説明

インクジェット記録装置

【課題】より容易に記録ヘッドの部品の交換を行う。
【解決手段】インクジェット記録装置1は、キャリッジ4の底板4aに設けられた開口部を通じてインクを吐出するノズルを有し、キャリッジ4の底板4aに対して着脱可能に立設してX軸方向に沿って並ぶ複数のヘッド部3aと、ヘッド部3aを駆動する駆動電圧をヘッド部3aに出力する基盤を有し、ヘッド部3aの各々に対して個別に載置されてヘッド部3aと電気的に接続された複数の接続ユニット3bと、複数の接続ユニット3bの各々の上端部と当接した状態でキャリッジ4に着脱可能に固定され、底板4aと協働して複数のヘッド部3a及び複数の接続ユニット3bを挟持する固定部材200と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを吐出するノズルを有し、当該ノズルにインクを供給するヘッド部と、ヘッド部に接続されてノズルからのインクの吐出タイミングを制御する基盤と、を有する記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置がある。複数の記録ヘッドを有するインクジェット記録装置の記録ヘッドは、夫々がヘッド部と基盤とを有する。
従来の記録ヘッド300は、図10に示すように、ヘッド部301と基盤302とがネジ留めされている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−90692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、記録ヘッド300のヘッド部301は、所定期間以上の使用又は所定量以上のインクの吐出により性能の低下が生じた場合や、ノズルの目詰まり等の故障が生じた場合等、各種の交換理由に応じて交換される。一方、記録ヘッド300の基盤302は、故障を生じない限り交換されることがない。よって、ヘッド部301の交換に際して、ユーザは基盤302から古いヘッド部301を取り外して新たなヘッド部301を取り付ける。
【0005】
しかしながら、従来の記録ヘッド300は、ヘッド部301と基盤302とがネジ留めされているため、ユーザはヘッド部301の交換のたびに基盤302から古いヘッド部301を取り外すために当該ネジを外さなければならない上、新たなヘッド部301を当該基盤302にネジ留めする作業を行わなければならず、ヘッドの交換のために煩雑な作業を強いられていた。
また、ヘッド部301の交換の際に、記録ヘッド300から取り外されたネジがインクジェット記録装置内(例えば、複数の記録ヘッド300が設けられたキャリッジ内等)に落ちてしまうことがあった。この場合、落ちたネジが他の記録ヘッド300やキャリッジを傷つけてしまう場合があった。また、落ちたネジを回収することが困難であった。
【0006】
本発明は、より容易に記録ヘッドの部品の交換を行うことができるインクジェット記録装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決のために、本発明のインクジェット記録装置は、キャリッジの底板に設けられた開口部を通じてインクを吐出するノズルを有し、当該キャリッジの底板に対して着脱可能に立設して前記底板に沿う所定の方向に沿って並ぶ複数のヘッド部と、前記ヘッド部を駆動する駆動電圧を前記ヘッド部に出力する基盤を有し、前記ヘッド部の各々に対して個別に載置されて前記ヘッド部と電気的に接続された複数の接続ユニットと、前記複数の接続ユニットの各々の上端部と当接した状態で前記キャリッジに着脱可能に固定され、前記底板と協働して前記複数のヘッド部及び前記複数の接続ユニットを挟持する固定部材と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明において、前記固定部材は、前記所定の方向の両端が前記キャリッジの前記所定の方向に沿って対向する両側面部に対してラッチ機構を介して着脱可能に設けられる構成としても良い。
【0009】
また、本発明において、前記固定部材は、前記接続ユニットとの当接部が弾性を有する構成としても良い。
【0010】
また、本発明において、前記複数のヘッド部が前記所定の方向に沿って並ぶヘッド部の列が複数設けられ、前記固定部材は、複数の前記ヘッド部の列の各々について個別に設けられる構成としても良い。
【発明の効果】
【0011】
