説明

インクジェット記録装置

【課題】ラミネート加工を行うことなく、画像表面をラミネートしたのと同様な仕上がりを実現するとともに、画像の使用目的やユーザの好み等に応じて、画像の光沢感の調整を行うことのできるインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】記録媒体5に対してカラーインクを吐出するカラーインク用ヘッド6と、透明インクを吐出する透明インク用ヘッド7と、カラーインク用ヘッド6及び透明インク用ヘッド7より吐出されるインクの各ドット毎の総液滴数をパターンとして規定した複数の吐出総液滴数パターンを記憶するROM19と、吐出総液滴数パターンに規定される各ドットのインクの総液滴数からカラーインク用ヘッドより吐出されるカラーインクの液滴数を減算した液滴数の透明インクを吐出させるように透明インク用ヘッドを制御する制御部13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に係り、特にカラーインクにより記録した画像をコーティングする透明インクを用いるインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、グラビア印刷方式やフレキソ印刷方式などの製版を必要とする方式に比較して、簡便にかつ安価に画像を形成することができるという理由から、インクジェット記録装置が多く用いられるようになってきている。
【0003】
しかしながら、一般に、インクジェット方式によって記録された画像は、画像の表面がざらつき光沢感がなく、画像表面の耐侯性、耐傷性にも欠ける。
【0004】
さらに近時は、様々な記録媒体に対応可能なインクジェット記録装置として、光硬化型インクを用いたインクジェットインクジェット記録装置が知られている。これは、紫外線等の光に対して所定の感度を有する光開始剤が含有された光硬化型インクを用い、記録媒体上に着弾したインクに光を照射することで、インクを硬化させ記録媒体上に定着させるものである。このような光硬化型インクを用いたインクジェット方式のインクジェット記録装置は、インク着弾後、光を照射することによりインクが瞬時に硬化するため、普通紙はもとより、インク受像層を持たずインク吸収性の全くないプラスチックや金属等の記録媒体に対しても画像記録を行うことが可能である。
【0005】
このように光硬化型インクを用いた場合、耐侯性には優れるが、インク受像層を持たない記録媒体に対して画像記録を行う場合には、インクが記録媒体に吸収されず、インク着弾部分が記録媒体表面に隆起した状態で、光の照射により硬化定着するため、記録媒体表面に不規則な凹凸が生じて画質が低下する。特に、顔料インクを用いた場合には、記録媒体表面に生ずる凹凸が顕著となるうえ、画像中の濃淡差による光沢感の違いから、画質の違和感を発生させる。
【0006】
このため、画像記録を行った後に後処理として画像記録面にラミネート加工を施すことが行われている。このようなラミネート加工技術としては、例えば、記録媒体にラミネート紙を張り合わせて圧着させることにより画像記録面をコーティングする技術や(例えば、特許文献1参照)、記録媒体の画像記録面に予めラミネート材を塗布しておき、画像記録後に加熱、加圧処理を行うことによってラミネート材を溶融させ表面にコーティングを施す技術がしられている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特公平2−14912号公報
【特許文献2】特開平9−70960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来のようにラミネート加工を施す場合には、画像記録後に、記録媒体にラミネート紙を張り合わせて圧着処理を行う機構や、記録媒体の画像記録面に予め塗布されたラミネート材を加熱、加圧処理する機構を別途設ける必要があるため、手間やスペース、コストがかかるという問題があった。
【0008】
また、特に、光硬化型インクジェット方式のインクジェット記録装置では、耐侯性を向上させる観点からはラミネート加工を必要としないにもかかわらず、ラミネート加工を施さなければならなくなる上、ラミネート加工が可能な記録媒体を用いる必要があり、多種多様な記録媒体に対して画像記録ができるという光硬化型インクジェット方式のインクジェット記録装置の利点が損なわれるという問題があった。
【0009】
ここで、各色のカラーインクを吐出させるカラーインク用ヘッドの他に透明インクを吐出させる透明インク用ヘッドを設けて、カラーインクによって記録された画像の上に、記録媒体表面に生ずる不規則な凹凸を平滑化させるように、透明インクを吐出させて、記録媒体表面をコーティングすることが考えられる。
