インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法
【課題】記録画像不具合を低減することが可能なインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法を提供すること。
【解決手段】インクジェット記録装置1は、キャリッジ3が移動可能な範囲の端部に、空気制御窓770、迂回路空間750およびシャッタ700を備えている。キャリッジ3の移動方向および加減速にあわせて、キャリッジ3の移動範囲の両端に設けられた空気制御窓770をシャッタ700を使って開閉することで、記録ヘッド4と記録媒体13との間の空気の流れを制御する。これにより、記録領域の中央部と端部での、主滴とサテライトの着弾位置の差異を低減することができる。
【解決手段】インクジェット記録装置1は、キャリッジ3が移動可能な範囲の端部に、空気制御窓770、迂回路空間750およびシャッタ700を備えている。キャリッジ3の移動方向および加減速にあわせて、キャリッジ3の移動範囲の両端に設けられた空気制御窓770をシャッタ700を使って開閉することで、記録ヘッド4と記録媒体13との間の空気の流れを制御する。これにより、記録領域の中央部と端部での、主滴とサテライトの着弾位置の差異を低減することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法に関する。特に、インクジェット記録ヘッドを往復走査して、記録用紙などの記録媒体に往復記録を行うシリアル型インクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータにて作成された画像やデジタルカメラなどの撮像装置で撮像された画像の出力装置として、記録ヘッドが記録媒体上を走査して記録を行うインクジェット記録装置が広く用いられている。現在では銀塩写真と同様に、記録媒体の端部に余白を設けず記録媒体全面に画像を記録することができる、写真専用のコンパクト型インクジェット記録装置も実現されている。
【0003】
このようなコンパクト型のインクジェット記録装置(以下、単に記録装置ともいう)においては、スペースの無駄を省いて小型しているため、記録装置内部はかなり密閉度合いが高く、記録ヘッドの走査領域は従来の記録装置より極めて狭小構造となっている。さらにコンパクト型の記録装置では小型化するために、キャリッジに搭載されて移動する記録ヘッドが加速・減速中にも記録を行なう構成になっている。従来の記録装置では、高い画像品位を得るために、キャリッジが等速度運動状態の時にインクの吐出を開始していたが、昨今は加速中や減速中にも記録することが行われている。これは、加速・減速の際に、約10〜30mm幅の無印字領域が必要になり、この寸法は直接記録装置の横幅の寸法に影響を与える。そのため少しでも記録装置のサイズを小さくするために、加速・減速中にも記録を行うことで記録装置の小型化を図っている。しかしこれが画像劣化の要因の一因でもある。
【0004】
ところでインクジェット方式の記録装置で記録を行う場合には、インク吐出口から吐出されて記録媒体上に着弾するインクの主滴以外に、主滴から分離したインクの小滴が紙面上に着弾して小さなドットである所謂サテライトを形成する。記録媒体上に着弾したこのサテライトの影響で記録結果に濃度ムラが発生する。当然ながら、密閉度合いの高い記録装置内部でインクが吐出されれば、空気抵抗と運動量の関係により記録媒体上に着弾する位置が主滴とは異なる位置となることは容易に想像できる。
【0005】
従来の技術で、記録装置内のインクミストを捕集する技術として特許文献1には、記録装置内に開放窓を設ける構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−145021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
密閉度合いの高い空間内で記録ヘッドが往復走査をする場合、記録ヘッドを保持し移動させる構成体であるキャリッジのピストン効果によって走査方向に気圧差が生じ記録ヘッドと記録媒体との間に気圧差による空気の流れ、所謂筐体内気流が発生する。特にキャリッジの加速・減速中には加速度を伴うために、この気流の流れはさらに増大する。記録中に加速・減速を伴うのはキャリッジの折り返し地点である記録領域における両端部であり、記録領域の両端部における主滴とサテライトの着弾位置と、記録領域の中央部における主滴とサテライトの着弾位置とでは、その着弾状態に差異が生じてしまう。このため記録結果には記録濃度ムラが生じ、記録画像不具合が発生してしまう。よって、本発明は記録画像不具合を低減することが可能なインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのため本発明のインクジェット記録装置は、記録ヘッドを搭載して移動可能な移動手段と、前記移動手段の移動方向と交差する方向に記録媒体を搬送する搬送手段と、筐体と、を備え、該筐体の内部で前記移動手段と前記搬送手段との動作とともに前記記録ヘッドから前記記録媒体に対してインクを吐出することで記録を行うインクジェット記録装置において、前記移動手段が移動可能な範囲の端部には、空気制御窓および迂回路空間が設けられており、前記空気制御窓は、前記移動手段が設けられている記録空間と前記迂回路空間との間で、前記移動手段の移動方向および加減速に応じて開閉され、前記記録ヘッドと前記記録媒体との間の空気の流れを制御することを特徴とする。
【0009】
また、本発明のインクジェット記録方法は、記録ヘッドを移動させる移動工程と、前記移動工程における前記記録ヘッドの移動方向と交差する方向に記録媒体を搬送する搬送工程と、を備え、前記記録ヘッドから前記記録媒体に対してインクを吐出することで記録を行う記録工程と、を備えたインクジェット記録方法において、前記移動工程における前記記録ヘッドが移動可能な範囲の端部に設けられた、空気制御窓を前記記録ヘッドの移動方向および加減速に応じて開閉することで、前記記録ヘッドが移動する記録空間と前記空気制御窓によって仕切られた迂回路空間と、前記記録空間と、の間の空気の流動を可能にし、前記記録ヘッドと前記記録媒体との間の空気の流れを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によればインクジェット記録装置は、移動手段が移動可能な範囲の端部に、空気制御窓および迂回路空間を備えている。そしてその空気制御窓が、移動手段が設けられている記録空間と迂回路空間との間で、移動手段の移動方向および加減速に応じて開閉されることで記録ヘッドと記録媒体との間の空気の流れを制御する。これによって、記録画像不具合を低減することが可能なインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法を実現することができた。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態におけるインクジェット記録装置を示した斜視図である。
【図2】図1の記録装置を正面から見たときの断面概略図である。
【図3】(a)と(b)は従来と本実施形態のインクジェット記録装置内の空気の流れを示す図である。
【図4】第1の実施形態のシャッタを示した斜視図である
【図5】従来の記録装置における紙間の流入空気の速度を示したグラフである。
【図6】第1の実施形態における紙間の流入空気の速度を示したグラフである。
【図7】第1の実施形態の記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【図8】第1の実施形態の記録装置の記録処理を示したフローチャートである。
【図9】第2の実施形態における記録装置を示した断面概略図である。
【図10】第3の実施形態における記録装置を示した断面概略図である。
【図11】第3の実施形態のシャッタを示した斜視図である。
【図12】第4の実施形態における記録装置を示した断面概略図である。
【図13】第4の実施形態のシャッタを示した斜視図である。
