イソシアネート基、エポキシ基、酸無水物基、酸ハライド基、等の反応性基、トリハロシリル基、トリメトキシシリル基等のシランカップリング基、及びその他ゾル−ゲル反応等で使用される金属カップリング基、及び、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等のラジカル重合性基、等から選ばれる、分散媒可溶ポリマーと共有結合形成せしむる官能基を示す。
121は、アルキル基、アルケニル基、アルケニル基、アラルキル基、脂環式基、アリール基、架橋環式炭化水素基を示す。また、R121中に、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合等を含んでいても良いし、ハロゲン原子等の置換基を有していても良い。
131は、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、アラルキレン基または架橋環式炭化水素連結基を示す。また、X131中に、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合等を含んでいても良いし、ハロゲン原子等の置換基を有していても良い。
【0070】
121の好ましい炭化水素基としては、炭素数1〜22の置換されていてもよいアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、ドコシル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシカルボニルエチル基、2−メトキシエチル基、3−ブロモプロピル基等)、炭素数4〜18の置換されていてもよいアルケニル基(例えば、2−メチル−1−プロペニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、3−メチル−2−ペンテニル基、1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、4−メチル−2−セキセニル基、デセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、リノレニル基等)、炭素数7〜12の置換されていてもよいアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、ナブチルメチル基、2−ナフチルエチル基、クロロベンジル基、ブロモベンジル基、メチルベンジル基、エチルベンジル基、メトキシベンジル基、ジメチルベンジル基、ジメトキシベンジル基等)、炭素数5〜8の置換されていてもよい脂環式基(例えば、シクロヘキシル基、2−シクロヘキシルエチル基、2−シクロペンチルエチル基等)、炭素数6〜60の置換されていてもよいアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、オクチルフェニル基、ドデシルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、デシルオキシフェニル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、ブロモフェニル基、シアノフェニル基、アセチルフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基、ブトキシカルボニルフェニル基、アセトアミドフェニル基、プロピオンアミドフェニル基、ドデシロイルアミドフェニル基、アントラセニル基等)、または架橋環式炭化水素基(例えば、ノルボルニル、アダマンチル等)などが挙げられる。
【0071】
また、窒素、酸素、硫黄原子と共に環を形成する有機残基を表してもよい。この有機残
基は更に、ヘテロ原子(例えば酸素原子、窒素原子、硫黄原子等)を含有してもよい。形成される環状アンモニウム基としては、例えばモルホリノ基、ピペリジノ基、ピリジル基、イミダゾリル基、キノリル基、オキサゾリン基等を4級化して得られるものが挙げられる。
環状スルホニウム基としては、チオフェン基、テトラヒドロチオフェン基、ベンゾチオフェン基、チアゾール基等を4級化して得られるものが挙げられる。
【0072】
131の好ましい様態としては、炭素数1〜22の置換されてもよいアルキレン基(例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ドデシレン、トリデシレン、テトラデシレン、ヘキサデシレン、オクタデシレン、エイコシレン、ドコシレン、2−クロロエチレン、2−ブロモエチレン、2−シアノエチレン、2−メトキシカルボニルエチレン、2−メトキシエチレン、3−ブロモプロピレン等)、炭素数5〜8の置換されてもよいシクロアルキレン基(例えば、シクロヘキシレン、2−シクロヘキシルエチレン、2−シクロペンチルエチレン等)、炭素数4〜18の置換されてもよいアルケニレン基(例えば、2−メチル−1−プロペニレン、2−ブテニレン、2−ペンテニレン、3−メチル−2−ペンテニレン、1−ペンテニレン、1−ヘキセニレン、2−ヘキセニレン、4−メチル−2−ヘキセニレン、デセニレン、ドデセニレン、トリデセニレン、ヘキサデセニレン、オクタデセニレン、リノレニレン等)、アルキニレン基(例えば、アセチレン、メチルアセチレン、フェニルアセチレン等)、炭素数7〜12の置換されてもよいアラルキレン基(例えば、ベンジレン、フェネチレン、3−フェニルプロピレン、ナフチルメチレン、2−ナフチルエチレン、クロロベンジレン、ブロモベンジレン、メチルベンジレン、エチルベンジレン、メトキシベンジレン、ジメチルベンジレン基、ジメトキシベンジレン等)、炭素数6〜18の置換されてもよいアリーレン基(例えば、フェニレン、ナフチレン、アントラセニレン、トリレン、キシリレン、プロピルフェニレン、ブチルフェニレン、オクチルフェニレン、ドデシルフェニレン、メトキシフェニレン、エトキシフェニレン、ブトキシフェニレン、デシルオキシフェニレン、クロロフェニレン、ジクロロフェニレン、ブロモフェニレン、シアノフェニレン、アセチルフェニレン、メトキシカルボニルフェニレン、エトキシカルボニルフェニレン、ブトキシカルボニルフェニレン、アセトアミドフェニレン、プロピオンアミドフェニレン、ドデシロイルアミドフェニレン等)または架橋環式炭化水素基(例えば、ノルボルニル、アダマンチル等)などが挙げられる。
【0073】
また、X131はそれぞれ結合して窒素原子と共に環を形成する有機残基を表してもよい。この有機残基は更に、ヘテロ原子(例えば酸素原子、窒素原子、イオウ原子等)を含有してもよい。形成される環状アンモニウム基としては、例えばモルホリノ基、ピペリジノ基、ピリジル基、イミダゾリル基、キノリル基、オキサゾリン基等を4級化して得られるのもが挙げられる。環状スルホニウム基としては、チオフェン基、テトラヒドロチオフェン基、ベンゾチオフェン基、チアゾール基等を4級化して得られるのもが挙げられる。
【0074】
インク組成物全体に対する被覆剤の含有量は、複合化する低分子成分、及び、表面コート成分も含め、0.1〜40質量%の範囲内であることが好ましい。0.1質量%以上において、被覆剤の量が充足し、充分な定着性が得られるとともに、40質量%以下において、色材と被覆材を含有する粒子を良好に形成することができる。
【0075】
[分散媒可溶ポリマー]
本発明において、分散媒可溶ポリマーとは、色材、又は色材と被覆剤の混合物を分散媒中に分散(粒子化)ための分散剤を意味する。
本発明において好適に使用される分散媒可溶ポリマーは、ホモポリマー、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等が挙げられ、色材を少なくとも含む荷電粒子を分散媒中に分散できるものであれば、制限されるものではない。また、使用する分散
媒可溶ポリマーはインク組成物中に一種のみ有していても良いし、複数種有していても良い。ただし、粒子表面と共有結合を形成せしむる特定の官能基を有するポリマーを一種以上含むことが必要である。
【0076】
本発明において、分散媒可溶ポリマーの「可溶」とは、ポリマーが分散媒中で完全に溶解するものから、分散媒中に直径数nm〜数mmの大きさのコロイド状で自己分散した懸濁液のものまでを含む。
具体的には、分散媒100g中に対して、5g以上の溶解度を有することが好ましい。より好ましくは10g以上、さらに好ましくは20g以上である。
【0077】
本発明において、分散媒可溶ポリマーは、色材を少なくとも含有する粒子を分散媒中に分散する際に用いられ、また、必要に応じて、色材を少なくとも含有する粒子を分散媒中に分散した後に、さらに同一あるいは異なる分散媒可溶ポリマーを添加しても良い。
【0078】
本発明において、色材を少なくとも含有する粒子を分散媒中に分散する際に用いる分散媒可溶ポリマーとしては、グラフトポリマー、ブロックポリマーが特に好適に使用される。
【0079】
分散媒可溶ポリマーのうち、本発明において好適に用いることができるホモポリマー、及び、ランダムポリマーは、ラジカル重合性基を有するモノマーを公知のラジカル重合開始剤を用いて重合することにより得ることができる、重量平均分子量が1,000以上のポリマーである。
【0080】
上記ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、及び、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、メトキシスチレン等のスチレン類、1−ブテン等の炭化水素類、及び酢酸ビニル類、ビニルエーテル類、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−カルボキシエチル、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルスクシネート、スチレンカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルスルホン酸、スチレンスルホン酸、エチレングリコール(メタ)アクリレートホスフェート、スチレンリン酸等の酸性基を含有するモノマー、及び、該モノマー中の酸性基をアミン類、スルフィド類、ホスフィン類、複素環化合物等でイオン対化したモノマー、該モノマー中の酸性基をアンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩等の対成分によって中和してなるモノマー、ビニルアミン、アリルアミン、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、1−(N,N−ジメチルアミノ)−1、1−ジメチルメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノヘキシル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジ−n−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジ−i−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、ピペリジノエチル(メタ)アクリレート、1−ピロリジノエチル(メタ)アクリレート、N,N−メチル−2−ピロリジルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびN,N−メチルフェニルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、1−(N,N−ジメチルアミノ)−1,1−ジメチルメチル(メタ)アクリルアミドおよび6−(N,N−ジエチルアミノ)ヘキシル(メタ)アクリルアミド、p−ビニルアニリン、N,N−ジメチル−p−ビニルベンジルアミン、p−ジメチルアミノスチレン、ビニルピリジン、等の塩基性基を含有するモノマー、および該モノマー中の塩基性基を酸性基含有化合物で中和したモノマー、該モノマー中の塩基性基を中和反応以外の化学反応によりイオン化したモノマー、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロプレングリコール(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、2−アミノエチルメタクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート2−((メタ)アクリロキシエトキシ)トリメチルシラン、N−3−((メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(3−(メタ)アクリロキシプロプル)ジメチルメトキシシラン、(3−(メタ)アクリロキシプロプル)メチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、(3−(メタ)アクリロキシプロプル)メチルジクロロシラン、(3−(メタ)アクリロキシプロプル)メチルジメトキシシラン、(3−(メタ)アクリロキシプロプル)トリクロロシラン、3−(メタ)アクリロキシプロプル)トリメトキシシラン、チタン(メタ)アクリレートトリイソプロポキサイド、(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)トリイソポロポキシチタネート等が挙げられる。
【0081】
上記モノマーのうち、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、イソシアネート基、エポキシ基、酸無水物基、酸ハライド基、等の反応性基、トリハロシリル基、トリメトキシシリル基等のシランカップリング基、及びその他ゾル−ゲル反応等で使用される金属カップリング基、及び、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等のラジカル重合性基等を有しているモノマーを共重合させると、粒子表面と共有結合形成できて好ましい。
【0082】
本発明において好適に用いることができるグラフトポリマーとしては、一般式(1)で表される構成単位と、下記一般式(14)で表される構成単位を少なくとも有し、重量平均分子量1,000以上のポリマーが挙げられる。
【0083】
【化9】

