説明

インクジェット記録用紙の包装体

【課題】保存中のインクジェット記録用紙の白地変化(黄変)が防止されたインクジェット記録用紙の包装体を提供する。
【解決手段】インクジェット記録用紙の最外のインク受容層面を保護するための保護シートを有するインクジェット記録用紙の包装体であって、該保護シートは該最外のインク受容層面と接する面のみ耐水性加工され、かつ、該耐水加工面のJIS−K−7129に規定される、40℃90%RHにおける透湿度が10〜40g/m2・24hrであることを特徴とするインクジェット記録用紙の包装体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用紙の包装体に関し、特に高湿環境保管した場合であっても最外のインクジェット記録用紙の表面の白地が変色することによる品質低下を抑えたインクジェット記録用紙の包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状のインクジェット記録用紙は、一般に、支持体上にインク受容層を設けた複数枚のインクジェット記録用紙を重ね合わせ、これらをフィルム樹脂袋や紙袋もしくは紙製箱又はプラスチック製の容器などに封入され、更にこれらの包装体はダンボールなどの外装材で包装されて出荷される。
【0003】
特に高画質なインクジェット記録用紙においては、製造過程、物流時、更には店頭に置かれた際に、表面の擦れや押されなどの種々の要因による物理的な故障を軽減する目的で、積層されたインクジェット記録用紙の最外の該記録用紙の表面に保護シートなどが用いられるのが一般的である。
【0004】
従来、保護シートとしては、比較的厚い(たとえば150〜800μm)紙が一般に用いられているが、インクジェット記録用紙の表面にはインクをすばやく吸収し色材を速やかに固着させやすいように種々の添加剤が用いられており、インクジェット記録用紙が、高湿環境に保管されると、最外のインクジェット記録用紙の表面に徐々に好ましくない現象が生じることが判明した。
【0005】
これは、最外のインクジェット記録用紙表面の白さが変化する現象である。インク受容層に含有されている染料定着剤などの種々の化合物が、保護シートを透過して入り込む外気の主に湿気と反応した結果として着色を生じ、白地変化が発生すると推定されている。
【0006】
保護シートのpHの影響を防止するため、最外のインク受容層と接する面が耐水性加工された紙製保護シート、またはプラスチック樹脂からなる保護シートを用いることは(例えば、特許文献1参照。)知られている。これにより、紙基材のインクジェット記録用紙の包装体が記載されている(例えば、特許文献1参照。)。これにより、紙基体のpHの影響を受けないとしているが、保護シートを使わない場合の記録用紙の白地変化が耐水加工しない紙製保護シートを接触させた場合より大きいことから、外気の湿気の影響が紙基体のpHの影響より強いと言える。
【0007】
表面粗さを規定した耐水性加工された保護シートを、複数枚のシート状のインクジェット記録用紙のインク受容層面に接触させる方法が開示されて(例えば、特許文献2参照。)いる。しかし、これは記録用紙への表面粗さの転写を意識したものである。
【0008】
上記、いずれの方法でも、耐水性加工の保護シートを用いた包装体では、加工適正上、片面耐水性加工の採用が望ましいが、片面耐水性加工の保護シートは、湿度変化によりカールが発生しやすく、カールにより記録用紙との密着が低下して外気の遮蔽効果がえられずにインクジェット記録用紙の白地変化を生ずることがある。
【特許文献1】特開2002−255235号公報 (特許請求の範囲、実施例)
【特許文献2】特開2005−1706号公報 (特許請求の範囲、実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、保存中のインクジェット記録用紙の白地変化が防止されたインクジェット記録用紙の包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0011】
1.インクジェット記録用紙の最外のインク受容層面を保護するための保護シートを有するインクジェット記録用紙の包装体であって、該保護シートは該最外のインク受容層面と接する面のみ耐水性加工され、かつ、該耐水加工面のJIS−K−7129に規定される、40℃90%RHにおける透湿度が10〜40g/m2・24hrであることを特徴とするインクジェット記録用紙の包装体。
【0012】
2.前記保護シートの耐水加工面が厚み10〜50μmの低密度ポリエチレンであることを特徴とする前記1に記載のインクジェット記録用紙の包装体。
【0013】