【図14】第5の実施形態における記録装置を示した断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態におけるインクジェット記録装置(以下、単に記録装置ともいう)1を示した斜視図であり、図2は、図1の記録装置を正面から見たときの断面概略図である。本実施形態の記録装置1は、キャリッジ駆動用の駆動モータ2と記録ヘッド4とを搭載し、ガイドシャフト5に沿って主走査方向(図2の矢印α方向)に往復移動するキャリッジ3と、駆動モータ2によりキャリッジ3を往復移動する移動機構6とを備えている。更に記録装置1は、予備吐出を行うための受け口8が形成されたプラテン7と、記録ヘッド4の吐出回復処理およびクリーニングを行う回復装置10と、移動機構6と他の作動機構等とが駆動モータ2を利用して駆動されるように好適に構成されている。記録媒体13は、給紙機構11によって主走査方向と交差する方向に搬送され、プラテン7上に送り込まれて、プラテン7上で記録ヘッド4によって記録媒体13に所定の記録が行われる。キャリッジ3に装着される記録ヘッド4は、インクを収納するインクタンク12と別体または一体化されたものであり、キャリッジ3に着脱自在に保持されている。キャリッジ3は、駆動モータ2の駆動力を伝達する移動機構6の一部であるタイミングベルト14に連結されており、ガイドシャフト5に沿って矢印α方向に摺動自在に設けられている。そしてキャリッジ3は駆動モータ2の駆動力によって矢印α方向に往復移動されると同時に、記録ヘッド4に記録信号が与えられて記録ヘッド4からインクが吐出される。これによって、プラテン7上に搬送された記録媒体13に良好な記録が行われる。
【0013】
記録ヘッド4を搭載するキャリッジ3が往復運動する走査範囲で、記録動作中におけるプラテン7上の記録媒体13より外の位置は、平面構成となっており、その面の高さはプラテン7上を通過中の記録媒体13と略同じ高さになっている。またこの位置は予備吐出位置でもあり、予備吐出の受け口8が設けられている。またプラテン7の下方には、ウレタンやポリウレタン、不織布、或いは他の適宜なインク吸収性の材料から成る廃インク吸収体21が設けられている。従って予備吐出位置において、記録ヘッド4のインク吐出口面15より受け口8内に予備吐出されたインクはプラテン7の下に設置された廃インク吸収体21によって好適に吸収され、回収または再利用されるようになっている。
【0014】
本実施形態の記録装置1には、記録ヘッド4のための適宜な回復装置10が、キャリッジ3の移動範囲内の端に設けられている。この回復装置10は、記録ヘッド4のインク吐出口面15をキャッピングするキャップ部材16と、ゴムのような弾性部材から成るワイパ部材17とを備えている。
【0015】
図3は、インクジェット記録装置内での空気の流れを説明するための図であり、(a)は従来の記録装置、(b)は本実施形態の記録装置を示している。図3(a)、(b)は共にキャリッジ3の移動範囲の端部においてキャリッジ3が加速しながら、記録媒体13の中央側(矢印F方向)へシリアル運動をしている時の状態を模視したものである。以下、従来の記録装置における記録装置内での空気の流れについて説明する。図3(a)のように、キャリッジ3が加速移動を開始すると、記録装置中央付近にある空気50(図2参照)は隙間51(紙間隙間710を含む)および隙間52を経由してキャリッジ3の進行方向後方側へ移動する。隙間51、52へ急激に空気50が流入し、その流入速度は、加速中や減速中には瞬間的に相当高い数値である2〜4m/sec程度となる場合が多い。この瞬間的という時間単位は約0.002〜0.02秒程度の時間であるが、キャリッジの速度が約300〜900mm/secであるので、キャリッジの移動距離的には、0.6mm〜18mmの長さである。一般人の目視では、50μm〜80μmの数値が最小認識寸法単位であるので、上記の数値は容易に、画像バラつき、画像以上としては認識可能な数値範囲である。つまり、僅かに千分の2秒程度の時間差が影響する画像品位を問題としているのである。通常、インクジェット記録装置の吐出周期は5〜20KHzであるので、0.002秒間の間に10発〜40発の吐出を行っている。これに、複数の色(最低3色)を考慮すると、30発〜120発の着弾が発生し、更にこれにサテライトの着弾も考慮すれば、記録媒体には60発〜240発のインク滴が着弾していることになる。
【0016】
本実施形態の記録装置は、図3(b)および図2に示すようにキャリッジ3の移動範囲の両端部に、1対の空気制御窓770を備えている。そして各空気制御窓770には空気制御窓770を開閉自在なシャッタ700がそれぞれ設けられており、キャリッジ3が設けられた記録空間と空間750とを仕切ることが可能に構成されている。図3(b)はシャッタ700が開いている状態を示している。このように空気制御窓770が開いている場合、記録空間と空間750との間で空気の流動が可能になる。このように空気制御窓770が開いており、キャリッジ3が矢印Fの方向(以下、この方向を+方向とする)に加速移動する場合、空気制御窓770の後部の空間750から大量の空気が流出する。これによって隙間51、52における空気の流速は低減する。空気制御窓770を閉じる際にシャッタ700は、インクジェット記録装置のシャーシ71、71’と接することで閉じるように構成されている。図3(b)ではシャッタ700は、上方向に伸延し、シャーシ71’と摺接することで、キャリッジ3が設けられている記録空間と空間750との間を遮蔽する(仕切る)ことが可能な構成となっている。遮蔽する相手部位はシャーシ71、71’ではなく筐体100の一部であってもよい。
【0017】
図4は、本実施形態のシャッタ700を示した斜視図である。シャッタ700は図のように、窓駆動機構721によって上下に移動可能に構成されており、このようなシャッタ700の上下動により空気制御窓770を開閉する。
【0018】
ところで、等速度記録動作中において空気制御窓770は、シャッタ700によって閉じられた状態となり、プラテン7上を通過中のキャリッジ3と記録媒体13との間に形成される紙間710における空気の流れが多くなるように維持される。何故、等速記録動作中は空気制御窓770を遮蔽して、紙間710への流入気流速度を上げた方が好ましいのかと言えば、記録ヘッド4から吐出される液滴により空気の流れが乱れて部分的に旋回渦が発生し、通称風紋なる濃淡模様の擬似画像が発生する。しかし、紙間710における空気の流れが多く、流入気流が高いとこのような風紋は発生しないことがわかっている。そのため、等速記録動作中は空気制御窓770を遮蔽して、紙間710への流入気流速度を上げることで風紋の発生を抑えている。
【0019】
一般的な(密閉度の低い)記録装置では、キャリッジ3が往復シリアル運動を行うために減速し始めると、当然ながら紙間710への流入空気の速度は減少をはじめる。しかし、本実施形態の記録装置のようにほとんど密閉された構成の筐体においては、逆にキャリッジ3が移動方向前方の空気を圧縮することで逃げ場を失う空気が、紙間710へ大量に流れ込み始める。従って、キャリッジ3の移動方向とは逆方向(以下、この方向を−方向とする)に紙間710における空気の流入速度が増大することになる。そこで、本実施形態ではキャリッジ3が減速移動中には、キャリッジ3の移動方向前方の空気制御窓770を開く。その場合、減速移動中における紙間710への(−方向の)空気流入速度が0.5〜2.0m/secになるようにシャッタ700開き量を制御する。またその場合、キャリッジ3の移動方向後方側の空気制御窓770は閉じられていて、先方側の空気制御窓770が適時に開放している方が好ましい。
【0020】
次に、キャリッジ3が減速終了し停止する。この段階において、紙間710における空気の流れはほぼ停止状態となる。しかしながら、キャリッジ3後方の空気は流体という特徴により、キャリッジ3が減速・停止するにもかかわらず、+方向への流れが生じている。キャリッジ3は、0.02〜0.05秒という極めて短い時間を経て停止するが、空気のような流体は構造物体のように減速停止できないからである。その後、キャリッジ3は反転し逆方向(−方向)への加速を開始する。加速時間は、0.02〜0.05秒程度(各種記録装置の記録中の等速度に依存して異なる)であるが、前述のように+方向の運動量を持った空気の運動により、紙間710へより強く空気が流入してくる。
【0021】
次にキャリッジ3が−方向に加速中には、本実施形態のような密閉された状態ではキャリッジ3の後方の空間における空気が膨張され気圧が低下する。そのため、紙間710への空気の流れ込みが多くなり、紙間710における空気の流速が速くなる。そこで、本実施形態ではキャリッジ3−方向への加速時に、キャリッジ3後方の空気制御窓770は、紙間710における空気の流速が0.5〜2.0m/secとなるように適宜開放する。キャリッジ3の前方の空気制御窓770も、紙間710における空気の流速が0.5〜2.0m/secとなるように適時開放する。この場合、前方の空気制御窓770の開放度合いは後方の空気制御窓770よりは少ない開放度合いである。
