説明

インクジェット記録装置

【課題】 印字作業時に、バッファタンク5内の背圧の変動少なくして、印字性能の悪化やノズル詰まりを無くする。
【解決手段】 印字ヘッド2とバッファタンク5とをキャリッジ4に搭載して移動可能とし、固定位置のインクカートリッジ30から可撓性チューブ13、31を介してバッファタンク5のインク流入筒8へインク供給する。バッファタンク5の天井壁7(空気部分)につながる開口筒9に接続した動圧吸収タンク20の上部側にダンパー用インク24を入れ、適宜メッシュによるメニスカス耐圧のフィルタ22にて支持する。可撓性チューブ13、31内のインクの進退動に伴うバッファタンク5内の背圧の変動を、フィルタ22を通過してダンパー用インク24から大気に開放される気泡、またはフィルタ22を通過してバッファタンク5に落下するダンパー用インク24により吸収する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インクタンクからインクを供給させて印字する印字ヘッドを備えたインクジェット記録装置の構成に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、入力信号に基づいてインクを被記録媒体に噴射して記録するインクジェット記録装置において、インクタンクからインク流路を介して印字ヘッドの複数の噴射チャンネルにインクを導き、発熱素子、圧電素子等のアクチュエータを選択的に駆動させて噴射チャンネルの先端(ノズル)からインク噴射を行うものが知られている。この種のインクジェット式の記録装置において、特開2000−190513号公報等に開示されているように、シリアルプリンタタイプの小型のものでは、被記録媒体に対して往復移動するキャリッジに印字ヘッド及びインク供給源としてのインクカートリッジを搭載したものがあるが、キャリッジの移動端にて一端停止してリターンするときの慣性モーメントが前記インクカートリッジ及びその内部のインク液の重量に対応して大きくなってしまい、前記キャリッジの駆動源に余分の抵抗力がかかるという問題があり、また、インクカートリッジを小型化すると、インクの消費に伴うインクカートリッジの交換頻度が多くなり、連続して大量の記録を迅速にできないという不便さがあった。
【0003】そこで、特開平5−16382号公報に開示されているように、記録装置本体側にインクカートリッジ等の交換可能なインク供給源を配置し、該インク供給源から可撓性のチューブを介してキャリッジ上の印字ヘッドにインクを供給する構成が知られている。
【0004】そして、この公報にも開示されているように、印字ヘッドと取り外し可能に接続するサブタンクは、印字ヘッドと共にキャリッジに搭載され、一体的に走査移動するものであり、サブタンクの内部にはインクを完全に満たすのではなく、所定量の空気(エア)を溜めた状態で用いられる。この空気部分の存在により、印字ヘッドの移動・停止に伴う衝撃力を緩和し、インクが印字ヘッドの噴射チャンネル内の圧力変動を防止して、均一な噴射性能を維持しようとするものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、最近の印字速度の高速化の要請に伴い、前記印字ヘッドの発進・停止を頻繁且つ急激に行うと、サブタンクの空気溜まり部分が密閉状であることに加え、インク供給源から印字ヘッドのサブタンクまでの可撓性チューブ内のインクの慣性流動のため、サブタンク内の圧力変動が大きくなり過ぎてしまう。その結果、サブタンク内の圧力が正圧側で大き過ぎるときには、前記ノズル部でのメニスカス耐圧を越えてしまい、インクがノズル面から漏洩して被記録媒体を不用意に汚したり、印字性能を劣化させたりし、逆に、サブタンク内の圧力が負圧側で大き過ぎると、前記ノズル部でのインクのメニスカスを破ってしまい、印字時に大気がノズルから印字ヘッド内に入って噴射チャンネル内に気泡として溜まり、噴射不良の原因になるという問題が頻繁に発生する問題があった。
【0006】本発明は、このような問題を解消すべくなされたものであって、キャリッジと一体的に移動・停止する印字ヘッドに接続したバッファタンクの空気部分に連通するように動圧吸収タンクを設け、該動圧吸収タンク内に充填したインクをフィルタにて支持させ、バッファタンク内の背圧の変動に応じて、フィルタに形成したメニスカスを破って、空気を逃がしたり、インク供給することにより、圧力バランスを保持しするように構成した圧力変動吸収手段を設けることにより、印字ヘッドのインク漏れや気泡の吸い込み等を無くして、印字不良が発生しないようにしたインクジェット記録装置を提供することを技術的課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