説明

インクジェット記録装置

【課題】記録動作において記録媒体を搬送ベルト上に確実に保持させることができると共に、記録媒体の搬送経路の終端において確実に記録媒体を搬送ベルトから分離させることが可能なインクジェット記録装置の提供を目的とする。
【解決手段】本発明に係るインクジェット記録装置1は、記録媒体を搬送する搬送経路を構成する搬送ベルト21と、搬送ベルト21上に記録媒体を吸引・保持させる吸引手段42,47と、搬送ベルト21上に保持された記録媒体にインクを吐出する記録ヘッド31〜34と、を備える。搬送ベルト21によって形成される搬送経路の終端位置には筒状ローラ22が設けられ、このローラ22の周面部の一部には搬送ベルト21が掛け渡されている。ローラ22に向けて排気手段47,48からの空気を搬送ベルトから排出することによって記録媒体を搬送ベルト21から分離することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ベルトによって搬送される記録媒体に、記録ヘッドからインク滴を吐出して記録を行うインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、ホストパーソナルコンピュータから送信された画像データを演算処理部によって2値化し、2値化された画像データに基づいて記録媒体上に記録ヘッドからインクを吐出して記録媒体上に画像を記録している。このようなインクジェット記録装置において、特許文献1の図1には、記録ヘッドの下方を通過する搬送ベルトによって記録媒体の搬送を行うものが開示されている。搬送ベルトは通気性を有し、その下方に配置された吸気ファンの吸気力によって搬送ベルトの上面に用紙を吸引・保持するようになっている(特許文献2参照)。これによれば、記録ヘッドと記録媒体との距離間隔を安定させることができ、画像の品位を保つことができる。
【0003】
特許文献2には、搬送ベルト上に用紙を保持させるためのエアーの吸引を行うと共に、吸引したエアーを搬送路の両端部から噴出させ、用紙の端部に出来るカールを軽減することが開示されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−103705号公報
【特許文献2】特開2009−184793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1または2では、搬送ベルトの下方から空気を吸引することで記録媒体を搬送ベルトに密着させ、記録媒体のずれや浮上を抑えるようになっている。しかしながら、特許文献1および2に開示の技術においては、画像が記録された記録媒体を排紙するに際し、記録媒体が搬送ベルトまたはローラに張り付いてしまい、排紙が妨げられたりジャムが発生したりするという課題がある。
【0006】
本発明は、記録動作において記録媒体を搬送ベルト上に確実に保持させることができると共に、記録媒体の搬送経路の終端位置において確実に記録媒体を搬送ベルトから分離させて排紙することができるインクジェット記録装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0008】
本発明の形態は、記録媒体を搬送する搬送経路を構成する搬送ベルトと、前記搬送ベルト上に記録媒体を吸引・保持させる吸引手段と、前記搬送ベルト上に保持された記録媒体にインクを吐出する記録ヘッドと、を備えたインクジェット記録装置であって、前記搬送ベルトによって形成される記録媒体の搬送経路の終端位置において前記搬送ベルトが掛け渡される周面部を有すると共に、前記周面部に複数の通気孔を形成した筒状ローラと、前記筒状ローラの周面部のうち、前記搬送ベルトが掛け渡されていない部分に向けて空気を排出する排気手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、記録動作中は記録媒体を搬送ベルトに適正に保持させることができると共に、搬送経路の終端位置に達した記録媒体を搬送ベルトから確実に分離させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置の側面図である。
【図2】本発明の実施形態におけるベルト吸引搬送部の外観構成を示す斜視図である。
【図3】図2に示したものの分解斜視図である。
【図4】図2に示したものの内部構造を示す断面斜視図である。
【図5】図4に示したものの一部を拡大して示す斜視図である。
【図6】図2に示したものにおいてプラテンを除去した状態を示す斜視図である。