【0022】
図5は、空気制御窓が無い従来の記録装置における紙間710の流入空気の速度ベクトルをシミュレーションした結果を示したグラフであり、図6は本実施形態における紙間710の流入空気の速度ベクトルを計算した結果を示したグラフである。図5、図6における流入空気の速度は、紙間710における記録ヘッド310のインクが吐出される面(通称フェイス面)と記録媒体13との間の中央位置における空気流速の絶対値を示している。図5中の領域ACの部分は、キャリッジ3の加速あるいは減速の領域を示しており、図6中の領域DOの部分は、開閉制御窓770が開放されている時間領域を示している。シミュレーションの方法としては、図1に示した記録装置3次元のCAD図を基にして、有限要素法を用いてキャリッジ3をシリアル運動させる流体計算を実施した。この流体計算ソフトは市販されている汎用流体計算ソフトウェアに類似のものであり、その計算精度は高く、ほぼ実際の現象に近い流れ速度を算出できる。
【0023】
本実施形態の空気制御窓770を設けた記録装置における紙間710での流速と従来の記録装置における紙間710での流速とを比較すると、本実施形態つまり図5の方が、流入速度が低めに変化していることがわかる。これは空気制御窓700の制御が有効に作用しているためである。その結果、図6における紙間710の流入気流速度は、ほぼ0.5〜2.0m/secの間で変化している。流入気流速度が、0.5m/sec以下では、気流ヨレが発生し風紋現象が発生することは過去の事例より判明している。逆に、瞬間的にも流入気流速度が2.5m/secを超える場合は、例えば、2.5m/secでは、インクジェット液滴のサテライトが紙間710での流入空気の影響により飛翔中に流され所定の着弾位置よりズレる現象が発生する。このような状況では、縁無し記録での良好な画像形成は困難である。
【0024】
そこで、本実施形態のように空気制御窓770を用いて流入空気が2.0m/sec以下になるように制御することで、この問題は実際の記録装置でも解決した(数値実験上では、2.03m/sec程度であったが、2.0m/secとした)。
【0025】
図7は、本実施形態のインクジェット記録装置の制御構成を示すブロック図である。CPU600はメインバスライン605を介して各部の制御およびデータ処理を実行する。すなわち、CPU600は、ROM601に格納されるプログラムに従い、記録ヘッド駆動制御、キャリッジ駆動制御およびデータ処理、開放制御窓770の制御を含めて以下に説明する各部を介して制御する構成のものである。RAM602は、このCPU600によるデータ処理等のワークエリアとして用いられ、また、これらメモリにはその他にハードディスク等がある。画像入力部603は、ホスト装置(不図示)とのインターフェースを有し、ホスト装置から入力した画像を一時的に保持する。画像信号処理部604は、色変換、二値化等の外、データ処理を実行する。操作部606はキー等を備え、これによりオペレータによる制御入力等を可能にする。回復系制御回路607ではRAM602に格納される回復処理プログラムに従って予備吐出等の回復動作を制御し、回復系モータ608は、記録ヘッド613とこれに対向離間するクリーニングブレード609やキャップ610、吸引ポンプ611を駆動する。記録ヘッド駆動制御回路615は、記録ヘッド613のインク吐出用電気熱変換体の駆動を制御し、通常、予備吐出や記録のためのインク吐出を記録ヘッド613に行わせる。さらに、キャリッジ駆動制御回路616および紙送り制御回路617も同様に、プログラムに従い、それぞれ、キャリッジ3の移動および紙送りを制御する。また、空気制御窓の開閉動作機構制御回路720も当該プログラムにより制御されることで、空気制御窓770の自動的な最適な開閉が実行される。空気制御窓770の窓駆動機構721は、モータによる開閉を用いているが、電磁アクチュエータや電磁リニアスライダ、もしくは、空気圧、あるいは油圧作動方式の機構であっても良い。キャリッジ3の加速度や、キャリッジ3の位置に合致した開放度合を実現できる物であればよい。好ましくは、開閉の位置や開放速度などを能動的に自在に制御できる機構が望ましく、モータ制御や電磁アクチュート方式などを複合させた機能構成であってもよい。また、記録ヘッド613のインク吐出用の電気熱変換体が設けられている基板には、保温ヒータが設けられており、記録ヘッド内のインク温度を所望設定温度に加熱調整することができる。またサーミスタ612は、同様に上記基板に設けられているもので、実質的な記録ヘッド内部のインク温度を測定するためのものである。サーミスタ612も同様に、基板にではなく外部に設けられていても良く、記録ヘッドの周囲近傍にあっても良い。
【0026】
図8は、本実施形態の記録装置の記録処理における各工程を示したフローチャートである。記録処理が開始されると、ステップS001で紙送り制御回路によって記録媒体の搬送が行われる。所定の搬送量に到達すると、CPU600はキャリッジ制御回路610に起動処理命令(ROM中に記憶されたキャリッジの時刻・位置情報に基づく加速度・減速度・等速度に従った移動の処理命令および画像情報に基づく記録素子への記録処理命令)を発する。これによってステップS002でキャリッジ3を起動させる。ステップS002ではキャリッジ3と同時に、CPU600が開閉制御窓駆動回路720に窓駆動機構721の起動処理命令(ROM中に記録された開閉制御窓の時刻・位置情報に基づく開放量に従った処理命令)を発する。そしてこれによって空気制御窓770のシャッタ700が起動される。これにより、キャリッジ3の位置や加速度・減速度・移動速度に応じて、空気制御窓770の開放量が適時適量に維持される。空気制御窓770の開放量はROM602中に数値化してプログラム保存されているものであるが、紙間710における流入気流の速度が計測出来るセンサなどを搭載可能であれば、その計測データにおいて適時開放量を調整するようにしても良い。その後、ステップS003で、画像情報に基づいて記録ヘッドからインクが吐出されることで記録媒体に対して記録が行われる。この記録の最中も継続して空気制御窓770の制御は適宜行われている。その後、ステップS004ですべての記録が完了したかを確認して、完了していなければステップS001に戻り、完了していればステップS005で記録媒体の排出を行い、記録処理は終了になる。
【0027】
このように、キャリッジ3の移動方向および加減速にあわせて、キャリッジ移動範囲の両端に設けられた空気制御窓を開閉する。これによって、記録画像不具合を低減することが可能なインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法を実現することができた。
【0028】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0029】
図9は、本実施形態におけるインクジェット記録装置(以下、単に記録装置ともいう)1の構成を示した断面概略図である。本実施形態の記録装置は第1の実施形態とは異なり、空気制御窓770におけるシャッタ800は、記録装置の上部に配置されており、上から下へと遮蔽する構成となっている。この場合の特徴は、キャリッジ3と記録媒体13との間である紙間710と、空気制御窓770の開放部とを極力近づけることが可能になる利点がある。第1の実施形態(図2)の場合、シャッタ700の先端は空気制御窓770を完全密閉する際、キャリッジ3の上側付近に位置することになる。したがってシャッタ700を微少開放の際の開放位置もキャリッジ3の上側付近になり、キャリッジ3の下側にある紙間710とは離れている。そのため、微少開放した際の影響を比較的受けにくい。そこで、本実施形態では図8のように、シャッタ800が記録装置の上部から下部に向かうことで空気制御窓770を閉じるように構成されており、シャッタ800の先端は、空気制御窓770を完全密閉する際、紙間710とほぼ同じ高さ(水平位置)に位置する。そのため、微少開放する際は、紙間710とほぼ同じ高さの位置に開放部を設けることができ、紙間流入気流制御を行うには有効である。実際に、紙間への流入気流速度が急峻に変化するのは、完全密閉の瞬間であるので、この制御応答に関しては、上から下への開放制御窓770の制御方法が好ましい。
【0030】
