説明

インクジェット記録装置

【課題】拭き取り時間の短縮を図ることが可能なインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】プリンタ1の記録ヘッド22のキャップ51及びワイプブレード52を有するキャップユニット50は、水平駆動装置60により用紙搬送方向に移動可能となっている。水平駆動装置60により、キャップユニット50は、記録ヘッド22へのキャップ51の着脱位置と、記録ヘッド22間に設けられた退避位置とに用紙搬送方向に沿って移動可能であり、キャップユニット50が用紙搬送方向に移動することにより、ワイプブレード52が用紙搬送方向に移動しながら記録ヘッド22のインク吐出面を拭き取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファクシミリ、複写機、プリンタ等の記録装置において、用紙等の記録媒体にインクを吐出することによって記録を行うインクジェット記録装置に関するものである。
【0002】
ファクシミリ、複写機、プリンタ等の記録装置は、紙、布、OHP用シート等の記録媒体に画像を記録するように構成されているが、記録を行う方式により、インクジェット式、ワイヤドット式、サーマル式等に分類することができる。また、これらの記録方式はさらに、記録ヘッドが記録媒体上を走査しながら記録を行うシリアル型と、装置本体に固定された記録ヘッドにより記録を行うラインヘッド型に分類することができる。
【0003】
例えばラインヘッド型のインクジェット記録装置では、装置本体内に備えられた搬送ベルト等の搬送手段によって用紙等の記録媒体を高速で搬送しながら、記録媒体の幅以上の記録領域を有するラインヘッドの各インク吐出ノズルからインクを吐出することによって記録媒体に画像を形成する。これにより、記録ヘッドが記録媒体の幅方向に往復動作するシリアル型インクジェットヘッドに比べて高速印字が可能となる。
【0004】
このようなインクジェット式プリンタでは、一般的に、記録ヘッドのインク吐出面に開口が設けられたインク吐出用ノズル内のインクの乾燥やノズルの目詰まりを防止するために、記録ヘッドにキャップをすることがある。また、記録ヘッドにキャップをする前に、インクを吐出した後、インク吐出面に付着したインクの拭き取りを行って記録ヘッドの回復処理を行うことがある。このように、インク吐出面を拭き取り、記録ヘッドにキャップを装着するインクジェト記録装置が、例えば特許文献1に開示されている。
【0005】
例えば特許文献1には、キャップ(キャップ部)及びワイプブレード(拭き取り部)を有し、非画像形成時に、インクジェット記録ヘッド(記録ヘッド)のノズルプレートと接触または近接しメンテナンスを行うメンテナンス機構部(回復装置)を、インクをノズルに供給するインク供給経路の下に格納することにより、小型化を実現可能とする方法が開示されている。かかる特許文献1には、ワイプブレードが記録媒体の搬送方向とは垂直方向に移動することによって、記録ヘッドのインク吐出面を拭き取ることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−289648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1では、回復装置を記録媒体の搬送方向とは垂直方向(記録ヘッドの長手方向)に移動させて記録ヘッドのインク吐出面を拭き取っているため、拭き取り部の移動距離が長くなり、拭き取り時間も長くなる。
【0008】
本発明においては上述の事情に鑑み、拭き取り時間の短縮を図ることが可能なインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、記録媒体の搬送方向とは垂直方向に沿って配置され、記録媒体上にインクを吐出する記録ヘッドと、前記記録ヘッドのインク吐出面を覆うキャップ部及び前記インク吐出面を拭き取り可能な拭き取り部を有し、前記記録ヘッドの回復処理を実行可能な回復装置と、を備えたインクジェット記録装置において、前記回復装置は、前記記録媒体の搬送方向に沿って移動可能であり、前記回復装置が前記記録媒体の搬送方向に沿って移動することにより、前記拭き取り部が前記記録媒体の搬送方向に沿って移動しながら前記インク吐出面を拭き取ることを特徴としている。
