説明

インクジェット記録装置

【課題】ガイドシャフトへインクが付着することを抑えることのできるインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】インクジェット記録装置1は、インクジェット方式の記録ヘッドを搭載して往復移動するキャリッジ10と、キャリッジの移動を案内するガイドシャフト7とを有している。また、インクジェット記録装置1は、記録ヘッドの回復処理を行う回復処理部21と、記録ヘッドで記録を行う際に、回復処理部21に対応するガイドシャフト7の領域を覆うカバー26とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドから記録媒体へインクを吐出して記録を行う際に発生するインクミストの、装置への付着が抑えられたインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置では、記録ヘッドから吐出されるインクの小液滴化が求められている。インク滴の小液滴化が進むと、吐出されたインク滴が記録媒体上にたどり着く前に失速して空気中に浮遊する浮遊物になってしまう、所謂ミストが発生することがある。このミストが、キャリッジのガイドシャフトに付着すると、ガイドシャフトとキャリッジとの間の摺動抵抗がそこで増大してしまい、キャリッジの位置精度が低下してしまう可能性がある。
【0003】
このようなキャリッジとガイドシャフトとの間のミストによる摺動抵抗の増大を防ぐために、特許文献1には、ガイドシャフトに付着したインクを除去することが可能なインクジェット記録装置について開示されている。特許文献1では、キャリッジとガイドシャフトとが周方向に部分的に接触して摺動するように、キャリッジ側の軸受けの内面に、周方向に凹凸が形成されている。これにより、キャリッジとガイドシャフトとの間の接触面積を小さくし、そこでの面圧が高くされ、ガイドシャフトに付着したインクが効率的に除去されようにしている。また、周方向の全体に亘ってキャリッジをガイドシャフトに対して摺動させるように、所定の走査ごとにガイドシャフトがキャリッジに対して回転することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−069567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているガイドシャフトに付着したインクの除去のための構成では、ガイドシャフトに付着したインクを除去する部分について、キャリッジによる走査を行うことが求められる。このインク除去のためのキャリッジの走査により記録を行うことができない期間が生じ、記録のスループットが低下する可能性がある。
【0006】
本発明は、とくに回復処理を行う回復手段の近傍において、ガイドシャフトへインクが付着することを抑えることのできるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、インクジェット方式の記録ヘッドを搭載して往復移動するキャリッジと、前記キャリッジの移動を案内するガイドシャフトと、前記記録ヘッドの回復処理を行う回復手段と、前記記録ヘッドで記録を行う際に、前記回復手段に対応する前記ガイドシャフトの領域を覆うカバーと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、とくに回復処理を行う回復手段の近傍において、ガイドシャフトへのインクミストの付着を抑えることができるので、付着したインクによってキャリッジとガイドシャフトとの間の摺動抵抗が変化することを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置を示した斜視図である。
【図2】図1のインクジェット記録装置におけるガイドシャフト周辺について模式的に示した断面図である。
【図3】図1のインクジェット記録装置の内部の構成について示した斜視図である。
【図4】(a)は、キャリッジが回復処理部から離間したときのカバー周辺について示した正面図であり、(b)は、キャリッジが回復処理部に対応した位置にあるときのカバー周辺について示した正面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置におけるカバー周辺について示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置の模式的な斜視図である。図2は、図1のインクジェット装置の内部構造を示す模式的な縦断面図である。図3は、図2のインクジェット記録装置の内部構造を示す模式的な斜視図である。
