説明

インクジェット記録装置および記録物

【課題】良好な光輝性が得られなかった記録媒体に対し、高精細で良好な光輝性画像を高速に形成することができ、また大判対応が可能なインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】インクジェット記録装置100は、活性エネルギー線重合性化合物を含有し着色剤を含有しない重合性インクを記録媒体10に吐出して下地層を形成するラインヘッド1と、下地層に重ねて光輝性インクを吐出して光輝性画像を形成するラインヘッド2と、着色インクを吐出してカラー画像を形成するラインヘッド3と、記録媒体10を移動させる搬送機構11、12と、下地層に活性化エネルギー線を照射する照射部20と、光輝性インクを乾燥させる加熱部30と、を備え、ラインヘッド1は、ラインヘッド2よりも記録媒体の移動方向における上流側に配置され、ラインヘッド3は、ラインヘッド2よりも記録媒体の移動方向における下流側に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置および記録物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光輝性を有する画像が形成された記録物に対する需要が高まっている。光輝性画像を記録するための方法として、従来は、表面が平滑な記録媒体に金属箔を押しつける方法、プラスチックフィルムに金属を真空蒸着する方法、また、記録媒体に光輝性インクを塗布し、更にプレス加工を行う方法などが用いられてきた。しかし、これらは記録工程が煩雑となり、また記録媒体が限られるなどの問題があったため、例えば、特許文献1に示されるように、インクジェット方式を用いて光輝性画像を記録する技術の提案がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−174712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のインクジェット方式による画像形成では、インクが吸収されない媒体や吸収性が著しく低い媒体、また表面の粗い媒体(例えば、布帛、普通紙、粒子径の大きな顔料が塗布された媒体など)の場合には、塗布した光輝性顔料に充分な平滑性が得られず、光が乱反射するために良好な光輝性が得られないという問題があった。また、新たに光輝性顔料を含むインクの塗布を行い、光輝性下地層の形成を行う必要があるため、高速化、大判化のニーズに対応することが難しいという課題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例に係るインクジェット記録装置は、活性エネルギー線重合性化合物を含有し着色剤を実質的に含有しない重合性インクを記録媒体に吐出して下地層を形成する第1のラインヘッドと、光輝性顔料を含む光輝性インクを下地層に吐出して光輝性画像を形成する第2のラインヘッドと、記録媒体を移動させる搬送機構と、下地層に活性化エネルギー線を照射する照射部と、を備え、第1のラインヘッドは、第2のラインヘッドよりも記録媒体の移動方向における上流側に配置されていることを特徴とする。
【0007】
本適用例によれば、第1のラインヘッドは、第2のラインヘッドよりも記録媒体の移動方向における上流側に配置されているため、光輝性インクによる画像を形成する部分に、重合性インクによって、より平滑な下地層を形成しておくことができる。その結果、より光輝性の高い(例えばメタリックな光沢のある)画像を得ることができる。また、インクジェットヘッドがラインヘッドで構成されているため、大判対応が可能であり、かつ高精細で良好な光輝性画像が高速に形成できるインクジェット記録装置を提供することができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例に係るインクジェット記録装置において、着色剤を含む着色インクを吐出してカラー画像を形成する第3のラインヘッドを更に備え、第3のラインヘッドは、第2のラインヘッドよりも記録媒体の移動方向における下流側に配置されていることを特徴とする。
【0009】
本適用例によれば、第3のラインヘッドが、第1のラインヘッドよりも、更には第2のラインヘッドよりも記録媒体の移動方向における下流側に配置されているため、光輝性のある下地層に重ねて着色インクによる画像を形成することができる。その結果、高精細で良好な光輝性カラー画像(カラーメタリック画像など)を形成することができる。また、インクジェットヘッドがラインヘッドで構成されているため、大判対応が可能であり、かつ高精細で良好な光輝性カラー画像が高速に形成できるインクジェット記録装置を提供することができる。
【0010】
[適用例3]適用例1に係るインクジェット記録装置において、平均粒子径200nm以上の顔料を含む下地インクを吐出して下地画像を形成する第4のラインヘッドを更に備え、第4のラインヘッドは、第1のラインヘッドよりも記録媒体の移動方向における上流側に配置されていることを特徴とする。
【0011】
本適用例によれば、第4のラインヘッドは、第1のラインヘッドよりも記録媒体の移動方向における上流側に配置されているため、比較的粒度の荒い平均粒子径200nm以上の顔料を含む下地インクを先に記録媒体に吐出し、そこに重ねて重合性インクによる層を形成することができる。その結果、より平滑に形成された下地層が形成できる。その上層に光輝性インクによる画像を形成することができるため、光輝性顔料が平滑に配列し高い光沢(光輝性)を発揮させることができる。従って、大判対応が可能であり、かつ高精細で良好な光輝性画像が高速に形成できるインクジェット記録装置を提供することができる。
【0012】
[適用例4]適用例1に係るインクジェット記録装置において、着色剤を含む着色インクを吐出してカラー画像を形成する第3のラインヘッドと、平均粒子径200nm以上の顔料を含む下地インクを吐出して下地画像を形成する第4のラインヘッドと、を更に備え、第3のラインヘッドは、第2のラインヘッドよりも記録媒体の移動方向における下流側に配置され、第4のラインヘッドは、第1のラインヘッドよりも記録媒体の移動方向における上流側に配置されていることを特徴とする。
【0013】
本適用例によれば、第3のラインヘッドは、適用例1における第2のラインヘッドよりも記録媒体の移動方向における下流側に配置され、第4のラインヘッドは、第1のラインヘッドよりも記録媒体の移動方向における上流側に配置されている。そのため、光輝性のある下地層に重ねて着色インクによる画像を形成することができる。例えば、明度を高めるなど、下地インクに比較的粒度の荒い白色系顔料を含む白色系インクなどを使用した場合であっても、光輝性のある下地層が形成でき、その結果、高精細で良好な明度の高い光輝性カラー画像(カラーメタリック画像など)を形成することができる。また、インクジェットヘッドがラインヘッドで構成されているため、大判対応が可能であり、かつ高精細で明度が高く良好な光輝性カラー画像が高速に形成できるインクジェット記録装置を提供することができる。
【0014】
[適用例5]適用例1に係るインクジェット記録装置において、着色剤を含む着色インクを吐出してカラー画像を形成する第3のラインヘッドと、平均粒子径200nm以上の顔料を含む下地インクを吐出して下地画像を形成する第4のラインヘッドと、を更に備え、第3のラインヘッドは、第1のラインヘッドよりも記録媒体の移動方向における上流側に配置され、第4のラインヘッドは、第2のラインヘッドよりも記録媒体の移動方向における下流側に配置されていることを特徴とする。
【0015】
本適用例によれば、記録媒体の移動方向における上流側から順に第3、第1、第2、第4のラインヘッドが配置されているため、記録媒体には、着色インク、重合性インク、光輝性インク、下地インクの順に吐出させることができる。その結果、例えば、下地インクに白色系インクを使用し、透明性のある記録媒体に画像を形成した場合には、高精細で良好な明度の高い光輝性カラー画像が、画像形成面の裏側、つまり透明な記録媒体の側から見ることのできる画像を形成することができる。
【0016】
[適用例6]適用例1に係るインクジェット記録装置において、着色剤を含む着色インクを吐出してカラー画像を形成する第3のラインヘッドと、平均粒子径200nm以上の顔料を含む下地インクを吐出して下地画像を形成する第4のラインヘッドと、を更に備え、第3のラインヘッドと第4のラインヘッドとの、相互に入れ替え可能に構成され、第3のラインヘッドが第2のラインヘッドよりも記録媒体の移動方向における下流側に配置され、第4のラインヘッドが第1のラインヘッドよりも記録媒体の移動方向における上流側に配置される第1配置と、第3のラインヘッドが第1のラインヘッドよりも記録媒体の移動方向における上流側に配置され、第4のラインヘッドが第2のラインヘッドよりも記録媒体の移動方向における下流側に配置される第2配置と、を実現可能な請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【0017】
本適用例によれば、第3のラインヘッドと第4のラインヘッドとの相互入れ替えが可能であるため、適用例4と適用例5の構成の入れ替えが可能なインクジェット記録装置を提供することができる。
【0018】
[適用例7]上記適用例に係るインクジェット記録装置において、光輝性インクは、水系もしくは溶剤系インクであることを特徴とする。
【0019】
本適用例によれば、光輝性インクは、水系もしくは溶剤系インクであることから光輝性顔料の分散が安定し、より優れた光輝性画像が形成できるインクジェット記録装置を提供することができる。
【0020】
[適用例8]上記適用例に係るインクジェット記録装置において、加熱部を更に備え、加熱部は、記録媒体を介して第2のラインヘッドに対向する位置、もしくは第2のラインヘッドよりも記録媒体の移動方向における下流側に配置されていることを特徴とする。
【0021】
本適用例によれば、加熱部は、記録媒体を介して第2のラインヘッドに対向する位置、もしくは第2のラインヘッドよりも記録媒体の移動方向における下流側に配置されているため、記録媒体に光輝性インクが吐出される際、または吐出された後に、画像形成部分に残る溶媒を乾燥させることができる。その結果、より優れた光輝性画像が形成できるインクジェット記録装置を提供することができる。
【0022】
[適用例9]上記適用例に係るインクジェット記録装置において、着色インクは、活性エネルギー線重合性化合物を含有し、一つ以上の第3のラインヘッド及び一つ以上の照射部を更に備え、更に備える一つ以上の第3のラインヘッドは、第2のラインヘッドよりも記録媒体の移動方向における下流側に配置され、照射部は、第2のラインヘッドと、第2のラインヘッドよりも記録媒体の移動方向における下流側に配置される第3あるいは第4のラインヘッドとの間には配置されず、照射部は、第3のラインヘッドよりも記録媒体の移動方向における下流側に配置されていることを特徴とする。