【0010】
また本発明は、前記回復装置を、前記記録媒体の搬送方向に沿って前記記録ヘッドに対して前記キャップ部を着脱可能な着脱位置と、前記キャップ部が記録媒体への印字時に退避する退避位置と、に移動させる駆動手段が設けられており、該駆動手段が前記回復装置を前記記録媒体の搬送方向に移動させることにより、前記拭き取り部が前記インク吐出面を拭き取ることを特徴としている。
【0011】
また本発明は、前記回復装置が前記着脱位置と前記退避位置との間を移動することにより、前記拭き取り部が前記インク吐出面を拭き取ることを特徴としている。
【0012】
また本発明は、前記記録ヘッドが複数設けられ、前記退避位置は、前記キャップ部が前記記録ヘッドの間に配置される位置に設けられたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の構成によれば、回復装置が記録媒体の搬送方向に沿って移動可能であり、回復装置が記録媒体の搬送方向に沿って移動することにより、拭き取り部が記録媒体の搬送方向に沿って移動しながらインク吐出面を拭き取ることによって、記録ヘッドの拭き取りに要する移動距離が短くなるため、拭き取り時間の短縮を図ることができる。また、記録媒体の搬送方向に沿って記録ヘッドを拭き取ることにより、拭き取り後の記録ヘッドのインク吐出方向が記録媒体の搬送方向に対して直交する方向の成分を持つことを抑制でき、画像に縦筋が出難くなるため、画質低下を防止することができる。
【0014】
また、本発明の第2の構成によれば、上記第1の構成のインクジェット記録装置において、回復装置を、記録媒体の搬送方向に沿って記録ヘッドに対してキャップ部を着脱可能な着脱位置と、キャップ部が記録媒体への印字時に退避する退避位置と、に移動させる駆動手段を設け、該駆動手段が回復装置を記録媒体の搬送方向に移動させて拭き取り部がインク吐出面を拭き取ることによって、拭き取り動作専用の駆動源を別途設ける必要がなくなるため、部材点数の増加や構成の複雑化を防止できる。
【0015】
また、本発明の第3の構成によれば、上記第2の構成のインクジェット記録装置において、回復装置が着脱位置と退避位置との間を移動することにより、拭き取り部がインク吐出面を拭き取ることによって、回復装置がキャップ着脱及び印字のための移動動作を行うだけで、インク吐出面の拭き取りも行うことができるため、回復装置の移動距離をより短くすることができる。
【0016】
また、本発明の第4の構成によれば、上記第2または第3の構成のインクジェット記録装置において、記録ヘッドを複数設け、退避位置を、キャップ部が記録ヘッドの間に配置される位置に設けることによって、回復装置の着脱位置と退避位置との間の移動距離を短くできるため、作業時間をより短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】は、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の一例であるインクジェット式プリンタの概略構造を示す模型的垂直断面正面図である。
【図2】は、記録ヘッドにキャップが装着されているときのプリンタの記録部及び搬送ユニット周辺を示す図であって、図2(a)は、概略上面図であり、図2(b)は、概略側面断面図である。
【図3】は、記録ヘッドが印字可能な状態にあるプリンタの記録部及び搬送ユニット周辺を示す図であって、図3(a)は、概略上面図であり、図3(b)は、概略側面断面図である。
【図4】は、キャップユニット及び水平駆動装置を示す図であって、図4(a)は、概略上面図であり、図4(b)は、概略側面図である。
【図5】は、キャップユニットの動作を示す図であって、着脱位置において記録ヘッドにキャップが装着されているときの記録部及びキャップユニット周辺を示す概略側面断面図である。
【図6】は、キャップユニットの動作を示す図であって、着脱位置においてキャップユニットが下方に移動したときの記録部及びキャップユニット周辺を示す概略側面断面図である。
【図7】は、キャップユニットの動作を示す図であって、キャップユニットが着脱位置から退避位置に移動したときの記録部及びキャップユニット周辺を示す概略側面断面図である。