【0010】
このようにすれば、高画質な上に、光沢が強くグロス感のある仕上がりとなり、写真のような画像が得られる。
【0011】
ところが一方で、例えば記録された画像を屋内で鑑賞する場合のように、記録媒体表面における照明による光の反射を抑えて視認性をよくするため、マット感のある仕上がりが望まれる場合がある。
【0012】
そこで、本発明は、ラミネート加工を行うことなく、画像表面をラミネートしたのと同様な仕上がりを実現するとともに、画像の使用目的やユーザの好み等に応じて、画像の光沢感の調整を行うことのできるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明によるインクジェット記録装置は、記録媒体に対してカラーインクを吐出するカラーインク用ヘッドと、前記カラーインク用ヘッドより前記カラーインクが吐出された前記記録媒体に対して透明インクを吐出する透明インク用ヘッドと、前記カラーインク用ヘッド及び前記透明インク用ヘッドより吐出されるインクの各ドット毎の総液滴数をパターンとして規定した複数の吐出総液滴数パターンを記憶する記憶部と、前記吐出総液滴数パターンに規定される各ドットのインクの総液滴数から前記カラーインク用ヘッドより吐出されるカラーインクの液滴数を減算した液滴数の透明インクを吐出させるように前記透明インク用ヘッドを制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、カラーインクにより画像が記録された記録媒体の上に透明インクが吐出されるため、画像がコーティングされる。さらに、透明インクは、吐出総液滴数パターンに規定される各ドットのインクの総液滴数からカラーインクの液滴数を減算した液滴数がそれぞれのドットに対して吐出されるため、カラーインク用ヘッド及び透明インク用ヘッドより各ドットに吐出されるインクの総液滴数を規則的に規定した吐出総液滴数パターンを複数記憶させておくことにより、記録媒体表面が平滑化されたり、記録媒体表面に一定周期の規則的な凹凸が様々な起伏で形成されるため、異なる光沢の画像が得られる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェット記録装置において、前記記憶部は、前記カラーインク用ヘッド及び前記透明インク用ヘッドより吐出されるインクの総液滴数を全ドットにおいて均一とした吐出総液滴数パターンと、前記カラーインク用ヘッド及び前記透明インク用ヘッドより吐出されるインクの総液滴数を各ドットにおいて周期的に変化させた吐出総液滴数パターンとを記憶することを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、記録媒体表面が平滑化され光沢が強い画像と、記録媒体表面に一定周期の規則的な凹凸が形成され光沢が弱い画像とが得られる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、前記吐出総液滴数パターンの選択に係るユーザの指示を入力する入力部を備え、前記制御部は、前記入力部へのユーザの指示の入力により選択された吐出総液滴数パターンに基づいて、前記透明インク用ヘッドより吐出させるインクの液滴数を制御することを特徴とする。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、ユーザの選択に応じて、異なる光沢の画像が得られる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、前記カラーインク及び前記透明インクは、光を照射することによって硬化する光硬化型インクであり、前記カラーインク用ヘッド及び前記透明インク用ヘッドより吐出され前記記録媒体に着弾したインクに対して光を照射する光照射装置を備えたことを特徴とする。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、光硬化型インクを用いた場合においても、透明インクにより画像がコーティングされる。さらに、カラーインク用ヘッド及び透明インク用ヘッドより各ドットに吐出されるインクの総液滴数を規則的に規定した吐出総液滴数パターンを複数記憶させておくことにより、記録媒体表面が平滑化されたり、記録媒体表面に一定周期の規則的な凹凸が様々な起伏で形成されるため、異なる光沢の画像が得られる。