本願発明によれば、本発明は、より容易に記録ヘッドの部品の交換を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】インクジェット記録装置の斜視図である。
【図2】キャリッジ4の斜視図である。
【図3】側板4b側からキャリッジ4の内部を見た場合の側面図である。
【図4】キャリッジ4を上方から見た概略説明図である。
【図5】記録ヘッド3の構成の一例を示す斜視図である。図5(a)は、ヘッド部3aと接続ユニット3bとが接続された記録ヘッド3の構成の一例を示す図である。図5(b)は、図5(a)の記録ヘッド3から接続ユニット3bが取り外されたヘッド部3aを示す図である。
【図6】図2に示すキャリッジ4内の一部の記録ヘッド3及び固定部材200の拡大図である。
【図7】図3に示すキャリッジ4内の一部の記録ヘッド3及び固定部材200の拡大図である。
【図8】ラッチ機構400の拡大図である。
【図9】図7に示す固定部材200がキャリッジ4から取り外された場合を示す図である。
【図10】従来の記録ヘッドの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態たるインクジェット記録装置1について図1から図9に基づいて説明を行う。
図1はインクジェット記録装置1の全体を示した斜視図である。
【0014】
インクジェット記録装置1は、記録媒体を水平方向に沿って搬送する搬送装置2と、搬送される記録媒体に上方からインクを吐出する複数の記録ヘッド3(図4等参照)を搭載するキャリッジ4と、キャリッジ4を記録媒体の搬送方向に直交する水平方向に沿って搬送する主走査装置5と、キャリッジ4に搭載された各記録ヘッド3のノズルの保湿を行うノズル保湿部6と、キャリッジ4に搭載された各記録ヘッド3のメンテナンスを行うメンテナンス部7と、キャリッジ4に搭載された各記録ヘッド3へのインク供給を行うインク供給装置(図示略)と、これら各構成を制御する制御装置(図示略)と、全体を支持するフレーム100を主として備えている。
なお、以下の説明では、水平方向であって記録媒体の搬送方向に沿った方向をY軸方向、水平方向であってキャリッジ4の搬送方向に沿った方向をX軸方向又は主走査方向、鉛直上下方向をZ軸方向というものとする。
【0015】
[搬送装置]
搬送装置2は、駆動ローラ21及び従動ローラ(図示略)と、駆動モータ22と、搬送ベルト23と、を備えている。
駆動ローラ21及び従動ローラは、回転自在に軸支されており、駆動ローラ21は、X軸方向に延在するように配置されている。駆動モータ22は、駆動ローラ21を回転駆動するための駆動源であり、駆動ローラ21の一端側に取り付けられている。
搬送ベルト23は、無端状に形成され、駆動ローラ21と従動ローラとの間に架け渡されている。搬送ベルト23は、駆動ローラ21が回転すると駆動ローラ21と従動ローラとの間を周回してその上面に載置された記録媒体をY軸方向に沿った搬送方向Fに向かって搬送し、駆動ローラ21の回転が停止すると、両ローラ間での周回を停止し、記録媒体の搬送を停止する。
駆動モータ22は、制御装置の制御に従って、記録ヘッド3がX軸方向に沿った片道一回分の走査が終了すると、駆動ローラ21を所定量だけ回転させて記録媒体を搬送方向に所定距離だけ搬送させて停止させ、記録ヘッド3がX軸方向の反対方向への走査を開始して終了すると、駆動ローラ21を再度所定量だけ回転させて記録媒体を搬送方向Fに所定距離だけ搬送させて停止させることを繰り返し、記録媒体をいわゆる間欠搬送する。
なお、記録媒体としては、紙や布帛のほか、樹脂フィルムや金属類等を用いることが可能である。
【0016】
[フレーム]
図1に示すように、フレーム100は、X軸方向に沿って延在する矩形の本体部101と、本体部101におけるX軸方向一端部を支持する第一の土台部103と、本体部101におけるX軸方向他端部を支持する第二の土台部102とから主に構成されている。
第一の土台部103は、その内部にメンテナンス部7を格納保持しつつ本体部101の一端部を下方から支持している。また、第二の土台部102は、その内部にノズル保湿部6を格納保持しつつ本体部101の他端部を下方から支持している。
本体部101は、後述する主走査装置5の一対のキャリッジレール51,51をX軸方向に向けた状態で内側に格納保持しており、キャリッジ4は本体部101の内部でX軸方向に沿って搬送される。