【図7】本実施形態におけるインクジェット記録装置に設けられた制御系の概略構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施形態における第3の搬送ローラとプラテンとの位置関係を示す縦断側面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態における排気通路および駆動ローラの一例を示す平面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態における排気通路および駆動ローラの他の例を示す平面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態における排気通路内の構成を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1ないし図7は本発明の第1の実施形態におけるインクジェット記録装置(以下、単に記録装置ともいう)を示す図であり、図1は、本実施形態における記録装置の全体的な内部構成を示す説明側面図である。
【0013】
図1に示す記録装置1は、給紙部10、ベルト吸引搬送部20、ヘッドユニット部30、排紙部40等を備え、記録媒体を連続的に搬送しつつ、低位置に保持されたヘッドユニット部30によって画像を形成する、いわゆるフルライン型の記録装置となっている。
【0014】
給紙部10は、複数の記録媒体P1を積層して収容する給紙トレイ11と、給紙トレイ11から記録媒体を一枚ずつ取り出す取出手段12と、取り出された記録媒体P1を挟持してベルト搬送部20に搬送する第一搬送ローラ25と、を備えている。なお、記録媒体としては、普通紙、再生紙、光沢紙、厚紙等からなるカットシート状のものを使用する。
【0015】
給紙部10の上方には、記録媒体を所定の経路に沿って搬送する搬送部20が設けられている。この搬送部20は、第一搬送ローラ25から第二搬送ローラ27に向かって搬送された記録媒体をガイドする第一ガイド部材26と、第二搬送ローラ27から搬送された記録媒体を支持して搬送方向Xに搬送させる環状の無端ベルト(搬送ベルト)21とを備える。搬送ベルト21は、張架ローラ23A,23Bと搬送ベルト21を循環移動させる駆動ローラ22に張架されており、張架ローラ23Aから駆動ローラ22に至る水平部分21Aによって記録媒体を搬送する。本実施形態における搬送ベルト21は、可撓性を有する無端の金属ベルトからなり、その全域には多数の通気孔21hが形成されている。
【0016】
駆動ローラ(筒状ローラ)22は円筒状をなし、その周面部には図5ないし図6に示すように多数の通気用のスリット(通気部)22aが形成されている。駆動ローラ22は搬送モータ106によって回転し、その回転に伴って搬送ベルト21が張架ローラ23A,23Bを回転させつつ循環する。なお、図2において、P1は記録媒体を、28は駆動ローラ22および張架ローラ23Aの回動中心軸を回動自在に支持するローラ支持板をそれぞれ示している。
【0017】
搬送部20には第二搬送ローラ27から搬送された記録媒体を搬送ベルト21上に押圧する押圧ローラ24と、搬送ベルト21から排紙部40に搬送する第3搬送ローラ29が設けられている。さらに、搬送部20には、同一の記録媒体の一方の面(表面)と他方の面(裏面)とに順時記録を行う場合に用いられる第2搬送経路を形成する第2ガイド部材35,36および第4〜第9のローラが設けられている。搬送ベルト21の内側には、搬送ベルト21の上面に記録媒体を吸引・保持させるための吸引手段と、画像が形成された記録媒体を搬送ベルトから分離させるための分離手段が設けられている。この吸引手段および分離手段については後に詳述する。
【0018】
また、搬送ベルト21の水平部の上方には、搬送ベルト21によって搬送された記録媒体P1にインクを吐出して画像を記録する記録ヘッドユニット部30が配置されている。記録ヘッドユニット部30は、複数種のインクを吐出する記録ヘッドが記録媒体の搬送方向(X方向)に沿って順時配置されている。本実施形態では黒色のインクを吐出する記録ヘッド31、シアン色のインクを吐出する記録ヘッド32、マゼンタ色のインクを吐出する記録ヘッド33、イエロー色のインクを吐出する記録ヘッド34が、搬送方向Xに沿って順時配置されている。
【0019】
各記録ヘッドには、インクを記録媒体P1上に吐出する複数のノズルが記録媒体の搬送方向(X方向)と直交する方向(図1の紙面と直交する方向)に沿って配列されている。各ノズル内には吐出エネルギー発生素子が設けられ、この素子を駆動することによってノズル内のインクがノズルの開口部である吐出口から搬送ベルトに向けて吐出される。一般に記録ヘッドのインク吐出方式としては、電気熱変換素子(ヒータ)を用いたヒータ方式と、電気機械変換素子(ピエゾ)を用いたピエゾ方式が知られている。ヒータ方式は、ヒータを通電してヒータ近傍のインクを膜沸騰させ、ノズル内のインクをノズルの吐出口からノズル外部に吐出する方法である。ピエゾ方式とは、電圧を加えると変形するピエゾ素子(圧電素子)を用いることで、ノズル内のインク容積を変化させ、ノズル内のインクをノズルの吐出口からノズル外部に吐出する方式である。