【0021】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のインクジェット記録装置において、前記カラーインク及び前記透明インクは、紫外線を照射することによって硬化する紫外線硬化型インクであり、前記光照射装置は、紫外線を照射する紫外線照射装置であることを特徴とする。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、紫外線硬化型インクを用いた場合においても、透明インクにより画像がコーティングされる。さらに、カラーインク用ヘッド及び透明インク用ヘッドより各ドットに吐出されるインクの総液滴数を規則的に規定した吐出総液滴数パターンを複数記憶させておくことにより、記録媒体表面が平滑化されたり、記録媒体表面に一定周期の規則的な凹凸が様々な起伏で形成されるため、異なる光沢の画像が得られる。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に記載の発明によれば、透明インクにより画像がコーティングされるため、ラミネート加工を行うことなく、画像表面をラミネートしたのと同様な仕上がりを実現することができる。さらに、吐出総液滴数パターンに応じて、記録媒体表面が平滑化されたり、記録媒体表面に一定周期の規則的な凹凸が様々な起伏で形成されることにより、異なる光沢の画像が得られるため、画像の使用目的やユーザの好み等に応じて、画像の光沢感の調整を行うことのできる。
【0024】
請求項2に記載の発明によれば、記録媒体表面が平滑化され光沢が強い画像と、記録媒体表面に一定周期の規則的な凹凸が形成され光沢が弱い画像とが得られるため、画像の使用目的やユーザの好み等に応じて、画像の光沢感の調整を行うことのできる。
【0025】
請求項3に記載の発明によれば、ユーザの選択により、異なる光沢の画像が得られるため、画像の使用目的やユーザの好み等に応じて、画像の光沢感の調整を行うことのできる。
【0026】
請求項4に記載の発明によれば、光硬化型インクを用いた場合においても、透明インクにより画像がコーティングされるため、ラミネート加工を行うことなく、画像表面をラミネートしたのと同様な仕上がりを実現することができる。さらに、吐出総液滴数パターンに応じて、記録媒体表面が平滑化されたり、記録媒体表面に一定周期の規則的な凹凸が様々な起伏で形成されることにより、異なる光沢の画像が得られるため、画像の使用目的やユーザの好み等に応じて、画像の光沢感の調整を行うことのできる。
【0027】
請求項5に記載の発明によれば、紫外線硬化型インクを用いた場合においても、透明インクにより画像がコーティングされるため、ラミネート加工を行うことなく、画像表面をラミネートしたのと同様な仕上がりを実現することができる。さらに、吐出総液滴数パターンに応じて、記録媒体表面が平滑化されたり、記録媒体表面に一定周期の規則的な凹凸が様々な起伏で形成されることにより、異なる光沢の画像が得られるため、画像の使用目的やユーザの好み等に応じて、画像の光沢感の調整を行うことのできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を、図1から図3を参照して説明する。
【0029】
図1は、本発明に係るインクジェット記録装置の実施の一形態を示したもので、シリアルヘッド方式のインクジェット記録装置1である。インクジェット記録装置1は、図1に示すように、棒状のガイドレール2を有しており、このガイドレール2には、キャリッジ3が支持されている。このキャリッジ3は、キャリッジ駆動機構4(図3参照)によって主走査方向Xをガイドレール2に沿って往復移動するようになっている。
【0030】
キャリッジ3の中央部には、例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のカラーインクを記録媒体5に吐出するノズル(図示しない)を形成してなるカラーインク用ヘッド6が、主走査方向Xと直行し記録媒体5を搬送する副走査方向Yに沿って2つずつ、主走査方向Xに互いにずれて搭載されている。また、カラーインク用ヘッド6の副走査方向Yの下流側であって、各カラーインク用ヘッド6に対応する位置には、カラーインクにより画像が記録された記録媒体5の表面をコーティングする透明インクを吐出するノズルを形成してなる透明インク用ヘッド7が搭載されている。
【0031】
本実施の形態で使用するインクは、紫外線を照射することにより硬化する紫外線硬化型のインクである。紫外線硬化型のインクとしては、重合性化合物として、ラジカル重合性化合物を含むラジカル重合系インク、カチオン重合性化合物を含むカチオン重合系インク、及びラジカル重合系インクとカチオン重合系インクとを複合させたハイブリッド型インクが適用可能である。なお、インクには、紫外線以外の光で重合して硬化する重合性化合物と、紫外線以外の光、例えば電子線、X線、赤外線等で重合性化合物同士の重合反応を開始させる光開始剤とが適用されてもよい。