【0023】
本適用例によれば、活性エネルギー線重合性化合物を含有した着色インクを吐出する都度、記録媒体の移動方向における下流側に配置される照射部が照射する活性化エネルギー線によって着色インクを硬化させることができる。その結果、着色インクを重ねて吐出させる場合などにおいて滲みの無い良好な画像を形成することができ、より優れた光輝性画像が形成できるインクジェット記録装置を提供することができる。
【0024】
[適用例10]上記適用例に係るインクジェット記録装置において、重合性インクあるいは光輝性インクの吐出量に対応して搬送機構による記録媒体の移動速度を変化させることができることを特徴とする。
【0025】
本適用例によれば、重合性インクあるいは光輝性インクの吐出量に対応して搬送機構による記録媒体の移動速度を変化させることができるため、画像形成時間の適正化を行うことができる。具体的には、光輝性画像を形成する場合に、その下地層を形成する重合性インクあるいは光輝性インクを必要充分な程度に乾燥させる必要がある。重合性インクあるいは光輝性インクの吐出量が多い場合には、記録媒体の移動速度を遅くすることで、活性化エネルギー線の照射量あるいは加熱部の熱量を多くすることができ、重合性インクを充分硬化させる、あるいは光輝性インクを充分乾燥させることができる。一方、重合性インクあるいは光輝性インクの吐出量が少ない場合には、記録媒体の移動速度を早くすることが可能となるために、画像形成時間の適正化を行うことができる。
【0026】
[適用例11]上記適用例に係るインクジェット記録装置において、第1のラインヘッドと照射部との間隔をR1とし、第2のラインヘッドと照射部との間隔をR2とした場合に、R1>R2の関係になる位置に照射部が配置されていることを特徴とする。
【0027】
本適用例によれば、R1>R2の関係になる位置に照射部が配置されているため、第1のラインヘッドのノズルの詰まりを低減することができる。具体的には、照射部から照射される活性化エネルギー線の反射やモレなどの回り込みにより、第1のラインヘッドのノズル部に付着する重合性インクが硬化する場合がある。照射部を第1のラインヘッドから離れたR1>R2の関係になる位置に配置することで、ノズル部に付着する重合性インクの硬化によるノズルの詰まりを低減することができる。
【0028】
[適用例12]上記適用例に係るインクジェット記録装置において、第1のラインヘッドと照射部との間隔をR1とし、第2のラインヘッドと照射部との間隔をR2とした場合に、R1<R2の関係になる位置に照射部が配置されていることを特徴とする。
【0029】
本適用例によれば、R1<R2の関係になる位置に照射部が配置されているため、第2のラインヘッドのノズルの詰まりを低減することができる。具体的には、照射部の発熱により、第2のラインヘッドのノズル部に付着する光輝性インクが硬化する場合がある。照射部を第2のラインヘッドから離れたR1<R2の関係になる位置に配置することで、ノズル部に付着する光輝性インクの硬化によるノズルの詰まりを低減することができる。
【0030】
[適用例13]本適用例にかかる記録物は、上記に記載のインクジェット記録方法を含む記録方法によって記録されたことを特徴とする。
【0031】
本適用例によれば、上記に記載のインクジェット記録方法を含む記録方法によって記録された記録物により、高精細で良好な光輝性のある大判の画像が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】構成事例1に係るインクジェット記録装置を説明する概略図。
【図2】(a)、(b)構成事例2に係るインクジェット記録装置を説明する概略図。
【図3】構成事例3に係るインクジェット記録装置を説明する概略図。
【図4】構成事例4に係るインクジェット記録装置を説明する概略図。
【図5】構成事例5に係るインクジェット記録装置を説明する概略図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に本発明を具体化した実施形態について説明する。
1.記録方法
本実施形態における記録は、インクジェット式記録ヘッドによって、インクを吐出させ、記録媒体に付着させることによって行う。本実施形態に係る記録装置は、この記録ヘッドを用いて記録媒体上にインクを吐出し、記録媒体上に付着させてドット群を形成するインクジェット記録装置である。また、このインクジェット記録装置は、特に限定されないが、インク非吸収性または低吸収性の記録媒体、算術平均粗さRaが20μm以上の記録媒体、布帛、普通紙、または表面が平均粒子径200nm以上の顔料を含む顔料層が形成されている記録媒体などに高精細で良好な光輝性カラー画像を高速に形成することができる。
なお、画像とは、文字や符号を含む視覚情報をいう。
【0034】
1.1.インクジェット式記録ヘッド
インクジェット記録装置に用いられる記録ヘッドの方式としては、例えば、ノズルとノズルの前方に置いた加速電極間の強電界でノズルからインクを液滴状に連続噴射させ、インク滴が飛翔する間に偏向電極から印刷情報信号を与えて記録する方式、またはインク滴を偏向することなく印刷情報信号に対応して噴射させる方式(静電吸引方式)、小型ポンプでインクに圧力を加え、ノズルを水晶振動子などで機械的に振動させることにより、強制的にインク滴を噴射させる方式、インクに圧電素子により印刷情報信号に応じて圧力を加え、インク滴を噴射・記録させる方式(ピエゾ方式)、インクを印刷情報信号に従って微小電極で加熱発泡させ、インク滴を噴射・記録させる方式(サーマルジェット方式)などが用いられる。本実施形態の記録方法は、上記の記録ヘッドを用いた方法のいずれか、あるいは、上記の方法に限らず、インクを液滴状に噴射させ、記録媒体上にドット群を形成して記録する方法であれば良い。
【0035】
1.2.インクジェット式記録装置
本実施形態のインクジェット記録装置は、インクジェット式記録ヘッド、装置本体、搬送機構、インク収納容器、照射部、加熱部、コントロールボードなどを備えている。
【0036】
インクジェット式記録ヘッドは、記録の高速化、大判化に対応ができるラインヘッドにより構成している。ラインヘッドは、印刷用紙などの記録媒体の幅と略同じ長さの吐出ヘッドであり、吐出ヘッドにライン状に多数の吐出ノズルを配置している。ラインヘッドを固定して記録媒体を動かしながら記録媒体上にインクの吐出を行なうことにより記録を行う。インクは、インク収納容器から供給される。なお、ラインヘッドとは、記録媒体の移動方向に順に記録ヘッドが配列されている記録装置においての、1つのヘッドの事を示す。なお、ラインヘッドは固定されている事が好ましいが、走査可能に構成されていてもよい。
【0037】
搬送機構は、装置本体内における記録媒体の移動を制御する。
インク収納容器には、フルカラー印刷ができるインクや、重合性インク、光輝性インク、白色系インクなどのインクセットを収容している。
照射部は、記録媒体上に吐出された重合性インクを重合し硬化させるための活性化エネルギー線を照射する機能を持つ。
加熱部は、記録媒体上に吐出されたインクを加熱することで乾燥させる機能を持つ。
コントロールボードは、インク吐出の制御及び搬送機構、照射部、加熱部の制御などを行う。
なお、本発明に係るインクジェット式記録装置の具体的な構成事例やインクセットについては、後述する。
【0038】
2.記録媒体
本実施形態の記録方法で用いられる記録媒体の例としては、例えば、コート紙、アート紙、キャストコート紙などの表面加工紙、及び、透明、不透明に限らず、塩化ビニルシートやPETフィルムなどの樹脂フィルムを用いることができる。なお、記録媒体はこれらに限定されることはなく、インク非吸収性または低吸収性の記録媒体、算術平均粗さRaが20μm以上の記録媒体、布帛、普通紙、または表面が体積基準の平均粒子径(以下、平均粒子径とする)200nm以上の顔料を含む顔料層が形成されている記録媒体などであっても良い。
【0039】
2.1.インク吸収性について
インク非吸収性または低吸収性の記録媒体とは、インクの受容層を備えていない、あるいは、インクの受容層が乏しい記録媒体をいう。より定量的には、記録面が、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下である記録媒体を示す。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙−液体吸収性試験方法−ブリストー法」に述べられている。
【0040】
2.2.インク非吸収性記録媒体
インク非吸収性記録媒体としては、例えば、インクジェット記録用に表面処理をしていない(すなわち、インク受容層を実質的に有していない)プラスチックフィルム(メディア)、紙などの基材上にプラスチックがコーティングされているもの、プラスチックフィルムが接着されているもの、ガラス、金属などが挙げられる。ここでいうプラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。
【0041】
2.3.インク低吸収性記録媒体
インク低吸収性記録媒体としては塗工紙が挙げられ、塗工紙としては、微塗工紙、アート紙、コート紙、マット紙、キャスト紙等の記録本紙(印刷本紙)などが挙げられる。
塗工紙は、表面に塗料を塗布し、美感や平滑さを高めた紙である。塗料は、タルク、パイロフィライト、クレー(カオリン)、酸化チタン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどの顔料と、デンプンなどの接着剤を混合して作る。塗料は、紙の製造工程でコーターを使って塗布する。コーターには、抄紙機と直結することで抄紙・塗工を1工程とするオンマシン式と、抄紙とは別工程とするオフマシン式がある。主に記録に用いられ、経済産業省の「生産動態統計分類」では印刷用塗工紙に分類される。
【0042】
微塗工紙とは、塗料の塗工量が12g/m2以下の記録用紙のことをいう。
アート紙とは、上級記録用紙(上質紙、化学パルプ使用率100%の紙)に塗工量が40g/m2前後の塗料を塗工した記録用紙のことをいう。
コート紙とは、塗工量が20g/m2以上40g/m2以下程度の塗料を塗工した記録用紙のことをいう。
キャスト紙とは、アート紙やコート紙を、キャストドラムという機械で表面に圧力をかけることで、光沢や記録効果がより高くなるように仕上げた記録用紙のことをいう。
なお、本明細書において塗工量とは、記録用紙の両面の塗工値の合計値である。
【0043】
2.4.表面粗さ
記録媒体は、光輝性インクを吐出する面の算術平均粗さRaが20μm以上100μm以下であるのが好ましい。
