説明

インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法

【課題】プリントヘッドとワークの相対的な移動により生じる誤差要素を解消し、ワークに高精度でインク滴を着弾し得るインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】インクジェット方式によりワーク上に画像を印写形成するインクジェット記録装置にて、X方向に移動可能なブリッジ1a,1bと、Y方向に移動可能なスライダ2a〜2dを設ける。スライダ2aにはアライメント・着弾位置検出用カメラ3を、スライダ2b〜2dにはプリントヘッド8a〜8cを搭載したヘッドユニット4a〜4cを取り付ける。ワークステージ6に載置したワークの実印写処理に先行して、テスト印写領域5a〜5cにてテスト印写を行い、その際のインクの着弾位置をカメラ3にて検出する。このインク着弾位置と、実印写時の目標着弾位置、テスト印写時のスライダ位置に基づいて、実印写時のプリントヘッド印写開始位置を算出し実印写処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方式を用いて画像形成を行うインクジェット記録装置に関し、より詳しくは、複数のプリントヘッドと該プリントヘッドを搭載した複数のスライダを有し、高速で高精度に位置合わせが可能なインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式を用いた記録装置では、プリントヘッドのインク吐出口(ノズル)から微小なインク滴を吐出する。このインク滴は、ワーク(記録処理が行われる対象物)上に吐出・付着され、所望の印字や画像記録が行われる。プリントヘッドは、スライダと呼ばれる可動体に搭載され、ワークに対して相対的に走査(移動)可能に配置されている。スライダを作動させ、プリントヘッドを移動させつつワーク上方にてノズルからインク滴を吐出することにより、ワーク上に画像等の記録が行われる。
【0003】
このようなインクジェット記録装置は、ワークから離間した状態で記録動作を行うことができる。このため、様々な材質のワークに記録を行うことが可能であり、また、他の記録方式に比べて高精細な記録が可能であることから、近年、幅広い用途への展開が図られている。例えば、カラーテレビやパーソナルコンピュータのディスプレイ等に用いられるカラー液晶ディスプレイの構成部材であるカラーフィルタや有機EL等の製造にも、インクジェット記録方式が採用されはじめている。
【0004】
一方、インクジェット記録方式では、ワークに比して小さなサイズのプリントヘッドが用いられる。このため、大面積のワークに対して記録を行う際は、ワークを搬送させるか、プリントヘッドを走査させて記録を行っていくのが通常であり、その際、プリントヘッドの位置合わせが、記録品質を決定付ける重要な要素となる。特に、カラーフィルタの製造にインクジェット記録方式を採用するには、ミクロン単位の位置合わせ精度が要求される。そこで、例えば特許文献1には、プリントヘッドの位置合わせ方法として、プリントヘッドのノズルを観察し、ノズルの位置を検出することにより、ワークとノズルの相対関係を導き出して位置調整を行う方法が記載されている。
【特許文献1】特開2006−133396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1における位置合わせ方法では、ノズルとワークの位置合わせを行っているため、プリントヘッドとワークを相対的に移動させながらインク滴を吐出させる際に生じる種々の時間的な誤差要素が考慮されていない。すなわち、特許文献1の方法では、吐出タイミング信号の伝播時間や、プリントヘッドの応答時間、インクが吐出されてからワークに着弾するまでにインクの飛翔時間等の誤差となる時間が考慮されておらず、ワークに高精度でインク滴を着弾できないという問題があった。
【0006】
