説明

インクジェット記録装置および記録ヘッドのメンテナンス方法

【課題】インクジェット記録ヘッドのメンテナンスを確実に実施し、メンテナンス性能の低下を防ぐことのできるインクジェット記録装置および記録ヘッドのメンテナンス方法を提供する。
【解決手段】インクジェット記録装置が備える記録ヘッドのメンテナンス装置とメンテナンス方法に関するものであって、メンテナンス装置は、記録ヘッドのノズル面に付着したインク等を吸引する少なくとも2個の吸引ノズルと、記録ヘッドのノズル面を払拭するワイパーと、ワイパー周りの吸引を行うワイパー吸引部とを備え、記録ヘッドのノズル面を吸引および払拭する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置が備える記録ヘッドのメンテナンスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、記録媒体へ記録する装置として、インクジェット方式の記録装置(インクジェット記録装置)が知られている。インクジェット記録装置は、記録ヘッドに形成されたノズルからインクを吐出して記録を行うもので、高精度な画像を高速で記録することが容易に行えるという利点を有している。
【0003】
インクジェット記録装置は、記録ヘッドのノズルからインクを吐出する際に、記録ヘッドのノズル面(インク吐出面)に結露を生じたり、飛散したインク滴や吐出したインクの記録媒体からの跳ね返りインクが付着したりする。また、ノズル面に空気中のゴミが付着することもある。
【0004】
ノズル面に、このような結露、インク(滴)又はゴミ等が付着すると、吐出したインク滴の吐出方向や吐出速度にバラツキが生じ、画像品質の低下につながる。そのため、記録ヘッドのノズル面に付着したインク等の付着物を取り除く動作(作業)が必要となる。このような動作として、付着物を、例えば、ワイパー(ブレード)で払拭したり、ポンプ吸引を行ったりする方法が知られている。特に、ワイパーで拭き取る方法は、構成が容易であり、効果も高いことからよく行われている。
【0005】
しかしながら、単にワイパーで付着物を拭き取るだけの方法では、ワイパーの先端にインク等の付着物が残った状態で更にノズル面を拭き取ると、逆にノズル面に付着物を押し込んでしまい、ノズルがつまり、つまったノズルからインクが吐出できずに吐出不良が発生して、画像品質の低下を招くことになるという問題がある。
【0006】
そこで、この問題を解決するために、ワイパーにインク等を吸引する吸引口を設けたり、ワイパーに付着したインク等をインク吸収体等の別部材で除去したりするクリーニング手法について各種の技術が提案されている。
【0007】
例えば特許文献1には、弾性ブレード(ワイパー)にエア吸引用貫通孔を設け、記録ヘッドのノズル面の払拭動作時に吸引を行うことが記載されている。しかし、この方法では、ワイパーの周囲に付着したインク等の吸引ができず、払拭性能が低下したり、ワイパーが劣化しやすくなったりする。また、ワイパーが払拭と吸引口の役割を兼ねているため複雑な構造となり、製造コストがかかることになる。
【0008】
また、特許文献2には、ノズル面を払拭する前にワイパーをスポンジ状のクリーナーに摺接させることでワイパーに付着したインクや塵埃を除去する方法が記載されている。しかし、この方法では、クリーナーはワイパーとは別の位置に設けられており、ワイパーをクリーニングするためにはワイパーをクリーナーの位置まで移動させる必要がある。そのため、ワイパー動作中にはワイパーに付着したインクや塵埃を除去することができず、インクや塵埃によって払拭性能が低下するおそれがある。また、クリーナーは消耗品であるため、定期的にクリーナーを交換する必要があり、不経済である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−115083号公報
【特許文献2】特開2005−104091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
インクジェット記録装置による記録媒体への記録にあたり、記録される画像の品質を確保することは、実現されるべき重要な事項の一つである。そして、優れた品質の画像記録のためには、記録ヘッドのメンテナンスを確実に実施する必要がある。
【0011】