このように、キャリッジ3の移動方向および加減速にあわせて、キャリッジ移動範囲の両端に設けられた空気制御窓を、空気制御窓の上部に設けられたシャッタの摺動動作によって開閉する。これによって、記録画像不具合を低減することが可能なインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法を実現することができた。
【0031】
(第3の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第3の実施形態を説明する。本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0032】
図10は、本実施形態におけるインクジェット記録装置(以下、単に記録装置ともいう)1の構成を示した断面概略図である。本実施形態の記録装置は第1の実施形態とは異なり、空気制御窓770におけるシャッタ900は、記録装置の奥から手前(図9紙面の垂直方向)に開閉す機構になっている。
【0033】
図11は、本実施形態のシャッタ900を示した斜視図である。シャッタ900は図のように窓駆動機構721によって前後(手前と奥)に移動可能に構成されており、この動作によって空気制御窓770を開閉可能になっている。この場合の制御上の利点は、開閉制御窓900の自重があまり影響しないということである。このために、開閉制御において駆動力の低いモータなどでの開閉制御が容易であり、電力容量が少ない場合において有効である。
【0034】
このように、キャリッジ3の移動方向および加減速にあわせて、キャリッジ移動範囲の両端に設けられた空気制御窓を、空気制御窓の側部に設けられたシャッタが、記録時の記録媒体の搬送方向を含む方向にスライドすることで開閉する。これによって、記録画像不具合を低減することが可能なインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法を実現することができた。
【0035】
(第4の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第4の実施形態を説明する。本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0036】
図12は、本実施形態におけるインクジェット記録装置(以下、単に記録装置ともいう)1の構成を示した断面概略図である。本実施形態の記録装置は第1の実施形態とは異なり、空気制御窓770におけるシャッタ1000は、回転することで空気制御窓770を開閉売ることが可能な構成になっている。
【0037】
図13は、本実施形態のシャッタ1000を示した斜視図である。シャッタ1000は図のように3枚のパネルから構成されており、各パネルが回転することで空気制御窓770の開閉が可能である。この方法の利点は、シャッタ1000を設ける部分のスペースが少ない場合でも、各パネルを回転させることで、広い面積の開放部を構成することが可能になる。
【0038】
なお、本実施形態ではシャッタ1000を3枚のパネルで構成したが、これに限定するものではなく、自由な枚数で構成することが可能である。
【0039】
このように、キャリッジ3の移動方向および加減速にあわせて、キャリッジ移動範囲の両端に設けられた空気制御窓を、シャッタの回転動作によって開閉する。これによって、記録画像不具合を低減することが可能なインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法を実現することができた。
【0040】
(第5の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第5の実施形態を説明する。本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0041】
図14は、本実施形態におけるインクジェット記録装置(以下、単に記録装置ともいう)1の構成を示した断面概略図である。本実施形態の記録装置は、空気の迂回路を筐体内部に持たず、筐体外部の大気空間を迂回路空間にしている。つまり、筐体の側部に大気空間と繋がる空気制御窓770が設けられている。そのため、記録装置の筐体の両端部にシャッタ1100が設けられており、キャリッジの走査に伴って適宜シャッタ1100が開くように構成されている。この方法の利点は、記録装置の横幅を10〜50mm程度短縮可能とすることが出来ることである。しかし、キャリッジ3の加速・減速時に伴って、記録装置の両側に開放空間が発生することで、異物や大きなゴミ、もしくは昆虫などが侵入したり、あるいは指などを挟み込む懸念点が発生する。さらに、インクミストの記録装置機外部への流出の懸念点なども発生する。
【0042】
なお、本実施形態のシャッタ1100の開き方は、上記第1から第4の実施形態のいずれの構成によるものでもよい。
【0043】
このように、記録装置の筐体の側部に設けられた大気空間と繋がる空気制御窓をキャリッジ3の移動方向および加減速にあわせて開閉する。これによって、記録画像不具合を低減することが可能なインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法を実現することができた。
【符号の説明】
【0044】
1 インクジェット記録装置
3 キャリッジ
4 記録ヘッド
13 記録媒体
700 シャッタ
710 紙間
770 空気制御窓
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法に関する。特に、インクジェット記録ヘッドを往復走査して、記録用紙などの記録媒体に往復記録を行うシリアル型インクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータにて作成された画像やデジタルカメラなどの撮像装置で撮像された画像の出力装置として、記録ヘッドが記録媒体上を走査して記録を行うインクジェット記録装置が広く用いられている。現在では銀塩写真と同様に、記録媒体の端部に余白を設けず記録媒体全面に画像を記録することができる、写真専用のコンパクト型インクジェット記録装置も実現されている。
【0003】
このようなコンパクト型のインクジェット記録装置(以下、単に記録装置ともいう)においては、スペースの無駄を省いて小型しているため、記録装置内部はかなり密閉度合いが高く、記録ヘッドの走査領域は従来の記録装置より極めて狭小構造となっている。さらにコンパクト型の記録装置では小型化するために、キャリッジに搭載されて移動する記録ヘッドが加速・減速中にも記録を行なう構成になっている。従来の記録装置では、高い画像品位を得るために、キャリッジが等速度運動状態の時にインクの吐出を開始していたが、昨今は加速中や減速中にも記録することが行われている。これは、加速・減速の際に、約10〜30mm幅の無印字領域が必要になり、この寸法は直接記録装置の横幅の寸法に影響を与える。そのため少しでも記録装置のサイズを小さくするために、加速・減速中にも記録を行うことで記録装置の小型化を図っている。しかしこれが画像劣化の要因の一因でもある。
【0004】
ところでインクジェット方式の記録装置で記録を行う場合には、インク吐出口から吐出されて記録媒体上に着弾するインクの主滴以外に、主滴から分離したインクの小滴が紙面上に着弾して小さなドットである所謂サテライトを形成する。記録媒体上に着弾したこのサテライトの影響で記録結果に濃度ムラが発生する。当然ながら、密閉度合いの高い記録装置内部でインクが吐出されれば、空気抵抗と運動量の関係により記録媒体上に着弾する位置が主滴とは異なる位置となることは容易に想像できる。
【0005】
従来の技術で、記録装置内のインクミストを捕集する技術として特許文献1には、記録装置内に開放窓を設ける構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−145021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