また、第一の土台部103と第二の土台部102は、前述した搬送装置2を挟んでX軸方向の両側に配置され、本体部101は搬送装置2の上方に架設されている。これにより、搬送装置2による記録媒体の搬送方向に直交する方向でキャリッジ4を搬送しつつ当該キャリッジ4に搭載された各記録ヘッド3からインクを吐出して画像形成を行うことを可能としている。
【0017】
[主走査装置及びキャリッジ]
主走査装置5は、フレーム100の本体部101の内部において、X軸方向に沿って延在するように支持された棒状の一対のキャリッジレール51、51を備えている。これら一対のキャリッジレール51、51は、搬送装置2の搬送ベルト23の上方を跨ぐように設けられている。そして、キャリッジレール51、51には、箱状のキャリッジ4がX軸方向に沿って往復移動可能に支持されている。
【0018】
キャリッジ4は上部が開放された箱状の形状を有する筐体であり、X−Y平面に沿う底板4aに複数の記録ヘッド3が搭載される。キャリッジ4は、図1に示すように、Y軸方向における両側面の上部においてY軸方向両側に向かって腕部が延出されており、当該各腕部がそれぞれリニアガイドを介してキャリッジレール51、51の上部に載置されており、これによってキャリッジレール51、51上をX軸方向に沿って滑動可能となっている。
また、キャリッジレール51、51とキャリッジ4の腕部の間にはリニアモータが装備されている。即ち、各キャリッジレール51、51にはリニアモータの固定子が装備され、キャリッジ4の各腕部には可動子が装備されており、固定子側のコイルの電流制御によりキャリッジ4はX軸方向に沿った搬送動作が付与される。
【0019】
図2は、キャリッジ4の斜視図である。図3は、側板4b側からキャリッジ4の内部を見た場合の側面図である。図4は、キャリッジ4を上方から見た概略説明図である。なお、図2、図3では便宜上、側板4bの図示を省略している。
このインクジェット記録装置1では、Y(イエロー),Lm(ライトマゼンタ),Or(オレンジ),M(マゼンタ),Bk(ブラック),Bl(ブルー),Lk(ライトブラック),C(シアン),Lc(ライトシアン)の九色のカラーについてそれぞれ九つの記録ヘッド3を備え、合計81[基]の記録ヘッド3がキャリッジ4の底板4aに立設している。
各色彩の記録ヘッドは、図示のように、X軸方向に沿ってY,Lm,Or,M,Bk,Bl,Lk,C,Lcの順番で並んでおり、X軸方向に並ぶ各記録ヘッドの列の九つの記録ヘッド3は、Y軸方向に沿って千鳥状に並んで配置されている。つまり、複数の記録ヘッドがX軸方向に沿って並ぶ記録ヘッドの列が複数設けられ、記録ヘッドの列の夫々が、隣接する列の記録ヘッドに対して千鳥状の配置となるよう設けられている。
また、底板4aは各記録ヘッド3の取り付け位置毎にY軸方向に沿ったスリット状の開口部を有し、底板4aに対して上方から取り付けられた各記録ヘッド3は、開口部を通じてキャリッジ4の真下にインクの液滴を吐出するノズルを有している。
そして、前述のように、各色彩について、九つの記録ヘッド3を千鳥状に配置することで、キャリッジ4の底板4aにおけるY軸方向のほぼ全幅に渡る範囲内で任意の位置に各色彩のインクの吐出を行うことを可能としている。
【0020】
図5は、記録ヘッド3の構成の一例を示す斜視図である。図5(a)は、ヘッド部3aと接続ユニット3bとが接続された記録ヘッド3の構成の一例を示す図である。図5(b)は、図5(a)の記録ヘッド3から接続ユニット3bが取り外されたヘッド部3aを示す図である。
記録ヘッド3は、ヘッド部3aと、接続ユニット3bと、を有する。
ヘッド部3aは、インクを吐出するノズルを有し、接続ユニットの3bの内部に設けられた基盤から出力された駆動電圧に応じて、インク供給パイプ3cを通してインク供給装置から供給されたインクをノズルから吐出させる。吐出されなかった残留インクは、インク回収パイプ3dを介してインク供給装置に回収される。
ヘッド部3aは、キャリッジ4の底板4aに対して着脱可能に立設するよう取り付けられている。ヘッド部3aは、例えば、底板4aに設けられたヘッド部3aの開口部に対して嵌め込まれてキャリッジ4に取り付けられ、ノズルを記録媒体の上方において記録媒体に向けた状態で保持される。
【0021】