【図8】は、キャップユニットの動作を示す図であって、記録ヘッドが印字可能なときの記録部及びキャップユニット周辺を示す概略側面断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1はインクジェット記録装置の一例であるインクジェット式プリンタの概略構造を示す模型的垂直断面正面図である。
【0019】
図1に示すように、プリンタ1の本体2の内部下方には、用紙(記録媒体)Pの収容部である給紙カセット3が配置されている。給紙カセット3の内部には、用紙Pが積まれて収容されている。給紙カセット3の用紙搬送方向(記録媒体の搬送方向)下流部上方には、給紙装置4が配置されている。この給紙装置4により、用紙Pは図1において給紙カセット3の右上方に向けて送り出される。
【0020】
給紙カセット3の用紙搬送方向下流には、用紙搬送路5、レジストローラ6、記録部20、及び搬送ユニット30が配置されている。給紙カセット3から送り出された用紙Pは、用紙搬送路5を通ってレジストローラ6に到達する。なお、用紙搬送路5には給紙カセット3から排紙トレイ10までの一連の用紙搬送に係わる部材を含むものとし、その一例として用紙搬送路5には、用紙Pを搬送するための搬送ローラ対を必要に応じて設けても良い。レジストローラ6は、用紙Pを一旦停止させて用紙Pの斜め送りを矯正して再度用紙Pを送り出し、記録部20とレジストローラ6の間の用紙搬送路5に設けられた図示しない用紙先端検知部材による用紙Pの先端の検知に基づいたタイミングで、記録部20が用紙Pに対してインクを吐出するインク吐出動作を実行する。
【0021】
搬送ユニット30は、駆動ローラ32、及び従動ローラ33、及びテンションローラ34に巻き掛けられた無端状の搬送ベルト31を備えている。搬送ベルト31は、駆動ローラ32により、図1において反時計方向に回転する。レジストローラ6によって送り出された用紙Pは、この搬送ベルト31の上面に載置され、図1において右方から左方へと搬送される。
【0022】
なお、搬送ベルト31には、その両端部を互いに重ね合わせて接合しエンドレス形状にしたベルトや、継ぎ目を有しない(シームレス)ベルト等が好適に用いられる。また、搬送ベルト31を挟んで従動ローラ33と当接する位置には、ローラ35が配置されており、搬送ユニット30に搬送された用紙Pを搬送ベルト31に対して上方から抑えることができるようになっている。
【0023】
搬送ユニット30の内部であって、記録部20に対向する箇所には、空気吸引ユニット36が備えられている(図2参照)。空気吸引ユニット36は、その上面に、多数の空気吸引用の孔(図示せず)を備えている。そして、搬送ユニット30は、空気吸引ユニット36により、その上面から下方に向かって空気を吸引することができる。また、搬送ベルト31にも、多数の空気吸引用の孔(図示せず)が設けられている。これにより、搬送ユニット30は、搬送ベルト31と空気吸引ユニット36とを用いて、用紙Pを搬送ベルト31の上面に吸着させながら搬送する。
【0024】
一方、プリンタ1は、外部コンピュータ(図示せず)から、文字や図形、模様などの画像データ信号を受信する。この画像データの情報は、搬送ユニット30と対向するようにその上方に配置された記録部20に送られる。記録部20は、記録ヘッド22の底面と搬送ベルト31の上面である用紙搬送面との間に微小間隔(例えば1mm)を設けて配置されている。
【0025】
記録部20は、各色に対応した記録ヘッド22を4色分備えている(図2及び図3参照)。記録ヘッド22は、各々用紙搬送方向と直角をなす用紙幅方向(記録媒体の搬送方向とは垂直方向)に向かって延びる。図1に示すように、4色に対応した記録ヘッドはそれぞれ搬送ベルト31の回転方向に沿って、回転方向上流側から下流側に向けて並べて配置されている。
【0026】
4色に対応した記録ヘッド22とは、回転方向上流側から順に、ブラック用の記録ヘッド22K、シアン用の記録ヘッド22C、マゼンタ用の記録ヘッド22M、及びイエロー用の記録ヘッド22Yである。また、各色の記録ヘッド22K〜22Yを構成する記録ヘッドの数量や配置は特に限定されるものではなく、例えば各色の記録ヘッド22K〜22Yを3個の記録ヘッドから構成すると共にこれらを各色において例えば千鳥状に配置することもできる。
【0027】
