説明

インクジェット記録装置

【課題】圧力チャンバーを用いることで溶剤用ポンプを削減して、さらには設置スペースを小さく圧力チャンバーを配置することで、従来よりも大幅に小型化した循環ユニットおよびインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】インクジェット記録装置において、内部にインクが流れる流路が形成されたマニホールド板303にポンプ23,50、電磁弁、配管接続口を搭載したインク循環ユニット301と、内部に溶剤が流れる流路が形成されたマニホールド板304に電磁弁と配管接続口を搭載した溶剤循環ユニット302を有し、前記インク循環ユニットと前記溶剤循環ユニットは膜状の弾性体を介して密接して固定されて一体の循環ユニット300を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置のインク、溶剤循環経路を構成する流路および流体制御部品をマニホールド板上に一体的に配置した循環ユニットの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、印字対象物の生産ラインに据え付けられるが、設置スペースが限られた場合が多く装置の小型化が求められてきた。
【0003】
インクジェット記録装置の内部にはインクや溶剤などの液体の流れを制御するポンプ、電磁弁などの流体制御部品を多数使用している。従来、各流体制御機器間は配管チューブで連結していた。その後、各流体制御機器間を連結する流路を内部に形成したマニホールド板上に流体制御部品を搭載して循環ユニットを構成する技術が一般的になってきた。
【0004】
複数の電磁弁だけをマニホールド板上に搭載した循環ユニットや、電磁弁だけでなくポンプや、減圧弁、フィルタ、容器なども搭載した循環ユニットが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
その後、インク圧力を溶剤の圧力に変換する圧力チャンバーを設けることで溶剤用のポンプを削減し更なる装置の小型化が進められてきた(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−146020号公報
【特許文献2】特願2008−238182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
各流体制御機器間を連結する流路を内部に形成したマニホールド板上に流体制御部品を搭載して循環ユニットを構成することにより配管チューブ設置スペースを削減し装置の小型化を図ってきたが、更なる装置の小型化のためには循環ユニットに搭載する流体制御部品を削減する必要がでてきた。
【0008】
そこでインク圧力を溶剤の圧力に変換する圧力チャンバーを設けることで溶剤用のポンプを削減することができるようになったが、追加された圧力チャンバーの設置スペースを確保する必要があったため省スペース化には結びついていない。圧力チャンバーを循環ユニット外に設置して配管チューブで接続しては、圧力チャンバーおよび配管チューブの設置スペースが必要となり省スペース化はできない。
【0009】
また循環ユニット上に圧力チャンバーを配管チューブなしで直接設置しても圧力チャンバーにはインク室の1次側、2次側、および溶剤室1次側、2次側の4つの入出口があるため、マニホールド板との接続部のシール部が4ヶ所追加されるため従来よりも液漏れのポテンシャルを増加するだけでなく、固定のための部品も追加となるため構造も複雑化してしまう。更には圧力チャンバー自身の設置スペースがマニホールド板上に追加で必要となるため、有効な省スペース化ができなかった。
【0010】
本発明の目的は、圧力チャンバーを用いることで溶剤用ポンプを削減して、設置スペースを小さく圧力チャンバーを配置することで、従来よりも大幅に小型化した循環ユニットおよびインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、例えば、インクを保持するインク容器と、前記インク容器内のインクを加圧してノズルから噴出する加圧手段と、印字に使用しないインク粒子を補足するガターと、前記ガターで捕捉されたインクを前記インク容器に回収する回収手段と、前記ノズルの洗浄やインクの希釈に使用される溶剤を保持する溶剤容器と、前記インク容器と前記ノズルへ溶剤を供給する手段と、を備えるインクジェット記録装置において、内部にインクが流れる流路が形成されたマニホールド板にポンプ、電磁弁、配管接続口を搭載したインク循環ユニットと、内部に溶剤が流れる流路が形成されたマニホールド板に電磁弁と配管接続口を搭載した溶剤循環ユニットを有し、前記インク循環ユニットと前記溶剤循環ユニットは膜状の弾性体を介して密接して固定されて一体の循環ユニットを構成しているとの構成をとる。