【0032】
また、本実施形態によるインクジェット記録装置1に用いられる記録媒体5しては、普通紙、再生紙、光沢紙等の各種紙、各種布地、各種不織布、樹脂、金属、ガラス等の材質からなる記録媒体5が適用可能であるが、本実施形態では、特に、所謂軟包装に用いられる透明な非吸収性の樹脂製フィルムが好適に用いられる。
【0033】
キャリッジ3の主走査方向Xにおける両側部には、ノズルから記録媒体5に吐出されたインクに対して紫外線を照射する光照射装置としての紫外線照射装置8が、ヘッド6,7における副走査方向Yの上流側端部から下流側端部にわたってそれぞれ設けられている。
【0034】
キャリッジ3の移動可能範囲の中央部分は、記録媒体5に記録を行う記録領域とされており、この記録領域には、記録媒体5を非記録面から水平に支持するプラテン9が設けられている。
【0035】
また、インクジェット記録装置1には、複数の搬送ローラ10等により構成され、副走査方向Yに記録媒体5を送るための搬送機構11(図3参照)が設けられている。搬送機構11は、画像記録時において、キャリッジ3の動作に合わせて、記録媒体5の搬送と停止とを繰り返して記録媒体5を間欠的に搬送するようになっている。
【0036】
また、インクジェットプリンタ1の筐体上面には、例えばタッチパネルにより構成され、後述の複数の吐出総液滴数パターンに係る光沢モードを表示するとともに、表示された光沢モードの中からユーザが選択した光沢モードを入力する入力部12が設けられている。この入力部12は、後述の制御部13に接続されており、ユーザによる所定操作に基づいて入力された光沢モードに対応する吐出総液滴数パターンを選択させる選択信号を制御部13に対して出力するようになっている。
【0037】
ここで、光沢モードは、カラーインクによって画像が記録された記録媒体上に、透明インクを吐出させて行われるコーティングによる画像の光沢感を調整するためのものであり、本実施形態においては、光沢モードとして、例えば、光沢が強くグロス感のある仕上がりとなるグロスモードと、光沢がなくマット感のある仕上がりとなるマットモードと、適度な光沢がある通常モードとが、入力部12により選択可能とされている。
【0038】
各光沢モードには、それぞれの光沢感を実現するために、カラーインク用ヘッド6及び透明インク用ヘッド7より吐出されるインクの各ドット毎の総液滴数をパターンとして規定した吐出総液滴数パターンが、それぞれ対応付けられている。
【0039】
具体的には、グロスモードには、図2(a)に示すように、カラーインク用ヘッド6及び透明インク用ヘッド7より吐出されるインクの総液滴数を全ドットにおいて均一としたグロス総液滴数パターン14が対応付けられており、通常モードには、図2(b)に示すように、カラーインク用ヘッド6及び透明インク用ヘッド7より吐出されるインクの総液滴数が多い多液滴ドットと少ない少液滴ドットとを交互に繰り返した通常総液滴数パターン15が対応付けられており、マットモードには、図2(c)に示すように、カラーインク用ヘッド6及び透明インク用ヘッド7より吐出されるインクの総液滴数が極少である極少液滴ドットと多液滴ドットと少液滴ドットとを一定周期で繰り返したマット総液滴数パターン16が対応付けられている。
【0040】
図3は、本実施形態におけるインクジェット記録装置1を制御するための制御装置を示したものであり、この制御装置は、たとえば、CPU17、RAM18、ROM19からなり、ROM19に記録された処理プログラムをRAM18に展開してCPU17によりこの処理プログラムを実行する制御部13を有している。
【0041】
この制御部13は、前述の処理プログラムに従い、キャリッジ駆動機構4、カラーインク用ヘッド6、透明インク用ヘッド7、搬送機構11、及び紫外線照射装置8等の動作状況等のステータスに基づいて、インクジェット記録装置1を構成する各構成要素の動作を制御するようになっている。
【0042】
特に、本実施形態においては、制御部13は、1ドット当たりに1滴の液滴量が小液滴量のインク液滴を複数発吐出可能な、いわゆるマルチドロップ方式により画像の記録を行わせるように、カラーインク用ヘッド6及び透明インク用ヘッド7を制御するようになっている。
【0043】
また、入力部12より入力された吐出総液滴数パターンに基づいて、透明インク用ヘッド7より吐出させるインクの液滴数を制御するようになっている。
【0044】