各色の記録ヘッド22に対応して、搬送ユニット30の下方には、4台のインクタンク23が備えられている。各色のインクは、このインクタンク23から供給チューブ(図示せず)によって、記録ヘッド22に補給される。なお、以下の説明において、特に限定する必要がある場合を除き、「K」「C」「M」「Y」の識別記号は省略するものとする。
【0028】
なお、記録ヘッド22のインクの吐出方式としては、例えば、図示しないピエゾ素子を用いてインクを押し出すピエゾ方式や、発熱体によってインク中に気泡を発生させ、気泡によってインクに圧力をかけてインクを吐出するサーマルインクジェット方式など、各種方式を適用することができる。
【0029】
記録部20の各記録ヘッド22は、外部コンピュータから受信した画像データの情報に対応して、搬送ベルト31表面に載置された用紙Pに向かって記録ヘッド22からインクを吐出する。記録ヘッド22は、略矩形板状の記録ヘッド支持部21に支持され、記録ヘッド支持部21と共に本体2に固定されている(図2及び図3参照)。そして、搬送ベルト31の回転とともに、前述した所定のタイミングで各記録ヘッド22から各色のインクが順次吐出されることにより、搬送ベルト31表面上の用紙Pにはブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色のインクが重ね合わされたカラーインク画像が形成、印刷される。
【0030】
搬送ユニット30の用紙搬送方向下流には、乾燥装置7が配置されている。記録装置20から用紙Pに吐出されたインクは、乾燥装置7によって乾燥される。
【0031】
乾燥装置7の下流には、排出ローラ8、排出口9、及び排出トレイ10が備えられている。乾燥装置7で印刷されたインクの乾燥が済んだ用紙Pは、排出ローラ8によって左方に送られ、排出口9を通して、本体2の左側面外側に設けられた排出トレイ10において機外に排出される。
【0032】
また、記録ヘッド22の乾燥や目詰まりの防止に関して、記録部20の長期間停止後の印刷開始時は全ての記録ヘッド22から、また印刷動作の合間にはインク吐出量が規定値以下の記録ヘッド22のノズルから、ノズル内の粘度が高くなったインクを吐出するパージを実行して、次の印刷動作に備える。このとき、搬送ユニット30が下降した状態から、記録ヘッド22にキャップ(キャップ部)51を、微小距離をおいて近接させ、インクはキャップ51内に吐出される。
【0033】
一方、搬送ユニット30の下方には、搬送ユニット30の昇降装置40が備えられている。昇降装置40は、記録ヘッド22のインク吐出ノズル(図示せず)内のインクの乾燥やインク吐出ノズルの目詰まりを防止するため、記録ヘッド22にキャップ51(図2、図3参照)を装着したり、パージを実行したり、搬送ベルト31上で発生したジャム処理を行ったりするため、搬送ユニット30を昇降させる。昇降装置40は、用紙搬送方向上流側の偏心カム41(図1の右側)が反時計回り、下流側の偏心カム41(図1の左側)が時計回りに回転することにより、搬送ユニット30を下降させることができる(図6参照)。
【0034】
偏心カム41は、搬送ユニット30の正面側及び背面側に合計4個設けられており、その周面で搬送ユニット30の外底面に下方から当接する。また、偏心カム41は、図1に示すように、用紙幅方向に延びる軸部42を備えるとともに、回転軸線が偏在するカムで構成されている。偏心カム41は、軸部42の軸線を中心として、不図示のモータによって回転する。また、偏心カム41の周縁部には、周面から一部が外側に突出する形で、複数の回転部材であるベアリング43が設けられている。
【0035】
ベアリング43は、偏心カム41の回転軸線と平行な軸線を中心として回転自在であり、偏心カム41の先端側から回転軸線側に向かって、順次配置されている。通常の印刷状態において、プリンタ1は、図1に示すように、軸部42から最も離れたベアリング43が、搬送ユニット30の外底面に下方から当接し、搬送ユニット30を最高部に移動させている。
【0036】
この状態から、搬送ユニット30の用紙搬送方向上流側に位置する偏心カム41を正面から見て反時計方向に、下流側に位置する偏心カム41を時計方向に回転させると、軸部42から最も離れたベアリング43から軸部42に直近するベアリング43まで順に、搬送ユニット30の底面に当接し、これを支持すると、搬送ユニット30を降下させることができる。なお、かかる回転の際、隣り合う2個のベアリング43が、同時に搬送ユニット30の底面に当接する期間を有するようになっている。