密閉度合いの高い空間内で記録ヘッドが往復走査をする場合、記録ヘッドを保持し移動させる構成体であるキャリッジのピストン効果によって走査方向に気圧差が生じ記録ヘッドと記録媒体との間に気圧差による空気の流れ、所謂筐体内気流が発生する。特にキャリッジの加速・減速中には加速度を伴うために、この気流の流れはさらに増大する。記録中に加速・減速を伴うのはキャリッジの折り返し地点である記録領域における両端部であり、記録領域の両端部における主滴とサテライトの着弾位置と、記録領域の中央部における主滴とサテライトの着弾位置とでは、その着弾状態に差異が生じてしまう。このため記録結果には記録濃度ムラが生じ、記録画像不具合が発生してしまう。よって、本発明は記録画像不具合を低減することが可能なインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのため本発明のインクジェット記録装置は、記録ヘッドを搭載して移動可能な移動手段と、前記移動手段の移動方向と交差する方向に記録媒体を搬送する搬送手段と、筐体と、を備え、該筐体の内部で前記移動手段と前記搬送手段との動作とともに前記記録ヘッドから前記記録媒体に対してインクを吐出することで記録を行うインクジェット記録装置において、前記移動手段が移動可能な範囲の端部には、空気制御窓および迂回路空間が設けられており、前記空気制御窓は、前記移動手段が設けられている記録空間と前記迂回路空間との間で、前記移動手段の移動方向および加減速に応じて開閉され、前記記録ヘッドと前記記録媒体との間の空気の流れを制御することを特徴とする。
【0009】
また、本発明のインクジェット記録方法は、記録ヘッドを移動させる移動工程と、前記移動工程における前記記録ヘッドの移動方向と交差する方向に記録媒体を搬送する搬送工程と、を備え、前記記録ヘッドから前記記録媒体に対してインクを吐出することで記録を行う記録工程と、を備えたインクジェット記録方法において、前記移動工程における前記記録ヘッドが移動可能な範囲の端部に設けられた、空気制御窓を前記記録ヘッドの移動方向および加減速に応じて開閉することで、前記記録ヘッドが移動する記録空間と前記空気制御窓によって仕切られた迂回路空間と、前記記録空間と、の間の空気の流動を可能にし、前記記録ヘッドと前記記録媒体との間の空気の流れを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によればインクジェット記録装置は、移動手段が移動可能な範囲の端部に、空気制御窓および迂回路空間を備えている。そしてその空気制御窓が、移動手段が設けられている記録空間と迂回路空間との間で、移動手段の移動方向および加減速に応じて開閉されることで記録ヘッドと記録媒体との間の空気の流れを制御する。これによって、記録画像不具合を低減することが可能なインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法を実現することができた。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態におけるインクジェット記録装置を示した斜視図である。
【図2】図1の記録装置を正面から見たときの断面概略図である。
【図3】(a)と(b)は従来と本実施形態のインクジェット記録装置内の空気の流れを示す図である。
【図4】第1の実施形態のシャッタを示した斜視図である
【図5】従来の記録装置における紙間の流入空気の速度を示したグラフである。
【図6】第1の実施形態における紙間の流入空気の速度を示したグラフである。
【図7】第1の実施形態の記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【図8】第1の実施形態の記録装置の記録処理を示したフローチャートである。
【図9】第2の実施形態における記録装置を示した断面概略図である。
【図10】第3の実施形態における記録装置を示した断面概略図である。
【図11】第3の実施形態のシャッタを示した斜視図である。
【図12】第4の実施形態における記録装置を示した断面概略図である。
【図13】第4の実施形態のシャッタを示した斜視図である。
【図14】第5の実施形態における記録装置を示した断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態におけるインクジェット記録装置(以下、単に記録装置ともいう)1を示した斜視図であり、図2は、図1の記録装置を正面から見たときの断面概略図である。本実施形態の記録装置1は、キャリッジ駆動用の駆動モータ2と記録ヘッド4とを搭載し、ガイドシャフト5に沿って主走査方向(図2の矢印α方向)に往復移動するキャリッジ3と、駆動モータ2によりキャリッジ3を往復移動する移動機構6とを備えている。更に記録装置1は、予備吐出を行うための受け口8が形成されたプラテン7と、記録ヘッド4の吐出回復処理およびクリーニングを行う回復装置10と、移動機構6と他の作動機構等とが駆動モータ2を利用して駆動されるように好適に構成されている。記録媒体13は、給紙機構11によって主走査方向と交差する方向に搬送され、プラテン7上に送り込まれて、プラテン7上で記録ヘッド4によって記録媒体13に所定の記録が行われる。キャリッジ3に装着される記録ヘッド4は、インクを収納するインクタンク12と別体または一体化されたものであり、キャリッジ3に着脱自在に保持されている。キャリッジ3は、駆動モータ2の駆動力を伝達する移動機構6の一部であるタイミングベルト14に連結されており、ガイドシャフト5に沿って矢印α方向に摺動自在に設けられている。そしてキャリッジ3は駆動モータ2の駆動力によって矢印α方向に往復移動されると同時に、記録ヘッド4に記録信号が与えられて記録ヘッド4からインクが吐出される。これによって、プラテン7上に搬送された記録媒体13に良好な記録が行われる。
【0013】
記録ヘッド4を搭載するキャリッジ3が往復運動する走査範囲で、記録動作中におけるプラテン7上の記録媒体13より外の位置は、平面構成となっており、その面の高さはプラテン7上を通過中の記録媒体13と略同じ高さになっている。またこの位置は予備吐出位置でもあり、予備吐出の受け口8が設けられている。またプラテン7の下方には、ウレタンやポリウレタン、不織布、或いは他の適宜なインク吸収性の材料から成る廃インク吸収体21が設けられている。従って予備吐出位置において、記録ヘッド4のインク吐出口面15より受け口8内に予備吐出されたインクはプラテン7の下に設置された廃インク吸収体21によって好適に吸収され、回収または再利用されるようになっている。
【0014】
本実施形態の記録装置1には、記録ヘッド4のための適宜な回復装置10が、キャリッジ3の移動範囲内の端に設けられている。この回復装置10は、記録ヘッド4のインク吐出口面15をキャッピングするキャップ部材16と、ゴムのような弾性部材から成るワイパ部材17とを備えている。
【0015】
図3は、インクジェット記録装置内での空気の流れを説明するための図であり、(a)は従来の記録装置、(b)は本実施形態の記録装置を示している。図3(a)、(b)は共にキャリッジ3の移動範囲の端部においてキャリッジ3が加速しながら、記録媒体13の中央側(矢印F方向)へシリアル運動をしている時の状態を模視したものである。以下、従来の記録装置における記録装置内での空気の流れについて説明する。図3(a)のように、キャリッジ3が加速移動を開始すると、記録装置中央付近にある空気50(図2参照)は隙間51(紙間隙間710を含む)および隙間52を経由してキャリッジ3の進行方向後方側へ移動する。隙間51、52へ急激に空気50が流入し、その流入速度は、加速中や減速中には瞬間的に相当高い数値である2〜4m/sec程度となる場合が多い。この瞬間的という時間単位は約0.002〜0.02秒程度の時間であるが、キャリッジの速度が約300〜900mm/secであるので、キャリッジの移動距離的には、0.6mm〜18mmの長さである。一般人の目視では、50μm〜80μmの数値が最小認識寸法単位であるので、上記の数値は容易に、画像バラつき、画像以上としては認識可能な数値範囲である。つまり、僅かに千分の2秒程度の時間差が影響する画像品位を問題としているのである。通常、インクジェット記録装置の吐出周期は5〜20KHzであるので、0.002秒間の間に10発〜40発の吐出を行っている。これに、複数の色(最低3色)を考慮すると、30発〜120発の着弾が発生し、更にこれにサテライトの着弾も考慮すれば、記録媒体には60発〜240発のインク滴が着弾していることになる。
【0016】
本実施形態の記録装置は、図3(b)および図2に示すようにキャリッジ3の移動範囲の両端部に、1対の空気制御窓770を備えている。そして各空気制御窓770には空気制御窓770を開閉自在なシャッタ700がそれぞれ設けられており、キャリッジ3が設けられた記録空間と空間750とを仕切ることが可能に構成されている。図3(b)はシャッタ700が開いている状態を示している。このように空気制御窓770が開いている場合、記録空間と空間750との間で空気の流動が可能になる。このように空気制御窓770が開いており、キャリッジ3が矢印Fの方向(以下、この方向を+方向とする)に加速移動する場合、空気制御窓770の後部の空間750から大量の空気が流出する。これによって隙間51、52における空気の流速は低減する。空気制御窓770を閉じる際にシャッタ700は、インクジェット記録装置のシャーシ71、71’と接することで閉じるように構成されている。図3(b)ではシャッタ700は、上方向に伸延し、シャーシ71’と摺接することで、キャリッジ3が設けられている記録空間と空間750との間を遮蔽する(仕切る)ことが可能な構成となっている。遮蔽する相手部位はシャーシ71、71’ではなく筐体100の一部であってもよい。