【0011】
図1において、インクジェット記録装置1は、プロッタ(カラープロッタ)として構成されている。インクジェット記録装置1はスタンド2の上部に固定されており、スタンド2の下部にはインクジェット記録装置1が移動自在なようにキャスタ2aが取り付けられている。インクジェット記録装置1は操作部3を備えており、この操作部3に設置された各種のスイッチ等により、紙サイズ、オンライン/オフライン、コマンドなどが指示される。ロール紙収納部の記録媒体(ロール紙)4は、操作部3からの指示に基づいて画像形成装置の内部へ搬送され、カラー画像が形成されたロール紙4は排出口5から矢印A方向に排出される。
【0012】
図1ないし図3に示されるように、キャスタ2a付きスタンド2の上部には、所定間隔離れて向き合う2枚の支持部材6A、6Bが固定されている。支持部材6A、6Bの間には円形断面の円柱状に形成されたガイドシャフト7が設置されている。ガイドシャフト7は、記録媒体搬送方向(矢印A方向)と交差するキャリッジ10の移動方向としての主走査方向(矢印B方向)に延びている。ガイドシャフト7は、記録媒体の搬送方向Aに直交した方向に延びている。ガイドシャフト7は、長手方向の複数箇所で、バックアップガイド8を介して筐体ステイ補強板9bに固定されている。バックアップガイド8は上下方向に調整可能に取り付けられている。筐体ステイ9は、その両端部で、支持部材6A、6Bに固定されている。ガイドシャフト7の搬送方向上流側には、ガイドシャフト7と平行にガイドレール16が配置されている。ガイドレール16は、筐体ステイ9に設けられたガイドレールステイ16aに上下方向に調整可能に取り付けられている。ガイドレールステイ16aは、主走査方向のバックアップガイド8の中間位置にそれぞれ固定されている。
【0013】
キャリッジ10は、ガイドシャフト7に沿って主走査方向Bに往復移動(摺動)可能に案内支持されている。また、キャリッジ10は、インクジェット方式で吐出口からインクを吐出可能な記録ヘッド50を有するカートリッジ11を、搭載可能に構成されている。キャリッジ10には、ガイドシャフト7が摺動可能に嵌合される軸受12が取り付けられている。軸受12は主走査方向に延びており、その下側には主走査方向に延びる開口が形成されている。ガイドシャフト7は、軸受12に嵌合されるとともに、その下側表面は開口から露出している。ガイドシャフト7は、この露出部分でバックアップガイド8を介して筐体ステイ補強板9bに固定されている。
【0014】
キャリッジ10を主走査方向Bに往復移動させるために、筐体ステイ9には駆動モータ13が配置されている。また、ガイドシャフト7の長手方向両端部の一方にある駆動モータ13にはプーリ14A、もう一方には14B(図示せず)が回転自在に配置されており、これら2つのプーリ14A、14Bには無端ベルト15が架け渡されている。この無端ベルト15の一部分にキャリッジ10が固定されている。
【0015】
駆動モータ13は、キャリッジ搬送駆動制御部(図示せず)から送信されてきた駆動制御パルス信号に基づいて制御される。従って、駆動モータ13が所定のタイミングで駆動してプーリ14Aが回転すると無端ベルト15と共にキャリッジ10が図3の矢印B方向に往復動する。この往復動の際、キャリッジ10は、ガイドシャフト7とガイドレール16に案内される。
【0016】
インクジェット記録装置1は、カラー記録が可能なように、キャリッジ10に、色ごとにインクを吐出可能な複数のカートリッジ11が着脱可能に装着されている。インクジェット記録装置1は、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの色のインクを吐出可能に形成されている。
【0017】
カートリッジ11は、記録ヘッド50とインクタンク51とを有して構成されている。カートリッジ11では、チューブ等を介して各色のインクタンク51へ一旦インクが供給され、インクタンク51からインク吐出部としての記録ヘッド50へインク流路を介してインクが供給される。このように、キャリッジ10には、記録ヘッド50とインクタンク51とを有するカートリッジ11が着脱可能に搭載されている。
【0018】
記録ヘッド50内のインクは、吐出口にてメニスカスを形成することにより安定に保持される。記録ヘッドにおけるインク流路内のそれぞれには、記録素子としての発熱素子(電気熱変換体)が備えられている。配線を通して発熱素子に通電して、その発熱素子から熱エネルギーを発生させることにより、流路内のインクが加熱されて膜沸騰により発泡し、そのときの発泡エネルギーによって吐出口からインク滴が吐出される。記録ヘッド50における発熱素子は、記録ヘッド制御部から送られてくるパルス信号により駆動される。このパルス信号は画像データに基づいて形成されたものであり、記録ヘッド50は、このパルス信号に基づいてインクを吐出することで画像を形成していく。
