説明

インクジェット記録用水系インク

【課題】光沢性、保存安定性に優れた水系インク、該インクに用いられるインクジェット記録用水分散体及び水不溶性架橋ポリマー粒子を提供する。
【解決手段】(1)着色剤を含有する水不溶性架橋ポリマー粒子と水不溶性有機化合物とを含む、インクジェット記録用水分散体であって、該水不溶性架橋ポリマーが、水不溶性ポリマーを架橋剤で架橋させたポリマーである、インクジェット記録用水分散体、(2)前記水分散体を含有するインクジェット記録用水系インク、及び(3)水不溶性有機化合物と共に用いられる、着色剤を含有する水不溶性架橋ポリマー粒子であって、該水不溶性架橋ポリマーが、水不溶性ポリマーを架橋剤で架橋させたポリマーである、インクジェット記録用水不溶性架橋ポリマー粒子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用水系インク、そのインクに用いられる水分散体及び水不溶性架橋ポリマー粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出し、付着させて、文字や画像を得る記録方式である。この方式は、フルカラー化が容易で、かつ安価であり、記録部材として普通紙が使用可能、被印字物に対して非接触、という数多くの利点があるため普及が著しい。
その中でも、印字物の耐候性や耐水性の観点から、着色剤に顔料系インクを用いるものが主流となってきている。(例えば、特許文献1〜5参照)
【0003】
特許文献1には、ビニルポリマーに顔料を含有させた水系インクが開示されている。
特許文献2には、カラーブリーディングを抑制するために、水不溶性樹脂を溶解してなる油膜形成成分が含まれている水性インクが開示されているが、溶解させるために水不溶性樹脂の含有量が少なく、十分な機能が発揮されていない。
特許文献3には、光沢性を有する画像を形成するために、フタル酸ジエステル10〜1000ppmとラッテクスを含有するインクが開示されているが、フタル酸ジエステルの含有量が少なく、十分な機能が発揮されていない。
特許文献4には、カルボキシ基含有熱可塑性樹脂で顔料を分散させてなる水性顔料分散液であって、顔料を分散後にカルボキシ基含有熱可塑性樹脂を架橋させてなる水性顔料分散液が開示され、耐光性、耐水性、耐溶剤性、経時安定性等に優れるとされている。
特許文献5には、顔料と、カルボキシ基及び架橋性官能基を有する樹脂とを用い、該樹脂の架橋性官能基と架橋剤とを反応させて架橋させる水性顔料分散体の製造方法が開示され、得られた水性顔料分散体は、貯蔵安定性がよく、耐水性、耐久性等に優れた塗膜を形成しうるとされている。
しかしながら、上記の顔料分散体を含む水系インクは、光沢性と保存安定性において満足できるものではない。
【0004】
【特許文献1】国際公開第00/39226号パンフレット
【特許文献2】特開平8−157761号公報
【特許文献3】特開2003−183554号公報
【特許文献4】国際公開第99/52966号パンフレット
【特許文献5】特開平9−104834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、光沢性、保存安定性に優れた水系インク、該インクに用いられるインクジェット記録用水分散体及び水不溶性架橋ポリマー粒子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、次の(1)〜(3)を提供する。
(1)着色剤を含有する水不溶性架橋ポリマー粒子と水不溶性有機化合物とを含む、インクジェット記録用水分散体であって、該水不溶性架橋ポリマーが、水不溶性ポリマーを架橋剤で架橋させたポリマーである、インクジェット記録用水分散体。
(2)前記(1)の水分散体を含有するインクジェット記録用水系インク。
(3)水不溶性有機化合物と共に用いられる、着色剤を含有する水不溶性架橋ポリマー粒子であって、該水不溶性架橋ポリマーが、水不溶性ポリマーを架橋剤で架橋させたポリマーである、インクジェット記録用水不溶性架橋ポリマー粒子。
【発明の効果】
【0007】
本発明のインクジェット記録用水分散体や水不溶性架橋ポリマー粒子を含有する水系インクは、保存安定性に優れると共に、専用紙に印字した際に、光沢性の優れた印字物を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、着色剤を含有する水不溶性架橋ポリマー粒子であって、該水不溶性架橋ポリマーが、水不溶性ポリマーを架橋剤で架橋させたポリマーである、該水不溶性架橋ポリマー粒子と、水不溶性有機化合物とを含む水分散体を用いることにより、光沢性と保存安定性を向上させた水系インクとすることができる。
本発明の第一の態様は、着色剤を含有する水不溶性架橋ポリマー粒子と水不溶性有機化合物とを含む、インクジェット記録用水分散体であって、該水不溶性架橋ポリマーが、水不溶性ポリマーを架橋剤で架橋させたポリマーである、インクジェット記録用水分散体(請求項1)である。
本発明の第二の態様は、前記第一の態様の水分散体を含有するインクジェット記録用水系インク(請求項10)である。
本発明の第三の態様は、水不溶性有機化合物と共に用いられる、着色剤を含有する水不溶性架橋ポリマー粒子であって、該水不溶性架橋ポリマーが、水不溶性ポリマーを架橋剤で架橋させたポリマーである、インクジェット記録用水不溶性架橋ポリマー粒子(請求項11)である。
【0009】
以下、第一の態様〜第三の態様に共通する構成要素について説明するが、着色剤を含有する水不溶性架橋ポリマー粒子を、以下、単に「架橋ポリマー粒子」ということがあり、水不溶性架橋ポリマーを単に「架橋ポリマー」ということがあり、水不溶性ポリマーを単に「ポリマー」ということがある。
【0010】
(水不溶性有機化合物)
本発明で用いられる水不溶性有機化合物は、少なくともその一部が架橋ポリマー粒子に含有されてその柔軟性を改良すると考えられる。水不溶性有機化合物が架橋ポリマー粒子の柔軟性を改良することで、インクジェット記録装置のノズルから吐出された該ポリマー粒子同士の融着性が高まり、該ポリマー粒子が記録紙上に均一に拡散して、印字面が平滑になることにより、印字物の光沢性が向上すると考えられる。
【0011】
水不溶性有機化合物は、水系インクの光沢性の向上の観点から、分子量100〜2,000のものが好ましく、分子量100〜1,200のものがより好ましい。
水100gに対する水不溶性有機化合物の溶解量(20℃)は、好ましくは5g以下、より好ましくは3g以下、更に好ましくは1g以下、特に好ましくは0.5g以下である。
水不溶性有機化合物は、専用紙に印字した際の印字物の光沢度を向上させると共に、水不溶性化合物を含有する水分散体の保存安定性を向上させる観点から、そのLogP値が好ましくは4〜16、より好ましくは5〜16、特に好ましくは6〜15である。
【0012】
ここで「LogP値」とは、水不溶性有機化合物の1−オクタノール/水の分配係数の対数値を意味し、KowWin(Syracuse Research Corporation,USA)のSRC's LOGKOW / KOWWIN Programにより、フラグメントアプローチで計算された数値を用いる(The KowWin Program methodology is described in the following journal article: Meylan, W.M. and P.H. Howard. 1995. Atom/fragment contribution method for estimating octanol-water partition coefficients. J. Pharm. Sci. 84: 83-92.)。フラグメントアプローチは化合物の化学構造に基づいており、原子の数及び化学結合のタイプを考慮している。LogP値は、一般に有機化合物の親疎水性の相対的評価に用いられる数値である。
【0013】
水不溶性有機化合物は、架橋ポリマー粒子に含有させ易くするため、エステル化合物、エーテル化合物、又はスルホン酸アミド化合物であることが好ましく、分子中に、エステル又はエーテル結合を2個以上有する、エステル又はエーテル化合物(f)、及び/又は、分子中に、エステル又はエーテル結合を1個以上と、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸残基、カルボニル基、エポキシ基及び水酸基からなる群から選ばれる1種以上の官能基を1個以上有する、エステル又はエーテル化合物(g)がより好ましい。前記(f)化合物のエステル又はエーテル結合は、2〜3個が好ましい。前記(g)化合物のエステル又はエーテル結合は、1〜3個が好ましい。官能基数は、1〜3個が好ましい。なお、リン酸残基とは、リン酸の一部がエステル化又はエーテル化された残りのリン酸基のことをいう。
エステル化合物の中では、1価カルボン酸又はその塩と多価アルコールから得られるエステル、多価酸(多価カルボン酸、リン酸)又はその塩と1価アルコールから得られるエステルが好ましく、エーテル化合物の中では、多価アルコールのエーテルが好ましい。塩としては、アルカリ金属塩、アルカノールアミン塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0014】
1価カルボン酸としては、炭素数1〜18、好ましくは炭素数2〜10の直鎖又は分岐鎖の脂肪族カルボン酸(例えば、酢酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸等の直鎖脂肪族カルボン酸、ピバリン酸等の分岐脂肪族カルボン酸、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和脂肪族カルボン酸)、炭素数6〜12の芳香族カルボン酸(例えば、安息香酸)等が挙げられる。
多価酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等の炭素数2〜12の脂肪族カルボン酸、フタル酸、トリメリット酸等の炭素数6〜12の芳香族カルボン酸、リン酸等が挙げられる。
1価アルコールとしては、炭素数1〜18、好ましくは炭素数2〜10の直鎖又は分岐鎖の脂肪族アルコール(例えば、エチルアルコール、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、デシルアルコール、ドデシルアルコール)、炭素数6〜12の芳香族アルコール(例えば、フェノール)及びこれらのアルキレンオキサイド化合物等が挙げられる。
多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等の炭素数2〜12の多価アルコール及びこれらのアルキレンオキサイド化合物等が挙げられる。脂肪酸やアルコールとしては飽和又は不飽和のいずれのものも使用できる。
【0015】
水不溶性有機化合物の具体例としては、(1)脂肪族カルボン酸エステル、(2)芳香族カルボン酸エステル、(3)シクロアルカン(ケン)カルボン酸エステル、(4)リン酸エステル、(5)オキシ酸エステル、(6)グリコールエステル、(7)エポキシ系エステル、(8)スルホンアミド、(9)ポリエステル、(10)グリセリルアルキルエーテル、(11)グリセリルアルキルエステル、(12)グリコールアルキルエーテル等が挙げられる。
これらの中では、光沢性向上の観点から、前記(1)〜(5)、(8)及び(10)の化合物が好ましく、(1)脂肪族カルボン酸エステル、(2)芳香族カルボン酸エステル、(3)シクロアルカン(ケン)カルボン酸エステル及び(4)リン酸エステルからなる群より選ばれる1種以上であることが更に好ましく、脂肪族ジカルボン酸エステル、芳香族ジ又はトリカルボン酸エステル、シクロアルカン(ケン)ジカルボン酸エステル及びリン酸ジ又はトリエステルからなる群より選ばれる1種以上であることが特に好ましい。
【0016】
(1)脂肪族カルボン酸エステル、(2)芳香族カルボン酸エステル、及び(3)シクロアルカン(ケン)カルボン酸エステルは、下記式(2)で表される化合物が好ましい。
【0017】
【化1】