本発明は、プリントヘッドとワークの相対的な移動により生じる誤差要素を解消し、ワークに高精度でインク滴を着弾し得るインクジェット記録装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のインクジェット記録装置は、インクジェット方式により、ワーク上に画像を印写形成するインクジェット記録装置であって、X方向に移動可能な複数のブリッジと、前記ブリッジに搭載され、Y方向に移動可能な複数のスライダと、前記スライダに取り付けられ、複数個のプリントヘッドが搭載されたヘッドユニットと、前記ヘッドユニットによるテスト印写が可能な領域と、前記テスト印写時に前記プリントヘッドのノズルから吐出されたインクの着弾位置を検出する位置検出手段と、前記テスト印写時のインク着弾位置に基づいて、前記ワークに対し実際に所定の画像を印写する実印写時における前記プリントヘッドの印写開始位置を算出する印写開始位置算出手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明のインクジェット記録装置にあっては、テスト印写の着弾位置等に基づき実印写時の着弾位置を予測し、実印写時におけるプリントヘッドの印写開始位置を算出する。実印写処理は、テスト印写の結果を踏まえて実施され、プリントヘッドとワークの相対的な移動により生じる誤差要素をキャンセルした状態で印写処理が実施される。従って、ワークの所望の位置にインク滴を正確に着弾させることができ、実印写時の記録品質の向上が図られる。
【0009】
前記インクジェット記録装置において、前記位置検出手段は、実印写時における前記プリントヘッドの印写開始位置を、実印写時におけるインクの目標着弾位置と、テスト印写時におけるインクの着弾位置と、テスト印写時の前記スライダの位置に基づいて算出する
ようにしても良い。また、前記位置検出手段により、前記ワーク上に形成されたアライメントマークを検出するようにしても良い。
【0010】
一方、本発明のインクジェット記録方法は、X方向に移動可能な複数のブリッジと、前記ブリッジに搭載されY方向に移動可能な複数のスライダと、前記スライダに取り付けられ複数個のプリントヘッドが搭載されたヘッドユニットと、を備えたインクジェット記録装置により、ワーク上に画像を印写形成するインクジェット記録方法であって、前記ワークに対し実際に所定の画像を印写する実印写処理に先行して、実印写処理と同一のプリントヘッドを用いてテスト印写を実施し、実印写時におけるインクの目標着弾位置と、テスト印写時におけるインクの着弾位置と、テスト印写時の前記スライダの位置に基づいて、実印写時における前記プリントヘッドの印写開始位置を算出することを特徴とする。
【0011】
本発明のインクジェット記録方法では、実印写処理に先行してテスト印写を行い、その着弾位置等に基づき実印写時の着弾位置を予測して、実印写時におけるプリントヘッドの印写開始位置を算出する。実印写時は、テスト印写の結果を踏まえて実施され、プリントヘッドとワークの相対的な移動により生じる誤差要素をキャンセルした状態で印写処理が実施される。従って、ワークの所望の位置にインク滴を正確に着弾させることができ、実印写時の記録品質の向上が図られる。
【0012】
前記インクジェット記録方法において、前記インクジェット記録装置に設けられたテスト印写領域にてテスト印写を実施しても良い。また、前記テスト印写時におけるインクの着弾位置を、前記スライダに取り付けられた位置検出手段によって検出しても良い。さらに、前記テスト印写における前記プリントヘッドのノズルと印写対象物との間の距離、前記プリントヘッドの走査速度及び前記プリントヘッドの駆動電圧を、実印写処理と同一条件に設定することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のインクジェット記録装置によれば、テスト印写の着弾位置等に基づいて、実印写時におけるプリントヘッドの印写開始位置を算出するので、実印写時にワークの所望の位置にインク滴を正確に着弾させることができ、実印写時の印写位置を高精度に制御することが可能となる。従って、インクジェット記録装置における記録品質の向上を図ることができ、例えば、カラーフィルタ等のミクロン単位の位置合わせ精度が要求される印写対象物においても製品品質が確保される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明のインクジェット記録装置の一実施形態の構成を示す上面図である。当該記録装置は、インクジェット記録方式により、フィルタ基材等のワークにパターン(画像)を印写等する装置であり、プリントヘッドユニット4a〜4cに配された図示しないノズルからインク滴を吐出し、ワーク上に所望の記録処理を実行する。
