説明

インクジェット記録装置

【課題】記録媒体の歪みや劣化を防止する。
【解決手段】インクジェット記録装置1は、記録媒体Kにインクで画像を記録する複数の画像記録部2,…と、画像記録部2,…を制御する制御部6とを備える。画像記録部2,…は、記録媒体Kに向かってインクを吐出する少なくとも1つの記録ヘッド3,3と、記録ヘッド3,3から吐出されたインクの着弾した着弾領域の記録媒体Kを加熱する照射装置4とを有する。制御部6は、画像記録部2,…の記録ヘッド3,3がインクを吐出しないときには、吐出するときと比較して、当該画像記録部2,…の照射装置4による記録媒体Kの加熱量を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙や布などの様々な記録媒体に画像を記録する装置として、紫外線等の光によって硬化する光硬化型インクを用いたインクジェット記録装置が知られており、このようなインクジェット記録装置には、光硬化型インクを記録媒体に吐出する記録ヘッドと、記録媒体上に着弾したインクに光を照射する照射装置とが設けられている。
【0003】
ところで、光硬化型インクには、種々の環境条件によって硬化の度合いが変化するという性質があり、特に、カチオン重合系の紫外線硬化型インクは重合反応の性質上、温度や湿度によって硬化反応が影響を受けやすい。
【0004】
そのため、カチオン重合系のインクを用いるインクジェット記録装置では、温度や湿度による影響を防止して硬化反応を活性化させる観点から、記録媒体を加熱することで、記録媒体上のインクを間接的に加熱している。より詳細には、このインクジェット記録装置には、記録媒体を加熱する手段として、光を照射しつつ光源からの輻射熱で記録媒体を加熱する照射装置や、記録媒体を積極的に加熱可能なプラテン等が設けられており、これら照射装置やプラテンは記録ヘッドに対応して配設されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開2004−203025号公報
【特許文献2】特開2004−255818号公報
【特許文献3】特開2002−137375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献に開示のインクジェット記録装置では、何れかの記録ヘッドがインクを吐出しないときにも、インクを吐出する場合と同様に、この記録ヘッドに対応する照射装置やプラテンによって記録媒体が加熱されてしまう。そのため、インクの硬化とは無関係に、つまり不必要に記録媒体が加熱されてしまい、記録媒体に歪みや劣化が生じている。
【0006】
また、特にライン記録方式のインクジェット記録装置では、記録媒体の搬送方向における上流側の照射装置による加熱量に関わらず、下流側のプラテンが一定の加熱量で記録媒体を加熱するので、下流側に搬送されるほど記録媒体が熱を蓄積してしまい、記録媒体に歪みや劣化が生じている。
【0007】
本発明の課題は、記録媒体の歪みや劣化を防止することができるインクジェット記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、インクジェット記録装置において、
記録媒体にインクで画像を記録する複数の画像記録部と、
前記画像記録部を制御する第1制御部とを備え、
前記画像記録部は、
記録媒体に向かってインクを吐出する少なくとも1つの記録ヘッドと、
前記記録ヘッドから吐出されたインクの着弾した着弾領域の記録媒体を加熱する第1加熱部とを有し、
前記第1制御部は、
前記画像記録部の前記記録ヘッドがインクを吐出しないときには、吐出するときと比較して、当該画像記録部の前記第1加熱部による記録媒体の加熱量を低減することを特徴とする。
【0009】
ここで、記録ヘッドがインクを吐出しないとは、画像全体の少なくとも一部についてインクを吐出しないことをいう。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のインクジェット記録装置において、
前記第1制御部は、
前記画像記録部の前記記録ヘッドがインクを吐出しないときには、当該画像記録部の前記第1加熱部による記録媒体の加熱量を0にすることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のインクジェット記録装置において、
前記第1制御部は、画像データまたは画像記録条件に基づいて前記第1加熱部による記録媒体の加熱量を制御することを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のインクジェット記録装置において、
画像記録に使用するインクの種類を画像データに基づいて判別するインク判別部を備え、
複数の前記記録ヘッドは、互いに異なる種類のインクを吐出するものであり、
前記第1制御部は、前記インク判別部による判別結果に基づいて前記第1加熱部による記録媒体の加熱量を制御することを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記第1加熱部は、
記録媒体の前記着弾領域に光を照射する照射装置と、
記録媒体の前記着弾領域を裏面側から支持する第1プラテンとの少なくとも一方であることを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項5記載のインクジェット記録装置において、
前記第1加熱部は、前記照射装置であり、
前記第1制御部は、前記照射装置による照射量を調整することにより、記録媒体の加熱量を制御することを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の発明は、請求項6記載のインクジェット記録装置において、
前記記録ヘッドは、光硬化性のインクを吐出することを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の発明は、請求項5記載のインクジェット記録装置において、
記録媒体の前記着弾領域に光を照射する照射装置を備え、
前記記録ヘッドは、光硬化性のインクを吐出し、
前記第1加熱部は、前記第1プラテンであることを特徴とする。
【0017】
請求項9記載の発明は、インクジェット記録装置において、
記録媒体を搬送方向に搬送する搬送装置と、
前記搬送方向と交差する方向に延在した状態で当該搬送方向に配列され、ライン記録方式によって記録媒体にインクで画像を記録する複数の画像記録部と、
前記画像記録部を制御する第2制御部とを備え、
前記画像記録部は、
記録媒体に向かってインクを吐出する少なくとも1つの記録ヘッドと、
前記記録ヘッドから吐出されたインクの着弾した着弾領域の記録媒体を加熱する第1加熱部と、
前記第1加熱部よりも前記搬送方向の上流側で記録媒体を加熱する第2加熱部とを有し、
前記第2制御部は、
前記第1加熱部による記録媒体の加熱量を変更可能であり、
前記搬送方向における上流側の前記画像記録部の前記第1加熱部による記録媒体の加熱量に基づいて、当該上流側の画像記録部よりも前記搬送方向の下流側の前記画像記録部の前記第2加熱部による記録媒体の加熱量を制御することを特徴とする。
【0018】
請求項10記載の発明は、請求項9記載のインクジェット記録装置において、
前記第2制御部は、