【0018】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜22の炭化水素基を示し、R3は炭素数1〜18の2価の炭化水素基を示す。R1及びR2は同一でも異なっていてもよいが、R1及びR2が共に水素原子である場合を除く。R1〜R3は置換基を有していてもよい。m及びnは、それぞれ独立に0〜30の平均付加モル数を示し、AOはアルカンジイルオキシ基を示す。)
【0019】
1及びR2は、印字物の光沢性を向上させる観点から、好ましくは炭素数2〜18、更に好ましくは炭素数4〜12の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、炭素数7〜23、好ましくは炭素数7〜11のアラルキル基、あるいは炭素数6〜22、好ましくは炭素数6〜10のアリール基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、セチル基、フェニル基、ベンジル基等が挙げられる。以下の式においても同様である。
3は、2価の脂肪族炭化水素基、環式炭化水素基又は芳香族炭化水素基が好ましく、好ましくは炭素数2〜15、更に好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルカンジイル基(アルキレン基)又はアルケニレン基あるいは、炭素数6〜10のアリーレン基、更に好ましくはフェニレン基、炭素数3〜8の環式飽和又は不飽和炭化水素基である。具体的には、エチレン基、トリメチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、テトラメチレン基、ヘプタメチレン基、ヘキサメチレン基、ペンタン−1,5−ジイル基、オクタメチレン基、ドデカメチレン基、フェニレン基等が挙げられる。以下の式においても同様である。
m及びnは、それぞれ独立に、好ましくは0〜20、より好ましくは0〜15、更に好ましくは1〜15、特に好ましくは2〜14、最も好ましくは2〜12である。
【0020】
AOは、エチレンオキシ基(EO)、プロピレンオキシ基(トリメチレンオキシ基又はプロパン−1,2−ジイルオキシ基)(PO)、又はブチレンオキシ基(テトラメチレンオキシ基等)(BO)等の炭素数2〜4のアルカンジイルオキシ基(アルキレンオキシ基)であり、m及びnが2以上の場合はAOは同一でも異なっていてもよく、異なる場合はAOはブロック付加していても、ランダム付加していてもよい。
1〜R3が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素原子等のハロゲン原子、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ基等の炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニルオキシ基等のアリールオキシ基、メトキシカルボニル基等のオキシカルボニル基、アセチル、ベンゾイル基等のアシル基、アセチルオキシ基等のアシルオキシ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、オキソ基、エポキシ基、エーテル基、エステル基等が例示できる(これらを総称して「置換基」という)。これらの置換基は1つであっても2つ以上を組み合わせてもよい。
3が有していてもよい置換基としては、−CO(O)−(AO)L−R4が好ましい。式中、AOは前記と同じである。Lは、前記のmと同じ意味を示し、好ましい範囲も同じである。R4は、前記のR1と同じ意味を示し、好ましい範囲も同じである。この場合、R3は、芳香族炭化水素基であることが好ましい。
【0021】
(1)脂肪族カルボン酸エステルは、より具体的には、前記式(2)において、R3が、置換基を有していてもよい、2価の脂肪族炭化水素基である化合物が更に好ましい。この置換基としては前記の置換基が挙げられる。
脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、ジメチルアジペート、ジエチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ビス(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ビス(ブチルジエチレングリコール)アジペート、ジメチルセバケート、ジエチルセバケート、ジブチルセバケート、ビス(2−エチルヘキシル)セバケート、ジエチルサクシネート、ビス(2−エチルヘキシル)アゼレート等の脂肪族二塩基酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、ジエチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ビス(ブチルジエチレングリコール)アジペート、ビス(オクトキシポリエチレングリコール)アジペート(R1及びR2は共に2-エチルヘキシル、EOの各平均付加モル数m及びn=1〜4)、ビス(オクトキシポリプロピレングリコール)アジペート(R1及びR2は共に2-エチルヘキシル、POの各平均付加モル数m及びn=1〜6)、ビス(オクトキシポリエチレングリコール・ポロプロピレングリコール)アジペート(R1及びR2は共に2-エチルヘキシル、EO及びPOの各合計平均付加モル数m及びn=4〜12、ブロック付加)、ビス[オクトキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)]アジペート(R1及びR2は共に2-エチルヘキシル、EO及びPOの各合計平均付加モル数m及びn=4〜12、ランダム付加)、ジエチルセバケート、ジブチルセバケート、ジイソブチルセバケート等の炭素数6〜14の脂肪族二塩基酸のジエステルが特に好ましい。
【0022】
(2)芳香族カルボン酸エステルは、より具体的には、下記式(3)で表される化合物が更に好ましい。
【0023】
【化2】

【0024】
(式中、R1及びR2は、前記と同じ意味であり、同一でも異なっていてもよい。AO、m及びnは、前記と同じ意味であり、m及びnはが2以上の場合はAOは同一でも異なっていてもよい。)
芳香族カルボン酸エステルの具体例としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ビス(2−エチルヘキシル)フタレート、ジ-n-オクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、オクチルベンジルフタレート、ノニルベンジルフタレート、ステアリルベンジルフタレート、オクチルデシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジフェニルフタレート、ビス(ジメチルシクロヘキシル)フタレート、ビス(t−ブチルシクロヘキシル)フタレート、エチルフタリルエチルグリコレート等のフタル酸エステル、トリブチルトリメリテート、トリイソブチルトリメリテート、トリ(2−エチルヘキシル)トリメリテート等のトリメリット酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート等の炭素数1〜5の脂肪族アルコール残基を有するフタル酸ジエステル、オクチルベンジルフタレート、ノニルベンジルフタレート、ステアリルベンジルフタレート等の炭素数3〜18のアルキル基を有するベンジルフタレート、ビス(オクトキシポリエチレングリコール)フタレート(R1及びR2は共に2-エチルヘキシル、EOの各平均付加モル数m及びn=1〜5)、ビス(オクトキシポリプロピレングリコール)フタレート(R1及びR2は共に2-エチルヘキシル、POの各平均付加モル数m及びn=1〜4)、ビス(オクトキシポリエチレングリコール・ポロプロピレングリコール)フタレート(R1及びR2は共に2-エチルヘキシル、EO及びPOの各合計平均付加モル数m及びn=4〜12、ブロック付加)、ビス[オクトキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)]フタレート(R1及びR2は共に2-エチルヘキシル、EO及びPOの各合計平均付加モル数m及びn=4〜12、ランダム付加)等のフタル酸エステル、及びトリブチルトリメリテート、トリイソブチルトリメリテート等の炭素数3〜5の脂肪族アルコール残基を有するトリメリット酸ジエステルが特に好ましい。
【0025】
(3)シクロアルカン(ケン)カルボン酸エステルは、より具体的には、下記式(4)で表されるシクロヘキサン(セン)カルボン酸エステルが更に好ましい。シクロアルカン(ケン)基としては、炭素数3〜8の不飽和基を1つ有していてもよい、環式炭化水素基が挙げられる。
【0026】
【化3】

【0027】
(式中、R1及びR2は、前記と同じ意味であり、同一でも異なっていてもよい。AO、m及びnは、前記と同じ意味であり、m及びnはが2以上の場合はAOは同一でも異なっていてもよい。)
シクロアルカン(ケン)カルボン酸エステルの具体例としては、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジブチルエステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル等のシクロヘキサンカルボン酸エステル類、3,4−シクロヘキセンジカルボン酸ジブチルエステル、3,4−シクロヘキセンカルボン酸ジイソノニルエステル等のシクロヘキセンカルボン酸エステル等が挙げられる。
(4)リン酸エステルは下記式(5)で表される化合物が好ましい。
【0028】
【化4】

【0029】
(式中、R1及びR2は、前記と同じ意味であり、同一でも異なっていてもよい。)
リン酸エステルの具体例としては、トリブチルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート等が挙げられる。これらの中でも、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート等の炭素数5〜9のアルコキシアルキル基を有するリン酸エステル、トリブチルホスフェート等の炭素数4〜12の脂肪族炭化水素基を有するリン酸エステル、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート等の炭素数7〜12の芳香族炭化水素基を有するリン酸エステルが特に好ましい。リン酸エステルは、リン酸ジ又はトリエステルが好ましい。
【0030】
(5)オキシ酸エステルは下記式(6)で表される化合物が好ましい。
【0031】
【化5】

【0032】
(式中、R1、R2及びR3は前記と同じ意味である。R1及びR2は同一でも異なっていてもよい。)
オキシ酸エステルの具体例としては、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルリシノール酸メチル等が挙げられる。
【0033】
(6)グリコールエステルは下記式(7)で表される化合物が好ましい。
【0034】
【化6】

【0035】
(式中、R1、R2及びR3は前記と同じ意味である。R1及びR2は同一でも異なっていてもよい。)
グリコールエステルの具体例としては、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ(2−エチルヘキソエート)等が挙げられる。
【0036】
(7)エポキシ系エステルは下記式(8)で表される化合物が好ましい。
【0037】
【化7】

【0038】
(式中、R1は前記と同じ意味である。R4及びR5は各々独立に水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基、R6は炭素数1〜6のアルカンジイルオキシ基を示す。)
エポキシ系エステルの具体例としては、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル等が挙げられる。
【0039】
(8)スルホンアミドは下記式(9)で表される化合物が好ましい。
【0040】
【化8】

【0041】
(式中、R1及びR2は、前記と同じ意味であり、同一でも異なっていてもよい。)
スルホンアミドの具体例としては、o−及びp−トルエンスルホンアミド、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等が挙げられる。
【0042】
(9)ポリエステルは下記式(10)で表される化合物が好ましい。
【0043】
【化9】