【0015】
図1に示すように、本発明のインクジェット記録装置は、X方向に移動可能なブリッジ1a,1bと、Y方向に移動可能なスライダ2a〜2dを備えている。ブリッジ1a,1bは、フレーム7a,7b上に取り付けられ、X方向に移動自在に設置されている。スライダ2a〜2dは、ブリッジ1a,1bに取り付けられ、Y方向に移動自在に設置されている。ブリッジ1a,1bとスライダ2a〜2dは、例えば、ステッピングモータやサーボモータ等の制御可能なモータを使用した図示しない駆動手段によって駆動される。ブリッジ1a,1bやフレーム7a,7bには、リニアスケール等の精密測長手段が配置されており、その検出結果に基づいてモータがフィードバック制御される。また、ブリッジ1a,1bやスライダ2a〜2dは、X方向,Y方向に全て同時駆動可能となっている。
【0016】
スライダ2aには、アライメント・着弾位置検出用カメラ3(以下、カメラ3と略記する)が取り付けられている。このカメラ3は、ワーク11に設けられた位置合わせ用のアライメントマーク12(図3参照)やインク滴の着弾位置を検出する撮影手段であり、例えば、CCD等の画像処理カメラが使用される。カメラ3としては、アライメントマークやインク着弾位置の検出が可能であれば、エリアカメラとラインカメラの何れを使用しても良い。
【0017】
スライダ2b〜2dには、プリントヘッド8a〜8cを備えたプリントヘッドユニット4a〜4c(以下、ヘッドユニット4a〜4cと略記する)が搭載されており、このように複数のスライダにヘッドユニットを搭載することにより、印写処理が高速化され、ワーク印写工数の削減が図られる。プリントヘッド8a〜8cは、全ヘッドが同時印写可能となっており、その吐出タイミングも独立して制御可能である。また、高精度印写を実現するため、各プリントヘッド8a〜8cは、5μm以内の精度で互いに平行に取り付けられている。プリントヘッド8a〜8cには、例えば、ピエゾ式の既知のインクジェットヘッドが使用され、そこには、少なくとも1つのノズルが設置される。なお、プリントヘッド8a〜8cとしては、ノズル間などの寸法も既知のものを使用する。
【0018】
図1のインクジェット記録装置にはまた、ワークをエアー吸着等によって固定可能なワークステージ6が設けられている。ワークステージ6は、X方向、Y方向、さらに、回転方向に移動可能となっており、図1において上下方向に加え、ワーク着色面、すなわち記録処理面に平行な面内における任意の角度θにも回転可能となっている。ワークステージ6は、図示しない移動機構により、ワークセットポジション(ワークに対して処理を行う位置)まで移動可能となっている。また、ワークステージ6には、ワークを任意の位置にセット可能な機構(図示せず)が設けられている。
【0019】
図1において5a〜5cはテスト印写領域であり、ワークへの実印写処理に先立ってヘッドユニット4a〜4cの位置合わせを行うために使用される。テスト印写領域5a〜5cは、当該領域とノズルとの間のインク飛翔時間が、ワークに対し実際にパターンを印写する際(実印写時)におけるノズル−ワーク間のインク飛翔時間と等しくなるように、ワークと同じ高さに設定されている。また、着弾位置が検出可能なように、着弾インクの形状が残る部材(メディア)にて形成されている。テスト印写領域5a〜5cのメディアは、例えば自動巻き取り式など、交換機構により適宜交換できるようになっている。
【0020】
このようなインクジェット記録装置では、次のようにして印写処理が開始される。図2は、本発明のインクジェット記録装置によるパターン印写開始までのフローチャートである。図2の処理やそれに伴う装置駆動制御、印写制御、その他各種機器の制御は、例えばコンピュータ等の演算処理機能や記憶手段等を有する制御処理装置13によって行われる。図2に示すように、ここではまず、ステップS1にて、ワーク11をワークポジションにセットする。ワークポジションとは、ワークに対して処理を行う位置として設定された基準領域であり、S1では、ワークステージ6上に設定されたこのワークポジションにワーク11を固定する。この際、ワークとしては、形状・寸法が既知のもので、少なくともアライメントマークを2個有するものを使用する。