前記上流側の画像記録部の前記第1加熱部による記録媒体の加熱量と、当該上流側の画像記録部の前記第2加熱部による記録媒体の加熱量とに基づいて、前記下流側の画像記録部の前記第2加熱部による記録媒体の加熱量を制御することを特徴とする。
【0019】
請求項11記載の発明は、請求項9記載のインクジェット記録装置において、
前記画像記録部は、記録媒体を裏面側から支持する第3プラテンを備え、
前記第2制御部は、
前記上流側の画像記録部の前記第1加熱部による記録媒体の加熱量と、この上流側の画像記録部の前記第3プラテンの温度とに基づいて、前記下流側の前記画像記録部の前記第2加熱部による記録媒体の加熱量を制御することを特徴とする。
【0020】
請求項12記載の発明は、請求項9〜11の何れか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記第2制御部は、
前記上流側の画像記録部の第1加熱部による記録媒体の加熱量が所定の第1加熱量よりも大きい場合には、小さい場合と比較して、前記下流側の前記画像記録部の前記第2加熱部による記録媒体の加熱量を低減することを特徴とする。
【0021】
請求項13記載の発明は、請求項9〜11の何れか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記第2制御部は、
前記画像記録部の前記記録ヘッドがインクを吐出しないときには、吐出するときと比較して、当該画像記録部の前記第1加熱部による記録媒体の加熱量を低減し、
前記上流側の画像記録部の第1加熱部による記録媒体の加熱量を低減しない場合には、低減する場合と比較して、前記下流側の前記画像記録部の前記第2加熱部による記録媒体の加熱量を低減することを特徴とする。
【0022】
請求項14記載の発明は、請求項9〜13の何れか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記第2制御部は、
前記上流側の画像記録部の第1加熱部による記録媒体の加熱量が所定の第2加熱量よりも小さい場合には、大きい場合と比較して、前記下流側の前記画像記録部の前記第2加熱部による記録媒体の加熱量を増加させることを特徴とする。
【0023】
請求項15記載の発明は、請求項9〜13の何れか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記第2制御部は、
前記画像記録部の前記記録ヘッドがインクを吐出しないときには、吐出するときと比較して、当該画像記録部の前記第1加熱部による記録媒体の加熱量を低減し、
前記上流側の画像記録部の第1加熱部による記録媒体の加熱量を低減する場合には、低減しない場合と比較して、前記下流側の前記画像記録部の前記第2加熱部による記録媒体の加熱量を増加させることを特徴とする。
【0024】
請求項16記載の発明は、請求項9〜15の何れか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記第2加熱部は、
記録媒体の前記着弾領域よりも前記搬送方向の上流側の領域を裏面側から支持する第2プラテンと、
前記搬送方向に記録媒体を搬送する搬送ローラと、
記録媒体から離れて配設される非接触加熱装置との何れか一つであることを特徴とする。
ここで、非接触加熱装置としては、例えば赤外線照射装置などがある。
【0025】
請求項17記載の発明は、請求項9〜16の何れか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記第1加熱部は、
記録媒体の前記着弾領域に光を照射する照射装置と、
記録媒体の前記着弾領域を裏面側から支持する第1プラテンとの少なくとも一方であることを特徴とする。
【0026】
請求項18記載の発明は、請求項17記載のインクジェット記録装置において、
前記第1加熱部は、前記照射装置であることを特徴とする。
【0027】
請求項19記載の発明は、請求項18記載のインクジェット記録装置において、
前記記録ヘッドは、光硬化性のインクを吐出することを特徴とする。
【0028】
請求項20記載の発明は、請求項17記載のインクジェット記録装置において、
記録媒体の前記着弾領域に光を照射する照射装置を備え、
前記記録ヘッドは、光硬化性のインクを吐出し、
前記第1加熱部は、前記第1プラテンであることを特徴とする。
【0029】
請求項21記載の発明は、請求項7,8,19または20記載のインクジェット記録装置において、
前記照射装置は、記録媒体に紫外線を照射し、
前記記録ヘッドは、紫外線硬化性のインクを吐出することを特徴とする。
【0030】
請求項22記載の発明は、請求項7,8,19〜21の何れか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記記録ヘッドは、カチオン重合系のインクを吐出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
請求項1〜22の何れか一項に記載の発明によれば、記録媒体の歪みや劣化を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
<第1の実施の形態>
図1は、本発明に係るインクジェット記録装置1の概略構成を示す側面図である。
この図に示すように、インクジェット記録装置1は、供給トレイ10及び排出トレイ11を備えている。
【0033】
供給トレイ10は、未だ画像の記録されていない記録媒体を収容するものである。この供給トレイ10に収容された記録媒体Kは、本発明における搬送装置としての搬送ローラ12によって搬送方向Xに搬送されるようになっている。
【0034】
排出トレイ11は、画像の記録された記録媒体Kを収容するものである。この排出トレイ11には、本発明における搬送装置としての搬送ローラ13,13によって記録媒体Kが搬送されるようになっている。
【0035】
搬送ローラ12,13の間には、記録媒体Kに画像を記録する4つの画像記録部2,…が介在している。
画像記録部2,…は、ライン記録方式によって画像を記録するものであり、記録媒体Kの幅方向(図の表裏方向)に延在した状態で、搬送方向Xに配列されている。各画像記録部2は、本発明における搬送装置として、記録媒体Kを搬送方向Xに搬送する搬送ローラ20,20を備えている。
【0036】
搬送ローラ20,20よりも搬送方向Xの下流側には、記録ヘッド3,3及び照射装置4が、この順に配設されている。
【0037】
記録ヘッド3,3は、下面に設けられた複数のインク吐出口(図示せず)から記録媒体Kに対して光硬化性のインク、本実施の形態においては紫外線硬化性のインクを吐出するものである。これら記録ヘッド3,3は、画像記録部2ごと異なる種類のインク、本実施の形態においては、異なる色のインクを吐出するようになっている。具体的には、搬送方向Xの最も上流側の画像記録部2の記録ヘッド3,3はイエローのインクを、2番目に上流側の画像記録部2の記録ヘッド3,3はマゼンダのインクを、3番目に上流側の画像記録部2の記録ヘッド3,3はシアンのインクを、4番目に上流側の画像記録部2の記録ヘッド3,3はブラックのインクを吐出するようになっている。これら記録ヘッド3,3に対して搬送方向Xの上流側及び下流側には、記録ヘッド3,3の前記インク吐出口を遮光する遮光部材30,30が配設されている。
【0038】