【発明の効果】
【0012】
本発明による構成をとることで循環ユニット上に設置スペースを増やすことなく圧力チャンバーを追加でき、従来溶剤用ポンプを設置していた空間スペースを削減することで、更に小型化したインクジェット記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】インクジェット記録装置の本体および印字ヘッドの斜視図である。
【図2】インクジェット記録装置の使用状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施例を示すインクジェット記録装置の経路構成図である。
【図4】インクジェット記録装置の基本動作を示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施例を示すインクジェット記録装置のフィルタ構造の正面図である。
【図6】本発明の一実施例を示すインクジェット記録装置の循環ユニット構造の斜視図である。
【図7】本発明の一実施例を示すインクジェット記録装置の循環ユニット構造の断面図である。
【図8】本発明の一実施例を示すインクジェット記録装置の循環ユニットを構成するマニホールド板斜視図である。
【図9】本発明の一実施例を示すインクジェット記録装置の循環ユニットを構成するマニホールド板分解斜視図である。
【図10】本発明の一実施例を示すインクジェット記録装置の圧力チャンバーダイヤフラム部の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0014】
以下において、本実施例につき図示例を用いて説明を行う。なお、本発明は図示例に限定されるものではない。
【0015】
図1は本発明の本実施例にかかるインクジェット記録装100を示す全体図である。インクジェット記録装置100には、外部には操作表示部3が備えられた本体1と印字ヘッド2が備えられており、本体1と印字ヘッド2は導管4で接続されている。
【0016】
図2はインクジェット記録装置100の実使用状態の一例を示すものである。インクジェット記録装置100は、例えば、食品や飲料などが生産される工場内の生産ラインに据え付けられ、本体1は使用者が操作できる位置に設置され、印字ヘッド2はベルトコンベア5などの生産ライン上を搬送される印字対象物6に近接できる位置に設置される。
【0017】
ベルトコンベア5などの生産ライン上には搬送速度に係わらず同じ幅で印字するために、搬送速度に応じた信号をインクジェット記録装置100に出力するエンコーダ7や、印字対象物6を検出してインクジェット記録装置100に印字を指示する信号を出力する印字センサ8が設置されていて、それぞれは本体1内の図示しない制御部200に接続されている。
【0018】
エンコーダ7や印字センサ8からの信号に応じて制御部200がノズル9から吐出されるインク粒子10への帯電量や帯電タイミングを制御し、印字対象物6が印字ヘッド2近傍を通過する間に帯電、偏向されたインク粒子10を印字対象物6へ付着させて印字を行うようになっている。
【0019】
図3は、インクジェット記録装置100の全体的な経路構成を示す図である。本体1には、循環するインクを保持する主インク容器20が備えられており、主インク容器20には、主インク容器20内の液体が内部に保持されるのに適正な量であることを意味する基準液面レベルに達しているか否かを検知する液面センサ21が備えられている。主インク容器20には経路101が接続されていて電磁弁22により開閉される。通常は経路101を通して供給ポンプ23がインクを吸引するが、インクの粘度を計測するための落下式粘度計である粘度計測器24を配置したバイパス経路102を設けて、インク粘度測定を実施する時のみ供給ポンプ23は前記経路102からインクを吸引し、測定対象であるインクをリフレッシュさせる。
【0020】
粘度計測器24は経路102を介して経路の開閉を行う電磁弁25に接続されており、電磁弁25の2次側は経路101を介してインクの吸引、圧送に供されるポンプ23に接続されている。そして、ポンプ23は経路103を介してダイヤフラム26を介してインク圧力により溶剤を加圧するためのインク室27に接続されている。供給ポンプ23により加圧されたインクの圧力がダイヤフラム26を介して溶剤室62内の溶剤を加圧することで印字ヘッド2に溶剤を供給することができる。そしてインク室27は経路104を介してインク中に混入している異物を除去するインクフィルタ28に接続されている。
