説明

インクジェット記録装置

【課題】様々な環境条件下でもインク回収ユニット内の廃液吸収部材の吸収性能を長期に渡って維持させることができ、廃液を山積みに堆積させることなく、効率良くインク回収ユニット内に収納できるインクジェット記録装置の提供。
【解決手段】インクを記録媒体に吐出して画像を形成する記録ヘッド、及び該記録ヘッドのメンテナンスを目的とした画像形成に寄与しないインク排出先となるインク回収ユニット1を有するインクジェット記録装置において、前記インクが少なくとも水、着色剤及び水溶性有機溶剤を含有し、前記インク回収ユニット内に、前記インク中の水溶性有機溶剤よりも吸水性が高い水溶性有機溶剤を含有するインクジェット記録装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成に寄与しないインクの排出先となるインク回収ユニットを有するインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、記録ヘッドから吐出させたインクの液滴を普通紙やその他の記録媒体上に飛翔させて画像を形成する装置であり、高画質化、低価格化、高速化が進んだことにより急速に普及している。しかし、長期間の不使用などの要因でノズル内のインクが乾燥して固化することにより、ノズルが詰まってインクを吐出できない状態になることが知られている。そこでその不吐出状態に陥ることを未然に防止し、画像形成とは別に記録ヘッドから強制的にインクを排出させ、正常な吐出状態を維持する機構を備えている(ヘッド回復処理)。そのため、ヘッド回復処理により強制的に排出された画像形成に寄与しないインクである廃液を受け入れるインク回収ユニット(廃液収納容器、廃液タンクとも言う)を一般に備えている。
このようなインク回収ユニットとしては、特許文献1に記載されているように、容器本体を複数の部屋に分割して、それぞれに吸収部材を設けることで吸収部材の交換回数を減らすようにしたものがある。
また、特許文献2、3に記載されているように、インク回収ユニットをインクカートリッジと一体に設けることで、インクカートリッジの交換の度にインク回収ユニットも交換されるようにしたものもある。
さらに、インク回収ユニットが満タンになって溢れると装置内に悪影響を与えることになるため、一般にインク回収ユニットが廃液により満タンになったことを検出するためのインク回収ユニット満タン検出装置を備えるようにしている。
【0003】
従来のインクジェット記録装置においては、着色剤として水溶性染料を使用した水系インクが主に用いられてきた。しかしながら、染料インクは耐候性、耐水性に劣る欠点を有しており、近年水溶性染料に代わって顔料を使用する顔料インクの研究が目覚しく、最近では上市するに至っている。しかし、顔料を用いた水性顔料インクを備えたインクジェット記録装置では、インク回収ユニットへ排出される廃液が従来の染料インクの場合に比較して、廃液吸収部材に吸収され難くなっている。
さらに記録画像の高画質化といった背景から、使用するインクや記録方法等についても様々な提案がなされており、例えば、普通紙への記録で高画質を得る方法として、紙面上での着色剤の凝集を促進させることが行われている。しかし、それに伴い画像形成に寄与しない廃液の凝集性も高くなり、廃液吸収部材に吸収されず、凝集物が山積みに堆積し、廃液がインク回収ユニットに効率良く収納されないといった不具合が生じる。そこで凝集性の高い廃液でも効率的に廃液吸収部材に吸収させることが重要となっている。
特許文献4では、廃液吸収部材に親水化処理を施したものが、特許文献5では、保湿剤と塩基とを含む含浸液を、廃液吸収部材の廃インク液との接触表面に含むものが提案されているが、高温低湿環境のような過酷な環境下では、インクの吸収性を長期に渡って維持するのが困難であるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来の諸問題を解決し、様々な環境条件下でもインク回収ユニット内の廃液吸収部材の吸収性能を長期に渡って維持させることができ、廃液を山積みに堆積させることなく、効率良くインク回収ユニット内に収納できるインクジェット記録装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、次の1)〜4)の発明によって解決される。
1) インクを記録媒体に吐出して画像を形成する記録ヘッド、及び該記録ヘッドのメンテナンスを目的とした画像形成に寄与しないインク排出先となるインク回収ユニットを有するインクジェット記録装置において、前記インクが少なくとも水、着色剤及び水溶性有機溶剤を含有し、前記インク回収ユニット内に、前記インク中の水溶性有機溶剤よりも吸水性が高い水溶性有機溶剤を含有することを特徴とするインクジェット記録装置。
2) 前記インク中の水溶性有機溶剤の50重量%水溶液を30℃35%RHで24時間乾燥させた時の残存水分量が20重量%以下であり、かつ、前記インク回収ユニット内の水溶性有機溶剤の50重量%水溶液を同条件で乾燥させた時の残存水分量が20重量%以上であることを特徴とする1)記載のインクジェット記録装置。
3) 前記インク中の水溶性有機溶剤が、グリセリン、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールの中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする1)又は2)に記載のインクジェット記録装置。
4) 前記インク回収ユニット内の水溶性有機溶剤がトリメチルグリシンであることを特徴とする1)〜3)のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、インク回収ユニット内において、インクに使用する水溶性有機溶剤よりも吸水性が高い水溶性有機溶剤を使用することにより、通常ではインク及び廃インクが乾燥固化する環境条件下でも、インク回収ユニット内の水溶性有機溶剤の吸水能により、廃インクを山積みに堆積させることなく、効率良くインク回収ユニット内に収納することが可能なインクジェット記録装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のインク回収ユニットの一例を示す概略斜視図である。
【図2】インクカートリッジの一例のケース(外装)も含めた概略図である。
【図3】インクジェット記録装置の一例を示す斜視説明図である。
【図4】インクジェット記録装置の一例の全体構成を説明する概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
本発明について、まず使用する好ましいインク(インクジェット記録用インク)の実施形態を説明し、続いてインク回収ユニットの実施形態を説明する。
インクに要求される特性としては、高画質を達成するための色調、画像濃度、にじみ等、信頼性を達成するためのインク中の着色剤の溶解又は分散安定性、保存安定性、吐出安定性等、記録画像の保存性を確保するための耐水性、耐光性等、また高速化を達成するためのインクの速乾性等が挙げられる。
これらの要求特性を満足するために鋭意検討を行った結果、25℃における表面張力が20〜35mN/m、25℃における粘度が5〜20mPa・sであり、フッ素系界面活性剤を一種類以上含有し、着色剤などの固形分を合計5〜40重量%含有するインクであれば、25℃において、一般的なインクよりも高粘度で高固形分濃度でありながら、浸透性が高いインクが得られることを見出した。
【0009】
インクは水を液媒体として使用するが、インクの乾燥を防止するため(湿潤剤として)、及び分散安定性を向上するためなどの目的で、水溶性有機溶剤を含有させる。水溶性有機溶剤の例としては、以下のようなものが挙げられる。これらの水溶性有機溶剤は複数混合して使用してもよい。
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミイダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、γ−ブチロラクトン等である。
【0010】
上記水溶性有機溶剤に加えて他の湿潤剤を用いてもよく、そのような湿潤剤としては、糖を含有するものが好ましい。糖類の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類及び四糖類を含む)及び多糖類が挙げられ、好ましくはグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオースなどが挙げられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、α−シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。
また、これらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖(例えば、糖アルコール〔一般式HOCH(CHOH)nCHOH(n=2〜5の整数)〕、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ酸などが挙げられる。特に糖アルコールが好ましく、具体例としては、D−ソルビトール、ソルビタン、マルチトール、エリスリトール、ラクチトール、キシリトールなどが挙げられる。
【0011】
特に本発明においては、水溶性有機溶剤の50重量%水溶液を30℃35%RHで24時間乾燥させた時の残存水分量が20重量%以下の特性を持つものが好ましい。中でも、グリセリン、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールを用いると、保存安定性、吐出安定性及び紙面上での速乾性に優れたインクを作製することができる。これらの中ではグリセリンの残存水分量が最も多い。
上記乾燥条件下での残存水分量が20重量%を超える特性の水溶性有機溶剤でも、保存安定性、吐出安定性については効果があるが、紙面上での速乾性との両立は困難である。
湿潤剤の配合量はインク全体の10〜50重量%程度とする。インク中の湿潤剤総重量に対する、後述の着色剤と樹脂エマルジョンの総重量の比は0.5〜12.5が好ましく、より好ましくは1.0〜6.0、最も好ましくは2.0〜5.0の範囲である。この範囲にあるインクは、乾燥性や保存試験や信頼性試験が非常に良好である。
【0012】
インクには、着色剤として、疎水性染料、顔料等が用いられる。ここでいう疎水性染料とは水に不溶ないしは難溶性であり、かつ有機溶剤に可溶である染料を指し、例えば油溶性染料、分散染料を挙げることができ、これら疎水性染料をポリマー微粒子に含有させたポリマーエマルジョンとして使用できる。良好な吸着・封入性の点からは油溶性染料及び分散染料が好ましいが、得られる画像の耐光性の点からは顔料が好ましい。
なお、「疎水性染料をポリマー微粒子に含有させた」とは、ポリマー微粒子中に疎水性染料を封入した状態及びポリマー微粒子の表面に吸着させた状態の何れか又は双方を意味する。この場合、インクに配合される着色剤のすべてがポリマー微粒子に封入又は吸着されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、着色剤がエマルジョン中に分散していてもよい。着色剤としては、水不溶性又は水難溶性であって、上記ポリマー微粒子を形成するポリマーに吸着され得るものであれば特に制限はない。また、水不溶性又は水難溶性とは、20℃で水100重量部に対して、着色剤が0.1重量部以上溶解しないことをいい、溶解するとは、目視で水溶液表層又は下層に着色剤の分離や沈降が認められないことをいう。
