説明

インクセット、インクジェット記録方法、及び、インクジェット記録装置

【課題】得られる画像の光沢性に優れ、バンディング発生及び色相変化を抑制することができるインクセットを提供すること。
【解決手段】イエローインク、マゼンタインク、シアンインク及びブラックインクを含み、各インクはそれぞれ、(成分A)ラジカル重合性化合物、(成分B)ラジカル重合開始剤及び(成分C)着色剤を含有し、各インクに含まれる成分Bはそれぞれ、(成分B−1)アシルホスフィンオキサイド化合物及び(成分B−2)チオキサントン化合物を含有し、各インクはそれぞれ、成分B−1をインクの総量に対して3重量%以上17重量%未満含有し、前記マゼンタインク及び前記シアンインクはそれぞれ、成分B−2をインクの総量に対して0.1重量%以上2重量%未満含有し、前記イエローインク及び前記ブラックインクはそれぞれ、成分B−2をインクの総量に対して2重量%以上6重量%未満含有するインクセット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクセット、インクジェット記録方法、及び、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像データ信号に基づき、紙などの被記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式などがある。
一方、インクジェット方式は、安価な装置で、且つ、必要とされる画像部のみにインクを吐出し被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率良く使用でき、ランニングコストが安い。更に、騒音が少なく、画像記録方式として優れている。
近年、紫外線などの放射線の照射により硬化可能なインク組成物(放射線硬化型インク組成物)を、インクジェットにより描画した後、紫外線などの放射線を照射して、インクを硬化する、無溶剤型のインクジェット記録方式が注目されている。
一般に、水を希釈剤として含む水性インクや有機溶剤を希釈剤として含む溶剤型インクと比較して、放射線硬化型インクによるインクジェット記録方式は、ガラス、金属、プラスチック被記録媒体といった非吸収性被記録媒体への描画が可能であり、被記録媒体の適応範囲が広い、描画画像の耐擦過性や耐溶剤性に優れる、感度が高く、生産性に優れる、揮発性の溶剤を含まないので、環境への負荷が小さいといったメリットを有する。
放射線硬化型インクの硬化機構としては、ラジカル重合型とカチオン重合型に大別されるが、ラジカル重合型は、カチオン重合型と比較して、保存安定性に優れる、安価といったメリットを有しているため、市場で広く使用されている。
【0003】
従来のインクセットとしては、特許文献1に記載されたものが挙げられる。
特許文献1には、活性光線硬化型インク組成物およびブラック色材を含む活性光線硬化型インク組成物を含んで構成されるインクセットであって、前記各種活性光線硬化型インク組成物は、色材と、重合性化合物と、光重合開始剤とを少なくとも含有してなり、前記イエロー色材を含む活性光線硬化型インク組成物およびブラック色材を含む活性光線硬化型インク組成物は、前記光重合開始剤として複数の官能基を有するチオキサントン系光重合開始剤をインク組成物全量に対して1〜4質量%含み、前記シアン色材を含む活性光線硬化型インク組成物およびマゼンタ色材を含む活性光線硬化型インク組成物は、チオキサントン系光重合開始剤を実質的に含まないことを特徴とする、インクセットが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−138315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、得られる画像の光沢性に優れ、バンディング発生及び色相変化を抑制することができるインクセット、前記インクセットを使用したインクジェット記録方法、並びに、前記インクセットを備えたインクジェット記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は下記の<1>、<10>及び<11>に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>〜<9>と共に以下に記載する。
<1>イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物及びブラックインク組成物を含み、各インク組成物はそれぞれ、(成分A)ラジカル重合性化合物、(成分B)ラジカル重合開始剤及び(成分C)着色剤を含有し、各インク組成物に含まれる成分Bはそれぞれ、(成分B−1)アシルホスフィンオキサイド化合物及び(成分B−2)チオキサントン化合物を含有し、各インク組成物はそれぞれ、成分B−1をインク組成物の総量に対して3重量%以上17重量%未満含有し、前記マゼンタインク組成物及び前記シアンインク組成物はそれぞれ、成分B−2をインク組成物の総量に対して0.1重量%以上2重量%未満含有し、前記イエローインク組成物及び前記ブラックインク組成物はそれぞれ、成分B−2をインク組成物の総量に対して2重量%以上6重量%未満含有することを特徴とするインクセット、
<2>(成分A)ラジカル重合性化合物、(成分B)ラジカル重合開始剤及び(成分C)着色剤を含有するホワイトインク組成物を更に含み、前記ホワイトインク組成物に含まれる成分Bは、(成分B−1)アシルホスフィンオキサイド化合物及び(成分B−2)チオキサントン化合物を含有し、前記ホワイトインク組成物は、成分B−1をインク組成物の総量に対して3重量%以上17重量%未満含み、かつ成分B−2をインク組成物の総量に対して0重量%を超え1重量%未満含有するか又は含有しない、上記<1>に記載のインクセット、
<3>各インク組成物に含まれる成分B−1が、イソプロピルチオキサントンである、上記<1>又は<2>に記載のインクセット、
<4>各インク組成物に含まれる成分Aがそれぞれ、単官能ラジカル重合性化合物を成分Aの総量に対して80重量%以上100重量%未満含有する、上記<1>〜<3>のいずれか1つに記載のインクセット、
<5>各インク組成物に含まれる成分Aがそれぞれ、式(1)〜(3)で表される化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含有する、上記<1>〜<4>のいずれか1つに記載のインクセット、
【0007】
【化1】