【0037】
これにより、搬送ユニット30が降下し、後述するように記録ヘッド22からキャップ51を離脱させることができる。一方、搬送ユニット30を通常の印刷時の位置に戻すには、上記とは逆方向に偏心カム41を回転させることにより、図1に示す状態まで搬送ユニット30を上昇させ、印刷可能な状態にすることができる。また、搬送ユニット30を上昇させることにより、後述するように記録ヘッド22にキャップ51を装着することができる。
【0038】
続いて、このキャップ51と、ワイプブレード(拭き取り部)52とを備え、記録ヘッド22に対してキャップ51を着脱すると共に記録ヘッド22のインク吐出面を拭き取って記録ヘッド22の回復処理を行うキャップユニット(回復装置)50の概略構成とその動作について、図1に加えて、図2〜図4を用いて説明する。
【0039】
図2(a)は、記録ヘッドにキャップが装着されているときのプリンタの記録部及び搬送ユニット周辺を示す概略上面図であり、図2(b)は、概略側面断面図である。図3(a)は、記録ヘッドが印字可能な状態にあるプリンタの記録部及び搬送ユニット周辺を示す概略上面図であり、図3(b)は、概略側面断面図である。また、図4(a)は、キャップユニット及び水平駆動装置を示す概略上面図であり、図4(b)は、概略側面図である。図1と共通する部分には共通する符号を付して説明を省略する。
【0040】
図2及び図3に示すように、キャップユニット50は、記録部20の下方に備えられている。キャップユニット50は、キャップ51及びワイプブレード52の他、キャップベース53を備えており、水平駆動装置(駆動手段)60により水平に移動可能となっている。キャップユニット50は、搬送ユニット30の上方に支持され、昇降装置40により搬送ユニット30と共に昇降可能となっている。また、キャップベース53の底面と搬送ユニット30の最上面である用紙搬送面との間には、用紙Pが通過できるように所定の隙間が設けられている。
【0041】
キャップ51は、弾性材料から成り、用紙幅方向に配置された記録ヘッド22に対応して、後述する支持部材53a上に各色のヘッド22に対応して配置されている。キャップ51は、記録ヘッド22の底面に設けられたインク吐出面が外気に触れないようにカバーできる大きさをなし、上側に開放部を有し、下方に向かう凹部を有する蓋状部材である。
【0042】
キャップ51は、下方から、記録ヘッド22をカバーしながら、記録ヘッド22の底面に装着される。また、キャップ51の底面には、インク排出口(不図示)が設けられており、パージ実行時に記録ヘッド22から吐き出されたインクをキャップ51外に排出することができるようになっている。
【0043】
ワイプブレード52は、弾性材料から成り、支持部材53a上においてキャップ51の用紙搬送方向上流側(図2及び図3の右側)近傍にキャップ51に沿って配置されている。ワイプブレード52は、支持部材53aに対してキャップ51よりも上方に高く形成され、後述するようにキャップユニット50が用紙搬送方向に移動することにより、記録ヘッド22のインク吐出面を拭き取ることができるようになっている。
【0044】
図4に示すように、キャップベース53は、キャップ51の長手方向(用紙幅方向)に沿って配置され、キャップ51を支持する支持部材53aと、用紙搬送方向に沿って配置され、支持部材53aを長手方向両端部側から挟持して連結する連結部材53bと、を備えている。これにより、キャップ51及びワイプブレード52は、一体として移動できるようになっている。
【0045】
キャップユニット50を用紙搬送方向に沿って水平移動させるための水平駆動装置60は、用紙幅方向(図4の上下方向)にキャプベース53を挟み且つキャップベース53よりも用紙搬送方向(図4の左右方向)上流側に配置された一対の駆動プーリ61と、下流側に配置された一対の従動プーリ62と、駆動プーリ61及び従動プーリ62に張架されると共に用紙搬送方向に沿って配置された一対の駆動用ベルト63と、駆動プーリ61を回転駆動する駆動モータ64と、を備えている。
【0046】