【0084】
一般式(14)中、R141、R142は、同じでも異なっていてもよく、それぞれ水素原子またはメチル基を示す。
141は、同じでも異なっていてもよく、それぞれ単結合または、C、H、N、O、S、Pより選ばれた2種以上の原子よりなる総原子数が50個以下の2価の連結基を示す。
1は、グラフト鎖成分であり、上記一般式(1)〜(8)で示される構成単位のいずれか1つを少なくとも含有する重量平均分子量が500以上のポリマー成分、を示す。
【0085】
一般式(14)中のG1成分がポリマー全体にしめる割合は5wt%以上である好ましい。より好ましくは、10wt%以上、特に好ましくは、20wt%以上である。5wt%以上にて、分散媒に対する望ましい溶解性を確保できる。
【0086】
本発明において好適に用いることができるグラフトポリマーは、一般式(1)に対応するラジカル重合性モノマーのうち一種あるいは複数種と一般式(14)に対応するラジカル重合性マクロモノマーとを公知のラジカル重合開始剤を用いて、重合することにより得ることができる。ここで一般式(1)に対応するラジカル重合性モノマーとは、下記一般式(1M)で示されるモノマーであり、一般式(14)に対応するラジカル重合性マクロモノマーとは、下記一般式(14M)で示されるラジカル重合性マクロモノマーである。
【0087】
【化10】

【0088】
尚、一般式(1M)、(14M)中の各記号は、一般式(1)、(14)におけるものと同じ意味である。
【0089】
一般式(1)で表されるラジカル重合性モノマーの好ましい例は上述したとおりである。一般式(14M)で表されるマクロモノマーとしては、一般式(1)に対応する上記一般式(1M)のラジカル重合性モノマーの一種ないし複数種を、必要に応じて連鎖移動剤存在下で重合し、得られたポリマーの末端にラジカル重合性官能基を導入することにより得られる末端にラジカル重合性官能基を有するポリマー、及び、上記一般式(2)〜一般式(8)に対応する単位構造を有するポリマー鎖の末端にラジカル重合性官能基を導入することにより得られる末端にラジカル重合性官能基を有するポリマーが挙げられる。
なお、一般式(14M)で表されるマクロモノマーの重量平均分子量は500〜500,000の範囲内であり、かつ多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が、1.0〜7.0の範囲内であるマクロモノマーが好ましい。
【0090】
本発明にて使用されるグラフトポリマーは、
(1)分散媒に対して主鎖部分が溶解され、側鎖部分(グラフト鎖)が溶解されないグラフトポリマー、
(2)分散媒に対して主鎖部分が溶解し、側鎖部分(グラフト鎖)が溶解されないグラフトポリマー、
(3)分散媒に対して溶解される側鎖と溶解されない側鎖を有するグラフトポリマー、が特に好適に使用される。
【0091】
「分散媒に対して溶解される」とは、側鎖部及び主鎖部のみから構成されるポリマーが、分散媒に対して溶解することを意味し、具体的には、分散媒100gに対して5g以上より好ましくは10g以上、さらに好ましくは20g以上の溶解度である。分散媒に対して溶解される部位とされない部位を有することで、溶解されない部位が粒子に強く吸着し、一方溶解される部位が分散媒によく親和し、粒子を良好に分散媒中に分散できる。
「分散媒に対して溶解されない」とは、側鎖部または主鎖部のみから構成されるポリマーが、分散媒に対して溶解しないことを意味し、具体的には、分散媒100gに対して3g以下、より好ましくは2g以下、さらに好ましくは1g以下の溶解度であることが好ましい。
【0092】
また、主鎖、及び側鎖の少なくともいずれか一方に、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、イソシアネート基、エポキシ基、酸無水物基、酸ハライド基、等の反応性基、トリハロシリル基、トリメトキシシリル基等のシランカップリング基、及びその他ゾル−ゲル反応等で使用される金属カップリング基、及び、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等のラジカル重合性基等のラジカル重合性基等を有していれば、粒子表面と共有結合できるので好ましい。
【0093】
本発明において好適に用いることができるブロックポリマーとしては、2種以上のポリマーセグメントを有するポリマーであって、色材を分散させ得るものであれば限定されるものではないが、好ましくは重量平均分子量が500以上のポリマーセグメントを2種以上有する、重量平均分子量1,000以上のポリマーである。特に好ましいのは、下記一般式(15)、及び一般式(16)で示されるブロックポリマーである。
【0094】
【化11】

【0095】
一般式(15)、及び(16)中、A、B、C、Dはポリマーセグメントを示し、AとB、及び、CとDはそれぞれ異なる構造のポリマーセグメントである。b1、b2、b3はそれぞれ、A〜Dのセグメントがブロック結合していることを示す。
【0096】
本発明において好適に用いることができるブロックポリマーは、下記一般式(17)で示される構造単位、及び、下記一般式(18)で示される構造単位を少なくとも有し、重量平均分子量1,000以上のブロックポリマーが挙げられる。
【0097】
【化12】

【0098】
一般式(17)及び(18)中、R171、R172、R174、R175、R181、R182、R184
、R185は、同じでも異なっていてもよく、それぞれ水素原子またはメチル基を示す。
173、R176、R183、R186は、水素原子または、置換基を有していてもよい炭素数1から200の炭化水素基を示し、炭化水素基中に、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、イソシアネート基、エポキシ基、酸無水物基、酸ハライド基、等の反応性基、トリハロシリル基、トリメトキシシリル基等のシランカップリング基、及びその他ゾル−ゲル反応等で使用される金属カップリング基、及び、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等のラジカル重合性基等を含んでいても良い。
171、X172、X181、X182は、同じでも異なっていてもよく、それぞれ単結合または、C、H、N、O、S、Pより選ばれた2種以上の原子よりなる総原子数が50個以下の2価の連結基を示す。
、b、bは、それぞれ、単結合もしくは低分子量、高分子量の連結基を示す。連結基が高分子の場合重量平均分子量が100,000以下であることが望ましい。連結基中に、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、イソシアネート基、エポキシ基、酸無水物基、酸ハライド基、等の反応性基、トリハロシリル基、トリメトキシシリル基等のシランカップリング基、及びその他ゾル−ゲル反応等で使用される金属カップリング基、及び、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等のラジカル重合性基等を含んでいても良い。m、n、r、s、tは、ポリマーであることを意味し、5以上の整数である。
【0099】
一般式(17)で示される構造単位で表される構造単位を少なくとも有するブロックポリマーは、一般式(17)中、2つのセグメントにそれぞれ対応する下記一般式(17−1M)、一般式(17−2M)で示されるラジカル重合性モノマーを、ラジカル重合開始系を用いて、公知のリビングラジカル重合法を用いることにより得ることができる。また、一般式(18)で示される構造単位で表される構造単位を少なくとも有するブロックポリマーは、一般式(18)中、2種、3つのセグメントにそれぞれ対応する一般式(18−1M)、一般式(18−2M)で示されるラジカル重合性モノマーを、ラジカル重合開始系を用いて、公知のリビングラジカル重合法を用いることにより得ることができる。リビングラジカル重合方法としては、イニファータ重合法、NMP(Nitroxide−Mediated Polymerization)法、ATRP法(Atom Transfer Radical Polymerization)法、RAFT法(Reversible Addition−Fragmentation chain Transfer)法などが挙げられる。
【0100】
【化13】