】この技術的課題を達成するため、請求項1に記載の発明のインクジェット記録装置は、インクを溜める大気開放型のインクタンクと、複数の噴射チャンネルとそれに連通して大気にインク滴を放出するためのノズルとを有する印字ヘッドと、該印字ヘッドに接続したバッファタンクに、前記インクタンクからインクを供給するインク供給経路とを備えたインクジェット記録装置において、前記バッファタンク内の空気部に連通した動圧吸収タンクを配置し、該動圧吸収タンク内上部をフィルタで仕切り、そのフィルタよりも前記バッファタンク側を当該バッファタンク内の空気部に連通した空間とし、前記フィルタの前記バッファタンクとは反対側にインクを収容し、そのインクが前記フィルタにおいて、前記印字ヘッドのノズルにおけるメニスカス耐圧よりも小さい耐圧のメニスカスフィルタを形成するように構成したものである。
【0008】請求項2に記載の発明のインクジェット記録装置は、インクを溜める大気開放型のインクタンクと、複数の噴射チャンネルとそれに連通して大気にインク滴を放出するためのノズルとを有する印字ヘッドと、該印字ヘッドに接続したバッファタンクに、前記インクタンクからインクを供給するインク供給経路とを備えたインクジェット記録装置において、前記バッファタンク内の空気部に連通した動圧吸収タンクと、該動圧吸収タンク内上部をフィルタで仕切り、そのフィルタよりも前記バッファタンク側を当該バッファタンク内の空気部に連通した空間とし、前記フィルタの前記バッファタンクとは反対側にインクを収容し、バッファタンク内の背圧が高いときには、当該バッファタンク内の空気が前記フィルタを動圧吸収タンク内のインク側に通過することを許容し、前記背圧が低いときには、動圧吸収タンク内のインクが前記フィルタをバッファタンク方向へ通過することを許容するように構成したものである。
【0009】そして、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録装置において、前記印字ヘッドに対して前記インクタンクの高さ位置を、印字ヘッドにおけるノズルからインク滴が漏洩しない背圧が前記バッファタンクに付与されるように設定したものである。
【0010】また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のインクジェット記録装置において、前記動圧吸収タンクは、少なくとも印字作動中は、インク収容側を大気に開放可能に構成したことを特徴とするものである。
【0011】さらに、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のインクジェット記録装置において、前記動圧吸収タンクに前記インクタンクからインク補充用ポンプにてインク補充するように構成したものである。
【0012】請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のインクジェット記録装置において、前記インクタンクは、インクカートリッジ等のインク供給源から供給されたインクを一旦溜めるサブタンクとしたものである。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面について説明する。図1は、本発明のインクジェット記録装置の概略断面図、図2は第2実施形態の要部断面図、図3は第3実施形態の要部断面図である。ヘッドユニット1には、その下部側に図示しない複数の噴射チャンネルを有する印字ヘッド2が配置され、上部側には前記全ての噴射チャンネルに連通するマニホールド室3aを備えたマニホールド体3が配置されて、両者が接着固定されてユニット化されたものである。
【0014】前記ヘッドユニット1はキャリッジ4の下面側に接着剤等により固定装着され、その上面側にバッファタンク5が取付けネジ6にて着脱自在可能に固定されている。インク供給源であるインクタンクとしてのインクカートリッジ30に一端を接続した合成樹脂製の可撓性のチューブ31の他端がキャリッジ4の側方に固定して設けた接続部材14に接続し、この接続部材14に接続した中継用の合成樹脂製の可撓性チューブ13の他端が前記バッファタンク5のインク流入口8に接続されている。その場合、インク供給のためのポンプ33の駆動により、インクカートリッジ30内のインクがバッファタンク5に補充供給されるように構成しても良いし、後に説明する吸引パージ装置の働きにより、サイホンの原理にてインク供給するように構成しても良い。
【0015】なお、インクカートリッジ30内のインクを図示しないサブタンクに供給し、そのサブタンクからポンプを介してバッファタンク5に供給する構成であっても良い。これらの場合、インクカートリッジ30及びサブタンクには大気開放部を備えている。