【0013】
疎水性染料の例としては、以下に示すような油溶性染料や分散染料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
油溶性染料としては、C.I.ソルベントブラック、C.I.ソルベントイエロー、C.I.ソルベントレッド、C.I.ソルベントバイオレット、C.I.ソルベントブルー、C.I.ソルベントグリーン、C.I.ソルベントオレンジ等の各品番製品が挙げられ、オリエント化学社、BASF社等から市販されている。
また、分散染料としては、C.I.ディスパーズイエロー、C.I.ディスパーズオレンジ、C.I.ディスパーズレッド、C.I.ディスパーズバイオレット、C.I.ディスパーズブルー、C.I.ディスパーズグリーン等の各品番製品が挙げられる。
これらの中でも、イエローとしてC.I.ソルベントイエロー29及び30、シアンとしてC.I.ソルベントブルー70、マゼンタとしてC.I.ソルベントレッド18及び49、ブラックとしてC.I.ソルベントブラック3及び7、及びニグロシン系の黒色染料が好ましい。
【0014】
顔料としては有機顔料や無機顔料があり、有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ペリレン系、イソインドレノン系、アニリンブラック、アゾメチン系、ローダミンBレーキ顔料、カーボンブラック等が挙げられる。
無機顔料としては、酸化鉄、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、紺青、カドミウムレッド、クロムイエロー、金属粉が挙げられる。
【0015】
ブラック顔料インクに使用されるカーボンブラックとしては、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックで、一次粒径が、15〜40ミリミクロン、BET法による比表面積が、50〜300m/g、DBP吸油量が、40〜150ml/100g、揮発分が0.5〜10重量%、pH値が2〜9を有するものが好ましい。
その具体例としては、No.2300、No.900、MCF−88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B(以上、三菱化学社製)、Raven700、5750、5250、5000、3500、1255(以上、コロンビア社製)、Regal400R、330R、660R、MogulL、Monarch700、800、880、900、1000、1100、1300、Monarch1400(以上、キャボット社製)、カラーブラックFW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリンテックス35、U、V、140U、140V、スペシャルブラック6、5、4A、4(以上、デグッサ社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
カラー顔料の具体例としては、イエローインクに使用できる顔料として、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG)、2、3、12(ジスアゾイエローAAA)、13、14、16、17、20、23、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、73、74、75、81、83(ジスアゾイエローHR)、86、93、95、97、98、100、101、104、108、109、110、114、117、120、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0017】
また、マゼンタインクに使用できる顔料の例として、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、7、9、12、17、22(ブリリアントファーストスカーレット)、23、31、38、48:1〔パーマネントレッド2B(Ba)〕、48:2〔パーマネントレッド2B(Ca)〕、48:3〔パーマネントレッド2B(Sr)〕、48:4〔パーマネントレッド2B(Mn)〕、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81(ローダミン6Gレーキ)、83、88、92、97、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(ジメチルキナクリドン)、123、146、149、166、168、170、172、175、176、178、179、180、184、185、190、192、193、202、209、215、216、217、219、220、223、226、227、228、238、240、254、255、272等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0018】
また、シアンインクに使用できる顔料の例として、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15(銅フタロシアニンブルーR)、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルーG)、15:4、15:6(フタロシアニンブルーE)、16、17:1、22、56、60、63、64、バットブルー4、バットブルー60等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
また、中間色では、レッド、グリーン、ブルー用として、C.I.ピグメントレッド177、194、224、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、71、C.I.ピグメントバイオレット3、19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントグリーン7、36等が挙げられる。
【0019】
これらの顔料のうち、ブラック顔料としては、前記カーボンブラックが好ましく、pH6以下の酸性カーボンブラックが高濃度で特に好ましい。
カラー顔料としては、C.I.ピグメントイエロー13、17、55、74、93、97、98、110、128、139、147、150、151、154、155、180、185;C.I.ピグメントレッド122、202、209;C.I.ピグメントブルー15:3、15:4が特に好ましい。
【0020】
顔料の体積平均粒径は特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、10〜150nmが好ましく、20〜100nmがより好ましく、30〜80nmが更に好ましい。体積平均粒径が150nmを超えると、印写画像の彩度が低下するのみならずインク保存時の増粘凝集や印写時のノズルの詰まりが生じやすくなることがある。一方、体積平均粒径が10nm未満では、耐光性が低下するのみならず保存安定性も悪化する傾向がある。ここでいう体積平均粒径とは、例えば日機装社製のマイクロトラックUPA−150を使用し、測定サンプル中の顔料濃度が0.01重量%になるように純水で希釈したサンプルについて、粒子屈折率1.51、粒子密度1.4g/cmで、溶媒パラメーターとして純水のパラメーターを用いて、23℃で測定した50%体積平均粒径(D50)のことである。
インク中の顔料濃度は、2〜15重量%が好ましく、3〜12重量%がより好ましく、4〜10重量%が更に好ましい。顔料濃度が2重量%未満では、着色力が不十分なため画像の鮮やかさに劣る傾向があり、15重量%を超えるとインクの保存安定性が低下するのみならず、画像がくすむ傾向がある。
【0021】
本発明では、顔料表面に少なくとも一種の親水性基が直接又は他の原子団を介して結合しており、分散剤を使用することなく安定に分散させることができる顔料を用いることができる。このような表面に親水基を導入した顔料としては、イオン性を有するものが好ましく、アニオン性に帯電したものやカチオン性に帯電したものが好適である。
アニオン性親水性基としては、例えば、−COOM、−SOM、−POHM、−PO、−SONH、−SONHCOR(但し、式中のMは水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わし、Rは炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基を表わす。)等が挙げられる。これらの中でも特に、−COOM、−SOMが顔料表面に結合したものが好ましい。
アニオン性に帯電した顔料を得る方法としては、例えば顔料を次亜塩素酸ソーダで酸化処理する方法、スルホン化処理する方法、ジアゾニウム塩を反応させる方法が挙げられるが、これに限定されるわけではない。
カチオン性に帯電したカラー顔料表面に結合されている親水基としては、例えば第4級アンモニウム基を用いることができる。より好ましくは下記に挙げる第4級アンモニウム基(R)の少なくとも一つが、顔料表面に結合された顔料が用いられる。
前記RのRは疎水性基であり、炭素数が8〜16のアルキル基及びフェニル基等のアリール基からなる群から選ばれる一種又は二種以上であることが好ましく、分子中にアルキル基及びアリール基の両者を有することもできる。また、上記Rの対アニオンとしては、Cl、Br、I、CHOSO、COSOなどが挙げられる。
【0022】
また顔料は高分子分散剤や界面活性剤を用いて水性媒体に分散させることによりインク材料として用いることができる。このような顔料を分散させるための分散剤としては、通常の水溶性樹脂や水溶性界面活性剤を用いることができる。
水溶性樹脂の具体例としては、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体等から選ばれた少なくとも2種の単量体からなるブロック共重合体もしくはランダム共重合体、又はこれらの塩等が挙げられる。
これらの水溶性樹脂は、塩基を溶解させた水溶液に可溶なアルカリ可溶型樹脂であり、これらの中でも重量平均分子量3000〜20000のものが、インクに用いた場合に、分散液の低粘度化が可能であり、かつ分散も容易であるため特に好ましい。
【0023】
高分子分散剤と自己分散型顔料を同時に使うことは、適度なドット径を得るのに好ましい組み合わせである。その理由は明らかでないが、高分子分散剤を含有することにより記録媒体への浸透が抑制される一方で、高分子分散剤を含有することにより自己分散型顔料の凝集が抑えられるため、自己分散型顔料が横方向にスムーズに拡がることができ、その結果、広く薄くドットが拡がり、理想的なドットが形成できると考えられる。
【0024】
また、分散剤として使用できる水溶性界面活性剤としては、ノニオン性、アニオン性、両性界面活性剤などがあり、顔料種別あるいはインク処方に応じて適宜選択して用いる。
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−α−ナフチルエーテル、ポリオキシエチレン−β−ナフチルエーテル、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル、ポリオキシエチレンモノスチリルナフチルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルナフチルエーテルなどが挙げられる。