(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、X1は単結合又は二価の連結基を表し、R2〜R12はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R13は水素原子又はメチル基を表し、X2は単結合又は二価の連結基を表し、nは2〜6の整数を表す。)
【0008】
<6>成分Aが、前記式(1)〜(3)で表される化合物よりなる群から選ばれた少なくとも2種の化合物を含有する、上記<5>に記載のインクセット、
<7>前記イエローインク組成物に含まれる成分Cが、C.I.ピグメントイエロー120、150、155及び180よりなる群から選ばれた少なくとも1種の着色剤であり、前記マゼンタインク組成物に含まれる成分Cが、C.I.ピグメントレッド122、202及びC.I.ピグメントバイオレット19よりなる群から選ばれた少なくとも1種の着色剤であり、前記シアンインク組成物に含まれる成分Cが、C.I.ピグメントブルー15:3及び15:4よりなる群から選ばれた少なくとも1種の着色剤であり、前記ブラックインク組成物に含まれる成分Cが、C.I.ピグメントブラック7である、上記<1>〜<6>のいずれか1つに記載のインクセット、
<8>前記イエローインク組成物、前記マゼンタインク組成物、前記シアンインク組成物及び前記ブラックインク組成物に含まれる成分Aが、炭素数8〜13の鎖状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート化合物を更に含有する、上記<1>〜<7>のいずれか1つに記載のインクセット、
<9>インクジェット記録用である、上記<1>〜<8>のいずれか1つに記載のインクセット、
<10>上記<1>〜<9>のいずれか1つに記載のインクセットを使用することを特徴とするインクジェット記録方法、
<11>上記<1>〜<9>のいずれか1つに記載のインクセットを備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、得られる画像の光沢性に優れ、バンディング発生及び色相変化を抑制することができるインクセット、前記インクセットを使用したインクジェット記録方法、並びに、前記インクセットを備えたインクジェット記録装置を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、明細書中、数値範囲を表す「A〜B」の記載は「A以上B以下」と同義である。また、「(成分A)ラジカル重合性化合物」等を単に「成分A」等ともいう。
【0011】
(インクセット)
本発明のインクセットは、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物及びブラックインク組成物を含み、各インク組成物はそれぞれ、(成分A)ラジカル重合性化合物、(成分B)ラジカル重合開始剤及び(成分C)着色剤を含有し、各インク組成物に含まれる成分Bはそれぞれ、(成分B−1)アシルホスフィンオキサイド化合物及び(成分B−2)チオキサントン化合物を含有し、各インク組成物はそれぞれ、成分B−1をインク組成物の総量に対して3重量%以上15重量%未満含有し、前記マゼンタインク組成物及び前記シアンインク組成物はそれぞれ、成分B−2をインク組成物の総量に対して0.1重量%以上2重量%未満含有し、前記イエローインク組成物及び前記ブラックインク組成物はそれぞれ、成分B−2をインク組成物の総量に対して2重量%以上6重量%未満含有することを特徴とする。
【0012】
特許文献1には、イエロー系色材あるいはブラック系色材を含む活性光線硬化型インク組成物に複数の官能基を有するチオキサントン系光重合開始剤を特定量含有させる一方、マゼンタ色材を含む活性光線硬化型インク組成物及びシアン色材を含む活性光線硬化型インク組成物においては、チオキサントン系光重合開始剤を添加しないことが記載されている。しかしながら、特許文献1に記載の方法においても、優れた光沢性、バンディング抑制、及び、色相変化抑制を達成するという点においては、未だ十分なものとはいえず、更なる性能向上が求められていた。
本発明者等は、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物及びブラックインク組成物にアシルホスフィンオキサイド化合物及びチオキサントン化合物を含有させ、更に、イエローインク組成物及びブラックインク組成物にチオキサントン化合物を必ず含有させ、マゼンタインク組成物及びシアンインク組成物にはチオキサントン化合物を少し多く含有させることにより、優れた光沢性、バンディング抑制、及び、色相変化抑制を達成できることを見いだした。
【0013】
本発明のインクセットは、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物及びブラックインク組成物を含む。
本発明のインクセットは、インクジェット記録用インクセットであることが好ましい。
また、本発明のインクセットは、カラー画像形成用インクセットであることが好ましい。
また、本発明のインクセットは、ホワイトインク組成物等の他色のインク組成物を含有していてもよい。中でも、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、ブラックインク組成物及びホワイトインク組成物を含むことが好ましい。
また、本発明のインクセットは、各色のインク組成物を1つのみ有していても、2以上有していてもよい。
【0014】
本発明のインクセットにおけるイエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物及びブラックインク組成物の各インク組成物はそれぞれ、(成分A)ラジカル重合性化合物、(成分B)ラジカル重合開始剤及び(成分C)着色剤を含有し、更に、成分Bとしてそれぞれ、(成分B−1)アシルホスフィンオキサイド化合物及び(成分B−2)チオキサントン化合物を含有する。
各インク組成物が、(成分B−1)アシルホスフィンオキサイド化合物及び(成分B−2)チオキサントン化合物を含有することにより、バンディングを抑制することができ、また、光沢性に優れた画像を得ることができる。なお、バンディングとは、画像において、線状の画像欠陥が生じる現象をいう。例えば、線状の白抜けや、線状の画像濃度の濃い箇所又は薄い箇所が挙げられる。
【0015】
本発明のインクセットにおけるイエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物及びブラックインク組成物の各インク組成物はそれぞれ、成分B−1をインク組成物の総量に対して3重量%以上17重量%未満含有し、5〜15重量%含有することが好ましく、7〜13重量%含有することがより好ましい。
また、本発明のインクセットがホワイトインク組成物等の他色のインク組成物を含む場合、他色のインク組成物はそれぞれ、成分B−1をインク組成物の総量に対して3重量%以上17重量%未満含有することが好ましく、5〜15重量%含有することがより好ましく、7〜13重量%含有することが更に好ましい。
各インク組成物が、(成分B−1)アシルホスフィンオキサイド化合物を上記量で含有することにより、硬化性に優れ、また、得られる画像におけるバンディング発生を抑制することができる。
【0016】
本発明のインクセットにおける前記マゼンタインク組成物及び前記シアンインク組成物はそれぞれ、成分B−2をインク組成物の総量に対して、0.1重量%以上2重量%未満含有し、0.3〜1.5重量%であることが好ましく、0.5〜1.0重量%であることがより好ましい。上記範囲であると、得られる画像における色相変化を抑制することができる。ここでいう色相変化とは、活性エネルギー線照射直後から数分〜数時間の間に起こる色相の変化のことを意味し、数ヶ月の長期にわたる太陽光の照射で引き起こされる顔料の退色を意味するものではない。この色相変化が起こると、色合わせ等のいわゆるカラーマネージメントが困難になり、印刷作業に著しい支障をきたす。なお、この色相変化の原因は定かでないが、活性エネルギー線照射によりチオキサントン化合物が400〜500nm付近の可視光領域に吸収を有する活性中間体を生じ、これが徐々に安定な構造へ変化する際に、この可視光吸収を消失することによって起こるものと考えられる。
また、本発明のインクセットに用いることができる前記イエローインク組成物及び前記ブラックインク組成物はそれぞれ、成分B−2をインク組成物の総量に対して、2重量%以上6重量%未満含有する。2重量%未満であるとバンディングが劣化し、6重量%以上であると光沢が低下する。
更に、本発明のインクセットにおける前記イエローインク組成物及び前記ブラックインク組成物における成分B−2の含有量はそれぞれ、インク組成物の総量に対して、2.5〜5.5重量%であることが好ましく、3.0〜5.0重量%であることがより好ましい。上記範囲であると、硬化性に優れ、得られる画像の光沢性に優れ、また、バンディング発生を抑制することができる。
本発明のインクセットがホワイトインク組成物を含む場合、ホワイトインク組成物は、成分B−2をインク組成物の総量に対して0重量%を超え1重量%未満含有するか又は含有しないことが好ましく、0重量%を超え1重量%未満含有することがより好ましく、0.1〜0.8重量%含有することが更に好ましい。
また、本発明のインクセットがイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック及びホワイト以外の他色のインク組成物を含む場合、他色のインク組成物はそれぞれ、成分B−2を含有していても、含有していなくともよく、含有する場合は、インク組成物の総量に対して0重量%を超え6重量%未満含有することが好ましい。
【0017】
本発明のインクセットは、硬化性やバンディング抑制性、光沢性の観点から、各インク組成物において、同種のアシルホスフィンオキサイド化合物をそれぞれ含有していることが好ましく、同じアシルホスフィンオキサイド化合物をそれぞれ含有していることが特に好ましい。
また、本発明のインクセットは、硬化性やバンディング抑制性、光沢性の観点から、各インク組成物において、成分B−1として2種以上のアシルホスフィンオキサイド化合物をそれぞれ含有していることが好ましく、1種以上のモノアシルホスフィンオキサイド化合物と1種以上のビスアシルホスフィンオキサイド化合物とをそれぞれ含有していることがより好ましい。
【0018】
本発明のインクセットに用いることができるインク組成物について、以下に詳述する。
本発明に用いることができるインク組成物は、活性放射線により硬化可能な油性のインク組成物である。「活性放射線」とは、その照射によりインク組成物中に開始種を発生させるエネルギーを付与できる放射線であり、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、電子線などを包含する。中でも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点から、紫外線及び電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。
【0019】
(成分A)ラジカル重合性化合物
本発明のインクセットに用いることができるインク組成物は、(成分A)ラジカル重合性化合物を含有する。
成分Aとしては、エチレン性不飽和化合物が好ましい。
また、成分Aとしては、公知の重合性化合物を用いることができ、(メタ)アクリレート化合物、ビニルエーテル化合物、アリル化合物、N−ビニル化合物、不飽和カルボン酸類等が例示できる。例えば、特開2009−221414号公報に記載のラジカル重合性モノマー、特開2009−209289号公報に記載の重合性化合物、特開2009−191183号公報に記載のエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
成分Aは、1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
各インク組成物に含まれる成分Aとしては、下記式(1)〜(3)で表される化合物を少なくとも1種含むことが好ましく、下記式(1)〜(3)で表される化合物を少なくとも2種含むことがより好ましい。
【0020】
【化2】

(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、X1は単結合又は二価の連結基を表し、R2〜R12はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R13は水素原子又はメチル基を表し、X2は単結合又は二価の連結基を表し、nは2〜6の整数を表す。)
【0021】
<式(1)で表される化合物>
本発明に用いることができるインク組成物は、光沢性の観点から、式(1)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0022】
【化3】

(式(1)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、X1は単結合又は二価の連結基を表し、R2〜R12はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。)
【0023】
前記式(1)で表される化合物は、アクリレート化合物であっても、メタクリレート化合物であってもよいが、アクリレート化合物、すなわち、R1が水素原子であることが好ましい。
式(1)のX1における二価の連結基としては、本発明の効果を大きく損なうものでない限り特に制限はないが、二価の炭化水素基、又は、炭化水素基及びエーテル結合を組み合わせた二価の基であることが好ましく、二価の炭化水素基、ポリ(アルキレンオキシ)基、又は、ポリ(アルキレンオキシ)アルキル基であることがより好ましい。また、前記二価の連結基の炭素原子数は、1〜60であることが好ましく、1〜40であることがより好ましい。
式(1)におけるX1としては、単結合、二価の炭化水素基、又は、炭化水素基及びエーテル結合を組み合わせた二価の基であることが好ましく、単結合、又は、二価の炭化水素基であることがより好ましく、単結合であることが特に好ましい。
式(1)のR2〜R12におけるアルキル基としては、炭素原子数1〜8のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。また、R2〜R12におけるアルキル基は、直鎖状であっても、分岐を有していてもよく、環構造を有していてもよい。
式(1)におけるR2〜R12としてはそれぞれ独立に、水素原子、又は、炭素原子数1〜8のアルキル基であることが好ましく、水素原子、又は、炭素原子数1〜4のアルキル基であることがより好ましく、水素原子、又は、メチル基であることが更に好ましい。
また、式(1)におけるR2〜R12としては、全てが水素原子であるか、又は、R3〜R5がメチル基であり、かつR2及びR6〜R12が水素原子であることが特に好ましく、R3〜R5がメチル基であり、かつR2及びR6〜R12が水素原子であることが最も好ましい。
式(1)で表される化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0024】
式(1)で表される化合物の具体例としては、以下に示す化合物(1−1)〜(1−6)を好ましく例示できるが、これらに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0025】
【化4】