【0016】なお、本実施形態においては、前記インクカートリッジ30は、キャリッジ外で記録装置の本体側の所定位置に配置されるものとし、図示しないタイミングベルトやステップモータ等を介して、キャリッジ4は図1の紙面と直交する方向に往復動可能に構成されている。また、キャリッジ4は、被記録媒体としての用紙(図示せず)の表面に沿い、且つ該用紙の送り方向と直交するキャリッジ移動方向に沿って往復移動であり、キャリッジ4の移動方向の一端部には、吸引パージのための吸引キャップ37が、前記印字ヘッド2と対向するように配置されており、吸引パージ時及びインクカートリッジ交換時には、吸引キャップ37が印字ヘッド2の前面(下面)のノズル部を覆うように接近密着し、吸引パイプ38及び吸引ポンプ39を介してドレンタンク40に排出される。
【0017】次に、印字ヘッド2について説明すると、特開2000−103084号公報等に開示されているような公知の構造であるので図示しないが、基板の両側に複数の噴射チャンネルをそれぞれ有する2つのアクチュエータ基板を接着した構成であり、下面に前記各噴射チャンネルに連通するノズルが2列状に開口している。各アクチュエータ基板の上面には、夫々マニホールド室3aが前記各噴射チャンネルにわたって連通するように配置されたマニホールド体3が設けられている。前記各マニホールド室3a、3a(図1では一方のみ示す)の上面に接続する導入管12、12は後述するバッファタンク5の底板5aに開口したインク流出口10にシール管18、18を介して接続されている。なお、各噴射チャンネル内のインクを吐出させる構成としては、前記アクチュエータ基板における噴射チャンネル近傍の側壁を圧電材料で構成して、その圧電材料の変形によりインクを噴出させることが好ましい。
【0018】バッファタンク5の天井壁7には、インク流入筒8が垂下し、バッファタンク5の底板5aの近傍にて開口している。また、前記インク流入筒8の上端は天井壁7から上向きに突出している。さらに、前記天井壁7の一側寄り部位には、圧力変動吸収手段としての動圧吸収タンク20を接続するための開口9が形成され、前記天井壁7の内面(天井面)7aは、図1から理解できるように、略全体として一方で低く前記開口9側で高い位置となるように、水平面に対して適宜傾斜角度θの傾斜面に形成されている。この傾斜角度θは、本実施形態のインクジェット記録装置を搭載したプリンタの本体(図示せず)をテーブル等の載置面に載せるときの許容される傾き角度(装置許容傾き角度)に略5度加えた値とし、実施形態では5度〜15度程度であり、より好ましくは10度程度とする。
【0019】前記バッファタンク5の底板5aから下向きに突出した一対のインク流出口10、10には、その各々の上面側(バッファタンク5の内部)にて5μm〜10μmメッシュ程度のフィルタ11を張設し、インク内の気泡や異物を捕捉できるようにしている。
【0020】なお、インクカートリッジ30内の大気に開放されたインクの液面は、前記印字ヘッド2のノズル面(印字ヘッドの下面)の高さ位置より適宜高さH2(実施形態では水柱(水頭)100mm)だけ低く設定し、これにより印字ヘッド2のノズル面のインク圧力を大気に比べて負圧(前記水柱(水頭)100mmだけ低い)に設定している。
【0021】前記バッファタンク5内における空気部分(天井壁7)に近い上側に連通する開口筒9には、合成樹脂製の可撓性チューブ等からなる接続管21を介して、圧力変動吸収手段としての上部が漏斗状に形成された動圧吸収タンク20を交換可能に接続する。この動圧吸収タンク20の上部(大径部)は、15μm〜50μm程度のメッシュのフィルタ22にて上下を仕切り、このフィルタ22上にダンパー用インク24を支持させる。このフィルタ22に形成されるインクのメニスカスの耐破壊圧力(以下、メニスカス耐圧という)P3は、印字ヘッド2におけるノズル部のメニスカス耐圧のP1よりも小さくなるように設定されている。なお、インクカートリッジ30内のインクの液面と前記ノズル面との圧力差P2により、バッファタンク5内のインクに対して背圧が付与され、その背圧はノズル部のメニスカス耐圧P1よりも小さく設定することにより、通常の静止状態ではノズル部におけるインクのメニスカスが破壊されず、不用意にインクがノズル面から漏洩せず、且つフィルタ22の箇所におけるダンパー用インク24のメニスカスも破壊されないで、動圧吸収タンク20の上部にてダンパー用インク24がフィルタ22にて支持され下に漏洩しないのである。