また、これらの界面活性剤のポリオキシエチレンの一部をポリオキシプロピレンに置き換えたポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体等の界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の芳香環を有する化合物をホルマリン等で縮合させた界面活性剤も使用できる。
ノニオン系界面活性剤のHLBは12〜19.5のものが好ましく、13〜19のものがより好ましい。HLBが12未満では界面活性剤の分散媒へのなじみが悪いため分散安定性が悪化する傾向があり、HLBが19.5を超えると界面活性剤が顔料に吸着しにくくなるため、やはり分散安定性が悪化する傾向がある。
【0025】
アニオン性界面活性剤としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルカルボン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、メラニンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、スルホコハク酸アルキル二塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、N−アシルアミノ酸塩、アシル化ペプチド、石鹸などが挙げられる。
【0026】
また、顔料は親水性基を有する樹脂によって被覆し、マイクロカプセル化することで、分散性を与えることもできる。
水不溶性の顔料を有機高分子類で被覆してマイクロカプセル化する方法としては、公知の種々の方法を用いることができる。このような方法としては化学的製法、物理的製法、物理化学的方法、機械的製法などがあり、具体的には次のような方法が挙げられる。
・界面重合法(2種のモノマー又は2種の反応物を、分散相と連続相に別々に溶解しておき、両者の界面において両物質を反応させて壁膜を形成させる方法)
・in−situ重合法(液体もしくは気体のモノマーと触媒、又は反応性の物質2種を連続相核粒子側のどちらか一方から供給して反応を起こさせ壁膜を形成させる方法)
・液中硬化被膜法(芯物質粒子を含む高分子溶液の滴を硬化剤などにより、液中で不溶化して壁膜を形成する方法)
・コアセルベーション(相分離)法〔芯物質粒子を分散している高分子分散液を、高分子濃度の高いコアセルベート(濃厚相)と希薄相に分離させ、壁膜を形成させる方法〕
・液中乾燥法(芯物質を壁膜物質の溶液に分散した液を調製し、この分散液の連続相が混和しない液中に分散液を入れて、複合エマルションとし、壁膜物質を溶解している媒質を徐々に除くことで壁膜を形成させる方法)
・融解分散冷却法(加熱すると液状に溶融し常温では固化する壁膜物質を利用し、この物質を加熱液化し、その中に芯物質粒子を分散し、それを微細な粒子にして冷却し壁膜を形成させる方法)
・気中懸濁被覆法(粉体の芯物質粒子を流動床によって気中に懸濁し、気流中に浮遊させながら、壁膜物質のコーティング液を噴霧混合させて、壁膜を形成させる方法)
・スプレードライング法(カプセル化原液を噴霧してこれを熱風と接触させ、揮発分を蒸発乾燥させ壁膜を形成させる方法)
・酸析法(アニオン性基を含有する有機高分子化合物類のアニオン性基の少なくとも一部を塩基性化合物で中和することで水に対する溶解性を付与し、着色剤と共に水性媒体中で混練した後、酸性化合物で中性又は酸性にし、有機化合物類を析出させて着色剤に固着させた後に中和し分散させる方法)
・転相乳化法(水に対して分散能を有するアニオン性有機高分子類と着色剤を含有する混合体を有機溶媒相とし、該有機溶媒相に水を投入するか又は水に前記有機溶媒相を投入する方法)
【0027】
マイクロカプセルの壁膜物質を構成する材料として使用される有機高分子類(樹脂)としては、例えば、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリウレア、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、多糖類、ゼラチン、アラビアゴム、デキストラン、カゼイン、タンパク質、天然ゴム、カルボキシポリメチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ニトロセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸セルロース、ポリエチレン、ポリスチレン、(メタ)アクリル酸の重合体又は共重合体、(メタ)アクリル酸エステルの重合体又は共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アルギン酸ソーダ、脂肪酸、パラフィン、ミツロウ、水ロウ、硬化牛脂、カルナバロウ、アルブミンなどが挙げられる。
また、カルボン酸基又はスルホン酸基などのアニオン性基を有する有機高分子類を使用することも可能である。
また、ノニオン性有機高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、又はそれらの(共)重合体、2−オキサゾリンのカチオン開環重合体などが挙げられる。
特に、ポリビニルアルコールの完全ケン化物は、水溶性が低く、熱水には解け易いが冷水には解けにくいという性質を有しており特に好ましい。
【0028】
また、マイクロカプセルの壁膜物質を構成する有機高分子類の量は、有機顔料又はカーボンブラックなどの水不溶性の着色剤に対して1〜20重量%とする。この範囲にすることにより、カプセル中の有機高分子類の含有率が比較的低いために、有機高分子類が顔料表面を被覆することに起因する顔料の発色性の低下を抑制することが可能となる。有機高分子類の量が1重量%未満ではカプセル化の効果を発揮しづらくなり、逆に20重量%を越えると、顔料の発色性の低下が著しくなる。
さらに他の特性などを考慮すると有機高分子類の量は水不溶性の着色剤に対し5〜10重量%の範囲が好ましい。この範囲ならば、着色剤の一部が実質的に被覆されずに露出しているため発色性の低下を抑制することができ、一方で、着色剤の一部が露出せずに実質的に被覆されているため顔料が被覆されている効果を発揮することが可能となる。ここで「実質的に被覆されずに露出」とは、例えば、ピンホール、亀裂などの欠陥などに伴う一部の露出ではなく、意図的に露出している状態を意味する。
前記有機高分子類の数平均分子量は、カプセル製造面などから、2000以上であることが好ましい。
【0029】
さらに、着色剤として自己分散性の顔料である有機顔料又は自己分散性のカーボンブラックを用いれば、カプセル中の有機高分子類の含有率が比較的低くても、顔料の分散性が向上するため、十分なインクの保存安定性を確保することが可能となるので、より好ましい。
なお、マイクロカプセル化の方法によって、それに適した有機高分子類を選択することが好ましい。例えば、界面重合法による場合は、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、エポキシ樹脂などが適している。in−situ重合法による場合は、(メタ)アクリル酸エステルの重合体又は共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミドなどが適している。液中硬化法による場合は、アルギン酸ソーダ、ポリビニルアルコール、ゼラチン、アルブミン、エポキシ樹脂などが適している。コアセルベーション法による場合は、ゼラチン、セルロース類、カゼインなどが適している。また、微細で、且つ均一なマイクロカプセル化顔料を得るためには、勿論前記以外にも従来公知のカプセル化法すべてを利用することが可能である。
【0030】
マイクロカプセル化の方法として転相法又は酸析法を選択する場合は、マイクロカプセルの壁膜物質を構成する有機高分子類として、アニオン性有機高分子類を使用する。
転相法は、水に対して自己分散能又は溶解能を有するアニオン性有機高分子類と、自己分散性有機顔料又は自己分散型カーボンブラックなどの着色剤との複合物又は複合体、あるいは自己分散性有機顔料又は自己分散型カーボンブラックなどの着色剤、硬化剤及びアニオン性有機高分子類との混合体を有機溶媒相とし、該有機溶媒相に水を投入するか、あるいは水中に該有機溶媒相を投入して、自己分散(転相乳化)化しながらマイクロカプセル化する方法である。上記転相法において、有機溶媒相中に、記録液用のビヒクルや添加剤を混入させて製造しても何等問題はない。特に、直接記録液用の分散液を製造できることからいえば、記録液の液媒体を混入させる方がより好ましい。
【0031】
一方、酸析法は、アニオン性基含有有機高分子類のアニオン性基の一部又は全部を塩基性化合物で中和し、自己分散性有機顔料又は自己分散型カーボンブラックなどの着色剤と、水性媒体中で混練する工程及び酸性化合物でpHを中性又は酸性にしてアニオン性基含有有機高分子類を析出させ、顔料に固着させる工程とからなる製法によって得られる含水ケーキを、塩基性化合物を用いてアニオン性基の一部又は全部を中和することによりマイクロカプセル化する方法である。このようにすることによって、微細で顔料を多く含むアニオン性マイクロカプセル化顔料を含有する水性分散液を製造することができる。
【0032】
また、上記のようなマイクロカプセル化の際に用いられる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルキルアルコール類;ベンゾール、トルオール、キシロールなどの芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;クロロホルム、二塩化エチレンなどの塩素化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類などが挙げられる。なお、上記の方法により調製したマイクロカプセルを遠心分離又は濾過などによりこれらの溶剤中から一度分離して、これを水及び必要な溶剤とともに撹拌、再分散を行い、目的とするインクを得る。
以上のような方法で得られるカプセル化顔料の体積平均粒径は50〜180nmであることが好ましい。
【0033】
本発明では、浸透剤をインクに添加することにより表面張力が低下し、紙等の記録媒体にインク滴が着弾した後の記録媒体中への浸透が速くなるため、フェザリングやカラーブリードを軽減することができる。浸透剤としては主に界面活性剤が用いられ、親水基の極性によりノニオン性、アニオン性、両性に分類される。また、疎水基の構造により、フッ素系、シリコーン系、アセチレン系等に分類される。
本発明における適正な表面張力の範囲は20〜35mN/mである。
【0034】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオール、グリコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、アセチレングリコールなどが挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩などが挙げられる。
【0035】
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物等が挙げられる。