【0044】
(式中、R1、R2及びR3は、前記と同じ意味であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。pは1〜18、好ましくは1〜10の数を表す。)
ポリエステルの具体例としては、ポリ(1,2−ブタンジオールアジペート)、ポリ(1,3−ブタンジオールアジペート)等が挙げられる。
(10)グリセリルアルキルエーテルの具体例としては、グリセリルモノエーテル、グリセリルジエーテル、グリセリルトリエーテルが挙げられる。これらの中では、炭素数8〜30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するグリセリルモノエーテルが好ましい。アルキル基の炭素数は8〜30であるが、好ましくは8〜22、更に好ましくは8〜14である。
アルキル基として、例えば2−エチルヘキシル、(イソ)オクチル、(イソ)デシル、(イソ)ドデシル、(イソ)ミリスチル、(イソ)セチル、(イソ)ステアリル、(イソ)ベヘニル基が挙げられる。
アルキル基の位置については、特に制限はなく、1−アルキルグリセリルモノエーテル、2−アルキルグリセリルモノエーテルいずれであってもよい。
【0045】
(11)グリセリルアルキルエステルの具体例としては、グリセリルモノアルキルエステル、グリセリルジアルキルエステル、グリセリルトリアルキルエステルが挙げられる。
これらの中では、炭素数1〜18、好ましくは炭素数2〜10の直鎖又は分岐鎖の脂肪族カルボン酸(例えば、酢酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸等の直鎖脂肪族カルボン酸、ピバリン酸等の分岐脂肪族カルボン酸)エステルが好ましい。アルキル基の総炭素数は、6以上が好ましく、8以上が更に好ましい。
より具体的には、グリセリルトリアセテート、グリセリルジアセテート、グリセリルモノアセテート等が挙げられる。
【0046】
(12)グリコールアルキルエーテルの具体例としては、グリコールモノアルキルエーテル、グリコールジアルキルエーテルが挙げられる。
化合物(12)のグリコールとしては、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール等が挙げられ、化合物(12)のアルキル基としては、炭素数1〜22の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられる。アルキル基の総炭素数は、6以上が好ましく、8以上が更に好ましい。
上記の水不溶性有機化合物(1)〜(12)は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、水不溶性有機化合物は前記式(2)で表される化合物が光沢性の観点から好ましい。
【0047】
(着色剤)
着色剤は、本発明の効果である光沢性を発揮させるために用いられる。着色剤としては特に制限はなく、顔料、疎水性染料、水溶性染料(酸性染料、反応染料、直接染料等)等を用いることができるが、耐水性、保存安定性及び耐擦過性の観点から、顔料及び疎水性染料が好ましい。中でも、近年要求が強い高耐候性を発現させるためには、顔料を用いることが好ましい。顔料を用いた水系インクの保存安定性と光沢性を高めるのに本発明は特に適する。
顔料及び疎水性染料は、水系インクに使用する場合には、界面活性剤、ポリマーを用いて、インク中で安定な微粒子にする必要がある。特に、耐滲み性、耐水性等の観点から、ポリマーの粒子中に顔料及び/又は疎水性染料を含有させることが好ましい。
顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。また、必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、金属酸化物、金属硫化物、金属塩化物等が挙げられる。これらの中では、特に黒色水系インクにおいては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アンソラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。
好ましい有機顔料の具体例としては、C.I.ピグメント・イエロー、C.I.ピグメント・レッド、C.I.ピグメント・バイオレット、C.I.ピグメント・ブルー、及びC.I.ピグメント・グリーンからなる群から選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられる。
体質顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
【0048】
疎水性染料は、架橋ポリマー粒子中に含有させることができるものであればよく、その種類には特に制限がない。疎水性染料は、ポリマー中に効率よく染料を含有させる観点から、ポリマーの製造時に使用する有機溶媒(好ましくメチルエチルケトン)に対して、2g/L以上、好ましくは20〜500g/L(25℃)溶解するものが望ましい。
疎水性染料としては、油溶性染料、分散染料等が挙げられ、これらの中では油溶性染料が好ましい。
油溶性染料としては、例えば、C.I.ソルベント・ブラック、C.I.ソルベント・イエロー、C.I.ソルベント・レッド、C.I.ソルベント・バイオレット、C.I.ソルベント・ブルー、C.I.ソルベント・グリーン、及びC.I.ソルベント・オレンジからなる群から選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられ、オリエント化学株式会社、BASF社等から市販されている。
分散染料としては、例えば、C.I.ディスパーズ・イエロー、C.I.ディスパーズ・オレンジ、C.I.ディスパーズ・レッド、C.I.ディスパーズ・バイオレット、C.I.ディスパーズ・ブルー、C.I.ディスパーズ・グリーンからなる群から選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられる。これらの中では、イエローとしてC.I.ソルベント・イエロー29及び30、シアンとしてC.I.ソルベント・ブルー70、マゼンタとしてC.I.ソルベント・レッド18及び49、ブラックとしてC.I.ソルベント・ブラック3及び7、及びニグロシン系の黒色染料が好ましい。
これらの中でも、白色と黒色及びその中間色である灰色を除く有彩色の着色剤が好ましい。上記の着色剤は、単独で又は2種以上を任意の割合で混合して用いることができる。
着色剤と水不溶性ポリマーとの重量比(水不溶性ポリマー/顔料)は、光沢性と保存安定性の観点から、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜80/20、特に好ましくは20/80〜50/50である。
【0049】
(水不溶性ポリマー)
本発明に用いられる水不溶性ポリマーは、架橋剤で架橋して架橋ポリマーとされるものである。ここで、水不溶性ポリマーとは、ポリマーを105℃で2時間乾燥させた後、25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が10g以下、好ましくは5g以下、更に好ましくは1g以下であるポリマーをいう。溶解量は、ポリマーが塩生成基を有する場合は、その種類に応じて、ポリマーの塩生成基を酢酸又は水酸化ナトリウムで100%中和した時の溶解量である。
用いるポリマーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、ビニルポリマー等が挙げられるが、その保存安定性の観点から、ビニル単量体(ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物)の付加重合により得られるビニルポリマーが好ましい。
【0050】
(ビニルポリマー)
ビニルポリマーとしては、(a)塩生成基含有モノマー(以下「(a)成分」ということがある)と、(b)マクロマー(以下「(b)成分」ということがある)及び/又は(c)疎水性モノマー(以下「(c)成分」ということがある)とを含むモノマー混合物(以下「モノマー混合物」ということがある)を共重合させてなる水不溶性ビニルポリマーが好ましい。この水不溶性ビニルポリマーは、(a)成分由来の構成単位と、(b)成分由来の構成単位及び/又は(c)成分由来の構成単位を有する。より好適な水不溶性ビニルポリマーは、(a)成分由来の構成単位、又は(a)及び(c)成分由来の構成単位を主鎖として有し、(b)成分由来の構成単位を側鎖として有する水不溶性グラフトポリマーである。
【0051】
(a)塩生成基含有モノマーは、得られる分散体の保存安定性を高める観点から用いられる。塩生成基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基、アンモニウム基等が挙げられる。
塩生成基含有モノマーとしては、特開平9−286939号公報段落〔0022〕等に記載されているカチオン性モノマー、アニオン性モノマー等が挙げられる。
カチオン性モノマーの代表例としては、不飽和アミン含有モノマー、不飽和アンモニウム塩含有モノマー等が挙げられる。これらの中では、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−(N',N'−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド及びビニルピロリドンが好ましい。
アニオン性モノマーの代表例としては、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等が挙げられる。
不飽和カルボン酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。不飽和スルホン酸モノマーとしては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル等が挙げられる。不飽和リン酸モノマーとしては、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート等が挙げられる。
上記アニオン性モノマーの中では、保存安定性、吐出安定性の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
【0052】
(b)マクロマーは、架橋ポリマー粒子の保存安定性を高める観点から用いられる。マクロマーとしては、数平均分子量500〜100,000、好ましくは1,000〜10,000の重合可能な不飽和基を有するモノマーであるマクロマーが挙げられる。なお、(b)マクロマーの数平均分子量は、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミンを含有するクロロホルムを用いたゲルクロマトグラフィー法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
(b)マクロマーの中では、架橋ポリマー粒子の保存安定性等の観点から、片末端に重合性官能基を有する、スチレン系マクロマー及び芳香族基含有(メタ)アクリレート系マクロマーが好ましい。
スチレン系マクロマーとしては、スチレン系モノマー単独重合体、又はスチレン系モノマーと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。スチレン系モノマーとしては、スチレン、2−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ビニルナフタレン、クロロスチレン等が挙げられる。
【0053】
芳香族基含有(メタ)アクリレート系マクロマーとしては、芳香族基含有(メタ)アクリレートの単独重合体又はそれと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。芳香族基含有(メタ)アクリレートとしては、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数7〜22、好ましくは炭素数7〜18、更に好ましくは炭素数7〜12のアリールアルキル基、又は、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数6〜22、好ましくは炭素数6〜18、更に好ましくは炭素数6〜12のアリール基を有する(メタ)アクリレートであり、ヘテロ原子を含む置換基としては、ハロゲン原子、エステル基、エーテル基、ヒドロキシ基等が挙げられる。例えばベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート等が挙げられ、特にベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。
また、それらのマクロマーの片末端に存在する重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましく、共重合される他のモノマーとしては、アクリロニトリル等が好ましい。
スチレン系マクロマー中におけるスチレン系モノマー、又は芳香族基含有(メタ)アクリレート系マクロマー中における芳香族基含有(メタ)アクリレートの含有量は、顔料との親和性を高める観点から、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。
【0054】
(b)マクロマーは、オルガノポリシロキサン等の他の構成単位からなる側鎖を有するものであってもよい。この側鎖は、例えば下記式(11)で表される片末端に重合性官能基を有するシリコーン系マクロマーを共重合することにより得ることができる。
CH2=C(CH3)−COOC36−〔Si(CH32O〕t−Si(CH33 (11)
(式中、tは8〜40の数を示す。)。
(b)成分として商業的に入手しうるスチレン系マクロマーとしては、例えば、東亜合成株式会社の商品名、AS−6(S)、AN−6(S)、HS−6(S)等が挙げられる。
【0055】
(c)疎水性モノマーは、印字濃度の向上の観点から用いられる。疎水性モノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族基含有モノマー等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数1〜22、好ましくは炭素数6〜18のアルキル基を有するものが好ましく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、本明細書において、「(イソ又はターシャリー)」及び「(イソ)」は、これらの基が存在する場合としない場合の双方を意味し、これらの基が存在しない場合には、ノルマルを示す。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレート又はそれらの両方を示す。
【0056】
芳香族基含有モノマーとしては、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数6〜22、好ましくは炭素数6〜18、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族基を有するビニルモノマーが好ましく、例えば、前記のスチレン系モノマー(c−1成分)、前記の芳香族基含有(メタ)アクリレート(c−2成分)が挙げられる。ヘテロ原子を含む置換基としては、前記のものが挙げられる。
(c)成分の中では、印字濃度向上の観点から、スチレン系モノマー(c−1成分)が好ましく、スチレン系モノマーとしては特にスチレン及び2−メチルスチレンが好ましい。(c)成分中の(c−1)成分の含有量は、印字濃度向上の観点から、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは20〜80重量%である。
また、芳香族基含有(メタ)アクリレート(c−2)成分としては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が好ましい。(c)成分中の(c−2)成分の含有量は、印字濃度及び光沢性の向上の観点から、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは20〜80重量%である。また、(c−1)成分と(c−2)成分を併用することも好ましい。
【0057】
モノマー混合物には、更に、(d)水酸基含有モノマー(以下「(d)成分」ということがある)が含有されていてもよい。(d)水酸基含有モノマーは、保存安定性を高めるという優れた効果を発現させるものである。
(d)成分としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜30、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。以下同じ。)(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール(n=1〜15)・プロピレングリコール(n=1〜15))(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレートが好ましい。
【0058】
モノマー混合物には、更に、(e)下記式(12)で表されるモノマー(以下「(e)成分」ということがある)が含有されていてもよい。
CH2=C(R7)COO(R8O)q9 (12)
(式中、R7は、水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基、R8は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の2価の炭化水素基、R9は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の1価の炭化水素基又は炭素数1〜9のアルキル基を有してもよいフェニル基、qは、平均付加モル数を意味し、1〜60の数、好ましくは1〜30の数を示す。)