【0021】
次に、ステップS2にて、ワークのアライメント調整を行う。本発明の装置は、プリントヘッド8a〜8cを高精度で位置決めでき、特定の位置に着弾させなければいけないワークに対して特に有効であるが、そのためには、ワークの位置決め、すなわち、アライメント調整が必要となる。このアライメント調整はカメラ3を用いて実施され、カメラ3によりアライメントマークの位置を確認し、ワークが所定の位置に来るまで繰り返し実施される。
【0022】
そこで、S2ではまず、スライダ2aとブリッジ1aによりカメラ3を移動させ、アライメントマークを検出する。そして、本来アライメントマークがあるべき位置と検出位置とのズレ量を算出し、X方向、Y方向、回転方向(角度θ)を調節すべくワークステージ6を移動させる。S2のアライメント調整では、この工程をズレ量が許容範囲内になるまで繰り返し行う。これにより、ワークを所定の位置に高精度で配置することができ、高精度の印写処理も可能となる。
【0023】
アライメント調整を行った後、ステップS3に進み、全ヘッドのテスト印写を行う。このテスト印写は、パターンを実際に印写する際の着弾位置を予測するために行うものであり、実印写処理に先立って実行される。当該テスト印写では、吐出信号伝播時間や、プリントヘッドの応答時間、ノズルとメディア間のインク飛翔時間を実印写時と等しくするため、ノズル−印写対象物(テスト印写ではメディア、実印写ではワーク)間の距離や、プリントヘッドの走査速度、駆動電圧等の印写条件を実印写時と同様に設定する。このような条件を実印写時と揃えることにより、吐出タイミングを考慮することなく、テスト結果から実処理時の設定を得ることができ、操作プログラムが簡素化され、制御装置への負荷も軽減される。
【0024】
ステップS3の処理ではまず、テスト印写領域5a〜5cにメディアをセットする。次に、スライダ2b〜2dとブリッジ1a,1bを移動させ、プリントヘッドユニット4a〜4cの各プリントヘッド8a〜8cをテスト印写領域5a〜5cのテスト印写開始位置まで移動させる。なお、印写開始位置とは、プリントヘッド8a〜8cを走査させて印写する前のプリントヘッド8a〜8cのセット位置を意味する。
【0025】
プリントヘッド8a〜8cをテスト印写開始位置まで移動させた後、スライダ2b〜2dをパターン印写する際の方向に移動させながら、全てのプリントヘッド8a〜8cからテスト印写領域5a〜5cにインクを吐出する。この際の印写条件は、前述のように、ワークにパターンを印写する時と同じ条件とする。印写は、スライダ2b〜2dをY方向に移動させながら行われる。従って、インク着弾位置は、X方向はプリントヘッド8a〜8cの印写開始位置のX座標に、Y方向はプリントヘッド8a〜8cの印写開始位置のY座標と吐出タイミングに依存することになる。
【0026】
プリントヘッド8a〜8cからのインク吐出タイミングは、ヘッドユニット4a〜4cが搭載されたスライダ2b〜2dの動作を監視しつつ行われる。前述のように、スライダ2b〜2dには、リニアスケール等の精密測長手段が取り付けられており、これをエンコーダ等の読み取り装置にて検出することにより、プリントヘッド8a〜8cの位置が算出される。エンコーダ信号はコンピュータ等の制御処理手段に送られ、そこで演算処理された結果に基づき、スライダ動作がフィードバック制御される。
【0027】
テスト印写では、全てのプリントヘッド8a〜8cから吐出されたインクの着弾位置の検出を行うため、各プリントヘッド8a〜8cから吐出されるインクが、同じ場所に着弾しないように吐出タイミングを制御する。テスト印写を行う際には、各々のプリントヘッド8a〜8cに関し、その印写開始位置、吐出タイミングを記録する。
【0028】
全ヘッドのテスト印写を実行した後、カメラ3を移動し(S4)、着弾座標を検出・取得する(S5)。これにより、テスト印写によって全プリントヘッド8a〜8cから吐出されたインクの着弾位置が検出される。当該インクジェット記録装置では、ノズル間の距離、ノズル数が既知であるため、プリントヘッド8a〜8cの最端部のノズルから吐出されたインクの着弾位置を検出することにより、プリントヘッド8a〜8cの全ノズルの着弾位置を算出することができる。