これらの市販品としては、サーフロンS−111、S−112、S−113、S121、S131、S132、S−141、S−144、S−145(旭硝子社製)、フルラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129、FC−135、FC−170C、FC−430、FC−431、FC−4430(住友スリーエム社製),メガファックF−470、F−1405、F474(DIC社製)、ゾニールFS−300、FSN、FSN−100、FSO、FSO−100(デュポン社製)、エフトップEF−351、352、801、802(ジェムコ社製)、FT−250、251(ネオス社製)、PF−151N,PF−136A、PF−156A(OMNOVA社製)などが挙げられる。
【0036】
シリコーン系界面活性剤としては、ポリエーテル変性シリコーン化合物が挙げられる。ポリエーテル変性シリコーン化合物は、ポリシロキ酸の側鎖にポリエーテル基を導入した側鎖型(ペンダント型)、ポリシロキサンの片末端にポリエーテル基を導入した片末端型、両端に導入した両末端型(ABA型)、ポリシロキサンの側鎖と両末端の両方にポリエーテル基を導入した側鎖両末端型、ポリエーテル基を導入したポリシロキサン(A)と未導入のポリシロキサン(B)を繰返し結合したABn型、枝分かれしたポリシロキサンの末端にポリエーテル基を導入した枝分かれ型等に分類することができる。
本発明では特に限定はないが、ポリシロキサンの側鎖にポリエーテル基を導入した構造を有する側鎖型(ペンダント型)が好ましい。
これらの市販品としては、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−618、KF−6011、KF−6015、KF−6004(信越化学工業社製)、SF−3771、SF−8427、SF−8428、SH−3749、SH−8400、FZ−2101、FZ−2104、FZ−2118、FZ−2203、FZ−2207、L−7604(東レ・ダウコーニング社製)、BYK−345、BYK−346、BYK−348(ビッグケミー・ジャパン社製)等が挙げられる。
【0037】
アセチレングリコール系の界面活性剤としては、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールなどのアセチレングリコール系等が挙げられる。これらの市販品としては、サーフィノール104、82、465、485、TG(エアープロダクツ社製)が挙げられる。
上記種々の界面活性剤の中でも、本発明においては、Dupont社製のFSO、FSO−100、FSN、FSN−100、FS−300が良好な印字品質、信頼性を提供でき好適に用いられる。
また、本発明においては、2種類以上の界面活性剤を併用してもよいし、浸透性向上のため、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール等の炭素数8〜11のポリオールを併用してもよい。
界面活性剤を浸透剤としてインクへ添加する場合の添加量は、0.05〜5重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量%である。
【0038】
インクには、主に画像耐擦化性向上及び着色剤に顔料を用いた場合の保存安定性向上の目的で樹脂エマルジョンを添加してもよい。画像耐擦化性の向上には、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂のエマルジョンが好ましく、保存安定性の向上にはウレタン樹脂のエマルジョンが特に好ましい。しかし、画像耐擦化性向上と保存安定性向上を同時に達成できる樹脂エマルジョンは少ないため、2種類の樹脂エマルジョンを併用することもできる。これらの樹脂エマルジョンは市販のものを必要に応じて適宜選択して用いることができる。
市販品の例としては、J−450、J−734、J−7600、J−352、J−390、J−7100、J−741、J74J、J−511、J−840、J−775、HRC−1645、HPD−71(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、いずれも、ジョンソンポリマー社製)、UVA383MA(アクリル−シリコーン系樹脂エマルジョン、BASF社製)、AP4710(アクリル−シリコーン系樹脂エマルジョン、昭和高分子社製)、W−615、W−6020、W−6061、W−5661(ウレタン系樹脂エマルジョン、いずれも三井化学ポリウレタン社製)、FE4300、FE4500、FE4400(フッ素樹脂エマルジョン、いずれも旭硝子社製)などが挙げられる。
【0039】
樹脂エマルジョンは2種以上を併用してもよく、樹脂エマルジョンの組み合わせを適切なものとすることで、インクの保存性を確保しつつ画質、画像耐久性も上げることができる。
樹脂エマルジョンの含有量は、インク中、樹脂固形分として0.1〜20重量%が好ましく、0.2〜10重量%がより好ましい。含有量が0.1重量%未満では、記録媒体へ着弾した後、樹脂が顔料を覆う量が不十分で、耐擦過効果が小さく、20重量%より多いと、インクの粘度が高すぎてインクジェット方式での印字が困難になる傾向がある。
【0040】
インクに添加するその他の成分としては特に制限はなく、必要に応じて適宜選択することができるが、例えば、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤、などが挙げられる。
消泡剤としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばシリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも破泡効果に優れる点でシリコーン系消泡剤が好ましい。
pH調整剤としては、調合されるインクに悪影響を及ぼさずにpHを7以上に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて任意の物質を使用することができる。
その例としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物;水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、などが挙げられる。
前記pHとしては、7〜10が好ましい。
【0041】
防腐防黴剤としては、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、等が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト、などが挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、りん系酸化防止剤、などが挙げられる。
【0042】
インクの物性としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
粘度は、25℃で、5〜20mPa・sが好ましく、6〜15mPa・sがより好ましい。粘度が20mPa・sを超えると、吐出安定性の確保が困難になることがある。
表面張力としては、25℃で、20〜35mN/mが好ましい。表面張力が20mN/m未満では、記録媒体上での滲みが顕著になり、安定した噴射が得られないことがあり、35mN/mを超えると、記録媒体へのインク浸透が十分に起らず、乾燥時間の長時間化を招くことがある。
【0043】
本発明におけるインク回収ユニットは、インクと組み合わせて用いられる。インク回収ユニットとインクの組合せは、各種分野において好適に使用することができ、インクジェット記録方式による画像記録装置(プリンタ等)において好適に使用することができる。
インクカートリッジは、インクを容器中に収容するとともに、必要に応じて適宜選択したその他の部材等を有する。
容器としては特に制限はなく、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク袋を有するもの、などが好適に挙げられる。
【0044】
次に、インク回収ユニット及びインクカートリッジについて、図1及び図2を参照して説明する。図1は、本発明におけるインク回収ユニットの一例を示す概略斜視図であり、図2はインクカートリッジの一例のケース(外装)も含めた図である。
インク回収ユニットは、インク回収ユニット本体(1)と満タン検知センサー(2)からなり、インク回収ユニット本体(1)内に、廃液吸収部材がセットされている。インク回収ユニット本体(1)には、廃液口が設けられ、ここへ廃液が排出される。また、本体ケースは上部を覆う蓋部材を備え、廃液口以外は密閉されている。
本発明では、インクジェット記録装置本体から排出された廃液がインク回収ユニットの開口部である廃液口からインク回収ユニット内部へと流入する。廃液は廃液口全体に流入するため、インク中の水溶性有機溶剤よりも吸水性が高い水溶性有機溶剤は、廃液に接触させるために、開口部全体を網羅する形で含有させる必要がある。したがって、好ましくは、廃液の流入手段をチューブ等でガイドし、廃液口をより小さくする方が良い。
【0045】
上記水溶性有機溶剤としては、水溶性有機溶剤の50重量%水溶液を30℃35%RHで24時間乾燥させた時の残存水分量が20重量%以上のものが好ましい。残存水分量が20重量%未満の場合には、廃インクが乾燥固化する環境条件下で、インク回収ユニット内で廃インクが山積みに堆積しやすい。
水溶性有機溶剤の具体例としてはトリメチルグリシン、ヒアルロン酸などが挙げられるが、特にトリメチルグリシンが好ましい。一般に吸水性が高い化合物としては、潮解性のあるクエン酸、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等がよく知られている。しかし、これらの化合物は単独では吸水性が高いが、インク成分と接触すると逆に凝集固化するという性質がある。またインクジェット記録装置本体の腐食の観点からも適切ではない。トリメチルグリシンはこれらの課題も解決できるものである。
本発明が効果を奏するメカニズムは、インク中の水溶性有機溶剤がインク回収ユニット内で乾燥した場合に、該水溶性有機溶剤が吸水しない環境下でも吸水性を有する水溶性有機溶剤が存在することにより、これらの水溶性有機溶剤が互いに混ざり合い、結果としてインクが堆積しにくくなって不具合を起こさなくなることによると考えられるので、このようなメカニズムが働くように、インク中の水溶性有機溶剤に合わせて、インク回収ユニット内の水溶性有機溶剤を選択する必要がある。
インク中の水溶性有機溶剤とインク回収ユニット内の水溶性有機溶剤の適切な吸水性の差は、水溶性有機溶剤の組合わせにより変わるため、単純に数値で示すことは難しいが、上記メカニズムからみて、通常の場合、前記乾燥条件下での残存水分量で20重量%程度以上あればよいと考えられる。
【0046】
インクカートリッジ(200)は、インク注入口(242)からインク袋(241)内にインクを充填し排気した後、該インク注入口(242)を融着により閉じる。使用時には、ゴム部材からなるインク排出口(243)に装置本体の針を刺して装置にインクを供給する。
インク袋(241)は、透気性のないアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。このインク袋(241)は、図2に示すように、通常、プラスチック製のカートリッジケース(244)内に収容され、各種インクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いられるようになっている。