(e)成分は、吐出性を向上するという優れた効果を発現する。
式(12)のモノマーに含まれるヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、ハロゲン原子及び硫黄原子が挙げられる。
7の好適例としては、メチル基、エチル基、(イソ)プロピル基等が挙げられる。
8O基の好適例としては、オキシエチレン基、オキシトリメチレン墓、オキシプロパン−1,2−ジイル基、オキシテトラメチレン基、オキシヘプタメチレン基、オキシヘキサメチレン基及びこれらの2種以上の組合せからなる炭素数2〜7のオキシアルカンジイル基(オキシアルキレン基)が挙げられる。
9の好適例としては、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20、更に好ましくは炭素数1〜8の脂肪族アルキル基、芳香族環を有する炭素数7〜30のアルキル基及びヘテロ環を有する炭素数4〜30のアルキル基、炭素数1〜8のアルキル基を有していてもよいフェニル基が挙げられる。
【0059】
(e)成分の具体例としては、メトキシポリエチレングリコール(1〜30:式(12)中のqの値を示す。以下、同じ)(メタ)アクリレート、メトキシポリテトラメチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート2−エチルヘキシルエーテル、(イソ)プロポキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、メトキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(1〜30、その中のエチレングリコール:1〜29)(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、オクトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート2−エチルヘキシルエーテルが好ましい。
【0060】
商業的に入手しうる(d)、(e)成分の具体例としては、新中村化学工業株式会社の多官能性アクリレートモノマー(NKエステル)M−40G、同90G、同230G、日本油脂株式会社のブレンマーシリーズ、PE−90、同200、同350、PME−100、同200、同400、同1000、PP−500、同800、同1000、AP−150、同400、同550、同800、50PEP−300、50POEP−800B、43PAPE600B等が挙げられる。
上記(a)〜(e)成分は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0061】
水不溶性ビニルポリマー製造時における、上記(a)〜(e)成分のモノマー混合物中における含有量(未中和量としての含有量。以下同じ)又は水不溶性ビニルポリマー中における(a)〜(e)成分に由来する構成単位の含有量は、次のとおりである。
(a)成分の含有量は、得られる分散体の保存安定性の観点から、好ましくは2〜40重量%、より好ましくは2〜30重量%、特に好ましくは3〜20重量%である。
(b)成分の含有量は、特に着色剤との相互作用を高める観点から、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは5〜20重量%である。
(c)成分の含有量は、印字濃度向上の観点から、好ましくは5〜98重量%、より好ましくは10〜60重量%である。
(d)成分の含有量は、得られる分散体の保存安定性の観点から、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは7〜20重量%である。
(e)成分の含有量は、吐出性向上の観点から、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%である。
モノマー混合物中における〔(a)成分+(d)成分〕の合計含有量は、得られる分散体の保存安定性の観点から、好ましくは6〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%である。〔(a)成分+(e)成分〕の合計含有量は、得られる分散体の保存安定性及び吐出性の観点から、好ましくは6〜75重量%、より好ましくは13〜50重量%である。また、〔(a)成分+(d)成分+(e)成分〕の合計含有量は、得られる分散体の保存安定性及び吐出性の観点から、好ましくは6〜60重量%、より好ましくは7〜50重量%である。
また、〔(a)成分/[(b)成分+(c)成分]〕の重量比は、得られる分散体の保存安定性及び印字濃度の観点から、好ましくは0.01〜1、より好ましくは0.02〜0.67、更に好ましくは0.03〜0.50である。
【0062】
(水不溶性ポリマーの製造)
本発明で用いられる水不溶性ポリマーは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により、モノマー混合物を共重合させることによって製造される。これらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒としては、特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましい。極性有機溶媒が水混和性を有する場合には、水と混合して用いることもできる。極性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜3の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの中では、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン又はこれらの1種以上と水との混合溶媒が好ましい。
重合の際には、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物や、t−ブチルペルオキシオクトエート、ジベンゾイルオキシド等の有機過酸化物等の公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。
ラジカル重合開始剤の量は、モノマー混合物1モルあたり、好ましくは0.001〜5モル、より好ましくは0.01〜2モルである。
重合の際には、さらに、オクチルメルカプタン、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類、チウラムジスルフィド類等の公知の重合連鎖移動剤を添加してもよい。
【0063】
モノマー混合物の重合条件は、使用するラジカル重合開始剤、モノマー、溶媒の種類等によって異なるので一概には決定することができない。通常、重合温度は、好ましくは30〜100℃、より好ましくは50〜80℃であり、重合時間は、好ましくは1〜20時間である。また、重合雰囲気は、窒素ガス雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマーを単離することができる。また、得られたポリマーは、再沈澱を繰り返したり、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去して精製することができる。
【0064】
本発明で用いられる水不溶性ポリマーの重量平均分子量は、光沢性及び着色剤の保存安定性の観点から、5,000〜50万が好ましく、1万〜40万がより好ましく、1万〜30万が更に好ましく、2万〜30万が特に好ましい。なお、ポリマーの重量平均分子量は、実施例で示す方法により測定した。
本発明で用いられる水不溶性ビニルポリマーは、(a)塩生成基含有モノマー由来の塩生成基を有している場合は中和剤により中和して用いる。中和剤としては、ポリマー中の塩生成基の種類に応じて、酸又は塩基を使用することができる。例えば、塩酸、酢酸、プロピオン酸、リン酸、硫酸、乳酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、グリセリン酸等の酸、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリブチルアミン等の塩基が挙げられる。
【0065】
塩生成基の中和度は、10〜200%であることが好ましく、さらに20〜150%、特に50〜150%であることが好ましい。
ここで中和度は、塩生成基がアニオン性基である場合、下記式によって求めることができる。
{[中和剤の重量(g)/中和剤の当量]/[ポリマーの酸価 (KOHmg/g)×ポリマーの重量(g)/(56×1000)]}×100
塩生成基がカチオン性基である場合は、下記式によって求めることができる。
{[中和剤の重量(g)/中和剤の当量]/[ポリマーのアミン価 (HCLmg/g)×ポリマーの重量(g)/(36.5×1000)]}×100
酸価やアミン価は、ポリマーの構成単位から、計算で算出することができる。または、適当な溶剤(例えばメチルエチルケトン)にポリマーを溶解して、滴定する方法でも求めることができる。
【0066】
(架橋剤)
本発明に用いられる架橋剤は、水不溶性ポリマーを適度に架橋するため、分子内に少なくとも2個の反応性基を有する化合物が好ましい。架橋剤の分子量は、反応のし易さ、及び得られる架橋ポリマー粒子の保存安定性の観点から、120〜2000が好ましく、150〜1500が更に好ましく、150〜1000が特に好ましい。
架橋剤に含まれる反応性基の数は、分子量を制御して光沢性を向上する観点から、2〜4が好ましく、2が最も好ましい。反応性基としては、水酸基、エポキシ基、アルデヒド基、アミノ基、及びカルボキシ基からなる群から選ばれる1以上が好ましく挙げられる。
架橋剤としての具体例としては、
(a)分子中に2つ以上の水酸基を有する化合物:例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングルコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルアルコール、ジエタノールアミン、トリジエタノールアミン、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ペンタエリスリトール、ソルビット、ソルビタン、グルコース、マンニット、マンニタン、ショ糖、ブドウ糖等の多価アルコール、
(b)分子中に2つ以上のエポキシ基を有する化合物:例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル、
(c)分子中に2つ以上のアルデヒド基を有する化合物:例えば、グルタールアルデヒド、グリオキザール等のポリアルデヒド、
(d)分子中に2つ以上のアミノ基を有する化合物:例えば、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン等のポリアミン、及び
(e)分子中に2つ以上のカルボキシ基を有する化合物:例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸の等多価カルボン酸 が挙げられる。
【0067】
水不溶性ポリマーは、前記架橋剤と反応しうる反応性基(架橋性官能基)を有するが、両者の好適な組合せ例は、次のとおりである。
水不溶性ポリマーの反応性基がカルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基等の酸性基の場合は、架橋剤は前記(a)、(b)及び(d)化合物が好ましい。
また、水不溶性ポリマーの反応性基がアミノ基、水酸基の場合は、架橋剤は前記(b)、(c)及び(e)化合物が好ましい。
水不溶性ポリマーの反応性基がイソシアネート基、エポキシ基の場合は、架橋剤は前記(a)、(d)及び(e)化合物が好ましい。
上記の組合せの中では、水不溶性ポリマーに適度な架橋構造を付与するように制御する観点から、酸性基(カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基等)、アミノ基及び水酸基から選ばれる1種以上の反応性基を有する水不溶性ポリマーと、(b)分子中に2つ以上のエポキシ基を有する化合物との組合せが特に好ましい。
【0068】
前記架橋剤と反応しうる反応性基(架橋性官能基)として、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基等の酸性基、アミノ基、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基等を有する水不溶性ポリマーは、上記した水不溶性ポリマーの製造において、該反応性基を有するモノマーを含む重合性モノマー組成物を共重合することによって製造することができる。
前記架橋剤と反応しうる反応性基として、酸性基、アミノ基等の塩生成基を有するポリマーは、前述の塩生成基含有モノマーを共重合したポリマーを用いることができる。また、前記架橋剤と反応しうる反応性基として水酸基を有するポリマーは、前述の水酸基含有モノマーを共重合したポリマーを用いることができる。
前記架橋剤と反応しうる反応性基としてエポキシ基を有するポリマーとしては、エポキシ基を有するモノマー、具体的にはグリシジル(メタ)アクリレートを共重合したポリマーを用いることができる。前記架橋剤と反応しうる反応性基としてイソシアネート基を有するポリマーとしては、(i)イソシアネート基を有するモノマー、例えばイソ
シアネートエチル(メタ)アクリレートを共重合したポリマー、(ii)不飽和ポリエス
テルポリオールとイソシアネートから得られるイソシアネート末端プレポリマーを共重合したポリマー等を用いることができる。
【0069】
(着色剤を含有する水不溶性架橋ポリマー粒子)
本発明において、着色剤を含有する水不溶性架橋ポリマー粒子は、水不溶性有機化合物との相互作用により、光沢性と保存安定性を向上させるために用いられる。
架橋ポリマーが、適度な架橋構造を有することで、水不溶性有機化合物を含有し易く、水不溶性有機化合物を含有してポリマー構造が膨潤しても、保存安定性に優れると考えられる。架橋が多すぎる場合は水不溶性有機化合物が含有しにくくなり、架橋がない場合はポリマーの膨潤により粒子間同士が融着しやすくなると考えられる。
架橋ポリマー粒子の製造方法としては、(i)着色剤と水不溶性ポリマーを用いて、着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子を得る工程Iと、工程Iで得られた着色剤を含
有するポリマー粒子と架橋剤とを反応させて、架橋ポリマー粒子を得る工程IIとにより製造する方法と、(ii)水不溶性ポリマーを架橋剤で架橋させて水不溶性架橋ポリマーを得る工程IIIと、工程IIIで得られた水不溶性架橋ポリマーと着色剤とを用いて、架橋ポリマー粒子を得る工程IVとにより製造する方法が挙げられる。これらの中では、保存安定性、製造し易さから、(i)による方法が好ましい。
【0070】
前記(i)による製造方法は、例えば、次の工程(1)〜(3)により行うことができる。
工程(1):水不溶性ポリマー、有機溶媒、着色剤、水、及び必要なら中和剤を含有する混合物を分散処理して、着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子の分散体を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた分散体から前記有機溶媒を除去して、着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体を得る工程
工程(3):工程(2)で得られた着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体と架橋剤とを反応させて、架橋ポリマー粒子を得る工程
【0071】
工程(1)では、まず、前記水不溶性ポリマーを有機溶媒に溶解させ、次に着色剤、水、及び必要に応じて中和剤、界面活性剤等を、得られた有機溶媒溶液に加えて混合し、水中油型の分散体を得る方法が好ましい。混合物中、着色剤は、5〜50重量%が好ましく、10〜40重量%が更に好ましく、有機溶媒は、10〜70重量%が好ましく、10〜50重量%が更に好ましく、水不溶性ポリマーは、2〜40重量%が好ましく、3〜20重量%が更に好ましく、水は、10〜70重量%が好ましく、20〜70重量%が更に好ましい。
水不溶性ポリマーが塩生成基を有する場合、中和剤を用いることが好ましい。中和剤を用いて中和する場合の中和度には、特に限定がない。通常、最終的に得られる水分散体の液性が中性、例えば、pHが4.5〜10であることが好ましい。前記水不溶性ポリマーの望まれる中和度により、pHを決めることもできる。中和剤としては、前記のものが挙げられる。また、水不溶性ポリマーを予め中和しておいてもよい。
有機溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶媒及びジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒が挙げられる。有機溶媒は、水100gに対する溶解量が20℃において、5g以上のものが好ましく、10g以上のものが更に好ましく、より具体的には5〜80gのものが好ましく、10〜50gのものが更に好ましい。特に、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが好ましい。
【0072】
工程(1)における混合物の分散方法に特に制限はない。本分散だけでポリマー粒子の平均粒径を所望の粒径となるまで微粒化することもできるが、好ましくは予備分散させた後、さらに剪断応力を加えて本分散を行い、ポリマー粒子の平均粒径を所望の粒径とするよう制御することが好ましい。工程(1)の分散は、5〜50℃が好ましく、10〜35℃が更に好ましく、分散時間は1〜30時間が好ましく、2〜25時間が更に好ましい。