接続ユニット3bは、図2、図3に示すように、ヘッド部3aの夫々に対して個別に設けられる。また、図2、図3、図5(a)等に示すように、接続ユニット3bは、ヘッド部3a対して個別に載置される。ヘッド部3aに載置された接続ユニット3bは、例えば、図5(b)に示すような挿抜可能なバスインタフェース3gを介して着脱可能に保持されている。
図示しないが、接続ユニット3bの内部には、図10に示す基盤302と同様の機能を有する基盤が設けられている。基盤は、バスインタフェース3gを介してヘッド部3aと電気的に接続されており、ヘッド部3aを駆動するための駆動電圧をヘッド部3aに出力する。
【0022】
また、図2、図3に示すように、記録ヘッド3の列の各々の上方には固定部材200が設けられている。
固定部材200は、例えば、アルミや鉄等の金属を素材とし、その長手方向に直交する断面形状がコの字状に設けられた溝型の部材である。固定部材200は、キャリッジ4に取り付けられた場合に、溝の開口側を下向きにした状態でキャリッジ4に固定される。
【0023】
固定部材200は、複数の接続ユニット3bの各々の上端部と当接した状態でキャリッジ4に固定されることにより、底板4aと協働して複数の記録ヘッド3のヘッド部3a及び接続ユニット3bを挟持する。
具体的には、長手方向がX軸方向に沿うようにキャリッジ4に固定された固定部材200は、X軸方向に沿って並ぶ複数の記録ヘッド3の夫々の接続ユニット3bの上部と当接し、底板4aと協働して当該複数の記録ヘッド3を挟持する。これにより、固定部材200は、Z軸方向に沿って設けられた各記録ヘッド3のヘッド部3aと接続ユニット3bとの接続を保持すると共に接続ユニット3bの位置を規制する。
【0024】
図6は、図2に示すキャリッジ4内の一部の記録ヘッド3及び固定部材200の拡大図である。図7は、図3に示すキャリッジ4内の一部の記録ヘッド3及び固定部材200の拡大図である。
固定部材200は、図6、図7に示すように、X軸方向の端部が、ラッチ機構400によりキャリッジ4の側面部に固定されている。図6、図7では、固定部材200のX軸方向の一端側(側板4b側)について図示しているが、他端側(側板4c)についても、固定部材200は、同様のラッチ機構400によりキャリッジ4に固定されている。つまり、固定部材200は、X軸方向の両端が夫々、X軸方向上で対向するよう設けられたキャリッジ4の側板4b、4cに固定されている。
【0025】
図8は、ラッチ機構400の拡大図である。
図9は、図7に示す固定部材200がキャリッジ4から取り外された場合を示す図である。
ラッチ機構400は、固定部材200側に設けられた突起部401と、キャリッジ4の側板側に設けられた挟持部402とを有する。
突起部401は、固定部材200が接続ユニット3bに当接する際に下向きに突出するよう設けられている。突起部401は、その先端側に比して付け根部分が細くなるくびれ形状を有する。
挟持部402は、固定部材200が接続ユニット3bに当接する際の位置において突起部401を挟み込んで保持するよう設けられている。挟持部402は、例えば、V字状に設けられた弾性部402aと、弾性部402aのV字状の両端部に設けられた二つの当接部402b、402bとを有する。弾性部402aは、二つの当接部402b、402bを互いに近接される方向に当接部402b、402bを付勢する弾性部材であり、例えば金属ばね等からなる。二つの当接部402b、402bは夫々、例えば、X軸方向を中心軸とする円筒状の形状を有する。
【0026】
二つの当接部402b、402bは、その間に突起部401が割り込むことが可能に設けられており、間に割り込むように下降する突起部401の外周面と摺接して弾性部402aのV字の谷を広げるように互いに離間する。そして、図7、図8に示すように、突起部401の先端部が当接部402b、402bよりも下側に位置するまで下降すると、二つの当接部402b、402bは、弾性部402aの付勢により、突起部401の付け根部分のくびれ形状に入り込むように互いに近接するよう移動し、突起部401の先端部をV字状の内側で保持する。
一方、ラッチ機構400により固定された固定部材200に対して上方へ持ち上げる方向の力が加わると、突起部401の先端部が二つの当接部402b、402bの間を押し広げるように摺接しながら上昇する。このとき、二つの当接部402b、402bは互いに離間する方向に移動する。そして、固定部材200が持ち上げられることにより突起部401と二つの当接部402b、402bとの当接が解消される位置まで移動すると、キャリッジ4による固定部材200の固定が解消されて固定部材200が取り外される。このとき、二つの当接部402b、402bは、弾性部402aの付勢により互いに近接するよう移動する。