本発明は、インクジェット記録ヘッドのメンテナンスを確実に実施し、メンテナンス性能の低下を防ぐことのできるインクジェット記録装置および記録ヘッドのメンテナンス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題に鑑みなされた本発明は、インクジェット記録装置が備える記録ヘッドのメンテナンス装置とメンテナンス方法に関するものであって、メンテナンス装置は、記録ヘッドのノズル面に付着したインク等を吸引する少なくとも2個の吸引ノズルと、記録ヘッドのノズル面を払拭するワイパーと、ワイパー周りの吸引を行うワイパー吸引部とを備え、記録ヘッドのノズル面を同時に吸引および払拭することを特徴とするものである。
【0013】
本発明の第1の課題解決手段は、ノズルからインクを吐出し、記録媒体に画像を記録可能な記録ヘッドと、前記記録ヘッドのメンテナンスを行うメンテナンス装置と、前記記録ヘッドを前記メンテナンス装置に対して接近離間移動する記録ヘッド移動部と、を備えたインクジェット記録装置であって、前記メンテナンス装置は、メンテナンスユニットと、メンテナンスユニット移動機構と、を備え、前記メンテナンスユニットは、前記記録ヘッドのノズル面に付着したインク等を吸引する少なくとも2個の吸引ノズルと、前記記録ヘッドのノズル面を払拭するワイパーと、ワイパー周りの吸引を行うワイパー吸引部と、を備え、前記メンテナンスユニットは、前記記録ヘッドに対して相対的に移動して前記記録ヘッドのノズル面を吸引および払拭することを特徴とする。
【0014】
これによれば、吸引ノズルによる吸引と、ワイパーによる払拭を行い、さらに、ワイパー周りの吸引を同時に行うことで、ワイパーに付着するインク等を減少させ、払拭性能を維持することができる。また、吸引ノズルとワイパーが、同一メンテナンスユニットに搭載され、1つの駆動手段で同時に移動可能であるので、装置の構成を簡素化でき、制御もしやすくなる。吸引ノズルとワイパーが別々の駆動手段でそれぞれが動く場合に比べて部品点数も少なくできるので装置コストも軽減できる。
【0015】
第2の課題解決手段は、前記メンテナンスユニットは、前記吸引ノズルと、前記ワイパー吸引部とが前記メンテナンスユニット内でつながり、吸引手段で一括して吸引する構造となっていることを特徴とする。
【0016】
これによれば、吸引ノズルとワイパー吸引部の二種の吸引を1つの吸引手段でまとめて行うことで、装置コストを軽減できる。
【0017】
第3の課題解決手段は、前記メンテナンスユニットは、少なくとも2個の前記吸引ノズルが前記ワイパーを挟んだ両側に配置された構造となっていることを特徴とする。
【0018】
これによれば、第1の吸引ノズルで記録ヘッド面に付着したインクを吸引し、次にワイパーで払拭を行い、さらに払拭動作により横に掻き出されたインクを第2の吸引ノズルで吸引する構成になっているので、ヘッド面にインク残りを発生させない良好なメンテナンス作業が行える。
【0019】
第4の課題解決手段は、前記吸引ノズルは、前記記録ヘッドのノズル口との接触を避けるように配置したことを特徴とする。
【0020】
これによれば、吸引ノズルが記録ヘッドのノズル口には接触せずに記録ヘッドのノズル面に付着したインクの吸引を行うので、ノズル口を傷つけることなくインクを吸引することができる。
【0021】
第5の課題解決手段は、前記メンテナンスユニットは、前記メンテナンスユニットのベース上に弾性部材を介して配置されることを特徴とする。
【0022】
これによれば、弾性体により吸引ノズルおよびワイパーの、記録ヘッドのノズル面への接触力を緩和でき、部品間の破損や摩耗を軽減でき、記録ヘッドの寿命を向上させることができる。
【0023】
第6の課題解決手段は、前記メンテナンスユニットは、前記ワイパーを保持するワイパーホルダを備え、前記ワイパーホルダの側面に、空気の通り道となる開口部を設けたことを特徴とする。
【0024】
これによれば、ワイパーホルダ側面の一部に空間ができることにより、空気が通りやすくなり、且つワイパーホルダの姿勢を維持できるため、ワイパー周りのインクを効率よく吸引することができる。
【0025】