【0017】
図4は、本実施形態のシャッタ700を示した斜視図である。シャッタ700は図のように、窓駆動機構721によって上下に移動可能に構成されており、このようなシャッタ700の上下動により空気制御窓770を開閉する。
【0018】
ところで、等速度記録動作中において空気制御窓770は、シャッタ700によって閉じられた状態となり、プラテン7上を通過中のキャリッジ3と記録媒体13との間に形成される紙間710における空気の流れが多くなるように維持される。何故、等速記録動作中は空気制御窓770を遮蔽して、紙間710への流入気流速度を上げた方が好ましいのかと言えば、記録ヘッド4から吐出される液滴により空気の流れが乱れて部分的に旋回渦が発生し、通称風紋なる濃淡模様の擬似画像が発生する。しかし、紙間710における空気の流れが多く、流入気流が高いとこのような風紋は発生しないことがわかっている。そのため、等速記録動作中は空気制御窓770を遮蔽して、紙間710への流入気流速度を上げることで風紋の発生を抑えている。
【0019】
一般的な(密閉度の低い)記録装置では、キャリッジ3が往復シリアル運動を行うために減速し始めると、当然ながら紙間710への流入空気の速度は減少をはじめる。しかし、本実施形態の記録装置のようにほとんど密閉された構成の筐体においては、逆にキャリッジ3が移動方向前方の空気を圧縮することで逃げ場を失う空気が、紙間710へ大量に流れ込み始める。従って、キャリッジ3の移動方向とは逆方向(以下、この方向を−方向とする)に紙間710における空気の流入速度が増大することになる。そこで、本実施形態ではキャリッジ3が減速移動中には、キャリッジ3の移動方向前方の空気制御窓770を開く。その場合、減速移動中における紙間710への(−方向の)空気流入速度が0.5〜2.0m/secになるようにシャッタ700開き量を制御する。またその場合、キャリッジ3の移動方向後方側の空気制御窓770は閉じられていて、先方側の空気制御窓770が適時に開放している方が好ましい。
【0020】
次に、キャリッジ3が減速終了し停止する。この段階において、紙間710における空気の流れはほぼ停止状態となる。しかしながら、キャリッジ3後方の空気は流体という特徴により、キャリッジ3が減速・停止するにもかかわらず、+方向への流れが生じている。キャリッジ3は、0.02〜0.05秒という極めて短い時間を経て停止するが、空気のような流体は構造物体のように減速停止できないからである。その後、キャリッジ3は反転し逆方向(−方向)への加速を開始する。加速時間は、0.02〜0.05秒程度(各種記録装置の記録中の等速度に依存して異なる)であるが、前述のように+方向の運動量を持った空気の運動により、紙間710へより強く空気が流入してくる。
【0021】
次にキャリッジ3が−方向に加速中には、本実施形態のような密閉された状態ではキャリッジ3の後方の空間における空気が膨張され気圧が低下する。そのため、紙間710への空気の流れ込みが多くなり、紙間710における空気の流速が速くなる。そこで、本実施形態ではキャリッジ3−方向への加速時に、キャリッジ3後方の空気制御窓770は、紙間710における空気の流速が0.5〜2.0m/secとなるように適宜開放する。キャリッジ3の前方の空気制御窓770も、紙間710における空気の流速が0.5〜2.0m/secとなるように適時開放する。この場合、前方の空気制御窓770の開放度合いは後方の空気制御窓770よりは少ない開放度合いである。
【0022】
図5は、空気制御窓が無い従来の記録装置における紙間710の流入空気の速度ベクトルをシミュレーションした結果を示したグラフであり、図6は本実施形態における紙間710の流入空気の速度ベクトルを計算した結果を示したグラフである。図5、図6における流入空気の速度は、紙間710における記録ヘッド310のインクが吐出される面(通称フェイス面)と記録媒体13との間の中央位置における空気流速の絶対値を示している。図5中の領域ACの部分は、キャリッジ3の加速あるいは減速の領域を示しており、図6中の領域DOの部分は、開閉制御窓770が開放されている時間領域を示している。シミュレーションの方法としては、図1に示した記録装置3次元のCAD図を基にして、有限要素法を用いてキャリッジ3をシリアル運動させる流体計算を実施した。この流体計算ソフトは市販されている汎用流体計算ソフトウェアに類似のものであり、その計算精度は高く、ほぼ実際の現象に近い流れ速度を算出できる。
【0023】
本実施形態の空気制御窓770を設けた記録装置における紙間710での流速と従来の記録装置における紙間710での流速とを比較すると、本実施形態つまり図5の方が、流入速度が低めに変化していることがわかる。これは空気制御窓700の制御が有効に作用しているためである。その結果、図6における紙間710の流入気流速度は、ほぼ0.5〜2.0m/secの間で変化している。流入気流速度が、0.5m/sec以下では、気流ヨレが発生し風紋現象が発生することは過去の事例より判明している。逆に、瞬間的にも流入気流速度が2.5m/secを超える場合は、例えば、2.5m/secでは、インクジェット液滴のサテライトが紙間710での流入空気の影響により飛翔中に流され所定の着弾位置よりズレる現象が発生する。このような状況では、縁無し記録での良好な画像形成は困難である。
【0024】
そこで、本実施形態のように空気制御窓770を用いて流入空気が2.0m/sec以下になるように制御することで、この問題は実際の記録装置でも解決した(数値実験上では、2.03m/sec程度であったが、2.0m/secとした)。
【0025】
図7は、本実施形態のインクジェット記録装置の制御構成を示すブロック図である。CPU600はメインバスライン605を介して各部の制御およびデータ処理を実行する。すなわち、CPU600は、ROM601に格納されるプログラムに従い、記録ヘッド駆動制御、キャリッジ駆動制御およびデータ処理、開放制御窓770の制御を含めて以下に説明する各部を介して制御する構成のものである。RAM602は、このCPU600によるデータ処理等のワークエリアとして用いられ、また、これらメモリにはその他にハードディスク等がある。画像入力部603は、ホスト装置(不図示)とのインターフェースを有し、ホスト装置から入力した画像を一時的に保持する。画像信号処理部604は、色変換、二値化等の外、データ処理を実行する。操作部606はキー等を備え、これによりオペレータによる制御入力等を可能にする。回復系制御回路607ではRAM602に格納される回復処理プログラムに従って予備吐出等の回復動作を制御し、回復系モータ608は、記録ヘッド613とこれに対向離間するクリーニングブレード609やキャップ610、吸引ポンプ611を駆動する。記録ヘッド駆動制御回路615は、記録ヘッド613のインク吐出用電気熱変換体の駆動を制御し、通常、予備吐出や記録のためのインク吐出を記録ヘッド613に行わせる。さらに、キャリッジ駆動制御回路616および紙送り制御回路617も同様に、プログラムに従い、それぞれ、キャリッジ3の移動および紙送りを制御する。また、空気制御窓の開閉動作機構制御回路720も当該プログラムにより制御されることで、空気制御窓770の自動的な最適な開閉が実行される。空気制御窓770の窓駆動機構721は、モータによる開閉を用いているが、電磁アクチュエータや電磁リニアスライダ、もしくは、空気圧、あるいは油圧作動方式の機構であっても良い。キャリッジ3の加速度や、キャリッジ3の位置に合致した開放度合を実現できる物であればよい。好ましくは、開閉の位置や開放速度などを能動的に自在に制御できる機構が望ましく、モータ制御や電磁アクチュート方式などを複合させた機能構成であってもよい。また、記録ヘッド613のインク吐出用の電気熱変換体が設けられている基板には、保温ヒータが設けられており、記録ヘッド内のインク温度を所望設定温度に加熱調整することができる。またサーミスタ612は、同様に上記基板に設けられているもので、実質的な記録ヘッド内部のインク温度を測定するためのものである。サーミスタ612も同様に、基板にではなく外部に設けられていても良く、記録ヘッドの周囲近傍にあっても良い。