【0027】
このように、ラッチ機構400により、固定部材200は、キャリッジ4に対する取り付け及び取り外しを容易に行うことができる。即ち、固定部材200による記録ヘッド3のヘッド部3aと接続ユニット3bの挟持及び当該挟持の解消の切り替えを容易に行うことができる。
このため、ヘッド部3aの交換の際に、記録ヘッド3のヘッド部3aと接続ユニット3bとの接続の解消を容易に行うことができる。
【0028】
例えば、記録ヘッド3のヘッド部3aが所定期間以上の使用又は所定量以上のインクの吐出により性能の低下を生じたとみなされた場合や、ノズルの目詰まり等の故障を生じた場合等、ヘッド部3aは、各種の交換理由に応じて交換される。
ヘッド部3aの交換に際して、まず、交換対象となるヘッド部3aを有する記録ヘッド3の列の固定部材200がキャリッジ4から取り外されて、当該固定部材200及び底板4aの協働によるヘッド部3aと接続ユニット3bの挟持が解消される。次に、交換対象となるヘッド部3aを有する記録ヘッド3がキャリッジ4の底板4aから取り外される。次に、取り外された記録ヘッド3の接続ユニット3bからヘッド部3aが取り外され、新たなヘッド部3aが当該接続ユニット3bに接続される。次に、新たなヘッド部3aが取り付けられた記録ヘッド3のヘッド部3aがキャリッジ4の底板4aに取り付けられる。そして、取り外された固定部材200がキャリッジ4に再び取り付けられて、当該固定部材200と底板4aとの協働によりヘッド部3aと接続ユニット3bが挟持される。
ここで、ヘッド部3aと接続ユニット3bとが着脱可能に接続されており、固定部材200が底板4aと協働してヘッド部3aと接続ユニット3bを挟持しているので、ユーザは、固定部材200を取り外すだけでヘッド部3aに載置された接続ユニット3bを取り外すことができることとなり、ヘッド部3aと接続ユニット3bとの接続の解消を容易に行うことができる。そして、ユーザは、新たなヘッド部3aと接続ユニット3bとを接続し、当該新たなヘッド部3aを有する記録ヘッド3をキャリッジ4に取り付けた後、固定部材200を再度取り付けることによりヘッド部3aと接続ユニット3bを再度固定部材200及び底板4aに挟持させることができる。このように、本実施形態のインクジェット記録装置1は、ヘッド部3aの交換を容易に行うことができる。また、X軸方向に沿う記録ヘッドの列の複数のヘッド部3aの夫々に接続された複数の接続ユニット3bを、一つの固定部材200により規制することができる。
【0029】
また、本実施形態のキャリッジ4の側板4b、4cは、固定部材200の取り付け時にZ軸方向に沿う固定部材200の移動方向をガイドする複数のガイド部材500を有する。ガイド部材500は、図8等に示すように、上方が山型に形成された傾斜を有する板状の部材であり、Y軸方向について一つの固定部材200の取り付け位置を挟むように二つのガイド部材500が設けられている。固定部材200の取り付けを行うユーザは、図9に示すように当該二つのガイド部材500の間に固定部材200を沿わせるように固定部材200を下降させることにより、容易に固定部材200をキャリッジ4に取り付けることができる。
【0030】
また、固定部材200は、コの字状の開口部の逆側に取っ手202を有する。ユーザは、固定部材200の取り付けや取り外しを行う場合、取っ手202を把持することにより容易に固定部材200を取り回すことができる。
【0031】
また、固定部材200と複数の接続ユニット3bとの当接部が、弾性を有していてもよい。例えば、図7〜図9等に示すように、固定部材200の溝の内側から当該溝の両縁の端部よりも突出して延設されるように、ポリウレタン等の合成樹脂を素材とする発泡体203が固定部材200の延設方向に沿って設けられていてもよい。この場合、発泡体203と複数の接続ユニット3bの上部とが当接し、接続ユニット3bの上部の形状に応じて発泡体203が上方に持ち上げられるように変形することにより、発泡体203が接続ユニット3bのX軸方向の両側部の上端を包み込み、接続ユニット3bの位置を規制する。
【0032】
