説明

インクジェット記録装置用のインクカートリッジ

【課題】フィルタの面積を拡大した場合でも、多孔質部材との圧接による撓みを抑えて、インクの流路を確実に確保すること。
【解決手段】 外部にインクを排出するインク供給口と連通する通孔を備えた突部27をインク収容室に突出形成するとともに、フィルタ30の裏面を支持する島状の凸条34を突部27の頂部に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク滴を吐出する記録ヘッドが設けられたキャリッジを備えたインクジェット記録装置のキャリッジに着脱可能に搭載されるインクカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
インク供給口と連通する通孔をフィルタで覆い、その上にインクを含浸させた多孔質材を圧接位置させるようにしたキャリッジ搭載型のインクカートリッジについては本出願人が特許文献1において開示している。
【0003】
この種のインクカートリッジは、ところで、単一色のインクカートリッジのように複数色のインクカートリッジに比較して幅が広い場合には、多孔質材から圧力を受けた場合にはたわみやすく、流路抵抗が増大するという問題がある。
【特許文献1】特開平8−132635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、フィルタの面積を拡大した場合でも、多孔質部材との圧接による撓みを抑えて、インクの流路を確実に確保することができるオンキャリッジ型のインクカートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を達成するために、外部にインクを排出するインク供給口と連通する通孔を備えた突起をインク収容室に突出形成するとともに、フィルタの裏面を支持する島状の凸条を前記突起の頂部に形成した。
【発明の効果】
【0006】
突起の頂部に島状の凸条を設けることにより、インクに対する流路抵抗を低減させつつ気泡を濾過するために、この部分に添設するフィルタの面積を拡大した場合でも、多孔質部材との圧接による撓みを抑えて、インクの流路を確実に確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1、図2は、マゼンタ、シアンの濃淡2種のインクと、イエローの5種のインクを収容し得るように形成した本発明の一実施例なすインクカートリッジを示したものである。
【0008】
図において符号1は、水蒸気の透過度が低い反面、強度的に若干劣るポリプロピレンを素材として可能な限り多量のインクを収容し得るよう略直方体状に形成したインクカートリッジ本体で、この本体1には、マゼンタ、シアンの濃いインクを収容する各インク収容室2a、2cと、これらよりも多量のマゼンタ、シアンの薄いインクとイエローのインクを収容する巾の広い各インク収容室2b、2d、2eとがそれぞれ隔壁3‥‥を介して区画形成され、多孔質材からなるフォーム5を各収容室2a〜2eに装填して、これにインクが含浸されている。
【0009】
これらのインク収容室2a〜2eの記録ヘッド寄りの底面6の一端側には、各インク収容室2a〜2eに連通する円筒状のインク供給口4a〜4eが、外周がほぼ接するように突出形成されている。
【0010】
この種のインクカートリッジは、互換性を持たせるように同じサイズに形成され、さらに、記録ヘッド上に等間隔に突設した各インク供給針と対応するように、インク収容室2a〜2eの狭広の如何に拘りなく、その底面6にはインク供給口4a〜4eが等しい間隔をおいて形成されている。
【0011】
このため、各インク供給室2a〜2e内に突出するフォーム圧縮用突部7a〜7eに設けたインク流出孔8a〜8eとインク供給口4a〜4eとは、上下の金型の突当てによって断面円形で、かつ下部ほど径が大きくなる凹部を、その中心軸線を上下方向にずらしていわゆるクランク状に形成することにより、各インク収容室2a〜2eの巾の違いの如何に拘りなく、等間隔に形成したインク供給口4a〜4eと互いに連通させることができるように形成されている。
【0012】
一方、インク収容室2a〜2eには、フォーム5のインクの排出を助けるフォーム圧縮用の突部7a〜7eが、巾の狭い各インク収容室2a〜2e内に沿わせることができるように断面長円形に形成されている。
【0013】
これら各突部7a〜7eは、インク供給口4a〜4eが例え等間隔に形成するべく、隣接する他方のインク収容室側に位置しても、隔壁との間には間隙を存在させて、部分的に極端な厚肉部が生じないように形成されている。そして、各突部7a〜7eは長手方向一端に設けたインク供給口4a〜4eとの接続流路を形成する通孔8a〜8eに向けて他端からインク供給口4へと徐々に深まる断面三角形状の流路9が設けられている。
【0014】