混合物を予備分散させる際には、アンカー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができる。混合撹拌装置の中では、ウルトラディスパー〔浅田鉄鋼株式会社、商品名〕、エバラマイルダー〔株式会社荏原製作所、商品名〕、TKホモミクサー、TKパイプラインミクサー、TKホモジェッター、TKホモミックラインフロー、フィルミックス〔以上、プライミクス株式会社、商品名〕、クリアミックス〔エム・テクニック株式会社、商品名〕、ケイディーミル〔キネティック・ディスパージョン社、商品名〕等の高速攪拌混合装置が好ましい。
本分散の剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ビーズミル、ニーダー、エクストルーダ等の混練機、高圧ホモゲナイザー〔株式会社イズミフードマシナリ、商品名〕、ミニラボ8.3H型〔Rannie社、商品名〕に代表されるホモバルブ式の高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー〔Microfluidics 社、商品名〕、ナノマイザー〔ナノマイザー株式会社、商品名〕、アルティマイザー〔スギノマシン株式会社、商品名〕、ジーナスPY〔白水化学株式会社、商品名〕、DeBEE2000 〔日本ビーイーイー株式会社、商品名〕等のチャンバー式の高圧ホモジナイザー等が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。これらの中では、顔料を用いる場合に、顔料の小粒子径化の観点から、高圧ホモジナイザーが好ましい。
【0073】
工程(2)では、得られた分散体から、公知の方法で有機溶媒を留去して水系にすることで、着色剤を含有するポリマー粒子の水分散体を得ることができる。得られた該ポリマー粒子を含む水分散体中の有機溶媒は実質的に除去されることが好ましいが、本発明の目的を損なわない限り、残存していてもよく、必要により架橋後に再除去すればよい。残留有機溶媒の量は0.1重量%以下が好ましく、0.01重量%以下であることがより好ましい。
得られた着色剤を含有するポリマー粒子の水分散体は、着色剤を含有するポリマーの固体分が水を主溶媒とする中に分散しているものである。ここで、ポリマー粒子の形態は特に制限はなく、少なくとも着色剤とポリマーにより粒子が形成されていればよい。例えば、ポリマーに着色剤が内包された粒子形態、ポリマー中に着色剤が均一に分散された粒子形態、ポリマー粒子表面に着色剤が露出された粒子形態等が含まれる。
【0074】
工程(3)では、得られた着色剤を含有するポリマー粒子の水分散体と架橋剤とを反応させて、架橋ポリマー粒子を得る。用いる架橋剤により、触媒、溶媒、温度、時間を適宜決定することができる。光沢性、保存安定性、製造し易さの観点から、着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子と架橋剤とを混合して、より好ましくは着色剤含有ポリマー粒子の水分散体と架橋剤とを混合して、ポリマーを架橋させ、架橋ポリマー粒子を得る方法が好ましい。この方法により、記録紙上でのポリマー同士の融着性を維持しつつ、水系インク中でのポリマーの過度の膨潤が抑制される結果、光沢性を維持したまま保存安定性が向上すると考えられる。
架橋反応の時間は、好ましくは0.5〜10時間、更に好ましくは1〜5時間、架橋反応の温度は、好ましくは40〜95℃である。
架橋剤の使用量は、光沢性及び保存安定性の観点から、水不溶性ポリマー100重量部に対して、0.5重量部以上が好ましく、0.7重量部以上がより好ましく、0.85重量部以上が更に好ましく、1重量部以上が特に好ましく、1.5重量部以上が最も好ましい。また、その上限は、9.5重量部以下が好ましく、8重量部以下が好ましく、7.5重量部以下がより好ましく、7.0重量部以下が更に好ましく、6.5重量部以下が特に好ましく、6重量部以下が最も好ましい。これらの観点から、0.5〜9.5重量部が好ましく、0.5〜8重量部が好ましく、0.7〜8重量部がより好ましく、0.85〜7.5重量部が更に好ましく、1〜7.0重量部がより更に好ましく、1〜6.5重量部が特に好ましく、1.5〜6重量部が最も好ましい。
また、ポリマーの架橋においては、工程(1)で得られた着色剤を含有するポリマー粒子の分散体と架橋剤とを混合して行うこともできる。この場合は、該架橋工程で得られた架橋ポリマー粒子の分散体から、有機溶媒を除去する工程を前記工程(2)と同様に行うことにより、着色剤を含有する架橋ポリマー粒子の水分散体を得ることができる。
【0075】
架橋ポリマー粒子は、下記式(1)から求められる重量平均セグメント分子量が、光沢性及び保存安定性の観点から、好ましくは1100以上であり、より好ましくは1,400以上であり、更に好ましくは1,500以上であり、特に好ましくは1,600以上であり、最も好ましくは2,000以上である。また、その上限は、好ましくは20,000以下であり、更に好ましくは15,000以下であり、特に好ましくは10,000以下であり、最も好ましくは7,000以下である。これらの観点から、好ましくは1100〜20、000、更に好ましくは1,400〜20,000、更に好ましくは1,500〜15,000であり、特に好ましくは1,600〜10,000であり、最も好ましくは2,000〜7,000である。
重量平均セグメント分子量=[水不溶性ポリマーの重量平均分子量/(水不溶性ポリマー1モルと反応させる架橋剤のモル当量数+1)] (1)
ただし、[水不溶性ポリマー1モルと反応させる架橋剤のモル当量数/水不溶性ポリマー1モルが有する架橋剤と反応できる反応性基のモル数]>1の場合は、水不溶性ポリマー1モルと反応させる架橋剤のモル当量数は、水不溶性ポリマー1モルが有する架橋剤と反応できる反応性基のモル数とする。
【0076】
前記式(1)で表される重量平均セグメント分子量は、架橋ポリマーが架橋剤による架橋部分で分断されたと仮定した場合における、分断されたセグメントの重量平均分子量を意味する。このセグメントが小さいほど、架橋ポリマーが、架橋剤との反応による架橋部分を多く含有していることを意味する。したがって、重量平均セグメント分子量を小さくするには、架橋剤を多く使用して、架橋ポリマー中の架橋部分を増加させればよい。
ここで、「水不溶性ポリマー1モルと反応させる架橋剤のモル当量数」とは、水不溶性ポリマー1モルと反応させる架橋剤のモル数に架橋剤1分子中の反応性基の数を乗じたものである。また、前記式(1)のただし書きは、架橋剤量のモル当量数が、水不溶性ポリマーが有する反応性基のモル数よりも多い場合は、架橋する箇所は、反応性基のモル数とすることを意味する。
[水不溶性ポリマー1モルと反応させる架橋剤のモル当量数/水不溶性ポリマー1モルが有する架橋剤と反応できる反応性基のモル数]の比は、保存安定性の観点から、好ましくは0.01〜0.8、更に好ましくは0.02〜0.6であり、特に好ましくは0.03〜0.5である。「水不溶性ポリマー1モルと反応させる架橋剤のモル当量数」が0の場合は、架橋剤が存在しない場合であり、重量平均セグメント分子量と水不溶性ポリマーの重量平均分子量は等しくなる。「水不溶性ポリマー1モルと反応させる架橋剤のモル当量数」は、保存安定性及び反応性の観点から、好ましくは2〜100であり、更に好ましくは4〜90であり、特に好ましくは5〜80である。「水不溶性ポリマー1モルが有する架橋剤と反応できる反応性基のモル数」は、保存安定性及び反応性の観点から、好ましくは10〜1000であり、更に好ましくは20〜800であり、特に好ましくは30〜500である。
【0077】
架橋ポリマーの重量平均分子量は、光沢性及び保存安定性の観点から、好ましくは12万以上であり、より好ましくは15万以上であり、更に好ましくは20万以上である。また、その上限は、好ましくは250万以下であり、より好ましくは220万以下であり、更に好ましくは180万以下であり、特に好ましくは160万以下である。これらの観点から、好ましくは12万〜250万であり、より好ましくは15万〜220万であり、更に好ましくは20万〜180万であり、特に好ましくは20万〜160万である。架橋剤によりポリマー間同士が架橋されるため、架橋ポリマーの重量平均分子量は、水不溶性ポリマーの重量平均分子量より大きくなる。架橋ポリマーの重量平均分子量は、実施例で示す測定方法により求めることができる。
水不溶性架橋ポリマーと水不溶性ポリマーの重量平均分子量比[水不溶性架橋ポリマーの重量平均分子量/水不溶性ポリマーの重量平均分子量]は、光沢性及び保存安定性の観点から、2〜40が好ましく、2.5〜40が更に好ましく、2.5〜30が特に好ましい。
架橋ポリマーの重量平均分子量を大きくする方法としては、(1)重量平均分子量がより大きい水不溶性ポリマーを用いる、(2)架橋剤量を増やして架橋させ、前記重量平均セグメント分子量を小さくする等の方法が挙げられる。
水不溶性架橋ポリマーのゲル化度は、光沢性の観点から、低い方が好ましく、水不溶性架橋ポリマーが、THF(テトラヒドロフラン)に実質的に溶解して、目視で透明(25℃)であることが好ましい。
【0078】
(架橋ポリマー粒子と水不溶性有機化合物とを含む水分散体)
本発明のインクジェット記録用水分散体は、架橋ポリマー粒子と水不溶性有機化合物とを含む水分散体である。
本発明のインクジェット記録用水分散体は、前記工程(1)〜(3)を含み、前記工程(1)〜(3)の少なくともいずれかの工程中又は工程後に、水不溶性有機化合物を存在させることにより、得ることができる。
好ましくは、保存安定性の観点から、工程(2)で得られる着色剤を含有するポリマー粒子の水分散体と水不溶性有機化合物とを混合するか、又は工程(3)で得られる架橋ポリマー粒子の水分散体と水不溶性有機化合物とを混合して得られるものである。
【0079】
工程(2)で得られる着色剤を含有するポリマー粒子の水分散体と水不溶性有機化合物との混合割合は、光沢性及び保存安定性の観点から、前記ポリマー粒子の水分散体の固形分(着色剤とポリマー)100重量部に対して、水不溶性有機化合物は、1〜100重量部であることが好ましく、3〜50重量部がより好ましく、3〜30重量部が更に好ましい。
工程(3)で得られる架橋ポリマー粒子の水分散体と水不溶性有機化合物との混合割合は、光沢性及び保存安定性の観点から、架橋ポリマー粒子の水分散体の固形分(着色剤と架橋ポリマー)100重量部に対して、水不溶性有機化合物は、1〜100重量部であることが好ましく、3〜50重量部がより好ましく、3〜30重量部が更に好ましい。
また、水不溶性有機化合物の量は、光沢性及び保存安定性の観点から、架橋ポリマー100重量部に対して、5〜300重量部であることが好ましく、15〜150重量部がより好ましく、20〜200重量部が更に好ましい、30〜95重量部が特に好ましい。
【0080】
着色剤を含有するポリマー粒子の水分散体と水不溶性有機化合物との混合方法、及び架橋ポリマー粒子の水分散体と水不溶性有機化合物との混合方法は、該水分散体に水不溶性有機化合物を添加してもよく、その逆であってもよい。混合する温度は、5〜50℃程度が好ましい。混合した後、前記の分散方法により、再分散することも好ましい。
本発明の水分散体は、水不溶性有機化合物の少なくともその一部が架橋ポリマー粒子に含有されており、水不溶性有機化合物と着色剤とを含有する水不溶性架橋ポリマー粒子の水分散体となっている。
本発明の水分散体中の架橋ポリマー粒子の含有量は、光沢性及び保存安定性の観点から、5〜30重量%が好ましく、10〜25重量%が更に好ましい。水不溶性有機化合物の含有量は、光沢性及び保存安定性の観点から、0.1〜5重量%が好ましく、0.2〜4重量%が更に好ましく、0.3〜3重量%が特に好ましい。水の含有量は、50〜80重量%が好ましく、60〜80重量%が更に好ましい。
【0081】
本発明の水分散体はそのまま水系インクとして用いてもよいが、インクジェット記録用水系インクに通常用いられる湿潤剤、浸透剤、分散剤、粘度調整剤、消泡剤、防黴剤、防錆剤等を添加してもよい。
本発明の水系インク中の架橋ポリマー粒子の含有量は、光沢性及び保存安定性の観点から、1〜15重量%が好ましく、2〜10重量%が更に好ましい。水系インク中の水不溶性有機化合物の含有量は、光沢性及び保存安定性の観点から、0.1〜5重量%が好ましく、0.2〜4重量%が更に好ましく、0.3〜3重量%が特に好ましい。水の含有量は、50〜80重量%が好ましく、60〜80重量%が更に好ましい。
得られる水分散体及び水系インクにおける架橋ポリマー粒子の平均粒径は、プリンターのノズルの目詰まり防止及び保存安定性の観点から、好ましくは0.01〜0.5μm、より好ましくは0.03〜0.3μm、特に好ましくは0.05〜0.2μmである。なお、平均粒径は、実施例記載の方法により測定する。
なお、架橋ポリマー粒子に水不溶性有機化合物が更に含有されても、架橋ポリマー粒子の平均粒径は前記と同じ範囲であることが好ましい。
【0082】
本発明のインクジェット記録用水系インクは、専用紙に印字したときに高い光沢性の印字物を得ることができる。専用紙としては、60°光沢度が好ましくは10〜45の空隙型光沢媒体を有するインクジェット写真用紙が挙げられる。ここで光沢度は、実施例記載の方法により測定される値である。このような写真用紙は市販されており、好適例としてセイコーエプソン株式会社製、商品名:KA450PSK等が挙げられる。
本発明の水系インクを適用するインクジェットの方式は制限されないが、特にピエゾ方式のインクジェットプリンターに好適である。
【実施例】
【0083】
以下の製造例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「重量部」及び「重量%」である。
なお、水不溶性ポリマー及び水不溶性架橋ポリマーの重量平均分子量は、下記の方法により測定した。
(i)水不溶性ポリマーの重量平均分子量(Mw)
溶媒として、60mmol/Lのリン酸と50mmol/Lのリチウムブロマイドを含有するN,N−ジメチルホルムアミドを用いたゲルクロマトグラフィー法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定した。使用カラム:東ソー株式会社製(TSK-GEL、α-M×2本)、本体:東ソー株式会社製(HLC−8120GPC)、流速:1mL/minを用いた。
(ii)水不溶性架橋ポリマーの重量平均分子量(Mw)
実施例及び比較例において、顔料を用いないこと以外は同様にして、各成分を混合、攪拌(30分間、25℃)し、得られた混合液から有機溶媒を除去してエマルジョンを得た。
この水不溶性ポリマーを含むエマルジョンに対して、実施例及び比較例と同じ割合で架橋剤を添加し、同じ条件下で反応させて、水不溶性架橋ポリマーを含むエマルジョンを得た。このエマルジョンを凍結乾燥し、上記(i)の水不溶性ポリマーと同じ条件で重量平均分子量を測定した。
【0084】
(水不溶性ポリマーAの製造例1)
反応容器内に、メチルエチルケトン20部、重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)0.12部、及び表1に示す各モノマーの200部の10%を入れて混合し、十分に窒素ガス置換を行い、混合溶液を得た。
一方、滴下ロートに、表1に示すモノマーの残りの90%を仕込み、前記重合連鎖移動剤1.08部、メチルエチルケトン60部、及びラジカル重合開始剤(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル))1.2部を入れて混合し、十分に窒素ガス置換を行い、混合溶液を得た。
窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら65℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を3時間かけて徐々に滴下した。滴下終了から65℃で2時間経過後、前記ラジカル重合開始剤0.3部をメチルエチルケトン5部に溶解した溶液を加え、更に65℃で2時間、70℃で2時間熟成させ、さらにメチルエチルケトン115部加え、30分間攪拌し、固形分含有量(有効分含有量)約50%のポリマーAの溶液を得た。この水不溶性ポリマーAの重量平均分子量(Mw)は36,000であった。
【0085】
(水不溶性ポリマーB〜Gの製造例2〜7)
製造例1において、使用するモノマー比率を表1に示すように変え、反応容器内と滴下ロートに入れる重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)の添加量を表2に示すように変えた以外は、製造例1と同様にして反応を行い水不溶性ポリマーB〜Gの溶液を得た。得られた水不溶性ポリマーB〜Gの重量平均分子量(Mw)の測定結果を表2に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
なお、表1に示す化合物の詳細は、以下のとおりである。
(b)スチレンマクロマー
東亜合成株式会社製、商品名:AS−6S、数平均分子量:6000、重合性官能基:メタクロイルオキシ基
(d)M−90G
ポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシド平均付加モル数=9、末端メチル基):新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステルM−90G
(e)PP−800
ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(プロピレンオキシド平均付加モル数=13、末端水酸基):日本油脂株式会社製、商品名:ブレンマーPP−800
【0088】
【表2】