インクカートリッジ(200)は、インクを収容し、各種インクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いることができるものであり、後述する本発明のインクジェット記録装置でも着脱可能に装着して用いることが好ましい。
【0047】
本発明のインクジェット記録装置は、少なくともインク飛翔手段を有し、必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、刺激発生手段、制御手段等を有する。
インク飛翔手段は、インクに刺激を印加し飛翔させて記録媒体に画像を記録する手段である。該インク飛翔手段としては特に制限はなく、例えば、インク吐出用の各種のノズルなどが挙げられる。
本発明においては、インクジェットヘッドの液室部、流体抵抗部、振動板、及びノズル部材の少なくとも一部が、シリコン及び/又はニッケルを含む材料から形成されることが好ましい。また、インクジェットノズルのノズル径は30μm以下が好ましく、1〜20μmが好ましい。
また、インクジェットヘッド上にインクを供給するためのサブタンクを有し、該サブタンクにインクカートリッジから供給チューブを介してインクが補充されるように構成することが好ましい。
また、本発明のインクジェット記録装置を用いて記録を行う場合には、300dpi以上の解像度において、最大インク付着量が8〜20g/mであることが好ましい。
【0048】
前記インクに印加する刺激としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、熱、圧力、振動、光などが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、熱、圧力が好適である。
なお、前記刺激発生手段としては、例えば、加熱装置、加圧装置、圧電素子、振動発生装置、超音波発振器、ライト、などが挙げられ、具体的には、例えば、圧電素子等の圧電アクチュエータ、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータ等、などが挙げられる。
【0049】
インクの飛翔の態様としては特に制限はなく、刺激の種類等に応じて異なるが、例えば刺激が「熱」の場合、記録ヘッド内のインクに対し、記録信号に対応した熱エネルギーをサーマルヘッド等を用いて付与し、熱エネルギーによりインクに気泡を発生させ、該気泡の圧力により、記録ヘッドのノズル孔からインクを液滴として吐出噴射させる方法などが挙げられる。また、刺激が「圧力」の場合、例えば記録ヘッド内のインク流路内にある圧力室と呼ばれる位置に接着された圧電素子に電圧を印加することにより、圧電素子が撓み、圧力室の容積が縮小して、記録ヘッドのノズル孔からインクを液滴として吐出噴射させる方法などが挙げられる。
飛翔させるインクについては、その液滴の大きさは1〜40plとするのが好ましく、その吐出噴射の速さは5〜20m/sが好ましく、その駆動周波数は1kHz以上が好ましく、その解像度は300dpi以上が好ましい。
なお、前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0050】
本発明のインクジェット記録装置によりインクジェット記録を実施する態様について、図3、図4に示す例を参照しながら説明する。
図3に示すインクジェット記録装置は、装置本体(101)と、装置本体(101)に装着した用紙を装填するための給紙トレイ(102)と、装置本体(101)に装着され画像が記録(形成)された用紙をストックするための排紙トレイ(103)と、インクカートリッジ装填部(104)とを有する。インクカートリッジ装填部(104)の上面には、操作キーや表示器などの操作部(105)が配置されている。インクカートリッジ装填部(104)はインクカートリッジ(200)の脱着を行うための開閉可能な前カバー(115)を有している。(111)は上カバー、(112)は前カバーの前面である。インク回収ユニットは外からは見えないが、概略の位置を点線で示した。
装置本体(101)内には、図4に示すように、左右の側板(不図示)に横架したガイド部材であるガイドロッド(131)とステー(132)とで、キャリッジ(133)を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ(不図示)によって移動走査する。
キャリッジ(133)には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する4個のインクジェット記録用ヘッドからなる記録ヘッド(134)を、複数のインク吐出口が主走査方向と交叉するように配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0051】
記録ヘッド(134)を構成するインクジェット記録用ヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどをインクを吐出するためのエネルギー発生手段として備えたものなどを使用できる。
また、キャリッジ(133)には、記録ヘッド(134)に各色のインクを供給するための各色のサブタンク(135)を搭載している。サブタンク(135)には、インク供給チューブ(不図示)を介して、インクカートリッジ装填部(104)に装填されたインクカートリッジ(200)からインクが供給されて補充される。
【0052】
一方、給紙トレイ(102)の用紙積載部(圧板)(141)上に積載した用紙(142)を給紙するための給紙部として、用紙積載部(141)から用紙(142)を1枚づつ分離給送する半月コロ〔給紙コロ(143)〕、及び給紙コロ(143)に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド(144)を備え、この分離パッド(144)は給紙コロ(143)側に付勢されている。
この給紙部から給紙された用紙(142)を記録ヘッド(134)の下方側で搬送するための搬送部として、用紙(142)を静電吸着して搬送するための搬送ベルト(151)と、給紙部からガイド(145)を介して送られる用紙(142)を搬送ベルト(151)との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ(152)と、略鉛直上方に送られる用紙(142)を略90°方向転換させて搬送ベルト(151)上に倣わせるための搬送ガイド(153)と、押さえ部材(154)で搬送ベルト(151)側に付勢された先端加圧コロ(155)とが備えられ、また、搬送ベルト(151)表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ(156)が備えられている。
【0053】
搬送ベルト(151)は、無端状ベルトであり、搬送ローラ(157)とテンションローラ(158)との間に張架されて、ベルト搬送方向に周回可能である。この搬送ベルト(151)は、例えば抵抗制御を行っていない厚さ40μm程度の樹脂材〔例えばテトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体(ETFE)〕で形成した用紙吸着面となる表層と、この表層と同材質でカーボンによる抵抗制御を行った裏層(中抵抗層、アース層)とを有している。搬送ベルト(151)の裏側には、記録ヘッド(134)による印写領域に対応してガイド部材(161)が配置されている。なお、記録ヘッド(134)で記録された用紙(142)を排紙するための排紙部として、搬送ベルト(151)から用紙(142)を分離するための分離爪(171)と、排紙ローラ(172)及び排紙コロ(173)とが備えられており、排紙ローラ(172)の下方に排紙トレイ(103)が配されている。
【0054】
装置本体(101)の背面部には、両面給紙ユニット(181)が着脱自在に装着されている。両面給紙ユニット(181)は、搬送ベルト(151)の逆方向回転で戻される用紙(142)を取り込んで反転させ、再度カウンタローラ(152)と搬送ベルト(151)との間に給紙する。なお、両面給紙ユニット(181)の上面には、手差し給紙部(182)が設けられている。
このインクジェット記録装置においては、給紙部から用紙(142)が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙(142)は、ガイド(145)で案内され、搬送ベルト(151)とカウンタローラ(152)との間に挟まれて搬送される。更に先端を搬送ガイド(153)で案内されて先端加圧コロ(155)で搬送ベルト(151)に押し付けられ、略90°搬送方向が転換される。
【0055】
このとき、帯電ローラ(156)によって搬送ベルト(157)が帯電されており、用紙(142)は、搬送ベルト(151)に静電吸着されて搬送される。そこで、キャリッジ(133)を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド(134)を駆動することにより、停止している用紙(142)にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙(142)を所定量搬送後、次行の記録を行う。記録終了信号又は用紙(142)の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙(142)を排紙トレイ(103)に排紙する。
そして、サブタンク(135)内のインクの残量ニアーエンドが検知されると、インクカートリッジ(200)から所要量のインクがサブタンク(135)に補給される。
このインクジェット記録装置においては、インクカートリッジ(200)中のインクを使い切ったときには、インクカートリッジ(200)における筐体を分解して内部のインク袋だけを交換することができる。また、インクカートリッジ(200)は、縦置きで前面装填構成としても、安定したインクの供給を行うことができる。したがって、装置本体(101)の上方が塞がって設置されているような場合、例えば、ラック内に収納したり、あるいは装置本体(101)の上面に物が置かれているような場合でも、インクカートリッジ(200)の交換を容易に行うことができる。
【0056】
なお、ここでは、キャリッジが走査するシリアル型(シャトル型)インクジェット記録装置に適用した例で説明したが、ライン型ヘッドを備えたライン型インクジェット記録装置にも同様に適用することができる。
また、本発明のインクジェット記録装置は、インクジェット記録方式による各種記録に適用することができ、例えば、インクジェット記録用プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、などに特に好適に適用することができる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、例中の「部」及び「%」は、湿度を除き全て重量基準である。
【0058】
(顔料分散液Bk1の作製)
下記分散剤を水に加えて溶解し、続いて顔料を混合攪拌して充分に湿潤したところで、φ0.5mmジルコニアビーズを充填した混練装置:ダイノーミルKDL A型(WAB社製)を用いて、2000rpmで60分間混練を行なった。
次いで、ミルベースを取り出し、1μmのフィルターで濾過して、顔料濃度15%のブラック顔料分散液Bk1を得た。
・カーボンブラックNipex60(デグサ社製) 15部
・下記構造式で表される分散剤 5部
1225−O−(CHCHO)42−H
・イオン交換水 80部