3.前記インクジェット記録用紙の記録面が、CIEのL***のa*が0〜4、b*が−4.5〜−11の範囲にあることを特徴とする前記1又は2に記載のインクジェット記録用紙の包装体。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、インクジェット記録用紙の包装体に耐水加工された紙製保護シートを用い、インクジェット記録用紙の記録面を外気、特に湿気から遮断することにより、保存中のインクジェット記録用紙の白地変化(黄変)が防止されたインクジェット記録用紙の包装体を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を更に詳しく説明する。インクジェット記録用紙の保存中の白地変化の原因である湿気透過を防止するためには、耐水加工の保護シートが望ましい。しかし、インクジェット記録用紙の製造工程において、積層された記録用紙の分離し易さより、片面耐水加工の保護シートが望ましい。更に、白地変化防止のため耐水加工の透湿度は少ない方が良いが、片面耐水加工の場合、透湿度が低い耐水加工は湿度変化によりカールが生じ易く、かえって密着性が悪化し、白地変化が大きくなる。本発明の包装体は、片面耐水加工された保護シートを用いながら、カールが防止されたインクジェット記録用紙の包装体である。
【0016】
本発明の保護シートは、紙基材の片面を耐水加工されたものである。保護シートの基材である紙は天然パルプを主体にしたものである。紙の厚さは概ね150〜1000μm、好ましくは200〜600μmである。紙はコート紙や再生紙であってもよい。
【0017】
紙の片面を耐水加工処理する方法としては耐水性樹脂の塗工や耐水性樹脂フィルムのラミネート処理により得ることが出来る。
【0018】
耐水加工処理に用いられる耐水性樹脂としては、LDPE(低密度ポリエチレン)、LDPEとMDPE(中密度ポリエチレン)又はHDPE(高密度ポリエチレン)を混ぜたものやHDPEを使う場合もあるが、透湿度の面で低密度ポリエチレンが好ましい。
【0019】
尚、LDPEは、石油(ナフサ)からエチレンを分離し、高圧をかけて重合するので高圧ポリエチレンともいう。密度は0.90〜0.925。酸素ガス、二酸化炭素などの無機ガスはよく通すが、防湿性は比較的よい。耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、ヒートシール性、耐衝撃性、耐寒性に優れるが、耐油性、耐有機溶剤性、耐熱性はよくない。透明性ではあるがわずかに白っぽく、手で引っ張ると伸びやすい。
【0020】
MDPE、HDPEの原料は低密度ポリエチレンと同じだが、触媒が異なり、中圧・低圧で重合されるので中・低圧ポリエチレンともいう。密度は0.925〜0.940(中密度)0.940〜0.965(高密度)。ヒートシールはLDPEより高温を必要とするが、その分、耐熱性と腰の強さをもつ。一般にはLDPEよりさらさらとした感触で、白っぽい。ガス遮断性、耐有機溶剤性には劣るが、耐水性、耐アルカリ性、耐酸性、耐衝撃性、耐寒性には優れている。
【0021】
耐水加工処理された本発明の保護シートは、JIS−K−7129に規定される、40℃90%RHにおける透湿度が10〜40g/m2・24hrである。40℃90%RHにおける透湿度が10g/m2・24hrより小さいと、高湿環境において湿気の透過が少ないため、保護シートをゴムバンド等で密着させた場合には白地変化は少ないが、通常の包装体においては、湿度変化によるカールが大きいため密着の低下によりかえって白地変化が大きくなる。
【0022】
一方、40℃90%RHにおける透湿度が40g/m2・24hrより大きいと湿気通過が多いため湿度変化によるカールは小さいが、白地変化は大きい。
【0023】
これらの耐水性樹脂は好ましくは塗工法により紙基材上に設けられるが、その際、紙基材表面をコロナ処理やプラズマ処理で活性化することが接着性の点で好ましい。
【0024】
耐水加工された表面は、帯電防止や撥水処理などの後処理を行うことが出来、例えば、第4級アンモニウム系の活性剤やポリマー、各種の親水性ポリマー、含フッ素化合物、ワックス類、各種のシリコンオイルなどにより加工されることも出来るが、インク受容層表面にインクジェット記録特性に悪影響をもたらさない範囲で行われる。
【0025】
次に、本発明の態様を図を用いて説明する。図1は本発明のインクジェット記録用紙の包装体に用いる保護シートの断面図である。保護シート1は、紙基材3の片面に低密度ポリエチレン層2を有する。
【0026】
図2に本発明のインクジェット記録用紙の包装体の断面図を示す。インクジェット記録用紙5はインク受容層面を矢印の方向にして積層されている。そして、最外のインク受容層面と接する面が保護シート1の耐水性加工された面と接していて、この形で、包装袋4に封入されている。この際包装袋4は、フィルム樹脂袋や紙袋もしくは紙製又はプラスチック製の箱などが用いられる。
【0027】
本発明の包装体を作製する場合、まず図3(a)に示すように、大判シートに加工したインクジェット記録用紙及び保護シートを必要枚数積層したものを何段か積み重ね(図3では倍巾の例を記載する)、所定のサイズにギロチン6で断裁し(図3(b))、積層体1段分に分離して(図3(c))、包装袋に詰めている。本発明では、保護シートの下側(インクジェット記録用紙側)のみ耐水加工面し、上側は摩擦係数の小さい紙のままにしているので、容易に所望の位置で包装単位のグループを分離できる。一方、保護シートの両面に耐水加工すると、保護シート上面の摩擦が大きくなり、分離作業が困難になる。又、両面が耐水加工されていないと、保護シートの下面の摩擦が小さいため、上の段を分離するときに下の段の保護シートが移動してしまう場合がある。このように、包装体の加工適性上、片面耐水性加工の保護シートの採用が望ましい。