【0101】
尚、一般式(17−1M)、(17−2M)、(18−1M)、(18−2M)中の各記号は、一般式(17)、一般式(18)におけるものと同じ意味である。
【0102】
一般式(17−1M)、(17−2M)、(18−1M)、(18−2M)で表されるモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、及び、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、メトキシスチレン等のスチレン類、1−ブテン等の炭化水素類、及び酢酸ビニル類、ビニルエーテル類、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−カルボキシエチル、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルスクシネート、スチレンカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルスルホン酸、スチレンスルホン酸、エチレングリコール(メタ)アクリレートホスフェート、スチレンリン酸等の酸性基を含有するモノマー、及び、該モノマー中の酸性基をアミン類、スルフィド類、ホスフィン類、複素環化合物等でイオン対化したモノマー、該モノマー中の酸性基をアンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩等の対成分によって中和してなるモノマー、ビニルアミン、アリルアミン、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、1−(N,N−ジメチルアミノ)−1、1−ジメチルメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノヘキシル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジ−n−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジ−i−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、ピペリジノエチル(メタ)アクリレート、1−ピロリジノエチル(メタ)アクリレート、N,N−メチル−2−ピロリジルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびN,N−メチルフェニルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、1−(N,N−ジメチルアミノ)−1,1−ジメチルメチル(メタ)アクリルアミドおよび6−(N,N−ジエチルアミノ)ヘキシル(メタ)アクリルアミド、p−ビニルアニリン、N,N−ジメチルp−ビニルベンジルアミン、p−ジメチルアミノスチレン、ビニルピリジン、等の塩基性基を含有するモノマー、および該モノマー中の塩基性基を酸性基含有化合物で中和したモノマー、該モノマー中の塩基性基を中和反応以外の化学反応によりイオン化したモノマー、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロプレングリコール(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、2−アミノエチルメタクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート2−((メタ)アクリロキシエトキシ)トリメチルシラン、N−3−((メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(3−(メタ)アクリロキシプロプル)ジメチルメトキシシラン、(3−(メタ)アクリロキシプロプル)メチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、(3−(メタ)アクリロキシプロプル)メチルジクロロシラン、(3−(メタ)アクリロキシプロプル)メチルジメトキシシラン、(3−(メタ)アクリロキシプロプル)トリクロロシラン、3−(メタ)アクリロキシプロプル)トリメトキシシラン、チタン(メタ)アクリレートトリイソプロポキサイド、(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)トリイソポロポキシチタネート等が挙げられる。ただし、(17−1M)と(17−2M)、及び、(18−1M)と(18−2M)はそれぞれ異なるモノマーを使用する。
【0103】
上記モノマーのうち、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、イソシアネート基、エポキシ基、酸無水物基、酸ハライド基、等の反応性基、トリハロシリル基、トリメトキシシリル基等のシランカップリング基、及びその他ゾル−ゲル反応等で使用される金属カップリング基、及び、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等のラジカル重合性基等から選ばれる官能基を有しているモノマーを共重合させると、粒子表面と共有結合形成できて好ましい。
【0104】
本発明にて使用されるブロックポリマーは、一般式(15)、及び一般式(16)で示されるブロックポリマーにおいて、セグメントA及びCが、分散媒に対して溶解され、セグメントB及びDが分散媒に対して溶解されないブロックポリマー、及び、セグメントDが、分散媒に対して溶解され、セグメントCが分散媒に対して溶解されないブロックポリマーが特に好適に使用される。
ここで、「分散媒に対して溶解される」とは、1つのセグメントのみで構成されるポリマーが、分散媒に対して溶解することを意味し、具体的には、分散媒100gに対して5g以上より好ましくは10g以上、さらに好ましくは20g以上の溶解度であることが好ましい。
また、「分散媒に対して溶解されない」とは、1つのセグメントのみで構成されるポリマーが、分散媒に対して溶解しないことを意味し、具体的には、分散媒100gに対して3g以下、より好ましくは2g以下、さらに好ましくは1g以下の溶解度であることが好ましい。分散媒に対して溶解される部位とされない部位を有することで、溶解されない部位が粒子に強く吸着し、一方溶解される部位が分散媒によく親和し、粒子を良好に分散媒中に分散できる。
【0105】
本発明において好適に用いる粒子表面と共有結合形成せしむる官能基を有する分散媒可溶ポリマーの具体例としては、下記の構造式で示されるポリマー[BZ−1]〜[BZ−35]が挙げられる。
【0106】
【化14】

【0107】
【化15】

【0108】
【化16】

【0109】
【化17】

【0110】
【化18】

【0111】
【化19】

【0112】
【化20】

【0113】
本発明においては、粒子表面と共有結合せしむる官能基を有さない分散媒可溶ポリマーも合わせて使用できる。本発明において好適に使用される、粒子表面と共有結合せしむる官能基を有さない分散媒可溶ポリマーとしては、下記[BZ−36]〜[BZ−39]があげられる。
【0114】
【化21】