流路9は、カートリッジの端部側がインク供給口4a〜4eとほぼ直線をなすように、また中央側が図4(a)に示したようにインク供給口4a〜4eの形成された一端側から他端側に延びる平面として形成されたり、図4(b)に示したようにインク供給口側を凸とする円弧面9bとして形成されたり、さらには図4(c)に示したようにインク収容室2a〜2e側を凸とする円弧面9cとして形成されている。特に図4(c)に示した斜面9cは、後述するフィルタ10の下面からインク供給口4a〜4eへのインクの流れを増速する作用が大きいため、気泡の排出性が向上する。
【0015】
また、斜面9aは、インク収容室2a〜2eからインク供給口4a〜4eへのインクの流れをスムーズにする作用の他に、本体1に比較して厚くなる突部7a〜7eの肉厚を可能な限り薄くできるため、内方に突出したこの突部7a〜7eの肉厚を可能な限り均一にして成形時のひけの発生を抑え、さらには、内端上縁に添設するフィルタ10の有効面積を拡大することができる。インクの流れに円滑化と、フィルタ10の面積の増大化により、フィルタ10の下に生じる気泡の排出性を向上することができる。なお、図中符号11は、カートリッジ本体1の外側に突設した誤装着防止用の突起を示している。
【0016】
他方、インクカートリッジ本体1の開口部を封止する蓋体13は、その内面に、図3に示したようにインク収容室2a〜2e内に収容した多孔質部材、つまりフォーム5を押圧する2条の縦リブ14が間隔をおいて各インク収容室2a〜2e毎に突出形成されている。
これらの縦リブ14は、インク供給口4a〜4e寄りの部分が、他の部分よりも高く形成されていて、インク収容室2の内部に突出したフォーム圧縮用突部7a〜7eと協動してこの部分のフォーム5の空孔を縮小することにより、得られる強い毛細管作用によってフォーム5内に均一に吸収されたインクをインクの減少とともにインク供給口4a〜4eの領域へ集める。
【0017】
この蓋体13には、その中央部とインク供給口4寄りの部分に、各インク収容室2a〜2eに対応させてインク充填口15と大気連通口16が貫通形成され、また、この蓋体13の上面には、始端部が大気連通口16に連通し、末端が蓋体13の上面他半に設けた通孔部17a〜17eへと伸びる細溝18が各インク収容室2a〜2e毎に迷路状に形成されている。
【0018】
未使用状態では細溝18の上面は、遮気性のフィルム50(図1(c))により封止されてインクの蒸発を防止されている。そしてインクカートリッジを使用するに際には、この上を被覆しているフィルムの他半部50bが引剥される。これにより、各インク収容室2a〜2e内が大気に開放されて記録ヘッドへのインクの供給が可能となる。この状態においては残留部50aと長い細溝18とにより形成されるキャピラリの大きな流路抵抗によってインクの蒸発が防止される。さらに、これらの細溝18の末端の通孔部17a〜17eを一個所にまとめて1つを頂点とするように配列することにより、添着したフィルム50bをこの部分で容易に引剥せるように構成されている。
【0019】
これに対して図5、図6は、ブラック等の単色のインクを収容するインクカートリッジとして構成した本発明の第2の実施例を示したものである。図5、図6においてインクカートリッジ本体21には、記録ヘッド寄りの底面26の一端にインク供給口24が設けられ、また、このインク供給口24と対応する位置にインク収容室22内に、フォーム31を圧縮するための突部27が突出形成されている。
【0020】
この突部27は、インク収容室22の記録ヘッド側から他端側へ達する長楕円形として形成されていて、その記録ヘッド側の一端にはインク供給口24に連通する通孔28が設けられている。通孔28とインク供給口24との間には、突部27の偏肉部27aを均らすように、ここには通孔28に向けてインク供給口24側に徐々に深まるように流路29が設けられ、フィルタ30の下に生じる気泡を通孔28を介して外部に排出できるように構成されている。
【0021】
流路29は、カートリッジの端部側がインク供給口24とほぼ直線をなすように、また中央側が図7(a)に示したように平面29aとして形成されたり、図7(b)に示したようにインク供給口側を凸とする円弧面29bとして形成されたり、さらには図7(c)に示したようにインク収容室22側を凸とする円弧面29cとして形成されている
【0022】
ところで、単一色のインクカートリッジは、複数色のインクカートリッジに比較して幅が比較的広いため、突部27に十分な幅のフィルタ30を貼着できる反面、フォーム31から圧力を受けた場合にはたわみやすく、流路抵抗を却って増大させるという不都合が生じる。
【0023】
このため、この実施例においては、突部27の頂面32は、図7に示したように、外周に設けた周縁凸条33によって中央がインクの流路をなすよう一段低く形成され、さらにこの中央部分には図8、図9に示したように2本の島状凸条34、34が周縁凸条33よりも若干高くなるように、少なくとも1本、この実施例ではフィルタ30のたわみを防止できる程度の間隔をあけて突出形成されていて、突部27の上に添設したサイズの大きなフィルタ30がインク収容室22内に充填したフォーム31の圧力によって撓まないように構成されている。