【0026】
これらの中でも、式(1)で表される化合物としては、イソボロニルアクリレート(1−1)、イソボロニルメタクリレート(1−2)、ノルボルニルアクリレート(1−3)及びノルボルニルメタクリレート(1−4)が好ましく、イソボロニルアクリレート(1−1)及びイソボロニルメタクリレート(1−2)がより好ましく、イソボロニルアクリレート(1−1)が特に好ましい。
【0027】
インク組成物が式(1)で表される化合物を含有する場合、式(1)で表される化合物の含有量は、インク組成物の全重量に対し、5〜55重量%であることが好ましく、8〜45重量%であることがより好ましく、15〜40重量%であることが更に好ましい。
【0028】
<式(2)で表される化合物>
本発明に用いることができるインク組成物は、光沢性及び硬化性の観点から、式(2)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0029】
【化5】

(式(2)中、R13は水素原子又はメチル基を表し、X2は単結合又は二価の連結基を表す。)
【0030】
前記式(2)で表される化合物は、アクリレート化合物であっても、メタクリレート化合物であってもよいが、アクリレート化合物、すなわち、R13が水素原子であることが好ましい。
式(2)のX2における二価の連結基としては、本発明の効果を大きく損なうものでない限り特に制限はないが、二価の炭化水素基、又は、炭化水素基及びエーテル結合を組み合わせた二価の基であることが好ましく、二価の炭化水素基、ポリ(アルキレンオキシ)基、又は、ポリ(アルキレンオキシ)アルキル基であることがより好ましい。また、前記二価の連結基の炭素原子数は、1〜60であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。
式(2)におけるX2としては、単結合、二価の炭化水素基、又は、炭化水素基及びエーテル結合を組み合わせた二価の基であることが好ましく、炭素原子数1〜20の二価の炭化水素基であることがより好ましく、炭素原子数1〜8の二価の炭化水素基であることが更に好ましく、メチレン基であることが特に好ましい。
式(2)で表される化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0031】
式(2)で表される化合物の具体例としては、以下に示す化合物(2−1)〜(2−4)を好ましく例示できるが、これらに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0032】
【化6】

【0033】
これらの中でも、サイクリックトリメチロールプロパンフォーマルアクリレート(2−1)及びサイクリックトリメチロールプロパンフォーマルメタクリレート(2−2)が好ましく、サイクリックトリメチロールプロパンフォーマルアクリレート(2−1)が特に好ましい。
【0034】
インク組成物が式(2)で表される化合物を含有する場合、式(2)で表される化合物の含有量は、インク組成物の全重量に対し、3〜70重量%であることが好ましく、5〜65重量%であることがより好ましく、10〜60重量%であることが更に好ましく、10〜24重量%であることが特に好ましい。
また、インク組成物が式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物を含有する場合、式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物の総含有量は、インク組成物の全重量に対し、10〜80重量%であることが好ましく、25〜70重量%であることがより好ましく、35〜65重量%であることが特に好ましい。上記範囲であると、光沢性に優れた印刷物が得られる。
【0035】
<式(3)で表される化合物>
本発明に用いることができるインク組成物は、光沢性の観点から、式(3)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0036】
【化7】