第7の課題解決手段は、ノズルからインクを吐出し、記録媒体に画像を記録する記録ヘッドのノズル面に付着したインク等を、メンテナンスユニットによって吸引および払拭する記録ヘッドのメンテナンス方法であって、記録ヘッド移動部を介して、前記記録ヘッドを、記録ヘッド待機位置から前記払拭を行うメンテナンス装置側へ移動するメンテナンス装置側移動工程と、前記記録ヘッドのノズル面を、メンテナンスユニットが前記記録ヘッドに対して相対的に移動して、第一のノズルで吸引し、ワイパーで払拭し、第二のノズルで吸引し、同時にワイパー吸引部でワイパー周りを吸引する払拭工程と、前記払拭工程が終了した場合、前記記録ヘッド移動部を介して、前記メンテナンス装置から離間する、記録ヘッド待機位置側へ前記記録ヘッドを移動する記録ヘッド待機位置側移動工程と、を含むことを特徴とするメンテナンス方法である。
【0026】
これによれば、吸引ノズルによる吸引と、ワイパーによる払拭を行い、さらに、ワイパー周りの吸引を同時に行うことで、効率良く吸引および払拭するメンテナンスを行うことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、インクジェット記録ヘッドのメンテナンスを確実に実施し、メンテナンス性能の低下を防ぐことのできるインクジェット記録装置および記録ヘッドのメンテナンス方法を提供することができる。






【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】インクジェット記録装置の外観を示す図
【図2】色毎の記録ヘッドの配列を示す図
【図3】メンテナンス装置40の側面を示す図およびメンテナンスユニット410の平面、正面を示す図
【図4】記録ヘッドのノズル面とメンテナンスユニットの吸引ノズルが接触する様子を示す図
【図5】吸引ノズル401の側面の拡大図
【図6】ワイパーホルダ404の形状を示す図
【図7】弾性部材408の形状を示す図
【図8】弾性部材408の別の形態の形状を示す図
【図9】記録ヘッドのワイピング動作を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を反映した上記課題解決手段を実施するための実施形態について、図面を用いて以下に詳細に説明する。上記課題解決手段は以下に記載の構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。
【0030】
(インクジェット記録装置の概要)
インクジェット記録装置の概要について、図1および図2を用いて説明する。図1は、インクジェット記録装置の全体(正面)を示す図である。インクジェット記録装置1は、キャリッジ10と記録媒体搬送装置(以下、搬送装置とする)20とメンテナンス装置40とインク供給装置50とを備える。なお、インクジェット記録装置1は、いわゆる走査型の記録装置であって、キャリッジ待機位置に配置されたキャリッジ10を、記録媒体30の搬送方向に対し垂直方向に、所定の範囲、移動させながら、記録媒体30に画像を記録する。
【0031】
キャリッジ10は、タイミングベルト等のキャリッジ駆動機構60(記録ヘッド移動部に対応)により水平方向(図1のキャリッジ10内に記載の矢印(移動方向)参照)に移動可能に設置されている。キャリッジ10は、布帛その他の記録媒体30に、画像を記録する記録手段としての記録ヘッド110(図2)を備える。記録ヘッド110には、インクが吐出されるノズルが等間隔に配列されており、これにより、記録媒体30に画像を記録する。
【0032】
搬送装置20は、ベルトコンベアやフリーローラーのような回転体により構成され、記録媒体30を搬送する。具体的には、記録媒体30が、搬送装置20の上面(図1においてキャリッジ10に対向する面)に積載され、搬送装置20は、キャリッジ10直下に記録媒体30を搬送する。そして、記録ヘッド110から吐出されたインクによって画像が記録された後、搬送装置20は、記録媒体30を所定の位置まで搬送する。
【0033】
インク供給装置50は、その内部に設置され、各色のインクを各々収容したメインタンク(図示せず)を含み、メインタンクからインク供給管70を介して、キャリッジ10内の記録ヘッド110までインクを送る送液機構を備えている。
【0034】
図2は、色毎の記録ヘッドの配列を示す図である。キャリッジ10は、図2に示すように、例えば、シアン(Cyan)、マゼンダ(Magenta)、イエロー(Yellow)、ブラック(Black)の色毎に、記録ヘッド110C、110M,110Y,110Kを備える。記録ヘッド110C、110M,110Y,110Kは、キャリッジ10の移動方向、換言すれば、後述する払拭動作時のワイパー403の移動方向に直交する方向に配列されている。