【0022】また、第1実施形態として、図1に示すように、動圧吸収タンク20を密閉状にし、上壁には、図示しないセンサ及びアクチュエータにより開閉制御される開閉弁23を接続する。前記吸引パージ時には、この吸引作業位置へのキャリッジの移動を前記センサが検知し、前記開閉弁23を閉じることにより、動圧吸収タンク20の上部(フィルタ22)より上に収納された前記ダンパー用インク24がフィルタ22を介してバッファタンク5内に落ち込まない(引き込まれない)ように抑制される。印字動作中は、キャリッジ4の位置が前記吸引パージ位置から外れるので、前記センサにてこれを検知して、前記開閉弁23を開く。
【0023】そして、バッファタンク5内の圧力変動に応じて、以下のように、動圧吸収タンク20内で気泡とダンパー用インク24とが入れ代わることにより、印字ヘッド2のノズル面での背圧を略一定に保持することができるのである。
【0024】即ち、キャリッジ4の移動により、インク供給経路であるチューブ13、31内のインクがバッファタンク5の流入口筒8に近づくように前進すると、バッファタンク5内の圧力が増大する。そして、フィルタ22におけるメニスカス耐圧P3よりバッファタンク5内の圧力が大なるときには、バッファタンク5内の空気部分の空気がフィルタ22におけるインクのメニスカスを破壊し、気泡となって、動圧吸収タンク20上側のダンパー用インク24中を通過して大気に開放される。
【0025】他方、インク供給経路であるチューブ13、31内のインクがバッファタンク5の流入口筒8から遠ざかるように後退するときには、バッファタンク5内の圧力が減少する。その圧力がフィルタ22におけるメニスカス耐圧よりも小さくなると、フィルタ22におけるメニスカスが破壊され、当該フィルタ22に支持されているダンパー用インク24が少量ずつバッファタンク5内に落下することにより、圧力低下分を補償する。バッファタンク5内の圧力がフィルタ22におけるメニスカス耐圧とほぼ等しくなると、ダンパー用インク24がバッファタンク5内に落下するのが停止されるのである。
【0026】前記図1の第1実施形態における動圧吸収タンク20内のダンパー用インク24が消費されてしまうと、前記動圧吸収作用(ダンパー作用)がなくなるので、ダンパー用インク24が満杯状の新しい動圧吸収タンク20と交換するのである。
【0027】図2に示す第2実施形態では、前記インクタンクとしてのインクカートリッジ30等から、補給管26及び補充用ポンプ27を介して動圧吸収タンク20の上部側にダンパー用インク24を補給(補充)できるように構成されている。この実施形態では図示しないセンサにて、動圧吸収タンク20の上部側のダンパー用インク24の液面を常時監視し、該液面が一定以下になれば、前記補充用ポンプ27を駆動させてダンパー用インク24の補給を図れば良いのである。なお、第2実施形態における他の構成要素は第1実施形態のもと同じであるので、同じ構成、部品には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0028】以上のようにして、キャリッジ4(印字ヘッド2)が移動することにより、固定位置のインクカートリッジ30等のインクタンクから移動するバッファタンク5にインクを供給するためのチューブ13、31内のインクが慣性力で進退動し、バッファタンク5内の背圧が振動的に変動しても、当該バッファタンク5の空気部分に連通する動圧吸収タンク20におけるフィルタ22の上に支持されたダンパー用インク24とフィルタ22とによるメニスカス耐圧を利用して、バッファタンク5内の気泡を動圧吸収タンク20上に逃がしたり、逆にダンパー用インク24をバッファタンク5に補充するように作動し、バッファタンク5内の背圧を略一定に保持できる結果、バッファタンク5内の背圧が高周波から低周波の広い範囲にわたって圧力変動しても、印字ヘッド2からインクが漏洩したり、ノズルから気泡を吸い込む等の不都合をなくすることができる。
【0029】なお、インクカートリッジ30等のインクタンクからバッファタンク5へのインク供給経路1331中に供給用ポンプ33を配置しなくても、サイホンの原理により、インク消費に伴うインク供給は自動的に行うことができる。また、印字ヘッド2は、上記構成の代わりに、公知の発熱部によりインクを局部的に沸騰させて噴射するもの、平面状に並んだ噴射チャンネルに圧電素子等の電気−機械的変位変換手段を対向させたもの等が適用できる。これらの場合にも、複数の噴射チャンネルにインクを分配するマニホールド室に、バッファタンクのインク流出口を接続する。
【0030】