なお、本実施形態の接続ユニット3bは、図5(a)に示すように、ケーブル3fを着脱可能に接続するためのインターフェース3e、3eを有する。また、図2〜図7等に示すように、複数の記録ヘッド3の夫々の接続ユニット3bどうしは、ケーブル3fを介して接続されている。本実施形態では、Y(イエロー),Lm(ライトマゼンタ),Or(オレンジ),M(マゼンタ),Bk(ブラック),Bl(ブルー),Lk(ライトブラック),C(シアン),Lc(ライトシアン)の九色の夫々に対応する各色の記録ヘッド3の隣接する接続ユニットどうしがケーブル3fを介していわゆる数珠繋ぎに接続されている。また、各色の記録ヘッド3の接続ユニット3bのうち、Y軸方向の両端に位置する接続ユニット3bの隣接する接続ユニット3bがない側のインターフェース3eは、図示しない制御装置ケーブルを介して制御装置と接続されている。制御装置は、接続ユニット3bにより出力される駆動電圧に対応する駆動波形信号を生成し、制御装置ケーブルや、数珠繋ぎされた接続ユニット3b及びケーブル3fを介して各接続ユニットに駆動波形信号を出力する。各接続ユニット3bは、入力された駆動波形信号に応じた駆動電圧を出力する。
【0033】
このように、本実施形態の接続ユニット3bは、ケーブル3fにより数珠繋ぎに接続されているので、各々の接続ユニット3bと制御装置とを直接接続するためのケーブルを個別に有する必要がない。このため、各々の接続ユニット3bと制御装置とを直接接続する場合に比して、ケーブルの総延長が短くなる。即ち、ケーブルが短い分だけ低コストとすることができる。さらに、延設されたケーブルが外部の機器から受けるノイズ等の影響を小さくすることができる。
【0034】
本実施形態のインターフェース3eは、ケーブル3fの着脱が可能であるので、接続ユニット3bの故障等の理由により接続ユニット3bの効果が必要になった場合、交換対象となる接続ユニット3bのインターフェース3eとケーブル3fとの接続を解消することにより、当該接続ユニット3bを容易に交換することができる。この場合も、ヘッド部3aの交換と同様に、まず、交換対象となる接続ユニット3bを挟持する固定部材200の取り外しが行われる。そして、交換対象となる接続ユニット3bの取り外し及び新たな接続ユニット3bの取り付けが完了した後に、再度、固定部材200が取り付けられて新たな接続ユニット3bを有する記録ヘッドの列の複数の接続ユニット3bが当該固定部材200と底板4aとの協働により挟持される。
【0035】
[ノズル保湿部]
ノズル保湿部6は、搬送装置2から外れて、キャリッジレール51、51の他端部側に設けられている。即ち、非記録動作時に、キャリッジ4がキャリッジレール51、51の他端部のノズル保湿部6との対向位置まで移動し、かかる状態で各記録ヘッド3のノズルの保湿を行う。
即ち、このノズル保湿部6は、各ノズルに密着して、各ノズル内部を保湿液の貯蔵部に接続した状態とするためのものであり、主に、保湿液の貯蔵部とその昇降機構とにより構成されている。
【0036】
[メンテナンス部]
メンテナンス部7は、非記録動作時に各記録ヘッド3のメンテナンスを行う。メンテナンス部7は、搬送装置2から外れて、キャリッジレール51、51の一端部側に設けられている。即ち、キャリッジ4がキャリッジレール51、51の一端部のメンテナンス部7との対向位置まで移動した状態でメンテナンスが実施される。
このメンテナンス部7は、各記録ヘッド3のノズルの下面の汚れを拭き取る清掃装置と、メンテナンス対象となる記録ヘッド3によるインクの吐出を行う際の受け皿となるインクトレー(図示略)とを備えている。
上記清掃装置は、主に、ノズルに摺接するX軸方向に沿った回転軸回りに回転可能な清掃ローラと、当該清掃ローラをY軸方向に沿って搬送するローラ搬送機構とにより構成されている、清掃ローラは、キャリッジ4に搭載された九色のヘッド群の内の三色分のヘッド群の拭き取りが可能となるように、X軸方向における幅が設定されており、一往復半の移動動作により全ての記録ヘッド3の清掃を実施する。そして、これにより、インクの固化によるノズルの目詰まりを防止する。
また、メンテナンス時のインクトレーに対するインクの吐出は、インク供給装置のインク供給圧をもって行われ、これにより記録ヘッド3内のインク流路の詰まりなどを解消することができる。
【0037】
[発明の実施形態における技術的効果]