【0035】
(メンテナンス装置の概要)
メンテナンス装置の概要について、図1および図3を用いて説明する。メンテナンス装置40は、キャリッジ10がメンテナンス装置40の上部へ移動してきた際に、記録ヘッドのノズル面120を吸引、払拭する装置である(図1)。
【0036】
図3は、メンテナンス装置40の側面を示す図およびメンテナンスユニット410の平面、正面を示す図である。メンテナンス装置40は、メンテナンスユニット410とメンテナンスユニット昇降機構411、メンテナンスユニット移動機構412からなる。
【0037】
メンテナンスユニット410は、記録ヘッドのノズル面120に付着したインク等を吸引する吸引ノズル401、記録ヘッドのノズル面を払拭するためのワイパー403、ワイパーを保持するためのワイパーホルダ404、吸引ノズル401とワイパーホルダ404を搭載する吸引ブロック406、メンテナンスユニット410を記録ヘッドのノズル面120に突き当てる際に接触力を緩衝させる弾性材料からなる部材(以下、弾性部材とする)408、メンテナンスユニット昇降機構411に繋がるベース409を備える。
【0038】
メンテナンスユニット昇降機構411は、メンテナンスユニット410を記録ヘッドのノズル面120に突き当てるために上下動作を行うためのものであり、例えば、シリンダーのようなアクチュエータによって構成されている。メンテナンスユニット移動機構412は、メンテナンスユニットを記録ヘッドのノズル面120に対して図2の「メンテナンスユニット移動方向の矢印方向」に移動させるものであり、タイミングベルト等によって構成されている。
【0039】
(各部分の説明)
(吸引ノズル)
吸引ノズル401について、図3〜図5を用いて説明する。記録ヘッド110のノズル面120を傷つけないために、吸引ノズル401は記録ヘッドのノズル面120より柔らかく、耐摩耗性や耐薬品性に優れ、高い機械的強度を持つ材料であればその材質については特に限定されるものではないが、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルファイド、ポリテトラフロロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルサルフォン、非晶ポリアリレート、液晶ポリマー、芳香族ポリイミド、ポリアミドイミドのような合成樹脂が好ましく用いられ、使用により劣化した場合には吸引ノズル401のみを交換することもできる構成となっている。
【0040】
吸引ノズル401にはスリット状の吸引口402を有し、2個の吸引ノズル401がワイパー403を挟んだ両側に平行に配置された構造となっている。図4は、記録ヘッドのノズル面120とメンテナンスユニット410の吸引ノズル401が接触する様子を示す図である。吸引ノズル401は、その上部が凹形状となっており、吸引ノズル401の両端部分が記録ヘッドのノズル面の両端部分には接触するが、吸引ノズル401が記録ヘッドのノズル口130の分布範囲には直接接触しないようになっている。このような形状にすることで、記録ヘッドのノズル口130を傷つけることがなく効率よく吸引することができる。具体的には、吸引ノズル中央部のみ0.1〜1.0mm下げ、接触させずとも吸引力を落とさないようにしている。0.1mm未満であると記録ヘッドのノズル面に接して傷つけるおそれがあり、1.0mmを超えると十分に吸引できないおそれがある。また、記録ヘッド110の側面に付着したインク等も吸引できるよう、吸引ノズルの吸引口402の幅は記録ヘッド110の幅よりも大きくする。
【0041】
記録ヘッドのノズル面120は基本的に平滑であるが、記録ヘッド110のネジ部や複数並んだ記録ヘッド110の境目で吸引ノズル401が引っかかり、記録ヘッドのノズル面120にインク残りが発生することがある。そこで、記録ヘッドのノズル面120に接する、吸引ノズル401の角部を傾斜させることで、吸引ノズル401が記録ヘッドのノズル面120に当接した状態で引っかかりなく滑らかに移動できるようにしている。図5は吸引ノズルの側面の拡大図であり、傾斜角度θが15°以下であり、かつ図5に示したDが0.5mm以上であることが好ましい。傾斜角度θが15°を超える、もしくは、Dが0.5mm未満であると、記録ヘッドのノズル面120上の起伏を滑らかに乗り越えられなくなるおそれがある。