【0115】
本発明において使用される、分散媒可溶ポリマーの重量平均分子量は、1,000〜1000,000の範囲内であり、かつ多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が、1.0〜7.0の範囲内であるポリマーであるのが好ましい。
【0116】
インク組成物全体に対する分散媒可溶ポリマーの含有量は、0.01〜30質量%の範囲内であることが好ましい。特に好ましくは、0.1〜15質量%の範囲内である。0.01質量%以上において、色材を少なくとも含有する荷電粒子を分散媒中に分散でき、30質量%以下において、吐出に望ましい溶液粘度を確保できる。
【0117】
本発明において、分散媒可溶ポリマーを一種のみ含んでいても良いし、複数種を含んでいても良い、ただし、粒子表面と共有結合を形成せしむる特定の官能基を有する分散媒可溶ポリマーを少なくとも一種以上用いる必要がある。
【0118】
[荷電調整剤]
本発明において、色材(好ましくは色材と被覆剤の混合物)を、分散剤を用いて分散媒中に分散(粒子化)させるが、粒子の荷電量を制御するために荷電調整剤を併用することがさらに好ましい。
好適な荷電調整剤としては、ナフテン酸ジルコニウム塩、オクテン酸ジルコニウム塩等
の有機カルボン酸の金属塩、ステアリン酸テトラメチルアンモニム塩等の有機カルボン酸のアンモニム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ジオクチルスルホコハク酸マグネシウム塩等の有機スルホン酸の金属塩、トルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩等の有機スルホン酸のアンモニウム塩、スチレンと無水マレイン酸のコポリマーをアミンで変性したカルボン酸基を含有するポリマー等の側鎖にカルボン酸基を有するポリマー、メタクリル酸ステアリルとメタクリル酸のテトラメチルアンモニウム塩の共重合体等の側鎖にカルボン酸アニオン基を有するポリマー、スチレンとビニルピリジンの共重合体等の側鎖に窒素原子を有するポリマー、メタクリル酸ブチルとN−(2−メタクリロイルオキシエチル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムトシラート塩との共重合体等の側鎖にアンモニウム基を有するポリマー等が挙げられる。中でも、本発明においては、長時間安定性した荷電を保持する観点から、ポリマーの荷電調整剤を用いることが好ましい。なお、粒子に付与される荷電は、正荷電であっても負荷電であっても良い。
【0119】
インク組成物全体に対する荷電調整剤の含有量は、0.0001〜10質量%の範囲内であることが好ましく、0.001〜5質量%がより好ましい。この範囲内において、吐出に必要な粒子の荷電量が充足され、また荷電量が適度となる。
【0120】
[その他の成分]
本発明においては、さらに、腐敗防止のために防腐剤や、表面張力を制御するための界面活性剤等を目的に応じて含有することができる。
【0121】
[荷電粒子の作成]
以上の成分を用い、色材と好ましくは被覆ポリマー、本発明の分散媒可溶ポリマーを用いて、分散(粒子化)することにより、荷電粒子表面と分散媒可溶ポリマーとが共有結合を形成するインク組成物を作成することができる。分散(粒子化)する方法としては、例えば下記A〜Eのプロセスの組み合わせが挙げられる。
【0122】
〔A 色材混合物の作成〕
下記(i)〜(vi)で示される、素材を組み合わせて、混合する。ただし、後述する、C−1、C−2のプロセスを行わない場合、(i)〜(iii)で表される素材のうち少なくとも一種以上を色材混合物に有していなくてはならない。また、(i)、(iv)は色材であるので、いずれか一方は有していなくてはならない。C−1、C−2のプロセスを経ずとも、(i)は単独で使用することもできる。すなわち、混合プロセスは行わなくても良い。また、後述するC−1、C−2のプロセスを経る場合、(iv)も単独で使用できる。同じく、混合プロセスは行わなくても使用できる。また、(i)〜(vi)の素材は各々一種のみを使用しても良いし、複数種を使用しても良い。
(i)分散媒可溶ポリマーと共有結合せしむる官能基を有する色材。
(ii)分散媒可溶ポリマーと共有結合せしむる官能基を有する被覆ポリマー。
(iii)分散媒可溶ポリマーと共有結合せしむる官能基を有する低分子化合物。
(iv)分散媒可溶ポリマーと共有結合せしむる官能基を有していない色材。
(v)分散媒可溶ポリマーと共有結合せしむる官能基を有していない被覆ポリマー。
(vi)分散媒可溶ポリマーと共有結合せしむる官能基を有していない低分子化合物。
【0123】
〔B 分散物作成〕
色材混合物、分散媒、及び、(vii)、(viii)の素材を組み合わせて用いて、粒子形成(分散)する。(vii)、(viii)はそれぞれ単独でも、組み合わせて使用しても良い。ただし、(viii)で表される素材のみを用いた場合、後述するD−2のプロセスを経なくてはならない。また、(vii)、(viii)の素材は各々一種のみを使用しても良いし、複数種を使用しても良い。
(vii)粒子表面と共有結合せしむる官能基を有する分散媒可溶ポリマー。
(viii)粒子表面と共有結合せしむる官能基を有していない分散媒可溶ポリマー。
【0124】
〔C 表面処理〕
作成した分散物に、必要に応じて、下記C−1、C−2の表面処理プロセスを加えても良い。
C−1:ラジカル重合性モノマー、開始剤を添加し、ラジカル重合を行い、粒子表面にポリマーシェルを形成する。ただし、ポリマーシェルを形成するポリマー中に、粒子表面と共有結合せしむる官能基を有していることが必要である。
C−2:シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等、一般的なゾル−ゲル反応等に使用される公知の無機化合物のアルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシル基置換体の脱水縮合反応を行い、分散物粒子表面を処理する。
【0125】
〔D 共有結合形成〕
下記プロセスD−1〜D−3にて、共有結合形成を行う。
D−1:分散物作成に用いた粒子表面と共有結合せしむる官能基を有する分散媒可溶ポリマーと、粒子表面を共有結合させる。
D−2:粒子表面と共有結合せしむる官能基を有する分散媒可溶ポリマーを添加し、粒子表面と共有結合させる。
D−3:粒子表面と共有結合せしむる官能基を有する分散媒可溶ポリマーを添加し、分散物作成に用いた粒子表面と共有結合せしむる官能基を有する分散媒可溶ポリマーとともに、粒子表面と共有結合させる。
【0126】
〔E 荷電付与〕
荷電調整剤を加え、粒子表面に荷電を付与する。
【0127】
荷電粒子を作成する順序は、下記、I〜VIIの順序が挙げられる。
I. A→B→(C)→D→E(プロセスCはあってもなくても良い)
II. A、B同時→(C)→D→E(プロセスCはあってもなくても良い)
III. A→B→(C)→E→D(プロセスCはあってもなくても良い)
IV. A、B同時→(C)→E→D
V. A→B→E→(C)→D
VI. A、B同時→E→(C)→D
VII. A、B、E同時→(C)→D
より好ましいのは、I及びIIIの順序である。
【0128】
プロセスA〜Eにおいて、被覆剤に有する分散媒可溶ポリマーと共有結合せしむる官能基と、分散媒可溶ポリマーに有する粒子表面と共有結合せしむる官能基の組み合わせは上述したとおりである。
【0129】
上記プロセスA、Bにおいて、混合や分散する際に用いられる装置としては、例えば、ニーダー、ディゾルバー、ミキサー、高速ディスパーザー、サンドミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ビーズミル等が挙げられる。
【0130】
上記プロセスC−1において、ラジカル重合性モノマー、開始剤を添加し、ラジカル重合を行い、粒子表面にポリマーシェルを形成する手段としては、色材混合物を分散した、分散液中に、分散媒可溶ポリマーと共有結合形成せしむる官能基であるヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、イソシアネート基、エポキシ基、酸無水物基、酸ハライド基、等の反応性基、トリハロシリル基、トリメトキシシリル基等のシランカップリング基、及びその他ゾル−ゲル反応等で使用される金属カップリング基、及び、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等のラジカル重合性基等を有してい
るモノマーを添加し、公知のラジカル重合開始剤を添加して、ラジカル重合する方法が挙げられる。
【0131】
上記シェル形成プロセスにおいて、添加するラジカル重合性モノマーの重量は、分散液中の粒子成分の重量に対して、0.1〜60wt%であることが好ましい。0.1wt%以上にて、色材混合物の分散粒子を被覆でき、60wt%以下にて、色材混合物の分散粒子同士の凝集を起こさずに被覆できる。分散液中の粒子成分の重量とは、分散物中に含まれる、色材混合物、及び、分散媒可溶ポリマーの総量を意味する。
【0132】
上記プロセスC−2において、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等、一般的なゾル−ゲル反応等に使用される公知の無機化合物のアルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシル基置換体の脱水縮合反応としては、色材混合物を分散した、分散液中に、分散媒可溶ポリマーと共有結合形成せしむる官能基であるヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、イソシアネート基、エポキシ基、酸無水物基、酸ハライド基、等の反応性基、トリハロシリル基、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等のラジカル重合性基等を有しているカップリング剤を添加し、必要に応じて、酸または、塩基触媒を添加したのち、脱水縮合反応を行う方法が挙げられる。
【0133】
上記、無機化合物の加水分解及び重縮合反応を促進するために、酸性触媒又は塩基性触媒を併用することが好ましい。触媒は、酸又は塩基性化合物をそのままか、又は水もしくはアルコールなどの溶媒に溶解させた状態のもの(以下、それぞれ酸性触媒、塩基性触媒という)を用いる。その時の濃度については特に限定しないが、濃度が濃い場合は加水分解、重縮合速度が速くなる傾向がある。ただし、濃度の濃い塩基性触媒を用いると、ゾル溶液中で沈殿物が生成する場合があるため、塩基性触媒の濃度は1N(水溶液での濃度換算)以下が望ましい。
【0134】
酸性触媒の具体例としては、塩酸などのハロゲン化水素酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸が挙げられる。塩基性触媒の具体例としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0135】
上記脱水縮合プロセスにおいて、添加するカップリング剤の重量は、分散液中の粒子成分の重量に対して、0.1〜40wt%であることが好ましい。0.1wt%以上にて、色材混合物の分散粒子を被覆でき、60wt%以下にて、色材混合物の分散粒子同士の凝集を起こさずに被覆できる。分散液中の粒子成分の重量とは、分散物中に含まれる、色材混合物、及び、分散媒可溶ポリマーの総量を意味する。
【0136】
[インク組成物の物性値]
以上のようにして作成したインク組成物を、インクジェット記録方式により、被記録媒体へ記録するが、本発明においては、良好な再分散性を確保するため、下記条件(A)〜(D)のすべてを満足するインク組成物を使用することが好ましい。
(A)インク組成物の20℃での電気伝導度が、10nS/m〜300nS/mの範囲内である。
(B)荷電粒子の電気伝導度が、インク組成物の電気伝導度の50%以上である。
(C)荷電粒子の体積平均直径が、0.2〜5.0μmの範囲内である。
(D)インク組成物の20℃での粘度が、0.5〜5mPa・sの範囲内である。
【0137】
[インクジェット記録装置]
以上記述したインク組成物を、インクジェット記録方式により、被記録媒体へ記録する
が、本発明においては、静電界を利用したインクジェット記録方式を用いることが好ましい。静電界を利用するインクジェット記録方式は、制御電極と被記録媒体背面の背面電極間に電圧を印加することにより、インク組成物の荷電粒子を静電力によって吐出位置に濃縮し、吐出位置から記録媒体へ飛翔させる方式である。制御電極と背面電極間に印加する電圧は、例えば荷電粒子が正の場合、制御電極が正極であり背面電極が負極となる。背面電極へ電圧を印加する代わりに被記録媒体に帯電を行っても同様の効果が得られる。
【0138】
インクを飛翔させる方式として、例えば、注射針のようなニードル状の先端からインクを飛翔させる方式があり、本発明のインク組成物を用いることで、短時間の記録が可能である。
【0139】
一方、吐出開口を有するインク室内にインクが循環されており、吐出開口周縁に形成された制御電極に電圧を印加することによって吐出開口中に存在し、先端が被記録媒体側に向いたインクガイド先端から濃縮されたインク滴が飛翔する方法では、インクの循環による荷電粒子の補給と、吐出位置のメニスカス安定性を両立することができるため、長期間安定に記録を行うことができる。さらに本方式ではインクが外気と接する部分が吐出開口部だけと非常に少ないため、溶媒の蒸発を抑え、インク物性が安定化するため、本発明において好適に使用することができる。
【0140】
本発明のインク組成物を適用するに適したインクジェット記録装置の構成例を以下に示す。
まずは、図1に示す被記録媒体に片面4色印刷を行う装置の概要について説明する。