以上、本実施形態のインクジェット記録装置1によれば、ヘッド部3aと接続ユニット3bとが着脱可能に接続されており、固定部材200がX軸方向に沿う複数の接続ユニット3bの各々の上端部と当接した状態でキャリッジ4に着脱可能に固定されて底板4aと協働して複数のヘッド部3a及び複数の接続ユニット3bを挟持するので、ユーザは、固定部材200を取り外すだけでヘッド部3aに載置された接続ユニット3bを取り外すことができることとなり、ヘッド部3aと接続ユニット3bとの接続の解消を容易に行うことができる。そして、ユーザは、新たなヘッド部3aと接続ユニット3bとを接続し、当該新たなヘッド部3aを有する記録ヘッド3をキャリッジ4に取り付けた後、固定部材200を再度取り付けることによりヘッド部3aと接続ユニット3bを再度固定部材200及び底板4aに挟持させることができる。このように、固定部材200と底板4aとの協働によりヘッド部3aと接続ユニット3bを挟持する本実施形態のインクジェット記録装置1は、ヘッド部3aと基盤とをネジで留める必要がなくなり、接続ユニット3bに対するヘッド部3aの付け替えがより容易となる。また、ヘッド部3aと基盤302とをネジで留める必要がないので、ネジがキャリッジ4内等のインクジェット記録装置1の構成内に落ちてしまうことがなくなり、落ちたネジにより記録ヘッド3等が傷つくこともなく、また落ちたネジの回収が困難になる等の問題も生じない。即ち、本実施形態のインクジェット記録装置1によれば、ヘッド部3aの交換をより容易に行うことができる。
また、複数の記録ヘッドを有するインクジェット記録装置を組み立てる際、従来ではヘッド部301と基盤302とを一つずつネジで留めなければならず組み立て作業が煩雑だったが、本実施形態のインクジェット記録装置は、X軸方向に沿う記録ヘッドの列の複数のヘッド部3aの夫々に接続された複数の接続ユニット3bの位置を一つの固定部材200により保持することができるので、複数のヘッド部3aと接続ユニット3bとの接続の維持を一つの固定部材200により行うことができることとなり、インクジェット記録装置1の組み立てをより容易に行うことができる。
【0038】
また、固定部材200は、X軸方向の両端の夫々が、ラッチ機構400を介してキャリッジ4の側板4b、4cに着脱可能に設けられるので、キャリッジ4に対する固定部材200の着脱がより容易となり、ヘッド部3aや接続ユニット3b等、記録ヘッド3に係る各部品の交換に伴う固定部材200及び底板4aによるヘッド部3aと接続ユニット3bの挟持の有無の切り替えをより容易に行うことができる。
また、ラッチ機構400により固定部材200をキャリッジ4に取り付けることで、固定部材200をキャリッジ4に取り付けるためにネジ留め等を行う必要がなくなり、固定部材200の取り付けがより容易となることから、インクジェット記録装置1の組み立てをより容易に行うことができる。
また、ヘッド部3aは、箱状のキャリッジ4の底板4aに設けられ、固定部材200は、X軸方向の両端の夫々が、X軸方向について対向するよう設けられたキャリッジ4の側板4b、4cに固定されるので、固定部材200が固定されるための専用の構成を別途設ける必要がなく、より低コストで簡素な構成によりヘッド部3aと接続ユニット3bを挟持することができる。
【0039】
また、固定部材200と接続ユニット3bとの当接部が弾性を有することで、弾性を有する当接部(例えば、発泡体203等)と複数の接続ユニット3bとが当接し、接続ユニット3bの形状に応じて当接部が変形することにより、当接部が接続ユニット3bのX軸方向の両側部の上端を包み込み、接続ユニット3bを保持する。これにより、接続ユニット3bのX軸方向の揺れを当接部による包み込みにより防止することができ、より確実に接続ユニット3bの位置を規制することができる。
【0040】
また、複数のヘッド部3aがX軸方向に沿って並ぶ記録ヘッド3の列が複数設けられ、固定部材200が、X軸方向に沿う記録ヘッド3の列の夫々について個別に設けられるので、記録ヘッド3の部品の交換に際し、交換対象となる部品を有する記録ヘッド3が含まれる記録ヘッドの列に対応する固定部材200のみを取りはずせばよく、他の記録ヘッドの列の固定部材200によるヘッド部3aと接続ユニット3bの挟持を維持したままで交換対象となる記録ヘッド3の部品の交換を行うことができる。これにより、交換対象とならない記録ヘッド3のヘッド部3aと接続ユニット3bの挟持の解消を記録ヘッドの列単位に留めることができることから、交換対象でない記録ヘッド3のヘッド部3aと接続ユニット3bとの接続が解消されてしまう等の事象の発生の可能性をより低減することができ、記録ヘッド3の部品の交換をより容易に行うことができる。