【0020】
上記の構成を有する記録装置において、記録媒体への記録動作時には、まず給紙部10の給紙トレイ11に積載された記録媒体のうち、最上位にある記録媒体が取出し手段によって取り出される。給紙トレイ11から取り出された記録媒体は、第1の搬送ローラ25および第2の搬送ローラ27によって第1ガイド部材26に沿って搬送されて行き、押圧ローラ24に押圧されつつ搬送ベルト21上に送り出される。このとき、搬送ベルト21上に送り出された記録媒体は、ファンの回転による吸気作用によって搬送ベルト上に吸着され、搬送ベルト21の上面に沿って平坦な状態に保たれながら、各記録ヘッドの下方を順時通過して行く。この間に各記録ヘッドの各ノズルからは、記録データに基づいてインク滴が吐出され、このインク滴が着弾することで記録媒体に画像が形成される。
【0021】
記録媒体の表面にのみ画像を形成する片面記録を行う場合には、排紙ローラ38または39を介して図外の排紙部60または図外の外部処理部へと排紙される。また、記録媒体の表裏両面に画像を形成する場合には、表面に画像が形成された記録媒体を、一旦、第4、第5の搬送ローラ37a,37bによって反転部35へと送った後、記録媒体の前端と後端とを入れ替えて第5の搬送ローラ37cへと送る。第5の搬送ローラ37cに送った記録媒体をさらに第6〜第9の搬送ローラ37d〜37h、および第2搬送ローラ27によって、再び搬送ベルト21上へと送る。このとき、先行する記録動作で記録された記録媒体の面は搬送ベルト21上に接した状態、すなわち記録媒体の表面が搬送ベルト21に接し、裏面が記録ヘッドに対向した状態となる。従って、その後の搬送動作および記録ヘッドのインク吐出動作によって、画像は記録媒体の裏面に形成される。記録媒体の両面に画像が形成された記録媒体は、片面記録時と同様に排紙部60または図外の外部処理部へと排紙される。
【0022】
インクジェット記録装置では、上記のような画像記録工程の中で、記録ヘッドからインク滴か吐出された際に発生するインクミストが搬送ベルトに付着することがある。また、記録媒体搬送時のジャムやエラーが生じると、記録ヘッドから吐出されたインク滴が記録媒体に着弾せずに搬送ベルトに着弾することがある。インクが付着した搬送ベルト21を用いて次の記録動作に入ると、記録媒体がインクによって搬送ベルトに張り付いてしまうことがある。この場合、記録媒体が、搬送ベルトから分離されるべき搬送経路の終端位置、すなわち駆動ローラに沿って搬送ベルトが屈曲する位置に到達したとしても、記録媒体が搬送ベルト21から分離されないことがある。また、搬送ベルトを用いて記録媒体の搬送を行うインクジェット記録装置では、記録動作中に搬送ベルトと記録媒体との相対位置にずれが生じないよう、記録媒体を保持しておく必要がある。そこで、本実施形態では以下に説明する吸気手段および分離手段を設けることにより、搬送経路の終端位置までは搬送ベルト上に記録媒体をずれなく保持することができ、搬送経路の終端に達した記録媒体については確実に搬送ベルトから分離できるようになっている。
【0023】
本実施形態における吸引機構は、記録媒体吸引搬送ベルト21の水平部分21Aの下面に沿って配置した平板状のプラテン41と、このプラテン41の下方に設けられた吸気通路42と、吸気ファン47とにより構成されている。
【0024】
プラテン41には、図3に示すように、複数のスリット状の通気孔41hが形成されている。但し、プラテン41の先端部(記録媒体搬送方向における下流側端部)41Aには、通気孔41aは形成されていない。また、吸気通路42は、空気通路形成部材44の上板部44Aとプラテン41の下面との間の空間によって形成されている。空気通路形成部材44は、前記上板部44Aと、この上板部44Aに対向して設けられた下板部44Bと、上板部44Aと下板部44Bとの間の空間を仕切る仕切り板44Cとからなる。上板部44Aと下板部44Bにおいて、記録媒体の搬送方向(X方向)の下流側端部(図4における左側端部)は、いずれも駆動ローラ22の外周面に接触しない程度に近接している。上板部44Aと下板部44Bとの間に形成される空間のうち、仕切り板44Cより駆動ローラ22側に位置する空間によって、後述の吸気ファン47から排出された排気を駆動ローラ22の周面へと導く排気通路が形成されている。なお、上板部44Aの下流側端部には上方に立ち上がる堰部44A2が形成されている。この堰部44A2により、吸気通路42の下流側端部と排気通路48の下流側端部との間の空気の流通は遮断される。