【0021】
インクフィルタ28は、経路105を介してポンプ23から圧送されたインクを印字するために適正な圧力に調整する減圧弁29に接続されており、減圧弁29は導管4内をとおるインク供給経路106を介して印字ヘッド2内に備えられた3ポート電磁弁30の1次側に接続されている。3ポート電磁弁30の2次側は経路107を介してインクを吐出する吐出口を供えたノズル9に接続されている。3ポート電磁弁30は1次側に2ポート、2次側に1ポートを有し、2次側ポートと連通する1次側ポートを選択的に切り替える構造となっており、インク供給経路106がノーマルクローズのポートへ、溶剤供給経路121がノーマルオープンのポートへ接続されている。
【0022】
3ポート電磁弁30の2次側経路107にはノズル9手前で分岐する吸引流路112が接続されている。吸引流路112は導管4内を通りインクの圧力を測定する圧力計40を経由して電磁弁41に接続される。電磁弁41の2次側は回収ポンプ50に接続され、吸引経路112を使用してインクの充填やノズル9の噴出口が詰まった際に吸引動作を行う。
【0023】
ノズル9のインク吐出方向には、ノズル9から吐出されたインク粒子10に印字する文字情報に応じた電荷量を粒子に帯電させる帯電電極11が配置されている。帯電電極11により帯電させられたインク粒子10の飛翔方向には、帯電されたインク粒子10を偏向させる電界を発生させる偏向電極12が配置されている。
【0024】
偏向電極12のインク飛翔方向側には、印字に使用されない帯電、偏向されずに直線的に飛翔するインク粒子10を捕捉するガター14が配置されている。
【0025】
ガター14は、導管4内をとおる回収経路108を介して本体1内に配置されているインク中に混入している異物を除去する回収フィルタ51と接続されており、回収フィルタ51は、経路109を介して回収経路を開閉する電磁弁15に接続され、経路110を介してガター14により補足されたインク粒子10を吸引する回収ポンプ50と接続されている。そして、回収ポンプ50は、経路111を介して吸引したインクを主インク容器20に送るようになっている。
【0026】
また、本体1には、停止時に行うノズル9の洗浄及びインクの粘度を調整するための溶剤を保持する溶剤容器60が備えられており、溶剤容器60は、溶剤経路の異物を除去する溶剤フィルタ61が配置された経路120を介し溶剤の逆流を防止するチェックバルブ62を経由して溶剤の吸引、圧送を行う溶剤室63に接続されている。溶剤室63は経路121を介して電磁弁64に接続され、電磁弁64の2次側は導管4内を通る溶剤供給経路122を介して3ポート電磁弁の1次側ポートに接続されている。また、溶剤容器60から溶剤が吸引される経路120は、経路123を介して電磁弁65に接続されており、電磁弁65は、経路124を介して回収ポンプ50に接続されている。
【0027】
さらに、本体1には、補充用のインクを保持する補助インク容器80が備えられており、補助インク容器80は、経路130を介して経路の開閉を行う電磁弁81に接続されている。そして、電磁弁81は経路131を介して供給ポンプ23に接続されている。
【0028】
ここで、インクジェット記録装置100の動作原理について説明する。なお、図4に示すインクジェット記録装置100は、図1に示すインクジェット記録装置100と同一のものであるが、動作原理を説明するのに必要な部分のみを挙げて説明するものとする。
【0029】
図4に示すように、インク容器20内のインクはポンプ23に吸引、加圧されてインク柱17となってノズル9から吐出される。ノズル9には、電歪素子18が備えられており、インクに所定の周波数で振動を加えてノズル9から吐出されるインク柱17を粒子化するようになっている。これにより生成されるインク粒子10の数は,電歪素子18に印加する励振電圧の周波数により決定され、その周波数と同数となる。インク粒子10は、印字情報に対応した大きさの電圧を帯電電極11にて印加することで電荷を与えられるようになっている。
【0030】
帯電電極11で帯電させられたインク粒子10は、偏向電極12間の電界中を飛翔している間、帯電量に比例した力を受けて偏向し、印字対象物6へ向かって飛翔して着弾する。その際、インク粒子10は帯電量に応じて偏向方向の着弾位置は変化し、さらに偏向方向と直行する方向に生産ラインが印字対象物6を移動させることで、偏向方向と直行した方向にも粒子を着弾させることが可能となり、複数の着弾粒子によって文字を構成することとなる。