【0041】
[その他]
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
例えば、キャリッジ4の底板4aに対するヘッド部3aの取り付けにおいて、ヘッド部3aをキャリッジ4の底板4aにネジ留めするようにしてもよいし、ラッチ機構等を介してヘッド部3aと底板4aとの接続が行われるようにしてもよい。
【0042】
また、上記の実施形態では、複数の記録ヘッドの列のY軸方向に隣接する記録ヘッドどうしが千鳥状の配置となっているが、一例であってこれに限られるものではない。例えば、Y軸方向に隣接する記録ヘッドどうしがY軸方向に沿う一直線上に設けられていてもよい。
【0043】
また、上記の実施形態では、複数の記録ヘッドの列のそれぞれに固定部材200が設けられているが、一例であってこれに限られるものではない。例えば、複数の記録ヘッドの列の数に応じた複数の長手部を有する一体(例えば、板状等)の固定部材200をキャリッジ4の上方から取り付けるようにしてもよい。
また、記録ヘッドの列は一列でも複数列でもよい。
【0044】
また、上記の実施形態では、所謂鍬形状のラッチ機構400を介して固定部材200がキャリッジ4に着脱可能に設けられているが、一例であってこれに限られるものではない。例えば、つまみ動作等の外部からの力に応じて係合と係合の解除とを切替可能な爪機構により固定部材200を取り付けてもよいし、閂やかけがね、留め金等の構造を用いて固定部材200を取り付けてもよい。
また、固定部材200の取り付けは、キャリッジ4の側板4b、4cに対するものに限らない。例えば、固定部材200を取り付けるための取り付け部を別途キャリッジ4内に設けてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 インクジェット記録装置
3 記録ヘッド
3a ヘッド部
3b 接続ユニット
3e インターフェース
3f ケーブル
4 キャリッジ
4a 底板
4b 側板
4c 側板
200 固定部材
202 取っ手
203 発泡体
400 ラッチ機構
500 ガイド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリッジの底板に設けられた開口部を通じてインクを吐出するノズルを有し、当該キャリッジの底板に対して着脱可能に立設して前記底板に沿う所定の方向に沿って並ぶ複数のヘッド部と、
前記ヘッド部を駆動する駆動電圧を前記ヘッド部に出力する基盤を有し、前記ヘッド部の各々に対して個別に載置されて前記ヘッド部と電気的に接続された複数の接続ユニットと、
前記複数の接続ユニットの各々の上端部と当接した状態で前記キャリッジに着脱可能に固定され、前記底板と協働して前記複数のヘッド部及び前記複数の接続ユニットを挟持する固定部材と、
を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記固定部材は、前記所定の方向の両端が前記キャリッジの前記所定の方向に沿って対向する両側面部に対してラッチ機構を介して着脱可能に設けられることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記固定部材は、前記接続ユニットとの当接部が弾性を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記複数のヘッド部が前記所定の方向に沿って並ぶヘッド部の列が複数設けられ、
前記固定部材は、複数の前記ヘッド部の列の各々について個別に設けられることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−75361(P2013−75361A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214836(P2011−214836)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(305002394)コニカミノルタIJ株式会社 (317)
【Fターム(参考)】