【0042】
(ワイパー)
ワイパー403について、図3を用いて説明する。ワイパー403は、単体での交換を可能としており、記録ヘッドのノズル面120を傷つけないために記録ヘッドのノズル面120より柔らかく、耐摩耗性に優れ、弾力性のある材料であればその材質は特に限定するものではないが、天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等が好ましく用いられ、払拭性を向上させるためにコーティング剤でコーティングされていたり、耐久性を向上させるための添加剤が含まれていたりしても構わない。ワイパー403は吸引ノズル401から突出する高さh分だけ記録ヘッドのノズル面120に押し付けられる。具体的な突出高さhは、0.2〜1.0mmが好ましく、0.4〜0.6mmがさらに好ましい。0.2mm未満であると、記録ヘッドのノズル面120に付着したインク等を確実に除去することができなくなり、1.0mmを超えると記録ヘッドのノズル面120を損傷させたりワイパーが劣化しやすくなったりするおそれがある。また、使用により劣化した場合にはワイパー403のみを交換することもできる構成となっている。
【0043】
(ワイパーホルダ)
ワイパーホルダ404について、図3および図6を用いて説明する。ワイパーホルダ404はワイパーを保持するための部材であり、ワイパー403を保持できるような強固な材料であればその材質は特に限定するものではないが、アルミニウム、鉄のような金属、ステンレス鋼のような合金、その他合成樹脂等が挙げられるが、耐薬品性や安価である点からアルミニウムが好ましく用いられる。
【0044】
ワイパーホルダ404側面には空気の通り道として、複数のワイパー開口部405を設けている。ワイパー開口部405がないと、吸引ブロック406とワイパーホルダ404の間に隙間ができず吸引できない、もしくは一様に隙間ができてワイパーホルダ404が回転してしまう。また、ワイパーホルダ404下の吸引ブロック406には空気の通り道として、吸引口407を設けている。ここでは、ワイパー403周りのインクを吸引するためのワイパーホルダ404側面のワイパー開口部405、ワイパーホルダ404下の吸引ブロックの吸引口407をあわせて、ワイパー吸引部と呼ぶ。吸引ノズル401とワイパー吸引部とが吸引ブロック406内でつながり、吸引手段(図示せず)で一括して吸引する構造となっている。
【0045】
図6はワイパーホルダの形状を示す図である。ワイパー開口部405の形状としては図6(a)のようなスリット状の他、図6(b)、図6(c)のような形状等、空気の通り道として機能する形状であればどのような形でも構わない。
【0046】
(弾性部材)
弾性部材408について、図3、図7および図8を用いて説明する。弾性部材408は、メンテナンスユニット410を記録ヘッドのノズル面120に突き当てる際に接触力を緩衝させるためのものであり、その形状は、図3に示すような、いわゆるコイル状のバネでも構わないが、図7に示すような、曲げ成形されたバネ材の薄板からなる弾性部材を用いることもできる。このような形状にすると、メンテナンスユニット410の、メンテナンス動作方向に対して垂直方向への動きを制限でき、確実にメンテナンスユニット410を記録ヘッドに押し当て、インクを除去することが出来る。この場合、バネ材の厚みは0.01mm〜0.50mmが好ましく、0.03〜0.30mmがさらに好ましい。0.01mm未満であると、メンテナンスユニット410を記録ヘッドのノズル面120に突き当てるのに十分な力を得られず、また、メンテナンスユニット410の挙動安定性を保つことができない。0.50mmを超えると、メンテナンスユニット410を押し付ける力が強くなりすぎて記録ヘッドのノズル面120を傷つけるおそれがあり、また、材料のコストも嵩むことになる。弾性部材の材質は、弾力性のあるものであれば特に限定されるものではないが、図3や図7のようなバネ形状であるときはステンレス鋼、炭素鋼、洋白のような合金であることが好ましい。また、図8のような形状とすることもでき、その場合はゴムや合成樹脂のような弾力性のある材料の塊状のものを用いるのが好ましい。
【0047】
(記録ヘッドの払拭動作)
図9は、記録ヘッドのノズル面の払拭動作を説明する図であり、図1に示すインクジェット記録装置1を側面視した場合におけるメンテナンス装置40を示すものである。