【0037】
式(3)中、nは2〜6の整数を表し、インク組成物が硬化した後の柔軟性、被記録媒体との密着性、及び、原材料の入手性の観点から、nは3〜6の整数であることが好ましく、nが3又は5であることがより好ましく、nが5である、すなわちN−ビニルカプロラクタムであることが特に好ましい。N−ビニルカプロラクタムは安全性に優れ、汎用的で比較的安価に入手でき、特に良好なインク硬化性、及び、硬化膜の被記録媒体への密着性が得られるので好ましい。
また、式(3)で表される化合物以外にN−ビニルラクタム類として、ラクタム環上にアルキル基、アリール基等の置換基を有した化合物を使用してもよく、飽和又は不飽和環構造を連結した化合物を使用してもよい。
式(3)で表される化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0038】
インク組成物が式(3)で表される化合物を含有する場合、式(3)で表される化合物の含有量は、インク組成物の全重量に対し、1重量%以上35重量%以下であることが好ましく、3重量%以上24重量%以下であることがより好ましく、5重量%以上20重量%以下であることが更に好ましく、10重量%以上18重量%以下であることが特に好ましい。上記範囲であると、印刷物内部の硬化性を強く促進しつつ、硬化膜最表面のみを選択的に長時間液状を保つ硬化プロファイルが促進され、光沢性が高く、筋ムラの目立たない印刷物が得られる。
【0039】
<炭素数8〜13の鎖状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート化合物>
本発明に用いることができるインク組成物は、印刷物の光沢性向上の観点で、炭素数8〜13の鎖状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート化合物を含有することが好ましい。
前記鎖状炭化水素基は、直鎖状炭化水素基であっても、分岐鎖状炭化水素基であってもよい。
前記炭素数8〜13の鎖状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート化合物は、炭素数8〜13の鎖状炭化水素モノアルコールの(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましく、炭素数10〜13の鎖状炭化水素モノアルコールの(メタ)アクリル酸エステルであることがより好ましい。
なお、本発明においては、「アクリレート」、「メタクリレート」の双方あるいはいずれかを指す場合「(メタ)アクリレート」と、「アクリル」、「メタクリル」の双方あるいはいずれかを指す場合「(メタ)アクリル」と、それぞれ記載することがある。
成分Eは、アクリレート化合物であっても、メタクリレート化合物であってもよいが、アクリレート化合物であることが好ましい。
【0040】
炭素数8〜13の鎖状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート化合物として具体的には、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、及び、トリデシル(メタ)アクリレート等が例示できる。これらの中でも、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、及び、トリデシル(メタ)アクリレートが好ましく、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、及び、トリデシル(メタ)アクリレートがより好ましく、イソデシル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0041】
インク組成物が炭素数8〜13の鎖状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート化合物を含有する場合、炭素数8〜13の鎖状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート化合物の含有量は、インク組成物の全重量に対し、3〜25重量%が好ましく、5〜20重量%がより好ましく、8〜18重量%であることが更に好ましく、10〜16重量%が特に好ましい。上記範囲であると、硬化膜のべたつきが少なく、印刷物の光沢性に優れるインク組成物が得られる。
【0042】
本発明に用いることができるインク組成物は、硬化性及び光沢性の観点から、多官能ラジカル重合性化合物を含有することが好ましく、多官能(メタ)アクリレート化合物を含有することがより好ましい。
また、本発明に用いることができるインク組成物は、多官能ビニルエーテル化合物を含有することが好ましい。
更に、本発明に用いることができるインク組成物は、多官能(メタ)アクリレート化合物及び多官能ビニルエーテル化合物を含有していることが特に好ましい。
インク組成物が多官能ラジカル重合性を含有する場合、多官能ラジカル重合性化合物の含有量は、インクジェットインク組成物の全重量に対し、1〜35重量%であることが好ましく、3〜25重量%であることがより好ましく、4〜20重量%であることが更に好ましく、5〜15重量%であることが特に好ましい。
また、多官能(メタ)アクリレート化合物は、2官能(メタ)アクリレート化合物、又は、3官能(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、2官能(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。
多官能(メタ)アクリレート化合物の好ましい例としては、炭素数5以上の脂肪族炭化水素鎖を分子内に有する2官能(メタ)アクリレート化合物であり、具体的には、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、PO変性ヘキサンジオールジアクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリデカンジオールジ(メタ)アクリレート、オクタデカンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、及び、シクロヘキサンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
他の多官能ラジカル重合性化合物としては、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、オリゴエステル(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、エポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸誘導体、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物が挙げられる。
【0043】
また、成分Aとしては、芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物の芳香族基の環状構造には、O、N、S等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物が有していてもよい芳香環構造としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、インデン、フルオレン、1H−フェナレン、フェナントレン、トリフェニレン、ピレン、ナフタセン、テトラフェン、ビフェニル、as−インダセン、s−インダセン、アセナフチレン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、クリセン、プレイアデン、フラン、チオフェン、ピロリン、ピラゾリン、イミダゾリン、イソオキサゾリン、イソチアゾリン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアゾール及びテトラゾールよりなる群から選ばれた環構造が好ましく例示できる。
これらの中でも、芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物としては、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが特に好ましく例示できる。
【0044】
成分Aとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エチレン性不飽和基を有する無水物、アクリロニトリル、スチレン、更に種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。
また、成分Aとして用いることができる単官能(メタ)アクリレート化合物としては、前述したもの以外にも、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレートが好ましく例示できる。
また、成分Aとして用いることができる単官能ビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシノニルモノビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等が挙げられる。
【0045】
成分Aとしては、具体的には、山下晋三編「架橋剤ハンドブック」(1981年、(株)大成社);加藤清視編「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編「UV・EB硬化技術の応用と市場」79頁(1989年、(株)シーエムシー出版);滝山栄一郎著「ポリエステル樹脂ハンドブック」(1988年、(株)日刊工業新聞社)等に記載の市販品又は業界で公知のラジカル重合性又は架橋性のモノマー、オリゴマー及びポリマーを用いることができる。
【0046】
成分Aの分子量は、80〜2,000であることが好ましく、80〜1,000であることがより好ましく、80〜800であることが更に好ましい。
各インク組成物において、単官能ラジカル重合性化合物の含有量は、柔軟性の観点から、インク組成物に含まれる成分Aの全重量に対し、60重量%以上100重量%未満であることが好ましく、70重量%以上100重量%未満であることがより好ましく、80重量%以上100重量%未満であることが更に好ましく、80重量%以上90重量%以下であることが特に好ましい。
各インク組成物における成分Aの含有量はそれぞれ、インク組成物の全重量に対し、50重量%以上が好ましく、55〜98重量%がより好ましく、60〜95重量%が更に好ましい。
【0047】
(成分B)ラジカル重合開始剤
本発明に用いることがインク組成物は、(成分B)ラジカル重合開始剤を含有する。
また、本発明に用いることがインク組成物は、(成分B)ラジカル重合開始剤として、(成分B−1)アシルホスフィンオキサイド化合物及び(成分B−2)チオキサントン化合物を含有する。
本発明におけるラジカル重合開始剤は、前記活性放射線等の外部エネルギーを吸収してラジカル重合開始種を生成する化合物だけでなく、特定の活性エネルギー線を吸収して重合開始剤の分解を促進させる化合物(いわゆる、増感剤)も含まれる。
重合開始剤は、成分B−1及び成分B−2に加え、これら以外のラジカル重合開始剤を併用してもよい。
【0048】
<(成分B−1)アシルホスフィンオキサイド化合物>
本発明に用いることがインク組成物は、(成分B)ラジカル重合開始剤として、(成分B−1)アシルホスフィンオキサイド化合物をインク組成物の総量に対して3重量%以上15重量%未満含有する。
成分B−1は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
成分B−1としては、モノアシルホスフィンオキサイド化合物、及び、ビスアシルホスフィンオキサイド化合物が好ましく例示できる。
成分B−1は、硬化性やバンディング抑制性、光沢性の観点から、2種以上のアシルホスフィンオキサイド化合物をそれぞれ含有していることが好ましく、1種以上のモノアシルホスフィンオキサイド化合物と1種以上のビスアシルホスフィンオキサイド化合物とをそれぞれ含有していることがより好ましい。
【0049】
モノアシルホスフィンオキサイド化合物としては、特開2008−208190号公報に記載のアシルホスフィンオキサイド化合物が好ましく挙げられる。
具体的には、イソブチリルメチルホスフィン酸メチルエステル、イソブチリルフェニルホスフィン酸メチルエステル、ピバロイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、2−エチルヘキサノイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、ピバロイルフェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、p−トルイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、o−トルイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、2,4−ジメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、p−t−ブチルベンゾイルフェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、アクリロイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、イソブチリルジフェニルホスフィンオキサイド、2−エチルヘキサノイルジフェニルホスフィンオキサイド、o−トルイルジフェニルホスフィンオキサイド、p−t−ブチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、3−ピリジルカルボニルジフェニルホスフィンオキサイド、アクリロイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルホスフィン酸ビニルエステル、アジポイルビスジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイルジフェニルホスフィンオキサイド、p−トルイルジフェニルホスフィンオキサイド、4−(t−ブチル)ベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、テレフタロイルビスジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、バーサトイルジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−2−エチルヘキサノイルジフェニルホスフィンオキサイド、1−メチル−シクロヘキサノイルジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、ピバロイルフェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
これらの中でも、モノアシルホスフィンオキサイド化合物としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(Lucirin TPO:BASFジャパン社製)が好ましい。
【0050】
ビスアシルホスフィンオキサイド化合物としては、公知のビスアシルホスフィンオキサイド化合物が使用できる。例えば、特開平3−101686号公報、特開平5−345790号公報、特開平6−298818号公報に記載のビスアシルホスフィンオキサイド化合物が挙げられる。
具体例としては、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−クロロフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,4−ジメトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)デシルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−オクチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロ3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロ−3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メトキシ−1−ナフトイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−クロロ−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0051】
これらの中でも、ビスアシルホスフィンオキサイド化合物としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(IRGACURE 819:BASFジャパン社製)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフェニルホスフィンオキサイドなどが好ましい。
【0052】
<(成分B−2)チオキサントン化合物>
本発明に用いることがインク組成物は、(成分B)ラジカル重合開始剤として、(成分B−2)チオキサントン化合物を含有する。
本発明のインクセットに用いることができる前記マゼンタインク組成物及び前記シアンインク組成物はそれぞれ、成分B−2をインク組成物の総量に対して0.1重量%以上2重量%未満含有する。
また、本発明のインクセットに用いることができる前記イエローインク組成物及び前記ブラックインク組成物はそれぞれ、成分B−2をインク組成物の総量に対して2重量%以上6重量%未満含有する。
更に、本発明のインクセットに用いることができるホワイトインク組成物は、成分B−2をインク組成物の総量に対して0重量%を超え1重量%未満含有するか又は含有しないことが好ましい。
本発明のインクセットに用いることができる上記以外の色のインク組成物はそれぞれ、成分B−2をインク組成物の総量に対して0重量%を超え1重量%未満含有するか又は含有しないことが好ましい。
【0053】
チオキサントン化合物としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、下記式(4)で表される化合物であることが好ましい。
【0054】
【化8】

【0055】
前記式(4)において、R1F、R2F、R3F、R4F、R5F、R6F、R7F及びR8Fはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基(一置換及び二置換の場合を含む。なお、以下においても同様である。)、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基又はスルホ基を表す。上記アルキル基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、及び、アシル基におけるアルキル部分の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1〜4であることが更に好ましい。
1F、R2F、R3F、R4F、R5F、R6F、R7F及びR8Fは、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成していてもよい。これらが環を形成する場合の環構造としては、5又は6員環の脂肪族環、芳香族環などが挙げられ、炭素原子以外の元素を含む複素環であってもよく、また、形成された環同士が更に組み合わさって2核環、例えば、縮合環を形成していてもよい。これらの環構造は置換基を更に有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基及びスルホ基が挙げられる。形成された環構造が複素環である場合のヘテロ原子の例としては、N、O、及びSを挙げることができる。
【0056】
チオキサントン化合物としては、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−ドデシルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、1−メトキシカルボニルチオキサントン、2−エトキシカルボニルチオキサントン、3−(2−メトキシエトキシカルボニル)チオキサントン、4−ブトキシカルボニルチオキサントン、3−ブトキシカルボニル−7−メチルチオキサントン、1−シアノ−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−エトキシチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−アミノチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−フェニルスルフリルチオキサントン、3,4−ジ[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシカルボニル]チオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−(1−メチル−1−モルホリノエチル)チオキサントン、2−メチル−6−ジメトキシメチルチオキサントン、2−メチル−6−(1,1−ジメトキシベンジル)チオキサントン、2−モルホリノメチルチオキサントン、2−メチル−6−モルホリノメチルチオキサントン、n−アリルチオキサントン−3,4−ジカルボキシミド、n−オクチルチオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、N−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)チオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、1−フェノキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メトキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メチルチオキサントン、チオキサントン−2−ポリエチレングリコールエステル、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロリドが例示できる。
【0057】
これらの中でも、入手容易性や硬化性の観点から、チオキサントン、イソプロピルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,3−ジエチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−シクロヘキシルチオキサントン、4−シクロヘキシルチオキサントン、及び、イソプロピルチオキサントンが好ましく、イソプロピルチオキサントンがより好ましく、2−イソプロピルチオキサントン、及び、4−イソプロピルチオキサントンが特に好ましい。
【0058】
また、上記以外のラジカル重合開始剤としては、芳香族ケトン類、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、及び、炭素ハロゲン結合を有する化合物等が挙げられる。これらの重合開始剤の具体例としては、特開2008−208190号公報に記載のラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0059】
前記芳香族ケトンとしては、α−ヒドロキシケトン、及び、が好ましく、
α−ヒドロキシケトン例えば、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられ、中でも、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン化合物が好ましい。なお、本発明において、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン化合物には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが任意の置換基で置換された化合物も含まれる。置換基としては、ラジカル重合開始剤としての能力を発揮し得る範囲で任意に選択することができ、具体的には炭素数1〜4のアルキル基が例示できる。
【0060】
また、α−アミノケトン化合物としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、以下の式(5)で表される化合物であることが好ましい。
【0061】
【化9】