【0031】
印字に使用しなかったインク粒子10は偏向電極12間を直線的に飛翔して、ガター14により補足された後に回収経路108を経由して、主インク容器20に回収されるようになっている。
【0032】
次に、図5にインクジェット記録装置100の機能ブロック図を示す。インクジェット記録装置100には、例えばMPUを備える制御部200が備えられており、制御部200はバスライン201を介して、操作表示部3、ノズル9、帯電電極11、偏向電極12、エンコーダ7、印字センサ8、粘度測定器15、電磁弁22、25、41、63、64、81、ポンプ23,50、3ポート電磁弁30、液面センサ38、圧力計40及び記録部202等の各部を制御するようになっている。
【0033】
記録部202には、インクジェット記録装置100を制御するためのプログラムが格納されており、制御部200はかかるプログラムに基づいてインクジェット記録装置100を構成する各部位を制御するようになっている。
【0034】
以下において、本実施例にかかる発明の作用について図3、図6〜図10を用いて説明する。図6および図7はインクジェット記録装置の循環ユニット300の全体構造を示している。循環ユニット300は、インクを制御するインク循環ユニット301と溶剤を制御する溶剤循環ユニット302から構成され、インク循環ユニット301と溶剤循環ユニット302は密接して固定されて一体の循環ユニット300を構成している。インク循環ユニット301は内部にインクが流れる流路が形成された第1マニホールド板303のひとつの面上に、ノズル9にインクを供給する供給ポンプ23と、ガター14からインクを回収する回収ポンプ50を配置し、供給ポンプ23と回収ポンプ50を駆動するモーター310、カム311を有する駆動系が設置されている。そして第1マニホールド板303のポンプ設置面と対向する面に圧力チャンバー320のインク室27を設けている。
【0035】
また、第1マニホールド板303のポンプ設置面と圧力チャンバー320設置面と直行し且つ直立する面には電磁弁15、22、25、41、70、81および粘度計24を設置し、各配管継手330を設置した第1マニホールド板303上面には圧力センサ40を設置する。
【0036】
図3に示すように、インクメイン容器20から配管チューブを通って吸引されたインクは、インク循環ユニット301上面に配置された配管継手330に接続されインク循環ユニット330内部へ吸引される。インク循環ユニット301に入ったインクは第1マニホールド板303内に形成された経路101上に配置された電磁弁22を経由して経路131を通り、供給ポンプ25に吸引される。一方、経路101から分岐した経路102上にはインク粘度を測定する粘度計24を配置し、粘度計24の2次側は経路131に合流して供給ポンプ25の1次側へ連結される。
【0037】
供給ポンプ25の2次側は圧力チャンバー320インク室27の1次側と第1マニホールド板303内を横断する経路132を介して連結する。圧力チャンバー320のインク室27の2次側は経路104を経由してインク循環ユニット301上面に配置された配管継手330により配管チューブに接続されインクフィルタ28へ送られる。
【0038】
図3に示すように、ガター14から回収されたインクは配管チューブを通り、図6、図7に示す、インク循環ユニット301上面に配置された配管継手330を介してインク循環ユニット301内部へ吸引される。インク循環ユニット301に入ったインクは第1マニホールド板303内の経路109を通り、回収流路の開閉を行う電磁弁15の1次側に接続される。電磁弁15の2次側は第1マニホールド板303内を横断する経路110を経由して回収ポンプ50に吸引される。回収ポンプ50からは吐出されたインクは、経路111とインク循環ユニット301上面に配置された配管継手330により配管チューブに接続されインクメイン容器20へ送られる。
【0039】
図3に示すように、経路132は供給経路の圧力を開放するための電磁弁70をその経路上に有する経路133に分岐している。電磁弁70の2次側は経路110に連結されていて、電磁弁70を開放すると供給経路全体の圧力を経路110へ逃がすようになっている。
【0040】