具体的には、記憶部としてのROM19には、複数の吐出総液滴数パターンとして、グロス総液滴数パターン14、マット総液滴数パターン16及び通常総液滴数パターン15が記憶されており、制御部13は、ユーザによる光沢モードの入力に応じて入力部12より出力された選択信号に係る吐出総液滴数パターンをROM19から読み出して、当該吐出総液滴数パターンに規定される各ドットのインクの総液滴数から、画像データに基づいてカラーインク用ヘッド6により吐出されるカラーインクの液滴数を減算した液滴数の透明インクを、前記透明インク用ヘッド7から吐出させるように前記透明インク用ヘッド7を制御するようになっている。
【0045】
ここで、カラーインクの液滴数は、各色のカラーインク用ヘッド6より吐出される1ドット当たりのインクの各液滴数を加算した数であり、本実施形態においては、Y,M,C,K各色ヘッド6から吐出されるインクの全液滴数である。
【0046】
あるドットにおいて、各吐出総液滴数パターンに規定される総液滴数が、カラーインクの全液滴数よりも少なく、減算するとマイナスとなる場合には、当該ドットについては、透明インクは吐出させないように、制御部13により透明インク用ヘッド7を制御するようにしてもよいが、記録媒体表面における不規則な凹凸の発生をより防止する観点から、全てのドットにおいて、各吐出総液滴数パターンに規定される総液滴数が、カラーインクの全液滴数と同数以上となるように、各吐出総液滴数パターンにおける各ドットの総液滴数を設定するとよい。
【0047】
例えば、1ドット当たり、透明及び各色について最大3滴のインク液滴が吐出可能とされて入る場合には、Y,M,C,K各色の全ヘッド6から吐出されるインクの全液滴数は最大で12滴であるから、各パターンにおける多液滴ドットに吐出させるインクの総液滴数を例えば24滴、少液滴ドットに吐出させるインクの総液滴数を例えば18滴、極少液滴ドットに吐出させるインクの総液滴数を例えば12滴等のようにするとよい。
【0048】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0049】
記録媒体5に画像を記録する際には、ユーザにより光沢モードが選択され入力部12から入力される。すると、選択された光沢モードに対応する吐出総液滴数パターンを選択させる選択信号が制御部13に入力され、制御部13により当該吐出総液滴数パターンがROM19から読み出される。
【0050】
そして、制御部13により、当該吐出総液滴数パターンに規定される各ドットのインクの総液滴数から、画像データに基づいてカラーインク用ヘッド6により吐出させるカラーインクの液滴数を減算した液滴数を、透明インク用ヘッド7から吐出させる透明インクの液滴数として算出する。
【0051】
以下、透明インクの液滴数の算出について、前述の各色につき最大3滴のインク液滴が吐出され、各パターンにおける多液滴ドットに吐出させるインクの総液滴数が24滴、少液滴ドットに吐出させるインクの総液滴数を18滴、極少液滴ドットに吐出させるインクの総液滴数を12滴とした場合を例に説明する。
【0052】
ユーザによりグロスモードが選択された場合は、グロス総液滴数パターン14が読み出される。グロス総液滴数パターン14においては、全てのドットについて吐出させるインクの総液滴数が24滴であるから、画像データに基づいてあるドットに吐出すべきカラーインクの全液滴数が、例えば12滴であれば、総液滴数24滴からカラーインクの液滴数12滴を減算した12滴が、当該ドットにおける透明インクの液滴数とされる。またあるドットに吐出すべきカラーインクの全液滴数が24滴であれば、当該ドットにおける透明インクの液滴数は0滴、あるドットに吐出すべきカラーインクの全液滴数が0滴であれば、当該ドットにおける透明インクの液滴数は24滴となる。
【0053】
また、ユーザにより通常モードが選択された場合は、通常総液滴数パターン15が読み出される。そして、あるドットが多液滴ドットで、画像データに基づいて当該ドットに吐出すべきカラーインクの全液滴数が、例えば12滴であれば、総液滴数24滴からカラーインクの液滴数12滴を減算した12滴が、当該ドットにおける透明インクの液滴数とされる。また、あるドットが少液滴ドットで、画像データに基づいて当該ドットに吐出すべきカラーインクの全液滴数が、例えば12滴であれば、総液滴数18滴からカラーインクの液滴数12滴を減算した6滴が、当該ドットにおける透明インクの液滴数とされる。
【0054】