【0062】
前記式(5)中、Arは、−SR13あるいは−N(R7H)(R8H)で置換されているフェニル基を表し、R13は水素原子又はアルキル基を表し、R1H及びR2Hはそれぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基を表し、R3H及びR4Hはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ置換された炭素数2〜4のアルキル基又は炭素数3〜5のアルケニル基を表す。R1HとR2Hとは互いに結合して炭素数2〜9のアルキレン基を構成してもよい。R3HとR4Hとは互いに結合して炭素数3〜7のアルキレン基を形成してもよく、そのアルキレン基は、アルキレン鎖中に−O−又は−N(R12)−を含むものであってもよい。R12は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。R7H及びR8Hはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ置換された炭素数2〜4のアルキル基又は炭素数3〜5のアルケニル基を表す。R7HとR8Hとは互いに結合して炭素数3〜7のアルキレン基を形成してもよく、そのアルキレン基は、アルキレン鎖中に−O−又は−N(R12)−を含むものであってもよい。ここで、R12は前記したものと同義である。
【0063】
前記α−アミノケトン化合物の例としては、2−メチル−1−フェニル−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(ヘキシル)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−エチル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等が挙げられる。また、BASFジャパン社製IRGACURE907、IRGACURE369、IRGACURE379等の如き市販品も好ましく例示できる。
【0064】
また、成分Bとして用いることができる増感剤としては、例えば、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン等)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル等)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン等)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン等)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー等)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン等)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン等)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム等)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン等)、チオクロマノン類(例えば、チオクロマノン、等)等が挙げられる。これらの中でも、チオクロマノン類が好ましい。
【0065】
チオキクロマノン化合物としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、下記式(6)で表される化合物であることが好ましい。
【0066】
【化10】

【0067】
式(6)において、R1G、R2G、R3G、R4G、R5G、R6G、R7G及びR8Gはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基又はスルホ基を表す。上記アルキル基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、及び、アシル基におけるアルキル部分の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1〜4であることが更に好ましい。
1G、R2G、R3G及びR4Gは、それぞれ隣接する2つが互いに連結、例えば、縮合、して環を形成していてもよい。
これらが環を形成する場合の環構造としては、5又は6員環の脂肪族環、芳香族環などが挙げられ、炭素原子以外の元素を含む複素環であってもよく、また、形成された環同士が更に組み合わさって2核環、例えば、縮合環を形成していてもよい。これらの環構造は置換基を更に有していてもよい。置換基としては、式(6)で前述したものが挙げられる。形成された環構造が複素環である場合のヘテロ原子の例としては、N、O、及びSを挙げることができる。
また、チオクロマノン化合物は、チオクロマノンの環構造上に少なくとも1つの置換基(アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基及びスルホ基等)を有する化合物であることが好ましい。上記置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基及びアシルオキシ基が好ましく、炭素数1〜20のアルキル基及びハロゲン原子がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基及びハロゲン原子が更に好ましい。
また、チオクロマノン化合物は、芳香環上、及び、シクロヘキサノン環上のそれぞれに、少なくとも1つの置換基を有する化合物であることがより好ましい。
【0068】
チオクロマノン化合物の具体例としては、下記(6−1)〜(6−31)が好ましく例示できる。
【0069】
【化11】