【0019】
上記のキャリッジ10のうち、矢印A方向の中央部分の軸受12とは反対側の端部には、図2に示されるように、ローラ17、ローラ18が回転自在に配設されている。ローラ17は、キャリッジの姿勢(記録媒体に対する位置)を保持するために固定されており、ローラ18は、支点18Aを中心に回転可能に取付けられ、バネ19によりガイドレール16を挟む方向に一定の力でバネ付勢されている。これらのローラ17、18がキャリッジ10の往復動に伴って回転し、キャリッジ10のガイドレール16に沿った主走査方向Bへの移動をガイドしている。
【0020】
このようなインクジェット記録装置1により、搬送手段による記録媒体の搬送動作と、ガイドシャフト7に沿ってキャリッジ10を移動させながら記録ヘッド50からインクを吐出して記録を行う記録動作と、を交互に行いつつ記録が行われる。
【0021】
また、キャリッジ10が往復移動可能な領域のうち支持板6Aの外側の領域には、図3に示されるように、キャリッジ10が待機する待機領域部20が形成されている。待機領域部20における所定の基準位置(ホームポジション)には、記録ヘッド50からのインク吐出を安定した状態で行えるように、記録ヘッド50からのインクの吐出状態が良好となるように回復させる回復処理部21が設けられている。
【0022】
記録ヘッド50における吐出口からインク滴を吐出して記録するインクジェット記録装置1においては、記録ヘッド50の吐出口からのインク揮発成分の蒸発によって、インクの増粘現象、インクの染料濃度上昇、インクの固着などが発生することがある。また、記録ヘッド50内のインクを長期間放置することにより、記録ヘッド50のインク流路内に気泡が発生すると、インクの正常な供給動作が妨げられる可能性がある。記録ヘッド50がこのような状態になることを回避するために、インクジェット記録装置1では、所定のタイミングで回復処理が行われる。本実施形態のインクジェット記録装置1では、記録ヘッド50の内部に貯留されたインクの状態を維持するための回復処理を行う回復処理部21が設けられている。本実施形態の回復処理部21は、記録ヘッド50における吐出口の形成された吐出口形成面に向き合っている。回復処理部21は、回復処理が行われる際には記録ヘッド50における吐出口形成面に対応する位置に配置され、そこで記録ヘッド50から吐出されたインクを吸引するキャップ22を有している。なお、回復処理部21は、回復処理駆動制御部(図示せず)から所定のタイミングで供給される駆動制御信号に基づいて制御される。
【0023】
次に、記録媒体4(ロール紙)を主走査方向に交差する方向に搬送するための搬送系について説明する。
【0024】
キャリッジレール7の斜め下方には、記録媒体4を搬送するための搬送ローラ23が配置されている。搬送ローラ23に対向する位置には、この搬送ローラ23よりも小径の従動ローラ24が配置されている。記録媒体4はこれら2つのローラ23、24に挟持されながら、ローラ23、24が回転することで矢印A方向(搬送方向)に搬送される。
【0025】
キャリッジ10がホームポジションから、そことは反対側の方向へ走査した際に、記録ヘッド50に向き合う位置には、記録媒体4の支持される面としてプラテン25が配置されている。記録媒体4のうちプラテン25上に載置された部分については、記録ヘッド50のインク吐出面から一定間隔だけ離れて配置されている。また、プラテン25よりも矢印A方向の下流側には、記録媒体4を所定の長さにカットするカッタ(図示せず)に向けて搬送するための搬送路が形成されている。
【0026】
上記した各部品・部材等は、これら各部品・部材等を制御する搬送ローラ駆動制御部(図示せず、以下同じ)、記録ヘッド制御部、キャリッジ搬送駆動制御部、および回復処理駆動制御部によって制御される。
【0027】
次に、図4(a)、(b)を用いて、ガイドシャフト7を覆うためのカバー26について説明する。
【0028】
記録ヘッド50によって記録が行われている間は、記録ヘッド50を搭載したキャリッジ10は回復処理部21から離れた位置にある。キャリッジ10が記録を行うために記録媒体の通過する領域にある間には、ガイドシャフト7における主走査方向に関してホームポジションに対応する位置(回復処理部側)に、その半径方向の外側部分を覆うためのカバー26が設けられている。
【0029】