なお、算術平均粗さRaは、例えば、表面粗さ計や光干渉型顕微鏡を用いて測定することが可能であり、具体的な表面粗さの測定装置としては、段差・表面粗さ・微細形状測定装置P−15(KLA−Tencor社製)などがある。
【0044】
上記粗面を有する記録媒体としては、例えば、上質紙「55PW8R」、XeroxP(富士ゼロックス社製;算術平均粗さRa=29.2μm)、プレイン・デザインペーパー ブラックペーパー(トチマン(株)社製;算術平均粗さRa=30.2μm)、及びスーパーファイン紙(セイコーエプソン株式会社製;Ra=36.6μm)、Bフルート段ボールシート(レンゴー社製;算術平均粗さRa=39.9μm)などが挙げられる。
【0045】
2.5.布帛
布帛としては、綿、麻、レーヨン繊維、アセテート繊維、絹、羊毛、ナイロン繊維若しくはポリエステル繊維またはこれらの2種以上の混紡からなる布帛などが挙げられる。
【0046】
2.6.普通紙
普通紙とは、インクジェットプリンター、レーザープリンター、コピー機などの記録に広く用いられる用紙であり、例えば商品名として「普通紙」として表示されている用紙や、「普通紙」という呼称にて認識されている用紙などが挙げられ、セルロース繊維などによって主に構成されウレタン樹脂などの樹脂による膨潤層やシリカ、アルミナなどの無機粒子による空隙層が実質的に設けられていない用紙である。普通紙の代表例としては、両面上質普通紙<再生紙>(セイコーエプソン株式会社製)、XeroxP(富士ゼロックス社製)、キヤノン普通紙・ホワイト(キヤノン株式会社製)、画彩普通紙仕上げ(富士フイルム株式会社製)、BROTHER専用A4上質普通紙(ブラザー株式会社製)、KOKUYO KB用紙(共用紙)(コクヨ株式会社製)などが挙げられる。
【0047】
2.7.顔料層
本実施形態において顔料層とは、平均粒子径200nm以上の顔料を含むものである。このように平均粒子径が大きな顔料を含む顔料層は、表面が平滑とはならず、光輝性インクを記録する際に良好な光沢度が得られない。また、本実施形態は、平均粒子径が大きい場合でも良好に効果を発揮し、平均粒子径が250nm以上、または、300nm以上であっても良い。なお、顔料層に対して光輝性インクが記録される場合、顔料層が形成されている記録媒体は特に限定されず、エプソン純正写真用紙<光沢>(セイコーエプソン株式会社製)のような平滑性、吸収性の高い記録媒体でも良い。また、顔料は公知のシアン顔料、マゼンタ顔料、イエロー顔料、ブラック顔料などいずれであっても良いが、後述する白色系顔料が良好な例として上げられる。
【0048】
3.インクセット
次に、上述したインクジェット記録装置に使用されるインクセットについて説明する。本実施形態に係るインクジェット記録用のインクセットは、上述したような特定の記録媒体に対し、インクジェット記録装置を用いて、光輝性を有する画像の記録に用いられるインクセットであって、少なくとも、重合性インクと、光輝性インクとを備えている。
【0049】
なお、上記の各インクをそれぞれ単独または複数備えたインクセットとしても良いし、更に一または複数の他のインクを含むインクを備えたインクセットとしても良い。インクセットに備えることができる他のインクとしては、シアン、マゼンタ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタ、ダークイエロー、レッド、グリーン、ブルー、オレンジ、バイオレットなどのカラーインク(着色インク)、ブラックインク、ライトブラックインクなどが挙げられる。
【0050】
3.1.重合性インク
本実施形態における重合性インクは、活性エネルギー線重合性モノマーなどの重合性化合物、及び重合開始剤を少なくとも含み、エネルギー線の照射に起因して重合反応が起こることにより硬化する。また、重合性インクは着色剤を実質的に含有しないものである。着色剤としては公知の染料、顔料が挙げられ、例えば米国特許出願2010/0086690、米国特許出願2005/0235870、WO2011/027842に記載されているものが該当する。
なお、「実質的に含有しない」とは、例えば、インク中に0.1質量%以上含有しない、一層好ましくは0.05質量%以上含有しない、更に好ましくは0.01質量%以上含有しない、一層好ましくは0.005質量%以上含有しない、最も好ましくは0.001質量%以上含有しないことである。
以下、インクを構成する各成分を詳細に説明する。なお、重合性インクは水を30質量%以上、好ましくは50質量%以上含有する水系の重合性インクであっても良い。
【0051】
3.1.1.重合性化合物
重合性インクに用いられる重合性化合物は、後述する重合開始剤の作用により紫外線などのエネルギー線の照射時に重合し、固化する化合物であれば、特に制限はないが、単官能基、2官能基、及び3官能基以上の多官能基を有する種々のモノマー及びオリゴマーが使用可能である。
【0052】
モノマーとしては、例えば、メタアクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸及びマレイン酸などの不飽和カルボン酸やそれらの塩またはエステル、ウレタン、アミド及びその無水物、アクリロニトリル、スチレン、種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、並びに不飽和ウレタンが挙げられる。また、オリゴマーとしては、例えば、直鎖アクリルオリゴマーなどの上記のモノマーから形成されるオリゴマー、エポキシメタアクリレート、脂肪族ウレタンメタアクリレート、芳香族ウレタンメタアクリレート、及びポリエステルメタアクリレートが挙げられる。
また、他の単官能モノマーや多官能モノマーとして、N−ビニル化合物を含んでいても良い。N−ビニル化合物としては、N−ビニルフォルムアミド、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、及びそれらの誘導体などが挙げられる。
【0053】
モノマーとしては、上記で列挙したものの中でも(メタ)アクリル酸のエステル、即ち(メタ)アクリレートが好ましい。
【0054】
前記(メタ)アクリレートのうち、単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソアミルメタアクリレート、ステアリルメタアクリレート、ラウリルメタアクリレート、オクチルメタアクリレート、デシルメタアクリレート、イソミリスチルメタアクリレート、イソステアリルメタアクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコールメタアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタアクリレート、ブトキシエチルメタアクリレート、エトキシジエチレングリコールメタアクリレート、メトキシジエチレングリコールメタアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタアクリレート、メトキシプロピレングリコールメタアクリレート、フェノキシエチルメタアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタアクリレート、イソボルニルメタアクリレート、ビニロキシエトキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメタアクリレート、ラクトン変性可とう性メタアクリレート、t−ブチルシクロヘキシルメタアクリレート、ジシクロペンタニルメタアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタアクリレート、及びイソボルニルメタアクリレートが挙げられる。
【0055】
前記メタアクリレートのうち、2官能メタアクリレートとしては、例えば、トリエチレングリコールジメタアクリレート、テトラエチレングリコールジメタアクリレート、ポリエチレングリコールジメタアクリレート、トリプロピレングリコールジメタアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタアクリレート、1,9−ノナンジオールジメタアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジメタアクリレート、ビスフェノールAのEO(エチレンオキサイド)付加物ジメタアクリレート、ビスフェノールAのPO(プロピレンオキサイド)付加物ジメタアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジメタアクリレート、及びポリテトラメチレングリコールジメタアクリレートが挙げられる。
【0056】
前記メタアクリレートのうち、3官能以上の多官能メタアクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリメタアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタアクリレート、グリセリンプロポキシトリメタアクリレート、カウプロラクトン変性トリメチロールプロパントリメタアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラメタアクリレート、及びカプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサメタアクリレートが挙げられる。
【0057】
これらの中でも、硬化時の塗膜の伸び性が高く、かつ低粘度であるため、インクジェット記録時の射出安定性が得られやすいという観点から、重合性化合物として、単官能メタアクリレートを含むことが好ましい。更に塗膜の硬さが増すという観点から、単官能メタアクリレートと2官能メタアクリレートとを併用することがより好ましい。上記の重合性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用しても良い。
【0058】
更に、上記単官能メタアクリレートは、芳香環骨格、飽和脂環骨格及び不飽和脂環骨格からなる群より選択される1種以上の骨格を有することが好ましい。前記重合性化合物が前記骨格を有する単官能メタアクリレートであることにより、インクの粘度を低下させることができる。
【0059】
芳香環骨格を有する単官能メタアクリレートとして、例えば、フェノキシエチルメタアクリレート及び2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメタアクリレートが挙げられる。また、飽和脂環骨格を有する単官能メタアクリレートとして、例えば、イソボルニルメタアクリレート、t−ブチルシクロヘキシルメタアクリレート及びジシクロペンタニルメタアクリレートが挙げられる。また、不飽和脂環骨格を有する単官能メタアクリレートとして、例えば、ジシクロペンテニルオキシエチルメタアクリレートが挙げられる。