【0070】
【化12】

【0071】
インク組成物における成分Bの含有量は、硬化性、硬化膜内での硬化度の均一性の観点から、重合性化合物の総含有量に対して、0.01〜35重量%であることが好ましく、0.5〜20重量%であることがより好ましく、1.0〜15重量%であることが更に好ましい。
【0072】
(成分C)着色剤
本発明のインクセットにおけるイエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物及びブラックインク組成物等の着色インク組成物はそれぞれ、(成分C)着色剤を含有する。なお、本発明のインクセットは、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物及びブラックインク組成物以外に、着色剤を含有しないクリアインク組成物を含んでいてもよい。
着色剤としては、特に制限はないが、耐候性に優れ、色再現性に富んだ顔料及び油溶性染料が好ましく、溶解性染料等の公知の着色剤から任意に選択して使用できる。着色剤は、活性放射線による硬化反応の感度を低下させないという観点から、重合禁止剤として機能しない化合物を選択することが好ましい。
【0073】
本発明に用いることができる顔料としては、特に限定されるわけではないが、例えば、カラーインデックスに記載される下記の番号の有機又は無機顔料が使用できる。
赤又はマゼンタ顔料としては、Pigment Red 3,5,19,22,31,38,42,43,48:1,48:2,48:3,48:4,48:5,49:1,53:1,57:1,57:2,58:4,63:1,81,81:1,81:2,81:3,81:4,88,104,108,112,122,123,144,146,149,166,168,169,170,177,178,179,184,185,208,216,226,257、Pigment Violet 3,19,23,29,30,37,50,88、Pigment Orange 13,16,20,36、
青又はシアン顔料としては、Pigment Blue 1,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,17−1,22,27,28,29,36,60、
緑顔料としては、Pigment Green 7,26,36,50、
黄顔料としては、Pigment Yellow 1,3,12,13,14,17,34,35,37,55,74,81,83,93,94,95,97,108,109,110,120,137,138,139,153,154,155,157,166,167,168,180,185,193、
黒顔料としては、Pigment Black 7,28,26、
白色顔料としては、Pigment White 6,18,21などが目的に応じて使用できる。
本発明においては、水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で分散染料を用いることもできる。分散染料は一般に水溶性の染料も包含するが、本発明においては水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で用いることが好ましい。
分散染料の好ましい具体例としては、C.I.ディスパースイエロー 5,42,54,64,79,82,83,93,99,100,119,122,124,126,160,184:1,186,198,199,201,204,224及び237;C.I.ディスパーズオレンジ 13,29,31:1,33,49,54,55,66,73,118,119及び163;C.I.ディスパーズレッド 54,60,72,73,86,88,91,92,93,111,126,127,134,135,143,145,152,153,154,159,164,167:1,177,181,204,206,207,221,239,240,258,277,278,283,311,323,343,348,356及び362;C.I.ディスパーズバイオレット 33;C.I.ディスパーズブルー 56,60,73,87,113,128,143,148,154,158,165,165:1,165:2,176,183,185,197,198,201,214,224,225,257,266,267,287,354,358,365及び368;並びにC.I.ディスパーズグリーン 6:1及び9;等が挙げられる。
【0074】
着色剤は、インク組成物に添加された後、適度に当該インク組成物内で分散することが好ましい。着色剤の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の各分散装置を用いることができる。
【0075】
着色剤は、インク組成物の調製に際して、各成分と共に直接添加してもよい。また、分散性向上のため、あらかじめ溶剤又は本発明に使用する重合性化合物のような分散媒体に添加し、均一分散あるいは溶解させた後、配合することもできる。
本発明において、溶剤が硬化画像に残留する場合の耐溶剤性の劣化、及び、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound:揮発性有機化合物)の問題を避けるためにも、着色剤は、重合性化合物のような分散媒体に予め添加して、配合することが好ましい。なお、分散適性の観点のみを考慮した場合、着色剤の添加に使用する重合性化合物は、最も粘度の低いモノマーを選択することが好ましい。
また、着色剤は、インク組成物の使用目的に応じて、1種又は2種以上を適宜選択して用いればよい。
【0076】
なお、インク組成物中において固体のまま存在する顔料などの着色剤を使用する際には、着色剤粒子の平均粒径は、好ましくは0.005〜0.5μm、より好ましくは0.01〜0.45μm、更に好ましくは0.015〜0.4μmとなるよう、着色剤、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定することが好ましい。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インク組成物の保存安定性、透明性及び硬化感度を維持することができるので好ましい。
【0077】
前記イエローインク組成物に含まれる成分Cは、C.I.ピグメントイエロー120、150、155及び180よりなる群から選ばれた少なくとも1種の着色剤であることが好ましい。
前記マゼンタインク組成物に含まれる成分Cは、C.I.ピグメントレッド122、202及びC.I.ピグメントバイオレット19よりなる群から選ばれた少なくとも1種の着色剤であることが好ましい。
前記シアンインク組成物に含まれる成分Cは、C.I.ピグメントブルー15:3及び15:4よりなる群から選ばれた少なくとも1種の着色剤であることが好ましい。
前記ブラックインク組成物に含まれる成分Cは、C.I.ピグメントブラック7であることが好ましい。
インク組成物中における着色剤の含有量は、色、及び使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の重量に対し、0.01〜30重量%であることが好ましい。
【0078】
(成分D)分散剤
本発明に用いることができるインク組成物は、(成分D)分散剤を含有することが好ましい。特に顔料を使用する場合において、顔料をインク組成物中に安定に分散させるため、分散剤を含有することが好ましい。分散剤としては、高分子分散剤が好ましい。なお、本発明における「高分子分散剤」とは、重量平均分子量が1,000以上の分散剤を意味する。
【0079】
高分子分散剤としては、DISPERBYK−101、DISPERBYK−102、DISPERBYK−103、DISPERBYK−106、DISPERBYK−111、DISPERBYK−161、DISPERBYK−162、DISPERBYK−163、DISPERBYK−164、DISPERBYK−166、DISPERBYK−167、DISPERBYK−168、DISPERBYK−170、DISPERBYK−171、DISPERBYK−174、DISPERBYK−182(BYKケミー社製);EFKA4010、EFKA4046、EFKA4080、EFKA5010、EFKA5207、EFKA5244、EFKA6745、EFKA6750、EFKA7414、EFKA745、EFKA7462、EFKA7500、EFKA7570、EFKA7575、EFKA7580(エフカアディティブ社製);ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100(サンノプコ(株)製);ソルスパース(SOLSPERSE)3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、22000、24000、26000、28000、32000、36000、39000、41000、71000などの各種ソルスパース分散剤(Noveon社製);アデカプルロニックL31、F38、L42、L44、L61、L64、F68、L72、P95、F77、P84、F87、P94、L101、P103、F108、L121、P−123((株)ADEKA製)、イオネットS−20(三洋化成工業(株)製);ディスパロン KS−860、873SN、874(高分子分散剤)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル型)(楠本化成(株)製)が挙げられる。
インク組成物中における分散剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の重量に対し、0.05〜15重量%であることが好ましい。
【0080】
(成分E)オリゴマー
本発明に用いることができるインク組成物は、(成分E)オリゴマーを含有することが好ましい。
オリゴマーは、一般に有限個(一般的には5〜100個)のモノマーが結合した重合体であり、オリゴマーと称される公知の化合物を任意に選択可能であるが、本発明においては、重量平均分子量が400〜10,000(より好ましくは500〜5,000)の重合体を選択することが好ましい。
前記オリゴマーは、ラジカル重合性基を有していてもよい。前記ラジカル重合性基としては、エチレン性不飽和基が好ましく、(メタ)アクリロキシ基がより好ましい。
【0081】
本発明におけるオリゴマーとしては、いかなるオリゴマーでもよいが、例えば、オレフィン系(エチレンオリゴマー、プロピレンオリゴマーブテンオリゴマー等)、ビニル系(スチレンオリゴマー、ビニルアルコールオリゴマー、ビニルピロリドンオリゴマーアクリレートオリゴマー、メタクリレートオリゴマー等)、ジエン系(ブタジエンオリゴマー、クロロプレンゴム、ペンタジエンオリゴマー等)、開環重合系(ジ−,トリ−,テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチルイミン等)、重付加系(オリゴエステルアクリレート、ポリアミドオリゴマー、ポリイソシアネートオリゴマー)、付加縮合オリゴマー(フェノール樹脂、アミノ樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂等)等を挙げることができる。この中で、オリゴエステル(メタ)アクリレートが好ましく、その中では、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートがより好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートが更に好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレートが好ましく挙げられるが、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートがより好ましく挙げられる。
また、ウレタン(メタ)アクリレートは、4官能以下のウレタン(メタ)アクリレートであることが好ましく、2官能以下のウレタン(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレートを含有することにより、基材の密着性に優れ、硬化性に優れるインク組成物が得られる。
オリゴマーについて、オリゴマーハンドブック(吉川淳二監修、(株)化学工業日報社)も参照することができる。
【0082】
また、オリゴマーの市販品としては、以下に示すものが例示できる。
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、第一工業製薬(株)製のR1204、R1211、R1213、R1217、R1218、R1301、R1302、R1303、R1304、R1306、R1308、R1901、R1150等や、ダイセル・サイテック(株)製のEBECRYLシリーズ(例えば、EBECRYL230、270、4858、8402、8804、8807、8803、9260、1290、1290K、5129、4842、8210、210、4827、6700、4450、220)、新中村化学工業(株)製のNKオリゴU−4HA、U−6HA、U−15HA、U−108A、U200AX等、東亞合成(株)製のアロニックスM−1100、M−1200、M−1210、M−1310、M−1600、M−1960等が挙げられる。
ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ダイセル・サイテック(株)製のEBECRYLシリーズ(例えば、EBECRYL770、IRR467、81、84、83、80、675、800、810、812、1657、1810、IRR302、450、670、830、870、1830、1870、2870、IRR267、813、IRR483、811等)、東亞合成(株)製のアロニックスM−6100、M−6200、M−6250、M−6500、M−7100、M−8030、M−8060、M−8100、M−8530、M−8560、M−9050等が挙げられる。
また、エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ダイセル・サイテック(株)製のEBECRYLシリーズ(例えば、EBECRYL600、860、2958、3411、3600、3605、3700、3701、3703、3702、3708、RDX63182、6040等)等が挙げられる。
【0083】
オリゴマーは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
インク組成物におけるオリゴマーの含有量としては、インク組成物の全重量に対して、0.1〜50重量%であることが好ましく、0.5〜20重量%であることがより好ましく、1〜10重量%であることが更に好ましい。
【0084】
(成分F)ラジカル重合禁止剤
本発明に用いることができるインク組成物は、保存性、及び、ヘッド詰まりの抑制という観点から、ラジカル重合禁止剤を含有することが好ましい。
ラジカル重合禁止剤の含有量は、インク組成物の全重量に対し、200〜20,000ppmであることが好ましい。
ラジカル重合禁止剤としては、ニトロソ系重合禁止剤や、ヒンダードアミン系重合禁止剤、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl等が挙げられる。
【0085】
(成分G)界面活性剤
本発明に用いることができるインク組成物には、長時間安定した吐出性を付与するため、界面活性剤を添加してもよい。
ただし、光沢性、筋ムラを抑制する観点から、各インク組成物は、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤を含有しないか、又は、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤の総含有量が、インク組成物の全重量に対し、0重量%を超え0.03重量%以下であることが好ましく、含有しないか、又は、0重量%を超え0.005重量%以下がより好ましく、含有しないことが更に好ましい。
なお、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤以外の界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。
【0086】
<その他の成分>
本発明に用いることができるインク組成物には、必要に応じて、前記各成分以外に、共増感剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、導電性塩類、溶剤、高分子化合物、塩基性化合物等を含んでいてもよい。これらその他の成分としては、公知のものを用いることができ、例えば、特開2009−221416号公報に記載されているものが挙げられる。
【0087】
<インク物性>
本発明においては、吐出性を考慮し、25℃における粘度が40mPa・s以下であるインク組成物を使用することが好ましい。より好ましくは5〜40mPa・s、更に好ましくは7〜30mPa・sである。また、吐出温度(好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃)における粘度が、3〜15mPa・sであることが好ましく、3〜13mPa・sであることがより好ましい。インク組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。室温(25℃)での粘度を高く設定することにより、多孔質な被記録媒体(支持体)を用いた場合でも、被記録媒体中へのインク組成物の浸透を回避し、未硬化モノマーの低減が可能となる。さらにインク組成物の液滴着弾時のインク滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善されるので好ましい。