【0029】
そこで、ステップS4では、最端部のノズルから吐出されたインクがカメラ3の視野内に入るように、ブリッジ1aとスライダ2aをX方向、Y方向に移動させる。そして、ステップS4にて、カメラ3から得られた画像信号を処理し、最端部のノズルから吐出されたインクの着弾位置を取得する。その後、ステップS6に進み、この工程を全てのプリントヘッド8a〜8cの着弾座標を取得するまで繰り返す。
【0030】
このようにして全プリントヘッド8a〜8cの着弾位置を検出した後、ステップS7に進み、これまでの工程で得た結果をもとに、実印写時の目標着弾位置にインクを着弾可能な印写開始位置の算出を行う。当該インクジェット記録装置では、ワークの形状・寸法が既知であることから、S2のアライメント調整によってワーク位置が所定位置に決まれば、S3以降のテスト印写の結果に基づき、インクの目標着弾位置を算出することが可能となる。そこで、取得したテスト印写時の着弾座標と目標着弾位置のX方向・Y方向の相対距離を求め、その結果に基づき、X方向はブリッジ1a,1b、Y方向はスライダ2b〜2dをそれぞれ移動(走査)させることにより、実印写時にインクを目標着弾位置に着弾させることが可能となる。
【0031】
図3は、テスト印写の結果から実印写時の印写開始位置を算出する処理の概念を示す説明図であり、当該処理は、印写開始位置算出手段である制御処理装置13によって実行される。なお、ここではプリントヘッド8bを例にとって説明するが、他のプリントヘッド8a,8cにおいても同様の処理が行われる。図3に示すように、テスト印写時のスライダ2cの基準位置Stの座標を(Tx、Ty)、スライダ2cがこの座標にあるとき、スライダ2c中の基準となるノズル(基準ノズル)から吐出されたインクの着弾位置Dt(基準ドット着弾位置)の座標を(X2、Y2)とする。また、実印写時におけるワーク11上の着弾目標位置Dpの座標を(X1、Y1)する。さらに、着弾目標位置Dpに基準ノズルから吐出されたインクを着弾させるための実印写時のスライダ基準位置Spの座標を(Px、Py)とする。
【0032】
この場合、前述のスライダ基準位置Spは、実印写時にパターンの印写処理を開始する基準位置(印写開始位置)となり、その座標(Px、Py)は次式にて求められる。
【0033】
Px=Tx+(X1−X2)
Py=Ty+(Y1−Y2)
つまり、テスト印写時のデータ(基準座標St:Tx,Ty;着弾位置Dt:X2,Y2)を用いて、実印写時の着弾目標位置Dp(X1,Y1)からパターン印写開始位置Spを逆算して座標(Px、Py)を算出する。これにより、実機の個別特性に応じて印写開始位置Spが設定され、プリントヘッド8a〜8cとワーク11の相対的な移動により生じる誤差要素がキャンセルされ、高精度なパターン印写が可能となる。
【0034】
このように、本発明のインクジェット記録装置では、実印写に先立って実際に印写を行い、その際に検出された着弾位置に基づいて、実印写時の印写位置を制御するので、高精度(例えば、3μm以内)の位置合わせが可能となる。従って、インクジェット記録装置における記録品質の向上を図ることができ、不良品発生率が低下し、製品コストを低減させることが可能となる。また、当該インクジェット記録装置では、1つのカメラ3にてワーク11のアライメントや、全てのヘッドユニットのX方向・Y方向の位置合わせが可能であり、簡略な装置構成にてテスト印写が可能なため、高精度の実印写処理を低コストにて実現できる。
【0035】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0036】
例えば、前述の実施形態では、プリントヘッド8a〜8cにピエゾ式のインクジェットヘッドを使用したものを示したが、プリントヘッドとして、サーマル式やその他の方式のものを使用することも可能である。また、装置中に特定のテスト印写領域5a〜5cを設定した構成を示したが、ワークステージ6をテスト印写領域5a〜5cとして利用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のインクジェット記録装置の一実施形態の構成を示す上面図である。