【0060】
重合性インク中の重合性化合物の量は、5質量%以上含む事が好ましい。また、水系重合性インクならば5質量%以上50質量%以下が好ましく、非水系重合性インクの場合は重合性化合物を50質量%以上、好ましくは70質量%以上含有することが好ましい。これらの条件を満たすことで良好な重合性インクとなる。
【0061】
3.1.2.重合開始剤
インクに含まれる重合開始剤は、紫外線などの活性エネルギー線のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、上述した重合性化合物の重合を開始させるものであれば、制限はないが、ラジカル重合開始剤やカチオン重合開始剤を使用することができ、中でも光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
【0062】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルホスフィン化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物が挙げられる。
【0063】
ラジカル重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン及びビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシドが挙げられる。
【0064】
ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、IRGACURE 651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、IRGACURE 184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、DAROCUR 1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)、IRGACURE 2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン)、IRGACURE 127(2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン}、IRGACURE 907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、IRGACURE 369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1)、IRGACURE 379(2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン)、DAROCUR TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド)、IRGACURE 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド)、IRGACURE 784(ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム)、IRGACURE OXE 01(1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)])、IRGACURE OXE 02(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム))、IRGACURE 754(オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物)(以上、BASF社製)、DETX−S(2,4−ジエチルチオキサントン)(日本化薬社(Nippon Kayaku Co., Ltd.)製)、Lucirin TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF社製)、及びユベクリルP36(UCB社製)などが挙げられる。
【0065】
重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
なお、前述の重合性化合物として活性エネルギー線重合性の化合物を用いることで、重合開始剤の添加を省略することも可能であるが、重合開始剤を用いた方が、重合の開始を容易に調製することができ、好適である。
【0066】
3.1.3.水、溶剤
重合性インクは、水または有機溶剤を含んでも良い。
【0067】
3.1.4.その他の成分
重合性インクは、上記に挙げた成分以外の成分を含んでも良い。例えば、界面活性剤を含んでもよく、樹脂成分などを含んでいても良い。
【0068】
界面活性剤としては、例えばシリコーン系界面活性剤として、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーンを用いることができ、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンまたはポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを用いることが特に好ましい。具体例としては、BYK−347、BYK−348、BYK−349、BYK−UV3500、3510、3530、3570(いずれもビックケミー・ジャパン社(BYK Japan KK)から入手可能)を挙げることができる。
【0069】
また、重合禁止剤を添加しても良い。重合禁止剤を添加することにより、インクの保存安定性が向上する。重合禁止剤としては、例えば、ヒンダードアミン系重合禁止剤のIRGASTAB UV−10、及びヒンダードフェノール系重合禁止剤のIRGASTAB UV−22(以上、チバ社(Ciba Inc.)から入手可能)などを用いることができる。
【0070】
更に、本実施形態におけるインクは、重合促進剤、スリップ剤、浸透促進剤、及び湿潤剤(保湿剤)、並びにその他の添加剤を含んでも良い。その他の添加剤としては、例えば定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、及び増粘剤が挙げられる。
【0071】
3.2.光輝性インク
光輝性インクは、光輝性顔料を含み、水を50質量%以上含有する水系インク、あるいは水の含有が50質量%未満の非水系インクのいずれであっても良い。非水系の場合、有機溶剤を50質量%以上含有する溶剤系インクであっても良い。以下、水系インクの場合を具体例にして各成分を説明する。光輝性インクに含有される光輝性顔料としては、インクジェット記録方法によって当該インクの液滴を吐出できる範囲内で、任意のものを用いることができる。光輝性顔料は、光輝性インクが樹脂インクの層の上に付着したときに、光輝性を付与する機能を有し、また、付着物に光輝性を付与することもできる。このような光輝性顔料としては、パール顔料や金属粒子があげられる。パール顔料の代表例としては、二酸化チタン被覆雲母、魚鱗箔、酸塩化ビスマスなどの真珠光沢や干渉光沢を有する顔料が挙げられる。一方、金属粒子としてはアルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅などの粒子を挙げることができ、これらの単体またはこれらの合金及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
本実施形態で使用される光輝性顔料は、光沢度(光輝性)の高さの観点から銀またはコストの観点からアルミニウムを用いることが好ましい。アルミニウムとしては米国特許7828888に記載のものを好適に用いることが出来る。以下、光輝性インクの具体例として銀インクを用いて説明する。
【0072】
3.2.1.銀粒子
本実施形態に係る銀インクは、銀粒子を含む。銀インクが、銀粒子を含むことにより(特に、所定の条件を満足するワックスとともに含むことにより)、優れた金属光沢を有する画像を形成することができる。また、銀は、各種金属の中でも、白色度の高い金属であるため、他色のインクと重ね合わせることにより、金色、銅色などの様々な金属色を表現することができる。
【0073】
銀粒子の平均粒子径は、5nm以上100nm以下であるのが好ましく、20nm以上65nm以下であるのがより好ましい。これにより、銀インクを用いて形成される画像の光沢感(光輝性)及び耐擦性を特に優れたものとすることができる。また、インクジェット方式によるインクの吐出安定性(着弾位置精度、吐出量の安定性等)を特に優れたものとすることができ、長期間にわたって所望の画質の画像をより確実に形成することができる。なお、「平均粒子径」とは、特に断りのない限り、上述と同様体積基準の平均粒子径のことを指すものとする。平均粒子径は、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置として、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA」日機装株式会社製)を用いることができる。
【0074】
銀インク中における銀粒子の含有率は、0.5質量%以上30質量%以下であるのが好ましく、5.0質量%以上15質量%以下であるのがより好ましい。これにより、インクのインクジェット方式による吐出安定性、インクの保存安定性を特に優れたものとすることができる。また、記録物とされたときの記録媒体上での銀粒子の密度(単位面積当たりの含有量)が低い場合から高い場合まで、広い密度の範囲で、良好な画質、耐擦性を実現することができる。
銀粒子は、いかなる方法で調製されたものであってもよく、例えば、銀イオンを含む溶液を用意し、この銀イオンを還元することにより、好適に形成することができる。
【0075】
3.2.2.樹脂