【0088】
インク組成物の25℃における表面張力は、20〜40mN/mであることが好ましく、28〜37mN/mであることがより好ましく、30〜33mN/mであることが特に好ましい。上記範囲であると、より光沢性に優れ、筋ムラの目立たない印刷物が得られる。
【0089】
(インクジェット記録方法、インクジェット記録装置及び印刷物)
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインクセットを使用したインクジェット記録方法であり、本発明のインクセットを使用し、インク組成物をインクジェット記録用として被記録媒体(支持体、記録材料等)上に吐出し、被記録媒体上に吐出されたインク組成物に活性エネルギー線を照射し、インクを硬化して画像を形成する方法であることが好ましい。
なお、本発明における「画像」とは、文字や記号や図形等、個々に意味を有するものだけでなく、模様や全面着色等、意味を持たないものも含むものである。
より具体的には、本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインクセットを使用し、(a1)被記録媒体上にインク組成物を吐出する工程、及び、(b1)吐出されたインク組成物に活性エネルギー線を照射して前記インク組成物を硬化する工程、を含むことがより好ましい。本発明のインクジェット記録方法は、上記(a1)及び(b1)工程を含むことにより、被記録媒体上において硬化したインク組成物により画像が形成される。
【0090】
本発明のインクジェット記録装置としては、本発明のインクセットを備えたインクジェット記録装置であり、本発明のインクセットを備えること以外は、公知のインクジェット記録装置を任意に選択して使用することができる。
また、本発明の印刷物は、本発明のインクセットを使用して得られた印刷物であり、本発明のインクジェット記録方法によって記録された印刷物である。
【0091】
本発明のインクジェット記録方法における(a1)工程には、以下に詳述するインクジェット記録装置が用いることができる。
本発明のインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、活性エネルギー線源を含む装置が挙げられる。
インク供給系は、例えば、インク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1〜100pl、より好ましくは8〜30plのマルチサイズドットを、好ましくは320×320〜4,000×4,000dpi、より好ましくは400×400〜1,600×1,600dpi、さらに好ましくは720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0092】
上述したように、吐出されるインク組成物を一定温度にすることが好ましいことから、インクジェット記録装置には、インク組成物温度の安定化手段を備えることが好ましい。一定温度にする部位はインクタンク(中間タンクがある場合は中間タンク)からノズル射出面までの配管系、部材の全てが対象となる。すなわち、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱及び加温を行うことができる。
温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断若しくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、あるいは、熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【0093】
上記のインクジェット記録装置を用いたインク組成物の吐出は、インク組成物を、好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃に加熱して、インク組成物の粘度を、好ましくは3〜15mPa・s、より好ましくは3〜13mPa・sに下げた後に行うことが好ましい。特に、インク組成物として、25℃におけるインク粘度が50mPa・s以下であるものを用いると、良好に吐出が行えるので好ましい。この方法を用いることにより、高い吐出安定性を実現することができる。
前記インク組成物のような放射線硬化型インク組成物は、概して通常インクジェット記録用インクで使用される水性インクより粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。インクの粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こす。したがって、吐出時のインクの温度はできるだけ一定に保つことが必要である。よって、本発明において、インクの温度の制御幅は、好ましくは設定温度の±5℃、より好ましくは設定温度の±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃とすることが適当である。
【0094】
次に、(b1)吐出されたインク組成物に活性エネルギー線を照射して、前記インク組成物を硬化する工程について説明する。
被記録媒体上に吐出されたインク組成物は、活性エネルギー線を照射することによって硬化する。これは、インク組成物に含まれるラジカル重合開始剤が活性エネルギー線の照射により分解して、ラジカルなどのラジカル重合開始種を発生し、その開始種の機能に重合性化合物の重合反応が、生起、促進されるためである。このとき、インク組成物においてラジカル発生剤と共に増感剤が存在すると、系中の増感剤が活性エネルギー線を吸収して励起状態となり、ラジカル発生剤と接触することによってラジカル発生剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
【0095】
ここで、使用される活性エネルギー線は、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光又は赤外光などが使用され得る。活性エネルギー線のピーク波長は、増感剤の吸収特性にもよるが、例えば、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、320〜420nmであることが更に好ましく、活性エネルギー線が、ピーク波長が340〜400nmの範囲の紫外線であることが特に好ましい。
【0096】
また、本発明に用いることができるインク組成物の、重合開始系は、低出力の活性エネルギー線であっても十分な感度を有するものである。したがって、露光面照度が、好ましくは10〜4,000mW/cm2、より好ましくは20〜2,500mW/cm2で硬化させることが適当である。
【0097】
活性エネルギー線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェット記録用インク組成物の硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。しかしながら、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。さらに、LED(UV−LED)、LD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。
また、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を活性エネルギー線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。さらに一層短い波長が必要とされる場合、米国特許第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性エネルギー線を放出し得るLEDを開示している。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で特に好ましい活性エネルギー線源はUV−LEDであり、特に好ましくは340〜400nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
なお、LEDの被記録媒体上での最高照度は、10〜2,000mW/cm2であることが好ましく、20〜1,000mW/cm2であることがより好ましく、50〜800mW/cm2であることが特に好ましい。
【0098】
インク組成物は、このような活性エネルギー線に、好ましくは0.01〜120秒、より好ましくは0.1〜90秒照射されることが適当である。
活性エネルギー線の照射条件並びに基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、インク組成物の吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査することによって行われる。活性エネルギー線の照射は、インク組成物の着弾後、一定時間(好ましくは0.01〜0.5秒、より好ましくは0.01〜0.3秒、更に好ましくは0.01〜0.15秒)をおいて行われることになる。このようにインク組成物の着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、被記録媒体に着弾したインク組成物が硬化前に滲むことを防止することが可能となる。また、多孔質な被記録媒体に対しても光源の届かない深部までインク組成物が浸透する前に露光することができるため、未反応モノマーの残留を抑えることができるので好ましい。
さらに、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させてもよい。国際公開第99/54415号パンフレットでは、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されており、このような硬化方法もまた、本発明のインクジェット記録方法に適用することができる。
【0099】
上述したようなインクジェット記録方法を採用することにより、表面の濡れ性が異なる様々な被記録媒体に対しても、着弾したインク組成物のドット径を一定に保つことができ、画質が向上する。なお、カラー画像を得るためには、明度の低い色から順に重ねていくことが好ましい。明度の低いインク組成物から順に重ねることにより、下部のインク組成物まで照射線が到達しやすくなり、良好な硬化感度、残留モノマーの低減、密着性の向上が期待できる。また、照射は、全色を吐出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
このようにして、本発明に用いることができるインク組成物は、活性エネルギー線の照射により高感度で硬化することで、被記録媒体表面に画像を形成することができる。
【0100】
本発明のインクジェット記録方法において、吐出する各着色インク組成物の順番は、特に限定されるわけではないが、明度の低い着色インク組成物から被記録媒体に付与することが好ましく、イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。また、これにホワイトを加えて使用する場合にはホワイト→イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。さらに、本発明はこれに限定されず、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタ、シアン、マゼンタ、グレー、ブラック、ホワイトのインク組成物との計7色が少なくとも含まれる本発明のインクセットを好ましく使用することもでき、その場合には、ホワイト→ライトシアン→ライトマゼンタ→イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。
【0101】
本発明において、被記録媒体としては、特に限定されず、支持体や記録材料として公知の被記録媒体を使用することができる。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。また、本発明における被記録媒体として、非吸収性被記録媒体が好適に使用することができる。
【実施例】
【0102】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、以下の記載における「部」とは、特に断りのない限り「重量部」を示すものとする。
【0103】
実施例及び比較例で使用したインク組成物の素材は、下記に示す通りである。
・NOVOPERM YELLOW H2G(イエロー顔料、C.I.ピグメントイエロー120、クラリアントジャパン(株)製)
・CROMOPHTAL YELLOW LA(イエロー顔料、C.I.ピグメントイエロー150、BASFジャパン(株)製)
・NOVOPERM YELLOW 4G01(イエロー顔料、C.I.ピグメントイエロー155、クラリアントジャパン(株)製)
・NOVOPERM YELLOW PHG(イエロー顔料、C.I.ピグメントイエロー180、クラリアントジャパン(株)製)
・INKJET MAGENTA E5B02(マゼンタ顔料、C.I.ピグメントバイオレット19、クラリアントジャパン(株)製)
・INKJET MAGENTA E02(マゼンタ顔料、C.I.ピグメントレッド122、クラリアントジャパン(株)製)
・CINQUASIA MAGENTA RT−355D(マゼンタ顔料、C.I.ピグメントバイオレット19とC.I.ピグメントレッド202との混晶、BASFジャパン(株)製)
・IRGALITTE BLUE GLO(シアン顔料、C.I.ピグメントブルー15:3、BASFジャパン(株)製)
・IRGALITTE BLUE GLVO(シアン顔料、C.I.ピグメントブルー15:4、BASFジャパン(株)製)
・SPECIAL BLACK 250(ブラック顔料、C.I.ピグメントブラック7、エボニック デグサ ジャパン(株)製)
・KRONOS 2300(ホワイト顔料、C.I.ピグメントホワイト6、クロノス社製)
【0104】
・SOLSPERSE 22000(顔料分散剤、日本ルーブリゾール(株)製)
・SOLSPERSE 32000(顔料分散剤、日本ルーブリゾール(株)製)
・SOLSPERSE 41000(顔料分散剤、日本ルーブリゾール(株)製)
・DISPERBYK−168(顔料分散剤、固形分30%、ビックケミー・ジャパン(株)製)
・TEGO DISPERS 685(顔料分散剤、エボニック デグサ ジャパン(株)製)
・SR506D(イソボルニルアクリレート、サートマー・ジャパン(株)製)
・SR531(サイクリックトリメチロールプロパンフォルマールアクリレート、CTFA、サートマー・ジャパン(株)製)
・NVC(N−ビニルカプロラクタム、BASFジャパン(株)製)
・SR395(イソデシルアクリレート、サートマー・ジャパン(株)製)
・RAPI−CURE DVE−3(トリエチレングリコールジビニルエーテル、アイエスピー・ジャパン(株)製)
・SR339A(2−フェノキシエチルアクリレート、サートマー・ジャパン(株)製)
・FA−512AS(ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、日立化成工業(株)製)
・SR9003(プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート(ネオペンチルグリコール プロピレンオキサイド2モル付加物をジアクリレート化した化合物)、サートマー・ジャパン(株)製)
・SR341(3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、サートマー・ジャパン(株)製)
・SR508(ジプロピレングリコールジアクリレート、サートマー・ジャパン(株)製)
・SR454(エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、サートマー・ジャパン(株)製)
・CN964A85(ウレタンアクリレートオリゴマー、平均官能基数2、サートマー・ジャパン(株)製)
【0105】
・Lucirin TPO(光重合開始剤、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、BASFジャパン(株)製)
・IRGACURE 819(光重合開始剤、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、BASFジャパン(株)製)
・ベンゾフェノン(光重合開始剤、和光純薬工業(株)製)
・IRGACURE 184(光重合開始剤、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、BASFジャパン(株)製)
・IRGACURE 369(光重合開始剤、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、BASFジャパン(株)製)
・FIRSTCURE ITX(イソプロピルチオキサントン、ChemFirst Inc.製)
・KAYARAD DETX−S(2,4−ジエチルチオキサントン、日本化薬(株)製)
・チオクロマノン化合物(1)(下記化合物)
・FIRSTCURE ST−1(重合禁止剤、ChemFirst Inc.製)
【0106】
【化13】