図1に示されるインクジェット記録装置1は、フルカラー画像形成を行うための4色分の吐出ヘッド2C、2M、2Y及び2Kから構成される吐出ヘッド2にインクを供給し、さらに吐出ヘッド2からインクを回収するインク循環系3、図示されないコンピュータ、RIP等の外部機器からの出力により吐出ヘッド2を駆動させるヘッドドライバ4、位置制御手段5を備える。またインクジェット記録装置1は、3つのローラ6A、6B、6Cに張架された搬送ベルト7、搬送ベルト7の幅方向の位置を検知可能な光学センサなどで構成された搬送ベルト位置検知手段8、被記録媒体Pを搬送ベルト上に保持するための静電吸着手段9、画像形成終了後に被記録媒体Pを搬送ベルト7から剥離するための除電手段10及び力学的手段11を備える。搬送ベルト7の上流、下流には、被記録媒体Pを図示されないストッカーから搬送ベルト7に供給するフィードローラ12及びガイド13、剥離後の被記録媒体Pへインクを定着させると共に図示されない排紙ストッカーに搬送する定着手段14及びガイド15が配置されている。またインクジェット印刷装置1の内部には、搬送ベルト7を挟んで吐出ヘッド2に対向する位置には、被記録媒体位置検出手段16を有し、さらにインク組成物から発生する溶媒蒸気を回収するための排出ファン17及び溶媒蒸気吸着材18からなる溶媒回収部が配置され、装置内部の蒸気は該回収部を通って装置外部に排出される。
【0141】
フィードローラ12は公知のローラが使用でき、被記録媒体に対するフィード能力が高まるように配置される。また被記録媒体P上には垢・紙粉等が付着していることがあるため、それらの除去を行うことが望ましい。フィードローラによって供給された被記録媒体Pは、ガイド13を経て、搬送ベルト7に搬送される。搬送ベルト7の裏面(好ましくは金属裏面)はローラ6Aを介して設置されている。搬送された被記録媒体は、静電吸着手段9により搬送ベルト上に静電吸着される。図1では、負の高圧電源に接続されたスコロトロン帯電器により静電吸着がなされる。静電吸着手段9により、被記録媒体Pが搬送ベルト7上に浮き無く静電吸着されると共に、被記録媒体表面を均一帯電する。ここでは静電吸着手段を被記録媒体の帯電手段としても利用しているが、別途設けてもよい。帯電された被記録媒体Pは、搬送ベルト7によって吐出ヘッド部まで搬送され、帯電電位をバイアスとして記録信号電圧を重畳することにより静電インクジェット画像形成がなされる。
画像形成された被記録媒体Pは、除電手段10により除電され、力学的手段11により搬送ベルト7により剥離されて定着部へ搬送される。剥離された被記録媒体Pは、画像定着手段14に送られ、定着がなされる。定着された被記録媒体Pは、ガイド15を通って図示されない排紙ストッカーに排紙される。また、該装置は、インク組成物から発生する溶媒蒸気の回収手段を有する。回収手段は溶媒蒸気吸収材18からなり、排気ファン17により機内の溶媒蒸気を含む気体が吸着材に導入され、蒸気が吸着回収された後、機外に排気される。該装置は、上記例に限定されず、ローラ、帯電器等の構成デバイスの数、形状、相対配置、帯電極性等は任意に選べる。また上記システムでは4色描画について記述しているが、淡色インクや特色インクと組み合わせて、より多色のシステムとしてもよい。
【0142】
上記インクジェット印刷方法に使用されるインクジェット記録装置は、吐出ヘッド2、インク循環系3からなり、インク循環系3は、さらにインクタンク、インク循環装置、インク濃度制御装置、インク温度管理装置等を有し、インクタンク内には撹拌装置を含んでいてもよい。
【0143】
吐出ヘッド2としては、シングルチャンネルヘッド、マルチチャンネルヘッド、又はフルラインヘッドを使うことができ、搬送ベルト7の回転により主走査を行う。
本発明で好適に使用されるインクジェットヘッドは、インク流路内での荷電粒子を電気泳動させて開口付近のインク濃度を増加させ、吐出を行うインクジェット方法であり、主に被記録媒体又は被記録媒体背面に配置された対向電極に起因する静電吸引力によりインク滴の吐出を行うものである。従って、被記録媒体又は対向電極がヘッドに対向していない場合や、ヘッドと対向する位置にあっても被記録媒体又は対向電極に電圧が印加されていない場合には、誤って吐出電極に電圧が印加された場合や振動が与えられた場合でもインク滴の吐出は起こらず、装置内を汚すことはない。
【0144】
上記インクジェット装置に好適に使用される吐出ヘッドを図2及び図3に示す。図2及び図3に示すように、インクジェットヘッド70は、一方向のインク流Qが形成されるインク流路72の上壁を構成する電気絶縁性の基板74と、インクを被記録媒体Pへ向けて吐出する複数の吐出部76とを有する。吐出部76には、いずれもインク流路72から飛翔するインク滴Gを被記録媒体Pへ向けて案内するインクガイド部78が設けられ、基板74には、インクガイド部78がそれぞれ挿通する開口75が形成されており、インクガイド部78と開口75の内壁面との間にはインクメニスカス42が形成されている。インクガイド部78と被記録媒体Pとのギャップdは200μm〜1000μm程度であることが好ましい。また、インクガイド部78は、下端側で支持棒部40に固定されている。
【0145】
基板74は、2つの吐出電極を所定間隔で離して電気的に絶縁している絶縁層44と、絶縁層44の上側に形成された第1吐出電極46と、第1吐出電極46を覆う絶縁層48と、絶縁層48の上側に形成されたガード電極50と、ガード電極50を覆う絶縁層52とを有する。また、基板74は、絶縁層44の下側に形成された第2吐出電極56と、第2吐出電極56を覆う絶縁層58とを有する。ガード電極50は、第1吐出電極46や第2吐出電極56に印加された電圧によって隣接する吐出部に電界上の影響が生じることを防止するために設けられる。
【0146】
更に、インクジェットヘッド70には、インク流路72の底面を構成すると共に、第1吐出電極46及び第2吐出電極56に印加されたパルス状の吐出電圧によって定常的に生じる誘導電圧により、インク流路72内の正に帯電したインク粒子(荷電粒子)Rを上方へ向けて(すなわち被記録媒体側に向けて)泳動させる浮遊導電板62が電気的浮遊状態で設けられている。また、浮遊導電板62の表面には、電気絶縁性である被覆膜64が形成されており、インクへの電荷注入等によりインクの物性や成分が不安定化することを防止する。絶縁性被覆膜の電気抵抗は、1012Ω・cm以上が好ましく、より望ましくは10
13Ω・cm以上である。また、絶縁性被覆膜はインクに対して耐腐食性であることが望ましく、これにより、浮遊導電板62がインクに腐食されることが防止される。また、浮遊導電板62は下方から絶縁部材66で覆われており、このような構成により、浮遊導電板62は完全に電気的絶縁状態にされている。
【0147】
浮遊導電板62は、ヘッド1ユニットにつき1個以上である(例えば、C、M、Y、Kの4つのヘッドがあった場合、浮遊導電板数は最低各1個ずつ有し、CとMのヘッドユニット間で共通の浮遊導電板とすることはない)。
【0148】
図3に示すように、インクジェットヘッド70からインクを飛翔させて被記録媒体Pに記録するには、インク流路72内のインクを循環させることによりインク流Qを発生させた状態にし、ガード電極50に所定の電圧(例えば+100V)を印加する。更に、インクガイド部78に案内されて開口75から飛翔したインク滴G中の正の荷電粒子Rが被記録媒体Pにまで引きつけられるような飛翔電界が、第1吐出電極46及び第2吐出電極56と、被記録媒体Pとの間に形成されるように、第1吐出電極46、第2吐出電極56及び被記録媒体Pに正電圧を印加する(ギャップdが500μmである場合に、1kV〜3.0kV程度の電位差を形成することを目安とする)。
【0149】
この状態で、画像信号に応じて第1吐出電極46及び第2吐出電極56にパルス電圧を印加すると、荷電粒子濃度が高められたインク滴Gが開口75から吐出する(例えば、初期の荷電粒子濃度が3〜15%である場合、インク滴Gの荷電粒子濃度が30%以上になる)。
その際、第1吐出電極46と第2吐出電極56の両者にパルス電圧が印加された場合にのみインク滴Gが吐出するように、第1吐出電極46と第2吐出電極56とに印加する電圧値を調整しておく。
【0150】
このように、パルス状の正電圧を印加すると、開口75からインク滴Gがインクガイド部78に案内されて飛翔し、被記録媒体Pに付着すると共に、浮遊導電板62には、第1吐出電極46及び第2吐出電極56に印加された正電圧により正の誘導電圧が発生する。第1吐出電極46及び第2吐出電極56に印加される電圧がパルス状であっても、この誘導電圧はほぼ定常的な電圧である。従って、浮遊導電板62及びガード電極50と、被記録媒体Pとの間に形成される電界によって、インク流路72内で正に帯電している荷電粒子Rは上方へ移動する力を受け、基板74の近傍で荷電粒子Rの濃度が高くなる。図3に示すように、使用する吐出部(すなわちインク滴を吐出させるチャンネル)の個数が多い場合、吐出に必要な荷電粒子数が多くなるが、使用する第1吐出電極46及び第2吐出電極56の枚数が多くなるため、浮遊導電板62に誘起される誘導電圧は高くなり、被記録媒体側へ移動する荷電粒子Rの個数も増大する。
【0151】
上記では、着色粒子が正荷電に帯電している例について説明したが、着色粒子は負荷電に帯電されていてもよい。その場合には、上記の帯電極性は、すべて逆極性となる。
【0152】
なお、本発明においては、被記録媒体へのインク吐出後、適切な加熱手段によりインクを定着することが好ましい。用いられる加熱手段としては、ヒートローラー、ヒートブロック、ベルト加熱等の接触式加熱装置、及びドライヤー、赤外線ランプ、可視光線ランプ、紫外線ランプ、温風式オーブン等の非接触式加熱装置を用いることができる。これらの加熱装置は、インクジェット記録装置と連続し、一体となっていることが好ましい。定着時の被記録媒体の温度は、定着の容易さから、40℃〜200℃の範囲内であることが好ましい。また、定着の時間は、1マイクロ秒〜20秒の範囲内であることが好ましい。
【0153】
[インク組成物の補充]
静電界を利用したインクジェット記録方式では、インク組成物中の荷電粒子が濃縮されて吐出する。したがって、長時間インクの吐出を行うと、インク組成物中の荷電粒子が減量し、インク組成物の電気伝導度が低下する。また、荷電粒子の電気伝導度とインク組成物の電気伝導度との割合が変化する。さらに、吐出の際、直径の小さな荷電粒子よりも大きな荷電粒子が優先して吐出する傾向にあるため、荷電粒子の平均直径が小さくなる。また、インク組成物中の固形物の含有量が変化するため、粘度も変化する。これら物性値の変化により、結果として、吐出不良を起したり、記録された画像の光学濃度の低下やインクのにじみが発生する。このため、当初インクタンクへ仕込んだインク組成物よりも、高濃度(固形分濃度が高い)のインク組成物を補充することにより、荷電粒子の減量を防止し、インク組成物の電気伝導度や、荷電粒子の電気伝導度とインク組成物の電気伝導度との割合を一定の範囲に留めることができる。また、平均粒子直径や粘度も維持することができる。さらに、インク組成物の物性値を、一定の範囲内に保つことにより、インク吐出が長時間安定して均一に行われる。この際の補充は、例えば、使用しているインク液の電気伝導度や光学濃度等の物性値を検出し、不足量を算出して、機械的または人力で成されることが好ましい。また、画像データを基に使用するインク組成物の量を算出し、機械的または人力で成されてもよい。
【0154】
[被記録媒体]
本発明においては、用途に応じて様々な被記録媒体を用いることができる。例えば、紙、プラスチックフイルム、金属、及び、プラスチックまたは金属がラミネートまたは蒸着された紙、金属がラミネートまたは蒸着されたプラスチックフィルム等を用いれば、インクジェット記録することにより、直接印刷物を得ることができる。被記録媒体の形状は、シート状のように平面的であっても、円筒形状のように立体的であってもよい。
【0155】
[定着」
本発明においては、被記録媒体へのインク吐出後、適当な加熱手段によりインクを定着することが好ましい。用いられる加熱手段としては、ヒートローラー、ヒートブロック、ベルト加熱等の接触式加熱装置および、ドライヤー、赤外線ランプ、可視光線ランプ、紫外線ランプ、温風式オーブン等の非接触式加熱装置を用いることができる。これらの加熱装置は、インクジェット記録装置と連携し、一体となっていることが好ましい。
【0156】
以上記述した本発明のインク組成物を用いることにより、インク滴の吐出を長時間安定して行うことができる。また、経時で沈降したインクの再分散性を良化することができる。
さらに、上述したインクジェット記録装置を用いることにより、インクにじみがなく、かつ画像濃度の高い高画質の画像記録物を、長時間に渡って得ることができる。
【実施例】
【0157】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0158】
<使用した材料>
本実施例においては、下記の材料を使用した。
【0159】
・シアン顔料(色材) フタロシアニン顔料 C.I.Pigment Blue(15:3)(東洋インキ製造(株)製、LIONOL BLUE FG−7350)
・被覆ポリマー [HZ−1]、[HZ−2]、[HZ−3]、[HZ−11]、[HZ−12]
・分散剤 [BZ−1]、[BZ−8]、[BZ−12]、[BZ−16] 、[BZ−21] 、[BZ−26] 、[BZ−30] 、[BZ−36]
・荷電調整剤 [CT−1]
・分散媒 アイソパーG(エクソン社(株)製)
【0160】
・被覆ポリマー[AP−1]、荷電調整剤[CT−1]の構造を以下に示す。
・被覆ポリマー [HZ−1]、[HZ−2]、 [HZ−11]、[HZ−12]、分散剤[BZ−1]、[BZ−8]、[BZ−12]、[BZ−16] 、[BZ−21]、[BZ−26] 、[BZ−30] 、[BZ−36]の構造は上述した通りである。