銀インクは、樹脂を含有していても良く、これを含有することで定着性や耐擦性が向上する。樹脂としては、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリメタアクリル酸エステル、ポリエチルアクリル酸、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、クロロプレン共重合体、フッ素樹脂、フッ化ビニリデン、ポリオレフィン樹脂、セルロース、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、ポリスチレン、スチレン−アクリルアミド共重合体、ポリイソブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ロジン系樹脂、ポリエチレン、ポリカーボネート、塩化ビニリデン樹脂、セルロースアセテートブチレートなどのセルロース系樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重4合体、酢酸ビニル−アクリル共重合体、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン、ロジンエステル、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、カルバナノワックスなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0076】
3.2.3.重合性化合物
光輝性インクは、上述した重合性化合物を含有していても良い。つまり、光輝性インクは活性エネルギー線によって硬化するインクであっても良い。
一方、光輝性インクは、重合性化合物を実質的に含有しない事が好ましい。この場合の「実質的に含有しない」とは、例えば、インク中に5質量%以上含有しない、一層好ましくは1質量%以上含有しない、更に好ましくは0.1質量%以上含有しない、一層好ましくは0.01質量%以上含有しない、最も好ましくは0.001質量%以上含有しないことである。
【0077】
光輝性顔料は、従来用いられてきたシアン、マゼンタなどのカラー顔料に比べ重合性インクに適用しづらいという問題点がある。将来的に課題が解決される場合は充分に想定され、本実施形態が活性エネルギー線重合性化合物を実質的に含有しない光輝性インクに限定されるわけではないが、例えば、米国特許7828888に記載の金属顔料は、重合性インク中で酸化され良好な光沢度を発揮しづらいという問題点がある。また、重合性化合物が硬化した際に、金属顔料が良好に配列せず光輝性が良好に得られないという問題点がある。そのため、光輝性インクは、重合性化合物を実質的に含有しない事が好ましい。
【0078】
3.2.4.多価アルコール
光輝性インクは、多価アルコールを含有することが好ましい。多価アルコールは、光輝性インクをインクジェット式記録装置に適用した場合に、インクの乾燥を抑制し、インクジェット式記録ヘッド部分におけるインクによる目詰まりを防止することができる。
【0079】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどが挙げられる。中でも、炭素数が4〜8のアルカンジオールが好ましく、炭素数が6〜8のアルカンジオールがより好ましい。これにより、記録媒体への浸透性を特に高いものとすることができる。インク中における多価アルコールの含有率は、特に限定されないが、0.1質量%以上20質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以上10質量%以下であるのがより好ましい。
上記の多価アルコールの中でも、インクは、1,2−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパンを含むものであるのが好ましい。これにより、インク中における銀粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができ、インクの保存安定性を特に優れたものとすることができるとともに、インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0080】
3.2.5.グリコールエーテル
光輝性インクは、グリコールエーテルを含有することが好ましい。グリコールエーテルを含有することにより、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテルを挙げることができる。この中でも、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを用いると良好な記録品質を得ることができる。インク中におけるグリコールエーテルの含有率は、特に限定されないが、0.2質量%以上20質量%以下であるのが好ましく、0.3質量%以上10質量%以下であるのがより好ましい。
【0081】
3.2.6.界面活性剤
光輝性インクは、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両性の界面活性剤を好適に用いることが出来る。中でもフッ素系仮面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、ポリシロキサン系界面活性剤を含有することが好ましい。特にアセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤は、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
【0082】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品を利用することもでき、例えば、オルフィンE1010、STG、Y(以上、日信化学社製)、サーフィノール104、82、465、485、TG(以上、Air Products and Chemicals Inc.製)が挙げられる。
【0083】
ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えば、BYK−347、BYK−348、BYK−349(ビックケミー・ジャパン社製)などが挙げられる。
更に、本発明に係るインクは、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などのその他の界面活性剤を含有することもできる。
インク中における上記界面活性剤の含有率は、特に限定されないが、0.01質量%以上5.0質量%以下であるのが好ましく、0.05質量%以上2.5質量%以下が更に好ましく、0.1質量%以上1.0質量%以下であるのがより好ましい。
【0084】
3.2.7.その他の成分
光輝性インクは、上記以外の成分(その他の成分)を含むものであっても良い。その他の成分としては、例えば、pH調整剤、浸透剤、有機バインダー、尿素系化合物、アルカノールアミン(トリエタノールアミン等)などの乾燥抑制剤やチオ尿素などが挙げられる。
【0085】
3.3.平均粒子径200nm以上の顔料を含むインク(下地インク)
本インクは、平均粒子径200nm以上の顔料を含むインクである。顔料としては、具体的には、無機顔料と有機顔料が挙げられる。これらに該当するものおしては、例えば、白色系顔料、カーボンブラック、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料などのアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料などの多環式顔料、染料キレート、染色レーキ、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料などが用いられる。上記顔料は1種単独でも、2種以上併用して用いることもできる。顔料としては、白色系顔料が好ましい。なお、平均粒子径は、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。粒度分布測定装置としては、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA」日機装株式会社製)を用いることができる。
【0086】
インクに添加される溶剤としては、特に限定されないが有機溶媒、界面活性剤などから構成される。有機溶媒、及び界面活性剤は、光輝性インク組成物に用いるものと同様である。
【0087】
3.3.1.白色系顔料
白色系顔料とは、例えば、社会通念上「白」と呼称される色を記録出来る顔料であり、微量着色されているものも含む。また、その顔料を含有するインクが「白色系インク(インキ)、ホワイトインク(インキ)」などといった名称で呼称ようになる顔料も含む。更に、その顔料を含有するインクが、エプソン純正写真用紙<光沢>(セイコーエプソン株式会社製)に記録された場合に、インクの明度(L*)及び色度(a*、b*)が、分光測光器Spectrolino(商品名、GretagMacbeth社製)を用いて、測定条件をD50光源、観測視野を2°、濃度をDIN NB、白色基準をAbs、フィルターをNo、測定モードをReflectance、として設定して計測した場合に、70≦L*≦100、−4.5≦a*≦2、−6≦b*≦2.5、の範囲を示すものを含む。
【0088】
白色系顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウムなどの金属酸化物粒子や中空構造を有する粒子が挙げられる。これらの中でも、白色度に優れているという観点から、二酸化チタンを粉末状にした二酸化チタン粒子を用いることが好ましい。
【0089】
また、金属酸化物粒子を用いる場合には、その平均粒子径d50(体積基準)は、250nm以上440nm以下であるのが好ましい。これによって、良好な白色度を持った層を記録することが可能となる。
【0090】
二酸化チタン粒子としては、市販されているものを用いることができ、例えば、超微粒子酸化チタンTTOシリーズ(株式会社石原産業製)や、微粒子酸化チタン(テイカ株式会社製)、NanoTek(R)Slurry(シーアイ化成株式会社製)などが挙げられる。
【0091】
白色系顔料には、中空構造を有する粒子も含まれる。中空構造を有する粒子としては、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。例えば、米国特許第4,880,465号などの明細書に記載されている粒子を好ましく用いることができる。また、中空構造を有し有機化合物からなる粒子は、市販のものを用いることもできる。市販品としてはsx866シリーズ(JSR株式会社製)などがある。中空構造を有する粒子の平均粒子径は300nm以上1μm以下であるのが好ましい。
【0092】
白色系インクに用いられる添加剤としては、上述の光輝性インクに記載されたものを好適に用いることが出来る。
【0093】
3.4.着色インク
着色インクは、着色剤として、顔料または染料を含むインクである。染料と顔料は米国特許出願2010/0086690、米国特許出願2005/0235870、WO2011/027842に記載されているものなどを好適に用いることが出来る。着色インクは顔料を含むと一層好ましい。顔料としては、耐光性、耐候性、耐ガス性などの保存安定性の観点から有機顔料であることが好ましい。