【0107】
<ミルベースの調製>
シアン、イエロー、マゼンタ、ブラック、ホワイトの各ミルベースを表1の組成にて混合し、ミキサー(シルバーソン社製L4R)を用いて2,500回転/分にて10分撹拌した。その後、ビーズミル分散機DISPERMAT LS(VMA社製)に入れ、直径0.65mmのYTZボール((株)ニッカトー製)を用い、2,500回転/分で6時間分散を行った。
【0108】
【表1】

【0109】
<インク組成物の調製>
表2の成分を、ミキサー(シルバーソン社製L4R)を用いて2,500回転/分にて15分撹拌した。その後、日本ポール(株)製カートリッジフィルター(製品名:プロファイルII AB01A01014J)を用いてろ過し、各色のインク組成物を得た。
東機産業(株)製TVE−22LTを用いて測定した25℃における粘度、及び、協和界面科学(株)製自動表面張力計CBVP−Zを用いて測定した25℃における表面張力をあわせて示す。
【0110】
【表2】

【0111】
(実施例1)
イエローインク1、マゼンタインク1、シアンインク1、ブラックインク1及びホワイトインク1よりなるインクセット1を富士フイルム(株)製UVインクジェットプリンターLuxelJet UV350GTWに装填し、クオリティモードで王子製紙(株)製コート紙(製品名OKトップコート+)上にテスト画像を印刷し、評価を行った。結果を表7に示す。
【0112】
<硬化性評価>
硬化性は、触感による印刷物表面のべたつきと、印刷物を重ねて1日放置した時の画像部の転写の有無を下記基準で評価した。
◎:印刷物表面にべたつきは全く無く、転写も無かった。
○:印刷物表面がわずかにべたついているが、転写は無かった。
△:印刷物表面にべたつきがあり、わずかに転写が生じた。
×:印刷物表面が非常にべたついており、酷い転写を生じた。
【0113】
<色相変化>
印刷直後のレッド(イエロー濃度100%、マゼンタ濃度100%設定)、グリーン(イエロー濃度100%、シアン濃度100%設定)、ブルー(シアン濃度100%、マゼンタ濃度100%設定)の色相(CIELAB)を、GretagMacbeth社製Spectrolinoを用い、測定光源D50、視野角2°、色濃度基準ANSI StatusTの条件で測定した。印刷物を暗所に2時間置いた後、同様に色相を測定し、それぞれの色の印刷直後と2時間後との色差(ΔE=[(L直後−L2時間後2+(a*直後−a*2時間後2+(b*直後−b*2時間後21/2)を求めた。ΔEが2以下であれば、人間の目では色味の変化は認識されず、色合わせ作業に支障をきたさない。
【0114】
<バンディング評価>
10名の評価者により、50cmの距離からの印刷物を観察し、バンディングの有無を評価した。
◎:全員がバンディングは認められないと回答した。
○:10名中、バンディングが認められると回答した人数は、1〜3名であった。
△:10名中、バンディングが認められると回答した人数は、4〜6名であった。
×:10名中、バンディングが認められると回答した人数は、7名以上であった。
【0115】
<光沢性評価>
コンポジットブラック(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック各濃度100%設定)の光沢度をコニカミノルタセンシング(株)製光沢計(製品名GM−60)を用いて60°光沢を測定した。値が高いほど高光沢であり、鮮やかな印刷物が得られる。
【0116】
(実施例2〜13)
前記インク組成物の調製と同様にして表3〜表5の各色インク組成物を作製し、表7に記載のインクセットを実施例1と同様にして評価した。結果を表7にあわせて示す。
【0117】
(比較例1〜14)
前記インク組成物の調製と同様にして表3〜表5の各色インク組成物を作製し、表8に記載のインクセットを実施例1と同様にして評価した。結果を表8にあわせて示す。
【0118】
【表3】

【0119】
【表4】

【0120】
【表5】

【0121】
【表6】

【0122】
【表7】

【0123】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物及びブラックインク組成物を含み、
各インク組成物はそれぞれ、(成分A)ラジカル重合性化合物、(成分B)ラジカル重合開始剤及び(成分C)着色剤を含有し、
各インク組成物に含まれる成分Bはそれぞれ、(成分B−1)アシルホスフィンオキサイド化合物及び(成分B−2)チオキサントン化合物を含有し、
各インク組成物はそれぞれ、成分B−1をインク組成物の総量に対して3重量%以上17重量%未満含有し、
前記マゼンタインク組成物及び前記シアンインク組成物はそれぞれ、成分B−2をインク組成物の総量に対して0.1重量%以上2重量%未満含有し、
前記イエローインク組成物及び前記ブラックインク組成物はそれぞれ、成分B−2をインク組成物の総量に対して2重量%以上6重量%未満含有することを特徴とする
インクセット。
【請求項2】
(成分A)ラジカル重合性化合物、(成分B)ラジカル重合開始剤及び(成分C)着色剤を含有するホワイトインク組成物を更に含み、
前記ホワイトインク組成物に含まれる成分Bは、(成分B−1)アシルホスフィンオキサイド化合物及び(成分B−2)チオキサントン化合物を含有し、
前記ホワイトインク組成物は、成分B−1をインク組成物の総量に対して3重量%以上17重量%未満含み、かつ成分B−2をインク組成物の総量に対して0重量%を超え1重量%未満含有するか又は含有しない、請求項1に記載のインクセット。
【請求項3】
各インク組成物に含まれる成分B−1が、イソプロピルチオキサントンである、請求項1又は2に記載のインクセット。
【請求項4】
各インク組成物に含まれる成分Aがそれぞれ、単官能ラジカル重合性化合物を成分Aの総量に対して80重量%以上100重量%未満含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項5】
各インク組成物に含まれる成分Aがそれぞれ、式(1)〜(3)で表される化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクセット。
【化1】

(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、X1は単結合又は二価の連結基を表し、R2〜R12はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R13は水素原子又はメチル基を表し、X2は単結合又は二価の連結基を表し、nは2〜6の整数を表す。)
【請求項6】
成分Aが、前記式(1)〜(3)で表される化合物よりなる群から選ばれた少なくとも2種の化合物を含有する、請求項5に記載のインクセット。
【請求項7】
前記イエローインク組成物に含まれる成分Cが、C.I.ピグメントイエロー120、150、155及び180よりなる群から選ばれた少なくとも1種の着色剤であり、
前記マゼンタインク組成物に含まれる成分Cが、C.I.ピグメントレッド122、202及びC.I.ピグメントバイオレット19よりなる群から選ばれた少なくとも1種の着色剤であり、
前記シアンインク組成物に含まれる成分Cが、C.I.ピグメントブルー15:3及び15:4よりなる群から選ばれた少なくとも1種の着色剤であり、
前記ブラックインク組成物に含まれる成分Cが、C.I.ピグメントブラック7である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項8】
前記イエローインク組成物、前記マゼンタインク組成物、前記シアンインク組成物及び前記ブラックインク組成物に含まれる成分Aが、炭素数8〜13の鎖状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート化合物を更に含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項9】
インクジェット記録用である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のインクセットを使用することを特徴とする
インクジェット記録方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のインクセットを備えることを特徴とする
インクジェット記録装置。

【公開番号】特開2012−111848(P2012−111848A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261989(P2010−261989)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】