カバー26は、円筒状あるいは多角形の筒形状に形成され、ガイドシャフト7の周方向の外側に配置されている。カバー26とガイドシャフト7との間には、バネ27が配設されている。ガイドシャフト7には、表面から半径方向の外側に突出したピン28が、ガイドシャフト7に固定されて取り付けられている。また、カバー26には、ガイドシャフト7の延在する主走査方向に沿って溝30が形成されている。また、ガイドシャフト7には、ガイドシャフト7に対して固定されてピン28が取り付けられている。ピン28は、ガイドシャフト7に固定された状態で、溝30を通ってカバー26の外側に突出している。従って、ピン28が溝の内部に沿って移動できる範囲だけ、カバー26がガイドシャフト7の軸方向に沿って、ガイドシャフト7に対して相対的に移動することができる。これにより、カバー26の移動できる範囲が、ガイドシャフト7の軸方向に沿う方向に関して規制されている。
【0030】
また、カバー26における内面の一部分には、バネ27が取り付けられている。バネ27におけるキャリッジ側の一端部が、カバー26における内面のキャリッジ側の端部に近い位置に取り付けられている。また、バネ27におけるキャリッジから遠い側の他端部がピン28に取り付けられて、バネ27がガイドシャフト7に対して取り付けられている。カバー26に力が付加されてなく、バネ27に力が作用していない状態では、ピン28は図4(a)に示されるように、溝30の内部でキャリッジ10から最も遠い部分に位置している。また、図4(b)に示されるように、キャリッジ10が回復処理部21に対応する位置に移動したときには、カバー26がキャリッジ10によって外側に押されてピン28が移動すると共にバネ27が圧縮され、バネ27が開く方向に付勢される。
【0031】
このように、記録ヘッド50からのインク吐出によって記録が行われている間には、カバー26がバネ27によってバネ27の開く方向に付勢されることで、回復処理部21に対応する位置でカバー26がガイドシャフト7の周囲を覆うように配置されている。つまり、カバー26は、回復処理部21によって記録ヘッド50の回復処理が行われる際の、ガイドシャフト7におけるキャリッジ10の主走査方向への移動を案内している領域Rについて、キャリッジ10がそこを離れたときに覆うことが可能に配置されている。図4(a)に示されるように、キャリッジ10がホームポジション以外の位置を走査しながら記録ヘッド50によって記録が行われている間には、カバー26は、回復処理部21に対応する部分の領域Rを覆う場所に位置する。
【0032】
記録が行われずに記録ヘッド50が待機している間や、記録ヘッド50の回復処理が行われる間には、キャリッジ10は、回復処理部21に対応する部分(ホームポジション)に位置する。そのためにキャリッジ10がホームポジションへ移動する際には、キャリッジ10はカバー26を外側に押し込み、カバー26を移動させながら回復処理部21に対応する領域Rまで移動する。キャリッジ10が図4(b)に示されるようにホームポジションに到達すると、予めそこに位置していたカバー26はキャリッジ10によって外側に押し退けられ、キャリッジ10よりもさらに主走査方向の外側に位置する。このとき、カバー26に取り付けられたピン28が溝の内部におけるキャリッジ側の端部の近くの位置に到達するまで、カバー26がキャリッジ10に押されて主走査方向の外側に移動する。バネ27がカバー26の一端部に取り付けられた状態でピン28が溝30の内部のキャリッジ10の近い側に移動するので、カバー26の一端部に取り付けられたバネ27の一端部とピン28に取り付けられたバネ27の他端部との間の距離が短くなる。これにより、バネ27が圧縮され、ピン28及びカバー26には、バネ27が開くように復元する方向への力が付加される。このように、バネ27によってピン28がキャリッジから離れる方向に力を受け、カバー26がキャリッジに向かう方向へ付勢されながら、カバー26がキャリッジ10から押されることによって外側に移動する。従って、バネ27によってカバー26がキャリッジ10へ向かう方向に付勢されながら、カバー26がキャリッジ10によって押されて移動することになる。
【0033】
このように、カバー26とガイドシャフト7との間には、弾性体としてのバネ27が配置され、バネ27における一部(第1の部分)が、ガイドシャフト7に対して主走査方向へ相対移動不能に取り付けられている。また、バネ27における一部(第2の部分)がカバー26に対して相対移動不能に取り付けられている。これにより、回復処理部21によって記録ヘッド50の回復処理が行われるときには、カバー26は、バネ27によってキャリッジ10の方へ付勢される。
【0034】