【0161】
【化22】

【0162】
<CT−1の合成>
荷電調整剤[CT−1]は、1−オクタデセンと無水マレイン酸のコポリマーに、1−ヘキサデシルアミンを反応させることにより得た。重量平均分子量は、17,000であった。
【0163】
<被覆ポリマー[HZ−1]の合成>
被覆ポリマー[HZ−1]は、メチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、及び、メタクリル酸2−カルボキシエチルをラジカル共重合させることにより得た。重量平均分子量は、15,000であった。
【0164】
<被覆ポリマー[HZ−2]の合成>
被覆ポリマー[HZ−2]は、メチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、及び、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルをラジカル共重合させることにより得た。重量平均分子量は、13,000であった。
【0165】
<被覆ポリマー[HZ−3]の合成>
被覆ポリマー[HZ−3]は、スチレン、n−ペンチルメタクリレート、及び、メタクリル酸2−アミノエチルをラジカル共重合させることにより得た。重量平均分子量は、16,000であった。
【0166】
<被覆ポリマー[HZ−11]の合成>
被覆ポリマー[HZ−11]は、メチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、及び、アリルメタクリレートをラジカル共重合させることにより得た。重量平均分子量は、23,000であった。
【0167】
<被覆ポリマー[HZ−12]の合成>
被覆ポリマー[HZ−12]は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレートをラジカル共重合させることにより得た。重量平均分子量は、13,000であった。
【0168】
<分散剤[BZ−1]の合成>
分散剤[BZ−1]は、メチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、及び、2−イソシアネートエチルメタクリレートをラジカル共重合させることにより得た。重量平均分子量は、103,000であった。
【0169】
<分散剤[BZ−8]の合成>
分散剤[BZ−8]は、メチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、及び、メタクリル酸をラジカル共重合させることにより得たポリマーを塩化チオニルと反応させることで得た。重量平均分子量は、103,000であった。
【0170】
<分散剤[BZ−12]の合成>
グラフトポリマー分散剤[BZ−12]は、ステアリルメタクリレートを、2−メルカプトプロパノール存在下ラジカル重合させ、さらに、メタクリル酸無水物と反応させることにより末端にメタクリロイル基を有するステアリルメタクリレートのポリマー[MM−1](重量平均分子量は6,100であった)を得た後、スチレン、及び、パラビニル安息香酸とラジカル共重合させることにより得た。重量平均分子量は、125,000であった。
【0171】
<分散剤[BZ−16]の合成>
グラフトポリマー分散剤[BZ−16]は、末端にメタクリロイル基を有するステアリルメタクリレートのポリマー[MM−1]と、メチルメタクリレート、2−イソシアネートエチルメタクリレートをラジカル共重合させることで得た。重量平均分子量は、107,000であった。
【0172】
<分散剤[BZ−21]の合成>
グラフトポリマー分散剤[BZ−21]は、末端にメタクリロイル基を有するステアリルメタクリレートのポリマー[MM−1]と、メチルメタクリレート、及び、アリルメタクリレートをラジカル共重合させることで得た。重量平均分子量は、98,000であった。
【0173】
<分散剤[BZ−26]の合成>
グラフトポリマー分散剤[BZ−21]は、末端にメタクリロイル基を有するステアリルメタクリレートのポリマー[MM−1]と、メチルメタクリレート、及び、(3−メタクロイルオキシプロピル)トリメトキシシランをラジカル共重合させることで得た。重量平均分子量は、89,000であった。
【0174】
<分散剤[BZ−30]の合成>
2−ブロモプロピオン酸メチル、CuBr、及び、N,N,N',N",N"−ペンタメチレンジエチレントリアミンを開始剤とし、グリシジルメタクリレートを、窒素雰囲気下で重合することにより、グリシジルメタクリレートのホモポリマー[HP−1]を得た。ポリマー[HP−1]は、主鎖末端にブロモ基を有するので、CuBr、N,N,N',N",N"−ペンタメチレンジエチレントリアミン存在下で重合可能であり、さらに、ステアリルメタクリレートと重合させることにより、ブロックポリマー[BZ−30]を得た。重量平均分子量は、67,000であった。
【0175】
<分散剤[BZ−36]の合成>
グラフトポリマー分散剤[BZ−36]は、末端にメタクリロイル基を有するステアリルメタクリレートのポリマー[MM−1]と、スチレンをラジカル共重合させることで得た。重量平均分子量は、61,000であった。
【0176】
〔実施例1〕
シアン顔料10gと被覆剤[HZ−1]20gを、入江商会(株)製卓上型ニーダーPBV−0.1に入れ、ヒーター温度を100℃に設定し2時間加熱混合した。得られた混合物30gをトリオサイエンス(株)製トリオブレンダーにて粗粉砕し、さらに協立理工(株)製SK−M10型サンプルミルにて微粉砕した。得られた微粉砕物30gを、分散剤[BZ−30]7.5g、アイソパーG75g、および直径約3.0mmのガラスビーズと共に、東洋精機製作所(株)製ペイントシェーカーにて予備分散した。ガラスビーズを除去した後、直径約0.6mmのジルコニアセラミックビーズと共に、シンマルエンタープライゼズ(株)製TypeKDLダイノミルにて、内温を25℃に保ちながら5時間、引き続き45℃で5時間、2,000rpmの回転数で分散(粒子化)した。得られた分散液からジルコニアセラミックビーズを除去し分散物[BC−1]を得た。得られた分散物[BC−1]100gを、フラスコに入れ、0.1gのトリエチルアミンを加え、80℃で1時間加熱した。さらに、アイソパーG316gと荷電調整剤[CT−1]0.6gを加え、インク組成物[EC−1]を得た。荷電粒子の体積平均粒子直径を、堀場製作所(株)製CAPA−700で5000rpmの回転数で測定したところ、0.98μmであった。また、数平均粒子径は、0.21μmであった。得られたインクを用い、インクジェット記録実験を行ったところ、1ヶ月間保守作業の必要なしに、インクのにじみ、濃度低下がなく極めて鮮明な画像が得られ続けた。ヘッドを分解して確認したところ、吐出口にインク粒子の付着はなかった。また、得られたインクの再分散性試験を行ったところ、再分散時間が4分12秒という良好な結果が得られた。結果を表−1に示す。
【0177】
<インクジェット記録実験方法>
図1〜3に示すインクジェット記録装置に、評価するインク組成物をヘッドにつながるインクタンクに充填した。ここでは吐出ヘッドとして図2に示すタイプの150dpi(チャンネル密度50dpiの3列千鳥配置)、833チャンネルヘッドを使用し、また定着手段として1kWのヒータを内蔵したシリコンゴム製ヒートローラを使用した。インク温度管理手段として投げ込みヒータと攪拌羽をインクタンク内に設け、インク温度は30℃に設定し、攪拌羽を30rpmで回転しながらサーモスタットで温度コントロールした。ここで攪拌羽は沈澱・凝集防止用の攪拌手段としても使用した。またインク流路を一部透明とし、それを挟んでLED発光素子と光検知素子を配置し、その出力シグナルによりインクの希釈液(アイソパーG)あるいは濃縮インク(上記インク組成物の固形分濃度を3倍に調整したもの)投入による濃度管理を行った。被記録媒体としてオフセット印刷用微コート紙を使用した。エアーポンプ吸引により被記録媒体表面の埃除去を行った後、吐出ヘッドを画像形成位置まで被記録媒体に近づけ、記録すべき画像データを画像データ演算制御部に伝送し、搬送ベルトの回転により被記録媒体を搬送させながら吐出ヘッドを逐次移動しながらインク組成物を吐出して2400dpiの描画解像力で画像を形成した。搬送ベルトとして、金属ベルトとポリイミドフィルムを張り合わせたものを使用し、このベルトの片端付近に搬送方向に沿ってライン状のマーカーを配置し、これを搬送ベルト位置検知手段で光学的に読みとり、位置制御手段を駆動して画像形成を行った。この際、光学的ギャップ検出装置による出力により吐出ヘッドと記録媒体の距離は0.5mmに保った。また吐出の際には被記録媒体の表面電位を−1.5kVとしておき、吐出をおこなう際には+500Vのパルス電圧を印加し(パルス巾50μsec)、15kHzの駆動周波数で画像形成を行った。画像記録後すぐに、ヒートローラーを用いて定着した。定着時のコート紙の温度は90℃であり、ヒートローラーとの接触時間は0.3秒であった。また記録終了後に10分間、ヘッドにインクの代わりにアイソパーGを供給してクリーニングした後、アイソパーGの蒸気を充満させたカバーにヘッドを格納しておいた。
【0178】
<再分散性試験方法>
評価するインク組成物1.0gを遠心沈降管に入れ、小型高速冷却遠心機(トミー精工
(株)社製SRX−201)を使用し、回転速度500rpm温度20℃の条件で2時間かけて粒子を沈降させた。粒子を沈降させた遠心沈降管にアイソパーGを5g加え、しっかりと蓋をし、ミックスローター(アズワン(株)社製VMR-5)上にて室温下、80rpmの条件でしんとうさせ、沈降物が完全に再分散する時間を記録した。
【0179】
〔実施例2〕
シアン顔料10gと被覆剤[HZ−2]20gを、入江商会(株)製卓上型ニーダーPBV−0.1に入れ、ヒーター温度を100℃に設定し2時間加熱混合した。得られた混合物30gをトリオサイエンス(株)製トリオブレンダーにて粗粉砕し、さらに協立理工(株)製SK−M10型サンプルミルにて微粉砕した。得られた微粉砕物30gを、分散剤[BZ−16]7.5g、アイソパーG75g、および直径約3.0mmのガラスビーズと共に、東洋精機製作所(株)製ペイントシェーカーにて予備分散した。ガラスビーズを除去した後、直径約0.6mmのジルコニアセラミックビーズと共に、シンマルエンタープライゼズ(株)製TypeKDLダイノミルにて、内温を25℃に保ちながら5時間、引き続き45℃で5時間、2,000rpmの回転数で分散(粒子化)した。得られた分散液からジルコニアセラミックビーズを除去し分散物[BC−2]を得た。得られた分散物[BC−2]100gを、フラスコに入れ、0.05gのジラウリン酸ジブチルスズを加え、80℃で1時間加熱した。さらに、アイソパーG316gと荷電調整剤[CT−1]0.6gを加え、インク組成物[EC−2]を得た。荷電粒子の体積平均粒子直径を、堀場製作所(株)製CAPA−700で5000rpmの回転数で測定したところ、0.92μmであった。また、数平均粒子径は、0.23μmであった。得られたインクを用い、インクジェット記録実験を行ったところ、1ヶ月間保守作業の必要なしに、インクのにじみ、濃度低下がなく極めて鮮明な画像が得られ続けた。ヘッドを分解して確認したところ、吐出口にインク粒子の付着はなかった。また、得られたインクの再分散性試験を行ったところ、再分散時間が3分02秒という良好な結果が得られた。結果を表−1に記載した。
【0180】
〔実施例3〕
シアン顔料10gと被覆剤[HZ−3]20gを、入江商会(株)製卓上型ニーダーPBV−0.1に入れ、ヒーター温度を100℃に設定し2時間加熱混合した。得られた混合物30gをトリオサイエンス(株)製トリオブレンダーにて粗粉砕し、さらに協立理工(株)製SK−M10型サンプルミルにて微粉砕した。得られた微粉砕物30gを、分散剤[BZ−12]7.5g、アイソパーG75g、および直径約3.0mmのガラスビーズと共に、東洋精機製作所(株)製ペイントシェーカーにて予備分散した。ガラスビーズを除去した後、直径約0.6mmのジルコニアセラミックビーズと共に、シンマルエンタープライゼズ(株)製TypeKDLダイノミルにて、内温を25℃に保ちながら5時間、引き続き45℃で5時間、2,000rpmの回転数で分散(粒子化)した。得られた分散液からジルコニアセラミックビーズを除去し分散物[BC−3]を得た。得られた分散物[BC−3]100gを、フラスコに入れ、1gのジシクロヘキシルジカルボアミド、0.1gのジメチルアミノピリジン、及び、0.9gのトリエチルアミンを加え、80℃で1時間加熱した。さらに、アイソパーG316gと荷電調整剤[CT−1]0.6gを加え、インク組成物[EC−3]を得た。荷電粒子の体積平均粒子直径を、堀場製作所(株)製CAPA−700で5000rpmの回転数で測定したところ、1.10μmであった。また、数平均粒子径は、0.24μmであった。得られたインクを用い、インクジェット記録実験を行ったところ、1ヶ月間保守作業の必要なしに、インクのにじみ、濃度低下がなく極めて鮮明な画像が得られ続けた。ヘッドを分解して確認したところ、吐出口にインク粒子の付着はなかった。また、得られたインクの再分散性試験を行ったところ、再分散時間が3分13秒という良好な結果が得られた。結果を表−1に記載した。
【0181】
〔実施例4〕