【0059】
(顔料分散液Y1、M1、C1の作製)
顔料分散液Bk1の作製におけるカーボンブラックをC.I.ピグメントイエロー74(クラリアントジャパン社製HANSA Yellow 5GX01)、C.I.ピグメントレッド122(チバスペシャリティケミカル社製Jet Magenta DMQ)、C.I.ピグメントブルー15:4(BASFジャパン社製HELIOGEN Blue D7107)にそれぞれ変えた他は全く同様にして、イエロー分散液Y1、マゼンタ分散液M1、シアン分散液C1を作製した。
【0060】
(顔料分散液Bk2の作製)
−ポリマーの合成−
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管及び滴下ロートを備えた1Lフラスコ内を十分に窒素ガスで置換した後、下記ポリマー原料1を仕込み、65℃に昇温した。
(ポリマー原料1)
・スチレン 11.2部
・アクリル酸 2.8部
・ラウリルメタクリレート 12.0部
・ポリエチレングリコールメタクリレート 4.0部
・スチレンマクロマーAS−6(東亜合成社製) 4.0部
・メルカプトエタノール 0.4部

【0061】
次いで、下記ポリマー原料2の混合溶液を2.5時間かけて昇温したフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8部と、メチルエチルケトン18.0部の混合溶液を0.5時間かけてフラスコ内に滴下した。65℃で1時間熟成した後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8部を添加し、更に1時間熟成した。
反応終了後、フラスコ内に、メチルエチルケトン364.0部を添加し、濃度が50%のポリマー(ビニル樹脂)溶液800部を得た。
(ポリマー原料2)
・スチレン 100.8部
・アクリル酸 25.2部
・ラウリルメタクリレート 108.0部
・ポリエチレングリコールメタクリレート 36.0部
・ヒドロキシエチルメタクリレート 60.0部
・スチレンマクロマーAS−6(東亜合成社製) 36.0部
・メルカプトエタノール 3.6部
・アゾビスジメチルバレロニトリル 2.4部
・メチルエチルケトン 18.0部