【発明の作用・効果】以上に説明したように、請求項1に記載の発明のインクジェット記録装置は、インクを溜める大気開放型のインクタンクと、複数の噴射チャンネルとそれに連通して大気にインク滴を放出するためのノズルとを有する印字ヘッドと、該印字ヘッドに接続したバッファタンクに、前記インクタンクからインクを供給するインク供給経路とを備えたインクジェット記録装置において、前記バッファタンク内の空気部に連通した動圧吸収タンクを配置し、該動圧吸収タンク内上部をフィルタで仕切り、そのフィルタよりも前記バッファタンク側を当該バッファタンク内の空気部に連通した空間とし、前記フィルタの前記バッファタンクとは反対側にインクを収容し、そのインクが前記フィルタにおいて、前記印字ヘッドのノズルにおけるメニスカス耐圧よりも小さい耐圧のメニスカスフィルタを形成するように構成したものであるから、印字ヘッド及びバッファタンクの移動に伴い、インクタンクからバッファタンクへのインク供給経路内のインクが慣性力で進退移動することにより、バッファタンク内の背圧が規定値より増大または減少して、動圧吸収タンク内上部のインクを支持するフィルタにおけるメニスカス耐圧と前記背圧との均衡が破れると、バッファタンク内の空気が前記フィルタにて支持されたダンパー用インク中に気泡として大気に放出するか、または、このダンパー用インクをバッファタンク内に補充することで、バッファタンク内の背圧を略一定に保持でき、印字ヘッドからインクが漏洩したり、ノズルから気泡を吸い込んでノズル詰まりを発生させる等の不都合をなくすることができるという効果を奏する。
【0031】請求項2に記載の発明のインクジェット記録装置は、インクを溜める大気開放型のインクタンクと、複数の噴射チャンネルとそれに連通して大気にインク滴を放出するためのノズルとを有する印字ヘッドと、該印字ヘッドに接続したバッファタンクに、前記インクタンクからインクを供給するインク供給経路とを備えたインクジェット記録装置において、前記バッファタンク内の空気部に連通した動圧吸収タンクと、該動圧吸収タンク内上部をフィルタで仕切り、そのフィルタよりも前記バッファタンク側を当該バッファタンク内の空気部に連通した空間とし、前記フィルタの前記バッファタンクとは反対側にインクを収容し、バッファタンク内の背圧が高いときには、当該バッファタンク内の空気が前記フィルタを動圧吸収タンク内のインク側に通過することを許容し、前記背圧が低いときには、動圧吸収タンク内のインクが前記フィルタをバッファタンク方向へ通過することを許容するように構成したものであり、この構成により、印字ヘッド及びバッファタンクの移動に伴い、インクタンクからバッファタンクへのインク供給経路内のインクが慣性力で進退移動することにより、バッファタンク内の背圧が設定値より増大または減少することがあるが、動圧吸収タンク内に配置した上記構成のフィルタにて、動圧吸収タンク内上部のダンパー用インクとバッファタンクの空気部とを仕切ることで、バッファタンク内の背圧が前記設定値より高ければ、当該バッファタンク内の空気をダンパー用インク側に気泡として大気に開放させる。逆に、バッファタンク内の背圧が前記設定値より低い場合には、ダンパー用インクがフィルタを通過してバッファタンク内に入ってバッファタンク内の空気部分の体積を減少させて、背圧を高めるというようにしてバッファタンク内の背圧の変動を確実に吸収できるから、バッファタンク内の背圧を略一定に保持できる結果、バッファタンク内の背圧が高周波から低周波の広い範囲にわたって圧力変動しても、印字ヘッドからインクが漏洩したり、ノズルから噴射チャンネル内に気泡を吸い込んでノズル詰まりを発生させることがないという効果を奏する。
【0032】そして、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録装置において、前記印字ヘッドに対して前記インクタンクの高さ位置を、印字ヘッドにおけるノズルからインク滴が漏洩しない背圧が前記バッファタンクに付与されるように設定したものであるから、請求項1または請求項2に記載の発明による効果に加えて、インクタンクの配置箇所を前記のように設定するだけで、印字ヘッドのノズルからのインクの漏洩を簡単に防止できる。
【0033】また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のインクジェット記録装置において、前記動圧吸収タンクは、少なくとも印字作動中は、インク収容側を大気に開放可能に構成したもので、これにより、印字作動中のインク消費以外の原因によるバッファタンク内の背圧の変動を、前記動圧吸収タンク内に配置したダンパー用インクとフィルタとの簡単て構成で吸収できるのである。
【0034】さらに、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のインクジェット記録装置において、前記動圧吸収タンクに前記インクタンクからインク補充用ポンプにてインク補充するように構成したものであるから、動圧吸収タンク内上部のインクが無くなることがなく、前記動圧吸収作用を確実にすることができるという効果を奏する。