照射装置4は、記録ヘッド3から吐出されたインクの着弾した着弾領域K1の記録媒体Kに光源40(図2参照)から紫外線を照射することにより、記録媒体Kの表面でインクを硬化させるものである。この照射装置4は、本発明における第1加熱部であり、前記着弾領域K1の記録媒体Kを紫外線で加熱可能であるとともに、記録媒体Kに対する加熱量を調整可能となっている。
【0039】
なお、照射装置4の光源40としては、高圧水銀ランプや低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ブラックライト、LED等を用いることができ、本実施の形態においては高圧水銀ランプまたは低圧水銀ランプが用いられている。
【0040】
これら記録ヘッド3,3及び照射装置4の下方には、板状のプラテン板52により記録媒体Kを裏面側から支持するプラテン5が配設されている。
このプラテン5は、本発明における第2加熱部であり、プラテン板52を介してヒータ50で記録媒体Kを加熱するようになっており、より詳細には、少なくとも前記着弾領域K1よりも搬送方向Xの上流側で、インクの着弾していない領域(以下、未着弾領域K2とする)の記録媒体Kを加熱するようになっている。また、このプラテン5は本発明における第3プラテンであり、プラテン板52の被加熱部分の上面温度が温度センサ51(図2参照)によって測定されるようになっている。
【0041】
以上の画像記録部2,…等には、図2に示すように、本発明における第1制御部及び第2制御部としての制御部6が接続されている。なお、この図2では、図示の便宜上、各画像記録部2の記録ヘッド3を1つのみ示すとともに、搬送ローラ12,13や搬送ローラ20,20等の図示を省略している。また、便宜的に、図の上側を搬送方向Xの上流側、下側を下流側としている。
【0042】
制御部6は、インクジェット記録装置1の各部を制御するものであり、インク判別部60及び記録条件設定部61を備えている。
インク判別部60は、画像記録に使用するインクの種類、つまり使用する記録ヘッド3を、画像データに基づいて判別するものである。
【0043】
記録条件設定部61は、画像記録部2,…による画像記録の条件を設定するものであり、本実施の形態においては、後述の操作パネル65から入力される操作指示に基づいて画像記録条件を設定するようになっている。なお、本実施の形態においては、画像記録条件として、画像記録に使用するインクの種類が用いられている。
【0044】
これらインク判別部60及び記録条件設定部61には、記録ヘッド制御部62,…、光源制御部63,…及びヒータ制御部64,…が接続され、それぞれ画像記録部2に1対1で対応している。
【0045】
記録ヘッド制御部62は、記録ヘッド駆動部31を介して記録ヘッド3によるインクの吐出を制御するものである。
光源制御部63は、照射装置4の光源40への供給電力を調整することにより、この光源40による記録媒体Kの加熱量を制御するものである。
【0046】
ヒータ制御部64は、プラテン5のヒータ50への供給電力を調整することにより、このヒータ50による記録媒体Kの加熱量を制御するものである。このヒータ制御部64は、搬送方向Xにおける下流側の画像記録部2(以下、下流側画像記録部2Bとする)と対応している場合には、当該下流側画像記録部2Bよりも上流側の画像記録部2(以下、上流側画像記録部2Aとする)の照射装置4(以下、上流側照射装置4Aとする)の全体による記録媒体Kの加熱量を算出可能となっている。なお、上流側画像記録部2Aとは、ヒータ制御部64と対応する下流側画像記録部2Bよりも上流側に位置する全ての画像記録部2,…をいう。
【0047】
制御部6には、操作パネル65が接続されている。この操作パネル65には、ユーザから画像記録指示や、画像記録条件などが入力されるようになっている。
【0048】
次に、本実施形態に用いられる「インク」について説明する。
本実施形態に用いられるインクは、特に「光硬化技術−樹脂・開始剤の選定と配合条件及び硬化度の測定・評価−(技術協会情報)」に記載の「光硬化システム(第4章)」の「光酸・塩基発生剤を利用する硬化システム(第1節)」、「光誘導型交互共重合(第2節)」等に適合するインクが適用可能であり、通常のラジカル重合により硬化するものであってもよい。
【0049】
具体的に、本実施形態に用いられるインクは、光としての紫外線の被照射により硬化する性質を具備する紫外線硬化型インクであり、主成分として、重合性化合物(公知の重合性化合物を含む。)と、光開始剤と、色材とを少なくとも含むものである。ただし、本実施形態に用いるインクとして、上記「光誘導型交互共重合(第2節)」に適合するインクを用いる場合には、光開始剤は除外されてもよい。
【0050】
上記光硬化型インクは、重合性化合物として、ラジカル重合性化合物を含むラジカル重合系インクとカチオン重合性化合物を含むカチオン重合系インクとに大別されるが、その両系のインクが本実施形態に用いられるインクとしてそれぞれ適用可能であり、ラジカル重合系インクとカチオン重合系インクとを複合させたハイブリッド型インクを本実施形態に用いられるインクとして適用してもよい。
【0051】
しかしながら、酸素による重合反応の阻害が少ない又は無いカチオン重合系インクのほうが機能性・汎用性に優れるため、本実施形態では、特に、カチオン重合系インクを用いている。
【0052】
なお、本実施形態に用いられるカチオン重合系インクは、具体的に、オキセタン化合物,エポキシ化合物,ビニルエーテル化合物等のカチオン重合性化合物と、光カチオン開始剤と、色材とを少なくとも含む混合物であり、上記の通り、紫外線の照射により硬化する性質を具備するものである。
【0053】
ところで、本実施形態に用いられるインク(ラジカル重合系インク,カチオン重合系インク及びハイブリッド型インクを含む。)は、上記の通り、紫外線の被照射により硬化するものであるが、必ずしもこれには限定されず、紫外線以外の光の被照射により硬化するものであってもよい。ここでいう「光」とは、広義の光であって、紫外線、電子線、X線、可視光線、赤外線等の電磁波を含むものである。つまり、本実施形態に用いられるインクには、紫外線以外の光で重合して硬化する重合性化合物と、紫外線以外の光で重合性化合物同士の重合反応を開始させる光開始剤とが適用されてもよい。紫外線以外の光で硬化する光硬化型のインクを本実施形態に用いられるインクとして用いる場合は、その光を照射する光源を適用しなければならない。
【0054】
次に、本実施形態に用いられる「記録媒体K」について説明する。
本実施形態に用いられる記録媒体Kとしては、通常のインクジェット記録装置に適用される普通紙,再生紙,光沢紙等の各種紙,各種布地,各種不織布,樹脂,金属,ガラス等の材質からなる記録媒体が適用可能である。記録媒体Kの形態としては、ロール状、カットシート状、板状等が適用可能である。本実施形態では、記録媒体Kとして、図1に示す通りのカットシート状の樹脂製フィルムを用いている。
【0055】