【0028】
積層体の1段分を分離後、袋詰めを行い、得られた包装体をダンボールなどの外装材で包装する。
【0029】
次にインクジェット記録用紙について説明する。
【0030】
インクジェット記録用紙は支持体上に、インク受容層を1層以上設けたものである。
【0031】
支持体は、吸水性支持体と非吸水性支持体のいずれも用いることが出来るが、非吸水性支持体がシワの発生が無く好ましい。
【0032】
吸水性支持体としては特に天然パルプを主体とした紙支持体が代表的であるが合成パルプと天然パルプの混合物であってもよい。
【0033】
非吸水性支持体としてはプラスチック樹脂フィルム支持体あるいは紙の両面をプラスチック樹脂フィルムで被覆したRC(レジンコート)支持体が挙げられる。
【0034】
プラスチック樹脂フィルム支持体としては、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム、セルローストリアセテートフィルム、ポリスチレンフィルム等が挙げられる。
【0035】
本発明で特に好ましい支持体は紙の両面をプラスチック樹脂で被覆したRC支持体であり、最も好ましいのは、紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆したRC支持体である。
【0036】
次に、この紙基材の両面を被覆するポリオレフィン樹脂について説明する。
【0037】
この目的で用いられるポリオレフィン樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、エチレンやプロピレンを主体とする共重合体などのポリオレフィン類が好ましいが、ポリエチレンが特に好ましい。
【0038】
紙基材表面および裏面を被覆するポリエチレンは、低密度のポリエチレン(LDPE)、高密度のポリエチレン(HDPE)などが好ましい。
【0039】
次に、支持体上に設けられるインク受容層について説明する。インク受容層は支持体の片面のみに設けても良いが、両面に設けても良い。両面に設ける場合のインク受容層は両面で同じものであっても良く異なっていても良い。
【0040】
両面にインク受容層を有する記録用紙の場合、本発明の保護シートはいずれも樹脂加工された面が、上下の最外のインク受容層に接するように配置されることが好ましい。
【0041】
インク受容層は、大きく膨潤層型インク受容層と空隙型インク受容層に分けられる。
【0042】
膨潤型インク受容層は、主としてインク溶媒に対して膨潤性がある親水性ポリマーから構成される。空隙型インク受容層は、主として無機微粒子と少量の親水性ポリマーから構成される。
【0043】
本発明に係るインクジェット記録用紙においては、インク受容層は空隙を有する多孔質皮膜である空隙型インク受容層が、インク吸収速度が速く画像のムラが少ないという観点、及び親水性ポリマーの使用量が比較的少ないためにカールが発生しにくいという観点から好ましい。
【0044】
本発明に係るインクジェット記録用紙のインク受容層(記録面)の白地の色度としては、CIEL***におけるa*が0〜4、b*が−4.5〜−11の範囲にあることが好ましい。
【0045】
更に本発明に係るインクジェット記録用紙は以下の特性を有していることが好ましい。
【0046】
摩擦係数:表裏の動摩擦係数が0.2〜0.8
不透明度:88〜98%
本発明に係るインクジェット記録用紙は、水性染料インクや水性顔料インクによる記録に好ましく用いられるが油性顔料インクによる記録に対しても適用できる。
【実施例】
【0047】
以下に実施例を挙げ本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中で「%」は特に断りのない限り絶乾質量%を示す。
【0048】
実施例1
〔インクジェット記録用紙Aの作製〕
〈支持体の調製〉
含水率7.5質量%、坪量180g/m2の写真用紙基材の裏面に、押し出し塗布法により密度0.92の低密度ポリエチレンを35μmの厚さで塗布した。ついで写真用紙基材の表側にアナターゼ型酸化チタン9.5質量%を含有する密度0.92の低密度ポリエチレンを溶融押し出し塗布法により26μmの厚さで塗布した。このようにして作製された、両面をポリエチレンで被覆した光沢面を有する支持体の光沢度は60度で35%であった。
【0049】
この支持体の表面(酸化チタン含有層側)に、コロナ放電した後、ポリビニルアルコール、ホウ酸及び界面活性剤を含有する下引き層を、ポリビニルアルコールが0.05g/m2になるように塗工した。
【0050】
一方支持体の裏面には、平均粒径約1μmのシリカ微粒子(マット剤)と少量のカチオン性ポリマー(導電剤)を含有するスチレン/アクリル系エマルジョンを乾燥膜厚が約0.5μmになるように塗工して、インク受容層を塗布するための支持体を作製した。
【0051】
〈インク受容層の形成〉
次に、表側のインク受容層用として下記の組成の分散液を調製した。
【0052】
〈酸化チタン分散液−1の調製〉