このように、キャリッジ10が回復処理部21に対応する位置にある間は、カバー26がキャリッジ10の側へ付勢されている。そして、キャリッジ10が再び回復処理部21に対応する位置から離れて記録を行うために記録媒体の通過する領域へ移動すると、キャリッジがカバー26から離間し、バネ27の復元力によってカバー26が移動する。その際、ピン28が溝30内におけるキャリッジ10とは反対側の方向へ移動する。そして、図4(a)に示されるように、再びピン28が溝30の内部におけるキャリッジ10とは反対側の端部に近い位置まで到達すると、カバー26は回復処理部21に対応する領域Rを覆う位置に配置される。すなわち、カバー26は、キャリッジ10が回復処理部21から離間したときに、回復処理部21によって記録ヘッド50の回復処理が行われる際のガイドシャフト7におけるキャリッジの主走査方向への移動を案内している領域Rに移動して、その領域Rを覆う。そして、カバー26は、回復処理の際にガイドシャフト7におけるキャリッジ10の主走査方向への移動を案内している領域Rを覆う位置(第1の位置)と、記録ヘッド50の回復処理が行われる際に退避した位置(第2の位置)との間でのみ移動が可能である。このとき、溝30によって、カバー26による移動範囲が規制されている。
【0035】
キャリッジ10が記録ヘッド50からのインク吐出により記録を行うために記録媒体の通過する領域にあるときには、カバー26がガイドシャフト7における回復処理部21に対応した位置を覆うように配置される。また、キャリッジ10がホームポジションにあるときには、カバー26が、ガイドシャフト7における主走査方向に対してキャリッジ10の外側の位置を覆うように配置される。従って、キャリッジ10が記録媒体上にあるときには、ガイドシャフト7の回復処理部21に対応した位置がカバー26によって覆われることで、回復処理部21で生じたインクミストがガイドシャフトに付着することを抑えることができる。
【0036】
本実施形態のインクジェット記録装置では、回復処理のために、回復処理部21のキャップ22内に予備吐出が行われる。予備吐出は、キャップ22内に向かって、記録ヘッド50の吐出口から画像の形成に寄与しないインクを吐出させることによって、記録ヘッド50の良好なインク吐出状態を維持するための記録ヘッド50の回復処理である。
【0037】
また、予備吐出が行われるための時間を短縮させるために、キャップ22を記録ヘッド50に密着させないまま記録ヘッド50からキャップ22に向けてインク吐出が行われる。この場合には、予備吐出が行われた後に、記録ヘッド50から吐出されたインク滴の中に、キャップ22にたどり着く前に失速し、記録ヘッド50とキャップ22との間に残るインク滴がある。そして、この記録ヘッド50とキャップ22との間に残ったインク滴が、インクミストとしてそこで浮遊する場合がある。この状態でキャリッジ10が記録媒体の通過する領域に移動すると、ガイドシャフト7と回復処理部21との間にインクミストが浮遊した状態になってしまう。また、予備吐出で行われるインク吐出の数は、記録中に行われるインクの吐出よりも多くなる場合もあり、予備吐出が行われた後には比較的多くのインクミストが、ガイドシャフト7と回復処理部21との間に浮遊する場合がある。
【0038】
そのため、仮に、ガイドシャフト7にカバー26が設けられていないインクジェット記録装置1で予備吐出が行われると、ガイドシャフト7と回復処理部21との間に浮遊するインクミストがガイドシャフト7に付着する可能性がある。キャリッジ10が予備吐出を終えて移動した後に、回復処理の際に生じたインクミストがそこに残り、ガイドシャフト7に付着する可能性がある。特に、ガイドシャフト7における回復処理部21に対応する領域では、ガイドシャフト7における他の箇所よりも多くのインクミストがガイドシャフト7に付着する可能性がある。
【0039】
キャリッジ10が記録を行うために記録媒体の通過する領域に移動したときには、カバー26がキャリッジに移動に追従してガイドシャフト7における回復処理部21に対応する位置を覆う位置に移動する。予備吐出が行われた後でキャリッジ10が記録媒体の通過する領域へ移動したときには、ガイドシャフト7におけるインクミストの最も付着し易い部分のみがカバー26によって覆われることになる。ガイドシャフト7における最もインクミストの付着し易い部分のみがカバー26によって覆われることになるので、比較的小さなカバー26によってインクミストの付着し易い部分を効率的に覆うことができる。ガイドシャフト7の主走査方向に沿う長さを短くしたカバー26によって、最もインクミストの付着し易い部分に対して、インクミストの付着を抑えることができる。カバー26を小さくすることにより、ガイドシャフト7におけるカバー26の設置のためのスペースを小さくすることができる。従って、インクジェット記録装置を小型化することができる。