2つの駆動プーリ61は、用紙幅方向に配置され駆動モータ64と連結された駆動用シャフト65に軸支されており、2つの従動プーリは、用紙幅方向に配置された従動用シャフト66に軸支されている。また、駆動モータ64は、正逆回転可能となっている。そして、各駆動用ベルト63に直近するキャップベース53の連結部材53bにおける用紙搬送方向両端部は、固定部材67を介して、駆動用ベルト63に固定されている。
【0047】
このように、キャップユニット50は水平駆動装置60に支持されている。なお、駆動用シャフト65及び従動用シャフト66は、搬送ユニット30の用紙搬送方向両端側に設けられた不図示の外側フレームに回転自在に支持されている。詳述すると、上記外側フレームは搬送ユニット30の用紙搬送面よりも上側まで延出されており、上記外側フレームの用紙搬送面よりも上側の適所に、駆動用シャフト65及び従動用シャフト66が回転自在に支持されている。つまり、水平駆動装置60は搬送ユニット30に支持されている。このように、キャップユニット50が水平駆動装置60に支持されることにより、キャップユニット50も搬送ユニット30に支持される。
【0048】
これにより、駆動モータ64が図4(b)の時計回りに回転すると、駆動用ベルト63が時計回りに回転し、これにより、キャップベース53は、用紙搬送方向下流側(図の左側)に水平移動することができる。一方、駆動モータ64が図4(b)の反時計回りに回転すると、駆動用ベルト63が反時計回りに回転し、これにより、キャップユニット53は、用紙搬送方向上流側(図の右側)に水平移動することができる。
【0049】
そして、記録ヘッド22にキャップ51が装着されるときには、キャップユニット50は、記録ヘッド22の下方にキャップ51が配置されキャップ51を着脱可能な着脱位置に水平移動する(図2、図5及び図6参照)。一方、記録ヘッド22から用紙Pにインクが吐出される印字時には、キャップユニット50は、キャップ51及びワイプブレード52が記録ヘッド22の用紙Pに対するインクの吐出を妨げない退避位置に水平移動する(図3、図7及び図8参照)。
【0050】
ここでは、退避位置は、キャップ51が、対応する記録ヘッド22と該記録ヘッド22の用紙搬送方向下流側直近の記録ヘッド22との間に配置される位置に設けられている。すなわち、退避位置において、記録ヘッド22Kに対応するキャップ51は記録ヘッド22Kと記録ヘッド22Cとの間、記録ヘッド22Cに対応するキャップ51は記録ヘッド22Cと記録ヘッド22Mとの間、記録ヘッド22Mに対応するキャップ51は記録ヘッド22Mと記録ヘッド22Yとの間に配置されている(図3参照)。
【0051】
また、用紙搬送方向において最も下流側の記録ヘッド22Yに対応するキャップ51は、キャップユニット50の移動に対応して、記録ヘッド22Yの下流側に配置されている(図3参照)。このように、キャップユニット50の退避位置を、キャップ51が記録ヘッド22の間に配置される位置とすることにより、退避位置と着脱位置との間の移動距離を短くすることができ、作業時間を短縮することができる。
【0052】
また、パージ実行時には、キャップユニット50が退避位置において昇降装置40により下降した後、水平駆動装置60により着脱位置まで移動することによって、若しくは、キャップユニット50が着脱位置において昇降装置40により下降することによって、パージの実行が可能となる(図6参照)。また、記録ヘッド22の回復処理を行うときには、キャップユニット50が昇降装置40により下降した状態から、水平駆動装置60により着脱位置と退避位置との間を移動することにより(図6及び図7参照)、ワイプブレード52が用紙搬送方向に移動しながら対応する記録ヘッド22のインク吐出面を拭き取ることができる。
【0053】
次に、キャップユニット50の移動動作について説明する。図5〜図8は、キャップユニットの動作を示す記録部及びキャップユニット周辺を示す概略側面断面図であって、図5は、着脱位置において記録ヘッドにキャップが装着されているときの図であり、図6は、着脱位置においてキャップユニットが下方に移動したときの図であり、図7は、キャップユニットが着脱位置から退避位置に移動したときの図であり、図8は、記録ヘッドが印字可能なときの図である。図1〜図4と共通する部分には共通する符号を付して説明を省略する。
【0054】