【0024】
また、裏面にはフィルタ30からインク供給口24までの垂直方向の距離を短くするために、インクカートリッジ本体21の下面に、インク供給口24と記録ヘッドが確実に係合するのに必要な記録ヘッドの係合部を受ける凹部35が設けてあり、この凹部35を必要最小限の大きさにすることによって、インク収容室22の内容積を可能な限り大きくするように構成されている。フィルタ30は、周縁突状33の表面に形成された突起に載置し、フィルタ30をこの突起に圧接しながら突起を溶融させて添着されている。
【0025】
なお、本体21の開口部を封止する蓋体43は、前述の実施例と同様に蓋体43にもその内面にはフォーム31を圧縮するためのリブ44が設けられ、またその表面には、一端が大気連通口47に連通し、他端がフィルムの剥離可能領域に開孔する細溝48が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図(a)乃至(c)は、それぞれ本発明のインクカートリッジの一実施例を、フィルム貼着前の状態での上面の構造を示す斜視図、裏面の構造を示す斜視図、及びフィルム貼着を貼着した状態を示す斜視図である。
【図2】図(a)乃至(c)は、それぞれ本発明の一実施例をなすインクカートリッジ本体の内面を示す上面図と、A−A線及びB−B線での断面図である。
【図3】図(a)(b)は、それぞれ同上カートリッジを構成する蓋の平面図と、インクカートリッジのインク排出用通孔近傍での断面図である。
【図4】図(a)乃至(c)は、それぞれインク供給口に連通する流路の他の実施例を示す図である。
【図5】図(a)(b)は、それぞれ本発明の他の実施例をなす単色のインクカートリッジの実施例を、フィルム貼着前の状態での上面の構造を示す斜視図、裏面の構造を示す斜視図である。
【図6】図(a)(b)は、それぞれ同上インクカートリッジの要部を示した側面図とA−A線での断面図である。
【図7】図(a)乃至(c)は、それぞれ本発明のインクカートリッジの他の実施例をインク供給口に連通する流路の構造で示す図である。
【図8】図(a)乃至(c)は、それぞれカートリッジの底面の構造をフィルタを外して示す平面図と、A−A線、及びB−B線での断面構造をフィルタを貼着した状態で拡大して示す図である。
【図9】図(a)(b)は、それぞれ図7におけるC−C線、及びD−D線での断面構造を拡大して示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1、21 インクカートリッジ本体 2a〜2e、22 インク収容室 4a〜4e、24 インク供給口 7a〜7e、27 突部 8、28 通孔 9、29 徐々に深まるように傾斜した流路 9a〜9c、29a〜29c 斜面 30 フィルタ 33 周縁凸条 34 島状凸条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部にインクを排出するインク供給口と連通する通孔を備えた突起をインク収容室に突出形成するとともに、フィルタの裏面を支持する島状の凸条を前記突起の頂部に形成したインクジェット記録装置用のインクカートリッジ。
【請求項2】
前記頂部の周縁に環状の凸条が形成され、また前記島状の凸条が前記環状の凸条よりも突出するように形成されている請求項1に記載のインクジェット記録装置用のインクカートリッジ。
【請求項3】
前記島状の凸条が、前記突起の頂部の他端から前記通孔に延びるように形成されている請求項1に記載のインクジェット記録装置用のインクカートリッジ。
【請求項4】
前記凸条が複数、間隔を空けて形成されている請求項1に記載のインクジェット記録装置用のインクカートリッジ。
【請求項5】
前記突起に対向する領域にカートリッジ本体の底面よりもインク収容室側に食い込む凹部が形成されている請求項1に記載のインクジェット記録装置用のインクカートリッジ。
【請求項6】
前記フィルタに当接するようにインク含浸用の多孔質材が前記インク収容室に装填されている請求項1に記載のインクジェット記録装置用のインクカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−76313(P2006−76313A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−354326(P2005−354326)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【分割の表示】特願平11−132746の分割
【原出願日】平成11年5月13日(1999.5.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】