【0062】
上記ポリマー溶液を含む下記の材料を用いて分散体を作成した。即ち、顔料とポリマー溶液を十分に攪拌した後、3本ロールミル(ノリタケカンパニー社製:NR−84A)を用いて20回混練した。得られたペーストをイオン交換水200部に投入し、十分に攪拌した後、エバポレーターを用いてメチルエチルケトンと水を留去し、顔料濃度15%のブラック分散液Bk2を得た。
(分散体材料)
・カーボンブラックNipex60(デグサ社製) 26.0部
・ポリマー溶液 28.0部
・1mol/L水酸化カリウム水溶液 13.6部
・メチルエチルケトン 20.0部
・イオン交換水 30.0部

【0063】
(顔料分散液Y2、M2、C2の作製)
ブラック分散液Bk2の作製におけるカーボンブラックをC.I.ピグメントイエロー74(クラリアントジャパン社製HANSA Yellow 5GX01)、C.I.ピグメントレッド122(チバスペシャリティケミカル社製Jet Magenta DMQ)、C.I.ピグメントブルー15:4(BASFジャパン社製HELIOGEN Blue D7107)にそれぞれ変えた他は全く同様にして、イエロー分散液Y2、マゼンタ分散液M2、シアン分散液C2を作製した。
【0064】
(ポリマー微粒子P1の作製)
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管及び滴下ロートを備えたフラスコ内を十分に窒素ガスで置換した後、アクアロンRN−20(第一工業製薬社製)10g、過硫酸カリウム1g及び純水286gを仕込み、65℃に昇温した。
次に、メタクリル酸メチル150g、アクリル酸2エチルヘキシル100g、アクリル酸20g、ビニルトリエトキシシラン20g、アクアロンRN−20を10g、過硫酸カリウム4g及び純水398.3gの混合溶液を2.5時間かけてフラスコ内に滴下した。
更に80℃で3時間加熱熟成した後、冷却し、水酸化カリウムでpHを7〜8となるよう調整し、ポリマー微粒子P1を得た。
トラックUPAを用いて測定したポリマー微粒子の粒子径は130nmであった。また、最低造膜温度(MTF)は0℃であった。
【0065】
(インク製造例1)ブラックインク1
・顔料分散液Bk1(固形分として) 9部
・3−メチル−1,3−ブタンジオール 15部
・グリセリン 15部
・2−ピロリドン 2部
・サーフィノール465(エアプロダクツ社製) 1部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2部
・ポリマー微粒子P1(固形分として) 4部
・W−5025(三井化学社製ポリマー微粒子)(固形分として) 4部
・イオン交換水 48部