特に、本実施形態で用いられる記録媒体Kとして、いわゆる軟包装に用いられる透明又は不透明な非吸収性の樹脂製フィルムが適用できる。樹脂製フィルムの具体的な樹脂の種類として、ポリエチレンテレフタレート,ポリエステル,ポリオレフィン,ポリアミド,ポリエステルアミド,ポリエーテル,ポリイミド,ポリアミドイミド,ポリスチレン,ポリカーボネート,ポリ-ρ-フェニレンスルフィド,ポリエーテルエステル,ポリ塩化ビニル,ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等が適用可能であり、さらには、これら樹脂の共重合体、これら樹脂の混合物、これら樹脂を架橋したもの等も適用可能である。中でも、樹脂製フィルムの樹脂の種類として、延伸したポリエチレンテレフタレート,ポリスチレン,ポリプロピレン,ナイロンのいずれかを選択するのが、樹脂製フィルムの透明性・寸法安定性・剛性・環境負荷・コスト等の面で好ましく、2〜100μm(好ましくは6〜50μm)の厚みを有する樹脂製フィルムを用いるのが好ましい。また、樹脂製フィルムの支持体の表面にコロナ放電処理、易接着処理等の表面処理を施してもよい。
【0056】
さらに、本実施形態に用いられる記録媒体Kとして、樹脂により表面を被覆した各種紙,顔料を含むフィルム,発泡フィルム等の不透明な公知の記録媒体も適用可能である。
【0057】
続いて、画像記録時のインクジェット記録装置1の動作について説明する。
まず、操作パネル65を介してユーザから画像記録指示及び画像記録条件が入力されると、画像記録に使用するインクの種類を記録条件設定部61が設定する。
【0058】
次に、制御部6は、搬送ローラ12,13や搬送ローラ20,20によって記録媒体Kの搬送を開始する。
次に、記録ヘッド制御部62は、画像データと、記録条件設定部61によって設定されたインク種類とに基づいて、記録ヘッド3から記録媒体Kの表面にインクを吐出させる。
【0059】
そして、光源制御部63は、画像データと、記録条件設定部61によって設定されたインク種類とに基づいて、照射装置4の光源40に紫外線を照射させるとともに、記録媒体Kを加熱させる。これにより、記録媒体Kの着弾領域K1のインクが硬化し、記録媒体Kの表面に画像が記録される。
【0060】
このとき、光源制御部63は、画像データと、記録条件設定部61によって設定されたインク種類とに基づいて、光源40による記録媒体Kの加熱量を制御する。具体的には、光源制御部63は、対応する画像記録部2の記録ヘッド3,3がインクを吐出しないときには、吐出するときと比較して照射装置4による記録媒体Kの加熱量を低減し、本実施の形態においては0にする、つまり、光源40をOFFにする。これにより、記録媒体Kが不必要に加熱されるのが防止されるとともに、不必要な加熱による電力消費が低減される。
【0061】
また、ヒータ制御部64は、例えば以下の表1に示すように、プラテン5のヒータ50による記録媒体Kの加熱量を制御する。なお、表1中、「記録部」とは画像記録部2を示し、「1番目の記録部」とは搬送方向Xにおいて最も上流側の画像記録部2を示す。
【0062】
【表1】

【0063】
即ち、ヒータ制御部64は、対応する画像記録部2の記録ヘッド3,3がインクを吐出しないとき、つまり光源40がOFFのときには、ヒータ50による記録媒体Kの加熱量を0にする。
【0064】
また、ヒータ制御部64は、最も上流側の画像記録部2と対応している場合には、この画像記録部2の記録ヘッド3,3がインクを吐出するとき、つまり光源40がONのときに、ヒータ50による加熱量を所定の値、本実施の形態においては30Whにする(表1の制御パターン「2」,「6」等参照)。
【0065】
また、ヒータ制御部64は、前記下流側画像記録部2Bと対応している場合には、この下流側画像記録部2Bの記録ヘッド3,3がインクを吐出するときに、前記上流側照射装置4Aの光源40の加熱量、本実施の形態においては点灯状態に基づいて、下流側画像記録部2Bのプラテン5(以下、下流側プラテン5Bとする)のヒータ50による記録媒体Kの加熱量を制御する。
【0066】
具体的には、ヒータ制御部64は、対応する下流側画像記録部2Bの記録ヘッド3,3がインクを吐出するときに、上流側照射装置4A,…の全体による記録媒体Kの加熱量が光源制御部63,…によって0にされていない場合には、この加熱量が0にされている場合と比較して、下流側プラテン5Bによる記録媒体Kの加熱量を低減する。例えば表1では、各上流側照射装置4Aの光源40がOFFの場合、つまり、上流側照射装置4A,…の全体による加熱量が0の場合には、下流側プラテン5Bによる記録媒体Kの加熱量を30Whとするのに対し(表1の制御パターン「2」〜「4」等参照)、何れかの上流側照射装置4Aの光源40がONの場合、つまり、上流側照射装置4A,…の全体による加熱量が0でない場合には、下流側プラテン5Bによる記録媒体Kの加熱量を4.5Wh、8.4Whまたは11.7Whに低減している(表1の制御パターン「6」〜「16」参照)。
【0067】
また、ヒータ制御部64は、対応する下流側画像記録部2Bの記録ヘッド3,3がインクを吐出するときに、上流側照射装置4A,…全体による記録媒体Kの加熱量が0にされておらず、当該下流側画像記録部2Bのすぐ上流側の上流側照射装置4Aによる記録媒体Kの加熱量が0にされている場合には、この加熱量が0にされていない場合と比較して、下流側プラテン5Bによる記録媒体Kの加熱量を増加させる。例えば表1では、対応する下流側画像記録部2Bのすぐ上流側の上流側照射装置4Aの光源40がONの場合には、下流側プラテン5Bによる記録媒体Kの加熱量を4.5Whとするのに対し(表1の制御パターン「6」,「9」,「11」等参照)、すぐ上流側の上流側照射装置4Aの光源40がOFFの場合には、下流側プラテン5Bによる記録媒体Kの加熱量を8.4Whまたは11.7Whに増加させている(表1の制御パターン「7」,「8」,「10」,「13」,「14」参照)。
【0068】
これにより、記録媒体Kが搬送されるにつれて照射装置4やプラテン5から加えられる熱が記録媒体Kに蓄積されるのが防止され、記録媒体Kの温度が略一定に保たれる。
【0069】
以上のようなインクジェット記録装置1によれば、照射装置4による記録媒体Kの加熱量を低減することにより、記録媒体Kが不必要に加熱されるのを防止することができるため、従来と異なり、記録媒体Kの歪みや劣化を防止することができる。また、記録媒体Kの歪みを防止することができるため、記録媒体Kの搬送不良を防止することができる。
【0070】
また、下流側プラテン5Bによる記録媒体Kの加熱量を制御することにより、記録媒体Kが搬送されるにつれて照射装置4やプラテン5により加えられる熱が記録媒体Kに蓄積されるのを防止し、記録媒体Kの温度を略一定に保つことができるため、記録媒体Kの歪みや劣化をより確実に防止することができる。
【0071】
なお、上記第1の実施の形態においては、光源制御部63は光源40への供給電力を調整することによって光源40による記録媒体Kの加熱量を制御することとして説明したが、照射装置4に設けられたシャッタや絞り(図示せず)によって制御することとしても良い。
【0072】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0073】
図3は、本発明に係るインクジェット記録装置1Aの概略構成を示す側面図である。
この図に示すように、インクジェット記録装置1Aの画像記録部9,…は、プラテン7を備えている。
【0074】
このプラテン7は、搬送方向Xの上流側に配設された第1プラテン70と、下流側に配設された第2プラテン72とを有している。
【0075】