【0025】
空気通路形成部材44の上板部44Aと下板部44Bとにより形成される空間内には、ケーシング45とその内部に配置された羽根車46とを有する吸気ファン47が収納されている。吸気ファン47のケーシング45の上板部45Aは空気流路形成部材44の上板部44Aに密接しており、この上板部45Aに形成された吸気口(吸気部)45A1が空気流路形成部材44の上板部44Aに形成された開口部44A1に連通している。さらにケーシング45には排気口(排気部)45A2が形成されている。この排気口45A2は仕切り板4Cによって仕切られた排気通路48内に位置している。
【0026】
なお、本実施形態において、記録媒体を搬送ベルト上に吸引するための吸引手段は、搬送ベルトに形成された通気孔21h、プラテン41、吸気通路42、吸気通路42に連通する吸気ファン47によって形成されている。また、記録媒体を搬送ベルトから分離させる分離手段は、吸気ファン47、排気通路48および周面にスリット22aを有する筒状の駆動ローラ22により構成されている。
【0027】
図7は、本実施形態における記録装置に設けられた制御系の概略構成を示すブロック図である。図7において、CPU100は本記録装置の各部の動作制御やデータ処理等を実行する。ROM101にはそれらの処理を実行するためのプログラムなどが格納される。RAM102は種々のデータを一時的に格納するデータ格納エリアを有する共に、CPU100による処理を実行する際のワークエリアを有する。CPU100は、記録データおよび駆動制御信号をヘッドドライバに供給することによりヘッドユニットのノズルに設けられた吐出エネルギーの駆動を制御し、インク滴の吐出を制御する。さらに、CPU100は駆動ローラの駆動源である搬送モータ106の駆動をモータドライバ106aを介して制御すると共に、吸気ファンを回転させるファンモータの駆動をモータドライバを介して制御する。また、CPU100には、入力操作部103から入力された種々のデータが入力されると共に、インクジェット記録装置の各部に設けられたセンサからなるセンサ群からの検出信号が入力される。
【0028】
次に、記録媒体の搬送動作時における搬送ベルト21による記録媒体の吸引動作および搬送ベルト21からの記録媒体の分離動作を説明する。
給紙部10から搬送ベルト21の間に配置された図外のセンサによって、給紙部10から送り出された記録媒体の先端部が検出されると、センサからの検出信号を受けたCPU100はモータドライバ107aを介してファンモータ107を駆動する。これにより吸気ファン47の羽根車46が回転する。この羽根車46の回転により、吸気通路42内の空気は上板部44Aに形成された開口部44A1およびケーシング45の吸気口45A1を通過して吸気ファン47のケーシング内に吸引され、吸引された空気は排気通路48へと排出される。
【0029】
また、吸気通路42内の空気の吸引に伴い、搬送ベルト21の上方の空気が搬送ベルト21の通気孔21hおよびプラテン41の通気孔31aを経て通気流路42内に吸引される。このため、搬送ベルト21上に送り出された記録媒体は、搬送ベルト21の通気孔21hでの吸気作用によって搬送ベルト21上に平坦な状態で保持される。従って、記録動作中、搬送ベルトに対して記録媒体がずれることはなくなる。さらに、各記録ヘッドと記録媒体との間隔は、予め定めた間隔に保たれ、記録ヘッドに対して記録媒体が接触することはなくなる。以上により、良好な画像を形成することができる。
【0030】
一方、吸気ファン47の排気口45A2から排出された空気は、図5に示すように、排気通路48に導かれて駆動ローラ24の周面へと吹き付けられ、スリット22aを経て駆動ローラ24内に導入される。駆動ローラ24内に導入された空気は、スリット22aを通過して、駆動ローラ24の外周面に掛け渡されている搬送ベルト21へと送出された後、駆動ローラ24の通気孔21hを経て外部に噴出される。これにより、搬送ベルト21と共に駆動ローラ22のとの対向位置に達した記録媒体は、通気孔21hから噴出された空気の風圧によって搬送ベルトk21から分離され、排出トレイへと排出される。このように、本実施形態では、分離爪のような記録媒体に直接接触する分離機構を用いないため、記録媒体を傷付けることなく、記録媒体を搬送ベルトから分離することができる。
【0031】