【0089】
(水不溶性有機化合物Aの合成例1)
反応容器内に、無水フタル酸100部及び2−エチルヘキシルアルコールのエチレンオキサイド4mol付加物(日本乳化剤株式会社製、商品名:ニューコール1004)400部、テトライソプロポキシチタネート0.5部を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行った後、220℃に昇温し、エステル化反応を行った。さらに同温度にて減圧反応を行うことでエステル化反応を完結させ、余分なアルコールをトッピングにより除去することでフタル酸ジエステル系の水不溶性有機化合物Aを得た。
水不溶性有機化合物Aは、フタル酸を基本構造に、両末端に2−エチルヘキシル基のエチレンオキサイドが4モル付加物を有している。フタル酸のLogP値は0.57であり、エチレンオキサイドのLogP値は−0.27、2−エチルヘキシル基のLogP値は3.91であるので、水不溶性有機化合物AのLogP値は6.23(=0.57−0.27×8+3.91×2)と計算される。
【0090】
(水不溶性有機化合物Bの合成例2)
反応容器内に、アジピン酸70部及び2−エチルヘキシルアルコールのエチレンオキサイド4mol、プロピレンオキサイド2mol付加物(日本乳化剤株式会社製)450部、テトライソプロポキシチタネート0.5部を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行った後、230℃に昇温し,エステル化反応を行った。さらに同温度にて減圧反応を行うことでエステル化反応を完結させ、余分なアルコールをトッピングにより除去することでアジピン酸ジエステル系の水不溶性有機化合物Bを得た。
水不溶性有機化合物Bは、アジピン酸を基本構造に、両末端に2−エチルヘキシルアルコールのエチレンオキサイド4モル、プロピレンオキサイド2モル付加物を有している。アジピン酸のLogP値は0.29であり、エチレンオキサイドのLogP値は−0.27、プロピレンオキサイドのLogP値は0.14、2−エチルヘキシル基のLogP値は3.91であるので、水不溶性有機化合物BのLogP値は6.51(=0.29−0.27×8+0.14×4+3.91×2)と計算される。
【0091】
実施例1
製造例1で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られたポリマーA 200部をメチルエチルケトン400部に溶かし、その中に中和剤(5N水酸化ナトリウム水溶液)16部(中和度60%)及びイオン交換水1600部加えてポリマーの塩生成基を中和し、更にキナクリドン顔料(C.I.ピグメント・バイオレット19、クラリアントジャパン株式会社製、商品名:Hostaperm Red E5B02)680部を加え、ビーズミル型分散機UAM05型(寿工業株式会社製)ジルコニアビーズ(粒径:50μm)を用いて20℃で2時間混合分散した。得られた分散液をマイクロフルイダイザー(Microfluidics 社製、商品名)で200MPaの圧力でさらに10パス分散処理した。
得られた分散液に、イオン交換水250部を加え、攪拌した後、減圧下で60℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去し、5μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士写真フイルム株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ(テルモ株式会社製)で濾過し、粗大粒子を除去することにより、固形分濃度が18%の顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体を得た。
次にこの分散体80部(うち水不溶性ポリマー3.3部)に対して架橋剤としてデナコールEX−810(分子量:216、ナガセケムテックス株式会社製、エポキシ当量113)0.11部を加え、イオン交換水を0.80部添加して80℃で3時間攪拌して水不溶性架橋ポリマー粒子の水分散体を得た。このときの水不溶性ポリマー100部に対する架橋剤の使用量は3.3部、重量平均セグメント分子量は3100、架橋ポリマーの重量平均分子量(Mw)は30万であった。
【0092】
また、前記式(1)から求めた架橋ポリマーの重量平均セグメント分子量は、
[水不溶性ポリマーの重量平均分子量/(水不溶性ポリマー1モルと反応させる架橋剤のモル当量数+1)]=[36000/(10.6+1)]=3100 であった。
この場合、分散体80部(うち水不溶性ポリマー3.3部)に対して、架橋剤としてデナコールEX−810(エポキシ当量113)0.11部であるので、水不溶性ポリマー1モルと反応させる架橋剤のモル当量数は、
(0.11/113)/(3.3/水不溶性ポリマーの重量平均分子量)=10.6
ここで、デナコールEX−810は、カルボキシ基、水酸基と反応するため、水不溶性ポリマー1モルが有する架橋剤と反応できる反応性基のモル数は、水不溶性ポリマー1モルが有するメタクリル酸(分子量:86)、PP−800(分子量:840)の合計モル数である。
36000×0.12/86+36000×0.2/840=58.8モル
従って、[水不溶性ポリマー1モルと反応させる架橋剤のモル当量数/水不溶性ポリマー1モルが有する架橋剤と反応できる反応性基のモル数]=10.6/58.8=0.18となり、前記式(1)のただし書きには、該当しない。
【0093】
得られた架橋ポリマー粒子の水分散体40部、及び合成例1で得られた水不溶性有機化合物A 1部を混合、攪拌して水不溶性有機化合物をポリマー粒子中に含有させた。この混合液に、グリセリン10部、トリエチレングリコールモノブチルエーテル7部、サーフィノール465(日信化学工業株式会社製)1部、プロキセルXL2(アビシア株式会社製)0.3部、トリエチレンアミン1.0部、及びイオン交換水39.7部を混合し、得られた混合液を1.2μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士写真フイルム株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジで濾過し、粗大粒子を除去することにより水系インクを得た。
得られたインクの光沢性と保存安定性を下記方法により評価した。
【0094】
実施例2
実施例1で得られた固形分濃度が18%の顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体80部に対して、前記デナコールEX−810 0.21部を加える以外は、実施例1と同様にして架橋ポリマー粒子の水分散体を得た。このときの水不溶性ポリマー100部に対する架橋剤の使用量は6.3部であった。以下、実施例1と同様にしてインクを調製し、評価した。
【0095】
実施例3
実施例1において、製造例2で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られたポリマーB 200部を用いる以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度が18%の顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体を得た。
この分散体80部(うち水不溶性ポリマー3.3部)に対して前記デナコールEX−810 0.077部を加え、イオン交換水を0.80部添加して80℃で3時間攪拌して架橋ポリマー粒子の水分散体を得た。このときの水不溶性ポリマー100部に対する架橋剤の使用量は2.3部であった。
得られた架橋ポリマー粒子の水分散体40部、水不溶性有機化合物としてフタル酸オクチルベンジル(OBzP)(LogP値=6.79)0.8部を混合、攪拌して水不溶性有機化合物を架橋ポリマー粒子中に含有させた。この混合液にイオン交換水39.9部とする以外は、実施例1と同様に処理して水系インクを調製し、評価した。
実施例4
実施例3で得られた固形分濃度が18%の顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体80部に対して、前記デナコールEX−810 0.026部を加える以外は、実施例3と同様にして架橋ポリマー粒子の水分散体を得た。このときの水不溶性ポリマー100部に対する架橋剤の使用量は0.8部であった。以下、実施例3と同様にしてインクを調製し、評価した。
【0096】
実施例5
実施例1において、製造例3で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られたポリマーC 200部を用いる以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度が18%の顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体を得た。
この分散体80部(うち水不溶性ポリマー3.3部)に対して前記デナコールEX−810 0.026部を加え、イオン交換水を0.80部添加して80℃で3時間攪拌して架橋ポリマー粒子の水分散体を得た。このときの水不溶性ポリマー100部に対する架橋剤の使用量は0.8部であった。
得られた架橋ポリマー粒子の水分散体40部、OBzP0.8部を混合、攪拌して水不溶性有機化合物をポリマー粒子中に含有させた。この混合液を実施例3と同様に処理して水系インクを調製し、評価した。
実施例6
実施例5で得られた水不溶性ポリマー粒子の水分散体80部に対して、前記デナコールEX−810 0.129部を加える以外は、実施例5と同様にして架橋ポリマー粒子の水分散体を得た。このときの水不溶性ポリマー100部に対する架橋剤の使用量は3.9部であった。以下、実施例3と同様にしてインクを調製し、評価した。
【0097】
実施例7
実施例1において、製造例4で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られたポリマーD 200部を用いる以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度が18%の顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体を得た。
この分散体80部(うち水不溶性ポリマー3.3部)に対して前記デナコールEX−810 0.13部を加え、イオン交換水を0.80部添加して80℃で3時間攪拌して架橋ポリマー粒子の水分散体を得た。このときの水不溶性ポリマー100部に対する架橋剤の使用量は3.9部であった。
得られた架橋ポリマー粒子の水分散体40部、及び合成例2で得られた水不溶性有機化合物B1.5部を混合、攪拌して水不溶性有機化合物をポリマー粒子中に含有させた。この混合液にイオン交換水39.2部とする以外は、実施例1と同様に処理して実施例1と同様に処理して水系インクを調製し、評価した。
実施例8
実施例7で得られた固形分濃度が18%の顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体80部に対して、前記デナコールEX−810 0.18部を加える以外は、実施例7と同様にして架橋ポリマー粒子の水分散体を得た。このときの水不溶性ポリマー100部に対する架橋剤の使用量は5.5部であった。以下、実施例7と同様にしてインクを調製し、評価した。
【0098】
実施例9
実施例1において、製造例5で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られたポリマーE 200部を用いる以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度が18%の顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体を得た。
この分散体80部(うち水不溶性ポリマー3.3部)に対して前記デナコールEX−810 0.063部を加え、イオン交換水を0.80部添加して80℃で3時間攪拌して架橋ポリマー粒子の水分散体を得た。このときの水不溶性ポリマー100部に対する架橋剤の使用量は1.9部であった。
得られた架橋ポリマー粒子の水分散体40部、及び水不溶性有機化合物としてセバシン酸ジ−n−ブチル(DBS)(LogP値=6.30)0.8部を混合、攪拌して水不溶性有機化合物をポリマー粒子中に含有させた。この混合液にイオン交換水39.9部とする以外は、実施例1と同様に処理して水系インクを調製し、評価した。
実施例10
実施例9で得られた水不溶性ポリマー粒子の水分散体80部に対して、前記デナコールEX−810 0.13部を加える以外は、実施例9と同様にして架橋ポリマー粒子の水分散体を得た。このときの水不溶性ポリマー100部に対する架橋剤の使用量は3.9部であった。以下、実施例9と同様にしてインクを調製し、評価した。
実施例11
実施例9で得られた水不溶性ポリマー粒子の水分散体80部に対して、前記デナコールEX−810 0.15部を加える以外は、実施例9と同様にして架橋ポリマー粒子の水分散体を得た。このときの水不溶性ポリマー100部に対する架橋剤の使用量は4.5部であった。以下、実施例9と同様にしてインクを調製し、評価した。
【0099】
実施例12
実施例1において、製造例6で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られたポリマーF 200部を用いる以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度が18%の顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体を得た。
この分散体80部(うち水不溶性ポリマー3.3部)に対して前記デナコールEX−810 0.12部を加え、イオン交換水を0.80部添加して80℃で3時間攪拌して架橋ポリマー粒子の水分散体を得た。このときの水不溶性ポリマー100部に対する架橋剤の使用量は3.6部であった。以下、実施例9と同様にしてインクを調製し、評価した。
【0100】
実施例13
実施例1において、製造例7で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られたポリマーG 200部を用いる以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度が18%の顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体を得た。
この分散体80部(うち水不溶性ポリマー3.3部)に対して前記デナコールEX−810 0.069部を加え、イオン交換水を0.80部添加して80℃で3時間攪拌して架橋ポリマー粒子の水分散体を得た。このときの水不溶性ポリマー100部に対する架橋剤の使用量は2.1部であった。以下、実施例9と同様にしてインクを調製し、評価した。
実施例14
実施例1で得られた水不溶性ポリマー粒子の水分散体80部に対して、前記デナコールEX−810 0.31部を加える以外は、実施例1と同様にして水不溶性架橋ポリマー粒子の水分散体を得た。このときの水不溶性ポリマー100部に対する架橋剤の使用量は9.5部であった。以下、実施例1と同様にしてインクを調製し、評価した結果を表3に示す。
比較例1
実施例3において、架橋剤を使用しない以外は、実施例3と同様にしてインクを調製し、評価した。
比較例2
実施例10において、水不溶性有機化合物を使用しない以外は、実施例10と同様にしてインクを調製し、評価した。
【0101】
次に、実施例及び比較例で得られた水系インクの光沢度、平均粒径及び保存安定性を、以下の方法より評価した。その結果を表3に示す。
(1)光沢度
セイコーエプソン株式会社製プリンター(型番:EM−930C、ピエゾ方式)を用い、市販の専用紙(写真用紙<光沢>セイコーエプソン株式会社製、商品名:KA450PSK)にベタ印字し〔印字条件=用紙種類:フォトプリント紙、モード設定:フォト〕、25℃で24時間放置後、20°の光沢度を光沢計(日本電色工業株式会社製、商品名:HANDY GLOSSMETER PG-1)で5回測定し、その平均値を求めた。数値が大きい方が、光沢度が高い。
(2)平均粒径
大塚電子株式会社のレーザー粒子解析システムELS−8000(キュムラント解析)で測定した。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力した。測定濃度は、通常5×10-3重量%程度で行った。
(3)保存安定性
表2記載のインクをガラス製密閉容器に充填し、70℃、1週間保存後の平均粒径を粒径測定器(大塚電子株式会社製、商品名:ELS−8000)を用いて前記条件で測定し、下記式より粒径増加率を求めた(数値が100%に近い方が、保存安定性が良い)。
粒径増加率=[保存後の平均粒径(70℃、1週間保存後の粒径)/保存前の平均粒径(保存前の粒径)]×100
測定結果を、下記基準により評価した。
○:粒径増加率が200%未満
△:粒径増加率が200%以上250%未満
×:粒径増加率が250%以上
【0102】
【表3】