具体的には、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料などのアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料などの多環式顔料、染料キレート、染色レーキ、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料などが用いられる。上記顔料は1種単独でも、2種以上併用して用いることもできる。
【0094】
着色インクに用いられる添加剤としては、上述の光輝性インクに記載されたものを好適に用いることが出来る。
【0095】
4.インクジェット記録工程
本実施形態のインクジェット記録は、上述したインクジェット記録装置を用いて、上述したインクセットのインク組成物を吐出させ、上述した記録媒体に付着させることにより行う。以下、記録の各工程について説明する。
【0096】
4.1.下地層形成工程
下地層形成工程は、重合性インクを所定の記録媒体または顔料層に付与し、下地層を形成する工程である。インクジェット記録方法によって、画像記録に必要な任意の箇所(光輝性インクを付与する部位)に選択的に下地層を形成する。この下地層が光輝性インクの受容層として機能し、光輝性インク中の溶媒が下地層に浸透することによって、記録媒体上に光輝性顔料を平坦に配向させる。重合性インクの液滴重量は、特に限定されないが、1ng〜20ngであることが好ましく、下地層の平均膜厚は、0.1μm以上30μm以下であるのが好ましく、1μm以上15μm以下であるのがより好ましい。これにより、より優れた光輝性を有する画像を形成することができる。
【0097】
4.2.照射工程
照射工程は、上記のように形成した下地層に活性エネルギー線を照射することで下地層を硬化させる。活性エネルギー線としては、その照射により重合開始剤から開始種を発生させうるエネルギーを付与することができるものであれば特に制限はなく、広く、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、電子線などを包含するものである。中でも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点からは、活性エネルギー線としては、紫外線及び電子線が好ましく、特に紫外線が好ましい。このような工程を有することにより、下地層のインク受容層としての機能をより優れたものとすることができ、形成される画像の記録媒体に対する密着性をより向上させることができる。
【0098】
下地層の照射工程は、活性エネルギー線照射の光源としてメタルハライドランプ、高圧水銀灯、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)等を用いることができる。好ましい態様として用いられる、LEDは入力電流の大きさを制御することによって、照射エネルギーを容易に変更することが可能である。
下地層の照射工程における照射源は、好ましくは350nm〜450nmの範囲、より好ましくは380nm〜450nmの範囲にピーク波長を持つ。LEDが上記範囲内にピーク波長を持つと、コストの低下という有利な効果が得られる。
硬化の照射エネルギーに制限はなく、インク組成によっても異なるが、紫外線照射エネルギーとして好ましくは10000mJ/cm2以下であり、より好ましくは100〜1000mJ/cm2である。
【0099】
4.3.記録工程
本工程では、上述したインクジェット装置を用い、下地層の上に光輝性インクの液滴を吐出して記録媒体に付着させ、記録媒体上に画像を形成する。また、必要により、着色インクや、ブラックインク、ライトブラックインクなどを吐出し、画像を形成する。これにより記録物が得られる。
画像の膜厚は、好ましくは0.02〜10μmであり、より好ましくは0.05〜5μmである。光輝性層の膜厚が0.02μm未満であると、記録面に光輝性が得られなくなる場合がある。
【0100】
4.4.加熱工程
下地層形成工程以降に、適宜加熱工程(加熱部)を備えても良い。加熱をする手段としては、インク中に存在する液媒体の蒸発飛散を促進させる方法であれば特に限定されない。加熱工程に用いられる方法として、被記録媒体に熱を加える方法、被記録媒体上のインクに風を吹きつける方法、更にそれらを組み合わせる方法等が挙げられる。具体的には、強制空気加熱、輻射加熱、伝導加熱、高周波乾燥、マイクロ波乾燥等が好ましく用いられる。加熱工程において熱を与える際の、記録媒体表面の温度範囲は、インク中に存在する液媒体の蒸発飛散を促進することができれば特に制限はないが、40℃以上であればその効果が得られ、好ましくは40℃〜130℃であり、より好ましくは40℃〜110℃の範囲である。なお「温度」とは、インクが接触する被記録媒体表面の温度である。
【0101】
本実施形態において、加熱工程を設ける場合、光輝性インク組成物は活性エネルギー線重合性化合物を実質的に含有しない水系インクまたは溶剤系インクである事が好ましい。光輝性インクが水系または溶剤系インクである場合には、重合性インクに活性エネルギー線を照射しても水系または溶剤系インクは乾燥、固化または硬化はしない。この場合、重合性インクの層に吸収された場合であっても、記録速度を優先した場合、充分に光輝性インクが乾燥、固化、硬化が充分に出来ていない状態で記録媒体を搬送しなければならない場合がある。そこで、加熱工程を設ける事で、乾燥、固化または硬化を補填する事が可能となり一層良好な記録装置、記録方法となる。
【0102】
更に、加熱工程を設ける場合、重合性インクは水系重合性インクであるのも好ましい、近年環境の観点から水系の重合性インクの開発が進んでいる。このようなインクの場合には、活性エネルギー線の照射だけでは良好な乾燥、固化、硬化の効果得られない場合があるが、加熱工程を設ける事によって、一層良好な記録装置、記録方法を提供できる。
【0103】
5.実施例
以下、いくつかの実施例によって本実施形態を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
5.1.インクの調製
5.1.1.重合性インクの調製
重合性インクは、表1に記載の組成になるように、光重合開始剤、重合性化合物、重合禁止剤、及び界面活性剤を混合し調製した。なお、重合禁止剤としてはIRGASTAB UV−22(Ciba社製)を、界面活性剤としてはBYK−UV3500(BYK Japan KK製)を用いた。
【0104】
【表1】

【0105】
5.1.2.光輝性インクの調製
光輝性インクは、以下のように調製した。
まず、ポリビニルピロリドン(PVP、重合平均分子量10000)を70℃の条件下で15時間加熱して、その後室温で冷却をした。そのPVP1000gを、エチレングリコール溶液500mlに添加してPVP溶液を調製した。別の容器にエチレングリコールを500ml入れ、硝酸銀128gを加えて電磁攪拌器で充分に攪拌をして硝酸銀溶液を調製した。PVP溶液を120℃の条件下でオーバーヘッドミキサーを用いて攪拌しつつ、硝酸銀溶液を添加して約80分間加熱して反応を進行させた。そして、その後室温で冷却をさせた。得られた溶液を遠心分離機で2200rpmの条件下で10分間遠心分離を行った。その後、分離が出来た銀粒子を取り出して、余分なPVPを除去するためエタノール溶液500mlに添加した。そして、更に遠心分離を行い、銀粒子を取り出した。更に、取り出した銀粒子を真空乾燥機で35℃、1.3Paの条件下で乾燥させた。上記によって製造された銀粒子10質量%に、プロピレングリコールを10質量%、1,2−ヘキサンジオールを5質量%、2−ピロリドンを5質量%、シリコーン系界面活性剤(BYK−348)を1質量%、更に残分としてイオン交換水を添加することにより、光輝性インクとした。
【0106】
5.1.3.白色系インクの調製
白色系インクは、二酸化チタン(体積平均粒子径330nm)(NanoTek(R)_Slurry:シーアイ化成株式会社製)を10質量%、スチレン−アクリル酸共重合体を2質量%、1,2−ヘキサンジオールを5質量%、グリセリンを10質量%、トリエタノールアミンを0.9質量%、BYK−348(ビックケミー・ジャパン株式会社)を0.5質量%、イオン交換水を残分として調製した。
【0107】
5.2.インクジェット記録装置の構成
次に、前述したインクジェット記録装置の具体的な構成事例について図面を参照して説明する。以下は、本発明の一実施形態であって、本発明を限定するものではない。なお、以下の各図においては、説明を分かりやすくするため、実際とは異なる尺度で記載している場合がある。
【0108】
5.2.1.構成事例1
図1は、構成事例1に係るインクジェット記録装置100を説明する概略図である。
インクジェット記録装置100は、記録媒体10にインクジェット記録方法により画像を記録するインクジェット記録装置である。インクジェット記録装置100は、第1〜第3のラインヘッドとしてのラインヘッド1〜3、搬送機構11、12、ガイド13、照射部20、加熱部30などを備え、コントロールボード、インク収納容器などと共に装置本体を構成している(コントロールボード、インク収納容器、装置本体は図示せず)。
【0109】
記録媒体10は、搬送機構11、12により、ガイド13に支持されて装置本体内部を移動する。記録媒体10の移動方向(図1に示すX方向)における上流側に搬送機構11が、下流側に搬送機構12が備えられている。なお、搬送機構の設置は、上流、下流の二箇所に限定するものではなく、また、記録媒体の移動も直線状(平面状)の一方向に限定するものではない。例えば、搬送機構に屈曲部を設けて、搬送経路が曲線状(曲面状)になるように構成しても良い。従って、X方向とは、直線方向を示すものではなく、記録媒体の移動方向を示すものである。
【0110】
それぞれのラインヘッド1〜3は、X方向に交差する方向にライン状に配置される多数の吐出ノズルを備えている。ラインヘッド1、2、3は、記録媒体10が移動する上流側から下流側の方向(X方向)に順にラインヘッド1、2、3が配置されている。
ラインヘッド1は、インク収納容器から供給される重合性インクを吐出する。
ラインヘッド2は、インク収納容器から供給される光輝性インクを吐出する。
ラインヘッド3は、インク収納容器から供給される着色インクを吐出する。
【0111】
照射部20は、ラインヘッド1とラインヘッド2との間に設置され、ラインヘッド1が吐出する重合性インクに対し活性化エネルギー線を照射する。照射部20には、発光ダイオード(例えば、波長395nmUVLED)を用いている。また、照射部20は、ラインヘッド1と照射部20との間隔R1、ラインヘッド2と照射部20との間隔R2においては、特に限定されるわけではないが、R1>R2の関係になる位置に配置されている。