シアン顔料10gと被覆剤[HZ−4]20gを、入江商会(株)製卓上型ニーダーPBV−0.1に入れ、ヒーター温度を100℃に設定し2時間加熱混合した。得られた混合物30gをトリオサイエンス(株)製トリオブレンダーにて粗粉砕し、さらに協立理工(株)製SK−M10型サンプルミルにて微粉砕した。得られた微粉砕物30gを、分散剤[BZ−20]7.5g、アイソパーG75g、および直径約3.0mmのガラスビーズと共に、東洋精機製作所(株)製ペイントシェーカーにて予備分散した。ガラスビーズを除去した後、直径約0.6mmのジルコニアセラミックビーズと共に、シンマルエンタープライゼズ(株)製TypeKDLダイノミルにて、内温を25℃に保ちながら5時間、引き続き45℃で5時間、2,000rpmの回転数で分散(粒子化)した。得られた分散液からジルコニアセラミックビーズを除去し分散物[BC−4]を得た。得られた分散物[BC−4]100gを、フラスコに入れ、0.1gのアゾビスイソブチロニトリルを加え、80℃で8時間加熱した。さらに、アイソパーG316gと荷電調整剤[CT−1]0.6gを加え、インク組成物[EC−4]を得た。荷電粒子の体積平均粒子直径を、堀場製作所(株)製CAPA−700で5000rpmの回転数で測定したところ、1.34μmであった。また、数平均粒子径は、0.35μmであった。得られたインクを用い、インクジェット記録実験を行ったところ、1ヶ月間保守作業の必要なしに、インクのにじみ、濃度低下がなく極めて鮮明な画像が得られ続けた。ヘッドを分解して確認したところ、吐出口にインク粒子の付着はなかった。また、得られたインクの再分散性試験を行ったところ、再分散時間が4分47秒という良好な結果が得られた。結果を表−1に記載した。
【0182】
〔実施例5〕
シアン顔料10gと被覆剤[HZ−2]20gを、入江商会(株)製卓上型ニーダーPBV−0.1に入れ、ヒーター温度を100℃に設定し2時間加熱混合した。得られた混合物30gをトリオサイエンス(株)製トリオブレンダーにて粗粉砕し、さらに協立理工(株)製SK−M10型サンプルミルにて微粉砕した。得られた微粉砕物30gを、分散剤[BZ−36]7.5g、アイソパーG75g、および直径約3.0mmのガラスビーズと共に、東洋精機製作所(株)製ペイントシェーカーにて予備分散した。ガラスビーズを除去した後、直径約0.6mmのジルコニアセラミックビーズと共に、シンマルエンタープライゼズ(株)製TypeKDLダイノミルにて、内温を25℃に保ちながら5時間、引き続き45℃で5時間、2,000rpmの回転数で分散(粒子化)した。得られた分散液からジルコニアセラミックビーズを除去し分散物[BC−5]を得た。得られた分散物[BC−5]100gを、フラスコに入れ、[BZ−1]を2.5g、0.03gのジラウリン酸ジブチルスズを加え、80℃で1時間加熱した。さらに、アイソパーG316gと荷電調整剤[CT−1]0.6gを加え、インク組成物[EC−5]を得た。荷電粒子の体積平均粒子直径を、堀場製作所(株)製CAPA−700で5000rpmの回転数で測定したところ、1.04μmであった。また、数平均粒子径は、0.21μmであった。得られたインクを用い、インクジェット記録実験を行ったところ、1ヶ月間保守作業の必要なしに、インクのにじみ、濃度低下がなく極めて鮮明な画像が得られ続けた。ヘッドを分解して確認したところ、吐出口にインク粒子の付着はなかった。また、得られたインクの再分散性試験を行ったところ、再分散時間が4分12秒という良好な結果が得られた。結果を表−1に記載した。
【0183】
〔実施例6〕
実施例5と同様にして得られた分散物[BC−5]100gをフラスコに入れ、[BZ−8]を2.5g、0.5gのトリエチルアミンを加え、80℃で1時間加熱した。さらに、アイソパーG316gと荷電調整剤[CT−1]0.6gを加え、インク組成物[EC−6]を得た。荷電粒子の体積平均粒子直径を、堀場製作所(株)製CAPA−700で5000rpmの回転数で測定したところ、0.83μmであった。また、数平均粒子径は、0.18μmであった。得られたインクを用い、インクジェット記録実験を行った
ところ、1ヶ月間保守作業の必要なしに、インクのにじみ、濃度低下がなく極めて鮮明な画像が得られ続けた。ヘッドを分解して確認したところ、吐出口にインク粒子の付着はなかった。また、得られたインクの再分散性試験を行ったところ、再分散時間が3分48秒という良好な結果が得られた。結果を表−1に記載した。
【0184】
〔実施例7〕
シアン顔料10g、被覆剤[HZ−12]17g、及び、アミノアントラセン3gを入江商会(株)製卓上型ニーダーPBV−0.1に入れ、ヒーター温度を100℃に設定し2時間加熱混合した。得られた混合物30gをトリオサイエンス(株)製トリオブレンダーにて粗粉砕し、さらに協立理工(株)製SK−M10型サンプルミルにて微粉砕した。得られた微粉砕物30gを、分散剤[BZ−12]7.5g、アイソパーG75g、および直径約3.0mmのガラスビーズと共に、東洋精機製作所(株)製ペイントシェーカーにて予備分散した。ガラスビーズを除去した後、直径約0.6mmのジルコニアセラミックビーズと共に、シンマルエンタープライゼズ(株)製TypeKDLダイノミルにて、内温を25℃に保ちながら5時間、引き続き45℃で5時間、2,000rpmの回転数で分散(粒子化)した。得られた分散液からジルコニアセラミックビーズを除去し分散物[BC−7]を得た。得られた分散物[BC−7]100gを、フラスコに入れ、1gのジシクロヘキシルジカルボアミド、0.1gのジメチルアミノピリジン、及び、0.9gのトリエチルアミンを加え、80℃で1時間加熱した。さらに、アイソパーG316gと荷電調整剤[CT−1]0.6gを加え、インク組成物[EC−7]を得た。荷電粒子の体積平均粒子直径を、堀場製作所(株)製CAPA−700で5000rpmの回転数で測定したところ、1.23μmであった。また、数平均粒子径は、0.34μmであった。得られたインクを用い、インクジェット記録実験を行ったところ、1ヶ月間保守作業の必要なしに、インクのにじみ、濃度低下がなく極めて鮮明な画像が得られ続けた。ヘッドを分解して確認したところ、吐出口にインク粒子の付着はなかった。また、得られたインクの再分散性試験を行ったところ、再分散時間が5分45秒という良好な結果が得られた。結果を表−1に記載した。
【0185】
〔実施例8〕
シアン顔料10gと、被覆剤[HZ−12]20gを入江商会(株)製卓上型ニーダーPBV−0.1に入れ、ヒーター温度を100℃に設定し2時間加熱混合した。得られた混合物30gをトリオサイエンス(株)製トリオブレンダーにて粗粉砕し、さらに協立理工(株)製SK−M10型サンプルミルにて微粉砕した。得られた微粉砕物30gを、分散剤[BZ−30]7.5g、アイソパーG75g、および直径約3.0mmのガラスビーズと共に、東洋精機製作所(株)製ペイントシェーカーにて予備分散した。ガラスビーズを除去した後、直径約0.6mmのジルコニアセラミックビーズと共に、シンマルエンタープライゼズ(株)製TypeKDLダイノミルにて、内温を25℃に保ちながら5時間、引き続き45℃で5時間、2,000rpmの回転数で分散(粒子化)した。得られた分散液からジルコニアセラミックビーズを除去し分散物[BC−8]を得た。得られた分散物[BC−8]100gを、フラスコに入れ、80℃で加熱しながらメチルメタクリレート3g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート3g、アゾビスイソブチロニトリル0.1g、アイソパーG24gの混合溶液を約3時間かけてゆっくり滴下し、粒子表面にポリマーシェル形成を行った。さらに、1gのジシクロヘキシルジカルボアミド、0.1gのジメチルアミノピリジン、及び、0.9gのトリエチルアミンを加え、80℃で1時間加熱した。さらに、アイソパーG292gと荷電調整剤[CT−1]0.6gを加え、インク組成物[EC−8]を得た。荷電粒子の体積平均粒子直径を、堀場製作所(株)製CAPA−700で5000rpmの回転数で測定したところ、1.34μmであった。また、数平均粒子径は、0.54μmであった。得られたインクを用い、インクジェット記録実験を行ったところ、1ヶ月間保守作業の必要なしに、インクのにじみ、濃度低下がなく極めて鮮明な画像が得られ続けた。ヘッドを分解して確認したところ、吐出口にインク粒子の付着はなかった。また、得られたインクの再分散性試験を行ったところ、再分散時間が3分18秒という良好な結果が得られた。結果を表−1に記載した。
【0186】
〔実施例9〕
シアン顔料10gと、被覆剤[HZ−12]20gを入江商会(株)製卓上型ニーダーPBV−0.1に入れ、ヒーター温度を100℃に設定し2時間加熱混合した。得られた混合物30gをトリオサイエンス(株)製トリオブレンダーにて粗粉砕し、さらに協立理工(株)製SK−M10型サンプルミルにて微粉砕した。得られた微粉砕物30gを、分散剤[BZ−36]7.5g、アイソパーG75g、および直径約3.0mmのガラスビーズと共に、東洋精機製作所(株)製ペイントシェーカーにて予備分散した。ガラスビーズを除去した後、直径約0.6mmのジルコニアセラミックビーズと共に、シンマルエンタープライゼズ(株)製TypeKDLダイノミルにて、内温を25℃に保ちながら5時間、引き続き45℃で5時間、2,000rpmの回転数で分散(粒子化)した。得られた分散液からジルコニアセラミックビーズを除去し分散物[BC−9]を得た。得られた分散物[BC−9]100gを、フラスコに入れ、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン3.0gを加え、複製するメタノールを除去しながら、80℃で3時間加熱攪拌し、粒子表面のシランカップリング処理を行った。[BZ−1]を2.5g、0.03gのジラウリン酸ジブチルスズを加え、80℃で1時間加熱した。さらに、アイソパーG316gと荷電調整剤[CT−1]0.6gを加え、インク組成物[EC−9]を得た。荷電粒子の体積平均粒子直径を、堀場製作所(株)製CAPA−700で5000rpmの回転数で測定したところ、1.10μmであった。また、数平均粒子径は、0.23μmであった。得られたインクを用い、インクジェット記録実験を行ったところ、1ヶ月間保守作業の必要なしに、インクのにじみ、濃度低下がなく極めて鮮明な画像が得られ続けた。ヘッドを分解して確認したところ、吐出口にインク粒子の付着はなかった。また、得られたインクの再分散性試験を行ったところ、再分散時間が4分12秒という良好な結果が得られた。結果を表−1に記載した。
【0187】
〔実施例10〕
実施例5と同様にして得られた分散物[BC−5]100gをフラスコに入れ、[BZ−26]を2.5g、0.5gのトリエチルアミンを加え、80℃で1時間加熱した。さらに、アイソパーG316gと荷電調整剤[CT−1]0.6gを加え、インク組成物[EC−10]を得た。荷電粒子の体積平均粒子直径を、堀場製作所(株)製CAPA−700で5000rpmの回転数で測定したところ、0.94μmであった。また、数平均粒子径は、0.19μmであった。得られたインクを用い、インクジェット記録実験を行ったところ、1ヶ月間保守作業の必要なしに、インクのにじみ、濃度低下がなく極めて鮮明な画像が得られ続けた。ヘッドを分解して確認したところ、吐出口にインク粒子の付着はなかった。また、得られたインクの再分散性試験を行ったところ、再分散時間が5分58秒という良好な結果が得られた。結果を表−1に記載した。
【0188】
〔比較例1〕
実施例1と同様にして得られた分散物全量に、アイソパーG316gと荷電調整剤[CT−1]0.6gを加え、インク組成物[DC−1]を得た。荷電粒子の体積平均粒子直径を、堀場製作所(株)製CAPA−700で5000rpmの回転数で測定したところ、0.96μmであった。また、数平均粒子径は、0.21μmであった。得られたインクを用い、インクジェット記録実験を行ったところ、1ヶ月間保守作業の必要なしに、インクのにじみ、濃度低下がなく極めて鮮明な画像が得られ続けた。しかし、保守作業なしで2ヶ月間使用した際の画像には、濃度低下を生じていた。ヘッドを分解して確認したところ、吐出口にインク粒子の付着が確認された。また、得られたインクの再分散性試験を行ったが、再分散時間が11分01秒というあまり良くない結果となった。結果を表−1に記載した。インク組成物[DC−1]は、共有結合形成反応を行っていないので、粒子表面と分散媒可溶ポリマーは共有結合形成していないと考えられる。
【0189】
〔比較例2〕
実施例4と同様にして得られた分散物全量に、アイソパーG316gと荷電調整剤[CT−1]0.6gを加え、インク組成物[DC−2]を得た。荷電粒子の体積平均粒子直径を、堀場製作所(株)製CAPA−700で5000rpmの回転数で測定したところ、0.99μmであった。また、数平均粒子径は、0.18μmであった。得られたインクを用い、インクジェット記録実験を行ったところ、1ヶ月間保守作業の必要なしに、インクのにじみ、濃度低下がなく極めて鮮明な画像が得られ続けた。しかし、保守作業なしで2ヶ月間使用した際の画像には、濃度低下を生じていた。ヘッドを分解して確認したところ、吐出口にインク粒子の付着が確認された。また、得られたインクの再分散性試験を行ったが、再分散時間が15分15秒というあまり良くない結果となった。結果を表−1に記載した。インク組成物[DC−2]は、共有結合形成反応を行っていないので、粒子表面と分散媒可溶ポリマーは共有結合形成していないと考えられる。
【0190】
〔比較例3〕
実施例7と同様にして得られた分散物全量に、アイソパーG316gと荷電調整剤[CT−1]0.6gを加え、インク組成物[DC−3]を得た。荷電粒子の体積平均粒子直径を、堀場製作所(株)製CAPA−700で5000rpmの回転数で測定したところ、0.99μmであった。また、数平均粒子径は、0.18μmであった。得られたインクを用い、インクジェット記録実験を行ったところ、1ヶ月間保守作業の必要なしに、インクのにじみ、濃度低下がなく極めて鮮明な画像が得られ続けた。しかし、保守作業なしで2ヶ月間使用した際の画像には、濃度低下を生じていた。ヘッドを分解して確認したところ、吐出口にインク粒子の付着が確認された。また、得られたインクの再分散性試験を行ったが、再分散時間が12分13秒というあまり良くない結果となった。結果を表−1に記載した。インク組成物[DC−3]中に含有する粒子表面と、分散媒可溶ポリマー同士は、互いに共有結合せしむる官能基を有していない。
【0191】
以下、表−1に、インクジェット試験結果、再分散性試験結果をまとめて示す。
【0192】
【表1】