第1プラテン70は、板状のプラテン板74によって前記着弾領域K1の記録媒体Kを裏面側から支持するものである。また、第1プラテン70は本発明における第1加熱部であり、プラテン板74を介して前記着弾領域K1の記録媒体Kをヒータ71で加熱するようになっている。また、この第1プラテン70は本発明における第3プラテンであり、プラテン板74の被加熱部分の上面温度が温度センサ51によって測定されるようになっている。
【0076】
第2プラテン72は、板状のプラテン板75によって前記未着弾領域K2の記録媒体Kを裏面側から支持するものである。また、第2プラテン72は本発明における第2加熱部であり、プラテン板75を介して前記未着弾領域K2の記録媒体Kをヒータ73で加熱するようになっている。
【0077】
なお、本実施の形態においては、第1プラテン70のプラテン板74と、第2プラテン72のプラテン板75とは、互いに一体に形成されている。
【0078】
これら第1プラテン70のヒータ71や第2プラテン72のヒータ73等には、図4に示すように、本発明における第1制御部及び第2制御部としての制御部8が接続されている。なお、この図4では、図示の便宜上、各画像記録部9の記録ヘッド3を1つのみ示すとともに、搬送ローラ12,13や搬送ローラ20,20等の図示を省略している。また、便宜的に、図の上側を搬送方向Xの上流側、下側を下流側としている。
【0079】
制御部8は、インクジェット記録装置1Aの各部を制御するものであり、光源制御部63A,…、第1ヒータ制御部80,…及び第2ヒータ制御部81,…を、それぞれ画像記録部9に1対1で対応付けた状態で備えている。
【0080】
光源制御部63Aは、照射装置4の光源40による紫外線の照射を制御するものであり、本実施の形態においては、照射装置4による照射量を画像記録中で一定に維持するようになっている。
【0081】
第1ヒータ制御部80は、第1プラテン70のヒータ71への供給電力を調整することにより、このヒータ71による記録媒体Kの加熱量を制御するものである。
【0082】
第2ヒータ制御部81は、第2プラテン72のヒータ73への供給電力を調整することにより、このヒータ73による記録媒体Kの加熱量を制御するものである。この第2ヒータ制御部81は、搬送方向Xにおける下流側の画像記録部9(以下、下流側画像記録部9Bとする)と対応している場合には、当該下流側画像記録部9Bよりも上流側の画像記録部9(以下、上流側画像記録部9Aとする)の第1プラテン70(以下、上流側第1プラテン70Aとする)の全体による記録媒体Kの加熱量を算出可能となっている。
【0083】
続いて、画像記録時のインクジェット記録装置1Aの動作について説明する。
まず、操作パネル65を介してユーザから画像記録指示及び画像記録条件が入力されると、画像記録に使用するインクの種類を記録条件設定部61が設定する。
【0084】
次に、制御部8は、搬送ローラ12,13や搬送ローラ20,20によって記録媒体Kの搬送を開始する。
次に、記録ヘッド制御部62は、画像データと、記録条件設定部61によって設定されたインク種類とに基づいて、記録ヘッド3から記録媒体Kの表面にインクを吐出させる。
【0085】
そして、光源制御部63Aが照射装置4の光源40に紫外線を照射させる。これにより、記録媒体Kの着弾領域K1のインクが硬化し、記録媒体Kの表面に画像が記録される。
【0086】
このとき、第1ヒータ制御部80は、画像データと、記録条件設定部61によって設定されたインク種類とに基づいて、第1プラテン70による記録媒体Kの加熱量を制御する。具体的には、第1ヒータ制御部80は、対応する画像記録部9の記録ヘッド3,3がインクを吐出しないときには、吐出するときと比較して第1プラテン70のヒータ71による記録媒体Kの加熱量を低減し、本実施の形態においては0にする、つまり、ヒータ71をOFFにする。これにより、記録媒体Kが不必要に加熱されるのが防止されるとともに、不必要な加熱による電力消費が低減される。
【0087】
また、第2ヒータ制御部81は、第2プラテン72のヒータ73による記録媒体Kの加熱量を制御する。
即ち、第2ヒータ制御部81は、対応する画像記録部9の記録ヘッド3,3がインクを吐出しないとき、つまり第1プラテン70のヒータ71がOFFのときには、ヒータ73による記録媒体Kの加熱量を0にする。
【0088】
また、第2ヒータ制御部81は、最も上流側の画像記録部9と対応している場合には、この画像記録部9の記録ヘッド3,3がインクを吐出するとき、つまり第1プラテン70のヒータ71がONのときに、ヒータ73による加熱量を所定の値にする。
【0089】
また、第2ヒータ制御部81は、前記下流側画像記録部9Bと対応している場合には、この下流側画像記録部9Bの記録ヘッド3,3がインクを吐出するときに、前記上流側第1プラテン70Aによる記録媒体Kの加熱量に基づいて、下流側画像記録部9Bの第2プラテン72(以下、下流側第2プラテン72Bとする)のヒータ73による記録媒体Kの加熱量を制御する。
【0090】
具体的には、第2ヒータ制御部81は、対応する下流側画像記録部9Bの記録ヘッド3,3がインクを吐出するときに、上流側第1プラテン70A,…のヒータ71,…全体による記録媒体Kの加熱量が第1ヒータ制御部80,…によって0にされていない場合には、この加熱量が0にされている場合と比較して、下流側第2プラテン72Bのヒータ73による記録媒体Kの加熱量を低減する。
【0091】
また、第2ヒータ制御部81は、対応する下流側画像記録部9Bの記録ヘッド3,3がインクを吐出するときに、上流側第1プラテン70A,…のヒータ71,…全体による記録媒体Kの加熱量が0にされておらず、この下流側画像記録部2Bのすぐ上流側の上流側第1プラテン70Aのヒータ71による記録媒体Kの加熱量が0にされている場合には、この加熱量が0にされていない場合と比較して、下流側第2プラテン72Bのヒータ73による記録媒体Kの加熱量を増加させる。
【0092】
これにより、記録媒体Kが搬送されるにつれてプラテン7から加えられる熱が記録媒体Kに蓄積されるのが防止され、記録媒体Kの温度が略一定に保たれる。
【0093】
以上のようなインクジェット記録装置1Aによっても、上記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0094】
なお、上記第2の実施の形態においては、第2ヒータ制御部81は、前記上流側第1プラテン70Aのヒータ71による記録媒体Kの加熱量に基づいて下流側第2プラテン72Bのヒータ73による記録媒体Kの加熱量を制御することとして説明したが、上流側第1プラテン70Aのヒータ71による記録媒体Kの加熱量と、上流側第1プラテン70Aの温度センサ51による測定温度または上流側画像記録部9Aの第2プラテン72のヒータ73による記録媒体の加熱量とに基づいて制御することとしても良い。この場合、上流側第1プラテン70の温度センサ51による測定温度や、上流側画像記録部9Aのヒータ73による記録媒体Kの加熱量は、第2ヒータ制御部81によって算出可能にすることが好ましい。
【0095】
<第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、上記第1,第2の実施の形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図1に示すように、本実施の形態におけるインクジェット記録装置1Dの画像記録部2D,…は、プラテン5Dを備えている。
【0096】