なお、照射部20を構成する照射装置本体の位置は、必ずしもラインヘッド1とラインヘッド2との間に設置される必要はなく、ラインヘッド1が吐出する重合性インクに対し活性化エネルギー線が照射され、その照射する部分がR1>R2の関係になる位置に配置されていれば良い。
【0112】
加熱部30は、本願発明において必須の構成ではないが、ラインヘッド2とラインヘッド3との間に設置され、ラインヘッド2が吐出する光輝性インクを加熱し液媒体の蒸発飛散を促進させる機能を持っている。
なお、加熱部30を構成する加熱装置本体の位置は、必ずしもラインヘッド2とラインヘッド3との間に設置される必要はなく、例えば、ラインヘッド2に対向するプラテンに付随させてもよい。つまり、加熱する部分が、ラインヘッド2が吐出する光輝性インクを加熱し液媒体の蒸発飛散を促進させる位置に配置されていれば良い。
【0113】
コントロールボードは、インク吐出の制御及び搬送機構11、12、照射部20、加熱部30の制御などを行う。また、コントロールボードは、重合性インクあるいは光輝性インクの吐出量に対応して搬送機構11、12による記録媒体10の移動速度を変化させることができる。具体的には、重合性インクあるいは光輝性インクの吐出量が多い場合には、記録媒体10の移動速度を遅くし、重合性インクあるいは光輝性インクの吐出量が少ない場合には、記録媒体10の移動速度を早くする。また、光輝性インクを吐出しない場合と、吐出する場合では、吐出する場合に低速で記録媒体を移動させてもよい。この場合、光輝性インクがいわゆる水系、溶剤系であった場合に、当該インクは重合性インクほど乾燥(硬化)が早くないことが多く、当該乾燥時間を考慮して記録媒体の移動速度を遅くしてもよい。
【0114】
この構成によれば、ラインヘッド1は、ラインヘッド2よりも記録媒体10の移動方向における上流側に配置されているため、光輝性インクによる画像を形成する部分に、重合性インクによって、より平滑な下地層を形成しておくことができる。
【0115】
また、ラインヘッド3が、ラインヘッド1よりも、更にはラインヘッド2よりも記録媒体10の移動方向における下流側に配置されているため、光輝性のある下地層に重ねて着色インクによる画像を形成することができる。
【0116】
また、光輝性インクは、水系インクであることから光輝性顔料の分散を安定させることができる。
【0117】
また、加熱部30が、ラインヘッド2よりも記録媒体10の移動方向における下流側に配置されているため、記録媒体10に光輝性インクが吐出された後に、画像形成部分に残る溶媒を乾燥させることができる。
【0118】
また、重合性インクあるいは光輝性インクの吐出量に対応して搬送機構11、12による記録媒体10の移動速度を変化させることができるため、画像形成時間の適正化を行うことができる。
【0119】
また、R1>R2の関係になる位置に照射部20が配置されているため、ラインヘッド1のノズルの詰まりを低減することができる。具体的には、照射部20から照射される活性化エネルギー線の反射やモレなどの回り込みにより、ラインヘッド1のノズル部に付着する重合性インクが硬化する場合がある。照射部20をラインヘッド1から離れたR1>R2の関係になる位置に配置することで、ノズル部に付着する重合性インクの硬化によるノズルの詰まりを低減することができる。
【0120】
なお、照射部20に用いる光源や、装置本体の構成によっては、光源の発熱が避けられず、対流や輻射熱などによりラインヘッド2のノズル部に付着する光輝性インクが急速に乾燥し、目詰まりする場合がある。このような場合には、照射部20から照射される活性化エネルギー線の反射やモレなどの回り込みを制限することで、ラインヘッド1のノズル部の詰まりが低減できるため、照射部をラインヘッド2から離れたR1<R2の関係になる位置に配置してもよく、これによって、ノズル部に付着する光輝性インクの硬化によるノズルの詰まりを低減することができる。
【0121】
以上述べたように、本構成事例に係るインクジェット記録装置100によれば、重合性インクを、光輝性インクを付与する部位に選択的に吐出し硬化させて下地層を形成し、この下地層を光輝性インクの受容層として機能させることで、記録媒体10上に光輝性顔料を平坦に配向させることができ、高い光輝性を発揮させることができる。その結果、記録媒体10がインク非吸収性または低吸収性の記録媒体、算術平均粗さRaが20μm以上の記録媒体、布帛、普通紙、または表面が平均粒子径200nm以上の顔料を含む顔料層で形成されている記録媒体などであっても、高精細で良好な光輝性カラー画像(カラーメタリック画像など)を形成することができる。また、インクジェットヘッドがラインヘッドで構成されているため、大判対応が可能であり、かつ高精細で良好な光輝性カラー画像が高速に形成できるインクジェット記録装置を提供することができる。
【0122】
5.2.2.構成事例2
図2(a)、(b)は、構成事例2に係るインクジェット記録装置200、201を説明する概略図である。
インクジェット記録装置200は、図2(a)に示すように、構成事例1に対して、更に第4のラインヘッドとしてのラインヘッド4を備えている。ラインヘッド4がラインヘッド1よりも記録媒体10の移動方向における上流側に設置されている以外は、構成事例1の構成と同じである。
ラインヘッド4は、X方向に交差する方向にライン状に配置される多数の吐出ノズルを備えている。また、ラインヘッド4は、インク収納容器から供給される白色系インクを吐出する。
【0123】
この構成によれば、ラインヘッド4は、ラインヘッド1よりも記録媒体10の移動方向における上流側に配置されているため、ラインヘッド4が吐出した白色系インクに重ねて重合性インクによる層を形成することができる。
【0124】
光輝性画像は、光輝性インクに含まれる光輝性顔料としての金属片(例えばアルミニウム片)や金属粒子(例えば銀粒子)などの影響で、画像の明度が下がってしまう傾向があった。これに対して、白色の下地(下地画像)に重ねて光輝性画像を形成することで明度の向上を図ることができた。しかし、下地の白色系インクに含まれる白色系顔料は、通常平均粒子径が200nm以上であり荒い場合が多い。この場合には、所望する光輝性(光沢度)が得られないという問題があった。
【0125】
これに対し、本構成事例に係るインクジェット記録装置200によれば、上記の構成により、白色系インクに重ねて重合性インクを吐出し、下地層を形成することで、白色系顔料の粒度の影響が低減された下地層を得ることができる。つまり、より平滑に形成された明度の高い下地層の上に光輝性インクによる画像を形成することができる。その結果、大判対応が可能であり、かつ高精細で明度が高く良好な光輝性画像が高速に形成できるインクジェット記録装置を提供することができる。
【0126】
次に、インクジェット記録装置201は、図2(b)に示すように、インクジェット記録装置200の構成に対して、ラインヘッド3とラインヘッド4の位置を入れ替えている。つまり、ラインヘッド3がラインヘッド1よりも記録媒体10の移動方向における上流側に設置され、ラインヘッド4がラインヘッド2よりも記録媒体10の移動方向における下流側に設置されている。
【0127】
この構成によれば、記録媒体10の移動方向における上流側から順にラインヘッド3、1、2、4が配置されているため、記録媒体10には、着色インク、重合性インク、光輝性インク、白色系インクの順に吐出させることができる。その結果、例えば記録媒体10が光透過性のある記録媒体の場合には、画像形成面の裏側、つまり光透過な記録媒体の側から見ることのできる画像(高精細で明度が高く良好な光輝性カラー画像)を形成することができる。なお、この場合において、白色下地(下地画像)は、記録媒体を介して画像を視認する場合の下地として機能する。
【0128】
なお、インクジェット記録装置200とインクジェット記録装置201とは異なる装置として構成しても良いが、ラインヘッド3とラインヘッド4の位置を簡便に入れ替え可能に構成されている一つの装置とするのが好ましい。これによって、第3のラインヘッドが前記第2のラインヘッドよりも記録媒体の移動方向における下流側に配置され、前記第4のラインヘッドが前記第1のラインヘッドよりも前記記録媒体の移動方向における上流側に配置される第1配置と、第3のラインヘッドが第1のラインヘッドよりも前記記録媒体の移動方向における上流側に配置され、第4のラインヘッドが第2のラインヘッドよりも前記記録媒体の移動方向における下流側に配置される第2配置とを実現可能になる。
【0129】
5.2.3.構成事例3
図3は、構成事例3に係るインクジェット記録装置300を説明する概略図である。
この構成事例は、活性エネルギー線重合性化合物を含有した着色インクを用いて画像を形成する場合の好適例である。
インクジェット記録装置300は、図3に示すように、構成事例1に対して、更に、記録媒体10の移動方向における下流側にラインヘッド3を2つ備えている。また、構成事例1のラインヘッド3を含め、それぞれのラインヘッド3の下流側に、照射部20を備えている。なお、ラインヘッド3およびその下流に備える照射部20のセットは、上記の数に限定するものではなく、必要な着色インクの種類に応じて、適宜増設しても良い。なお、光輝性インクが重合性化合物を実質的に含まないものであれば、重合性インクで作成した層が下地として一定の吸収性を有するので加熱部30を設けなくても良い。この場合、ラインヘッド2とラインヘッド3の間には、照射部20及び加熱部が30設けられていないことになる。
【0130】
この構成によれば、活性エネルギー線重合性化合物を含有した着色インクを吐出する都度、記録媒体10の移動方向における下流側に配置される照射部20が照射する活性化エネルギー線によって着色インクを硬化させることができる。その結果、着色インクを重ねて吐出させる場合などにおいて滲みの無い良好な画像を形成することができ、より優れた光輝性画像が形成できるインクジェット記録装置を提供することができる。
【0131】
5.2.4.構成事例4
図4は、構成事例4に係るインクジェット記録装置400を説明する概略図である。
インクジェット記録装置400は、構成事例2のインクジェット記録装置201に対して、更に、記録媒体10の移動方向における下流側にラインヘッド5〜7、および照射部20、加熱部30を備えている。
【0132】
ラインヘッド5〜7は、以下に示すように実質的にラインヘッド1〜3と同じものである。
それぞれのラインヘッド5〜7は、X方向に交差する方向にライン状に配置される多数の吐出ノズルを備えている。また、記録媒体10が移動する上流側から下流側の方向に、ラインヘッド5、6、7の順に配置されている。
ラインヘッド5は、インク収納容器から供給される重合性インクを吐出する。
ラインヘッド6は、インク収納容器から供給される光輝性インクを吐出する。