【0040】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る記録装置について説明する。なお、上記第一実施形態と同様に構成される部分については図中同一符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0041】
図5に示されるように、第2実施形態におけるインクジェット記録装置のガイドシャフト7を覆うために用いられるカバー29は、蛇腹状の形状を有している点で第1実施形態と異なる。また、第2実施形態のカバー29は、一部がガイドシャフト7に対して相対的に移動しないように、ピン28によってガイドシャフト7に固定されている。
【0042】
ピン28は、ガイドシャフト7の表面から半径方向に突出するようにガイドシャフト7に固定されて取り付けられている。このピン28が、カバー29に形成されている孔の内部に挿入され、カバー29におけるピン28と接続された部分が、ガイドシャフト7に対して相対移動のできないように固定される。カバー29の主走査方向におけるキャリッジ10から遠い方の一端部が、ガイドシャフト7に固定されて取り付けられている。このように、カバー29は、その一部が、ガイドシャフト7に対して相対移動不能に取り付けられている。
【0043】
カバー29は可撓性を有する樹脂によって形成されている。さらに上述のように、カバー29は、主走査方向に交差する方向へ折り目が形成された伸縮自在な蛇腹状の形状を有している。また、カバー29は、ガイドシャフト7に取り付けられている一方の側の端部とは反対側の他方の側の端部では、ガイドシャフト7に対して固定されずに移動可能である。従って、カバー28は、ガイドシャフト7に対して取り付けられている部分よりもキャリッジ10に近い側の部分が、キャリッジの移動に追従してガイドシャフト7に対して相対移動可能である。そのため、カバー29は、蛇腹状に折り目が形成されている部分について、折り畳まれたり、伸ばされたりすることで、主走査方向に関する長さを変化させることができる。
【0044】
キャリッジ10が予備吐出を行う、あるいはキャリッジ10が待機するために、回復処理部21に対応する位置に到達したときには、キャリッジ10によってカバー29のキャリッジ側の端部が主走査方向の外側に押される。カバー29が外側に押されると、カバー29におけるキャリッジ10から遠い側の端部がガイドシャフト7に対して固定された状態でカバー29のキャリッジ側の一端部が押されるので、カバー29の蛇腹状の折り目部分が折り畳まれて変形する。その結果、カバー29の主走査方向への長さが縮小される。カバー29が縮小されて押し退けられた部分にキャリッジ10が位置することで、ガイドシャフト7における回復処理部21に対応する位置にキャリッジ10が配置される。
【0045】
また、インクジェット記録装置によって記録が行われる際には、キャリッジ10が記録媒体の通過する領域に対応した位置に移動する。このとき、キャリッジ10は回復処理部21に対応する位置から記録媒体の通過する領域の方へ移動するので、キャリッジ10がカバー29から離間する。これにより、キャリッジ10によって押圧されて蛇腹状に折り目が形成されている部分に沿って折り畳まれていたカバー29から押圧力が開放され、蛇腹状に折り畳まれていたカバー29が、自身の復元力によって復元されて主走査方向に伸ばされる。このとき、カバー29は、主走査方向へ伸ばされた結果、回復処理部21に対応する位置がカバー29によって覆われるように、ガイドシャフト7の周囲を覆う。そのため、予備吐出が行われた後に、ガイドシャフト7におけるインクミストの最も付着し易い部分がカバー29によって覆われることになる。このように、キャリッジ10が回復処理部21から離間したときに、カバー29の一部が、記録ヘッド50の回復処理が行われる際のガイドシャフト7におけるキャリッジ10の主走査方向への移動を案内している領域に移動して、その領域を覆う。
【0046】