また本実施形態では、図8に示すように、駆動ローラ22と第3搬送ローラ29とのニップ点NPから、その上流側に位置するプラテン41の前方部41Aの先端に至る距離を、駆動ローラ22の半径よりも小さくなるように設定している。従って、駆動ローラ22から搬送ベルト21の上方へと噴出される空気の範囲は、プラテン41の前方部41Aによって制限される。このように空気の噴出範囲を制限することで、記録媒体を駆動ローラ22のニップ点NPへと確実に導くことができる。すなわち、記録媒体が第3搬送ローラ29の下に到達するまでは、搬送ベルトから噴出される空気がプラテン41の前方部41Aによって遮断されているため、記録媒体が搬送ローラの上方へと吹き上げられることはなく、記録媒体は確実にニップ点NPへと導かれる。なお、ニップ点NPに到達する直前で記録媒体に空気が吹き付けられたとしても、その時点で記録媒体は第3搬送ローラ29の下方に達しているため、第3搬送ローラ29との当接により記録媒体の上方へと吹き上がりは規制される。また、本実施形態では、搬送ベルトへの記録媒体の吸引と、搬送ベルトからの記録媒体の分離とを、単一のファンの吸気、排気の双方を利用して行なっている。このため、吸気と排気のそれぞれに専用のファンを設置する場合に比べて、コストを大幅に低減することができる。
【0032】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を、図9および図10の平面図に基づき説明する。なお、図9および図10において、上記第1の実施形態と同一もしくは相当部分には同一符号を付し、重複説明は省略する。
【0033】
この第2の実施形態では、吸気ファン47によって排気通路48に排出された空気を駆動ローラ22の両側部に近い部分に集中させ、中央部分からは空気を排出させないような構成となっている。すなわち、図9に示す例では、駆動ローラ22の両側部分の領域R1,R2にのみスリット22aを形成し、両領域の間の領域R3にはスリットを設けない構成となっている。これによれば、領域R1,R2に設けられたスリットのみから空気が送出されるため、搬送ベルトに保持された記録媒体の両側部のみに空気が噴出されることとなる。これによれば、吸気ファンから排出される空気量を増大させなくとも、記録媒体に対してより強い風圧を掛けることが可能となり、搬送ベルトからの記録媒体の分離をより確実に行うことができる。
【0034】
一方、図10に示す例では、第1の実施形態と同様に、駆動ローラ22の周面全域にスリット22aを設けている。しかし、排気通路48の中央部分に排気を駆動ローラ22の両側部分にのみ導くようなガイド部材44Dを設け、分割した2つの排気通路48A,48Bを形成したものとなっている。これによれば、吸気ファン47から排出された空気を駆動ローラ22の両側部領域R1,R2に位置するスリットのみから空気を送出させることができ、図9に示す例と同様の効果を得ることができる。
【0035】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を図11に基づき説明する。なお、図11において、上記第1の実施形態と同一もしくは相当部分には同一符号を付し、その説明の詳細は省く。
【0036】
この第3の実施形態では、吸気ファン47から送出された排気量のうち、駆動ローラへと送られる排気量の割合を調整する排気量調整機構を備えたものである。この排気量調整機構は、排気通路48内に回動中心軸44E2を中心として移動可能な排気量調整フィン44E1によって構成される。この排気量調整フィン44E1の位置を例えば、図11(a)に示すように下側に移動させた場合には、吸気ファン47から排気された空気の殆どを駆動ローラへと導くことができ、搬送ベルトから高い風圧の空気を噴出させることができる。また、図11(b)に示すように排気量調整フィン44E2を上側に移動させた場合には、吸気ファン47から排気された空気の一部が外部へと排出されるため、駆動ローラに導かれる空気量は減少し、搬送ベルトから噴出される空気の風圧を減少させることができる。なお、排気量調整フィン44E2は手動により位置を調整し得るようにしても良いが、モータなどのアクチュエータを用いて必要な位置に適宜移動させ得るようにすることも可能である。
【0037】
本実施形態によれば、排気量調整フィンの位置を調整することで、空気ファンの駆動状態(吸気量)を変化させることなく、記録媒体に吹き付けられる空気の風圧を調整することができる。このため、例えば、記録媒体が搬送ベルトに付着し易い両面記録時には、吸気ファンから駆動ローラに導く空気量の割合を片面記録時より多く設定することで記録媒体の確実な分離を行うことができる。また、薄い記録媒体、あるいは腰の弱い記録媒体の使用時には、駆動ローラへ導く排気量のみを減少させることで、搬送経路上での記録媒体のばたつきを抑えつつ、排気による分離動作を行うことができる。但し、いずれの場合にも吸気ファンによる吸引力は維持されるため、搬送ベルト上での記録媒体の位置ずれが発生することはない。
【0038】
(その他の実施形態)