ラインヘッド7は、インク収納容器から供給される着色インクを吐出する。
【0133】
更に備える照射部20は、ラインヘッド5とラインヘッド6との間に設置され、ラインヘッド5が吐出する重合性インクに対し活性化エネルギー線を照射する。
また、更に備える加熱部30は、ラインヘッド6とラインヘッド7との間に設置され、ラインヘッド6が吐出する光輝性インクを加熱し液媒体の蒸発飛散を促進させる。
【0134】
つまり、換言すれば、インクジェット記録装置400は、インクジェット記録装置201に対して、更に、記録媒体10の移動方向における下流側にインクジェット記録装置100を備えた構成となっている。但し、搬送機構11、12は、上流側と下流側に一組のみ設置されている。
【0135】
従って、インクジェット記録装置400の構成によれば、インクジェット記録装置100とインクジェット記録装置201の効果を合わせ持つインクジェット記録装置を提供することができる。その結果、例えば記録媒体10が光透過性のある記録媒体の場合には、光透過性のある記録媒体の表裏両側から見ることのできる画像(高精細で明度が高く良好な光輝性カラー画像)を形成することができる。
【0136】
5.2.5.構成事例5
図5は、構成事例5に係るインクジェット記録装置500を説明する概略図である。
この構成事例は、上述した構成事例1〜4をひとつに組み合わせた構成となっている。
具体的には、インクジェット記録装置201の構成に対し、記録媒体10の移動方向における下流側にインクジェット記録装置300が配置された構成となっている。但し、搬送機構11、12は、上流側と下流側に一組のみ設置されている。この配置とした場合、図5に示すように、インクジェット記録装置100及びインクジェット記録装置200の構成も含まれることになる。
【0137】
この構成によれば、構成事例1〜4の効果を合わせ持つインクジェット記録装置を提供することができる。
【0138】
5.3.記録物の作成
次に、インクジェット記録装置500を簡易的に作成し、記録媒体、インク、照射エネルギーなどを変えて記録物を作成した実施例を説明する。
5.3.1.実施例1〜11
表2に示す記録媒体に、所定のdutyの所定パターンで、表1に記載の重合性インクを記録した。そして、表2に記載の照射エネルギーを照射した。なお、照射工程は100%dutyごとに表2に記載の照射エネルギーで行った。その後、重合性インクによる下地層に対して、表2に記載のdutyにて光輝性インクの記録を行った。
なお、200%dutyとは、100%dutyの記録を2回行ったという意味である。
【0139】
5.3.2.実施例12
実施例12は、表2に示す記録媒体に、所定のdutyの所定パターンで、表1に記載の重合性インクを記録した。そして、その後表2に記載のdutyにて光輝性インクの記録を行った。最後に、表2に記載の照射エネルギーを照射した。なお、照射工程は100%dutyごとに表2に記載の照射エネルギーで行った。
【0140】
5.3.3.実施例13
実施例13は、表2に示す記録媒体に上記に記載した白色系インクを100%dutyで記録を行った。その後表2に示す所定のdutyの所定パターンで、表1に記載の重合性インクを記録した。そして、表2に記載の照射エネルギーを照射した。なお、照射工程は100%dutyごとに表2に記載の照射エネルギーで行った。最後に表2に記載のdutyにて光輝性インクの記録を行った。
【0141】
5.3.4.比較例1〜4
表2に示す記録媒体に、表2に示す%dutyの所定パターンで、表2に示す光輝性インクを付与し、画像を形成した。
【0142】
5.3.5.比較例5
比較例5は、重合性インクを記録せず、照射工程を行わなかった以外は、実施例13と同様に記録物を作成した。
【0143】
ここで、「duty」とは、下式で算出される値である。
%duty=実記録ドット数/(縦解像度×横解像度)×100
式中、「実記録ドット数」は単位面積当たりの実記録ドット数であり、「縦解像度」及び「横解像度」はそれぞれ単位長さ当たりの解像度である。
【0144】
【表2】

【0145】
5.4.光沢度の評価
前記各実施例及び各比較例に係る記録物の記録面について、光沢度計(MINOLTA MULTI GLOSS 268)を用い、煽り角度60°での光沢度を測定し、以下の基準に従い評価した。評価結果は、表2に併記している。
【0146】
A :60度光沢度が、400以上。
B :60度光沢度が、300以上400未満。
C :60度光沢度が、100以上300未満。
D :60度光沢度が、10以上100未満。
E :60度光沢度が、10未満。
【符号の説明】
【0147】
1〜7…ラインヘッド、10…記録媒体、11,12…搬送機構、13…ガイド、20…照射部、30…加熱部、100,200,201,300,400,500…インクジェット記録装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線重合性化合物を含有し着色剤を実質的に含有しない重合性インクを記録媒体に吐出して下地層を形成する第1のラインヘッドと、
光輝性顔料を含む光輝性インクを前記下地層に吐出して光輝性画像を形成する第2のラインヘッドと、
前記記録媒体を移動させる搬送機構と、
前記下地層に活性化エネルギー線を照射する照射部と、を備え、
前記第1のラインヘッドは、前記第2のラインヘッドよりも前記記録媒体の移動方向における上流側に配置されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
着色剤を含む着色インクを吐出してカラー画像を形成する第3のラインヘッドを更に備え、
前記第3のラインヘッドは、前記第2のラインヘッドよりも前記記録媒体の移動方向における下流側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
平均粒子径200nm以上の顔料を含む下地インクを吐出して下地画像を形成する第4のラインヘッドを更に備え、
前記第4のラインヘッドは、前記第1のラインヘッドよりも前記記録媒体の移動方向における上流側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
着色剤を含む着色インクを吐出してカラー画像を形成する第3のラインヘッドと、
平均粒子径200nm以上の顔料を含む下地インクを吐出して下地画像を形成する第4のラインヘッドと、を更に備え、
前記第3のラインヘッドは、前記第2のラインヘッドよりも前記記録媒体の移動方向における下流側に配置され、
前記第4のラインヘッドは、前記第1のラインヘッドよりも前記記録媒体の移動方向における上流側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
着色剤を含む着色インクを吐出してカラー画像を形成する第3のラインヘッドと、
平均粒子径200nm以上の顔料を含む下地インクを吐出して下地画像を形成する第4のラインヘッドと、を更に備え、
前記第3のラインヘッドは、前記第1のラインヘッドよりも前記記録媒体の移動方向における上流側に配置され、
前記第4のラインヘッドは、前記第2のラインヘッドよりも前記記録媒体の移動方向における下流側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
着色剤を含む着色インクを吐出してカラー画像を形成する第3のラインヘッドと、
平均粒子径200nm以上の顔料を含む下地インクを吐出して下地画像を形成する第4のラインヘッドと、を更に備え、
前記第3のラインヘッドと前記第4のラインヘッドとの、相互に入れ替え可能に構成され、
前記第3のラインヘッドが前記第2のラインヘッドよりも前記記録媒体の移動方向における下流側に配置され、前記第4のラインヘッドが前記第1のラインヘッドよりも前記記録媒体の移動方向における上流側に配置される第1配置と、前記第3のラインヘッドが前記第1のラインヘッドよりも前記記録媒体の移動方向における上流側に配置され、前記第4のラインヘッドが前記第2のラインヘッドよりも前記記録媒体の移動方向における下流側に配置される第2配置と、を実現可能な請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記光輝性インクは、水系もしくは溶剤系インクであることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
加熱部を更に備え、
前記加熱部は、前記記録媒体を介して前記第2のラインヘッドに対向する位置、もしくは前記第2のラインヘッドよりも前記記録媒体の移動方向における下流側に配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記着色インクは、活性エネルギー線重合性化合物を含有し、
一つ以上の前記第3のラインヘッド及び一つ以上の前記照射部を更に備え、
前記更に備える一つ以上の第3のラインヘッドは、前記第2のラインヘッドよりも前記記録媒体の移動方向における下流側に配置され、
前記照射部は、前記第2のラインヘッドと、前記第2のラインヘッドよりも前記記録媒体の移動方向における下流側に配置される前記第3あるいは第4のラインヘッドとの間には配置されず、
前記照射部は、前記第3のラインヘッドよりも前記記録媒体の移動方向における下流側に配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記重合性インクあるいは前記光輝性インクの吐出量に対応して前記搬送機構による前記記録媒体の移動速度を変化させることができることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
前記第1のラインヘッドと前記照射部との間隔をR1とし、前記第2のラインヘッドと前記照射部との間隔をR2とした場合に、R1>R2の関係になる位置に前記照射部が配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記第1のラインヘッドと前記照射部との間隔をR1とし、前記第2のラインヘッドと前記照射部との間隔をR2とした場合に、R1<R2の関係になる位置に前記照射部が配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置によって記録された記録物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−10236(P2013−10236A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143847(P2011−143847)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】