一方、図7に示すように、溶剤循環ユニット302には、内部に溶剤が流れる流路が形成された第2マニホールド板304のひとつの面上に圧力チャンバー320の溶剤室63が設けられている。また、第2マニホールド板304の圧力チャンバー320設置面と直行し且つ直立する面にはノズル9を洗浄する溶剤をノズル9側に送出する制御を行う電磁弁64、およびインクメイン容器20内インクを希釈するためインクメイン容器20への溶剤補給を制御する電磁弁65が設置されている。
【0041】
図3に示すように、溶剤は溶剤容器60から配管チューブを通り、図7に示す溶剤循環ユニット302上面に配置された配管継手330を介して溶剤循環ユニット302内部へ吸引される。溶剤循環ユニット302に入ったインクは第2マニホールド板304内の経路120を通り、溶剤の逆流防止のためのチェック弁62を経由して圧力チャンバー320溶剤室63の1次側に連結される。圧力チャンバー320溶剤室63の2次側は経路121を通り電磁弁64の1次側に接続され、電磁弁64の2次側は経路122を通り、循環ユニット300上面に配置された配管継手330により配管チューブに接続され印字ヘッド2方面に送られる。
【0042】
経路120から分岐した経路123は電磁弁65の1次側に接続され、電磁弁65の2次側はインク循環ユニット301と一体的に固定された場合に、インク循環ユニット301内の経路110に接続される。電磁弁65を開放すると、溶剤は経路110を経由して回収ポンプ50により吸引されインクメイン容器20に補給される。インク循環ユニット301の経路110端と溶剤循環ユニット302の電磁弁65の2次側流路はOリング400を介して連結される。
【0043】
圧力チャンバー320のインク室27および溶剤室63は第1マニホールド板303および第2マニホールド板304に一体的にフランジ部340を設けて、フランジ部340外周には第1マニホールド板303と第2マニホールド板304をねじ341で固定するための固定部342が全周で4ヶ所設けられている。
【0044】
図8に示すように、第1マニホールド303のフランジ340内部には、1次側経路132と2次側経路104を有するインク室27が設けられ、第2マニホールド304のフランジ340内部には、図3に示す溶剤室63の1次側経路120と2次側経路121を有する溶剤室63が設けられている。
【0045】
図7、図10に示すように、インク循環ユニット301に形成されたインク室27と、溶剤循環ユニット302に形成された溶剤室63は対向させて、ゴム製のダイヤフラム26介して密接した状態で固定する。ダイヤフラム26は中央に貫通孔350を有し、貫通孔350を貫通する突起部351を有したセンターディスク352と前記突起部351と勘合する穴353を有するバネザ354はダイヤフラム26を挟んでネジ355で固定する。
【0046】
この構造によりバネザ354およびセンターディスク352部は剛体となりインク室27および溶剤室63の空間を移動する。一方センターディスク352およびバネザ354の外周側はゴム製のダイヤフラム26となり、この部分が柔軟な膜となってセンターディスク352とバネザ354で固定された剛体部の変位を可能とする。
【0047】
図10に示すように、ダイヤフラム26外周にはインク室27および溶剤室63から循環ユニット300外部への液漏れを防止するためのビード部360が設けられている。また、図9に示すように第1マニホールド板303および第2マニホールド板304には前記ダイヤフラム26のビード部360が配置されるための溝部362が全周に設けられている。この部分は耐圧を強化することと、ダイヤフラム26が内側へ引き込まれることを防止することを目的とした構造である。
【0048】
図7、図9に示すように溶剤室63側には前記センターディスク352とバネザ354で固定された剛体部をインク室27側に変位させるよう圧縮バネ365を配置する。圧縮バネ365の片端は第2マニホールド304のチェック弁62設置部近傍に設けられた段差部367に位置し、他端はバネザ354に接している。
【0049】
ここで、P1=インク室圧力×ダイヤフラム受圧面積、P2=インク室圧力×ダイヤフラム受圧面積+圧縮ばね荷重、とすると、P1>P2の場合にはダイヤフラム26は溶剤室63側の体積を減らす方向に変位して、圧力チャンバー320は2次側に溶剤を押し流すことができる。一方P1<P2の場合にはダイヤフラム26は溶剤室63側の体積を増やす方向に変位して、溶剤容器60の溶剤を溶剤室63に吸引することができる。
【0050】