【0026】
図8は、本実施形態の記録装置の記録処理における各工程を示したフローチャートである。記録処理が開始されると、ステップS001で紙送り制御回路によって記録媒体の搬送が行われる。所定の搬送量に到達すると、CPU600はキャリッジ制御回路610に起動処理命令(ROM中に記憶されたキャリッジの時刻・位置情報に基づく加速度・減速度・等速度に従った移動の処理命令および画像情報に基づく記録素子への記録処理命令)を発する。これによってステップS002でキャリッジ3を起動させる。ステップS002ではキャリッジ3と同時に、CPU600が開閉制御窓駆動回路720に窓駆動機構721の起動処理命令(ROM中に記録された開閉制御窓の時刻・位置情報に基づく開放量に従った処理命令)を発する。そしてこれによって空気制御窓770のシャッタ700が起動される。これにより、キャリッジ3の位置や加速度・減速度・移動速度に応じて、空気制御窓770の開放量が適時適量に維持される。空気制御窓770の開放量はROM602中に数値化してプログラム保存されているものであるが、紙間710における流入気流の速度が計測出来るセンサなどを搭載可能であれば、その計測データにおいて適時開放量を調整するようにしても良い。その後、ステップS003で、画像情報に基づいて記録ヘッドからインクが吐出されることで記録媒体に対して記録が行われる。この記録の最中も継続して空気制御窓770の制御は適宜行われている。その後、ステップS004ですべての記録が完了したかを確認して、完了していなければステップS001に戻り、完了していればステップS005で記録媒体の排出を行い、記録処理は終了になる。
【0027】
このように、キャリッジ3の移動方向および加減速にあわせて、キャリッジ移動範囲の両端に設けられた空気制御窓を開閉する。これによって、記録画像不具合を低減することが可能なインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法を実現することができた。
【0028】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0029】
図9は、本実施形態におけるインクジェット記録装置(以下、単に記録装置ともいう)1の構成を示した断面概略図である。本実施形態の記録装置は第1の実施形態とは異なり、空気制御窓770におけるシャッタ800は、記録装置の上部に配置されており、上から下へと遮蔽する構成となっている。この場合の特徴は、キャリッジ3と記録媒体13との間である紙間710と、空気制御窓770の開放部とを極力近づけることが可能になる利点がある。第1の実施形態(図2)の場合、シャッタ700の先端は空気制御窓770を完全密閉する際、キャリッジ3の上側付近に位置することになる。したがってシャッタ700を微少開放の際の開放位置もキャリッジ3の上側付近になり、キャリッジ3の下側にある紙間710とは離れている。そのため、微少開放した際の影響を比較的受けにくい。そこで、本実施形態では図8のように、シャッタ800が記録装置の上部から下部に向かうことで空気制御窓770を閉じるように構成されており、シャッタ800の先端は、空気制御窓770を完全密閉する際、紙間710とほぼ同じ高さ(水平位置)に位置する。そのため、微少開放する際は、紙間710とほぼ同じ高さの位置に開放部を設けることができ、紙間流入気流制御を行うには有効である。実際に、紙間への流入気流速度が急峻に変化するのは、完全密閉の瞬間であるので、この制御応答に関しては、上から下への開放制御窓770の制御方法が好ましい。
【0030】
このように、キャリッジ3の移動方向および加減速にあわせて、キャリッジ移動範囲の両端に設けられた空気制御窓を、空気制御窓の上部に設けられたシャッタの摺動動作によって開閉する。これによって、記録画像不具合を低減することが可能なインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法を実現することができた。
【0031】
(第3の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第3の実施形態を説明する。本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0032】
図10は、本実施形態におけるインクジェット記録装置(以下、単に記録装置ともいう)1の構成を示した断面概略図である。本実施形態の記録装置は第1の実施形態とは異なり、空気制御窓770におけるシャッタ900は、記録装置の奥から手前(図9紙面の垂直方向)に開閉す機構になっている。
【0033】
図11は、本実施形態のシャッタ900を示した斜視図である。シャッタ900は図のように窓駆動機構721によって前後(手前と奥)に移動可能に構成されており、この動作によって空気制御窓770を開閉可能になっている。この場合の制御上の利点は、開閉制御窓900の自重があまり影響しないということである。このために、開閉制御において駆動力の低いモータなどでの開閉制御が容易であり、電力容量が少ない場合において有効である。
【0034】
このように、キャリッジ3の移動方向および加減速にあわせて、キャリッジ移動範囲の両端に設けられた空気制御窓を、空気制御窓の側部に設けられたシャッタが、記録時の記録媒体の搬送方向を含む方向にスライドすることで開閉する。これによって、記録画像不具合を低減することが可能なインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法を実現することができた。
【0035】
(第4の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第4の実施形態を説明する。本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0036】
図12は、本実施形態におけるインクジェット記録装置(以下、単に記録装置ともいう)1の構成を示した断面概略図である。本実施形態の記録装置は第1の実施形態とは異なり、空気制御窓770におけるシャッタ1000は、回転することで空気制御窓770を開閉売ることが可能な構成になっている。
【0037】
図13は、本実施形態のシャッタ1000を示した斜視図である。シャッタ1000は図のように3枚のパネルから構成されており、各パネルが回転することで空気制御窓770の開閉が可能である。この方法の利点は、シャッタ1000を設ける部分のスペースが少ない場合でも、各パネルを回転させることで、広い面積の開放部を構成することが可能になる。
【0038】
なお、本実施形態ではシャッタ1000を3枚のパネルで構成したが、これに限定するものではなく、自由な枚数で構成することが可能である。
【0039】
このように、キャリッジ3の移動方向および加減速にあわせて、キャリッジ移動範囲の両端に設けられた空気制御窓を、シャッタの回転動作によって開閉する。これによって、記録画像不具合を低減することが可能なインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法を実現することができた。
【0040】
(第5の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第5の実施形態を説明する。本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0041】
図14は、本実施形態におけるインクジェット記録装置(以下、単に記録装置ともいう)1の構成を示した断面概略図である。本実施形態の記録装置は、空気の迂回路を筐体内部に持たず、筐体外部の大気空間を迂回路空間にしている。つまり、筐体の側部に大気空間と繋がる空気制御窓770が設けられている。そのため、記録装置の筐体の両端部にシャッタ1100が設けられており、キャリッジの走査に伴って適宜シャッタ1100が開くように構成されている。この方法の利点は、記録装置の横幅を10〜50mm程度短縮可能とすることが出来ることである。しかし、キャリッジ3の加速・減速時に伴って、記録装置の両側に開放空間が発生することで、異物や大きなゴミ、もしくは昆虫などが侵入したり、あるいは指などを挟み込む懸念点が発生する。さらに、インクミストの記録装置機外部への流出の懸念点なども発生する。
【0042】