図5に示すように着脱位置において記録ヘッド22にキャップ51が装着された状態から、昇降装置40(図1参照)により、図6に示すように搬送ユニット30と共にキャップユニット50を下降させ、キャップ51を記録ヘッド22の下方に移動させてパージを実行する。この位置では、ワイプブレード52は、対応する記録ヘッド22の用紙搬送方向上流側に配置され、且つワイプブレード52の先端は、記録ヘッド22の底面であるインク吐出面よりも若干上方に位置している。
【0055】
パージ実行後、水平駆動装置60(図4参照)により、図6に示す着脱位置から、図7に示すようにキャップユニット50を用紙搬送方向下流側(図の矢印方向)の退避位置に移動させる。このとき、キャップユニット50の移動に伴って、ワイプブレード52が用紙搬送方向下流側に移動しながら記録ヘッド22のインク吐出面を拭き取ることができる。前述したように、ワイプブレード52の先端は、記録ヘッド22の底面のインク吐出面よりも若干上方に位置しているので、ワイプブレード52は撓んだ状態でインク吐出面に当接することになる。
【0056】
そして、キャップユニット50が退避位置に配置された状態で、昇降装置40(図1参照)により、図8に示すように搬送ユニット30と共にキャップユニット50を上昇させると、記録ヘッド22が搬送ユニット30の最上面である用紙搬送面と所定間隔を隔てて対向し、搬送された用紙P(図1参照)にインクを吐出して印字を行うことが可能となる。
【0057】
一方、印字終了後には、上記とは逆に、図8に示す退避位置において昇降装置40により搬送ユニット30と共にキャップユニット50を下降させる(図7参照)。この退避位置からキャップユニット50を用紙搬送方向上流側の着脱位置まで移動させると(図6参照)、ワイプブレード52が各記録ヘッド22のインク吐出面を用紙搬送方向下流側から上流側に移動しながら拭き取ることができる。そして、図6に示す着脱位置において昇降装置40により搬送ユニット30と共にキャップユニット50を上昇させると、記録ヘッド22にキャップ51を装着することができる(図5参照)。
【0058】
上記した通り、キャップユニット50が用紙搬送方向に沿って移動することにより、ワイプブレード52が用紙搬送方向に移動しながら記録ヘッド22のインク吐出面を拭き取ることによって、拭き取り距離が短くなるため、拭き取り時間の短縮を図ることができる。また、ワイプブレード52が記録ヘッド22に対して用紙搬送方向に拭き取るため、拭き取り後の記録ヘッド22のインク吐出方向が用紙搬送方向に対して傾斜する等、用紙搬送方向に対して直交する方向の成分を持つことを抑制することができる。これにより、画像にインクが規定位置に着弾しないことによる縦筋が形成画像に出難くなるため、記録ヘッド22の拭き取りによる画質低下を防止することができる。
【0059】
また、本実施形態では、キャップユニット50を、用紙搬送方向に沿って着脱位置と退避位置とに移動させる水平駆動装置60を設け、該水平駆動装置60が、キャップユニット50を用紙搬送方向に移動させてワイプブレード52が記録ヘッド22のインク吐出面を拭き取ることによって、拭き取り動作専用の駆動源を別途設ける必要がなくなるため、部材点数の増加や構成の複雑化を防止できる。しかし、ワイプブレード52の拭き取り動作のために、着脱位置及び退避位置への移動動作のための駆動源とは別途駆動源を設けることもできる。
【0060】
また、本実施形態では、キャップユニット50が着脱位置と退避位置との間を移動することにより、ワイプブレード52が記録ヘッド22のインク吐出面を拭き取ることとしたため、キャップユニット50がキャップ51着脱及び印字のための移動動作を行うだけで、記録ヘッド22のインク吐出面の拭き取りも行うことができる。これにより、キャップユニット50の移動距離をより短くすることができる。
【0061】
また、本実施形態では、記録ヘッド22を複数設け、キャップユニット50の退避位置を、キャップ51が記録ヘッド22の間に配置される位置に設けたため、キャップユニット50の着脱位置と退避位置との間の移動距離を短くでき、作業時間をより短縮することができる。しかし、退避位置は、本実施形態に特に限定されるものではなく、その他例えば、記録ヘッド支持部21に対して用紙搬送方向上流側や下流側とすることもできる。
【0062】