また、ユーザによりマットモードが選択された場合は、マット総液滴数パターン16が読み出される。そして、あるドットが多液滴ドットで、画像データに基づいて当該ドットに吐出すべきカラーインクの全液滴数が例えば12滴であれば、12滴が当該ドットにおける透明インクの液滴数とされ、あるドットが少液滴ドットで、画像データに基づいて当該ドットに吐出すべきカラーインクの全液滴数が例えば12滴であれば、6滴が当該ドットにおける透明インクの液滴数とされる。また、あるドットが極少液滴ドットで、画像データに基づいて当該ドットに吐出すべきカラーインクの全液滴数が例えば12滴であれば、総液滴数12滴からカラーインクの液滴数12滴を減算し、0滴が当該ドットにおける透明インクの液滴数とされる。
【0055】
その後、制御部13の制御により、キャリッジ駆動機構4が作動してキャリッジ3が記録媒体5の上方を主走査方向Xに往復移動するとともに、画像データに基づいて、各色カラーインク用ヘッド6から、各ドットにつき所定の液滴数の各色カラーインクがそれぞれ吐出される。吐出されたカラーインクは順次記録媒体5に着弾し、この記録媒体5に着弾したカラーインクに対して、キャリッジ3とともに往復移動する紫外線照射装置8により紫外線が順次照射され、カラーインクが記録媒体5の上面で硬化する。
【0056】
そして、記録媒体が搬送方向Yに所定量だけ搬送された後に、透明インク用ヘッド7から、各ドットにつき選択された吐出総液滴数パターンに基づいて制御部13により算出された所定の液滴数の透明インクが吐出される。吐出された透明インクは順次記録媒体5に着弾し、この記録媒体5に着弾した透明インクに対して、紫外線照射装置8により紫外線が順次照射され、透明インクが記録媒体5の上面で硬化する。
【0057】
これにより、ユーザがグロスモードを選択した場合は、グロス総液滴数パターン14に基づき、全てのドットにおいて吐出されるカラーインク及び透明インクの総液滴数が均一となり、記録媒体表面が平滑化されるため、光沢が強くグロス感のある画像が得られる。
【0058】
また、ユーザがマットモードを選択した場合は、マット総液滴数パターン16に基づき、吐出されるカラーインク及び透明インクの総液滴数が多液滴数のドットと少液滴数のドットと極少液滴数のドットとが一定周期で繰り返されることから、記録媒体表面に規則的な凹凸が形成されるため、画質の違和感がなくマット感のある画像が得られる。
【0059】
また、ユーザが通常モードを選択した場合は、通常総液滴数パターン15に基づき、吐出されるカラーインク及び透明インクの総液滴数が多液滴数のドットと少液滴数のドットとが繰り返されることから、マット総液滴数パターン16における場合よりも起伏の少ない凹凸が記録媒体表面に規則的に形成されるため、画質の違和感がなく適度に光沢のある画像が得られる。
【0060】
以上より、本実施形態によれば、透明インクにより画像がコーティングされるため、ラミネート加工を行うことなく、画像表面をラミネートしたのと同様な仕上がりを実現することができる。さらに、ユーザが光沢モードを選択することにより、光沢モードに対応する吐出総液滴数パターンに基づいて、記録媒体表面が平滑化され光沢が強くグロス感のある画像と、記録媒体表面に一定周期の規則的な凹凸が形成されマット感のある画像と、起伏の少ない凹凸が記録媒体表面に規則的に形成され適度に光沢のある画像とが得られるため、画像の使用目的やユーザの好み等に応じて、画像の光沢感の調整を行うことのできる。
【0061】
なお、本実施形態においては、各種光沢モードを入力部12に選択可能に表示させ、ユーザが光沢モードを選択・入力することにより、この光沢モードと対応する吐出総液滴数パターンが選択されるようにしたが、ユーザが、直接、吐出総液滴数パターンを入力部12より選択・入力するようにしてもよい。なお、吐出総液滴数パターン及び吐出総液滴数パターンの数は、本実施形態において記載したものに限定されるものではない。
【0062】
また、本実施形態においては、カラーインクとしてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色インクを用いるようにしたが、使用するインクの色はこれに限るものではなく、例えば、ライトイエロー(LY)、ライトマゼンタ(LM)、ライトシアン(LC)、ライトブラック(LK)を加えた8色をカラーインクとして使用するようにしてもよい。
【0063】
また、本実施形態においては、各色のカラーインクを吐出するカラーインク用ヘッド6を副走査方向Yに沿って2つずつ配置するとともに、透明インク用ヘッド7を各カラーインク用ヘッド6の副走査方向Yの下流側であって各カラーインク用ヘッド6に対応する位置に1ずつ配設するようにしたが、各ヘッド6,7の配設位置や個数はこれに限定されるものではなく、例えば、図4に示すように、透明インク用ヘッド7を各カラーインク用ヘッド6の副走査方向Yの下流側であって各カラーインク用ヘッド6に対応する位置に、副走査方向Yに沿って2つずつ、主走査方向Xに互いにずらしてキャリッジ3に搭載させるようにしてもよい。