【0103】
表3から、実施例1〜14の水系インクは、比較例1〜2の水系インクに比べて、光沢性と保存安定性、及びそのバランスが優れていることが分かる。また、実施例1〜14の水系インクを用いてインクジェット記録方式により印字した印字物は、充分な印字濃度を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明のインクジェット記録用水分散体や水不溶性架橋ポリマー粒子を含有する水系インクは、保存安定性に優れると共に、専用紙に印字した際に、光沢性の優れた印字物を与えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤を含有する水不溶性架橋ポリマー粒子と水不溶性有機化合物とを含む、インクジェット記録用水分散体であって、該水不溶性架橋ポリマーが、水不溶性ポリマーを架橋剤で架橋させたポリマーである、インクジェット記録用水分散体。
【請求項2】
着色剤を含有する水不溶性架橋ポリマー粒子の水不溶性架橋ポリマーが、水不溶性ポリマー100重量部に対して架橋剤を0.5〜9.5重量部使用して架橋させたポリマーである、請求項1に記載のインクジェット記録用水分散体。
【請求項3】
着色剤を含有する水不溶性架橋ポリマー粒子の水不溶性架橋ポリマーの下記式(1)から求められる重量平均セグメント分子量が1,400〜20,000である、インクジェット記録用水分散体。
重量平均セグメント分子量=[水不溶性ポリマーの重量平均分子量/(水不溶性ポリマー1モルと反応させる架橋剤のモル当量数+1)] (1)
(ただし、[水不溶性ポリマー1モルと反応させる架橋剤のモル当量数/水不溶性ポリマー1モルが有する架橋剤と反応できる反応性基のモル数]>1の場合は、水不溶性ポリマー1モルと反応させる架橋剤のモル当量数は、水不溶性ポリマー1モルが有する架橋剤と反応できる反応性基のモル数とする。)
【請求項4】
着色剤を含有する水不溶性架橋ポリマー粒子が、着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子と架橋剤とを混合して、該ポリマーを架橋させて得られるポリマー粒子である、請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録用水分散体。
【請求項5】
水不溶性架橋ポリマーの重量平均分子量が12万〜250万である、請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録用水分散体。
【請求項6】
架橋剤が、分子中に2つ以上のエポキシ基を有する化合物である、請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット記録用水分散体。
【請求項7】
水不溶性ポリマーが、(a)塩生成基含有モノマー、(b)マクロマー及び/又は(c)疎水性モノマーを含むモノマー混合物を共重合させてなる水不溶性ビニルポリマーである、請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェット記録用水分散体。
【請求項8】
水不溶性有機化合物が、下記一般式(2)で表される化合物である、請求項1〜7のいずれかに記載のインクジェット記録用水分散体。
【化1】