平均粒径が0.25μmの酸化チタン20kg(石原産業製:W−10)を、pH=7.5のトリポリリン酸ナトリウム150g、ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)500g、カチオン性ポリマー(P−1)150gおよび10gのサンノブコ株式会社製消泡剤SN381を含有する水溶液90Lに添加し高圧ホモジナイザー(三和工業株式会社製)で分散したあと、全量を100Lに仕上げて均一な酸化チタン分散液−1を得た。
【0053】
【化1】

【0054】
〈シリカ分散液1の調製〉
以下の組成の溶液を調製した。
【0055】
水 71L
ホウ酸 0.27kg
ほう砂 0.24kg
エタノール 2.2L
カチオン性ポリマー(P−1)25%水溶液 17L
退色防止剤(AF1*)10%水溶液 8.5L
蛍光増白剤水溶液(W1*) 0.1L
全量を純水で100Lに仕上げる。
【0056】
無機微粒子として、気相法シリカ(平均1次粒子径≒12nm)を50kg用意した。
【0057】
特開2002−47454号公報の実施例5に記載された分散方法により分散してシリカ分散液1を得た。
【0058】
(AF1*)HON(CH2CH2SO3Na)2
(W1*)チバスペシャリティーケミカル製、UVITEX NFW LIQUID
〈シリカ分散液2の調製〉
シリカ分散液1の調製において、カチオン性ポリマーをP−1からP−2に変更した以外はシリカ分散液1と同様に分散してシリカ分散液2を調製した。
【0059】
【化2】

【0060】
〈塗布液の調製〉
第1層、第2層、第3層および第4層の各塗布液を以下の手順で調製した。
【0061】
第1層用塗布液
シリカ分散液1の610mlを40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
【0062】
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)の5%水溶液
220ml
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA245)の5%水溶液
80ml
酸化チタン分散液−1 30ml
ラテックスエマルジョン(第一工業株式会社製:AE−803) 21ml
界面活性剤(SF1)5%水溶液 1.5ml
純水で全量を1000mlに仕上げる。
【0063】
第2層用塗布液
シリカ分散液1の650mlを40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
【0064】
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)の5%水溶液
180ml
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA245)の5%水溶液
80ml
ラテックスエマルジョン(第一工業株式会社製:AE−803) 15ml
純水で全量を1000mlに仕上げる。
【0065】
第3層用塗布液
シリカ分散液2の650mlを40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
【0066】
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)の5%水溶液
180ml
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA245)の5%水溶液
80ml
純水で全量を1000mlに仕上げる。
【0067】
第4層用塗布液
シリカ分散液2の650mlを40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
【0068】
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)の5%水溶液
180ml
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA245)の5%水溶液
80ml
シリコン分散液(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製:BY−22−839) 3.5ml
サポニン50%水溶液 4ml
界面活性剤(SF1)5%水溶液 6ml
純水で全量を1000mlに仕上げる。
【0069】
【化3】

【0070】
上記のようにして得られた塗布液を、東洋濾紙株式会社製TCP10で2段ろ過した。
【0071】
上記塗布液はいずれも40℃において、30〜80mPa・s、15℃において、30〜100Pa・sの粘度特性を示した。
【0072】
このようにして得られた各塗布液を、上述した支持体の表側に、支持体表面に近い方から第1層(35μm)、第2層(45μm)、第3層(45μm)、第4層(40μm)の順に同時塗布した。かっこ内はそれぞれの湿潤膜厚を示す。塗布においては、それぞれの塗布液を40℃に調製し、4層式カーテンコーターを用いて同時塗布を行った。塗布直後の試料は8℃に保持した冷却ゾーンで20秒間冷却した後、相対湿度30%以下の乾燥風を吹き付けて乾燥し、さらに23℃・相対湿度40〜60%で調湿後にロール状に巻き取った。このようにして得られたインクジェット記録用紙Aを、ついで40℃で5日間加温保管した。このようにして調製したインクジェット記録用紙Aのインク受容層面の色度は、a*=3.08、b*=−9.64であった。またインクジェット記録用紙Aの厚さは250μmであり、裏面のベック平滑度は300秒であった。