このように本実施形態によれば、キャリッジ10が記録媒体の通過する領域に移動したときに、蛇腹状に形成されたカバー29がガイドシャフト7における回復処理部21に対応する位置を覆う。そして、キャリッジ10が回復処理部21に対応した位置に移動したときには、カバー29が蛇腹状の折り目に沿って折り畳まれ、カバー29の主走査方向に沿った長さが縮小される。従って、記録ヘッド50の回復処理を行うためにキャリッジ10が回復処理部21に対応する位置に移動しカバー29が回復処理部21に対応する位置から押し退けられて縮小されたときに、カバー29の占める領域の主走査方向への長さをより短くすることができる。カバー29が回復処理部21に対応する位置から押し退けられたときのカバー29の主走査方向への長さLをより短くすることができるので、インクジェット記録装置におけるカバー29の設置のために必要とされるスペースがより小さくて済む。従って、インクジェット記録装置をより小型化することができる。
【0047】
なお、蛇腹状のカバー29が自身の復元力によって復元されて主走査方向に伸ばされる際に、復元力が不足して回復処理部21に対応する位置を十分に覆うことができないような場合には、弾性力を付加するために別途バネ等が用いられても良い。また、蛇腹状のカバー29が主走査方向に関して十分に長さを有している場合には、カバー29におけるガイドシャフト7に取り付けられた一端部とは反対側の端部が、キャリッジ10に取り付けられることとしても良い。また、キャリッジ10が記録媒体の通過する領域に移動したときに、回復処理部21に対応する位置を十分に覆うことができるのであれば、他の構成が用いられても良い。
【0048】
なお、本実施形態では、回復処理部は、記録ヘッド50から画像の形成に寄与しないインク吐出を行う予備吐出を行うこととしたが、本発明はこれに限定されない。回復処理部は、記録ヘッド50の吐出口からインクを吸引することによって記録ヘッド50内部のインクの状態を良好に維持する吸引回復を行うこととしても良い。また、その他の種類の回復処理が行われても良く、記録ヘッド50内部のインクの状態を良好に維持するための、その他の種類の構造による回復処理部が用いられて、回復処理が行われることとしても良い。
【符号の説明】
【0049】
7 ガイドシャフト
10 キャリッジ
21 回復処理部
26、29 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット方式の記録ヘッドを搭載して往復移動するキャリッジと、
前記キャリッジの移動を案内するガイドシャフトと、
前記記録ヘッドの回復処理を行う回復手段と、
前記記録ヘッドで記録を行う際に、前記回復手段に対応する前記ガイドシャフトの領域を覆うカバーと、
を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記カバーは、前記キャリッジが前記回復手段で回復処理を行う場所に移動するのに伴って、前記ガイドシャフトに沿って移動または変形することが可能であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記カバーは前記ガイドシャフトの周囲を覆う筒形状を有しており、前記領域において前記キャリッジの移動に追従して移動し、前記キャリッジが前記領域にあるときは前記カバーが前記領域の外に移動し、前記キャリッジが前記領域から離れたら前記カバーが前記領域を覆うことを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記カバーと前記ガイドシャフトとの間に弾性体が配置され、前記弾性体の第1の部分が前記ガイドシャフトに対して主走査方向へ相対移動不能に取り付けられ、前記弾性体の第2の部分が前記カバーに対して相対移動不能に取り付けられ、前記回復手段によって前記記録ヘッドの回復処理が行われているときには、前記カバーは前記キャリッジの方へ付勢されていることを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記カバーは蛇腹状の形状を有しており、前記キャリッジの移動に追従して蛇腹が伸縮することが可能であり、前記キャリッジが前記領域あるときは前記カバーが縮んで前記カバーが前記領域の外に退避し、前記キャリッジが前記領域から離れたら前記カバーが伸びて前記カバーが前記領域を覆うことを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記蛇腹状の形状のカバーの一方の端部が前記ガイドシャフトに対して固定され、他方の端部が移動する前記キャリッジに接して前記カバーが伸縮することを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−56429(P2013−56429A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194805(P2011−194805)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】