【0048】
インクジェット記録装置1は、自装置の制御を司る制御部(図1で図示を省略)を備える。制御部は、インクジェット記録装置1で実行される各種処理(例えば、インクジェット記録処理、以下に説明する払拭動作)を制御する。上記の各種処理は、複数の制御部で実行してもよいし、1つの制御部で実行することもできる。
【0049】
図9(a)は待機状態である。払拭動作は、所定の状況(例えば、一定時間毎、または、所定量の印刷が実行された場合)において開始される。制御装置によって払拭動作が開始されると、キャリッジ駆動機構60が動作し、記録媒体に記録する位置である、記録ヘッド待機位置(図1の状態)にあったキャリッジ10がメンテナンス装置40側に移動する。そして、キャリッジ10がメンテナンス装置40の上部へ移動すると、吸引手段により吸引を開始し、メンテナンスユニット昇降機構411でメンテナンスユニットが上昇し、ワイパー403が記録ヘッドのノズル面120に突き当てられる(図9(b)の状態)。
【0050】
その後、メンテナンスユニット移動機構412により、ワイパー403がノズル面を、ノズル面に付着したインク等を吸引、払拭しながら略水平移動する(図9(b)の矢印参照)。
【0051】
ワイパー403と少なくとも2個の吸引ノズルはメンテナンスユニット上で一体となって移動するが、それぞれの部材の主な役割は次の通りである。第1の吸引ノズル401(記録ヘッドのノズル面へ、先に接する吸引ノズル)で大まかにインク等を吸引する。次に、ワイパー403で記録ヘッドのノズル面120のインク等を払拭し、ワイパー403で払拭されワイパー403周りに付着したインク等をワイパー吸引部(ワイパー開口部405から吸引ブロックの吸引口407を経て)から吸引する。さらに、第2の吸引ノズル401(記録ヘッドのノズル面へ、後に接する吸引ノズル)でワイパー403に掻き出されて記録ヘッドのノズル面120に残留したインク等と、記録ヘッドの境目に残されたインク等を吸引する。吸引ノズル401およびワイパー吸引部を通じて、吸引手段により記録ヘッドのノズル面120に付着するインク等が排出される。
【0052】
メンテナンスユニット410が、記録ヘッド110の他側端まで移動し、完全に通り過ぎてからメンテナンスユニットの移動を停止させ(図9(c)の状態)、メンテナンスユニット昇降機構411の降下に合わせ、メンテナンスユニット410を降下させる。メンテナンスユニット410が記録ヘッドのノズル面120に当接している状態で降下させると、ノズル面にインクが残留してしまう。次に、メンテナンスユニット移動機構412が動作することで、メンテナンスユニット410は、払拭開始時の位置側方向に移動を開始する。そして、メンテナンスユニット410が払拭開始時の位置に戻ると、記録ヘッド移動部は、メンテナンス装置から離間する、記録ヘッド待機位置側へ前記記録ヘッドを移動し、記録ヘッドのノズル面120のワイピング動作は終了する。
【0053】
上記では、メンテナンスユニット410が記録ヘッド110の他側端まで移動した後、メンテナンスユニット昇降機構411を降下させ、降下した状態でメンテナンスユニットを払拭開始時の位置に戻す構成について説明したが、降下した後メンテナンスユニットを払拭開始時の位置に戻さず、記録ヘッド110に対して反対側(図9においては右側)の位置で待機する構成を採用することもできる。この場合、次の払拭はメンテナンスユニットが上昇してワイパー403が記録ヘッドのノズル面120に突き当てられた後、先の払拭とは反対方向に(図9(b)の矢印とは反対方向)にワイパー403がノズル面を、ノズル面に付着したインク等を吸引、払拭しながら略水平移動する。
【0054】
(変形例)
本実施形態の構成は、各種の点を考慮し、次のような構成とすることもできる。上記では、インクジェット記録装置1が走査型であり、記録ヘッドが停止した状態でメンテナンスユニットが移動することで記録ヘッドのノズル面を吸引および払拭する場合について説明したが、インクジェット記録装置1がライン型である場合は、メンテナンスユニットが停止した状態で記録ヘッドが記録ヘッド移動部を介して移動することにより吸引および払拭を行う。記録ヘッドに対してメンテナンスユニットが相対的に移動する構成であればどちらを採用してもよい。なお、ライン型のインクジェット記録装置は、記録媒体30への画像の記録に際し、キャリッジ10は、記録媒体30の搬送方向に対して垂直方向に移動しない。