プラテン5Dは、プラテン板52を介してヒータ50Dで記録媒体Kを加熱するようになっており、より詳細には、少なくとも前記着弾領域K1よりも搬送方向Xの上流側で、未着弾領域K2の記録媒体Kを加熱するようになっている。
【0097】
このプラテン5D等には、図2に示すように、本発明における第1制御部としての制御部6Dが接続されている。
制御部6Dは、プラテン5Dのヒータ50Dによる記録媒体Kの加熱量を制御するヒータ制御部64Dを、画像記録部2Dに1対1で対応付けた状態で備えている。このヒータ制御部64Dは、ヒータ50Dによる加熱量を画像記録中で一定に維持するようになっている。
【0098】
続いて、画像記録時のインクジェット記録装置1Dの動作について説明する。
まず、操作パネル65を介してユーザから画像記録指示及び画像記録条件が入力されると、画像記録に使用するインクの種類を記録条件設定部61が設定する。
【0099】
次に、制御部6Dは、搬送ローラ12,13や搬送ローラ20,20によって記録媒体Kの搬送を開始する。
次に、記録ヘッド制御部62は、画像データと、記録条件設定部61によって設定されたインク種類とに基づいて、記録ヘッド3から記録媒体Kの表面にインクを吐出させる。
【0100】
そして、ヒータ制御部64Dは、プラテン5Dのヒータ50Dに記録媒体Kを加熱させる。また、光源制御部63は、画像データと、記録条件設定部61によって設定されたインク種類とに基づいて、照射装置4の光源40に紫外線を照射させるとともに、記録媒体Kを加熱させる。これにより、記録媒体Kの着弾領域K1のインクが硬化し、記録媒体Kの表面に画像が記録される。
【0101】
このとき、光源制御部63は、画像データと、記録条件設定部61によって設定されたインク種類とに基づいて、光源40による記録媒体Kの加熱量を制御する。具体的には、光源制御部63は、対応する画像記録部2Dの記録ヘッド3,3がインクを吐出しないときには、吐出するときと比較して照射装置4による記録媒体Kの加熱量を低減し、本実施の形態においては0にする、つまり、光源40をOFFにする。これにより、記録媒体Kが不必要に加熱されるのが防止されるとともに、不必要な加熱による電力消費が低減される。
【0102】
以上のようなインクジェット記録装置1Dによれば、記録媒体Kが不必要に加熱されるのを防止することができるため、従来と異なり、記録媒体Kの歪みや劣化を防止することができる。また、記録媒体Kの歪みを防止することができるため、記録媒体Kの搬送不良を防止することができる。
【0103】
<第4の実施の形態>
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。なお、上記第1〜第3の実施の形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0104】
図2に示すように、本実施の形態におけるインクジェット記録装置1Eは、制御部6Eを備えている。この制御部6Eは、本発明における第2制御部であり、光源制御部63E及びヒータ制御部64Eを、画像記録部2に1対1で対応付けた状態で有している。
【0105】
光源制御部63Eは、照射装置4の光源40による紫外線の照射を制御するものであり、本実施の形態においては、照射装置4による照射量、つまり記録媒体Kの加熱量を変更可能となっている。
ヒータ制御部64Eは、プラテン5のヒータ50への供給電力を調整することにより、このヒータ50による記録媒体Kの加熱量を制御するものである。
【0106】
続いて、画像記録時のインクジェット記録装置1Eの動作について説明する。
まず、操作パネル65を介してユーザから画像記録指示及び画像記録条件が入力されると、画像記録に使用するインクの種類を記録条件設定部61が設定する。
【0107】
次に、制御部6Eは、搬送ローラ12,13や搬送ローラ20,20によって記録媒体Kの搬送を開始する。
次に、記録ヘッド制御部62は、画像データと、記録条件設定部61によって設定されたインク種類とに基づいて、記録ヘッド3から記録媒体Kの表面にインクを吐出させる。
【0108】
そして、光源制御部63Eが照射装置4の光源40に紫外線を照射させる。これにより、記録媒体Kの着弾領域K1のインクが硬化し、記録媒体Kの表面に画像が記録される。
【0109】
このとき、ヒータ制御部64Eは、プラテン5のヒータ50による記録媒体Kの加熱量を制御する。
即ち、ヒータ制御部64Eは、対応する画像記録部2の記録ヘッド3,3がインクを吐出しないとき、つまり光源40がOFFのときには、ヒータ50による記録媒体Kの加熱量を0にする。
【0110】
また、ヒータ制御部64Eは、最も上流側の画像記録部2と対応している場合には、この画像記録部2の記録ヘッド3,3がインクを吐出するとき、つまり光源40がONのときに、ヒータ50による加熱量を所定の値にする。
【0111】
また、ヒータ制御部64Eは、前記下流側画像記録部2Bと対応している場合には、この下流側画像記録部2Bの記録ヘッド3,3がインクを吐出するときに、前記上流側照射装置4Aの光源40の加熱量に基づいて、下流側プラテン5Bのヒータ50による記録媒体Kの加熱量を制御する。具体的には、ヒータ制御部64Eは、対応する下流側画像記録部2Bの記録ヘッド3,3がインクを吐出するときに、上流側照射装置4A,…の全体による記録媒体Kの加熱量が所定の第1加熱量よりも大きい場合には、小さい場合と比較して下流側プラテン5Bによる記録媒体Kの加熱量を低減し、上流側照射装置4A,…の全体による記録媒体Kの加熱量が所定の第2加熱量よりも小さい場合には、大きい場合と比較して下流側プラテン5Bによる記録媒体Kの加熱量を増加させる。これにより、記録媒体Kが搬送されるにつれて照射装置4やプラテン5から加えられる熱が記録媒体Kに蓄積されるのが防止され、記録媒体Kの温度が略一定に保たれる。なお、上述の第1加熱量と第2加熱量とは、同一の値であっても良いし、異なる値であっても良い。
【0112】
以上のようなインクジェット記録装置1Eによれば、記録媒体Kが搬送されるにつれて照射装置4やプラテン5により加えられる熱が記録媒体Kに蓄積されるのを防止し、記録媒体Kの温度を略一定に保つことができるため、記録媒体Kの歪みや劣化を防止することができる。
【0113】
なお、上記第4の実施の形態においては、本発明における第1加熱部を照射装置4として説明したが、上記第2の実施の形態と同様に第1プラテン70としても良い。
【0114】
また、上記第1及び第4の実施の形態においては、ヒータ制御部64,64Eは、上流側照射装置4Aによる記録媒体Kの加熱量に基づいて下流側プラテン5Bによる記録媒体Kの加熱量を制御することとして説明したが、上流側照射装置4Aによる記録媒体Kの加熱量と、上流側画像記録部2Aの温度センサ51による測定温度または上流側画像記録部2Aのヒータ50による記録媒体Kの加熱量とに基づいて制御することとしても良い。この場合、上流側画像記録部2Aの温度センサ51による測定温度や、上流側画像記録部2Aのヒータ50による記録媒体Kの加熱量は、ヒータ制御部64,64Eによって算出可能にすることが好ましい。
【0115】