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜22の炭化水素基を示し、R3は炭素数1〜18の2価の炭化水素基を示す。R1及びR2は同一でも異なっていてもよいが、R1及びR2が共に水素原子である場合を除く。R1〜R3は置換基を有していてもよい。m及びnは、それぞれ独立に0〜30の平均付加モル数を示し、AOはアルカンジイルオキシ基を示す。)
【請求項9】
水不溶性有機化合物の量が、着色剤を含有する架橋ポリマー粒子を構成する架橋ポリマー100重量部に対して、5〜300重量部である、請求項1〜8のいずれかに記載のインクジェット記録用水分散体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のインクジェット記録用水分散体を含有するインクジェット記録用水系インク。
【請求項11】
水不溶性有機化合物と共に用いられる、着色剤を含有する水不溶性架橋ポリマー粒子であって、該水不溶性架橋ポリマーが、水不溶性ポリマーを架橋剤で架橋させたポリマーである、インクジェット記録用水不溶性架橋ポリマー粒子。
【請求項12】
水不溶性ポリマー100重量部に対して架橋剤を0.5〜9.5重量部使用して架橋させたポリマーである、請求項11に記載のインクジェット記録用水不溶性架橋ポリマー粒子。
【請求項13】
水不溶性架橋ポリマーが下記式(1)から求められる重量平均セグメント分子量1,400〜20,000を有する、請求項11又は12記載のインクジェット記録用水不溶性架橋ポリマー粒子。
重量平均セグメント分子量=[水不溶性ポリマーの重量平均分子量/(水不溶性ポリマー1モルと反応させる架橋剤のモル当量数+1)] (1)
(ただし、[水不溶性ポリマー1モルと反応させる架橋剤のモル当量数/水不溶性ポリマー1モルが有する架橋剤と反応できる反応性基のモル数]>1の場合は、水不溶性ポリマー1モルと反応させる架橋剤のモル当量数は、水不溶性ポリマー1モルが有する架橋剤と反応できる反応性基のモル数とする。)

【公開番号】特開2007−314784(P2007−314784A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118606(P2007−118606)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】