なお、本実施形態のシャッタ1100の開き方は、上記第1から第4の実施形態のいずれの構成によるものでもよい。
【0043】
このように、記録装置の筐体の側部に設けられた大気空間と繋がる空気制御窓をキャリッジ3の移動方向および加減速にあわせて開閉する。これによって、記録画像不具合を低減することが可能なインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法を実現することができた。
【符号の説明】
【0044】
1 インクジェット記録装置
3 キャリッジ
4 記録ヘッド
13 記録媒体
700 シャッタ
710 紙間
770 空気制御窓
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドを搭載して移動可能な移動手段と、前記移動手段の移動方向と交差する方向に記録媒体を搬送する搬送手段と、筐体と、を備え、該筐体の内部で前記移動手段と前記搬送手段との動作とともに前記記録ヘッドから前記記録媒体に対してインクを吐出することで記録を行うインクジェット記録装置において、
前記移動手段が移動可能な範囲の端部には、空気制御窓および迂回路空間が設けられており、前記空気制御窓は、前記移動手段が設けられている記録空間と前記迂回路空間との間で、前記移動手段の移動方向および加減速に応じて開閉され、前記記録ヘッドと前記記録媒体との間の空気の流れを制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記空気制御窓および前記迂回路空間は、前記移動手段が移動可能な範囲の両端部で、1対となって設けられていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記空気制御窓および前記迂回路空間は、前記筐体の内部に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記迂回路空間は、前記筐体の外部に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記移動手段が加速移動あるいは減速移動中には、前記記録ヘッドと前記記録媒体との間の空気の流れを所定の速度にするために、前記空気制御窓を開くことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記移動手段が移動中には、前記記録ヘッドと前記記録媒体との間の空気の流速が前記移動手段に対して0.5〜2.0m/secになるように前記空気制御窓の開閉を制御することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記移動手段が加速中には、前記移動手段の移動方向の後方に設けられている前記空気制御窓が、前記移動手段の移動方向の前方に設けられている前記空気制御窓よりも広く開かれていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記移動手段が減速中には、前記移動手段の移動方向の後方に設けられている前記空気制御窓が、前記移動手段の移動方向の前方に設けられている前記空気制御窓よりも狭く開かれていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記空気制御窓は、摺動動作により開閉されることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記空気制御窓は、回転動作により開閉されることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
記録ヘッドを移動させる移動工程と、前記移動工程における前記記録ヘッドの移動方向と交差する方向に記録媒体を搬送する搬送工程と、を備え、前記記録ヘッドから前記記録媒体に対してインクを吐出することで記録を行う記録工程と、を備えたインクジェット記録方法において、
前記移動工程における前記記録ヘッドが移動可能な範囲の端部に設けられた、空気制御窓を前記記録ヘッドの移動方向および加減速に応じて開閉することで、前記記録ヘッドが移動する記録空間と前記空気制御窓によって仕切られた迂回路空間と、前記記録空間と、の間の空気の流動を可能にし、前記記録ヘッドと前記記録媒体との間の空気の流れを制御することを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項1】
記録ヘッドを搭載して移動可能な移動手段と、前記移動手段の移動方向と交差する方向に記録媒体を搬送する搬送手段と、筐体と、を備え、該筐体の内部で前記移動手段と前記搬送手段との動作とともに前記記録ヘッドから前記記録媒体に対してインクを吐出することで記録を行うインクジェット記録装置において、
前記移動手段が移動可能な範囲の端部には、空気制御窓および迂回路空間が設けられており、前記空気制御窓は、前記移動手段が設けられている記録空間と前記迂回路空間との間で、前記移動手段の移動方向および加減速に応じて開閉され、前記記録ヘッドと前記記録媒体との間の空気の流れを制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記空気制御窓および前記迂回路空間は、前記移動手段が移動可能な範囲の両端部で、1対となって設けられていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記空気制御窓および前記迂回路空間は、前記筐体の内部に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記迂回路空間は、前記筐体の外部に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記移動手段が加速移動あるいは減速移動中には、前記記録ヘッドと前記記録媒体との間の空気の流れを所定の速度にするために、前記空気制御窓を開くことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記移動手段が移動中には、前記記録ヘッドと前記記録媒体との間の空気の流速が前記移動手段に対して0.5〜2.0m/secになるように前記空気制御窓の開閉を制御することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記移動手段が加速中には、前記移動手段の移動方向の後方に設けられている前記空気制御窓が、前記移動手段の移動方向の前方に設けられている前記空気制御窓よりも広く開かれていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記移動手段が減速中には、前記移動手段の移動方向の後方に設けられている前記空気制御窓が、前記移動手段の移動方向の前方に設けられている前記空気制御窓よりも狭く開かれていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記空気制御窓は、摺動動作により開閉されることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記空気制御窓は、回転動作により開閉されることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
記録ヘッドを移動させる移動工程と、前記移動工程における前記記録ヘッドの移動方向と交差する方向に記録媒体を搬送する搬送工程と、を備え、前記記録ヘッドから前記記録媒体に対してインクを吐出することで記録を行う記録工程と、を備えたインクジェット記録方法において、
前記移動工程における前記記録ヘッドが移動可能な範囲の端部に設けられた、空気制御窓を前記記録ヘッドの移動方向および加減速に応じて開閉することで、前記記録ヘッドが移動する記録空間と前記空気制御窓によって仕切られた迂回路空間と、前記記録空間と、の間の空気の流動を可能にし、前記記録ヘッドと前記記録媒体との間の空気の流れを制御することを特徴とするインクジェット記録方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−280119(P2010−280119A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134911(P2009−134911)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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