また、ヒータ制御部64,64Eは、下流側プラテン5Bのヒータ50による記録媒体Kの加熱量としてヒータ50に対する電力量(Wh)を用いることとして説明したが、以下の表2,表3に示すように、ヒータ50に対する設定温度(℃)を用いることとしても良い。ここで、表3では、ヒータ制御部64,64Eは、上流側照射装置4Aによる記録媒体Kの加熱量と、上流側画像記録部2Aのヒータ50による記録媒体Kの加熱量とに基づいて下流側プラテン5Bのヒータ50による記録媒体Kの加熱量を制御しており、具体的には、対応する下流側画像記録部2Bの下流側プラテン5Bのヒータ50をONにする場合に、この下流側画像記録部2Bのすぐ上流側の上流側画像記録部2Aのヒータ50に対する設定温度が27℃,25℃であるときには、下流側プラテン5Bのヒータ50に対する設定温度を27℃から25℃,23℃に低減するようになっている(表2,表3の制御パターン「12」,「15」,「16」参照)。
【0116】
【表2】

【0117】
【表3】

【0118】
また、上記第1、第2及び第4の実施の形態においては、本発明における第2加熱部をプラテン5,7として説明したが、図5,図6に示すように、記録媒体Kを加熱可能に構成された搬送ローラ20A,20Aや、記録媒体Kから離れて配設される非接触加熱装置20Bとしても良い。但し、図5,図6では、ヒータ50,71等の図示を省略している。
【0119】
また、上記第1〜第4の実施の形態においては、制御部6,8等は画像データと、記録条件設定部61で設定されたインク種類とに基づいて光源40,ヒータ71等を制御することとして説明したが、画像データと、インク判別部60で判別されたインク種類とに基づいて制御することとしても良い。
【0120】
また、制御部6,8等はインク判別部60及び記録条件設定部61を備えることとして説明したが、これらインク判別部60及び記録条件設定部61の何れか一方のみを備えることとしても良い。
【0121】
また、光源制御部63,第1ヒータ制御部80は、画像記録に使用するインク種類と、画像データとに基づいて記録媒体Kの加熱量を制御することとして説明したが、何れか一方のみに基づいて加熱量を制御することとしても良い。
【0122】
また、インクジェット記録装置1,1A等は画像記録部2,2D,9を4つ備えることとして説明したが、例えば図7に示すように3つ以下備えることとしても良いし、5つ以上備えることとしても良い。
【0123】
また、各画像記録部2,9等に備えられる2つの記録ヘッド3,3は同色のインクを吐出することとして説明したが、異なる色のインクを吐出することとしても良い。
【0124】
また、画像記録部2,9等は記録ヘッド3を2つ備えることとして説明したが、図7に示すように、1つのみ備えることとしても良いし、3つ以上備えることとしても良い。但し、この図7では、ヒータ50,71等の図示を省略している。
【0125】
また、各画像記録部2,9等が別体のプラテン板52,74等を備えることとして説明したが、図8に示すように、一体に形成されたのプラテン板52Aを備えることとしても良い。但し、この図8では、ヒータ50,71等の図示を省略している。
【0126】
また、カットシート状の記録媒体Kを用いることとして説明したが、図8に示すように、ロール状に巻かれた長尺な記録媒体Kを用いることとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明に係るインクジェット記録装置の概略構成を示す側面図である。
【図2】本発明に係るインクジェット記録装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係るインクジェット記録装置の変形例の概略構成を示す側面図である。
【図4】本発明に係るインクジェット記録装置の変形例の概略構成を示すブロック図である。
【図5】本発明に係るインクジェット記録装置の変形例の概略構成を示す側面図である。
【図6】本発明に係るインクジェット記録装置の変形例の概略構成を示す側面図である。
【図7】本発明に係るインクジェット記録装置の変形例の概略構成を示す側面図である。
【図8】本発明に係るインクジェット記録装置の変形例の概略構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0128】
1,1A,1D,1E インクジェット記録装置
2,2D,9 画像記録部
3 記録ヘッド
4 照射装置(第1加熱部)
5 プラテン(第2加熱部,第3プラテン)
6,8 制御部(第1制御部,第2制御部)
6D 制御部(第1制御部)
6E 制御部(第2制御部)
12,13,20,20A 搬送ローラ(搬送装置)
20B 非接触加熱装置
70 第1プラテン(第1加熱部、第3プラテン)
72 第2プラテン(第2加熱部)
K 記録媒体
K1 着弾領域の記録媒体
X 搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体にインクで画像を記録する複数の画像記録部と、
前記画像記録部を制御する第1制御部とを備え、
前記画像記録部は、
記録媒体に向かってインクを吐出する少なくとも1つの記録ヘッドと、
前記記録ヘッドから吐出されたインクの着弾した着弾領域の記録媒体を加熱する第1加熱部とを有し、
前記第1制御部は、
前記画像記録部の前記記録ヘッドがインクを吐出しないときには、吐出するときと比較して、当該画像記録部の前記第1加熱部による記録媒体の加熱量を低減することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
請求項1記載のインクジェット記録装置において、
前記第1制御部は、
前記画像記録部の前記記録ヘッドがインクを吐出しないときには、当該画像記録部の前記第1加熱部による記録媒体の加熱量を0にすることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のインクジェット記録装置において、
前記第1制御部は、画像データまたは画像記録条件に基づいて前記第1加熱部による記録媒体の加熱量を制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項4】
請求項3記載のインクジェット記録装置において、
画像記録に使用するインクの種類を画像データに基づいて判別するインク判別部を備え、
複数の前記記録ヘッドは、互いに異なる種類のインクを吐出するものであり、
前記第1制御部は、前記インク判別部による判別結果に基づいて前記第1加熱部による記録媒体の加熱量を制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記第1加熱部は、
記録媒体の前記着弾領域に光を照射する照射装置と、
記録媒体の前記着弾領域を裏面側から支持する第1プラテンとの少なくとも一方であることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項6】
請求項5記載のインクジェット記録装置において、
前記第1加熱部は、前記照射装置であり、
前記第1制御部は、前記照射装置による照射量を調整することにより、記録媒体の加熱量を制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項7】
請求項6記載のインクジェット記録装置において、
前記記録ヘッドは、光硬化性のインクを吐出することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項8】
請求項5記載のインクジェット記録装置において、
記録媒体の前記着弾領域に光を照射する照射装置を備え、