【0064】
また、図5に示すように、キャリッジ3が往方向Zに移動しているときのみ各ヘッドからインクの吐出を行うようにするとともに、各カラーインク用ヘッド6の往方向Zにおける下流側側部に、4つの透明インク用ヘッド7を主走査方向Xに互いにずらし副走査方向Yに沿って2ずつ搭載させるようにしてもよい。なお、往復両方向においてインクを吐出させる場合には、例えば、カラーインク用ヘッド6の主走査方向Xにおける両側部に、主走査方向Xに互いにずらし副走査方向Yに沿って2つの透明インク用ヘッド7をそれぞれ搭載させるとよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明によるインクジェット記録装置の一実施形態の構成を示す平面図である。
【図2】本実施形態に係るインクジェット記録装置の吐出総液滴数パターンを説明する模式図で、(a)は多液滴数パターンを示す図であり、(b)は少液滴数パターンを示す図であり、(c)は極少液滴数パターンを示す図である。
【図3】本実施形態に係るインクジェット記録装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本実施形態に係るインクジェット記録装置のカラーインク用ヘッド及び透明インク用ヘッドの配置の変形例を示す図である。
【図5】本実施形態に係るインクジェット記録装置のカラーインク用ヘッド及び透明インク用ヘッドの配置の他の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1 インクジェット記録装置
3 キャリッジ
5 記録媒体
6 カラーインク用ヘッド
7 透明インク用ヘッド
8 紫外線照射装置
12 入力部
13 制御部
14 グロス総液滴数パターン
15 通常総液滴数パターン
16 マット総液滴数パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対してカラーインクを吐出するカラーインク用ヘッドと、
前記カラーインク用ヘッドより前記カラーインクが吐出された前記記録媒体に対して透明インクを吐出する透明インク用ヘッドと、
前記カラーインク用ヘッド及び前記透明インク用ヘッドより吐出されるインクの各ドット毎の総液滴数をパターンとして規定した複数の吐出総液滴数パターンを記憶する記憶部と、
前記吐出総液滴数パターンに規定される各ドットのインクの総液滴数から前記カラーインク用ヘッドより吐出されるカラーインクの液滴数を減算した液滴数の透明インクを吐出させるように前記透明インク用ヘッドを制御する制御部と
を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記カラーインク用ヘッド及び前記透明インク用ヘッドより吐出されるインクの総液滴数を全ドットにおいて均一とした吐出総液滴数パターンと、前記カラーインク用ヘッド及び前記透明インク用ヘッドより吐出されるインクの総液滴数を各ドットにおいて周期的に変化させた吐出総液滴数パターンとを記憶することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記吐出総液滴数パターンの選択に係るユーザの指示を入力する入力部を備え、
前記制御部は、前記入力部へのユーザの指示の入力により選択された吐出総液滴数パターンに基づいて、前記透明インク用ヘッドより吐出させるインクの液滴数を制御することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記カラーインク及び前記透明インクは、光を照射することによって硬化する光硬化型インクであり、前記カラーインク用ヘッド及び前記透明インク用ヘッドより吐出され前記記録媒体に着弾したインクに対して光を照射する光照射装置を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記カラーインク及び前記透明インクは、紫外線を照射することによって硬化する紫外線硬化型インクであり、前記光照射装置は、紫外線を照射する紫外線照射装置であることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−35688(P2006−35688A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220178(P2004−220178)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】