【0066】
(インク製造例2)イエローインク1
・顔料分散液Y1(固形分として) 6部
・1,5−ペンタンジオール 10部
・グリセリン 20部
・2−ピロリドン 1部
・FSN100(DuPont社製) 1部
・2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール 2部
・W−5661(三井化学社製ポリマー微粒子)(固形分として) 10部
・イオン交換水 50部

【0067】
(インク製造例3)マゼンタインク1
・顔料分散液M1(固形分として) 8部
・1,3−ブタンジオール 20部
・グリセリン 10部
・ECTD−3NEX(日光ケミカルズ社製) 1部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2部
・W−5661(三井化学社製ポリマー微粒子)(固形分として) 4部
・ポリマー微粒子P1(固形分として) 8部
・イオン交換水 47部

【0068】
(インク製造例4)シアンインク1
・顔料分散液C1(固形分として) 6部
・3−メチル−1,3−ブタンジオール 15部
・グリセリン 15部
・ECTD−6NEX(日光ケミカルズ社製) 1部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2部
・ポリマー微粒子P1(固形分として) 8部
・イオン交換水 53部

【0069】
(インク製造例5)ブラックインク2
・顔料分散液Bk2(固形分として) 11部
・1,6−ヘキサンジオール 10部
・グリセリン 20部
・F470(DIC社製) 1部
・ポリマー微粒子P1(固形分として) 4部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.5部
・イオン交換水 51.5部

【0070】
(インク製造例6)イエローインク2
・顔料分散液Y2(固形分として) 8部
・1,3−ブタンジオール 15部
・グリセリン 15部
・ディスパノールTOC(日油社製) 0.5部
・ポリマー微粒子P1(固形分として) 15部
・2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール 1部
・イオン交換水 45.5部

【0071】
(インク製造例7)マゼンタインク2
・顔料分散液M2(固形分として) 11部
・1,5−ペンタンジオール 15部
・グリセリン 15部
・FSN100(DuPont社製) 0.5部
・ポリマー微粒子P1(固形分として) 8部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2部
・イオン交換水 48.5部

【0072】
(インク製造例8)シアンインク2
・顔料分散液C2(固形分として) 8部
・1,6−ヘキサンジオール 20部
・グリセリン 10部
・FS−300(DuPont社製) 0.3部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2部
・W−5025(三井化学社製ポリマー微粒子)(固形分として) 5部
・イオン交換水 54.7部

【0073】
(インク回収ユニット1)
図1で示したインク回収ユニット内の本体から排出された廃液が接触する部分に、廃液吸収部材1cm当り0.25gのアミノコート(旭化成ケミカルズ社製トリメチルグリシン)をセットした。
【0074】
(インク回収ユニット2)
アミノコートをグリセリンに変更した点以外は、インク回収ユニット1と同様にセットした。
【0075】
(インク回収ユニット3)
アミノコートを塩化カルシウムに変更した点以外は、インク回収ユニット1と同様にセットした。
【0076】
(インク回収ユニット4)
インク回収ユニットを本発明の水溶性有機溶剤を用いない状態でセットした。
【0077】
実施例1〜2、比較例1〜3
表1にインク回収ユニット評価に用いたインクセット及びインク回収ユニットを示す。
【表1】

【0078】
表2に、実施例及び比較例で用いた水溶性有機溶剤(アミノコート及びグリセリン)の50%水溶液を30℃35%RHで24時間乾燥させた時の残存水分量を示す。
【表2】

【0079】
<インク回収ユニット評価>
インクセット及びインク回収ユニットを、上記表1の組合せで、図3、図4に示す基本構成のリコーインクジェットプリンター〔GX5000(商品名)〕本体に装着した。
次いで、通常の環境条件下(25℃50%RH)及び廃インクが乾燥固化しやすい環境条件下(40℃5%RH)で8時間放置した。
その後、同じ環境条件下で12時間に一度、全色クリーニングを実施し、インク回収ユニットに廃液を排出した。
そして、上記廃液の堆積及び満タン検知動作の誤検知について長期間(3ヶ月)にわたり調査を行い、次の基準で評価した。評価結果を表3に示す。
〔判定基準〕
○:廃液が廃液吸収部材表面で乾燥、堆積せずに吸収されていき、正常に満タン検知される。
△:廃液が廃液吸収部材表面で乾燥、堆積し出すが、廃液は吸収されていき、一応、正常に満タン検知される。
×:廃液が廃液吸収部材表面で乾燥、堆積し、廃液が吸収されず、正常に満タン検知されず、かつ廃液がインク回収ユニット内から漏れてしまう。

【0080】
【表3】

【0081】
上記表3の結果から分かるように、実施例の場合、40℃5%RHの環境条件下でも、廃インクを山積みに堆積させることなく、効率良くインク回収ユニット内に収納することができたが、比較例では40℃5%RHの環境条件下において乾燥、体積が発生した。
【符号の説明】
【0082】
1 インク回収ユニット本体(ユニット内に廃液吸収部材を有する)
2 満タン検知センサー
101 装置本体
102 給紙トレイ
103 排紙トレイ
104 インクカートリッジ装填部
105 操作部
111 上カバー
112 前カバーの前面
115 前カバー
131 ガイドロッド
132 ステー
133 キャリッジ
134 記録ヘッド
135 サブタンク
141 用紙載置部
142 用紙
143 給紙コロ
144 分離パッド
145 ガイド
151 搬送ベルト
152 カウンタローラ
153 搬送ガイド
154 押さえ部材
155 加圧コロ
156 帯電ローラ
157 搬送ローラ
158 テンションローラ
161 ガイド部材
171 分離爪
172 排紙ローラ
173 排紙コロ
181 両面給紙ユニット
182 手差し給紙部
200 インクカートリッジ
241 インク袋
242 注入口
243 排出口
244 インクカートリッジケース
【先行技術文献】
【特許文献】
【0083】
【特許文献1】特開2001−171148号公報
【特許文献2】特開2002−307720号公報
【特許文献3】特開2002−307705号公報
【特許文献4】特開2006−305873号公報
【特許文献5】特開2009−891号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを記録媒体に吐出して画像を形成する記録ヘッド、及び該記録ヘッドのメンテナンスを目的とした画像形成に寄与しないインク排出先となるインク回収ユニットを有するインクジェット記録装置において、前記インクが少なくとも水、着色剤及び水溶性有機溶剤を含有し、前記インク回収ユニット内に、前記インク中の水溶性有機溶剤よりも吸水性が高い水溶性有機溶剤を含有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記インク中の水溶性有機溶剤の50重量%水溶液を30℃35%RHで24時間乾燥させた時の残存水分量が20重量%以下であり、かつ、前記インク回収ユニット内の水溶性有機溶剤の50重量%水溶液を同条件で乾燥させた時の残存水分量が20重量%以上であることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記インク中の水溶性有機溶剤が、グリセリン、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールの中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記インク回収ユニット内の水溶性有機溶剤がトリメチルグリシンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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