前記記録ヘッドは、光硬化性のインクを吐出し、
前記第1加熱部は、前記第1プラテンであることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項9】
記録媒体を搬送方向に搬送する搬送装置と、
前記搬送方向と交差する方向に延在した状態で当該搬送方向に配列され、ライン記録方式によって記録媒体にインクで画像を記録する複数の画像記録部と、
前記画像記録部を制御する第2制御部とを備え、
前記画像記録部は、
記録媒体に向かってインクを吐出する少なくとも1つの記録ヘッドと、
前記記録ヘッドから吐出されたインクの着弾した着弾領域の記録媒体を加熱する第1加熱部と、
前記第1加熱部よりも前記搬送方向の上流側で記録媒体を加熱する第2加熱部とを有し、
前記第2制御部は、
前記第1加熱部による記録媒体の加熱量を変更可能であり、
前記搬送方向における上流側の前記画像記録部の前記第1加熱部による記録媒体の加熱量に基づいて、当該上流側の画像記録部よりも前記搬送方向の下流側の前記画像記録部の前記第2加熱部による記録媒体の加熱量を制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項10】
請求項9記載のインクジェット記録装置において、
前記第2制御部は、
前記上流側の画像記録部の前記第1加熱部による記録媒体の加熱量と、当該上流側の画像記録部の前記第2加熱部による記録媒体の加熱量とに基づいて、前記下流側の画像記録部の前記第2加熱部による記録媒体の加熱量を制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項11】
請求項9記載のインクジェット記録装置において、
前記画像記録部は、記録媒体を裏面側から支持する第3プラテンを備え、
前記第2制御部は、
前記上流側の画像記録部の前記第1加熱部による記録媒体の加熱量と、この上流側の画像記録部の前記第3プラテンの温度とに基づいて、前記下流側の前記画像記録部の前記第2加熱部による記録媒体の加熱量を制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項12】
請求項9〜11の何れか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記第2制御部は、
前記上流側の画像記録部の第1加熱部による記録媒体の加熱量が所定の第1加熱量よりも大きい場合には、小さい場合と比較して、前記下流側の前記画像記録部の前記第2加熱部による記録媒体の加熱量を低減することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項13】
請求項9〜11の何れか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記第2制御部は、
前記画像記録部の前記記録ヘッドがインクを吐出しないときには、吐出するときと比較して、当該画像記録部の前記第1加熱部による記録媒体の加熱量を低減し、
前記上流側の画像記録部の第1加熱部による記録媒体の加熱量を低減しない場合には、低減する場合と比較して、前記下流側の前記画像記録部の前記第2加熱部による記録媒体の加熱量を低減することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項14】
請求項9〜13の何れか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記第2制御部は、
前記上流側の画像記録部の第1加熱部による記録媒体の加熱量が所定の第2加熱量よりも小さい場合には、大きい場合と比較して、前記下流側の前記画像記録部の前記第2加熱部による記録媒体の加熱量を増加させることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項15】
請求項9〜13の何れか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記第2制御部は、
前記画像記録部の前記記録ヘッドがインクを吐出しないときには、吐出するときと比較して、当該画像記録部の前記第1加熱部による記録媒体の加熱量を低減し、
前記上流側の画像記録部の第1加熱部による記録媒体の加熱量を低減する場合には、低減しない場合と比較して、前記下流側の前記画像記録部の前記第2加熱部による記録媒体の加熱量を増加させることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項16】
請求項9〜15の何れか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記第2加熱部は、
記録媒体の前記着弾領域よりも前記搬送方向の上流側の領域を裏面側から支持する第2プラテンと、
前記搬送方向に記録媒体を搬送する搬送ローラと、
記録媒体から離れて配設される非接触加熱装置との何れか一つであることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項17】
請求項9〜16の何れか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記第1加熱部は、
記録媒体の前記着弾領域に光を照射する照射装置と、
記録媒体の前記着弾領域を裏面側から支持する第1プラテンとの少なくとも一方であることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項18】
請求項17記載のインクジェット記録装置において、
前記第1加熱部は、前記照射装置であることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項19】
請求項18記載のインクジェット記録装置において、
前記記録ヘッドは、光硬化性のインクを吐出することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項20】
請求項17記載のインクジェット記録装置において、
記録媒体の前記着弾領域に光を照射する照射装置を備え、
前記記録ヘッドは、光硬化性のインクを吐出し、
前記第1加熱部は、前記第1プラテンであることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項21】
請求項7,8,19または20記載のインクジェット記録装置において、
前記照射装置は、記録媒体に紫外線を照射し、
前記記録ヘッドは、紫外線硬化性のインクを吐出することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項22】
請求項7,8,19〜21の何れか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記記録ヘッドは、カチオン重合系のインクを吐出することを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−83574(P2007−83574A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−275557(P2005−275557)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】