このような構成とすることで、圧力チャンバー320のインク室27および溶剤室63は循環ユニット320の内部流路を形成する第1マニホールド板303、および第2マニホールド板304に一体的に形成される。そのためインク室27および溶剤室63のハウジング部品および前記ハウジング部品とマニホールド板間のシール部品も不要となる。さらにはマニホールド上に圧力チャンバー320の設置スペースは不要となり、結果として溶剤ポンプを廃止して削減したスペースを使用せずに圧力チャンバー320を配置することが可能となり、循環ユニット320の小型化によるインクジェット記録装置の更なる小型化を実現することができる。
【符号の説明】
【0051】
1…本体部、2…印字ヘッド部、3…操作表示部、4…導管、5…ベルトコンベア、6…印字対象物、7…エンコーダ、8…印字センサ、9…ノズル、10…インク粒子、11…帯電電極、12…偏向電極、14…ガター、15…電磁弁、17…インク柱、18…電歪素子、20…主インク容器、21…液面検出センサ、22…電磁弁、23…ポンプ(インク供給用)、24…粘度測定器、25…電磁弁、20…溶剤容器、21…粘度測定器、22…電磁弁、23…電磁弁、24…電磁弁、25…ポンプ(インク供給用)、26…ダイヤフラム、27…インク室、28…フィルタ(供給用)、29…減圧弁、30…3ポート電磁弁、40…圧力計、41…電磁弁、50…ポンプ(インク回収用)、51…フィルタ(回収用)、60…溶剤容器、61…溶剤フィルタ、62…チェックバルブ、63…溶剤室、64…電磁弁、65…電磁弁、70…電磁弁、80…インク容器(補充用)、81…電磁弁、100・・・インクジェット記録装置、101〜112…経路、120〜124…経路、130〜133…経路、200・・・制御部、201・・・バスライン、202・・・記録部、300・・・循環ユニット、301・・・インク循環ユニット、302・・・溶剤循環ユニット、303・・・第1マニホールド板、304・・・第2マニホールド板、310・・・モーター、311・・・カム、320・・・圧力チャンバー、330・・・配管継手、340・・・フランジ部、350・・・貫通孔(ダイヤフラム)、351・・・突起部(センターディスク)、352・・・センターディスク、353・・・穴(バネザ)、354・・・バネザ、360・・・ビード部(ダイヤフラム)、362・・・溝部、365・・・圧縮バネ、367・・・段差部、400・・・Oリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを保持するインク容器と、
前記インク容器内のインクを加圧してノズルから噴出する加圧手段と、
印字に使用しないインク粒子を補足するガターと、
前記ガターで捕捉されたインクを前記インク容器に回収する回収手段と、
前記ノズルの洗浄やインクの希釈に使用される溶剤を保持する溶剤容器と、
前記インク容器と前記ノズルへ溶剤を供給する手段と、
を備えるインクジェット記録装置において、
内部にインクが流れる流路が形成されたマニホールド板にポンプ、電磁弁、配管接続口を搭載したインク循環ユニットと、内部に溶剤が流れる流路が形成されたマニホールド板に電磁弁と配管接続口を搭載した溶剤循環ユニットを有し、前記インク循環ユニットと前記溶剤循環ユニットは膜状の弾性体を介して密接して固定されて一体の循環ユニットを構成していることを特徴としたインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記インク容器と前記ノズルへ溶剤を供給する手段は、膜状の弾性体をインク圧力で加圧して、前記膜状の弾性体が溶剤を加圧することによって行われることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記インク循環ユニットのマニホールド板の前記溶剤循環ユニット密接面と対向する面にポンプを一体的に構成したことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記ポンプは、インクをノズルに供給するポンプと、印字に使用しないインク粒子を補足して前記インク容器に回収するポンプであることを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−73410(P2011−73410A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230157(P2009−230157)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】