その他、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、記録ヘッド22のノズルの個数やノズル間隔等は装置の仕様に応じて適宜設定することができる。また、記録ヘッド22の数量も特に限定されるものではなく、例えば1つ配置することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、インクジェット記録装置において、回復装置は、記録媒体の搬送方向に沿って移動可能であり、回復装置が記録媒体の搬送方向に沿って移動することにより、拭き取り部が記録媒体の搬送方向に沿って移動しながらインク吐出面を拭き取るものである。
【0064】
これにより、拭き取り時間の短縮や画質低下を防止することができるため、作業が短時間化及び簡素化された印字の実行が可能となる。また、回復装置を、記録媒体の搬送方向に沿って記録ヘッドに対してキャップ部を着脱可能な着脱位置と、キャップ部が記録媒体への印字時に退避する退避位置と、に移動させる駆動手段を設け、該駆動手段が回復装置を記録媒体の搬送方向に移動させて拭き取り部が記録ヘッドのインク吐出面を拭き取ることによって、部材点数の増加や構成の複雑化をより防止できるため、作業がより短時間化及び簡素化された印字の実行が可能となる。
【0065】
また、回復装置が着脱位置と退避位置との間を移動することにより、拭き取り部がインク吐出面を拭き取ることによって、回復装置の移動距離をより短くすることができるため、より作業の効率化を図ることができる。また、記録ヘッドを複数設け、退避位置を、キャップ部が記録ヘッドの間に配置される位置に設けることによって、作業時間をより短縮することができると共に、駆動手段の大型化及び装置本体の大型化を防止することもできる。
【符号の説明】
【0066】
1 プリンタ(インクジェット記録装置)
2 本体
20 記録部
22 記録ヘッド
30 搬送ユニット
31 搬送ベルト
40 昇降装置
50 キャップユニット(回復装置)
51 キャップ(キャップ部)
52 ワイプブレード(拭き取り部)
53 キャップベース
60 水平駆動装置(駆動手段)
61 駆動プーリ
62 従動プーリ
63 駆動用ベルト
64 駆動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の搬送方向とは垂直方向に沿って配置され、記録媒体上にインクを吐出する記録ヘッドと、前記記録ヘッドのインク吐出面を覆うキャップ部及び前記インク吐出面を拭き取り可能な拭き取り部を有し、前記記録ヘッドの回復処理を実行可能な回復装置と、を備えたインクジェット記録装置において、
前記回復装置は、前記記録媒体の搬送方向に沿って移動可能であり、前記回復装置が前記記録媒体の搬送方向に沿って移動することにより、前記拭き取り部が前記記録媒体の搬送方向に沿って移動しながら前記インク吐出面を拭き取ることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記回復装置を、前記記録媒体の搬送方向に沿って前記記録ヘッドに対して前記キャップ部を着脱可能な着脱位置と、前記キャップ部が前記記録ヘッドの記録媒体への印字時に退避する退避位置と、に移動させる駆動手段が設けられており、該駆動手段が前記回復装置を前記記録媒体の搬送方向に移動させることにより、前記拭き取り部が前記インク吐出面を拭き取ることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記回復装置が前記着脱位置と前記退避位置との間を移動することにより、前記拭き取り部が前記インク吐出面を拭き取ることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記記録ヘッドが複数設けられ、前記退避位置は、前記キャップ部が前記記録ヘッドの間に配置される位置に設けられたことを特徴とする請求項2または3に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−260340(P2010−260340A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280056(P2009−280056)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】