【0193】
粒子表面と、分散媒可溶ポリマーとが共有結合を有するインク組成物[EC−1]〜[EC−10]は、粒子表面と、分散媒可溶ポリマーとが共有結合を有さないインク組成物[DC−1]〜[DC−3]より、長時間の吐出安定性、再分散性に優れた粒子表面と、分散媒可溶ポリマーとが共有結合を有することの効果を示す結果となった。
【図面の簡単な説明】
【0194】
【図1】本発明に用いるインクジェット印刷装置の一例を模式的に示す全体構成図である。
【図2】本発明のインクジェット記録装置のインクジェットヘッドの構成を示す斜視図である(判りやすくするために、各吐出部でのガード電極のエッジは描いていない)。
【図3】図2に示す、インクジェットヘッドの吐出部の使用数が多いときの荷電粒子の分布状態を示す側面断面図である(図2の矢視X−Xに相当)。
【符号の説明】
【0195】
G 飛翔したインク滴
P 被記録媒体
Q インク流
R 荷電粒子
1 インクジェット記録装置
2 吐出ヘッド
3 インク循環系
4 ヘッドドライバ
5 位置制御手段
6A〜6C 搬送ベルト張架ローラ
7 搬送ベルト
8 搬送ベルト位置検知手段
9 静電吸着手段
10 除電手段
11 力学的手段
12 フィードローラ
13 ガイド
14 画像定着手段
15 ガイド
16 記録媒体位置検知手段
17 排出ファン
18 溶媒蒸気吸着材
38 インクガイド
40 支持棒部
42 インクメニスカス
44 絶縁層
46 第1吐出電極
48 絶縁層
50 ガード電極
52 絶縁層
56 第2吐出電極
58 絶縁層
62 浮遊導電板
64 被覆膜
66 絶縁部材
70 インクジェットヘッド
72 インク流路
74 基板
75、75A、75B 開口
76、76A、76B 吐出部
78 吐出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散媒、および、色材を少なくとも含む荷電粒子、を含有するインクジェット記録用のインク組成物において、該荷電粒子が、少なくとも一種以上の分散媒可溶ポリマーにより、分散媒中に分散されており、該分散媒可溶ポリマーのうち、一部ないし、全てが、荷電粒子表面と共有結合を形成していることを特徴とするインクジェト記録用インク組成物。
【請求項2】
請求項1記載のインク組成物を用いて、静電界を利用したインクジェット記録方式によりインク滴を飛翔させることを特徴とするインクジェト記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−137900(P2006−137900A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−330365(P2004−330365)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】