【符号の説明】
【0055】
1 インクジェット記録装置
10 キャリッジ
20 記録媒体搬送装置
30 記録媒体
40 メンテナンス装置
50 インク供給装置
60 キャリッジ駆動機構
70 インク供給管
110 記録ヘッド
120 記録ヘッドのノズル面
130 記録ヘッドのノズル口
401 吸引ノズル
402 吸引ノズルの吸引口
403 ワイパー
404 ワイパーホルダ
405 ワイパー開口部
406 吸引ブロック
407 吸引ブロックの吸引口
408 弾性部材
409 ベース
410 メンテナンスユニット
411 メンテナンスユニット昇降機構
412 メンテナンスユニット移動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルからインクを吐出し、記録媒体に画像を記録可能な記録ヘッドと、
前記記録ヘッドのメンテナンスを行うメンテナンス装置と、
前記記録ヘッドを前記メンテナンス装置に対して接近離間移動する記録ヘッド移動部と、を備えたインクジェット記録装置であって、
前記メンテナンス装置は、
メンテナンスユニットと、
メンテナンスユニット移動機構と、
を備え、
前記メンテナンスユニットは、
前記記録ヘッドのノズル面に付着したインク等を吸引する少なくとも2個の吸引ノズルと、
前記記録ヘッドのノズル面を払拭するワイパーと、
ワイパー周りの吸引を行うワイパー吸引部と、
を備え、
前記メンテナンスユニットは、前記記録ヘッドに対して相対的に移動して前記記録ヘッドのノズル面を吸引および払拭することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記メンテナンスユニットは、前記吸引ノズルと、前記ワイパー吸引部とが前記メンテナンスユニット内でつながり、吸引手段で一括して吸引する構造となっていることを特徴とする
請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記メンテナンスユニットは、少なくとも2個の前記吸引ノズルが前記ワイパーを挟んだ両側に配置された構造となっていることを特徴とする
請求項1または2のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記吸引ノズルは、前記記録ヘッドのノズル口との接触を避けるように配置したことを特徴とする
請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記メンテナンスユニットは、前記メンテナンスユニットのベース上に弾性部材を介して配置されることを特徴とする、
請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記メンテナンスユニットは、前記ワイパーを保持するワイパーホルダを備え、前記ワイパーホルダの側面に、空気の通り道となる開口部を設けたことを特徴とする
請求項1〜5のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
ノズルからインクを吐出し、記録媒体に画像を記録する記録ヘッドのノズル面に付着したインク等を、メンテナンスユニットによって吸引および払拭する記録ヘッドのメンテナンス方法であって、
記録ヘッド移動部を介して、前記記録ヘッドを、記録ヘッド待機位置から前記払拭を行うメンテナンス装置側へ移動するメンテナンス装置側移動工程と、
前記記録ヘッドのノズル面を、メンテナンスユニットが前記記録ヘッドに対して相対的に移動して、第一のノズルで吸引し、ワイパーで払拭し、第二のノズルで吸引し、同時にワイパー吸引部でワイパー周りを吸引する払拭工程と、
前記払拭工程が終了した場合、前記記録ヘッド移動部を介して、前記メンテナンス装置から離間する、記録ヘッド待機位置側へ前記記録ヘッドを移動する記録ヘッド待機位置側移動工程と、
を含むことを特徴とするメンテナンス方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−212885(P2011−212885A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81316(P2010−81316)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】