【図2】本発明のインクジェット記録装置によるパターン印写開始までの処理過程を示すフローチャートである。
【図3】テスト印写の結果から実印写時の印写開始位置を算出する処理の概念を示す説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1a,1b ブリッジ
2a〜2d スライダ
3 アライメント・着弾位置検出用カメラ
4a〜4c プリントヘッドユニット
5a〜5c テスト印写領域
6 ワークステージ
7a,7b フレーム
8a〜8c プリントヘッド
11 ワーク
12 アライメントマーク
13 制御処理装置
Dp 実印写時の着弾目標位置
Dt テスト印写時の着弾位置
Sp 実印写時の印写開始位置
St テスト印写時のスライダ基準位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット方式により、ワーク上に画像を印写形成するインクジェット記録装置であって、
X方向に移動可能な複数のブリッジと、
前記ブリッジに搭載され、Y方向に移動可能な複数のスライダと、
前記スライダに取り付けられ、複数個のプリントヘッドが搭載されたヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットによるテスト印写が可能な領域と、
前記テスト印写時に前記プリントヘッドのノズルから吐出されたインクの着弾位置を検出する位置検出手段と、
前記テスト印写時のインク着弾位置に基づいて、前記ワークに対し実際に所定の画像を印写する実印写時における前記プリントヘッドの印写開始位置を算出する印写開始位置算出手段と、を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記位置検出手段は、実印写時におけるインクの目標着弾位置と、テスト印写時におけるインクの着弾位置と、テスト印写時の前記スライダの位置に基づいて、実印写時における前記プリントヘッドの印写開始位置を算出することを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記位置検出手段は、前記ワーク上に形成されたアライメントマークを検出することを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
X方向に移動可能な複数のブリッジと、前記ブリッジに搭載されY方向に移動可能な複数のスライダと、前記スライダに取り付けられ複数個のプリントヘッドが搭載されたヘッドユニットと、を備えたインクジェット記録装置により、ワーク上に画像を印写形成するインクジェット記録方法であって、
前記ワークに対し実際に所定の画像を印写する実印写処理に先行して、実印写処理と同一のプリントヘッドを用いてテスト印写を実施し、
実印写時におけるインクの目標着弾位置と、テスト印写時におけるインクの着弾位置と、テスト印写時の前記スライダの位置に基づいて、実印写時における前記プリントヘッドの印写開始位置を算出することを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項5】
前記テスト印写は、前記インクジェット記録装置に設けられたテスト印写領域にて実施されることを特徴とする請求項4記載のインクジェット記録方法。
【請求項6】
前記テスト印写時におけるインクの着弾位置は、前記スライダに取り付けられた位置検出手段によって検出されることを特徴とする請求項4又は5記載のインクジェット記録方法。
【請求項7】
前記テスト印写における前記プリントヘッドのノズルと印写対象物との間の距離、前記プリントヘッドの走査速度及び前記プリントヘッドの駆動電圧は、実印写処理と同一条件に設定されることを特徴とする請求項4〜6の何れか1項に記載のインクジェット記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−69707(P2010−69707A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239275(P2008−239275)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】