【0073】
〔保護シートの作製〕
坪量450g/m2のコートボール紙の片面に、溶融押し出し塗布法により、表1記載の樹脂を塗布し、保護シートを作製した。表1において、PP25μmとは、ポリプロピレン層を厚さ25μm塗布したことを意味する。同様に、LDPEは低密度ポリエチレン、PETはポリエチレンテレフタレートである。
【0074】
〔保護シートの評価〕
上記のように作製したインクジェット記録用紙をA4サイズに断裁し、20枚ずつインク受容層面を上にして同じ向きに重ね合わせた。その上に表1に示す保護シート101〜103(サイズはA4)を樹脂加工面を下にして載せ、ゴムバンドを使用して密着させて、高湿環境を想定した30℃相対湿度80%で3日保存し、白地変化(黄変)防止効果を確認した。具体的には、保存前後の護シートと接しているインクジェット記録用紙の白地を測色し、b*の差を求め、それをΔb*として示した。Δb*が小さいということは、高湿環境に保存しても保護シートと接触していた記録用紙の白地変化(黄変)が小さく良好であることを示す。結果を表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
表1から、耐水性加工された保護シートと記録用紙を密着させた場合、耐水加工の透湿度の小さいものほど、白地変化(黄変)防止効果が高いことが判る。
【0077】
透湿度の小さいものは、黄変防止効果が高いことが判る。
【0078】
実施例2
〔包装体の作製〕
実施例1で作製したインクジェット記録用紙をA4サイズに断裁し、20枚ずつインク受容層面を上にして同じ向きに重ね合わせた。その上に表1に示す保護シート(サイズはA4)およびHDPE(高密度ポリエチレン)を塗布した保護シートを樹脂加工面を下にして載せ、ゴムバンドを使用して密着させることなく、ポリプロピレン樹脂フィルム袋で包装し包装体を得た。これは通常の包装体に相当する。
【0079】
このようにして作製されたそれぞれのインクジェット記録用紙の包装体201〜207を、高湿環境を想定した30℃相対湿度80%で7日保存し、白地変化(黄変)防止効果と保護シートのカールを確認した。具体的には、保護シートと接しているインクジェット記録用紙の白地を測色し、保存前後のb*の差を求め、それをΔb*として示した。Δb*が小さいということは、高湿環境に保存しても保護シートと接触していた記録用紙の白地変化(黄変)が小さく良好であることを示す。
【0080】
カールは、保存後のインクジェット記録用紙の保護シートに接する一枚目の四隅カールを測定しその平均値で示す。それぞれの結果を表2に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
表2から、本発明の試料は、いずれも黄変もなく、カールも少ない。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明のインクジェット記録用紙の包装体に用いる保護シートの断面図である。
【図2】本発明のインクジェット記録用紙の包装体の断面図である。
【図3】本発明のインクジェット記録用紙の包装体を作製する工程の断面図である。
【符号の説明】
【0084】
1 保護シート
2 紙基材
3 低密度ポリエチレン層
4 包装袋
5 インクジェット記録用紙
6 ギロチン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット記録用紙の最外のインク受容層面を保護するための保護シートを有するインクジェット記録用紙の包装体であって、該保護シートは該最外のインク受容層面と接する面のみ耐水性加工され、かつ、該耐水加工面のJIS−K−7129に規定される、40℃90%RHにおける透湿度が10〜40g/m2・24hrであることを特徴とするインクジェット記録用紙の包装体。
【請求項2】
前記保護シートの耐水加工面が厚み10〜50μmの低密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用紙の包装体。
【請求項3】
前記インクジェット記録用紙の記録面が、CIEのL***のa*が0〜4、b*が−4.5〜−11の範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録用紙の包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−145401(P2007−145401A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−345495(P2005−345495)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(303050159)コニカミノルタフォトイメージング株式会社 (1,066)
【Fターム(参考)】