【0035】請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のインクジェット記録装置において、前記インクタンクは、インクカートリッジ等のインク供給源から供給されたインクを一旦溜めるサブタンクとしたものであるから、インクの消費にしたがって、インクカートリッジを交換するときにも、サブタンク内にはインクが所定量だけ溜められているから、バッファタンクへの背圧付与を略一定にでき、印字ヘッドのノズルからインクが不用意に漏洩しないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態によるインクジェット記録装置の図である。
【図2】第2実施形態によるインクジェット記録装置の図である。
【符号の説明】
2 印字ヘッド
4 キャリッジ
5 バッファタンク
5a 底板
7 天井壁
8 インク流入筒
9 開口筒
13 可撓性チューブ
14 接続部材
20 圧力変動吸収手段の一部としての動圧吸収タンク
22 圧力変動吸収手段の一部としてのフィルタ
23 開閉弁
24 圧力変動吸収手段の一部としてのダンパー用インク
30 インクカートリッジ
31 可撓性チューブ
33 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 インクを溜める大気開放型のインクタンクと、複数の噴射チャンネルとそれに連通して大気にインク滴を放出するためのノズルとを有する印字ヘッドと、該印字ヘッドに接続したバッファタンクに、前記インクタンクからインクを供給するインク供給経路とを備えたインクジェット記録装置において、前記バッファタンク内の空気部に連通した動圧吸収タンクを配置し、該動圧吸収タンク内上部をフィルタで仕切り、そのフィルタよりも前記バッファタンク側を当該バッファタンク内の空気部に連通した空間とし、前記フィルタの前記バッファタンクとは反対側にインクを収容し、そのインクが前記フィルタにおいて、前記印字ヘッドのノズルにおけるメニスカス耐圧よりも小さい耐圧のメニスカスフィルタを形成するように構成したことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】 インクを溜める大気開放型のインクタンクと、複数の噴射チャンネルとそれに連通して大気にインク滴を放出するためのノズルとを有する印字ヘッドと、該印字ヘッドに接続したバッファタンクに、前記インクタンクからインクを供給するインク供給経路とを備えたインクジェット記録装置において、前記バッファタンク内の空気部に連通した動圧吸収タンクと、該動圧吸収タンク内上部をフィルタで仕切り、そのフィルタよりも前記バッファタンク側を当該バッファタンク内の空気部に連通した空間とし、前記フィルタの前記バッファタンクとは反対側にインクを収容し、バッファタンク内の背圧が高いときには、当該バッファタンク内の空気が前記フィルタを動圧吸収タンク内のインク側に通過することを許容し、前記背圧が低いときには、動圧吸収タンク内のインクが前記フィルタをバッファタンク方向へ通過することを許容することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】 前記印字ヘッドに対して前記インクタンクの高さ位置を、印字ヘッドにおけるノズルからインク滴が漏洩しない背圧が前記バッファタンクに付与されるように設定したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】 前記動圧吸収タンクは、少なくとも印字作動中は、インク収容側を大気に開放可能に構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】 前記動圧吸収タンクに前記インクタンクからインク補充用ポンプにてインク補充するように構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】 前記インクタンクは、インクカートリッジ等のインク供給源から供給されたインクを一旦溜めるサブタンクであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2003−1849(P2003−1849A)
【公開日】平成15年1月8日(2003.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−193541(P2001−193541)
【出願日】平成13年6月26日(2001.6.26)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】