本実施形態では、吸気ファンの吸気によって記録媒体を搬送ベルト上に吸引・保持させるようにしたが、搬送ベルトへの記録媒体の吸引に静電気力を用いた静電吸着方式を用いることも可能である。例えば、上記各実施形態と同様の構成において、搬送ベルトを帯電させる帯電手段を設け、記録媒体を静電気によって吸着させるようにする。この場合、吸気ファンによる吸引力は記録媒体を搬送ベルトに吸着させるための補助手段、不要なインクミストを吸引するミスト吸引手段、搬送ベルトから記録媒体を分離させる分離手段として用いる。なお、静電吸着方式を用いる場合には、搬送ベルトの水平部分よりも手前で搬送ベルトの徐電を行う徐電部を設けることが望ましい。
【符号の説明】
【0039】
1 インクジェット記録装置
10 給紙部
20 ベルト吸引搬送部
21 搬送ベルト
21h 通気孔
22 駆動ローラ
22a スリット
30 ヘッドユニット部
40 排紙部
42 吸気通路
47 吸気ファン
48 排気通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送する搬送経路を構成する搬送ベルトと、前記搬送ベルト上に記録媒体を吸引・保持させる吸引手段と、前記搬送ベルト上に保持された記録媒体にインクを吐出する記録ヘッドと、を備えたインクジェット記録装置であって、
前記搬送ベルトによって形成される記録媒体の搬送経路の終端位置において前記搬送ベルトが掛け渡される周面部を有すると共に、前記周面部に複数の通気孔を形成した筒状ローラと、
前記筒状ローラの周面部のうち、前記搬送ベルトが掛け渡されていない部分に向けて空気を排出する排気手段と、を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記搬送ベルト上から空気を吸引する吸気部と、前記吸気部によって吸引した空気を排出する排気部とを有するファンを備え、
前記ファンの前記吸気部によって前記吸引手段を、前記ファンの前記排気部によって前記排気手段をそれぞれ構成することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記搬送ベルトは、複数の通気孔を配置した無端ベルトであることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記排気手段によって前記筒状ローラの周面に向けて排出された空気は、前記筒状ローラの前記通気部および前記搬送ベルトの前記通気孔を通過して前記搬送経路の終端位置に達した記録媒体に吹き付けられることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記搬送ベルトによって形成される搬送経路の終端位置には、前記搬送ベルト上に保持された記録媒体を前記搬送ベルトとの間で挟持する搬送ローラを備え、
前記筒状ローラから前記搬送ベルトへと空気を噴出する範囲は、前記搬送ローラと前記搬送ベルトとが接触するニップ点より上流側において、前記搬送ローラの半径より小さい範囲に制限されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記排気手段から送出される排気量のうち、前記筒状ローラへと導く排気量の割合を制御する制御手段を、さらに備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記筒状ローラへと導く排気量の割合が、同一の記録媒体の一方の面のみに記録を行う片面記録時に比べて、同一の記録媒体の表面と裏面とに順時記録を行う両面記録時の方が多くなるように制御することを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記両面記録時において、一方の面を記録するときに比べ、他方の面を記録するときには、前記筒状ローラへと導く排気量を多くすることを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記排気手段から送出された排気のうち、前記駆動ローラへと導く排気量を調整する排気量調整フィンを備えることを特徴とする請求項7または8に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記吸引手段は、前記搬送ベルトを帯電させることにより、前記記録媒体を静電気力によって前記記録媒体を前記搬送ベルトへ吸着させることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−1553(P2013−1553A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137236(P2011−137236)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】